(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882285
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】スピンドル駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20210524BHJP
F16D 43/21 20060101ALI20210524BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20210524BHJP
F16D 55/30 20060101ALI20210524BHJP
F16D 55/38 20060101ALI20210524BHJP
E05F 15/622 20150101ALI20210524BHJP
【FI】
F16H25/20 H
F16H25/20 Z
F16D43/21
F16H25/24 A
F16H25/20 K
F16D55/30
F16D55/38
E05F15/622
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-524253(P2018-524253)
(86)(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公表番号】特表2018-536124(P2018-536124A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2016077470
(87)【国際公開番号】WO2017081277
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年9月30日
(31)【優先権主張番号】102015119457.0
(32)【優先日】2015年11月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508072408
【氏名又は名称】ブローゼ ファールツォイクタイレ エスエー ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト バンベルク
【氏名又は名称原語表記】BROSE FAHRZEUGTEILE SE & CO.KG,BAMBERG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハイナー フェース
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ハーネ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ホール
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス リューフ
【審査官】
鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−105490(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0271776(US,A1)
【文献】
特表2009−531571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
E05F 15/622
F16D 43/21
F16D 55/30
F16D 55/38
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフラップ(2)用のスピンドル駆動装置であって、当該スピンドル駆動装置は、2つの駆動装置終端位置間、特に引込み位置と伸長位置との間で位置変更可能であり、当該スピンドル駆動装置の動作を導き出す2つの駆動装置接続部(6,7)と、これらの駆動装置接続部(6,7)間の動力伝達系(8)と、が設けられており、該動力伝達系(8)は、モータユニット(9)と、駆動技術的に該モータユニット(9)の下流側に接続された駆動用ねじ伝動装置(10)と、を有し、該駆動用ねじ伝動装置(10)は、スピンドル雄ねじ山を備えたスピンドル(11)と、前記スピンドル雄ねじ山に螺合しているスピンドルナット雌ねじ山を備えたスピンドルナット(12)と、を有し、前記スピンドル駆動装置(1)の前記動力伝達系(8)の少なくとも一部を制動するためのブレーキユニット(13)が設けられている、スピンドル駆動装置において、
前記ブレーキユニット(13)は、そのブレーキ作用(B)に関して調整可能であり、かつ前記ブレーキユニット(13)は、その調整のために、前記動力伝達系(8)のコンポーネント(15)と連結されており、
前記ブレーキユニット(13)は、前記スピンドル駆動装置(1)の前記動力伝達系(8)を常時制動する、
ことを特徴とする、スピンドル駆動装置。
【請求項2】
自動車のフラップ(2)用のスピンドル駆動装置であって、当該スピンドル駆動装置は、2つの駆動装置終端位置間、特に引込み位置と伸長位置との間で位置変更可能であり、当該スピンドル駆動装置の動作を導き出す2つの駆動装置接続部(6,7)と、これらの駆動装置接続部(6,7)間の動力伝達系(8)と、が設けられており、該動力伝達系(8)は、モータユニット(9)と、駆動技術的に該モータユニット(9)の下流側に接続された駆動用ねじ伝動装置(10)と、を有し、該駆動用ねじ伝動装置(10)は、スピンドル雄ねじ山を備えたスピンドル(11)と、前記スピンドル雄ねじ山に螺合しているスピンドルナット雌ねじ山を備えたスピンドルナット(12)と、を有し、前記スピンドル駆動装置(1)の前記動力伝達系(8)の少なくとも一部を制動するためのブレーキユニット(13)が設けられている、スピンドル駆動装置において、
前記ブレーキユニット(13)は、そのブレーキ作用(B)に関して調整可能であり、かつ前記ブレーキユニット(13)は、その調整のために、前記動力伝達系(8)のコンポーネント(15)と連結されており、
