【課題を解決するための手段】
【0016】
眩しさの誘発を最小化するための方法として、光の乱反射を誘導するなど、ヘイズを増加させて防眩性を向上させる方法がある。上記方法は、眩しさの誘発を最小化することができるという利点があるが、光の透過率が低下し、視認性が減少するという問題が発生する。したがって、適切なヘイズ値を有するようにし、且つ透過率を極大化すべきである。
【0017】
しかし、上述のように、ヘイズと透過率は、一般に互いに反比例の関係を有する傾向にあるため、乱反射を防止する程度の適切なヘイズを有するようにし、且つ透過率を最大化させることが何より重要である。
【0018】
すなわち、ヘイズが増加すると防眩効果が向上し、透過率が減少すると視認性が低下するため、本発明は、高いヘイズおよび透過率を両方とも両立し、透過率の高い防眩ガラスを提供することにその意義がある。
【0019】
本明細書において言及する「ガラス」は、一般にディスプレイに用いられる全てのガラス、高分子、および基材を意味し、その他にも、基材の後面に入射された光が前記基材を透過し、前記光を識別するための光が透過することができる全ての基材を意味し得る。
【0020】
本発明は、下記化学式1を満たす、重量平均分子量が30,000以下のポリシラザン1〜40重量%を含むコーティング組成物が、ガラスの表面上に噴射塗布されて積層される防眩ガラスに関し、前記防眩ガラスのヘイズは1〜5%であってもよく、前記防眩ガラスの透過率は90%以上であってもよい。
【0021】
本発明の一例において、前記ポリシラザンは下記化学式1で表される。
【0022】
[化学式1]
【化1】
(R
1、R
2、およびR
3は、独立して、水素、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、およびアルコキシ基から選択される何れか1つまたは2つ以上を含み、nは整数である。)
【0023】
前記ポリシラザンは、前記化学式1の繰り返し単位を有する無機ポリシラザンまたは有機ポリシラザンであってもよい。前記無機ポリシラザンは、R
1、R
2、およびR
3の全てが炭素を含む基を有さず、好ましくは、R
1、R
2、およびR
3の全てが水素である無機ポリシラザンが挙げられる。前記有機ポリシラザンは、R
1、R
2、およびR
3から選択される少なくとも1つが、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、およびアルコキシ基などから選択される何れか1つまたは2つ以上を含む基を有してもよい。また、nは、化学式1の繰り返し単位を有するポリシラザンの重量平均分子量が30,000以下を満たすようにする整数であれば特に制限されない。
【0024】
前記無機ポリシラザンおよび前記有機ポリシラザンは溶媒に可溶性であり、従来に公知の方法を含む任意の方法により製造可能である。具体的な一例として、前記無機ポリシラザンの製造方法は、ピリジンとジハロシラン、好ましくは、Clで置換されたシランを配合してシラン付加物を形成した後、該シラン付加物とアンモニアを配合した後に生成されるアンモニウム塩を除去することで合成する方法などが挙げられる。
【0025】
前記ポリシラザンの重量平均分子量が30,000を超える場合には、空気中に露出するだけで硬化が促進され、コーティング層の表面粗さが激しくなり、ヘイズの増加および透過率の急激な減少を引き起こし得る。さらに、調節および制御が困難であるため、要求される防眩性および透過率の再現性が低下し得る。
【0026】
本発明の一例において、防眩ガラスは、ポリシラザンおよび溶媒を含むコーティング組成物がガラスの表面上にスプレー噴射法により塗布された後、熱処理されることで、防眩性とともに耐摩耗性および耐久性が著しく向上することができる。前記スプレー噴射法は、ポリシラザンの含量、粘度、噴射量、および噴射されて積層された層の密度、噴射時間、噴射後における焼結時間などの様々な条件とともに適用される場合、ヘイズの範囲を適切に維持することができ、透過率が著しく増加することができる。
【0027】
本発明の好ましい一例として、ポリシラザンおよび溶媒を含むコーティング組成物がガラスの表面上に噴射されてから90秒、好ましくは60秒以内に前記溶媒が除去される場合、適切なヘイズ値を維持することができ、透過率が著しく向上することができる。詳細に、異種元素の混入なしに、ポリシラザン自体のみでガラスの表面上に凹凸が付与された層が形成されるため、異種元素の混入によって凹凸を形成する場合に比べて、透過率が著しく向上する効果がある。
【0028】
本発明の一例において、前記溶媒が除去される際の温度および時間は、50〜100℃の範囲、および1〜5分の範囲であってもよい。前記範囲の乾燥温度および乾燥時間を満たす場合、ヘイズに比べて透過率がより増加されることができる。
【0029】
本発明の好ましい一例として、ポリシラザンおよび溶媒を含むコーティング組成物がガラスの表面上に噴射されてから60秒以内に前記溶媒が除去された後、熱処理が行われる場合に、ポリシラザンを含むコーティング組成物層が、ガラス硬度以上を有する凹凸が形成されたガラスに変性されることで、ヘイズおよび透過性の両方に優れることはいうまでもなく、耐摩耗性および耐久性が著しく向上することができる。
【0030】
この際、前記熱処理は、好ましくは400〜700℃での熱処理を含んでもよく、より好ましくは50〜200℃での1次熱処理と、400〜700℃、好ましくは450〜700℃での2次熱処理と、を含んでもよい。400℃以上の温度で熱処理され、ポリシラザン層がガラス硬度以上のガラス層に変性されることで、防眩ガラスが、上述のヘイズおよび透過性に非常に優れるという特性を有することができる。特に、1次熱処理および2次熱処理が順に行われることで、より安定して耐摩耗性および耐久性が向上することができる。
