特許第6882284号(P6882284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882284
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】熱力学サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/06 20060101AFI20210524BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   F01K25/06
   C08L71/02
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-523747(P2018-523747)
(86)(22)【出願日】2016年11月2日
(65)【公表番号】特表2018-535348(P2018-535348A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】US2016060040
(87)【国際公開番号】WO2017083145
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年10月28日
(31)【優先権主張番号】62/254,788
(32)【優先日】2015年11月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ラン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・アール・グリーヴス
(72)【発明者】
【氏名】イヴリン・エイ・ツァゥク−フーズマンズ
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−010969(JP,A)
【文献】 特表2010−516839(JP,A)
【文献】 特開2013−144806(JP,A)
【文献】 特開2014−005418(JP,A)
【文献】 特開2013−249326(JP,A)
【文献】 特開昭62−013481(JP,A)
【文献】 特表2015−506402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/02
F01K 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギーを機械的エネルギーに変換するプロセスであって、
(a)熱力学サイクルを提供するステップと、
(b)前記サイクルへ作動流体として水性アルコール混合物を提供するステップであって、前記水性アルコール混合物は、前記水性アルコール混合物の重量に基づき20〜50重量%の水を含む、ステップと、
(c)前記サイクルへ潤滑剤配合物を提供するステップと、
(d)前記潤滑剤配合物中に少なくとも1つのポリアルキレングリコールコポリマー樹脂を使用することにより、前記潤滑剤配合物の動粘性を制御するステップと
を含み、
前記潤滑剤配合物が、前記潤滑剤配合物の重量に基づき10〜90重量パーセント(エトキシ単位(CHCHO−)としての)エチレンオキシド含有量を有する、前記プロセス。
【請求項2】
前記潤滑剤配合物が、15重量パーセントを超える(エトキシ単位としての)エチレンオキシド含有量を含有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記潤滑剤配合物が、30重量パーセントを超える(エトキシ単位としての)エチレンオキシド含有量を含有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記潤滑剤配合物の動粘性が、40℃で50mm/秒〜300mm/秒である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリアルキレングリコールコポリマーの分子量が、500g/mol〜4,300g/molである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記潤滑剤配合物中の前記少なくとも1つのポリアルキレングリコールが、少なくとも1つのエトキシ(CHCHO−)単位及び少なくとも1つのプロポキシ(CHCH(CH)O−)単位を含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記コポリマーが、ランダム、ブロック、またはリバースブロックコポリマーである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ランダムコポリマーが、500g/mol〜2,500g/molの分子量を有する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ブロックまたはリバースブロックコポリマーが、1,500g/mol〜5,000g/molの分子量を有する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記潤滑剤配合物が、0.01重量パーセント〜1重量パーセントのポリアクリレートを含有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記水性アルコール混合物は、エタノールと水の混合物である、請求項1〜10のいずれかに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換するために使用される熱力学サイクルシステムに有用な潤滑剤、特に作動流体として水性アルコール混合物を、潤滑剤としてポリアルキレングリコールを使用する有機ランキンサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のランキンサイクルエンジンシステムなどの単純なランキンサイクルシステムには、必要なボイラ圧へと作動流体に加圧するための液体ポンプ、作動流体を加熱及び蒸発させるための1つまたは数個の熱交換器、作動流体の熱エネルギーを機械的エネルギーに変換するための1つまたは2つ以上の膨張機、ならびに膨張機から排気される作動流体蒸気を液化するための凝縮器がある。
【0003】
有機ランキンサイクルシステムの一実施形態は、分離され、システムで別々に使用される作動流体及び潤滑剤を含む。システムの特定の操作モードの間、作動流体及び潤滑剤が分離されているように、システムは設計されている。しかしながら、別の操作モードでは、作動流体及び潤滑剤は、互いに接触している。なおかつ、作動流体及び潤滑剤が互いに接触する際、作動流体は潤滑剤を希釈する場合があり、潤滑剤の粘度が顕著に低減され(例えば、その初期値の(<)20パーセント(%)未満まで)、潤滑剤の非効果的な使用に至る場合がある。作動流体及び潤滑剤の接触ならびに希釈が行われる際、作動流体は低い潤滑特性を有することが既知であり、潤滑特性が低いことにより、著しい摩耗、極端な場合には、機器の損壊が生じる場合があるため、作動流体及び潤滑剤の互いに対する混和性が重要である。
【0004】
ランキンサイクルにおいて、膨張機などのエンジンの機械部品は、作動流体の圧力を機械的エネルギーへと変換する。エンジンの機械部品は、潤滑である必要がある。当該技術分野において既知の潤滑剤の1つのクラスは、ポリアルキレングリコール(PAG)潤滑剤である。ランキンシステムでの作動流体としては、アルコールの使用もまた当該技術分野において既知である。例えば、作動流体として使用される特定のアルコールは、エタノールであってもよい。現在、ランキンサイクルシステムは、システムに使用される作動流体が、水とエタノールなどのアルコールの混合物であってもよいように設計されており、作動流体中の含水率は、通常、重量に対するパーセント、つまり1重量パーセント(重量%)から50重量%である。
【0005】
潤滑剤としてのPAG及び作動流体としてのエタノールの組み合わせは、WO2014/128266に報告されている。WO2014/128266に記載のエンジンは、作動流体が潤滑剤の空間に進入し、PAGがエタノールで希釈されることを可能にし、これによりPAGの粘度を低減するが、潤滑剤の粘度が低すぎる場合(例えば、その初期値の<20%)、エンジン部品の摩擦及び摩耗が許容不可能なレベルまで増加し、摩耗した破片及び著しい機器の損壊を生じる場合がある。潤滑剤の粘度がその初期値の(>)50%超まで低減される場合もまた、機器の摩耗及び損壊が起こり得る。粘度はその初期値の>30%低減されないことが好ましく、粘度変化がその初期値の<10%であることが最も好ましい。
【0006】
ポンプ、圧縮器、及びエンジンなどの加圧流体(作動流体)を扱う可動部を有する機械は、可動部の潤滑化が必要である。したがって、(1)使用される作動流体が、最低限の潤滑特性を有するが、最低限程度の潤滑化を実行することが期待される、(2)使用される作動流体が、作動流体に溶解される添加剤(主に潤滑性添加剤)を含有するよう設計される、(3)潤滑剤及び作動流体が混和され単一相として乳濁液を形成する、ならびに(4)封止システムを使用することにより潤滑剤及び作動流体が物理的に分離される、などのかかる潤滑性をもたらすために、数種の異なる選択肢が使用されてきた。実際に選択肢(4)の使用は、一般的に、潤滑剤及び作動流体が、意図せず互いに接触することになる。
【0007】
上述の通り、作動流体及び潤滑剤が接触する場合、潤滑剤の粘度は、顕著に低減される場合があり、潤滑剤の非効果的な使用に至る。例えば、作動流体がアルコールと水の混合物であり、このような作動流体が潤滑剤に接触する際、潤滑剤が例えばポリアルキレングリコールである場合、潤滑剤の粘度は一段と低減される(例えば、最大約75%)。
【0008】
使用される作動流体の選択は、通常、使用されるランキンサイクルシステムの物理的プロセス及び熱プロセスの必要条件に基づく。代表的な作動流体は、例えば、良好な熱特性を有するが低い潤滑特性を有する、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、アルコール及びアルカンなどが挙げられる。上述の選択肢(2)〜(3)を用いる欠点の1つは、高温(例えば[>]150℃超)を受けるシステムに作動流体を使用することができないことであり、それは潤滑剤または潤滑剤添加剤が、許容可能なメンテナンス間隔を達成することができないようなこれらの温度では、急速に劣化する場合があるからである。したがって、150℃を超える温度を有するシステムでは、上述の選択肢(4)が、選択における好ましい選択肢である。しかしながら、選択肢(4)の使用では、潤滑剤は、操作温度範囲全体に渡り、システムの可動部に対し摩耗保護を提供する必要がある。しかし、選択肢(4)を用いる1つの欠点は、潤滑剤及び作動流体を分離する物理的な封止システムが封止に失敗する可能性があるか、または、システムを停止した際に作動流体と潤滑剤が混和することであり、次に、作動流体が潤滑剤を含有するシステムの領域に進入する可能性があることである。これは、潤滑剤の粘度及び摩耗保護に影響する場合がある。例えば、潤滑剤の粘度が低減されすぎると(例えば、その初期値の<80%まで)、その後潤滑剤の膜が動いている機械部品を完全に分離することができず、システム内に表面の摩耗が生じる。
