(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882448
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】魚の養殖のための設備及び方法
(51)【国際特許分類】
A01K 63/00 20170101AFI20210524BHJP
A01K 61/10 20170101ALI20210524BHJP
A01K 61/60 20170101ALI20210524BHJP
【FI】
A01K63/00 C
A01K61/10
A01K61/60 321
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-503892(P2019-503892)
(86)(22)【出願日】2017年4月6日
(65)【公表番号】特表2019-513420(P2019-513420A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】NO2017050081
(87)【国際公開番号】WO2017176125
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2020年1月24日
(31)【優先権主張番号】20160573
(32)【優先日】2016年4月7日
(33)【優先権主張国】NO
(31)【優先権主張番号】20170034
(32)【優先日】2017年1月9日
(33)【優先権主張国】NO
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518355168
【氏名又は名称】ガイア ノルダール−ペデルセン
【氏名又は名称原語表記】NORDAHL−PEDERSEN, Geir
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】ガイア ノルダール−ペデルセン
【審査官】
大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04798168(US,A)
【文献】
特開平05−176653(JP,A)
【文献】
特表2008−503224(JP,A)
【文献】
英国特許出願公告第01291991(GB,A)
【文献】
特開平03−240426(JP,A)
【文献】
特開平03−191736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00−61/65、
61/80−63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚の養殖のための設備(10)であって、当該設備(10)は、
‐集水域(20)内に沈められて当該集水域(20)内を浮遊する第1貯水槽(A)を形成する、少なくとも1つ以上の養殖網かご(12)であって、当該養殖網かご(12)が水を通さない壁(14)で構成された、当該養殖網かご(12)を備えており、
‐前記集水域(20)は、外側第3貯水槽(C)とは分離しており、また、当該外側第3貯水槽(C)に流体連通している、第2貯水槽(B)を形成しており、当該集水域(20)への水の移送及び当該集水域(20)からの水の移送のために、パイプライン(30)が前記集水域(20)と前記第3貯水槽(C)との間を延びており、また、前記養殖網かご(12)から前記第3貯水槽(C)への水の放出のために、パイプライン(19a)が前記養殖網かご(12)と前記第3貯水槽(C)との間を延びており、
‐前記第3貯水槽(C)が海又は外洋である場合、前記設備は、前記集水域(20)内の前記水面(50)と前記第3貯水槽(C)内の水面(40)とがほぼ同じレベルとなるように配置されており、また、前記設備は、前記第2貯水槽(B)と前記第3貯水槽(C)との間の水の変化が、完全に又は部分的に前記第3貯水槽(C)の潮汐差によって生じるようにさらに構成されていることを特徴とする、魚の養殖のための設備(10)。
【請求項2】
前記設備(10)は、前記第1貯水槽(A)と前記第3貯水槽(C)との間に、集水域壁(22)と網かご壁(14)とによって、二重のバリアが設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の設備(10)。
【請求項3】
前記網かご(12)はまた、前記壁(14)の内側に配置される、水を通す壁(16)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の設備(10)。
【請求項4】
前記水を通す壁(16)は、引き網である、請求項3に記載の設備(10)。
【請求項5】
前記養殖網かご(12)は、
