【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤を提供する。
【0014】
本発明の一実施例において、前記歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤は、マウスバンドの形態として提供され得る。
【0015】
本発明の一実施例による歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤は、合成シリカを含むスライムハイドロゲル(slime hydrogel)であって、口腔内に付着され得る。
【0016】
本発明において用いられた「マウスバンド」は、口腔内において、歯牙、歯ぐきまたは頬の内側(buccal)などに付着可能な剤形を意味し得る。一例で、帯のような形態で付着され得る。前記マウスバンドは、例えば、長方形、円形などの形態を有し得、目的とするターゲット部位との付着時間などを考慮して多様な形態として製作され得る。必要に応じて特定の形状なく粘土のような練り粉の形態としても提供され得る。
【0017】
本発明の発明者は、歯牙の隙間にまで薬物が伝達できるよう、小さい圧力によっても形態変形が容易であり、付着部位から流れ落ちないほどの接着力と形態維持力を有する口腔用製剤の剤形についての研究結果、本発明を完成した。
【0018】
本明細書において用いられた「スライムハイドロゲル(slime hydrogel)」とは、伸び率が優秀でよく伸びるハイドロゲルを意味するものとして用いられた。ハイドロゲルは、三次元高分子網目(polymeric network)を形成して膨潤性を有している。流体を吸収する能力を有しており、薬物を一定の濃度で放出できるという特徴があるが、前記ハイドロゲルは硬くて(stiff)歯牙の屈曲や隙間に密着しにくく、前記ハイドロゲルを伸ばす場合、よく切れ得る。
【0019】
スライムハイドロゲルは、ゼリーのように軟性が優秀でよく伸び、三次元高分子網目の構造をなしていることから、薬物の放出調節が卓越で、自由に形態変形が可能な新しい剤形である。
【0020】
本発明の一実施例において、スライムハイドロゲルは、PVAの−OH基と塩(例えば、ホウ酸塩)との水素結合によって、三次元ネットワークが形成された状態よりも弾力性があり、形態変形の可能性を有する状態を意味し得る。スライムハイドロゲルは、スライムよりは流動性が大きくなくて形態固定力があるが、ハイドロゲルよりは柔軟性が強く、よく伸びる性質を有する剤形であって、スライムとハイドロゲルとの中間程度の形態変形の可能性を有する。
【0021】
本発明の一実施例において、前記スライムハイドロゲル剤形は、合成シリカまたはアルジネート化合物によって達成できる。
【0022】
シリカは、無機増粘剤であって、非常に小さくて一定の大きさを有し、水不溶性であり、水溶液への分散力に優れている。水素結合の特性を有するため、揺変性(thixotropy)を向上させることができることから、スライムハイドロゲル剤形を達成するのに卓越であることを確認したが、本発明は、このような理論に制限されて解釈されない。
【0023】
前記合成シリカは、シリカ粉末、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、コロイドシリカ、エアロゲル、シリカゾルより選択されたいずれか一つ以上であり得、望ましくは、ヒュームドシリカを用い得る。前記ヒュームドシリカは、例えば、EVONIK社のAEROSIL(登録商標)類を用いることができる。例えば、AEROSIL(登録商標)200、AEROSIL(登録商標)300などを用いることができる。前記合成シリカは、歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤の乾燥重量に対して0.1重量%〜20重量%含まれ得、望ましくは、0.5重量%〜10重量%含まれ得る。
【0024】
前記含量範囲内であるとき、剤形のレオロジー面で望ましい。
【0025】
本発明の一実施例において、前記スライムハイドロゲルは、ポリビニルアルコール(PVA)及び前記ポリビニルアルコールの−OH基と反応して水素結合を形成し得る。前記ポリビニルアルコールは、生体安定性が立証された高分子であって、薄膜の形成が可能なフィルム形成高分子である。前記ポリビニルアルコールが含む−OH基は、塩と水素結合によるブリッジ構造から、ゲルの形成時における伸縮性が優秀で、本発明の合成シリカとの使用によって本発明が目的とする剤形の特性を達成することができる。
【0026】
前記ポリビニルアルコールの−OH基と水素結合を形成する塩は、ホウ酸塩(borate)、リン酸塩(phosphate)またはこの混合物を用い得、前記ホウ酸塩には、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウムなどが挙げられ、前記リン酸塩には、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸カリウムなどが挙げられる。
【0027】
望ましくは、前記PVA、合成シリカとの相溶性などを考慮すれば、前記塩は、ホウ酸ナトリウムであり得る。
【0028】
本発明のまた他の実施例による製剤は、アルジネート化合物を含むスライムハイドロゲルとして口腔内に付着され得る。
【0029】
前記アルジネート化合物の水素結合特性がスライムハイドロゲルの形成に影響を及ぼし、スライムハイドロゲルに揺変性を付与する剤形を達成するのに卓越した効果を奏することを確認したが、本発明は、このような理論に制限されて解釈されない。望ましくは、前記アルジネート化合物は、製剤の乾燥重量に対して0.1重量%〜20重量%含まれ得、望ましくは5重量%以下、より望ましくは2重量%以下、最も望ましくは0.5重量%以下であるとき、スライムハイドロゲルが均一に形成されるため、望ましい。
【0030】
前記アルジネート化合物は、カルシウムアルジネート、ポタシウムアルジネート、ナトリウムアルジネート、トリエタノールアミンアルジネート、またはこれらの混合物を含み得る。
【0031】
本発明の製剤は、口腔内へ伝達できる薬効成分を含むことができる。前記薬効成分としては、口腔内へ伝達できる薬効成分であれば、全て含まれ得、望ましくは、口腔内疾患の治療または予防、改善などを目的とする薬効成分を含み得る。
