(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)溶融混合条件の下、(B)難燃剤の存在下、及び(C)ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)の存在下で、シラン官能化ポリオレフィンのスコーチを最小化するためのプロセスにおいて、
改善が、(1)1モル当たり≧4,000グラム(g/mol)の数平均分子量(Mn)、(2)≧90センチポイズ(cP)の粘度、及び(3)PDMSの重量に基づき≦0.9重量%(wt%)のヒドロキシル基含有量を有するPDMSを使用することを含み、
前記難燃剤が組成物中に存在し、前記シラン官能化ポリオレフィン、前記難燃剤及び前記PDMSを含む前記組成物中に存在する全難燃剤は、前記組成物の総重量に基づき10wt%〜70wt%である、プロセス。
前記難燃剤は、金属水和物、カーボンブラック、ハロゲン化化合物、窒素及び/またはリン系ハロゲンフリー化合物、及びエポキシ化ノボラック樹脂のうちの少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
前記PDMSが、前記シラン官能化ポリオレフィン、難燃剤及び前記PDMSの合計量に基づき0.5〜15重量%の量で存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
【背景技術】
【0002】
シラン官能化ポリオレフィンはしばしば、水分に曝露することによって架橋することができる組成物及び物品を製造するために使用される。特定の場合には、ポリマーと不混和性の充填剤が組成物に組み込まれて、機能的特性(難燃性など)を付与する。非混和性の難燃性充填剤の例は、金属水和物、カーボンブラック、及びハロゲン化(オルガノハロゲンとしても知られる)化合物である。後者は、種々のハロゲン化ポリマー及びハロゲン化モノマー、塩素化パラフィンなどを含む。これらの非混和性充填剤のシラン官能化ポリオレフィンによる良好な分散性を達成するために、(必然的に存在する水の百万分率(ppm)により)架橋が遅れる条件で溶融混合及び製造工程を実施する必要がある。水分硬化制御添加剤(スコーチ抑制剤または硬化促進剤など)の効力を評価する有効な手段は、溶融混合組成物を製造することであり、それはその後成形され、水浴中で時効処理する(様々な時間間隔で評価され、ホットクリープ測定による架橋度を有する)。
【0003】
US2013/0174416は多層物品を製造するためのプロセスを開示し、該物品は、絶縁層によって分離され絶縁層に結合された2つの架橋半導体層を含み、半導体層は、過酸化物架橋性オレフィンエラストマーから形成され、絶縁層はシラングラフト化オレフィン性エラストマーを含む組成物を含み、該プロセスは、(A)2つの架橋半導電性層の間にシラングラフト化オレフィン性エラストマーを注入して各半導電性層と直接接触させる工程と、(B)過酸化物触媒の非存在下でシラングラフト化オレフィン性エラストマーを架橋する工程と、を含む。
【0004】
US2012/0178868は、ポリオレフィン、アルコキシシラン、オルガノポリシロキサン、フリーラジカル開始剤及び液体ポリマー改質剤を含む架橋性混合物を開示する。オルガノポリシロキサンは、2つ以上のヒドロキシル末端基を含む。架橋性混合物が溶融成形されると、特有の架橋組成物が形成される。液体ポリマー改質剤は、絶縁耐力を低下させることなく、溶融成形物品の可撓性を改善する。
【0005】
US2012/0178867は、成形後の外部熱または水分の使用を必要としないプロセスによって架橋された溶融成形品が製造されることを開示し、該プロセスは、(A)(1)1つ以上の官能性末端基を含有するオルガノポリシロキサンと、(2)シラングラフト化またはシラン共重合ポリオレフィンとの架橋性混合物を形成する工程と、(B)混合物を溶融成形し、かつ部分的に架橋する工程と、(C)溶融成形品を冷却して、継続的に架橋させる工程と、を含む。架橋は、溶融成形の前もしくは間に混合物、または溶融成形品に触媒を添加することによって促進される。
【0006】
US2010/0159206は、(A)(1)(a)少なくとも1つのシラン官能基を含有するポリオレフィン、及び(1)(b)ヒドロキシ末端シランポリマー、または(2)ビニルシラン、ポリオレフィン、有機阻害剤、例えば過酸化物、及びヒドロキシ末端シリコーンコポリマーのブレンドを含む第1のリボン、ならびに(B)第1のリボンに担持された、触媒マスターバッチを含む第2のリボンを含み、樹脂及び触媒の均一混合物を注入成形機に搬送することを可能にするテープを開示する。
【0007】
これらの開示は、ポリオレフィンのシラン架橋を促進するためのヒドロキシル末端PDMSの使用を教示する。広範囲のヒドロキシル末端PDMSがこれらの開示によって同定されるが、実施例は、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンDMS−15(Mnが2,000−3,500g/mol、粘度が45−85センチストークス(0.000045−0.000085平方メートル/グラム(m
2/g))、ヒドロキシル基(OH)レベルが0.9−1.2%)を使用し、及び(後者の使用は概して開示されているが)難燃剤を含有しなかった。ヒドロキシル末端PDMSのDMS−15グレードは、難燃性充填剤の不在下でシラン架橋を促進する。
【0008】
しかしながら、これらの開示は本発明を教示していない。それらは、シラン官能化ポリオレフィンの架橋に使用するための広範なヒドロキシル末端PDMSを開示しているが、それらは、難燃性充填剤が組成物中に存在する場合、Mn≧4,000g/mol、粘度≧90cP及びヒドロキシル基含有量が0.9%以下であるヒドロキシル末端PDMSは、驚くべきことに、Mn≦4,000g/mol、粘度≦90cP及びヒドロキシル基含有量が0.9%を超えるものよりも、より多くの耐スコーチ性の組成物及び水分硬化後のより高い架橋度をもたらすことを伝えていない。すなわち、難燃性充填剤が配合物中に存在する場合、ヒドロキシル末端PDMSの分子量(粘度)は、溶融加工性及び水分誘発架橋に影響を及ぼす。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
反対の記述、文脈から黙示的、または当技術分野で慣習的でない限り、すべての部及びパーセントは重量に基づくものであり、すべての試験方法は本開示の出願日現在のものである。米国特許慣行の目的上、引用された特許、特許出願または刊行物の内容は、その全体が、特に定義(本開示で明示的に提供される定義とまったく矛盾しない範囲で)及び本技術分野の一般知識に関して参照として組み込まれる(またはその同等の米国版は同様に参照により組み込まれる)。
【0012】
本開示における数値範囲は近似値であり、したがって、特に明記しない限り、範囲外の値を含み得る。数値範囲には、低い値と高い値との間に少なくとも2つの単位が分離されていれば、1つの単位の増分で下限値と上限値からの及びそれらを含むすべての値が含まれる。一例として、例えば分子量などの組成、物理的または他の特性が100から1,000である場合、100、101、102などのすべての個々の値、及び100〜144、155〜170、197〜200などの部分範囲などが明示的に列挙される。1より小さい、または1より大きい分数(例えば、1.1、1.5など)を含有する値を含有する範囲について、1つの単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01または0.1とみなされる。10より小さい1桁の数字(例えば、1から5)を含有する範囲については、1つの単位は、典型的に、0.1とみなされる。これらは、具体的に意図されるものの例に過ぎず、列挙された最低値と最高値との間のすべての可能な数値の組み合わせは、本開示において明示的に述べられているとみなされるべきである。とりわけ、組成物の様々な成分の量、プロセスのパラメータなどのために、本開示内に数値範囲が提供される。
【0013】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などの用語は、それが具体的に開示されているか否かにかかわらず、追加の成分、工程または手順の存在を排除することを意図するものではない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用によって請求されるすべてのプロセスは、逆のことが述べられていない限り、1つ以上の追加の工程、機器または構成部品の一部、及び/または材料を含むことができる。対照的に、「本質的に〜からなる」という用語は、操作に必須ではないものを除いて、後続の引用の範囲から他の成分、工程または手順を除外する。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていない成分、工程または手順を除外する。別段の記載がない限り、「または」という用語は、列挙されたメンバーを個別に、及び任意の組み合わせで参照する。
【0014】
「組成物」などの用語は、2つ以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。
【0015】
「ポリマー」等の用語は、同一または異なるタイプのモノマーを重合することにより調製された化合物を意味する。したがって、一般的な用語のポリマーは、ホモポリマーという用語を含み、通常、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマー、及び以下に定義されるインターポリマーという用語を指すのに用いられる。
【0016】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。この一般的な用語は、2つの異なるタイプのモノマー、及び3つ以上の異なるタイプのモノマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどから調製されたポリマーを指すのに通常用いられるコポリマーを含む。
【0017】
「オレフィンポリマー」等の用語は、ポリマーの総重量に基づいて、重合形態で、大部分の重量%のオレフィン、例えばエチレンまたはプロピレン等を含有するポリマーを意味する。オレフィン系ポリマーの非限定的な例は、エチレン系ポリマー及びプロピレン系ポリマーを含む。
【0018】
「シラン官能化ポリオレフィン」等の用語は、ケイ素原子を含み、架橋部位として働くことができる基、例えばアルコキシシラン基を含むポリオレフィンを意味する。
【0019】
「溶融混合条件」等の用語は、シラン官能化ポリオレフィンが溶融する温度、圧力、撹拌及び同様の考慮を意味する。これらの条件は、シラン官能化ポリオレフィンが例えば難燃性充填剤などの不混和性化合物と溶融ブレンドされる一軸または二軸押出機の操作条件によって例示される。
【0020】
「周囲条件」とは、物品の周辺領域または環境の温度、圧力及び湿度を意味する。本発明の目的のために、典型的な周囲条件は、23℃の温度、大気圧及び30%以上の相対湿度を含む。
【0021】
「難燃性充填剤の存在下」等の用語は、シラン官能化ポリオレフィンを含む組成物が、難燃性充填剤を、典型的には組成物の重量に基づき少なくとも1または2または5または10重量%(wt%)の量で含むことを意味する。
【0022】
シラン官能化ポリオレフィン
本発明の実施において使用される水分硬化性ポリマー組成物は、加水分解性シラン基を有するポリオレフィンを含む。本明細書で使用されるように、「水分硬化性」ポリマー組成物は、水の存在下で加水分解反応を受けてSi−O−Si結合を生成してポリマー鎖間に架橋ネットワークを形成する加水分解性シラン基を有する少なくとも1つの成分を含有する組成物である。本開示では、加水分解性シラン基を有するポリオレフィンは、シラン官能化ポリエチレン、ポリプロピレンなどのシラン官能化オレフィンポリマー、及びこれらのポリマーの様々なブレンドを含む。1つ以上の実施形態では、シラン官能化オレフィンポリマーは、(i)エチレン及び加水分解性シランのインターポリマー、(ii)エチレン、1つ以上のC
