特許第6882074号(P6882074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882074
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/7193 20110101AFI20210524BHJP
【FI】
   H01R13/7193
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-105282(P2017-105282)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-200824(P2018-200824A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 章義
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−059349(JP,A)
【文献】 特開2017−076511(JP,A)
【文献】 米国特許第05895293(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/56−13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に端子を有する電線を少なくとも1以上、前記先端部が外部に露出した状態で収容する電線収容本体と、
前記電線が貫通する第1貫通穴を有し、前記電線収容本体に対して、前記先端部と反対側の端部に取り付けられる磁性体収容部材と、
前記電線が貫通する第2貫通穴を有し、前記電線の延在方向から見た場合に、前記磁性体収容部材の前記第1貫通穴を囲う内部空間部に保持される磁性体と、
前記電線が貫通する第3貫通穴を有し、前記磁性体収容部材に対して、前記先端部と反対側の端部に取り付けられ、かつ、前記内部空間部を閉塞するリアホルダと、
を備え、
前記磁性体収容部材は、前記第3貫通穴を構成する内周面と前記電線の電線外周面との間隔よりも、前記第1貫通穴を構成する内周面と前記電線外周面との間隔が広く形成され、
前記リアホルダは、前記電線を支持し、
前記電線収容本体は、本体部と、基台部とを有し
前記本体部は、前記電線が貫通する前記本体部における貫通穴を有し、
前記基台部は、
前記電線が貫通する前記基台部における貫通穴を有し、
前記本体部の前記電線の先端部側に取り付けられ、
前記基台部における貫通穴を構成する内周面と前記電線の電線外周面との間隔よりも、前記第1貫通穴を構成する内周面と前記電線外周面との間隔が広く形成され、前記電線を支持する
ことを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両では、インバータとモータとの間を電線で接続し、インバータからモータへの電力供給を行う。インバータからモータへは比較的大きな電力が供給されるため、上記の電線には、高圧の電流が流れることによるノイズが発生する場合がある。したがって、電線の端部に設けられるコネクタに、ノイズの発生を抑制するフェライトコアなどの磁性体を備えるものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4937461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで磁性体は、強度的に脆く損傷しやすいことが知られている。したがって、上記のコネクタにおいて磁性体は、外力が作用することによる割れや欠けなどの損傷を防ぐため、コネクタのハウジングの内部に収容される。しかしながら、ハウジングに対して外力が作用した場合、ハウジングに応力が発生し、さらには、ハウジングを介して磁性体に応力が発生する場合がある。