(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に粉粒体を貯蔵可能であり且つ該粉粒体の排出口を有するホッパーと、該ホッパーから排出された前記粉粒体を散布位置まで搬送して散布する搬送手段とを備えた粉粒体散布装置であって、
前記搬送手段は、前記ホッパーから排出された前記粉粒体を受け取る受取手段と、該受取手段を振動させる振動発生手段とを有し、
前記受取手段は、前記粉粒体を受け取るトラフを備えており、
前記トラフは、一対の側壁を有し、該一対の側壁間に、前記粉粒体が搬送される搬送流路が形成されており、
前記トラフにおける前記一対の側壁間に前記搬送流路を複数の分割流路に仕切る1以上のガイドを備え、前記分割流路として、入口幅が出口幅よりも小さい流路と、入口幅が出口幅よりも大きい流路とが形成されている、粉粒体散布装置。
前記ガイドは、前記トラフにおける、前記粉粒体の搬送方向に直交する直交方向の長さを二等分するトラフ中心線と平行な線に対して傾斜している、請求項1に記載の粉粒体散布装置。
前記ガイドは、前記トラフの厚み方向の高さが、前記側壁の同方向の高さよりも低く、前記粉粒体の最大粒子径の10倍以上である、請求項1又は2に記載の粉粒体散布装置。
前記一対の側壁間の距離は、前記ホッパーの前記排出口の、前記粉粒体の搬送方向に直交する直交方向における長さに比して大きく、その差が2mm以上5mm以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載の粉粒体散布装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の粉粒体散布装置の一実施形態である粉粒体散布装置1が示されている。粉粒体散布装置1は、内部に粉粒体Pを貯蔵可能であり且つ該粉粒体の排出口を有するホッパー2と、ホッパー2から排出された粉粒体Pを散布位置まで搬送して散布する搬送手段3とを備えている。搬送手段3は、搬送ロール、あるいはベルトコンベア等の公知の搬送装置により連続搬送される散布対象物B上に粉粒体Pを散布することができる。この粉粒体散布装置1は、粉粒体Pを含む物品を製造する、粉粒体含有物品10の製造に好適に用いられるものである。尚、散布対象物Bの搬送装置は、粉粒体散布装置1を構成するものではない。
【0012】
図1に示すように、ホッパー2は、ベースプレート4上に立設された支持部材5によって、同じくベースプレート4上に固定された搬送手段3(受取手段30)よりも上方位置に固定されている。
【0013】
ホッパー2は、
図1に示すように、上底が下底より長い台形形状をなしている貯蔵部20と、該貯蔵部20の下端に連接され、該側面視において長方形形状をなす直方体形状の排出部21とを含んで構成されている。貯蔵部20は内部に粉粒体Pを貯蔵可能な空間を有し、その内部空間に粉粒体Pを一時的に貯蔵可能になされている。このように、ホッパー2は、その内部に粉粒体Pを少なくとも一時的に貯蔵できればよい。粉粒体Pは、貯蔵部20の上部開口から粉体供給装置90によって貯蔵部20の内部空間に供給される。排出部21は内部に粉粒体Pの移動路を有し、且つ貯蔵部20側とは反対側の端部の排出部21の下端には、粉粒体Pの排出口23が形成されており、貯蔵部20の内部空間と排出口23とが移動路を介して連通している。ホッパー2は、斯かる構成により、内部に一時的に貯蔵した粉粒体Pを、移動路を介して排出口23より排出可能になされている。
【0014】
本実施形態のホッパー2には計量装置37が取り付けられている。計量装置37としては、ホッパー2及びホッパー2内に貯蔵されている粉粒体Pの全質量を連続して計量可能なものが用いられる。連続して計量可能とは、計量データのサンプリングタイムが1秒以下であることをいう。計量装置37によって計量されたホッパー2及びホッパー2内に貯蔵されている粉粒体Pの全質量の計量データは、データの取得のたびに、制御部(不図示)に送信されるようになっている。計量装置37の具体例としては電気式計量器が挙げられ、具体的には、ロードセル式計量器や電磁式計量器、音叉式計量器等を用いることができる。
【0015】
