特許第6882337号(P6882337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882337
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】防眩ガラスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/32 20060101AFI20210524BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C03C17/32 A
   G02B5/02 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-556462(P2018-556462)
(86)(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公表番号】特表2019-514829(P2019-514829A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】KR2016004460
(87)【国際公開番号】WO2017188477
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2018年12月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514145604
【氏名又は名称】ディーエヌエフ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DNF Co. Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ミョン ウーン
(72)【発明者】
【氏名】パク, マン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒュン ガン
(72)【発明者】
【氏名】ソン, キ フーン
(72)【発明者】
【氏名】オー, ジェ ウン
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−043812(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/002042(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0363698(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00−17/44
G02B 5/00− 5/02
B32B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1を満たす、重量平均分子量が30,000以下のポリシラザン2〜20重量%および溶媒80〜98重量%からなるコーティング組成物が、ガラスの表面上に噴射塗布され、90秒以内に塗布されたコーティング組成物の溶媒が除去された後、熱処理されて前記ガラスの表面に5〜15g/m積層され、ヘイズが1〜5%であり、透過率が90%以上である、防眩ガラス。
[化学式1]
【化1】
(R、R、およびRは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、およびアルコキシ基から選択される何れか1つまたは2つ以上を含み、nは整数である。)
【請求項2】
表面粗度が1〜20nmである、請求項1に記載の防眩ガラス。
【請求項3】
前記熱処理は、400〜700℃で熱処理する過程を含む、請求項1に記載の防眩ガラス。
【請求項4】
S1)重量平均分子量が30,000以下のポリシラザン2〜20重量%および溶媒80〜98重量%からなるコーティング組成物を製造するステップと、
S2)ガラスの表面上に前記コーティング組成物を噴射して塗布するステップと、
S3)前記S2)ステップでコーティング組成物が塗布された後、90秒以内に溶媒を除去するステップと、
S4)熱処理するステップと、を含み、
前記S2)の塗布時に、前記S4)の熱処理により前記ガラスの表面上に形成されるコーティング層が5〜15g/mとなるように前記コーティング組成物が塗布される、
防眩ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記S4)ステップにおける熱処理は、400〜700℃で熱処理する過程を含む、請求項4に記載の防眩ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記S4)ステップにおける熱処理は、50〜200℃で1次熱処理した後、400〜700℃で2次熱処理する過程を含む、請求項5に記載の防眩ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性および視認性を向上させた防眩ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイは、自然光または照明光などのような外部光に露出する場合、ディスプレイの表面に入射した光が反射しながらコントラスト(Contrast)が減少し、画像の反射によって視認性が低下する。また、画面に眩しさが生じ、文字を認識しにくくなるため、目の疲労感が増加しやすく、頭痛が誘発される。
【0003】
