特許第6882361号(P6882361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6882361細胞外マトリックス組織物質および骨原性タンパク質を含む生成物
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  • 特許6882361-細胞外マトリックス組織物質および骨原性タンパク質を含む生成物 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882361
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】細胞外マトリックス組織物質および骨原性タンパク質を含む生成物
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/00 20060101AFI20210524BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20210524BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20210524BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20210524BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20210524BHJP
   A61L 27/12 20060101ALI20210524BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20210524BHJP
   A61L 27/32 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C12P19/00
   C12P21/02 A
   C12P21/02 C
   A61L27/36 130
   A61L27/24
   A61L27/54
   A61L27/36 311
   A61L27/12
   A61L27/52
   A61L27/32
【請求項の数】45
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-73652(P2019-73652)
(22)【出願日】2019年4月8日
(62)【分割の表示】特願2016-540309(P2016-540309)の分割
【原出願日】2014年9月2日
(65)【公開番号】特開2019-122410(P2019-122410A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】61/872,827
(32)【優先日】2013年9月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512240408
【氏名又は名称】マフィン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MUFFIN INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】ウォレス, シェリー, エル.
(72)【発明者】
【氏名】テイラー, アマンダ, エフ.
(72)【発明者】
【氏名】シャルルボワ, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】スタインハート, クリスティーン, エム.
(72)【発明者】
【氏名】フィアノット, ニール, イー.
【審査官】 山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−532153(JP,A)
【文献】 特開2003−180815(JP,A)
【文献】 特表2011−516436(JP,A)
【文献】 特表平10−506125(JP,A)
【文献】 特表平10−505250(JP,A)
【文献】 特表2000−508202(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0049638(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00−27/60
C12N 1/00− 5/28
C12M 1/00− 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外マトリックス組織材料のための源組織からの生来ヘパリンを含む生来の硫酸化されたグリコサミノグリカン類を保持する細胞外マトリックス組織材料であって、規則的に配向されたコラーゲン繊維を含む軟質組織から分離された膜質組織であり、乾重量基準で少なくとも80%のコラーゲン及びコラーゲン線維間、上および/または内に点在するようにされた少なくとも1%の非コラーゲンの固体を含む細胞外マトリックス組織材料;および
該細胞外マトリックス組織材料の1立方センチメートル当たり約25マイクログラムから約100マイクログラムの量の骨形成タンパク質であって、少なくとも一部が該生来のヘパリンに結合した骨形成タンパク質:
を含む骨原性組成物。
【請求項2】
該細胞外マトリックス組織材料は固体であり;
該骨形成タンパク質は該固体の中に浸漬される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該細胞外マトリックス組織材料は、該細胞外マトリックス組織材料のための源組織からの生来のヘパリンを保持し;
少なくとも該骨形成タンパク質の一部は前記生来のヘパリンに結合している、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
該骨形成タンパク質は組み換えのヒトBMP−2を含む、請求項1から3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
該細胞外マトリックス組織材料は、該細胞外マトリックス組織材料のための源組織からの生来の成長因子、グリコサミノグリカン類、プロテオグリカン類および糖タンパク質を保持することを特徴とする、請求項1からのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
該細胞外マトリックス組織材料は、該細胞外マトリックス組織材料のための源組織からの生来のFGF−2を保持することを特徴とする、請求項記載の組成物。
【請求項7】
該生来のFGF−2は、該細胞外マトリックス組織材料1g当たり少なくとも約50ナノグラムの量で、該細胞外マトリックス組織材料の中に存在することを特徴とする、請求項記載の組成物。
【請求項8】
該細胞外マトリックス組織材料は粘膜下の組織を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
該細胞外マトリックス組織材料は、豚の細胞外マトリックス組織材料であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
さらにリン酸カルシウム化合物を含む、請求項1からのいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
該リン酸カルシウム化合物はハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムあるいはその組み合わせを含むことを特徴とする、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
該リン酸カルシウム化合物は微粒子の形態であることを特徴とする、請求項10または11記載の組成物。
【請求項13】
該細胞外マトリックスは、ミネラル化した生来のコラーゲン線維を含み、該ミネラル化された生来のコラーゲン線維は、該細胞外マトリックス組織材料の生来のコラーゲン線維に接着され、線維内にまたは線維間に捕らえられたリン酸カルシウム粒子を含む、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
該骨形成タンパク質は、該細胞外マトリックス組織材料の生来ヘパリンに結合し、該リン酸カルシウムへ結合する、請求項10から13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
該骨形成タンパク質は、生来のヘパリン、ヘパラン硫酸および/または細胞外マトリックス組織材料の他の生来の成分に結合し、該リン酸カルシウムへ結合する、請求項10から13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
該骨形成タンパク質は3mgを越えない量で存在し、および/または骨形成タンパク質は組み換えヒトBMP−2の少なくとも95重量%を構成する、請求項1から15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
患者の骨格の欠損または疾病を治療するための、請求項1から16のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
該患者の中の病気か破損された骨の治療のための、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
該患者の中の隣接した脊椎骨を融合させるために骨成長を引き起こすことにより、患者の脊柱の欠損を治療するための、請求項17または18記載の組成物。