【0009】
自動車のランキンサイクルにおいて、アルコール及びHFCが多くの場合の作動流体としての選択であり、これはアルコール及びHFCの熱特性が効率を最大にし、機器費用を最小化するからである。例えば、Dieter Seherら著、「Waste Heat Recovery for Commercial Vehicles with a Rankine Process」(21st Aachen Colloquium Automobile and Engine Technology 2012)の記載を参照されたい。鉱物油、ポリアルファオレフィン、アルキル化ナフタレン、及びいくつかのエステルなどの最も一般的な潤滑剤は、アルコール及びHFCの作動流体(特にHFC)に対し混和性ではない。この場合、作動流体は、機器(例えばシャフト、シリンダ、ベアリングなど)の潤滑化されるべき重要な部品上の潤滑剤を押しのける場合があり、これは重要な部品の摩擦及び摩耗を増加させる可能性があり、それにより機器の故障に至る場合がある。
【0010】
しかしながら、潤滑剤に溶解する作動流体を精選した場合でさえも、このような作動流体は、潤滑剤の他の特性に悪影響を及ぼす場合があり、例えば潤滑剤の粘度が機器を損傷するまで低下し得る(例えばその初期値の<80%まで)。
【発明の概要】
【0011】
業界は、水/アルコール混合物である作動流体を考慮している。約20重量%〜約50重量%の水を作動流体に添加することにより、特にある種のポリアルキレングリコール化学品が潤滑剤として使用される場合、作動流体で汚染された場合の潤滑剤の粘度降下(作動流体を用いて希釈される場合の初期粘度のパーセント)を低減することが見出された。加えて、ポリアルキレングリコール(PAG)は、ランキンサイクルシステムの潤滑剤として有利な選択であることが見出された。コポリマーであり、エトキシ単位を含有するPAGは、本発明に特に有用である。PAGは、例えば、(1)PAGが最高約200℃の温度で操作されることができるような良好な熱酸化安定性、(2)PAGとアルコールは混和性であり、熱力学サイクルに使用される機械の潤滑化された部品上に膜をもたらすことができること、(3)PAGは、粘度指数200以上、及び低い流動点(ASTM D97(2012)の手順を使用して測定された場合、例えば<−25℃)を有することができること、(4)PAGはまた、水溶性であることができること、ならびに(5)PAGは、高い体積測定の熱容量(例えば40℃で>2.0J/g/K)を有することができること、を含む、いくつかの魅力的な利点を有する。
【0012】
本発明は、エチレンオキシド(EO)及びプロピレンオキシド(PO)のコポリマーなどのアルキレンオキシドから誘導されるPAGの潤滑剤としての使用に関する。アルキレンオキシドポリマーは、ランダム、ブロック、またはリバースブロックコポリマーであってもよい。好ましい実施形態では、ポリマーは、モル当たり約500グラム(g/mol)〜約4,300g/molの重量平均分子量(M.W.)、及び10重量%以上のEO含有量を有するものである。プロピレンオキシドは、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、オクテンオキシド及びドデセンオキシドなどの他のより多い酸化物と置き換えられることができ、同様の効果を与えるエチレンオキシドを有するコポリマーを与えることが予想されている。
【0013】
本発明はまた、水性アルコール混合物及び最大50重量%の水を含む作動流体の使用に関する。上述の水性アルコール混合物の使用は、アルコール単独を作動流体として使用する場合よりも、潤滑剤の粘度安定性の改善を助長する。作動流体が水及びアルコールを含有する場合、作動流体がアルコール単独であり作動流体が潤滑剤を希釈する場合よりも、潤滑剤の粘度変化(ΔV)を、例えば約10%〜約23%低下できることが示されている。
【0014】
本発明の別の実施形態は、ポリアクリレート添加剤も(最大約1%)含有する、特別に調合されたPAG系潤滑剤を含む。PAGにポリアクリレートを含むことにより、水性アルコール作動流体を用いて希釈される場合のPAGの粘度制御を更に改善する。
【0015】
潤滑剤は1つまたは2つ以上の異なる添加剤と組み合わせられ、例えば、摩耗特性、酸化安定性、腐食性、圧力性能、変形、及び/または上述の特性の組み合わせを含む、潤滑剤の特性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書の、潤滑剤の「ΔV」と略される「粘度変化」または「粘度降下」とは、潤滑剤の初期粘度値と作動流体を用いて希釈された場合のその値との間の割合変化を意味する。
【0017】
本明細書の、「潤滑性」または「潤滑化」とは、流体または潤滑剤による2つの接触表面の間の摩擦低減を意味する。
【0018】
本明細書の、組成物に関する「V.I.」と略される「粘度指数」とは、ASTM D2270を使用して算出された、40℃〜100℃の粘度における変化を意味する。高い粘度指数を有する生成物は、150(単位なし)を上回る値を有する。
