特許第6882272号(P6882272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882272
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】動力車両用の流体力学的トルク連結装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 45/02 20060101AFI20210524BHJP
   F16F 15/133 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   F16H45/02 Y
   F16F15/133 A
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-516705(P2018-516705)
(86)(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公表番号】特表2018-529904(P2018-529904A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】EP2016073486
(87)【国際公開番号】WO2017055590
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年9月19日
(31)【優先権主張番号】14/873,303
(32)【優先日】2015年10月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503041177
【氏名又は名称】ヴァレオ アンブラヤージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル、デプラエテ
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−520737(JP,A)
【文献】 特開2000−130554(JP,A)
【文献】 特開2008−138879(JP,A)
【文献】 特開2013−036587(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0078522(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 45/02
F16F 15/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力車両用の流体力学的トルク連結装置であって、
− クランクシャフト(1)に連結されることを意図されたトルク入力要素(11)と、
− 前記トルク入力要素(11)に回転で連結されるインペラーホイール(3)と、
− タービンホイール(4)であって、前記インペラーホイールが前記タービンホイール(4)を流体力学的に駆動するように適合されたタービンホイール(4)と、
− トランスミッション入力シャフト(2)に連結されることを意図されたトルク出力要素(8)と、
− 減衰手段(21、25)と、
− 減衰手段(21、25)を介して係合位置で前記トルク入力要素(11)及び前記トルク出力要素(8)を回転で連結し、係合解除位置で前記トルク入力要素(11)及び前記トルク出力要素(8)を回転で連結解除することができるように適合されたクラッチ手段(10)と、を備え、前記減衰手段(21、25)は、前記クラッチ手段(10)の係合位置において前記トルク出力要素(8)に対する前記トルク入力要素(11)の回転に逆らって作用するように適合され、前記減衰手段(21、25)は、前記トルク出力要素(8)又は前記クラッチ手段(10)のそれぞれと一緒に回転する少なくとも1つの弾性ブレード(25)を具備し、支持部材(21)が前記クラッチ手段(10)又は前記トルク出力要素(8)のそれぞれによって支持され、前記ブレード(25)は、前記支持部材(21)によって弾性的に維持されて支持され、前記弾性ブレード(25)は、係合位置において前記トルク出力要素(8)に対する前記トルク入力要素(11)の回転の際に曲がるように適合され、前記トルクコンバーターは、前記トルク出力要素(8)と一緒に回転する少なくとも1つの半径方向内側フランジ(17)と、前記内側フランジ(17)の周りで旋回して前記内側フランジ(17)の周りで回転するように案内されるように設けられる少なくとも1つの半径方向外側フランジ(19)とを更に備え、前記弾性ブレード(25)は前記内側フランジ(17)、前記外側フランジ(19)のそれぞれと一緒に回転し、前記支持部材(21)は前記外側フランジ(19)、前記内側フランジ(17)のそれぞれに対して接続される流体力学的トルク連結装置。