前記ブレーキ作用(B)は、少なくとも前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更範囲の一部にわたって前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更に伴い、特に直線的に上昇または下降し、好適には、前記ブレーキ作用(B)は、少なくとも前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更範囲の一部にわたって前記フラップ(2)のモータによる開放に伴い上昇し、かつ少なくとも前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更範囲の一部にわたって前記フラップ(2)のモータによる閉鎖に伴い下降する、スピンドル駆動装置。
【請求項3】
自動車のフラップ(2)用のスピンドル駆動装置であって、当該スピンドル駆動装置は、2つの駆動装置終端位置間、特に引込み位置と伸長位置との間で位置変更可能であり、当該スピンドル駆動装置の動作を導き出す2つの駆動装置接続部(6,7)と、これらの駆動装置接続部(6,7)間の動力伝達系(8)と、が設けられており、該動力伝達系(8)は、モータユニット(9)と、駆動技術的に該モータユニット(9)の下流側に接続された駆動用ねじ伝動装置(10)と、を有し、該駆動用ねじ伝動装置(10)は、スピンドル雄ねじ山を備えたスピンドル(11)と、前記スピンドル雄ねじ山に螺合しているスピンドルナット雌ねじ山を備えたスピンドルナット(12)と、を有し、前記スピンドル駆動装置(1)の前記動力伝達系(8)の少なくとも一部を制動するためのブレーキユニット(13)が設けられている、スピンドル駆動装置において、
前記ブレーキユニット(13)は、そのブレーキ作用(B)に関して調整可能であり、かつ前記ブレーキユニット(13)は、その調整のために、前記動力伝達系(8)のコンポーネント(15)と連結されており、
前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更に対する前記ブレーキ作用(B)の上昇率および/または下降率は、前記スピンドル駆動装置(1)の両位置変更方向について同一であり、かつ/または、前記ブレーキ作用(B)の上昇および/または下降は、先行する前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更および/または位置変更方向に応じて異なる、スピンドル駆動装置。
【請求項4】
自動車のフラップ(2)用のスピンドル駆動装置であって、当該スピンドル駆動装置は、2つの駆動装置終端位置間、特に引込み位置と伸長位置との間で位置変更可能であり、当該スピンドル駆動装置の動作を導き出す2つの駆動装置接続部(6,7)と、これらの駆動装置接続部(6,7)間の動力伝達系(8)と、が設けられており、該動力伝達系(8)は、モータユニット(9)と、駆動技術的に該モータユニット(9)の下流側に接続された駆動用ねじ伝動装置(10)と、を有し、該駆動用ねじ伝動装置(10)は、スピンドル雄ねじ山を備えたスピンドル(11)と、前記スピンドル雄ねじ山に螺合しているスピンドルナット雌ねじ山を備えたスピンドルナット(12)と、を有し、前記スピンドル駆動装置(1)の前記動力伝達系(8)の少なくとも一部を制動するためのブレーキユニット(13)が設けられている、スピンドル駆動装置において、
前記ブレーキユニット(13)は、そのブレーキ作用(B)に関して調整可能であり、かつ前記ブレーキユニット(13)は、その調整のために、前記動力伝達系(8)のコンポーネント(15)と連結されており、
前記ブレーキユニット(13)は、制動部材(19)と制動対応部材(20)と、を有し、これらの制動部材(19)と制動対応部材(20)とは、前記ブレーキ作用を生ぜしめるためにブレーキばねユニット(21)を介して互いに予荷重を加えられているので、互いに摩擦係合状態にある、スピンドル駆動装置。
【請求項5】
前記ブレーキユニット(13)は、調整部材(18)を有し、前記ブレーキユニット(13)の前記ブレーキ作用(B)は、前記調整部材(18)の変位により調整可能であり、該調整部材(18)は、前記駆動用ねじ伝動装置(10)、特に前記駆動用ねじ伝動装置(10)の前記スピンドル(11)に連結されており、これにより前記ブレーキ作用(B)は少なくとも、前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更範囲の一部にわたり、前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更に伴って上昇または下降する、請求項4記載のスピンドル駆動装置。
【請求項6】
前記制動部材(19)と前記制動対応部材(20)とは、前記ブレーキ作用を生ぜしめるために前記ブレーキばねユニット(21)を介して予荷重を加えられたブレーキパック(P)の構成部材であり、好適には、該ブレーキパック(P)は少なくとも2つの制動部材(19a〜c)および/または少なくとも2つの制動対応部材(20a〜c)を有している、請求項5記載のスピンドル駆動装置。
【請求項7】
前記調整部材(18)は、該調整部材(18)の変位がばね予荷重の変化に付随して生じるように、前記ブレーキばねユニット(21)と連結されている、請求項6記載のスピンドル駆動装置。
【請求項8】
前記制動部材(19)は、前記動力伝達系(8)のコンポーネント(22)、好適には前記動力伝達系(8)の駆動軸に連結、特に結合されている、請求項5から7までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項9】
前記制動対応部材(20)は、前記スピンドル駆動装置(1)のケーシングコンポーネント(23)に連結、特に結合されている、請求項5から8までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項10】
制御用ねじ伝動装置(24)が設けられており、該制御用ねじ伝動装置(24)は、スピンドル雄ねじ山を備えたスピンドル(25)と、前記スピンドル雄ねじ山に螺合しているスピンドルナット雌ねじ山を備えたスピンドルナット(26)と、を有し、前記調整部材(18)は、前記制御用ねじ伝動装置(24)を介して前記駆動用ねじ伝動装置(10)に連結されており、好適には、前記駆動用ねじ伝動装置(10)の前記スピンドル(11)は、前記制御用ねじ伝動装置(24)の前記スピンドル(25)と連結、特に結合されており、前記調整部材(18)は、前記制御用ねじ伝動装置(24)の前記スピンドルナット(26)に連結されている、または前記制御用ねじ伝動装置(24)の前記スピンドルナット(26)を形成している、請求項5から9までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項11】
