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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882235
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】産業用機械の制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/408 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   G05B19/408 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-136745(P2018-136745)
(22)【出願日】2018年7月20日
(65)【公開番号】特開2020-13458(P2020-13458A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年12月9日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】森嵜 和彦
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−334224(JP,A)
【文献】 特開平07−261818(JP,A)
【文献】 特開平06−019512(JP,A)
【文献】 特開2009−134568(JP,A)
【文献】 特開2018−085062(JP,A)
【文献】 特開平08−063211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 − 19/416
G05B 19/42 − 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置のデータと1つ以上の他装置内のデータとを整合させるための産業用機械の制御システムであって、
種別データの最上位分類である種別データ格納部の領域と、前記種別データ格納部の領域の下位分類である小区分データ種別格納部の領域と、これら各領域にデータ変更があったときにこれを識別するための識別子を示す識別子格納部とを含む変更データ識別用一覧を備えるとともに、
前記自装置に、前記変更データ識別用一覧を記憶する変更データ識別用一覧記憶部と、各種のデータを記憶する自装置側データ記憶部と、更新データ処理部とを備え、
前記他装置に、各種のデータを記憶する他装置側データ記憶部と、各種のデータを用いて所望の作業を行うための作業実行部とを備え、
前記変更データ識別用一覧は、種別データの最上位分類である種別データ格納部の分割情報を示す領域ごとに前記識別子格納部を設け、前記下位分類である小区分データ種別格納部の分割情報を示す領域ごとに前記識別子格納部を設けて構成されており、
前記更新データ処理部が、前記変更データ識別用一覧における前記種別データ格納部の各領域の前記識別子で当該領域のデータ変更の有無を確認し、データ変更があった領域についてだけ、更に当該領域の下位分類である小区分データ種別格納部の各領域の前記識別子で当該領域のデータ変更の有無を確認するとともに、変更があった領域のデータのみを前記他装置に送って、前記自装置と前記他装置のデータを整合させるように構成されている産業用機械の制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の産業用機械の制御システムにおいて、
1つの前記自装置と1つの前記他装置との1対1の接続環境である場合には、前記識別子として、データの初期状態と変更状態の2つの状態のどちらかを識別するためのフラグが用いられている産業用機械の制御システム。
【請求項3】
請求項1記載の産業用機械の制御システムにおいて、
1つの前記自装置と1つ又は複数の前記他装置との1対1又は1対複数の接続環境である場合には、前記識別子として、データが変更されるたびにインクリメントあるいはディクリメントされ、データの初期状態とデータの変更回数の変更状態を識別するためのカウンタが用いられている産業用機械の制御システム。
【請求項4】
請求項2記載の産業用機械の制御システムにおいて、
前記変更があった領域のデータを前記他装置に送ったときに前記フラグが前記初期状態にリセットされるように構成されている産業用機械の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、ロボット、PLC、搬送機、計測器、試験装置、プレス機、圧入器、印刷機、ダイカストマシン、射出成型機、食品機械、包装機、溶接機、洗浄機、塗装機、組立装置、実装機、木工機械、シーリング装置又は切断機などの産業用機械の制御システム及び制御方法に関し、特に、工作機械側のCNCとPC間や複数のCNC間などの装置間で、変更されたデータを整合させるための制御システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、機械工作の分野では、CNC(コンピュータ数値制御:Computerized Numerical Control)技術を適用し、工具の移動量や移動速度などをコンピュータで数値制御することにより、同一加工手順の繰り返し、複雑な形状の加工などを高度に自動化している。