特許第6882172号(P6882172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6882172神経変性疾患の治療に有用なTDP−43結合性ポリペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882172
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】神経変性疾患の治療に有用なTDP−43結合性ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20210524BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20210524BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20210524BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210524BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20210524BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20210524BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210524BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20210524BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20210524BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20210524BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20210524BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20210524BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20210524BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20210524BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C12N15/13ZNA
   C12N15/63 Z
   C07K16/18
   C07K16/46
   A61K39/395 N
   C12P21/08
   C12N15/09 Z
   C12N5/10
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   A61P21/02
   A61P25/28
   A61P25/00
   A61P25/16
   A61P9/10
【請求項の数】18
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2017-529766(P2017-529766)
(86)(22)【出願日】2015年12月7日
(65)【公表番号】特表2018-502561(P2018-502561A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】CA2015051280
(87)【国際公開番号】WO2016086320
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2018年12月6日
(31)【優先権主張番号】2,874,083
(32)【優先日】2014年12月5日
(33)【優先権主張国】CA
(31)【優先権主張番号】62/088,012
(32)【優先日】2014年12月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516151612
【氏名又は名称】ユニバルシテ ラバル
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン, ジャン−ピエール
(72)【発明者】
【氏名】グラヴェル, クロード
(72)【発明者】
【氏名】ポッツィ, シルヴィア
【審査官】 池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】 Molecular Therapy,2014年 5月,vol.22, Supplement 1,p.S149-S150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00−16/46
C12N 5/00−5/28
C12N 15/00−15/90
C12P 21/00−21/08
CAplus(STN)、MEDLINE(STN)、EMBASE(STN)、BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つのVH相補性決定領域(CDR)を含む少なくとも1つの重鎖可変領域VHを含む、TAR−DNA結合タンパク質43kDa(TDP−43)に特異的に結合する抗原結合性構築物であって、
(a)E6_VH1のCDR1(配列番号7)、CDR2(配列番号8)及びCDR3(配列番号9)、並びにE6_Vκ9のCDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)及びCDR3(配列番号15);及び
(b)E6_VH7のCDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)及びCDR3(配列番号12)、並びにE6_Vκ9のCDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)及びCDR3(配列番号15);
からなる群より選択される3つのVH CDR及び3つのVL CDRを含む、
抗原結合性構築物。
【請求項2】
(a)E6_VH1又はE6_VH7のVH;あるいは
(b)E6_VH1又はE6_VH7のVHに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるVH
を含む、請求項1に記載の抗原結合性構築物。
【請求項3】
(a)E6_VH1のCDR1(配列番号7)、CDR2(配列番号8)及びCDR3(配列番号9)、並びにE6_Vκ9のCDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)及びCDR3(配列番号15)を含む、請求項1又は2に記載の抗原結合性構築物。
【請求項4】
E6_VH7のCDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)及びCDR3(配列番号12)、並びにE6_Vκ9のCDR1(配列番号13)、CDR2(配列番号14)及びCDR3(配列番号15)を含む、請求項1又は2に記載の抗原結合性構築物。
【請求項5】
抗原結合ポリペプチドを含み、前記抗原結合ポリペプチドが、
(a)E6_Vκ9のVLか;又は
(b)E6_Vκ9のVLに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるVL;
及び/あるいは、
(c)E6_VH1若しくはE6_VH7のVH領域と、E6_Vκ9のVL領域と、
を含む、請求項3又は4に記載の抗原結合性構築物。
【請求項6】
i)E6_VH7のVH及びE6_Vκ9のVL;又は
ii)E6_VH1のVH及びE6_Vκ9のVL
を含む、請求項4又は5に記載の抗原結合性構築物。
【請求項7】
VHとVLとの間にペプチドリンカーを含み、任意選択的に、前記リンカーがアミノ酸配列SSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号47)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗原結合性構築物。
【請求項8】
E6_VH7Vκ9及びE6_VHlVκ9の少なくとも1つを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗原結合性構築物。
【請求項9】
MGDNDIHFAFLSTGVHSQVQ(配列番号48)であってもよい分泌シグナルペプチドを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗原結合性構築物。
【請求項10】
(a)scFvフォーマット、Fabフォーマット、単一ドメイン抗体フォーマット、若しくは(Fab’)フォーマットを有する、請求項3〜9のいずれか一項;
(b)Fcドメインを有する、請求項1〜9のいずれか一項;及び/又は
(c)ヒト化されている、請求項1〜9のいずれか一項
に記載の抗原結合性構築物。
【請求項11】
Fcドメインを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗原結合性構築物。
【請求項12】
ヒト化されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗原結合性構築物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗原結合性構築物と、医薬的に許容される添加剤とを含む医薬組成物。
【請求項14】
萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、前頭側頭脳葉変性症(FTLD)、軽度認知障害(MCI)、レーヴィ小体疾患、脳損傷及び脳虚血から選択される疾患は障害を治療は予防するための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、前頭側頭脳葉変性症(FTLD)、軽度認知障害(MCI)、レーヴィ小体疾患、脳損傷及び脳虚血から選択される疾患又は障害を治療又は予防するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗原結合性構築物。
【請求項16】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、前頭側頭脳葉変性症(FTLD)、軽度認知障害(MCI)、レーヴィ小体疾患、脳損傷及び脳虚血から選択される疾患又は障害を治療又は予防するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗原結合性構築物をコードする少なくとも1つの核酸配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗原結合性構築物をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、抗原結合性構築物の発現に適した条件下で培養するステップと、前記構築物を精製するステップとを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗原結合性構築物を製造する方法。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗原結合性構築物の少なくとも1つをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む、ポリヌクレオチド若しくは単離されたポリヌクレオチドのセット;1つ若しくは複数の前記ポリヌクレオチド若しくはポリヌクレオチドのセットを含む、ベクター若しくはベクターのセット;前記ポリヌクレオチド若しくはポリヌクレオチドのセットを含む単離細胞;又は請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗原結合性構築物と使用説明書とを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本願は、TDP−43に特異的に結合する抗体及びその断片などのTDP43(43kDAのTAR DNA結合タンパク質)特異的結合性構築物に関する。本願はまた、TDP−43タンパク質症を特徴とする疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病(Azheimer’s disease)、運動ニューロン疾患、パーキンソン病及び前頭側頭脳葉変性症などの診断及び治療においてTDP−43結合ポリペプチドを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]神経変性疾患は、脳及び脊髄の特定範囲における選択的な神経変性を特徴とする。「ルーゲーリッグ病」として一般に知られている筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、病因不明の進行性神経変性疾患である。この疾患は、随意筋の運動を制御する個体の能力を次第に損なっていく。この疾患は急速に進行し、ほとんどの症例で診断の2〜5年以内に麻痺及び死亡に至る傾向がある。
【0003】
[0003]TDP−43関連の比較的最近の発見により、ALSで機能する病理的機序に対し基本的な洞察がもたらされてきた。TDP−43は、ALS患者から得られた脊髄サンプル中の核内因子−κΒ(NF−κΒ)のp65サブユニットの炎症制御転写因子に関連しているが、対照患者の脊髄サンプルではそうでないことが示された(V.Swamp et al.,2011,J.Exp.Med.,208:2429−2447)。
【0004】
[0004]現在、ALSに罹患する患者にとって治療上の選択肢はほとんどない。ALSの治療用としてFDAにより唯一承認された医薬品は1995年に導入されたリルテック(Rilutek)(登録商標)であり、これはALSに罹患している個体の平均寿命を数ヶ月延長する。したがって、ALSなどの神経変性疾患に対する新規の治療上のアプローチが必要とされている。
【0005】
[0005]TDP−43タンパク質障害を特徴とする神経変性疾患の症状が他の神経筋障害の症状と似ているので、ALSなどの疾患は診断が困難である。診断は、通常、完全な神経学的検査及び臨床試験に基づいている。したがって、ALS及びFTLD−Uなどの神経変性疾患を発症しやすい対象、又はALS及びFTLD−Uなどの神経変性疾患に罹患しやすい対象を評価するための方法及び試薬が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本明細書では、TDP−43(43kDaのTAR DNA結合タンパク質)に結合する抗原結合性構築物、例えば、断片、誘導体及び変異体を含む抗体などを提供する。一実施形態において、抗原結合性構築物は、TDP−43のRRM−1ドメインに特異的に結合する。別の実施形態において、抗原結合性構築物は、細胞で発現される場合、細胞におけるNF−κΒのp65サブユニットへのTDP−43の結合を少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50% 50%、70%、80%又は90%まで阻害する。別の実施形態において、抗原結合性構築物は、細胞で発現される場合、細胞においてLPSに応答するNF−κΒの活性化を少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50% 50%、70%、80%又は90%までに低減する。別の実施形態において、抗原結合性構築物は、細胞で発現される場合、細胞における核TDP−43のレベルを少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50% 50%、70%、80%又は90%まで低減する。別の実施形態において、抗原結合性構築物は、エタクリン酸処理したHek293細胞で発現される場合、TDP−43不溶性を少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50% 50%、70%、80%又は90%まで低減する。別の実施形態において、抗原結合性構築物は、TNFαと共にインキュベートしたHek293細胞で発現される場合、細胞TDP−43のリジンアセチル化のレベルを少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50% 50%、70%、80%又は90%まで低減する。
【0007】
[0007]本明細書では、(配列番号7)、(配列番号8)、(配列番号9)(配列番号10)、(配列番号11)、(配列番号12)、(配列番号12)、(配列番号14)、(配列番号15)(配列番号16)、(配列番号17)、(配列番号18)(配列番号19)、(配列番号20)、(配列番号21)(配列番号22)、(配列番号23)及び(配列番号24)に記載したアミノ酸配列から選択される、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むTDP−43に特異的に結合する抗原結合性構築物を提供する。
【0008】
[0008]また本明細書では、3つのVH相補性決定領域(CDR)を含む少なくとも1つの重鎖可変領域VHを含む、TDP−43に特異的に結合する抗原結合性構築物であって、上記VHが、
E6_VH1 CDR1、E6_VH7 CDR1、C10_VH3 CDR1及びC10_VH4 CDR1から選択されるCDR;
E6_VH1 CDR2、E6_VH7 CDR2、C10_VH3 CDR2及びC10_VH4 CDR2から選択されるCDR;並びに/又は、
E6_VH1 CDR3、E6_VH7 CDR3、C10_VH3 CDR3及びC10_VH4 CDR3から選択されるCDR
のうちの1つ、2つ又は3つを含む、抗原結合性構築物を提供する。
【0009】
[0009]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、これらのVH CDRに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である1つ、2つ又は3つのVH CDRを含む。いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_VH1、E6_VH7、C10_VH3若しくはC10_VH4のVH領域、又はE6_VH1、E6_VH7、C10_VH3又はC10_VH4のVHと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるVH領域を含む。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、可変軽鎖領域VLであって、上記VLが3つのVL CDRを含み、上記VLが、
1.E6_Vκ9 CDRl及びC10_Vκ3 CDR1から選択されるCDR;
2.E6_Vκ9 CDR2及びC10_Vκ3 CDR2から選択されるCDR;並びに/又は、
3.E6_Vκ9 CDR3若しくはC10_Vκ3 CDR3から選択されるCDR
のうちの1つ、2つ又は3つを含む、可変軽鎖領域VLをさらに含み、並びに、抗原結合性構築物はこれらのVL CDRと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_Vκ9若しくはC10_Vκ3のVLを含み、又は、E6_Vκ9若しくはC10_Vκ3のVLと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるVLを有している抗原結合性構築物を含む。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_VH1又はE6_VH7のVH領域及びE6_Vκ9のVL領域を含む。別の実施形態において、抗原結合性構築物は、C10_VH3又はC10_VH4のVH領域及びC10_Vκ3のVL領域を含む。別の実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_VH7のVH及びE6_Vκ9のVL、E6_VH1のVH及びE6_Vκ9のVL、C10_VH3のVH及びC10_Vκ3のVL、又はC10_VH4のVH及びC10_Vκ3のVLを含む。
【0012】
[0012]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、VHとVLの間にペプチドリンカーを含み、任意選択的にアミノ酸配列SSGGGGSGGGGSGGGGSを含む。
【0013】
[0013]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_Vh7Vκ9、E6_Vhl Vκ9、C10_VH3Vκ3又はC10_VH4Vκ3である。
【0014】
[0014]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_VH7Vκ9の6つのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_Vh1Vκ9の6つのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、C10_VH3Vκ3の6つのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、C10_VH4Vκ3の6つのCDRを含む。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は分泌シグナルペプチドを含む。特定の実施形態において、分泌シグナルペプチドは、MGDNDIHFAFLSTGVHSQVQである。いくつかの実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物はscFvフォーマットを有する。別の実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物はFabフォーマットを有する。一実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は単一ドメイン抗体(ラクダ科)フォーマットを有する。いくつかの実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は(Fab’)フォーマットを有する。TDP−43抗原結合性構築物はまた、Fcドメインを含んでいてもよい。抗原結合性構築物はまた、ヒト化されていてもよく、又は脱免疫化されていてもよい。
【0016】
[0016]本明細書にはまた、VH及びVLを含む、TDP−43のRRM−1ドメインに特異的に結合する抗原結合性構築物が包含され、それにより、この構築物が細胞内で発現される場合、細胞TDP−43ポリペプチドと細胞NF−κΒ p65ポリペプチドの相互作用の低減、及び/又はLPSへの応答の際の細胞におけるNF−κΒの活性化の低減が生じる。いくつかの実施形態において、細胞TDP−43ポリペプチドと細胞NF−κΒ p65ポリペプチドの相互作用は、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%以上低減される。いくつかの実施形態において、LPSへの応答の際の細胞におけるNF−κΒの活性化は、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%以上低減される。