制御部は、後述する受取手段30の振動数及び/又は振幅を制御する機能と、計量装置37から送信された計量データを受信する機能とを有しており、該計量データに基づいて、受取手段30の振動数及び/又は振幅を制御することができる。更に制御部は、ホッパー2の貯蔵部20上に設置されている粉体供給装置90に接続されており、貯蔵部20内への粉粒体Pの供給も制御する機能を有する。制御部としては、例えば制御・処理用ソフトウエアがインストールされたコンピュータを用いることができる。
【0016】
搬送手段3は、
図1に示すように、ホッパー2から排出された粉粒体Pを受け取る受取手段30と、受取手段30を振動させる振動発生手段35とを有している。搬送手段3は、振動発生手段35により受取手段30を振動させることによって、受取手段30上の粉粒体Pを所定の搬送方向に搬送可能になされている。受取手段30は、粉粒体Pを受け取るトラフ31を有している。トラフ31は、
図2に示すように、板状の部材であり、トラフ31の上面31aにおいて、排出口23から排出される粉粒体Pを受け取り、所定の搬送方向Xに搬送する。
受取手段30は、
図1に示すように、ホッパー2の下方に配置されている。受取手段30において、粉粒体Pの受け取り及び搬送に利用され粉粒体Pと接触するのは、ホッパー2の排出口23の下方に位置する部分及びその近傍であり、それ以外の部分は基本的に粉粒体Pと接触しない粉粒体非接触部である。例えば、本実施形態の受取手段30は、トラフ31の上面31aにおいて、ホッパー2の排出口23と対向する排出口対向部25よりも搬送方向Xの後方側に平板部32を有しているが、該平板部32は、粉粒体Pと接触しない粉粒体非接触部である。また、本実施形態における粉粒体Pと接触する粉粒体接触部は、トラフ31の上面31aにおける平板部32と一対の側壁34,34とに囲まれた領域である。
本実施形態において振動発生手段35は、受取手段30の粉粒体非接触部における下面に固定されている。
【0017】
搬送手段3は、振動発生手段35を作動させて受取手段30を振動させることによって、受取手段30上の粉粒体Pを所定の搬送方向Xに搬送可能になされている。所定の搬送方向Xは、受取手段30において、粉粒体Pが排出口23からトラフ31の上面31aに排出される排出位置から散布位置に向かう方向であり、
図2(a)中の矢印方向Xで示される方向である。
粉粒体散布装置1は、振動発生手段35に印加する電圧及び周波数を制御する制御部(不図示)を備えており、該制御部によって、受取手段30の振動数及び振幅を制御し、延いては受取手段30上の粉粒体Pの搬送状態を制御する。即ち、前記制御部による制御下、振動発生手段35の非作動時には、受取手段30は振動していないため、受取手段30上の粉粒体Pの搬送は停止又は抑制されているが、斯かる状態から振動発生手段35を作動させると、受取手段30が振動を開始することによって、受取手段30上の粉粒体Pの停止又は抑制が解除され、粉粒体Pは、図中符号Xで示す方向に搬送され、最終的には
図2(a)に示すように、受取手段30の搬送方向Xの先端部30aから落下して、受取手段30の下方の散布対象物上に散布される。散布対象物は、連続搬送されていても良い。
【0018】
受取手段30は、前述のように、粉粒体Pを受け取るトラフ31を備えている。トラフ31は、
図2(a)に示すように、一対の側壁34,34を有している。本実施形態においてトラフ31には、搬送方向Xに沿うその両側部それぞれに、上面31aから上方であるホッパー2側に突出する一対の側壁34,34が設けられている。また、トラフ31には、一対の側壁34,34間に、粉粒体Pが搬送される搬送流路7が形成されている。搬送流路7は、トラフ31の上面31aにおいて、ホッパー2の排出口23と対向する排出口対向部25と、散布位置との間の領域であり、トラフ31の上面31aにおいて、粉粒体Pが搬送方向Xに搬送される領域である。
【0019】
トラフ31は、一対の側壁34,34間に、搬送流路7を複数の分割流路70に仕切る1以上のガイド33を備えている。本実施形態のトラフ31は、
図2(a)に示すように、搬送流路7に2個のガイド33を備えており、該ガイド33によって3つの分割流路70が形成されている。分割流路70は、排出口23から排出された粉粒体Pが流入する入口71と、該分割流路70を通じて該粉粒体Pが流出する出口72とを有する。
【0020】
トラフ31の上面31aには、
図2(a)に示すように、分割流路70として、入口71の幅が出口72の幅よりも小さい流路74と、入口71幅が出口72の幅よりも大きい流路73とが形成されている。以下、入口71の幅が出口72の幅よりも小さい流路74を幅拡大化流路74ともいい、入口71幅が出口72の幅よりも大きい流路73を幅縮小化流路73ともいう。本実施形態のトラフ31の上面31aには、