3以上のα−オレフィン及び/または不飽和エステル、ならびに加水分解性シランのインターポリマー、(iii)その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するエチレンのホモポリマー、ならびに(iv)エチレンならびに1以上のC
3以上のα−オレフィン及び/または不飽和エステルのインターポリマーであって、その骨格にグラフトされた加水分解性シランを有するインターポリマー、からなる群から選択され得る。例示的なα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクテンを含む。例示的な不飽和エステルは、酢酸ビニルまたはアクリル酸またはメタクリル酸エステルである。
【0023】
本明細書で使用されるポリエチレンは、エチレンのホモポリマーまたはエチレン及び少量(すなわち、50モルパーセント(「mol%」)未満)の1つ以上のα−オレフィン及び/または3個〜20個の炭素原子もしくは4個〜12個の炭素原子を有する不飽和エステル、ならびに任意にジエンのインターポリマーである。ポリエチレンは、そのようなホモポリマー及びインターポリマーの混合物またはブレンドであってもよい。混合物が使用される場合、混合物は、その場ブレンドまたは後反応器(例えば、機械的)ブレンドのいずれかであり得る。
【0024】
ポリエチレンは、同質または異質であり得る。同質ポリエチレンは典型的には、約1.5〜約3.5の多分散度(Mw/Mn)、本質的に均一なコモノマー分布、及び示差走査熱量測定(DSC)によって測定される単一の比較的低い融点を有する。異質ポリエチレンは典型的には、3.5を超える多分散度を有し、均一なコモノマー分布を欠いている。Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である。
【0025】
本明細書での使用に好適なポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)は、1立方センチメートル当たり0.850〜0.970グラム(g/cm
3)、または0.870〜0.930g/cm
3の範囲の密度を有することができる。ポリマー密度は、ASTM International(「ASTM」)方法D792に従って測定される。様々な実施形態では、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)は、10分当たり0.01〜2000、0.05〜1000、または0.10〜50グラム(g/10分)の範囲のメルトインデックス(I
2)を有することができる。本明細書で提供されるメルトインデックスは、ASTM法D1238に従って判定される。他に記載がない限り、メルトインデックス(a.k.a.、I
2)は190℃及び2.16キログラム(Kg)で測定される。ポリエチレンホモポリマーを使用する場合、そのI
2は0.1〜10g/10分であり得る。
【0026】
本発明の実施において使用されるポリエチレンは、任意の慣用的または今後発見される条件及び技術を使用して、任意の既知または今後発見されるプロセス(高圧、溶液、スラリーまたは気相など)によって調製することができる。触媒系には、チーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)、フィリップス(Phillips)、及び種々のシングルサイト触媒(例えば、メタロセン、幾何拘束など)が含まれる。触媒は、担体の有無にかかわらず使用することができる。
【0027】
有用なポリエチレンは、高圧プロセスで製造されたエチレンの低密度ホモポリマー(HP−LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、非常に低い密度のポリエチレン(VLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ならびにメタロセン及び幾何拘束コポリマーを含む。
【0028】
高圧プロセスは、典型的にはフリーラジカル開始重合であり、管状反応器または撹拌式オートクレーブ中で行われる。管状反応器では、圧力は、平方インチ当たり25,000〜45,000ポンド(psi)の範囲であり、温度は、200〜350℃の範囲であり得る。撹拌式オートクレーブ中で、圧力は、10,000〜30,000psiの範囲であり得、温度は、175〜250℃の範囲内であり得る。
【0029】
エチレン及び不飽和エステルから構成されるインターポリマーは周知であり、従来の高圧技術によって調製され得る。種々の実施形態では、不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはビニルカルボキシレートであり得る。アルキル基は、1個〜8個の炭素原子、または1個〜4個の炭素原子を有することができる。カルボキシレート基は、2個〜8個の炭素原子、または2個〜5個の炭素原子を有することができる。エステルコモノマーに起因するインターポリマーの部分は、インターポリマーの重量に基づき5〜50重量%(wt%)未満の範囲、または15〜40wt%の範囲であり得る。
【0030】
アクリレート及びメタクリレートの例は、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートを含むが、これらに限定されない。カルボン酸ビニルの例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びブタン酸ビニルを含むが、これらに限定されない。エチレン/不飽和エステルインターポリマーのメルトインデックスは、0.5〜50g/10分の範囲、または2〜25g/10分の範囲であり得る。
【0031】
VLDPE及びULDPEは典型的には、エチレンと3個〜12個の炭素原子または3個〜8個の炭素原子を有する1以上のα−オレフィンとのコポリマーである。VLDPEまたはULDPEの密度は、0.870〜0.915g/cm
3の範囲であり得る。VLDPEまたはULDPEのメルトインデックスは、0.1〜20g/10分、または0.3〜5g/10分の範囲であり得る。エチレン以外のコモノマー(複数可)に起因するVLDPEまたはULDPEの部分は、コポリマーの重量に基づき1〜49wt%、または15〜40wt%の範囲であり得る。