両前記駆動装置終端位置間での前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更は、2つの調整部材終端位置間での前記調整部材(18)の変位に付随して生ぜしめられる、請求項10記載のスピンドル駆動装置。
【請求項12】
前記制御用ねじ伝動装置(24)は、少なくとも1つのワンウェイクラッチ(27,28)を有し、前記スピンドル駆動装置(1)が少なくとも1つの駆動装置終端位置へ位置変更することにより、前記各駆動装置終端位置に前置されたワンウェイクラッチ端部領域(29,30)を通過する際、前記制御用ねじ伝動装置(24)が空転し、好適には、前記制御用ねじ伝動装置(24)は、2つのワンウェイクラッチ(27,28)を有し、前記スピンドル駆動装置(1)が前記両駆動装置終端位置へ位置変更することによりその都度、前記各駆動装置終端位置に前置された前記ワンウェイクラッチ端部領域(29,30)を通過する際、前記制御用ねじ伝動装置(24)は空転する、請求項10または11記載のスピンドル駆動装置。
【請求項13】
前記ワンウェイクラッチ(27,28)は、一方のワンウェイクラッチ端部領域(29,30)に到達すると、前記制御用ねじ伝動装置(24)の前記スピンドルナット(26)が、前記制御用ねじ伝動装置(24)の前記スピンドル(25)との係合外にもたらされることにより形成されており、好適には、前記制御用ねじ伝動装置(24)の前記スピンドル(25)は、前記駆動用ねじ伝動装置(10)の前記スピンドル(11)よりも少ないねじ条数を有している、請求項12記載のスピンドル駆動装置。
【請求項14】
前記ブレーキユニット(13)のばねユニット(21,33)は、該ばねユニット(21,33)が前記制御用ねじ伝動装置(24)の前記スピンドルナット(26)に予荷重を加え、前記制御用ねじ伝動装置(24)の前記スピンドル(25)と常に係合させるように、前記調整部材(18)と連結されている、請求項12または13記載のスピンドル駆動装置。
【請求項15】
前記ブレーキばねユニット(21)は、第1のばねコンポーネント(21a)と第2のばねコンポーネント(21b)と、を有し、第1のばねコンポーネント(21a)と第2のばねコンポーネント(21b)とは少なくとも、前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更範囲の一部にわたり、前記ブレーキパック(P)の予荷重形成に関して相互に作用し、好適には、少なくとも前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更範囲の一部にわたり、前記第1のばねコンポーネント(21a)のばね力は、前記ブレーキパック(P)の予荷重に寄与しており、前記第2のばねコンポーネント(21b)のばね力は、前記ブレーキパック(P)の予荷重を減少させる、請求項7記載のスピンドル駆動装置。
【請求項16】
前記ブレーキパック(P)の予荷重の値は、前記両ばねコンポーネント(21a,21b)のばね力の値の差から生じる、請求項15記載のスピンドル駆動装置。
【請求項17】
前記両ばねコンポーネント(21a,21b)は、前記スピンドル駆動装置(1)の長手方向軸線(1a)に沿って、それぞれ前記ブレーキパック(P)の反対の側に配置されている、請求項15または16記載のスピンドル駆動装置。
【請求項18】
前記ブレーキばねユニット(21)の前記両ばねコンポーネント(21a,21b)は互いに、前記ブレーキばねユニット(21)の同一の部材に、特に制動部材(19)または制動対応部材(20)に作用する、請求項15から17までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項19】
前記ブレーキパック(P)のために軸方向のストッパ(36)が設けられており、前記第1のばねコンポーネント(21a)は、前記ブレーキパックPに対して所定のばね力を、前記軸方向のストッパ(36)の方向に加え、好適には、前記第2のばねコンポーネント(21b)は、前記ブレーキパック(P)に対して所定のばね力を、前記軸方向のストッパ(36)とは逆の方向に加える、請求項15から18までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項20】
少なくとも前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更範囲の一部にわたり、前記ブレーキパック(P)に作用する前記第1のばねコンポーネント(21a)のばね力は、前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更に関係無く一定である、請求項15から19までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項21】
前記ブレーキばねユニット(21)の一方のばねコンポーネント(21a,21b)、特に前記第2のばねコンポーネント(21b)は、ブレーキ作用を調整するために、前記調整部材(18)と連結されており、好適には、前記ブレーキばねユニット(21)は、前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更に応じてブレーキ作用を調整するために、前記調整部材(18)に係合している、または係合させられる、請求項15から20までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項22】
前記ブレーキばねユニット(21)の一方のばねコンポーネント(21a,21b)、特に前記第2のばねコンポーネント(21b)は、ブレーキ作用の調整のために前記駆動用ねじ伝動装置(10)の前記スピンドルナット(12)と連結されており、好適には、前記ブレーキばねユニット(21)は、前記スピンドル駆動装置(1)の位置変更に応じてブレーキ作用を調整するために、前記駆動用ねじ伝動装置(10)の前記スピンドルナット(12)に係合している、または係合させられる、請求項15から21までのいずれか1項記載のスピンドル駆動装置。