【請求項20】
該細胞外マトリックス組織材料は、該細胞外マトリックス組織材料のための源組織に生来の可溶性の細胞外マトリックス成分の混合物を含む細胞外マトリックス・ゲルを含むことを特徴とする、請求項1、または3から19のいずれか1項記載の組成物。
【請求項21】
該細胞外マトリックス組織材料は、該細胞外マトリックス組織材料の粒子を含むことを特徴とする、請求項1から20のいずれか1項記載の組成物。
【請求項22】
流動可能な組成物である、請求項1から21のいずれか1項記載の組成物。
【請求項23】
該流動可能な組成物は、流動可能な組成物の粘性を増加させるように患者へのデリバリーの後に硬化できることを特徴とする、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
該流動可能な組成物は、患者へのデリバリーの後に非流動可能な固体に硬化できることを特徴とする、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
骨形成タンパク質および細胞外マトリックス組織材料を組み合わせることを含む、骨原性組成物の調製方法であって、細胞外マトリックス組織材料は生来のヘパリンを含む生来の硫酸化されたグリコサミノグリカン類を保持するもので、規則的に配向されたコラーゲン繊維を含む軟組織から分離された膜質の組織であり、乾重量基準で少なくとも80%のコラーゲン及びコラーゲン線維間、上および/または内に点在するようにされた少なくとも1%の非コラーゲンの固体を含み、前記組み合わせによって、該骨形成タンパク質の少なくとも一部が該生来のヘパリンに結合して細胞外マトリックス組織材料の1立方センチメートル当たり約25マイクログラムから約100マイクログラムの量で存在するようにする骨原性組成物の調製方法。
【請求項26】
該骨形成タンパク質は組み換えのヒトBMP−2を含み、および/また骨形成タンパク質は少なくとも95重量%の組み換えのヒトBMP−2%で構成される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
該細胞外マトリックス組織材料は該細胞外マトリックス組織材料のための源組織からの生来の成長因子、グリコサミノグリカン類、プロテオグリカン類および糖タンパク質を保持することを特徴とする、請求項25から26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
該細胞外マトリックス組織材料は該細胞外マトリックス組織材料のための源組織からの生来のFGF−2を保持することを特徴とする、請求項25から27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
該生来のFGF−2は該細胞外マトリックス組織材料1g当たり少なくとも約50ナノグラムの量で該細胞外マトリックス組織材料の中に存在することを特徴とする、請求項28記載の方法。
【請求項30】
該細胞外マトリックス組織材料は粘膜下の組織を含むことを特徴とする、請求項25から29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
該細胞外マトリックス組織材料は豚の細胞外マトリックス組織材料であることを特徴とする、請求項25から30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
該組成物にリン酸カルシウム化合物を組み入れることをさらに含む、請求項25から31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
該リン酸カルシウム化合物はハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムあるいはその組み合わせを含むことを特徴とする、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記の組み合わせが、細胞外マトリックス組織材料中の生来のヘパリンに結合した骨形成タンパク質と、細胞外マトリックス組織材料の中に浸漬され、細胞外マトリックス組織材料中の生来のヘパリンと結合していない骨形成タンパク質に帰着することを特徴とする、請求項25から33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
該細胞外マトリックス組織材料の中に浸漬され、細胞外マトリックス組織材料中の生来のヘパリンと結合していない骨形成タンパク質の少なくとも一部を除去することをさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記の除去が、該細胞外マトリックス組織材料の中に浸漬され、該細胞外マトリックス組織材料中の生来のヘパリンと結合していない骨形成タンパク質の少なくとも90%を除去するように行なわれる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記の組み合わせが、生来のヘパリンに結合した骨形成タンパク質と、該細胞外マトリックス組織材料の中に浸漬され、生来のヘパリンと結合していない骨形成タンパク質に帰着することを特徴とする、請求項25から33のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
該細胞外マトリックス組織材料の中に浸漬され、生来のヘパリンと結合していない骨形成タンパク質の少なくとも一部を除去することをさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
該細胞外マトリックス組織材料の中に浸漬され、生来のヘパリンと結合していない骨形成タンパク質の少なくとも90%を除去するように行なわれる、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記除去が水性媒体で該細胞外マトリックス組織材料をすすぐことを含むことを特徴とする、請求項35、36、38または39記載の方法。
【請求項41】
さらにエリトロポイエチンを含むことを特徴とする、請求項1から24のいずれか1項記載の組成物。
【請求項42】
該エリトロポイエチンは組み換えのヒトエリスロポエチンを含むことを特徴とする、請求項41記載の組成物。
【請求項43】
該骨形成タンパク質、該該細胞外マトリックス材料、およびエリトロポイエチンを組み合わせることをさらに含む、請求項25から40のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
該エリトロポイエチンは組み換えのヒトエリスロポエチンを含むことを特徴とする、請求項43記載の方法。
【請求項45】
該生来のコラーゲン線維は該リン酸カルシウム粒子の最大断面寸法よりも大きな直径を有する、請求項13記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への言及
本出願は、2013年9月2日に申請された、細胞外マトリックス物質および骨形成のタンパク質を含む生成物との名称の、米国特許出願番号61/872,827の優先権の利益を要求する。それは参照されその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
本出願の開示は、治療用組成物、およびある形態で細胞外マトリックス組織物質および骨形成タンパク質(bone morphogenic protein)の組み合わせを含んでいる骨原性組成物(osteogenic composition)に関係する。
【0003】
多くの今日の、疾病または年齢の結果劣化したかまたは破損された(例えば、粉砕)骨の医学的処置は骨の再生成に依存する。様々な外科的処置が利用可能であるが、近代医療の前進はある技術が進歩し、時々、これらは手術の代わりになることを可能にした。例えば、多くの遺伝因子が識別された。これは正確な部位に届けられれば、この目的に役立つことができる。この概念は行なうことが簡単に見えるが、問題は残っている。
【0004】
一般に治療因子、例えば、軟骨内性骨形成のための骨原性因子(osteogenic factor)の成功裏のデリバリーには、キャリアとタンパク質の共存を要求する。現在、先行技術の中で識別された多くのキャリアがあるが、それらのすべては制限を有している。例えば、キャリアとしては有機物質、たとえば脱ミネラルされた骨基質、非コラーゲンタンパク質、コラーゲン(例えばコラーゲン・スポンジ)、フィブリン、無菌脱灰活性骨(autolyzed antigen extracted allogenic bone)(AAA−骨)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ヒドロゲル、並びに、無機物質、たとえばハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、他のバイオセラミック、生体活性ガラス、金属、珊瑚、珊瑚−コラーゲン複合体、自然骨ミネラル、キチン、熱灰化骨ミネラル(thermoashed bone mineral)、脱ミネラルされていない骨片、セラミック骨粒子、セラミック象牙質、ポリリン酸塩ポリマー、照射された海綿質骨チップ、硫酸カルシウムおよび焼結された骨があげられる。これらの物質は希望の組織に治療因子を配達するのに幾分有効であるが、それらは制限を有している。例えば、いくつかの伝達手段は、十分な期間治療因子を局所的に保持できない。他の伝達手段は、それらが適用されるホストの中でよく再吸収できない。それらを含んでいる他の伝達手段および組成物は、組織形成を高めるために骨原性因子およびキャリア中の協力的相互作用が不足している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許5,187,076
