(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882415
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】水晶体超音波吸引のためのねじりモードニードル
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
A61F9/007 130B
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-186644(P2019-186644)
(22)【出願日】2019年10月10日
(62)【分割の表示】特願2017-553216(P2017-553216)の分割
【原出願日】2016年4月9日
(65)【公開番号】特開2020-22779(P2020-22779A)
(43)【公開日】2020年2月13日
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】14/687,466
(32)【優先日】2015年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507027656
【氏名又は名称】ムーグ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】クレイトン,ラリー
【審査官】
寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2001/0011176(US,A1)
【文献】
米国特許第05935096(US,A)
【文献】
特開2004−275592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶体超音波吸引ニードルを、縦方向駆動周波数及び縦方向駆動量で、前記ニードルの長手方向に沿った反対方向に前後に駆動するように動作可能な超音波ハンドピースに取り付けられる水晶体超音波吸引ニードルであって、
前記ハンドピースに取り外し可能に取り付けられるように適合された基部と、
前記基部から長手方向軸に沿って延在する細長いシャフトであって、切除端を有する遠位先端で終端するシャフトとを含み、
前記基部及び前記シャフトは、これらを通過する吸引内腔を含んでおり、
前記シャフトは、更に、前記シャフトの長手方向に延在する複数の外側溝を含んでおり、
前記複数の外側溝は、前記ニードルの前記基部に与えられた振動性の縦方向駆動運動を、前記ニードルの前記先端におけるねじり運動に変換する構成を有しており、前記ねじり運動は基本ねじりモード周波数及びねじりモード量を有しており、前記ねじりモード量は前記縦方向駆動量より大きく、
前記複数の外側溝は、前記シャフトの前記長手方向に延在する螺旋状溝であり、
i)前記複数の外側溝は、それぞれ22.86mm以下の螺旋ピッチを有するちょうど6つの溝で構成されている、またはii)前記複数の外側溝は、それぞれ0.102mm以上0.124mm以下の範囲の深さと7.62mmの軸方向長さを有している、またはiii)前記複数の外側溝は、それぞれ0.116mm以上0.142mm以下の範囲の深さと10.16mmの軸方向長さを有している、またはiv)前記複数の外側溝は、それぞれ0.127mm以上0.152mm以下の深さを有するちょうど5つの溝で構成されている、水晶体超音波吸引ニードル。
【請求項2】
前記複数の外側溝は、前記基本ねじりモード周波数が前記縦方向駆動周波数と同じになるように構成されている、請求項1に記載の水晶体超音波吸引ニードル。
【請求項3】
前記複数の外側溝の構成は、前記外側溝の螺旋ピッチ、前記外側溝の幅、前記外側溝の深さ、前記外側溝の軸方向長さ、及び前記外側溝の総数を含む、請求項1に記載の水晶体超音波吸引ニードル。
【請求項4】
縦方向駆動周波数及び縦方向駆動量を有する振動性の縦方向駆動運動を少なくとも提供するように動作可能な超音波ハンドピースと、
前記ハンドピースに取り外し可能に取り付けられたニードルであって、シャフトの長手方向に延在する複数の外側溝を有する細長いシャフトを含み、前記ハンドピースに取り付けられている場所から離れた遠位先端で終端している、ニードルとを含む水晶体超音波吸引システムであって、
前記複数の外側溝は、前記ハンドピースによって前記ニードルに与えられた前記縦方向駆動運動を、前記ニードルの前記遠位先端におけるねじり運動に変換する構成を有しており、前記ねじり運動は基本ねじりモード周波数及びねじりモード量を有しており、前記ねじりモード量は前記縦方向駆動量より大きく、
前記複数の外側溝は、前記シャフトの前記長手方向に延在する螺旋状溝であり、