【0017】
[0017]また本明細書では、E6_VHlVk9、E6_VH7Vk9、C10_VH3Vk3又はC10_VH4Vk3のいずれかのTDP−43又はTDP−43のRRM−1ドメインのいずれかへの結合を50%、60%、70%、80%又は90%以上阻害する抗原結合性構築物を提供する。
【0018】
[0018]また本明細書には、上記の抗原結合性構築物と医薬的に許容される添加剤とを含む医薬組成物が記載されている。
【0019】
[0019]また、本明細書で提供したTDP−43抗原結合性構築物の治療上有効な量を対象に投与するステップを含む、それを必要とする対象におけるTDP−43タンパク質障害を特徴とする疾患又は障害を治療又は予防する方法が記載されている。
【0020】
[0020]本明細書では、少なくとも1つのTDP−43抗原結合性構築物をコードする少なくとも1つの核酸配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの治療上有効な量を対象に投与するステップを含む、それを必要とする対象におけるTDP−43タンパク質障害を特徴とする疾患又は障害を治療又は予防する方法を提供する。
【0021】
[0021]本明細書では、TDPタンパク質障害を特徴とする疾患又は障害を治療又は予防する医薬品を製造するための本明細書で定義した抗原結合性構築物の使用を提供する。
【0022】
[0022]本明細書では、TDPタンパク質障害を特徴とする疾患又は障害を治療又は予防するための本明細書で記載した抗原結合性構築物の使用を提供する。
【0023】
[0023]いくつかの実施形態において、治療される疾患又は障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、前頭側頭脳葉変性症(FTLD)、軽度認知障害(MCI)、レーヴィ小体疾患、脳損傷又は脳虚血である。
【0024】
[0024]また、TDP−43抗原結合性構築物をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を抗原結合性構築物の発現に適した条件下で培養するステップと、上記構築物を精製するステップとを含む、抗原結合性構築物を製造する方法も提供する。
【0025】
[0025]また本明細書では、TDP−43抗原結合性構築物の少なくとも1つをコードする少なくとも1つの核酸配列を含むポリヌクレオチド又は単離されたポリヌクレオチドのセットを提供する。一実施形態において、ポリヌクレオチドはcDNAである。
【0026】
[0026]また本明細書には、抗原結合性構築物をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドのセットを含むベクター又はベクターのセットが記載されている。
【0027】
[0027]いくつかの実施形態において、ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクター、発現ベクター及び組換え発現ベクターである。特定の実施形態において、ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。また、TDP−43抗原結合性構築物をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む単離宿主細胞も記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】SDS−PAGEにより分画し、TDP−43のRRMIドメインに対して生じた3つの例示的なモノクローナル抗TDP−43抗体C10、G8及びE6で処理した、BV−2細胞の核抽出物のイムノブロットである。3つの抗体は、LPSで刺激した、又は刺激していないBV−2細胞の核抽出物中のTDP−43を検出した。
図2】ヒト組換えp65_His−Tagがヒト組換えTDP−43_GST Tagと直接相互作用することを示すELISAアッセイの結果を示す棒グラフである。結果は、アッセイに0.01〜0.8μg/mlで添加されたヒト組換えTDP−43の量を様々に変化させて記録した450nmでの吸光度(ABS)として示す。
図3】組換えTDP−43とNF−κB p65との間の相互作用が、例示的なモノクローナル抗TDP−43抗体C10、G8、及びE6によってブロックされることを示すELISAアッセイの結果を示す棒グラフである。結果は、異なる組換え抗TDP−43抗体について記録した450nmでの吸光度(ABS)として示す。
図4A】例示的な抗TDP−43 scFv抗体をコードするベクターの概略図である。scFvベクターは、可撓性の20アミノ酸リンカー(Gly4Ser)3と共にVH−リンカー−Vκフォーマットで構築した。scFv構築物は、効率的な分泌用のマウス免疫グロブリン(Ig)κ−分泌シグナル及び検出を容易にするヒトc−mycエピトープを含む。
図4B】例示的な抗TDP−43 scFv抗体をコードするベクターの概略図である。scFvベクターは、可撓性の20アミノ酸リンカー(Gly4Ser)3と共にVH−リンカー−Vκフォーマットで構築した。scFv構築物は、効率的な分泌用のマウス免疫グロブリン(Ig)κ−分泌シグナル及び検出を容易にするヒトc−mycエピトープを含む。
図5】抗TDP−43抗原結合性構築物E6_VH1 Vκ9及びE6_VH7Vκ9をコードするScFv9発現プラスミドでトランスフェクションしたHek293細胞の核及び細胞質画分のSDS PAGEゲルのイムノブロットである。
図6】E6_VH1Vκ9及びE6_VH7Vκ9抗原結合性構築物がTDP−43のアミノ酸1−206に結合することを示すドットブロットである。
図7】scFvフォーマットを有する例示的な抗TDP−43抗体E6_VH1Vκ9及びE6_VH7Vκ9が、組換えTDP−43とNF−κB p65との間の相互作用をブロックすることを実証するELISAアッセイの結果を示す。
図8】scFvフォーマットの例示的な抗TDP−43抗体E6_VH1Vκ9が、TDP−43に対するポリクローナル抗体によって検出した場合にTDP−43と共免疫沈降することを示す。(E6_VH1Vκ9をコードするScFv9発現プラスミドによるトランスフェクション後のHek293細胞の培地中に発現される)。
図9】scFvフォーマットを有する例示的な抗TDP−43抗体E6_VH1Vκ9が、Hek293細胞におけるTDP−43とNF−κBp65との相互作用をブロックすることを示す。これは、E6_VH1Vκ9を発現するHek293細胞からの細胞抽出物を抗TDP−43ポリクローナル抗体で免疫沈降させたアッセイによって、空のScFv9発現ベクターでトランスフェクトした細胞に対し、VH1Vκ9を発現する細胞においてNF−κB p65レベルの低下が示された。
図10】BV2ミクログリア細胞に安定的に組み込まれたNF−κB−ルシフェラーゼレポーター構築物によって測定した場合、LPSに応答するNF−κB活性を弱化させる、TDP−43に対する例示的scFv抗体をコードする発現ベクターの能力を示す。
図11】Neuro2A細胞におけるscFv抗TDP−43抗体の発現によって引き起こされる核TDP−43のレベルの低下を示す。
図12A】エタクリン酸で処理したE6_VH1Vκ9及びE6_VH7Vκ9トランスフェクトHek293細胞におけるTDP−43不溶性を低下させる抗TDP−43抗体の能力を示す。図12Aはウエスタンブロットを示す。
図12B】エタクリン酸で処理したE6_VH1Vκ9及びE6_VH7Vκ9トランスフェクトHek293細胞におけるTDP−43不溶性を低下させる抗TDP−43抗体の能力を示す。図12Bはドットブロット分析を示す。
図13】E6_VH1Vκ9及びE6_VH7Vκ9トランスフェクトHek293細胞におけるリジンアセチル化からTDP−43を保護する抗TDP−43抗体の能力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[0041]本明細書には、TDP−43結合性構築物並びにTDP−43タンパク質障害を特徴とする神経変性疾患の診断及び治療におけるTDP−43結合性構築物の使用が記載されている。
【0030】
TDP−43
[0042]本明細書で使用する場合、「TDP43」という用語は、43kDaの転写活性化応答性DNA結合タンパク質又は43kDAのTAR−DNA結合タンパク質を意味し、天然の形態を含むTPD−43のすべてのタイプ及び形態、並びに、例えばTDP−43のリン酸化形態を含むTDP−43の別のコンフォーマー、TDP−43の凝集体、TDP−43のユビキチン関連凝集体及び天然TDP−43と比べて1つ又は複数の変異を有するTDP−43変異体、及び病原形態を意味するために使用される。TDP−43はまた、TDP−43ポリペプチドの断片も含む。TDP−43は、N末端ドメイン、2つのRNA認識モチーフ、及びタンパク質相互作用の媒介に重要であると思われるグリシン高含有のC末端ドメインを含有するDNA/RNA結合タンパク質である。ヒトTDP−43のアミノ酸配列は、当技術分野において公知である;例えば、以下を参照されたい、Strausberg et al.、TARDBPタンパク質(ホモサピエンス)GenBank Pubmed:ヒトTDP43のアミノ酸配列は、その全体を参照により本明細書に組み入れる、AAH71657バージョンGL47939520に示されている。天然ヒトTDP−43のアミノ酸配列は、下記及び表A(配列番号29)に示したとおりである。RRM1ドメインは、アミノ酸101〜176に対応する。
【0031】
【化1】
【0032】
NF−kB p65
[0043]本明細書で使用する場合、「NFkB p65」又は「NFKB」という用語は、核因子カッパBを意味し、「NF−kB p65」又は「p65」は、NFkB p65のp65サブユニット又は鎖を意味するように本明細書において同義的に使用される。p65ポリペプチド並びにポリヌクレオチドは当技術分野において公知である。例えば、NCBI M62399.1を参照されたい。ヒトNF−κΒ p65に関するアミノ酸配列を以下に示す。また本明細書におけるp65への言及は、p65の断片も包含されている。
【0033】
【化2】
【0034】
TDP−43タンパク質障害を特徴とする神経変性疾患
[0044]「TDP−43タンパク質障害」という用語は神経系疾患、特に神経変性疾患に関係し、TDP−43異常、特に異常な又はミスフォールドされたTDP−43ポリペプチドの蓄積及び/又は凝集との関連によって結び付けて考えられる障害の異種の群として知られている。TDPタンパク質障害としては、限定するものではないが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、前頭側頭脳葉変性症(FTLD)、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、レーヴィ体型認知症、ハンチントン病、又はレーヴィ小体疾患が挙げられる。異常なTDP−43蓄積は、神経損傷、脳損傷、脳虚血(脳卒中)によって誘発され得る。
【0035】
[0045]「前頭側頭脳葉変性症」という用語は、前頭葉及び側頭葉における萎縮に関連した一連の障害を意味する。前頭側頭脳葉変性症(FTLD)としては、タウ含有を特徴とするFTLD−タウ、ユビキチンを特徴とするFTLD−TDP43及びTDP−43含有体(FTLD−U)、FUS細胞質含有体を特徴とするFTLD−FUS及び特殊な組織構造を欠損している認知症(DLDH)を挙げることができる。
【0036】
[0046]「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)という用語は、通常、上位運動ニューロン及び下位運動ニューロンの両方を攻撃し、脳及び脊髄全体にわたって変性を引き起こす、任意の神経変性疾患を意味するように本明細書において使用する。
【0037】
抗原結合性構築物
[0047]本明細書には、TDP−43(43kDaのTAR DNA結合タンパク質)に結合する抗原結合性構築物、例えば、TDP−43に特異的に結合することができる抗体の断片、誘導体及び変異体を含む抗体などを記載している。「TDP−43に特異的に結合する」、「TDP−43に/に対して特異的な抗体」及び「抗TDP−43抗体」及び「TDP−43抗体」とは、詳細には、一般的には、総体的には、TDP−43、又はミスフォールドされた若しくはオリゴマー化された、若しくは凝集した若しくは翻訳後に修飾されたTDP−43、又はTDP−43の変異体に対する抗体を意味する。一実施形態によれば、本明細書に記載の抗体(抗原結合性抗体断片及び誘導体を含む)は、TDP−43のRRM−1ドメインに特異的に結合する。一実施形態において、TDP−43特異的抗原結合性構築物は、本明細書に記載の抗体の免疫学的結合特性を有する抗体(その抗原結合性断片又は誘導体を含む)である。いくつかの実施形態において、本抗原結合性構築物は、TPD−43のNF−KB p65への結合をブロックする。
【0038】
[0048]また本明細書では、3つのVH相補性決定領域(CDR)を含む少なくとも1つの重鎖可変領域VHを含む、TDP−43に特異的に結合する抗原結合性構築物であって、上記VHが、
E6_VH1 CDR1、E6_VH7 CDR1、C10_VH3 CDR1及びC10_VH4 CDR1から選択されるCDR;
E6_VH1 CDR2、E6_VH7 CDR2、C10_VH3 CDR2及びC10_VH4 CDR2から選択されるCDR;並びに/又は、
E6_VH1 CDR3、E6_VH7 CDR3、C10_VH3 CDR3及びC10_VH4 CDR3から選択されるCDR
のうちの1つ、2つ又は3つを含む、抗原結合性構築物が記載されている。
【0039】
[0049]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、これらのVH CDRと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である1つ、2つ又は3つのVH CDRを含む。いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_VH1、E6_VH7、C10_VH3若しくはC10_VH4のVH、又はE6_VH1、E6_VH7、C10_VH3又はC10_VH4のVHと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるVHを含む。
【0040】
[0050]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、可変軽鎖領域VLであって、上記VLが3つのVL CDRを含み、上記VLが、
E6_Vκ9 CDR1及びC10_Vκ3 CDR1から選択されるCDR;
E6_Vκ9 CDR2及びC10_Vκ3 CDR2から選択されるCDR;並びに/又は、
E6_Vκ9 CDR3若しくはC10_Vκ3 CDR3から選択されるCDR
のうちの1つ、2つ又は3つを含む、可変軽鎖領域VLをさらに含み、並びに、抗原結合性構築物はこれらのVL CDRと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_Vκ9若しくはC10_Vκ3のVLを含み、又は、E6_Vκ9若しくはC10_Vκ3のVLと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるVLを有している抗原結合性構築物を含む。
【0041】
[0051]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_VH1又はE6_VH7のVH領域及びE6_Vκ9のVL領域を含む。別の実施形態において、抗原結合性構築物は、C10_VH3又はC10_VH4のVH領域及びC10_Vκ3のVL領域を含む。別の実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_VH7のVH及びE6_Vκ9のVL、E6_VH1のVH及びE6_Vκ9のVL、C10_VH3のVH及びC10_Vκ3のVL、又はC10_VH4 のVH及びC10_Vκ3のVLを含む。
【0042】
[0052]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、
(a)E6_VH1のCDR1(配列番号7)、CDR2(配列番号8)及びCDR3(配列番号9)並びにE6_Vκ9のCDR1(配列番号7)、CDR2(配列番号8)及びCDR3(配列番号9);
(b)E6_VH7のCDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)及びCDR3(配列番号12)並びにE6_Vκ9のCDR1(配列番号7)、CDR2(配列番号8)及びCDR3(配列番号9);
(c)C10_VH3のCDR1(配列番号16)、CDR2(配列番号17)及びCDR3(配列番号18)、並びにCDR1(配列番号22)、CDR2(配列番号23及びC10_Vκ3のCDR3(配列番号24);
(d)C10_VH4のCDR1(配列番号19)、CDR2(配列番号20)及びCDR3(配列番号21)並びにCDR1(配列番号22)、CDR2(配列番号23及びC10_Vκ3のCDR3(配列番号24)
から選択される6つのCDRを含む。
【0043】
[0053]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、VHとVLの間のペプチドリンカーを含み、任意選択的にアミノ酸配列SSGGGGSGGGGSGGGGSを含む。
【0044】
[0054]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_Vh7Vκ9、E6_Vhl Vκ9、C10_VH3 Vκ3又はC10_VH4Vκ3を含む。
【0045】
[0055]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は分泌シグナルペプチドを含む。特定の実施形態において、分泌のシグナルペプチドは、MGDNDIHFAFLSTGVHSQVQである。
【0046】
[0056]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物はscFvフォーマットを有する。別の実施形態において、抗原結合性構築物はFabフォーマットを有する。一実施形態において、抗原結合性構築物は単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科)フォーマットを有する。いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は(Fab’)フォーマットを有する。別の実施形態において、抗原結合性構築物はFab’フォーマットを有する。抗原結合性構築物はまた、Fcドメインを含んでいてもよい。抗原結合性構築物はまた、ヒト化されていてもよく、又は脱免疫化されていてもよい。
【0047】
[0057]本明細書にはまた、VH及びVLを含む、TDP−43のRRM−1ドメインに特異的に結合する抗原結合性構築物が提供され、それにより、この構築物は、細胞内で発現される場合、細胞TDP−43ポリペプチドと細胞NF−κΒ p65ポリペプチドの相互作用の低減、及び/又はLPSへの応答の際の細胞におけるNF−κΒの活性化の低減が生じる。いくつかの実施形態において、細胞TDP−43ポリペプチドと細胞NF−κΒ p65ポリペプチドの相互作用は、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%以上低減される。いくつかの実施形態において、LPSへの応答の際の細胞におけるNF−κΒの活性化は、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%以上低減される。
【0048】
[0058]また本明細書では、VH及びVLを含む、TDP−43のRRM−1ドメインに特異的に結合する抗原結合性構築物であって、上記構築物が、細胞で発現される場合、
i)Hek293細胞における細胞内TDP−43ポリペプチドの細胞内NF−κΒ p65ポリペプチドとの相互作用を10%以上低減し;
ii)LPSに応答するBV−2細胞のNF−κΒの活性化を10%以上低減し;
iii)Neuro2A細胞の核TDP−43のレベルを低減し;
iv)TNFαに応答するHek293細胞のTDP−43のリジンアセチル化を10%以上低減し;又は、
v)エタクリン酸共にインキュベートしたHek293細胞のTDP−43の不溶性を低減する、
構築物を提供する。
【0049】
[0059]また本明細書では、E6_VHlVk9、E6_VH7Vk9、C10_VH3Vk3又はC10_VH4Vk3のいずれかのTDP−43又はTDP−43のRRM−1ドメインのいずれかへの結合を50%、60%、70%、80%又は90%以上阻害する抗原結合性構築物を提供する。いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、E6_VHlVk9、E6_VH7Vk9、C10_VH3Vk3又はC10_VH4Vk3のいずれかのTDP−43又はTDP−43のRRM−1ドメインのいずれかへの結合を50%以上阻害する。
【0050】
[0060]「抗原結合性構築物」という用語はまた、任意の薬剤、例えば、抗原に結合することができるポリペプチド又はポリペプチド複合体を意味する。いくつかの態様において、抗原結合性構築物は、目的の抗原に特異的に結合するポリペプチドである。抗原結合性構築物は、単量体、二量体、多量体、タンパク質、ペプチド、又はタンパク質若しくはペプチド複合体;抗体、抗体断片、又はその抗原結合性断片;scFvなどであり得る。抗原結合性構築物は、単一特異的、二重特異的又は多重特異的であるポリペプチド構築物であり得る。いくつかの態様において、抗原結合性構築物は、例えば、1つ又は複数のFcに連結されている1つ又は複数の抗原結合性成分(例えば、Fab又はscFv)を含み得る。抗原結合性構築物のさらなる例を下記に記載し、実施例において提供する。
【0051】
[0061]「二重特異的」という用語は、2つの異なる結合特異性を有する任意の薬剤、例えば、抗原結合性構築物又は抗体を含むものとする。
【0052】
[0062]「多重特異的」又は「異種特異的」という用語は、2つ以上の異なる結合特異性を有する任意の薬剤、例えば抗原結合性構築物又は抗体を含むものとする。したがって、本明細書に記載されている抗原結合性構築物の実施形態は、限定するものではないが、二重特異的、三重特異的、四重特異的、及び他の多重特異的分子を含む。
【0053】
