(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の適用対象として油圧ショベルを例にとり、本発明の一実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本実施形態における油圧ショベルの構造を表す側面図である。
【0017】
本実施形態の油圧ショベルは、自走可能な下部走行体1と、下部走行体1の上側に旋回可能に設けられた上部旋回体2とを備えており、下部走行体1及び上部旋回体2が車体を構成している。上部旋回体2は、旋回モータ13によって旋回する。
【0018】
下部走行体1は、上方から見てH字状のトラックフレーム3を備えている。トラックフレーム3は、左右方向(
図1中紙面に対して垂直方向)に延在するセンタフレームと、センタフレームの左側(
図1中紙面に向かって手前側)に設けられ、前後方向(
図1中左右方向)に延在する左サイドフレームと、センタフレームの右側(
図1中紙面に向かって奥側)に設けられ、前後方向に延在する右サイドフレームとで構成されている。
【0019】
左のクローラ式走行装置4は、左サイドフレームに設けられており、左の走行モータ15によって駆動する。右のクローラ式走行装置5(後述の
図5参照)は、右サイドフレームに設けられており、右の走行モータ17(後述の
図5参照)によって駆動する。下部走行体1は、左右の走行装置4,5が駆動することで走行する。ブレード6は、センタフレームに対して上下方向(
図1中上下方向)に駆動可能に設けられており、ブレードシリンダ12によって上下方向に駆動する。
【0020】
作業装置7は、上部旋回体2の前側(
図1中左側)に連結されている。作業装置7は、上部旋回体2に左右方向に回動可能に連結されたスイングポスト8と、スイングポスト8に上下方向に回動可能に連結されたブーム9と、ブーム9に上下方向に回動可能に連結されたアーム10と、アーム10に上下方向に回動可能に連結されたバケット11とを備えている。スイングポスト8は、スイングシリンダ14(後述の
図2参照)によって左右方向に回動し、ブーム9を左右方向にスイングさせる。ブーム9、アーム10、及びバケット11は、ブームシリンダ18、アームシリンダ16、及びバケットシリンダ19によって上下方向にそれぞれ回動する。
【0021】
上述した上部旋回体2、走行装置4,5、ブレード6、スイングポスト8、ブーム9、アーム10、及びバケット11は、油圧ショベルに搭載された駆動装置によって駆動される被駆動体を構成している。
図2は、本実施形態における油圧ショベルの駆動装置の構成を表す図である。
【0022】
本実施形態の駆動装置は、エンジン20(原動機)によって駆動されるメインポンプである油圧ポンプP1,P2,P3と、油圧ポンプP1から吐出された圧油によって作動する複数のアクチュエータ(詳細には、上述した右の走行モータ17、ブームシリンダ18、及びバケットシリンダ19)と、油圧ポンプP2から吐出された圧油によって作動する複数のアクチュエータ(詳細には、上述した左の走行モータ15及びアームシリンダ16)と、油圧ポンプP3から吐出された圧油によって作動する複数のアクチュエータ(詳細には、上述したブレードシリンダ12、旋回モータ13、及びスイングシリンダ14)と、弁ユニット21とを備えている。なお、油圧ポンプP1,P2は、スプリットフロータイプの油圧ポンプで構成されている。
【0023】
弁ユニット21は、油圧ポンプP1からアクチュエータ17,18,19への圧油の流れをそれぞれ制御するオープンセンタ型の制御弁27,28,29と、油圧ポンプP2からアクチュエータ15,16への圧油の流れをそれぞれ制御するオープンセンタ型の制御弁25,26と、油圧ポンプP3からアクチュエータ12,13,14への圧油の流れをそれぞれ制御するオープンセンタ型の制御弁22,23,24と、油圧ポンプP1,P2,P3の吐出圧をそれぞれ制限するメインリリーフ弁30a,30b,30cとを有している。
【0024】
また、本実施形態の駆動装置は、エンジン20によって駆動されるパイロットポンプP4と、パイロットポンプP4の吐出圧を一定に保つパイロットリリーフ弁31と、制御弁22〜29を操作する操作装置32〜36とを備えている。なお、操作装置33は、上部旋回体2の運転室内の運転席37(
図1参照)の左側に配置され、操作装置32,34は、運転席37の右側に配置されている。また、操作装置35,36は、運転席37の前側に配置されている。
【0025】