【請求項23】
フラップ(2)と、請求項1から22までのいずれか1項記載の、前記フラップ(2)をモータにより位置変更させるためのスピンドル駆動装置(1)と、を備えた、自動車のフラップユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、自動車のフラップ用のスピンドル駆動装置ならびに請求項24記載の、自動車のフラップユニットに関する。
【0002】
「フラップ」という用語は、本発明では広義に理解され、例えば自動車のテールゲート、トランクリッド、エンジンフード、サイドドア、フロアパネル、サンルーフ等が含まれる。以下では、自動車のテールゲートのモータによる位置変更の利用分野に主眼を置く。これは限定的なものではないと理解される。
【0003】
問題のスピンドル駆動装置には通常、モータによるフラップの位置変更機能のみならず、開放位置や、場合によっては中間位置でのフラップの保持機能が与えられる。このため、問題のスピンドル駆動装置には、スピンドル駆動装置ひいてはフラップの動力伝達系の少なくとも一部の制動に用いられるブレーキユニットが装備されている。
【0004】
1つの公知のスピンドル駆動装置(独国実用新案第202011106110号明細書)では、フラップを起点とした力がスピンドル駆動装置へ導入された場合にのみ、ブレーキユニットが作動させられる。その他の場合には、スピンドル駆動装置の駆動モータを起点とした力の、スピンドル駆動装置への導入は、非制動のままである。このためには、クランプローラ・ワンウェイクラッチ形式の機構を備えたクラッチユニットが設けられている。このユニットはコンパクトであると共に、確実に作動する。ただし、構造的な簡略化が望ましいと考えられる。
【0005】
本発明の起点となる、構造的に特に簡単に形成されたスピンドル駆動装置(独国実用新案第202008016929号明細書)が1つの変化形において示すブレーキユニットは、スピンドル駆動装置の駆動モータの駆動軸を常時制動する。確かにこのスピンドル駆動装置は、強力な動作特性を示す。ただし、ブレーキユニットはその全ブレーキ作用でもって常に作動状態にあるので、ブレーキユニットは、フラップのかなりの位置変更範囲において不都合に作用することになる。これは例えば、閉鎖位置の範囲での、モータによるフラップの位置変更に当てはまり、閉鎖位置では不適切なてこ比がモータによる開放に抗して作用し、かつモータによる開放ではドアシールの逆圧がモータによる閉鎖に抗して作用することになる。フラップの閉鎖位置の範囲でも高い動作確実性を保証することができるようにするためには、通常、スピンドル駆動装置に対応配置される駆動モータを過大に寸法設定しなければならず、結果的にはやはり、構造的に手間がかかり、ひいては費用がかさむ構成をもたらすことになる。
【0006】
本発明の根底を成す課題は、公知のスピンドル駆動装置を、動作確実性が損なわれること無しに、費用の観点からスピンドル駆動装置の設計が最適化されるように発展させて改良する点にある。
【0007】
前記課題は、請求項1の上位概念に記載のスピンドル駆動装置において、請求項1の特徴部に記載の構成により解決される。
【0008】
重要なのは、ブレーキユニットを、そのブレーキ作用に関して調整可能に形成し、かつブレーキユニットの調整のために、ブレーキユニットを動力伝達系のコンポーネントと連結する、という基本思想である。「ブレーキユニットの調整」とは、本発明では、ブレーキユニットが作動可能もしくは作動停止可能であるだけでなく、その強度においても変化可能である、ということを意味する。
【0009】
提案に基づく構成により、例えばブレーキユニットのブレーキ作用の連続的な調整が、スピンドル駆動装置の位置変更により可能である。この連続的な調整により、自動車のフラップのモータによる開閉における不連続性が簡単に回避され得る。
【0010】
提案に基づくブレーキユニットの調整により、スピンドル駆動装置の動力伝達系は、ブレーキユニットにより常時制動されていてもよく、このことがモータによるフラップの位置変更に際して不都合に作用することはない(請求項2)。
【0011】
請求項3および4記載の好適な構成は、スピンドル駆動装置の位置変更に応じたブレーキユニットのブレーキ作用の調整の、それぞれ異なる変化形に関する。請求項4記載の1つの択一的な好適な構成では、ブレーキ作用は、スピンドル駆動装置の位置変更に関して一種のヒステリシスを示し、このヒステリシスにおいてブレーキ作用の調整は、追加的にスピンドル駆動装置の位置変更方向にも関係する。これにより、自動車のフラップのその他の機械的な周辺条件に対する、ブレーキユニットのブレーキ作用の特に良好な適合が可能である。
【0012】
請求項5〜23記載のさらに好適な構成は、ブレーキユニットのブレーキ作用の提案に基づく調整に関する、特に構造的に頑丈な実現手段を示すものである。
【0013】
請求項7によれば、制動部材と制動対応部材とは、ブレーキパックの構成部材であり、この場合、任意に少なくとも2つの制動部材および/または少なくとも2つの制動対応部材が設けられている。これにより、ブレーキパックの過度の予荷重が必要とされること無しに、適当な設計において高い制動力もしくは高い制動モーメントが生ぜしめられる。
【0014】
ブレーキユニットの特に簡単な調整は、請求項8によれば制動部材のばね予荷重の変化に起因し、請求項6によれば制動対応部材のばね予荷重の変化に起因する。これにより、それぞれのばね特性線を適当に選択することで、ブレーキ作用を調整する追加的な手段が得られる。
【0015】
ブレーキユニットのブレーキ作用の調整における特に高いフレキシビリティーは、請求項11によれば、ブレーキユニットの調整部材が、好適には駆動用ねじ伝動装置を介して位置変更可能な、制御用ねじ伝動装置と連結されている、という点にある。制御用ねじ伝動装置のねじ条数ならびに条ピッチを適当に調整することにより、ブレーキユニットのブレーキ作用の提案に基づく調整に関して、2つのさらなる自由度が生じることになる。
【0016】