i)前記複数の外側溝は、それぞれ22.86mm以下の螺旋ピッチを有するちょうど6つの溝で構成されている、またはii)前記複数の外側溝は、それぞれ0.102mm以上0.124mm以下の範囲の深さと7.62mmの軸方向長さを有している、またはiii)前記複数の外側溝は、それぞれ0.116mm以上0.142mm以下の範囲の深さと10.16mmの軸方向長さを有している、またはiv)前記複数の外側溝は、それぞれ0.127mm以上0.152mm以下の深さを有するちょうど5つの溝で構成されている、水晶体超音波吸引システム。
【請求項5】
前記複数の外側溝は、前記基本ねじりモード周波数が前記縦方向駆動周波数と同じになるように構成されている、請求項4に記載の水晶体超音波吸引システム。
【請求項6】
前記縦方向駆動周波数は38KHz〜44KHzの範囲内にある、請求項4に記載の水晶体超音波吸引システム。
【請求項7】
前記縦方向駆動周波数は41.5KHzである、請求項6に記載の水晶体超音波吸引システム。
【請求項8】
前記縦方向駆動量は0.1mmである、請求項6に記載の水晶体超音波吸引システム。
【請求項9】
前記複数の外側溝の構成は、前記外側溝の螺旋ピッチ、前記外側溝の幅、前記外側溝の深さ、前記外側溝の軸方向長さ、及び前記外側溝の総数を含む、請求項4に記載の水晶体超音波吸引システム。
【請求項10】
前記超音波ハンドピースは、縦方向及びねじりを組み合わせた駆動運動を提供するように動作可能である、請求項4に記載の水晶体超音波吸引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]
本発明は、概して、例えば白内障手術において、内部レンズを乳化してそのレンズを眼から吸引するために使用される超音波ハンドピース及びニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]
白内障手術は、歴史的には、ハンドピースが受けるニードルの先端において縦方向の動き又は「手持ち削岩機(jackhammer)」のような動きを提供する超音波ハンドピースを使用して行われてきた。白内障手術で使用される高出力の縦モードの超音波ハンドピースは、典型的には、
図1に示す構成部品からなる。外科用ニードルは、圧電セラミック素子のスタックによって超音波駆動される段付きホーンに螺入されている。セラミック素子のスタックの後方にスペーサが配置されている。マウント、隔離チューブ、及びルアーコネクタ付きのリヤマス(rear mass)が、スタック内を通過する中央ボルトに螺合されている。回転力が与えられると、リヤマスはスタックに圧縮予荷重を与える。破砕された白内障組織を吸引するための内腔が、ニードルを通ってホーン内に入り、中央ボルトを通ってリヤマス内に入り、ルアーコネクタを出て、ポンプに取り付けられている可撓性チューブ内に入る。ホーンの段の後方に1つのOリングボアシールが配置され、もう1つがリヤマウントに配置されている。これによって、ハンドピースのハウジング内部に防水障壁が提供される。
【0003】
[0003]
縦モードのハンドピースを使用する場合、切除が行われるのは、ニードルの先端が白内障部分に向かって前進する発振サイクルの半分においてのみである。ニードルの先端が白内障部分から離れるサイクルの半分においては、ニードルの先端は切除を行わないが、サイクル全体を通してエネルギーが必要であり熱が発生する。結果として、切除効率は最適化されず、切除時間が増加する。
【0004】
[0004]
ねじり(torsional)モードの水晶体超音波吸引が、
図2に示すOZil(登録商標)
ハンドピースの形態で2006年にAlcon社によってもたらされた。OZil(登録商標)ハンドピースは、縦方向とねじりの両方の運動をニードルに伝え、先端のジオメトリーに応じて、回転または横方向のいずれかのせん断運動によって切除を行う。スタックによって発生する縦方向振動の一部は、
図2に示すOZil(登録商標)ハンドピースのホーンに機械加工により一体的に形成されたねじりばねによって、ねじり運動に変換される。ケールマン(Kelman)構造を有する屈曲先端ニードルは、先端における左右方向の旋回運動によって、シャフトのねじれを増幅させる。一方で、直線状又はフレア状の先端を有するニードルは、ニードルの中心と先端の最も外側にある切除端との間の距離によって増幅された回転運動によって切除を行う。
【0005】
[0005]
ニードルの先端がねじりモードで横方向に又は回転しながら動いていると、より端が、白内障部分をはねつけるのではなく切除のために使用される。そして、ニードルの先端は、サイクル全体を通して白内障部分への接触を維持し、縦モードのみのハンドピースよりも効率的に切除を行う。
【0006】
[0006]