ブーム及びバケット用の操作装置32は、十字操作式の操作レバーと、この操作レバーの操作に応じて動作するパイロット弁32a〜32dとを有している。パイロット弁32aは、操作レバーの後側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の吐出圧を元にしてブーム上げ用のパイロット圧aを生成し、このブーム上げ用のパイロット圧aをブーム用制御弁28の一方側受圧部へ出力する。これにより、ブーム用制御弁28を切換えて、油圧ポンプP1からの圧油をブームシリンダ18のボトム側油室へ供給させ、ブームシリンダ18を伸長させる。その結果、ブーム9を上げさせる。
【0026】
パイロット弁32bは、操作レバーの前側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の吐出圧を元にしてブーム下げ用のパイロット圧bを生成し、このブーム下げ用のパイロット圧bをブーム用制御弁28の他方側受圧部へ出力する。これにより、ブーム用制御弁28を切換えて、油圧ポンプP1からの圧油をブームシリンダ18のロッド側油室へ供給させ、ブームシリンダ18を縮短させる。その結果、ブーム9を下げさせる。
【0027】
パイロット弁32cは、操作レバーの左側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の吐出圧を元にしてバケットクラウド用のパイロット圧cを生成し、このバケットクラウド用のパイロット圧cをバケット用制御弁29の一方側受圧部へ出力する。これにより、バケット用制御弁29を切換えて、油圧ポンプP1からの圧油をバケットシリンダ19のボトム側油室へ供給させ、バケットシリンダ19を伸長させる。その結果、バケット11をクラウドさせる。
【0028】
パイロット弁32dは、操作レバーの右側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の吐出圧を元にしてバケットダンプ用のパイロット圧dを生成し、このバケットダンプ用のパイロット圧dをバケット用制御弁29の他方側受圧部へ出力する。これにより、バケット用制御弁29を切換えて、油圧ポンプP1からの圧油をバケットシリンダ19のロッド側油室へ供給させ、バケットシリンダ19を縮短させる。その結果、バケット11をダンプさせる。
【0029】
アーム及び旋回用の操作装置33は、十字操作式の操作レバーと、この操作レバーの操作に応じて動作するパイロット弁33a〜33dとを有している。パイロット弁33aは、操作レバーの後側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の圧力を元にしてアーム引き用のパイロット圧eを生成し、このアーム引き用のパイロット圧eをアーム用制御弁26の一方側受圧部へ出力する。これにより、アーム用制御弁26を切換えて、油圧ポンプP2からの圧油をアームシリンダ16のボトム側油室へ供給させ、アームシリンダ16を伸長させる。その結果、アーム10を引込ませる。
【0030】
パイロット弁33bは、操作レバーの前側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の圧力を元にしてアーム押し用のパイロット圧fを生成し、このアーム押し用のパイロット圧fをアーム用制御弁26の他方側受圧部へ出力する。これにより、アーム用制御弁26を切換えて、油圧ポンプP2からの圧油をアームシリンダ16のロッド側油室へ供給させ、アームシリンダ16を縮短させる。その結果、アーム10を押込ませる。
【0031】
パイロット弁33cは、操作レバーの左側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の圧力を元にして左旋回用のパイロット圧gを生成し、この左旋回用のパイロット圧gを旋回用制御弁23の一方側受圧部へ出力する。これにより、旋回用制御弁23を切換えて、油圧ポンプP3からの圧油を旋回モータ13の一方側ポートへ供給させ、旋回モータ13を一方向に回転させる。その結果、上部旋回体2を左旋回させる。
【0032】
パイロット弁33dは、操作レバーの右側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の圧力を元にして右旋回用のパイロット圧hを生成し、この右旋回用のパイロット圧hを旋回用制御弁23の他方側受圧部へ出力する。これにより、旋回用制御弁23を切換えて、油圧ポンプP3からの圧油を旋回モータ13の反対側ポートへ供給させ、旋回モータ13を反対方向に回転させる。その結果、上部旋回体2を右旋回させる。
【0033】
走行用の操作装置35は、前後方向に操作可能な左の操作部材(詳細には、操作レバーと操作ペダルを一体化したもの)と、この左の操作部材の操作に応じて動作するパイロット弁35a,35bと、前後方向に操作可能な右の操作部材(詳細には、操作レバーと操作ペダルを一体化したもの)と、この右の操作部材の操作に応じて動作するパイロット弁35c,35dとを有している。パイロット弁35aは、左操作部材の前側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の吐出圧を元にして左走行用のパイロット圧iを生成し、この左走行用のパイロット圧iを左走行用制御弁25の一方側受圧部へ出力する。これにより、左走行用制御弁25を切換えて、油圧ポンプP2からの圧油を左走行モータ15の一方側ポートへ供給させ、左走行モータ15を一方向に回転させる。その結果、左走行装置4を一方側の走行方向(通常は前進方向)に駆動させる。