その結果、磁性体が損傷してしまう可能性が考えられる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ハウジングに外力が作用しても、ハウジングの内部に位置する磁性体に影響を与えることを抑制することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明に係るコネクタは、先端部に端子を有する電線を少なくとも1以上、前記先端部が外部に露出した状態で収容する電線収容本体と、前記電線が貫通する第1貫通穴を有し、前記電線収容本体に対して、前記先端部と反対側の端部に取り付けられる磁性体収容部材と、前記電線が貫通する第2貫通穴を有し、前記電線の延在方向から見た場合に、前記磁性体収容部材の前記第1貫通穴を囲う内部空間部に保持される磁性体と、前記電線が貫通する第3貫通穴を有し、前記磁性体収容部材に対して、前記先端部と反対側の端部に取り付けられ、かつ、前記内部空間部を閉塞するリアホルダと、を備え、前記磁性体収容部材は、前記第3貫通穴を構成する内周面と前記電線の電線外周面との間隔よりも、前記第1貫通穴を構成する内周面と前記電線外周面との間隔が広く形成され、前記リアホルダは、前記電線を支持し、前記電線収容本体は、本体部と、基台部とを有し前記本体部は、前記電線が貫通する前記本体部における貫通穴を有し、前記基台部は、前記電線が貫通する前記基台部における貫通穴を有し、前記本体部の前記電線の先端部側に取り付けられ、前記基台部における貫通穴を構成する内周面と前記電線の電線外周面との間隔よりも、前記第1貫通穴を構成する内周面と前記電線外周面との間隔が広く形成され、前記電線を支持する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタは、前記磁性体収容部材が、前記第3貫通穴を構成する内周面と前記電線の電線外周面との間隔よりも、前記第1貫通穴を構成する内周面と前記電線外周面との間隔が広く形成されるので、コネクタに外力が作用しても、磁性体収容部材の内部に位置する磁性体に影響を与えることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るコネクタとモータとインバータとの接続構成を示す模式図である。
図2図2は、実施形態に係るコネクタの斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るコネクタの部分分解斜視図である。
図5図5は、実施形態に係るコネクタの断面図である。
図6図6は、実施形態に係るコネクタの部分断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るコネクタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、下記の実施形態における構成要素は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0010】
[実施形態]
まず、実施形態に係るコネクタについて説明する。図1は、実施形態に係るコネクタとモータとインバータとの接続構成を示す模式図である。図2は、実施形態に係るコネクタの斜視図である。図3は、実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。図4は、実施形態に係るコネクタの部分分解斜視図である。図5は、実施形態に係るコネクタの断面図である。図6は、実施形態に係るコネクタの部分断面拡大図である。各図におけるX方向は、コネクタの幅方向である。Y方向は、コネクタの奥行き方向であり、幅方向と直交する方向である。Z方向は、コネクタの高さ方向であり、幅方向および奥行き方向と直交する方向である。また、電線の延在方向である。
【0011】
図1に示すインバータNおよびモータMは、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載されている。インバータNは、例えば、車両に搭載された電源(図示せず)からの直流出力を三相交流出力に変換する装置である。インバータNは、PWM波形を出力するものでもよいが、正弦波形を出力するものでもよい。モータMは、インバータNから出力された三相交流出力により駆動する装置であり、例えばY次結線の三相モータである。インバータNとモータMとは、電線10によって電気的に接続される。本実施形態におけるインバータNとモータMとは、3本の同一形状の電線10によって電気的に接続される。
【0012】