制動特性の特に良好な調整は、請求項16によれば、ブレーキばねユニットに、第1のばねコンポーネントと第2のばねコンポーネントとが対応配置されており、第1のばねコンポーネントと第2のばねコンポーネントのばね力が組み合わされて、ブレーキパックの予荷重が生じることにより、達成され得る。両ばね部材が、スピンドル駆動装置の予荷重形成に関して相互に作用することにより、ブレーキ作用は基本的に広範に調整され得、特にここでブレーキ作用を解消するために、ばねコンポーネントのうちの一方を非緊張状態にする必要はない。このようにして、ブレーキ作用の解消ですら実現可能であり、この場合、各ばねコンポーネントは常に予荷重を加えられており、ひいては位置決めされている。両ばねコンポーネントの、それぞれ非緊張状態から大幅に離れている作動点が常に生じていることにより、大きな温度変化においてさえ、再現可能な制動特性が得られる。
【0017】
請求項22記載の好適な構成では、ばねコンポーネントのうちの一方が、上側の調整部材と連結されており、当該ばねコンポーネントには、調整部材の位置に応じて予荷重が加えられる。これにより、制動特性の特に良好な再現性において、制動特性の正確な調整手段が得られる。
【0018】
特に容易に実現されるべき構成は、請求項22によれば、ブレーキばねユニットの一方のばねコンポーネントが、駆動用ねじ伝動装置のスピンドルナットと連結されていることにより得られる。この点において、制御用ねじ伝動装置は省かれてもよい。
【0019】
請求項24記載の、独立した意義を有する別の教義にしたがって、フラップと、フラップをモータにより位置変更させるための提案に基づくスピンドル駆動装置とを備えた、自動車のフラップユニットを請求する。提案に基づくスピンドル駆動装置に関する全ての記載を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下に本発明を、実施例だけを示すに過ぎない図面につき、より詳しく説明する。
【
図1】提案に基づくスピンドル駆動装置を備えた自動車のリヤを概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1に示したスピンドル駆動装置のうちの、ブレーキユニットに当てはまる部分断面図であって、a)は、フラップが閉鎖位置に位置している状態を示し、b)は、フラップが開放位置に位置している状態を示す。
【
図3】スピンドル駆動装置の位置に関して、
図1に示したスピンドル駆動装置のブレーキユニットのブレーキ作用の特性線を示す図である。
【
図4】
図1に示したスピンドル駆動装置の別の実施形態を、
図2と同様に示す図である。
【
図5】スピンドル駆動装置の位置変更に関して、
図4に示したスピンドル駆動装置のブレーキユニットのブレーキ作用の特性線を示す図である。
【
図6】
図1に示したスピンドル駆動装置のさらに別の実施形態を、
図2と同様に示す図であって、a)は、フラップが閉鎖位置に位置している状態を示し、b)は、フラップが僅かに開放された位置に位置している状態を示す。
【
図7】
図1に示したスピンドル駆動装置のさらに別の実施形態を、
図6と同様に示す図である。
【
図8】
図7に示したスピンドル駆動装置のブレーキパックを示す図であって、a)は、2つの制動部材を備えたブレーキパックを示し、b)は、3つの制動部材を備えたブレーキパックを示す。
【0021】
図示のスピンドル駆動装置1は、ここではテールゲートとして形成された自動車のフラップ2を、モータにより位置変更させるために用いられる。上述した「フラップ」の広義の解釈を参照されたい。
【0022】
フラップ2自体は一般に、フラップ開口3を閉じるために用いられる。この場合、スピンドル駆動装置1はフラップ開口3の側方に、ここでは好適にはフラップ開口3の側方に位置する雨樋4内に配置されている。
図1にはただ1つのスピンドル駆動装置1しか示されていない。ただしここでは好適には、フラップ開口3の両側に各1つのスピンドル駆動装置1が配置されている、ということが想定されている。2つのスピンドル駆動装置1は、構造上実質的に同一に形成されている。
【0023】
図1からは、そこに示されたスピンドル駆動装置1が、一方の端部では自動車のボデー5に枢着されており、かつ他方の端部ではフラップ2に枢着されていることが看取され得る。
【0024】
スピンドル駆動装置1は、本発明ではスピンドル駆動装置1の位置変更範囲を規定する2つの駆動装置終端位置間で位置変更され得る。駆動装置終端位置の規定についてもやはり、種々様々な有利な変化形が考えられる。ここでは好適には、駆動装置終端位置は、スピンドル駆動装置1が取り付けられた状態でのフラップ2の開放位置と閉鎖位置とに対応する、スピンドル駆動装置1の各位置である。
【0025】
スピンドル駆動装置1は、引込み位置S
eと伸長位置S
aとの間で位置変更可能であり、このことは本発明では、スピンドル駆動装置1の位置変更範囲を規定している。ここでは好適には、引込み位置S
eはフラップ2の閉鎖位置に対応している一方で、伸長位置S
aはフラップ2の開放位置に対応している。
図1には、フラップ2が開放位置で示されている。
図1に示す詳細図では、より見やすくために、スピンドル駆動装置1は引込み位置S
eでしか図示されていない。
【0026】
スピンドル駆動装置1は、駆動装置の動作を導き出す2つの駆動装置接続部6,7と、これらの駆動装置接続部6,7間の動力伝達系8とを有している。動力伝達系8には、モータユニット9と、駆動技術的にモータユニット9の下流側に接続された駆動用ねじ伝動装置10とが含まれている。駆動用ねじ伝動装置10は、モータユニット9により駆動されて駆動装置の動作を生ぜしめ、駆動装置の動作は、本発明では駆動装置の直線的な動作である。
【0027】
駆動用ねじ伝動装置10はスピンドル伝動装置であり、スピンドル伝動装置は、スピンドル雄ねじ山を備えたスピンドル11と、スピンドル雄ねじ山に螺合しているスピンドルナット雌ねじ山を備えたスピンドルナット12とを有している。
【0028】
スピンドル駆動装置1には、このスピンドル駆動装置1の動力伝達系8の少なくとも一部を制動するためのブレーキユニット13が対応配置されている。つまりブレーキユニット13は、動力伝達系8の当該部分に対してブレーキ作用を発揮する。ブレーキ作用は、動力伝達系8のいずれかのコンポーネントに作用する制動モーメントまたは制動力であってもよい。概念として相応に広義に解釈されるべきブレーキ作用は、
図3および
図5において符号Bで示唆されている。
【0029】
ブレーキユニット13は、好適には特にスピンドル駆動装置1が遮断されている場合に、