それを防止するための技術として、ディスプレイを含むガラスまたはフィルムなどの表示面における外光の反射を防止するための防眩(anti glare)技術がある。防眩技術は、有/無機微粒子とバインダー樹脂または硬化性樹脂の混合物を基材上に塗布し、表面に凹凸を形成することで、外光の反射を防止することができる技術である。
【0004】
ヘイズ(Haze)は防眩性(Anti glare)の尺度であり、通常、%で表示する。ヘイズが増加するほど、光の乱反射が増加して防眩性が増加することになる。前記防眩性は、光の外光反射による眩しさの程度を意味する。
【0005】
光の透過率は、物質層または境界面を透過した光の強度と、入射した光の強度との比率を意味し、通常、%で表示する。
【0006】
一方、特許文献1には、素材を所望の形状に加工し、研磨して表面に凹凸を形成し、透視率の向上のために切削する切削加工ステップを含む防眩ガラスの製造方法が公知されている。
【0007】
また、特許文献1には、ガラス基板上に均一な厚さを有するセラミックコーティング層を形成し、第1エッチング溶液を用いて、前記セラミックコーティング層を前記ガラス基板から剥離してガラス基板の表面に第1粗さを形成した後、第2エッチング溶液で前記ガラス基板の表面をエッチングして前記ガラス基板の表面に第2粗さを形成する防眩ガラスの製造方法が公知されている。
【0008】
防眩性を向上させるために、凹凸状の大きさまたは頻度を増加させる場合、逆に外光の反射によって画面が白く曇ったり、ヘイズが上昇しすぎて鮮明度が低下し、視認性が悪くなるという問題がある。また、凹凸状の大きさまたは頻度を増加させる場合、光の乱反射が起こって眩しさを防止することができるが、凹凸の大きさまたは頻度を調節しにくいという問題がある。
【0009】
反対に、表面のヘイズを減少させると、外光の反射によって白く曇る程度は抑制することができるが、基材の表面で面反射現象が強く生じる。それを解消するために、防眩層の内部のヘイズを増加させる方法があるが、微粒子と樹脂の屈折率差に起因する内部ヘイズにより、透過率が却って低下してしまうという問題がある。
【0010】
防眩性を向上させるための他の方法として、ガラスの表面上に、Al、Y、ZrO、AlC、TiN、AlN、TiC、MgO、CaO、CeO、TiO、SiO、SiC、およびAlFなどの無機微粒子を用いてコーティング層を形成するために、基材の表面を乾式または湿式エッチングすることで、撥水剤が付着できる表面積を増加させる方法がある。しかしながら、かかる方法は、プラズマ処理などのような乾式エッチングの場合、高価の装備による負担が大きく、湿式エッチングの場合は、通常、強塩基洗浄剤や希塩酸に基板を沈積させる過程で、別の洗浄工程と副産物の処理コストなどによる負担が大きいという問題がある。
【0011】
防眩性を向上させるためのさらに他の方法として、ガラスの表面に光が屈折可能な防眩フィルムを付着する方法がある。しかし、前記フィルムは、高屈折フィルムと低屈折フィルムを交互に付着しなければならないため、コストが高くなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2011−0060233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、外光の反射によって画面が白く曇る問題、ヘイズの過度な上昇による鮮明度の低下によって視認性が悪くなる問題、および低い防眩性および高い製造コストの問題を解決するためのものであって、優れた防眩性および視認性を与えることができる防眩ガラス、およびその製造方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、防眩性および視認性の制御正確度が向上した防眩ガラスおよびその製造方法を提供することにある。
【0015】
さらに、本発明の目的は、優れた耐摩耗性および耐久性を有する防眩ガラスおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
眩しさの誘発を最小化するための方法として、光の乱反射を誘導するなど、ヘイズを増加させて防眩性を向上させる方法がある。上記方法は、眩しさの誘発を最小化することができるという利点があるが、光の透過率が低下し、視認性が減少するという問題が発生する。したがって、適切なヘイズ値を有するようにし、且つ透過率を極大化すべきである。
【0017】
しかし、上述のように、ヘイズと透過率は、一般に互いに反比例の関係を有する傾向にあるため、乱反射を防止する程度の適切なヘイズを有するようにし、且つ透過率を最大化させることが何より重要である。
【0018】
すなわち、ヘイズが増加すると防眩効果が向上し、透過率が減少すると視認性が低下するため、本発明は、高いヘイズおよび透過率を両方とも両立し、透過率の高い防眩ガラスを提供することにその意義がある。
【0019】
本明細書において言及する「ガラス」は、一般にディスプレイに用いられる全てのガラス、高分子、および基材を意味し、その他にも、基材の後面に入射された光が前記基材を透過し、前記光を識別するための光が透過することができる全ての基材を意味し得る。
【0020】
本発明は、下記化学式1を満たす、重量平均分子量が30,000以下のポリシラザン1〜40重量%を含むコーティング組成物が、ガラスの表面上に噴射塗布されて積層される防眩ガラスに関し、前記防眩ガラスのヘイズは1〜5%であってもよく、前記防眩ガラスの透過率は90%以上であってもよい。
【0021】
本発明の一例において、前記ポリシラザンは下記化学式1で表される。
【0022】
[化学式1]
【化1】