電線10は、図2図3に示すように、断面円形状の導体部11と導体部11の各外周を被覆して形成される絶縁部12と、を有する。導体部11は、導電性を有する金属製(アルミニウム合金や銅合金など)の複数の素線をらせん状に撚り合わせた撚り線、または棒状の単芯線などから成る。絶縁部12は、例えば絶縁性を有する合成樹脂などにより形成される。電線10は、導体部11及び絶縁部12が共に可塑性を有しているので、曲げ変形可能となっている。電線10は、少なくとも一方の先端部13に端子Tを備える。また、電線10は、延在方向の途中においてゴム栓Sが取り付けられる。
【0013】
端子Tは、導電性を有する金属材で構成された雄端子であり、相手側端子と電気的に接続されるものである。端子Tは、相手側端子と電気的に接続される電気接触部T1と、電線10の端末と電気的に接続される電線接続部T2と、を有する。この端子Tは、平板を曲げ加工して形成されている。電気接触部T1は、平板状に形成されたタブである。電線接続部T2は、絶縁部12から導体部11を露出させた電線10の先端部13と加締められて圧着されることで電線10と電気的に接続される。
【0014】
ゴム栓Sは、電線10に付着した液体が電線10と端子Tとの接続箇所に付着することを抑制する止水部材である。ゴム栓Sは、図4ないし図5に示すように、パッキンS1と、剛性部材S2と、を備える。パッキンS1と剛性部材S2とは、インサート成形等により一体に成形されている。ゴム栓Sは、環状に形成され、電線10が貫通する。このときゴム栓Sは、電線10の外周面、すなわち電線外周面10aと密着する。ゴム栓Sは、後述の電線収容本体2の内部に位置し、電線収容本体2の貫通穴21aを形成する内周面21bと当接する。
【0015】
コネクタ1は、図1図6に示すように、電線10にインバータNからの高圧の電流が流れることにより、電線10にノイズが発生することを抑制する機能を備えるものである。コネクタ1は、相手側機器の筐体、すなわちインバータNに配設された差し込み口(図示省略、雌端子、相手側端子)に差し込まれ、筐体内に配設された電気回路と電気的に接続される。コネクタ1は、電線10においてノイズ発生源に近接して設置することが好ましい。したがって、本実施形態におけるコネクタ1は、インバータN側に近接して設置される。コネクタ1は、電線収容本体2と、磁性体収容部材3と、磁性体4と、リアホルダ5と、を備える。
【0016】
電線収容本体2は、少なくとも1以上の電線10を、端子Tを含む先端部13が外部に露出した状態で収容して保持するものである。本実施形態における電線収容本体2は、3本の電線10を収容する。電線収容本体2は、本体部21と、基台部22と、パッキン23とを備える。
【0017】
本体部21は、電線収容本体2において電線10を収容するものである。本体部21は、絶縁性を有する合成樹脂により形成される。本体部21は、電線延在方向から見て、外形が楕円形状に形成される。本体部21は、図5および図6に示すように電線延在方向に沿って貫通穴21aが形成される。貫通穴21aは、各電線10がそれぞれ貫通する穴である。したがって、本実施形態における本体部21は、コネクタ1の幅方向、つまり本体部21における楕円形状の長手方向に沿って3つの貫通穴21aが並列して形成される。貫通穴21aは、穴径が電線10の直径よりも大きく形成される。すなわち、本体部21は、貫通穴21aを構成する内周面21bと、電線10の電線外周面10aとの間に隙間が形成される。本体部21は、先端部13側の端部21cと反対側の端部21dの外周面上に、後述の磁性体収容部材3の第1取り付け部34と嵌合する取り付け部21eを有する。
【0018】
基台部22は、電線収容本体2において、端子Tを含む電線10の先端部13側を内部に収容し、かつ電線10を支持するものである。基台部22は、絶縁性を有する合成樹脂で形成されている。基台部22は、電線延在方向から見て外形が楕円形状に形成される。基台部22は、先端部13側の端部22aから、端子Tが外部に突出する。基台部22は、端部22aと反対側の端部22bが、本体部21の端部21cに取り付けられる。ここで、基台部22は、図5および図6に示すように、端部22bの外周壁が内壁と外壁とを有する2重壁構造に形成される。本体部21と基台部22とを取り付けた状態において、上記内壁と外壁の間に本体部21の先端部13側の端部21cが位置する。基台部22の2重壁の間に本体部21が位置することにより、基台部22と本体部21との取り付け位置において、液体が基台部22と本体部21との隙間から内部の電線10に付着することを抑制する防水構造が形成される。基台部22は、電線延在方向に沿って貫通穴22cが形成される。貫通穴22cは、各電線10がそれぞれ貫通する穴である。本実施形態における基台部22は、貫通穴21aと同様に、コネクタ1の幅方向、つまり基台部22における楕円形状の長手方向に沿って3つの貫通穴22cが並列して形成される。基台部22は、貫通穴22cの少なくとも一部において穴径が電線10の直径とほぼ同じ大きさに形成される。したがって、基台部22は、少なくとも一部において、貫通穴22cを構成する内周面22dと電線10の電線外周面10aとが接触し、電線10を支持することとなる。