‐当該網かご(12)が前記集水域(20)内を浮遊し、また、当該集水域(20)内の前記網かご(12)が適切な垂直方向位置を確立するように設定された浮遊デバイス(17)と、
‐前記第2貯水槽(B)から前記網かご(12)に新鮮な水を供給するための、流入開口部(18a)を備えるパイプライン(18)と、
‐前記網かご(12)の下部にあって、前記第3貯水槽(C)への水の放出のためのパイプライン(19a)を経由して水及び廃物を放出するための放出口(19)と、
を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の設備(10)。
【請求項6】
前記網かご(12)からの水の放出のためのパイプライン(19a)は、柔軟性を有し、前記第2貯水槽(B)内の水面の変化に応じて、前記網かご(12)の水位を調整するものであることを特徴とする、請求項5に記載の設備(10)。
【請求項7】
前記網かご(12)は、前記集水域(20)の底部に強固又は柔軟性をもって配置されており、当該集水域(20)内の水面に対する、前記網かご(12)の垂直方向の位置決めを調整できるように設定されており、或いは、前記網かご(12)は、前記集水域(20)の天井部分又は壁部分に強固又は柔軟性をもって配置されており、当該集水域(20)内の水面に対する、前記網かご(12)の垂直方向の位置決めを調整できるように設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の設備(10)。
【請求項8】
新鮮な水を、海又は外洋である前記貯水槽(C)から前記第2貯水槽(B)に流入させるための前記流入開口部(30b)は、寄生虫のような病原性微生物が前記第2貯水槽(B)に取り込まれないように、水面(50)から一定の距離に配置されており、当該距離は、好ましくは、水面(40)から少なくとも15メートルであることを特徴とする、請求項5に記載の設備(10)。
【請求項9】
前記第1、前記第2及び前記第3貯水槽の前記水面(40),(50)及び(60)は、同じレベルであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の設備(10)。
【請求項10】
前記第3貯水槽(C)が海であり、また、当該水面の、高低差及び静圧が前記集水域(20)の外側及び内側に水を移動させるために使用されることを特徴とする、請求項1に記載の設備(10)。
【請求項11】
前記第1貯水槽(A)への水及び前記第2貯水槽(B)からの水を浄化するための浄化フィルタは、海又は外洋である前記第3貯水槽(C)の潮汐によって上下するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の設備(10)。
【請求項12】
前記集水域(20)内の壁部分(22a)は、より大きな周縁部を有し、この層において、前記集水域(20)内の水の量が当該集水域(20)の残部よりも大きくなることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の設備(10)。
【請求項13】
浄化プラント(72)は、更なる貯水槽(D)内を浮遊するように配置されており、また、前記網かご(12)からの水は、前記パイプライン(19a)を通して前記浄化プラント(72)に運ばれることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の設備(10)。
【請求項14】
前記集水域(20)への水の移送及び当該集水域(20)からの水の移送のためのパイプライン(30)は、岩石層内のトンネルの形態であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の設備(10)。
【請求項15】
魚の養殖のための第1貯水槽(A)を設けるための方法であって、前記第1貯水槽(A)を備える、少なくとも1以上の養殖網かご(12)が、集水域(20)内の第2貯水槽(B)内を浮遊しているように配置され、前記養殖網かご(12)が、水を通さない壁(14)で構成され、前記集水域(20)内の前記第2貯水槽(B)が、外側第3貯水槽(C)から分離され、また、前記第3貯水槽(C)から前記集水域(20)への水の供給が、パイプライン(30)を通して行われ、また、前記網かご(12)から前記第3貯水槽(C)への水の放出が、パイプライン(19a)を通して行われ、また、前記第3貯水槽(C)が海又は海洋である場合、前記集水域(20)内の水面(50)が、前記第3貯水槽(C)内の水面(40)と同じレベルとなるように設定された、当該方法であって、また、前記方法は、前記第2貯水槽(B)と前記第3貯水槽(C)との間の水の変化が、完全に又は部分的に前記第3貯水槽(C)の潮汐差によって生じるようにしたことを特徴とする、魚の養殖のための貯水槽(A)を設けるための方法。