【0032】
前記薬効成分としては、例えば、歯牙美白成分、フッ素イオン供給源を含む虫歯予防成分、歯石生成抑制成分、抗炎症成分、抗菌成分、その他のビタミン、ミネラル成分などを含み得る。また、しみる歯の改善及び症状緩和成分などを含み得る。より具体的には、フッ化ナトリウム(sodium fluoride)、フッ化スズ(stannous fluoride)、フッ化インジウム(indium fluoride)、フッ化アミン(amine fluoride)、モノフルオロリン酸ナトリウム(sodium monofluorophosphate)からなる群より選択されたいずれか一種以上のフッ素イオン供給源;ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)を含む再石灰化剤(remineralization agent);歯牙美白成分として過酸化水素(hydrogen peroxide)、過酸化カルバミド(carbamide peroxide)、過酸化カルシウム(calcium peroxide)、 過ホウ酸塩(perborate)、過炭酸塩(percarbonate)、ペルオキシ酸(peroxyacids)、過硫酸塩(persulfates)、亜塩素酸カルシウム(calcium chlorite)、亜塩素酸バリウム(barium chlorite)、亜塩素酸マグネシウム(magnesium chlorite)、亜塩素酸リチウム(lithium chlorite)、亜塩素酸ナトリウム(sodium chlorite)またはこれらの混合物を含み得、美白効果の向上のために縮合リン酸塩を過酸化物とともに使用可能であり、使用可能な縮合リン酸塩としては、ピロリン酸四ナトリウム(tetrasodium pyrophosphate,TSPP)、酸性ピロリン酸ナトリウム(sodium acid pyrophosphate,SAPP)、トリポリリン酸ナトリウム(sodium tripolyphosphate,STP)、ピロリン酸ナトリウムカリウム(sodium potassium pyrophosphate)、ピロリン酸カリウム(tetrapotassium pyrophosphate)、酸性メタリン酸ナトリウム(acidic sodium metaphosphate)、酸性ポリリン酸ナトリウム(acidic sodium polyphosphate)のうち一種または二種以上を前記過酸化物とともに用い得る。このような縮合リン酸塩は、歯石除去や歯石形成の抑制にも用いることができる。また、これらは、キレート化剤として、歯牙のステイン(stain)の形成に影響を及ぼす金属を除去することで、美白効果の向上にも寄与できる。トリクロサン(triclosan)、クロルヘキシジン(chlorhexidine)、アレキシジン(alexidine)、ヘキセチジン(hexetidine)、サンギナリン(sanguinarine)、塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、サリチルアニリド(salicylanilide)、臭化ドミフェン(domiphen bromide)、塩化セチルピリジニウム(cetylpyridinium chloride,CPC)、塩化テトラデシルピリジニウム(tetradecylpyridinium chloride,TPC)、またはこれらの混合物を含む抗微生物剤;アスピリン(aspirin)、ケトロラク(ketorolac)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、ピロキシカム(piroxicam)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、またはこれらの混合物を含む抗炎症剤;または、チアミン(thiamine)、リボフラビン(riboflavin)、ニコチン酸(nicotinic acid)、パントテン酸(pantothenic acid)、ピリドキシン(pyridoxine)、ビオチン(biotin)、葉酸(folic acid)、ビタミンB12(vitamin B12)、リポ酸(lipoic acid)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、ビタミンA(vitamin A)、ビタミンD(vitamin D)、ビタミンE(vitamin E)、ビタミンK(vitamin K)またはこれらの混合物;もしくはこれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。また、歯周疾患の予防及び改善に効果的な薬物としては、トウモロコシ不けん化定量抽出物、厚朴抽出物、没薬、ラタニア、カモマイル、ポリクレスレン、センテラ定量抽出物、ニクズク抽出物、デクスパンテノール(dexpanthenol)、β−シトステロール(β−sitosterol)、アセチルサリチル酸(acetyl salicylic acid)などを単独でまたは一定比の混合物として含み得る。しみる歯の症状改善及び緩和成分としては、塩化亜鉛、リン酸カリウム、二リン酸カリウム、塩化カルシウム、シュウ酸、シュウ酸カリウム、シュウ酸鉄(ferric oxalat)などを単独でまたは二種以上を含み得る。
【0033】
前記薬効成分が製剤のスライムハイドロゲル内に均一または不均一に分散して存在し得る。
【0034】
本発明の一実施例による製剤は、スライムハイドロゲルの内部に分散した薬効成分の放出を助ける物質をさらに含み得、例えば、前記薬物放出を助ける物質として、剤形内にチャンネル構造や多孔性構造、または泡(foam)を形成するものであれば、用いることができる。例えば、i)酢酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸などの酸、またはこれらの水溶性塩、例えば、 クエン酸ナトリウムと、ii)水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸水素ナトリウム(baking soda)、炭酸ナトリウムのような塩基(base)が入っている群より選択されたいずれか一種を含み得、望ましくは、酸は酢酸、塩基は炭酸水素ナトリウムであり得、より望ましくは、歯磨き粉に主に使われる酸と塩基であるクエン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムであり得る。