【特許文献2】米国特許5,366,875
【特許文献3】米国特許5,108,922
【特許文献4】米国特許5,116,738
【特許文献5】米国特許5,013,649
【特許文献6】米国特許6,352,972
【特許文献7】WO93/00432
【特許文献8】W094/26893
【特許文献9】W094/26892
【特許文献10】米国特許6,206,931
【特許文献11】米国特許出願公開番号200828626
【特許文献12】米国特許出願番号12/178,321
【特許文献13】米国特許出願公開20090326577
【特許文献14】米国特許出願番号12/489,199
【特許文献15】米国特許5,455,231
【特許文献16】米国特許5,508,267
【特許文献17】米国特許6,187,047
【特許文献18】米国特許6,384,196
【特許文献19】米国特許6,764,517
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】C.Heeschen et al,Nature Medicine 7(2001),No.7,833−839
【非特許文献2】C.Johnson et al,Circulation Re
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この現状では、骨原性因子を非常に有益に利用することができる、改善された骨原性組成物、あるいは代替組成物、ならびにそれらの使用と製造方法に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
細胞外マトリックス組織物質が、貢献することが発見された、硬組織(たとえば骨)を生成するための骨原性因子と共に使用された時、非常に有益なキャリアあるいは協同成分となることが発見された。細胞外マトリックス組織物質は、有利に骨原性因子に結合し、好ましい形態で細胞外マトリックス組織物質のための組織源からの保持された生来の生物活性物質(native bioactive substance)の存在により、組織形成を支持する付加的な対生物作用に寄与する。
【0009】
ある態様では、コラーゲンの細胞外マトリックス組織物質(collagenous extracellular matrix tissue material)および骨形成タンパク質を含む骨形成組成物が提供される。コラーゲンの細胞外マトリックス組織物質が固体のマトリックスであり、骨形成タンパク質が固体のマトリックスによって保持される、好ましい組成物の形態が提供される。コラーゲンの細胞外マトリックス組織物質は生来のヘパリン、ヘパラン硫酸および/またはコラーゲンの細胞外マトリックス組織物質のための源組織からの他の生来の成分を保持することができ、少なくとも骨形成タンパク質の一部が生来のヘパリン、ヘパラン硫酸、および/または他の生来の成分と結合することができる。骨形成タンパク質は任意の人間の骨形成タンパク質であるか、またはこれを含む。好ましくは人間の骨形成タンパク質は、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、および/またはBMP−9、さらに好ましくは、BMP−2である。いくつかの形態では、骨形成タンパク質は組み換えヒト骨形成タンパク質(例えばBMP−2)(”rhBMP−2”)を含む。BMP−2および/または他の骨形成タンパク質は、組成物中に比較的少量、例えばコラーゲンの細胞外マトリックス組織物質を1グラム当たり約75μgから約300μgの範囲、および/または1立方センチメートル当たり約25μgから約100μgの量で提供されることができ、および/または合計の投与量で約6mg以下、約4mg以下あるいは約3mg以下、たとえば約1〜6mgあるいは約1〜4mgの範囲で存在することができる。rhBMP−2あるいは他のBMPをそのような量および/または合計の投与量で含んでいる組成物は、人間の患者に使用できる。組成物は非流動性の固体の移植物形態あるいは流動可能(例えば、注射可能)な形態で提供することができ、そのような流動可能な形態は細胞外マトリックスの組織の微粒子物質および/または源組織に生来の可溶化された細胞外マトリックス成分の混合物を含むコラーゲンの細胞外マトリックス・ゲルを含むことができる。ある態様では、組成物はさらに他の生物活性物質またはマトリクス物質(例えばミネラルの足場物質、たとえばカルシウムを含む化合物)を含むことができる。
【0010】
ある態様では、コラーゲンの細胞外マトリックス組織物質、骨形成タンパク質およびエリトロポイエチン(EPO)を含んでいる骨原性組成物が提供される。コラーゲンの細胞外マトリックス組織物質が固体のマトリックスであり、骨形成タンパク質が固体のマトリックスによって保持されている好ましい組成物の形態が提供される。コラーゲンの細胞外マトリックス組織物質は生来のヘパリン、ヘパラン硫酸および/またはコラーゲンの細胞外マトリックス組織物質のための源組織からの他の生来の成分を保持することができ、少なくとも骨形成タンパク質の一部が生来のヘパリン、ヘパラン硫酸および/または他の生来の成分と結合することができる。骨形成タンパク質は任意の人間の骨形成タンパク質であるか、またはこれを含む。好ましくは人間の骨形成タンパク質は、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、および/またはBMP−9、さらに好ましくは、BMP−2である。いくつかの形態では、骨形成タンパク質は組み換えヒト骨形成タンパク質(例えばBMP−2)(”rhBMP−2”)を含む。BMP−2および/または他の骨形成タンパク質は、組成物中に比較的少量、例えばコラーゲンの細胞外マトリックス組織物質を1グラム当たり約0.1μgから約3μgの範囲、または約0.1μgから約1.5μgの範囲で存在することができ、および/または約6mg以下、約4mg以下あるいは約3mg以下、たとえば約1〜6mgあるいは約1〜4mgの範囲で存在することができる。rhBMP−2あるいは他のBMPをそのような量および/または合計の投与量で含んでいる組成物は、人間の患者に使用できる。いくつかの形態では、EPOは組み換えのエリトロポイエチン(rEPO)を含み、ある実施態様では、rEPOは組み換えのヒトエリスロポエチン(rhEPO)を含む。組成物は非流動性の固体の移植物形態あるいは流動可能(例えば、注射可能)な形態で提供することができ、そのような流動可能な形態は細胞外マトリックスの組織の微粒子物質および/または源組織に生来の可溶化された細胞外マトリックス成分の混合物を含むコラーゲンの細胞外マトリックス・ゲルを含むことができる。ある態様では、組成物はさらに他の生物活性物質またはマトリクス物質(例えばミネラルの足場物質、たとえばカルシウムを含む化合物)を含むことができる。
【0011】
骨原性組成物の成分に関する追加の特徴は、それらの同一性、レベル、比率、および骨原性組成物への混合方法または添加方法を含むが、これらに限定せずに以下の議論で提供される。これらの追加の特徴が単独であるいは組み合わせて、上記のパラグラフまたは他の部分に述べられる特徴と組み合わせ、追加の実施態様を形成することができることは理解されるだろう。
【0012】
ここに開示したさらなる実施態様は、明細書に開示される骨原性組成物の使用方法に関する。これらの方法はたとえば骨のような硬組織の形成であることができ、病気または破損された骨の処理(例えば治療または予防のため)の目的であることができる。
【0013】
明細書に開示されるさらなる実施態様は、骨原性組成物の調整方法に関する。
【0014】
特徴およびその利点と同様に追加の実施態様も、以下の記述を検討する事により当業者には明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、以下の実施例2に記載されるように、右のももの筋肉に5μgのrhBMP−2を含む流動可能なECM(図1A)、あるいは流動可能なECM単独(図1B)を注射した2週間後にNOD/SCIDハツカネズミのX線とmicroCTイメージのデジタル像を示す。5μg rhBMP−2を含む流動可能なECMの注射を受けたハツカネズミは、もも筋肉内の新たな豊富な骨形成が見られた(図1A)。流動可能なECMだけを注射された動物は、注射後2週で検知できる転位の骨形成を示さなかった(図1B)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ある実施態様が以下で説明される。特定の言語は同じことについて記述するために使用されるだろう。しかし発明の範囲の制限を意図しないことは理解されるだろう。
本発明の技術分野の当業者が通常行うように、記述された実施態様の任意の変更および修正、および記述された本発明の原理のさらなる適用も意図される。
【0017】
先に開示されるように、本発明のある態様は、骨形成タンパク質、エリトロポイエチンおよび細胞外マトリックス組織物質を含む骨原性組成物、およびその製造方法あるいはそのような組成物の使用に関する。
【0018】