【請求項16】
新鮮な水が前記第2貯水槽(B)から前記第1貯水槽(A)に供給されることを特徴とする、請求項15に記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚の養殖のための設備と、魚の養殖のための貯水槽を設置するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、魚の養殖は、巨大かつ重要な産業である。伝統的に、養殖は、海上設備で行われ、養殖網かごは、所定のメッシュサイズの引き網を有し、自由に水を通す。
【0003】
これら設備内の魚は、様々な病気にかかり、また、鮭の寄生虫は近年、鮭の養殖に関連した大きな問題を有している。前記寄生虫は、網かご設備内の網を通って入り込む。こうした前記網かご内に侵入する病原性微生物(寄生虫、藻類、バクテリア、ウィルス等)による感染の問題を解決するため、密封された設備が開発されている。養殖が地上タンク内で行われ、また、新鮮な水が海から前記設備まで汲み上げられるような、様々な地上設備が開発されている。更に、水密の壁を備えた海上浮遊式の設備もまた開発されている。こうした、「水密の」壁は、しばしばターポリン材料で形成されるが、当該壁は、異なるモールドデザインとすることができる。
【0004】
こうした養殖網かごには、特許文献1に記載されたものがある。当該養殖網かごは、浮遊式の養殖網かごであり、二重壁システム、即ち、水密の外側壁と内側引き網を備えている。前記網かごは、浮遊式のカラーに取り付けられており、水の中を浮遊して前記網かごに新鮮な水を供給するときの正しい位置決めを確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ノルウェー特許第332341号明細書 Ecomerden
【0006】
[発明の目的]
本発明の目的は、地上設備で得られる利点を確保しつつ、当該利点と、浮遊式の海上設備で得られる利点とを、こうした設備に関する欠点を取り入れることなく、共に得られるようにすることである。
【0007】
従って、本発明の目的は、養殖網かご内の貯水槽自体が、当該網かごが浮遊している貯水槽に対して閉じられた壁によって取り囲まれているという意味で、閉じられた設備を提供することであり、また、必ずしも必要ではないが、前記網かご設備を覆う設備が天井構造を有することは有利である。
【0008】
更なる目的は、養殖網かごが設備内を浮遊し、これによって、水が簡単かつエネルギー効率よく前記養殖網かごに汲み上げられると共に当該養殖網かごから汲み上げられるといった、海上設備から得られる利点を得ることである。
【0009】
これらの目的は、別の集水域内に養殖網かごを配置し、当該集水域が更に、外側貯水槽に連通することで達成される。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様において、本発明は、魚の養殖のための設備に関するものであって、当該設備は、
‐外側貯水槽(C)とは分離しており、また、当該外側貯水槽(C)に流体連通している、貯水槽(B)を備える集水域であって、当該集水域と前記貯水槽(C)との間に、前記集水域への水の移送及び当該集水域からの水の移送のためのパイプラインがある、当該集水域(20)と、
‐前記集水域内に沈められて当該集水域内を浮遊する貯水槽(A)を備える、少なくとも1つ以上の養殖網かごであって、当該養殖網かごが水を通さない壁で構成された、当該養殖網かごと、
を備えることを特徴とする。
【0011】
ある実施形態では、前記集水域内の水面と、前記貯水槽(C)内の水面とが同じレベルであること、又は、前記貯水槽(C)が海/外洋である場合、前記集水域内の前記水位が前記貯水槽(C)の満潮及び干潮間のレベルに設定されている。
【0012】
ある実施形態では、前記設備は、前記貯水槽(A)と前記貯水槽(C)との間に、集水域壁と網かご壁とによって、二重のバリアが設定されている。
【0013】
ある実施形態では、前記網かごはまた、前記壁の内側に配置される引き網のような、水を通す壁を備えている。
【0014】
ある実施形態では、前記養殖網かごは、
‐当該網かごが、前記集水域内を浮遊して前記集水域内の前記網かごに対して正しく垂直方向に位置決めされるように設定された浮遊装置と、
‐前記貯水槽(B)から前記網かごに新鮮な水を供給するための、流入開口部を備えるパイプラインと、
‐前記網かご(12)の下部にあって、パイプラインを経由して水及び廃物を放出するための放出口と、
を備えている。
【0015】
ある実施形態では、前記パイプラインは、前記貯水槽(B)内の水面の変化に伴う調整に十分な柔軟性を有している。
【0016】
