(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
I.定義
本明細書で使用される「活性剤」は、身体で局所的に及び/又は全身に作用する生理学的又は薬理学的な有効成分を指す。活性剤は、疾患又は障害の治療(例えば治療剤)、予防(例えば予防剤)、又は診断(例えば診断剤)のため患者に投与される物質である。本明細書で使用される「眼科薬物」又は「眼科活性剤」は、眼の疾患若しくは障害の1つ以上の症状を緩和するため、発症を遅延するため、若しくは予防するため患者に投与される薬剤、又は画像化若しくはそれ以外の方法で眼を評価するのに有用な診断剤を指す。
【0016】
本明細書で使用される「有効量」又は「治療的有効量」は、特に癌、又は目の疾患若しくは障害の1つ以上の症状の緩和、発症の遅延、又は予防に有効な薬物の量を指す。加齢黄斑変性の場合には、有効量の薬物は、患者の視力喪失を遅らせるか、減少させるか、又は予防する。
【0017】
本明細書で使用される、「アルカリ」の用語は、酸性の陽子を受理することができるか、又はそれ以外の方法で組成物のpHを引き上げる化合物を指す。
【0018】
本明細書で使用される「生体適合性の」、「生物学的に適合性の」は、一般に、任意の代謝産物又はその分解産物と共に、一般にレシピエントに無毒であり、レシピエントにいかなる著しい有害作用ももたらさない材料を指す。概して言えば、生体適合性材料は、患者に投与された場合に、著しい炎症又は免疫応答を誘発しない材料である。
【0019】
本明細書で使用される「生分解性高分子」は、生理的条件下での酵素作用、及び/又は加水分解によって、被験体によって代謝されるか、排除されるか、又は排泄され得るより小さな単位又は化学種へと分解するか、又は崩壊するポリマーを一般に指す。分解時間は、ポリマー組成、多孔性、粒子寸法等の形態、及び環境に左右される。
【0020】
本明細書で使用される「親水性」は、水に対して親和性を有する特性を指す。例えば、親水性ポリマー(又は親水性ポリマー)は水溶液において主として可溶性である、及び/又は、水を吸収する傾向を有する、ポリマー(又はポリマー)である。一般に、ポリマーがより親水性であれば、そのポリマーは、水に溶解する、水と混じる、又は水に濡れる傾向が強くなる。
【0021】
本明細書で使用される「疎水性」は、水に対して親和性を欠くか、又は更には水をはじく特性を指す。例えば、ポリマー(又はポリマー)がより疎水性であれば、そのポリマー(又はポリマー)は、水に溶解しない、水と混じらない、又は水に濡れない傾向が強くなる。
【0022】
親水性及び疎水性を、限定されないが、一群のポリマー又はポリマー内の親水性/疎水性のスペクトルのように相対的に述べることができる。2以上のポリマーが検討されているいくつかの実施形態では、「疎水性ポリマー」の用語は、もう一方のより親水性のポリマーと比較した場合のポリマーの相対的な疎水性に基づいて定義され得る。
【0023】
本明細書で使用される「ナノ粒子」は、約10nmから最大約1ミクロンであるがそれを含まない、例えば100nm〜約1ミクロンの直径、例えば平均径を有する粒子を一般に指す。粒子は任意の形状を有し得る。球形のナノ粒子は、一般に「ナノスフェア」と呼ばれる。
【0024】
本明細書で使用される「ミクロ粒子」は、約1ミクロン〜約100ミクロン、例えば約1ミクロン〜約50ミクロン、より例示的には約1ミクロン〜約30ミクロンの直径、例えば平均径を有する粒子を一般に指す。ミクロ粒子は任意の形状を有し得る。球形のミクロ粒子は、一般に「ミクロスフェア」(「MS」)と呼ばれる。
【0025】
本明細書で使用される「分子量」は、一般に、別段の明示がない限り、塊状ポリマーの相対平均鎖長を指す。実際、分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)又は毛細管粘度測定を含む様々な方法を使用して、推定されるか、又は特性評価され得る。GPC分子量は、数平均分子量(Mn)とは対照的に重量平均分子量(Mw)として報告される。毛細管粘度測定は、特定のセットの濃度、温度及び溶媒の条件を使用して希薄ポリマー溶液から特定された、固有粘度として分子量の推定値を提供する。
【0026】
本明細書で使用される「平均粒子径」は、一般に、粒子の集団における粒子の統計学的平均粒子径(直径)を指す。本質的に球形の粒子の直径は、物理学的又は流体力学的な直径を指し得る。非球形粒子の直径は、流体力学的な直径を優先的に指し得る。本明細書で使用されるように、非球形粒子の直径は、粒子の表面の2点間の最大の直線距離を指す場合がある。平均粒子径は、動的光散乱等の当該技術分野で既知の方法を使用して測定され得る。
【0027】
「単分散」及び「均質な粒度分布」は、本明細書において同じ意味で使用され、全ての粒子が同じ又はほぼ同じサイズであるナノ粒子又はミクロ粒子の集団を説明する。本明細書に使用されるように、単分散の分布は、90%以上の分布がメジアン粒子径の15%以内、より例示的にはメジアン粒子径の10%以内、最も例示的にはメジアン粒子径の5%以内に含まれる粒子分布を指す。
【0028】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能」は、健全な医学の判断の範囲に含まれ、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症のない人間及び動物の組織と接触する使用に適している、合理的なベネフィット/リスク比と釣り合った化合物、担体、賦形剤、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0029】
本明細書において一般的に使用される「インプラント」は、移植部位で長期間に亘って1つ以上の活性剤を放出することにより治療の利益を提供するように、例えば注射又は外科的移植によって身体の特定の領域に移植されるように組み立てられるか、大きさを合わせられるか、又は別様に構成される、ポリマーデバイス又は要素を指す。例えば、眼内インプラントは、例えば注射又は外科的移植によって眼に入れられるように、また長期間に亘って1つ以上の薬物を放出することにより1つ以上の眼の疾患又は障害を治療するように組み立てられ、大きさを合わせられ、又は別様に構成される、ポリマーデバイス又は要素である。眼内インプラントは、眼の生理学的条件と一般に生体適合性であり、有害な副作用を引き起こさない。一般に、眼内インプラントは眼の視野を妨げることなく、眼に入れることができる。
【0030】
II.化合物
A.スニチニブ
スニチニブは式(1)の化合物である。
【化1】
【0031】
スニチニブリンゴ酸塩は、Sutentとして販売されているスニチニブの(−)−リンゴ酸塩である。
【化2】
【0032】
本明細書において言及されるとき、スニチニブ類縁体は以下の式:
【化3】
(式中、
R
1は、水素、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、−(CO)R
15、−N−NR
13R
14、−(CH
2)
rR
16及び−C(O)NR
8R
9からなる群から選択され、
R
2は、水素、ハロ、アルキル、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、−NR
13R
14、−NR
13C(O)R
14、−C(O)R
15、アリール、ヘテロアリール、−S(O)
2NR
13R
14及び−SO
2R
20(ここで、R
20はアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、及びヘテロアラルキルである)からなる群から選択され、
R
3は、水素、ハロゲン、アルキル、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、−(CO)R
15、−NR
13R
14、アリール、ヘテロアリール、−NR
13S(O)
2R
14、−S(O)
2NR
13R
14、−NR
13C(O)R
14、−NR
13C(O)OR
14、及び−SO
2R
20(ここで、R
20はアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、及びヘテロアラルキルである)からなる群から選択され、
R
4は、水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、及び−NR
13R
14からなる群から選択され、
R
5は、水素、アルキル、及び−C(O)R
10からなる群から選択され、
R
6は、水素、アルキル、及び−C(O)R
10からなる群から選択され、
R
7は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、−C(O)R
17、及び−C(O)R
10からなる群から選択されるか、又は、
R
6とR
7とが結合して−(CH
2)
4−、−(CH
2)
5−、及び−(CH
2)
6−からなる群から選択される基を形成してもよく(但し、R
5、R
6、又はR
7の少なくとも1つが−C(O)R
10でなくてはならない)、
R
8及びR
9は、水素、アルキル、及びアリールからなる群から独立して選択され、
R
10は、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、−N(R
11)(CH
2)
nR
12、及び−NR
13R
14からなる群から選択され、
R
11は、水素及びアルキルからなる群から選択され、
R
12は、−NR
13R
14、ヒドロキシ、−C(O)R
15、アリール、ヘテロアリール、−N
+(O
−)R
13R
14、−N(OH)R
13、及び−NHC(O)R
a(ここで、R
aは非置換のアルキル、ハロアルキル、又はアラルキルである)からなる群から選択され、
R
13及びR
14は、水素、アルキル、シアノアルキル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から独立して選択されるか、又は、
R
13とR
14とが結合して複素環基を形成してもよく、
R
15は、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、及びアリールオキシからなる群から選択され、
R
16は、ヒドロキシ、−C(O)R
15、−NR
13R
14、及び−C(O)NR
13R
14からなる群から選択され、
R
17は、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され、
R
20は、アルキル、アリール、アラルキル、又はヘテロアリールであり、
n及びrは独立して1、2、3、又は4である)を有するか、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0033】
以下の定義が本明細書において使用される。
【0034】
「アルキル」は、1個〜20個の炭素原子(数値範囲が、例えば「1〜20」と本明細書で述べられる場合、その基、この場合アルキル基は1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等から最大20個以下の炭素原子を含んでもよいことを意味する)の直鎖及び分岐鎖の基を含む飽和脂肪族炭化水素ラジカルを指す。1個〜4個の炭素原子を含むアルキル基は、低級アルキル基と呼ばれる。低級アルキル基が置換基を欠く場合、非置換低級アルキル基と呼ばれる。より例示的には、アルキル基は1個〜10個の炭素原子を有する中型アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、及びペンチルである。最も例示的には、1個〜4個の炭素原子を有する低級アルキルは、例えばメチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、又はtert−ブチルである。アルキル基は、置換されてもよく、非置換であってもよい。置換される場合、置換基(複数の場合がある)は、ハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルコキシ、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基である1つ以上の基、例えば1、2、又は3の基で置換されてもよいアリール、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基である1つ以上の基、例えば1、2、又は3の基で置換されてもよいアリールオキシ、環中に1個〜3個の窒素原子を有し、環中の炭素が、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基である1つ以上の基、例えば1、2、又は3の基で置換されてもよい6員ヘテロアリール、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される1個〜3個のヘテロ原子を有し、基中の炭素原子及び窒素原子が、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基である1つ以上の基、例えば1、2、又は3の基で置換されてもよい5員ヘテロアリール、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される1個〜3個のヘテロ原子を有し、基中の炭素原子及び窒素原子(存在する場合)が、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基である1つ以上の基、例えば1、2、又は3の基で置換されてもよい5員又は6員のヘテロ脂環式基、メルカプト、(非置換低級アルキル)チオ、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基である、1つ以上の基、例えば1、2、又は3の基で置換されてもよいアリールチオ、シアノ、アシル、チオアシル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、ニトロ、N−スルホンアミド、S−スルホンアミド、R
18S(O)−、R
18S(O)
2−、−C(O)OR
18、R
18C(O)O−、及び−NR
18R
19(ここで、R
18及びR
19は、水素、非置換低級アルキル、トリハロメチル、非置換(C
3〜C
6)シクロアルキル、非置換低級アルケニル、非置換低級アルキニルからなる群から独立して選択される)、並びに互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基である、1つ以上の基、例えば1、2、又は3の基で置換されてもよいアリールからなる群から独立して選択される、1つ以上、より例示的には1〜3、更に例示的には1又は2の置換基である。
【0035】
一つの実施形態では、アルキル基は、ヒドロキシ、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される1個〜3個のヘテロ原子を有し、基中の炭素原子及び窒素原子(存在する場合)が、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基若しくは非置換低級アルコキシ基である1つ以上の基、例えば1、2、若しくは3の基で置換されてもよい5員若しくは6員のヘテロ脂環式基、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される1個〜3個のヘテロ原子を有し、基中の炭素原子及び窒素原子が互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基若しくは非置換低級アルコキシ基である1つ以上の基、例えば1、2、若しくは3の基で置換されてもよい5員ヘテロアリール、環中に1個〜3個の窒素原子を有し、環中の炭素が、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基若しくは非置換低級アルコキシ基である1つ以上の基、例えば1、2若しくは3の基で置換されてもよい6員ヘテロアリール、又は−NR
18R
19(ここで、R
18及びR
19は、水素、非置換低級アルキルからなる群から独立して選択される)からなる群から独立して選択される1又は2の置換基で置換される。いくつかの実施形態では、例えば、アルキル基は、互いに独立してヒドロキシ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、4−低級アルキルピペラジノ、フェニル、イミダゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、オキサゾリル、及びトリアジニルである1又は2の置換基で置換される。
【0036】