[0063]抗原結合性構築物は、抗体又はその抗原結合性部分であり得る。本明細書で使用する場合、「抗原」又は「免疫グロブリン」は、分析物(例えば、抗原)に特異的に結合し認識する、1種若しくは複数の免疫グロブリン遺伝子又はその断片によって実質的にコードされているポリペプチドを意味する。認識される免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミューの定常域遺伝子、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、カッパ又はラムダのいずれかに分類される。抗体又は免疫グロブリンの「クラス」は、その重鎖が有している定常ドメイン又は定常領域のタイプを意味する。5つの主なクラスの抗体:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかのものは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgGi、IgG、IgG、IgG、IgAi、IgAにさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、α、δ、ε、γ及びμとそれぞれ呼ばれる。
【0054】
[0064]例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は2対のポリペプチド鎖から構成されており、各々の対は、1つの「軽」鎖(約25kD)と1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各々の鎖のN末端ドメインは、抗原認識に主として関与し得る約100〜110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、これらの軽鎖及び重鎖のドメインをそれぞれ意味する。IgGl重鎖は、N末端からC末端までのVHドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインをそれぞれ含む。軽鎖はN末端からC末端までのVLドメイン及びCLドメインを含む。IgG1重鎖は、CHIとCH2のドメインの間にヒンジを含む。特定の実施形態において、免疫グロブリン構築物は、治療用ポリペプチドに連結されているIgG、IgM、IgA、IgD又はIgE由来の少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されている抗原結合性構築物で確認された免疫グロブリンドメインは、ダイアボディ又はナノボディなどの免疫グロブリンに基づく構築物に由来するか、又は誘導される。特定の実施形態において、本明細書に記載の免疫グロブリン構築物は、ラクダ抗体などの重鎖抗体由来の少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。特定の実施形態において、本明細書で提供している免疫グロブリン構築物は、ウシ抗体、ヒト抗体、ラクダ抗体、マウス抗体又は任意のキメラ抗体などの哺乳動物抗体由来の少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。
【0055】
[0065]「超可変領域」又は「HVR」という用語は、本明細書で使用する場合、配列が超可変であり、及び/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの各々の領域を意味する。一般に、天然の4鎖抗体は6つのHVR;VHの3つ(H1、H2、H3)、及びVLの3つ(LI、L2、L3)を含む。HVRは、一般に超可変のループ及び/又は相補性決定領域(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は最も高い配列可変性であり、及び/又は抗原認識に関与している。VHのCDR1を除き、CDRは、一般に超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。超可変領域(HVR)は「相補性決定領域」(CDR)とも呼ばれ、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域の部分に関して本明細書において同義的に使用される。この特定の領域は、Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,Sequences of Proteins of Immunological Interest(1983)、及びChothia et al.,J Mol Biol 196:901−917(1987)によって開示されており、その定義には、相互に比較した場合のアミノ酸残基のオーバーラッピング又はサブセットが含まれている。しかしながら、抗体又はその変異体のCDRを意味するよういずれかの定義を適用することは、本明細書で定義及び使用した用語の範囲内にあるものとする。特定のCDRを包含する正確な残基数は、CDRの配列及びサイズに依存して変動する。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列が提供される特定のCDRをどの残基が含むかを慣例的に決定することができる。
【0056】
[0066]「Fab分子」又は「Fab」とは、免疫グロブリンの重鎖(「Fab重鎖」)のVH及びCH1ドメインと軽鎖(「Fab軽鎖」)のVL及びCLドメインからなるタンパク質又はポリペプチド構築物を意味する。Fabは一価である。
【0057】
[0067]「F(ab’)」分子は、ヒンジ領域の一部によって互いに連結している2つのFabからなるタンパク質又はポリペプチド構築物を意味するが、Fcのほとんどが欠けている。F(ab’)分子は、パパイン又はペプシンで免疫グロブリンを消化することにより得ることができる。
【0058】
[0068]本明細書で使用する場合、「一本鎖」という用語は、ペプチド結合によって直鎖状に連結されているアミノ酸単量体を含む分子を意味する。特定の実施形態において、抗原結合性部分の1つは一本鎖Fab分子、すなわち、Fab軽鎖及びFab重鎖がペプチドリンカーによって連結されペプチド一本鎖を形成するFab分子である。特定のこうした実施形態において、Fab軽鎖のC末端は、一本鎖Fab分子中のFab重鎖のN末端に連結されている。特定の別の実施形態において、抗原結合性部分の1つは一本鎖Fv分子(scFv)である。本明細書でより詳細に記載されているように、「scFv」は、そのC末端から重鎖(VH)の可変ドメインのN末端にポリペプチド鎖によって連結されている軽鎖(VL)の可変ドメインを有するか、或いは、VHのC末端はVLのN末端にポリペプチド鎖によって連結されている。このタイプの抗体は、本明細書では「scFvフォーマット」と呼ばれている。
【0059】
[0069]本明細書に記載のいくつかの実施形態において、scFvフォーマットは、抗原結合性構築物(すなわち、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインから構成されている抗原結合性ドメイン)において使用される。一実施形態において、前記scFv分子はヒトである。別の実施形態において、前記scFv分子はヒト化されている。一実施形態において、前記scFv分子はマウスである。可変領域は、直接連結され得るか、又は、典型的には、機能性の抗原結合性部分を形成することができるリンカーペプチドを介して結合され得る。典型的なペプチドリンカーは約2〜20個のアミノ酸を含み、本明細書に記載されているか、又は当技術分野で公知である。適切な非免疫原性リンカーペプチドとしては、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n、G4(SG4)n又はG2(SG2)nリンカーペプチドが挙げられ、式中、nは一般に1〜10の間の数であり、典型的には2〜4の間の数である。scFv分子は、例えば、Reiter et al.(Nat Biotechnol 14,1239−1245(1996))により開示されているように、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインの間のジスルフィド架橋によってさらに安定し得る。当技術分野で公知であるように、scFvはまた、 [Miller et al.,Protein Eng Des Sel.2010 Jul;23(7):549−57;Igawa et al.,MAbs.2011 May−Jun;3(3):243−5;Perchiacca & Tessier,Annu Rev Chem Biomol Eng.2012;3:263−86.]に開示されているように、CDR配列の変異によっても安定し得る。いくつかの実施形態において、scFvフォーマットのTDP−43抗原結合性構築物は、細胞膜を通過し、細胞に入るその能力にとって好ましい。scFvフォーマット抗体の概略図を図4Bに示す。
【0060】
[0070]いくつかの実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は、単一VHポリペプチド(ラクダフォーマット)からなっていてもよい。
【0061】
[0071]「クロスオーバー」Fab分子(「Crossfab」ともいう)とは、可変領域又はFab重鎖及び軽鎖の定常領域のいずれかが交換されているFab分子を意味し、すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変領域及び重鎖定常領域を含んでなるペプチド鎖と、重鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含んでなるペプチド鎖を含む。明確にするために、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変領域が交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖定常領域を含むペプチド鎖は、本明細書では、クロスオーバーFab分子の「重鎖」と呼ばれる。反対に、Fab軽鎖及びFab重鎖の定常領域が交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖可変領域を含むペプチド鎖は、本明細書では、クロスオーバーFab分子の「重鎖」と呼ばれる。
【0062】
[0072]「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を意味する。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4からなる。したがって、HVR配列及びFR配列は、一般に、VH(又はVL)の以下の配列で示される:FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4。
【0063】
[0073]抗原結合性構築物は、Fc領域又はドメイン、例えば、二量体Fcを含み得る。
【0064】
[0074]本明細書における用語「Fcドメイン」又は「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用する。この用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む。本明細書において別段の定めがない限り、Fc領域又は定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に開示されているように、EU指数とも呼ばれるEU番号方式によるものである。本明細書で使用される場合のFcドメインの「サブユニット」とは二量体Fcドメインを形成している2つのポリペプチドのうちの1つ、すなわち、安定的な自己会合が可能である免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドを意味する。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2及びIgG CH3定常ドメインを含む。
【0065】
[0075]いくつかの態様において、Fcは、少なくとも1つ又は2つのCH3配列を含む。いくつかの態様において、Fcはホモ二量体Fcである。いくつかの態様において、Fcはヘテロ二量体型FCである。いくつかの態様において、FcはヒトFcである。いくつかの態様において、FcはマウスFcである。いくつかの態様において、Fcは、ヒトIgG又はIgG1 Fcである。いくつかの態様において、Fcは、少なくとも1つ又は2つのCH2配列を含む。
【0066】
[0076]いくつかの態様において、Fcは、CH3配列の少なくとも1つに1つ又は複数の修飾を含む。いくつかの態様において、Fcは、CH2配列の少なくとも1つに1つ又は複数の修飾を含む。いくつかの態様において、Fcは単一のポリペプチドである。いくつかの態様において、Fcは複数のペプチド、例えば、2つのポリペプチドである。
【0067】
[0077]融合又は連結されているとは、成分(例えば、Fab分子又はscFv分子及びFcドメインサブユニット)が、直接的に又は1つ又は複数のペプチドリンカーを介してペプチド結合により連結されていることを意味する。
【0068】
[0078]抗原結合性構築物は抗原に結合する。本明細書で使用する場合、「抗原決定基」という用語は「抗原」及び「エピトープ」と同義であり、抗原結合性部分が結合し、抗原結合性部分−抗原複合体を形成するポリペプチド高分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続的長さ又は非連続アミノ酸の異なる領域から構成される構造上の配置)を意味する。本明細書に記載されている抗原結合性構築物によって結合された抗原はTPD−43であり、いくつかの実施形態において、TDP−43のRRM−1ドメインである。
【0069】
[0079]「特異的に結合する」、「特異的結合」又は「選択的結合」とは、結合が抗原に対して選択的であり、望ましくない、又は非特異的な相互作用から区別され得ることを意味する。抗原結合性部分が特異的な抗原決定基に結合する能力は、酵素免疫吸着測定法(ELISA)又は当業者によく知られている別の技術、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(BIAcore装置による解析)(Liljeblad et al,Glyco J 17,323−329(2000))、及び従来の結合アッセイ(Heeley,Endocr Res 28,217−229(2002))のいずれかによって測定することができる。一実施形態において、非関連タンパク質への抗原結合性部分の結合の程度は、例えばSPRによって測定した場合、抗原結合性部分の抗原への結合は約10%未満である。特定の実施形態において、抗原に結合する抗原結合性部分、又はその抗原結合性部分を含む抗原結合性分子は、<1μΜ、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<0.001nM(例えば10−8M以下、例えば10−8M〜10−13Mまで、例えば10−9M〜10−13M)の解離定数(KD)を有する。
【0070】
[0080]目的の抗原に「結合する」抗体は、抗体が診断薬及び/又は治療薬として有用であるようにその抗原に十分な親和性で結合することができるものである。
【0071】
[0081]「親和性」とは、分子(例えば受容体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えばリガンド)との間の非共有相互作用の強さの総計を意味する。他に指示のない限り、本明細書で使用する場合、「結合親和性」とは、結合対(例えば、抗原結合性構築物と抗原、又は受容体とそのリガンド)のメンバー間の1:1相互作用を反映する内在性の結合親和性を意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離速度定数と会合速度定数(それぞれ、koff及びkon)の比である、解離定数(KD)によって表すことができる。したがって、同等の親和性は、速度定数の比が同じである限り、異なる速度定数を含み得る。親和性は、本明細書に記載されているものを含め、当技術分野で公知の十分に確立された方法によって測定することができる。親和性を測定する特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0072】
[0082]本明細書に記載の抗原結合性構築物は、TDP−43を結合する少なくとも1つの抗原結合性ポリペプチドを含む。表Aは、例示的な抗TDP−43抗原結合ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。( )=Igk分泌シグナル;{ }=リンカー配列;[ ]=c−myc検出シグナル。
【0073】
[0083]また本明細書では、例示的な抗原結合性構築物をコードする核酸配列も提供する。表Bはこれらの例示的な核酸配列を示す。
【0074】
【表1-1】
【0075】
【表1-2】
【0076】
【表1-3】
【0077】
【表1-4】
【0078】
【表2-1】
【0079】
【表2-2】
【0080】
【表2-3】
【0081】
【表2-4】
【0082】
ポリペプチド及びポリヌクレオチド
[0084]本明細書に記載の抗原結合性構築物は、少なくとも1つのTDP−43結合ポリペプチドを含む。また、本明細書に記載のTDP−43結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも記載されている。
【0083】
[0085]本明細書で使用する場合、「単離された」とは、その天然の細胞培養環境の成分から同定及び単離及び/又は回収された作用物質(例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチド)を意味する。その天然環境の不純物成分は、抗原結合性構築物の診断又は治療上の使用に干渉する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク性又は非タンパク性溶質を挙げることができる。また、単離されたとは、例えば人が介入することによって合成的に製造された作用物質も意味する。
【0084】
[0086]「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを意味するために本明細書では同義で使用される。すなわち、ポリペプチドに関する記載は、ペプチドの記載及びタンパク質の記載に等しく適用され、また逆も同様に適用される。この用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマー、並びに、1つ又は複数のアミノ酸残基が天然にコードされていないアミノ酸であるアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書で使用する場合、この用語は、アミノ酸残基が共有結合ペプチド結合によって連結されている、完全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含する。
【0085】
[0087]「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸及び天然に存在しないアミノ酸、並びに、天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸ミメティックを意味する。天然にコードされているアミノ酸は、20種の一般的なアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プラリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリン)並びにピロリシン及びセレノシステインである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムに結合されている炭素を有する化合物を意味する。こうした類似体は、修飾されたR基(例えばノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ根本的な化学構造を保持する。アミノ酸への言及は、例えば、天然に存在するプロテオジェニックL−アミノ酸;D−アミノ酸、化学修飾アミノ酸、例えば、アミノ酸変異体及び誘導体;天然に存在する非プロテオジェニックアミノ酸、例えば、β−アラニン、オルニチンなど;並びに当技術分野でアミノ酸の特性であることが知られている特性を有する化学的合成化合物を含む。天然に存在しないアミノ酸の例としては、限定するものではないが、α−メチルアミノ酸(例えばα−メチルアラニン)、D−アミノ酸、ヒスチジン様アミノ酸(例えば、2−アミノ−ヒスチジン、β−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン)、側鎖中に過剰のメチレンを有しているアミノ酸(「ホモ」アミノ酸)、及び側鎖中のカルボン酸官能基がスルホン酸基で置き換えられているアミノ酸(例えばシステイン酸)が挙げられる。本明細書に記載のタンパク質への合成非天然アミノ酸、置換アミノ酸、又は1つ若しくは複数のD−アミノ酸を含む非天然アミノ酸の導入は、多くの異なる方法で有利であり得る。D−アミノ酸含有ペプチドなどは、L−アミノ酸含有相当物と比較して、インビトロ又はインビボで安定性の増大を示す。したがって、D−アミノ酸を組み込んだペプチドなどの構築物は、より大きな細胞内安定性が望まれるか必要とされる場合、特に有用であり得る。より詳細には、D−ペプチドなどは内在性ペプチダーゼ及びプロテアーゼに対して耐性があり、それにより分子のバイオアベイラビリティの改善が提供され、こうした特性が望ましい場合、インビボでの持続時間が延長される。さらに、D−ペプチドなどは、ヘルパーT細胞に対する組織適合性主複合体クラスII制限提示について効率的に処理することができず、したがって、生物全体において体液性免疫応答を誘導する可能性は低い。
【0086】
[0088]アミノ酸は、それらの一般に知られている3文字表記によって、又はIUPAC−IUB生化学命名委員会により推奨されている1文字表記によって本明細書では表すことができる。ヌクレオチドも同様に、それらの一般に容認されている一文字表記によって表すことができる。
【0087】
[0089]また、抗原結合性構築物のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも含まれる。「ポリヌクレオチド」又は「ヌクレオチド配列」という用語は、2つ以上のヌクレオチド分子の連続する伸長を示すものとする。ヌクレオチド配列は、ゲノム、cDNA、RNA、半合成若しくは合成起源、又はそれらの任意の組合せであり得る。
【0088】
[0090]「核酸」という用語は、一本鎖形態又は二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド又はリボヌクレオチド及びそれらのポリマーを意味する。特に限定されていない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有しており、天然に存在するヌクレオチドと同様の方法で代謝される天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。他に特に限定されていない限り、この用語はまた、PNA(ペプチド核酸)を含むオリゴヌクレオチド類似体、及びアンチセンス技術で使用されるDNAの類似体(ホスホロチオエート、ホスホロアミデートなど)を意味する。特に明記しない限り、特定の核酸配列はまた、それらの保存的に改変された変異体(限定するものではないが、縮重コドン置換を含む)及び相補配列並びに明示的に示した配列を暗黙的に包含する。詳細には、縮重コドン置換は、1つ又は複数の選択された(又は全部の)コドンの第3の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することにより達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。
