(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チャネル間構造体は、前記装置の第1の表面における前記チャネルの開口を、前記装置の第2の表面における前記チャネルの開口より広くなるように、形成している請求項1に記載の装置。
間隙を越えて陰極から陽極まで進行する電子ビームをアクティベートすることを更に含み、前記チャネルを通る前記線の投影によって覆われる面積は、前記陽極上の前記電子ビームの焦点スポットより小さい請求項8に記載の方法。
前記複数のチャネルの少なくとも1つに関して、前記チャネル間構造体は、前記チャネルの内面の第1のセグメントが前記チャネルの前記内面の第2のセグメントより滑らかであるように、前記チャネルを形成している請求項8に記載の方法。
前記チャネル間構造体は、前記装置の第1の表面における前記チャネルの開口を、前記装置の第2の表面における前記チャネルの開口より広くなるように形成している請求項8に記載の方法。
前記装置を移動することは、前記装置を回転させること、前記装置を章動させること、或いは、前記装置を振動させることのうちの少なくとも1つを含む請求項19に記載の方法。
前記チャネル間構造体は、前記装置の第1の表面における前記チャネルの開口を、前記装置の第2の表面における前記チャネルの開口より広くなるように、形成している請求項21に記載のシステム。
前記放射線源は陰極及び陽極を備え、前記システムの動作中に、電子ビームが、間隙を越えて前記陰極から前記陽極まで進行し、前記実効焦点スポットサイズは、前記陽極上の前記電子ビームの焦点スポットより小さい請求項21に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本開示の1または複数の技術を実行することができる例示的なX線検査装置100を示すブロック図である。
図1の例において、装置100は、X線源102と、X線検出器104とを備える。X線源102はX線106を放出する。X線源102は、X線管の一例とすることができる。
図1の例で示すように、X線106はX線源102から現れる場合があり、発散する経路に従う。X線検出器104は、X線源102によって放出されるX線等のX線を検出する。
図1及び本開示の残りの部分は主にX線を論じるが、X線に関して論じることは、γ線等の他のタイプの放射にも適用可能な場合がある。それゆえ、X線源102は放射線源の一例とすることができ、X線検出器104は放射線検出器の一例とすることができる。
【0016】
さらに、
図1の例において、X線源102とX線検出器104との間に対象物108が配置される。対象物108は、調査対象物とすることができる。例えば、対象物108は、欠陥があるかを検査されている1つの産業機器とすることができる。X線106が対象物108を通り抜けるとき、対象物108内の特定の構造体が、対象物108内の他の構造体より大きくX線106を減衰させる場合がある。結果として、X線検出器104は、対象物108内の減衰が大きい構造体を通るX線源102からの光線に対応するX線検出器104上の場所において、少ないX線放射線を検出する。従って、減衰が大きい構造体は、X線検出器104上にX線影を落とす。
【0017】
いくつかの例において、X線検出器104は、対象物108内の減衰が大きい構造体によって投じられる影のパターンを明らかにする物理的なラジオグラフを生成するために現像することができるX線感受性フィルムを備える。他の例において、X線検出器104は、影のパターンを表す、電気信号または光学信号等の信号を生成することができる。そのような例において、画像処理システム110が信号を処理し、影のパターンを明らかにする電子/デジタルラジオグラフを生成することができる。画像処理システム110は、パーソナルコンピューター、専用コンピューティングデバイス、または別のタイプのコンピューティングデバイス等のコンピューティングデバイスを備えることができる。
【0018】
種々の例において、X線検出器104は種々の方法において実現される。例えば、X線検出器104は、フラットパネルX線検出器(FPD)を含むことができる。他の例では、X線検出器104は、レンズ結合シンチレーション検出器、線形ダイオードアレイ(LDA)、または別のタイプのX線検出器を含むことができる。FPDは、ガラス検出器アレイ上のアモルファスシリコン上に製作されたヨウ化セシウム等のシンチレーション材料の層を備えることができる。このシンチレーター層は、X線を吸収して可視光光子を放出する。これらの可視光光子は、次に、ソリッドステート検出器によって検出される。検出器ピクセルサイズは、数十マイクロメートル〜数百マイクロメートルの範囲とすることができる。いくつかの例では、X線検出器104は、フラットパネルX線検出器を含む。いくつかの例では、X線検出器104のピクセルサイズは、25マイクロメートル〜400マイクロメートルの範囲内とすることができる。さらに、一般的な市販のFPDの視野は、約100mm〜500mmの範囲とすることができる。市販のFPDは、大きな視野を必要とする用途に用いることができる。
【0019】
高解像度の用途は、光学レンズを用いて、放出された可視光を、電荷結合デバイス(CCD)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)検出器等の検出器に中継するレンズ結合検出器を使用する場合がある。いくつかの例では、このレンズは、1x〜100xの範囲の倍率を提供することができ、このため、有効なピクセルサイズは、0.1マイクロメートル〜20マイクロメートルとなる。X線検出器104がレンズ結合検出器を含むいくつかの例では、X線検出器104のピクセルサイズは、0.1マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲内にある。さらに、X線検出器104がレンズ結合検出器を含むいくつかの例では、視野は、0.2mm〜25mmの範囲とすることができる。
【0020】
図1の例で示すように、X線源102と対象物108との間に焦点スポット調整装置112が配置される。いくつかの例において、焦点スポット調整装置112はX線源102に、或いは、X線源102内に取り付けられる。いくつかの例において、焦点スポット調整装置112は、X線源102の遮蔽材料等の、X線源102の別の構成要素の一体部分を形成する。いくつかの例において、焦点スポット調整装置112は、可動、取外し可能及び/または交換可能である。後に更に詳細に説明されるように、焦点スポット調整装置112は、X線管自体を変更することなく、X線源102のX線管の焦点スポットの実効サイズを変更または調整する効果を与えることができる。
【0021】
後に詳細に説明されるように、焦点スポット調整装置112は、X線管またはγ線源から放出されている散乱放射を除去しながら、X線管またはγ線源の実効焦点スポットを調整することができる。焦点スポット調整装置112は、減衰が実質的に大きい材料を含むチャネル間構造体に隣接する、空気または減衰が実質的に小さい材料を含む複数のチャネルを形成する格子状構造体を備えることができる。いくつかの例において、焦点スポット調整装置112は、固定画像格子パターンを除去するだけでなく、電子ビームの実効焦点スポットを更に調整するための運動機構を与えることができる。ビーム出力を最適化するために焦点スポット調整装置112を位置合わせする方法も提供される。焦点スポット調整装置112の使用は、所与のX線管またはγ線源で生成される画像の空間分解能及びコントラスト感度を改善することができる。