「シクロアルキル」は、3員〜8員の全てが炭素の単環式環、全てが炭素の5員環/6員環若しくは6員/6員の縮合二環式環、又は多環縮合環(「縮合」環系は該系の各環が、該系の互いの環と隣接する炭素原子対を共有することを意味する)の基であって、該環の1つ以上が1つ以上の二重結合を含むが、いずれの環も完全共役パイ電子系を有しない基を指す。シクロアルキル基の例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、アダマンタン、シクロヘプタン、及びシクロヘプタトリエンである。シクロアルキル基は置換されてもよく、非置換であってもよい。置換される場合、置換基(複数の場合がある)は、非置換低級アルキル、トリハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルコキシ、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基の1つ以上、例えば1又は2の基で置換されてもよいアリール、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基の1つ以上、例えば1又は2の基で置換されてもよいアリールオキシ、環中に1個〜3個の窒素原子を有し、環中の炭素が、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基の1つ以上、例えば1又は2の基によって置換されてもよい6員ヘテロアリール、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から選択される1個〜3個のヘテロ原子を有し、基中の炭素原子及び窒素原子が、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基の1つ以上、例えば1又は2の基によって置換されてもよい5員ヘテロアリール、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から選択される1個〜3個のヘテロ原子を有し、基中の炭素原子及び窒素原子(存在する場合)が互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基の1つ以上、例えば1又は2の基によって置換されてもよい5員又は6員のヘテロ脂環式基、メルカプト、(非置換低級アルキル)チオ、互いに独立してハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルキル基又は非置換低級アルコキシ基の1つ以上、例えば1又は2の基によって置換されてもよいアリールチオ、シアノ、アシル、チオアシル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、ニトロ、N−スルホンアミド、S−スルホンアミド、上に定義される、R
18S(O)−、R
18S(O)
2−、−C(O)OR
18、R
18C(O)O−、並びに−NR
18R
19からなる群から独立して選択される、例えば1つ以上、例えば1又は2の置換基である。
【0037】
本明細書に定義されるように、「アルケニル」は、少なくとも2個の炭素原子、及び少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなる低級アルキル基を指す。代表的な例として、限定されないが、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、及び1−、2−又は3−ブテニルが挙げられる。
【0038】
本明細書に定義されるように、「アルキニル」は、少なくとも2個の炭素原子、及び少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる低級アルキル基を指す。代表的な例として、限定されないが、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、及び1−、2−又は3−ブチニルが挙げられる。
【0039】
「アリール」は、完全共役パイ電子系を有する1〜12の炭素原子の全てが炭素の単環式基又は多環縮環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を指す。アリール基の例は、限定されないが、フェニル、ナフタレニル、及びアントラセニルである。アリール基は、置換されてもよく、非置換であってもよい。置換される場合、置換基(複数の場合がある)は、例えば、非置換低級アルキル、トリハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルコキシ、メルカプト、(非置換低級アルキル)チオ、シアノ、アシル、チオアシル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、ニトロ、N−スルホンアミド、S−スルホンアミド、R
18S(O)−、R
18S(O)
2−、−C(O)OR
18、R
18C(O)O−、及び−NR
18R
19(R
18及びR
19は上に定義される)からなる群から独立して選択される1つ以上、例えば1個、2個、又は3個である。例えば、アリール基は、ハロ、非置換低級アルキル、トリハロアルキル、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、N−アミド、モノ若しくはジアルキルアミノ、カルボキシ、又はN−スルホンアミドから独立して選択される1又は2の置換基で置換されてもよい。
【0040】
「ヘテロアリール」は、N、O、又はSから選択される1、2、又は3の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子がCであり、さらに完全な共役パイ電子系を有する、5〜12の環原子の単環基又は縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)基を指す。非置換ヘテロアリール基の例は、限定されないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、プリン、及びカルバゾールである。ヘテロアリール基は、置換されてもよく、非置換であってもよい。置換される場合、置換基(複数の場合がある)は、例えば、非置換低級アルキル、トリハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルコキシ、メルカプト、(非置換低級アルキル)チオ、シアノ、アシル、チオアシル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、ニトロ、N−スルホンアミド、S−スルホンアミド、R
18S(O)−、R
18O)
2−、−C(O)OR
18、R
18C(O)O−、及び−NR
18R
19(R
18及びR
19は上に定義される)からなる群から独立して選択される1個、2個、又は3個である。例えば、ヘテロアリール基は、ハロ、非置換低級アルキル、トリハロアルキル、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、N−アミド、モノ若しくはジアルキルアミノ、カルボキシ、又はN−スルホンアミドから独立して選択される1又は2の置換基で置換されてもよい。
【0041】
「ヘテロ脂環式」は、5〜9の環原子の環(複数の場合がある)中に、1又は2の環原子がN、O、又はS(O)
n(ここで、nは0〜2の整数である)から選択されるヘテロ原子を有し、残りの環原子がCである、単環基又は縮合環基を指す。また、環は1つ以上の二重結合を有してもよい。しかしながら、環は完全な共役パイ電子系を有しない。非置換ヘテロ脂環式基の例は、限定されないが、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、及びホモピペラジノである。ヘテロ脂環式環は、置換されてもよく、非置換であってもよい。置換される場合、置換基(複数の場合がある)は、非置換低級アルキル、トリハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、非置換低級アルコキシ、メルカプト、(非置換低級アルキル)チオ、シアノ、アシル、チオアシル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、ニトロ、N−スルホンアミド、S−スルホンアミド、R
18S(O)−、R
18S(O)
2−、−C(O)OR
18、R
18C(O)O−、及び−NR
18R
19(R
18及びR
19は上に定義される)からなる群から独立して選択される1つ以上、例えば1個、2個、又は3個である。例えば、ヘテロ脂環式基は、ハロ、非置換低級アルキル、トリハロアルキル、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、N−アミド、モノ若しくはジアルキルアミノ、カルボキシ、又はN−スルホンアミドから独立して選択される1又は2の置換基で置換されてもよい。
【0042】
例えば、ヘテロ脂環式基は、ハロ、非置換低級アルキル、トリハロアルキル、ヒドロキシ、メルカプト、シアノ、N−アミド、モノ若しくはジアルキルアミノ、カルボニル、又はN−スルホンアミドから独立して選択される1又は2の置換基で置換されてもよい。
【0043】
「複素環」は、1又は2の環原子がN、O、又はS(O)
n(ここで、nは0〜2の整数である)から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子がCであり、ここで1又は2のC原子がカルボニル基によって置換されてもよい、3〜8の環原子の飽和環状ラジカルを意味する。ヘテロシクリル環は、置換されてもよい低級アルキル(カルボキシ又はエステルから独立して選択される1又は2の置換基で置換される)、ハロアルキル、シアノアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アラルキル、ヘテロアラルキル、−COR(ここで、Rはアルキルである)、又は−COOR(ここで、Rは(水素又はアルキル)である)から選択される1、2、又は3の置換基によって独立して置換されてもよい。より具体的にはヘテロシクリルの用語には、テトラヒドロピラニル、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、ピペリジノ、N−メチルピペリジン−3−イル、ピペラジノ、N−メチルピロリジン−3−イル、3−ピロリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオモルホリノ−1−オキシド、チオモルホリノ−1,1−ジオキシド、4−エチルオキシカルボニルピペラジノ、3−オキソピペラジノ、2−イミダゾリドン、2−ピロリジノン、2−オキソホモピペラジノ、テトラヒドロピリミジン−2−オン、及びそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。例えば複素環基は、ハロ、非置換低級アルキル、カルボキシ、エステル、ヒドロキシ、モノ又はジアルキルアミノで置換された低級アルキルから独立して選択される1又は2の置換基で置換されてもよい。
【0045】
「アルコキシ」は、−O−(非置換アルキル)基と−O−(非置換シクロアルキル)基の両方を指す。代表例として、限定されないが、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、及びシクロへキシルオキシが挙げられる。
【0046】
「アリールオキシ」は、本明細書に定義される、−O−アリール基及び−O−ヘテロアリール基の両方を指す。代表例として、限定されないが、フェノキシ、ピリジニルオキシ、フラニルオキシ、チエニルオキシ、ピリミジニルオキシ、ピラジニルオキシ、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0048】
「アルキルチオ」は、−S−(非置換アルキル)基及び−S−(非置換シクロアルキル)基の両方を指す。代表例として、限定されないが、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、及びシクロへキシルチオが挙げられる。
【0049】
「アリールチオ」は、本明細書に定義される−S−アリール基及び−S−ヘテロアリール基の両方を指す。代表例として、限定されないが、フェニルチオ、ピリジニルチオ、フラニルチオ、チエニルチオ、ピリミジニルチオ、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0050】
「アシル」は、−C(O)−R’’基であって、式中、R’’は水素、非置換低級アルキル、トリハロメチル、非置換シクロアルキル、非置換低級アルキル、トリハロメチル、非置換低級アルコキシ、ハロ、及び−NR
18R
19基からなる群から選択される1つ以上の、例えば1、2、又は3の置換基によって置換されてもよいアリール、非置換低級アルキル、トリハロアルキル、非置換低級アルコキシ、ハロ、及び−NR
18R
19基から選択される1つ以上の、例えば1、2、又は3の置換基によって置換されてもよいヘテロアリール(環炭素により結合される)、並びに非置換低級アルキル、トリハロアルキル、非置換低級アルコキシ、ハロ、及び−NR
18R
19基からなる群から選択される1つ以上の、例えば1、2、又は3の置換基によって置換されてもよいヘテロ脂環式(環炭素によって結合される)からなる群から選択される。代表的なアシル基として、限定されないが、アセチル、トリフルオロアセチル、及びベンゾイルが挙げられる。
【0051】
「アルデヒド」はR’’が水素であるアシル基を指す。
【0052】
「チオアシル」は−C(S)−R’’基(ここでR’’は本明細書で規定されるとおりである)を指す。
【0053】
「エステル」は−C(O)O−R’’基(ここでR’’は本明細書で規定されるとおりであるが、R’’は水素ではない)を指す。
【0054】
「アセチル」基は−C(O)CH
3基を指す。
【0055】
「ハロ」基はフッ素、塩素、臭素又はヨウ素、例えばフッ素又は塩素を指す。
【0056】
「トリハロメチル」基は−CX
3基(ここでXは本明細書で規定のハロ基である)を指す。
【0057】
「トリハロメタンスルホニル」基はX
3CS(=O)
2−基(ここでXは上に規定されるとおりである)を指す。
【0059】
「メチレンジオキシ」は−OCH
2O−基(ここで2つの酸素原子は隣接する炭素原子に結合している)を指す。
【0060】
「エチレンジオキシ」基は−OCH
2CH
2O−(ここで2つの酸素原子は隣接する炭素原子に結合している)を指す。
【0061】
「S−スルホンアミド」は−S(O)
2NR
18R
19基(ここでR
18及びR
19は本明細書で規定されるとおりである)を指す。「N−スルホンアミド」は−NR
18S(O)
2R
19基(ここでR
18及びR
19は本明細書で規定されるとおりである)を指す。
【0062】
「O−カルバミル」基は−OC(O)NR
18R
19基(ここでR
18及びR
19は本明細書で規定されるとおりである)を指す。「N−カルバミル」はR
18OC(O)NR
19−基(ここでR
18及びR
19は本明細書で規定されるとおりである)を指す。
【0063】
「O−チオカルバミル」は−OC(S)NR
18R
19基(ここでR
18及びR
19は本明細書で規定されるとおりである)を指す。「N−チオカルバミル」はR
18OC(S)NR
19−基(ここでR
18及びR
19は本明細書で規定されるとおりである)を指す。
【0064】
「アミノ」は−NR
18R
19基(ここでR
18及びR
19は両方とも水素である)を指す。
【0065】
「C−アミド」は−C(O)NR
18R
19基(ここでR
18及びR
19は本明細書で規定されるとおりである)を指す。「N−アミド」はR
18C(O)NR
19−基(ここでR
18及びR
19は本明細書で規定されるとおりである)を指す。
【0067】
「ハロアルキル」は、非置換アルキル、例えば、1つ以上の同一又は異なったハロ原子で置換される上に定義される非置換低級アルキル、例えば、−CH
2Cl、−CF
3、−CH
2CF
3、及び−CH
2CCl
3を意味する。
【0068】
「アラルキル」は、非置換アルキル、例えば、上に定義されるアリール基で置換される、上に定義される非置換低級アルキル、例えば、−CH
2フェニル、−(CH
2)
2フェニル、−(CH
2)
3フェニル、CH
3CH(CH
3)CH
2フェニル、及びそれらの誘導体を意味する。
【0069】
「ヘテロアラルキル」基は、非置換アルキル、例えば、上に定義されるヘテロアリール基で置換される、上に定義される非置換低級アルキルを意味する。
【0070】
「ジアルキルアミノ」は、ラジカル−NRRであって、式中、Rがそれぞれ独立して上に定義される非置換アルキル又は非置換シクロアルキル基であり、例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ、(1−メチルエチル)−エチルアミノ、シクロへキシルメチルアミノ、及びシクロペンチルメチルアミノを意味する。
【0071】
「シアノアルキル」は、非置換アルキル、例えば、1又は2のシアノ基で置換される、上に定義される非置換低級アルキルを意味する。
【0072】
「任意の」又は「任意に(してもよい)」は、その後に記載される事象又は状況が必ずしも起こらなくてもよく、その記載が当該事象又は状況が起こる例及びそれが起こらない例を含むことを意味する。例えば、「アルキル基によって置換されてもよい複素環基」は、アルキル基が必ずしも存在しなくてもよく、その記載は複素環基がアルキル基によって置換される状況と、複素環基がアルキル基によって置換されない状況とを含む。
【0073】
B.封入ポリマー
ポリマービヒクル中1つ以上の薬物の送達に対する制御放出投薬製剤が、本明細書に記載される。ポリマーマトリクスは、非生分解性又は生分解性のポリマーから形成され得るが、該ポリマーマトリクスは生分解性であることが好ましい。上記ポリマーマトリクスは、送達のため、インプラント(例えば、ロッド、ディスク、ウェファー等)、ミクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの組合せに形成され得る。投与により、スニチニブ、又はその類縁体若しくは薬学的に許容可能な塩は、ポリマーマトリクスの分解、ポリマーマトリクスからの1つ以上の阻害剤の拡散、又はそれらの組合せのいずれかにより、長期間に亘って放出される。上記薬物は、ポリマー中に分散されるか若しくは封入され、又はマトリクスを形成するのに使用されるポリマーに共有結合され得る。1つ以上のポリマーの分解プロファイルは、in vivoでの活性剤の放出速度に影響を及ぼすように選択されてもよい。
【0074】