【請求項2】
前記トルク出力要素(8)と一緒に回転する2つの半径方向内側フランジ(17)と、前記内側フランジ(17)の周りを旋回して前記内側フランジ(17)の周りを回転するように案内されるように設けられる2つの半径方向外側フランジ(19)とを備え、前記弾性ブレード(25)は前記内側フランジ(17)間及び/又は前記外側フランジ(19)間に軸方向に設けられるスペースに設けられ、前記支持部材(21)は、前記外側フランジ(19)、前記内側フランジ(17)のそれぞれの間に軸方向に設けられるスペースに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流体力学的トルク連結装置。
【請求項3】
前記内側フランジ(17)及び前記外側フランジ(19)は、ベアリングを形成するように互いに当接するように適合された同心の円筒状の案内リム(18、20)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の流体力学的トルク連結装置。
【請求項4】
前記外側フランジ(19)は、例えばボールベアリング(36)などの転がり軸受を介し、前記内側フランジ(17)の周りを旋回するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体力学的トルク連結装置。
【請求項5】
各内側フランジ(17)は、前記外側フランジ(19)に対して内側に全体的に配置され、各外側フランジ(19)は、前記内側フランジ(17)に対して内側に全体的に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の流体力学的トルク連結装置。
【請求項6】
前記タービンホイール(4)は、前記トルク出力要素(8)に対して及び前記内側フランジ(17)に対して回転で連結されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の流体力学的トルク連結装置。
【請求項7】
前記クラッチ手段(10)は、前記外側フランジ(19)に回転で連結される少なくとも1つのピストン(27)を具備し、前記ピストン(27)は、それが前記トルク入力要素(11)に回転で連結される係合位置と、それが前記トルク入力要素(11)から回転で連結解除される係合解除位置との間で移動することができることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の流体力学的トルク連結装置。
【請求項8】
前記外側フランジ(19)、前記ピストン(27)のそれぞれに対して接続された少なくとも1つの突出部(32)であって、前記ピストン(27)、前記外側フランジ(19)のそれぞれに接続される少なくとも1つの凹部(32)とぴったり合った態様で協働する少なくとも1つの突出部(32)を介し、前記外側フランジ(19)は前記ピストン(27)に接続され、前記突出部及び凹部(31、32)は、前記ピストン(27)及び前記外側フランジ(19)の回転連結を確保しつつ、前記外側フランジ(19)に対する前記ピストン(27)の軸方向動作を可能にすることを特徴とする請求項7に記載の流体力学的トルク連結装置。
【請求項9】
前記外側フランジ(19)は、前記軸方向に弾性的に変形可能な少なくとも1つの部材(33)を介して前記ピストン(27)に接続され、前記ピストン(27)の及び前記外側フランジ(19)の回転連結を提供しつつ、前記外側フランジ(19)に対する前記ピストン(27)の軸方向動作を可能にすることを特徴とする請求項7に記載の流体力学的トルク連結装置。
【請求項10】
前記外側フランジ(19)の半径方向内周部は少なくとも1つのラグ(35)を具備し、前記軸方向に弾性的に変形可能な前記部材(33)は、前記ラグ(35)上に固定されることを特徴とする請求項9に記載の流体力学的トルク連結装置。
【請求項11】
前記トルク出力要素は、中央ハブ(8)を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の流体力学的トルク連結装置。
【請求項12】