【0022】
焦点スポット調整装置112は、種々の環境で応用される場合がある。例えば、焦点スポット調整装置112は、定置機器及び可搬機器の両方に関して工業、医療または他の産業において使用されるX線システム及びγ線システムに適用される場合がある。さらに、焦点スポット調整装置112は、静止陽極管及び回転陽極管とともに使用することができ、密閉管及び開放型真空管(open vacuum tubes)とともに使用することができる。
【0023】
図2は、本開示の1または複数の技術による焦点スポット調整装置112を備えるX線源102の一例を示す概念図である。
図2は、説明のためにのみ与えられ、構成要素の縮尺または実際の形状を示すことを意図していない。
【0024】
図2の例において、X線源102はハウジング198を備える。ハウジング198は、望ましくない場所においてX線がX線源102から生じるのを阻止する遮蔽材料を備えることができる。ハウジング198は、鋼、鉛、タングステン、タンタル、その他の金属若しくは材料等の種々の材料から構成することができる。鋼、鉛、タンタルまたはタングステンは、X線を遮蔽するためにハウジング198において有用な場合があるが、X線源からのX線の代わりに、γ線または他の帯域の電磁放射線が使用される場合には特に、ハウジング198のために他の材料も有効な場合がある。例えば、ハウジング198は、金属セラミック管を備えることができる。ハウジング198は、密閉された内部空間204を形成する。内部空間204は、ハウジング198の内部空間204内に真空が存在するように、実質的に真空にすることができる。ハウジング198の内部空間204は、陰極206及び陽極208を含む。陰極206は、本明細書においてフィラメントと呼ばれる場合もある。陰極206は、電子のビーム210(破線)を放出し、陽極208は、放出された電子を収集する。本開示はまた、電子のビーム210を電子ビーム210と呼ぶ。電子ビーム210の電子が陽極208に突き当たると、陽極208によってX線(小さい点の点線)が放出される。
【0025】
X線源102の内部からX線を放出できるようにするために、ハウジング198内に低減衰材料の窓200(すなわち、ビームポート)が形成される。
図2の例において、窓200は焦点スポット調整装置112と位置合わせされる。
【0026】
図2の例で示すように、電子ビーム210の電子は、本開示において焦点スポット212と呼ばれる、陽極208の多次元エリアに突き当たる。従来の焦点スポット管(すなわち、400μm超の焦点スポットを有するX線管)、ミニ焦点X線管(100μm〜400μm)及びγ線源の適用例では、幾何学的拡大が、焦点スポットのサイズ(光線の原点)によって実質的に制限される。本開示において焦点スポットのサイズ(例えば、400μm)の測定値の指標は、焦点スポットの最も長い寸法等の、製造業者によって規定されるような焦点スポットの測定値を指している。本開示において他の場所で説明されるように、焦点スポット212は単一の幾何学的点ではないので、ラジオグラフにおいてペナンブラが生じる場合がある。従って、これらの一般の管設計(例えば、従来の、若しくはミニ焦点)またはγ線源のうちの1つを使用するとき、幾何学的拡大は、焦点スポットサイズに起因する幾何学的不鮮明(例えば、ペナンブラ)によって制限される場合がある。
【0027】
X線管の従来の構成は、電子放出器フィラメントサイズを制御すること、電子ビームを合焦させること、電子ビームをクロッピング(cropping)及び/またはコリメートすること、電子ビームが対象物(例えば、陽極208)に突き当たるこの対象物の角度を調節すること、及び上記の技術の任意の組み合わせ等の種々の技術によって、焦点スポットを制御することができる。いくつかのX線管は、管ワット数が増加すると、電子ビームの焦点を絶えずぼかす。さらに、「可変焦点」管は、複数の焦点スポットを生成するために、電子ビームの合焦を徐々に調節することができる。さらに、いくつかのX線管は、単一のX線管から複数の焦点スポットを生成するために、多くの場合に異なるサイズの複数のフィラメントを備えている。γ線源は、焦点スポットサイズを形成する主な要因である種々のサイズに分けられる。
【0028】
図2の例において、焦点スポット調整装置112は、主に、X線源102のハウジング198の外部に配置される。しかしながら、他の例では、焦点スポット調整装置112は主に、或いは、完全にハウジング198の内部にある場合がある。焦点スポット調整装置112は、カラム構造体214の組を備える。カラム構造体214は、焦点スポット調整装置112の放射線源側表面218から、焦点スポット調整装置112の物体側表面220まで焦点スポット調整装置112を通り抜けるチャネル216を形成する。従って、カラム構造体214は、チャネル間構造体と呼ばれる場合がある。簡単にするために、
図2の例は4つのチャネルのみを示す。しかしながら、カラム構造体214は、間隔を置いて規則的またはランダムなパターンで配置される場合がある、より多くのチャネルを形成することができる。
【0029】
チャネル216は、X線に対する減衰が相対的に小さい物質で満たすことができる。例えば、チャネル216は、空気または別の物質を含むことができる。しかしながら、カラム構造体214は、X線に対する減衰が相対的に大きい物質から形成することができる。例えば、カラム構造体214は、タングステン、鉛、鉛ガラスまたはタンタル等の高密度材料から形成することができる。チャネル216が低減衰物質を含み、一方、カラム構造体214が高減衰物質を含むので、X線は、チャネル216を通り抜けることを可能にすることができ、かつカラム構造体214によって減衰することができる。
【0030】
チャネル216が物体側表面220から放射線源側表面218に向かって内向きに角度をなすようにカラム構造体214がチャネル216を形成し、それにより、チャネル216の中心線を通り抜ける概念線が焦点スポット212内のエリアも通り抜けるようになる。従って、概念線は、焦点スポット212の表面上または表面付近(例えば、表面の後方)の場所に収斂することができる。本開示は、焦点スポット212内のエリアを実効焦点スポット222と呼ぶ場合がある。従って、実効焦点スポット222は、焦点スポット212のサブ領域とすることができる。言い換えると、チャネルの投影によって覆われる面積は、陽極上の電子ビームの焦点スポットより小さい。
【0031】
チャネル216に角度があるので、実効焦点スポット222の外部にある焦点スポット212の部分によって放出されるX線は、放射線源側表面218から物体側表面220まで、カラム構造体214によって減衰することなくチャネル216を通り抜ける可能性は小さい。例えば、X線226は、実効焦点スポット222の外部にある焦点スポット212の部分によって放出され、一方、X線228は、同じ角度で実効焦点スポット222内から放出される。