【0035】
本発明の一実施例による製剤は、スライムハイドロゲル自体として存在し得、製剤に支持体(例えば、水不溶性フィルム膜)などをさらに付着した形態としても存在し得る。歯牙または歯牙周辺部への付着時、必要に応じて支持層(backing film)をさらに含み得る。
【0036】
前記支持層は、本発明の一実施例による製剤を付着するとき、希望しない部位への接触を防止する役割を果たすこともできる。前記支持層は、口腔用フィルムに通常使用される水不溶性高分子を含み得、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアセテート(EVA)、セルロースアセテートフタレート、セラック(Shellac)、ポリビニルアセテート、エチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレート共重合体(methacryloylethyl betain/methacrylate copolymer;Yukaformer,Mitsubishi社製)、メタクリル酸共重合体(methacrylic acid copolymer;Eudragit L 100,Eudragit L 12,5, Eudragit L 100−55, Eudragit L 30D−55)及びアミノアルキルメタクリレート共重合体(aminoalkyl methacrylate copolymer;Eudragit E 100,Eudragit E 12,5,Eudragit RL 100,Eudragit RL 30D)などを用い得る。
【0037】
本明細書で用いられた「歯牙周辺部」とは、通常、歯ぐきとして呼ばれる部位を含む概念であり、歯牙周辺の粘膜部位を全て含む意味として用いられ得る。また、「歯牙周辺部」とは、製剤の構造上、歯牙に製剤が塗布されるとき、歯牙のみならず、口腔内への伝達のための薬効成分が共に伝達される部位を包括する意味として用いられ得る。本明細書においては、歯牙または歯牙周辺部を「歯牙」と混用して記載することがあり、「歯牙」のみを記載していても、歯牙または歯牙周辺部を共に含む意味として本明細書において理解され得る。
【0038】
本発明の一実施例においては、製剤の薬物が放出されて歯牙から除去される時点に容易に取り外すことができ、表面に残余物をほとんど残さず除去することができる。本発明の一実施例による合成シリカを含む場合、ポリビニルアルコールとホウ酸ナトリウムとを混合して歯牙への密着力を向上させることができる。また、薬物が放出した後に除去するとき、歯牙の表面にべたつきを残すことなく簡便に除去することができる。
【0039】
本発明の他の実施例において、本発明は、相転移化合物と、前記相転移化合物と混合して相転移化合物の硬化速度を調節できる高分子と、を含む、歯牙または歯牙周辺部付着用の口腔製剤を提供する。前記製剤は、口腔内へ伝達できる薬効成分を含み得る。前記製剤を歯牙または歯牙周辺部に付着した後、前記製剤内に含まれた薬効成分は、口腔内の目的部位へ放出されて伝達される。
【0040】
通常、相転移剤形の場合、第1剤と第2剤とが混合されて相転移が起これば、固定された一つの固まりで存在するようになり、本発明の発明者は、本発明に用いられた相転移速度を調節する成分を共に用いる場合、相転移化合物の硬化速度を調節して薬物放出に効果的な新しい形態の製剤を提供することができるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0041】
本発明の発明者は、使用が便利で口腔内へ薬物を効果的に伝達できる新しい形態の製剤を開発するための長期間の研究結果、本発明を提案した。
【0042】
既存の相転移剤形の場合、通常、相転移完了後に一つの固まりになり、取り外し(peel−off)方式で除去する。本発明の一実施例による相転移速度調節物質を共に用いれば、除去時、一体の固まりではなく小さい固まりが弱い結合によって一つに固まっている構造を有するようになることによって、歯ブラシによる歯磨き(brush−off)によって除去することができる。即ち、歯磨きによって本発明の製剤を歯牙の表面から除去し、使用後、口腔内に綺麗さを与えることが特徴である。
【0043】
本明細書で用いられた「歯牙周辺部」とは、通常、歯ぐきとして呼ばれる部位を含む概念であり、歯牙周辺の粘膜部位を全て含む意味として用いられ得る。また、「歯牙周辺部」とは、製剤の構造上、歯牙に製剤が塗布されるとき、歯牙のみならず、口腔内への伝達のための薬効成分が共に伝達される部位を包括する意味として用いられ得る。本明細書においては、歯牙または歯牙周辺部を「歯牙」と混用して記載することがあり、「歯牙」のみを記載していても、歯牙または歯牙周辺部を共に含む意味として本明細書において理解され得る。
【0044】
本明細書で用いられた「製剤」とは、薬効成分の効果には影響を及ぼすことなく治療効果を十分発揮するように加工して作られた製品を意味する。
【0045】
本明細書で用いられた「歯牙に塗布される」という意味は、本発明の製剤を歯牙または歯牙周辺部に位置させた後、使用者が圧力を加えて歯牙に製剤を密着させる前までを含み得る。
【0046】
本発明の「製剤が歯牙に密着時」という意味は、歯牙に塗布してから一定時間の経過後に使用者が圧力を加えて、製剤を、歯牙屈曲、歯牙の隙間、歯牙と歯ぐきとの間に密着させる時点を意味し得る。
【0047】
本発明の「製剤を除去する時点」とは、歯牙または歯牙周辺組織に密着させた後、薬物が放出されてから口腔内から脱落させる時点を意味し得、製剤の目的及び用途、薬物の放出量に応じて2時間付着後に除去し得るが、使用の便利性の観点から、歯牙に密着させた後30分以内、より望ましくは10分以内に除去し得る。除去時点における製剤の硬度は、製剤が歯牙に塗布される時点および密着する時点に比べて増加し得る。
【0048】
本明細書で用いられた「相転移速度を調節する」とは、製剤の硬化速度、硬化程度を調節することと同一の意味で用いられ得、時間によって相転移による製剤の固まり程度を調節することができることを意味する。
【0049】
