(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882076
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20210524BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20210524BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20210524BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20210524BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20210524BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20210524BHJP
【FI】
B01D53/62ZAB
B01D53/78
B01D53/96
B01D53/14 220
C02F1/44 A
C02F1/44 D
C01B32/50
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-106611(P2017-106611)
(22)【出願日】2017年5月30日
(65)【公開番号】特開2018-202274(P2018-202274A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】程塚 正敏
(72)【発明者】
【氏名】長野 敬太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康博
(72)【発明者】
【氏名】宇田津 満
(72)【発明者】
【氏名】北村 英夫
【審査官】
長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−208533(JP,A)
【文献】
特開2013−043156(JP,A)
【文献】
特開2009−179546(JP,A)
【文献】
特開2011−115724(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0250590(US,A1)
【文献】
特開2007−125493(JP,A)
【文献】
特開2007−069204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14−53/18
B01D 53/34−53/85
B01D 53/78
B01D 53/96
B01D 61/00−71/82
C01B 32/50
C02F 1/32
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収部と、
前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液から前記二酸化炭素を放出させる再生部と、
前記吸収部から排出された吸収部排出ガスに随伴する前記吸収液を放散抑制液により回収する放散抑制部と、
前記放散抑制部に前記放散抑制液を供給し、前記放散抑制部から前記放散抑制液を回収し、前記放散抑制液を排液として排出する放散抑制液保持部と、
前記排液から前記吸収液に由来する不純物を分離する排液分離膜を有し、前記排液分離膜により前記不純物が低減された前記排液である生産液を前記放散抑制液として供給する排液分離部と、
前記再生部から排出された再生部排出ガスから所定の成分を除去するガス精製部と、
前記ガス精製部から排出され前記所定の成分を含む精製部排液を、前記排液分離部に供給する排液供給流路と、
を備える二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記排液中の固形物をろ過により除去し、前記固形物が除去された前記排液を前記排液分離部に供給する排液ろ過部をさらに備える、請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記排液を殺菌し、殺菌された前記排液を前記排液分離部に供給する殺菌部をさらに備える、請求項1または2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記排液分離部は、前記排液を前記排液分離膜を通過させず前記不純物を濃縮した濃縮液を排出するよう構成されており、
前記濃縮液を熱処理により浄化する加熱浄化部をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記排液、前記生産液、および前記濃縮液の少なくともいずれかの物理量を計測する1台以上の計測器と、