ある実施形態では、前記網かごは、前記集水域の底部に強固又は柔軟性をもって配置されており、当該集水域内の水線に対する、前記網かごの垂直方向の位置決めを調整できるように設定されている。
【0017】
ある実施形態では、前記網かごは、前記集水域の天井部分又は壁部分に強固又は柔軟性をもって配置されており、当該集水域内の水線に対する、前記網かごの垂直方向の位置決めを調整できるように設定されている。
【0018】
ある実施形態では、新鮮な水を前記貯水槽(C)から前記貯水槽(B)に供給するための前記流入開口部は、寄生虫のような病原性微生物が前記貯水槽(B)に取り込まれないように、水面から一定の距離に配置されており、当該距離は、好ましくは、水面から少なくとも15メートルである。
【0019】
ある実施形態では、前記集水域は、貯水槽(C)の付近の造成地に配置されている。
【0020】
ある実施形態では、前記水面は、同じレベルである。
【0021】
ある実施形態では、前記貯水槽(C)が海であり、該水面の、高低差及び静圧が前記集水域の外側及び内側に水を移動させるために使用される。
【0022】
ある実施形態では、前記貯水槽(A)への水及び前記貯水槽(B)からの水を浄化するための浄化フィルタは、潮汐水と共に上昇及び下降するように配置されている。
【0023】
ある実施形態では、前記集水域内の壁部分は、より大きな周縁部を有し、この層において、前記集水域内の水の量が当該集水域(20)の残部よりも大きくなる。
【0024】
ある実施形態では、浄化プラントは、更なる貯水槽(D)内を浮遊するように配置されており、また、この網かごからの水は、パイプラインを通して前記浄化装置に運ばれ、また、浄化水が前記浄化装置から前記貯水槽(D)に運ばれる。
【0025】
ある実施形態では、浄化水は、前記浄化装置からパイプラインを通して前記貯水槽(D)に運ばれる。
【0026】
ある実施形態では、浄化水は、前記浄化装置から直接的に前記貯水槽(C)に運ばれる。
【0027】
ある実施形態では、前記集水域(20)への水の移送及び当該集水域(20)からの水の移送は、岩盤内のトンネルの形態である。
【0028】
第二の態様において、本発明は、魚の養殖のための貯水槽(A)を設けるための方法であって、少なくとも1以上の養殖網かごが、集水域内の貯水槽(B)内を浮遊するように配置され、前記養殖網かごが、水を通さない壁で構成され、前記集水域内の前記貯水槽(B)が、外側貯水槽(C)から分離され、また、前記貯水槽(C)から前記集水域への水の供給が、パイプラインを通して行われ、また、前記網かごから前記貯水槽(C)への水の放出が、パイプラインを通して行われ、また、前記集水域内の水面が、前記貯水槽(C)内の水面と同じレベルとなるように設定されるようにしたことを特徴とする。
【0029】
ある実施形態では、前記貯水槽(A)内の水面は、前記貯水槽(B)内の水面と同じレベル又は当該水面よりも高くなるように設定される。
【0030】
ある実施形態では、前記貯水槽(C)が海/外洋である場合、そのとき、前記貯水槽(B)と前記貯水槽(C)との間の水の交換は、完全に又は部分的に前記貯水槽(C)の潮汐差によって生じる。
【0031】
ある実施形態では、新鮮な水が前記貯水槽(B)から前記貯水槽(A)に供給される。
【0032】
ある実施形態では、前記貯水槽(B)から前記貯水槽(A)に水を圧送するとき、当該貯水槽(A)内に圧送された水の量に対応する量の水が、静圧により、又は、対応する量の水を前記貯水槽(B)内に圧送することにより、前記貯水槽(C)からの水によって交換される。
【0033】
本発明の好適な実施形態を、以下に、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】養殖網かごを備えた設備を概略的に示し、当該設備は、A,B及びCで示される3つの異なる貯水槽を備えており、また、これら貯水槽の間に水を供給するためのパイプラインが示されている図である。
【
図2】本発明に従う集水域の他の実施形態を示し、当該集水域の外縁部及び容積が水面レベルの付近の領域で増加している図である。
【
図3】本発明に従う設備の好適な実施形態を、上面視で、概略的に簡略化して示し、当該設備は、水(海)に囲まれている造成地に配置され、前記集水域が海から分離されていると共に分離された貯水槽Bが設けられている図である。
【
図4】
図3の断面図であって、貯水槽B及び外側貯水槽Cの水面を同じレベルで示す図である。
【
図5】前記集水域の延在端部分が互いに閉じられており、また、当該集水域を取り囲んでいる外側貯水槽Cに接近しているが、当該外側貯水槽Cから分離している、当該集水域の他の実施形態を示す図である。
【