【0034】
パイロット弁35bは、左操作部材の後側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の吐出圧を元にして左走行用のパイロット圧jを生成し、この左走行用のパイロット圧jを左走行用制御弁25の他方側受圧部へ出力する。これにより、左走行用制御弁25を切換えて、油圧ポンプP2からの圧油を左走行モータ15の反対側ポートへ供給させ、左走行モータ15を反対方向に回転させる。その結果、左走行装置4を反対側の走行方向(通常は後進方向)に駆動させる。
【0035】
パイロット弁35cは、右操作部材の前側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の吐出圧を元にして右走行用のパイロット圧kを生成し、この右走行用のパイロット圧kを右走行用制御弁27の一方側受圧部へ出力する。これにより、右走行用制御弁27を切換えて、油圧ポンプP1からの圧油を右走行モータ17の一方側ポートへ供給させ、右走行モータ17を一方向に回転させる。その結果、右走行装置5を一方側の走行方向(通常は前進方向)に駆動させる。
【0036】
パイロット弁35dは、右操作部材の後側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の吐出圧を元にして右走行用のパイロット圧lを生成し、この右走行用のパイロット圧lを右走行用制御弁27の他方側受圧部へ出力する。これにより、右走行用制御弁27を切換えて、油圧ポンプP1からの圧油を右走行モータ17の反対側ポートへ供給させ、右走行モータ17を反対方向に回転させる。その結果、右走行装置5を反対側の走行方向(通常は後進方向)に駆動させる。
【0037】
ブームスイング用の操作装置36は、左右方向に操作可能な操作ペダルと、この操作ペダルの操作に応じて動作するパイロット弁36a,36bとを有している。パイロット弁36aは、操作ペダルの左側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の吐出圧を元にしてブーム左スイング用のパイロット圧mを生成し、このブーム左スイング用のパイロット圧mをブームスイング用制御弁24の一方側受圧部へ出力する。これにより、ブームスイング用制御弁24を切換えて、油圧ポンプP3からの圧油をスイングシリンダ14のボトム側油室へ供給させ、スイングシリンダ14を伸長させる。その結果、スイングポスト8と共にブーム9を左スイングさせる。
【0038】
パイロット弁36bは、操作ペダルの右側操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の吐出圧を元にしてブーム右スイング用のパイロット圧nを生成し、このブーム右スイング用のパイロット圧nをブームスイング用制御弁24の他方側受圧部へ出力する。これにより、ブームスイング用制御弁24を切換えて、油圧ポンプP3からの圧油をスイングシリンダ14のロッド側油室へ圧油を供給させ、スイングシリンダ14を縮短させる。その結果、スイングポスト8と共にブーム9を右スイングさせる。
【0039】
なお、操作装置32の操作レバーが操作されず、操作装置35の右操作部材が操作されない場合は、制御弁27,28,29が中立位置にあるから、油圧ポンプP1から吐出された圧油が制御弁27,28,29を介してタンクTに戻される。操作装置35の左操作部材が操作されず、操作装置33の操作レバーが前後方向に操作されない場合は、制御弁25,26が中立位置にあるから、油圧ポンプP2から吐出された圧油が制御弁25,26を介してタンクTに戻される。後述するブレード用の操作装置34の操作レバーが操作されず、操作装置33の操作レバーが左右方向に操作されず、操作装置36の操作ペダルが操作されない場合は、制御弁22,23,24が中立位置にあるから、油圧ポンプP3から吐出された圧油が制御弁22,23,24を介してタンクTに戻される。
【0040】
ここで、本実施形態の駆動装置は、ブレード6をフロート状態にすることが可能なように構成されている。詳細には、ブレード用制御弁22は、ブレード6を停止するための中立位置Iと、ブレード6を上げ方向に駆動するための上げ位置IIと、ブレード6を下げ方向に駆動するための下げ位置IIIとに加え、ブレード6をフロート状態にするためのフロート位置IVを有している。そして、ブレード用操作装置34の操作により、ブレード用制御弁22を中立位置Iから上げ位置II、下げ位置III、及びフロート位置IVのうちのいずれかに切換えるようになっている。