本発明の発明者は、口腔内に薬効成分を伝達できる薬物伝達システムについての研究を重ねた結果、新たな形態の薬物伝達システム、このようなシステムを用いて口腔内に薬効成分を伝達することができる新しい方法を提案するに至った。
【0050】
本発明の発明者は、薬効成分を効果的に口腔内の特定部位(例えば、歯牙美白が必要な部位、口腔内の炎症発生部位、歯周疾患発生部位など)に伝達できる新たな薬物伝達システムについて長期間研究した。その結果、歯牙または口腔内の粘膜部位に便利に塗布して、屈曲部位、歯牙の隙間にまでも優秀に密着して希望部位への薬物到達率を増加させることができる新しい形態の口腔用製剤を開発した。
【0051】
歯牙の隙間への薬物伝達に有利な剤形は、通常、液状であるか、流動性が高い形態として認識してきた。しかし、初期粘度が非常に低くてよく流れ落ち、使用が不便であるだけでなく、ターゲット部位への密着時間が少なくて十分な接触時間を確保できないという問題があった。
【0052】
このような問題を解決するために、練り粉のような形態として、歯牙と口腔内のターゲット部位に付着して初期密着力を向上させるながらも、流れ落ちにくい剤形を開発するに至った。ひいては、本発明の発明者は、特に、口腔内の歯ぐき及び歯牙への接着性が強く、かつ相転移メカニズムに関与する性質を有する高分子が、相転移化合物と混合して用いられれば、初期使用時の粘度と除去時の粘度との偏差が大きくないことから、付着は容易で刺激なく除去できることを実験によって確認し、新たな形態の製剤を開発した。
【0053】
本明細書で用いられた「歯牙に塗布される」という意味は、本発明の製剤を歯牙または歯牙周辺部に位置させた後、使用者が圧力を加えて歯牙に製剤を密着させる前までを含み得る。
【0054】
本発明の「製剤が歯牙に密着時」という意味は、歯牙に塗布してから一定時間の経過後に使用者が圧力を加えて、製剤を、歯牙屈曲、歯牙の隙間、歯牙と歯ぐきとの間に密着させる時点を意味し得る。
【0055】
本発明の「製剤を除去する時点」とは、歯牙または歯牙周辺組織に密着させた後、薬物が放出されてから口腔内から脱落させる時点を意味し得、製剤の目的及び用途、薬物の放出量に応じて2時間付着後に除去し得るが、使用の便利性の観点から、歯牙に密着させた後30分以内、より望ましくは10分以内に除去し得る。除去時点における製剤の硬度は、製剤が歯牙に塗布される時点および密着する時点に比べて増加し得る。
【0056】
本発明の一実施例で、本発明の製剤は、相転移化合物の硬化速度を調節する高分子を含み得る。本発明の一実施例による製剤は、前記相転移化合物の硬化速度を調節する高分子を含むことで、使用に便利な初期硬度を有し得、薬物が放出してから除去すべき時点には、硬度値が相対的に少なくて除去が容易となり、付着部位への刺激が軽減する口腔用製剤を提供することができる。
【0057】
例えば、相転移化合物のうちアルジネート粉末の場合、水分と接触すれば、初期に急激に固まり、時間の経過につれ硬度が相当増加してしまい、製剤内に分散した薬効成分の放出が円滑でないことがある。しかし、本発明の一実施例において、アルジネートと同一の反応基であるカルボキシル基を複数有している高分子、例えば、PVM/MA(Gantrez)高分子を混合して製造された製剤は、急激な硬度の変化なく薬物放出に有利である。
【0058】
本明細書において用いられた「硬度(hardness)」とは、製剤を圧縮するために必要な力の程度を意味し得る。本発明における製剤の硬度は、TA XT PLUS(ステーブルマイクロシステムズ社製)の圧縮テストモード(compression test mode)で測定した硬度である。50mLのビーカーに20gを入れた後、硬度測定のための直径20mmのアルミニウムプローブをセットし、テスト速度は1.5mm/s、ターゲットモードは距離、ディスタンスは10mmにして硬度を測定した。硬度は、算出される一回目のサイクルのピーク値として理解される。単位は、g(g force)で表す。
【0059】
前記相転移物質は、口腔組成物に粘性を誘発する物質として、カラギーナン(carrageenan)、ペクチン(pectin)、キシログルカン(xyloglucan)、ジェランガム(gellan gum)、アルギン酸アンモニウム(ammonium alginate)、アルギン酸マグネシウム(magnesium alginate)、アルギン酸カリウム(potassium alginate)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、アルギン酸リチウム(lithium alginate)、キトサン(chitosan)、ポリ(D,L−乳酸)(poly(D,L−lactic acid))、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコライド)(poly(DL−lactide−co−glycolide))、ポリカプロラクトン(poly−caprolactone)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid(carbopol))、ポリビニルアセタルジエチルアミノアセテート(polyvinylacetal diethyl aminoacetate(AEA))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethyl cellulose)、ポリ(メタクリル酸)−ポリ(エチレングリコール)(poly(methacrylic acid)−poly(ethylene glycol))、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(D,L−ラクチド)(poly(D,L−lactide)−block−poly(ethylene glycol)−block−poly(D,L−lactide))、PEG−オリゴグリコリル−アクリレート(PEG−oligoglycolyl−acrylate)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(poly(N−isopropyl acrylamide))、スクロースアセテートイソブチレート(sucrose acetate isobutyrate)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル(glyceryl monolinoleate)、モノアラキドン酸グリセリル(glyceryl monoarachidonate)、モノステアリン酸グリセリル(glyceryl monostearate)などを単独でまたは二種以上を共に用い得、業界において相転移物質として使用可能な物質であれば、いずれも用いることができ、前記例示に限定されない。