図2の例で示すように、X線228は、著しく減衰することなく、チャネル216のうちの1つを通り抜けることができ、一方、X線226は通り抜けることができない。従って、焦点スポット調整装置112の物体側表面220から現れるX線は主に実効焦点スポット222内から放出され、一方、実効焦点スポット222の外部から放出されるX線は実質的に遮断される。
【0032】
異なる焦点スポット調整装置を用いて、異なるサイズの実効焦点スポットを達成することができる。例えば、特定の焦点スポット調整装置によって形成されるチャネルを通り抜ける概念線が、焦点スポット212と交わる面積が小さいほど、その特定の焦点スポット調整装置で、小さい実効焦点スポットを達成することができる。従って、実効焦点スポットのサイズは、チャネルの角度、チャネルの長さ、及び焦点スポット212からの焦点スポット調整装置の距離の関数とすることができる。それゆえ、X線源102とともに使用される異なる焦点スポット調整装置を置き換えることによって、ユーザーが、焦点スポット212の実効サイズを調整できる場合がある。言い換えると、焦点スポット調整装置112を用いて、コリメーション開口(collimation openings)(すなわち、チャネル216の開口)のサイズ、コリメーション開口及びカラム構造体214の発散角、及び原点サイズの組み合わせによって、X線源102の実効焦点スポットを調整することができる。
【0033】
従って、焦点スポット調整装置112によって、管または光源の内部設計または動作を何も変更することなく、デバイス自体の外部にある既存のX線管またはγ線源の焦点スポットサイズを変更または調整できるようになる場合がある。焦点スポット調整装置112の種々の構成が、製造業者によって規定される焦点スポットより小さい実効焦点スポットを与えることができ、それにより、従来の焦点、及びミニ焦点のX線管及びγ線源の幾何学的拡大能力を拡張することができる。上記で論じられたように、焦点スポット調整装置112は、標準的な焦点スポット(例えば、焦点スポット212)の外側部分から到来する望ましくないX線光子のクロッピングを使用することによって、ペナンブラを低減することができる。焦点スポット調整装置112を用いて、ビーム円錐サイズ及び発散角を、より小さい原点に、または最大で元の製造業者による焦点スポットサイズまでのより大きい原点に変更することによって、実質的な(実効)焦点スポットサイズを調節することができる。焦点スポット調整装置112の格子構造は、種々の所望のビーム円錐サイズ及び角度に一致するように加工することができる。一般に、所望の焦点スポットサイズは、所望の焦点スポットの特性を表すビームを生成する格子のカラムサイズ及び深さ、ビーム発散角並びに原点サイズに適合する。カラムサイズが小さいほど、カラム深さ及び/または厚さが大きいほど、及び、コリメーション構造の中心点が小さくビームコリメーション発散角が急勾配であるほど、実質的な焦点スポット(例えば、実効焦点スポット222)を小さくすることができる。さらに、実質的な焦点スポットは、焦点スポット調整装置112を焦点スポット212のより近くに位置決めすることによって小さくすることができる。より大きい実効焦点スポットの場合、逆のことを実行することができる。焦点スポット212の近くで使用するために設計された焦点スポット調整装置は、より急勾配のチャネル角を有することができる。例えば、焦点スポット調整装置の放射線源側表面と窓200との間に1/2インチの間隔をあけて位置決めされる焦点スポット調整装置、及び焦点スポット調整装置の放射線源側表面との間に1/8インチの間隔をあけ、より急勾配のカラム角で位置決めされる別の焦点スポット調整装置が、より小さい実質的な焦点スポットを得ることができる。また、カラム角を変更することなく、窓200の近くに焦点スポット調整装置を動かすことにより、実質的な焦点スポットサイズを小さくすることができる。実効焦点スポットサイズを調節するために、放射線源の陽極に対して装置を近接または離反させるように、運動システム232を構成することができる。
【0034】
さらに、焦点スポット212から放出されるいくつかのX線が、ハウジング198等の、X線源102内の表面から散乱する。すなわち、X線管及びγ線源は、X線管及びγ線源、遮蔽体、カメラ内から、及びX線管のビームポート付近において、散乱放射を生成することは理解されたい。例えば、
図2の例において、X線230はハウジング198から散乱する。散乱したX線は、ラジオグラフのコントラストを低下させる場合がある。さらに、幾何学的拡大が適用されるときに、この散乱放射によって画像鮮明度が悪影響を及ぼされる可能性がある。散乱したX線が焦点スポット調整装置112の放射線源側表面218にランダムな角度で到達する場合があるので、最も大きく散乱したX線はチャネル216を完全に通り抜けるのではなく、代わりに、カラム構造体214によって減衰することになる。それゆえ、焦点スポット調整装置112の設計は、X線ビームの連続したマルチポートコリメーションを与えることができ、X線源102の内部空間204(例えば、真空チャンバー)の内部から到来する散乱放射、及びビームポート、X線源102の外部遮蔽体及び外部ケーシングの表面から到来する、X線源102の内部空間204の外部の散乱放射の多くを減衰させることができる。従って、焦点スポット調整装置112は、散乱したX線の影響を小さくすることによって、ラジオグラフ内のコントラスト及び鮮明度を高めるという更なる利点を有することができる。
【0035】
カラム構造体214は、実効焦点スポット222内から放出される或る量のX線を減衰させることができる。従って、焦点スポット調整装置112自体が、X線検出器104上に影を落とす場合がある。例えば、カラム構造体214がチャネルの格子パターンを形成する場合には、ラジオグラフ内に格子パターンが現れる場合がある。これを阻止するために、カラム構造体214がX線検出器104上の同じ場所に継続的に影を落とすことのないように、焦点スポット調整装置112を動かすように運動システム232を構成することができる。例えば、運動システム232は、焦点スポット調整装置112を回転させるように構成することができる。従って、運動を用いて、更なる焦点スポット調整だけでなく、画像内の固定パターン形成の除去を助けることができる。いくつかの例において、画像内の固定パターン形成は、一般的な減算方法を通して除去することもできる。そのような減算方法では、焦点スポット調整装置112によって遮断される面積に対応するピクセル値が、相対的に低い輝度値を有する場合がある。従って、補償するために、そのようなピクセル値から値を減算することができるか、またはそのようなピクセル値を別の方法で調節することができる。焦点スポット調整装置112の運動が望まれる場合、限定はしないが、回転、章動(nutation)及び振動を含む、その運動を、機械的、電気的、音響的、磁気的、圧電的、空気圧的及び水圧的方法で与えることができる。可搬の適用例では、焦点スポット調整装置112の運動は、電池または他の電源、並びに、ばね張力、空気圧及び水圧運動発生システム等の機械式のみの駆動機構を利用することができる。