【0089】
[0091]「保存的に改変された変異体」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的に改変された変異体」は、同一若しくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードするこれらの核酸、又は核酸がアミノ酸配列をコードしない場合の本質的に同一の配列を意味する。遺伝子コードの縮重のため、多くの機能的に同一の核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全部、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって規定されるすべての位置で、コドンは、コードされたポリペプチドを改変せずに、記載された対応するコドンのいずれかに改変することができる。こうした核酸変異体は、保存的に改変された変異体の1種である「サイレントの変異体」である。ポリペプチドをコードする本明細書のすべての核酸配列はまた、核酸のあらゆる可能性のあるサイレント変異体を記載する。当業者には、核酸中のそれぞれのコドン(通常メチオニンに対する唯一のコドンであるAUG及び通常トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一の分子を得ることができることが理解されよう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のそれぞれのサイレント変異体は、記載したそれぞれの配列に潜在的に含まれている。
【0090】
[0092]アミノ酸配列に関して、当業者には、コードされた配列中の単一アミノ酸又は少数パーセントのアミノ酸を改変、付加又は欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質配列への個々の置換、欠失又は付加は、その変化がアミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、又は化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす「保存的に改変された変異体」であることは理解されよう。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当業者に公知である。こうした保存的に改変された変異体は、本明細書に記載の多型変異体、異種間相同体、及び対立遺伝子に加えられ、除外はされない。
【0091】
[0093]機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当業者に公知である。以下の8つのグループは、互いに保存的置換であるアミノ酸をそれぞれ含有する:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);及び[0139]8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W H Freeman & Co.;2nd edition December 1993)を参照されたい)。
【0092】
[0094]「同一の」という用語又は「同一性」パーセントとは、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈において、同じである2つ以上の配列又は部分配列を意味する。以下の配列比較アルゴリズム(若しくは当業者が利用可能な他のアルゴリズム)のうちの1つを使用して、又は手動による配列比較及び目視検査によって測定した際に、比較ウィンドウ又は指定された領域にわたって最大の一致について比較及び配列比較した場合、配列が、同じであるアミノ酸残基又はヌクレオチドのパーセント(すなわち、特定した領域にわたって約60%同一性、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%の同一性)を有するならば、配列は「実質的に同一」である。この定義はまた、試験配列の相補性を意味する。同一性は、少なくとも長さが約50個のアミノ酸若しくはヌクレオチドである領域にわたって、又は長さが75〜100個のアミノ酸又はヌクレオチドである領域にわたって、或いは、特定されていない場合、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの全配列にわたって存在し得る。ヒト以外の種由来の相同体を含む、本明細書に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列又はその断片を有する標識化プローブを用いて、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でライブラリーをスクリーニングするステップと、前記ポリヌクレオチド配列を含有する完全長cDNA及びゲノミッククローンを単離させるステップとを含む方法によって得ることができる。こうしたハイブリダイゼーション技術は、当業者には公知である。
【0093】
[0095]配列比較に関し、典型的には、1つの配列が、試験配列と比較される参照配列としての役割を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、部分配列座標を指定し、必要に応じ、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用することができ、又は、代替パラメータを指定することができる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づき、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0094】
[0096]「比較ウィンドウ」は、本明細書で使用する場合、2つの配列を最適に整列させた後、配列を同数の連続的な位置の参照配列と比較することができる、20〜600、通常は約50〜約200、さらに通常は約100〜約150からなる群から選択される連続的な位置の数のいずれか1つのセグメントへの言及を含む。比較のための配列のアラインメント方法は当業者には公知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、限定するものではないが、Smith and Waterman(1970)Adv.Appl.Math.2:482cの局所相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman(1988)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444の類似性方法の捜索によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)のコンピュータ化されたシステム稼働によって、又は手動によるアラインメント及び目視検査によって(例えば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(1995 補遺)を参照)行うことができる。
【0095】
[0097]配列同一性及び配列類似性パーセントを決定するのに適し得るアルゴリズムの一例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これはAltschul et al.(1997)Nuc.Acids Res.25:3389−3402、及びAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−410に開示されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、ncbi.nlm.nih.gov.のWorld Wide Webで入手可能なNational Center for Biotechnology Informationを介して公的に入手することができる。BLASTアルゴリズムパラメータのW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4及び両鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、3のワード長、及び10の期待値(E)、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを用いる(Henikoff and Henikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915を参照)、50のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、及び両鎖の比較をデフォルトとして用いる。BLASTアルゴリズムは、典型的には、「低複雑度」フィルターをオフにして実施する。
【0096】
[0098]BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(例えば、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の尺度の1つは、最小合計確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供するものである。例えば、試験核酸と参照核酸の比較における最小合計確率が約0.2未満、又は約0.01未満、又は約0.001未満である場合、核酸は参照配列に類似していると考えられる。
【0097】
[0099]「選択的に(又は特異的に)〜にハイブリダイズする」という句は、その配列が複合混合物(限定するものではないが、全細胞DNA若しくはRNA又はライブラリーDNA若しくはRNAを含む)中に存在する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、特定のヌクレオチド配列のみに対する分子の結合、二重鎖形成又はハイブリダイズすることを意味する。
【0098】
[00100]「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という句は、当技術分野で公知の低イオン強度及び高温条件下における、DNA、RNA、若しくは他の核酸又はそれらの組合せの配列のハイブリダイゼーションを意味する。典型的には、ストリンジェントな条件下では、プローブは、核酸の複合混合物(限定するものではないが、全細胞DNA若しくはRNA又はライブラリーDNA若しくはRNAを含む)中のその標的部分配列にハイブリダイズするが、複合混合物中の別の配列にはハイブリダイズしない。ストリンジェントな条件は、配列に依存し、様々な状況において異なる。長い配列は、より高温で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範囲にわたる手引きは、Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)で確認することができる。
【0099】
[00101]本明細書で使用する場合、「操作する、操作された、操作」という用語は、ペプチド骨格の任意の操作、又は天然に存在するか組換えのポリペプチド若しくはその断片の翻訳後修飾を含むものと考える。操作には、アミノ酸配列の修飾、グリコシル化パターンの修飾、又は個々のアミノ酸の側鎖基の修飾、並びにこれらの手法の組合せが含まれる。操作されたタンパク質は、標準の分子生物学技術によって発現及び産生される。
【0100】
[00102]「単離された核酸分子又はポリヌクレオチド」とは、その天然環境から取り出された、核酸分子、DNA又はRNAを意味する。例えば、ベクター中に含有されているポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは単離されたと考えられる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例としては、異種宿主細胞に維持されている組換えポリヌクレオチド又は溶液中の(部分的又は実質的に)精製されたポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたポリヌクレオチドは、通常、ポリヌクレオチド分子を含有する細胞中に含有されているポリヌクレオチド分子を含むが、そのポリヌクレオチド分子は、染色体外に存在するか、又はその天然染色体の位置とは異なる染色体位置に存在する。単離されたRNA分子としては、インビボ又はインビトロのRNA転写物、並びに、正及び負の鎖形態、及び二本鎖形態が挙げられる。本明細書に記載の単離されたポリヌクレオチド又は核酸は、例えば、PCR合成又は化学合成を介して合成的に生成された、こうした分子をさらに含む。さらに、ポリヌクレオチド又は核酸は、特定の実施形態において、制御エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位又は転写ターミネーターなどを含む。
【0101】
[00103]「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」という用語は、一般に、例えば、米国特許第4,683,195号に開示されているように、インビトロにおいて所望のヌクレオチド配列を増幅する方法を意味する。一般に、PCR方法は、鋳型核酸に優先的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドプライマーを使用し、プライマー伸長合成の繰り返しサイクルを含む。
【0102】
[00104]本明細書に記載の参照ヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%「同一である」ヌクレオチド配列を有する核酸又はポリヌクレオチドとは、そのポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドに対して5個以下の点突然変異を含み得ることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であるものとする。言い換えると、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列中のヌクレオチドの5%以下が欠失され得る、若しくは別のヌクレオチドで置換され得るか、又は、参照配列中の全ヌクレオチドの5%以下の数のヌクレオチドが参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの改変は、参照ヌクレオチド配列の5’末端若しくは3’末端位置で生じていてもよいし、それらの末端位置の間の任意の場所で生じていてもよいし、参照配列内の残基においてそれぞれ個別に、若しくは参照配列内の1個若しくは複数の連続する群に散在していてもよい。実際問題として、任意の特定のポリヌクレオチド配列が本明細書に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるか否かは、ポリペプチドに関して上記で論じたような公知のコンピュータプログラムを使用して(例えば、ALIGN−2)、慣例的に決定することができる。
【0103】
[00105]ポリペプチドの誘導体又は変異体は、誘導体又は変異体のアミノ酸配列がオリジナルのペプチド由来の100アミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有する場合、ペプチドと「相同性」を有する、又は「相同」であると言われる。特定の実施形態において、誘導体又は変異体は、誘導体と同じ数のアミノ酸残基を有するペプチド又はペプチド断片のいずれかと少なくとも75%同一である。特定の実施形態において、誘導体のアミノ酸配列は、誘導体と同じ数のアミノ酸残基を有するペプチド又はペプチドの断片のいずれかと少なくとも85%同一である。特定の実施形態において、誘導体のアミノ酸配列は、誘導体と同じ数のアミノ酸残基を有するペプチド又はペプチドの断片のいずれかと少なくとも90%同一である。一部の実施形態において、誘導体又は変異体は、誘導体と同じ数のアミノ酸残基を有するペプチド又はペプチドの断片のいずれかと少なくとも95%同一である。特定の実施形態において、誘導体又は変異体は、誘導体と同じ数のアミノ酸残基を有するペプチド又はペプチドの断片のいずれかと少なくとも99%同一である。
【0104】
[00106]本明細書で使用される場合の「修飾された」という用語は、例えば、ポリペプチドの長さ、アミノ酸配列、化学構造、ポリペプチドの翻訳時修飾又は翻訳後修飾などの所定のポリペプチドに対して行われた任意の変化を意味する。形式「(修飾された)」という用語は、論じられているポリペプチドが任意選択的に修飾されていることを意味し、すなわち、論じられているポリペプチドは修飾されていてもよく、修飾されていなくてもよい。
【0105】
[00107]いくつかの態様において、抗原結合性構築物は、本明細書に開示されている表(複数可)又は受託番号(複数可)に示した関連のアミノ酸配列又はその断片に対して少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、単離された抗原結合性構築物は、本明細書に開示されている表(複数可)又は受託番号(複数可)に示した関連のヌクレオチド配列又はその断片に対して少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%同一であるポリヌクレオチドによってコードされているアミノ酸配列を含む。
【0106】
[00108]特定の実施形態において、抗原結合性ポリペプチドは、これらの抗体のヒト化バージョン又はキメラバージョンに由来する。
【0107】
[00109]非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分については、ヒト化抗体は、移植体の超可変領域由来残基が、非ヒトの種(ドナー抗体)、例えば、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などの超可変領域由来残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(移植体抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、移植体抗体又はドナー抗体で確認されていない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの、実施的にすべての可変ドメインを含み、全部又は実質的に全部の超可変ループは非ヒト免疫グロブリンのループに対応し、全部又は実質的に全部のFRはヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体はまた、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含み得る。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。いくつかの実施形態において、抗TDP−43抗原結合性構築物はヒト化されている。一実施形態において、ヒト化抗TDP−43抗体は、マウスCDRのアミノ酸を含む。
【0108】
[00110]また、脱免疫化を使用して、抗体の免疫原性を減少させることができる。
【0109】
[00111]本明細書では、「脱免疫化」という用語は、T細胞エピトープを修飾する抗体の改変を含む。例えば、国際公開第98/52976号及び国際公開第00/34317号を参照されたい。例えば、出発抗体由来のVH配列及びVL配列を分析し、ヒトT細胞エピトープを、相補性決定領域(CDR)及びその配列内の他の重要な残基に関するエピトープの位置を示すそれぞれのV領域から「マッピングする」。最終抗体の活性を変化さえるリスクの低い代替アミノ酸置換を同定するために、T細胞エピトープ地図から個々のT細胞エピトープを分析する。一連の代替VH配列及びVL配列は、アミノ酸置換の組合せを含んで設計され、続いて、本明細書に記載の診断方法及び治療方法で使用するために、これらの配列は、一連の結合性ポリペプチド、例えば、その免疫特異的断片を含むTDP−43特異的抗体に組み入れられ、その後、これは機能に関して試験される。典型的には、12〜24個の変異抗体が産生され、試験される。次いで、修飾されたV領域及び/又はC領域を含む完全な重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子を発現ベクターへクローニングし、その後のプラスミドを、全抗体産生用の細胞株に導入する。次いで、抗体を適切な生化学アッセイ及び生物学的アッセイにおいて比較し、最適な変異体を同定する。
【0110】
医薬組成物
[00112]本明細書に記載の抗原結合性構築物を含む医薬組成物もまた本明細書で提供される。こうした組成物は、構築物及び医薬的に許容される担体を含む。
【0111】
[00113]「医薬的に許容される」という用語は、連邦政府又は州政府の監督官庁によって承認されているか、又は米国薬局方、若しくは動物、特にヒトにおける使用に対して一般に認められている他の薬局方に挙げられていることを意味する。「担体」という用語は、治療剤と共に投与される希釈剤、アジュバント、添加剤、又はビヒクルを意味する。こうした医薬担体は、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの鉱油、動物、植物又は合成起源のものを含む、水及び油などの滅菌液体であり得る。いくつかの態様において、担体は、天然では確認されていない人工担体である。医薬組成物が静脈内投与される場合、水を担体として使用することができる。生理食塩水及び水性デキストロース及びグリセロール水溶液もまた、特に注射液用の液体担体として使用することができる。適切な医薬添加剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。本組成物は、所望により、少量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの剤型を取ることができる。本組成物は、従来の結合剤及び担体、例えばトリグリセリドなどを使用し、坐剤として処方することができる。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。適切な医薬担体の例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。こうした組成物は、患者に適切な投与剤型を提供するため、好ましくは精製形態の治療上有効な量の本化合物を適切な量の担体と共に含む。製剤は投与方法に適合するものとする。
【0112】