【0032】
第3のコモノマー、例えば別のα−オレフィンまたはエチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエンもしくはジシクロペンタジエンなどのジエンを含むことができる。エチレン/プロピレンコポリマーは概してEPRと称され、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマーは概してEPDMと称される。第3のコモノマーは、インターポリマーの重量に基づき1〜15wt%、または1〜10wt%の量で存在し得る。様々な実施形態において、インターポリマーは、エチレンを含む2つまたは3つのモノマータイプを含み得る。
【0033】
LLDPEは、直鎖状でもあるが、概して、0.916〜0.925g/cm
3の範囲の密度を有する、VLDPE、ULDPE、及びMDPEを含み得る。LLDPEは、エチレンと、3個〜12個の炭素原子、または3個〜8個の炭素原子を有する1以上のα−オレフィンとのコポリマーであり得る。メルトインデックスは、1〜20g/10分、または3〜8g/10分の範囲であり得る。
【0034】
いずれのポリプロピレンもこれらの組成物に使用され得る。例は、プロピレンのホモポリマー、プロピレンと他のオレフィンとのコポリマー、ならびにプロピレン、エチレン、及びジエン(例えば、ノルボルナジエン及びデカジエン)のターポリマーを含む。さらに、ポリプロピレンは、EPRまたはEPDMのような他のポリマーと分散またはブレンドすることができる。好適なポリプロピレンは、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性オレフィン(TPO)及び熱可塑性加硫物(TPV)を含む。ポリプロピレンの例は、ポリプロピレンハンドブック:Polymerization,Characterization,Properties,Processing,Applications,3−14,113−176(E.Moore,Jr.ed.,1996)に記載される。
【0035】
シラン官能化ポリオレフィンの形成に使用するのに好適な加水分解性シランモノマーは、オレフィン(例えば、エチレン)と効果的に共重合するか、またはオレフィン(例えば、エチレン)ポリマーにグラフトし架橋する任意の加水分解性シランモノマーであり得る。次の式で記述されているものは一例である。
【0037】
式中、R’は水素原子またはメチル基であり、xは0または1であり、nは1〜12を包含する整数であり、好ましくは1〜4の整数であり、各R’’は独立して、1個〜12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ)のような加水分解性有機基、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アラルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、1個〜12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノもしくは置換アミノ基(アルキルアミノ、アリールアミノ)、または1個〜6個を包含する炭素原子を有する低級アルキル基であり、但し、3個のR’’基のうちの1個以下がアルキルである。このようなシランは、高圧プロセスのような反応器内でエチレンと共重合させることができる。このようなシランはまた、好適な量の有機過酸化物の使用によって好適なエチレンポリマーにグラフトされてもよい。好適なシランは、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニルまたはガンマ(メタ)アクリロキシアリル基などのエチレン性不飽和ヒドロカルビル基、及び例えばヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ、またはヒドロカルビルアミノ基などの加水分解性基を含む不飽和シランを含む。加水分解性基の例は、メトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロプリオニルオキシ、及びアルキルまたはアリールアミノ基を含む。好ましいシランは、ポリマーにグラフとされまたは他のモノマー(エチレン及びアクリレートなど)と反応器内で共重合され得る不飽和アルコキシシランである。これらのシラン及びそれらの調製方法は、MeverdenらのUSP5,266,627にさらに詳しく記載されている。好適な加水分解性シランモノマーは、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、ビニルトリエトキシシラン(VTES)、ビニルトリアセトキシシラン、及びガンマ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランを含むが、これらに限定されない。
【0038】
シラン官能化ポリオレフィンを製造するためのポリオレフィン中の加水分解性シラン基の導入は、公知または今後発見される任意の共重合またはグラフト技術を用いて達成することができる。一例として、加水分解性シランモノマーは、ポリオレフィンと不飽和アルコキシシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン)及び過酸化物(例えば、ジクミルペルオキシド(DCP))とを組み合わせることによってポリオレフィンにグラフトさせることができる。使用するポリマー及び過酸化物(開始剤)に応じた適切な温度で、二軸スクリュー押出機またはBussニーダー中での溶融ブレンドを含む、加水分解性シランモノマーをポリオレフィンにグラフトするために、任意の従来の方法を使用することができる。一定時間(例えば、1〜30分間)混合した後、混合物を高温及び高めの温度(例えば、160℃〜220℃)で押出することができる。共重合またはグラフトのいずれであれ、反応に用いられる不飽和加水分解性シランモノマーの量は、ポリオレフィンと不飽和加水分解性シランモノマーとの合計重量に基づき0.5〜10wt%、1〜5wt%、または1〜3wt%の範囲であり得る。加水分解性シランモノマーのポリオレフィンへの組み込みは、(1)シラン官能化ポリオレフィンが配合物中で使用される前に、または(2)ポリオレフィンが配合物中に含まれた後、例えば組成物がビニルシラン、ポリオレフィン、有機開始剤及びヒドロキシ末端シリコーンポリマーのブレンドを含む実施形態のいずれかで達成され得る。一実施形態では、加水分解性シラン基は、ケーブル押出中に使用する前に化合物またはグラフト化ポリオレフィンを最初に調製することを必要とせずに、ケーブル押出プロセスの一部として一工程でポリオレフィン、過酸化物及び他の成分と溶融ブレンドし得る。