図2の例において、運動システム232は、ハウジング198の外部に位置する。他の例において、運動システム232は、ハウジング198の内部に位置するか、または一部がハウジング198の内部に位置しかつ一部がハウジング198の外部に位置する。
【0036】
所望の焦点スポット及びコリメーション開口のサイズによって規定されるような可変のオフセット変位によりデバイスに運動を与えることによって、焦点スポット調整装置112を用いて実効焦点スポットを更に調節可能とすることができる。例えば、特定の開口間隔サイズについて更なる焦点スポットの縮小をもたらすために、或る機構が、スポット調整装置112を(操作して、または操作することなく)或る角度に傾けるか、または斜めにすることができる。言い換えると、その機構は、実効焦点スポットサイズを調節するために、焦点スポット調整装置112を傾けるか、または斜めにすることができる。本開示の他の箇所で示すように、実際の焦点スポットに対する焦点スポット調整装置112の位置を変更することによって、実効焦点スポットのサイズを変更することができる。
【0037】
チャネル216の開口は、種々の形状を有するように焦点スポット調整装置112によって形成することができる。例えば、焦点スポット調整装置112は、開口パターンに対する遮蔽を潜在的に最適化するために、円形、正方形、三角形、六角形若しくは他の幾何学的形状または幾何学的形状の組み合わせを有するようにチャネル216の開口(またはカラム構造体214)を形成することができる。異なる運動構成及び画像固定パターン低減のために開口とカラム構造体との最適な比を与えるために、チャネル216の開口のパターンまたはカラム構造体214のパターンの互いに対する位置合わせを変更することができる。例えば、装置の厚さを通して穴及び/または壁サイズが異なる場合がある。一例において、カラム構造体214は、放射線源側表面218におけるチャネル216の開口を、物体側表面220におけるチャネル216の開口より広くなるように、或いは、その逆になるように、形成することができる。より一般的には、カラム構造体214は、焦点スポット調整装置112の第1の表面におけるチャネル216の開口を、焦点スポット調整装置112の第2の表面におけるチャネル216の開口より広くなるように、形成することができる。焦点スポット調整装置112の外側の物体側表面220は、所与の管/光源設計による実施態様を最適化するために、及び所定の検出器サイズ及び/または形状についてビーム出力を最適化するために、円形、正方形または別の幾何学的形状とすることができる。焦点スポット調整装置112は、狭視野の適用例の場合に更なるビームクロッピング/遮断コリメーションとともに使用することができ、管/光源散乱及び一次ビーム光子を生成する散乱を更に除去することができる。
【0038】
いくつかの例において、焦点スポット調整装置112は、実効焦点スポット222の更なる調節を与えるために、異なるコリメーション開口構成の複数の層を用いて更に製造することができる。さらに、より高いエネルギーの適用例の場合に、望ましくない、より高いエネルギーのX線光子の更なる減衰を与えるために、焦点スポット調整装置112の厚さ/深さ及び遮蔽カラム構造体214の厚さを増すことができる。
【0039】
本開示において他の場所で論じられるように、電子ビーム210が陽極208のより小さいエリア上に合焦するとき、陰極206と陽極208との間の間隙にわたって印加することができる電圧が減少する。これは、電圧が一定のままであった場合、電子ビーム210によって陽極208の表面積の各単位正方形(square unit)に与えられるエネルギーが増加することになるからである。小さいエリアにおいてあまりに多くのエネルギーを受けると、陽極208を損傷する可能性がある。従って、焦点スポット212のサイズが減少するとき、電圧、それゆえ、ワット数も減少せざるを得ない場合がある。電圧が減少すると、陽極208のX線束出力が減少する。この文脈において、束は単位時間あたりに放出される放射エネルギーを指す。
【0040】
従って、マイクロ焦点管(例えば、100μm未満の焦点スポットを有するX線管)設計は通常、ワット数に関して制限され、それゆえ、ミニ焦点管(100μm〜400μmの焦点スポット)及び従来の焦点スポット管(400μmより大きい焦点スポット)のX線束出力を生成することができないことは理解されたい。焦点スポット調整装置112によって、従来のX線管(例えば、従来のX線管のワット数を有する)が、従来の焦点から、ミニ焦点及びマイクロ焦点までの範囲に及ぶ焦点スポットを生成できるようになる場合があり、それにより、高いワット数の適用例において機能する能力を保持しながら、より広い範囲の幾何学的拡大適用例を通して、X線管の実効的な使用を著しく広げることができる。さらに、いくつかのマイクロ焦点管は、製造の適用例に関して、ミニ焦点及び従来の焦点の管より著しく高額であり、多くの場合に安定性を欠いている。これは、多くの場合に、開放型真空管設計及びこの開放型真空管設計をサポートする更なる構成要素に起因する。これは特に、225kvより高い開放型真空管設計マイクロ焦点管の場合に当てはまる場合がある。従って、焦点スポット調整装置112の使用は、実際のマイクロ焦点管またはミニ焦点管のコストを著しく高くすることなく、マイクロ焦点管またはミニ焦点管の効果を与えることができる。
【0041】
さらに、多くのX線管が、焦点スポットの異なる場所にわたって変動するX線光子強度を有することは理解されたい。焦点スポット調整装置112によって、より大きい焦点スポットの中のより小さい「ホットスポット」領域を選択して、縮小された焦点スポット面積に最も高いX線束出力の最適な位置を与えることができるようになる場合がある。これはまた、より一貫性がある焦点スポット形状及び出力強度を与えることができる。このデバイスとともに、単一焦点スポット管及び多焦点スポット管を使用することができる。多焦点スポット管の場合、X線管の異なる焦点スポットを利用するために、焦点スポット調整装置112を位置決めし直すことができるか、或いは、異なる位置において異なる焦点スポット調整装置を使用することができる。さらに、多くのミニ焦点管設計は、より小さい焦点スポットを生成するために、急勾配の対象角を使用する。急勾配の対象角の使用は、歪んだ焦点スポット形状、光子分布の変動及び広範な熱作用を引き起こす可能性があり、それにより、X線束出力の変動及び異なる方向における空間分解能の変動を引き起こす可能性がある。焦点スポット調整装置112によって、より均一なビーム形状及びより一様なX線光子分布を生成しながら、従来の焦点からマイクロ焦点までに及ぶ焦点スポットを生成するために、急勾配でない対象角を有する管設計を使用できるようになる場合がある。例えば、焦点スポット調整装置112は、従来のサイズの焦点スポットに典型的な対象角(例えば、30度)を有するミニ焦点またはマイクロ焦点サイズ実効焦点スポットを可能にする場合がある。
【0042】
焦点スポット調整装置112は、様々な方法で製造することができる。例えば、焦点スポット調整装置112は、3D印刷、粉末金属、マイクロマシニング、エッチング、電鋳、レーザドリリング、粉末形成、及び他の製造方法を用いて製造することができる。種々の例において、焦点スポット調整装置112は、単一の構成要素として製造したり、或いは、複数の部分として製造して製造方法によって規定されるように組み立てることができる。