前記1台以上の計測器により計測された前記物理量に基づいて、前記排液の処理を制御をする制御部と、
を備える請求項4に二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記排液に酸性ガスを供給し、前記酸性ガスが供給された前記排液を前記排液分離部に供給する酸性ガス供給部をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
吸収部にて、燃焼排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させ、
再生部にて、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液から前記二酸化炭素を放出させ、
放散抑制部にて、前記吸収部から排出された吸収部排出ガスに随伴する前記吸収液を放散抑制液により回収し、
放散抑制液保持部から前記放散抑制部に前記放散抑制液を供給し、前記放散抑制部から前記放散抑制液保持部に前記放散抑制液を回収し、前記放散抑制液保持部から前記放散抑制液を排液として排出し、
前記排液から前記吸収液に由来する不純物を排液分離膜により分離し、前記排液分離膜により前記不純物が低減された前記排液である生産液を前記放散抑制液として供給し、
ガス精製部にて、前記再生部から排出された再生部排出ガスから所定の成分を除去し、
前記ガス精製部から排出され前記所定の成分を含む精製部排液を、排液供給流路を介して前記排液分離膜に供給する、
ことを備える二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電所などの燃焼システムから排出される排ガス(燃焼排ガス)中の二酸化炭素成分は、地球温暖化の一因とされており、二酸化炭素成分の排出量の削減や、二酸化炭素成分の回収が求められている。排ガス中の二酸化炭素成分を湿式で回収する湿式回収方法として、アルカノールアミン水溶液に類する吸収液を用いた化学吸収法が広く知られている。
【0003】
このような化学吸収法を採用する二酸化炭素回収システムは、一般に吸収部と再生部とを備えている。吸収部では、排ガスと吸収液とを接触させることにより、排ガス中の二酸化炭素を吸収液中に溶解させ、排ガスから二酸化炭素を除去する。二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)は、吸収部から排出され、再生部での加熱再生操作により高濃度の二酸化炭素を放出する。二酸化炭素を放出した吸収液(リーン液)は、再び二酸化炭素を吸収可能な再生済みの吸収液として、再生部から吸収部に送られる。このようにして、吸収液が吸収部と再生部との間を循環し、繰り返し再利用される。
【0004】
ここで、吸収部内で排ガスと吸収液が接触すると、排ガス中の二酸化炭素が吸収液により吸収されると共に、吸収液の一部が排ガスに随伴して吸収部から放出されることが知られている。排ガスに随伴する吸収液成分が大気中に放散されるのを抑制するため、洗浄水により排ガスを洗浄する排ガス洗浄部(放散抑制部)を吸収部の後段に配置し、吸収液成分が二酸化炭素回収システムから漏洩することを抑制することが考えられる。排ガスから吸収液成分を回収した洗浄水は、洗浄水として再利用されるか、排水として廃棄される。
【0005】
また、再生部から放出される高濃度の二酸化炭素ガスも、吸収液成分を随伴することが知られている。この二酸化炭素ガスの冷却等により、二酸化炭素ガスと共に放出された水蒸気が凝縮し、吸収液成分を含む凝縮水が排水として発生する。
【0006】
このように、排ガス洗浄部や再生部では、洗浄水の排水や、凝縮水としての排水が発生する。一方で、二酸化炭素回収システムでは、排ガス洗浄部で使用する洗浄水を補給するための補給水が必要となる。そこで、吸収液を含有する排水を蒸発させたのち凝縮させて凝縮水を生成し、この凝縮水を補給水として再利用する技術が知られている。以下、この凝縮水を再利用凝縮水と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5371734号公報
【特許文献2】特許第5351728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の再利用凝縮水を生成する場合、蒸発時の熱操作により吸収液成分の熱劣化や加熱酸化が起こる可能性がある。この場合、吸収液成分から揮発性有機成分が生成され、これが再利用凝縮水に混入する可能性がある。このような再利用凝縮水を補給水として再利用すると、揮発性有機成分が環境中に放出されるおそれがある。