【0041】
ブレード用操作装置34は、前後方向に操作可能な操作レバーと、この操作レバーの操作に応じて動作するパイロット弁34a,34bとを有している。パイロット弁34aは、操作レバーの中立位置から後側の操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の圧力を元にしてパイロット圧o(上げ指令に相当)を生成し、このパイロット圧oをブレード用制御弁22の一方側受圧部へパイロット油路38aを介し出力する。これにより、ブレード用制御弁22を中立位置Iから上げ位置IIに切換えて、油圧ポンプP3からの圧油をブレードシリンダ12のロッド側油室へ供給させ、ブレードシリンダ12を縮短させる。その結果、ブレード6を上げさせる。
【0042】
パイロット弁34bは、操作レバーの中立位置から前側の操作に応じて動作し、パイロットポンプP4の圧力を元にしてパイロット圧pを生成する。詳細には、
図3で示すように、操作レバーが中立位置(不感帯)にあれば、すなわち、操作レバーを前側に操作したときのレバーストロークsが所定値s1未満であれば、パイロット圧pをゼロとし、レバーストロークsが所定値s1であれば、パイロット圧pを所定値p1とする。そして、レバーストロークsが所定値s1以上で基準値s2(但し,s2>s1)未満であれば、レバーストロークsが徐々に大きくなるのにしたがって、パイロット圧pを徐々に上昇させる。このときのパイロット圧pは、p2>p≧p1の範囲にあり、下げ指令に相当する。
【0043】
レバーストロークsが基準値s2以上であれば(言い換えれば、操作レバーを操作するために必要な操作力が急に上昇するデテント位置に達すれば)、パイロット圧pを急上昇させて最大値pmaxとする。このときのパイロット圧p(=pmax)は、フロート指令に相当する。なお、p2は予め設定された判定値であり、本実施形態ではp2<pmaxであるものの、p2=pmaxとしてもよい。
【0044】
パイロット弁34bは、上述のように生成したパイロット圧pをブレード用制御弁22の他方側受圧部へパイロット油路38bを介し出力する。パイロット圧pが所定値p1以上かつ判定値p2未満である場合に(すなわち、パイロット圧pが下げ指令に相当する場合に)、ブレード用制御弁22を中立位置Iから下げ位置IIIに切換えて、油圧ポンプP3からの圧油をブレードシリンダ12のボトム側油室へ供給させ、ブレードシリンダ12を伸長させる。その結果、ブレード6を下げさせる。なお、パイロット圧pが徐々に大きくなるのにしたがって、ブレード用制御弁22の下げ位置IIIにおけるメータイン流路の開口面積及びメータアウト流路の開口面が徐々に大きくなるようになっている。
【0045】
パイロット圧pが最大値pmaxである場合に(すなわち、パイロット圧pがフロート指令に相当する場合に)、ブレード用制御弁22をフロート位置IVに切換えて、ブレードシリンダ12のボトム側油室及びロッド側油室をタンクTに連通させる。これにより、ブレード6をフロート状態にする。
【0046】
また、本実施形態では、パイロット油路38bに設けられた電磁切換弁39と、電磁切換弁39を制御するコントローラ40とを備えている。コントローラ40は、プログラムに基づいて演算処理や制御処理を実行する演算制御部(例えばCPU)と、プログラムや演算処理の結果を記憶する記憶部(例えばROM、RAM)等を有するものである。
【0047】
電磁切換弁39は、連通位置Vと遮断位置IVに切換え可能である。電磁切換弁39が連通位置Vにある場合は、ブレード用操作装置34からブレード用制御弁22の他方側受圧部へパイロット圧pを出力可能とし、パイロット圧pが有効となる。一方、電磁切換弁39が遮断位置VIにある場合は、ブレード用操作装置34からブレード用制御弁22の他方側受圧部へパイロット圧pを出力不能とし、パイロット圧pが無効となる。
【0048】
また、本実施形態では、ブレードシリンダ12のボトム側油室の圧力を検出する圧力センサ41が設けられており、コントローラ40は、圧力センサ41の検出結果に基づき、ブレード6が車体をジャッキアップしている状態にあるか否かを判定するようになっている。また、パイロット油路38bにはパイロット圧センサ42が設けられており、コントローラ40は、パイロット圧センサ42の検出結果に基づき、ブレード用操作装置34の操作レバーの位置又はストローク(あるいは、フロート指令及び下げ指令のうちのいずれかを出力しているかどうか)を判定するようになっている。
【0049】
次に、本実施形態のコントローラ40の処理内容を説明する。
図4は、本実施形態におけるコントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【0050】