上記ポリマーは、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとのコンジュゲート(すなわち、両親媒性ポリマー)、ブロックコポリマー、及びそれらのブレンドであってもよい。
【0075】
好適な疎水性ポリマーの例として、限定されないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、又はそれらのコポリマー、ポリカプロラクトン等のポリヒドロキシエステル、ポリセバシン酸無水物等のポリ無水物、ポリジオキシドン(polydioxidone)、上のいずれかのブレンド及びコポリマーが挙げられる。一つの実施形態では、PLGAとポリ乳酸(PLA)とのブレンドを使用する。グリコール酸(GA)(数日から一週間の短い分解時間を有する)に対して種々の比率の乳酸(LA)(最長1年又は2年のより長い分解時間を有する)を有する、より高分子量のポリマーを使用して、長期間に亘る放出を提供する。PLGAの親水性をLAとGA(より親水性)とのモノマー比を選択することによって制御することができ、PLGA末端基(エステル又は酸)もまた分解に影響を及ぼす。PLGAの酸末端もまたより速く分解する。PLGAの酸末端基は薬物装荷の増加を補助するが、酸性度もまた変化する。しかしながら、酸性度の制御により、ポリマーが低酸であっても、より高い薬物装荷を達成するため使用することができる。PLGAは、ポリマーをカルボキシルで処理することによってより親水性にすることができる。
【0076】
1つ以上の親水性ポリマーは、任意の親水性、生体適合性、非毒性のポリマー又はコポリマーであってもよい。或る特定の実施形態では、1つ以上の親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリ(アルキレングリコール)を含有する。特定の実施形態では、1つ以上の親水性ポリマーは、直鎖のPEG鎖である。
【0077】
代表的な合成ポリマーとして、ポリ(ヒドロキシ酸)、例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)及びポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン、ポリアルキレングリコール、例えばポリ(エチレングリコール)、ポリアルキレンオキシド、例えばポリ(エチレンオキシド)、ポリアルキレンテレフタレート、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、例えばポリ(塩化ビニル)、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリウレタン及びそれらのコポリマー、セルロース、例えばアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシエチルセルロース、三酢酸セルロース及びセルロース硫酸ナトリウム塩(本明細書では総称して「セルロース」と呼ぶ)、エステル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)及びポリ(オクタデシルアクリレート)(本明細書では総称して「ポリアクリル酸」と呼ぶ)を含むアクリル酸、メタクリル酸のポリマー又はそれらのコポリマー若しくは誘導体、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)及びポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、それらのコポリマー及びブレンドが挙げられる。本明細書で使用される「誘導体」は、置換、化学基、例えばアルキル、アルキレン等の付加、ヒドロキシル化、酸化、及び当業者によって日常的に行われる他の修飾を有するポリマーを含む。
【0078】
典型的な天然ポリマーの例としては、アルブミン及びプロラミン、例えばゼイン等のタンパク質、並びにアルギネート、セルロース及びポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリヒドロキシブチレート等の多糖が挙げられる。
【0079】
典型的な非生分解性ポリマーの例としてはエチレン酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、コポリマー及びそれらの混合物が挙げられる。
【0080】
C.溶媒及びアルカリ化剤
スニチニブ若しくは薬学的に許容可能な塩((−)−リンゴ酸塩を含む)、又はスニチニブ類縁体若しくはその薬学的に許容可能な塩を使用して、本明細書に記載される粒子を作製することができる。遊離塩基はより疎水性であり、リンゴ酸塩等の塩形態はより親水性である。スニチニブの形態の変化により薬物装荷を増加させることができる。例えば、アルカリを添加すること(有機相及び水相の両方)は、スニチニブリンゴ酸塩の装荷を増加する。スニチニブ遊離塩基は非常に疎水性であり、容易に結晶化される。酸を添加すること、又は水相のpHを制御することにより、結晶化を回避し、より良好な粒子を形成することができる。
【0081】
粒子の形成に対する典型的な溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、酢酸エチル、及びシクロヘキサン等の有機溶媒である。追加の溶媒として、限定されないが、アセトン、アルコール、アセトニトリル、DMSO、及びDMFが挙げられる。水溶性溶媒及びアルカリ性溶媒は、スニチニブリンゴ酸塩装荷の増加を補助する。
【0082】
スニチニブの装荷は、封入の間、溶液中のスニチニブのアルカリ度を増加することによって増加され得ることが見出された。これは、溶媒の選択、溶媒へのアルカリ化剤の添加、又はスニチニブと共にアルカリ性薬物を包含することによって達成され得る。この目的で添加することができる化合物の例としてはジメチルアセトアミド(DMA)、DMTA、トリエチルアミン(TEA)、アニリン、アンモニウム及び水酸化ナトリウム等の溶媒又は溶媒添加物、ビタミンB4、カフェイン、アルカロイド、ニコチン、鎮痛薬であるモルヒネ、抗菌剤であるベルベリン、抗癌化合物であるビンクリスチン、降圧剤であるレセルピン、コリン作動薬であるガランタミン、抗コリン作動薬であるアトロピン、血管拡張薬であるビンカミン、抗不整脈化合物であるキニジン、抗喘息治療薬であるエフェドリン、及び抗マラリア薬であるキニーネ等の薬物が挙げられる。
【0083】
界面活性剤として、限定されないが、ポリビニルアルコール、F−127、レクチン、脂肪酸、リン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸誘導体、及びヒマシ油等のアニオン性、カチオン性及び非イオン性の界面活性剤が挙げられる。
【0084】
III.ミクロ粒子、ナノ粒子、及びインプラントを形成する方法
A.ミクロ粒子及びナノ粒子の形成
ミクロ粒子及びナノ粒子は、当該技術分野で知られているポリマーミクロ粒子、又はナノ粒子の形成に適した任意の方法を使用して形成され得る。粒子形成に使用される方法は、所望の粒子径及び粒度分布と共に、薬物又はポリマーマトリクス中に存在するポリマーの特性を含む様々な要因に依存する。いくつかの薬物が或る特定の溶媒の存在下、或る特定の温度範囲、及び/又は或る特定のpH範囲で不安定であることから、粒子中に組み込まれる薬物の種類(複数の場合がある)もまた要因となる可能性がある。
【0085】
10nm〜1000ミクロンの平均粒子径を有する粒子は、本明細書に記載される組成物において有用である。或る特定の実施形態では、粒子は、10nm〜100ミクロン、例えば、約100nm〜約50ミクロン、又は約200nm〜約50ミクロンの平均粒子径を有する。粒子は任意の形状を有することができるが、一般的には球形である。
【0086】
粒子中の薬物装荷は、酸性度によって著しく影響を受ける。例えば、アルカリの添加によるpHの上昇は、組み込まれるスニチニブリンゴ酸塩の量を著しく増加する。また、装荷は、水相pHを変化させることによって、例えば、水相(PBS等)pHが6.8から7.4に上昇される場合に増加され得る。また、薬物装荷も、ポリマー及び薬物の濃度、ポリマー分子量の両方を増加させることによって増加され得る。
【0087】
好ましい水性pHは6より高く、かつ10より低く、より例示的にはpH6〜pH8である。
【0088】
例えば、表2中の一つの例は、同じ粒子組成物について、水性pHがおよそ6からおよそ7.4に増加された場合に36%から84%への封入効率の実質的な増加があることを示す。表2中の別の例は、pH10では、多くの粒子の形態が球形から不規則な形状に変化し、一部の粒子は凝集塊を形成したことを示し、pHの高い水溶液もまた、スニチニブの装荷の高い、高品質の粒子を生産するのに不利であることを示唆する。
【0089】
また、ポリマーの濃度及び粘度も封入効率に影響を及ぼす。例えば、ジクロロメタン(DCM)中、異なるポリマー濃度の同じ製剤組成(99%PLGA75:25 4A及び1%PLGA−PEG(PEG分子量5Kd、PLGA分子量約45Kd))について、封入効率は100mg/mLポリマー濃度で50%超まで増加する。DMSO中のスニチニブリンゴ酸塩溶液と混合する前のDCM中のこのポリマー溶液の動粘度は、およそ350cPsと推定される。DCM中のポリマー溶液の好ましい最小粘度は約350cPsである。好ましい実施形態では、DCM中のポリマー濃度は140mg/mLであり、これは計算上およそ720cPsである。99%PLGA 7525 6E及び1%PLGA−PEG(PEG分子量5Kd、PLGA分子量約45Kd)で作製される粒子は、DCM中100mg/mLのポリマー濃度を有する。PLGA 7525 6EがPLGA 7525 4Aよりも分子量が高いポリマーであることから、DCM中のポリマー溶液はより粘性であり、約830cPsの動粘度を有する。
【0090】
また、薬物装荷は使用される作製方法及び溶媒によっても著しく影響を受ける。例えば、S/O/Wシングルエマルジョン法は、酸性度を制御せずとも、O/Wシングルエマルジョン法よりも高い装荷をもたらす。
【0091】
薬物の放出
薬物の放出は、ポリマーの分子量、ポリマーの親水性又は疎水性、薬物の割合、粒子の作製方法を含む様々な要因によって影響を受ける。スニチニブ及びその薬学的に許容可能な塩、又はスニチニブ類縁体若しくはその薬学的に許容可能な塩の両方を使用して粒子を作製することができる。遊離塩基はより疎水性であり、スニチニブ遊離塩基放出はスニチニブリンゴ酸塩よりも更に遅い。また、放出媒質も薬物放出に影響する。放出は、媒質pHの増加に伴って増加する。
【0092】
作製方法
ミクロ粒子及びナノ粒子を作製する一般的な技法として、限定されないが、溶媒蒸発、溶媒除去、噴霧乾燥、転相、コアセルベーション、及び低温焼結(low temperature casting)が挙げられる。粒子製剤化の好適な方法を以下に簡潔に記載する。pH調節剤、崩壊剤、防腐剤、及び抗酸化剤を含む薬学的に許容可能な賦形剤を粒子形成の間に粒子に組み込んでもよい。
【0093】
好ましい実施形態では、上記製剤はエマルジョンによって作製される。
【0094】
1.溶媒蒸発
この方法では、薬物(又はポリマーマトリクス及び1つ以上の薬物)を、塩化メチレン等の揮発性有機溶媒に溶解する。その後、薬物を含有する有機溶液を、ポリ(ビニルアルコール)等の界面活性剤を含む水溶液中に懸濁する。得られるエマルジョンを大半の有機溶媒が蒸発して固体ナノ粒子を残すまで撹拌する。得られたナノ粒子を水で洗浄し、凍結乾燥器で一晩乾燥させる。種々のサイズ及び形態のナノ粒子をこの方法によって得ることができる。
【0095】
或る特定のポリ無水物等の不安定なポリマーを含有する薬物は、水の存在により製造過程で分解する可能性がある。これらのポリマーに対しては、完全に無水の有機溶媒中で行われる以下の2つの方法を使用することができる。
【0096】
2.溶媒除去
また、溶媒除去を使用して加水分解に不安定な薬物から粒子を作製することができる。この方法では、薬物(又はポリマーマトリクス、及び1つ以上の薬物)を塩化メチレン等の揮発性有機溶媒中に分散させるか、又は溶解させる。その後、この混合物を有機性油(シリコンオイル等)中に撹拌することによって懸濁させ、エマルジョンを形成する。エマルジョンから形成される固体粒子は、その後上清から単離され得る。この技法により製造された球体の外部の形態は、薬物のアイデンティティに大きく依存する。
【0097】
3.噴霧乾燥
この方法では、薬物(又はポリマーマトリクス及び1つ以上の薬物)を、塩化メチレン等の有機溶媒に溶解する。圧縮ガスの流れによって制御される微細化ノズルにより溶液を噴出させ、得られたエアロゾルを加熱された気体のサイクロンに漂わせて、微小滴から溶媒を蒸発させて粒子を形成させる。この方法を使用して、0.1ミクロン〜10ミクロンの範囲の粒子を得ることができる。
【0098】
4.転相
粒子を転相法(phase inversion method)を使用して、薬物から形成することができる。この方法では、薬物(又はポリマーマトリクス及び1つ以上の薬物)を「良好な」溶媒に溶解し、好ましい条件下で、薬物が自発的にミクロ粒子又はナノ粒子を生じるように、該溶液を強い非溶媒(non solvent)へと注ぐ。上記方法を使用して、例えば、典型的には狭い粒度分布で、約100ナノメートル〜約10ミクロンを含む広範囲のサイズのナノ粒子をもたらすことができる。
【0099】
5.コアセルベーション
コアセルベーションを使用する粒子形成技法は、当該技術分野で、例えば英国特許第929406号、英国特許第929401号、並びに米国特許第3,266,987号、同第4,794,000号、及び同第4,460,563号において知られている。コアセルベーションは、2つの非混和液相への薬物(又はポリマーマトリクス、及び1つ以上の薬物)溶液の分離を含む。1つの相は、高濃度の薬物を含有する濃厚なコアセルベート相であるのに対し、第2相は低濃度の薬物を含む。濃厚なコアセルベート相内では、薬物はナノスケール又はマイクロスケールの小滴を形成し、それらは硬化して粒子となる。コアセルベーションは、温度変化、非溶媒の添加若しくはミクロ塩(micro-salt)の添加(単純コアセルベーション)により、又は別のポリマーの添加により誘導されて高分子間錯体を形成することができる(複合コアセルベーション)。
【0100】
6.低温焼結
制御放出ミクロスフェアの極低温焼結に関する方法は、Gombotz et al.に対する米国特許第5,019,400号に記載される。この方法では、薬物(又はポリマーマトリクス及びスニチニブ)は溶媒中に溶解される。その後、混合物を、薬物小滴を凍結する薬液の氷点を下回る温度で液状の非溶媒の入った容器に微粒化する。薬物に対する小滴及び非溶媒が温められるにつれて、小滴中の溶媒は溶けて、非溶媒中に抽出されてミクロスフェアを硬化する。
【0101】
D.インプラント
薬物を封入する、及び/又は分散させるインプラントが形成され得る。好ましい実施形態では、インプラントは眼内インプラントである。好適なインプラントとして、限定されないが、ロッド、ディスク、及びウェファーが挙げられる。マトリクスは、上に記載されるいずれかの非生分解性又は生分解性の高分子で形成され得るが、生分解性高分子が好ましい。ポリマーマトリクスの組成は、in vivoでの安定性に必要な時間、すなわち、送達が望まれる部位への分布に必要なその時間、及び送達に望ましい時間に基づいて選択される。
【0102】
インプラントは、ファイバー、シート、フィルム、マイクロスフェア、球体、円盤、ロッド、又はプラーク(plaques)等の任意の幾何学形状であってもよい。インプラントのサイズは、インプラントに対する忍容性、インプラントの位置、インプラント挿入の推奨される方法を考慮したサイズ制限、扱いやすさ等の因子によって決定される。
【0103】
シート又はフィルムを採用する場合、シート又はフィルムは、扱いやすいように、約0.1mm〜1.0mmの厚さで少なくとも約0.5mm×0.5mm、通常約3mm〜10mm×5mm〜10mmの範囲である。ファイバーを採用する場合、繊維径は、一般に約0.05mm〜3mmの範囲であり、繊維長は、一般に約0.5mm〜10mmの範囲である。
【0104】
また、移植部位で放出の速度、治療期間、及び薬物濃度を制御するためインプラントのサイズ及び形状を使用することができる。より大きなインプラントは、比例してより多量の用量を伝送達するが、表面対質量比に依存して、より遅い放出速度を有する場合がある。インプラントの特定のサイズ及び幾何形状は、移植の部位に適するように選択される。
【0105】
眼内インプラントは、球形であってもよく、又は非球形であってもよい。球形インプラントに対して、インプラントは、約5μm〜約2mmの最大寸法(例えば直径)、又は針による投与に対して約10μm〜約1mm、外科的移植による投与に対して1mm超、若しくは2mm超、例えば3mm若しくは最大10mmを有する場合がある。インプラントが非球形である場合、インプラントは、約5μm及び約2mmの最大寸法若しくは最小寸法、又は針による投与に対して約10μm〜約1mm、外科的移植による投与に対して1mm超、若しくは2mm超、例えば3mm若しくは最大10mmを有する場合がある。
【0106】
ヒトの硝子体腔は、例えば1mm〜10mmの長さを有する、変化する幾何形状の比較的大きなインプラントを適応することができる。インプラントは、約2mm×0.75mmの直径の寸法を有する円筒状ペレット(例えばロッド)であってもよい。インプラントは、長さ約7mm〜約10mm、直径約0.75mm〜約1.5mmの円筒状のペレットであってもよい。或る特定の実施形態では、インプラントは、直径約0.5mm、長さ約6mm、及び重量およそ1mgを有する押出しフィラメントの形態である。いくつかの実施形態では、寸法は、針による眼内注射に対して既に承認されたインプラントであるか、又はそれに類似する、すなわち直径460ミクロン及び長さ6mm、並びに直径370ミクロン及び長さ3.5mmである。