【0009】
また、補給水の水質を酸性として放散抑制部で利用する場合、補給水の水質の調整のため、酸性薬液を消費することが問題となる。
【0010】
そこで、本発明の実施形態は、吸収部から排出されたガスから吸収液を回収するための放散抑制液を効率的に供給および使用することが可能な二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一の実施形態によれば、二酸化炭素回収システムは、燃焼排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収部と、前記二酸化炭素を吸収した前記吸収液から前記二酸化炭素を放出させる再生部と、前記吸収部から排出された吸収部排出ガスに随伴する前記吸収液を放散抑制液により回収する放散抑制部とを備える。前記システムはさらに、前記放散抑制部に前記放散抑制液を供給し、前記放散抑制部から前記放散抑制液を回収し、前記放散抑制液を排液として排出する放散抑制液保持部を備える。前記システムはさらに、前記排液から前記吸収液に由来する不純物を分離する排液分離膜を有し、前記排液分離膜により前記不純物が低減された前記排液である生産液を前記放散抑制液として供給する排液分離部を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、放散抑制液を効率的に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【
図2】第2実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【
図3】第3実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【
図4】第4実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1から
図4では、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【0016】
本実施形態の二酸化炭素回収システムは、吸収部11と、放散抑制部12と、リッチ液流路13と、熱交換器14と、再生部15と、再生部加熱器16と、ガス精製部17と、リーン液流路18と、補給水供給部21と、放散抑制液保持部の一例である放散抑制水貯槽22と、第1バルブ23と、第2バルブ24と、排液ろ過部の一例である排水ろ過部25と、殺菌部26と、排液分離部の一例である排水分離部27と、加熱浄化部28とを備えている。排水分離部27は、排液分離膜の一例である排水分離膜27aと、入口部27bと、第1出口部27cと、第2出口部27dとを備えている。
【0017】
吸収部11は、火力発電所などの燃焼システムから供給された燃焼排ガス1中の二酸化炭素を化学吸収法により除去する。具体的には、吸収部11は、燃焼排ガス1と吸収液とを接触させることにより、燃焼排ガス1中の二酸化炭素を吸収液に吸収させ、燃焼排ガス1から二酸化炭素を除去する。その結果、二酸化炭素が除去された燃焼排ガス1が、吸収部排出ガス2として吸収部11から排出される。燃焼排ガス1や吸収液の具体例については後述する。
【0018】
吸収部排出ガス2は、吸収液成分を随伴しているため、吸収部11の後段に配置された放散抑制部12に導入される。放散抑制部12は、放散抑制水(洗浄水)により吸収部排出ガス2を洗浄することで、吸収部排出ガス2に随伴する吸収液成分を放散抑制水により回収する。吸収部排出ガス2は、吸収部排出ガス2と放散抑制水との気液接触により洗浄される。その結果、吸収液成分が除去された吸収部排出ガス2が、処理済みガス3として放散抑制部12から排出される。放散抑制水は、水以外の液体に置き換えてもよい。
【0019】
一方、吸収部11は、二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)をリッチ液流路13に排出する。この吸収液は、リッチ液流路13上の熱交換器14を介して再生部15に供給される。
【0020】
再生部15では、再生部加熱器16にて吸収液が加熱されて水蒸気や二酸化炭素ガスが発生し、水蒸気や二酸化炭素ガスが再生部15に戻され、水蒸気や二酸化炭素の熱で再生部15内の吸収液が加熱される。その結果、再生部15内の吸収液から二酸化炭素ガスや水蒸気が放出され、これらの二酸化炭素ガスや水蒸気が、再生部排出ガス4として再生部15から排出される。
【0021】