【0043】
上記で言及されたように、X線管のいくつかの従来の構成は、対象物(例えば、陽極208)の角度を調節することによって、焦点スポットを縮小する。対象物の角度を調節することは、マイナスの副作用をもたらす場合があり、それにより、対象物にわたる焦点スポットが均一にならなくなる。例えば、焦点スポットは形状に関して不均一である場合がある。例えば、焦点スポットは長円形とすることができるか、或いは、他の点では正方形である焦点スポットの角から翼状の延長部を有することができる。別の例において、焦点スポットは強度に関して不均一である場合がある。例えば、焦点スポットの他の部分より、焦点スポットのいくつかの部分によって多くの放射が出力される場合がある。不均一な焦点スポットまたは他の影響が、ラジオグラフ内に、対象物の陽極側から陰極側まで変化する不鮮明状態をもたらす場合がある。本開示の技術によれば、焦点スポット調整装置112内のチャネル構造サイズが、焦点スポットの変動を相殺するように比例して変化することができる。従って、チャネル216の直径が焦点スポット調整装置112の一方の側(例えば、陰極206に近い側)から焦点スポット調整装置112の反対側(例えば、陽極208に近い側)まで細くなるように、カラム構造体214(すなわち、チャネル間構造体)がチャネル216を形成することができる。例えば、陰極206に近いチャネルは、陽極208に近いチャネルより小さくすることができる。これは、焦点スポット調整装置112を通り抜ける光子の分布を均等にする役割を果たすことができる。このようにして、チャネル間構造体は、チャネルの直径が変化して、焦点スポットからの不鮮明状態の変動を引き起こすことが知られている影響(例えば、不均一性)を補償するようにチャネルを形成する。チャネル構造サイズを変更することは、焦点スポット調整装置112の変動する厚さを利用して、焦点スポット変動を相殺することによって成し遂げることもできる。例えば、陰極206に近いチャネルを陽極208に近いチャネルより長くすることができる。従って、光子が陰極206に近いチャネルを通り抜けるのに成功する可能性は小さい。これは、焦点スポット全体にわたって焦点スポットを均等にし、ラジオグラフにわたる均一な量の不鮮明度、或いは、ラジオグラフにわたる均等な空間分解能をもたらすのを助けることができる。これらの例のいずれにおいても、運動システム232が、焦点スポット調整装置112を振動させ、或る特定の角度において実効焦点スポットから現れる光子が、焦点スポット調整装置112によって常に遮断されるのを防ぐことができる。
【0044】
図3は、本開示の技術による焦点スポット調整装置112の例示的な断面図を示す概念図である。
図3の例において、チャネル216が、焦点スポット調整装置112の放射線源側表面218から物体側表面220まで延在する白色のエリアとして示される。さらに、
図3の例において、カラム構造体214は網掛けエリアとして示される。
【0045】
図4は、本開示の技術による焦点スポット調整装置112の例示的な正面図を示す概念図である。言い換えると、
図4は、放射線源側表面218を示す、焦点スポット調整装置112の一例を示す。
図4の例において、チャネル216の開口は小さい円として示される。
【0046】
図5は、本開示の技術による焦点スポット調整装置112の例示的な背面図を示す概念図である。言い換えると、
図5は、物体側表面220を示す、焦点スポット調整装置112の一例を示す。
図5の例において、チャネル216の開口は小さい円として示される。放射線源側表面218から物体側表面220までチャネル216の経路が広がるため、チャネル216の開口は
図4より広範囲に広がることに留意されたい。
【0047】
図6は、本開示の技術による焦点スポット調整装置112の例示的な斜視図を示す概念図である。
図6の例において、焦点スポット調整装置112の直径が、放射線源側表面218から物体側表面220まで増加する。
図6の例において、チャネル216の開口は、放射線源側表面218上の小さい円として示される。焦点スポット調整装置112は、
図6の例において、平坦な物体側表面220及び平坦な放射線源側表面218を有するものとして示されるが、物体側表面220及び/または放射線源側表面218は凸形または凹形とすることができる。従って、焦点スポット調整装置に関して以下のこと、すなわち、焦点スポット調整装置112の第1の表面(例えば、放射線源側表面218)が凹形であるか、或いは、焦点スポット調整装置112の第2の表面(例えば、物体側表面220)が凸形であるかのうちの少なくとも一方が当てはまる場合がある。焦点スポット調整装置112の上記の凹形表面及び凸形表面によって、焦点スポット調整装置112内の複数のチャネル216を通る進行距離を等しくできるようになる。
【0048】
図7は、本開示の技術による、放射線源の実効焦点スポットを調整する例示的な動作を示すフローチャートである。
図7の例において、ユーザーまたはデバイスが、放射線源と放射線検出器との間に装置(例えば、焦点スポット調整装置112)を位置決めすることができる(300)。その装置は、第1の表面から第2の表面まで装置を通り抜ける複数のチャネルを形成する複数のチャネル間構造体を備えることができる。チャネル間構造体は第1の物質を備える。チャネルは第2の物質を含む。この例において、第1の物質は第2の物質よりも放射線を減衰させ、チャネル間構造体は、チャネルを通り抜ける線が収斂するようにチャネルを形成する。例えば、各チャネルを通り抜ける概念上の線が、空間内の同じ点において収斂することができる。さらに、デバイス(例えば、X線源102)が、陰極(例えば、陰極206)と陽極(例えば、陽極208)との間隙を越えて進行する電子ビームを作動させることができる(302)。例えば、そのデバイスは、電子ビームが間隙を越えて陰極から陽極まで進行するように、陰極と陽極との間の間隙にわたって電圧を印加することができる。この例において、チャネルを通る線の投影によって覆われる面積は、陽極上の電子ビームの焦点スポットより小さい。γ線源が使用されるとき等の、いくつかの例において、動作(302)は除外される場合がある。さらに、
図7の例において、放射線検出器(例えば、X線検出器104(
図1))が、チャネルを通り抜けた放射線を検出することができる(304)。放射線検出器は、本開示において他の場所の例において説明されるようにして放射線を検出することができる。
【0049】
図8は、本開示の技術による、粗いカラム表面及び滑らかなカラム表面の積み重ねによる組み合わせを有する焦点スポット調整装置112の一例を示す図である。
図8の例において、焦点スポット調整装置112はカラム構造体314の組を備える。カラム構造体314は、焦点スポット調整装置112の放射線源側表面318から焦点スポット調整装置112の物体側表面320まで焦点スポット調整装置112を通り抜けるチャネル316を形成する。
【0050】