【0019】
パッキン23は、本体部21と基台部22との取り付け箇所において、コネクタ1に付着した液体が本体部21と基台部22との隙間からコネクタ1の内部に浸入することを抑制する防水部材である。パッキン23は、弾性を有する部材、例えばゴム部材などにより形成される。パッキン23は、環状に形成され、本体部21の端部21cの外周面上に取り付けられる。このときパッキン23は、本体部21の外周面と密着する。パッキン23は、一部が本体部21と基台部22との間、すなわち本体部21と基台部22における上記の外壁との間に位置する。
【0020】
コネクタ1に取り付けられるシールドシェルHは、電線収容本体2の本体部21を端部21d側から覆って嵌合するものである。シールドシェルHは、導電性を有する金属材で構成されている。シールドシェルHは、電線10を収容し、かつ後述のフェライトコア4を収容した磁性体収容部材3が取り付けられた電線収容本体2に取り付けられる。シールドシェルHは、本体部21を収容して嵌合する円筒形状、かつ電線延在方向から見て、外形が楕円形状に形成される。シールドシェルHは、外周面から半径方向の外方に突設されたフランジを備える。
【0021】
磁性体収容部材3は、磁性体4を収容して保持するためのものである。磁性体収容部材3は、電線延在方向から見て外形が楕円形状に形成される。磁性体収容部材3は、電線収容本体2に対し先端部13側と反対側の端部、すなわち本体部21の端部21dに取り付けられる。磁性体収容部材3は、先端部13側の端部31において、先端部13側に突出し、電線延在方向に沿って延在して形成された突出部32を有する。突出部32は、後述の第1貫通穴36の一部を構成する。したがって、突出部32は、各第1貫通穴36に対応し、コネクタ1の幅方向、つまり磁性体収容部材3における楕円形状の長手方向に沿って3つが並列して形成される。磁性体収容部材3は、図5および図6に示すように、電線収容本体2に取り付けられた状態において、少なくとも突出部32を含む端部31が、本体部21の貫通穴21aに位置する。磁性体収容部材3は、先端部13側の端部31、および端部31と反対側の端部33の外周面上に、第1取り付け部34および第2取り付け部35を有する。第1取り付け部34は、本体部21の取り付け部21eと嵌合し、電線収容本体2と磁性体収容部材3とを係止するものである。第2取り付け部35は、後述のリアホルダ5の取り付け部52と嵌合し、磁性体収容部材3とリアホルダ5とを係止するものである。
【0022】
磁性体収容部材3は図3図6に示すように、電線延在方向に沿って第1貫通穴36が形成される。第1貫通穴36は、各電線10がそれぞれ貫通する穴である。したがって、本実施形態における磁性体収容部材3は、コネクタ1の幅方向、つまり磁性体収容部材3の楕円形状の長手方向に沿って3つの第1貫通穴36が並列して形成される。第1貫通穴36は、最小穴径が電線10の径よりも若干大きく形成される。また、磁性体収容部材3は、第1貫通穴36を構成する内周面37と電線外周面10aとの間隔L1が、リアホルダ5における後述の第3貫通穴53を構成する内周面54と電線外周面10aとの間隔L2よりも広く形成される。ここで、間隔L1は、第1貫通穴36のうち最小穴径部における内周面37と電線外周面10aとの間隔である。言い換えると、間隔L1は、第1貫通穴36における内周面37と電線外周面10aとの間隔のうち、最小の広さの間隔である。同様に、間隔L2は、第3貫通穴53のうち最小穴径部における内周面54と電線外周面10aとの間隔である。すなわち、間隔L2は、第3貫通穴53における内周面54と電線外周面10aとの間隔のうち、最小の広さの間隔である。
【0023】