OZil(登録商標)ハンドピースへの改良が、米国特許第8,395,299号(Bromfield)に記載されている。縦方向運動の一部をねじり運動に変換するばねがホーンに一体化されているOZil(登録商標)ハンドピースとは異なり、Bromfieldの設計によると、ばねが個別部品としてハンドピースに組み込まれている。これにより、様々なパフォーマンス目標を達成するための代替構成及び代替的なばねの材料が促され、デザインの自由度が著しく向上した。
【0007】
[0007]
米国特許第5,935,096号(Barrett)は、白内障手術中に眼のレンズを乳化及び除去するために使用するニードルを開示している。ニードルの周囲にスリーブが配置され、灌注液(すなわち、冷却液)がスリーブの内壁とニードルの外面との間のスペースを通って手術部位に供給され、眼に対する熱損傷のリスクを低減する。様々な実施形態において、ニードルの外面に溝が形成される。これによって、刺入創によってスリーブがニードルの外面に圧迫された場合でも、灌注液が手術部位まで流れる通路が提供される。スリーブが圧迫されたときに灌注液が眼の内室(internal chamber)に到達するための通路を提供する限りにおいて、溝の形状、数、寸法は問わない。
図5に示す一実施形態では、ニードルは、ニードルシャフトの外面の長さに沿って延在する複数の平行な螺旋状の溝を有する。螺旋状の溝の詳細な寸法については説明されていない。また、縦方向駆動運動からニードルの先端のねじり運動への変換については説明されていない。
【0008】
[0008]
米国特許出願公開第2006/0047254(A1)(Akahoshi)も、白内障手術中に眼のレンズを乳化及び除去するために使用するニードルの複数の異なる実施形態を開示している。
図9aに示す実施形態のうちの1つでは、ニードルシャフトの外側面の長さに沿って延在する複数の平行な螺旋状の溝を有する。上述の特許Barrettと同様に、特許出願Akahoshiは手術創部位における過熱を防止することに関連している。特許出願Akahoshiは、特許Barrettとは異なり、外側スリーブを使用せずに熱の発生を低減することを試みている(スリーブを使用することもできる)。Akahoshiは、3°〜30°の範囲内のピッチ角を有する3つ〜5つもの平行な螺旋状の溝によって、ニードルをスリーブ無しで使用した場合に灌注液の「逆流」の流れが生じることを開示している。この開示は、溝の両端に近づくにつれ深さが滑らかに減少する円形又は半円形の溝を使用することが、逆流の助けとなることを示唆している。螺旋状の溝の詳細な寸法については説明されていない。また、縦方向駆動運動からニードルの先端のねじり運動への変換については説明されていない。
【発明の概要】
【0009】
[0009]
本発明の目的は、ねじりばねを、
図2に示すようにホーンに一体的に組み込むことも、Bromfieldのように個別の追加部品として組み込むこともなく、ニードルの先端の縦方向運動及びねじり運動の両方を超音波ハンドピースから発生させることである。
【0010】
[0010]
本発明の更なる目的は、ニードルの先端のねじり運動が増大するねじりばねを組み込んだハンドピースを提供し、白内障手術中のレンズの切除効率を向上させることである。
【0011】
[0011]
超音波ハンドピースと共に使用する水晶体超音波吸引ニードルが提供される。このニードルは、ハンドピースに取り外し可能に取り付けられるように適合された基部と、この基部から長手方向軸に沿って延在する細長いシャフトであって、切除端を有する遠位先端で終端するシャフトとを含んでいる。基部とシャフトは、これらを通過する吸引内腔を含ん
でいる。シャフトは、更に、シャフトの長手方向に延在する複数の外側溝を含んでいる。
【0012】
[0012]
本発明によれば、これら複数の溝は、ニードルの基部に与えられた振動性の縦方向駆動運動を、ニードルの先端におけるねじり運動に変換する構成を有している。ねじり運動は、基本ねじりモード周波数及びねじりモード量を有し、このねじりモード量は縦方向駆動量よりも大きいという特徴がある。言い換えれば、ニードルによって得られる縦方向対ねじりのゲインは、1より大きい。外側溝は、ニードルシャフトの長手方向に延在する螺旋状の溝であり得る。所望の縦方向対ねじりのゲインは、溝の螺旋ピッチ、溝の深さ、溝の軸方向長さ、及び溝の総数などの溝の構成パラメータを調整することによって得ることができる。
【0013】
[0013]
本発明はまた、縦方向駆動周波数及び縦方向駆動量を有する振動性の縦方向駆動運動を少なくとも提供するように動作可能な超音波ハンドピースと、前述のようにハンドピースに取り外し可能に取り付けられた水晶体超音波吸引ニードルとを含む水晶体超音波吸引システムによっても具現化される。特定の実施形態では、ハンドピースは縦方向及びねじりを組み合わせた駆動運動を提供するために動作可能なことがあり、ニードルによってニードルの先端におけるねじり運動が増進される。