いくつかの例において、チャネル316の表面仕上げが、光子の散乱及び減衰に影響を及ぼす場合がある。例えば、滑らかな表面は光子屈折を可能にする場合があり、結果として、受光側において光子の総数が多くなる。粗い表面は更なる光子を減衰させる場合があり、結果として、受光側において光子の総数が少なくなる。装置内での粗いカラム表面及び滑らかなカラム表面の両方の積み重ねによる組み合わせは、向上した結果をもたらすことができる。従って、破線を用いて
図8の例で示すように、放射線源側表面318に近いチャネル316の表面は相対的に滑らかである。物体側表面320に近いチャネル316の表面は、放射線源側表面318に近いチャネルの表面に対して粗い。従って、
図8の例において、チャネル316のうちの少なくとも1つに関して、カラム構造体314(すなわち、チャネル間構造体)が、チャネルの内面の第1のセグメントがチャネルの内面の第2のセグメントより滑らかであるようにチャネルを形成する。
【0051】
図9は、本開示の1または複数の技術によるX線源102の例示的な断面図を示す図である。
図9の例で示すように、X線源102は、ハウジング198と、運動システム232とを備える。上記で論じられたように、運動システム232は、カラム構造体214がX線検出器104上の同じ場所に継続的に影を落とすことのないように、焦点スポット調整装置112を動かすように構成することができる。さらに、運動システム232は、所望の実効焦点スポットサイズを得るために、焦点スポット調整装置112を正確に位置決めするように構成することができる。
【0052】
図10は、本開示の1または複数の技術による例示的な焦点スポット調整装置調節機構350を示す図である。
図10の例において、機構350は6つのアクチュエーター352A〜352F(まとめて、「アクチュエーター352」)を備える。アクチュエーター352のピストンが、機構350のジョイント部材354A〜354C(まとめて、「ジョイント部材354」)に結合される。各ジョイント部材354は、機構350のカラー部材356に結合することができる。
図9の例には示されないが、焦点スポット調整装置(例えば、焦点スポット調整装置112)が、カラー部材356の内側リング358に取り付けられる場合がある。
【0053】
アクチュエーター352のピストンは、ジョイント部材354、それゆえ、カラー部材356を動かすように伸長または収縮することができる。従って、アクチュエーター352のピストンが動くことによって、カラー部材356に取り付けられた焦点スポット調整装置を動かすことができる。例えば、アクチュエーター352A及び352Dのピストンの伸長及び収縮が、カラー部材356を水平に動かすことができる。アクチュエーター352B、352C、352E及び352Fのピストンを同時に伸長または収縮させることによって、焦点スポットに対してカラー部材356を近接または離反させることができる。アクチュエーター352B及び352Fのピストンが伸長し、それに伴って、アクチュエーター352C及び352Eのピストンが収縮することによって、カラー部材356を垂直方向下方に動かすことができる。アクチュエーター352C及び352Eのピストンが伸長し、それに伴って、アクチュエーター352B及び352Fのピストンが収縮することによって、カラー部材356を垂直方向上方に動かすことができる。このようにして、アクチュエーター352は、焦点スポット調整装置112の位置を6自由度で調節することができる。
【0054】
焦点スポット調整装置の正確な位置決めを確実にするために、画像処理システム110(
図1)等の閉ループ制御システムを用いて、焦点スポット調整装置112の動きを制御することができる。例えば、閉ループ制御システムは、焦点スポット調整装置112を陽極208から相対的に離れた位置に位置決めするように、機構350に信号を出力することができる。さらに、制御システムは、この位置において焦点スポット調整装置112を通り抜けるX線束を特定することができる。この例において、制御システムは、その後、焦点スポット調整装置112を陽極208の近くに動かすように、機構350に信号を出力することができる。制御システムは、その後、再びX線束を特定することができる。この例において、焦点スポット調整装置112が陽極208に近づきすぎるまで、焦点スポット調整装置112が陽極208に近づくにつれて、X線束は増加し続けることができる。制御システムは、その後、焦点スポット調整装置112を、最大の被検出X線束に関連付けられる位置まで後退させることができる。制御システムは、垂直方向及び水平方向に関してこのプロセスを繰り返すことができる。このようにして、制御システムは、焦点スポット調整装置112を位置決めする自動化プロセスを実行することができる。焦点スポット調整装置112が正確に位置決めされた後に、焦点スポット調整装置112は、使用位置にロックされたままにすることができる。いくつかの例において、位置合わせは、(X線の代わりに)光と、開ループまたは閉ループのいずれにしても、十分に正確な制御システムとを用いて、ベンチトップステーションにおいて行うことができる。開ループ制御システムの一例では、作業者が調節を行うことができる。
【0055】
いくつかの例において、焦点スポット調整装置112は、カラー部材356が定位値にある間に、カラー部材356から取り出し、カラー部材356に再挿入することができる。従って、カラー部材356が定位置にある間に、異なる焦点スポット調整装置に置き換えることができる。例えば、異なる実効焦点スポットサイズを達成するために、異なる焦点スポット調整装置に置き換えることができる。
【0056】
図11は、本開示の1または複数の技術によるX線源102に結合される焦点スポット調整装置調節機構350の例示的な図を示す図である。
図10の例において、機構350がブラケット370A、370B(まとめて、「ブラケット370」)に結合される。いくつかの例において、ブラケット370が、X線源102に結合される。いくつかの例において、ブラケット370は、X線源102に直接結合されるのではなく、ブラケット370がX線源102に対して一定の位置を保持するように、別の構造体(図示せず)に結合することができる。例えば、ブラケット370Aに結合されるプレート372を用いて、ブラケット370Aをそのような構造体に取り付けることができる。
【0057】
図12は、本開示の1または複数の技術による焦点スポット調整装置112の例示的な外形図を示す概念図である。
図12の例で示すように、焦点スポット調整装置112は、凹形の内面400と、凸形の外面402とを有する。
図13に示すように、内面400は、内面400がボウル形であるように、3次元において凹形である。同様に、
図12に示すように、外面402は、外面402がドーム形であるように、3次元において凸形である。
【0058】
このようにして、異なる角度において焦点スポット調整装置112を通り抜けるX線に関して、焦点スポット調整装置112を通るチャネルの長さを同じとすることができる。言い換えると、全てのチャネルが同じ長さを有することができる。対照的に、
図3の例において、大きい角度の場合の(すなわち、中心から離れている)チャネルは、小さい角度の場合の(すなわち、中心に近い)チャネルより長いことに留意されたい。
図12及び
図13の例において、チャネル長を等しくすることは、種々の角度において焦点スポット調整装置を通り抜ける光子の数を等しくするのを助けることができ、潜在的には、その結果として、焦点スポット調整装置112の外面402から現れる光子の分布がより等しくなる。