磁性体収容部材3は、内部空間部38と開口部39とを有する。内部空間部38は、磁性体4を磁性体収容部材3の内部に収容する。内部空間部38は、幅方向に延在し、かつ各第1貫通穴36を囲うように形成される。開口部39は、磁性体収容部材3において、端部33に形成される。開口部39は、内部空間部38と磁性体収容部材3の外部とを連通する。
【0024】
ここで、磁性体収容部材3は、略同一形状に形成された第1収容部材3Aと第2収容部材3Bとから構成される。第1収容部材3Aおよび第2収容部材3Bは、それぞれ第1貫通穴36の一部が形成され、幅方向に沿って延在する端部に対し、点対称または線対称に配置される。第1収容部材3Aおよび第2収容部材3Bは、上記のように線対称に配置されることにより、第1貫通穴36を形成する。第1収容部材3Aおよび第2収容部材3Bは、第1取り付け部34および第2取り付け部35が、それぞれ取り付け部21eおよび取り付け部52と嵌合することにより、第1収容部材3Aおよび第2収容部材3Bが接触して一体化され、磁性体収容部材3を構成する。
【0025】
本実施形態における磁性体4は、フェライトによって形成されたフェライトコア4である。以下、磁性体4をフェライトコア4と称する。フェライトコア4は、先述のように電線10に高圧の電流が流れることで発生するノイズを抑制するものである。すなわちフェライトコア4は、電線10の周りに位置することで磁束が発生し、電流エネルギーが磁気エネルギーへ変換される。磁気エネルギーが電磁誘導により再び電流エネルギーに戻ろうとしたとき、磁気損失が起き、ノイズ(電流)の一部が抑制されることとなる。フェライトコア4は、開口部39を介して内部空間部38に収容され、磁性体収容部材3に保持される。フェライトコア4は、電線延在方向から見て、幅方向に延在して形成される。
【0026】
フェライトコア4は、電線延在方向に沿って第2貫通穴41が形成される。第2貫通穴41は、各電線10がそれぞれ貫通する穴である。したがって、本実施形態におけるフェライトコア4は、コネクタ1の幅方向、つまりフェライトコア4の延在方向に沿って3つの第2貫通穴41が並列して形成される。
【0027】
フェライトコア4は、磁性体収容部材3と同様に略同一形状に形成された第1フェライト4Aと第2フェライト4Bとから構成される。第1フェライト4Aおよび第2フェライト4Bは、それぞれ第2貫通穴41の一部が形成され、幅方向に沿って延在する端部に対し、点対称または線対称に配置される。第1フェライト4Aおよび第2フェライト4Bは、上記のように線対称に配置されることにより、第2貫通穴41を形成する。
【0028】
ここで、磁性体収容部材3とフェライトコア4との隙間、言い換えると、内部空間部38において磁性体収容部材3とフェライトコア4との間に位置する領域に、ポッティング剤Pが介在する。ポッティング剤Pは、内部空間部38におけるフェライトコア4の位置を固定するものであり、かつ外力がフェライトコア4に作用することを抑制するものである。つまり、ポッティング剤Pは、フェライトコア4を磁性体収容部材3において内部空間部38を構成する内周面と接触しない位置に固定する。ポッティング剤Pは、外力などの衝撃を吸収することが可能な部材であり、例えばシリコーン部材、ゴム部材、およびエポキシ部材などの材料により形成される。
【0029】
リアホルダ5は、磁性体収容部材3に取り付けられ、フェライトコア4を収容した内部空間部38を閉塞し、かつ電線10を支持するものである。リアホルダ5は、電線延在方向から見て、外形が楕円形状に形成される。リアホルダ5は、磁性体収容部材3に対して端部33、すなわち開口部39に取り付けられる。リアホルダ5は、先端部13側と反対側の端部51における外周面上に、取り付け部52が形成される。取り付け部52は、磁性体収容部材3の第2取り付け部35と嵌合し、磁性体収容部材3とリアホルダ5とを係止するものである。
【0030】