【0107】
また、眼内インプラントは、硝子体液等の眼の中へのインプラントの挿入、及びその後のインプラントの適応の両方を容易にするように、少なくとも或る程度柔軟であるように設計され得る。インプラントの全重量は、通常約250μg〜5000μg、例えば約500μg〜1000μgである。或る特定の実施形態では、眼内インプラントは、約500μg、750μg又は1000μgの質量を有する。
【0108】
2.製造方法
インプラントは、当該技術で知られている任意の好適な技法を使用して製造され得る。インプラントの作製に適した技法の例として、溶媒蒸発法、相分離法、界面法、成型法、射出成型法、押出法、共押出方法、カーバープレス法、打抜き法、熱圧縮、及びそれらの組合せが挙げられる。インプラントの製造に適した方法は、インプラント中に存在するポリマー(単数/複数)の特性、インプラント中に存在する1つ以上の薬物の特性、及びインプラントの所望の形状及びサイズを含む多くの因子を考慮して選択され得る。インプラントの作製に適した方法が、例えば、米国特許第4,997,652号、及び米国特許出願公開第2010/0124565号に記載されている。
【0109】
或る特定の場合、インプラント製造中の溶媒の必要を回避するため、押出法を使用してもよい。押出法を使用する場合、ポリマー(単数/複数)及び薬物は、製造に必要な温度、通常、少なくとも約85℃で安定しているように選択される。しかしながら、ポリマー成分、及び1つ以上の薬物の性質に応じて、押出法は、約25℃〜約150℃、例えば、約65℃〜約130℃の温度を採用することができる。インプラントは、該インプラントの表面の全て又は一部を覆うコーティングを提供するために共押出しされてもよい。かかるコーティングは、浸食性又は非浸食性であってもよく、薬物、水、又はそれらの組合せに対して不浸透性、半浸透性、又は浸透性であってもよい。かかるコーティングは、インプラントからの薬物の放出を更に制御するために使用され得る。
【0110】
圧縮法を使用してインプラントを作製してもよい。圧縮法は、頻繁に、押出法より速い放出速度を有するインプラントを生じる。圧縮法は、約50psi〜150psi、例えば約70psi〜80psi、より一層例示的には約76psiの圧力を採用してもよく、約0℃〜約115℃、例えば約25℃の温度を使用してもよい。
【0111】
IV.医薬製剤
A.薬学的賦形剤
医薬製剤は、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせてスニチニブを含む。代表的な賦形剤として、溶媒、希釈剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、懸濁化剤、湿潤剤、粘度調整剤、等張化剤、安定剤及びそれらの組合せが挙げられる。好適な薬学的に許容可能な賦形剤は、例えば、一般に安全であると認定され(GRAS)、望ましくない生物学的副作用又は不要な相互作用を生じることなく個体に投与され得る材料から選択される。
【0112】
無菌、保存を補助するため、及びpH若しくは等張性を調整及び/又は維持するため、賦形剤を上記製剤に添加してもよい。ミクロ粒子は、無菌の生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、平衡塩類溶液(BSS)、粘性ゲル、又は眼において承認された粘弾性薬剤等の眼への投与のための他の薬学的に許容可能な担体に懸濁され得る。
【0113】
上に示されるように、薬物放出は、媒質、特に溶液のpHによって影響を受ける。例えば、スニチニブ遊離塩基粒子の放出は、遊離塩基が遊離塩基よりも親水性である塩を形成することから、生理食塩水中よりもpH 7のPBSにおいてより速い。したがって、投与部位のpHは、薬物放出に影響を及ぼすであろう。
【0114】
いくつかの場合、上記医薬製剤は、薬物の制御放出に対する1種類のみのコンジュゲート又はポリマー粒子を含む(例えば、医薬製剤に組み込まれた薬物粒子が同じ組成を有する、薬物粒子を含む製剤)。他の実施形態では、医薬製剤は、薬物の制御放出に対する、2以上の異なる種類のコンジュゲート、又はポリマー粒子を含む(例えば、医薬製剤が、異なる化学組成、異なる平均粒子径、及び/又は異なる粒度分布を有する、2以上の薬物粒子の集団を含む)。
【0115】
薬物から形成された粒子は、例えば、眼又は腫瘍等の組織への注射用の溶液又は懸濁液として製剤化される。
【0116】
眼投与用医薬製剤は、例えば、スニチニブ、又はその類縁体若しくは薬学的に許容可能な塩から形成された粒子の無菌水溶液又は懸濁液の形態である。許容可能な溶媒としては、例えば、水、リンゲル液、リン酸緩衝食塩水(PBS)、及び等張食塩水が挙げられる。また、上記製剤は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒、例えば1,3−ブタンジオール中の無菌液、懸濁液、又はエマルジョンであってもよい。
【0117】
いくつかの例では、上記製剤は、液状形態で分配されるか、又は包装される。代替的には、眼投与用製剤を、例えば好適な液状製剤の凍結乾燥によって得られる固体として包装することができる。固体は、投与に先立って適切な担体又は希釈剤により再構成され得る。
【0118】
眼の投与に対する溶液、懸濁液又はエマルジョンは、眼の投与に適したpHを維持するのに必要な有効量のバッファーで緩衝されてもよい。好適なバッファーは、当業者によく知られており、有用なバッファーのいくつかの例は酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩のバッファーである。
【0119】
また、眼の投与に対する溶液、懸濁液又はエマルジョンは、製剤の等張の範囲を調整するために1つ以上の等張化剤を含んでもよい。好適な等張化剤は当該技術分野でよく知られており、いくつかの例としてグリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム及び他の電解質が挙げられる。
【0120】
また、眼の投与に対する溶液、懸濁液又はエマルジョンは、眼科用調合薬の細菌汚染を予防するための1つ以上の防腐剤を含んでもよい。好適な防腐剤は当該技術分野において知られており、ポリヘキサメチレンビグアニジン(PHMB)、塩化ベンザルコニウム(BAK)、安定化オキシクロロ錯体(別名Purite(商標)として知られる)、酢酸フェニル水銀、クロロブタノール、ソルビン酸、クロルヘキシジン、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール及びそれらの混合が挙げられる。
【0121】
また、眼の投与に対する、溶液、懸濁液又はエマルジョンは、分散剤、湿潤剤、及び懸濁化剤等の当該技術分野で知られている1つ以上の賦形剤を含んでもよい。
【0122】
B.追加の活性剤
上記ポリマー粒子中に存在するスニチニブ、又はその類縁体若しくは薬学的に許容可能な塩に加えて、上記製剤は、1つ以上の追加の治療剤、診断剤、及び/又は予防剤を含んでもよい。活性剤は、酵素若しくはタンパク質、ポリペプチド又は核酸等の低分子活性剤又は生体分子であってもよい。好適な低分子活性剤として、有機化合物、及び有機金属化合物が挙げられる。いくつかの例では、低分子活性剤は、約2000g/mol未満、例えば約1500g/mol未満、例えば約1200g/mol未満の分子量を有する。低分子の活性剤は、親水性、疎水性、又は両親媒性の化合物であってもよい。
【0123】
いくつかの場合、1つ以上の追加の活性剤は、粒子中に封入されてもよく、分散されてもよく、又は他の場合には粒子と混ざってもよい。また、或る特定の実施形態では、1つ以上の追加の活性剤は、薬学的に許容可能な担体に溶解されてもよく、又は懸濁されてもよい。
【0124】
眼疾患の治療に対する医薬組成物の場合、上記製剤は1つ以上の眼科薬物を含んでもよい。特定の実施形態では、眼科薬物は、後眼部の疾患又は障害を治療、予防、又は診断するために使用される薬物である。眼科薬物の非限定的な例として、緑内障治療剤、血管形成抑制剤、感染症治療剤、抗炎症剤、増殖因子、免疫抑制剤、抗アレルギー剤、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0125】
代表的な緑内障治療剤として、プロスタグランジン類縁体(トラボプロスト、ビマトプロスト及びラタノプロスト等)、ベータアドレナリン受容体アンタゴニスト(チモロール、ベタキソロール、レボベタキソロール及びカルテオロール)、アルファ−2アドレナリン受容体アゴニスト(ブリモニジン及びアプラクロニジン等)、炭酸脱水酵素阻害剤(ブリンゾラミド、アセタゾラミド及びドルゾラミド等)、縮瞳薬(すなわち、ピロカルピン及びエコチオパート等の副交感神経刺激薬)、セロトニン作動薬、ムスカリン作動薬、ドパミン作動薬、及びアドレナリン作動薬(アプラクロニジン、及びブリモニジン等)が挙げられる。
【0126】
代表的な血管形成抑制剤として、限定されないが、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))及びrhuFAb V2(ラニビズマブ、LUCENTIS(商標))等の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対する抗体、及びアフリベルセプト(EYLEA(商標))を含む他の抗VEGF化合物;MACUGEN(商標)(ペガプタニブナトリウム、抗VEGFアプタマー又はEYE001)(Eyetech Pharmaceuticals);色素上皮由来因子(複数の場合がある)(PEDF);セレコキシブ(CELEBREX(商標))及びロフェコキシブ(VIOXX(商標))等のCOX−2阻害剤;インターフェロンアルファ;インターロイキン−12(IL−12);レナリドマイド(REVLIMID(商標))等のサリドマイド(THALOMID(商標))及びその誘導体;スクアラミン;エンドスタチン;アンジオスタチン;ANGIOZYME(商標)(Sirna Therapeutics)等のリボザイム阻害剤;NEOVASTAT(商標)(AE-941)(カナダ国ケベックシティのAeterna Laboratories)等の多機能の抗血管形成剤;スニチニブリンゴ酸塩(SUTENT(商標))等の受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤;ソラフェニブ(Nexavar(商標))及びエルロチニブ(Tarceva(商標))等のチロシンキナーゼ阻害剤;パニツムマブ(VECTIBIX(商標))及びセツキシマブ(ERBITUX(商標))等の上皮増殖因子受容体に対する抗体、また同様に当該技術分野で知られている他の血管形成抑制剤が挙げられる。
【0127】
感染症治療薬として、抗ウィルス剤、抗菌剤、抗寄生虫薬及び抗真菌剤が挙げられる。代表的な抗ウィルス剤として、ガンシクロビル及びアシクロビルが挙げられる。代表的な抗生物質として、ストレプトマイシン、アミカシン、ゲンタミシン、及びトブラマイシン等のアミノグリコシド、ゲルダナマイシン及びハービマイシン等のアンサマイシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、バンコマイシン、テイコプラニン及びテラバンシン等の糖ペプチド、リンコサミド、ダプトマイシン等のリポペプチド、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン及びエリスロマイシン等のマクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、ペニシリン、バシトラシン、コリスチン及びポリミキシンB等のポリペプチド、キノロン、スルホンアミド及びテトラサイクリンが挙げられる。
【0128】
いくつかの場合、活性剤は、オロパタジン及びエピナスチン等の抗アレルギー剤である。
【0129】
抗炎症剤は、非ステロイド系及びステロイド系の双方の抗炎症剤を含む。好適なステロイドの活性剤として、グルココルチコイド、プロゲスチン、鉱質コルチコイド及びコルチコステロイドが挙げられる。
【0130】
眼科薬物は、その中性の形態で、又は薬学的に許容可能な塩の形態で存在し得る。いくつかの場合、増強された安定性、又は望ましい溶解度、又は溶解プロファイル等の塩の1つ以上の有利な物理的特性により、活性剤の塩を含む製剤を作製することが望ましい場合がある。
【0131】
一般に、薬学的に許容可能な塩は、水中若しくは有機溶媒中、又は2者の混合物中(一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルのような非水性媒質が好まれる)における、遊離酸又は塩基の形態の活性剤と化学量の適切な塩基又は酸との反応によって作製され得る。薬学的に許容可能な塩として、薬物と好適な有機リガンド(例えば、第四級アンモニウム塩)との反応によって形成された塩と同様に、無機酸、有機酸、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩に由来する活性剤の塩が挙げられる。好適な塩の一覧は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2000, p. 704に見られる。薬学的に許容可能な塩の形態で投与される場合もある眼科薬物の例として、マレイン酸チモロール、酒石酸ブリモニジン及びジクロフェナクナトリウムが挙げられる。スニチニブ又はスニチニブ類縁体の対イオンとして使用することができる薬学的に許容可能な酸の非限定的な例として、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸及び硝酸等の無機酸から誘導されるもの;並びに酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸(esylic)、ベシル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸及びHOOC−(CH
2)
n−COOH(ここでnは0〜4である)等の有機酸から調製される塩が挙げられる。いくつかの場合、活性剤は、眼の画像化又は他の場合には眼を評価する診断剤である。例示的な診断剤として、常磁性分子、蛍光性化合物、磁気分子及び放射性核種、x線造影剤及び造影剤が挙げられる。
【0132】
或る特定の実施形態では、上記医薬組成物は、1つ以上の局所麻酔薬を含む。代表的な局所麻酔薬として、テトラカイン、リドカイン、アメソカイン、プロパラカイン、リグノカイン及びブピバカインが挙げられる。また、いくつかの場合、局所麻酔薬の分散を加速及び改善するため、ヒアルロニダーゼ酵素等の1つ以上の追加の薬剤が上記製剤に添加される。
【0133】
V.使用方法
スニチニブ、又はその類縁体若しくはその薬学的に許容可能な塩の送達のための制御放出投薬製剤は、癌及び肥満を含む血管化と関連する患者の疾患又は障害を治療するために使用され得る。好ましい実施形態では、上記医薬組成物を、眼の血管新生に関連する患者の疾患又は障害を治療又は予防するために投与する。投与により、治療の利益をもたらすのに十分に高いが、細胞毒性を回避するため十分に低い濃度で、長期間に亘って、1つ以上の薬物が放出される。
【0134】
眼の慢性疾患を治療するため、眼にスニチニブ又はその薬学的に許容可能な塩を送達するため長時間作用する方法が必要とされている。スニチニブ又はその塩の延長された送達を提供する製剤は、スニチニブの投与と関連する毒性の可能性を最小化にする。また、スニチニブ又はその塩の延長された送達を提供する製剤は、VEGF及び血管形成の他の刺激因子の抑制を持続させ、効能を最大化し、血管新生の退化を促進し、網膜下出血を含む致命的な合併症の可能性を最小化する。さらに、頻繁な注射の必要を減少させることは、眼内炎のリスクを減少し、また医師、患者及び患者の家族にとって主な苦労である頻繁な受診の負担を軽減する。
【0135】
A.眼の疾患及び障害
眼に投与された場合、上記粒子は、例えば、3日超、7日超、10日超、15日超、21日超、25日超、30日超、45日超、又は少なくとも最長約2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、若しくは6ヶ月以上の長期間に亘って低用量の1つ以上の活性剤を放出する。暗順応ERG b波振幅の減少、及び/又は網膜変性等の副作用を最小化しながら、長期間に亘って眼に治療的有効量の1つ以上の活性剤を投与するため、薬物の構造又はポリマーマトリクスの構成、粒子の形態、及び投与する粒子の用量を適合させることができる。
【0136】
1つ以上の薬物の制御放出のための粒子を含む医薬組成物を、1つ以上の眼の疾患又は障害を治療又は予防するため、それを必要とする患者の眼に投与することができる。いくつかの場合には、眼の疾患又は障害は、後眼部を冒す。本明細書で使用される後眼部は、前部硝子体膜と、硝子体液、網膜、脈絡膜、及び視神経等のその後ろの全ての光学構造体を含む、眼の後ろ3分の2を指す。
【0137】
好ましい実施形態では、粒子を含む医薬組成物は、眼内の血管新生性疾患を治療又は予防するために投与される。眼疾患、特に眼の血管新生を特徴とするものは、かなりの公衆衛生上の関心事である。眼内の血管新生性疾患は、眼の1つ以上の領域における抑制されない(unchecked)血管の成長を特徴とする。抑制されなければ、血管化は、眼の1つ以上の構造を損傷及び/又は不明瞭にし、視力喪失をもたらす。眼内の血管新生性疾患として、増殖性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病及び他の虚血関連の網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、眼のヒストプラズマ症、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、及び網膜血管新生(RNV)が挙げられる。眼内の血管新生性疾患は、多くの場合、重篤な視力喪失、並びに生活の質及び生産性の低下に結びつき、世界的に数百万人を悩ませる。