図2(a)に示すように、幅拡大化流路74と、該幅拡大化流路74を直交方向Yに挟む2つの幅縮小化流路73とが形成されている。
【0021】
幅拡大化流路74は、入口71の幅が出口72の幅よりも小さいことにより、該出口72において粉粒体Pの低密度に流出することができる。具体的には、
図3に示すように、幅拡大化流路74は、搬送方向Xに向かうにつれ、直交方向Yの幅が拡大化しているため、該流路74に流入した粉粒体Pの密度を搬送方向Xに漸次小さくすることができる。
また、幅縮小化流路73は、入口71の幅が出口72の幅よりも大きいことにより、該出口72において粉粒体Pの高密度に流出することができる。具体的には、
図3に示すように、幅縮小化流路73は、搬送方向Xに向かうにつれ、直交方向Yの幅が縮小化しているため、該流路73に流入した粉粒体Pの密度を搬送方向Xに漸次大きくすることができる。
【0022】
このように、本発明に係る粉粒体散布装置1は、搬送流路7において搬送される粉粒体Pの密度を幅拡大化流路74及び幅縮小化流路73の各流路で異ならせることができるため、直交方向Yにおいて、粉粒体Pの散布密度を異ならせることができる。例えば、
図4に示す粉粒体含有物品10は、本発明に係る粉粒体散布装置1により散布対象物Bに粉粒体Pを散布して製造されたものであり、散布対象物Bの長手方向と、粉粒体散布装置1の直交方向Yとが一致するように、搬送方向Xに散布対象物Bを連続搬送させながら、粉粒体Pを散布したものである。
図4に示す粉粒体含有物品10は、長手方向において粉粒体Pの散布分布がそれぞれ異なる領域10aと領域10bとを有している。
図4はこれら領域10a,10b間の境界部分を示す拡大図である。粉粒体Pの散布密度が高い高密度領域10aには、幅縮小化流路73から流出した粉粒体Pが散布されており、粉粒体Pの散布密度が低い低密度領域10bには、幅拡大化流路74から流出した粉粒体Pが散布されている。このように、本発明に係る粉粒体散布装置は、異なる散布密度、即ち粉粒体Pを偏在した状態で散布することができる。以下、粉粒体Pを偏在した状態で散布することを偏在散布ともいう。また、本発明に係る粉粒体散布装置は、その1台のみで偏在散布を行うことができるため、粉粒体散布装置を2台以上用いて、製造ライン全体の管理が煩雑化する問題も生じ得ない。さらに粉粒体散布装置1は、粉粒体Pが一対の側壁34,34により形成された搬送流路7を通じて散布されるため、搬送方向X以外の想定外の方向から粉粒体Pが散布される不都合が生じ難くなり、粉粒体Pの偏在散布を精度良く行うことができる。
【0023】
本実施形態のトラフ31は、
図5に示すように、直交方向Yにおける両側縁が、直交方向におけるトラフ31長さL10を二等分するトラフ中心線CLと平行である。本実施形態におけるガイド33は、トラフ31の直交方向Yにおける両側縁及びトラフ中心線CLと平行ではない。幅拡大化流路74及び幅縮小化流路73をより容易に形成する観点から、ガイド33は、トラフ中心線CLと平行な線に対して傾斜していることが好ましい。以下、トラフ中心線CLと平行な線を単に平行線ともいう。ガイド33が、トラフ中心線CLと平行な線に対して傾斜するとは、ガイド33の少なくとも一部が、平面視においてトラフ中心線CLと平行な線に対して傾斜していればよい。
また、ガイド33は、トラフ中心線CLと平行な平行線に対する傾斜角度が、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上であり、また好ましくは45°以下、より好ましくは30°以下である。
【0024】
ガイド33は、前記平行線に対して傾斜可能に、ボルト等の公知の固定部材によって、トラフ31の上面31aに固定することができる。例えば、ガイド33をトラフ31の上面31aにボルトで固定した場合、該ボルトを緩めることで、ガイド33の前記平行線に対する傾斜角度を調整することができる。
【0025】
粉粒体横漏れや飛散防止の観点から、ガイド33は、トラフ31の厚み方向Zの高さd3が、側壁34の同方向の高さd2よりも低いことが好ましい。また、ガイド33の厚み方向Zの高さd3は、側壁34の同方向の高さd2に対して、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、また好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である〔