再生部排出ガス4は、吸収液成分を随伴しているため、再生部15の後段に配置されたガス精製部17に導入される。ガス精製部17は、再生部排出ガス4を冷却することで、再生部排出ガス4中の水蒸気を凝縮させ、これにより再生部排出ガス4から吸収液成分も除去する。その結果、水蒸気や吸収液成分が除去された再生部排出ガス4が、回収二酸化炭素ガス5としてガス精製部17から排出される。さらに、吸収液成分を含有する凝縮水が、精製部排水6としてガス精製部17から排出される。
【0022】
一方、再生部15は、二酸化炭素を放出した吸収液(リーン液)をリーン液流路18に排出する。この吸収液は、リーン液流路18上の熱交換器14を介して吸収部11に供給される。熱交換器14では、吸収部11から再生部15に流れるリッチ液が、再生部15から吸収部11に流れるリーン液の熱により加熱される。
【0023】
また、上述の放散抑制水は、符号7で示すように、補給水供給部21または放散抑制水貯槽22から放散抑制部12に供給される。補給水供給部21は、清浄な水である補給水を放散抑制水として放散抑制部12に供給する。一方、放散抑制水貯槽22は、符号8で示すように、放散抑制部12から排出された放散抑制水を貯めるための槽であり、放散抑制水貯槽22に貯まった水を放散抑制水として放散抑制部12に供給する。放散抑制部12から排出される放散抑制水は、放散抑制部12で回収した吸収液成分を含有している。補給水供給部21および放散抑制水貯槽22から放散抑制部12に供給された放散抑制水は、いずれも放散抑制水貯槽22に回収される。
【0024】
第1バルブ23は、放散抑制水貯槽22から放散抑制部12に向かう流路に設けられている。補給水供給部21のみから放散抑制水を供給する際には、第1バルブ23が閉鎖される。放散抑制水貯槽22のみから放散抑制水を供給する際や、補給水供給部21および放散抑制水貯槽22から放散抑制水を供給する際には、第1バルブ23が開放される。
【0025】
第2バルブ24は、放散抑制水貯槽22中の放散抑制水を排水として排出する流路に設けられている。第2バルブ24が開放されると、放散抑制水貯槽22中の放散抑制水が排水として排水ろ過部25に供給される。
【0026】
この排水は、排水ろ過部25および殺菌部26を通過した後、排水分離膜27aによる処理対象となる被処理水として排水分離部27の入口部27bに供給される。排水分離部27の第1出口部27cから排出される生産水は放散抑制水貯槽22などに送られ、排水分離部27の第2出口部27dから排出される濃縮水は加熱浄化部28に送られる。排水ろ過部25、殺菌部26、排水分離部27、および加熱浄化部28の詳細は後述する。
【0027】
次に、本実施形態の二酸化炭素回収システムの詳細について説明する。
【0028】
上述のように、吸収部11は、燃焼排ガス1中の二酸化炭素を吸収液(化学吸収液)に吸収させ、燃焼排ガス1から二酸化炭素を除去する。燃焼排ガス1の例は、化石燃料ガスや、ごみ焼却ガス、汚泥焼却ガスなどである。吸収液の例は、アルカノールアミン類、環状アミン類、ジアミン類など、二酸化炭素回収に適用可能なアミン吸収液である。吸収液の成分は、化学的安定性、二酸化炭素回収能、再生能、経済性に優れた成分から選定することができ、必要に応じて、複数成分を含む混合液(水溶液)を吸収液として用いることもできる。吸収部11での吸収液と燃焼排ガス1との接触処理方法については、既知の技術を用いることができる。
【0029】
吸収部排出ガス(脱二酸化炭素ガス)2は、放散抑制部12に供給され、吸収部排出ガス2に随伴する吸収液成分が放散抑制水により除去される。この吸収液成分を吸収した放散抑制水は、放散抑制水貯槽22に回収される。なお、回収される放散抑制水の性状や発生量に応じて、放散抑制水貯槽22を分割槽として構成してもよいし、補給水の供給量を調整する手段を二酸化炭素回収システムに設けてもよい。放散抑制水貯槽22内の放散抑制水は、第2バルブ24を介して排水として排出され、排水ろ過部25に導入される。
【0030】
排水ろ過部25は、排水中の固形物をろ過により除去し、固形物が除去された排水を殺菌部26に排出する。排水ろ過部25は、排水に含まれる固形物を除去可能な既知のろ過技術で構成することができるが、BOD(Biochemical Oxygen Demand)成分を含む排水中に発生する微生物由来の固形分類を除去できるよう構成することが望ましい。排水ろ過部25は例えば、MF(精密ろ過)膜とUF(限外ろ過)膜とで構成することや、異種膜の直列多段プロセスを行うよう構成することや、同一膜の並列処理を行うよう構成することなどが望ましい。また、排水ろ過部25は、排水ろ過部25の運転状態を確認する計測装置や制御装置、ろ過用の膜を洗浄するための薬液供給装置や逆洗浄機構などを備えていることが望ましい。
【0031】