【0138】
加齢黄斑変性(AMD)は、高齢者の間で重篤で不可逆的な視力喪失の主な原因である。Bressler, et al. JAMA, 291:1900-1901(2004)。AMDは、ドルーゼンとして知られる淡黄色のスポット、網膜色素上皮(RPE)の傷害、脈絡膜血管新生(CNV)、及び円板状黄斑変性等の幅広い臨床上の及び病的な所見を特徴とする。AMDは、萎縮型(すなわち、非滲出型)又は滲出型(wet:ウェット型)(すなわち、滲出型(exudative))のいずれかに分類される。萎縮型AMDは、ドルーゼンと呼ばれる病変の存在を特徴とする。滲出型AMDは、視野の中心の血管新生を特徴とする。それほど一般的でないが、滲出型AMDは、AMDに関連する重篤な視力喪失の80%〜90%を占める(Ferris, et al. Arch. Ophthamol. 102:1640-2 (1984))。AMDの原因は不明である。しかしながら、AMDを発症するリスクは、加齢と共に増加することが明らかである。また、AMDは、家族歴、喫煙、酸化ストレス、糖尿病、アルコール摂取、及び直射日光曝露を含む危険因子と結び付けられている。
【0139】
滲出型AMDは、典型的には、黄斑領域のCNVを特徴とする。脈絡膜の毛細血管が増殖し、ブルック膜を貫いて網膜色素上皮(RPE)に達する。いくつかの場合には、毛細血管が網膜下腔へと伸びる場合がある。新しく形成された毛細血管の透過性の増加は、RPE下の、及び/又は、網膜神経感覚上皮の下、若しくはその中の漿液又は血液の滞留をもたらす。網膜中心窩が腫脹するか、又は剥離すると、視力の低下が起こる。線様化生(fibrous metaplasia)及び組織化(organization)は続いて起こる場合があり、結果として末期のAMDを構成し、永久的な視力喪失に関係する円盤形瘢痕と呼ばれる網膜下の腫瘤の増加をもたらす(D'Amico D J. N. Engl. J. Med. 331:95-106 (1994))。
【0140】
また、ぶどう膜炎等の眼の他の疾患及び障害は、既存の治療を使用して治療することが難しい。ぶどう膜炎は、虹彩、毛様体又は脈絡膜等のブドウ膜の任意の構成要素の炎症を指す一般用語である。網膜炎と呼ばれる重なる網膜の炎症、又は視神経炎と呼ばれる視神経の炎症が、ぶどう膜炎に付随して、又は付随せずに起こる場合がある。
【0141】
特に、認識されないか、又は不適切に治療された場合、ぶどう膜炎の眼の合併症は深刻で不可逆的な視力損失をもたらす場合がある。ぶどう膜炎の最も頻繁な合併症は、網膜剥離、網膜、視神経又は虹彩の新血管新生、及び嚢胞様黄斑浮腫を含む。視覚に最も重大な網膜の中心5%である黄斑において浮腫、漏出、及び背景糖尿病網膜症(BDR)が生じる場合、黄斑浮腫(ME)が起こる可能性がある。MEは、重症の視力障害の一般的な原因である。
【0142】
眼の慢性炎症と関連する疾患と同様に、眼内の神経脈管の疾患を医薬品により治療する多くの試みがあった。臨床的に有用な治療法を開発する試みは、長期間に亘って眼組織中に治療的有効量の医薬品を投与し、維持することの困難性によって悩まされてきた。さらに、多くの医薬品は、眼組織に投与された場合に著しい副作用及び/又は毒性を示す。
【0143】
眼内血管新生性疾患は、眼の血管新生を特徴とする眼の疾患又は障害である。血管新生は、角膜、網膜、脈絡膜層、又は虹彩を含む眼の、1つ以上の領域に生じる場合がある。或る特定の実例では、眼の疾患又は障害は、眼の脈絡膜層における新たな血管の形成(すなわち脈絡膜血管新生、CNV)を特徴とする。いくつかの例では、眼の疾患又は障害は、網膜静脈から始まり、網膜の内部の(硝子体)表面に沿って伸びる血管の形成(すなわち、網膜血管新生、RNV)を特徴とする。
【0144】
眼の例示的な血管新生性疾患として、脈絡膜血管新生に関連する加齢性黄斑変性、増殖型糖尿病性網膜症(網膜、網膜前方、又は虹彩の血管新生に関連する糖尿病性網膜症)、増殖性硝子体網膜症、未熟児網膜症、病的近視、フォンヒッペルリンダウ病、推定眼ヒストプラズマ症候群(POHS)、並びに網膜静脈分枝閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、及び網膜中心動脈閉塞症等の虚血と関連する病状が挙げられる。
【0145】
血管新生は、腫瘍によって引き起こされる場合がある。腫瘍は、良性又は悪性の腫瘍のいずれであってもよい。例示的な良性腫瘍として、過誤腫及び神経線維腫が挙げられる。例示的な悪性腫瘍として、脈絡膜黒色腫、虹彩のブドウ膜黒色腫、毛様体のブドウ膜黒色腫、網膜芽細胞腫又は転移性疾患(例えば脈絡膜転移)が挙げられる。
【0146】
血管新生は、眼の傷に関連する場合がある。例えば、傷は、角膜裂傷等の眼球に対する外傷性損傷の結果である場合がある。代替的には、傷は眼科手術の結果である場合がある。
【0147】
上記薬物を、硝子体網膜の手術後の増殖性硝子体網膜症を予防する、又はそのリスクを減らすため、角膜の手術(角膜移植及びエキシマレーザー手術等)後の角膜薄濁を予防するため、線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)の閉鎖を予防するため、又は翼状片の再発を予防若しくは実質的に遅延するために投与することができる。
【0148】
上記薬物を、炎症に関連する眼疾患を治療するか、又は予防するために投与することができる。かかる場合、上記薬物は、例えば抗炎症剤を含む。例示的な炎症性眼疾患として、限定されないが、ぶどう膜炎、眼内炎、及び眼の外傷又は手術が挙げられる。
【0149】
また、眼疾患は、HIV網膜症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、及び眼内炎等の感染性眼疾患であってもよい。
【0150】
また、1つ以上の薬物から形成される粒子を含有する医薬組成物を、ドライアイ、マイボーム腺炎、緑内障、結膜炎(例えば、アレルギー性結膜炎、春季カタル、巨大乳頭結膜炎、アトピー性角結膜炎)、虹彩血管新生を伴う新生血管緑内障、及び虹彩炎等の眼の他の部分を冒す1つ以上の疾患を治療又は予防するために使用することができる。
【0151】
1.投与方法
本明細書に記載される製剤は、硝子体内注射(例えば、前部、中部、又は後部の硝子体注射)、結膜下注射、前房内注射、側頭部角膜輪部を介する前眼房への注射、角膜実質内注射、脈絡膜下腔への注射、角膜間注射、網膜下注射、及び眼内注射によって眼に局所的に投与され得る。好ましい実施形態では、上記医薬組成物は硝子体内注射によって投与される。
【0152】
本明細書に記載されるインプラントは、当該技術において既知の移植に適した方法を使用して、眼に投与され得る。或る特定の実施形態では、インプラントは22−ゲージ針等の針を使用して水晶体内に注入される。水晶体内のインプラントの配置は、インプラントのサイズ、インプラントの形状、及び治療される疾患若しくは障害を考慮して変化され得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物、及び/又はインプラントは、1つ以上の追加の活性剤と同時投与される。本明細書で使用される「同時投与」は、異なる剤形を同時に、又は本質的に同時に使用する投与と同様に、同じ剤形内の1つ以上の追加の活性剤との1つ以上の薬物の制御放出製剤の投与を指す。本明細書で使用される「本質的に同時に」は、一般的に、10分以内、例えば5分以内、例えば2分以内、例えば1分以内を意味する。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物、及び/又はインプラントは、眼の血管新生の疾患又は障害に対する1つ以上の追加の治療と同時投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物、及び/又はインプラントは、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))、ラニビズマブ、LUCENTIS(商標)又はアフリベルセプト(EYLEA(商標))のような1つ以上の抗血管形成剤と同時投与される。
【0155】
b.投薬
上記粒子は、長期間に亘って、有効量のスニチニブ、又はその類縁体若しくはその薬学的に許容可能な塩を放出することが好ましい。好ましい実施形態では、粒子は、少なくとも2週の期間に亘り、少なくとも4週の期間に亘り、少なくとも6週の期間に亘り、少なくとも8週の期間に亘り、3ヶ月の期間に亘り、4ヶ月の期間に亘り、5ヶ月の期間に亘り、又は6ヶ月の期間に亘り有効量のスニチニブを放出する。いくつか実施形態では、粒子は、3ヶ月以上の期間に亘って有効量のスニチニブを放出する。
【0156】
いくつかの場合、医薬製剤は、脈絡膜血管新生を減少させる治療的有効量で、それを必要とする患者に投与される。別の実施形態では、医薬製剤は、角膜血管新生を減少させる量で、及びそれを減少させる時間に亘って投与される。いくつかの場合、医薬製剤は、急性黄斑変性(AMD)等における網膜血管新生を減少させる治療的有効量で、それを必要とする患者に投与される。
【0157】
c.治療有効性
実施例は、様々な動物モデルにおける治療有効性を評価する方法を実証する。ヒト及びイヌ等の動物の場合、眼科分野の当業者によって十分に技法が確立されており、細隙灯評価、網膜の目視検査、視野、視力及び眼内圧の測定を含み得る。
【0158】
加齢黄斑変性の場合、患者における治療有効性は、ベースラインから希望時間までの最高矯正視力(BCVA)の平均変化を評価すること、ベースラインと比較して、希望時間の視力で15個(3行)未満の文字を見失う患者の割合を評価すること、ベースラインと比較して、希望時間の視力で15個(3行)以上の文字を得る患者の割合を評価すること、希望時間において20/2000と同等又はそれよりも劣る視力スネレンを有する患者の割合を評価すること、国立眼学研究所の視覚機能アンケートを評価すること、並びに希望時間で蛍光眼底血管撮影を使用して、CNVのサイズ、及びCNVの漏出量を評価することの1つ以上によって測定され得る。
【0159】
或る特定の実施形態では、最近CNVを発症した、本明細書に記載される製剤により治療される患者の少なくとも25%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも35%、例えば少なくとも40%が3以上の視線により改善する(by three or more lines of vision)。
【0160】
本発明は、以下の非限定的な実施例の参照により更に理解される。
【実施例】
【0161】
実施例1.界面活性剤、スニチニブの形態、及び全体的なアルカリ度の薬物装荷に対する影響、並びにミクロ粒子(MP)のin vitro放出プロファイル
材料及び方法
材料−2つの形態のスニチニブ
2つの形態のスニチニブ、すなわち、いずれもLC Lab(米国マサチューセッツ州ウーバン)から入手したスニチニブリンゴ酸塩及びスニチニブ遊離塩基を使用した。
【0162】
ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)(PLGA、50:50)、2Aを米国マサチューセッツ州ウォルサムのAlkermesから入手し、ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)(PLGA、50:50)、2Aを米国アラバマ州バーミンガムのLakeshore Biomaterialsから入手し、ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)(PLGA、50:50)、4Aを米国アラバマ州バーミンガムのLakeshore Biomaterialsから入手し、ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)(PLGA、75:25)、PURASORB PDLG 7502Aをオランダ国のPURACから入手し、ポリエチレングリコール−ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)、PEG−PLGA(5K、45K)、PEG10%、PLGA 50:50を中国上海済南のJinan Daigang Biomaterials Co, Ltd.から入手し、クロロホルム中に溶解してエーテル中に沈澱させることによって精製した。PLA、ポリ(D、L−乳酸)、ポリビニルアルコール(PVA)、分子量25000、加水分解88%をPolyscienceから入手した。PEG−PLA(5K、45K)、10%PEG、PEG、5Kを合成した。N,Nジメチルトルイジン、N,Nジメチルアニリン、リンゴ酸、クエン酸、トリエチルアミン、及びその他は全てsigma(米国ミズーリ州セントルイス)から入手した。
【0163】
粒子の作製及び酸性度/アルカリ度の調整
2つの形態のスニチニブ(リンゴ酸塩又は遊離塩基のいずれか)で装荷したポリマーミクロ粒子をシングルo/w又はs/o/wのエマルジョン、溶媒蒸発法を使用して作製した。簡潔には、塩化メチレン(ジクロロメタン、DCMとしても知られる)中に溶解したPLGAと、DMSO中に溶解した薬物又は塩化メチレン中に懸濁した薬物を混合することによって溶液を作製した(O/W)。該混合物を、1%のポリビニルアルコール(PVA)を含有する水溶液中に1分間に亘ってホモジナイズした(英国バッキンガムシャー州チェサムのSilverson製ホモジナイザー、モデルL4RT)。その後、粒子を2時間に亘って撹拌して硬化させ、遠心分離によって収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0164】
界面活性剤の選択において、カチオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤の両方、すなわちドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)、及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(「HDTA」)を最初に試し、上記溶媒に添加して粒子を作製した。代替的には、SDS又はHDTAに代えて非イオン性溶媒であるポリビニルアルコール(PVA)を使用した。
【0165】
また、粒子をw/o/w又はs/w/o/wの二重動作法(double motion method)によって作製することができる。簡潔には、DMSO及び水の中で薬物を混合するか、又は水に薬物を懸濁した後塩化メチレン中のPLGAに添加し、超音波処理した後、該混合物を1分間に亘って1%ポリビニルアルコール(PVA)を含有する水溶液中にホモジナイズ(英国バッキンガムシャー州チェサムのSilverson製ホモジナイザー、モデルL4RT)して溶液を作製した。その後、粒子を2時間撹拌して硬化させ、遠心分離によって収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0166】
形成されるミクロ粒子の薬物装荷能力を増すため、有機相にアルカリを添加することによって、有機相の酸性度を調整することができる。
【0167】
製剤ID
識別を容易にするため、種々の処方に従って作製された粒子にそれぞれID、例えばMP−n(nは1〜20の番号)を付与した。スニチニブリンゴ酸塩をMP−1〜MP−10、MP−14、MP−15、及びMP−18に使用し、一方、スニチニブ遊離塩基をMP−11〜MP−13、MP−16、MP−17、MP−19、及びMP−20に使用した。
【0168】
水中油(O/W)型シングルエマルジョン法
MP−1:100mgのPEG−PLGA(5K、45K)を1mLの塩化メチレンに溶解し、20mgのスニチニブリンゴ酸塩を0.5mLのDMSO及びトリエチルアミンに溶解した。その後、それらを共に混合し、1%のポリビニルアルコール(PVA)を含有する水溶液中に1分間、5000rpmでホモジナイズし、2時間に亘って撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄し、凍結乾燥した。
【0169】
MP−2:200mgのPLGA(2A、Alkermers)を3mLの塩化メチレンに溶解し、40mgのスニチニブリンゴ酸塩を0.5mLのDMAO及びトリエチルアミンに溶解した。その後、それらを共に混合し、1%PVA中、5000rpmで1分間ホモジナイズし、2時間に亘って撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄し、凍結乾燥した。
【0170】
MP−3:180mgのPLGA(2A、Alkermers)、及び20mgのPEG−PLGA(5K、45K)を3mLの塩化メチレンに溶解し、40mgのスニチニブリンゴ酸塩を0.5mLのDMSO、トリエチルアミンに溶解した。その後、それらを共に混合し、1%PVA中、5000rpmで1分間ホモジナイズし、2時間に亘って撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄し、凍結乾燥した。
【0171】
MP−4:140mgのPLGA(2A、Alkermers)、60mgのPEG−PLGA(5K、45K)を3mLの塩化メチレンに溶解し、40mgのスニチニブリンゴ酸塩を0.5mLのDMSO及びトリエチルアミンに溶解した。その後、それらを共に混合し、1%PVA中、5000rpmで1分間ホモジナイズし、2時間に亘って撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄し、凍結乾燥した。