(R、R、およびRは、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、およびアルコキシ基から選択される何れか1つまたは2つ以上を含み、nは整数である。)
【0023】
前記ポリシラザンは、前記化学式1の繰り返し単位を有する無機ポリシラザンまたは有機ポリシラザンであってもよい。前記無機ポリシラザンは、R、R、およびRの全てが炭素を含む基を有さず、好ましくは、R、R、およびRの全てが水素である無機ポリシラザンが挙げられる。前記有機ポリシラザンは、R、R、およびRから選択される少なくとも1つが、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、およびアルコキシ基などから選択される何れか1つまたは2つ以上を含む基を有してもよい。また、nは、化学式1の繰り返し単位を有するポリシラザンの重量平均分子量が30,000以下を満たすようにする整数であれば特に制限されない。
【0024】
前記無機ポリシラザンおよび前記有機ポリシラザンは溶媒に可溶性であり、従来に公知の方法を含む任意の方法により製造可能である。具体的な一例として、前記無機ポリシラザンの製造方法は、ピリジンとジハロシラン、好ましくは、Clで置換されたシランを配合してシラン付加物を形成した後、該シラン付加物とアンモニアを配合した後に生成されるアンモニウム塩を除去することで合成する方法などが挙げられる。
【0025】
前記ポリシラザンの重量平均分子量が30,000を超える場合には、空気中に露出するだけで硬化が促進され、コーティング層の表面粗さが激しくなり、ヘイズの増加および透過率の急激な減少を引き起こし得る。さらに、調節および制御が困難であるため、要求される防眩性および透過率の再現性が低下し得る。
【0026】
本発明の一例において、防眩ガラスは、ポリシラザンおよび溶媒を含むコーティング組成物がガラスの表面上にスプレー噴射法により塗布された後、熱処理されることで、防眩性とともに耐摩耗性および耐久性が著しく向上することができる。前記スプレー噴射法は、ポリシラザンの含量、粘度、噴射量、および噴射されて積層された層の密度、噴射時間、噴射後における焼結時間などの様々な条件とともに適用される場合、ヘイズの範囲を適切に維持することができ、透過率が著しく増加することができる。
【0027】
本発明の好ましい一例として、ポリシラザンおよび溶媒を含むコーティング組成物がガラスの表面上に噴射されてから90秒、好ましくは60秒以内に前記溶媒が除去される場合、適切なヘイズ値を維持することができ、透過率が著しく向上することができる。詳細に、異種元素の混入なしに、ポリシラザン自体のみでガラスの表面上に凹凸が付与された層が形成されるため、異種元素の混入によって凹凸を形成する場合に比べて、透過率が著しく向上する効果がある。
【0028】
本発明の一例において、前記溶媒が除去される際の温度および時間は、50〜100℃の範囲、および1〜5分の範囲であってもよい。前記範囲の乾燥温度および乾燥時間を満たす場合、ヘイズに比べて透過率がより増加されることができる。
【0029】
本発明の好ましい一例として、ポリシラザンおよび溶媒を含むコーティング組成物がガラスの表面上に噴射されてから60秒以内に前記溶媒が除去された後、熱処理が行われる場合に、ポリシラザンを含むコーティング組成物層が、ガラス硬度以上を有する凹凸が形成されたガラスに変性されることで、ヘイズおよび透過性の両方に優れることはいうまでもなく、耐摩耗性および耐久性が著しく向上することができる。
【0030】
この際、前記熱処理は、好ましくは400〜700℃での熱処理を含んでもよく、より好ましくは50〜200℃での1次熱処理と、400〜700℃、好ましくは450〜700℃での2次熱処理と、を含んでもよい。400℃以上の温度で熱処理され、ポリシラザン層がガラス硬度以上のガラス層に変性されることで、防眩ガラスが、上述のヘイズおよび透過性に非常に優れるという特性を有することができる。特に、1次熱処理および2次熱処理が順に行われることで、より安定して耐摩耗性および耐久性が向上することができる。
【0031】
前記コーティング組成物は、全重量に対して、ポリシラザン1〜40重量%および溶媒60〜99重量%を含んでもよく、好ましくは、ポリシラザン2〜25重量%および溶媒75〜98重量%を含んでもよく、より好ましくは、ポリシラザン2〜20重量%および溶媒80〜98重量%を含んでもよい。前記ポリシラザンが無機ポリシラザンおよび有機ポリシラザンを含む場合、無機ポリシラザン100重量部に対して、有機ポリシラザン1〜40重量部、好ましくは5〜30重量部を含んでもよい。前記ポリシラザンが無機ポリシラザンおよび有機ポリシラザンを両方とも含む場合、ヘイズおよび視認性の制御がより容易になる。
【0032】