【0039】
加水分解性シラン基を有する商業的に入手可能なポリオレフィンの例は、高圧反応器を用いて調製された1.5wt%のビニルトリメトキシシランと共重合されたエチレンであり、The Dow Chemical Companyから入手可能なSI−LINK(商標)DFDA−A5451である。
【0040】
ポリオレフィンは、シラン官能化オレフィンポリマーと、シラン官能化されていない1つ以上の他のポリオレフィンとのブレンドを含むこともできる。
【0041】
様々な実施形態では、加水分解性シラン基を有するポリオレフィンは、組成物の重量に基づき少なくとも30wt%、少なくとも50wt%、または少なくとも70wt%の量で架橋性ポリマー組成物中に存在し得る。いくつかの実施形態では、加水分解性シラン基を有するポリオレフィンは、組成物の重量に基づき35〜95wt%、35〜90wt%、または35〜75wt%の範囲の量で存在し得る。
【0042】
ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)
本発明の実施において使用されるヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、各基Rがメチルである式R
2SiOの単位を含む。好ましい実施形態では、ポリジメチルシロキサンは、以下の式であり、
【0044】
式中、Meはメチルであり、nは数平均分子量(Mn)を4000以上(≧)のPDMSに付与するのに十分な数である。nの上限値は、典型的に、100,000、または10,000、または1,000、または500以下である。そのようなポリジメチルシロキサンは、例えばGelest,Incからのヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンとして商業的に入手可能である。
【0045】
一実施形態では、本発明の実施に使用されるPDMSは、数平均分子量(Mn)が4,000、または15,000、または35,000、または70,000以上(≧)であり、典型的にMnが500,000、または400,000、または300,000、または200,000以下(≦)である。
【0046】
一実施形態では、本発明の実施において使用されるPDMSは、粘度が90または500または700または1,500以上(≧)のセンチポイズ(cP)であり、典型的には粘度が500,000、または400,000、または300,000、または200,000以下(≦)のcPである。
【0047】
一実施形態では、本発明の実施において使用されるPDMSは、PDMSの重量に基づき0.9、または0.6、または0.3、または0.1以下(≦)及び0超、あるいは0.01、または0.02、または0.03、または0.04以上(≧)の重量%(wt%)のヒドロキシル基含有量を有する。
【0048】
Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定され、粘度は、USP5,130,041に記載されているように、BROOKFIELD粘度計(Model LVF,Spindle No.4を毎分12回転(rpm)で)を用いて測定される。ヒドロキシル基含有量は、
1H NMR分光法またはMalaysian Polymer Journal,Vol.4,No.2,p52−61,2009及びEuropean Polymer Journal,Vol.49,228−234(2013)で使用される手法に類似の他の分析技術によって測定される。
【0049】
好適なヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンの非限定的な例は、これらに限定されないが、いずれもGelest,IncからのDMS−S45(数平均分子量(Mn)が1モル当たり110,000グラム(g/mol)、粘度が50,000cP、−OHレベルが0.03%)、DMS−S27(Mnが18,000g/mol、粘度が700〜800cP、−OHレベルが0.2%)、及びDow CorningからのXIAMETER(商標)OHX−4000(粘度が2,000cP、WO2007/053051に報告されるシラノール含有量が0.15%)を含む。いくつかの実施形態では、多官能性オルガノポリシロキサンは、Me−SiO
3/2またはSiO
4/2基(シリコーン化学の当業者にはTまたはQ基として知られている)によって付与されるような分枝を含む。
【0050】
本開示の実施に使用されるPDMSの量は、ポリマー、アルコキシシラン、PDMS、処理条件または反応器条件、最終用途、及び類似の要因の性質に応じて大きく変動し得るが、典型的にはシラン官能化ポリオレフィン、難燃剤及びPDMSの合計重量に基づき少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%が使用される。利便性、ポリマー受容性及び経済性の考慮は、本開示の実施において使用されるPDMSの最大量に対する主な制限の一部であり、典型的にはPDMSの最大量は、シラン官能化ポリオレフィン、難燃剤及びPDMSの合計重量に基づき15重量%を超えず、好ましくは7重量%を超えない。
【0051】
難燃剤