様々な骨原性骨形成タンパク質が知られており、実施態様の中で単独あるいは組み合わせて骨形成タンパク質を使用することができる。組み換えのヒト骨形成タンパク質(rhBMPs)が好ましい。最も好ましくは、骨形成タンパク質はrhBMP−2、rhBMP−4、あるいはそれらのヘテロダイマーである。rhBMP−2およびrhBMP−7は市販されており入手可能である。また、そのような市販の形態のものを使用することができる。骨形成タンパク質は任意の骨形成タンパク質であるか、または任意の骨形成タンパク質を含むことができる:好ましくはBMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、および/またはBMP−9であり、さらに好ましくはBMP−2である。
いくつかの形態では、骨形成タンパク質は組み換えのヒト骨形成タンパク質(例えばBMP−2)(”rhBMP−2”)を含む。これらあるいは他のrhBMPsは当業者に公知の物質と方法を使用して作られることができる、たとえば米国特許番号5,187,076;5,366,875;5,108,922;5,116,738;5,013,649;6,352,972、およびPCT出願WO93/00432;W094/26893;W094/26892に述べられている。骨形成タンパク質は冷凍乾燥された粉末として提供されてもよい。それは、生成物製造中に、あるいは手術中に注射用滅菌水あるいは投与用の液体媒体、あるいは組成物の製造の一部としての再構成することができる。
【0019】
エリトロポイエチン(EPO)は、低酸素症に反応して腎臓と肝臓によって生成されるホルモンである。赤血球生産を増加させて、VEGF発現を増加させて、血管形成を刺激するために、EPOは、EPOレセプター(EpoR)に結合する。EPOも間充織幹細胞および/または骨髄間質細胞の直接の刺激によって骨再形成反応を引き起こすことが実証されている(例えば骨芽細胞形成の増加による)。EPOは、血液生成の先祖細胞の数を増加させることにより、間接的にさらに骨再形成反応を引き起こすことがある(例えば骨芽細胞形成の増加)。さらに、EPOは造血幹細胞によるBMP生産を引き起こすことが示された。本発明で使用されるEPOはヒトEPO(rhEPO)の生来または組み換えの形態であることができる。
【0020】
従って、ある態様では、本発明の開示の組成物はECM、BMPおよびEPOを含んでいる。EPOは新しい血管形成の刺激、および/または移植組織部位での間充織幹細胞(MSC)の補強の刺激に有効になり得、BMPは間充織幹細胞からの骨形成原細胞の発現を促進するのに有効になりえる。
【0021】
本発明で使用されるコラーゲンの細胞外マトリックス(ECM)材料はECM組織を含む、脱細胞された動物組織層(decellularized animal tissue layer)であることができる。この点に関して、本明細書で使用される「脱細胞された」とは、ECM組織の生来の細胞のすべてあるいは本質的にすべてが除去されたECM組織の状態をいう。したがって、他の(非−生来の)細胞はECM組織上あるいは組織内に存在することができる。それはそれにもかかわらず「脱細胞された」と呼ばれる。ECM組織層は、温血の脊椎動物(たとえば羊か、牛か、豚の動物)の源組織から得ることができる。源組織層(source tissue layer)は好ましくは非ミネラル化(nonmineralized)(すなわち軟線維)源組織である。例えば、適切なECM組織としては、粘膜下組織、腎臓部のカプセル膜、皮膚のコラーゲン、硬膜、心膜、羊膜、腹部の筋膜、大腿筋膜、漿膜、腹膜あるいは肝臓基底膜を含む基底膜層を含むものがあげられる。これらの目的にふさわしい粘膜下組織物質としては、例えば、小腸粘膜下組織を含む腸の粘膜下組織、胃粘膜下組織、膀胱粘膜下組織および子宮の粘膜下組織があげられる。本発明に役立つ粘膜下組織(潜在的に他の付随する組織とともに)を含むECM組織は、そのような組織源を収穫し、平滑筋層、粘膜層および/または組織源内にある他の層から粘膜下組織を含むマトリックスをはがすことにより得ることができる。豚の組織源は、粘膜下組織含有ECM組織を含む、ECM組織を収穫するための好ましい源である。
【0022】
本発明で使用されるECM組織は好ましくは、脱細胞されて高度に浄化される。例えば、クックらの米国特許6,206,931あるいは米国特許出願公開番号US2008286268(2008年11月20日)、2008年7月23日に出願された米国特許出願番号12/178,321に記載され、これらはその全体が参照として本明細書に組込まれる。好ましいECM組織材料は、1グラム当たり約12未満の菌体内毒素ユニット(EU)、さらに好ましくは1グラム当たり約5EU未満、および最も好ましくは1グラム当たり約1EU未満の菌体内毒素レベルを示すだろう。さらなる好ましい態様では、粘膜下組織あるいは他のECM材料が1gあたり約1未満のコロニー形成単位(CFU)、より好ましくは1グラム当たり約0.5CFU未満の生物負荷量を有する。菌類レベルは、たとえば1グラム当たり約1CFU未満、好ましくは1グラム当たり約0.5CFU未満で低いものが好ましい。核酸レベルは好ましくは約5μg/mg未満、より好ましくは2μg/mg未満、およびウィルス・レベルは好ましくは、1グラム当たり約50プラーク形成単位(PFU)未満で、より好ましくは1グラム当たり約5PFU未満である。粘膜下組織あるいは他のECM組織のさらなる特性は米国特許6,206,931あるいは米国特許出願公開番号US2008286268に開示され、本発明の中で使用される任意のECM組織はこれらの特性を有することができる。
【0023】
ある実施態様では、本発明に使用されるECM組織材料は、組織源から分離された層状構造を持った膜質の組織である。ECM組織は、分離された時、完全に水和された状態で約50〜約250ミクロン、より典型的には完全に水和された状態で約50〜約200ミクロンの層厚さを持っているが、分離された層は異なる厚さを有することができ、それを使用することができる。これらの層厚さは、組織源として使用される動物のタイプおよび年齢に応じて変わってもよい。同様に、これらの層厚さは、動物源から得られた組織の源に応じて変わってもよい。
【0024】
利用されたECM組織材料は、たとえばコラーゲン、および潜在的には生来のファイバーを形成することができるエラスチンのような、構造的ファイバー・タンパク質を始めとする源組織からの構造マイクロアーキテクチャーを望ましくは保持する。ある実施態様では、脱細胞されたECM組織材料の源組織で生じることがあるように、そのようなファイバーは、非ランダムに配向されることができる。そのような非ランダムコラーゲン、および/または他の構造タンパク質ファイバーは、ある実施態様では、抗張力に関して非等方性のECM組織を提供し、したがって少なくとも1つの他の方向における抗張力と異なる1つの方向での抗張力を有する。
【0025】
細胞されたECM組織材料は、ECM組織材料の源の生来であり、処理を通してECM組織材料の中に保持された1つ以上の生物活性物質を含んでもよい。例えば、粘膜下組織あるいは他のECM組織材料は1つ以上の生来の成長因子を保持してもよい。成長因子としては、非制限的例として、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF−2)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGFベータ)、上皮成長因子(EGF)、軟骨由来成長因子(CDGF)、および/または血小板由来成長因子(PDGF)があげられる。本発明で使用される時、粘膜下組織あるいは他のECM物質は、他の生来の生物活性物質を保持してもよい。生物活性物質としては、非制限的例としてタンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカン類およびグリコサミノグリカン類があげられる。例えば、脱細胞されたECM組織物質は生来のヘパリン、ヘパリン硫酸塩、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、サイトカイニンなどを含んでいてもよい。したがって、概して言えば、粘膜下組織あるいは他のECM組織材料は、細胞のレスポンス、たとえば細胞形態変化、増殖、成長、タンパク質あるいは遺伝子発現を直接あるいは間接的に引き起こす1つ以上の生物活性成分を源組織から保持してもよい。
【0026】
本発明で使用される粘膜下組織を含むECM物質あるいは他のECM物質は、任意の適切な器官あるいは他の組織源、通常は軟組織源(非骨、非軟骨)を含む結合組織であるものに由来することができる。本発明で使用するために処理されたECM物質は典型的には豊富なコラーゲンを含んでおり、最も一般的には、乾重量基準で少なくとも約80%のコラーゲンから構成される。そのような自然由来のECM物質は、大部分の成分として非ランダム配向のコラーゲン、たとえば一軸または多重軸配向であるが規則的に配向されたものを含んでいるだろう。生来の生物活性要因(例えば上に議論されたもの)を保持するように処理された時、ECM材料はコラーゲン線維間、上および/または内に、固体として点在したこれらの要因を保持することができる。本発明で使用される特に望ましい天然由来のECM物質は、適切な染色をした光学顕微鏡検査の下で容易に確認可能であるような有意の量で点在する、非コラーゲンの固体を含んでいるだろう。そのような非コラーゲンの固体は、本発明のある実施態様ではECM材料の乾燥重量の大きな割合を構成することができ、たとえば様々な本発明の実施態様においては少なくとも約1重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約5重量%である。
【0027】