【0019】
本明細書の、組成物に関する「低流動点」とは、約−40℃を下回る値を意味する。
【0020】
本明細書の、「良好な熱酸化安定性」とは、変更後のASTM D2893(本来2004年発行、2014年改訂)(150℃で8週間)の潤滑剤の粘度が、未使用の潤滑剤の元来の粘度より最大10%高いまたは低いことを意味する。
【0021】
本明細書の、PAGに関する「水溶性」とは、肉眼で視認される場合、及び周辺温度で脱イオン水に約5重量%〜約25重量%のPAG濃度で混合された場合、透明で均質な混合物を形成するPAGを意味する。
【0022】
広義では、本発明は、作動流体組成物及び潤滑剤組成物を含み、この2つの別々の組成物は、ランキンサイクルシステム、または加圧された作動流体が一定の圧力まで膨張され、作動流体の膨張からのエネルギーが機械的な回転エネルギーへ変換される機械に使用される。例えば、加圧された作動流体は、一実施形態では約0.01ゲージ圧力(barg)〜約10barg、別の実施形態では、約0.1barg〜約5barg、また別の実施形態では約1barg〜約2.5bargの圧力まで膨張される場合がある。
【0023】
好ましい実施形態では、作動流体組成物は、例えばアルコール及び水の混合物を含んでもよく、潤滑剤組成物は、潤滑剤として例えばPAGまたは2つまたは3つ以上のPAGの組み合わせであってもよい。
【0024】
一般的に、本発明に有用なアルコールは、任意のアルコールであってもよい。例えば、好ましい実施形態では、本発明に使用されるアルコールは、エタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、ブタノール、イソ−ブタノール、及びそれらの混合物であってもよい。
【0025】
本発明の作動流体に使用されるアルコール濃度は、一般的に、作動流体中のアルコール及び水の総重量に基づき、一実施形態では約10重量%〜約99重量%、別の実施形態では、約20重量%〜約80重量%、また別の実施形態では、約50重量%〜約80重量%の範囲であってもよい。エタノール濃度が10重量%よりも低い場合、冬の温度で作動流体の凍結が起こり得る。エタノール濃度が99重量%よりも高い場合、粘度降下の利点が非経済的であり得る。
【0026】
水性アルコール混合物中のアルコールは、水性アルコール混合物の水に有利にも可溶性である。アルコール及び水の溶解特性を維持するために、水性アルコール中のアルコールの分子量は、一般的に、例えば、一実施形態では約110g/mol未満、別の実施形態では、約30g/mol〜約80g/mol、また別の実施形態では約40g/mol〜約60g/molの分子量を有してもよい。アルコールの分子量が高すぎる、すなわち、約110g/molよりも高い場合、そのときアルコールは水に溶解しない場合がある。
【0027】
一般的に、水は任意のタイプの水であってもよい。例えば、好ましい実施形態では、本発明に使用される水は、蒸留水、脱イオン水、及びそれらの混合物であってもよい。水は、基本的に、有機ランキンシステムに悪影響を与えないタイプの任意の水であってもよい。例えば、水道水、海水または井戸水は望ましくなく、そのようなタイプの水は、有機ランキンシステムにおける蒸気への熱伝達を低下させる可能性のある塩分を放出する可能性があるからである。
【0028】
本発明の作動流体に使用される水の濃度は、一般的に、作動流体中のアルコール及び水の総重量に基づき、一実施形態では約1重量%〜約99重量%、別の実施形態では、約20重量%〜約80重量%、また別の実施形態では、約25重量%〜約50重量%の範囲であってもよい。
【0029】
作動流体を調製するために使用されるプロセス及び機器のタイプは、当該技術分野で既知の従来の混合機器または容器で上述の成分を混和または混合することを含む。例えば、本発明の作動流体の調製は、既知の混合機器でアルコール組成物及び水を混和することにより達成される。アルコールの熱的及び熱酸化安定性が制限されるため、抗酸化剤などの添加剤を作動流体へ添加し、その安定性を増加することがあってもよいか、または望ましい場合がある。任意選択的に、腐食防止剤及び発泡制御剤などの他の望ましい添加剤が、作動流体中に存在してもよい。例えば、任意選択的な添加剤は、一実施形態では0重量%〜約10重量%、別の実施形態では約0.05重量%〜約10重量%の濃度で作動流体へ添加されてもよい。また別の実施形態では、作動流体中の任意選択的な添加剤は、<約1,000ppmで維持されてもよい。
【0030】
作動流体の上述の化合物の全ては、通常、効果的な作動流体の調製を可能にする温度で、容器内で混合され分散される。例えば、上述の成分の混合中の温度は、一般的に、一実施形態では約10℃〜約40℃、別の実施形態では、約20℃〜約30℃であってもよい。
【0031】
本発明の作動流体の調製、及び/またはその任意のステップは、バッチ式または連続的なプロセスであってもよい。好ましい実施形態では、作動流体成分の混合プロセス及びプロセスに使用される混合機器は、当業者に公知の任意の撹拌容器及び補助的な機器であってもよい。
【0032】