【0060】
望ましくは、前記相転移化合物は、アルギン酸アンモニウム(ammonium alginate)、アルギン酸マグネシウム(magnesium alginate)、アルギン酸カリウム(potassium alginate)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、アルギン酸リチウム(lithium alginate)またはこれらの混合物を用いることができる。
【0061】
前記相転移化合物は、相転移化合物の硬化速度調節特性を有する高分子とともに製剤に含まれ得る。前記相転移化合物の硬化速度調節特性を有する高分子は、相転移化合物が含む作用基と同一の作用基(例えば、カルボキシル基)を有し得る。
【0062】
本発明の製剤に含まれる相転移化合物の硬化速度調節特性を有する高分子は、カルボキシル基、ヒドロキシ基など、相転移化合物の相転移メカニズムに関与する作用基を有する高分子より選択されたいずれか一種以上を含み得る。例えば、本発明の一実施例の製剤がアルギン酸とこの塩による相転移反応をする場合、前記高分子は、カルボキシル基を有する高分子、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボマー、カーボポール、アクリレートコポリマー(Eudragit L−100)、ポリクォタニウム−39、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体(PVM/MA copolymer)からなる群より選択されたいずれか一種以上の高分子であり得る。望ましくは、前記高分子は、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体の一つであるGantrezを用いることができ、最も望ましくは、水溶性でありながら口腔製品に適用可能な等級であるGantrez S−97を用いることができる。 前記高分子は、歯牙及び歯ぐきへの接着力も優秀で、本発明の目的に望ましく用いられる。これに対し、ポリビニルアルコールによる相転移反応である場合、ヒドロキシ基を有する高分子、例えば、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸塩、微結晶セルロースヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸、カラギーナンのうち一種以上を用いることができる。
【0063】
前記相転移化合物の硬化速度調節特性を有する高分子は、相転移化合物と水溶性カルシウムとの結合を妨害し、自身が含んでいるカルボキシル基(−COOH)が水溶性カルシウムと結合することで、相転移化合物の硬化を妨害することと考えられるが、このような理論に限定されることではない。
【0064】
望ましくは、前記相転移化合物の硬化速度調節特性を有する高分子は、水溶性でありながら、相転移化合物が含む作用基と同一の作用基を含み得る。例えば、PVM/MAが含んでいる−COOH基は、水溶性カルシウムと結合するようになり、アルジネートが水溶性カルシウムと結合することを妨害することで、硬化を遅延させることができる。
【0065】
前記相転移反応の速度を調節する特性を有する高分子は、製剤内の総重量に対して0.01重量%〜10重量%含まれ得、望ましくは、0.05重量%〜5重量%含まれ得る。前記範囲である場合、水と接触したときに本発明が目的とする硬度範囲を有することができ、優れた密着力を提供することができる。また、前記高分子の含量比率が前記範囲を超過する場合、相転移化合物との結合が強くなってしまい、分散した薬効成分の放出に影響を及ぼして薬効成分の放出を阻害する恐れがある。前記相転移化合物と、相転移反応の速度を調節する特性を有する高分子とは、相転移化合物:相転移反応の速度を調節する特性を有する高分子の混合比率が、5:0.01〜0.07の重量比率であって、望ましくは5:0.03〜0.05の重量比率で混合され得る。前記重量比率であるとき、目的とする製剤の硬度を達成することができる。
【0066】
前記薬効成分が口腔組成物内に均一に分散され得、分散がばらついている場合も、本発明の混合に含まれ得る。
【0067】
本発明の一実施例によれば、本発明の製剤は、半固体(semi−solid)特性を共に有していることから、屈曲や隙間に密着できる。
【0068】
本発明の製剤は、練り粉や粘土のような形態を有し得、軟膏形態で歯牙または歯牙周辺部位に塗布され得る。
【0069】
本発明の一実施例において、前記製剤は二剤形として用いてもよく、必要に応じて三剤形として用いてもよい。例えば、i)相転移化合物が含まれた第1剤と、相転移反応の速度を調節する高分子、水、薬効成分、その他の製剤に含まれ得る成分を含む第2剤と、を混合して用いることができ、ii)相転移化合物が含まれた第1剤と、相転移反応の速度を調節する高分子を含む第2剤と、 水、薬効成分、その他の製剤に含まれ得る成分を含む第3剤と、を混合して用いることができる。
【0070】
前記第1剤及び第2剤、または第1剤、第2剤及び第3剤は、混合(mixing)して歯牙または歯牙周辺部に塗布され得る。
【0071】
本発明のまた他の実施例によれば、相転移化合物と、前記相転移化合物と混合してから1分後の製剤の硬度が140g〜350gに至り、前記相転移化合物と混合してから10分後の製剤の硬度が5,200g〜13,000gに至る高分子とを含み、製剤内に含まれた薬効成分を口腔内へ伝達する歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤を提供する。
【0072】