殺菌部26は、排水ろ過部25からの排水を殺菌し、殺菌された排水を排水分離部27に供給する。殺菌部26は、排水分離部27での微生物類の繁殖を抑制するために設けられている。殺菌部26中の排水は排水ろ過部25から供給されるため、微生物由来の固形分類が殺菌部26の殺菌効果を低減することを抑制することができる。殺菌部26は、紫外線照射装置や低温殺菌法などの既知の技術で構成することができる。
【0032】
排水分離部27は、排水(被処理水)から吸収液に由来する不純物を分離する排液分離膜27aを有している。吸収液に由来する不純物の例は、アルカノールアミン類などの吸収液成分や、吸収液成分から生成された化学物質である。排水分離部27は、排水の加熱ではなく排水の膜処理により不純物を分離するため、吸収液成分の熱劣化、加熱酸化、分解、変質などを抑制することができる。
【0033】
殺菌部26からの排水は、被処理水として入口部27bから排水分離部27内に導入され、排水分離膜27aに供給される。被処理水が排水分離膜27aを通過する際、被処理水中の不純物の多くは、排水分離膜27aを通過できないか、排水分離膜27aにより吸着される。排水分離部27では、被処理水の一部が排水分離部27を通過して、不純物が被処理水よりも低減された生産水となり、第1出口部27cから生産水が排出される。被処理水の残りの一部は排水分離部27を通過せず、不純物が被処理水よりも濃縮された濃縮水となり、第2出口部27dから濃縮水が排出される。
【0034】
吸収液に由来する不純物に関し、生産水中の不純物濃度は、被処理水中の不純物濃度よりも低くなる。よって、生産水は、再び放散抑制水として使用するのに適していることから、第1出口部27cから放散抑制水貯槽22に送られる。一方、濃縮水中の不純物濃度は、被処理水中の不純物濃度よりも高くなる。よって、濃縮水は、第2出口部27dから加熱浄化部28に送られる。なお、生産水を第1出口部27cから放散抑制水貯槽22を介さずに放散抑制水7として直接的に放散抑制部12に供給するように構成してもよい。
【0035】
本実施形態の排水分離膜27aは、被処理水中に溶解した上記不純物を分離可能な膜であり、例えば、1μm未満の直径を有する貫通穴を備えるナノ膜や、逆浸透作用を有する逆浸透膜である。これにより、固形物を除去する排水ろ過部25では除去できない不純物も排水分離部27aで除去することが可能となる。
【0036】
排水分離膜27aとしては、被処理水中の分離対象成分に応じて、イオンや分子の分離能の異なる種々の膜を任意に用いることができる。排水分離部27は、複数の排水分離膜27aにより構成してもよく、例えば、複数の異種膜を直列多段に配置して構成してもよいし、複数の同種膜を並列多段に配置して構成してもよい。また、排水分離部27での高圧操作を伴う場合、排水分離部27用に動力回収機構とその制御装置を設けてもよい。また、排水分離膜27aの洗浄用の薬液導入機構や、排水分離膜27aの監視機構や、生産水と濃縮水の発生比率の調整機構を、二酸化炭素回収システムに設けてもよい。
【0037】
加熱浄化部28は、排水分離部27の第2出口部27dからの濃縮水を熱処理により浄化する。これにより、濃縮水中の上記不純物が、分解され無害化される。加熱浄化部28は例えば、湿式触媒酸化法や触媒燃焼法などの既知の技術により、濃縮水中の窒素成分や炭素成分を無害化する。加熱浄化部28は、熱処理の温度や仕様に応じて、熱処理の前処理を行う前処理装置や、排水分離部27からの濃縮水の不純物濃度を調整する濃度調整装置を備えていてもよい。
【0038】
以上のように、本実施形態の排水分離部27は、放散抑制水貯槽22からの排水に含まれる不純物を分離する際に、吸収液成分の熱劣化、加熱酸化、分解、変質などを抑制することができる。よって、本実施形態によれば、吸収液成分から揮発性有機成分が生成されることや、揮発性有機成分が環境中に放出されることを抑制しつつ、排水の再利用を実現することが可能となる。さらには、熱処理を行うための加熱エネルギーが不要となることから、二酸化炭素回収システムの消費エネルギーを低減することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態の排水分離部27は、排水分離用の薬液を使用せずに、排水から不純物を分離する。よって、本実施形態によれば、薬液の使用による吸収液の性能低下を抑制することが可能となる。また、本実施形態によれば、生産水中に薬液が混入することを抑制できることから、生産水から得られた放散抑制水のアミン捕集能を高めることが可能となる。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、吸収部排出ガス2から吸収液を回収するための放散抑制液を効率的に供給および使用することが可能となる。