一般的に、潤滑剤は、鉱物油、シリコーン油、ポリアルキルベンゼン(PAB)、ポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリアルキレングリコールエステル(PAGエステル)、ポリビニルエーテル(PVE)、ポリ(アルファ−オレフィン)、及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0033】
ランキンサイクルの潤滑剤としてPAGを選択することが、良好である。PAGは、次の利点、(1)PAGは、良好な熱酸化安定性を有すること、(2)PAG及びアルコールは混和性であり、化合物のこの組み合わせの使用は、潤滑化された機械部品に膜をもたらすことができること、(3)PAGはまた水溶性であり得ること、ならびに(4)PAGは、200を超える粘度指数及び低い流動点を有し得ること、を含むことができる。
【0034】
一般的に、組成物に使用されるポリアルキレングリコールは、例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド燃料から誘導された1つまたは2つ以上のランダム、ブロックまたはリバースブロックポリアルキレングリコール、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。
【0035】
より好ましい実施形態では、本発明の組成物に有用なPAGは、例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの任意のランダム、ブロックまたはリバースブロックコポリマーの組み合わせなどの2つのPAGの組み合わせを含んでもよい。
【0036】
ポリアルキレングリコールは、その構造にエトキシ(CHCHO−)基を含んでもよく、一般的に、潤滑剤中の成分の総重量に基づき、一実施形態では約10重量%〜約90重量%、別の実施形態では、約20重量%〜約80重量%、また別の実施形態では、約40重量%〜約60重量%の濃度で潤滑剤に存在してもよい。エトキシの濃度が90重量%を超える場合、粘度指数は増加するが流動点も同様に増加する。エトキシの濃度が10重量%未満の場合、水溶性が低減され、相分離に至る場合がある。
【0037】
ポリアルキレングリコールは、その構造にプロポキシ[CHCH(CH)O−]基を含んでもよく、これは一般的に、潤滑剤中の成分の総重量に基づき、一実施形態では約10重量%〜約90重量%、別の実施形態では、約20重量%〜約80重量%、また別の実施形態では、約40重量%〜約60重量%の濃度で潤滑剤に存在してもよい。プロポキシの濃度が90重量%を超える場合、潤滑剤の水溶性が減少し、相分離に至る場合がある。
【0038】
一般的に、PAGは、例えば、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、リバースブロックコポリマー、またはそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。本発明に使用されるPAGポリマーの好ましい一実施形態は、約500g/mol〜約4,300g/molの重量平均分子量、及び10重量%以上のエトキシ含有量を有するものである。別の好ましい実施形態では、ポリアルキレングリコールは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの少なくとも1つのコポリマーを含有するものであってもよく、この潤滑剤は、非希釈の場合40℃で約50mm/秒〜約300mm/秒であり得る動粘性を有する。
【0039】
前述のように、潤滑剤配合物を構成する好ましいポリマーは、一実施形態では10重量%以上のエトキシ含有量、別の実施形態では、15重量%以上のエトキシ含有量、別の実施形態では、約30重量%を超えるエトキシ含有量を含有するものである。
【0040】
別の実施形態では、潤滑剤配合物は、一般的に、一実施形態では、約0.01重量%〜約1重量%、別の実施形態では、約0.02〜約0.5重量%、また別の実施形態では、約0.05〜約0.2重量%のポリアクリレートを含有してもよい。ポリアクリレートが1%を上回り使用される場合、流体のゲル化が起こる場合がある。しかし、0.01%未満で使用される場合、粘度制御性が、より低くなる。
【0041】
潤滑剤配合物を調製するために使用されるプロセス及び機器のタイプは、当該技術分野で既知の従来の混合機器または容器で上述の成分を混和または混合することを含む。例えば、本発明の潤滑剤の調製は、既知の混合機器でPAGとともに、及び任意選択的に任意の他の望ましい添加剤を混和することにより達成される。
【0042】
潤滑剤の上述の化合物の全ては、通常、効果的な潤滑剤の調製を可能にする温度で、容器内で混合され分散される。例えば、上述の成分の混合中の温度は、一般的に、一実施形態では約20℃〜約80℃、別の実施形態では、約40℃〜約60℃であってもよい。
【0043】
本発明の潤滑剤の調製、及び/またはその任意のステップは、バッチ式または連続的なプロセスであってもよい。好ましい実施形態では、潤滑剤成分の混合プロセス及びプロセスに使用される混合機器は、当業者に公知の任意の容器及び補助的な機器であってもよい。
【0044】