リアクター(5)を備え、前記インペラーホイール(3)が前記リアクター(5)を介して前記タービンホイール(4)を流体力学的に駆動することができることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の流体力学的トルク連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトルクコンバーターなどの動力車両用の流体力学的トルク連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の流体力学的トルクコンバーターは、図1に概略的かつ部分的に示されており、例えばクランクシャフト1のような動力車両における内燃機関の出力シャフトから、トランスミッション入力シャフト2にトルクを伝達することを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トルクコンバーターは、従来、インペラーホイール3を備え、当該インペラーホイール3は、リアクター5を介してタービンホイール4を流体力学的に駆動することができる。
【0004】
インペラーホイール3はクランクシャフト1に連結され、タービンホイール4は案内ワッシャ6に連結される。
【0005】
圧縮ばねタイプの第1のグループの弾性部材7a、7bが、トランスミッション入力シャフト2に連結された中央ハブ8と案内ワッシャ6との間に設けられている。第1のグループの弾性部材7a、7bは位相整合部材9を介して直列に配置され、前記位相整合部材9が前記案内ワッシャ6に対して及び前記ハブ8に対して相対的に移動可能となっており、前記弾性部材7a、7bは互いに同調して変形される。
【0006】
第2のグループの弾性部材7cは、案内ワッシャ6と中央ハブ8との間において第1のグループの弾性部材7a、7bと平行にいくらかの間隙とともに設けられつつ、弾性部材7cは、限られた角度範囲において、とりわけ中央ハブ8に対する案内ワッシャ6の角度移動の終わりにおいて、アクティブであるように適合される。ハブ8に対する案内ワッシャ6の角度移動又はαで言及される角度シフトは、上記弾性部材7a、7bによって形成される減衰手段を介してトルクが伝達されない休止位置(α=0)に対して定められる。
【0007】
トルクコンバーターは更に、インペラーホイール3及びタービンホイール4から何の作用もなしに、クランクシャフト1から案内ワッシャ6に所定の動作フェーズでトルクを伝達するように適合されたクラッチ手段10を備える。
【0008】
第2グループの弾性部材7cは、角度運動の終わりにおいて、すなわちハブ8に対する案内ワッシャ6のかなりの角度オフセット(又はその逆)に関し、減衰手段の剛性を高めることを可能にする。
【0009】
角度シフトαに応じて装置を介して伝達されるMトルクを定める関数M=f(α)の表現が、(角度シフトαの小さい値に関して)傾きの第1の直線部Kaと、(角度シフトαの大きい値に関して)傾きのより重要な第2の直線部Kbと、を含むことが分かる。Ka及びKbは、それぞれ角度移動の始まり及び終わりにおける装置の角度剛性である。K1が第1のグループの各ペアの第1のバネの累積された剛性を定め、K2が第1のグループの各ペアの第2のバネの累積された剛性を定め、K3が第2のグループのバネの累積された剛性を定める場合、Ka=(K1.K2)/(K1+K2)となり、Kb=Ka+K3となる。
【0010】
曲線の第1の部分と第2の部分との間の傾きの変わり目は、減衰手段を用いて得られるフィルタリング(filtration)の質に影響を及ぼしうるトルクコンバーターの作動の際の振動及び顕著なヒステリシスを生成しうる。
【0011】
本発明は、とりわけ、この問題に対するシンプル、効率的及び費用効果の高い解決を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、それは動力車両用の流体力学的トルク連結装置を提供し、当該流体力学的トルク連結装置は、以下を備える。
− クランクシャフトに連結されることが意図されたトルク入力要素、
− トルク入力要素に回転可能に連結されたインペラーホイール、
− インペラーホイールがタービンホイールを流体力学的に駆動するように適合されたタービンホイール、
− トランスミッション入力シャフトに連結されることが意図されたトルク出力要素、
− 減衰手段、