【0041】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【0042】
図2の二酸化炭素回収システムは、
図1に示す構成要素に加えて、排液供給流路の一例である排水供給流路31を備えている。
【0043】
上述のように、ガス精製部17は、二酸化炭素ガス、水蒸気、および吸収液成分を含む再生部排出ガス4を冷却し、再生部排出ガス4中の水蒸気を凝縮させる。その結果、吸収液成分を含有する凝縮水が、精製部排水6としてガス精製部17から排出される。一方、再生部排出ガス4からは水蒸気と吸収液成分が除去され、回収二酸化炭素ガス5がガス精製部17から排出される。再生部排出ガス4から除去される吸収液成分は、所定の成分の一例である。
【0044】
吸収部11と再生部15とを比較した場合、再生部15では高温操作が行われるため、吸収液や水の気化や随伴が起こりやすい。そのため、ガス精製部17からは多量の精製部排水6が排出され、精製部排水6は高濃度の吸収液成分を含有している。
【0045】
よって、本実施形態の二酸化炭素回収システムは、放散抑制水貯槽22からの排水だけでなく、ガス精製部17からの精製部排水6も排水分離部27で処理するために、精製部排水6を排水供給流路31により排水ろ過部25に供給している。その結果、精製部排水6が、放散抑制水貯槽22からの排水と同様に、排水ろ過部25、殺菌部26、排水分離部27、および加熱浄化部28で処理される。
【0046】
これにより、二酸化炭素回収システムにおける水のリサイクル回収量を高めることができる。また、精製部排水6は、高濃度の二酸化炭素環境に曝露された水から得られることから、そのpHが低いという利点を有する。よって、排水分離部27の被処理水が精製部排水6を含むことで、被処理水中の有機アミン類のイオン化と水和が促進され、排水分離部27での分離性が向上する。さらに、本実施形態によれば、二酸化炭素回収システムから排出される排水全体の処理を合理化でき、排水処理施設の運用負荷を軽減できる。
【0047】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【0048】
図3の二酸化炭素回収システムは、
図1に示す構成要素に加えて、酸性ガス供給部32を備えている。
【0049】
酸性ガス供給部32は、第2バルブ24と排水ろ過部25との間に配置されており、放散抑制水貯槽22からの排水に酸性ガスを供給する。これにより、排水のpHを低減することができる。酸性ガス供給部32は、酸性ガスによりpHが低減された排水を排水ろ過部25に排出する。酸性ガスの例は、二酸化炭素ガスや燃焼排ガスである。
【0050】
本実施形態の酸性ガス供給部32は、排水と酸性ガスとの気液接触によるガス溶解原理により、排水のpHを低下させる。排水と酸性ガスとの気液接触は、既知の技術により実施することができる。また、排水分離部19に供給する被処理水の撹拌混合操作を行うことが望ましい場合には、酸性ガス供給部32内で排水が撹拌されるように排水に酸性ガスを供給してもよい。これにより、排水中の有機アミン類のイオン化と水和が促進され、排水分離部27での分離性が向上する。
【0051】
酸性ガスは、酸性であればどのようなガスでもよいが、二酸化炭素回収システム内に存在するガスであることが望ましい。このような酸性ガスの例は、火力発電所などの燃焼システムから本二酸化炭素回収システムの吸収部11に向かう燃焼排ガス配管(不図示)を流れる燃焼排ガス1である。この場合、燃焼排ガス1が吸収部11と酸性ガス供給部32とに供給される。また、酸性ガスの別の例は、本二酸化炭素回収システム内で発生した二酸化炭素ガスであり、例えば、再生部排出ガス4から排出された回収二酸化炭素ガス5である。これにより、酸性ガスを用意するコストを低減することが可能となる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、排水のpHを、薬液ではなく酸性ガスにより低減することができる。よって、本実施形態によれば、薬液の使用による吸収液の性能低下を抑制することが可能となる。また、本実施形態によれば、生産水中に薬液が混入することを抑制できることから、生産水から得られた放散抑制水のアミン捕集能を高めることが可能となる。
【0053】
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態の二酸化炭素回収システムの構成を示す模式図である。
【0054】
図4の二酸化炭素回収システムは、
図1に示す構成要素に加えて、被処理水計測器33と、生産水計測器34と、濃縮水計測器35と、制御部36と、第3バルブ37とを備えている。被処理水計測器33、生産水計測器34、および濃縮水計測器35は、1台以上の計測器の例である。