また、CADやCAMで作成したPC(Personal Computer)のデータをNC旋盤やマシニングセンタなどの工作機械側に取り込んで反映させ、設計から製造まで一貫した自動化を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−261818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、例えば、PC上でCNCの加工時間を予測したり、加工シミュレーションを行う場合には、予めPC側にCNCの各種データ、例えば、オプション、パラメータ、NCプログラム、マクロプログラム、マクロ変数、ワーク原点オフセット、工具オフセット、工具形状データ、工具管理データなどを転送して内容情報を一致/整合させておく必要がある。
【0005】
また、複数の工作機械があるときには、工作機械同士でCNCの各種データの内容を一致させたい場合がある。
【0006】
そして、一般に、PC側とCNC側の装置間のデータの内容を一致させたり、複数の工作機械側同士の装置同士のデータを一致させる際には、全ての種別のデータ(オプション、パラメータ、NCプログラム、マクロプログラム、マクロ変数、ワーク原点オフセット、工具オフセット、工具形状データ、工具管理データなど)を転送したり、変更があった種別のデータのみをオペレータが選んで転送して対応するようにしている。
【0007】
しかしながら、例えば、各種別データ領域はさらに複数の領域に分割されており、この場合には、あるタイミングから別なタイミングまでの間に、どの種別領域、さらにどの分割領域のデータ、さらに膨大なデータのどこに変更があったのかを知ることができない(迅速に知ることができない)。
【0008】
このため、CNC−PC間、あるいはCNC−CNC間で各種データの内容を一致させたい場合には、全ての種別のデータを転送すると、データ量が多いために分単位の時間が掛かり、処理に多大な時間と労力を要する。また、操作の流れ、すなわち、作業フローが途切れるため、操作性、ひいては生産性の低下を招くことになる。
【0009】
ここで、変更があった種別のデータのみをオペレータが選んで転送することで処理時間を短縮でき得るが、どの種別のデータに変更があったかはオペレータが自分で記憶しておくか、あるいは目視で確認する必要があるため、作業時の負担増加が問題となる。
【0010】
さらに、変更があった種別のデータのみを選んだとしても、そのデータ内の変更箇所だけを転送することはできないため、やはり、種別によっては数十秒単位の時間が掛かり、処理時間が増加することになる。
【0011】
なお、特許文献1に記載の発明は、PC側で設計/変更した図面データをNC工作機械に転送するものであるため、NC工作機械側のデータをPC側に反映させることはできず、また、複数の工作機械のデータ同士の整合を図ることもできない。このため、やはり上記の不都合を解消することはできない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、産業用機械の装置間で各種データの内容情報を、効率的且つ効果的に整合、一致させることができ、従来と比較し、処理時間の短縮、操作性、生産性の向上、作業時の負担軽減を図ることを可能にする産業用機械の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、例えば、CNC−PC間やCNC−CNC間で各種データの内容情報を整合、一致させたい場合に、変更があったデータの種別、変更箇所を自動で判別できる手法を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0014】
(1)本発明は、自装置のデータと1つ以上の他装置内のデータとを整合させるための産業用機械の制御システムであって、種別データの最上位分類である種別データ格納部の領域と、前記種別データ格納部の領域の下位分類である小区分データ種別格納部の領域と、前記種別データ格納部と前記小区分データ種別格納部の領域のうち、少なくとも前記小区分データ種別格納部のそれぞれの領域に対応し、これら各領域にデータ変更があったときにこれを識別するための識別子を示す識別子格納部とを含む変更データ識別用一覧を備えるとともに、前記自装置に、前記変更データ識別用一覧を記憶する変更データ識別用一覧記憶部と、各種のデータを記憶する自装置側データ記憶部と、更新データ処理部とを備え、前記他装置に、各種のデータを記憶する他装置側データ記憶部と、各種のデータを用いて所望の作業を行うための作業実行部とを備え、前記更新データ処理部が、前記変更データ識別用一覧の前記識別子で前記領域のデータ変更の有無を確認するとともに、変更があった領域のデータのみを前記他装置に送って、前記自装置と前記他装置のデータを整合させるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
(2)本発明は、(1)の産業用機械の制御システムにおいて、1つの前記自装置と1つの前記他装置との1対1の接続環境である場合には、前記識別子として、データの初期状態と変更状態の2つの状態のどちらかを識別するためのフラグが用いられていてもよい。
【0016】