本組成物は、22℃で固体または液体のいずれかである難燃剤(FR)を含む。あるFRが存在する本発明の実施形態の実施には、広範囲のFRのいずれも使用することができ、これらには、限定されないが、金属水和物、カーボンブラック、ハロゲン化化合物(臭素化難燃剤を含むが、これに限定されない)、無機相乗剤(三酸化アンチモンなど)、窒素及び/またはリン系ハロゲンフリー化合物、エポキシ化ノボラック樹脂、ならびにこのようなFRの2つ以上の混合物を含む。代表的な無機FRは、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、各種リン化合物、臭化アンモニウム、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、硫酸バリウム、シリコーン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、膨張性化合物、カーボンブラック、膨張黒鉛、及びそれらの混合物を含む。FRは、シラン、脂肪酸などの様々な表面コーティングまたは処理を含むことができる。
【0052】
一実施形態では、難燃剤は、限定されないが、例えば塩化パラフィンなどのハロゲン化炭化水素、ペンタブロモトルエンなどのハロゲン化芳香族化合物、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、デクロランプラス、及び他のハロゲン含有難燃剤のような1つ以上のハロゲン化有機化合物を含む。当業者は、組成物の所望の性能に応じて適切なハロゲン剤を認識し、選択する。
【0053】
一実施形態では、難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート)(BPADP)、アルミニウム三水和物または三水酸化物(ATH)、窒素/リン系ハロゲンフリー難燃剤、及びエポキシ化ノボラック樹脂から選択される少なくとも1つの化合物を含む。BPADP及びRDPは、それぞれAdeka Palmarole及びSuprestaから商業的に入手可能である。好適な窒素/リン系ハロゲンフリー難燃剤の非限定的な例は、ADK STAB FP−2100Jの名称でAdeka Palmaroleから入手可能なFP−2100J(ピロリン酸ピペラジン)である。本明細書で使用される「エポキシ化ノボラック樹脂」は、有機溶媒中のエピクロロヒドリンとフェノールノボラックポリマーとの反応生成物である。一実施形態では、エポキシ化ノボラック樹脂は、以下の構造(II)を有する。
【0055】
式中、nは1〜約1000の整数である。
【0056】
一実施形態では、組成物は、エポキシ化ノボラック樹脂を、下限0.01wt%または0.1wt%または0.5wt%、及び上限20wt%または10wt%または8wt%の量で含む。エポキシ化ノボラック樹脂は、The Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0057】
一実施形態では、組成物中に存在する全難燃剤は、組成物の総重量に基づき1wt%〜80wt%、または10wt%〜70wt%である。「全難燃剤」という用語は、組成物中に存在するすべての難燃剤(複数可)の重量%の合計である。
【0058】
一実施形態では、難燃剤は、膨張性難燃剤である。
【0059】
充填剤及び添加剤
本発明の組成物、すなわち、シラン官能化オレフィンポリマー及びヒドロキシル末端PDMSを含有する組成物はまた、上記の難燃剤に加えて、1つ以上の充填剤及び/または添加剤を含むことができる。充填剤が存在する場合、それは、シラン架橋オレフィンポリマーの電気的及び/または機械的特性の許容できないほど大きな劣化を引き起こす量で存在すべきではない。典型的には、存在する充填剤の量は、ポリマーの重量に基づき2〜80重量%、好ましくは5〜70重量%(wt%)である。代表的な充填剤は、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、大理石ダスト、セメントダスト、長石、シリカまたはガラス、ヒュームドシリカ、シリケート、アルミナ、酸化チタン、ガラス微小球、チョーク、雲母、粘土、ウォラストナイト、アンモニウムオクタモリブデート、カオリン粘土、水酸化マグネシウム、及びカーボンブラックを含む。充填剤は、難燃性を有していてもいなくてもよい。充填剤が存在する本発明の好ましい実施形態では、充填剤は、シラン硬化反応を妨害し得る充填剤の傾向を防止または遅延させる材料でコーティングされる。ステアリン酸は、そのような充填剤コーティングの例である。充填剤及び触媒は、所望されない相互作用及び反応を回避するように選択され、この選択は、当業者の技量の範囲内である。
【0060】
本発明の組成物は、他の添加剤、例えば抗酸化剤(例えばヒンダードフェノール、例えばIRGANOX.TM1010、Ciba Specialty Chemicalsの登録商標)、ホスファイト(例えば、IRGAFOS.TM168、Ciba Specialty Chemicalsの登録商標)、UV安定剤、粘着付与剤、光安定剤(ヒンダードアミンのような)、可塑剤(ジオクチルフタレートまたはエポキシ化大豆油など)、熱安定剤、離型剤、粘着付与剤(炭化水素粘着付与剤など)、ワックス(例えば、ポリエチレンワックス)、加工助剤(例えば、油、ステアリン酸のような有機酸、有機酸の金属塩)、架橋剤(例えば、過酸化物またはシラン)、本発明の組成物の所望の物理的または機械的特性を妨害しない範囲の着色料または顔料、及び他の難燃剤添加物を含有し得る。上記の添加剤は、当業者に知られている官能的に同等の量で、概して組成物の総重量に基づき約65重量%までの量で使用される。
【0061】
配合及び硬化
本発明の実施に使用される組成物は、個々の成分及び添加剤を単にドライブレンドまたは溶融ブレンドすることによって製造することができる。便宜上、成分のいくつかは、溶融加工などによりマスターバッチに予め混合してもよい。このようなマスターバッチは、成分の均一な分散を助け、エンドユーザの施設でブレンドする必要のある成分の数を最小にするのに役立つ。
【0062】