本発明の上述のプロセスにより調製された上述の組成物の作動流体は、いくつかの予想外で独特な特性を示す。例えば、本発明の作動流体組成物の粘度は、組成物が容易に取り扱われ処理されることができるようなものである。作動流体組成物は、一実施形態では、約0.1mPa−s〜約10mPa−s、別の実施形態では、約0.2mPa−s〜約5mPa−s、また別の実施形態では、約0.5mPa−s〜約2mPa−sの範囲の25℃での動的粘度を有する場合がある。10mPa−sより高い粘度及び本発明の作動流体と同様の沸点を有する作動流体は、有機ランキンサイクルでの用途に有用であり得る。しかしながら、10mPa−sより高い粘度を有する作動流体はまた、本発明の作動流体より高い沸点を有する場合があり、有機ランキンサイクルでの用途に不適切である。0.1mPa−sより低い粘度を有する作動流体は、潤滑性が劣り、したがって望ましくない。
【0045】
作動流体組成物が示す別の特性は、沸点である。一般的に、作動流体の沸点は、一実施形態では、0℃〜250℃、別の実施形態では、約30℃〜170℃、また別の実施形態では、約60℃〜120℃であり得る。
【0046】
本発明の上述のプロセスにより調製されたポリアルキレングリコール系潤滑剤組成物(潤滑剤配合物)は、いくつかの予想外で独特な特性を示す。例えば、本発明のポリアルキレングリコール系潤滑剤組成物の動粘性は、組成物が容易に取り扱われ処理されることができるようなものである。ポリアルキレングリコール系潤滑剤組成物は、一実施形態では、約10mm/秒〜約1,000mm/秒、別の実施形態では、約50mm/秒〜約500mm/秒、また別の実施形態では、約100mm/秒〜約250mm/秒の範囲の40℃での動粘性を有する場合がある。潤滑剤の動粘性が低すぎる、すなわち40℃で約50mm/秒未満の場合、そのとき起こり得る機器への過度の摩耗のリスクはより大きい。潤滑剤の動粘性が高すぎる、すなわち40℃で約300mm/秒を超える場合、そのとき可動部品の粘性抵抗のリスクが高くなり、より大きなエネルギー消費に至る場合がある。
【0047】
ポリアルキレングリコールコポリマーの分子量は、一般的に、一実施形態では、約500g/mol〜約5,000g/mol、別の実施形態では、約500g/mol〜約4,300g/mol、また別の実施形態では、約1,500g/mol〜約2,500g/molであり得る。
【0048】
ポリアルキレングリコール系潤滑剤組成物が示す別の特性は、良好な低温特性である。例えば、一般的に、流動点の特性は、一実施形態では、約−70℃〜約0℃、別の実施形態では、約−60℃〜約−10℃、また別の実施形態では、約−50℃〜約−25℃であり得る。流動点が高すぎる場合、潤滑剤は、低温な気候において非常に粘稠になる場合があり、潤滑剤の圧送性(pumpability)を困難にする。したがって、より低い流動点が好ましい。
【0049】
本発明に有用なPAGはまた、良好な熱酸化安定性を有し、例えば、最高200℃の温度で操作可能である。一般的に、PAGの操作温度は、一実施形態では、約50℃〜約200℃、別の実施形態では、約80℃〜約170℃、また別の実施形態では、約100℃〜約150℃であり得る。
【0050】
本発明のPAGを使用する利点の一つは、PAG及び水性アルコールの混合物が混和性であることである。用語、混和性及び不混和性は、当該技術分野において一般的に使用されるように本明細書で使用される。例えば、本明細書では、用語「混和性」とは、2つの成分、この場合PAG及び水性アルコール作動流体が物理的に混和されること、すなわち、2つの成分が、(1)周辺温度で少なくとも24時間にわたり、単一相を維持すること、及び(2)同じ時間にわたり、2つの成分が濁りを示さないこと、を意味する。2つの成分がいくらかでも濁りまたは分離を示す場合、そのとき2つの成分は不混和性である。例えば、PAG及び水性アルコールの混和性は、一実施形態では約10重量%〜約90重量%、別の実施形態では約10重量%〜約50重量%であり得る。用語「可溶性」とは、PAG及び水性アルコール作動流体が、周辺温度で、しかしPAG中の水性アルコール作動流体の特定の濃度で混合される場合、透明均質な混合物を形成することを意味する。例えば、PAGへの作動流体の可溶性は、一実施形態では約5重量%〜約50重量%、別の実施形態では約10重量%〜約50重量%であり得る。透明で均質な混合物が観察されない場合、PAG中の作動流体は、可溶性ではないとみなされる。
【0051】
PAGは、当該技術分野において一般的に、水溶性、水不溶性、または油溶性であると記載される。水溶性PAGの例としては、エチレンオキシドが通常約20重量%超の、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマーが挙げられる。水不溶性PAGの例としては、プロピレンオキシドのホモポリマーが挙げられる。油溶性ポリアルキレングリコールの例としては、ブチレンオキシドのホモポリマーが挙げられる。各クラスのPAGの記載は、Martin R.Greaves著、CRC出版、L.R.Rudnick編集の「Synthetics,Mineral Oils and Bio−Based lubricants」第6章ポリアルキレングリコールに見ることができる。上述の参考文献の第6章はまた、ランダム、ブロック及びリバースブロックPAG構造についての記載も含む。
【0052】
作動流体配合物及びポリアルキレングリコール潤滑剤配合物が上述のように調製された後、作動流体及び潤滑剤は、熱力学サイクル、すなわち、熱エネルギーを機械的エネルギーに変換するプロセスにすぐに使用される。一般的に、このようなプロセスは、(a)熱力学サイクルを提供するステップと、(b)サイクルへ作動流体として水性アルコールを提供するステップと、(c)サイクルへ潤滑剤配合物を提供するステップと、(d)潤滑剤配合物に少なくとも1つのPAGコポリマー樹脂を使用することにより潤滑剤配合物の動粘性を制御するステップと、を含み、潤滑剤配合物は、約10重量パーセントを超えるエチレンオキシド含有量を含有する。