前記溶媒は、ポリシラザンが溶解可能なものであればよく、例えば、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、およびアルコールなどから選択される何れか1つまたは2つ以上を含んでもよい。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、スチレン、イソプロピルベンゼン、ノルマルプロピルベンゼン、クロロトルエン、ブチルベンゼン、ジクロロベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、およびニトロトルエンなどが挙げられる。脂肪族炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、イソノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、およびシクロテトラデカンなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルムおよびジクロロメタンなどが挙げられる。エステルとしては、ベンジルアセテート、アリルヘキサノエート、ブチルブチレート、エチルアセテート、エチルブチレート、エチルヘキサノエート、エチルシナノエート、エチルヘプタノエート、エチルノナノエート、エチルペンタノエート、イソブチルアセテート、イソブチルホルメート、イソアミルアセテート、イソプロピルアセテート、およびメチルフェニルアセテートなどが挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトンなどが挙げられる。エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、クラウンエーテル、およびポリエチレングリコールなどが挙げられる。アルコールとしては、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘプタノール、ノルマルオクタノール、ノルマルノナノール、ノルマルデカノール、ノルマルテトラデカノール、エイコサノール、ヘプタデカフルオロデカノール、ヘキサデカフルオロノナノール、およびドデカフルオロヘプタノールなどの、3個以上の炭素を含むアルコールおよび3個以上の炭素を含むハロゲン化アルコールなどが挙げられる。
【0033】
前記コーティング組成物は粘度が0.5〜2.0cpであってもよい。前記粘度は、ポリシラザンの重量平均分子量および含量によって調節可能であり、好ましくは0.8〜1.7cpであってもよい。
【0034】
本発明の防眩ガラスは、1〜5%、好ましくは1〜3%の範囲のヘイズと、90%以上、好ましくは91%以上の範囲の透過率を有してもよい。前記範囲を満たさない場合には、防眩性の効果が微少であり、防眩性の効果は大きく上昇せず、且つ透過率が著しく低下し得て、視認性が著しく減少する恐れがある。
【0035】
本発明の防眩ガラスは、ガラスの表面上に前記コーティング組成物により形成されるコーティング層が、5〜15g/m、好ましくは7〜13g/mで積層されてもよい。15g/mを超える場合には、ヘイズがより上昇することができるものの、透過率が急激に減少する恐れがあり、5g/m未満である場合には、ヘイズが低すぎて十分な防眩性が発現されない恐れがある。
【0036】
本発明の防眩ガラスは、上述のように、ポリシラザン自体のみで凹凸が付与された層を有することができ、前記層の表面粗度は1〜20nmの範囲であってもよい。表面粗度(Suface roughness)とは表面粗さを意味し、表面上に形成された微細な凹凸の程度を意味する。表面粗度が1nm未満である場合には、防眩効果が実質的に発現されにくく、20nmを超える場合には、光の透過率が低下して視認性が急激に低下し得る。
【0037】
本発明の防眩ガラスの製造方法は、S1)コーティング組成物を製造するステップと、S2)ガラスの表面上に前記コーティング組成物をスプレー噴射方法により塗布するステップと、S3)溶媒を除去するステップと、S4)熱処理するステップと、を含んでもよい。
【0038】
本発明の一例において、前記S3)ステップは、前記S2)ステップで前記コーティング組成物が塗布されてから90秒、好ましくは60秒以内に溶媒を除去する過程を含んでもよい。前記コーティング組成物が塗布されてから90秒を超えた後に溶媒が除去されるか、除去されない場合、常温による乾燥または硬化によって透過率およびヘイズが著しく減少し得て、後で熱処理過程をさらに行っても、耐摩耗性および耐久性の向上が微少であり得る。
【0039】
本発明の一例において、前記S3)ステップは、50〜100℃の温度範囲で1〜5分間の範囲で乾燥することで溶媒を除去する過程を含んでもよい。前記乾燥方法としては、公知の様々な方法が用いられてもよく、例えば、熱風乾燥などが挙げられる。
【0040】
本発明の一実施例において、前記S4)ステップは、50〜200℃で2〜10分間1次熱処理した後、400〜700℃で30〜90分間2次熱処理する過程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明の防眩ガラスは、異種元素の混入なしに、ガラスの表面上にポリシラザン由来の表面凹凸が付与されたガラスが形成されることで、優れた防眩性および視認性を有する効果がある。
【0042】
また、本発明の防眩ガラスは、ガラスの表面上にポリシラザンが熱処理によってガラスに変性されることで、耐摩耗性および耐久性が著しく向上する効果がある。
【0043】
さらに、本発明の防眩ガラスは、90%以上の透過率および1〜5%のヘイズを有するため、優れた視認性および優れた防眩性を有する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】コーティング表面の表面粗度を示したグラフである。
図2】電子顕微鏡で観察した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付図面を参照して本発明の防眩ガラスおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0046】