まず、ステップS101にて、コントローラ40は、ブレードシリンダ12のボトム側油室の圧力が予め設定された設定値(例えば10MPa)以上であってその状態が予め設定された所定時間(例えば数分)継続したか否かを判定する。これにより、ブレード6が車体をジャッキアップしている状態にあるか否かを判定する。
【0051】
例えばブレードシリンダ12のボトム側油室の圧力が設定値以上であってその状態が所定時間継続した場合は、言い換えれば、ブレード6が車体をジャッキアップしている状態にある場合は、ステップS101の判定がYESとなり、ステップS102に移る。ステップS102にて、コントローラ40は、パイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが判定値p2以上であるか否かを判定する。言い換えれば、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置から前側に操作されてそのストロークsが基準値s2以上であるか否かを判定する。
【0052】
例えばステップS102にてパイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが判定値p2未満である場合は、言い換えれば、レバーストロークsが基準値s2未満である場合は、その判定がNOとなり、ステップS103に移る。ステップS103にて、コントローラ40は、電磁切換弁39の制御信号をOFFとして、電磁切換弁39を連通位置Vに保持する。これにより、下げ指令に相当するパイロット圧pを有効化する。その後、ステップS101に戻って上述した処理を行う。
【0053】
例えばステップS102にてパイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが判定値p2以上である場合は、言い換えれば、レバーストロークsが基準値s2以上である場合は、その判定がYESとなり、ステップS104に移る。ステップS104にて、コントローラ40は、電磁切換弁39の制御信号をONとして、電磁切換弁39を遮断位置VIに切換える。これにより、フロート指令に相当するパイロット圧pを無効化する。
【0054】
その後、ステップS105に進み、コントローラ40は、パイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが所定値p1未満となったか否かを判定する。言い換えれば、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置に戻されたか否かを判定する。例えばステップS105にてパイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが所定値p1未満となっていない場合は、言い換えれば、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置に戻されていない場合は、その判定がNOとなり、ステップS104に戻る。すなわち、コントローラ40は、電磁切換弁39を遮断位置VIに保持する。これにより、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置に戻されるまでの間、フロート指令及び下げ指令を無効化する。
【0055】
例えばステップS105にてパイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが所定値p1未満となった場合は、言い換えれば、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置に戻された場合は、その判定がYESとなり、ステップS101に戻る。その後、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置に戻されていることから、ステップS101とステップS102(又は後述するステップS106)を経由してステップS103に移る。ステップS103にて、コントローラ40は、電磁切換弁39を連通位置Vに切換える。
【0056】
例えばステップS101にてブレードシリンダ12のボトム側油室の圧力が設定値未満であるか、若しくは、ブレードシリンダ12のボトム側油室の圧力が設定値以上であってもその状態が所定時間継続しない場合は、言い換えれば、ブレード6が車体をジャッキアップしている状態にない場合は、ステップS101の判定がNOとなり、ステップS106に移る。ステップS106にて、ステップS102と同様、コントローラ40は、パイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが所定値p2以上であるか否かを判定する。言い換えれば、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置から前側に操作されてそのストロークsが基準値s2以上であるか否かを判定する。