図6】浮遊式の処理装置を有した貯水槽Dを備える、前記設備の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の好適な実施形態、即ち、魚の養殖のための設備10を模式的に示す。図は、集水域20に配置された養殖網かご12を示し、集水域20は、別個のユニットであるが、海、湖又は川のような、より大きな貯水槽Cの付近に配置されている。
【0036】
図1に示すように、本発明に従う、3つの別個の貯水槽を備える解決手段が設置されている。第一に、養殖網かご12は、
図1の「A」で示された別個の第1貯水槽を備え、当該第1貯水槽は、養殖網かご12の、少なくとも1つの、水密の生地/壁14によって囲まれている。この生地又は壁14は、水を通さないので、この第1貯水槽Aの水及び水質を制御する。
【0037】
養殖網かご12は、様々なタイプの、浮遊式の水密の養殖網かごとすることができ、市販されている、様々なモデルが使用可能である。養殖網かご12には、例えば、浮遊式のカラー17のような、浮力手段を取り付け、又は、取り付けることが可能であり、当該養殖網かご12を、集水域20において正しく適切に垂直方向に位置決めさせ、また、当該集水域において浮遊させる。他の実施形態では、養殖網かご12は、集水域20の底部分又は天井部分に、強固に又は柔軟性をもって固定されている。例えば、養殖網かご12は、前記天井部分から、又は、留め具を備えた装置から、集水域20の前記壁に対して吊り下げることができる。水線に対する網かご12の垂直方向の位置決めは調整することができることが好ましく、この場合、浮遊式カラー17は、省略することができる。他の実施形態では、網かご12は、前記底部分に、強固に又は柔軟性をもって固定され、場合によっては、網かご12は、集水域20の前記底部分でフレームワークに固定される。これらの解決手段は、図示されていない。
【0038】
集水域20は、様々な種類の、構造物であることが可能であるが、典型的には、より大きな建物、又は、岩盤内のトンネル設備のような、人工構造物である。集水域20は、水密の壁22を有し、当該壁は、貯水槽を備えていてもよい。集水域20の貯水槽は、
図1において「B」として示されており、また、第2貯水槽として描かれている。このように、養殖網かご12は、集水域20内の貯水槽B内に浮遊している。
【0039】
養殖網かご12及び集水域20は共に、水密の壁14及び22のそれぞれで「閉じられており」、養殖網かご12及び集水域20のいずれの当該壁も、水に対して不浸透性である。「壁」14,22が意味するところは、この明細書では、底部分と壁部分の両方である。養殖網かご12は、様々な形状を有することができるが、壁(壁部分及び底部分)と、開放されて上向きに面した部分とを備えた、一般的なU字形状を有している。この場合、二重のバリア(二重の壁)14,22は、網かご12の第1貯水槽Aと、外側貯水槽Cとの間に形成されることによって、非常に優れた保護を与え、病原性微生物が前記設備に侵入することを防止し、また、前記網かごの魚が前記設備から逃げることを防止する。養殖網かご12に供給される、全ての新鮮な水は、貯水槽Bのパイプライン18を経由して集められる。貯水槽Bには、貯水槽Cからの水が供給され、前記パイプラインの流入口30bは、病原性微生物が流入しないように、水面40よりも下側の、十分な深さに配置されている。また、新鮮な水のための流入口パイプを、(図示しないが)外側貯水槽Cから貯水槽Aに直接配置することもでき、その結果、ある状態において、外側貯水槽Cから新鮮な水を集めることができるが、これは、あまり好適ではない手段であって、特別な状況にだけ使用される。さしあたり、寄生虫のような寄生生物は、鮭の養殖において、代表的な大きな問題であり、また、約15メートル以上の深さから新鮮な水を集める場合、寄生虫を避けることができる。通常、鮭の寄生虫は、10〜15メートルよりも深い水深では生きられない。流入口18aにはまた、水のろ過のためのフィルタが取り付けられており、また、前記フィルタのための適切な遮断装置を選択することによって、一定のサイズを超えるこれらの寄生生物が網かご12に侵入することを防止する。流入口30の垂直方向の位置決めは調整できることが好ましく、それによって、貯水槽Cの所望かつ適切な深さから水を集めることができる。
【0040】
現在、好ましい実施形態では、網かご12は、約30メートルの垂直方向延在部を有している。このように、集水域20は、約35〜40メートルの深さ(前記水線から前記底部分までの距離)を有することが好ましい。
【0041】
集水域20は、
図1において「C」で示される外側貯水槽の付近に配置されている。この外側貯水槽Cは、海、湖又は川であってもよい。集水域20は、当該集水域20に水を供給するためのパイプライン30と、網かご20から貯水槽Cに水を放出するためのパイプライン19aとを経由して、貯水槽Cに流体連通している。これらパイプラインには、ポンプ/バルブ/フィルタ30aを取り付けることができる。パイプライン30を経由して集水域20に供給される水は、鮭の寄生虫のような病原性微生物が存在しないような、十分な深さから集められることが好ましく、また、パイプライン30は、その流入口に、フィルタ/格子30bを取り付けることができる。好適な実施形態では、前記流体連通は、地層のトンネル(図示省略。)を経由して、貯水槽B及びCの間に確立される。