本発明で使用される粘膜下組織含有あるいは他のECM組織材料は、さらに脈管原性の特徴を示し、したがって、材料が移植されたホストの中の血管形成を引き起こすのに有効かもしれない。この点では、血管形成は、組織への増加した血液供給を生成するために、体が新しい血管を作るプロセスである。したがって、脈管原性物質は、ホスト組織と接触された時、物質の中への新しい血管の形成を促進するか助長する。バイオマテリアル移植に応じた生体内の血管形成を測定する方法が最近開発されている。例えば、そのような方法の1つは、物質の脈管原性の特徴を決定するために皮下移植組織モデルを使用する。C.Heeschen et al,Nature Medicine 7(2001),No.7,833-839参照。螢光微小血管造影法と組み合わせた時、このモデルはバイオマテリアル中への血管形成の量的および質的測定手段を提供することができる。C.Johnson et al,Circulation Research 94(2004),No.2,262-268参照。
【0028】
脱細胞されたECM組織層は単独層移植組織として本発明で使用することができるが、ある実施態様では多層の構成物の中で使用されるだろう。この点では、薄層を互いに積層するための様々なテクニックが知られており、本発明で移植のために使用される多層の構成物を製造するために使用することができる。例えばコラーゲンの材料の複数(すなわち2以上)の層、たとえば粘膜下組織含有あるいは他のECM材料は多層の構造を形成するためにともに接合することができる。例示的には、2から約200の脱細胞されたコラーゲンのECM組織層が互いに接合されて、本発明での使用のための多層の構成物を提供することができる。ある実施態様では、2から8の脱細胞されたコラーゲンのECM組織層が互いに接合されて、本発明での使用のための多層の構成物を形成することができる。好ましくは粘膜下組織を含むECM組織層は腸の組織、より好ましくは小腸の組織から分離される。豚由来の組織は、これらの目的のために好ましい。ECM組織の層は、加熱下または非加熱下での脱水熱処理結合(dehydrothermal bonding)、または凍結乾燥、接着剤、のりあるいは他の結合剤の使用、化学物質または放射(UV放射を含む)による架橋、あるいはこれらの任意の組み合わせ、あるいは他の適切な方法でともに接合することができる。
【0029】
本発明の中で使用することができる多層のECM構成物に関する追加の情報およびそれらの調製のための方法については、米国特許番号5,711,969、5,755,791、5,855,619、5,955,110および5,968,096、および2005年3月3日に公開された米国特許公開20050049638を参照。これらの構造物は穿孔されるかまたは穿孔されないことができる。穿孔される時には、構成物の表面全体に本質的に広がる多くの孔を有することができ、また選択されたエリアにのみ孔を有することができる。
【0030】
実施態様の骨原性組成物は異種移植片ECM組織材料(つまり異なる種間の材料、たとえば人間のレシピエントへの人類以外のドナーからの組織材料)、同種異型移植ECM材料(つまりレシピエントと同じ種のドナーからの組織材料)、および/または自家移植ECM材料(つまりドナーとレシピエントが同じ個人である場合の組織材料)を含むことができる。さらに、ECM物質に組み入れられたBMPおよび/または他の外生の生物活性物質は、ECM材料が由来した動物と同じ種(例えば、ECM材料が自己由来か同種異型か)、またはECM材料が由来した動物と異なる種(ECM材料と異種の個体)からのものであることができる。ある実施態様では、ECM組織材料は移植を受け取る患者と異種の個体であり、任意の加えられる細胞あるいは他の外生の材料も、移植を受け取る患者と同じ種(例えば、自己由来か同種異型)からだろう。例示的に、人間の患者は、外生のヒトBMPで変成された異種個体のECM物質(例えば、豚、牛のまたは羊−由来)、たとえば前記のrhBMPで治療されてもよい。
【0031】
実施態様の中で使用されるECM組織物質は、追加の生来ではない架橋が無いか、本質的に無いことができ、あるいは追加の架橋を含んでもよい。そのような付加的な架橋は、光架橋テクニック、化学的架橋、あるいは脱水あるいは他の手段によって引き起こされて架橋するタンパク質によって達成されてもよい。しかしながら、ある種の架橋テクニック、架橋剤および/または架橋の程度が再形成することができる物質の再形成することができる特性を破壊する場合があるので、再形成することができる特性の保持が望まれる場合には、再形成することができるECM材料の架橋は、材料が少なくともその再形成することができる特性の一部を保持することを可能にする程度または態様で行なうことができる。使用することのできる化学的架橋剤としては、例えばアルデヒド、たとえばグルタルアルデヒド、ジイミド、たとえばカルボジイミド、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、リボースあるいは他の糖、アシルアジ化物、スルホ−N−ヒドロキシスクシンアミド、あるいはポリエポキシド化合物、例えばポリグリシジルエーテル、たとえばエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケミカル社(大阪(日本))から商標DENACOL EX810の下で利用可能)、およびグリセリンポリグリセロールエーテル(ナガセケミカル社から商標DENACOL EX 313の下で利用可能)があげられる。典型的に、使用された時、ポリグリセロールエーテルあるいは他のポリエポキシド化合物は1つの分子当たり2〜約10のエポキシド基を持つだろう。
【0032】
追加の実施態様では、本明細書記載の骨原性組成物は、組織材料を増大するプロセスで処理されたECM組織材料を組込むことができる。ある形態では、そのような増大された材料は、変性剤、たとえば1つ以上のアルカリ性物質でECM物質が増大されるまで制御された接触によって形成し、増大した材料を単離することによって形成することができる。例示として、接触はそのオリジナルのバルク体積の少なくとも120%、つまり1.2倍まで、あるいはいくつかの態様ではそのオリジナルの体積の少なくとも約2倍までECM組織材料を増大させるのに十分なように行われることができる。その後、増大された材料は、任意にアルカリの媒体から(例えば中和および/または水洗により)分離することができる。集めた増大された材料は、患者へ投与するための物質の調製において任意の適切な方法で使用することができる。増大された材料は生物活性成分で豊化され、粉砕され、乾燥され、および/または所望形状または構成の移植可能な形に形成することができる。ある実施態様では、増大されたECM組織物質で作られた乾いた移植ボディーは圧縮可能であることができる。
【0033】
アルカリの物質のような変性剤でのECM組織物質の処理は、材料の物理的構造の変化を引き起こし、次いで増大を引き起こす場合がある。そのような変化は、材料内のコラーゲンの変性を含むことがある。ある実施態様では、そのオリジナルのバルク体積の少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、あるいは少なくとも約6倍、あるいはより多く増大することが好ましい。当該技術分野の当業者らは、増大の程度はいくつかの要因と関係があり、例えばアルカリ媒体の濃度あるいはpH、材料へのアルカリ媒体の暴露時間、増大される材料の処理中の温度に関係することが理解されるだろう。これらの要因は、材料の増大の希望のレベルを達成するために、本明細書に記載されたルーチンの実験を通して変えることができる。
【0034】
コラーゲン線維はトロポコラーゲン分子の4分の1を互い違いにされた配列で構成される。トロポコラーゲン分子はそれ自体、三重螺旋を形成するために共有結合の分子内の結合および水素結合によって結合された3つのポリペプチド鎖から形成される。さらに、共有結合の分子間結合は、コラーゲン線維内の異なるトロポコラーゲン分子間で形成される。頻繁に、多数のコラーゲン線維はコラーゲン線維を形成するために互いに集まる。本明細書記載のように、著しく分子内および分子間の結合を分裂させないように材料へのアルカリ性物質の追加を行うことができるが、材料に増加した処理された厚さ(例えば少なくとも自然におけるものの2倍の厚さ)を与える程度まで材料の本来特性を損なわないようにされる。基体としての使用のための増大された物質を作るために処理することができるECM物質は、本明細書に開示したものあるいは他の適切なECMを含むことができる。典型的には、そのようなECM物質は、自然に発生した分子内架橋および自然に発生した分子間架橋を含むコラーゲン線維のネットワークを含んでいる。本明細書記載の増大処理に際して、自然に発生した分子内架橋および自然に発生した分子間架橋は、完全なコラーゲンのシート材料としてコラーゲンのマトリクス材を維持するために十分に、処理されたコラーゲンのマトリクス材の中に保持されることができる;しかしながら、コラーゲンのシート材料中のコラーゲン線維の本来特性を奪うことができる。またコラーゲンのシート材料は、出発原料の厚さよりも大きなアルカリの処理された厚さを有することができ、例えばオリジナルの厚さの少なくとも120%の厚さ、あるいはオリジナルの厚さの少なくとも2倍の厚さを持つことができる。その後、増大されたECM材料は移植体の中または移植体としての使用のために、発泡体またはスポンジの基体を提供するために、例えば、粉砕、キャストおよび処理された材料を乾かすことによって処理することができる。増大されたECM物質およびそれらの調製に関する追加の情報は、米国特許出願公開US20090326577(2009年12月31日公開)、米国特許出願番号12/489,199(2009年6月22日出願)に見いだされ、これはその全体が参照され本明細書に組み入れられる。