(3)本発明は、(1)の産業用機械の制御システムにおいて、1つの前記自装置と1つ又は複数の前記他装置との1対1又は1対複数の接続環境である場合には、前記識別子として、データが変更されるたびにインクリメントあるいはディクリメントされ、データの初期状態とデータの変更回数の変更状態を識別するためのカウンタが用いられていてもよい。
【0017】
(4)本発明は、(2)の産業用機械の制御システムにおいて、前記変更があった領域のデータを前記他装置に送ったときに前記フラグが前記初期状態にリセットされるように構成されていてもよい。
【0018】
(5)本発明は、(1)から(4)のいずれかの産業用機械の制御システムにおいて、前記変更データ識別用一覧は、種別データの最上位分類である種別データ格納部の分割情報を示す領域ごとに前記識別子格納部を設け、前記下位分類である小区分データ種別格納部の分割情報を示す領域ごとに前記識別子格納部を設けて構成されていてもよい。
【0019】
(1)から(5)の発明においては、産業用機械の装置間で各種データの内容情報を一致させたい場合に、変更があったデータ種別など、変更があったデータ領域を識別子によって容易に且つ自動で判別でき、その変更があったデータ領域を装置間で転送することにより、効率的に装置間の内容情報を整合することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来と比較し、データ更新に係る処理時間(や変更データの抽出などに係る処理時間)を大幅に短縮でき、これに伴って操作性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る産業用機械の制御システム及び産業用機械の制御方法で用いる「変更データ識別用一覧」を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る産業用機械の制御システムを示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る産業用機械の制御システム及び産業用機械の制御方法で用いる「変更データ識別用一覧」を示す図であり、(A)がフラグを「0」にリセットされた初期状態、(B)がデータに変更があった箇所のフラグを「1」にセットされた状態を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る産業用機械の制御方法を示す図であり、(A)がフラグを「0」にリセットすることを示すフロー図、(B)がデータに変更があった箇所のフラグを「1」にセットすることを示すフロー図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る産業用機械の制御方法を示すフロー図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る産業用機械の制御システム及び産業用機械の制御方法で用いる「変更データ識別用一覧」を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る産業用機械の制御システムを示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る産業用機械の制御システム及び産業用機械の制御方法で用いる「変更データ識別用一覧」を示す図であり、(A)が更新前のカウンタの状態、(B)がデータに変更があった箇所のカウンタが更新(インクリメント)された現在の状態を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る産業用機械の制御方法を示す図であり、(A)がカウンタを「0」にリセットすることを示すフロー図、(B)がデータに変更があった箇所のカウンタの更新(インクリメント)することを示すフロー図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る産業用機械の制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1から図5を参照し、本発明の第1実施形態に係る産業用機械の制御システムについて説明する。
【0023】
ここで、本実施形態では、1台の工作機械側のCNCと1台のPCの間の1対1の装置間で変更データを転送して整合、一致させる場合を例に挙げて説明を行う。なお、本実施形態では、本発明に係る産業用機械が工作機械(自装置が工作機械、他装置がPC)であるものとして説明を行うが、勿論、本発明は、他の産業用機械にも適用可能である。
【0024】
本実施形態の産業用機械の制御システムAは、「フラグ方式」の制御システム及び方法であり、図1及び図2に示すように、CNC1内に、例えば、オプション、パラメータ、NCプログラム、マクロプログラム、マクロ変数、ワーク原点オフセット、工具オフセット、工具形状データ、工具管理データなどの種別のデータに関する最上位分類10の領域(種別データ格納部10の領域(分割情報)10a、10b、10c・・・)と、最上位分類10の各種別のデータの領域10a、10b、10c・・・をさらに細分化するなどした下位分類11のデータ種別の領域(小区分データ種別格納部11の領域(分割情報)11a、11b、11c、11d、11e・・・)とを備え、さらに、各最上位分類10の種別のデータの領域と各下位分類11のデータの領域のそれぞれに対し、変更があったときにそれを識別するフラグ(識別子)を格納する領域(識別子格納部12)とを備えた「変更データ識別用一覧」13を使用する。