【0053】
例えば、熱力学サイクルは、有機ランキンサイクルであってもよく、有機ランキンサイクルは、可動性の機器(例えば自動車など)に、または静的機器(例えば発電プラントのタービンなど)に使用されることができる。潤滑剤配合物は、潤滑性を必要とする熱力学サイクルの任意の機械部分に使用されてもよい。例えば、潤滑剤配合物は、熱力学サイクルの膨張機部分へ導入される場合がある。一実施形態では、膨張機は、往復動の、またはピストン式膨張機であってもよく、ピストン式膨張機はまた、斜板式設計も含んでもよい。
【0054】
別の実施形態では、膨張機は、これらに限定されないが、遠心式または軸流式タービン、スクロール型膨張機、回転スクリュ膨張機、回転翼膨張器、またはヴァンケル膨張機(Wankel expander)など、及びそれらの組み合わせであってもよい。膨張機は、有機ランキンサイクルの一部であってもよい。
【0055】
好ましい一実施形態では、例えば、潤滑化される機械は、有機ランキンサイクルシステムの一部であるエンジンであってもよく、それは、トラックエンジンなどの自動車エンジンの熱い排気ガスからのエネルギーを機械的エネルギーに変換し、トラックのクランクシャフトへ更なる動力を与え、燃料を節約し二酸化炭素(CO)の排出を低減する。このサイクルの作動流体は、最高約230℃で、潤滑剤は最高150℃で動作する。エンジンは、一般的なタイプのピストン式膨張機(エキスパンダ)または斜板式設計を有するピストン式膨張機であってもよい。斜板式設計は、自動車の空調用圧縮機に使用されることが知られている。圧縮されたガス状の作動流体のエネルギーが機械的エネルギーに変換される膨張機とは違い、圧縮器はその逆に作用する。機械的エネルギーは、ガス相にある作動流体を圧縮するために使用される。
【実施例】
【0056】
次の実施例及び比較例は、本発明を更により詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するように解釈されるものではない。
【0057】
次の実施例及び比較例では、様々な材料、用語及び表記が使用され、次のように説明される。
「PAG」は、ポリアルキレングリコールを表す。
「EtOH」は、純度99.9重量%のエタノールを表す。
「重量%」は、重量パーセントを表す。
「M.W.」または「Mw」は、重量平均分子量を表す。
「Kin.visc.」は、動粘性を表す。
「V.I」は、粘度指数を表す。
【0058】
次の実施例及び比較例では、表Iに記載の次のランダムコポリマーを使用し、本発明のランダムコポリマーの有用性を評価した。
【0059】
【表I】
【0060】
次の実施例及び比較例では、表IIに記載の次のブロック及びリバースブロックコポリマーを使用し、本発明のブロックコポリマーの有用性を評価した。
【0061】
【表II】
【0062】
表IIIに記載の次の添加剤を使用して、潤滑剤配合物を調製した。
【0063】
【表III】
【0064】
実施例1〜36及び比較実施例A〜U
本発明の実施例(実施例1〜36)及び比較例(比較例A〜U)は、本明細書の表IV〜VIに記載されている。作動流体としてエタノール単独を使用した組成物を使用する全ての例が、比較例である。作動流体として水性エタノール混合物中の組成物を使用する全ての例が本発明の実施例である。
【0065】
表IVに記載されるように、試験番号1〜5の配合物は、PAG系油へ添加される添加剤パッケージ(2.35重量%)を含有する。この添加剤パッケージは、表VIIに記載されている。表IVに記載の試験番号6及び7の配合物は、添加剤パッケージを含有しない。同様に、表V及びVIの、試験番号8〜12の配合物、及び試験番号15〜19の配合物は、それぞれ、表VIIに記載の添加剤パッケージを含有し、表Vの試験番号13及び14ならびに表VIの試験番号20及び21の配合物は、添加剤パッケージを含有しない。
【0066】
一般的に、実施例は、潤滑剤及び作動流体が混合される際、水が存在しない場合よりも、水が作動流体に含まれる場合、潤滑剤の粘度低減が少ないことを示す。更に、実施例は、作動流体中の水の比率が高くなると、潤滑剤が作動流体を用いて希釈されるポリアルキレングリコール系潤滑剤の粘度安定性が向上することを示す。
【0067】
試験−基本手順
次の3つの作動流体(1)純粋なエタノール(EtOH)、(2)80重量%EtOH及び20重量%水のブレンド(EtOH/水:80/20重量%)、ならびに(3)50重量%EtOH及び50重量%水のブレンド(EtOH/水:50/50重量%)を調製し試験した。
【0068】
次のPAG潤滑剤配合物を5重量%、10重量%及び30重量%の作動流体を用いて希釈し、PAG潤滑剤配合物の動粘性を、ASTM D7042に従い(2004年発行、2014年改訂)、Stabinger Viscometer(商標)SVM3000を介し計測した。測定を様々な温度で行ったが、本発明を説明するため、40℃の温度のデータを使用した。粘度変化の割合は、表IV〜VIに報告する。希釈された配合物の動粘性を測定し、次に、非希釈の配合物の粘度で割り、その数を1から引くことにより粘度の割合を算出する。この実試験結果を表IV〜VIに示す。