【0059】
図14は、本開示の1または複数の技術によるγ線源452とともに使用される焦点スポット調整装置450の例示的な断面図である。
図14の例において、γ線源452は、放射シールド454と、γ放射線源456とを備える。γ放射線源456は、イリジウム−192等の放射性物質を含むことができる。さらに、放射シールド454内に空洞458が形成される。
図14の例において、空洞458は切頭円錐の形を有する。γ放射線源456は空洞458の底部に位置決めされる。焦点スポット調整装置450は、空洞458の外縁に、或いは、空洞内のγ放射線源456に更に近接して位置決めされる。本開示において他の場所で説明された焦点スポット調整装置112の場合と同様に、焦点スポット調整装置450内にチャネルが形成される。焦点スポット調整装置のチャネルは、γ放射線源456上、或いは、γ放射線源456内のスポットにおいて収斂するように位置合わせされる。従って、焦点スポット調整装置112は、γ放射線源456の全表面より小さい焦点スポットを生成する役割を果たすことができる。本開示において他の場所で説明された機構の場合と同様に、焦点スポット調整装置112は、
図10に示されるものと類似の手段を通して取り付け、調節することができる。
【0060】
図15は、本開示の1または複数の技術による別の例示的な焦点スポット調整装置500を示す概念図である。本開示の他の例において、焦点スポット調整装置を通り抜ける放射は円錐形であった。しかしながら、本開示の技術はそのように限定されない。むしろ、焦点スポット調整装置500を通り抜ける放射は、扇形、または、360度の角度を有する円盤形とすることができる。
図15の例において、焦点スポット調整装置500は円筒形であり、放射は、360度の角度を有する円盤形パターンにおいて焦点スポット調整装置500を通り抜けることができる。他の例において、90度、180度の角度または0度より大きく、360度以下の任意の他の角度が使用される場合がある。円筒体の中心軸に沿った位置に放射線源502が配置される。放射線源502は、イリジウム−192等の、γ線源を備えることができる。
【0061】
焦点スポット調整装置500は、カラム構造体504の組を備える。カラム構造体504は、焦点スポット調整装置500を通るチャネル506を形成する。見た目を簡単にするために、
図15及び
図16において、少数のカラム構造体504及びチャネル506のみに関して参照符号が与えられる。さらに、簡単にするために、
図15の例は24個のチャネルのみを示し、
図1はチャネルの単一の列のみを示す。しかしながら、カラム構造体504は、より多くの数のチャネルを形成することができる。チャネル506は、X線に対して相対的に低い減衰を有する物質で満たすことができる。例えば、チャネル506は、空気または別の物質を含むことができる。カラム構造体504は、X線に対して相対的に高い減衰を有する物質から形成することができる。例えば、カラム構造体504は、タングステン、鉛、鉛ガラスまたはタンタル等の高密度材料から形成することができる。チャネル506が低減衰物質を含み、一方、カラム構造体504が高減衰物質を含むので、X線は、チャネル506を通り抜けることを可能とすることができ、かつカラム構造体504によって減衰することができる。
【0062】
チャネル506が物体側表面510から放射線源側表面508に向かって内向きに角度をなすようにカラム構造体504がチャネル506を形成し、それにより、チャネル506の中心線を通り抜ける概念線が放射線源502内の単一の場所に、或いは、その付近の場所において収斂するようになる。例えば、チャネル506の中心線は、放射線源502の中心において、或いは、その付近において収斂する場合がある。矢印512によって示すように、チャネル506に角度があるため、チャネル506の中心線と位置合わせされる点以外の放射線源502の部分によって放出される放射は、放射線源側表面508から物体側表面510まで、カラム構造体504によって減衰することなくチャネル506を通り抜ける可能性は小さい。結果として、実効的な放射線源は、放射線源502の実際のサイズより小さくすることができる。これは、空間分解能及びコントラスト感度を改善することができる。
図14に示すように、放射線源側表面508(すなわち、チャネル506を通り抜ける線が収斂する点に面している表面)は円筒形である。
【0063】
さらに、
図15の例において、放射線検出器514は、焦点スポット調整装置500の外部に配置することができる。いくつかの例において、放射線検出器514は、放射感受性フィルムまたは電子式放射線検出器を備える。焦点スポット調整装置500と放射線検出器514との間に被検査物体を位置決めすることができる。
図15の構成は、焦点スポット調整装置500と放射線検出器514との間でスライドすることができる、パイプ及び管等の円筒形物体を検査するときに特に有用な場合がある。例えば、
図15の構成は、管内の溶接、特に円周溶接を検査するときに有用な場合がある。
【0064】
いくつかの例において、焦点スポット調整装置のカラム構造体504が放射線検出器514上の同じ場所に継続的に影を落とすことのないように、運動システム(図示せず)が、焦点スポット調整装置500を回転させるか、または別の方法で動かすことができる。
【0065】
図16は、本開示の1または複数の技術による例示的な検査装置550を示す組立分解図である。検査装置550は、
図15の焦点スポット調整装置500を備える。放射線源502が焦点スポット調整装置500内に配置される。被検査物体552が、焦点スポット調整装置500の外部に同心円状に配置される場合がある。さらに、簡単にするために、放射線検出器514は、物体552の外部に同心円状に配置される単一の検出器として示される。検出器は、円筒形、平坦形、湾曲形、長方形または任意の他の様々な形状及びサイズとすることができる。
図16の例には示されないが、放射遮蔽体が、放射線検出器514の外部に同心円状に配置される場合がある。
【0066】
図17は、本開示の技術による、半球形焦点スポット調整装置600を示す概念図である。
図17の例で示すように、焦点スポット調整装置600は半球形である。類似の例において、焦点スポット調整装置は完全に球形、或いは、他の球状の扇形、球状の楔形または球状の弓形とすることができる。焦点スポット調整装置600は、本開示において他の場所で説明された焦点スポット調整装置と構造に関して類似とすることができる。例えば、チャネルを通り抜ける線の角度が放射線源602内の場所において収斂するように、焦点スポット調整装置600内にチャネルを形成することができる。これは、より小さい実効焦点スポットを与えるという類似の効果を有することができる。
【0067】
以下の段落は、本開示の技術の種々の例を説明する。
【0068】
例1.放射線源の実効焦点スポットサイズを調整する装置であって、この装置は、第1の表面から第2の表面までこの装置を通り抜ける複数のチャネルを形成する複数のチャネル間構造体を備え、このチャネル間構造体は第1の物質を含み、チャネルは第2の物質を含み、第1の物質は、第2の物質よりも放射線を減衰させ、チャネル間構造体は、チャネルを通り抜ける線が収斂するようにチャネルを形成する、装置。