【0025】
言い換えれば、本実施形態の産業用機械の制御システムAにおいては、最上位分類10の領域、下位分類11の領域として種別、データを階層化し、各階層の全ての種別、データに対してそれぞれ、変更の有無を示す識別子を設けて「変更データ識別用一覧」13が構成されている。なお、下位分類11の領域をさらに細分化し、複数の下位分類11を備えて(多階層化して)「変更データ識別用一覧」13が構成されていてもよい。
【0026】
ここで、本発明に係る「フラグ」とは、データの初期状態と変更状態の2つの状態のどちらかを表し、これらの状態を判断するための識別子である。本実施形態では、識別子の「フラグ」が、データの初期状態(変更がなされていない状態)を「0」、データの変更状態(変更された状態)を「1」で表すものとして説明を行う。
なお、識別子の「フラグ」は2つの状態を識別可能に表すことができれば、「○と×」、「甲と乙」などであってもよく、特に限定を必要としない。
【0027】
ここで、本実施形態の産業用機械の制御システムAは、図2に示すように、自装置である工作機械のCNC1に、「変更データ識別用一覧」13を記憶する変更データ識別用一覧記憶部3と、各種データを記憶する各種データ記憶部(自装置側データ記憶部)4と、フラグ初期処理、フラグ設定処理、フラグ確認処理、データ転送処理などを行うための更新データ処理部5とを備えている。
【0028】
さらに、工作機械に連関して工作機械による加工時間予測や加工シミュレーションなどの所望の作業を行うためのPC2に、各種データを記憶する各種データ記憶部(他装置側データ記憶部)6と、各種データおよび加工時間予測ソフトや加工シミュレーションソフトなどのアプリケーションプログラムを用いて所望の作業を行うための作業実行部7とを備えている。
【0029】
上記構成からなる本実施形態の産業用機械の制御システムAを用いて工作機械のCNC1とPC2を制御する際には、図3(A)及び図4(A)に示すように、まず、CNC/工作機械の電源をオンにしたときに、「変更データ識別用一覧」13の最上位分類10領域の各データ種別のフラグ(データ種別ごとのフラグ、種別データ格納部10の識別子格納部12)、さらに、最上位分類10の領域に対して下位分類11の各データ種別の領域のフラグ(変更箇所ごとのフラグ、小区分データ種別格納部11の識別子格納部12)の各階層の全てのフラグを「初期値=0」にクリアする(Step1)。
【0030】
図3(B)及び図4(B)に示すように、CNC1のデータが変更された場合には、変更したデータが該当する「変更箇所ごとのフラグ(小区分データ種別格納部11の識別子格納部12)」、さらに、変更したデータが該当する「データ種別ごとのフラグ(種別データ格納部10の識別子格納部12)」のフラグを「1」にセットする(Step2、Step3)。
【0031】
そして、変更されたCNC側のデータと、PC側のデータとを整合/一致させる際には、図2及び図5に示すように、CNC1の変更データ識別用一覧記憶部3から「変更データ識別用一覧」13を読み出し、最上位分類10の領域10a、10b、10c・・・のデータ種別ごとに、「データ種別ごとのフラグ(種別データ格納部10ごとの識別子格納部12のフラグ)」が「1」となっているか否かを確認する。
【0032】
このデータ種別ごとのフラグが「0」の(「1」となっていない)場合には、次のデータ種別に対して、データ種別ごとのフラグが「1」となっているか否かを確認する(Step4、Step5)。
【0033】
データ種別ごとのフラグが「1」となっている場合には、下位分類11の領域11a、11b、11c、11d、11e・・・の変更箇所ごとのフラグ(小区分データ種別格納部11ごとの識別子格納部12のフラグ)が「1」となっているか否かを確認する(Step6、Step7)。
【0034】
変更箇所ごとのフラグが「0」の(「1」となっていない)場合には、同領域の次の変更箇所(識別子格納部)のフラグが「1」となっているか否かを確認する(Step8)。
【0035】
変更箇所ごとのフラグが「1」となっている場合には、この変更箇所ごとのフラグが「1」となっている変更箇所(小区分データ種別格納部11に該当する部分)の変更データをPC2側の各種データ記憶部6に転送する(Step9)。また、フラグが「1」となっている箇所(領域)のデータを転送した後、その箇所のフラグを初期状態の「0」にリセットする(Step10)。この後、他の変更箇所ごとのフラグの確認を再開する(Step8)。
【0036】
そして、データを転送した種別のフラグを「0」にリセットして(Step11)、次のデータ種別に対して上記と同様のフラグの確認操作、データ転送を行う(Step12)。
【0037】
この操作をすべてのデータ種別に対して行えば、CNC1側とPC2側とがともに同一の変更データを持つことになり、装置間のデータの整合をとることが可能になる。
【0038】
例えば、本実施形態のようにCNC1に1台のPC2が接続されている場合には、変更があったデータの種別と変更箇所を、上記の「フラグ方式」で判別し、変更箇所のデータ(領域)をPC2に転送する。これにより、PC2で、アプリケーションソフトを使用し、変更したデータを反映させて加工時間予測や、加工シミュレーションなどを行うことが可能になる。