図2(b)参照〕。
同様の観点から、ガイド33の厚み方向Zの高さd3は、粉粒体Pの最大粒子径rの好ましくは10倍以上、より好ましくは15倍以上であり、また好ましくは25倍以下、より好ましくは20倍以下である。
【0026】
粉粒体Pの最大粒子径rは公知の方法により測定することができ、具体的には例えば、乾式篩法(JIS Z8815−1994)、動的光散乱法、レーザー回折法、遠心沈降法、重力沈降法、画像イメージング法、FFF(フィールド・フロー・フラクショネーション)法、静電気検知体法、コールター法等が挙げられる。これらの中でも、レーザー回折法又はコールター法で測定した最大粒子径rを採用することが、再現性と精度の点から好ましい。特に、対象とする粉粒体の形状が不定形である場合、あるいは粉粒体の粒子径が5mm程度以下である場合は、レーザー回折法を用いて粉粒体の最大粒子径rを測定することが好ましい。
【0027】
本実施形態のホッパー2は、直交方向Yにおける排出口23が、一対の側壁34,34間に納まる大きさである。粉粒体横漏れや飛散防止の観点から、一対の側壁34,34間の距離L9は、ホッパー2の排出口23の直交方向Yにおける長さL15に比して大きいことが好ましい。一対の側壁34,34間の距離L9は、直交方向Yにおけるこれら側壁34,34間の最短距離である。直交方向Yにおける排出口23の長さL15は、一対の側壁34,34間の距離L9に対して、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上であり、また好ましくは98%以下、より好ましくは95%以下である〔
図2(b)参照〕。一対の側壁34,34間の距離L9は、搬送流路7の直交方向Yの長さである。
また、一対の側壁34,34間の距離L9と、直交方向Yにおける排出口23の長さL15との差(L9−L15)は、好ましくは2mm以上、より好ましくは2.5mm以上であり、また好ましくは5mm下、より好ましくは3.5mm以下である〔
図2(b)参照〕。
【0028】
また、前述の偏在散布をより確実に行う観点から、トラフ31、ガイド33、側壁34、又は分割流路70等の寸法は以下の範囲であることが好ましい。
トラフ31は、搬送方向Xの長さL7は、直交方向Yの長さL10に対して、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、また好ましくは5倍以下、より好ましくは4倍以下である(
図5参照)。
【0029】
一対の側壁34,34により形成される搬送流路7の搬送方向Xの長さL6は、トラフ31の同方向Xの長さL7に対して、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、また好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下である(
図5参照)。本実施形態において、搬送流路7の搬送方向Xの長さL6と、一対の側壁34,34の搬送方向Xの長さとは一致している。
搬送流路7の直交方向Yの長さL9は、トラフ31の同方向Yの長さL10に対して、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上であり、また好ましくは98%以下、より好ましくは90%以下である(
図5参照)。
【0030】
分割流路70の搬送方向Xの長さL1は、搬送流路7の同方向Xの長さL6に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上であり、また好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である(
図5参照)。分割流路70の搬送方向Xの長さL1は、搬送方向Xにおける該流路70の入口71から出口72までの長さである。本実施形態の幅縮小化流路73のように、分割流路70がガイド33及び一方の側壁34により形成されている場合、分割流路70の搬送方向Xの長さL1は、流路70におけるガイド33の搬送方向Xの後端から前端までの同方向Xにおける最短距離である。また、本実施形態の幅拡大化流路74のように、分割流路70が2個のガイド33により形成されている場合、分割流路70の搬送方向Xの長さL1は、流路70において搬送方向Xの最も前方にあるガイド33の後端と、同方向Xの最も後方にあるガイド33の前端までの同方向Xにおける最短距離である。