【0042】
図1に概略的に示された設備10は、1つ以上の養殖網かご12で構成することができる。典型的には、設備10は、非常に多くの養殖網かご12で構成することができる。
【0043】
各養殖網かごは、以下のような代表値を有している。
(貯水槽Aに対応する)容積 5000m
3
高さ:30m
魚(鮭)密度;80 kg/m
3,合計400トン
網かご内の水変化:0.2〜0.3 l/kg/分,合計100m
3/分で
成長率:0.22 kg/m
3/24時間,合計1100 kg/24時間で
飼料因子:1.15
飼料消費量:1260 kg/24時間
酸素消費量:0.25 kg/ kg 飼料,合計470 kg/24時間で
CO
2生成量:0.4 kg/ kg 飼料,合計740 kg/24時間で
【0044】
水の新鮮さと流れとを維持するためには、網かご12内のかなりの水を循環させる必要がある。集水域20と網かご12との間を循環する水には、当該水が網かご12に進入する前に、酸素を加えることができ、その結果、前記酸素レベルは常に、良好な魚の健康を確保するのに十分である。酸素の供給は、例えば、パイプライン18を経由して行うことができる(酸素の供給手段は詳細には示されていない)。パイプライン19aを経由して取り除かれた水は、貯水槽Cに戻す前に浄化することができる。
【0045】
図6に示す他の好適な実施形態では、前記設備は更に貯水槽Dを備えており、これには、浄化プラント72が配置されており、当該浄化プラントは浮遊させることができる。網かご12の水は、パイプライン19aを経由して浄化プラント72に運ばれ、そして、浄化水が、処理プラント72からパイプライン19cを経由して貯水槽Dに運ばれ、その後、貯水槽Dから貯水槽Cにパイプライン32を経由して運ばれる。代替的に、浄化水は、浄化プラント72から直接的に貯水槽Cに運ばれてもよい(図示せず。)。貯水槽Cを行き来する水の流入口(30)及び放出口(32)は、伝染物質が希釈され、当該伝染物質が沈下し、又は、当該伝染物質の生命活動を減少させるところの障害であるファイヤーゲート(休養殖地帯)が設定されるように、十分に間隔を置いて配置することが好ましい。
【0046】
浮遊式の養殖網かご12の場合、即ち、当該網かご12の水面がその周囲の海と同様のレベルである場合、網かご12の内外に水を圧送するために約20kWのポンプ効果を有することが必要である。
【0047】
地上設備の場合、即ち、水面(例えば、海)よりも上側の或る高さの場合、水を前記網かごの頂上まで圧送するとき、最小持ち上げ高さは、30mである。これは、約750kWのポンプ効果に相当し、これは、魚1匹あたり、16 kW*時/kgに相当し、網かごあたりの年間消費量は、6.6 GW*時に相当する。これは、かなりのコストをもたらし、持続可能ではなく、従って、地上設備はかなり不利益である。
【0048】
図1に示された解決手段によって、網かご12内の貯水槽Aの水面60は、集水域20内の水面50と同じレベルになるように設定され、当該網かごが地上設置可能な強固な構造物に配置されるときでさえ、浮遊式の網かごのような、圧送効果に対する低い要求を達成する。従って、浮遊式の海上密閉型設備と同様に、エネルギ消費量に対する要求が低い密閉型地上設備が得られる。
【0049】
養殖魚によって分泌されるCO
2及び他の代謝物は、網かご12内に蓄積され、また、水は、従って、交換しなければならない。
【0050】
図1では、集水域20内における貯水槽B内の水面50は、外側貯水槽C(例えば、海)の貯水槽40とほぼ同じレベルに設定されていることが分かる。これによって、水は、必要に応じて、貯水槽Bと貯水槽Cとの間で低いエネルギ消費量で圧送することができる。これは、本発明のこの実施形態に関する本質的な利点である。静圧と潮汐との差は、貯水槽Bへの水の流入口で圧送することなく(但し、ろ過を伴い)、貯水槽Bと貯水槽Cとの間の流れに影響を及ぼすことができる。第2貯水槽Bから第1貯水槽A内に水を圧送するとき、その間中、貯水槽Bでは、水は空になる。対応する量の水は、貯水槽A内に運ばれ、(パイプライン/トンネルの断面領域が十分に大きい場合)静圧によって、又は、水を貯水槽Bに圧送することによって、第3貯水槽Cからの水によって置き換えられる。
【0051】