リアホルダ5は、電線延在方向に沿って第3貫通穴53が形成される。第3貫通穴53は、各電線10がそれぞれ貫通する穴である。したがって、本実施形態におけるリアホルダ5は、コネクタ1の幅方向、つまりリアホルダ5の楕円形状の長手方向に沿って3つの第3貫通穴53が並列して形成される。リアホルダ5は、第3貫通穴53の最小穴径が、電線10の直径とほぼ同じ大きさに形成される。したがって、リアホルダ5は、第3貫通穴53を構成する内周面54と電線外周面10aとが少なくとも最小穴径部の一部において接触する。また、先述のように最小穴径部における内周面54と電線外周面10aとの間隔が間隔L2である。したがって、リアホルダ5の間隔L2より磁性体収容部材3の間隔L1のほうが広い間隔である。本実施形態において、内周面54と電線外周面10aとは、第3貫通穴53の軸方向に対する周方向の全周に亘って接触し、電線10を支持する。本実施形態において、最小穴径部、つまり内周面54と電線外周面10aとの接触箇所は、端部51側に形成される。
【0031】
リアホルダ5は、磁性体収容部材3およびフェライトコア4と同様に、略同一形状に形成された第1リアホルダ5Aと第2リアホルダ5Bとから構成される。第1リアホルダ5Aおよび第2リアホルダ5Bは、それぞれ第3貫通穴53の一部が形成され、幅方向に沿って延在する端部に対し、点対称に配置される。第1リアホルダ5Aおよび第2リアホルダ5Bは、上記のように点対称に配置されることにより、第3貫通穴53を形成する。第1リアホルダ5Aおよび第2リアホルダ5Bは、点対称に配置した際、第1リアホルダ5Aおよび第2リアホルダ5Bそれぞれに形成された嵌合部55a,55bが嵌合する。嵌合部55aおよび嵌合部55bが嵌合することにより、第1リアホルダ5Aおよび第2リアホルダ5Bが係止して、リアホルダ5を形成する。
【0032】
ここで、コネクタ1は、電線収容本体2、磁性体収容部材3、フェライトコア4、およびリアホルダ5に形成されたそれぞれの貫通穴、すなわち貫通穴21a,22c、第1貫通穴36、第2貫通穴41、第3貫通穴53が、電線延在方向に沿って同軸上に形成される。また、先述のように、リアホルダ5の第3貫通穴53を構成する内周面54と電線外周面10aの間隔L2は、磁性体収容部材3の第1貫通穴36を構成する内周面37と電線外周面10aとの間隔L1よりも狭く形成される。本実施形態において内周面54と電線外周面10aとは、接触する。さらに、本実施形態において、基台部22の貫通穴22cを構成する内周面22dと、電線外周面10aとが接触する。すなわち、コネクタ1は、リアホルダ5および基台部22が、電線10を電線延在方向においてそれぞれ挟持し、かつ支持することとなる。
【0033】
次に、電線10を取り付けた状態のコネクタ1の組み立て手順について説明する。まず、作業員は、パッキン23を取り付けた本体部21と基台部22とを組み付け、電線収容本体2を組み立てる。次に、作業員は、電線収容本体2の貫通穴21a,22cに、電線10を挿通させる。なお、電線10には、予めゴム栓Sを取り付けた状態であってもよい。次に、作業員は、基台部22の端部22a側に突出した電線10の先端部13において、絶縁部12を剥ぎ、露出した導体部11と端子Tとを加締めて圧着し、電線10と端子Tとを電気的に接続させる。次に、作業員は、電線10を端子Tと反対方向に引っ張り、基台部22の内部の所定位置に電線接続部T2が位置するように調整する。
【0034】
次に、作業員は、電線10に対し奥行き方向から挟み込むように、第1収容部材3Aおよび第2収容部材3Bを組み付け、磁性体収容部材3を組み立てる。これにより、電線10が貫通した状態で第1貫通穴36が形成される。このとき、作業員は、第1取り付け部34を本体部21の取り付け部21eと嵌合させ、磁性体収容部材3の端部31を、本体部21の端部21dに取り付ける。
【0035】
次に、作業員は、磁性体収容部材3の各内部空間部38に、開口部39を介してフェライトコア4、すなわち第1フェライト4Aおよび第2フェライト4Bを収容する。フェライトコア4を内部空間部38に収容することにより、電線10が貫通した状態で第2貫通穴41が形成される。次に、作業員は、内部空間部38において、磁性体収容部材3とフェライトコア4との隙間に、ポッティング剤Pを封入する。これにより、磁性体収容部材3とフェライトコア4との隙間にポッティング剤Pが介在した状態となる。次に、作業員は、電線10に対し奥行き方向から挟み込むように、かつ、嵌合部55a,55bを嵌合させて第1リアホルダ5Aおよび第2リアホルダ5Bを組み付け、リアホルダ5を組み立てる。これにより、電線10が貫通した状態で第3貫通穴53が形成される。このとき、作業員は、リアホルダ5の取り付け部52を、磁性体収容部材3の第2取り付け部35と嵌合させ、磁性体収容部材3の端部33、すなわち開口部39にリアホルダ5を取り付ける。これにより、フェライトコア4およびポッティング剤Pを収容した状態の内部空間部38が閉塞される。次に、作業員は、電線10に挿通させておいたシールドシェルHを電線収容本体2の本体部21に対し端部21d側から覆うように嵌合させて組み付け、電線10を取り付けた状態のコネクタ1の組み立てが完了する。