【0035】
ある実施態様では、骨原性組成物は、脱細胞されたECM組織およびBMP、好ましくはrhBMP−2から成るか、本質的に成ることができる。さらにまたはあるいは、骨原性組成物は、主として脱細胞されたECM組織およびBMP、好ましくはrhBMP−2で構成することができ、例えば乾燥重量基準で少なくとも80%、少なくとも90%あるいは少なくとも95%である。
【0036】
他の形態では、ECM組織物質に加えて、本発明の組成物は他の有機的なキャリア材料を含むことができる。例示物質としては、例えば、天然または合成のポリマーから構成される合成の基体があげられる。例示される合成高分子は、好ましくは生物分解性の合成高分子であり、たとえばポリ乳酸、ポリグリコール酸あるいはそれらの共重合体、ポリ無水物、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ−酪酸塩 吉草酸塩、ポリヒドロキシアルカノエート、あるいは別の生分解性ポリマーまたは、混合物である。これらあるいは他の物質(例えば本明細書に議論されるようなECM物質)で構成された好ましい移植体は、細胞の侵入およびマトリックスへ内部成長を許可するように構成された多孔性のマトリクス材であろう。
【0037】
無機の足場物質も、本発明の組成物に組み入れることができる。ある実施態様では、組成物はECM組織材料および骨形成タンパク質と共に1つ以上のミネラル含有物質を組込むことができる。硬組織(骨)の生成を支援するために、そのようなミネラルの材料は足場として役立つことができる。そのような目的の多くのミネラルを含む物質が知られており、たとえば微粒子の形態で使用することができる。適切な物質としては、たとえばハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、生体ガラス、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、骨あるいはそれらの組み合わせを含んでいる。
【0038】
ミネラルを含む物質およびECM組織材料は、任意の適切な方法で組み合わせることができる。いくつかの変法では、ミネラルを含む材料は微粒子の物質、たとえば粉末または顆粒状物である。また、ECM組織材料も微粒子物質である。これらの形態では、ミネラルを含む微粒子およびECM組織微粒子は互いの混合物であり、好ましくは本質的に均質の混合物である。そのような混合物は骨形成タンパク質との後の組み合わせのために乾燥した形態で提供することができる。あるいは混合物中に乾燥した(例えば、凍結乾燥された)骨形成タンパク質を含むことができる。
【0039】
さらに別の形態では、ECM組織材料はECMマトリックスを提供することができる。また、ミネラルを含む材料の粒子をECMマトリックスに埋め込むことができる;
あるいは、ミネラルを含む材料はミネラルのマトリックスを提供することができる。また、ECM組織材料の粒子はミネラルのマトリックスに埋め込むことができる。
【0040】
ミネラルを含む材料およびECM組織材料をミネラル化されたECM組織マトリックスの形態中で組み合わせることができ、ミネラル粒子はECM組織の生来の構造のファイバー、たとえばコラーゲンおよび/またはエラスチン・ファイバーに接着されおよび/または生来の構造のファイバーの間にトラップされ、および/または生来の構造のファイバー内にトラップされる。そのようなミネラル化されたECM組織マトリックスは、ECM組織マトリックスの生来の構造のファイバー上、ECM組織マトリックスの生来の構造のファイバー内、ECM組織マトリックスの生来の構造のファイバーの間に、溶液からミネラルの粒子を沈殿させられる方法、またはそれらの組み合わせによって調製することができる。例えば、ミネラル化プロセスはECM組織の多孔性のマトリックス内で、形成されるミネラル粒子の最初の成分の溶媒和されたイオンを含む第1の溶液、および少なくとも形成されるミネラル粒子の第2の成分の溶媒和されたイオンを含む第2の溶液と混合することを含むことができる。第1と第2の成分は、ミネラル化されたECM組織マトリックスのミネラルの粒子の形成の中で(たとえばイオン的にまたは他の態様で)相互作用することができる。他の調製のモードにおいて、ECM組織マトリックスは、交互に少なくとも第1と第2の溶液と接触させ、ECM組織マトリックス内のミネラルの粒子の形成に帰着させることができる。ある実施態様では、第1の溶液は溶かされた量の可溶性のカルシウム塩を含むことができる。また、第2の溶液は溶かされた量の可溶性のリン酸塩を含むことができる。また得られた沈殿ミネラル粒子はカルシウムとリン酸塩を含むことができる。他のカチオンまたは陰イオン種、たとえば炭酸塩、塩化物、フッ化物、ナトリウムあるいはアンモニウムのような薬剤溶液中に存在することができ、ミネラル粒子はカルシウム・ハイドロキシアパタイト、カルシウムハイドロキシ/フルオルアパタイト、ブラシャイト(brushite)、デハライト(dahlite)、モネタイト(monetite)、リン酸化された炭酸カルシウム(方解石)、オクタカルシウムリン酸塩、またはリン酸三カルシウムから構成されることができる。カルシウムとリン酸塩の化学量論の選択、および他のイオンの存在が、形成されたミネラル粒子の特定の組成に帰着するであろうことが理解されるだろう。ミネラル溶液とテクニックに関する追加の情報については、米国特許番号5,455,231、5,508,267、6,187,047、6,384,196および6,764,517が参照できる。
【0041】
本発明のミネラル化されたECM組織物質、またはミネラルの足場物質を組込む他の組成物の中で、ミネラルの足場材料は、全体組成の任意の適切な重量パーセントを構成することができる。ある実施態様では、ミネラルの足場材料は乾燥重量基準で、全体組成の重量の約5%から約90%まで、約5%から約60%まで、または約5%から約40%まで重量を構成する。
【0042】
さらに、ミネラル化されたECMに関して、本発明で使用される好ましい脱細胞されたECM組織物質は、ECM組織材料のための源組織からの生来の生物活性の物質を保持することができる。そのような生物活性のECM組織物質のミネラル化は、ECM組織のコラーゲンおよび/またはエラスチン・ファイバー上、内および/または間に接着されたミネラル粒子を有し、さらに源組織からの生来の生物活性物質、たとえば1つ以上の成長因子(例えばFGF−2)、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン類および/または糖タンパク質のある量を保持するECM組織マトリックスに帰着するように導くことができる。上に議論されるように、これらの非コラーゲンの生来の生物活性物質は、ECM組織材料のコラーゲン線維の間に点在した固体として存在することができる。したがって、ある形態のミネラル化されたECM組織物質は、生来のコラーゲンおよび/またはエラスチン・ファイバー、それらのファイバーに接着するかそれらのファイバーの中または間に存在するミネラル粒子であって、好ましくはファイバーより小さな最大の横断面のディメンションを持っているミネラルの粒子、ECM組織材料のための源組織からの1つ以上の成長因子(例えばFGF−2)、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン類、および/または糖タンパク質をはじめとする、ファイバーの間に点在する非コラーゲンの生物活性の固体を含む。ここに開示した実施態様は、(ミネラル材料を除く)乾燥重量基準で、そのような点在した非コラーゲン生来の生物活性の固体は、ECM組織材料の少なくとも1重量%、または3重量%を構成することができる。
【0043】
たとえば投与用の流動可能な組成物に組み入れられる時、本発明で使用されるECM組織材料は、任意に微粒子の形態であることができる。そのようなECMの微粒子の物質は粒子はランダムおよび/または規則的な形でありえる。例示として、ランダムのECM組織微粒子はより大きな脱細胞されたECM組織シート材料を砕くか、微粉砕するか、切ることにより調製することができる。他方で、規則的なECM組織微粒子は、より大きな脱細胞されたECM組織層材料(例えばディスク形状粒子を提供する)から、球、卵形または多角形形状のような制御された切断によって調製することができる。そのような規則的なECM粒子は、シート形態を保持することができ、ある実施態様では約0.1〜約1mm、約0.1〜約5mm、あるいは約0.1〜約2mmの範囲の(シート粒子の表面を横切る)最大のシート・ディメンションを持つことができる。さらに、あるいは別法として、規則的なECM粒子は多数の接合した脱細胞されたECM層を含む多層構造であることができ、たとえば上記のようなより大きな多層の脱細胞されたECM組織の制御された切断によって調製することができる。脱細胞されたECM層の多層を積層する方法は本明細書に記述され、切断するための規則的なECM微粒子を生成するためのより大きな多層の脱細胞されたECM組織構成物の生成に使用することができる。ECM微粒子は、流動可能な液体キャリアに組み入れることができ、液体キャリアは典型的には水性キャリアであり、他の成分も存在することができ、投与用の注射可能、または他の流動可能な組成物を形成する。
【0044】