本発明の実施において使用されるシラン官能化ポリマーは、好ましくは縮合触媒(「水分硬化」触媒としても知られている)の存在下で、水(水分)との接触または曝露によって硬化させることができる。好適な触媒には、ジブチルスズジラウレート、オクタン酸第一スズ、酢酸第一スズ、ナフテン酸鉛及びオクタン酸亜鉛のような金属カルボン酸塩、テトラブチルチタネートのようなチタンエステル及びキレートのような有機金属化合物、エチルアミン、ヘキシルアミン、及びピペリジンのような有機塩基、ならびに鉱酸及び脂肪酸などの酸を含む。周囲硬化系または加速硬化系は、典型的には、芳香族スルホン酸のような速効性縮合触媒を使用する。好ましい触媒は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルジメトキシスズ、ジブチルスズビス(2,4−ペンタンジオネート)、オクタン酸第一スズのような有機スズ化合物、及び芳香族スルホン酸である。このような水分硬化縮合触媒及び触媒系は、容易に商業的に入手可能である。マスターバッチ形態の好適な商業的触媒の例としては、The Dow Chemical Company製のDFDB 5480NT(スズ触媒系)、DFDA 5488NT(高速周囲硬化触媒マスターバッチ)、またはBorealis AMBICAT(商標)系LE 4476を含むが、これらに限定されない。
【0063】
本開示の実施において使用される架橋触媒の最小量は、触媒量である。典型的には、この量は、シラン官能化ポリオレフィン及び触媒の合計重量の少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.02重量%、より好ましくは少なくとも0.03重量%(wt%)である。ポリマーを架橋するために使用される架橋触媒の最大量に対する唯一の限界は、経済性及び実用性(例えば、リターンの減少)によって課されるものであるが、典型的には一般的最大値は、5wt%未満、好ましくは3wt%未満、及びより好ましくは2wt%未満のポリマー及び触媒の合計重量を含む。
【0064】
水分硬化は、蒸気チャンバ、連続蒸気加硫トンネル、温水サウナ、または単に空気(常温硬化)に曝露することあるいは他の好都合な手段によって行うことができる。
【0065】
本発明の組成物は、当該技術分野で公知の任意の好適な手段によって組立品に加工することができる。例えば、組成物は、カレンダリング、ブローイング、キャスティングまたは(共)押出プロセスなどの公知のプロセスによって、フィルムまたはシートまたは多層構造体の1つ以上の層に加工することができる。射出成形、圧縮成形、押出成形またはブロー成形部品もまた、本発明の組成物から調製することができる。代替的に、組成物は、発泡体もしくは繊維に加工されるか、またはジャケット及び断熱材のようなワイヤ及びケーブルコーティングに押出される。
【実施例】
【0066】
試験方法
USP5,130,041に記載されているように、BROOKFIELD粘度計(Model LVF、スピンドルNo.4、12rpmで)を用いて25℃での粘度を測定する。
【0067】
ヒドロキシル含有量は、
1H NMR分光法またはMalaysian Polymer Journal,Vol.4,No.2,p52−61,2009及びEuropean Polymer Journal,Vol.49,228−234(2013)で使用される手法に類似の他の分析技術によって判定される。
【0068】
Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0069】
Alpha Technologies Rheometer MDR model 2000ユニットを使用して、組成物について移動ダイレオメーター(MDR)分析を実施する。試験は、ASTM手順D5289「Standard Test Method for Rubber − Property Vulcanization Using Rotorless Cure Meters」に基づいている。MDR分析は、6グラムの材料を使用して行われる。試料は、0.5度のアーク振動で182℃で試験する。BRABENDER(商標)混合ボウルからの直接的な材料を、ts0.1(開始時/初期値よりもトルクが0.1ポンド(lb)増加するまでの時間)で評価し、「時効処理されていない組成物」のトルクの開始/初期値について評価して、押出条件(「スコーチ」)での早期架橋に対する耐性について試験する。厚さ75ミルの成形試験片を90℃の水浴中で24時間硬化させ、続いてMDRで試験する。トルクの開始/初期値は、「90℃の水浴中で24時間後の最終水分架橋」の尺度として使用される。厚さ75ミルの成形試験片も、23℃及び50%相対湿度(RH)で8週間時効処理され、その後MDRで試験される。トルクの開始/初期値は、その期間中の時効処理されていない組成物の開始/初期トルクの増加と同様に、「23℃及び50%RHでの8週間後の貯蔵安定性」の尺度として使用される。
【0070】
材料
SI−LINK(商標)DFDA−5451はThe Dow Chemical Companyから入手可能な架橋性エチレン−シランコポリマーである。
【0071】
SAYTEX(商標)8010は、Albemarleから入手可能なエタン−1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)である。
【0072】
MICROFINE(商標)AO9は、Great Lakes(Chemtura Group)から入手可能な標準グレードの三酸化アンチモンである。
【0073】
Mistron ZSCは、オフホワイト、Luzenac Americaから入手可能な高純度、板状、非常に細かいタルクである。
【0074】
IRGANOX(商標)1010 FFは、BASFから入手可能なブチル−4−ヒドロシンナメート))メタンである。
【0075】
DFDA−5481 NTは、SI−LINK(商標)ポリエチレンDFDA−5451などの水分硬化エチレン−シランコポリマーとともに使用するために開発されたシラノール縮合触媒マスターバッチである。The Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0076】