【0036】
本実施形態におけるコネクタ1は、電線10を収容する電線収容本体2に対し、フェライトコア4を内部空間部38に収容した磁性体収容部材3を取り付け、磁性体収容部材3に対し、内部空間部38を閉塞するリアホルダ5を取り付けることにより、構成される。磁性体収容部材3には、電線10が貫通する第1貫通穴36が形成され、リアホルダ5には、電線10が貫通する第3貫通穴53が形成される。また、磁性体収容部材3およびリアホルダ5において、第1貫通穴36を構成する内周面37と電線外周面10aとの間隔L1は、第3貫通穴53を構成する内周面54と電線外周面10aとの間隔L2よりも広く形成される。したがって、コネクタ1の電線収容本体2や磁性体収容部材3に外力が作用し電線10がコネクタ1の内部において屈曲した場合、間隔L1が間隔L2よりも広く形成されることにより、電線10は、磁性体収容部材3よりも先にリアホルダ5に接触する。これにより、電線10が屈曲することにより発生する電線10の応力は、磁性体収容部材3の内部空間部38に位置するフェライトコア4に作用せず、リアホルダ5に作用することとなる。この結果、コネクタ1は、コネクタ1または電線10に外力が作用しても内部空間部38に位置するフェライトコア4の損傷などの影響を与えることを抑制することができる。さらに、コネクタ1は、上記の外力がフェライトコア4に影響を与えることを抑制することができるため、製品としての信頼性を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態において、すなわちリアホルダ5の第3貫通穴53を構成する内周面54と電線外周面10aは接触し、電線収容本体2における基台部22の貫通穴22cを構成する内周面22dと電線外周面10aは接触する。すなわち、コネクタ1において、電線10を、電線延在方向に離間した基台部22とリアホルダ5の2点で挟持していることとなる。したがって、電線10がコネクタ1から露出している部分に外力が作用しても、コネクタ1の内部において電線10は外力により屈曲など変形することが抑制されるので、電線10の応力がコネクタ1に作用し、フェライトコア4の損傷を防ぐことができる。さらに、本実施形態においては、内周面54と電線外周面10aとの接触箇所が端部51側に形成される。つまり、内周面54と電線外周面10aとの接触箇所が、フェライトコア4に対し電線延在方向における最も遠い位置に形成されることとなる。これにより、電線10に応力が発生した場合、応力がコネクタ1に対して作用する箇所がフェライトコア4とは遠い位置において作用することとなり、よりフェライトコア4に応力が作用することを抑制することができる。以上のことから、コネクタ1は、製品としての信頼性を向上させることができる。
【0038】
また、コネクタ1は、コネクタ1における電線10のノイズを抑制する磁性体として、強度的に脆く損傷しやすい本実施形態におけるフェライトコア4をも選択することができる。
【0039】
本実施形態における磁性体4は、フェライト部材(すなわち、フェライトコア)によるものとしたが、これに限らず、例えば金属磁性体など磁性を有する部材であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 コネクタ
10 電線
13 先端部
2 電線収容本体
21 本体部
22 基台部
23 パッキン
3 磁性体収容部材(3A,3B)
31,33 端部
34 第1取り付け部
35 第2取り付け部
36 第1貫通穴
37 内周面
38 内部空間部
39 開口部
4 フェライトコア(磁性体)(4A,4B)
41 第2貫通穴
5 リアホルダ(5A,5B)
51 端部
52 取り付け部
53 第3貫通穴
54 内周面
N インバータ
M モータ
T 端子
L1,L2 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6