【0039】
したがって、本実施形態の産業用機械の制御システムAにおいては、フラグを確認するだけで、変更があったデータ種別と変更箇所を容易に判別することが可能になる。
【0040】
よって、本実施形態の産業用機械の制御システムAによれば、例えばCNC−PC間、あるいはCNC−CNC間で各種データの内容情報を整合/一致させたい場合に、変更があったデータ種別を自動で判別でき、その種別のデータ領域のみを転送することで処理時間を短縮できる。また、それに伴って操作性ひいては生産性の向上を図ることが可能になる。
【0041】
また、変更があったデータ種別を提示/抽出できるので、転送するデータの種別をオペレータが選ぶ際に記憶や目視確認に頼る必要が無くなり、作業時の負担を軽減することも可能になる。
【0042】
さらに、データ内の変更箇所を自動で判別できるので、データ転送の処理時間を短縮することができる。
【0043】
以上、本発明に係る産業用機械の制御システムの第1実施形態について説明したが、本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0044】
次に、図6から図10を参照し、本発明の第2実施形態に係る産業用機械の制御システムについて説明する。
【0045】
ここで、本実施形態では、1台のCNCと2台のPCの間の1対2(複数)の装置間で変更データを転送して整合、一致させる場合を例に挙げて説明を行う。なお、本実施形態では、本発明に係る産業用機械が工作機械(自装置が工作機械、複数の他装置がPC)であるものとして説明を行うが、勿論、本発明は、他の産業用機械にも適用可能である。また、本実施形態では、第1実施形態と同様の構成に対して同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
本実施形態の産業用機械の制御システムBは、「カウンタ方式」の制御システム及び方法であり、図6及び図7に示すように、CNC1内に種別のデータに関する最上位分類10の領域(種別データ格納部10の領域10a、10b、10c・・・)と、最上位分類10の各種別のデータの領域をさらに細分化するなどした下位分類11のデータ種別の領域(小区分データ種別格納部11の領域11a、11b、11c、11d、11e・・・)と、各最上位分類10の種別のデータの領域と各下位分類11のデータの領域のそれぞれに対し、変更があったときにそれを識別するカウンタ(識別子)を格納する領域(識別子格納部12)とを備えた「変更データ識別用一覧」14を使用する。
【0047】
言い換えれば、本実施形態の産業用機械の制御システムBにおいては、第1実施形態と同様、最上位分類10の領域、下位分類11の領域として種別、データを階層化し、各階層の全ての種別、データに対してそれぞれ、変更の有無を示す識別子を設けて「変更データ識別用一覧」14が構成されている。なお、第1実施形態と同様、下位分類11の領域をさらに細分化し、複数の下位分類領域を備えて(多階層化して)「変更データ識別用一覧」14が構成されていてもよい。
【0048】
ここで、本実施形態の産業用機械の制御システムBは、図7に示すように、自装置である工作機械のCNC1に、「変更データ識別用一覧」14を記憶する(現在のカウンタを記憶する)変更データ識別用一覧記憶部15と、各種データを記憶する各種データ記憶部(自装置側データ記憶部)4と、カウンタ初期処理、カウンタ設定処理、カウンタ確認処理、データ転送処理などを行うための更新データ処理部16とを備えている。
【0049】
さらに、本実施形態の産業用機械の制御システムBにおいては、所望の作業を行うための複数のPC2にそれぞれ、各種データを記憶する各種データ記憶部(他装置側データ記憶部)6と、各種データおよび加工時間予測ソフトや加工シミュレーションソフトなどのアプリケーションプログラムを用いて所望の作業を行うための作業実行部7と、更新前の「変更データ識別用一覧」14を記憶する(変更前のカウンタを記憶する)更新前カウンタ記憶部17とを備えている。
【0050】
上記構成からなる本実施形態の産業用機械の制御システムBを用いて工作機械のCNC1と複数のPC2を制御する際には、図9(A)に示すように、まず、CNC/工作機械の電源をオンにしたときに、「変更データ識別用一覧」14の最上位分類10の領域の各データ種別のカウンタ(データ種別ごとのカウンタ、種別データ格納部10の識別子格納部12)、さらに、下位分類11の各データ種別の領域のカウンタ(変更箇所ごとのカウンタ、小区分データ種別格納部11の識別子格納部12)の各階層の全てのカウンタを「初期値=0」にクリアする(Step1)。
【0051】
図8(B)及び図9(B)に示すように、CNC1のデータが変更された場合には、変更したデータが該当する「変更箇所ごとのカウンタ(小区分データ種別格納部11の識別子格納部12)」、さらに、変更したデータが該当する「データ種別ごとのカウンタ(種別データ格納部10の識別子格納部12)」のカウンタを+1(インクリメント:増数)して変更回数を示す/記録する(Step2、Step3)。なお、カウンタは、数をあらかじめ設定し、データを変更した際に−1(ディクリメント:減数)して変更回数を示すようにしてもよい。