前記相転移化合物は、本明細書に含まれた粘性を誘発する物質であれば、制限なく用いることができ、望ましくは、カラギーナン(carrageenan)、ペクチン(pectin)、キシログルカン(xyloglucan)、ジェランガム(gellan gum)、アルギン酸アンモニウム(ammonium alginate)、アルギン酸マグネシウム(magnesium alginate)、アルギン酸カリウム(potassium alginate)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、アルギン酸リチウム(lithium alginate)、キトサン(chitosan)、ポリ(D,L−乳酸)(poly(D,L−lactic acid))、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコライド)(poly(DL−lactide−co−glycolide))、ポリカプロラクトン(poly−caprolactone)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid(carbopol))、ポリビニルアセタルジエチルアミノアセテート(polyvinylacetal diethyl aminoacetate(AEA))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethyl cellulose)、ポリ(メタクリル酸)−ポリ(エチレングリコール)(poly(methacrylic acid)−poly(ethylene glycol))、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(D,L−ラクチド)(poly(D,L−lactide)−block−poly(ethylene glycol)−block−poly(D,L−lactide))、PEG−オリゴグリコリル−アクリレート(PEG−oligoglycolyl−acrylate)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(poly(N−isopropyl acrylamide))、スクロースアセテートイソブチレート(sucrose acetate isobutyrate)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル(glyceryl monolinoleate)、モノアラキドン酸グリセリル(glyceryl monoarachidonate)、モノステアリン酸グリセリル(glyceryl monostearate)などを、単独でまたは二種以上を共に用いることができ、当業界において相転移物質として用いられる物質であれば、いずれも用いることができ、前記例示に限定されない。望ましくは、前記相転移化合物は、アルギン酸またこの塩であり得、望ましくは、前記アルギン酸またはこの塩は、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸リチウムまたはこれらの混合物を用いることができる。
【0073】
前記相転移化合物が含まれた製剤に含有された薬効成分の効果的な放出と、歯牙、歯牙の隙間または歯牙周辺組織部位への密着のために、前記製剤は、第1剤と第2剤とを混合してから1分間は、操作が容易な程度の粘性と硬度を有すべきであり、望ましくは、140g〜350gの硬度を有することが容易となり得る。そして、製剤の成分を混合してから10分後は、薬物の放出が円滑に起こることができ、形態固定力と付着力を維持するために、5,200g〜13,000gの硬度を有することが望ましい。本発明が目的とする製剤の硬度を提供するために、望ましくは、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボマー、カーボポール、アクリレートコポリマー(Eudragit L−100)、ポリクォタニウム−39、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体(PVM/MA copolymer)からなる群より選択されたいずれか一種以上の高分子であり得る。望ましくは、前記高分子は、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体であり得る。
【0074】
本発明の製剤によって達成できる形態固定力は、薬物の到達が必要な部位との十分な接触時間を確保可能にするため、目的とする効果達成にさらに有利である。
【0075】
本発明の一実施例による製剤は、混合してから1分後に測定した硬度と、10分後に測定した硬度との差が、5,000g〜12,000g、望ましくは、6,000g〜10,000gであり得る。前記硬度範囲の差であるとき、付着が容易で取り扱いやすく、薬物の放出に効果的であり、除去が容易となり、本発明の目的達成に有利である。
【0076】
本発明の製剤は、前記薬物放出を助ける物質をさらに含み得、前記薬物放出を助ける物質としては、剤形内にチャンネル構造や多孔性構造、または泡を形成するものであれば、用いることができる。例えば、第1剤と第2剤との二つの構成からなる場合、第1剤には酸(acid)が、第2剤には塩基(base)が入っており、二つの剤形が混合されて粘性のある形態を形成するとき、剤形内に泡が形成される。即ち、第1剤には、酢酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸などの酸またはこれらの水溶性塩、例えば、クエン酸ナトリウムが入っており、第2剤には、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸水素ナトリウム(baking soda)、炭酸ナトリウムのような塩基が入っている群より選択されたいずれか一種を含み得、望ましくは、酸は酢酸、塩基は炭酸水素ナトリウムであり得、より望ましくは、歯磨き粉に主に使われる酸と塩基であるクエン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムであり得る。
【0077】
本発明の製剤は、第1剤と第2剤とを混合して相転移化合物が水分と接触してから硬度が徐々に増加して歯牙への付着が容易となり、除去時点における硬度は、通常の相転移化合物と水とが接触したときに有する硬度範囲よりは硬くないながらも形態固定力があり、除去時に歯牙及び歯ぐきに刺激を誘発しない。