【0014】
[0014]
本発明は更に、超音波ハンドピースと、このハンドピースに取り外し可能に取り付けられた細長いニードルとを有する水晶体超音波吸引システムをチューニングする方法によって具現化される。この方法は、概して、ニードルをデジタルモデル化する工程と、ハンドピースによってニードルに供給される縦方向駆動運動の縦方向駆動周波数及び縦方向駆動量を提供する工程と、期待される基本ねじりモード周波数及び期待されるねじりモード量がニードルの遠位先端にて発生していることを確認するために、縦方向駆動運動の付与に対するニードルの周波数応答をシミュレートする工程とを含む。ニードルのデジタルモデルは、ニードルの幾何学的寸法及び材料を含む。ニードルの幾何学的寸法は、ニードルの長手方向に延在する複数の外側螺旋状溝を規定する。この方法は、期待されるねじりモード量が縦方向駆動量より大きくなるまで、複数の溝についての以下のパラメータのうち少なくとも1つを調整することを含む:(i)溝の螺旋ピッチ、(ii)溝の深さ、(iii)溝の軸方向長さ、及び(iv)溝の総数。
【0015】
[0015]
本発明は、伝統的な縦モードのハンドピースをねじりモードの白内障手術に使用することを可能とし、それぞれ異なる溝構成を有する複数のニードルから特定の溝構成を有するニードルを選択することにより、所望のねじりモード動作特性を選択することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
[0016]
本発明の性質及び動作形態はこれから、添付図面を参照して、本発明の以下の詳細な説明においてより詳細に説明される。
【
図1】[0017] 従来技術による、縦モードの超音波ハンドピースの斜視図である。
【
図2】[0018] 従来技術による、縦モード及びねじりモードを組み合わせたハンドピースの斜視図である。
【
図3】[0019] 本発明の実施形態に従って形成された水晶体超音波吸引ニードルの斜視図であり、溝の長さ(GL)寸法を示している。
【
図4】[0020]
図3に示すニードルのシャフトの拡大横断面図であり、溝の幅(GW)及び溝の深さ(GD)寸法を示している。
【
図5A】[0021] 異なる溝構成を提供するために螺旋ピッチ(すなわち、スパイラルピッチ)及び溝の角度を異ならせた、本発明を具現化する水晶体超音波吸引ニードルの側面図である。
【
図5B】異なる溝構成を提供するために螺旋ピッチ(すなわち、スパイラルピッチ)及び溝の角度を異ならせた、本発明を具現化する水晶体超音波吸引ニードルの側面図である。
【
図5C】異なる溝構成を提供するために螺旋ピッチ(すなわち、スパイラルピッチ)及び溝の角度を異ならせた、本発明を具現化する水晶体超音波吸引ニードルの側面図である。
【
図5D】異なる溝構成を提供するために螺旋ピッチ(すなわち、スパイラルピッチ)及び溝の角度を異ならせた、本発明を具現化する水晶体超音波吸引ニードルの側面図である。
【
図6】[0022] 溝の螺旋ピッチの関数として、縦方向対ねじりのゲイン及び縦方向対縦方向のゲインの変動を示すグラフである。
【
図7】[0023] 溝の螺旋ピッチの関数として、ねじり対縦方向の比率の変動を示すグラフである。
【
図8】[0024] 溝の螺旋ピッチの関数として、ねじりモード周波数の変動を示すグラフである。
【
図9】[0025] 溝の深さの関数として、縦方向対ねじりのゲイン及び縦方向対縦方向のゲインの変動を示すグラフである。
【
図10】[0026] 溝の深さの関数として、ねじり対縦方向の比率の変動を示すグラフである。
【
図11】[0027] 溝の深さの関数として、ねじりモード周波数の変動を示すグラフである。
【
図12】[0028] 異なる軸方向長さの螺旋状溝を有する2つのニードルについての縦方向対ねじりのゲイン及び縦方向対縦方向のゲインが、比較のためにプロットされている、
図9に類似のグラフである。
【
図13】[0029] 異なる軸方向長さの螺旋状溝を有する2つのニードルについてのねじり対縦方向の比率が、比較のためにプロットされている、
図10に類似のグラフである。
【
図14】[0030] 異なる軸方向長さの螺旋状溝を有する2つのニードルについてのねじりモード周波数が、比較のためにプロットされている、
図11に類似のグラフである。
【
図15】[0031] 螺旋状溝の総数を6から5に減少させた更なる代替的な溝構成を提供する、
図4に類似の拡大断面図である。
【
図16】[0032] 異なる数の螺旋状溝を有する2つのニードルについての縦方向対ねじりのゲイン及び縦方向対縦方向のゲインが、比較のためにプロットされている、