BMPは任意の適切な方法で固体ECM組織と組み合わせることができる。例えば、BMPは液体キャリア、たとえば蒸留水あるいは緩衝水性溶液に溶かすことができる。また、液体キャリアはECM組織と接触することができる。接触は欄委の適切な期間で行うことができる。あるモードにおいて、ECM組織およびBMPを含んでいる液体キャリアは、互いに少なくとも1分、少なくとも5分、または少なくとも10分、たとえば約5分から60分の範囲で接触される。いくつかの実施態様で、先に議論されたように、ECM組織材料はその源組織からの生来の硫酸化されたグリコサミノグリカン、たとえばヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸、および潜在的な他の生来の成分を含むだろう。これらの期間にわたるECM組織材料と液体キャリアの接触は、BMPがこの生来のヘパリン、ヘパラン硫酸および/または、他の生来の成分と結合することを可能にする。BMP成分も変性し、カプセル化し、あるいは、化学的および/またはECMに共有結合し、生物活性のより長い半減期を促進する。液体のBMP配合物およびECM組織の接触は、ポイントオブケア(point of care)で生じる場合がある;あるいは、これは商品製造中に生じる場合があり、たとえば得られたBMPが含浸されたECM組織材料は、その後凍結乾燥され、乾燥構造物が得られ、貯蔵および後の使用のために殺菌下にパッケージすることができる。さらに、ECM組織との液体のBMP配合物の接触の後に、いくつかの実施態様では、結果として生じるBMPが含浸されたECM組織は、水あるいは別の適切なすすぎ液体ですすぎ、組成物から結合していないBMPのうちの少なくとも幾分かを除去し、またある態様では結合していないBMPの少なくとも70%を除去する。これは、患者に投与された優勢な量のBMPがキャリア材料に結合され、移植部位へより効果的に局地化される組成物を提供することができる。
【0045】
ECM組織マトリックスおよびBMPも流動可能な移植組成物中に組み入れることができる。これらの目的のために、ECM組織は微粒子および/またはゲル・フォームである場合がある。そのような組成物中の流動可能なキャリア材料は、ゲル・フォームのECM組織および/または他の材料、および典型的には水性キャリア材料を含むことができる。いくつかの実施態様中の流動可能なキャリアは無機の流動可能なキャリアであるか、またはこれを含み、たとえば硬化可能な無機の流動可能なキャリア、たとえば硬化してリン酸カルシウムまたは硫酸カルシウム含むセメントを形成するものであることができる。例示として、カルシウム源およびリン酸塩源を含んでいる反応物は、微粒子のおよび/またはゲル・フォームのECM組織材料およびBMPと組み合わされ、硬化して非流動可能なリン酸カルシウム固体になる流動可能な組成物を生産することができる。カルシウム源およびリン酸塩源は単一の化合物として存在してもよいし、あるいは2つ以上の化合物として存在してもよい。そのため、乾燥した反応物の中にある単一のリン酸カルシウムはカルシウム源およびリン酸塩源であることができる。あるいは、化合物がカルシウム、リン酸塩あるいはカルシウムおよびリン酸塩を含んでいる化合物である場合、2つ以上の化合物が乾燥した反応物の中にあってもよい。乾燥した反応物の中に存在しているリン酸カルシウム源としては次のものがあげられる:MCPM(モノカルシウム・リン酸塩一水化物あるいはCa(HPO)2・HO);DCPD(リン酸カルシウム二水和物、ブラシャイトあるいはCaHPO・2HO)、ACP(無定形のリン酸カルシウムあるいはCa(PO)2HO)、DCP(リン酸二カルシウム、モネタイト、あるいはCaHPO)、リン酸三カルシウム、アルファ−およびベータCa(POの両者を含む、リン酸四カルシウム(Ca(POなど。カルシウム源としては次のものがあげられる:炭酸カルシウム(CaCO)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))など。リン酸塩源としては次のものがあげられる:リン酸(HPO)、可溶性のリン酸塩塩類など。ある形態では、上記のカルシウム含有、およびリン含有反応物は乾燥した形態(例えば混合されたECM組織粒子とともに)である場合がある。また、これらの乾燥した反応物は、液体媒体、例えば蒸留水、酸性水溶液溶液(例えばリン酸)、あるいは可溶性のオルソ燐酸塩またはモノカルシウム・リン酸塩一水化物を含む水性溶液と一緒にされ、流動可能で硬化可能な組成物を形成することができる。硬化可能な組成物は、たとえば非化学量論のカルシウムが不十分なハイドロキシアパタイトあるいはブラシャイト材料に硬化することができる。この硬化物質は微粒子および/またはゲル・フォームのECM組織材料を同伴することができる。そのような硬化可能な組成物または硬化された組成物中のBMPはECM組織材料に(例えばヘパリンおよび/またはヘパラン硫酸および/または他の生来の成分のような生来の硫酸化されたグリコサミノグリカンへの結合を介して)結合することができ、流動可能なキャリア内に含まれ、硬化された無機のマトリクス材、あるいはそれらの組み合わせを得ることができる。ある形態では、重量%でBMPの少なくとも50%、少なくとも70%あるいは少なくとも90%は、固体のキャリア形態(例えば微粒子の形態)のECM組織材料に結合され、組成物の流動可能な液体キャリア材料と比較してBMPが豊化されるだろう。
【0046】
BMPは任意の適切なテクニックを使用して、流動可能な組成物に組み入れることができる。それはECM組織材料へしみ込ませることができ、その後流動可能な組成物(例えば水性媒体あるいは他の流動可能なキャリア材料による懸濁液または混合物)に組み入れることができる。さらに、または別法として、BPMは液体媒体中に加えることができ、流動可能なキャリア媒体として、あるいは少なくともその一部として役立つことができる。この液体媒体は次にECM組織材料と組み合わせることができる。まださらに、乾燥した粉末(例えば、凍結乾燥された)形態のBMPは乾燥した混合物を形成するために乾燥した形態のECM材料と組み合わせることができる。その後、この乾燥した混合は流動可能な組成物を形成するために液体媒体と組み合わされることができる。これら、およびECM組織材料およびBMPを含む流動可能な組成物の調製の他の方法は、本明細書の記述からの当業者には明らかであろう。同様に、別々にパッケージにされた形態でこれらの成分を含んでいるキットは、たとえばポイントオブケアの場合に、流動可能な組成物を調製するための追加の実施態様を提供する。
【0047】
本発明の組成物で、BMP−2および/または他のBMPは、組成物中で低容量で提供され、および/または患者の体内で比較的低投与量で使用される。例えば、BMP−2あるいは他のBMPは、組成物中の(乾燥重量基準)1グラムのコラーゲン細胞外マトリックス組織物質当たり約75〜約300マイクログラムの範囲のレベルで存在することができ、組成物中のコラーゲンの細胞外マトリックス組織物質の1立方センチメートル当たり約25〜約300マイクログラムの範囲のレベルで存在し、合計のBMP−2あるいは他のBMP投与量は約4mg以下、または約3mg以下であり、例えば約1〜4mgの範囲である。患者が人間の場合、これらの添加量と投与量を使用することができる。
【0048】
いくつかの形態では、本明細書の開示は、BMPを含む溶液内に飽和されたコラーゲンの細胞外マトリックス組織物質を含む骨原性組成物を調製する方法を含んでいる。本発明のある変法では溶液は約0.1μg/mlから約10μg/mlのBMPを含む。好ましい実施態様では、溶液は約0.1μg/mlから約1μg/mlのBMPを含む。
【0049】
本明細書に開示されるように、いくつかの実施態様では、ECMおよびBMPを含む組成物は、さらにEPOを含んでいるだろう。この点では、EPOはECMと組み合わせることができ、あるいはBMPと別々にすることができる。例えば、EPOとBMPの両方を含んでいる液体媒体(例えば溶液)は、ある実施態様ではECMと組み合わせることができる。他の態様では、それぞれ、BMPとEPOを含む別個の溶液または他の液体媒体を、ECMと組み合わせることができる。先に開示されたように、EPOは、新しい血管形成を刺激し、および/または移植部位へ間充織の幹細胞(MSC)の補強を刺激するのに有効な量で存在することができる。その上、BMPは間充織の幹細胞からの骨原性原細胞の発現を促進するのに有効になりえる。EPOは、使用された時、ヒトEPO(rhEPO)の生来のものかまたは組み換えの形態でありうる。
【0050】
ここに開示した組成物は、細胞に播種されてもよい。細胞はいくつかの形態で組成物のレシピエントの自己由来であっても、同種異型であってもよい。使用された細胞は初代細胞、外植片あるいはセルラインであることができ、分裂あるいは無分裂の細胞であることができる。細胞は、本発明のセメント組成物の中への導入に先立って生体外で増殖されることができる。ホストから実行可能な細胞の十分な数を収穫することができない場合、自己由来の細胞は好ましくはこのように増殖される。細胞は、非遺伝子的に操作されてもよいし(細胞を遺伝子組み換えするために遺伝物質の導入に供されていない)、あるいは例えば、特定用途において役立つために、タンパク質あるいは他の因子を生産するために遺伝子的に操作されてもよい。細胞は調製の間(患者への投与の前)に組成物に組み合わされてもよいし、あるいは投与された組成物を患者にその場でシードするために患者に本発明の組成物とは別途投与されてもよい。
【0051】