【0078】
本発明の他の実施例で提供する、歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤は、i)薬効成分、ii)相転移化合物、及びiii)水不溶性でありながら、エタノールに溶解される高分子、を含む。本発明の製剤は、液状として歯牙または歯牙周辺部に塗布され、塗布後、口腔内の唾液と接触して相転移することで、歯牙または歯牙周辺部への付着性を有する。
【0079】
前記製剤を製造するための溶剤として、エタノールが用いられる。本発明の製剤は、水には一切溶解されないか、または、水には一定の条件(例えば、水とエタノールとの一定比率(例えば、エタノールと水との混合物においてエタノールの含量が80%以上)または一定のpH条件)でのみ溶解されながら、エタノールには溶解される高分子を含む。前記製剤は、前記水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子を含み得る。前記水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子は、35〜38℃の温度、pH7の条件において水に溶解されず、エタノールには溶解される高分子を含み得る。
【0080】
前記製剤は、歯牙または歯牙周辺部への塗布時、広がりがよく、口腔内で一定時間が経過した後には、歯牙または歯牙周辺部への付着性を有する。
【0081】
本発明の発明者は、製剤内に含まれた成分が唾液と接触して相転移を誘導すると共に、水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子を一緒に用いることで、ターゲット部位に多い量をロード(loading)して厚く塗布されても、製剤が速く固まり、口腔内のターゲット部位に十分な付着時間を有することができることを実験によって確認した。
【0082】
本発明の製剤は、多湿な口腔内で製剤の溶解度に変化が起こり、即ち、製剤の溶媒であるエタノールには溶解されており、口腔内における多量のpH7以下の水(唾液)と接触しながら溶解度が減少することで、口腔内のターゲット部位に十分な時間留まり、希望する効果を得ることができる。
【0083】
本発明の製剤は、口腔内への塗布直後は流動性に優れた液状の形態であり、歯牙の隙間及び歯牙と歯ぐきとの境界部位によく染み込まれる。本発明の製剤は、塗布後、時間の経過につれ唾液と反応して製剤が徐々に固まってゲル化し、歯牙または歯牙周辺部に付着される。
【0084】
本明細書で用いられた「ゲル(gel)化」とは、ゾル(sol)がゲルへ変わる現象を含むのみならず、系の明らかな弾性増加または粘性の上昇を伴う現象を含む意味である。唾液と接触して液状が徐々に固まる現象を含み、ゲル化によって弾性や粘度がどのぐらい増加するかは、特に制限されない。
【0085】
前記相転移化合物は、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、モノアラキドン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリルまたはこれらの混合物より選択されたいずれか一種のモノグリセリド(monoglycerides)を含み得、望ましくは、モノオレイン酸グリセリル、及び/またはモノリノール酸グリセリルを用い得る。
【0086】
前記相転移化合物は、水分と接触して相転移を誘導する本発明の目的上、モノオレイン酸グリセリルであることが望ましい。前記相転移化合物は、製剤の総重量に対して5〜80重量%含まれ得る。前記含量範囲における少量の水または唾液との接触時、相転移の特徴を有するので、本発明の目的に望ましい。
【0087】
本発明の製剤は、エタノールのみに解け、水にはほとんど溶解されない高分子を共に用いて、前記エタノールのみに溶解される高分子も水との接触時、可溶性相(soluble phase)から不溶性相(insoluble phase)に転換される。そのため、前記エタノールのみに溶解される高分子も、他の意味の相転移が起こることから、前記のような含量範囲として製剤内に相転移化合物が含まれ得る。
【0088】
本発明の一実施例に含まれる水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子は、エタノールには溶解されるが、a)水には溶解されない高分子、またはb)通常は水に溶解されないが、口腔内のpH(pH7)よりも高いpHのような特定条件で水に溶解される高分子、例えば、酸性条件である胃、中性条件の剤形内では解けないが、塩基性条件である腸のみで溶ける通常の腸溶性コーティングポリマー(enteric coating polymer)を含み得る。例えば、b)通常は水に溶解されないが一般的な口腔のpHよりも高い条件のような特定条件では水に溶解される高分子は、エタノールに溶解されるながらもpH7以下の水には溶解されない高分子を含み得る。
【0089】
モノグリセリドは、温度と水分の含量によって相転移される特徴があり、相が変わることにつれ、構造的な形態及び物性が変わる特性を有する。前記モノグリセリドは、相転移が起これば、流動性のある構造から流動性なく付着性を有する固形構造となる。しかし、モノグリセリドが速く相転移するためには厚く塗ってはいけないため、スプレイタイプで可能な限り薄くターゲット部位に塗布することが特徴であった。モノグリセリドを用いた相転移製剤は、薄すぎる厚さから十分な量の薬物伝達には不適切であり、一部の口臭除去剤のように十分な付着時間による薬物伝達を必要としない製剤において一部のみが用いられていた。
【0090】
本発明は、このような問題を解決し、十分な付着時間を確保しながら薬物を効果的に伝達することができる方案を提示する。
【0091】