− トルク入力要素及びトルク出力要素を係合位置において減衰手段を介して回転で連結し、トルク入力要素及びトルク出力要素を係合解除位置において回転で連結解除することができるように適合されたクラッチ手段であって、減衰手段は、クラッチ手段の係合位置においてトルク出力要素に対するトルク入力要素の回転に抗するように作用するように適合され、減衰手段は、トルク出力要素又はクラッチ手段とともにそれぞれ回転する少なくとも1つの弾性ブレードを含み、支持部材がクラッチ手段又はトルク出力要素のそれぞれによって支持され、ブレードが前記支持部材によって弾性的に維持されて支持され、前記弾性ブレードは、係合位置においてトルク出力要素に対するトルク入力要素の回転時に曲がるように適合され、流体力学的トルク連結装置は、トルク出力要素とともに回転する少なくとも1つの半径方向内側フランジと、前記内側フランジの周りにおいて旋回するように設けられ前記内側フランジの周りで回転するように案内される少なくとも1つの半径方向外側フランジと、を更に備え、弾性ブレードは、内側フランジ、外側フランジのそれぞれとともに回転し、支持部材は、外側フランジ、内側フランジのそれぞれに接続されている。
【0013】
そのような減衰手段は、傾きを崩すことなく、特徴的な漸進的な曲線を与える。したがって、本発明は、作動時に発生する振動を低減することを可能にし、高品質のフィルタリングを提供する。
【0014】
また、そのような流体力学的トルク連結装置は、取り付けが容易で、ある程度安価である。
【0015】
「半径」及び「軸」という用語は、流体力学的トルク連結装置に対して定められ、それはタービンホイールの又はインペラーホイールの回転軸であることに留意されたい。
【0016】
流体力学的トルク連結手段は、流体力学的トルク連結手段がインペラーホイール、タービンホイール及びリアクターを備える場合にはトルクコンバーターであってもよいし、流体力学的トルク連結手段がリアクターを有していない場合には流体力学的連結装置であってもよい。
【0017】
インペラーホイールは、例えば、リアクターを介し、タービンホイールを流体力学的に駆動するように適合されている。
【0018】
流体力学的トルク連結装置は、トルク出力要素とともに回転する2つの半径方向内側フランジと、前記内側フランジの周りを旋回するように設けられ前記内側フランジの周りを回転するように案内される2つの半径方向外側フランジとを含み、弾性ブレードは、内側フランジ間及び/又は外側フランジ間において軸方向に設けられたスペースに設けられ、支持部材は、外側フランジ、内側フランジのそれぞれの間に軸方向に設けられたスペースに設けられてもよい。
【0019】
2つの内側フランジ及び2つの外側フランジの存在は、内側フランジの周りの外側フランジの案内を容易にすること、作動中の半径方向応力をより良く引き継ぐこと、又は依然として弾性ブレード及び支持部材を、片持ちの取り付けを避けるように、対向するフランジの各々に固定することができることを可能にする。
【0020】
更に、内側フランジ及び外側フランジは、ベアリングを形成するように互いに当接するように適合された同心の円筒状の案内リムを備えてもよい。
【0021】
代替の実施形態として、外側フランジは、例えば、ボールベアリングなどの転がり軸受を介して内側フランジの周りを旋回するように設けられてもよい。
【0022】
各内側フランジは、外側フランジに対して内側に全体的に配置され、各外側フランジは、内側フランジに対して内側に全体的に配置されてもよい。換言すれば、内側フランジ及び外側フランジは、全体的に重なり合うゾーンを有しない。
【0023】
更に、タービンホイールは、トルク出力要素に及び内側フランジに回転で連結されてもよい。
【0024】
更に、クラッチ手段は、外側フランジに回転で連結された少なくとも1つのピストンを備え、ピストンは、それがトルク入力要素に回転で連結される係合位置と、それがトルク入力要素から回転で連結解除される係合解除位置との間で移動可能であってもよい。
【0025】
そしてピストンは、流体力学的トルク連結装置の他の要素とは独立して、軸方向に移動することができる。
【0026】
この場合、外側フランジは、外側フランジ、ピストンのそれぞれに接続されぴったり合った態様で協働する少なくとも1つの突出部を介してピストンに回転で連結され、少なくとも1つの凹部は、ピストン、外側フランジのそれぞれに接続され、突出部及び凹部は、ピストン及び外側フランジの回転連結を保証しつつ、外側フランジに対してピストンの軸方向運動を可能にしてもよい。
【0027】
代替の実施形態として、外側フランジは、軸方向に弾性的に変形可能な少なくとも一つの部材を介してピストンに接続され、ピストンの及び外側フランジの回転連結を提供しつつ、外側フランジに対するピストンの軸方向運動を可能にしてもよい。