【0031】
幅縮小化流路73の入口71の幅L2は、該流路74の出口72の幅L3に対して、好ましくは105%以上、より好ましくは110%以上であり、また好ましくは400%以下、より好ましくは200%以下である(
図5参照)。
幅拡大化流路74の入口71の幅L4は、該流路74の出口72の幅L5に対して、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上であり、また好ましくは95%以下、より好ましくは70%以下である(
図5参照)。
幅拡大化流路74又は幅縮小化流路73がガイド33及び一方の側壁34により形成されている場合、該流路73,74の入口71の幅は、該流路73,74におけるガイド33の搬送方向Xの後端と該側壁34との直交方向Yにおける最短距離であり、該流路73,74の出口72の幅は、該流路74におけるガイド33の搬送方向Xの前端と該側壁34との直交方向Yにおける最短距離である。幅拡大化流路74又は幅縮小化流路73が2個のガイド33により形成されている場合、該流路73,74の入口71の幅L4は、該流路73,74において搬送方向Xの最も前方にあるガイド33の後端と、他方のガイド33との直交方向Yにおける最短距離であり、該流路73,74の出口72の幅L5は、該流路74において搬送方向Xの最も後方にあるガイド33の前端と、他方のガイド33との直交方向Yにおける最短距離である。
【0032】
トラフ31は、その厚み方向Zの高さd1が、側壁34の同方向の高さd2に対して、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、また好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である〔
図2(b)参照〕。
【0033】
本実施形態の受取手段30は、トラフ31の上面31aに、平面視において一方向に長い形状の2個のガイド33が、搬送方向Xの前方側に開いたハの字状に配置されている。ガイド33は、幅拡大化流路74及び幅縮小化流路73が形成されるように配置すれば、その個数や形状、配置位置等は特に制限されない。例えば、本発明に係るガイド33は、
図6(a)〜(d)に示すように配置することができる。なお、
図6(a)〜(d)に示す受取手段30は、平板部32を有していない。
図6(a)に示す受取手段30は、平面視において一方向に長い形状の1個のガイド33aが、直交方向Yにおけるトラフ31の中央部に配置されており、該ガイド33aの搬送方向Xの前端の位置が、トラフ31の搬送方向Xの前端の位置と一致している。このトラフ31の上面31aには、ガイド33aによって、幅拡大化流路74及び幅縮小化流路73が1つずつ形成されている。以下、一方向に長い形状の1個のガイド33を、長ガイド33aともいう。
トラフ31に設けられるガイド33は、粉粒体Pの所望の散布分布に応じた個数にすることができ、
図6(a)に示すように1個以上であればよく、複数本であってもよい。
【0034】
図6(b)に示す受取手段30は、1個の長ガイド33aと、平面視において三角形の形状の1個のガイド33bとが、直交方向Yに間隔を開けて配置されている。以下、平面視において三角形の形状のガイド33bを、三角ガイド33bともいう。三角ガイド33bは、その底辺の位置が、トラフ31の搬送方向Xの前端の位置と一致しており、該三角ガイド33bの両端部を基点とした両側の斜辺により、2つの幅縮小化流路73が形成されている。また、長ガイド33aは、
図6(b)に示すように、搬送方向Xの前方に向かうにつれ、直交方向Yにおいて三角ガイド33bに寄るように傾斜して配されており、直交方向Yにおける該長ガイド33aと一方の側壁34との間に、幅拡大化流路74を形成している。
【0035】
図6(c)に示す受取手段30は、2個の長ガイド33aが、搬送方向Xの後方側に開いたハの字状に配置されている。これら2個の長ガイド33aの間には、幅縮小化流路73が形成されており、直交方向Yにおける2個の長ガイド33aそれぞれの外方側には、幅拡大化流路74が形成されている。また、2個の長ガイド33aは、これらの各前端が、トラフ31の前端、即ち受取手段30の搬送方向Xの先端部30aから搬送方向Xの後方に離間して配置されている。このガイド33と受取手段30の搬送方向Xの先端部30aとの間の領域を、合流部Cともいう。合流部Cでは、各分割流路70から流出した粉粒体Pが合流させることができ、粉粒体Pの散布密度の分布を微調整することができる。