図9に類似のグラフである。
【
図17】[0033] 異なる数の螺旋状溝を有する2つのニードルについてのねじり対縦方向の比率が、比較のためにプロットされている、
図10に類似のグラフである。
【
図18】[0034] 異なる数の螺旋状溝を有する2つのニードルについてのねじりモード周波数が、比較のためにプロットされている、
図11に類似のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0035]
図3及び
図4に、本発明の実施形態に従って形成された水晶体超音波吸引ニードル10を示す。ニードル10は、ニードルを、縦方向駆動周波数及び縦方向駆動量で、ニードルの長手方向に沿った反対方向に前後に駆動するように動作可能な超音波ハンドピースに取り付けられるように設計されている。ニードル10は、例えばねじ14を提供することに
よってハンドピースに取り外し可能に取り付けられるように適合された基部12と、基部12から長手方向軸11に沿って延在する細長いシャフト16とを含んでいる。シャフト16は、切除端20を有する遠位先端18で終端している。先端18は、例えば、軸11に対する30°の面取り角で面取りされ得る。基部12及びシャフト16は、これらを軸11に沿って通過する吸引内腔22を含んでいる。シャフト16は、更に、シャフトの長手方向に延在する複数の外側溝24を含んでいる。溝24は、シャフト16の長手方向に延在する螺旋状溝として構成され得る。ニードル10は、チタン合金Ti−6Al−4Vでできていることがあり、それによって、生体適合性、良好なばね及び疲労特性、及び密度比に対する高剛性を提供する。当然のことながら、本発明から逸脱しない限りにおいて、他の好適な材料を用いることができる。
【0018】
[0036]
溝24は、シャフト16の外側円柱面に形成されており、ニードルシャフトの周囲の複数の平行な螺旋として構成され得る。溝24は、直線状の溝と同様に、溝の形成中にニードル10を回転させることによって形成することができる。後で詳述するように、複数の溝24は、ニードル10の基部12に与えられた振動性の縦方向駆動運動を、ニードルの先端18における縦方向及びねじりの両方の運動に変換する構成を有している。先端18におけるねじり運動は、基本ねじりモード周波数及びねじりモード量を有する。本発明によれば、溝24は、先端18で生成されるねじりモード量が、基部12において超音波ハンドピースからニードル10に与えられる縦方向駆動量より大きくなるように構成されている。言い換えれば、溝24は、縦方向駆動量で割った先端18のねじりモード量として定義される縦方向対ねじりのゲイン(「L−Tゲイン」)が、1より大きくなるように構成されている。これは、縦方向運動をねじり運動に変換する、ハンドピース内のねじりばね又はその他の機構を用いることなく達成される。
【0019】
[0037]
溝24は、軸11を中心として一定の角度間隔をとり得る。図示された実施形態では、溝24の構成は、溝の螺旋ピッチ(スパイラルピッチとも称される)、溝の深さGD、溝の軸方向長さGL、及び溝の総数などの様々なパラメータによって定義される。コンピュータモデリング及びシミュレーションを用いて、縦方向駆動量より大きいねじりモード量が得られる溝構成パラメータの好適な値を決定することができる。
【0020】
[0038]
図3及び
図4に示すニードルの性能特性及び利点は、様々なニードル及び溝の幾何学的構成のシミュレーションによって明らかになるであろう。有限要素解析技術を用いて、様々な幾何学的構成のニードルの力学をシミュレートした。ニードルの性能をシミュレートするのに用いた解析手法は、ニードルの三次元ソリッド及び有限要素モデルを生成することから始まる。ソリッドモデルは、三次元CADモデリングソフトウェアアプリケーションで作成され、その後、動的有限要素解析(finite element analysis、FEA)による
構造解析を行うことが可能な好適なFEAソフトウェアアプリケーションにインポートされる得る。非限定的な例において、このモデルは、Parasolidファイルとして保存され、ニードルの対応する有限要素モデルを作成するANSYS Workbench、バージョン15.0にインポートされ得る。有限要素モデルは、計算精度のための二次六面体要素のメッシュと、ニードルの材料特性(例えば、Ti−6Al−4V)の指定と、境界条件の適用とを含み得る。動的シミュレーションは、ソフトウェアによって、大気中のニードルのジオメトリーについて行われ得る。このとき、テスト及び実際の手術手順中の先端の荷重、並びに灌注流れ及び吸引流れの減衰効果は無視される。
【0021】
[0039]