[00114]特定の実施形態では、本構築物を含む組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として、日常的な手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張水性緩衝液の溶液である。必要に応じて、本組成物はまた、注入部位の痛みを緩和するため、可溶化剤及び局所麻酔剤、例えばリグノカインなどを含むことができる。一般に、成分は、単位剤形で、例えば、活性剤の量を示すアンプル又はサシェットなどの密封容器中の凍結乾燥粉末又は水非含有の濃縮物として、個別に、又は一緒に混合して提供される。本組成物が輸液によって投与される場合、滅菌された医薬グレードの水又は生理食塩水を含有する輸液ボトルを用いて投与することができる。本組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用の滅菌水又は生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0113】
[00115]特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、中性又は塩の形態として製剤化される。医薬的に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの陰イオンで形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの陽イオンで形成されるものが挙げられる。
【0114】
TDP−43抗原結合性構築物の調製方法
[00116]また、抗TDP−43抗原結合性構築物を産生する方法も本明細書に記載されている。特定の実施形態において、本抗原結合性構築物は、細胞、例えば、酵母、細菌などの微生物、又はヒト若しくは動物の細胞株における発現によって組換え分子として産生される。実施形態において、抗TDP−43抗原結合性構築物は、細胞から分泌される。
【0115】
[00117]抗原結合性構築物は、抗原結合性構築物をコードする発現カセットを使用して、宿主細胞中で発現させることができる。「発現カセット」という用語は、標的細胞の特定の核酸を転写することができる一連の特定の核酸エレメントを用いて、組換えにより、又は合成により産生されるポリヌクレオチドを意味する。組換え発現カセットは、ベクター、例えば、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス、又は核酸断片に組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、他の配列中に、転写される核酸配列及びプロモーターを含む。特定の実施形態において、本明細書に記載の発現カセットは、本明細書に記載の抗原結合性構築物又はその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0116】
[00118]「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は、「発現構築物」と同義であり、標的細胞においてそれが操作可能に会合される特定遺伝子の発現を導入及び誘導するために使用される核酸分子を意味する。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、並びにそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれているベクターを含む。本明細書に記載の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターは、多量の安定的なmRNAを転写することができる。発現ベクターが標的細胞の内部に存在すると、遺伝子によってコードされているリボ核酸分子又はタンパク質が細胞転写及び/又は翻訳機構によって産生される。一実施形態において、本明細書に記載の発現ベクターは、本明細書に記載の抗原結合性構築物又はその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。例示的なベクターは本明細書に記載されている。
【0117】
[00119]典型的には、宿主細胞は、抗原結合性構築物をコードする発現ベクターで形質転換される。「細胞」、「宿主細胞」、「細胞株」及び「細胞培養物」は、本明細書では互換的に使用され、こうしたすべての用語は、細胞の増殖又は培養から生じる後代を含むものと理解されたい。「形質転換」及び「トランスフェクション」は、DNAを細胞に導入するプロセスを意味するよう互換的に使用される。宿主細胞は、継代回数に関係なく、初代形質転換細胞及びそれに由来する後代を含む「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含む。特定の実施形態において、後代は、核酸内容物が親細胞と完全に同一ではないが、突然変異を含み得る。最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたのと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異後代が本明細書に含まれる。
【0118】
[00120]宿主細胞は、本明細書中に記載の抗原結合性構築物を生成するために使用することができる任意のタイプの細胞系である。宿主細胞としては、培養細胞、例えば、哺乳類培養細胞、例えば、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞など、細菌(例えば、大腸菌及び枯草菌)、酵母菌(例えば、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)及びピキア・パストリス(Pichia pastoris))、糸状菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus))、昆虫細胞及び植物細胞が挙げられ、ごく少数ではあるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物又は動物組織内に含まれる細胞も挙げられる。宿主細胞のさらなる例は、本明細書に記載されている。
【0119】
[00121]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、哺乳動物細胞において産生される。選択実施形態において、哺乳動物細胞は、VERO、HeLa、HEK、NS0、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、W138、BHK、COS−7、Caco−2、及びMDCK細胞、並びにそれらのサブクラス及び変異体からなる群から選択される。
【0120】
発現ベクター
[00122]本明細書に記載の抗原結合性構築物をコードするポリヌクレオチドを含有すベクター、宿主細胞、並びに合成技術及び組換え技術による抗原結合性構築物タンパク質の産生を提供する。ベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、又はレトロウイルスベクターであってもよい。レトロウイルスベクターは、複製コンピテント又は複製欠損であってもよい。後者の場合、ウイルス増殖は、一般に、相補的宿主細胞においてのみ生じ得る。
【0121】
[00123]特定の実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、宿主における増殖用選択マーカーを含有するベクターに連結されている。一般に、プラスミドベクターは、沈殿物、例えばリン酸カルシウム沈殿物中に、又は荷電脂質との複合体中に導入される。ベクターがウイルスである場合、適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでパッケージングし、次いで宿主細胞に形質導入することができる。
【0122】
[00124]特定の実施形態において、ポリヌクレオチド挿入物は、適切なプロモーター、例えば、少し名称を挙げるとすれば、ファージラムダPLプロモーター、大腸菌lac、trp、phoA及びracプロモーター、SV40初期及び後期プロモーター、並びにレトロウイルスLTRのプロモーターなどに作動可能に連結されている。他の適切なプロモーターは、当業者には公知である。本発現構築物は、転写開始、終止に関する部位、及び転写領域において、翻訳用のリボソーム結合部位をさらに含む。構築物によって発現される転写物のコード部分は、最初に翻訳開始コドン、及びポリペプチド翻訳の最後に適切に位置している終止コドン(UAA、UGA又はUAG)を含むのが好ましい。
【0123】
[00125]示したように、発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むのが好ましい。こうしたマーカーとしては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418、グルタミンシンターゼ、又は真核細胞培養用のネオマイシン耐性、並びに大腸菌及び他の細菌培養用のテトラサイクリン、カナマイシン又はアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。適切な宿主の代表的な例としては、限定するものではないが、大腸菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)及びサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)細胞などの細菌細胞;酵母細胞(例えば、サッカロマイセス・セレビジエ又はピキア・パストリス(ATCC受託番号201178))などの真菌細胞;ショウジョウバエS2及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9細胞などの昆虫細胞;CHO、COS、NSO、293、及びBowesメラノーマ細胞などの動物細胞;並びに植物細胞が挙げられる。上記の宿主細胞に関する適切な培養培地及び条件は、当技術分野において公知である。
【0124】
[00126]細菌における使用に好ましいベクターとしては、QIAGEN、Inc.から入手可能なpQE70、pQE60及びpQE−9;pBluescriptベクター、Phagescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A;Stratagene Cloning Systems,Inc.から入手可能なpNH46A;Pharmacia Biotech、Inc.から入手可能なptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5が挙げられる。好ましい真核生物ベクターとしては、Stratageneから入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1及びpSG;Pharmaciaから入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG及びpSVLが挙げられる。酵母系における使用に好ましい発現ベクターとしては、限定するものではないが、pYES2、pYD1、pTEF1/Zeo、pYES2/GS、pPICZ、pGAPZ、pGAPZalph、pPIC9、pPIC3.5、pHIL−D2、pHIL−S1、pPIC3.5K、pPIC9K、及びPA0815(すべてInvitrogen,Carlsbad,CAから入手可能)が挙げられる。他の適切なベクターは、当業者には容易に理解されるであろう。
【0125】
[00127]一実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物をコードするポリヌクレオチドは、本明細書に記載のタンパク質の局在を原核細胞若しくは真核細胞の特定の区画に導くシグナル配列、及び/又は原核細胞若しくは真核細胞からの本明細書に記載のタンパク質の分泌を指示するシグナル配列に融合される。例えば、大腸菌(E.coli)では、タンパク質の発現をペリプラズム空間に向けることを考えることができる。細菌のペリプラズム空間にポリペプチドの発現を導くために抗原結合性構築物タンパク質が融合されるシグナル配列又はタンパク質(若しくはその断片)の例としては、限定するものではないが、pelBシグナル配列、マルトース結合タンパク質(MBP)シグナル配列、MBP、ompAシグナル配列、ペリプラズム大腸菌熱不安定性エンテロトキシンB−サブユニットのシグナル配列、及びアルカリホスファターゼのシグナル配列が挙げられる。いくつかのベクターは、New England Biolabsから入手可能なベクターのpMALシリーズ(特にpMAL−rhoシリーズ)など、タンパク質の局在を指示する融合タンパク質を構築するために市販されている。特定の実施形態において、本明細書に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドをpelBペクチン酸リアーゼシグナル配列に融合させ、グラム陰性細菌におけるこうしたポリペプチドの発現及び精製の効率を向上させることができる。米国特許第5,576,195号及び同第5,846,818号を参照されたい。なお、その内容は、参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする。
【0126】
[00128]哺乳動物細胞においてその分泌を導くために抗原結合性構築物タンパク質に融合されているシグナルペプチドの例としては、限定するものではないが、MPIF−1シグナル配列(例えば、GenBank受託番号AAB51134のアミノ酸1−21)、スタニオカルシンシグナル配列(MLQNSAVLLLLVISASA(配列番号51))、及びコンセンサスシグナル配列(MPTWAWWLFLVLLLALWAPARG(配列番号52))が挙げられる。バキュロウイルス発現系と共に使用可能な適切なシグナル配列は、gp67シグナル配列(例えば、GenBank受託番号AAA72759のアミノ酸1−19)である。一実施形態において、シグナル配列は、アミノ酸配列(MGDNDIHFAFLSTGVHSQVQ(配列番号53))を含むIgκ分泌シグナルである。一実施形態において、Igκ分泌シグナルは、TDP−43結合ポリペプチドのN末端に融合されている。
【0127】
[00129]選択マーカーとしてグルタミンシンターゼ(GS)又はDHFRを使用するベクターは、それぞれ、薬剤メチオニンスルホキシミン又はメトトレキセートの存在下で増幅させることができる。グルタミンシンターゼ系のベクターの利点は、グルタミンシンターゼ陰性である細胞株(例えば、マウス骨髄腫細胞株、NSO)が利用できることである。グルタミンシンターゼ発現系はまた、内在性遺伝子の機能を阻止するさらなる阻害剤を提供することによって、グルタミンシンターゼ発現細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)において機能させることができる。グルタミンシンターゼ発現系及びその構成要素は、PCT公報:国際公開第87/04462号;国際公開第86/05807号;国際公開第89/10036号;国際公開第89/10404号;及び国際公開第91/06657号に記載されており、これらは参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする。さらに、グルタミンシンターゼ発現ベクターは、Lonza Biologies,Inc.(Portsmouth、N.H.)から入手することができる。マウス骨髄腫細胞におけるGS発現系を使用するモノクローナル抗体又は抗原結合性構築物の発現及び産生は、Bebbington et al.,Bio/technology 10:169(1992)及びBiblia and Robinson Biotechnol.Prog.11:1(1995)に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0128】
宿主細胞
[00130]また、本明細書に記載のベクター構築物を含有する宿主細胞、さらには、当技術分野で公知の技術を用いて1つ又は複数の異種制御領域(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー)と作動的に連結しているヌクレオチド配列を含有する宿主細胞を提供する。宿主細胞は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト由来細胞)などの高等真核細胞、又は酵母細胞などの低級真核細胞であってもよく、又は宿主細胞は、原核細胞、例えば、細菌細胞であり得る。挿入遺伝子配列の発現をモジュレートするか、又は所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾及びプロセシングする宿主株を選択することができる。特定のプロモーターからの発現は、特定の誘導物質の存在下で上昇させることができる。したがって、遺伝子操作されたポリペプチドの発現を調節することができる。さらに、異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳及び翻訳後プロセシング及び修飾(例えば、リン酸化、切断)に関する特徴及び特異的メカニズムを有する。適切な細胞株を選択することで、発現される外来タンパク質の所望の修飾及びプロセシング確実にすることができる。
【0129】
[00131]発現用の宿主として利用できる哺乳動物細胞株は当技術分野で周知であり、限定するものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、ヒト上皮腎臓293細胞、及び他の多数の細胞株を含む、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手可能な多数の不死化細胞株が挙げられる。特に好ましい細胞株は、どの細胞株が高発現レベルを有し、構成的なManLAM結合特性を有する抗体を産生するかを決定することによって選択される。
【0130】
[00132]本明細書に記載の核酸及び核酸構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション;DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、又は他の方法によって実施することができる。こうした方法は、Davis et al.,Basic Methods In Molecular Biology(1986)などの多数の標準実験室マニュアルに記載されている。本明細書に記載のポリペプチドは、実際には、組換えベクターを欠損している宿主細胞によって発現させることができることを具体的に検討している。
【0131】
[00133]本明細書中で論じているベクター構築物を含有する宿主細胞を包含することに加えて、一実施形態はまた、内在性遺伝物質を欠失又は置換するように(例えば、カーゴポリペプチドに対応するコード配列は、カーゴポリペプチドに対応する抗原結合性構築物タンパク質と置き換えられる)及び/又は遺伝物質を含むように操作された脊椎動物起源の、特に哺乳動物起源の一次、二次及び不死化宿主細胞も包含する。内在性ポリヌクレオチドと作動可能に連結している遺伝物質は、内在性ポリヌクレオチドを活性化、変化及び/又は増幅させることができる。
【0132】
[00134]さらに、当技術分野で知られている技術を使用して、異種ポリヌクレオチド(例えば、タンパク質、又はその断片若しくは変異体をコードするポリヌクレオチド)及び/又は異種制御領域(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー)を、相同組換えを介して治療用タンパク質をコードする内在性ポリヌクレオチド配列と作動可能に連結させることができる(例えば、米国特許第5,641,670号、1997年6月24日発行;国際公開第96/29411号;国際公開第94/12650号;Koller et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932−8935(1989);及びZijlstra et al.,Nature 342:435−438(1989)を参照されたい、なお、それぞれの開示内容は、その全体を参照により組み入れるものとする)。
【0133】
精製
[00135]本明細書に記載の抗原結合性構築物タンパク質は、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、例えばタンパク質Aなどとのアフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性電荷相互作用クロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィーなどを含む周知の方法によって、組換え細胞培養物から回収及び精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を精製に用いるのが最も好ましい。
【0134】
[00136]特定の実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物タンパク質は、限定するものではないが、Q−セファロース、DEAEセファロース、ポロスHS、ポロスDEAF、トヨパールQ、トヨパールQAE、トヨパールDEAE、Resource/Source Q及びDEAE、Fractogel Q、及びDEAEカラムによるクロマトグラフィーを含む、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製する。
【0135】
[00137]特定の実施形態において、本明細書に記載のタンパク質は、限定するものではないが、SP−セファロース、CMセファロース、ポロスHS、ポロスCM、トヨパールSP、トヨパールCM、Resource/Source S及びCM、Fractogel S及びCMカラム、並びにそれらの同等物及び類似物を含む、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製する。
【0136】
化学合成及び無細胞発現
[00138]さらに、本明細書に記載の抗原結合性構築物タンパク質は、当技術分野で公知の技術を使用して化学的に合成することができる(例えば、Creighton,1983,Proteins:Structures and Molecular Principles,W.H.Freeman & Co.,N.Y and Hunkapiller et al.,Nature,310:105−111(1984)を参照されたい)。例えば、ポリペプチド断片に対応するポリペプチドは、ペプチド合成装置を用いることにより合成することができる。さらに、所望により、非古典的アミノ酸又は化学的アミノ酸類似体をポリペプチド配列への置換又は付加として導入することができる。非古典的アミノ酸としては、限定するものではないが、一般的なアミノ酸のD−異性体、2,4−ジアミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、g−Abu、e−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロ−アミノ酸、設計アミノ酸、例えばβ−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸、及び一般のアミノ酸類縁体が挙げられる。さらに、アミノ酸はD(右旋性)又はL(左旋性)であり得る。
【0137】