【0036】
図6(d)に示す受取手段30は、
図6(c)と同様に、2個の長ガイド33aが、搬送方向Xの後方側に開いたハの字状に配置されているが、これらガイド33aの搬送方向Xの前端部分が、受取手段30の搬送方向Xの先端部30aから搬送方向Xに突出している。この前記先端部30aから突出した、ガイド33aの前端部分を前端突出部Jともいう。前端突出部Jを有することにより、粉粒体飛散を防止することができる。
【0037】
本実施形態のトラフ31は、搬送流路7に対して、搬送方向Xの後方に、トラフ31の上面31aに載置された扁平な板状の平板部32を有しているが、該平板部32は、搬送流路7に含まれない。この平板部32は、
図2(a)に示すように、トラフ31の上面31aにおいて、鉛直方向の上方に突出するように形成されており、直交方向Yの長さが、トラフ31の同方向の長さと一致している。即ち、平板部32は、直交方向Yにおけるトラフ31の一方の側縁から他方の側縁に亘っている。本実施形態における受取手段30は、
図3に示すように、トラフ31の直交方向Yの両側縁に亘る平板部32を有している。斯かる構成により、トラフ31の直交方向Yの全域に、振動をより均一に伝達させることができる。
【0038】
トラフ31、側壁34、ガイド33及び平板部32は、それぞれ異なる材質であってもよいが、振動伝達性をより向上させる観点から、これら部材は同一材質であることが好ましい。トラフ31、側壁34、ガイド33及び平板部32の材質は特に制限されず、ステンレス、タングステン、チタン等の金属や、セラミックス、プラスチック等を用いることができる。
【0039】
側壁34,34の鉛直方向における断面形状は特に制限されず、任意の形状とすることができる。例えば側壁34,34の鉛直方向における断面形状は、
図7(a)に示すように、鉛直方向に沿った長辺を有する四角形であってもよく、
図7(b)に示すように、直交方向における内方の長辺の下端にR加工が施されている四角形であってもよく、
図7(c)に示すように、直交方向Yの幅が同方向Yの内方に向って拡大した台形であってもよい。即ち、側壁34の直交方向Yの内方側の側面34aが、鉛直方向における断面視において、鉛直方向と平行な直線状をなしていてもよく〔
図7(a)参照〕、曲線状をなしていてもよく〔
図7(b)参照〕、鉛直方向に対して傾斜した斜線状をなしていてもよい〔
図7(c)参照〕。なお、
図7においては、トラフ31に設けられるガイド33を省略して図示している。
【0040】
一対の側壁34,34は、これと別体のトラフ31に接合されることで形成されても良いが、振動を効率的に伝達させるという観点から、トラフ31と一体に形成されていることが好ましい。「一体に形成」とは、例えば、ブロック状の金属体から、トラフ31及び一対の側壁34,34となる部分以外を切削して、トラフ31の上面31aから突出した一対の側壁34,34が生じるように形成することや、側壁部分を有する型に溶融した金属を流し入れて型成形することが挙げられる。
【0041】
振動発生手段35としては、受取手段30上、即ちトラフ31上の粉粒体Pを所望の一方向に搬送させ得る振動成分を発生可能なものであれば良く、例えば、圧電セラミック等の圧電素子、振動フィーダー等の公知の振動発生手段が挙げられる。中でも振動フィーダーは、振動発生手段35として好ましく用いられる。また、振動発生手段35の振動数は特に制限されないが、粉粒体の搬送性並びに散布の均一性及び定量性等の観点から、好ましくは50Hz以上、さらに好ましくは100Hz以上、そして、好ましくは500Hz以下、さらに好ましくは300Hz以下、より具体的には、好ましくは50〜500Hz、さらに好ましくは100〜300Hzである。
【0042】
本実施形態の粉粒体散布装置1において、ホッパー2とトラフ31とは、該ホッパーの排出口23とトラフ31との間に隙間Gが開くように配設されている〔