Dow Corning200 PDMS、60,000 CST(ヒドロキシル末端化されていない):60,000cPの粘度及び82,070のMn。
【0077】
DMS−S15は、Gelest、Incから入手可能な0.9〜1.2%のヒドロキシル含有量、45〜85cPの粘度、及び2,000〜3,500g/molのMnを有するヒドロキシル末端PDMSである。
【0078】
XIAMETER(商標)OHX−4000は、0.15%のシラノール含有量及び2,000cPの粘度を有するヒドロキシル末端PDMSである。
【0079】
DMS−S45は、Gelest、Incから入手可能な0.03%のヒドロキシル含有量、50,000cPの粘度、及び110,000g/molのMnを有するヒドロキシル末端PDMSである。
【0080】
DMS−S27は、Gelest、Incから入手可能な0.2%のヒドロキシル含有量、700〜800cPの粘度、及び18,000g/molのMnを有するヒドロキシル末端PDMSである。
【0081】
プロトコル
約400グラムの各組成物を以下のように製造する。3−Piece Design、350ミリリットル(mL)の容量及びカムロータを備えたBRABENDER(商標)Prep−Mixerに、必要量のSI−LINK(商標)DFDA−5451エチレン−シランコポリマーの半分が充填され、1分当たり25回転(rpm)及び125℃の設定温度で2〜3分間フラックスした。次に、以下の固体成分を25rpm及び125℃の設定温度で、示された順序でゆっくりと添加し、次の成分が充填される前に取り込まれるようにそれぞれについてさらに1〜2分を要する:SAYTEX(商標)8010(臭素化難燃性充填剤)、MICROFINE(商標)AO9(三酸化アンチモン難燃性相乗充填剤)及びMistron ZSC(タルク充填剤)。ヒドロキシル末端PDMSを使用する場合は、それをMistron ZSC(タルク充填剤)の充填と同時に添加し、混合器を25rpm及び125℃の設定温度で1〜2分間運転する。次に、SI−LINK(商標)DFDA−5451エチレン−シランコポリマーの残りをIRGANOX(登録商標)1010 FF(抗酸化剤)と一緒に添加し、ブレンドを40rpm及び125℃の設定温度でさらに5分間混合する。シラノール縮合触媒マスターバッチ(DFDA−5481NT)を最後に混合器に充填し、全体の組成物を40rpm及び125℃の設定温度でさらに3分間操作する。
【0082】
混合後、組成物を混合器から取り出し、冷間プレスして薄いシートとし、直ちに圧縮成形する(厚さ75ミル)。成形条件は、150℃で6分間である(平方インチ当たり500ポンド(psi)で6分間、続いて2500psiで3分間、30℃で2500psiで冷却した後に取り出す)。
【0083】
成形されたシートは、23℃及び相対湿度50%の水で、様々な時間の長さにわたって硬化される。
【0084】
組成物及び試験結果を以下の表に報告する。
【0085】
【表1-1】
【0086】
【表1-2】
【0087】
本発明の実施例(実施例1及び実施例2)は、比較例(CE1、CE2及びCE3)でのそれぞれ1.5、2.0及び2.0とは対照的に、押出条件(182℃)においてより高いts0.1(分)値(それぞれ3.7及び3.2)で証明されるように改善されたスコーチ耐性(すなわち、より低い架橋度)を報告する。しかしながら、驚くべきことに、実施例1及び実施例2はより高い最終硬化を報告する(2.6lb in.対2.1lb in.及び2.2lb in.)。さらに、実施例1及び実施例2の試料はまた、時効処理後のより低いトルクでより良好な貯蔵安定性を呈し、そして時効処理されていない試料と比較してトルクの増加がより低い。
また、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
<1>(A)溶融混合条件の下、及び(B)難燃剤の存在下で、シラン官能化ポリオレフィンのスコーチを最小化するためのプロセスであって、前記シラン官能化ポリオレフィンを、(1)1モル当たり≧4,000グラム(g/mol)の数平均分子量(Mn)、(2)≧90センチポイズ(cP)の粘度、及び(3)PDMSの重量に基づき≦0.9重量%(wt%)のヒドロキシル基含有量を有する、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)と接触させる工程を含む、プロセス。
<2>(A)溶融混合条件の下、(B)難燃剤の存在下、及び(C)ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)の存在下で、シラン官能化ポリオレフィンのスコーチを最小化するためのプロセスにおいて、改善が、(1)1モル当たり≧4,000グラム(g/mol)の数平均分子量(Mn)、(2)≧90センチポイズ(cP)の粘度、及び(3)PDMSの重量に基づき≦0.9重量%(wt%)のヒドロキシル基含有量を有するPDMSを使用することを含む、プロセス。
<3>前記シラン官能化ポリオレフィンは、シラン官能化ポリエチレンまたはポリプロピレンである、上記<1>及び<2>のいずれか1項に記載のプロセス。
<4>前記ポリエチレンまたはポリプロピレンは、アルコキシシラン基で官能化されている、上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のプロセス。
<5>前記難燃剤は、金属水和物、カーボンブラック、ハロゲン化化合物、窒素及び/またはリン系ハロゲンフリー化合物、及びエポキシ化ノボラック樹脂のうちの少なくとも1つである、上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のプロセス。
<6>前記難燃剤は、ハロゲン化化合物を含む、上記<5>に記載のプロセス。
<7>前記シラン官能化ポリオレフィンを架橋触媒と接触させることをさらに含む、上記<1>〜<6>のいずれか1項に記載のプロセス。
<8>前記PDMSが、前記シラン官能化ポリオレフィン、難燃剤及び前記PDMSの合計重量に基づき0.5〜15重量%の量で存在する、上記<1>〜<7>のいずれか1項に記載のプロセス。