[00139]特定の実施形態において、無細胞タンパク質発現系を利用して、生存細胞を使用することなく、ポリペプチド(例えば、重鎖及び軽鎖ポリペプチド)を同時発現させる。代わりに、DNAをRNAに転写し、RNAをタンパク質に翻訳するのに必要とされるすべての成分(例えば、リボソーム、tRNA、酵素、補因子、アミノ酸)を、インビトロで使用するための溶液として提供する。特定の実施形態において、インビトロでの発現は、(1)重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドをコードする遺伝子鋳型(mRNA又はDNA)、並びに(2)必要な転写及び翻訳分子機構を含有する反応溶液が必要である。特定の実施形態において、細胞抽出物は、反応溶液の成分、例えば、mRNA転写用のRNAポリメラーゼ、ポリペプチド翻訳用のリボソーム、tRNA、アミノ酸、酵素補因子、エネルギー源、及び適切なタンパク質折りたたみに必須の細胞成分などを実質的に供給する。無細胞タンパク質発現系は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、又はそれらの組合せに由来する溶解物を使用して調製することができる。こうした細胞溶解物は、翻訳に必要とされる酵素及びビルディングブロックの正確な組成及び割合を提供することができる。いくつかの実施形態において、細胞膜は、細胞の細胞質ゾル及びオルガネラ成分のみを残して除去する。
【0138】
[00140]いくつかの無細胞タンパク質発現系は、Carlson et al.(2012)Biotechnol.Adv.30:1185−1194で論述されているように、当分野で公知である。例えば、無細胞タンパク質発現系は、原核細胞又は真核細胞に基づいて利用することができる。原核生物の無細胞発現系の例としては、大腸菌由来のものが挙げられる。真核生物の無細胞タンパク質発現系は、例えば、ウサギ網状赤血球、コムギ胚芽及び昆虫細胞由来の抽出物に基づいて利用することができる。こうした原核及び真核細胞無細胞タンパク質発現系は、Roche,Invitrogen,Qiagen及びNovagenなどの会社から市販されている。当業者は、相互に対を形成することができるポリペプチド(例えば、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチド)を産生し得る適切な無細胞タンパク質発現系を容易に選択することができる。さらに、無細胞タンパク質発現系は、シャペロン(例えば、BiP)及びイソメラーゼ(例えば、ジスルフィドイソメラーゼ)を補充し、IgGフォールディングの効率を改善することもできる。
【0139】
[00141]いくつかの実施形態において、無細胞発現系を利用して、DNA鋳型(転写及び翻訳)又はmRNA鋳型(翻訳のみ)から重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドを同時発現させる。
【0140】
酵母における発現
[00142]いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、酵母細胞において産生される。酵母は、通常のいずれかの方法、例えばエレクトロポレーションで所望のタンパク質のコード配列で形質転換される。エレクトロポレーションによって酵母を形質転換する方法は、Becker & Guarente(1990)Methods Enzymol.194,182に開示されている。
【0141】
[00143]有用な酵母プラスミドベクターとしては、pRS403−406及びpRS413−416が挙げられ、一般に、Stratagene Cloning Systems,La Jolla,Calif.92037,USAから入手可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405及びpRS406は、酵母組込みプラスミド(Yip)であり、酵母選択マーカーHIS3、7RP1、LEU2及びURA3を組み込んでいる。プラスミドpRS413−416は酵母セントロメアプラスミド(Ycp)である。
【0142】
[00144]タンパク質を発現する宿主としての一実施形態において有用であると考えられる酵母の例示的な属は、(以前はハンセヌラ(Hansenula)として分類されていた)ピチュア(Pichua)、サッカロマイセス、クリベロマイセス、アスペルギルス、カンジダ(Candida)、トルロプシス(Torulopsis)、トルラスポラ(Torulaspora)、スチゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)、シテロマイセス(Citeromyces)、パチソレン(Pachysolen)、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)、デバリオマイセス(Debaromyces)、トリコデルマ(Trichoderma)、セファロスポリウム(Cephalosporium)、フミコラ(Humicola)、ムコール(Mucor)、ニューロスポラ(Neurospora)、ヤロウィア(Yarrowia)、メチニコビア(Metschunikowia)、ロードスポリジウム(Rhodosporidium)、ロイコスポリジウム(Leucosporidium)、ボトリオアスクス(Botryoascus)、スポリジオボラス(Sporidiobolus)、エンドマイコプシス(Endomycopsis)などが挙げられる。好ましい属は、サッカロマイセス、スチゾサッカロマイセス、クルベロマイセス、ピキア及びトラスポラ(Torulaspora)からなる群から選択されるものである。サッカロマイセス種の例は、サッカロマイセス・セレビジエ、サッカロマイセス・イタリカス(S.italicus)及びサッカロマイセス・ロキシ(S.rouxii)である。
【0143】
[00145]クリベロマイセス種の例は、クリベロマイセス・フラギリス(K.fragilis)、クリベロマイセス・ラクティス(K.lactis)及びクリベロマイセス・マルキアヌス(K.marxianus)である。適切なトルラスポラ種は、トルラスポラ・デルブルエッキ(T.delbrueckii)である。ピキア(ハンセヌラ)種の例は、ピキア・アングスタ(P.angusta)(以前はハンセヌラ・ポリモルファ(H.polymorpha))、ピキア・アノマラ(P.anomala)(以前はハンセヌラ・アノマラ(H.anomala))及びピキア・パストリス(P.pastoris)である。サッカロマイセス・セレビジエを形質転換するための方法は、欧州特許出願公開第251744号、欧州特許出願公開第258067号、及び国際公開第90/01063号に一般的に教示されており、これらはすべて参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0144】
[00146]本明細書に記載の抗原結合性構築物の合成に有用な例示的なサッカロマイセスの種としては、サッカロマイセス・セレビジエ、サッカロマイセス・イタリカス、サッカロマイセス・ディアスタティクス(S.diastaticus)及びチゴサッカロマイセス・ロキシ(Zygosaccharomyces rouxii)が挙げられる。クリベロマイセスの好ましい例示的な種としては、クリベロマイセス・フラジリス(K.fragilis)及びクリベロマイセス・ラクティス(K.lactis)が挙げられる。ハンセヌラの好ましい典型的な種としては、ハンセヌラ・ポリモルファ(現在のピキア・アングスタ)、ハンセヌラ・アノマラ(現在のピキア・アノマラ)及びピキア・カプスラータ(Pichia capsulata)が挙げられる。ピキアのさらなる好ましい例示的な種としては、ピキア・パストリスが挙げられる。アスペルギルスの好ましい例示的な種としては、アスペルギルス・ニガー(A.niger)及びアスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)が挙げられる。ヤロウィアの好ましい典型的な種としては、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica)が挙げられる。多くの好ましい酵母の種は、ATCCから入手可能である。例えば、以下の好ましい酵母の種は、ATCCから入手可能であり、タンパク質の発現に有用である:サッカロマイセス・セレビジエ、Hansen、テレモルフ株BY4743 yap3突然変異体(ATCC受託番号4022731);サッカロマイセス・セレビジエ、Hansen、テレモルフ株BY4743 hspl50突然変異体(ATCC受託番号4021266);サッカロマイセス・セレビジエ、Hansen、テレモルフ株BY4743 pmt1突然変異体(ATCC受託番号4023792);サッカロマイセス・セレビジエ、Hansen、テレモルフ(ATCC受託番号20626;44773;44774;及び62995);サッカロマイセス・ディアスタティクス Andrews et Gilliland ex van der Walt、テレモルフ(ATCC受託番号62987);クリベロマイセス・ラクティス(Dombrowski)van der Walt、テレモルフ(ATCC受託番号76492);ピキア・アングスタ(Teunisson et al.)Kurtzman、テレモルフ(ハンセヌラ・ポリモルファ de Morais et Maia、テレモルフとして寄託されているもの)(ATCC受託番号26012);アスペルギルス・ニガー van Tieghem、anamorph(ATCC受託番号9029);アスペルギルス・ニガー van Tieghem、アナモルフ(ATCC受託番号16404);アスペルギルス・ニデュランス(Eidam)Winter、アナモルフ(ATCC受託番号48756);並びにヤロウィア・リポリティカ(Wickerham et al.)、van der Walt et von Arx、テレモルフ(ATCC受託番号201847)。
【0145】
[00147]サッカロマイセス・セレビジエに適したプロモーターとしては、PGKI遺伝子、GAL1又はGAL10遺伝子、CYCI、PH05、TRP1、ADH1、ADH2、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、グルコキナーゼ、α−交配因子フェロモン、[交配因子フェロモン]、PRBIプロモーター、GUT2プロモーター、GPDIプロモーター、及び5’制御領域の部分と他のプロモーター5’制御領域の部分又は上流の活性化部位とのハイブリッドに関与しているハイブリッドプロモーター(例えば、欧州特許出願公開第258067号のプロモーター)に関する遺伝子が挙げられる。
【0146】
[00148]スチゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)において使用するための簡便な制御可能なプロモーターは、Maundrell(1990)J.Biol.Chem.265,10857−10864に記載されているnmt遺伝子由来のチアミン抑制性プロモーター、及びHoffman & Winston(1990)Genetics 124,807−816に記載されているグルコース抑制性jbp1遺伝子プロモーターが挙げられる。
【0147】
[00149]外来遺伝子を発現させるためにピキアを形質転換する方法は、例えば、Creggら(1993年)及び様々なPhillipsの特許(例えば、米国特許第4,857,467号参照、これは参照により本明細書に組み入れるものとする)に教示されており、ピキア発現キットは、Invitrogen BV,Leek,Netherlands、及びInvitrogen Corp.,San Diego,CAから市販されている。適切なプロモーターとしては、AOX1及びAOX2が挙げられる。Gleeson et al.(1986)J.Gen.Microbiol.132,3459−3465は、ハンセヌラベクター及び形質転換に関する情報を含み、適切なプロモーターはMOX1及びFMD1である;欧州特許出願公開第361991号、Fleerら(1991)及びRhone−Poulenc Rorerの他の出版物は、クリベロマイセスの種において外来タンパク質を発現する方法を教示しており、適切なプロモーターはPGKIである。
【0148】
[00150]転写終結シグナルは、好ましくは、転写終結及びポリアデニル化のための適切なシグナルを含有する真核生物遺伝子の3’隣接配列である。適切な3’隣接配列は、例えば、使用される発現制御配列に自然に連結されている遺伝子のものであってもよく、すなわちプロモーターに対応していてもよい。或いは、これらは異なっていてもよく、この場合、サッカロマイセス・セレビジエADHI遺伝子の終止シグナルが好ましい。
【0149】
[00151]特定の実施形態において、所望の抗原結合性構築物タンパク質は、選択した酵母において有効な任意のリーダーであり得る、分泌リーダー配列でまず発現される。サッカロマイセス・セレビジエにおいて有用なリーダーとしては、交配因子αポリペプチド(MFα−1)由来のもの及び欧州特許出願公開第387319号のハイブリッドリーダーが挙げられる。こうしたリーダー(又はシグナル)は、成熟タンパク質が周囲の培地に放出される前に、酵母によって切断される。さらに、こうしたリーダーとしては、特開昭62−096086号公報(911036516として付与)に記載されているS.セレビシエインベルターゼ(SUC2)、酸性ホスファターゼ(PH05)、MFα−1のプレ配列、Oグルカナーゼ(BGL2)及びキラートキシン;サッカロマイセス・ディアスタティクスグルコアミラーゼII;サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(S.carlsbergensis)α−ガラクトシダーゼ(MEL1);クリベロマイセス・ラクティスキラー毒素;並びにカンジダグルコアミラーゼが挙げられる。
【0150】
翻訳後修飾:
[00152]特定の実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物は翻訳中又は翻訳後に差異的に修飾されている。いくつかの実施形態において、その修飾は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、及び抗体分子若しくは抗原結合性構築物又は他の細胞リガンドへの結合のうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、抗原結合性構築物は、限定するものではないが、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBHによる特異的化学切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;及びツニカマイシン存在下における代謝合成を含む、公知の技術によって化学的に修飾することができる。
【0151】
[00153]本明細書に記載の抗原結合性構築物のさらなる翻訳後修飾としては、例えば、N−結合型又はO−結合型の炭水化物鎖、N末端又はC末端のプロセシング、化学的部分のアミノ酸骨格への結合、N結合型又はO結合型の炭水化物鎖の化学修飾、及び原核生物宿主細胞発現の結果としてのN末端メチオニン残基の付加又は欠失が挙げられる。本明細書に記載の抗原結合性構築物は、タンパク質の検出及び単離することができる酵素標識、蛍光標識、同位体標識又は親和性標識などの検出可能な標識で修飾される。特定の実施形態において、適切な酵素標識の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジンビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ;適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライド又はフィコエリトリンが挙げられ;発光性材料の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光性物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられ;適切な放射性物質の例としては、ヨウ素、炭素、硫黄、トリチウム、インジウム、テクネチウム、タリウム、ガリウム、パラジウム、モリブデン、キセノン、フッ素が挙げられる。
【0152】
[00154]特定の実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物は、放射性金属イオンと会合する大環状キレート剤に結合されている。
【0153】
[00155]いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物は、翻訳後プロセシングなどの天然プロセスによって、又は当技術分野で周知の化学修飾技術のいずれかによって修飾される。特定の実施形態において、同じタイプの修飾が、所定のポリペプチドのいくつかの部位で、同一程度又は異なる程度で存在し得る。特定の実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物由来のポリペプチドは、例えば、ユビキチン化の結果として分枝しており、いくつかの実施形態において、分枝を有するか又は有さない環状である。環状ポリペプチド、分枝状ポリペプチド及び分枝環状ポリペプチドは、翻訳後天然プロセスの結果によるものであるか、又は合成方法によって作製される。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル反応、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリスチル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのタンパク質へのアミノ酸の転写−RNA媒介付加、及びユビキチン化などが挙げられる。(例えば、PROTEINS−STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES,2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993);POST−TRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,pgs.1−12(1983);Seifter et al.,Meth.Enzymol.182:626−646(1990);Rattan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.663:48−62(1992)を参照されたい)。
【0154】
[00156]特定の実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物は、本明細書に記載のタンパク質によって結合されているか、タンパク質に結合しているか、又はタンパク質と会合するポリペプチドのイムノアッセイ又は精製に特に有用な固相担体に結合される。こうした固相担体としては、限定するものではないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンが挙げられる。
【0155】
神経変性疾患の治療における抗原結合性構築物の使用
[00157]特定の実施形態において、TDP−43タンパク質障害を特徴とする疾患又は障害を治療する方法であって、こうした治療、予防又は改善が望まれる対象に、本明細書に記載のTDP−43抗原結合性構築物を、疾患又は障害を治療、予防又は改善するのに有効な量で投与することを含む、方法が提供される。
【0156】
[00158]「障害」又は「疾患」とは、本明細書に記載の抗TDP−43抗体による治療又は方法の効果を享受し得る任意の症状を意味する。これには、哺乳動物を当該の疾患に罹患しやすくするそれらの病的症状を含む、慢性及び急性の障害又は疾患が含まれる。好ましい実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物で治療される疾患は、TDPタンパク質障害に関連する。これらの障害としては、限定するものではないが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、前頭側頭葉変性症(FTLD)運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、レーヴィ小体型痴呆、ハンチントン病、レーヴィ小体疾患、軽度認知障害(MCI)、又は神経損傷、脳損傷、脳虚血(脳卒中)によって引き起こされたTDP−43異常が挙げられる。
【0157】
[00159]「対象」という用語は、治療、観察又は実験の目的である動物、いくつかの実施形態においては哺乳動物を意味する。動物は、ヒト、非ヒト霊長類、ペット動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、又は実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)であり得る。
【0158】
[00160]本明細書で使用される「哺乳動物」という用語は、限定するものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマ及びブタが挙げられる。いくつかの実施形態において、抗TDP−43抗原結合性構築物で治療される対象は、マウス又はヒトである。
【0159】
[00161]「治療」とは、治療される個体又は細胞の自然経過を変化させる試みにおける臨床上の介入を意味し、予防のため、又は臨床病理の経過中に実施することができる。治療の望ましい効果としては、疾患の発症又は再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的結果の低減、疾患の進行速度の減速、疾患状態の改善又は軽減、及び寛解又は予後の改善が挙げられる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物は、疾患又は障害の発症を遅らせるために使用される。
【0160】
[00162] 治療の望ましい効果としては、限定されないが、疾患の発症又は再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的結果の低減、疾患の進行速度の減速、疾患状態の改善又は軽減、及び寛解又は予後の改善が挙げられる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の構築物は、疾患の発症を遅らせるため、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0161】
[00163]本明細書で使用される「有効な量」という用語は、列挙した方法の目標を達成する、例えば、治療しようとする疾患、症状又は障害の病状のうちの1つ又は複数をある程度まで緩和する、投与される構築物の量を意味する。治療用タンパク質の異常発現及び/又は活性に関連する疾患又は障害の治療、阻害及び予防において有効である、本明細書に記載の組成物の量は、標準の臨床技術によって決定することができる。さらに、最適な投与量範囲を同定しやすくするために、インビトロアッセイを任意で使用することもできる。製剤で使用される正確な用量は、投与経路、及び疾患又は障害の重篤度によって決まり、医療関係者の判断及びそれぞれの患者の状況に従って決定されるものとする。有効な用量は、インビトロ系又は動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から推定される。