図1に示した開放位置にフラップ2を保持するために用いられる。ここでは好適には、フラップ2の保持は、ばねユニット14により支援されることが想定されており、ばねユニット14は、
図1に示したように、2つの駆動装置接続部6,7の間で作用する。
【0030】
重要なのは、ブレーキユニット13が、そのブレーキ作用Bに関して調整可能である、という点であり、この場合、ブレーキユニット13はその調整用に、動力伝達系8のコンポーネント15に連結されている。このことは極一般的に、ブレーキユニット13のブレーキ作用Bは、動力伝達系8の当該コンポーネント15の位置変更を介して調整され得る、ということを意味する。ブレーキユニット13の構造に応じて、
図3および
図5から看取することができるような、スピンドル駆動装置1の位置Sに応じたブレーキ作用Bの様々な特性が生ぜしめられる。
【0031】
図3および
図5には、まず破線でブレーキ作用Bが、
図2および
図4に示した構成に関するスピンドル駆動装置1の位置Sに応じて示されている。この場合、フラップ2の開放動作16と閉鎖動作17との間では、動作の逆転に基づき逆向きのブレーキ作用Bが生じている。フラップ2の各動作に対する各ブレーキ作用Bの対応関係は、
図3および
図5に矢印16,17で示唆されている。
【0032】
この点において好適な図示の2つの実施例では、ブレーキユニット13がスピンドル駆動装置1の動力伝達系8を常時制動している。しかしまた、基本的にブレーキユニット13は動力伝達系8から分離可能である、ということも考えられる。
【0033】
図3および
図5からはさらに、ブレーキ作用Bが少なくともスピンドル駆動装置1の位置変更範囲の一部にわたってスピンドル駆動装置1の位置変更に伴い、ここでは好適には直線的に上昇または下降していることが看取され得る。この場合、2つの好適な実施例では、ブレーキ作用Bは少なくともスピンドル駆動装置1の位置変更範囲の一部にわたってフラップ2のモータによる開放に伴い上昇し、かつ少なくともスピンドル駆動装置1の位置変更範囲の一部にわたってフラップ2のモータによる閉鎖に伴い下降することが想定されている。このことは適切でもある。それというのも、ブレーキ作用Bは第1に、開放位置または中間位置でのフラップ2の保持用に必要とされる一方で、ブレーキユニット13のブレーキ作用Bは、フラップ2の閉鎖位置の範囲では、むしろ不都合に作用するからである。
【0034】
基本的には
図3に示すように、開放動作16中のブレーキ作用Bの特性線は、閉鎖動作17中のブレーキ作用Bの特性線に対して対称的である、ということが想定されていてもよい。しかしまた、
図5に示すように、ブレーキユニット13のブレーキ作用Bの相応する各特性線を互いに非対称的に設定することが有利な場合もある。
【0035】
図3および
図5には、そこに示した、スピンドル駆動装置1の位置変更に対するブレーキ作用Bの上昇率もしくは下降率が、両位置変更方向について常に同一であることが示されている。これは数学的には、スピンドル駆動装置1の位置変更範囲の当該部分においてとりわけブレーキ作用の上昇が生じている限り、ブレーキ作用Bの特性線の勾配は、数値的に常に等しい、ということを意味する。
【0036】
図5に示す特に好適な設定では、ブレーキ作用Bは、スピンドル駆動装置1の位置変更範囲の少なくとも一部にわたって一定であり続ける。これは特に、駆動装置終端位置の範囲、特にフラップ2の開放位置に対応する駆動装置終端位置の範囲において想定されている。
【0037】
図5に示した設定は、開放動作16と、引き続く閉鎖動作17とにおけるブレーキ作用Bの特性線がヒステリシス的であるという点において、特殊性を示している。つまり、ブレーキ作用Bの上昇もしくは下降は、先行するスピンドル駆動装置1の位置変更もしくは位置変更方向に応じて異なる。これに関する実現化を、以下でより詳しく説明する。
【0038】
図2および
図4に示したブレーキユニット13は、それぞれ調整部材18を装備しており、この場合、ブレーキユニット13のブレーキ作用Bは、調整部材18の変位により調整可能である。このために調整部材18は、駆動用ねじ伝動装置10、ここでは好適には駆動用ねじ伝動装置10のスピンドル11に連結されており、これによりブレーキ作用Bは少なくとも、スピンドル駆動装置1の位置変更範囲の一部にわたり、スピンドル駆動装置1の位置変更に伴って上昇または下降する。以下に、調整部材18の駆動用ねじ伝動装置10との連結を、さらに詳しく説明する。
【0039】
ここでは好適には、ブレーキユニット13は制動部材19と制動対応部材20とを装備しており、この場合、制動部材19と制動対応部材20とは、ブレーキ作用Bを生ぜしめるためにブレーキばねユニット21を介して互いに予荷重を加えられているので、互いに摩擦係合状態にある。
【0040】
この場合、さらに好適には、調整部材18は、調整部材18の変位がばね予荷重の変化に付随して生じるように、ブレーキばねユニット21と連結されている、ということが想定されている。このことは、
図2aと
図2bならびに
図4aと
図4bの各概観から明らかである。
【0041】
極一般的に、制動部材19と制動対応部材20とは、ブレーキ作用を生ぜしめるためにブレーキばねユニット21を介して予荷重を加えられたブレーキパックPの構成部材である。好適には、ブレーキパックPは少なくとも2つの制動部材19a〜cおよび/または少なくとも2つの制動対応部材20a〜cを有している。この場合、制動部材19a〜cおよび制動対応部材20a〜cは軸方向に積層されているので、ブレーキ作用Bを生ぜしめるための予荷重は、それぞれ隣り合った制動部材19a〜cと制動対応部材20a〜cとの間に摩擦係合を生ぜしめることになる。
図8aには、2つの制動部材19a〜cと2つの制動対応部材20a〜cとから成るブレーキパックPが例示されているのに対して、
図8bには、3つの制動部材19a〜cと3つの制動対応部材20a〜cとから成るブレーキパックPが例示されている。
【0042】
所望のブレーキ作用Bを生ぜしめるために、制動部材19は、動力伝達系8の、制動されるべきコンポーネント22、ここでは好適には動力伝達系8の駆動軸に連結されている。この点において好適な図示の実施例において、前記連結は、制動部材19とコンポーネント22との間の相対回動不能な連結である。この場合、制動部材19は、スピンドル駆動装置1の長手方向軸線1aに沿って少なくとも僅かに摺動可能なので、制動部材19は図示のように、上側の制動対応部材20aと下側の制動対応部材20bとの間で位置調整可能である。