【0172】
MP−5:100mgのPLGA(2A、Alkermers)、及び100mgのPEG−PLGA(5K、45K)を3mLの塩化メチレンに溶解し、40mgのスニチニブリンゴ酸塩を0.5mLのDMSO及びトリエチルアミンに溶解した。その後、それらを共に混合し、1%PVA中、5000rpmで1分間ホモジナイズし、2時間に亘って撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄し、凍結乾燥した。
【0173】
MP−6:90mgのPLGA(2A、Alkermers)、及び10mgのPEG−PLGA(5K、45K)を1mLの塩化メチレンに溶解し、20mgのスニチニブリンゴ酸塩を0.25mLのDMSO及びN,N−ジメチルトルイジンに溶解した。その後、それらを共に混合し、1%PVA中、5000rpmで1分間ホモジナイズし、2時間に亘って撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄し、凍結乾燥した。
【0174】
MP−7:90mgのPLGA(2A、Alkermers)、及び10mgのPEG−PLGA(5K、45K)を1mLの塩化メチレンに溶解し、20mgのスニチニブリンゴ酸塩を0.25mLのDMSO及びN,N−ジメチルアニリンに溶解した。その後、それらを共に混合し、1%PVA中、5000rpmで1分間ホモジナイズし、2時間に亘って撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄し、凍結乾燥した。
【0175】
MP−8:160mgのPLGA(2A、Alkermers)及び40mgのPEG−PLGA(5K、45K)を2mLのDMFに溶解し、20mgのスニチニブリンゴ酸塩を添加してボルテックスを行った後、1%PVA中で1分間、5000rpmでホモジナイズして2時間撹拌し、粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0176】
MP−9:90mgのPLGA(4A、Lakeshore biomaterials)及び10mgのPEG−PLGA(5K、45K)を1mLの塩化メチレンに溶解し、0.25mLのDMSOに(溶解した20mgのスニチニブリンゴ酸塩、エタノール中0.1Mの水酸化カリウムを添加し、1%PVA中、5200rpmで1分間ホモジナイズして2時間撹拌し、粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0177】
MP−10:160mgのPLGA(2A、Alkermers)及び40mgのPEG−PLGA(5K、45K)を2mLの塩化メチレンに溶解し、1mLのDMSOに溶解した40mgのスニチニブリンゴ酸塩、トリエチルアミンを添加し、1%PVA中、5000rpmで1分間ホモジナイズして2時間撹拌し、粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0178】
MP−11:1mLの塩化メチレンに溶解した100mgのPLGA(4A、Lakeshore biomaterials)、0.25mLのDMSOに溶解した20mgのスニチニブ遊離塩基、少量のエタノール中1%酢酸を添加し、1%PVA中、5000rpmで1分間ホモジナイズして2時間撹拌し、粒子を添加し、再蒸留水で洗浄して凍結した。
【0179】
MP−12:100mgのPLGA(7502A、オランダ国のPURAC)を2mLの塩化メチレンに溶解し、0.25mLのDMSOに溶解した20mgのスニチニブ遊離塩基、エタノール中0.1Mクエン酸を添加し、1%PVA中、3000rpmで1分間ホモジナイズし、2時間撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0180】
MP−13:100mgのPLGA(4A、Lakeshore biomaterials)を2mLの塩化メチレンに溶解し、0.25mLのDMSOに溶解した20mgのスニチニブ遊離塩基、エタノール中0.1Mリンゴ酸を添加し、1%PVA中、3000rpmで1分間ホモジナイズし、2時間撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0181】
S/O/W(水中油中固体)シングルエマルジョン法
MP−14:90mgのPLGA(4A、Lakeshore biomaterials)及び10mgのPEG−PLGA(5K、45K))を2mLの塩化メチレンに溶解し、20mgのスニチニブリンゴ酸塩を添加して超音波処理した後、1%PVAに注いで4300rpmで1分間ホモジナイズし、2時間撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0182】
MP−15(水相pHを制御):90mgのPLGA(4A、Lakeshore biomaterials)、10mgのPEG−PLGA(5K、45K))を1mLの塩化メチレンに溶解し、20mgのスニチニブリンゴ酸塩を上の溶液に添加し、超音波処理した後1%PVA PBS(リン酸緩衝溶液 pH=7.4)に注ぎ、4800rpmで1分間ホモジナイズして2時間撹拌し、粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0183】
MP−16:90mgのPLGA(4A、Lakeshore biomaterials)及び10mgのPEG−PLGA(5K、45K)を1mLの塩化メチレンに溶解し、20mgのスニチニブ遊離塩基を上の溶液に添加し、エタノール中0.1Mのリンゴ酸を上の溶液に添加して、該溶液を超音波処理した後、1%PVAに注いで4800rpmで1分間ホモジナイズして2時間撹拌し、粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0184】
MP−17:90mgのPLGA(4A、Lakeshore biomaterials)及び10mgのPEG−PLGA(5K、45K))を1mLの塩化メチレンに溶解し、20mgのスニチニブ遊離塩基を上の溶液に添加した後、PBS中1%のPVAに注いで、4800rpmで1分間ホモジナイズし、2時間撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0185】
ダブルエマルジョン(w/o/w)法
MP−18:90mgのPLGA(4A、Lakeshore biomaterials)及び10mgのPEG−PLGA(5K、45K))を1mLの塩化メチレンに溶解し、20mgのスニチニブリンゴ酸塩を100μlのDMSO及び200μlの水に添加し、超音波処理した後、PBS中1%PVAに注ぎ、3000rpmで1分間ホモジナイズし、2時間に亘って撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0186】
MP−19:90mgのPLGA(4A、Lakeshore biomaterials)及び10mgのPEG−PLGA(5K、45K))を1mLの塩化メチレンに溶解し、20mgのスニチニブ遊離塩基を100μlのDMSO及び200μlの水に添加し、超音波処理した後、PBS中1%PVAに注ぎ、4000rpmで1分間ホモジナイズし、2時間に亘って撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0187】
MP−20:90mgのPLGA(4A、Lakeshore biomaterials)及び10mgのPEG−PLGA(5K、45K))を1mLの塩化メチレンに溶解し、20mgのスニチニブ遊離塩基を100μlのDMSO及び200μlの水に添加し、0.1Mリンゴ酸を添加し、超音波処理した後、1%PVAに注ぎ、4000rpmで1分間ホモジナイズし、2時間に亘って撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0188】
ミクロ粒子(MP)の特性評価
MPのサイズをCoulter Multisizer VI(カリフォルニア州フラートンのBeckman-Coulter Inc.)を使用して特定した。およそ2mLのisoton II溶液を5mg〜10mgのミクロ粒子に添加した。溶液に短時間ボルテックスを行ってミクロ粒子を懸濁させた後、粒子の同時発生が8%〜10%になるまで100mLのisoton II溶液に滴加した。ミクロ粒子の各バッチについて100000超の粒子をサイズで分類し、平均粒子径を特定した。in vitroでの薬物放出速度を特定するため、5mgの薬物装荷粒子を1mLのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に懸濁し、ロテーター上37℃でインキュベートした。選択された時間点において、ミクロ粒子を遠心分離によって沈澱させ、上清を除去し、新たなリン酸バッファーで交換した。
【0189】
薬物装荷をUV−Vis分光光度法によって特定した。スニチニブを含むミクロ粒子(総重量10mg)を無水DMSO(1mL)に溶解し、薬物の濃度が薬物のUV吸光度の標準曲線の比例領域に含まれるまで更に希釈した。標準曲線に対してUV吸光度を比較することにより、薬物の濃度を特定した。薬物装荷は、ミクロ粒子に対する薬物の重量比として定義される。
【0190】
6mLガラスバイアル中、1%のTween 20を含有する4mLのPBSにスニチニブを含むMP(総重量10mg)を懸濁し、150rpmで振蕩しながら37℃でインキュベートすることにより、in vitro薬物放出を特定した。所定の時間点において、バイアルの底に粒子が沈澱した後3mLの上清を取り出し、3mLの新たな放出媒質と交換した。上清中の薬物含有量をUV−Vis分光光度法又はHPLCによって特定した。
【0191】
結果
放出結果の要約
およそ30日間に亘り、PBS(pH7.4)中において、F127によって作製されたPLGAスニチニブ粒子から全てのスニチニブ(F127)が直線的に放出された。
【0192】
およそ40日間に亘り、PBS(pH7.4)中において、PVAによって作製された後、F127によって洗浄されたPLGA粒子から全てのスニチニブ(F127/PVA)が直線的に放出された。
【0193】
およそ60日間〜70日間に亘り、PBS(pH7.4)中において、PVAによって作製されたPLGA粒子から全てのスニチニブが直線的に放出された。
【0194】
およそ100日間〜120日間に亘り、PBS(pH7.4)中でPEG−PLGA粒子から全てのスニチニブが直線的に放出された。
【0195】
およそ120日間に亘り、PBS(pH7.4)中でPEG−PLA粒子から全てのスニチニブが直線的に放出された。
【0196】
装荷に対する界面活性剤及びpHの影響の要約
カチオン性及びイオン性の両方の界面活性剤は、極端に低い装荷、例えばSDSで0.20%、及びHDTAブロミドで0.27%をもたらした。PVAを代用することにより最大1.1%まで装荷を増加した。スニチニブ遊離塩基は結晶化し、より高い装荷を得るために利用することはできなかった。溶媒へのDMSOの添加は、より一層、最大およそ5%まで装荷を増加した。しかしながら、アルカリを添加しないわずか1%の装荷能力と比較して、スニチニブ溶液のアルカリ度を増加することによってPEG−PLGAによる最大16.1%の装荷能力までの装荷の増加が達成され、これはDMFを添加することによって更に増加可能であった。
【0197】
表1は、上に記載されるように、PVA、2形態のスニチニブ、及び種々の溶液全体のアルカリ度を使用して作製されたMP製剤のサイズ、薬物装荷能力、及び1日目の放出パーセンテージを示す。
【0198】
【表1-1】
【表1-2】
【0199】
実施例2:スニチニブを封入するナノ粒子(NP)の作製及びin vitro放出プロファイル
材料及び方法
製剤ID
識別しやすいように、種々の処方に従ってPBS(pH7.4)中1%のPVAを含む水相に作製されたナノ粒子に、それぞれID、例えばNP−n(nは21〜27の番号)を付与した。
【0200】
NP−21:100mgのPLGA(2A、Lakeshore biomaterials)を1mLの塩化メチレンに溶解した。20mgのスニチニブリンゴ酸塩を250μlのDMSOに添加した後、1%PVAに注いだ。5mLを3分間超音波処理し、80mLの0.1%PVAに注ぎ、2時間撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0201】
NP−22:100mgのPLGA(2A、Lakeshore biomaterials)を1mLの塩化メチレンに溶解した。20mgのスニチニブリンゴ酸塩を250μlのDMSOに添加した後、PBS(pH7.4)中1%PVAに注いだ。5mLを3分間超音波処理し、80mLの0.1%PVAに注ぎ、2時間撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0202】
NP−23:100mgのPLGA(1A、Lakeshore biomaterials)を1mLの塩化メチレンに溶解した。20mgのスニチニブリンゴ酸塩を250μlのDMSOに添加した後、PBS(pH7.4)中1%PVAに注いだ。5mLを3分間超音波処理し、80mLのPBS中0.1%PVAに注ぎ、2時間撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0203】
NP−24:100mgのPLGA(75:25、4A、Lakeshore biomaterials)を1mLの塩化メチレンに溶解した。20mgのスニチニブリンゴ酸塩を250ulのDMSOに添加した後、PBS(pH7.4)中1%PVAに注いだ。5mLを3分間超音波処理し、PBS中80mLの0.1%PVAに注ぎ、2時間撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0204】
NP−25:100mgのPLGA(2A、Resomer biomaterials)を1mLの塩化メチレンに溶解した。20mgのスニチニブリンゴ酸塩を250μlのDMSOに添加し、20μlのTEAを添加した後、1%PVAに注いだ。5mLを3分間超音波処理し、80mLの0.1%PVAに注ぎ、2時間撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0205】
NP−26:100mgのPLGA(2A、Resomer biomaterials)を1mLの塩化メチレンに溶解した。20mgのスニチニブリンゴ酸塩を250μlのDMSOに添加した後、PBS(pH7.4)中1%PVAに注いだ。5mLを3分間超音波処理し、PBS(pH7.4)中80mLの0.1%PVAに注ぎ、2時間撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0206】
NP−27:100mgのPEG−PLGA(5K、45K Shangdong、10%PEG)を1mLの塩化メチレンに溶解した。20mgのスニチニブリンゴ酸塩を250μLのDMSOに添加した後、1%PVAに注ぎ、3分間超音波処理を行い、80mLの0.1%PVAに注ぎ、2時間撹拌して粒子を収集し、再蒸留水で洗浄して凍結乾燥した。
【0207】
結果
【表2】
【0208】
実施例3.スニチニブの封入効率に対する水性pHの影響
材料及び方法
スニチニブリンゴ酸塩を含む又は含まない、PLGA及び/又はPLGAと、PLGA(分子量45kDa)に共有結合的にコンジュゲートしたPEG(PLGA45k−PEG5k)とのジブロックコポリマーのポリマーミクロ粒子を、シングルエマルジョン溶媒蒸発法を使用して作製した。簡潔には、PLGA及び/又はPLGA−PEGを最初にジクロロメタン(DCM)に溶解し、所定の濃度でスニチニブリンゴ酸塩をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。ポリマー溶液及び薬液を混合して均質な溶液(有機相)を形成した。有機相を1%ポリビニルアルコール(PVA)(Polysciences、分子量25kDa、88%加水分解)の水溶液に添加し、L5M−A実験室用ミキサー(マサチューセッツ州イーストロングメドーのSilverson Machines Inc.)を使用して5000rpmで1分間ホモジナイズしてエマルジョンを得た。
【0209】
その後、エマルジョン中の溶媒を含むミクロ粒子を室温で2時間超に亘って撹拌することによりDCMを蒸発させ、硬化させた。ミクロ粒子を沈降及び遠心分離によって収集し、水中で3回洗浄し、凍結乾燥によって乾燥させた。
【0210】
水溶液中のスニチニブ溶解度がpH依存性であることが示されたため、スニチニブを封入するミクロ粒子(MP)製剤を様々なpH値(表3に示される)の水相に作製して薬物封入に対する水性pHの影響を調べた。
【0211】
【表3】
【0212】
薬物装荷の特定
UV−Vis分光光度法を使用して薬物装荷を特定した。スニチニブを含むミクロ粒子(総重量10mg)を無水DMSO(1mL)中に溶解し、薬物の濃度が薬物のUV吸光度の標準曲線の比例領域に含まれるまで更に希釈した。UV吸光度を標準曲線と比較することにより、薬物の濃度を特定した。薬物装荷は、ミクロ粒子に対する薬物の重量比として定義される。
【0213】
ミクロ粒子の平均サイズ及び粒度分布の測定
数ミリグラムのミクロ粒子を最初に水に懸濁し、ISOTON(商標)希釈剤中に分散させた。COULTER MULTISIZER IV(カリフォルニア州ブレアのBeckman Coulter, Inc.)を使用して平均粒子径及び分布を特定した。
【0214】
結果