この際、用いられる技術用語および科学用語は、別に定義されない限り、この発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有するものであり、下記の説明および添付図面において本発明の要旨を不明瞭にする可能性のある公知機能および構成についての説明は省略する。
【0047】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、これらは本発明をより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
重量平均分子量が15,000の無機ポリシラザン50gと、オルト−キシレン(ortho−Xylene;SKケミカル)溶媒950gを反応器に入れ、10分間混合および撹拌することでコーティング組成物を製造した。前記コーティング組成物を、50cm×50cmサイズのガラス板にスプレーガン(噴射圧力20psi、噴射量10g/m)を用いて塗布した後、60秒以内に80℃の熱風条件で2分間乾燥して溶媒を除去した。次に、熱硬化方式により150℃の温度で5分間1次熱処理を行い、450℃の温度で60分間2次熱処理を行うことで、防眩ガラスを製造した。
【0049】
[実施例2]
実施例1において、前記無機ポリシラザン50gおよび前記溶媒950gに代えて、無機ポリシラザン70gおよび溶媒930gを使用したことを除き、実施例1と同様に行った。
【0050】
[実施例3]
実施例1において、前記無機ポリシラザン50gおよび前記溶媒950gに代えて、無機ポリシラザン90gおよび溶媒910gを使用したことを除き、実施例1と同様に行った。
【0051】
[実施例4]
実施例1において、前記無機ポリシラザン50gおよび前記溶媒950gに代えて、無機ポリシラザン120gおよび溶媒880gを使用したことを除き、実施例1と同様に行った。
【0052】
[実施例5]
実施例1において、前記無機ポリシラザン50gおよび前記溶媒950gに代えて、無機ポリシラザン180gおよび溶媒820gを使用したことを除き、実施例1と同様に行った。
【0053】
[実施例6]
実施例1において、前記溶媒950gに代えて溶媒940gを使用し、重量平均分子量が2,000の有機ポリシラザン10gを反応器にさらに投入したことを除き、実施例1と同様に行った。
【0054】
[実施例7]
実施例1において、前記コーティング組成物を60秒以内に乾燥して溶媒を除去する代わりに、100秒後に乾燥して溶媒を除去したことを除き、実施例1と同様に行った。
【0055】
[比較例1]
実施例1において、前記無機ポリシラザン50gおよび前記溶媒950gに代えて、無機ポリシラザン9gおよび溶媒991gを使用したことを除き、実施例1と同様に行った。
【0056】
[比較例2]
実施例1において、前記コーティング組成物をスプレーガンを用いて塗布する代わりに、フローコーティング(Flow coating)により2g/秒の速度で5秒間塗布したことを除き、実施例1と同様に行った。
【0057】
[比較例3]
実施例1において、重量平均分子量が15,000の無機ポリシラザンに代えて、重量平均分子量が40,000の無機ポリシラザンを使用したことを除き、実施例1と同様に行った。
【0058】
<試験および測定方法>
1.透過率
UVVis spectrophotometer(SCINCO、S3100)を用して、500nm領域の透過率を測定した。
【0059】
2.ヘイズ(防眩性)
ヘイズは、ヘイズメータ(HM150;村上色彩技術研究所)を用いて測定した。
【0060】
3.粘度
粘度は、粘度計測器(VL700;Hydramotion)を用いて測定した。
【0061】
4.硬度
硬度はMITSU−BISHI PENCILを用いて鉛筆硬度を測定した。
【0062】
<測定結果>
【表1】
【0063】
実施例1〜実施例5を比較すると、無機ポリシラザンの含量が増加するほど、透過率は減少し、ヘイズは増加する傾向を示した。
【0064】
また、実施例1〜実施例6によるコーティング組成物を塗布した防眩ガラスは、5%未満のヘイズおよび90%以上の透過率であって、優れた防眩特性を示した。実施例6によるコーティング組成物を塗布した防眩ガラスは有機ポリシラザンをさらに添加したものであり、適切なヘイズを有し、且つさらに向上した透過率を有することを確認した。
【0065】
これに対し、比較例1は、無機ポリシラザンの含量を0.9%に低めて製造したものであり、この際のヘイズは著しく減少し、防眩性がなくなることを確認した。
【0066】
また、比較例2は、フローコーティング方法によりコーティング組成物を製造したものであり、ヘイズが0.21%である、表面粗さのない一般の透明なガラスであって、防眩特性を示さなかった。
【0067】
また、比較例3は、30,000以上の重量平均分子量を有する無機ポリシラザンを使用したものであり、空気中に露出するだけで硬化が促進されてコーティング層の表面粗さが激しくなり、ヘイズが増加し、透過率が著しく減少することを確認した。したがって、防眩特性が著しく減少することが分かった。
【0068】
したがって、前記ポリシラザンの含量によって防眩性および透過率の差がかなり存在し、前記防眩性および透過率を極大化することができる変数は、前記ポリシラザンの含量(または前記ポリシラザンの含量による粘度)、つまり、組成比によってかなり影響されることを確認することができた。
【0069】
特に、実施例1および実施例7のように、コーティング組成物が噴射されてから溶媒を除去する時間によって、凹凸が形成される程度が変わることを確認し、実施例7の場合、ヘイズおよび透過度が実施例1に比べて非常に良くないことを確認した。
図1
図2