【0057】
例えばステップS106にてパイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが判定値p2未満である場合は、言い換えれば、レバーストロークsが基準値s2未満である場合は、その判定がNOとなり、ステップS103に移る。ステップS103にて、コントローラ40は、電磁切換弁39の制御信号をOFFとして、電磁切換弁39を連通位置Vに保持する。これにより、下げ指令に相当するパイロット圧pを有効化する。その後、ステップS101に戻って上述した処理を行う。
【0058】
例えばステップS106にてパイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが判定値p2以上である場合は、言い換えれば、レバーストロークsが基準値s2以上である場合は、その判定がYESとなり、ステップS107に移る。ステップS107にて、ステップ103と同様、コントローラ40は、電磁切換弁39の制御信号をONとして、電磁切換弁39を連通位置Vに保持する。これにより、フロート指令に相当するパイロット圧pを有効化する。
【0059】
その後、ステップS108に進み、コントローラ40は、パイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが所定値p1以上でかつ判定値p2未満となったか否かを判定する。言い換えれば、パイロット圧pがフロート指令から下げ指令に変わったか否かを判定する。例えばステップS108にてパイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが判定値p2以上である場合は、言い換えれば、パイロット圧pがフロート指令のままである場合は、その判定がNOとなり、ステップS107に戻る。すなわち、コントローラ40は、電磁切換弁39を連通位置Vに保持する。
【0060】
例えばステップS108にてパイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが所定値p1以上でかつ判定値p2未満となった場合は、言い換えれば、パイロット圧pガフロート指令から下げ指令に変わった場合は、その判定がYESとなり、ステップS104に移る。ステップS104にて、コントローラ40は、電磁切換弁39の制御信号をONとして、電磁切換弁39を遮断位置VIに切換える。これにより、下げ指令に相当するパイロット圧pを無効化する。
【0061】
その後、ステップS105に進み、コントローラ40は、パイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが所定値p1未満となったか否かを判定する。言い換えれば、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置に戻されたか否かを判定する。例えばステップS105にてパイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが所定値p1未満となっていない場合は、言い換えれば、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置に戻されていない場合は、その判定がNOとなり、ステップS104に戻る。すなわち、コントローラ40は、電磁切換弁39を遮断位置VIに保持する。これにより、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置に戻されるまでの間、下げ指令を無効化する。
【0062】
例えばステップS105にてパイロット圧センサ42で検出されたパイロット圧pが所定値p1未満となった場合は、言い換えれば、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置に戻された場合は、その判定がYESとなり、ステップS101に戻る。その後、ブレード用操作装置34の操作レバーが中立位置に戻されていることから、ステップS101とステップS102又はS106を経由してステップS103に移る。ステップS103にて、コントローラ40は、電磁切換弁39を連通位置Vに切換える。
【0063】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。油圧ショベルのブレード6は、例えば車体の足回りを整備または洗浄するために車体をジャッキアップする場合や、均し作業を行う場合に使用される。
【0064】
(1)車体のジャッキアップ