【0055】
被処理水計測器33は、排水分離部27の入口部27b付近に配置されており、入口部27aに供給される被処理水の物理量を計測する。生産水計測器34は、排水分離部27の第1出口部27c付近に配置されており、第1出口部27cから排出された生産水の物理量を計測する。濃縮水計測器35は、排水分離部27の第2出口部27d付近に配置されており、第2出口部27dから排出された濃縮水の物理量を計測する。これらの物理量の計測結果は、制御部36に出力される。
【0056】
制御部36は、被処理水計測器33により計測された被処理水の物理量と、生産水計測器34により計測された生産水の物理量と、濃縮水計測器35により計測された濃縮水の物理量の少なくともいずれかに基づいて、排水の処理を制御をする。例えば、制御部36は、補給水供給部21の動作、放散抑制水貯槽22の動作、第1、第2、および第3バルブ23、24、37の開閉や開度などを制御する。第3バルブ37は、排水分離部27から加熱浄化部28に向かう濃縮水流路に設けられている。制御部36の例は、コンピュータ、プロセッサ、集積回路、制御盤などである。
【0057】
本実施形態の被処理水計測器33、生産水計測器34、濃縮水計測器35はそれぞれ、被処理水、生産水、濃縮水の水質や水量を示す物理量を計測する。このような物理量の例は、水の温度、圧力、pH、導電率、流量や、水に含まれる有機物に関する指標(例えば濃度)である。
【0058】
制御部36は、これらの物理量に基づいて排水分離部35の入出力状況を確認し、生産水と濃縮水との排出比率を調整したり、殺菌部26から排水分離部27に向かう被処理水の運転圧や処理水量を調整したりする。制御部36は、排水分離部35での設計計画処理量と、被処理水の水質とに基づいて、排水分離部27の運用を自動的に制御する。また、制御部36は、二酸化炭素回収システム内で発生した排水量や、二酸化炭素回収システム内で必要な給水量のデータを取得し、これらのデータに基づいて排水分離部27の運用を制御してもよい。
【0059】
制御部36の動作例としては、次のようなものが考えられる。
【0060】
第1の例では、制御部36は、被処理水の圧力に基づいて、第3バルブ37の開度を制御する。例えば、被処理水の圧力が増加した場合には第3バルブ37の開度を減少させ、被処理水の圧力が減少した場合には第3バルブ37の開度を増加させる。これにより、第3バルブ37における濃縮水の流量を一定に維持することができる。
【0061】
第2の例では、制御部36は、生産水の流量に基づいて、補給水供給部21の動作を制御する。例えば、生産水の流量が増加した場合には、補給水を多量に供給する必要がなくなるため、補給水の流量を減少させる。
【0062】
第3の例では、制御部36は、生産水の流量と、濃縮水の流量とに基づいて、第3バルブ37の開度を制御する。例えば、生産水の流量と濃縮水の流量との比を所定の値に調整するように、第3バルブ37の開度を制御する。これにより、生産水の排出量と濃縮水の排出量とを好適なバランスに制御することが可能となる。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、被処理水、生産水、および濃縮水の少なくともいずれかの物理量を計測することにより、排水分離部27の状況を把握することが可能となり、これにより二酸化炭素回収システムにおける排水の処理を適切に制御することが可能となる。
【0064】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムおよび方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムおよび方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0065】
1:燃焼排ガス、2:吸収部排出ガス、3:処理済みガス、4:再生部排出ガス、
5:回収二酸化炭素ガス、6:精製部排水、7:放散抑制水、8:放散抑制水、
11:吸収部、12:放散抑制部、13:リッチ液流路、14:熱交換器、
15:再生部、16:再生部加熱器、17:ガス精製部、18:リーン液流路、
21:補給水供給部、22:放散抑制水貯槽、23:第1バルブ、24:第2バルブ、
25:排水ろ過部、26:殺菌部、27:排水分離部、27a:排水分離膜、
27b:入口部、27c:第1出口部、27d:第2出口部、28:加熱浄化部、
31:排水供給流路、32:酸性ガス供給部、33:被処理水計測器、
34:生産水計測器、35:濃縮水計測器、36:制御部、37:第3バルブ