前記水には溶解されずエタノールに溶解される高分子は、エチルセルロース(ethyl cellulose)、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体のブチルエステル(Buthyl ester of PVM/MA copolymer)、ポリビニルアセテート(polyvinyl acetate)、ポリビニルアセテートフタレート(polyvinyl acetate phthalate)、セラック(shellac)、ロジン(rosin)、メタクリル酸共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標) L100,L100−55)、またはこれらの混合物であり得、望ましくは、エチルセルロース、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体のブチルエステル、またはこの混合物であり得る。
【0092】
本発明の一実施例において、前記薬効成分は、水には溶解されにくく、エタノールのみに溶解される薬効成分が特に望ましく用いられ得る。また、他の実施例において、前記薬効成分としては、水に溶けにくく、水に均一に分散する薬効成分であるものが望ましく用いられ得る。
【0093】
本発明の他の実施例による製剤は、通常の流れ落ちる溶液やゲルの粘性に類似な粘性を有し得、例えば、ブルックフィールド粘度計によって、常温でRV6スピンドル、速度20で測定したとき、10,000以下、望ましくは5,000以下、より望ましくは100〜10,000、さらに望ましくは500〜5,000の粘性を有し得る。本発明は、実施例によって唾液と接触する前は前記粘度範囲を有し、歯牙または口腔内に塗布された後は、歯牙または口腔内組織への付着性を有するゲルまたは固体へ相転移する、歯牙または歯牙周辺部付着用の製剤を提供する。前記相転移は、望ましくは口腔内の温度条件、36〜38℃の温度条件で測定し得る。
【0094】
前記粘性は、業界で通常使用されるブルックフィールド粘度計を用いて、RV6スピンドル、常温または口腔の温度条件で粘度を測定した結果として得ることができ、前記粘性は粘度を有する性質を意味し、粘性と粘度は混用して用いることがある。単位は、cPsとして表す。
【0095】
前記製剤は、本発明の水不溶性でありながらエタノールに溶解される高分子及び本発明の相転移化合物を含み得る。
【0096】
前記製剤は、一実施例で、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、モノアラキドン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、またはこれらの混合物より選択された高分子;及びエチルセルロース、メチルビニルエーテル/マレイン酸無水物共重合体のブチルエステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセテートフタレート、セラック、ロジン、メタクリル酸共重合体、またはこれらの混合物より選択された高分子を共に含み得る。
【0097】
本明細書で用いられた「歯牙周辺部」とは、通常、歯ぐきとして呼ばれる部位を含む概念であり、歯牙周辺の粘膜部位を全て含む意味として用いられ得る。また、「歯牙周辺部」とは、製剤の構造上、歯牙に製剤が塗布されるとき、歯牙のみならず、口腔内への伝達のための薬効成分が共に伝達される部位を包括する意味として用いられ得る。本明細書においては、歯牙または歯牙周辺部を「歯牙」と混用して記載することがあり、「歯牙」のみを記載していても、歯牙または歯牙周辺部を共に含む意味として本明細書において理解され得る。
【0098】
本明細書で用いられた「製剤」とは、薬効成分の効果には影響を及ぼすことなく治療効果を十分発揮するように加工して作られた製品を意味する。
【0099】
本明細書で用いられた「歯牙に塗布される」という意味は、本発明の製剤を歯牙または歯牙周辺部の一部でも接触させる場合であれば、塗布の意味に含まれ得る。
【0100】
本発明の発明者は、口腔内に薬効成分を伝達できる薬物伝達システムについての研究を重ねた結果、新たな形態の薬物伝達システム、このようなシステムを用いて口腔内に薬効成分を伝達することができる新しい方法を提案するに至った。
【0101】
前記製剤は、歯牙または歯牙周辺部に付着するとき、必要に応じて支持層(backing film)をさらに含み得る。前記支持層は、本発明の一実施例による製剤が固まる時間が長い場合、歯ぐきなどの希望しない部位についてしまうことを防止する役割も果たす。前記支持層は、口腔用フィルムに通常使用される水不溶性高分子を含み得、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアセテート(EVA)、セルロースアセテートフタレート、セラック(Shellac)、ポリビニルアセテート、エチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレート共重合体(methacryloylethyl betain/methacrylate copolymer;Yukaformer,Mitsubishi社製)、メタクリル酸共重合体(methacrylic acid copolymer;Eudragit L 100,Eudragit L 12,5, Eudragit L 100−55, Eudragit L 30D−55)及びアミノアルキルメタクリレート共重合体(aminoalkyl methacrylate copolymer;Eudragit E 100,Eudragit E 12,5,Eudragit RL 100,Eudragit RL 30D)などを用い得る。
【0102】
本発明の一実施例では、製剤の薬物が放出されてから除去される時点で歯磨きをすることで容易に除去することができる。
【0103】
一使用例によれば、支持層に本発明の練り粉状態の製剤を塗布した後、口腔内のターゲット部位に付着し、一定時間が経過してから(ある程度固まって歯ぐきなどに付け出さないとき)支持体を除去することができる。支持体を除去した後、除去時点には普段使っていた歯ブラシで歯磨きをすることで本発明の製剤を除去することができる。取り外し(Peel−off)の形態で用いる場合、固まる過程で支持体を途中除去せず、除去時点で共に除去してもよい。
【0104】
本発明の製剤は、例えば、一定時間の経過後、歯牙または歯牙周辺部から除去する時点で、歯磨きによって除去(brush−off)することができる。通常の歯磨きのような外部刺激や圧力によって本発明の製剤は脱落可能である。 歯磨きによる除去のための道具としては、例えば、歯ブラシ、スポンジなどを用いることができるが、種類は特に制限されない。