【0028】
外側フランジの半径方向の内側の周縁部は少なくとも1つのラグを含み、軸方向に弾性的に変形可能な部材が前記ラグに固定されてもよい。
【0029】
更に、トルク出力要素は、中央ハブを備えていてもよい。タービンホイール及び/又は減衰手段は、それに直接的に接続されてもよい。
【0030】
更に、流体力学的トルク連結装置はリアクターを備え、インペラーホイールがリアクターを介してタービンホイールを流体力学的に駆動するように適合されてもよい。したがって流体力学的トルク連結装置は、流体力学的トルクコンバーターを形成する。
【0031】
流体力学的トルク連結装置は、以下の特徴の1つ以上を含んでいてもよい。
− 支持部材は、例えば、ニードルベアリングなどの転がり軸受を介して、例えば、軸の周りを旋回するように設けられたローラーなどの、少なくとも1つの回転体を含む。
− 支持部材は、外側フランジの半径方向外周に取り付けられ、
− インペラーホイールはカバーに回転で連結され、インペラーホイール、タービンホイール及び/又は減衰手段は少なくとも部分的に収容される。
− トルク入力要素は前記カバーを備え、
− 弾性ブレードは、係合位置において、休止位置とは異なるトルク出力要素とトルク入力要素との間で相対的な角度位置において、支持部材が弾性ブレードに曲げ応力を作用させて支持部材に弾性ブレードの交差反応力をもたらすように設計され、そのような反応力は、トルク入力要素及びトルク出力要素を相対休止位置に向けて後退させる傾向がある周方向成分を有する。
− 弾性ブレードは、係合位置において、休止位置とは異なるトルク出力要素とトルク入力要素との間の相対的な角度位置において、支持部材が弾性ブレードに曲げ応力を作用させて支持部材に弾性ブレードの交差反応力をもたらすように設計され、そのような反応力は、トルク入力要素及びトルク出力要素を相対休止位置に向けて後退させる傾向がある周方向成分を有する。
− 係合位置において、トルク出力要素に対するトルク入力要素の角度変位は20°より大きく、好ましくは40°より大きい。
− 弾性ブレードは、半径方向内側ストランドを有する弾性部及び固定部を含み、半径方向外側ストランドと、弓のように曲がった又は曲がった部分とが、内側ストランド及び外側ストランドを接続する。
− 減衰手段は、少なくとも2つの弾性リーフを含み、各弾性ブレードは、係合位置においてトルク出力要素又はトルク入力要素とともにそれぞれ回転し、各ブレードは、係合位置においてトルク入力要素又はトルク出力要素にそれぞれ回転で連結される支持要素と関連づけられ、各ブレードは前記適合する支持要素によって弾性的に維持されて支持され、各弾性ブレードは係合位置においてトルク出力要素に対するトルク入力要素の回転時に曲がるように適合されている。
【0032】
本発明は、添付の図面を参照しつつ、非限定的な例として与えられる以下の説明を読むことにより、よりよく理解され、本発明の他の詳細、特徴及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、従来技術のトルクコンバーターの概略図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態によるトルクコンバーターの軸平面に沿った断面図である。
図3図3は、図2のトルクコンバーターの一部の斜視図である。
図4図4は、本発明に係るトルクコンバーターの支持部材及び弾性ブレードを示す正面断面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係るトルクコンバーターの軸平面に沿った断面図である。
図6図6は、図5のトルクコンバーターのピストンの斜視図であり、複数の弾性ラグが設けられている。
図7図7は、図5のトルクコンバーターの複数の外側フランジのうちの1つの斜視図である。
図8図8は、上述のピストンとフランジとの間の接続、少なくとも複数の弾性ラグを示す斜視図である。
図9図9は、本発明の第3の実施形態によるトルクコンバーターの軸平面に沿った片側図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第1の実施形態による流体力学的トルク連結装置が図2に示されている。
【0035】
流体力学的トルク連結装置は、特に、流体力学的トルクコンバーターである。
【0036】
そのような装置は、例えばクランクシャフト1などの自動車両における内燃機関の出力軸からのトルクを、トランスミッション入力シャフト2に伝達することを可能にする。トルクコンバーターの軸は基準Xを有する。
