【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、独立請求項の特徴部分によって解決され、さらに、各実施形態は、各従属請求項に組み込まれている。以下に説明する本発明の各態様は、電子制御ブレーキシステムに対しても、電子制御ブレーキシステムを備えた車両に対しても当てはまることに注意されたい。
【0008】
第1態様においては、電子制御ブレーキシステムEBSを含む車両用の電気系統が提案される。当該電気系統は、
・舵角センサユニットと、
・少なくとも1つの制御モジュールと、
・少なくとも1つの第1慣性センサと、
・電子制御ブレーキシステムEBSの電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUと、
を含む。少なくとも1つの制御モジュールは、舵角センサユニットに対する外部にあり、かつ、電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUに対しても外部にある。少なくとも1つの制御モジュールの少なくとも1つの内部または表面に、少なくとも1つの第1慣性センサのいずれかが取り付けられている。
【0009】
以下においては、制御モジュールとは、そのエレメントもしくはその要素の全てに対して共通の1つのハウジングを備えた構造ユニットまたはエンティティ、または、そのエレメントもしくはその要素を分散配置して相互に直接に結合された複数のハウジングを備えた構造ユニットまたはエンティティであると理解することができる。つまり、少なくとも1つの第1慣性センサのそれぞれは、少なくとも1つの制御モジュールの、1つのハウジングの内部もしくは直接表面に、または、相互に結合された複数のハウジングのうち1つのハウジングの内部もしくは直接表面に、取り付け可能である。少なくとも1つの第1慣性センサが少なくとも1つの制御モジュールに取り付けられる場合、これは、当該センサが少なくとも1つの制御モジュールの部材またはエレメントを形成することを意味する。逆に言えば、当該センサが少なくとも1つの制御モジュールに対する外部に配置されていないことを意味する。
【0010】
言い換えれば、車両の電子システムは、舵角センサユニットおよび電子制御ブレーキシステムEBSの電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUを含む、複数の種々のユニットおよびモジュールと、複数の制御モジュールであってよい少なくとも1つの制御モジュールとを有している。1つの慣性センサは1つの制御モジュールの内側、内部または表面に取り付け可能であり、または2つ以上の制御モジュールはその内側、内部または表面に慣性センサを取り付けて有することができる。1つの慣性センサは、例えばヨーレート、加速度、減速度などの情報を提供することも、回転数についての情報を提供することもできる。1つもしくは複数の制御モジュールの内側、内部または表面に取り付けられた1つもしくは複数の慣性センサからのこうした情報は、車両の安定化のために利用可能であり、また、運転者の連続した注意なしでの自動運転を可能にしかつ改善するためにも利用可能である。
【0011】
このように、動的制御手段を可能にする慣性情報が提供される。電気系統の1つもしくは複数の制御モジュールの内側、内部または表面に配置される慣性センサを設けることにより、慣性センサを内側、内部または表面に配置した制御モジュールの機能性に関連する慣性情報が、正確に捕捉され、供給される。これにより車両全体の動的制御が改善される。
【0012】
一例においては、1つの第1慣性センサが、電子空気処理ユニットの内側、内部または表面に取り付けられる。
【0013】
電子空気処理ユニットには、通常、少なくとも1つの空気乾燥器およびマルチサーキットプロテクションバルブが組み込まれている。さらに、圧力センサおよび電磁弁も含まれうる。任意の手段として、クラッチおよび電気駆動式圧縮器も電子空気処理ユニット内部に含まれうる。電子空気処理ユニットは、電子制御ブレーキシステムEBSの一部を形成することができ、これに乾燥および浄化された処理空気を供給する。
【0014】
電子空気処理ユニットは、通常、特に種々の空気回路において、少なくとも1つのニューマチック消費部、例えば少なくとも1つのサービスブレーキ圧力制御モジュール、少なくとも1つのトレーラブレーキモジュールおよび/または少なくとも1つのパーキングブレーキ弁または電子制御ブレーキシステムのモジュールに、乾燥された空気を供給する。