各ニードル及び複数の溝構成に対してモード解析を行い、共振モード形状及び対応する
共振周波数を計算した。特に注目するモードは、ニードル構造の基本半波長ねじり及び縦モードである。複数の溝を有するニードルが縦方向運動をねじり運動に変換する程度は、ハンドピースの縦モードの動作駆動周波数が、ニードルの基本ねじりモード周波数にどれくらい近いかによって部分的に決まる。縦及びねじりモードの両方の最大変位がニードルの先端18で生じ、最小変位が基部12からシャフト16のへの移行部で生じる。
【0022】
[0040]
周波数応答解析を各ニードル構成に対して行い、特定の周波数における駆動応答をシミュレートしてもよい。縦方向の刺激に対するニードルの応答が、ニードルの基部における強制的な縦方向の変位によってシミュレートされる。説明のためにこの解析に使用される縦方向の変位量は0.0001mである。任意の合理的な量を、ニードル基部12における所与の縦方向運動入力に対するニードル先端18のL−Tゲインを計算するために使用することが可能であった。この解析では、白内障手術に使用されるハンドピースにおいて代表的な動作の縦モードに、41.5KHzの縦方向駆動周波数を使用した。ここでも、白内障手術に使用されるハンドピースの動作の縦モードとして典型的な、任意の合理的な周波数を選択することが可能であった。周波数応答解析の結果は、L−Tゲイン、縦方向駆動量で割った先端18の縦モード量として定義される縦方向対縦方向のゲイン(「L−Lゲイン」)、及び先端18の縦モード量で割った先端18のねじりモード量として定義されるねじり対縦方向の比率(「T−L比率」)を含む。先端18における切除端20の最大節点変位が、縦方向と、ニードルの長手方向軸11を中心としたねじり回転とにおいて得られた。これらの変位を使用して、L−Tゲイン、L−Lゲイン、及びT−L比率を計算した。
【0023】
[0041]
ニードル構成についてのシミュレーションは、ニードルの基本的な全体寸法は一定のままで行ったが、その一方で、溝の螺旋ピッチ、溝の軸方向長さ、溝の深さ、及び溝の総数などの溝に関するパラメータを制御された方法で変化させて、これらのパラメータが周波数応答にどのような影響を与えるか、並びに、どの溝構成パラメータの値が1より大きいL−Tゲインを得るために好適であり得るかを判断した。本明細書に記載の実施形態では、モデル化されたニードル10の全体寸法は、直線状の溝(すなわち、軸11に平行な溝)を有するBausch & Lomb社から販売されている既存のStellaris(登録商標)ニードルの寸法と同等になるように選択された。ニードルの長さNLは18.796mm(0.740インチ)、ニードルシャフト16の外径は1.092mm(0.043インチ)、そしてニードルシャフト16の内径は0.495mm(0.020インチ)であった。溝24の数は、最初は、Stellaris(登録商標)ニードルにおける直線状の溝の数と同じになるように、すなわち、溝が全部で6つとなるように選択された。溝の軸方向長さGL、溝の幅GW、及び溝の深さGDもまた、最初は、Stellaris(登録商標)ニードルにおける直線状の溝と同じようになるように、すなわち、溝の長さGLが10.160mm(0.400インチ)、溝の幅GWが0.279mm(0.011インチ)、及び溝の深さGDが0.140mm(0.0055インチ)となるように選択された。
【0024】
[0042]
1セットのシミュレーションにおいて、
図5A〜
図5Dに示すように螺旋ピッチパラメータを変えた。1.4インチ、1.1インチ、0.8インチ、及び0.5インチの螺旋ピッチが選択された。螺旋ピッチが変わると、ニードルの長手方向軸11に対する溝の中心線の角度も変わることが理解される。この例では、1.4インチの螺旋ピッチは5.5°の溝角度に対応し、1.1インチの螺旋ピッチは6.7°の溝角度に対応し、0.8インチの螺旋ピッチは9.5°の溝角度に対応し、0.5インチの螺旋ピッチが13.8°の溝角度に対応する。上述した溝寸法を有する等間隔に配置された6つの溝24に対して、
図5A〜
図5Dに示す異なる螺旋ピッチを有するニードル10に対して、モード及び周波数応答解析を行った。41.5KHzの縦方向駆動周波数を使用した。
図6に、螺旋ピッチの関数としてL−Tゲイン及びL−Lゲインをプロットしたものを示す。
図7に、螺旋ピッチの関数として先端18のT−L比率がプロットされている。
図8に、螺旋ピッチに対するねじりモードの共振周波数の変動がプロットされている。
【0025】
[0043]