【0031】
前記コーティング組成物は、全重量に対して、ポリシラザン1〜40重量%および溶媒60〜99重量%を含んでもよく、好ましくは、ポリシラザン2〜25重量%および溶媒75〜98重量%を含んでもよく、より好ましくは、ポリシラザン2〜20重量%および溶媒80〜98重量%を含んでもよい。前記ポリシラザンが無機ポリシラザンおよび有機ポリシラザンを含む場合、無機ポリシラザン100重量部に対して、有機ポリシラザン1〜40重量部、好ましくは5〜30重量部を含んでもよい。前記ポリシラザンが無機ポリシラザンおよび有機ポリシラザンを両方とも含む場合、ヘイズおよび視認性の制御がより容易になる。
【0032】
前記溶媒は、ポリシラザンが溶解可能なものであればよく、例えば、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、およびアルコールなどから選択される何れか1つまたは2つ以上を含んでもよい。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、スチレン、イソプロピルベンゼン、ノルマルプロピルベンゼン、クロロトルエン、ブチルベンゼン、ジクロロベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、およびニトロトルエンなどが挙げられる。脂肪族炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、イソノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、およびシクロテトラデカンなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルムおよびジクロロメタンなどが挙げられる。エステルとしては、ベンジルアセテート、アリルヘキサノエート、ブチルブチレート、エチルアセテート、エチルブチレート、エチルヘキサノエート、エチルシナノエート、エチルヘプタノエート、エチルノナノエート、エチルペンタノエート、イソブチルアセテート、イソブチルホルメート、イソアミルアセテート、イソプロピルアセテート、およびメチルフェニルアセテートなどが挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトンなどが挙げられる。エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、クラウンエーテル、およびポリエチレングリコールなどが挙げられる。アルコールとしては、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘプタノール、ノルマルオクタノール、ノルマルノナノール、ノルマルデカノール、ノルマルテトラデカノール、エイコサノール、ヘプタデカフルオロデカノール、ヘキサデカフルオロノナノール、およびドデカフルオロヘプタノールなどの、3個以上の炭素を含むアルコールおよび3個以上の炭素を含むハロゲン化アルコールなどが挙げられる。
【0033】
前記コーティング組成物は粘度が0.5〜2.0cpであってもよい。前記粘度は、ポリシラザンの重量平均分子量および含量によって調節可能であり、好ましくは0.8〜1.7cpであってもよい。
【0034】
本発明の防眩ガラスは、1〜5%、好ましくは1〜3%の範囲のヘイズと、90%以上、好ましくは91%以上の範囲の透過率を有してもよい。前記範囲を満たさない場合には、防眩性の効果が微少であり、防眩性の効果は大きく上昇せず、且つ透過率が著しく低下し得て、視認性が著しく減少する恐れがある。
【0035】
本発明の防眩ガラスは、ガラスの表面上に前記コーティング組成物により形成されるコーティング層が、5〜15g/m
2、好ましくは7〜13g/m
2で積層されてもよい。15g/m
2を超える場合には、ヘイズがより上昇することができるものの、透過率が急激に減少する恐れがあり、5g/m
2未満である場合には、ヘイズが低すぎて十分な防眩性が発現されない恐れがある。
【0036】
本発明の防眩ガラスは、上述のように、ポリシラザン自体のみで凹凸が付与された層を有することができ、前記層の表面粗度は1〜20nmの範囲であってもよい。表面粗度(Suface roughness)とは表面粗さを意味し、表面上に形成された微細な凹凸の程度を意味する。表面粗度が1nm未満である場合には、防眩効果が実質的に発現されにくく、20nmを超える場合には、光の透過率が低下して視認性が急激に低下し得る。
【0037】
本発明の防眩ガラスの製造方法は、S1)コーティング組成物を製造するステップと、S2)ガラスの表面上に前記コーティング組成物をスプレー噴射方法により塗布するステップと、S3)溶媒を除去するステップと、S4)熱処理するステップと、を含んでもよい。
【0038】
本発明の一例において、前記S3)ステップは、前記S2)ステップで前記コーティング組成物が塗布されてから90秒、好ましくは60秒以内に溶媒を除去する過程を含んでもよい。前記コーティング組成物が塗布されてから90秒を超えた後に溶媒が除去されるか、除去されない場合、常温による乾燥または硬化によって透過率およびヘイズが著しく減少し得て、後で熱処理過程をさらに行っても、耐摩耗性および耐久性の向上が微少であり得る。
【0039】
本発明の一例において、前記S3)ステップは、50〜100℃の温度範囲で1〜5分間の範囲で乾燥することで溶媒を除去する過程を含んでもよい。前記乾燥方法としては、公知の様々な方法が用いられてもよく、例えば、熱風乾燥などが挙げられる。
【0040】
本発明の一実施例において、前記
S4)ステップは、50〜200℃で2〜10分間1次熱処理した後、400〜700℃で30〜90分間2次熱処理する過程を含んでもよい。