表4は、表3の処方に従って作製されたMPの装荷及び封入効率を示す。薬物装荷及び封入の効率は、水性pHが4から7.4、より実質的には6から7.4に増加した場合に著しく増加した。しかしながら、pHを10に調整して水溶液がより塩基性になると、多くの粒子の形態は球形から不規則な形状へと変化し、一部の粒子は凝集塊を形成し、高pHの水溶液もまたスニチニブの高装荷及び高品質の粒子を生産するのに不利であることを示唆した。したがって、水性pHの好ましい範囲は6〜10であり、より好ましくは6〜8である。
【0215】
【表4】
【0216】
実施例4.水性pH7.4におけるスニチニブの封入効率に対するポリマー濃度及びポリマー粘度の影響
材料及び方法
表5に示されるように、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)中にスニチニブを封入するミクロ粒子(MP)製剤を作製した。
【0217】
【表5】
【0218】
結果
表6は、表5の処方に従って作製されたMPの装荷及び封入効率を示す。薬物装荷及び封入効率は、ポリマーPLGA 7525 4Aの濃度が50.5mg/mLから202mg/mLに増加するにつれて増加した(
図1、
図2B、及び表5)。これはおそらく、より高い濃度では、ポリマー溶液はより粘性であり、薬物分子が水相へと拡散するのを防ぐバリアとして有効に機能するという事実に起因する。特に、封入効率は100mg/mLのポリマー濃度で50%超まで増加した。DMSO中スニチニブリンゴ酸塩溶液と混合する前のこのDCM(塩化メチレン)中のポリマー溶液の動粘度は、およそ350cPsと推定された。DCM中のポリマー溶液の好ましい最小粘度は約350cPsと考えられ、ポリマー粘度は計算上およそ720cPsであることが好ましい(DCM中140mg/mLのポリマー濃度と相関する)。また、ミクロ粒子の平均径は、ポリマー濃度の関数として増加した。ポリマー濃度200mg/mL、及び水性pH7.4において、封入効率は92%と高かった。
【0219】
また、薬物装荷及び封入効率は、所与のポリマー濃度及び7.4の所与の水性pHでポリマー溶液の粘度が増加するにつれて増加した。ポリマーPLGA 75:25 6E、ポリマーPLGA 85:15 6E、及びポリマーPLGA 85:15 6EのそれぞれがポリマーPLGA 75:25 4Aよりも高い分子量を有することから、100mg/mLの同じ濃度で、PLGA 75:25 6E溶液、PLGA 85:15 6E溶液、及びPLGA 85:15 6A溶液の粘度は、PLGA 75:25 4A溶液の粘度よりも高かった。具体的には、DCM中100mg/mLのPLGA 75:25 6Eの粘度は約830cPsと計算された。その結果、PLGA 75:25 6E、PLGA 85:15 6E、又はPLGA 85:15 6Aの製剤の封入効率は約80%であり、53%の同じ濃度のPLGA 7525 4Aを含む製剤の封入効率よりも高かった(表6)。
【0220】
【表6】
【0221】
結果は、スニチニブ製剤の薬物装荷及び封入効率を、最適化された水性pHでのポリマー濃度/粘度の修正によって著しく改善することができることを示す。上に記載されるものよりも更に粘性の高いポリマー溶液を使用することができると考えられる。しかしながら、或る特定の段階では溶液の粘度が高すぎて水相と完全に混合して比較的均一な粒度分布を有するミクロ粒子を形成することができない。
【0222】
実施例5:水性pH7.4で形成されたスニチニブ封入ポリマーミクロ粒子製剤の放出持続期間
材料及び方法
製剤
以下のミクロ粒子(MP)製剤、すなわち、表5に従って製剤ID:DC−1−53−1、DC−1−53−2、及びDC−1−53−3を作製し、また表7に従って製剤を作製した。表7の製剤の薬物装荷及び封入効率を先の実施例3に記載される通りアッセイした。
【0223】
【表7】
【0224】
in vitro薬物放出
6mLのガラスバイアル中でスニチニブを含有するMP(全重量10mg)を1%TWEEN(商標)20を含有するPBS 4mLに懸濁し、150rpmで振蕩しながら37℃でインキュベートした。所定の時間点において、バイアルの底に粒子が沈殿した後、3mLの上清を取り出し、3mLの新たな放出媒質と交換した。上清中の薬物含有量をUV−Vis分光光度法又はHPLCによって特定した。
【0225】
結果
表8は、表7の処方に従って作製されたMPの装荷及び封入効率を示す。
【0226】
【表8】
【0227】
図2Aは、表5に列挙される選択されたMP製剤、及び表7に列挙されるものの約1ヶ月から約6ヶ月の範囲のin vitro放出プロファイルを示す。PEG−PLGA(PLA)及びPEG−PLGA/ブレンドミクロ粒子は、スニチニブの持続放出を示す。治療プロファイルを改善するため、必要に応じて、PLGAコポリマー中のラクチド:グリコリドの比率、ポリマー濃度、ポリマーに対する薬物の比、及び粒子径を調整することによって粒子の持続放出を変化させることができる。
【0228】
実施例6:スニチニブ装荷生分解性ミクロスフェアは実験的角膜血管新生を阻害する
序論
無血管及び透明性を特徴とする角膜は、眼の機械的バリア及び前部の屈折面としてはたらく。角膜血管新生(NV)は、感染症、化学的又は外傷による損傷、自己免疫疾患及び角膜移植を含む様々な病的状況において起こり、治療せずに放置すれば視力を損なうことになる場合がある。したがって、角膜NVの効果的な阻害は、視覚を守るために重要である。角膜NVの治療として、局所のコルチコステロイド、非ステロイド、抗炎症の医薬、及び光凝固が挙げられるが、いずれの治療法も根治はせず、いくつかの望ましくない副作用を伴う。
【0229】
病的角膜NVは、血管形成因子と抗血管形成因子との間のホメオスタシスの崩壊によってもたらされる。血管内皮増殖因子(VEGF)及び血小板由来増殖因子(PDGF)は、角膜NVの発症における主要なメディエーターである。VEGH及びその受容体(VEGFR)は、正常な角膜と比較して、血管新生化角膜において高濃度で存在する。VEGFは、チロキシンキナーゼ受容体(VEGFR1、2、3)によりそれらの効果をもたらし、血管内皮細胞の増殖、遊走、及び生存に対するシグナル伝達を導く。VEGFの妨害は角膜NVを阻害する。増殖している(Sprouting)内皮細胞はPDGFを分泌し、PDGFはチロシンキナーゼPDGF受容体を介してVEGF転写を賦活する。周皮細胞はPDGFR−βを発現し、周皮細胞のサポート及びVEGFシグナル伝達がない場合、内皮細胞はアポトーシスを経る。PDGFシグナル伝達経路の阻害は、周皮細胞動員を妨げ、そして血管形成を阻害する。
【0230】
モノクローナル抗体、リボ核酸アプタマー、及びVEGFトラップを含む抗VEFG剤は、動物試験及び臨床試験において角膜NVを予防し、治療するために適用されており、病的角膜NVにおける制限された又は部分的な減少を示した。VEGFR及びPDGFRの両者の組合せは、抗血管形成における効能を著しく増強することができる。スニチニブによるVEGFR及びPDGFRの複合阻害は、消化管間質腫瘍、膵臓癌、及び腎細胞癌の治療に対して承認された。VEGF及びPDGFの受容体を標的とするスニチニブ、パゾパニブ、及びソラフェニブ等の低分子チロシン受容体キナーゼ阻害剤(TKI)は、角膜NVの治療において強力で有効な特徴を示す。
【0231】
TKIの局所適用は、動物モデル及び臨床試験の両方において角膜NVの治療における効能を実証する(Amparo, F., et al., Investigative Ophthalmology & Visual Science, 2013. 54(1): p. 537-544; Cakmak, H., et al., Cutan Ocul Toxicol, 2015: p. 1-7; Perez-Santonja, J.J., et al., Arch Soc Esp Oftalmol, 2013. 88(12): p. 473-81; Ko, B.Y., et al., Cornea, 2013. 32(5): p. 689-95)。しかしながら、局所点眼は、乏しい薬物浸透、急速な涙膜のターンオーバー、及びクリアランスのため、制限されたバイオアベイラビリティーを示した(Govindarajan, B. and I.K. Gipson, Exp Eye Res, 2010. 90(6): p. 655-63; Gaudana, R., et al., Pharm Res, 2009. 26(5): p. 1197-216)。治療効果を達成するため、TKI点眼は頻繁に適用されなければならず、患者において角膜NVを治療するためのTKIパゾパニブを使用する臨床試験では、点眼を1日当たり4回適用した(Amparo 2013)。頻繁な投与は患者の乏しいコンプライアンスと結びつく。
【0232】
生分解性ポリマーのナノ粒子及びミクロ粒子は、制御された薬物送達、増強された眼浸透、改善されたバイオアベイラビリティー、及び減少された薬物の副作用等の眼科用途に対する利点を示す(Makadia, H.K. and S.J. Siegel, Polymers (Basel), 2011. 3(3): p. 1377-1397; Shive, M.S. and J.M. Anderson, Adv Drug Deliv Rev, 1997. 28(1): p. 5-24)。
【0233】
したがって、角膜NVを効果的に阻害するためSunb−リンゴ酸塩の持続放出を提供することができるSC投与に対する生分解性高分子ミクロスフェア系を開発し、in vivoにおいてラットモデルで試験した。
【0234】
角膜血管新生(NV)は、患者の角膜の透明性及び視力を損なわせ易くする。複数の受容体チロシンキナーゼを標的とするスニチニブリンゴ酸塩(Sunb−リンゴ酸塩)は、強力な抗血管形成を与える。しかしながら、局所点眼によって投与されたSunb−リンゴ酸塩薬物の急速なクリアランスは、治療的な効能を制限し、潜在的な患者のコンプライアンスに対する課題を提示する。
【0235】
下に示されるように、粒子径およそ18μm及び薬物装荷6重量%を有するSunb−リンゴ酸塩−装荷ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)ミクロスフェア(Sunb−リンゴ酸塩MS)。Sunb−リンゴ酸塩MSは、in vitroでの無限の沈下条件のもと最長25日間に亘って薬物放出の持続を提供した。Sunb−リンゴ酸塩MSの結膜下(SC)注射は、眼の薬物保持の延長をもたらし、150μgの活性剤の用量において眼毒性を生じなかった。SC注射後のSunb−リンゴ酸塩MSは、Sunb−リンゴ酸塩遊離薬物又はプラセボMSのいずれかよりも縫合誘発性角膜NVを効果的に抑制した。Sunb−リンゴ酸塩MSのSC注射によるSunb−リンゴ酸塩の局所持続放出は、血管内皮細胞の増殖及び壁細胞の角膜への動員を失速させた。さらに、病態形成過程によって誘導された血管形成促進因子の遺伝子発現増加は、Sunb−リンゴ酸塩MSのSC注射によって大幅に失効された。
【0236】
材料及び方法
材料
ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸 LA:GA 50:50、分子量約5.6kDa、酸末端)(PLGA)をLakeshore Biomaterials(アラバマ州バーミンガムのEvonik)から購入し、スニチニブリンゴ酸塩をLC laboratories(マサチューセッツ州ウーバン)から購入した。Sunb−リンゴ酸塩遊離薬液をリン酸緩衝溶液(PBS、pH7.4)に0.5%の濃度でSunb−リンゴ酸塩を溶解することによって作製した。分子量約25kDaのポリビニルアルコール(PVA)をPolysciences, Inc.(ペンシルベニア州ワーリントン)から購入した。他の有機溶媒はSigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)によって提供された。
【0237】
動物
全ての実験プロトコルはジョンズホプキンズ実験動物委員会によって承認された。6週齢〜8週齢の雄性Sprague DawleyラットをHarlan社(インディアナ州インディアナポリス)から購入した。眼科研究における動物の使用に関する視覚と眼科学研究協会会議(ARVO)に従って全てのラットを飼育し、処理した。実験手順の間、ケタミン(50mg/kg)及びキシラジン(5mg/kg)の混合物の筋肉内注射によって動物を麻酔した。局所麻酔及び散瞳のため、それぞれ0.5%プロパラカイン及び0.5%トピカミドの局所点眼を使用した。
【0238】
Sunb−リンゴ酸塩装荷PLGAミクロスフェアの作製
エマルジョン法を使用して、Sunb−リンゴ酸塩装荷PLGAミクロスフェア(Sunb−リンゴ酸塩MS)を作製した。簡潔には、250mgのPLGAを含む2.5mLのジクロロメタン(DCM)溶液と混合する前に、50mgのSunb−リンゴ酸塩を0.625mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。L4RT高剪断ミキサー(マサチューセッツ州イーストロングメドーのSilverson)を使用して5000rpmでホモジナイズしながら、上記混合物を60mLの1%PVA溶液に注いだ。1時間に亘って700rpmで磁気撹拌しながら、形成されたエマルジョンを追加の0.3%PVA溶液100mLに添加した。撹拌しながら上記懸濁液を真空チャンバーに更に3時間入れてDCMを更に除去した。Sunb−リンゴ酸塩MSを40μmのストレーナーで濾過し、脱イオン水で洗浄し、500×gで10分間遠心分離によって収集した。薬物の添加を行わずに同じ手順でプラセボミクロ粒子(プラセボMS)を作製した。
【0239】
in vitro薬物装荷及び薬物放出
特定の量の凍結乾燥Sunb−リンゴ酸塩MSをDMSOに可溶化して溶解し(dissolved in solubilized in DMSO)、該溶液をBioTek Microplate Reader(バーモント州ウィヌーキー)上、441nmでUV−Visにより測定した。sunb−リンゴ酸塩濃度をsunb−リンゴ酸塩の確立された標準曲線を使用して計算した。薬物装荷(DL)及び封入効率(EE)を以下の通り計算した。
【数1】
【0240】
Sunb−リンゴ酸塩MSのin vitro薬物放出プロファイルを研究するため、1.5mLのシリコン処理したエッペンドルフチューブにおいてPBS(pH7.4)中の1mLのSunb−リンゴ酸塩MS懸濁液を37℃未満にて120RPMで振った。所定の時間点において、2000×gで5分間に亘り懸濁液を遠心分離し、上清を1mLの新たなPBSで交換した。収集した上清中のSunb−リンゴ酸塩の濃度をUV−Visにより測定した。
【0241】
in vivoでの眼の薬物保持
PBS中5mgのsunb−リンゴ酸塩/mLの濃度の30マイクロリットルのSunb−リンゴ酸塩MS又はsunb−リンゴ酸塩遊離薬液を、27ゲージ針を使用してSC注射によってラットに投与した。注射の後(PI)0日目、1日目、3日目、7日目、14日目、及び28日目において、動物を死亡させた後、全眼球(n=4)を採取した。Sunb−リンゴ酸塩は自己蛍光を示すため、摘出された眼球をXenogen IVIS Spectrum光学結像システム(マサチューセッツ州ホプキントンのCaliper Life Sciences Inc.)を使用し、励起及び発光の波長それぞれ420nm及び510nmで画像化した。Living Image 3.0ソフトウェア(Caliper Lifesciences, Inc.)を使用して蛍光画像を分析し、SC注射を経た直後の眼の蛍光カウントと比較することによりスニチニブの保持を定量した。SC注射を伴わないラットの眼をベースラインとして使用した。
【0242】
in vivo安全性研究
SC注射後のSunb−リンゴ酸塩MSの眼毒性を特定するため、Sprague Dawleyラットの両眼に5mg及び0.5mgのSunb−リンゴ酸塩/mLの濃度の30μLのSunb−リンゴ酸塩MSを投与した。生理食塩水及びプラセボMS(1つの眼当たり2.5mgの粒子)のSC注射を対照として使用した。PI 7日目及び14日目の両方において2匹の動物を死亡させ、組織学的検査のため結膜組織と共に全眼球を採取した。6−0ナイロン縫合糸によって注射部位に印をした。眼球をホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋し、SC注射部位を切断するため背腹軸に沿って(角膜から視神経へ)切片作製を行い、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。スライドを観察し、病理学者が採点した。
【0243】
角膜NVの治療
基質内縫合によって角膜NVを誘発した。簡潔には、ラットに麻酔して散瞳させた後、手術用顕微鏡のもと、10−0ナイロン(テキサス州フォートワースのAlcon Laboratories)を用いて角膜上部に2つの基質内の縫合の縫い目を作った。縫い目と角膜輪部との間の距離はおよそ2mmであり、2つの縫い目の間は1mmの距離があった。縫合の後、すぐに動物を30μLの(1)PBS、(2)プラセボMP、(3)Sunb−リンゴ酸塩MS(5mg sunb−リンゴ酸塩/mL)、及び(4)Sunb−リンゴ酸塩遊離薬液(5mg sunb−リンゴ酸塩/mL)の1回のSC注射で処理した。エリスロマイシン抗生物質軟膏を塗布して可能性のある感染及び角膜の乾燥を予防した。ラットを2週間経過観察した。
【0244】
角膜NVの定量分析
全てのラットの角膜を、細隙灯顕微鏡(SL120;ドイツ国オーバーコッヘンのCarl Zeiss AG)により検査し、デジタルカメラで角膜の写真を撮影した。Photoshop CS3.0により血管化角膜の面積及び長さを定量した。角膜輪部に沿って弧を描き、血管化面積のピクセルを測定し、角膜NV面積を以下の等式を使用して計算した。