【0015】
電子空気処理ユニットは、一般に車両シャシに固定されており、一般に車両の重心からあまり遠くない位置に配置されている。したがって、慣性センサを電子空気処理ユニットの内側、内部または表面に配置することにより、車両の重心に関する慣性情報が供給され、これにより重要な基準情報が得られる。
【0016】
一例においては、1つの第1慣性センサが、フットブレーキモジュールの内側、内部または表面に取り付けられる。
【0017】
フットブレーキモジュールには、通常、フットブレーキ作動部材の作動に応じて第1電気制御信号を形成する電気チャネルと、フットブレーキ作動部材の作動に応じてニューマチック制御信号を形成する少なくとも1つのニューマチックチャネルとが組み込まれている。電気チャネルには、第1電気制御信号を形成するために、フットブレーキ作動部材の作動位置または作動角度を測定する電気位置センサまたは電気角度センサが組み込まれる。少なくとも1つのニューマチックチャネルには、フットブレーキ作動部材の作動に応じてニューマチック制御信号を形成する少なくとも1つのフットブレーキ制御弁が組み込まれる。
【0018】
通常、フットブレーキモジュールの電気チャネルによって形成される第1電気制御信号は、電子制御ブレーキシステムEBSの電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUに送信される。当該第1電気制御信号に基づき、少なくとも1つのサービスブレーキ圧力制御モジュールを電子制御するための、また、トレーラ制御モジュールが電子ブレーキシステム内に存在している場合にこれを電子制御するための、第2電気制御信号が形成される。
【0019】
このように、フットブレーキモジュールはサービスブレーキの入力信号発生器であるので、フットブレーキモジュール内部の慣性センサから供給される慣性情報を、サービスブレーキの改善された効率的な動作の保証のために利用することができる。
【0020】
一例においては、1つの第1慣性センサは、制御ループにおいてサービスブレーキ圧力を制御するサービスブレーキ圧力制御モジュールの内側、内部または表面に取り付けられる。
【0021】
サービスブレーキ圧力制御モジュールには、通常、少なくとも1つの電磁弁装置、少なくとも1つのリレー弁、少なくとも1つのバックアップ弁、少なくとも1つの圧力センサおよび少なくとも1つのローカル電子制御ユニットが組み込まれている。少なくとも1つのローカル電子制御ユニットは、電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUが形成した第2電気信号を受信し、少なくとも電磁弁装置を制御する。少なくとも1つのローカル電子制御ユニットには、閉ループ方式でサービスブレーキ圧力を制御する制御ルーチンが供給される。サービスブレーキ圧力は、少なくとも1つのニューマチックブレーキアクチュエータ、例えばニューマチックブレーキシリンダ用のリレー弁によって形成される。当該リレー弁は、少なくとも1つのローカル電子制御ユニットが電気制御する少なくとも1つの電磁弁装置が形成した制御圧力によってニューマチックに制御される。制御圧力に基づいてリレー弁が形成したサービスブレーキ圧力は、圧力センサによって測定され、サービスブレーキ圧力の閉ループ制御を実現するために、電気信号によりローカル電子制御ユニットへ報知される。他方、少なくとも1つのバックアップ弁には、フットブレーキモジュールのニューマチックチャネルで形成されたニューマチック制御信号が供給される。通常動作中、少なくとも1つのバックアップ弁は閉鎖位置にあり、このため制御圧力としてのニューマチック制御信号はリレー弁へ送出されえない。しかし、電気制御または電子制御に故障が生じた場合、少なくとも1つのバックアップ弁がその開放位置に自動的に切り替えられ、これにより、ニューマチック制御信号を制御圧力としてリレー弁へ送出することができる。
【0022】
こうしたサービスブレーキ圧力制御モジュールは、種々の複数のチャネルを提供することができ、各チャネル内部で、1つもしくは複数のニューマチックブレーキアクチュエータのサービスブレーキ圧力が別個にループ制御される。
【0023】
サービスブレーキ圧力制御モジュールは、一般に車両シャシに固定されている。したがって、慣性センサをサービスブレーキ圧力制御モジュールの内側、内部または表面に配置することにより、車両シャシの運動に関する慣性情報が供給され、これにより重要な基準情報が得られる。