【0037】
以下において、「軸」及び「半径」という用語は、X軸に対して定められる。
【0038】
トルクコンバーターは、通常、インペラーホイール3を備え、当該インペラーホイール3は、リアクター5を介してタービンブレードホイール4を流体力学的に駆動することができる。
【0039】
インペラーホイール3はカバーに固定され、当該カバーは、溶接によって一緒に組み立てられる2つのベルト状部品11a、11bであって、インペラーホイール3、タービンホイール4及びリアクター5を収容する内部容積部12を定める2つのベルト状部品11a、11bからなる。また前記カバー11a、11bは、より一般的にはカバー11とも呼ばれ、カバー11をクランクシャフト1に回転で連結することを可能にする固定手段13を具備する。
【0040】
トルクコンバーターは更に中央ハブ8を備え、中央ハブ8の半径方向内周部にはX軸とともにリブが設けられ、中央ハブ8はカバー11の内部容積部12に収容される。中央ハブ8は、半径方向外側に延びる第1の環状リム14と、半径方向内側に延び第1のリム14の前方に配置された第2の環状リム15とを含む。
【0041】
タービンホイール4は、例えばリベット16によって又は溶接によって、中央ハブ8の第1環状リム14に固定される。
【0042】
2つの半径方向内側の環状フランジ17が前記内部容積部12に設けられ、2つのフランジ17は、それらの半径方向の内周部によって、例えば、上述したようにリベット16によって又は溶接によって、ハブ8のリム14に固定されている。
【0043】
それらのフランジ17は半径方向に延び、各々が半径方向内側部17aと半径方向外側部17bとを含む。両フランジ17の半径方向内側部17aは、両フランジ17の半径方向外側部17bよりも、互いに軸方向に近接している。
【0044】
それらの内側フランジ17は、更に、それらの半径方向外周部において円筒状のリム18を備え、各リム18は対面する内側フランジ17と軸方向に反対に延びている。
【0045】
2つの半径方向外側環状フランジ19が、カバー11の内部容積部12において内側フランジ17の周りに更に設けられている。各外側フランジ19は半径方向に延び、半径方向内側部19a及び半径方向外側部19bを含む。両外側フランジ19の半径方向内側部19aは、両外側フランジ19の半径方向外側部19bよりも、軸方向に互いに近接している。
【0046】
以下でより詳細に説明するように、それらの外側フランジ19は一緒に固定されている。
【0047】
それらの外側フランジ19は、それらの半径方向外周部において円筒状のリム20を有し、各リム20は、対面する外側フランジ19と軸方向に反対に延びる。一方ではそれらの内側フランジ17のリム18が、また他方ではそれらの外側フランジ19のリム20が、同心であり、ベアリングを形成するように互いに当接するように適合されている。そのため、外側フランジ19は旋回することができ、前記ベアリングを介し、内側フランジ17に対して案内されることができる。
【0048】
ローラー又は円筒ローラーのような形状を持つ2つの支持部材又は回転体21は、外側フランジ19の半径方向外周部に固定されている。それらの回転体21は、直径方向に反対となるように配置されている。回転体21は、より具体的には、2つの外側フランジの間に軸方向に延びる複数のシャフト22の周りに設けられ、前記シャフトは、例えばボルト23又はリベットを使用して外側フランジ19上に設けられる。それらの回転体21は、例えば、ニードルベアリングなどの転がり軸受24を介してシャフト22上に設けられている。
【0049】
シャフト22はスペーサを形成し、当該スペーサは、外側フランジ19間の間隔を保つことを可能にし、それらの外側フランジ19は、少なくともボルト23又は適合するリベットによって一緒に固定される。
【0050】
内側フランジと外側フランジとの間には、2つの弾性リーフ25が設けられている。とりわけ、図4において最もよく分かるように、各弾性ブレード25は、両内側フランジ17の半径方向外側部17b間に設けられ且つ複数のリベット26、ここでは各ブレード25に関して合計で3つのリベット、によって両内側フランジ17に対して固定され、弾性部は、半径方向内側ストランド25b、半径方向外側ストランド25c、及び内側ストランド25bと外側ストランド25cとを接続する弓のように曲げられた又は曲げられた部分25dを含む。弓のように曲げられた又は曲げられた部分25dは約180°の角度を有する。言い換えれば、弾性ブレード25の弾性的に変形可能な部分は2つの領域を含み、当該2つの領域は、互いに対して半径方向にシフトされ且つ半径方向空間によって分離されている。