【0043】
制動対応部材20、ここでは上側の制動対応部材20aおよび下側の制動対応部材20bは、いずれかがもしくは両方がケーシングコンポーネント23に連結されている。この場合、下側の制動対応部材20bがケーシングコンポーネント23と結合されている一方で、上側の制動対応部材20aは長手方向軸線1aに対して相対回動不能に、ただし長手方向に摺動するように、ケーシングコンポーネント23と連結されている。
【0044】
ここで重要なのは、駆動用ねじ伝動装置10に追加して制御用ねじ伝動装置24が設けられている点であり、制御用ねじ伝動装置24は、スピンドル雄ねじ山を備えたスピンドル25と、スピンドル雄ねじ山に螺合しているスピンドルナット雌ねじ山を備えたスピンドルナット26とを有している。この場合、調整部材18は、制御用ねじ伝動装置24を介して駆動用ねじ伝動装置10に連結されており、この連結において好適には、駆動用ねじ伝動装置10のスピンドル11は、制御用ねじ伝動装置24のスピンドル25と連結されており、ここでは好適には結合されている。このことは
図2および
図4に示されており、これらの各図面において上方に向かって出発しているのが駆動用ねじ伝動装置10のスピンドル11であり、下方に向かって出発しているのがモータユニット9の駆動軸9aである。
【0045】
特に好適な構成では、調整部材18は、制御用ねじ伝動装置24のスピンドルナット26に連結されている。それどころか、ここでは好適には、調整部材18が、制御用ねじ伝動装置24のスピンドルナット26を形成している。つまり、駆動用ねじ伝動装置10のスピンドル11の回転は少なくとも、スピンドル駆動装置1の位置変更範囲の一部にわたって調整部材18の相応する変位を招く。詳細には、両駆動装置終端位置間でのスピンドル駆動装置1の位置変更は、2つの調整部材終端位置間での調整部材18の変位に付随して生ぜしめられる。
【0046】
第1の実施例について、
図2aおよび
図2bには調整部材18が両方の調整部材終端位置で示されており、この場合、
図2aはフラップ2の閉鎖位置に対応しており、
図2bはフラップ2の開放位置に対応している。
図2aおよび
図2bの概観から、調整部材18は、フラップ2が閉鎖位置と開放位置との間で変位する間、常に制御用ねじ伝動装置24のスピンドル25と係合している、ということが明らかである。これに基づき、
図3に示す、ブレーキユニット13のブレーキ作用Bの特性が生じる。
【0047】
機能形式の1つの変化形が、
図4に示す実施例において得られる。ここでは制御用ねじ伝動装置24が、少なくとも1つのワンウェイクラッチ、ここでは好適には2つのワンウェイクラッチ27,28を装備している。スピンドル駆動装置1が駆動装置終端位置へ位置変更することにより、各駆動装置終端位置に前置されたワンウェイクラッチ端部領域を通過する際、制御用ねじ伝動装置24は空転することになる。ワンウェイクラッチ端部領域は、
図5に符号29,30で示唆されている。「制御用ねじ伝動装置の空転」とは、本発明では、制御用ねじ伝動装置24の、特に制御用ねじ伝動装置24のスピンドル25の変位が、調整部材18の変位ひいてはブレーキ作用Bの変化をトリガすることは一切無い、ということを意味する。このことは、
図5から最も良く看取され得る。
【0048】
ワンウェイクラッチ27,28は、ここでは好適には、制御用ねじ伝動装置24のスピンドル25が、各ワンウェイクラッチ27,28用に相応する切欠き31,32を、制御用ねじ伝動装置24のスピンドル25のスピンドル雄ねじ山に有していることにより形成されている。
【0049】
付加的に、好適には、制御用ねじ伝動装置24のスピンドル25は、駆動用ねじ伝動装置10のスピンドル11よりも少ないねじ条数を有している、ということが想定されている。駆動用ねじ伝動装置10のスピンドル11が、図示のように制御用ねじ伝動装置24のスピンドル25と連結、特に結合されている限り、このことは適当な設計において、両駆動装置終端位置間でのスピンドル駆動装置1の位置変更が両ワンウェイクラッチ端部領域29,30の通過に付随して生じる、ということを意味する。一方のワンウェイクラッチ端部領域29,30に到達すると、制御用ねじ伝動装置24のスピンドルナット26は、制御用ねじ伝動装置24のスピンドル25との係合外にもたらされるので、ブレーキ作用Bは、ワンウェイクラッチ端部領域29,30の通過中は、その都度一定であり続ける。
【0050】
閉鎖位置からフラップ2をモータにより開放する際にも、スピンドルナット26が、制御用ねじ伝動装置24のスピンドル25を確実に「通す」ことを保証するためには、別のばねユニット33が設けられており、別のばねユニット33は、このばねユニット33が制御用ねじ伝動装置24のスピンドルナット26に予荷重を加え、制御用ねじ伝動装置24のスピンドル25と常に係合させるように、調整部材18と連結されている。このことは、
図4aから最も良く看取され得る。
図4bには、開放位置からフラップ2をモータにより閉鎖する際にも、ブレーキばねユニット21の同じ機能が果たされる、ということが示されている。
【0051】
さらに指摘しておくと、
図5には、調整部材18とブレーキばねユニット21との間のギャップSが拡大された別の実施形態における、
図4に示したスピンドル駆動装置1のブレーキユニット13のブレーキ作用Bの特性線が、一点鎖線で示されている。前記ギャップSは、閉鎖位置からのモータによる閉鎖が、まず一定のまたは極僅かなブレーキ作用の位置変更区間に付随して生じる、ということを惹起する。このことは、この区間ではブレーキばねユニット21がまだ調整部材18との係合外にある、ということに起因する。
【0052】
提案に基づくブレーキユニット13は、スピンドル駆動装置1の動力伝達系8の全く異なる箇所に配置されていてもよい。例えばブレーキユニット13は、動力伝達系8内に接続された過負荷クラッチ内に組み込まれている、ということが考えられる。択一的に、ブレーキユニット13は、駆動用ねじ伝動装置10のスピンドルナット12内に組み込まれている、ということが想定されていてもよい。
【0053】
図6および