図2(b)参照〕。粉粒体Pの詰まりを抑制し、ホッパー2の排出口23から円滑に粉粒体Pを排出する観点から、隙間Gは、粉粒体Pの最大粒子径rの1倍以上であることが好ましい(r≦G)。隙間Gは、粉粒体Pの最大粒子径rを基準として、好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上、そして、好ましくは10倍以下、さらに好ましくは5倍以下、より具体的には、好ましくは1.5倍以上10倍以下、さらに好ましくは2倍以上5倍以下である。隙間Gが粉粒体Pの最大粒子径rの10倍以下であると、粉粒体Pの排出速度を一定に保ち易い。特に、搬送手段3に振動発生手段35を備えている場合、振動発生手段35の振幅又は振動数により粉粒体Pの排出量を制御できるが、隙間Gが最大粒子径rの10倍以下であると、ホッパー2の排出口23から排出される粉粒体Pの排出量を制御し易いので好ましい。粉粒体Pの最大粒子径rは、前述の方法により測定することができる。
【0043】
粉粒体Pとしては、吸水性ポリマー粒子、砂糖、活性炭、小麦粉、PEペレット、PPペレット、PETチップ、PCチップ、PEグラニュール、PBAビーズ、等の有機物の粉粒体や、金属粉、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ガラス、石灰等の無機物の粉粒体が挙げられる。粉粒体Pの形状は特に制限されず、例えば、球状、碁石状、楕円形、楕円柱、針状、キュービック状等が挙げられる。粉粒体散布装置1によれば、粉粒体Pが真球状の場合は勿論のこと、真球状以外の形状であっても、散布対象物Bの幅方向に均一に定量性良く散布することができる。
【0044】
本実施形態のホッパー2は、
図8に示すように、貯蔵部20の内部空間を画成する内側壁20iの一部が、水平方向及び垂直方向の両方向に交差する方向に延びる傾斜内側壁20isである。ここで、本実施形態において垂直方向は、鉛直方向と一致する。また、内側壁20iの傾斜内側壁20is以外の部分は全て水平方向と直交する垂直方向に延びる垂直壁である。より具体的には
図8に示すように、粉粒体Pを貯蔵する貯蔵部20の内部空間は、4枚の内側壁20i,20isで画成されており、各内側壁20i,20isは、それぞれ、粉粒体Pの移動路22を画成する内側壁21iと繋がっているところ、その4枚の内側壁20i,20isのうち搬送方向Xの最下流側又は最上流側に位置する1枚の内側壁20isを除く、残り3枚の内側壁20iの全てが、垂直方向に延びる垂直壁である。ホッパー2は、全ての内側壁20iが垂直壁であっても良いが、傾斜内側壁20isを有することにより、貯蔵部20から排出部21に粉粒体Pの集合体が流れ込む際に、その集合体の流動方向と直交する方向の中央部分が周囲部分よりも流動速度が速くなることが抑制されるため、粉粒体Pの均一な散布により有利となる。
【0045】
また、排出部21では、
図8に示すように、粉粒体Pの移動路22を画成する内側壁21iの全てが、水平方向と直交する垂直方向に延びる垂直壁となっている。換言すると、排出部21の内部空間である移動路22は、該排出部21の貯蔵部20との接続部側端部から排出口23に向けて、搬送方向X及び搬送方向Xと直交する直交方向Yの何れに対しても同じ長さを有する直方体形状となっている。従って、本実施形態のホッパー2では、
図8に示すように、搬送方向Xに関しては、貯蔵部20の上底の長さが排出口23の長さよりも長く、直交方向Yに関しては、貯蔵部20の上底の長さが排出口23の長さと同じになっている。ホッパー2はこの構造によって、粉粒体Pを排出口23から安定的に定量排出することが容易になっている。
【0046】
粉粒体Pと接触するホッパー2の内側壁20i,20is,21iの素材としては、粉粒体Pが付着しにくい素材であることが好ましい。例えば、粉粒体として、塩化ナトリウム等の潮解性を有するものや、吸水性ポリマーのように吸水による変性を来たすような材料を使用する場合には、ホッパー2の内側壁として、熱伝導性が比較的低い素材を用いることが好ましい。熱伝導率としては、粉粒体の散布が行われる作業時の温度下において、25W/m・K以下のものを使用すると好ましい。熱伝導性の低い材料をホッパー2の内側壁として使用することで、ホッパー2内の結露を防止しやすくなるからである。また、ホッパー2の内側壁の素材としては、該内側壁とは反対側に位置してホッパー2の外面を構成する外側壁よりも、熱伝導性の低い素材などを選択することも可能である。