【0162】
[00164]本明細書に記載のTDP−43抗原結合性構築物は、対象に投与される。各種送達系が知られており、本明細書に記載の抗原結合性構築物製剤を投与するために使用することができる。例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへのカプセル化、化合物の発現が可能な組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu 、J.Biol.Chem.262:4429−4432(1987)を参照)、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての核酸の構築などである。投与方法としては、限定するものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外及び経口経路が挙げられる。本化合物又は組成物は、任意の都合のよい経路、例えば、注入又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を介した吸収によって投与することができ、他の生物活性物質と共に投与することができる。投与は全身的又は局所的であり得る。
【0163】
[00165]さらに、特定の実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物組成物は、脳室内及び髄腔内注射を含む任意の適切な経路によって、中枢神経系に導入することが望ましい。脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバーなどのリザーバーに取り付けられている脳室内カテーテルによって促進され得る。また肺投与は、例えば、吸入器又はネブライザー、及びエアロゾル化剤を用いた製剤を使用することによって使用することができる。
【0164】
[00166]特定の実施形態において、治療を必要とする領域に局所的に本明細書に記載の抗原結合性構築物又は組成物を投与することが望ましい。これは、例えば、限定するものではないが、手術中の局所注入よって、例えば外科手術後の創傷包帯との併用時の局所適用によって、注射によって、カテーテルによって、坐剤手段によって、或いは、インプラント手段によって達成することができ、前記インプラントは、シアラスティック膜などの膜又は繊維を含む、多孔性、非多孔性又はゼラチン状の材料である。本明細書に記載したような抗原結合性構築物を含むタンパク質を投与する場合、タンパク質が吸収しない物質を使用するように注意することが好ましい。
【0165】
[00167]別の実施形態において、本抗原結合性構築物又は組成物は、小胞、特にリポソームで送達することができる(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treat et al.,in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353−365(1989);Lopez−Berestein,同文献,pp.317−327;一般に同文献を参照)。
【0166】
[00168]さらに別の実施形態において、本抗原結合性構築物又は組成物は、制御放出系で送達され得る。一実施形態において、ポンプを使用することができる(Langer,上掲;Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwald et al.,Surgery 88:507(1980);Saudek et al.,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照)。別の実施形態において、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,J.,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照されたい;また、Levy et al.,Science 228:190(1985);During et al.,Ann.Neurol.25:351(1989);Howard et al.,J.Neurosurg.71:105(1989)を参照されたい)。さらに別の実施形態において、制御放出系を治療標的、例えば脳の近傍に置くことができ、その結果、全身投与量のごく一部しか必要ではない(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,vol.2,pp.115−138(1984)を参照されたい)。
【0167】
遺伝子治療
[00169]いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物をコードする核酸は、適切な核酸発現ベクターの一部として核酸を構築し、核酸を細胞内に導入するように投与することによって、例えば、レトロウイルスベクターを使用することによって(米国特許第4,980,286号を参照されたい)、又は直接注入によって、又は微粒子衝撃の使用によって(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)、又は脂質若しくは細胞表面受容体若しくはトランスフェクション剤によるコーティングによって、又は核内に入ることが知られているホメオボックス様ペプチドに連結して投与することによって(例えば、Joliot et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1864−1868(1991)を参照)、インビボにおいて投与し、そのコードされたタンパク質の発現を促進することができる。或いは、核酸を細胞内に導入し、相同組換えによって、発現のために宿主細胞DNA内に組み込むことができる。
【0168】
[00170]特定の実施形態において、抗原結合性構築物をコードする核酸は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに挿入されている(Patel et al.,Molecular Therapy 22(3)498−510(2014)、及び本明細書の実施例12を参照)。ウイルスベクターは、例えば髄腔内注射によって、全身的又は局所的に、対象に投与することができる。
【0169】
[00171]特定の実施形態において、本明細書に記載の抗原結合性構築物は、TDP−43上の非オーバーラップ結合標的エピトープを有する抗原結合性構築物との組合せとして投与される。
【0170】
[00172]疾患又は障害の治療、阻害及び予防で有効である抗原結合性構築物の量は、標準の臨床技術によって決定することができる。さらに、インビトロアッセイを任意に使用し、最適な投与量の範囲を同定しやすくすることができる。また、製剤で使用される正確な用量は、投与経路、及び疾患又は障害の重篤度にも依存し、医療関係者の判断及びそれぞれの患者の状況に従って決定されるものとする。有効用量は、インビトロ系又は動物モデル試験系から得られる用量反応曲線から推定される。
【0171】
[00173]本明細書には、それを必要とする対象におけるTDP−43タンパク質障害の少なくとも1つの病状の発症を予防又は遅延する方法であって、本明細書に記載のTDP−43抗原結合性構築物の治療上有効な量を投与するステップを含む、方法が包含される。一実施形態において、対象は実験生物であり、例えば、限定するものではないが、トランスジェニックマウスである。一実施形態において、対象はヒトである。
【0172】
[00174]本明細書に記載の抗原結合性構築物は、単独で投与することができ、又はRilutek(登録商標)などの神経変性疾患に使用される他のタイプの治療と組み合わせて投与することができる。
【0173】
抗原結合性構築物を特徴付ける方法
[00175]本明細書に記載のTDP−43抗原結合性構築物は、TDP−43タンパク質障害の任意のインビボモデル又はインビトロモデルを用いて特徴付けすることができる。TDP−43抗原結合性構築物が、TDP−43タンパク質障害に関するマウスモデル、例えば、Swamp et al.Brain 134:2610−2626(2011)に記載されているTDP−43タンパク質障害に関する動物モデルの1つにおいて特徴付けすることができることは、当業者には理解されよう。Swarup et al.2011には、TDPタンパク質障害の3つのトランスジェニックマウスモデル:野生型、G348C及びA315Tが記載されている。これらのトランスジェニックマウスは、運動及び認知障害を示す(Barnes迷路試験、受動回避試験及び加速回転棒試験によるステップによって測定した場合)。さらに、マウスは、細胞質TDP−43陽性ユビキチン含有封入体、中間フィラメント異常、軸索障害及び神経炎症を示す。さらなる動物モデルは、Wegorzewska et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.106(2009),18809−14;Gurney et al,Science 264(1994),1 772−75;Shan et al,Neuropharmacol.Letters 458(2009),70−74;Wils et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.106(2010),3858−63;Duchen and Strich,J.Neurol.Neurosurg,Psychiatry 31(1968),535−42;Dennis and Citron,Neuroscience 185(2009),745−50;Swamp et al,Brain 134(2011),2610−2626;Sgaz et al,J Clin invest.121(2):726−38(2011);Caccamo et al.Am J Pathol.180(l):293−302(2012),Cannon et al,Acta Neuropathol.123(6):807−23(2012),Custer et al,Hum Moi Genet.19(9):1741−55(2010):及びTatom et al,oL Ther.17(2009),607−613に記載されている。これらの動物モデルを用いて、本明細書に記載のTDP−43抗原結合性構築物を評価することができる。
【0174】
[00176]TDP−43タンパク質障害の実験モデルは、予防的な設定で使用することができ、又は治療的な設定で使用することができる。予防的な設定においては、動物への投与は、TDP−43タンパク質障害又はその病状の発症よりも前に開始する。本明細書に記載のTDP−43抗原結合性構築物は、TDP−43タンパク質障害又はその病状の発症を予防、軽減又は遅延させるその能力について評価することができる。治療モデルにおいて、動物への投与は、TDP−43タンパク質障害又はその病状の発症の後に開始する。治療の設定において、TDP−43抗原結合性構築物は、TDP−43タンパク質障害又はその病状を治療、軽減又は緩和するその能力について評価される。TDP−43タンパク質障害の病状としては、限定するものではないが、実験対象のニューロン、脳、脊髄、脳脊髄液又は血清における病理学的TDP−43沈着物の蓄積、病理学的TDP−43分布、リン酸化TDP−43、又は不溶性TDP−43画分が挙げられる。TDP−43タンパク質障害の任意の動物モデルにおける陽性の予防的又は治療的結果は、特定のTDP−43抗原結合性構築物が、実験モデル生物以外の対象において予防的又は治療的目的のために使用できることを示し、例えば、それを必要とするヒト対象においてTDP−43タンパク質障害を治療するために使用される。
【0175】
[00177]一実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は、TDP−43タンパク質障害マウスモデル及び対応する対照野生型マウスに投与することができる。投与される抗原結合性構築物は、マウス抗体又はヒト−マウスキメラであってもよい。TDP−43抗原結合性構築物は、当技術分野で公知の任意の手段によって、例えば、腹腔内、頭蓋内、筋肉内、くも膜下腔内、静脈内、皮下、経口及びエアロゾル投与によって投与することができる。実験動物には、1、2、3、4、5回又はそれ以上の用量のTDP−43抗原結合性構築物又は対照組成物、例えばPBSを投与することができる。一実施形態において、実験動物に1又は2回用量のTDP−43抗原結合性構築物を投与する。別の実施形態において、動物は、数週間又は数ヶ月にわたって、TDP−43抗原結合性構築物を常習的に投与される。当業者は、実験目的、例えば、急性試験のための投薬計画、慢性試験のための投薬計画、毒性試験のための投薬計画、予防的又は治療的研究のための投薬計画などの投薬計画を容易に設計することができる。実験動物の特定の組織区画、例えば、限定するものではないが、血清、血液、脳脊髄液、脳又は脊髄組織におけるTDP−43抗原結合性構築物の存在は、当分野の周知の方法を用いて確立することができる。一実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は、血液脳関門を貫通することができる。別の実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は、ニューロンに入ることができる。TDP−43抗原結合性構築物の用量及び投与頻度を調節することによって、実験動物において所望の濃度を維持することができる。TDP−43タンパク質障害モデルにおける本明細書に記載のTDP−43抗原結合性構築物の効果は、治療動物及び対照動物におけるTDP−43のレベル、生化学的特性又は分布を比較することによって評価することができる。一実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は、動物モデルにおける脳又は脊髄におけるTDP−43封入体のレベル、量又は濃度を低下させることができる。構築物は、TDP−43封入体のレベル、量又は濃度を、少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、70%、90%又はそれ以上低下させることができる。別の実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は、動物モデルにおける脳又は脊髄におけるTDP−43包接陽性ニューロンの数又は頻度を、例えば、少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、70%、90%又はそれ以上低下させることができる。TDP−43抗原結合性構築物の効果は、投与後のTDP−43の分布及び生化学的特性を試験することによって評価することもできる。一実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は、動物モデルの脳又は脊髄における細胞質又は核TDP−43タンパク質の量又は濃度を、例えば、少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、70%、90%又はそれ以上低下させることができ、別の実施形態において、それは、動物モデルの脳又は脊髄における神経性TDP−43タンパク質の量又は濃度を、例えば、少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、70%、90%又はそれ以上低下させることができ、さらなる実施形態において、それは動物モデルにおける脳又は脊髄におけるリン酸化TDP−43タンパク質の量又は濃度を、例えば、少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、70%、90%又はそれ以上低下させることができる。リン酸化TDP−43は、TDP−43の病理学的にリン酸化された形態、例えばp403/p404及びp409/p410に特異的な抗体を用いて検出することができる。Hasegawa et al.,Ann Neurol,64:60−70(2008)。TDP−43抗原結合性構築物はまた、例えば、動物モデルの血液、血清又は脳脊髄液中のTDP−43濃度を、例えば、少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、70%、90%又はそれ以上、変化させる、例えば低下又は増加させることができ、一実施形態において、減少又は増加の%は、治療前に存在したレベル、数、頻度、量若しくは濃度との相対比較であり、又は未治療対象/対照治療対象に存在するレベル、数、頻度、量若しくは濃度との相対比較である。
【0176】
[00178]一実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は、対象におけるTDP−43タンパク質障害の少なくとも1つの病状の発症を予防又は遅延させることができる。一実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物は、対象におけるTDP−43タンパク質障害の少なくとも1つの病状を軽減又は解消することができる。病状は、病理学的TDP−43沈着、リン酸化TDP−43沈着、又は不溶性TDP−43沈着の形成であり得る。また病状は、血清、血液、尿又は脳脊髄液中のTDP−43の存在又は濃度若しくは量の上昇であってもよく、この場合、濃度又は量の上昇は健全な対象と比較される。特定の一実施形態において、病状は、TDP−43関連NF−kBの存在である。この病状は、神経学的症状、例えば、運動機能の喪失又は認知障害などであり得る。一実施形態において、記憶障害は、バーンズ迷路試験又は受動回避試験によるステップを使用して評価される。一実施形態において、運動機能障害は、加速ロータロッド試験を用いて評価される。一実施形態において、少なくとも1つの病状は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、30%、50%、70%、又は90%低減する。別の実施形態において、ロータロッド装置における潜伏時間は、治療した対象において、対照の対象よりも有意に高い。特定の実施形態において、ロータロッド潜伏時間は、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%増加する。
【0177】
キット及び製造品
[00179]また本明細書には、1つ又は複数の抗TDP−43抗原結合性構築物を含むキットも記載されている。キットの個別の成分は別々の容器に包装され、こうした容器に付随して、医薬品又は生物学的製剤の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形態の通知であってもよく、通知は製造、使用又は販売の政府機関による承認を示している。キットは、任意選択的に、抗原結合性構築物の使用方法又は投与計画を概説する説明書又は指示書を含むことができる。
【0178】
[00180]キットの1つ又は複数の成分が溶液、溶液として、例えば水溶液又は滅菌水溶液として提供される場合、容器手段それ自体は吸入器、シリンジ、ピペット、点眼容器又は他の類似の器具であってもよく、それらから溶液が対象に投与されるか、又はキットの他の成分に適用し、混合することができる。
【0179】
[00181]キットの成分はまた、乾燥形態又は凍結乾燥形態で提供することができ、キットは、凍結乾燥成分を再構成するための適切な溶媒をさらに含むことができる。本明細書に記載のキットは、容器の数又は種類にかかわらず、組成物を患者に投与するのを補助する器具を含んでいてもよい。こうした器具は、吸入器、鼻用スプレー器具、シリンジ、ピペット、鉗子、定量スプーン、点眼容器又は同様の医学的に承認されている送達ビヒクルであり得る。
【0180】
[00182]本明細書に記載の別の態様において、上記の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な物質を含有する製品を提供する。製品は、容器及びラベル又は容器上の若しくは容器内に同封された添付文書を含む。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、組成物を単独で収納するか、又は症状を治療、予防及び/又は診断するのに有効な別の組成物と組み合わせた組成物を収納し、滅菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は静脈用溶液バッグ又は皮下注射針によって穿刺可能なストッパーバイアル)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本明細書に記載のT細胞活性化抗原結合性構築物である。ラベル又は添付文書は、本組成物が選択された症状の治療に使用されることを示している。さらに、製品は、(a)中に含まれている本明細書に記載の抗原結合性構築物が入っている第1の容器と、(b)中に含まれているさらなる細胞傷害性薬又は他の治療薬を含む組成物が入っている第2の容器を含んでいてもよい。本明細書に記載の本実施形態の製品は、組成物が特定の症状の治療に使用することができることを示す添付文書をさらに含んでいてもよい。或いは、又は追加的に、製品は、医薬的に許容される緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液などを含む第2(又は第3)容器をさらに含んでいてもよい。製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商品及びユーザーの観点から望ましい他の物質をさらに含んでいてもよい。
【0181】
TDP−43タンパク質障害の診断及びモニタリングにおけるTDP−43結合構築物の使用
[00183]TDP−43抗原結合性構築物は、TDP−43タンパク質障害、特に筋萎縮性側索硬化症及び/又は前頭側頭葉変性症の診断に使用することができる。本明細書は、神経変性疾患を発症しやすい対象若しくは発症が疑われる対象、又は神経変性疾患に罹患している対象の診断及び/又はモニタリングにおけるTDP−43抗原結合性構築物の使用を提供する。TDP−43抗原結合性構築物はまた、TDPタンパク質障害に罹患している対象に投与される治療の有効性をモニターする場合にも使用することができる。
【0182】
[00184]対象の生体試料中のTDP−43ポリペプチド又はその断片とNF−κBp65ポリペプチド又はその断片との間の相互作用のレベルを決定するためのアッセイ方法は、国際公開第2012/174666A1号(参照により本明細書に組み入れるものとする)として公表されている共同所有特許出願で提供されている。こうしたアッセイ方法は、本明細書に記載のTDP−43結合構築物を使用することができる。TDP−43ポリペプチド又はその断片とp65ポリペプチド又はその断片との間の相互作用の参照レベルと比較して、生体試料中のTDP−43ポリペプチド又はその断片とそのp65ポリペプチド又はその断片との間の相互作用のレベルが高いとは、対象が神経変性疾患を発症しやすい、若しくは発症が疑われるか、又は対象が神経変性疾患に罹患していることを示している。TDP−43とNF−κBとの会合の検出に、本明細書に記載のTDP−43抗原結合性構築物を使用するさらなる方法は、以下の実施例で提供している。