【0069】
PAG潤滑剤配合物の粘度損失が最小であることが望ましい。粘度損失がより大きい場合、そのとき機器内に発生する摩耗の可能性はより高い。
【0070】
本明細書の実施例は、潤滑剤は5重量%作動流体(表IV)を用いて希釈することができること、ならびに潤滑剤は最大10重量%の作動流体(表V)及び最大30重量%の作動流体(表VI)を用いて希釈することもできることを示す。その実施例は本明細書には提供されないが、場合によっては、最大50重量%の作動流体を用いて潤滑剤を希釈することも可能であり得る。しかしながら、本発明の実施例は、表IV〜VIに示されるように、それぞれ5重量%、10重量%及び30重量%で希釈の効果を示す。
【0071】
【表IV】
【0072】
【表V】
【0073】
【表VI】
【0074】
表IVに記載の試験番号1〜5、表Vに記載の試験番号8〜12、及び表VIに記載の試験番号15〜19の配合物は、表VIIに記載の添加剤パッケージを含有する。表IVに記載の試験番号6及び7、表Vに記載の試験番号13及び14、及び表VIに記載の試験番号20及び21の配合物は、表VIIに記載のような添加剤パッケージを含有しない。
【0075】
【表VII】
【0076】
一般的なブレンド手順
配合物を500mLガラスビーカ内でブレンドした。各配合物を150g作製した。上記リストに記載と同様の順序で成分を添加した。ベース流体を、透明で均質な溶液が形成されるまで加熱及び撹拌した。
【0077】
一般的な希釈手順
作動流体を用いた希釈を50gブレンドに実施した。試料が透明になるまで周辺温度(約23℃)で撹拌器を使用した。
【0078】
希釈試験の結果
表IV〜VIは、水/エタノール混合物を実施例1〜36を含む本発明の配合物へ添加する場合の、PAG系配合物の粘度減少の実施例を示す。純粋なエタノールを用いた配合物は比較例A〜Uである。
【0079】
50/50重量%の水/エタノールを用いたブレンド(表IVの実施例1〜5、表Vの実施例13〜17及び表VIの実施例25〜29)は、20/80重量%の水/エタノール作動流体を用いたブレンド(表IVの実施例6〜12、表Vの実施例18〜24及び表VIの実施例30〜36)に比べ、粘度減少が少ないことを示す。PAG潤滑剤は、ランダム、ブロックまたはリバースブロックEO/POコポリマーを含有することができる。
【0080】
実施例37及び比較例V及びW
これらの実施例は、本発明の更なる態様を説明し、ポリアクリレート添加剤を含むことは、潤滑剤が50/50重量%の水/EtOHブレンドを用いて希釈される場合、ポリアルキレングリコール系潤滑剤の粘度安定性を更に改善することを示す。本発明の実施例は、表VIIIの実施例37に示される配合物ブレンドである。
【0081】
一般的なブレンド手順
表VIIIに記載の比較例Vは、ブレンドされた配合物ではない。表VIIIに記載の他の2つの配合物ブレンドに対し、300mLガラスビーカを使用し、ブレンドを調製した。50重量%の水及び50重量%のEtOHのブレンドを含む作動流体の100gのバッチを調製した。
【0082】
上述の作動流体を40重量%含有するSYNALOX(商標)50−100Bのブレンドの試料を50g調製し、比較例Wと示した。次に溶液が完全に溶解するまでSYNALOX(商標)50−100Bを配合物を添加した。ブレンドサイズはまた50gであった。
【0083】
60℃で0.05重量%ポリアクリレートとブレンドしたSYNALOX(商標)50−100Bを含む配合物ブレンドの別の試料をまず調製した。
【0084】
【表VIII】
【0085】
表VIIIに記載のように、作動流体が40重量%で配合物ブレンド(潤滑剤配合物)へ添加される場合、潤滑剤配合物の粘度は変化する、すなわち粘度配合物は80%低減される。しかしながら、ポリアクリレートを含むこと(0.05重量%)により、配合物ブレンドの粘度がより安定し、粘度変化の顕著な低減を示す、すなわち、表VIIIに記載のように粘度の変化はわずか36%である。
【0086】
水性アルコール混合物に溶解しないポリアルキレングリコールは、非効果的であり、本発明の範囲外である。例えば、次のポリアルキレングリコール系油(表IX)及び混合物の、水/エタノール混合物を30重量%の濃度のPAGへ添加し、周辺温度で5分間撹拌した水とエタノール50/50の重量/重量の混合物への可溶性を評価した。
【0087】
【表IX】
【0088】
【表X】
【0089】
表XIに記載の製品SYNALOX100−120B及びUCON OSP−220は、エポキシ単位を含有しないポリマーであり、このようなポリマーは、水及びエタノール50/50の重量/重量の混合物へ溶解しない。Dowfax DF−107は、14重量%のエトキシ(エチレンオキシドからの)単位を含有するコポリマーの一例であり、Dowfax DF−107は可溶性である。Dowfax DF−117は、9重量%のエトキシ(エチレンオキシドからの)単位を含有するコポリマーの一例であり、Dowfax DF−117は可溶性ではない。上述の実施例は、水及びアルコールを含有する作動流体へ可溶性であるコポリマーを提供するためには、コポリマーが、十分な量のエトキシ単位を含有することが重要であることを示す。例えば、本発明のコポリマーのエトキシ単位含有量は、一実施形態では、10重量%以上、別の実施形態では、10重量%以上〜約30重量%、また別の実施形態では、10重量%以上〜約90重量%であり得る