【数2】
【0245】
血管化領域を6つのセクションに均等に分割した。弧の5つの交点における血管の先端と角膜輪部との間の距離を測定した。5つの測定された長さの平均を角膜NV長とした。
【0246】
リアルタイム定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
手術後(PO)7日目及び14日目において、ラットを死亡させ、角膜を収集した。mRNA単離用に同じ条件の3つの角膜を合わせてプールした。トータルmRNAをTRIzol(商標)試薬(米国、Invitrogen)を用い、製造業者の指示書に従って単離し、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(米国、Applied Biosystems)を使用して逆転写を行った。VEGF、VEGFR1、VEGFR2、PDGFa、PDGFb、PDGFRα、PDGFRβ、VE−カドヘリン、Ang1、MMP2、MMP9、bFGF、及びPECAM1を含む血管形成因子及び抗血管形成因子のmRNA発現レベルを定量するため、7100 Real Time PCR System(カリフォルニア州のApplied Biosystems)を使用して、Fast SYBR(商標)Green Master MixによりRT−PCRを行った。更なる複数の群比較のため、mRNA発現レベルをGAPDHに対して正規化した。
【0247】
免疫染色及び共焦点画像解析
眼球を摘出し、4℃にて1時間、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。その後、角膜を切り取り、PBSで洗浄し、15%スクロースPBS溶液中で凍害を防止し、OCTコンパウンドに包埋した。角膜の連続切片(厚さ30μm)をクライオスタットによる切片作製で収集した後、以下の抗体、マウス血小板内皮細胞接着分子−1(PECAM−1、1:500;Abcam)、ウサギ神経/グリア抗原−2(NG2、1:500;Millipore)、10%ロバ血清及び0.1%Triton X−100を含むPBS中に希釈したロバ抗マウスCy2及びロバ抗ウサギCy3を使用して免疫染色を行った。4℃での一晩のインキュベーションの後、角膜切片をPBSで3回洗浄し、室温で2時間、二次抗体とインキュベートした。マウントした角膜切片をZeiss LSM 710共焦点顕微鏡(ドイツ国、Carl Zeiss)を使用して画像化した。角膜のパノラマ画像を保証するため、本発明者らは、Reconstruct 1.1.0(NIHのJ.C. Fiala)を使用して背腹軸に沿って角膜切片を順に並べ、最大値投影法を行った。
【0248】
統計学的分析
定量結果を、複数の繰り返しの平均±平均の標準誤差(SEM)として提示する。収集した全てのデータをt検定及び複数の比較検定(one-way ANOVA、ボンフェローニ検定)を使用して群間で比較した。P<0.05のレベルで差を統計学的に有意とした。複数の比較に対する有意性:*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001。
【0249】
結果
Sunb−リンゴ酸塩MSの作製及び特性評価
Sunb−リンゴ酸塩MSは、SEMにより多孔性であり、15±9μmの粒子径、及び−0.7mVの表面電荷を有する(表4)。Sunb−リンゴ酸塩MSは6重量%の薬物装荷を示し、sunb−リンゴ酸塩は、明確な初期の急速な薬物放出フェーズを伴わずにin vitroにおいて37℃で無限の沈下条件下で最長25日まで一様に放出された(
図3)。
【0250】
【表9】
【0251】
眼の薬物保持
Sunb−リンゴ酸塩遊離薬物は、SC注射後1日以内に急速に除去される。
図4に示されるように、sunb−リンゴ酸塩のPLGA MSへの封入は、眼の薬物保持を著しく延長し、本来の薬物のおよそ50%がPI 14日目までに保持され、sunb−リンゴ酸塩はPI 28日目までに徐々に消滅した。
【0252】
Sunb−リンゴ酸塩MSの眼安全性
プラセボMS及びSunb−リンゴ酸塩MSのSC注射後の眼安全性を特定するため、本発明者らは眼の組織学的検査を行った。プラセボMSのSC注射は生理食塩水のSC注射のように安全である。SC注射後、低用量及び高用量のSunb−リンゴ酸塩MS(0.5mg及び5mgのsunb−リンゴ酸塩/ml)はいずれも注射部位の結膜組織及び角膜における炎症を誘導しなかった。
【0253】
角膜NVに対するSunb−リンゴ酸塩MSの効果
Sunb−リンゴ酸塩MS、Sunb−リンゴ酸塩遊離薬物、及びプラセボMPの治療の下、角膜NVを評価するため、手術後(POD)5日目、7日目、及び14日目に細隙灯顕微鏡検査によって全ての動物を検査した。放射状に方向づけられた新生血管は、プラセボMS処理ラットについて、POD5までに角膜輪部から縫合の縫い目に向かって角膜へと侵入し、POD14までにさらに成長して縫い目に達した。Sunb−リンゴ酸塩遊離薬物のSC注射は、角膜NVの阻害に対して無視できるほどの効果を示し、POD5においてプラセボMSと比較すると角膜NV領域のわずかな阻害があったものの、統計学的に有意ではなかった。対照的に、角膜NVの長さ(
図5A)及び面積(
図5B)の定量は、Sunb−リンゴ酸塩MSがPOD5において新生血管の出芽を有意に抑制し、経時的に更なる成長を失速させたことを明らかにした。組織病理学的分析は、Sunb−リンゴ酸塩及びプラセボMSで処理された角膜で観察された新生血管の内殖が、POD7及びPOD14の両方においてSunb−リンゴ酸塩MSのSC注射によって著しく失速されたことを更に確認した。角膜炎症及び角膜浮腫は、5mg/mlのSunb−リンゴ酸塩MSのSC注射の処理の下では観察されなかった。したがって、Sunb−リンゴ酸塩MSは、角膜血管形成に対して安全で効率的な阻害を提供した。
【0254】
Sunb−リンゴ酸塩MSは血管形成エフェクタのmRNA発現レベルを減少させる
血管形成因子、内皮細胞マーカー、及びマトリクスメタロプロテアーゼのmRNA発現を、POD7及びPOD14においてRT−PCRにより特定した。POD7における定量分析は、角膜におけるVEGF、VEGFR1、PDGFb、PDGFRs、VE−カドヘリン、bFGF、MMP、及びAng1の発現が、プラセボMP及びSunb−リンゴ酸塩遊離薬物と比較して、Sunb−リンゴ酸塩MSのSC注射によって有意に減少されたが、Sunb−リンゴ酸塩MSとSunb−リンゴ酸塩遊離薬物の治療群との間でVEGFR2及びPDGFaのmRNAレベルに統計学的有意差はなかったことを示した(
図6A〜
図6M)。POD14において類似の結果は、Sunb−リンゴ酸塩MSのSC注射による血管形成関連遺伝子発現の持続可能な抑制を示した。
【0255】
Sunb−リンゴ酸塩MSは壁細胞の動員を抑制する
血管内皮細胞の内殖、及び毛細血管の周りの周皮細胞、及び大きな血管の周りの平滑筋細胞を含む血管壁細胞のその後の動員に対するSunb−リンゴ酸塩MSのSC注射の影響を調べるため、免疫組織化学分析のためSunb−リンゴ酸塩MSのSC注射の後、角膜を収集した。角膜のパノラマ画像は、角膜脈管構造の成長が、プラセボMSのSC注射と比較した場合、Sunb−リンゴ酸塩MSのSC注射によって著しく抑制されたことを示した。NG2−陽性壁細胞の動員は、Sunb−リンゴ酸塩MSのSC注射によるPECAM陽性内皮細胞よりも更に軽減された。
【0256】
要約すると、生分解性PLGA MSに封入されたsunb−リンゴ酸塩は、縫合誘発性角膜NVモデルにおいて角膜NVの効率的な阻害を提供した。Sunb−リンゴ酸塩は、少なくとも25mg/mLの濃度でPBSに溶解され得る。sunb−リンゴ酸塩遊離薬液のラットへのSC注射後24時間以内は、眼においてほとんど何らの薬物保持も観察されなかった。水溶性sunb−リンゴ酸塩の生分解性PLGA MSへの封入により、PI 14日目において50%で、最長28日目の著しく長いsunb−リンゴ酸塩の保持が観察された。粒子を、最初の注射及び粒子の漏出の後、注射部位に常に保持することができた。SC注射後の粒子の保持の増強、及び薬物放出の持続は、注射部位における薬物の保持の延長に寄与した。角膜NVの阻害におけるSunb−リンゴ酸塩MSのSC注射の効能は、2つの重要な因子、すなわち(1)水溶性sunb−リンゴ酸塩の生分解性ポリマーMSへの封入の成功、及び(2)SC注射後のSunb−リンゴ酸塩MSから放出された水溶性sunb−リンゴ酸塩の効率的な眼内浸透に起因する。
【0257】
上記結果は、内皮細胞マーカー(VE−カドヘリン及びPECAM1)、メタロプロテイナーゼ(MMP2及びMMP9)、血管新生促進因子及びそれらの受容体(VEGF、PDGF、bFGF、Ang1、VEGFR、及びPDGFR)の発現増加が、Sunb−リンゴ酸塩MSの投与によって大幅に消失されることを実証した。MMPは、血管形成に必要とされる細胞外マトリクスの分解、及び血管基底膜のリモデリングに関わる。VEGF、PDGFs、bFGF、及びAng1は、細胞表面の対応する受容体チロシンキナーゼを結合及び活性化することによって血管形成の調節に関与する。本研究では、縫合誘発性動物モデルにおいて多くの血管形成促進因子及び血管形成関連プロテアーゼの遺伝子発現が、Sunb−リンゴ酸MSによって発現減少され、分子レベルでのその抗血管形成活性を実証する。
【0258】
生体適合性及び生分解性のPLGAミクロスフェアは、sunb−リンゴ酸塩の持続放出、及び眼球表面での薬物保持の延長を可能とした。Sunb−リンゴ酸塩MSの安全な用量は、動物モデルにおける濃度勾配分析によって決定された。Sunb−リンゴ酸塩MSのSC注射は、縫合誘発性モデルにおける角膜NVを著しく阻害した。あわせて、Sunb−リンゴ酸塩MSのSC注射によるsunb−リンゴ酸塩の持続放出は、効能を改善し、毒性を減少し、患者のノンコンプライアンスを克服することができた。上記研究は、角膜NVを標的とする治療戦略を提供する。
【0259】
実施例7:スニチニブ粒子の持続及び生体適合性
材料及び方法
C57BL/6マウス(n=5)のコホートは、スニチニブミクロ粒子(全薬物量10μg)のIVT注射を受け、注射から0週間、2週間、4週間、又は8週間の後、ブルッフ膜のレーザー誘発性傷害を受けた。レーザー処理の1週間後(すなわち、1週目、3週目、5週目、及び9週目)にCNVの面積を測定した。直後、又は2週間後、4週間後、若しくは8週間後に、マウス(n=5)をブルッフ膜のレーザー傷害に供し、1週間後、CNV病変のサイズを定量した。
【0260】
また、正常C57BL/6マウスを使用して薬物動態試験を行い、ミクロ粒子のIVT注射に続いて様々な時間点でHPLC−MSによって種々の眼組織における薬物レベルを特定した。スニチニブ放出ミクロ粒子の単回注射の1ヶ月後、2ヶ月後、及び3ヶ月後に眼底画像を撮影した。
【0261】
リン酸緩衝生理食塩水又はスニチニブ放出ミクロ粒子のいずれかの注射から3ヶ月後のウサギの眼における網膜の組織学的画像を使用し、炎症応答を測定した。
【0262】
結果
ミクロ粒子は、3.4(重量)%の薬物装荷、及び約13μmの平均径を有した。対照と比較してスニチニブミクロ粒子で治療された全ての動物において、CNV面積の著しい減少が観察された。重要なことには、保護効果は、ミクロ粒子のIVT注射に続いて少なくとも9週間に亘って持続した。
【0263】
スニチニブ放出ミクロ粒子は保持され、in vivoでウサギの眼において少なくとも3ヶ月間に亘って持続したスニチニブレベルを提供した。
【0264】
スニチニブは、少なくとも3ヶ月に亘って注入部位ではっきりとした特徴的な黄色を有する。3ヶ月目におけるこれらのウサギの硝子体中の平均スニチニブ濃度は、in vitro培養に基づく最大RGC生存に対する標的範囲に含まれる1.6μMであった。ミクロ粒子中のスニチニブの全体的な濃度は、薬物が経時的に硝子体中に放出されるにつれて明らかに減少し、黄色の強さの減少によって示された。3ヶ月目の硝子体中のスニチニブの平均濃度は、HPLC−MSによって1.6μMであることがわかり、これはin vitro初代RGC培養法に基づく最大RGC生存に対する標的範囲に含まれる。
【0265】
スニチニブ放出ミクロ粒子の注射から3ヶ月後に得られたウサギの眼の組織学的画像は、眼科病理学部長のCharles Eberhart博士によって分析された。眼の半分に炎症応答は観察されず、眼の半分においてミクロ粒子凝集物の周囲に軽度の炎症が観察された。
【0266】
スニチニブ放出ミクロ粒子のPEG含有量を増加することは、一回の注射で少なくとも6ヶ月に亘って眼において治療的なスニチニブレベルを維持しながら、炎症応答の可能性を更に最小化するはずである。
【0267】
実施例8:加齢黄斑変性の治療
加齢黄斑変性(AMD)は、高齢者の間で重篤で不可逆的な視力喪失の主な原因である。Bressler, et al. JAMA, 291:1900-1901(2004)。AMDは、ドルーゼンとして知られる淡黄色のスポット、網膜色素上皮(RPE)の傷害、脈絡膜血管新生(CNV)、及び円板状黄斑変性等の幅広い臨床上の及び病的な所見を特徴とする。AMDは、萎縮型(すなわち、非滲出型)又は滲出型(すなわち、滲出型)のいずれかに分類される。萎縮型AMDは、ドルーゼンと呼ばれる病変の存在を特徴とする。滲出型AMDは、視野の中心の血管新生を特徴とする。
【0268】
それほど一般的でないが、滲出型AMDは、AMDに関連する重篤な視力喪失の80%〜90%を占める(Ferris, et al. Arch. Ophthamol. 102:1640-2 (1984))。AMDの原因は不明である。しかしながら、AMDを発症するリスクは、加齢と共に増加することが明らかである。また、AMDは、家族歴、喫煙、酸化ストレス、糖尿病、アルコール摂取、及び直射日光曝露を含む危険因子と結び付けられている。
【0269】
滲出型AMDは、典型的には、黄斑領域のCNVを特徴とする。脈絡膜の毛細血管が増殖し、ブルック膜を貫いて網膜色素上皮(RPE)に達する。いくつかの場合には、毛細血管が網膜下腔へと伸びる場合がある。新しく形成された毛細血管の透過性の増加は、RPE下の、及び/又は、網膜神経感覚上皮の下、若しくはその中の漿液又は血液の滞留をもたらす。網膜中心窩が腫脹するか、又は剥離すると、視力の低下が起こる。線様化生及び組織化は続いて起こる場合があり、結果として末期のAMDを構成し、永久的な視力喪失に関係する円盤形瘢痕と呼ばれる網膜下の腫瘤の増加をもたらす(D'Amico D J. N. Engl. J. Med. 331:95-106 (1994))。
【0270】
スニチニブ封入ポリマーミクロ粒子の硝子体内注射によるネズミ科脈絡膜血管新生の持続抑制が、ここで実証された。レーザー誘導性脈絡膜血管新生のマウスモデルにおける硝子体内(IVT)注射後の生分解性ポリマーミクロ粒子から放出されたスニチニブの長期間の効能を以下の通り実証した。
【0271】
材料及び方法
先の実施例に記載されるようにスニチニブの持続送達のため、生分解性ポリマーミクロ粒子を作製した。平均サイズ、粒度分布、薬物装荷、及び薬物放出プロファイルを含む特性評価をin vitroでミクロ粒子に行った。
【0272】
材料及び方法
病原体感染のないC57BL/6マウス(マサチューセッツ州ウィルミントンのCharles River)を、米国視覚眼科研究学会の眼科視覚研究における動物実験指針、及びジョンズホプキンズ大学実験動物委員会のガイドラインに従って処理した。
【0273】
先に記載されるように(Tobe, T. et al., Am. J. Pathol. 135(5): 1641-1646(1998))ブルッフ膜をレーザー光凝固誘導性破損によって脈絡膜NVを誘導した。簡潔には、5週齢〜6週齢の雌性C57BL/6マウスを塩酸ケタミン(100mg/体重kg)で麻酔し、瞳孔を散大させた。OcuLight GLダイオードレーザー(カリフォルニア州マウンテンビューのIridex)の細隙灯送達システム、及び網膜を見るためのコンタクトレンズとして手持ちのカバーガラスを用いて各眼の後極の9時、12時及び3時の位置でレーザー光凝固(75μmのスポットサイズ、0.1秒間、120mW)を行った。ブルッフ膜の破損を示すレーザーの際の気泡の生成は、脈絡膜NVを得るために重要な因子であることから、気泡が生成された熱傷のみを研究に含めた。
【0274】
ブルッフ膜のレーザー誘導性破損の直後、マウスを眼内注射に関して様々な治療群に無作為化した。Harvard Pump Microinjection System及びガラスを引っ張って作製したマイクロピペット(pulled glass micropipette)を備えた手術用顕微鏡下で硝子体内注射を行った。
【0275】
C57BL/6マウス(n=5)のコホートは、スニチニブミクロ粒子(全薬物量10μg)の硝子体内(IVT)注射を受け、注射から0週間、2週間、4週間、又は8週間の後、ブルッフ膜のレーザー誘発性傷害を受けた。レーザー処理の1週間後(すなわち、1週目、3週目、5週目、及び9週目)にCNVの面積を測定した。
【0276】
また、正常C57BL/6マウスを使用して薬物動態試験を行い、ミクロ粒子のIVT注射に続いて様々な時間点でHPLC−MSによって種々の眼組織における薬物レベルを特定した。
【0277】
結果
ミクロ粒子は、3.4(重量)%の薬物装荷、及び約13μmの平均径を有した。
【0278】
図7A〜
図7Dに示されるように、対照と比較してスニチニブミクロ粒子で治療された全ての動物において、CNV面積の著しい減少が観察された。重要なことには、保護効果は、ミクロ粒子のIVT注射に続いて少なくとも9週間に亘って持続した。
【0279】
スニチニブ製剤及びその使用方法の修正及び変更は、当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。