【0024】
一例においては、1つの第1慣性センサは、制御ループ内のトレーラ用のサービスブレーキ圧力を制御するトレーラ制御モジュールの内側、内部または表面に取り付けられる。
【0025】
トレーラブレーキ圧力モジュールには、通常、少なくとも1つの電磁弁装置、少なくとも1つのリレー弁、少なくとも1つのバックアップ弁、少なくとも1つの圧力センサおよび少なくとも1つのローカル電子制御ユニットが組み込まれている。少なくとも1つのローカル電子制御ユニットは、電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUが形成した第2電気信号を受信し、少なくとも1つの電磁弁装置を制御する。少なくとも1つのローカル電子制御ユニットには、閉ループ方式で、トレーラ用のサービスブレーキ圧力を制御する制御ルーチンが供給される。トレーラ用のサービスブレーキ圧力は、トレーラの少なくとも1つのニューマチックブレーキアクチュエータ、例えばニューマチックブレーキシリンダ用のリレー弁によって形成される。当該リレー弁は、少なくとも1つのローカル電子制御ユニットが電気制御する少なくとも1つの電磁弁装置が形成した制御圧力によってニューマチックに制御される。当該制御圧力に基づいてリレー弁が形成した、トレーラ用のサービスブレーキ圧力は、圧力センサによって測定され、トレーラ用のサービスブレーキ圧力の閉ループ制御を実現するために、電気信号によりローカル電子制御ユニットへ報知される。他方、少なくとも1つのバックアップ弁には、フットブレーキモジュールの少なくとも1つのニューマチックチャネルで形成されたニューマチック制御信号が供給される。通常動作中、少なくとも1つのバックアップ弁はその閉鎖位置にあり、このため制御圧力としてのニューマチック制御信号はリレー弁へ送出されえない。しかし、電気制御または電子制御に故障が生じた場合、少なくとも1つのバックアップ弁がその開放位置に自動的に切り替えられ、これにより、ニューマチック制御信号を制御圧力としてリレー弁へ送出することができる。つまり、トレーラ制御モジュールの機能は、サービスブレーキ圧力制御モジュールの機能に類似している。
【0026】
トレーラ制御モジュールは、一般に車両シャシに固定されている。したがって、慣性センサをトレーラ制御モジュール内部に配置することにより、車両シャシの運動に関する慣性情報が供給され、これにより重要な基準情報が得られる。
【0027】
一例においては、少なくとも1つの制御モジュールの内側、内部または表面に取り付けられた少なくとも1つの第1慣性センサのそれぞれは、電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUに直接通信可能に接続されるように構成される。
【0028】
このように、1つもしくは複数の制御モジュールであってよい電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUとの直接通信により、慣性センサが供給する慣性情報を、電子制御ブレーキシステムEBSの全体機能性を改善するために、電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUによって直接に利用することができる。
【0029】
一例においては、1つの第1慣性センサは、パーキングブレーキモジュール、パーキングブレーキ弁および/またはパーキングブレーキリレー弁の内側、内部または表面に取り付けられる。パーキングブレーキモジュール、パーキングブレーキ弁および/またはパーキングブレーキリレー弁は、これらのユニットの作動に電気的に作用することの多い、車両の電気系統の一部を形成しているとみなすことができる。
【0030】
パーキングブレーキモジュールは、通常、パーキングブレーキ作動部材を含むかまたはこれに電気的に接続され、パーキングブレーキモジュールのローカル電子制御ユニットに供給される第3電気制御信号を形成するために、パーキングブレーキ作動部材の作動位置または作動角度を測定する電気位置センサまたは電気角度センサと協働する。さらに、パーキングブレーキモジュールには、第3電気信号に応じてローカル電子制御ユニットが形成した第4電気信号に応じて、少なくとも1つのニューマチックパーキングブレーキアクチュエータ、例えばニューマチックスプリングブレーキシリンダに対するパーキングブレーキ圧力を形成する電磁弁装置が組み込まれている。