図5で示すように油圧ショベルの車体をジャッキアップする場合の動作について説明する。最初に、
図1で示す油圧ショベルの状態であれば、オペレータは操作装置33を操作して上部旋回体2を180度反転させる。そして、オペレータは操作装置32,33を操作して作業装置7の姿勢を変更すると共にバケット11を地面に接触させる。そして、オペレータは操作装置32を操作してブーム9を下げさせることで、下部走行体1の後部を地面から浮き上がらせる。また、オペレータは操作装置34を操作して(但し、操作レバーがデテント位置に達しないように操作して)ブレード6を下げさせることで、下部走行体1の前部を地面から浮き上がらせる。これにより、車体のジャッキアップ状態となる。
【0065】
ブレード6が車体をジャッキアップしている状態では、ブレードシリンダ12のボトム側油室の圧力が設定値以上となる。ブレードシリンダ12のボトム側油室の圧力が設定値以上である状態が所定時間継続すれば、コントローラ40は、ブレード6が車体をジャッキアップしている状態にあると判定する。この場合に、オペレータが誤操作しても(詳細には、ブレード用操作装置34を前側に操作してそのストロークsが基準値s2以上となっても)、コントローラ40は、上述の
図4のステップS101,S102を経てステップS104に進み、電磁切換弁39を遮断位置VIに切換える。これにより、フロート指令に相当するパイロット圧pを無効化して、ブレード用制御弁22を中立位置Iに戻す。したがって、ブレード6をフロート状態にしない。
【0066】
その後、ブレード用操作装置34の操作レバーを中立位置に戻すまでの間、コントローラ40は、電磁切換弁39を遮断位置VIに保持する。
【0067】
(2)均し作業
ブレード6をフロート状態にして均し作業を行う場合の動作について説明する。ブレード6が車体をジャッキアップしている状態になければ、ブレードシリンダ12のボトム側油室の圧力が設定値未満となる。これにより、コントローラ40は、ブレード6が車体をジャッキアップしている状態にないと判定する。この場合に、オペレータがブレード用操作装置34を前側に操作してそのストロークsが基準値s2以上となれば、コントローラ40は、上述の
図4のステップS101,S106を経てステップS107に進み、電磁切換弁39を連通位置Vに保持する。これにより、フロート指令に相当するパイロット圧pを有効化して、ブレード用制御弁22をフロート位置IVに切換える。
【0068】
ブレード用制御弁22のフロート位置IVでは、ブレードシリンダ12のボトム側油室及びロッド側油室をタンクTへ連通させる。これにより、ブレード6は、フロート状態となる。このとき、ブレード6は、その自重によって降下し地面と接触する。そして、オペレータは操作装置35を操作して油圧ショベルを前進又は後進させると、ブレード6がフロート状態にあるため、地面に起伏があってもその起伏形状に追従させることができる。従って、良好な均し作業を行うことができる。
【0069】
その後、ブレード用操作装置34の操作レバーのストロークsが基準値s2未満となれば、コントローラ40は、上述の
図4のステップS108を経てステップS104に進み、電磁切換弁39を遮断位置VIに切換える。これにより、下げ指令に相当するパイロット圧pを無効化して、ブレード用制御弁22を中立位置Iに戻す。さらに、その後、ブレード用操作装置34の操作レバーを中立位置に戻すまでの間、コントローラ40は、電磁切換弁39を遮断位置VIに保持する。
【0070】
以上のように本実施形態では、車体のジャッキアップ状態である場合に、オペレータが誤操作しても(詳細には、ブレード用操作装置34を前側に操作してそのストロークsが基準値s2以上となっても)、フロート指令に相当するパイロット圧pを無効化して、ブレード用制御弁22を中立位置に戻す。すなわち、ブレード6をフロート状態にさせず、車体の降下を防止することができる。一方、車体のジャッキアップ状態でない場合に、オペレータがブレード用操作装置34を前側に操作してそのストロークsが基準値s2以上となれば、フロート指令に相当するパイロット圧pを有効化して、ブレード用制御弁22をフロート位置IVに切換える。すなわち、ブレードシリンダ12のボトム側油室及びロッド側油室をタンクTに連通させて、ブレード6をフロート状態にさせるので、良好な均し作業を行うことができる。
【0071】
また、本実施形態では、ブレード用操作装置34の操作レバーのストロークsが規定値s2以上であって車体のジャッキアップ状態にあることから、電磁切換弁39を遮断位置VIに切換えた場合に(すなわち、ブレード用制御弁22を中立位置Iに戻した場合に)、その後、ブレード用操作装置34の操作レバーのストロークsが規定値s2未満となっても、操作レバーが中立位置に戻るまでの間、電磁切換弁39を遮断位置VIに保持する。これにより、電磁切換弁39を遮断位置VIに保持しない場合とは異なり、ブレード用制御弁22の中立位置Iから下げ位置III(特に、操作レバーのストロークが大きければ、メータイン流路の開口面積及びメータアウトの開口面積が大きくなっている状態)への急な移行を防止して、急な動作を回避することができる。