本明細書に開示した組成物は、様々な用途で使用することができる。好ましい用途において、組成物は骨格の欠陥、たとえば病気または破損された骨、あるいは隣接した脊椎骨を融合させるためのような骨成長を要求する他の欠陥の処理のために使用される。例えば、病気か破損された骨は、動物、特に哺乳動物、たとえば人間の扁平骨(例えば肋骨および頭蓋の前面および頭頂骨)、長骨(例えば骨の末端)、短い骨(例えば、手首および足首の骨)、不規則形骨(例えば脊椎骨と骨盤)および種子骨(例えば膝蓋骨)中の骨のうちのどれにも生じる場合がある。扱われる損傷した骨は砕かれた骨を含んでいるかもしれない。扱われる病気の骨はいくつかの実施態様では、骨減少症の骨、骨多孔症の骨あるいは壊死の骨を含んでいるかもしれない。病気と破損の組み合わされた骨、砕かれた骨減少症の骨、あるいは砕かれた骨多孔症の骨も扱われる。隣接した脊椎骨の融合は、互いに一定間隔で配置された状態で椎体を支援するように構成された、1つ以上の融合ケージあるいは他のスペーサーインプラントとともに第1と第2の隣接した椎体間で、本明細書に開示した組成物の移植を潜在的に含むことができる。実施態様、その特徴および利点についての一層の理解を促進する目的で、次の具体的な実施例が提供される。これらの実施例は例示のために示され、本明細書に記述された実施態様の範囲を制限しないことが理解されるだろう。
【実施例】
【0052】
実施例1
1μg、BMP−2サンプルの調製
rhBMP−2は−20℃の冷凍装置から得られた。水中のHClの4mM溶液が作られ、0.2μm注射器フィルターを通すことにより殺菌された。4mM HCl溶液の100μlを、ガラス瓶中のBMP−2に加え、100μg/mlの溶液を作った。その溶液は、ミクロチューブの中で簡潔に回された。10μl(1μg)のアリコートを無菌のチューブに入れ、移植の日まで−20℃で格納された。
【0053】
0.3μg BMP−2サンプルの調製
rhBMP−2は−20℃の冷凍装置から得られた。水中のHClの4mM溶液が作られ、0.2μm注射器フィルターを通すことにより殺菌された。4mM HCl溶液の100μlを、ガラス瓶中のBMP−2に加え、100μg/mlの溶液を作った。その溶液は、ミクロチューブの中で簡潔に回された。30μl/mlの溶液は、rhBMP−2溶液の30μlに4mM HClの70μlを加えることに調製された。30μl/mlの溶液は、ミクロチューブの中で簡潔に回された。10μl(0.3μg)のアリコートを無菌のチューブに入れ、移植の日まで−20℃で格納された。
【0054】
0.1μg BMP−2の調製
rhBMP−2は−20℃の冷凍装置から得られた。水中のHClの4mM溶液が作られ、0.2μm注射器フィルターを通すことにより殺菌された。4mM HCl溶液の100μlを、ガラス瓶中のBMP−2に加え、100μg/mlの溶液を作った。その溶液は、ミクロチューブの中で簡潔に回された。10μl/mlの溶液は、rhBMP−2溶液の10μlに4mM HClの90μlを加えることに調製された。10のμg/ml溶液は、ミクロチューブの中で簡潔に回された。10μl(0.3μg)のアリコートを無菌のチューブに入れ、移植の日まで−20℃
格納された。
【0055】
移植組織1の調製および手術
4mm直径のディスクが、4mmの生検パンチで、ECMシート材料(腎被膜、「RC」の4層ラミネート)から切り出された。RCディスク移植組織は、上記の実施例に記載されたようにして調製されたrhBMP−2溶液の10μlアリコートに加えられ、シートが溶液で完全に浸されることを保証した。飽和RCディスク移植組織を含むガラス瓶は最短30分、37℃のインキュベータ内に置かれた。水和されたRCディスクはガラス瓶から取り出され、次に、外科医が既知の免疫不全の(SCID)マウスの頭蓋冠の欠損モデルの準備された欠損へ移植することを可能にするために外科のフィールドへ渡された。モデルについては、各マウスに左右同形の4mmの直径の欠損が空けられた。左右同形の欠損のうちの1つはコントロール(処理されない)として使用された。また、他方は処理物質を受け取った。2本のチタン線が、イメージ可能な参照として対向する移植組織ディスクの外側端に結び付けられた。縫合は、欠損治療で空けられた頭部および尾部の穴、および移植組織ディスクの対になった穴部を通って行われた。移植組織ディスクは縫合結び目で頭頂骨に固定された。対照(空間)治療部位は、縫合で同様に結ばれたが、組織移植を受けなかった。その切り口は閉じられ、マウスにエリザベスカラー(手術の後に1週間着用された)が取り付けられた。研究されたハツカネズミは、移植後2、4、8および12週にmicroCT(小規模コンピューター断層撮影)で生体内イメージを得た。microCT走査は、治療された部位と治療されない欠損のための骨被覆の相違の測定のために使用された。
【0056】
結果:
1、0.3、および0.1マイクログラム溶液に漬けたECMインプラントディスクで治療された欠損については、移植後12週で骨被覆パーセントは、それぞれ平均88.8%(n=7)、87.1%(n=6)、および68.5%(n=7)であった。これらのグループの対応する治療していない欠損については、移植後12週で骨被覆パーセントは、それぞれ平均19.5%、18.6%、および24.5%(n=7)であった。さらに、同様な実験が12週の代わりに16週まで実行された。一群のハツカネズミ(n=7)はECM移植組織ディスク(追加のrhBMP−2はない)のみを受け取り、他の側には治療はしなかった。移植後16週で、治療していない側の骨被覆は約22%であり、治療した側の骨被覆は約35%であった。
【0057】
実施例2
10μg rhBMP−2サンプルの調製
rhBMP−2は−20℃の冷凍装置から得られた。水中のHClの4mM溶液が作られ、0.2μm注射器フィルターを通すことにより殺菌された。4mM HCl溶液の500μlを、ガラス瓶中のBMP−2に加え、100μg/mlの溶液を作った。その溶液は、ミクロチューブの中で簡潔に回された。100μl(10μg)のアリコートは無菌のチューブに入れられ、移植組織の日まで−80℃で格納された。
【0058】
移植組織の調製および外科:
ECM材料の流動可能な移植組織組成物はPBS内で微粉にされた小腸粘膜下組織(SIS)に水分を補給することにより生産された。水分が補給され流動可能なECM配合物はよく混合された。100μlが無菌の注射器に転送され、上記の例に述べられているように調製されたrhBMP−2溶液の100μlアリコートを含む2番目の注射器に接続された。水分が補給され流動可能なECM配合物およびrhBMP−2は、注射器コネクターを使用して混合され、次に、最短30分、37℃のインキュベータ内に置かれた。
【0059】
rhBMP−2を含む、水分が補給され流動可能なECMは、インキュベータから取り出され、次に外科のフィールドへ渡された。配合物は簡潔に混合された。また、ほぼ5μgのrhBMP−2を含んでいる、水分が補給され流動可能なECMの100μlは、無菌の注射器に転送され、23Gのニードルを通して、骨形成の既知の免疫不全の(NOD/SCID)マウス・モデルの後方のもも筋肉に速やかに注射された。対照(ネガティブ)治療が準備され、水分が補給された流動可能なECM配合物がPBSの100μlと混合された以外は上に述べられた実施例と同様にもも筋肉に注射された。注射後、ハツカネズミは回収され、住処に返された。研究対象ハツカネズミは、注射後1および2週間でX線で生体内画像が撮影された。X線はもも筋肉の新たな骨形成を発見するために使用された。研究対象ハツカネズミは注射後2週間で殺され、ミクロコンピューター断層撮影(microCT)で生体外で画像が撮影された。microCT走査はもも筋肉中の新たな骨形成を画像撮影し定量するために使用された。
【0060】
結果:
5μg rhBMP−2を含む流動可能なECMで治療されたハツカネズミは、注射後2週間で新たに豊富なもも筋肉内の骨形成を示した(図1 A)。流動可能なECMの100μlの注射を受けた対照動物は、2週間のフォローアップで筋肉内の骨形成を示さなかった(図1 B)。
【0061】
明細書および特許請求の範囲に使用される時、文脈が明白に他のものを指示しなければ、単数表現は複数のものを含んでいる。もし他の方法で定義されなかったならば、ここに使用される技術的および科学用語はすべて本発明が属する技術の通常の技術者に一般に理解されるのと同じ意味を持っている。値の範囲が提供される場合、文脈が明白に他を指示しなければ、その範囲の上限および下限の間の中間値は、下限の単位の10分の1であり、記載された範囲の値および中間値は発明の範囲に包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限の範囲は、より小さな範囲に独立して含まれることができる。またそのような実施態様も、記載された範囲で具体的に除かれたものを除き発明の範囲に包含される。記載された範囲が1または両方の限界を含む場合、どちらかあるいは両方を除く範囲及ぶものも、さらに発明の範囲に含まれる。
【0062】
ここに言及された出版物はすべて、本明細書に記述された発明に関連して使用されるかもしれない出版物に開示され述べられている成分について記述する目的で、参照され、本明細書に組込まれる。
【0063】
発明が図面および先の記述に詳細に述べられているが、それらは例示であり何らの限定を意図するものではない。好ましい実施態様だけが示され記述された。また、発明の精神内における変更および変化はすべて、保護されることが望まれる。さらに、ここに引用された出版物はすべて、当業者に示されその全体が参照され本明細書の一部とされ、個々参照として全部の記載が本明細書に加えられる。
図1