【0031】
このように、パーキングブレーキがパーキングブレーキモジュールまたはパーキングブレーキ弁によって制御され、パーキングブレーキリレー弁により圧力を任意に実行可能であるので、パーキングブレーキの動作を改善することができる。ここでは、パーキングブレーキモジュールまたはパーキングブレーキ弁もしくはパーキングリレー弁に関する慣性情報が、動的制御をより効率的に提供可能とするために、供給される。
【0032】
一例においては、1つの第1慣性センサは、操舵装置モジュールの内側、内部または表面に取り付けられる。
【0033】
操舵装置モジュールには操舵装置が組み込まれ、さらに、「ステアバイワイヤシステム」を実現するために舵角センサユニットに電気的に接続されたローカル電子制御ユニットを設けることができる。ここで、舵角センサユニットは、ステアリングコラムに機械的に結合され、ステアリングコラムに取り付けられたステアリングホイールの作動に応じた第5電気信号を形成して、これを操舵装置モジュールのローカル電子制御ユニットへ供給する。ここで、ローカル電子制御ユニットは、電気ステアリングアクチュエータを制御するために、第5電気信号に基づいて第6電気信号を形成する。さらに、操舵装置モジュールのローカル電子制御ユニットは、車両の駆動安定性を制御する横滑り防止装置ESPから、形成された制御信号を自動的に受信可能である。
【0034】
舵角センサユニットおよび操舵装置モジュールは、電子制御ブレーキシステムEBSと協働することができる。なぜなら、横滑り防止装置ESPは、運転者の操舵マヌーバに起因する車両の動的不安定性が生じる場合にサービスブレーキを自動的に作動させるEBS内に組み込まれていることが多いからである。
【0035】
操舵装置モジュールは一般に車両シャシに固定されている。したがって、慣性センサを操舵装置モジュール内部に配置することにより、車両シャシの運動に関する慣性情報が供給され、これにより重要な基準情報が得られる。
【0036】
一例においては、第2慣性センサが少なくとも1つの制御モジュールに対する外部に配置され、第1電源が少なくとも1つの第1慣性センサに電力を供給するために構成され、第2電源が第2慣性センサに電力を供給するために構成される。
【0037】
このように、第1慣性センサまたは第2慣性センサの一方は他方の慣性センサからの慣性情報の供給の可能化に失敗する可能性があり、または、第2慣性センサが別個の電源によることから第1慣性センサへの電力供給に失敗する可能性があるため、安全冗長性情報が提供され、慣性情報の供給の続行が提供される。このようにすれば、電子制御ブレーキシステムEBSの要素または電源に故障が生じたとしても、動的制御手段を提供する連続的な自動運転が可能となる。
【0038】
一例においては、第2慣性センサが、電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUの内側、内部または表面に取り付けられる。
【0039】
このように、異なる位置に取り付けられた少なくとも2つの慣性センサが慣性情報を提供するので、改善された動的制御が提供され、このことにより、同時に安全バックアップが提供される。なぜなら、慣性センサおよび/または第1電源には故障が生じることがあるが、慣性情報を連続して供給することができるからである。また、第2慣性センサを電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUの内側、内部または表面に設けることにより、第2慣性センサが供給する慣性情報を、電子制御ブレーキシステムの全体機能性を改善するために、電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUによって直接に利用することができ、さらに、第2慣性センサが電子ブレーキシステム中央制御ユニットEBSECUの内側、内部または表面に取り付けられるので、配線が低減される。
【0040】
一例においては、少なくとも1つの第1慣性センサおよび第2慣性センサのいずれかまたは全てが、いずれかの軸に関する回転センサであり、または、いずれかの軸に関する並進運動センサもしくは直線運動センサである。
【0041】
第2態様においては、第1態様による電気系統を含む車両が提案される。
【0042】
上述した各態様および各例は、以下に説明する各実施形態を参照することで明瞭かつ明確となるであろう。
【0043】
以下に、例示的な実施形態を、添付の図を参照して説明する。