貯水槽Cが海/外洋である場合、水面40は、潮汐によって上昇及び下降する。この水面40のレベルの変化は、水を(満潮においては)貯留層Cから貯留層Bに移動させるために、また、(干潮においては)反対に移動させるために使用することができる。集水域20が潮汐水によって貯水槽Cに接続される場合、かなりの自然な交換が達成され、そして、この自然な交換は、水の圧送のために、いかなるエネルギも必要としない。貯水槽Bと貯水槽Cとの間の水の交換は、岩石層(図示省略)内の専用のトンネルを経由して、又は、パイプライン30を経由して、行うことができる。集水域20及び貯水槽Cは、同じレベルの水面40、50を有しているので、必要な圧送効果は、あらゆる場合においても小さい。
【0052】
水がパイプライン18を経由して網かご12に圧送されるとき、網かご12内の水位60は上昇し、また、当該網かご12内の水位60は、貯水槽Bよりも高く、パイプライン19aを介して、網かご12の外側に水を移動させることになる。
【0053】
図2は、集水域20の実施形態を示し、当該集水域は、集水域20の通常の周縁部よりも大きな水面の上側及び下側に周縁部50を有し、その結果、集水域20の水量は、貯水槽Cに対する潮汐変化のレベルでより大きくなる。これは、潮汐水が集水域20の水の交換に及ぼす影響を増大させる。
【0054】
実際には、本発明の好適な実施形態は、集水域20を確立するために、岩石層内のトンネルを使用する。これは、
図3に模式的に示されており、当該
図3には、(上から見た水平断面で)海110のような外側貯水槽C内における、島又は岬100のような造成地が示されている。縦長の人工水路120は、発破又は掘削されている。人工水路120の端部分120aは、(発破されないか、再度閉じられるかのいずれかの)水密であり、その結果、貯水槽Bを備える集水域20が人工水路120内に確立されている。複数の養殖網かご12が、集水域20内に浮遊した状態で配置されている。
図4は、
図3と同じ解決手段を断面で示し、当該
図4には、集水域20と、網かご12と、集水域20内の水面50とが、外側水面40に対してどのように配置されているかが示されている。造成地100に確立された集水域20は、様々な形状及び寸法を有することができる。例えば、縦長の人工水路である場合、当該人工水路の端部分120aは、
図5に示すように、互いに接近させることができる。
【0055】
前記養殖網かごは、集水域20内に浮遊した状態で配置されており、1つの水密の壁を有している。水密の壁14が意味するところは、ここでは、前記網かごの形態(壁及び底部分)の全体が水を通さないことである。
【0056】
貯水槽Bから貯水槽Aに水を圧送することによって、網かご12内に循環流れが確立され、そして、これによって、全ての固形粒子が、網かご12の外縁に向かって押し出されると共に当該網かご12の外縁に落下し、また、貯水槽A内の当該網かご12の底部分の中央に落し込まれることにより、これらが、適当な浄化パイプによって容易に分離されて取り出されるようにすることが好ましい。網かご12の底部分にある放出口19を分割する場合、より効果的に水を浄化することができる。汚物及び飼料残留物が水中に溶解する前にこれらを分離する場合、汚物及び飼料残留物を浄化する前に溶解させるときに比べて、ごく少量の水を浄化すればよい。好適な実施形態では、パイプライン19aが全ての水の90〜99%を網かご12の外に取り出す。これは、貯水槽Dまで、或いは、貯水槽Cまで、浄化されない可能性がある。放流ライン19aからの水は、この水が固定物質(飼料残留物及び汚物)を含まないように、より単純な方法で浄化することができる。網かご12にはまた、飼料残留物及び汚物の分離のために、当該網かごの外に、更なるパイプライン(図示省略)を取り付けることができる。このパイプラインは、汚物及び飼料残留物を吸い上げるように、網かご12の底部に位置決めされ、そして、好ましくは、ポンプ(詳細には示されていない)が取り付けられる。更に、この水管/ポンプは、水の1〜10%を網かご12の外に取り出すことが好ましい。このパイプラインからの水は、貯水槽D内に、浄化ろ過システム、紫外線及び/又は機械的洗浄を備えるような、従来の方法で浄化される。
【0057】
水流入口30を経由した水は、好ましくは、貯水槽B内に、水流速度を変化させるために設けられたシャフトを経由して運ばれる。網かご12に対して十分な水の供給を確保するために、貯水槽B内には、大量の水が必要とされる。前記パイプラインの直径は、流入口ライン30が貯水槽Bに近付くに従ってより大きくすることができ、これによって、水流速度は、パイプ/トンネル30の末端に向かうに従って低下する。また、貯水槽Bの全体にわたって給水を分配できるように、水流を分割させるようにすることができ、その結果、貯水槽B内では、より均一な/減少した流れとなる。パイプライン30にはまた、水流速度が低下するように、貯水槽Bの開口部内に障害を取り付けることができる。これは、(水を通す)従来の網かごとは異なる。従来の網かごでは、当該網かご内に十分な水の通過流れが得られるように、高い流速が必要となる。本発明に従う設備では、網かご12が柔軟性を有している場合、当該網かご12の形状を保持するために水流の速度を制限することができる。