そのような相対的に熱伝導性の低い内側壁をホッパー2に採用した場合には、特に、粉粒体として吸水性ポリマーを用いる場合では、吸水性ポリマーが吸水によって膨張したり、粘着性を発現してお互いにくっついてしまうという不都合も生じ難くなるので、後述する本発明の効果を一層確実に奏する観点から好ましい。また、ホッパー2の内側壁20iの素材としては、粉粒体に起因する腐食が発生しにくいものであることが好ましく、具体的には例えば、ステンレス鋼、ガラス、ジルコニア、窒化ケイ素等のセラミック材料等が挙げられる。さらに例えば、樹脂粉体のような非導電性材料で、粉粒体Pどうしの間や粉粒体Pと内側壁20i,20is,21iとの接触により静電気が発生しうる材料を粉粒体Pとして使用する場合には、ホッパー2の内側壁20i,20is,21iとして、導電性を有する素材を用いることが望ましい。導電性を有する材料をホッパーの内側壁として使用することで、静電気発生を防止できるからである。そのような材料としては、たとえば、ステンレス鋼、アルミニウム、銅のような金属材料、導電性セラミック、導電性樹脂のような導電性を付与した材料等が挙げられる。
【0047】
また、ホッパー2の内側壁20i,20is,21iとしては、粉粒体Pが円滑に排出口23へと流れ出るような表面性状を有することが好ましい。従って、ホッパー2の内側壁は、表面が滑らかであって、かつ、動摩擦係数が低いことが好ましい。特に、内側壁のうち、水平方向及び垂直方向の両方向に交差する方向に延びる傾斜内側壁20isが、そのような性状であることが好ましい。具体的には、ホッパー2の内側壁20i,20is,21iの表面粗さ(Ra)は、JIS B 0601−2001に従って測定された値で、10μm以下、特に1μm以下であることが好ましい。
【0048】
粉粒体Pが散布される散布対象物は、シート状の基材であることが好ましいが、シート状の基材に限られない。シート状の基材としては、各種製法による不織布、樹脂フィルム、織物、編み物、紙等、及びこれらのうちの同種又は異種のものを複数枚積層した積層体等が挙げられる。
【0049】
また、散布対象物としては、シート状の基材の上に機能性を有する材料や組成物を積層したものが挙げられる。例えば、フィルムや不織布等のシート状材料の上に、被酸化性金属及び水を含む発熱組成物を塗布するなどして配置したものを、基材とすることができる。そのような形態の例としては、「本発明の粉粒体散布装置を用いて、粉粒体を、連続搬送されるシート状の基材上に散布する、粉粒体の散布方法」の一例として、被酸化性金属の粒子、及び水を含む発熱シートを製造する際に、連続搬送される繊維シートからなるシート状の基材上に、高吸水性ポリマーの粒子、金属粒子、固形の電解質等の1又は2以上を散布して、発熱組成物を形成する方法が挙げられる。この基材の発熱組成物の層に、塩化ナトリウム等の電解質や吸水性ポリマーといった粉粒体を、本発明の粉粒体散布装置を用いて散布することにより、これら粉粒体が均一な状態で配置された発熱体を得ることができる。このような発熱体であれば、発熱ムラの少ない、優れた発熱特性を得られることが期待できる。尚、本発明の粉粒体散布装置及び粉粒体の散布方法は、発熱体の製造方法において好ましいものであるが、他の機能性シートの製造方法にも適用可能である。例えば、連続搬送される繊維シートからなるシート状の基材上に、高吸水性ポリマーの粒子を散布し、吸水性シートを製造することができる。
【0050】
また、基材が水分を含む組成物等を含んでいることに起因して、該基材上に散布された粉粒体がその散布直後から該基材上を移動困難である場合には、排出口23から均一な粉粒体散布が行われることが重要となる。その観点から、本発明の粉粒体散布装置は非常に有用なものである。
【0051】
本発明は、前記実施形態に制限されず適宜変更可能である。
例えば、ホッパー2の排出部21における排出口23の平面視形状は、
図8に示す如き長方形形状に限定されず、円形、楕円形、多角形形状等、任意に設定可能であり、例えば、長楕円形状、一方向に長い五角形以上の多角形形状とすることができる。尤も、前述したように、排出口23の平面視形状は、搬送手段3による粉粒体Pの搬送方向Xと直交する直交方向Yの長さの方が搬送方向Xの長さよりも長いような、「一方向に長い形状」であることが好ましい。
また、排出口23が直交方向Yに複数の区画に分割され、排出部21が該複数の区画に1対1で対応する複数の移動路22を有していても良い。
また、受取手段30は、平板部32を有していても良く、有していなくても良い。