図から理解され得るように、螺旋ピッチが小さくなり溝の角度が大きくなるにつれ、ニードル10の基部12における縦方向運動が、より多く先端18のねじり運動に変換され、螺旋ピッチが0.5インチのときに最大L−Tゲイン2.6に達する。L−Tゲインの増加中、L−Lゲインは比較的不変な状態を保つ。螺旋ピッチが約0.75インチを下回ったところで、L−TゲインはL−Lゲインを上回る。螺旋ピッチに対応して増加するL−Tゲイン及び比較的一定のL−LゲインはT−L比率に反映されている。T−L比率は、螺旋ピッチが減少するにつれ徐々に増加し、螺旋ピッチが0.5インチのときに最大の約2に達する。螺旋ピッチの変化に対する駆動周波数とねじりモード周波数との差が1300Hzを超えている間、基部の縦方向運動がより多くねじり運動に変換される。そのため、ねじり共振周波数と駆動周波数とが厳密に一致しなくても、L−Tゲイン及びT−L比率の顕著な増加を得られる場合ある。
【0026】
[0044]
別の一連のシミュレーションを、一定の螺旋ピッチ0.8インチを用いて、6つの螺旋状溝24の溝の深さGDを変えて(他の溝寸法は一定で)行った。この一連のシミュレーションの目的は、ニードル10の基本ねじりモードの共振周波数を、41.5KHzの縦方向駆動周波数に一致させることであった。
図9に、異なる溝の深さに対するL−Tゲイン及びL−Lゲインがプロットされている。
図10及び
図11に、溝の深さの関数として、T−L比率及びねじりモードの共振周波数の変動を示す。
図9中のL−Tゲイン及び
図10中のT−L比率は、縦方向駆動周波数及びねじりモードの共振周波数が厳密に一致する約0.005インチの溝の深さGD(
図11参照)に対応してピーク値を示している。このことは、縦方向駆動周波数がニードルのねじり共振周波数に一致するときに、ニードルが、基部の縦方向の入力運動を先端のねじり出力運動に最も効率よく変換するように動作することを示している。ニードル及び溝の寸法と材料特性とを様々に組み合わせた場合のねじり共振周波数が、縦モードの白内障手術に使用されるニードルを有するハンドピースの動作駆動周波数(典型的には、38KHz〜44KHzの範囲)に近いねじりモード共振周波数を生じさせるということが、本発明の利点である。また、
図11に示すように、溝24の溝の深さGDを変えることによって、ニードルのねじり共振周波数をこの範囲内で容易に調整できることが、本発明の更なる利点である。駆動周波数がニードルのねじり共振周波数に実質的に一致したときに最適な直線からねじりへの変換が生じるが、
図9〜
図11は、これらの周波数が理想的に一致していなくても有意なL−Tゲイン及びT−L比率を得ることができることを示している。シミュレーションは、ニードルが大気中にあると仮定して、すなわち、先端の荷重、吸引流れ、及び灌注流れから減衰又は損失が生じていない状態で行ったことに留意されたい。減衰は、ニードルのL−Tゲインを減少させる。ニードルに生じる高い応力は、高いゲインに固有でもある。疲労により、ニードルの縦からねじりへの変換が最適化され得る程度が制限される。減衰によりL−Tゲインが減少するが、その一方で、減衰は応力を低減させ、ニードルの疲労寿命を向上させる。ねじり共振のピーク周波数から少しずれた縦方向駆動周波数でニードルを駆動することは、高いL−Tゲイン及び長い疲労寿命の所望のバランスを得るために有利であり得る。更に、手術が終わる度にニードルを変えることができ、交換することができる。それによって、高いL−Tゲインが得られ、疲労破損が回避される。
【0027】
[0045]
追加のシミュレーションを行って、ニードル基部12の縦方向運動から先端18のねじり運動への変換に対する他の溝パラメータの影響を調査した。ニードルシャフト16の長手方向軸11に沿った溝24の溝の長さGLを、0.4インチから0.3インチへと短くした。一連のシミュレーションを、短くなった溝の長さ及び異なる溝の深さに対して行った。溝の幅GW及び螺旋ピッチは、それぞれ0.011インチと0.8インチのまま変更せず、溝の数は6つのままとした。ここでも、41.5KHzの駆動周波数を使用した。
図12は、L−Tゲイン及びL−Lゲインと、短くなった深さを有するニードル10の溝の深さとの関係を、長さ0.4インチの溝を有するニードルの結果との比較により示す。
図13は、先端18のT−L比率についての同様の比較を提供する。
図14は、異なる溝の長さを有するニードルのねじり共振周波数を比較する。短い溝が提供されている場合、L−Tゲイン及びT−L比率のピークは、それぞれ、約0.0044インチの浅い溝の深さにおいて生じる。長い溝を有するニードルのねじりモード共振と比較したとき、短い溝を有するニードルのねじりモード共振は、同じ溝の長さに対する周波数が低い。溝を短くすると、通常、所与の溝の深さに対するねじり共振周波数が低くなるが、縦方向対ねじりの振幅のピークに著しい変化は見られない。
【0028】
[0046]
最後の一連のシミュレーションを、