【0072】
また、本実施形態では、ブレード用操作装置34の操作レバーのストロークsが規定値s2以上であって車体のジャッキアップ状態にないことから、電磁切換弁39を連通位置Vに保持した場合に(すなわち、ブレード用制御弁22をフロート位置IVに切換えた場合に)、その後、ブレード用操作装置34の操作レバーのストロークsが規定値s2未満となれば、電磁切換弁39を遮断位置VIに切換え、さらに、その後、操作レバーが中立位置に戻るまでの間、電磁切換弁39を遮断位置VIに保持する。これにより、電磁切換弁39を遮断位置VIに切換えない場合とは異なり、ブレード用制御弁22のフロート位置IVから下げ位置III(特に、操作レバーのストロークが大きければ、メータイン流路の開口面積及びメータアウトの開口面積が大きくなっている状態)への急な移行を防止して、急な動作を回避することができる。
【0073】
なお、上記一実施形態においては、ブレードシリンダ12のボトム側油室の圧力を検出する圧力センサ41を設け、この圧力センサ41で検出された圧力が予め設定された設定値以上であってその状態が予め設定された所定時間継続したか否かにより、ブレード6が車体をジャッキアップしている状態にあるか否かをコントローラ40が判定する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想の範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば、ブレードシリンダ12のロッド側油室の圧力を検出する圧力センサを設け、この圧力センサで検出された圧力が予め設定された設定値以下であってその状態が予め設定された所定時間継続したか否かにより、ブレード6が車体をジャッキアップしている状態にあるか否かをコントローラが判定してもよい。あるいは、例えば、ブレードシリンダ12のボトム側油室の圧力を検出する第1圧力センサと、ブレードシリンダ12のロッド側油室の圧力を検出する第2圧力センサとを設け、第1圧力センサで検出された圧力が予め設定された第1設定値以上であり且つ第2圧力センサで検出された圧力が予め設定された第2設定値(但し、第2設定値<第1設定値)以下であるか否かにより、ブレード6が車体をジャッキアップしている状態にあるか否かをコントローラが判定してもよい。これらの変形例においても、上記一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、上記一実施形態においては、ブレード用操作装置34が操作レバーのストロークに応じてパイロット圧を生成してブレード用制御弁22に出力するような構成を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、ブレード用操作装置34が操作レバーのストロークを検出してコントローラに出力し、コントローラが操作レバーのストロークに応じて制御信号を生成して電磁比例減圧弁に出力し、電磁比例減圧弁が制御信号に応じてパイロット圧を生成してブレード用制御弁に出力するような構成としてもよい。そして、上記一実施形態の電磁切換弁39に代えて、コントローラが制御信号を有効化又は無効化する処理を行うことにより、フロート指令及び下げ指令の有効化と無効化を切換えてもよい。このような変形例においても、上記一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、上記一実施形態においては、制御弁22〜29がオープンセンタ型であって、それらが中立位置にあるときに油圧ポンプP1,P2,P3からの圧油がタンクに戻されるような構成(オープンセンタシステム)を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、制御弁がクローズドセンタ型であって、それらが中立位置にあるときに油圧ポンプからの圧油がアンロード弁を介してタンクに戻されるような構成(ロードセンシング制御機能を備えたクローズドセンタシステム)であってもよい。
【0076】
また、上記一実施形態においては、メインポンプとして3つの油圧ポンプP1,P2,P3を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、少なくとも1つの油圧ポンプを備えていればよい。
【0077】
なお、以上においては、本発明を油圧ショベルに適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明を他の建設機械(詳細には、例えばホイールローダ等)に適用してもよい。