【0069】
例2.第1の表面は凹形であるか、或いは、第2の表面は凸形であるかのうちの少なくとも一方である例1に記載の装置。
【0070】
例3.チャネルは全て等しい長さである例1または2の何れか1項に記載の装置。
【0071】
例4.チャネル間構造体は、チャネルの直径が変化し、電子ビームの焦点スポットの不均一性を補償するように、チャネルを形成する例1〜3の何れか1項に記載の装置。
【0072】
例5.チャネルのうちの少なくとも1つに関して、チャネル間構造体は、チャネルの内面の第1のセグメントがチャネルの内面の第2のセグメントより滑らかであるように、チャネルを形成する例1〜4の何れか1項に記載の装置。
【0073】
例6.チャネル間構造体は、装置の第1の表面におけるチャネルの開口を、装置の第2の表面におけるチャネルの開口より広くなるように形成する例1〜5の何れか1項に記載の装置。
【0074】
例7.放射線はX線またはγ線である例1〜6の何れか1項に記載の装置。
【0075】
例8.チャネルを通り抜ける線が収斂する点に面している装置の表面は円筒形である例1〜7の何れか1項に記載の装置。
【0076】
例9.放射線源の実効焦点スポットを調整する方法であって、この方法は、放射線源と放射線検出器との間に装置を位置決めすることであって、この装置は、第1の表面から第2の表面までこの装置を通り抜ける複数のチャネルを形成する複数のチャネル間構造体を備え、このチャネル間構造体は第1の物質を含み、チャネルは第2の物質を含み、第1の物質は第2の物質よりも放射線を減衰させ、チャネル間構造体は、チャネルを通り抜ける線が収斂するようにチャネルを形成する、位置決めすることと、放射線検出器によって、チャネルを通り抜けた放射線を検出することとを含む、方法。
【0077】
例10.間隙を越えて陰極から陽極まで進行する電子ビームを作動させることを更に含み、チャネルを通る線の投影によって覆われる面積は、陽極上の電子ビームの焦点スポットより小さい例9に記載の方法。
【0078】
例11.第1の表面は凹形であるか、或いは、第2の表面は凸形であるかのうちの少なくとも一方である例9または10の何れか1項に記載の方法。
【0079】
例12.チャネルを通り抜ける線が収斂する点に面している装置の表面は円筒形である例9〜11の何れか1項に記載の方法。
【0080】
例13.チャネルは全て等しい長さである例9〜11の何れか1項に記載の方法。
【0081】
例14.チャネル間構造体は、チャネルの直径が変化し、焦点スポットの不均一性を補償するように、チャネルを形成する例9〜13の何れか1項に記載の方法。
【0082】
例15.チャネルのうちの少なくとも1つに関して、チャネル間構造体は、チャネルの内面の第1のセグメントがチャネルの内面の第2のセグメントより滑らかであるように、チャネルを形成する例9〜14の何れか1項に記載の方法。
【0083】
例16.チャネル間構造体は、装置の第1の表面におけるチャネルの開口を、装置の第2の表面におけるチャネルの開口より広くなるように形成する例9〜15の何れか1項に記載の方法。
【0084】
例17.放射線はX線であるか、または、例9及び例11〜16の何れかについては、γ線である例9〜16の何れか1項に記載の方法。
【0085】
例18.面積の大きさを調節するために、陽極に対して装置を近接または離反させることを更に含む例9〜17の何れか1項に記載の方法。
【0086】
例19.面積の大きさを調節するために装置を傾けるか、或いは、斜めにすることを更に含む例9〜18の何れか1項に記載の方法。
【0087】
例20.チャネル間構造体が放射線検出器上の場所に継続的に影を落とすことのないように、装置を動かすことを更に含む例9〜19の何れか1項に記載の方法。
【0088】
例21.装置を動かすことは、装置を回転させること、装置を章動させること、或いは、装置を振動させることのうちの少なくとも1つを含む例20に記載の方法。
【0089】
例22.システムであって、物体に向かって放射線を照射する放射線源と、この放射線を検出する放射線検出器と、放射線源の実効焦点スポットサイズを調整する装置とを備え、この装置は、第1の表面から第2の表面まで装置を通り抜ける複数のチャネルを形成する複数のチャネル間構造体を備え、このチャネル間構造体は第1の物質を含み、チャネルは第2の物質を含み、第1の物質は、第2の物質よりも放射線を減衰させ、チャネル間構造体は、チャネルを通り抜ける線が収斂するようにチャネルを形成するシステム。
【0090】
例23.第1の表面は凹形であるか、或いは、第2の表面は凸形であるかのうちの少なくとも一方である例22に記載のシステム。
【0091】
例24.チャネルを通り抜ける線が収斂する点に面している装置の表面は円筒形である例22または23の何れか1項に記載のシステム。
【0092】
例25.チャネルは全て等しい長さである例22〜24の何れか1項に記載のシステム。
【0093】
例26.チャネル間構造体は、チャネルの直径が変化し、焦点スポットの不均一性を補償するように、チャネルを形成する例22〜25の何れか1項に記載のシステム。
【0094】
例27.チャネルのうちの少なくとも1つに関して、チャネル間構造体は、チャネルの内面の第1のセグメントがチャネルの内面の第2のセグメントより滑らかであるように、チャネルを形成する例22〜26の何れか1項に記載のシステム。
【0095】
例28.チャネル間構造体は、装置の第1の表面におけるチャネルの開口を、装置の第2の表面におけるチャネルの開口より広くなるように形成する例22〜27の何れか1項に記載のシステム。
【0096】
例29.放射線はX線であるか、或いは、例22及び例23〜27の何れかについては、γ線である例22〜27の何れか1項に記載のシステム。
【0097】
例30.実効焦点スポットサイズを調節するために、放射線源の陽極に対して装置を近接または離反させる運動システムを更に備える例22〜29の何れか1項に記載のシステム。
【0098】
例31.実効焦点スポットサイズを調節するために、装置を傾けるか、或いは、斜めにする運動システムを更に備える例22〜30の何れか1項に記載のシステム。
【0099】
例32.チャネル間構造体が放射線検出器上の場所に継続的に影を落とすことのないように、装置を動かす運動システムを更に備える例22〜31の何れか1項に記載のシステム。
【0100】
例33.運動システムは、装置を回転させるか、装置を章動させるか、または装置を振動させる例32に記載のシステム。
【0101】
例34.放射線源は陰極及び陽極を備え、システムの動作中に、電子ビームが、間隙を越えて陰極から陽極まで進行し、実効焦点スポットサイズは、陽極上の電子ビームの焦点スポットより小さい例22〜33の何れか1項に記載のシステム。
【0102】
様々な例が説明されてきた。これらの例及び他の例は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。例えば、本開示の多くがX線を参照するが、X線に関して論じられたことは、γ線等の他のタイプの放射にも同じく当てはまる場合がある。