図7に示す2つの別の好適な構成では、ブレーキばねユニット21が、第1のばねコンポーネント21aと第2のばねコンポーネント21bとを有しており、これらは少なくとも、スピンドル駆動装置1の位置変更範囲の一部にわたり、ブレーキパックPの予荷重形成に関して相互に作用する。このことは図示のように、ブレーキパックPの予荷重形成に関する両ばねコンポーネント21a,21bのばね力が、スピンドル駆動装置1の位置変更に応じて多少なりとも相殺されることを意味する。ばねコンポーネント21aおよび21bは、ここでは好適には、それぞれスピンドル駆動装置1の長手方向軸線1aに対して同軸に方向付けられたコイルばね部材である。基本的に、各ばねコンポーネント21a,21bは、複数のコイルばね部材を有していてもよい。両ばねコンポーネント21a,21bのばね特性、特に各有効ばね特性線は、ここでは好適には互いに同一である。
【0054】
この点において好適な、
図6および
図7に示した実施例において、ばねコンポーネント21a,21bは、ブレーキパックPと直接または間接的に連結されており、これにより少なくとも、スピンドル駆動装置1の位置変更範囲の一部にわたって第1のばねコンポーネント21aのばね力は、ブレーキパックPの予荷重に寄与しており、第2のばねコンポーネント21bのばね力は、ブレーキパックPの予荷重を減少させる。詳細には、ブレーキパックPの予荷重の値は、両ばねコンポーネント21a,21bのばね力の値の差から生じる。このため、両ばねコンポーネント21a,21bは、スピンドル駆動装置1の長手方向軸線1aに沿って、それぞれブレーキパックPの反対の側に配置されている。
【0055】
好適には、ブレーキパックPの少なくとも一部は、少なくとも僅かに軸方向に、つまりスピンドル駆動装置1の長手方向軸線1aに沿って摺動可能である。この点において好適な図示の各実施例では、ブレーキパックPはそれぞれ全体的に、少なくとも僅かに軸方向に摺動可能である。この場合、制動部材19はそれぞれ、駆動用ねじ伝動装置10のスピンドル11と相対回動不能に連結されているのに対し、制動対応部材20はそれぞれ、ケーシングコンポーネント23と相対回動不能に連結されている。
【0056】
上記の意味で相互に作用するために、ブレーキばねユニット21のばねコンポーネント21a,21bは、基本的には直接互いに係合していてもよい。ただしここでは好適には、ブレーキばねユニット21の両ばねコンポーネント21a,21bは互いに、ブレーキばねユニット21の同一の部材に、ここでは好適には制動対応部材20もしくは制動対応部材20aに作用する。このことを実現するために、ブレーキパックPの少なくとも一部は、一方の端部がブレーキパックPの制動対応部材20に係合しているまたは係合可能であり、かつ他方の端部が第2のばねコンポーネント21bに係合しているまたは係合可能である鐘形体35内に配置されている。このことは基本的に、制動部材19に対して想定されていてもよい。
【0057】
図6および
図7には、長手方向軸線1aに対して軸方向のストッパ36が、軸方向に摺動可能なブレーキパックPのために設けられており、第1のばねコンポーネント21aはブレーキパックPに対して所定のばね力を、軸方向のストッパ36の方向に加えている、ということが示されている。これに対して第2のばねコンポーネント21bはブレーキパックPに対して所定のばね力を、軸方向のストッパ36とは逆の方向に加えている。軸方向のストッパ36は基本的に、ケーシングコンポーネント23またはスピンドル11に固定された制動部材19または制動対応部材20の機能をも引き受けることができる。
【0058】
さらに好適には、少なくともスピンドル駆動装置1の位置変更範囲の一部にわたり、ブレーキパックPに作用する第1のばねコンポーネント21aのばね力は、スピンドル駆動装置1の位置変更に関係無く一定である。このことは、結果的に生じるブレーキパックPの予荷重に対する第2のばねコンポーネント21bの影響が無視し得る程度に小さな場合に当てはまる。このことは、
図7bに示した状況に当てはまる。それというのも、そこでは第2のばねコンポーネント21bがブレーキパックPとの係合外にあるからである。
【0059】
この点において好適な、
図6に示した実施例では、ブレーキばねユニット21の一方のばねコンポーネント21a,21b、特に第2のばねコンポーネント21bが、ブレーキ作用を調整するために、制御用ねじ伝動装置24の調整部材18と連結されている。つまり、第2のばねコンポーネント21bのばね力は、ここでは鐘形体35を介して、スピンドル駆動装置1の位置変更に応じて、第1のばねコンポーネント21aのばね力に抗して作用する。
図6aに示した状況では、フラップ2は閉鎖位置に位置しており、閉鎖位置において調整部材18は、
図6において下方の位置に位置している。これにより、第2のばねコンポーネント21bは高いばね力でもって制動対応部材20に作用することになり、その結果、制動対応部材20が制動部材19から解離させられて、ブレーキ作用が解消されている。フラップ2をモータにより開放すると、調整部材18は
図6bに示した位置に到達し、このことは第2のばねコンポーネント21bのばね力を減少させるので、第1のばねコンポーネント21aのばね力に基づき、ブレーキパックPの予荷重が生ぜしめられる。厳密には、この予荷重は上述したように、両ばねコンポーネント21a,21bの各ばね力の値の差から得られる。
【0060】
ブレーキ作用の形成において基本的に類似の機能形式を示すのが、
図7に示すユニットである。ここではブレーキばねユニット21の一方のばねコンポーネント21a,21b、特に第2のばねコンポーネント21bが、ブレーキ作用の調整のために駆動用ねじ伝動装置10のスピンドルナット12と連結されている。ここでは好適には、ブレーキばねユニット21は、スピンドル駆動装置1の位置変更に応じてブレーキ作用を調整するために、駆動用ねじ伝動装置10のスピンドルナット12に係合している、または係合させられる。この点においてスピンドルナット12は上述した調整部材を形成しており、別個の制御用ねじ伝動装置は省かれてもよい。
【0061】
独立した意義を有する別の教義にしたがい、フラップ2と、提案に基づく、フラップ2のモータによる位置変更に用いられるスピンドル駆動装置1とを備えた自動車のフラップユニット34自体を請求する。提案に基づくスピンドル駆動装置1に関する全ての記載を参照されたい。