【0051】
外側ストランド25cは、円周上に120°〜180°の範囲の角度で展開する。半径方向外側ストランド25cは半径方向外側面25eを備え、当該半径方向外側面25eは、対応する回転体21によって支持された軌道部を形成し、前記回転体21は、弾性ブレード25の外側ストランド25eの半径方向外側に配置される。軌道部25eは、全体的に凸形状を有する。軌道部25eは、外側ストランド25cのゾーンから又は前記外側ストランド25c上に付加される部分から直接的に構成されうる。
【0052】
弾性リーフ25の外側ストランド25cは、外側フランジ19の対向する半径方向面19cによって軸方向に支持されることができる。
【0053】
各弾性ブレード25と適合する回転体21との間で、伝達されたトルクは半径方向の応力及び周辺の応力に分解される。半径方向の応力は、適合するブレード25が曲がることを可能にし、周辺の応力は、適合する回転体21がブレード25の軌道部25e上を移動すること及びトルクを伝達することを可能にする。
【0054】
トルクコンバーターは更にクラッチ手段10を備え、当該クラッチ手段10は、カバー11と外側フランジ19とを係合位置において回転で連結するように適合されるとともに、外側フランジ19のカバー11を係合解除位置において解放するように適合されている。
【0055】
クラッチ手段10は環状ピストン27を備え、当該環状ピストン27は、半径方向に延びてカバー10の内部空間部12に収容され、その半径方向外周部は、クラッチライニング28が設けられる休止領域を有し、係合位置においてカバー11の部分11b上に当接するように適合され、カバー11及びピストン27の回転連結を提供する。
【0056】
連結部材29は、クラッチライニング28の半径方向内側に位置する領域において、例えばリベットによってピストンに固定されている。連結部材29及びカバー11は、当然のことながら、トルクコンバーターの作動が影響されることなく、単一部分によって構成されてもよい。
【0057】
連結部材29は少なくとも複数の凹部領域31を備えており、外側フランジ19のうちの1つに形成された適合する形状を有する突出部32が係合されている。突出部は、より詳細には、例えば適合する外側フランジ19を切断して折り曲げることによって形成されるラグ32であり、図3において最も良く分かるように、それらは軸方向及び周方向に延在する。
【0058】
このようにして、ピストン27は外側フランジ19に回転で連結される一方で、その係合位置と係合解除位置との間で前記外側フランジ19に対するピストン27の軸方向の動きを可能にする。そのピストンの運動は、ピストンの両側に配置された圧力チャンバによって制御される。更に、係合解除位置でのピストンの動きは、中央ハブ8の第2の環状リム15上に配置されるピストンの半径方向内周部によって制限されうる。
【0059】
そのようなクラッチ手段10は、インペラーホイール3、タービンホイール4及びリアクター5から構成される流体力学的連結手段による何らの作用もなしに、決定された動作フェーズで、クランクシャフト1からトランスミッション入力シャフト2にトルクを伝達することを可能にする。
【0060】
作動において、クランクシャフト1からのトルクは固定手段13を介してカバー11に伝達される。ピストン27の係合解除位置において、トルクは流体力学的連結手段を、すなわちインペラーホイール3及びその後フランジ8に固定されたタービンホイール4を、通過する。次いで、トルクは、ハブ8の内側リブを介してハブに連結されたトランスミッション入力シャフト2に伝達される。
【0061】
ピストン27の係合位置において、カバー11からのトルクは外側フランジ19に伝達され、その後、弾性リーフ25によって及び支持部材21によって形成される減衰手段を介して内側フランジ17に伝達される。トルクはその後、内側フランジ17が固定された内側ハブ8に伝達され、その後、前記ハブ8の内側リブを介してハブ8に連結されたトランスミッション入力シャフト2に伝達される。
【0062】
ピストン27の係合位置において、カバー11とハブ8との間で伝達されるトルクが変動すると、弾性ブレード25と適合する回転体21との間に作用する半径方向の応力が変動し、弾性ブレード25の曲がりが修正される。ブレード25の湾曲の修正は、周辺の応力のために適合する軌道部25eに沿った回転体21の動きに同伴する。