【0058】
水のための流入口30bと、水のための放出口32とをどのように構成できるかは、地形によって決定される。最適な設計は、地形の一方に水の流入部30bを有し、当該地形の他方に水を放出させることができることであり、そこでは、流入口30bと放出口32との間の水距離は可能な限り大きい。他の解決手段は、病原性微生物が生きられない深さで、貯水槽Cから貯水槽B内に水を集めることができることであり、そして、前記放出口の位置は、可能な限り、同じ水を2回使用しないように、表面よりも高く、又は、前記流入口よりも低い。この決定は、流れの状態/流速に依存し、また、全ての個別の場所で算定する必要がある。また、「同じ」水を2回使用しないように、流入口30bと放出口32とを、パイプラインを経由して、互いに遠くに離して配置することも可能である。前記距離が十分に大きい場合、これは、防火帯(休養殖地帯)、即ち、伝染物質が希釈され、当該伝染物質が沈下し、又は、当該伝染物質の生命活動を減少させるところの障害として機能する。養殖本体内の水の水質はまた、概ね、養殖魚の廃物が取り除かれるかどうかに依存している。流入口30bと放出口32との間の距離が大きい場合、これら廃物は、貯水槽C(海、湖、川等)で希釈され、そして、それによって、同じ場所で、より多くの養殖魚を生産することができる。
【0059】
今日、規制によって、それぞれ個別の場所で得ることができるバイオマスの大きさと、異なる場所との間隔とが制限されている。これは、伝染病の危険が原因であり、そして、また、他の環境的脅威が周囲の環境に広がることが原因である。仮の想定として、設備10内の網かご12内において病気の問題が生じた場合、感染するのは、網かご12の養殖魚だけである。仮に水を貯水槽Bに戻せば、設備10内の全ての養殖魚は、感染するであろう。貯水槽B内において複数の貯水槽A(より多くの網かご12)を使用することによって、本発明は、現在許されている、場所当りのバイオマスの2倍以上、より多くの養殖魚の生産を、同じ場所で行うことを可能にする。
【0060】
貯水槽Aから貯水槽Cに水を放出するための好適な方法は、固形物質及び/又は水のための浄化プラントに接続された貯水槽Dを経由することで行われる。
【0061】
貯水槽B及びDの水面は、海によって変動し、満潮及び干潮によって、貯水槽Cから移動し、また、当該貯水槽Cに移動する。貯水槽Aへの水は、貯水槽Bから圧送/排出させなければならない。貯水槽A内の水面をより高くに圧送することによって、水を貯水槽Aから貯水槽Dに移動させ、その後、当該水は、貯水槽Dから貯水槽Cに妨げられることなく流れる。貯水槽Bから貯水槽Aへの圧送は、貯水槽B内に、より大きな水の通過流れを促進させる。貯水槽Aからの水はまた、ポンプ、排出システム、プロペラ及び/又は圧縮空気によって、パイプライン19を経由して、外に向かって圧送することができ、その結果、貯水槽A、B、C及びDで同じ高さになる。貯水槽Bから貯水槽Aへの圧送力だけを使用することによって、エネルギーコストは、大幅に削減される。そのとき、貯水槽Aの水面が貯水槽B及びDよりも高い場合、圧送を行う必要は1回だけである。
【0062】
貯水槽Cから貯水槽Bまで、当該水は、浄化されずに、又は、ろ過システム、紫外線及び/又は機械的浄化の助けによって浄化されて使用することができる。貯水槽Bから貯水槽Aまで、当該水は、ろ過システム、紫外線及び/又は機械的浄化で浄化することができる。貯水槽Aから貯水槽Cまで、当該水は、浄化させないようにでき、又は、ろ過システム、紫外線及び/又は機械的浄化によって浄化させることができる。貯水槽Aから、当該水は、貯水槽Dまで完全に又は部分的に浄化させないようにでき、また、貯水槽D内で又は貯水槽Dで、ろ過システム、紫外線及び/又は機械的浄化によって浄化することができる。
【0063】
貯水槽B内で、表面成長が起こる場合がある。これは、貯水槽Bの水、壁22及び網かご壁14の外側を光から避けることによって減少させることができ、これは、水を覆う遮光性生地によって、又は、貯水槽Bを覆う建物/トンネルによって可能となる。
【0064】
貯水槽からの流入口の深さのように、同じ深さからの水を集めることによって、貯水槽A及びBにおいて同じ水温が得られる場合がある。貯水槽Cの水温は、深さによって変化する。例えば、前記表面の温度は、例えば、70メートルで9°Cであるのと比較して、14°Cとすることができる。前記網かごにわたって同じ温度を有することは、餌やり、生育、魚の繁殖に関して有利である。