図15に示すような、6つの溝ではなく5つの溝を有するニードルに対して行った。ここでも溝の深さGDを変えたが、溝の幅GW及び螺旋ピッチはそれぞれ0.011インチ及び0.8インチのまま変更せず、縦方向駆動周波数は41.5KHzとした。
図16は、5つの溝を有するニードルのL−Tゲイン及びL−Lゲインを、6つの溝を有するニードルとの比較により示す。
図17及び
図18に、5つの溝を有するニードル設計及び6つの溝を有するニードル設計の両方についての、T−L比率及びねじりモード共振周波数の変動がプロットされている。
【0029】
[0047]
溝の数を6つから5つに減少させることによって、L−Tゲイン及びT−L比率のピークが、約0.0054インチのより深い溝の深さへとシフトしている。5つの溝を有するニードルで得られたピークL−Tゲインは、6つの溝を有するニードルで得られたピークL−Tゲインより小さい。その一方で、5つの溝を有するニードルで得られたピークL−Lゲインは、6つの溝を有するニードルで得られたピークL−Lゲインより大きい。これらの挙動の組み合わせにより、5つの溝を有するニードルのT−L比率は、6つの溝を有するニードルよりも顕著に低くなる。
図18より、所与の溝の深さGDに対して、5つの溝を有するニードルのねじり共振モード周波数は、6つの溝を有するニードルより大きいことが分かる。
【0030】
[0048]
溝パラメータの他の可能な変更に対して、シミュレーションを行うことができる。例えば、溝の幅GWを変えた場合の影響を調べることができる。溝パラメータの他に、先端のジオメトリーの変更など、他のニードルの特徴を変更させることができる。例えば、先端18を屈曲させることができる。これにより、軸11を中心とするねじりが、先端の端における増幅された横方向運動に変換されることが知られている。先端18はまた、フレア状となっていてもよい。先端をフレア状にすることによって軸11を中心とするねじり運動が増幅され、両方のフレア状端において最大せん断運動が生じ、切断効率を向上させる。
【0031】
[0049]
本明細書に記載のシミュレーションは、特定の溝パラメータを制御することによって、ニードル10のL−Tゲイン、T−L比率、及びねじりモード周波数をどの程度変えることができるかということと、縦モードで動作する超音波を用いた水晶体超音波吸引ハンド
ピースに対して、1より大きいL−Tゲインを得ることができることとを実証するのに十分である。いずれの場合にも、ハンドピースシステムがホーンの端の縦方向運動をニードルの先端のねじり運動に変換させる効率は、ニードルのねじりモード共振周波数がハンドピースの動作駆動周波数にチューニングされる又は一致する程度によって決まる。ニードルのねじりモード共振周波数は、深さ、長さ、及びピッチなどの溝のジオメトリーを変えることによって、及び/又は溝の数あるいはニードルの材料を変えることによって、容易にチューニングすることができる。
【0032】
[0050]
本明細書に記載の溝付きニードル10の有用な利点は、このニードルを縦モードの白内障手術に使用されるハンドピースに取り付けることができ、それによって、このハンドピースを、ねじりモードの白内障手術に使用可能なものに変換することである。執刀医が縦モードの白内障手術を行いたい場合は、溝付きニードルを取り外して、標準的な縦モードのニードルに交換することができる。本発明は、執刀医に対して、同じハンドピースを使用して、どちらのモードの手術も行うことができるという柔軟性を提供する。
【0033】
[0051]
本発明の別の利点は、異なる先端の運動を生じさせるために異なる溝パラメータを有する様々なニードルを提供することができ、執刀医は、手術のニーズに応じて、所望の動作特性を有するニードルの中から1つを選択可能であり得る。
【0034】
[0052]
溝付きニードル10は、従来技術のねじりモードのハンドピースと共に使用することもできる。これらのねじりモードのハンドピースにおいては、ハンドピースのスタックによって発生した縦方向運動の一部のみがねじり運動に変換されるので、本発明の溝付きニードル10を使用することによってニードル先端におけるねじり運動を更に増加させ、白内障部分の切除効率を向上させることができる。
【0035】
[0053]
縦方向運動をねじり運動に変換させるために螺旋状溝24が記載されているが、本発明から逸脱しない限りにおいて、他の非直線状の溝路を使用することもできる。
【0036】
[0054]
本発明を例示的な実施形態に関連して説明してきたが、詳細な説明は、本発明の範囲を記載される特定の形態に限定することを意図しない。本発明は、本発明の範囲内に含むことができるような、説明される実施形態の代替例、修正例、及び均等物を包含することを意図している。