【0183】
[00185]別の実施形態において、TDP−43抗原結合性構築物又はそれらをコードする核酸は、免疫系又は核酸系の診断方法における試薬として、診断用組成物で使用することができる。本明細書に記載のTDP−43抗原結合性構築物は、例えば、それらが液相中で利用され得るか、又は固相担体に結合され得るイムノアッセイにおける使用に好適である。本明細書に記載のTDP−43抗原結合性構築物が利用可能なイムノアッセイの例は、直接的又は間接的な形式の競合的及び非競合的イムノアッセイである。こうしたイムノアッセイの例は、ラジオイムノアッセイ(RIA)、サンドイッチ(イムノメトリックアッセイ)、フローサイトメトリー及びウエスタンブロットアッセイである。
【0184】
[00186]本明細書に記載の抗原結合性構築物は、アッセイで使用するために標識化することができる。当業者に公知の多数の異なる標識及び標識方法がある。一実施形態において使用することができる標識のタイプの例としては、酵素、放射性同位元素、コロイド金属、蛍光性化合物、化学発光性化合物、及び生物発光性化合物が挙げられる。
【0185】
[00187]さらなる実施形態において、本明細書に記載のTDP−43抗原結合性構築物はまた、血液試料、リンパ試料、脳脊髄液又は神経組織生検試料であり得る被験個体から試料を取得し、試料とTDP−43抗原結合性構築物とを、抗体−抗原複合体を形成させることができる条件下で接触させることにより、個体における障害を診断する方法において使用することができる。次いで、こうした複合体のレベルは、当技術分野で公知の方法によって決定される。対照試料で形成されたレベルよりも有意に高いレベルは、被験個体の疾患を示している。一実施形態は、対象におけるTDP−43タンパク質障害を診断する方法であって、(a)TDP−43抗原結合性構築物で診断される対象由来の試料中のTDP−43のレベルを評価するステップと、(b)観察されたTDP−43のレベルを、対照の1名又は複数の対象におけるTDP−43のレベルを示す参照標準と比較するステップを含み、TDP−43のレベルと参照標準のレベルとの間の相違又は類似性が、TDP−43タンパク質障害に対象が罹患していることを示す、方法である。診断しようとする対象は、疾患に関して無症候性又は症状発症前であり得る。一実施形態において、対照としての対象は、TDP−43タンパク質障害、例えばALS又はFTLDを有しており、TDP−43のレベルと参照標準のレベルとの間の類似性は、診断しようとする対象がTDP−43タンパク質障害を有することを示す。
【0186】
[00188]TDP−43のレベルは、ウエスタンブロット、免疫沈降、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫定量法(RIA)、蛍光細胞分析分離装置(FACS)及びゲル電気泳動から選択される1つ又は複数の技術によってTDP−43を分析するステップを含む、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって評価することができる。
【0187】
[00189]実施例
[00190]以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の例である。これらの実施例は、単なる例示の目的で提供しており、本発明の範囲を決して限定するものではない。使用されている数値(例えば、量、温度など)に関しては、正確性を保つように努めたが、いくらかの実験誤差及び偏差は、言うまでもなく許容されたい。本発明の実施は、特に明記しない限り、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術及び薬理学の従来の方法を当業者の範囲内で使用する。こうした技術は、文献に十分に説明されている。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照されたい。
【0188】
[00191]実施例1:TDP−43のTDP−43 RRM1ドメインに対する例示的モノクローナル抗体の生成
[00192]TDP−43のRRM1ドメインをコードする組換えタンパク質に対する一連の例示的モノクローナル抗体を生成した。抗原として使用したTDP−43断片は、以下のようにして生成及び精製した。RRM1をコードするEcoRI−Not1 428bp hTDP43 cDNA断片をPCR増幅させ、pGEX−6P−1ベクター(GE Healthcare)にクローニングした。この組換えプラスミドを使用し、hTDP43の全部のRRM1ドメインをコードする136aaタンパク質を発現させるために大腸菌宿主BL21を形質転換した。続いて、15.68kDaの組換えタンパク質をグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子融合システム(GE Healthcare)を用いて精製した。
【0189】
[00193]C57B16マウスを、TDP−43のアミノ酸40−176を含むこのポリペプチド断片で免疫化した(配列については表Aを参照)。標準ハイブリドーマ技術を使用して得た例示的な抗TDP−43モノクローナル抗体は、非トランスジェニックマウス並びにヒトTDP−43を過剰発現するトランスジェニックマウス由来の脊髄抽出物をSDS−PAGE後にイムノブロッティングによって試験した場合、TDP−43タンパク質に対する免疫検出シグナルを生じた(データは示さず)。また、3つのハイブリドーマクローン、C10、G8及びE6由来の抗体は、SDS−PAGEによって分画したマウス小グリアBV−2細胞由来の核抽出物のイムノブロットでもTDP−43を検出した(図1に示した)。
【0190】
[00194]実施例2:ヒト組換えF−κB p65はヒト組換えTDP−43と直接的に相互作用する
[00195]BSA 0.8μg/ml又はヒト組換えTDP−43の0.8μg/mlから0.0125μg/mlの連続希釈液をPBSで調製し、ELISAマイクロプレート(条件当たり6ウェル)に加え、一晩インキュベートした。ヒト組換えp65−His−Tag(Enzo Life Sciences)を0.2μg/mlの濃度で調製し、すべてのウェルに加え、2時間インキュベートした。ブロッキング緩衝液中で2時間インキュベートした後、抗His−Tag−HRP(1:10.000)(Abeam)を希釈溶液中で調製し、プレートに加え、2時間インキュベートした。基質溶液を添加し、吸光度を450nmで記録した。結果を図2に示す。値は平均±semとして表している。
【0191】
[00196]実施例3:組換えTDP−43とNF−κB p65との間の相互作用は、例示的な二価モノクローナル抗RRM1−TDP−43抗体のC10、G8及びE6によって阻害される
[00197]ヒト組換えTDP−43を0.2ug/mlの濃度で調製し、ELISAマイクロプレートに加え、一晩インキュベートした。p65−His−Tag(0.4ug/ml)を、PBS、BSA(0.4ug/ml)、抗TDP−43ポリクローナル抗体(Proteintech)(0.4ug/ml IgG)又は抗RRM1−TDP−43モノクローナル抗体(Fcドメインを有するFab/Fabフォーマットを除いたC10、G8又はE6モノクローナル)(0.4ug/ml IgG)と1:1で混合し、0.2ug/mlのp65及び0.2ug/mlの干渉抗体の最終濃度にさせた。混合溶液をプレートに加え(条件当たり8ウェル)、2時間インキュベートした。ブロッキング緩衝液中で2時間インキュベートした後、抗His−Tag−HRP(1:10.000)を希釈溶液中で調製し、プレートに加え、2時間インキュベートする。基質溶液を添加し、吸光度を450nmで記録する。結果を図3に示すが、モノクローナル抗体C10、G8及びE6の3つのすべてが、TDP−43とNF−κB p65との相互作用を、ポリクローナル抗TDP抗体よりもはるかに著しく阻害することを示す。値は、平均±semとして表している。
【0192】
[00198]実施例4:一本鎖抗TDP−43抗体の誘導
[00199]mRNAを実施例1の適切なハイブリドーマ細胞株から単離し、CMVプロモーターの制御下で、scFv抗体をコードするcDNAを誘導した。PCRプライマーの混合物を使用することによって、重鎖(VH)及び軽鎖(Vk)の可変領域を第1鎖cDNAとは別に増幅し、pBZUT7(Patel et al.Mol Then,22(3),498−510 2014に開示されている)ベクターにクローニングし、配列決定した。VHドメイン及びVkドメインを構築し、相互に連結して完全長scFv遺伝子を得た。scFv遺伝子は、標準的な可撓性20アミノ酸リンカー(Gly4Ser)3と一緒にVH−リンカー−Vkフォーマットに構築され、次いで、Mycタグ付きPsw1 scFVD1.3 Tag1発現ベクター(Patel et al.op.cit.)の上流にサブクローニングし、scFv−TDP−43を生成した。次いで、例示的なクローンを配列決定した。生成されたscFvは、効率的に分泌させるマウス免疫グロブリン(Ig)κ−分泌シグナルと検出を容易にするためのヒトc−mycエピトープを含有していた。これらの構築物の概略図を図4に示す。
【0193】
[00200]実施例5:scFvフォーマットを有する抗TDP−43抗体は、HEK293細胞の細胞質及び核に局在し、分泌される
[00201]Hek293細胞を、Igκドメイン、Myc−tag、及びE6クローンから得られた2つのVH及びVkの組合せ、すなわち、VH1Vk9、VH1Vk11、VH7Vk9及びVH7Vk11を含有するpScFv9発現プラスミドで一時的にトランスフェクトした。構築物の概略図を図4Aに示す。細胞を4μgのプラスミドで48時間トランスフェクションし、次いで回収した。細胞質画分及び核画分を取得し、12%ゲルに加えた。ウサギポリクローナル抗myc抗体(Abeam)を使用し、細胞内のScFv抗体を検出した。トランスフェクションされた細胞の培地を回収し、5000rpmで、15分間4℃で遠心分離してデブリを除去し、−20℃で一晩沈殿させた。ペレットをローディングバッファーに再懸濁し、12%ゲルにロードした。scFv抗体は、マウスモノクローナル抗myc抗体(Santa Cruz)で膜をブロッティングすることにより検出した。結果から、E6_VH1Vk9及びE6_VH7Vk9 scFv抗体がHek293細胞の細胞質及び核の両方に局在していたことが明らかである(図5)。またscFv抗体は培地中にも分泌された(図5)。
【0194】
[00202]実施例6:scFvフォーマットを有する抗TDP−43抗体はTDP−43 RRM1ドメインを検出する
[00203]RRM1ドメインを含有する様々な濃度のTDP−43 1−206アミノ酸断片をドットブロットにより膜上にロードした。膜は、E6_VH1Vk9及びE6_VH7Vk9をコードする核酸を含有するpScFv9発現プラスミドでトランスフェクトしたHek293細胞からの培地で一晩インキュベートした。mycシグナルは、抗myc HRP抗体インキュベーションを使用して検出した。図6に示した結果は、E6_VH1Vk9及びE6_VH7Vk9 scFv抗体がTDP−43を特異的に認識できることを示している。
【0195】
[00204]実施例7:scFvフォーマットにおけるE6_VH1Vk9及びE6_VH7Vk9の例示的な抗原結合性構築物は、TDP−43とF−κB p65との相互作用をブロックする
[00205]抗体供給源としてE6_VH1Vk9及びE6_VH7Vk9発現細胞からの馴化培地を使用し、実施例2に記載のようにしてELISAアッセイを実施した。空のpScFv9細胞又は無関係な挿入物(D1.3)でトランスフェクトしたHEK293細胞からの培地を対照として使用した。結果からは、E6_VH1Vk9及びE6_VH7Vk9は両方とも、NF−κB p65とのTDP−43相互作用をブロックし得ることが明らかである(図7)。0.4ug/ml濃度の二価Fab/Fabフォーマット抗体E6は、NF−κB p65とのTDP−43相互作用をさらに著しく阻害し、TDP−43ポリクローナル抗体は、阻害はしたが、モノクローナルよりも程度は低かった。
【0196】
[00206]実施例8:HEK293細胞で発現された抗体は細胞内でTDP−43と相互作用する
[00207]細胞溶解物は、E6_VH1Vk9及びE6_VH7Vk9発現HEK293細胞から調製した。溶解物をポリクローナル抗TDP43に曝露し、細胞TDP−43を免疫沈降させた。免疫沈降物はPAGEを用いて分離させた。結果を図8に示すが、scFv抗体E6_VHlVk9及びE6_VH7Vk9(myc tagによって検出)はTDP−43と共免疫沈降したことが明らかである。これは、抗原結合性構築物E6_VH1Vk9及びE6_VH7Vk9が細胞内TDP−43に結合したことを実証している。
【0197】
[00208]実施例9:VH1Vk9抗体はHEK293細胞においてTDP−43とNF−κB p65の相互作用をブロックする
[00209]細胞溶解物は、TNFαで4時間処理したE6_VHlVk9発現HEK293細胞から調製した。溶解物をポリクローナル抗TDP43抗体に曝露し、細胞TDP−43を免疫沈降させた。免疫沈降物はPAGEを用いて分離させた。図9は、免疫沈降物を検出するためp65に対する抗体を用いたイムノブロットを示す。結果からは、VH1Vk9がHEK293細胞で発現された場合に、NF−κB p65のレベルの低下が存在したことが明らかである。このことは、VH1Vk9が、TPD−43の細胞内のNF−κB p65への結合に干渉したことを示している。
【0198】
[00210]実施例10:培養細胞系におけるTDP−43に対するscFv例示的抗体によるNF−κB活性化の阻害
[00211]細胞株は、ルシフェラーゼレポーター4kBwtルシフェラーゼプラスミドの安定的挿入とその後のハイグマイシンによる選択によるBV−2ミクログリア細胞の安定的なトランスフェクションにより以前に調製されている(Swamp,2011 J.Exp.Med.op cit)。scFv抗TDP−43抗体をコードする発現プラスミドベクターを、これらのBV−2培養細胞にトランスフェクトし、48時間一時的に発現させた。最後の4時間の間、細胞をPBS(対照)又は500ng/mlのLPSのいずれかに曝露した。細胞をGlo緩衝液(Promega)で溶解させ、50μlの溶解物を96ウェルプレートに複製してロードした。アッセイの手順(Bright−Gloルシフェラーゼアッセイ、Promega)に従い、ルシフェラーゼ基質を添加した。ルミネッセンスのRLU(相対光単位)を、自動プレートリーダーを用いて測定し、タンパク質定量(Biorad)によって測定した場合、ウェル中に存在する総タンパク質(μg)に対して標準化した。
【0199】
[00212]図10に示した結果は、scFv抗体VH1Vk9又はE6_VH7Vk9のいずれかを発現するBV2細胞においてLPSで処理した後に、NF−κBレポーター遺伝子の活性化が低下したことを示している。BV2細胞の生存率に対する抗体の効果はなかった(データ示さず)。本発明者らは、scFv VH7−Vk9抗体がscFv VH1Vk9抗体よりもBV2細胞のNF−κB活性を低下させるのにより有効であったことに注目する。scFv VH7−Vk9はNF−κB活性を32%低下させたのに対し、scFv VH1Vk9はNF−κB活性を13%低下させた。これらの2つのscFv抗体はたった1つのアミノ酸が異なり、scFv VH7−Vk9のE(グルタミン酸)の代わりにQ(グルタミン)であることから、興味深い。何らかの理由で、このわずかな変異は、scFv E6_VH7Vk9の核内に分配される傾向が亢進されるようであり(図5に示す)、核内でのNF−κB p65とのTDP−43相互作用のより効率的な阻害を説明する要因である。
【0200】
[00213]実施例11:Neuro2A細胞におけるscFv抗体の発現は核TDP−43のレベルを低下させた
[00214]Neuro2A細胞は、実施例5のようにして、E6_VH1Vk9、E6_Vh7Vk9又は空ベクターで一時的にトランスフェクトした。48時間後、核抽出物を細胞から取得し、核TDP−43の量をポンソー染色により定量した。結果を図11に示す。E6_VHlVk9、E6_Vh7Vk9は両方とも、核TDP−43の量を有意に低減した。ALSにおいては、TDP−43 mRNA及びタンパク質のレベルのアップレギュレーションが存在する(Swarup et al.J Exp med 2011)。この結果は、抗TDP−43 scFv抗体が、ALSにおけるTDP−43のアップレギュレーションを弱化することによって保護をもたらし得ることを示唆している。
【0201】
[00215]実施例12:scFv抗体を含有するアデノ随伴ウイルスAAVベクターの産生
[00216]以下のプロトコルを用いて、E6由来一本鎖抗体を含有するpscAAVベクターを産生した。まず、未分泌一本鎖抗体(−IgK)を生成するため、VH配列の前にXbaI制限部位を導入し、myc配列の末端にNotIを導入するPCRにより、pScFv9_E6VHlVk9及びpScFv9_E6VHVk9から773bpの断片を取得した。XbaI及びNotI制限酵素によるscAAV−CMV−EGFP(McCarty et al.Gene Ther.8:1248−1254,2001に記載)の消化によって、EGFP配列をE6VH1Vk9(−IgK)及びE6VH7Vk9(−IgK)で置き換えることができた。続いて、IgK配列は、HindIII及びPstIの制限酵素を使用しpscFv9プラスミドにより得た。HindIII制限部位を含有するXbaI/PstI断片は、VH配列の前のpscAAV_E6VHlVk9_NS及びE6VH7Vk9_NSプラスミドの対応する制限部位に挿入した。最後に、pscAAVプラスミドをHindIII及びPstIで消化し、IgK配列を挿入し、分泌シグナルを有するpscAAV_E6VHlVk9及びE6VH7Vk9を得た。分泌された一本鎖抗体は、標準の方法(Rabinowitz et al.J Virol.,76:791−801(2002))によって取得した。簡単に説明すると、pscFv9−E6VH1Vk9及びE6VH7Vk9中にScFv発現カセットを包含する断片を、HindIII及びEcoRVを使用して切り出し、プラスミドBluescript SK(−)(Stratagene,Canada)にクローニングした。次いで、GFPコード配列を置き換え、AAV組換えウイルスの産生で使用するpscAAV_E6VH1Vk9及びpscAAV_E6VH7Vk9プラスミドを作製している、XhoI/NotIで消化したscAAV−CMV−EGFPプラスミド(McCarty et al.Gene Ther.,2011)に、それをSalI/NotI断片として再クローニングした。配列決定により、正しい挿入がプラスミド内で確認された。
【0202】
[00217]実施例13:E6 scFv抗体はエタクリン酸処理細胞におけるTDP−43不溶性を低減する
[00218]Hek293細胞を、72時間、2μgのDNA及び5μlのLipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を含むOptimem中で、E6_V1及びE6_V7 scFv抗体、空プラスミド又は抗D1.3 scFv抗体でトランスフェクションし、50μMのエタクリン酸(EA)で一晩処理してTDP−43凝集物を誘導するか、又は対照としての同量のDMSO希釈剤で一晩処理した。RIPA(放射性免疫沈降アッセイ緩衝液)不溶性画分が得られた。代表的なウエスタンブロットを図12Aに示し、TDP−43の代表的なドットブロット分析を図12Bに示す。これらの結果からは、E6_V1及びE6_V7 scFv抗体の両方が、EA処理後に検出した不溶性TDP−43の量を低減したことが明らかである(n=3/条件)。*、p<0.05、対空。
【0203】
[00219] Hek293トランスフェクト細胞の免疫蛍光染色を実施し、TDP−43を細胞に局在化させた(データは示さず)。非トランスフェクト細胞においては、TDP−43がEA処理後に細胞質に誤って局在化された。しかし、E6_V1及びE6_V7 TDP−43を発現するトランスフェクト細胞においては、EA処理後、核内に残り、細胞質の局在及び凝集が回避された。
【0204】
[00220]実施例14:E6 ScFv抗体はTDP−43をリジンアセチル化から保護する
[00221]Hek293細胞を、48時間、2μgのDNA及び5μlのLipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を含むOptimem中で、E6 ScFv抗体V1及びV7、空プラスミド又は抗D1.3 scFv抗体でトランスフェクションし、50ng/mlのTNFアルファで4時間処理した。リジンアセチル化タンパク質を、300μgの全タンパク質溶解物中で抗アセチル−リジン抗体(Millipore)を使用して一晩免疫沈降させ、リジンアセチル化TDP−43の存在をTDP−43のウエスタンブロッティングによって検出した(図13)。この結果からは、E6 scFv抗体がリジンアセチル化からTDP−43を保護したことが明らかである。空のトランスフェクションベクター(EMT)は保護されておらず、トランスフェクションされた対照抗体D1.3も保護されてなかった。リジンアセチル化は、TDP−43の機能及び凝集を制御する新しい翻訳後修飾として提案されており、TDP−43アセチル化がRNA結合を低下させ、ALS及びFTLD−TDPにおける病理学的介在物にほとんど類似している不溶性の高リン酸化TDP−43種の蓄積を促進するという証拠がある(Cohen T.J.,Hwang A.W.,Restrepo C.R.,et al.Nat Com 2014)。
【0205】
[00222]上記の様々な実施形態は、組み合わせてさらなる実施形態を提供することができる。本明細書で言及されている、及び/又は出願データシートに列挙されているすべての米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び特許以外の刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み入れるものとする。実施形態の態様は、必要に応じて、様々な特許、出願及び刊行物の概念を使用するために変更し、さらなる実施形態を提供することができる。整合性のない場合には、本開示が優先する。
【0206】
[00223]これらの及び他の変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用されている用語は、特許請求の範囲を明細書及び特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を付与する均等物の全範囲と共にすべての可能な実施形態を含めるものと解釈すべきである。特許請求の範囲は、実施例に記載されている好ましい実施形態によって限定されるものではなく、全体としての説明と一致する最も広い解釈が付与されるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]