【0052】
そして、変更されたCNC1側のデータと、PC2側のデータとを整合/一致させる際には、図7及び図10に示すように、CNC1の変更データ識別用一覧記憶部15から現在の「変更データ識別用一覧」14を読み出すとともに、各PC2側の更新前カウンタ記憶部17から更新前の「変更データ識別用一覧」14を読み出し、これら現在の「変更データ識別用一覧」14と更新前の「変更データ識別用一覧」14のそれぞれ対応する種別カウンタの値の差分を求める(カウンタを比較する:Step5、Step6)。すなわち、それぞれのカウンタの値が異なっているか否かを比較して確認する。
【0053】
本実施形態において、現在の「変更データ識別用一覧」14と更新前の「変更データ識別用一覧」14のそれぞれ対応する種別カウンタの値の差分を求めた際に、差分が「0」である場合には、その領域のデータに変更がなく、差分が「1」の場合には、その領域のデータに1回、「2」の場合にはその領域のデータに2回、変更がなされたことが分かる。
【0054】
このデータ種別ごとのカウンタの差分が「0」の場合には、次のデータ種別に対して、データ種別ごとのカウンタに差分があるか否かを確認する(Step7)。
【0055】
一方、差分が「1以上」となっている場合には、下位分類11の領域11a、11b、11c、11d、11e・・・の変更箇所ごとのカウンタ(小区分データ種別格納部11ごとの識別子格納部12のカウンタ)の差分が「1以上」となっているか否かを確認する(Step8、Step9)。
【0056】
変更箇所ごとのカウンタの差分が「0」の場合には、同領域の次の変更箇所(識別子格納部12)のカウンタの差分が「1以上」となっているか否かを確認する(Step10)。
【0057】
変更箇所ごとのカウンタの差分が「1以上」となっている場合には、この変更箇所ごとの変更箇所(小区分データ種別格納部11に該当する部分)の変更データをPC2側の各種データ記憶部6に転送する(Step11)。
【0058】
順次の変更箇所のカウンタの確認、データ種別のカウンタの確認を行い、上記の操作を繰り返してゆく。
【0059】
そして、種別カウンタが異なっていて変更がなされていると確認できた場合には、そのデータ種別の変更箇所のデータを転送して複数のPC2の変更前の「変更データ識別用一覧」14を更新/上書きして保存する。なお、カウンタが変更されていなかった場合でもカウンタ比較を行った履歴を残すため、すべてのカウンタ比較作業が完了した段階でCNC1側からデータを転送し、複数のPC2の変更前の「変更データ識別用一覧」14を更新/上書きして保存することが好ましい。
【0060】
この操作をすべてのデータ種別に対して行えば、CNC1側と複数のPC2側とがともに同一の変更データを持つことになる。
【0061】
したがって、本実施形態の産業用機械の制御システムBにおいては、現在のカウンタ一式を取得して保存済みの変更前のカウンタと比較することで、変更があったデータ種別と変更箇所を容易に判別することが可能になる。
【0062】
よって、本実施形態の産業用機械の制御システムBによれば、例えばCNC−複数のPC間、あるいはCNC−複数のCNCやPC間で各種データの内容情報を整合/一致させたい場合に、変更があったデータ種別を自動で判別でき、その種別のデータ領域のみを転送することで処理時間を短縮できる。また、それに伴って操作性ひいては生産性の向上を図ることが可能になる。
【0063】
また、変更があったデータ種別を提示/抽出できるので、転送するデータの種別をオペレータが選ぶ際に記憶や目視確認に頼る必要が無くなり、作業時の負担を軽減することも可能になる。
【0064】
さらに、データ内の変更箇所を自動で判別できるので、データ転送の処理時間を短縮することができる。
【0065】
以上、本発明に係る産業用機械の制御システムの第2実施形態について説明したが、本発明は上記の第2実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態の変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0066】
例えば、本実施形態のカウンタ方式の制御システム、制御方法は、第1実施形態と同様に1対1の装置間で変更データを転送して整合、一致させる場合にも適用可能である。また、CNCと、複数のCNCやPC間のデータを整合、一致させる場合に適用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 CNC(自装置)
2 PC(他装置)
3 変更データ識別用一覧記憶部
4 各種データ記憶部(自装置側データ記憶部)
5 更新データ処理部
6 各種データ記憶部(他装置側データ記憶部)
7 作業実行部
10 最上位分類
10a〜10c 最上位分類の領域
11 下位分類
11a〜11e 下位分類の領域
12 識別子格納部
13 変更データ識別用一覧
14 変更データ識別用一覧
15 変更データ識別用一覧記憶部
16 更新データ処理部
17 更新前カウンタ記憶部
A 産業用機械の制御システム
B 産業用機械の制御システム
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10