【0063】
伝達されるトルクが増大する場合に回転体21の各々が適合する弾性ブレード25に対して曲げ応力を加えて、それが弾性ブレード25の自由遠位端をX軸に向かって動かし、カバー11とハブ8との間の相対回転であって後者がそれらの相対休止位置から離れる相対回転をもたらすように設けられたプロファイルを、軌道部25eは有する。休止位置は、フランジ11のハブ8に対する相対位置を意味し、後者との間にトルクは伝達されない。
【0064】
したがって軌道部25eのプロファイルは、回転体21が半径方向成分及び周方向成分を有する曲げ応力を弾性リーフ25に及ぼすようなものである。
【0065】
弾性リーフ25は、回転体21上に対して後退移動力を働かせ、当該後退移動力は、回転の逆方向へ回転体21を回転させてそれによりタービンホイール4及びハブ8をそれらの相対的休止位置に向けて後退させるのに役立つ周方向成分と、適合する回転体21によって支持される軌道部25eを維持するのに役立つ外向きに方向づけられた半径方向成分と、を有する。
【0066】
フランジ11及びハブ8が休止位置にある場合、弾性リーフ25は、好ましくは、半径方向外側に向けられた反力を発揮するようにX軸に向かって半径方向にプレストレスが与えられ、回転体21によって支持されるリーフ25を維持する。
【0067】
軌道部25eのプロファイルは、角変位に応じたトルクの特性伝達曲線が休止位置に対して対称的であるように又は対称的でないように、等しく配置されてもよい。有利な実施形態によれば、角変位は、いわゆる直接的な回転方向において、反対のいわゆる逆回転方向におけるよりも、重要でありうる。
【0068】
ハブ8に対するカバー11の角変位は、20°より大きくてもよく、好ましくは40°よりも大きくてもよい。
【0069】
それらの弾性リーフ25は、X軸周りに規則的に分布しており、トルクコンバーターのバランスを確保するようにX軸に対して対称である。
【0070】
トルクコンバーターはまた摩擦手段を備えてもよく、当該摩擦手段は、弾性リーフ25に蓄えられたエネルギーを消散させるように、フランジ11とハブ8との間でその相対変位の間に抵抗トルクを発揮するように配置されてもよい。
【0071】
図5〜8は本発明の第2の実施形態を示し、当該第2の実施形態は、外側フランジ19のうちの1つに対して、とりわけピストン27に近接して配置された外側フランジ19に対して、半径方向に弾性的に変形可能なラグ33を介し、ピストン27が接続され、外側フランジ19に対するピストン27の軸方向移動を可能にしつつピストン27の及び外側フランジ19の回転連結を提供する点で、図2〜4に示されたものとは異なる。前記ラグ33は、外側フランジ19とともに一体物として設けられてもよいし、前記フランジ19に対して独立したラグであって例えばリベット34によって或いは溶接によってそれに固定されたラグによって形成されてもよい。
【0072】
適合するフランジ19は、より具体的には、前記フランジ19の半径方向内周部上にラグ35を備えてもよく、前記ラグは、例えばピストン27に向かって軸方向に延びるように切断及び折り曲げによって形成されてもよい。
【0073】
弾性ラグ33は、ピストン27のクラッチライニング28に対して半径方向内側に配置されたリベット30によって、ピストン27に固定されている。ラグ33は正面から見て実質的に直線状であり、適合するフランジ19及びピストン27の全周部にわたって分布している。適合するフランジ19及びピストン27を連結するように、1つのラグ33のみが設けられてもよい。
【0074】
図9は本発明の第3の実施形態を示し、当該第3の実施形態は、1つの外側フランジ19のみ及び1つの内側フランジ17が円筒状リムとともに設けられており、ボールベアリング36などの転がり軸受が円筒状リム18、20間に設けられている点で、図2に示されたものとは異なる。したがって、外側フランジ19は、ベアリング36を介し、内側フランジ17の周りを旋回するように設けられている。
【0075】
ベアリングは、もちろん各内側フランジ17と各適合する外側フランジ19との間に設けられてもよい。この場合、各フランジ17,19は、ベアリング36を取り付けるために使用される円筒状のリム18,20を含むことができる。また1つ以上のベアリング36は、例えばフランジ17,19が厚い場合には、リム18,20なしで設けられることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9