【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記の目的を達成するために、請求項1に記載の方法および請求項24に記載の別の方法が提案される。さらに、請求項25に記載の数値制御工作機械の上で使用される制御装置と、請求項26に記載の工作機械とが提案される。従属請求項は有利な実施例に関する。
【0010】
本発明の一態様によれば、提案されているのは、レーザーによって、特に数値制御工作機械上で、少なくとも1つの加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するために、加工物表面を機械加工する方法である。
【0011】
この方法は、加工物表面の少なくとも一セクションに付与されるテクスチャパターンの画像を指定する画像データと、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリを指定するモデルデータとを提供するステップと、及び/又は、画像データおよびモデルデータに基づいてトラックセグメントデータを生成するステップとを含む。トラックセグメントデータは、それぞれ、テクスチャパターンに応じて、加工物表面の一セクションの上を走る複数のトラックラインに対して、それぞれのトラックラインに沿って複数の連続レーザートラックセグメントを指定する。
【0012】
この方法は、さらに、生成されたトラックセグメントデータに基づいて制御データを生成するステップを含む。制御データは、各トラックラインに対して1つまたは複数のセグメントシーケンスを指定し、各セグメントシーケンスは、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するためにレーザーが案内されるトラックセグメントを有する。セグメントシーケンスのトラックセグメントは、レーザーがスイッチオン状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する1つまたは複数のレーザートラックセグメントを含む。方法は、さらに、制御データに基づいて加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するために、レーザーを制御するレーザー装置に、生成された制御データを出力するステップを含んでも良い。
【0013】
好ましくは、各トラックラインに対し、互いに実質的に同一直線上となるように配置される隣接するレーザートラックセグメントの数が、好ましくは増やされ、特に好ましくは最大数に増やされるという条件に従って、トラックセグメントデータが、好ましくは、画像データおよびモデルデータに基づいて特に有利には生成することができる。
【0014】
次に、制御データは、各セグメントシーケンスが、少なくとも2つのレーザートラックセグメントと、好ましくは互いに実質的に同一直線上に配列された2つの隣接するレーザートラックセグメントの間に、レーザーがスイッチオフ状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する移動セグメントと、を有するように有利に生成される。
【0015】
本発明は、トラックセグメントデータが、非常に小さい角度偏差公差(好ましくは3°未満、特に好ましくは1.5°未満)の場合に、トラックライン上の連続するレーザートラックセグメントができるだけ同一直線上に配列され、トラックラインのできるだけ多くの(80%を超える)レーザートラックセグメントが1つのセグメントシーケンスに統合され、新しいセグメントシーケンスを開始するために、隣接するレーザートラックセグメント間に加速またはブレーキセグメントをできるだけ挿入する必要がないように提供されるという概念に基づく。これによって、レーザートラックセグメントの間にある領域が、加工設定速度を制動する必要なしに、同じセグメントシーケンス内において中断することなく、有利に移動することができる。
【0016】
これは、全体的な加工時間を大幅に短縮することができるという効果をもたらす。その理由は、より多くのレーザートラックエレメントをカバーするより効果的なセグメントシーケンスが、中断および再整列なしにレーザーによって処理することができるからである。また、より均一な加工速度で移動することが可能であるので、より高い表面品質を達成することができる。
【0017】
本発明の一態様は、より多くのレーザートラックセグメントが、一物品の中で移動される共通のセグメントシーケンスへと統合されるように、制御データを生成することを可能にする。また、本発明の一態様では、制御データを生成するための実際のセグメントシーケンスが作成または選択される前であっても、レーザートラックセグメントの生成が開始される。これは、画像及びモデルデータに基づいて、各トラックラインに対し、レーザートラックセグメントを計算するときに、可能な限り同一直線上に位置するレーザートラックセグメントが、どの程度まで、既に連続的に配置されているか、又は連続的に配置されかを、既にチェックすることが可能であるという点で有利である。
【0018】
さらに、本発明者らは、セグメントシーケンスを含む制御データの生成に先立ち、決定されたレーザートラックセグメントの座標のさらなる平滑化および修正をも介して、レーザートラックセグメントの決定において、できるだけ早期の、例えば、平滑化、近似、精度の普通でない増加により、データおよび座標を数値的に準備することは、予想外に大きな効果を有することを発見した。この効果は、最適化された制御データが、一緒に移動することができる複数のレーザートラックセグメントを含むセグメントシーケンスを含むように生成され、機械加工時間を大幅に短縮することができるということである。これは、特に、純粋に平坦な表面からの変位を有する表面形状、例えば、自由形状表面を有する加工物へのテクスチャパターンの付与に関係する。
【0019】
特に好都合な構成によれば、各トラックラインに対しトラックセグメントデータを生成するステップは、特に好ましくはレーザートラックセグメントの3次元座標を、例えばレーザートラックセグメントまたは各トラックラインの方向に対して実質的にラジアル方向に変更することによって、対応するトラックラインの隣接するレーザートラックセグメントの共線性を増大させるステップをさらに含む。「ラジアル方向」は、本発明において、各座標点において、トラックライン、対応するレーザートラックセグメント、またはレーザートラックセグメントを通って延びる補間直線に対して、実質的にラジアル方向に(すなわち、実質的に垂直方向に)延びる方向を意味すると理解される。最も単純な場合には、これは、実質的な直線上への投影(例えば、トラックラインのレーザートラックセグメントのいくつか又は全てを通る補間直線)に基づいて実行されてもよい。
【0020】
これは、画像及びモデルデータに基づいてレーザートラックセグメントが作成/決定された後であっても、レーザートラックセグメントの決定された座標は、追加的に、好ましくは横方向(即ち、レーザートラックセグメントの方向に対して横方向又は垂直方向)に変更させることができ、トラックラインのレーザートラックセグメントの共線性を更に増加させ、更に最適化されたセグメントシーケンスを可能にするという利点を有する。
【0021】
レーザートラックセグメントの3次元座標の実質的なラジアル方向における修正は、好ましくは、レーザートラックセグメントの1つ以上の点の座標を、レーザートラックセグメントまたはそれぞれのトラックラインの方向に対して実質的なラジアル方向へとシフトすることによって実行される。
【0022】
これは、画像及びモデルデータに基づいてレーザートラックセグメントが生成/決定された後であっても、レーザートラックセグメントの決定された座標が、特に横方向(即ち、レーザートラックセグメントの方向に対して横方向又は垂直方向)に効率的に修正されて、トラックラインのレーザートラックセグメントの共線性を更に増加させると共に、より最適化されたセグメントシーケンスを可能にするという利点を有する。
【0023】
レーザートラックセグメントの3次元座標に対するトラックラインの隣接するレーザートラックセグメントの共線性を増加させるステップにおいて、実質的にラジアルの座標シフトは、好ましくは、最大座標シフト限界値まで実行される。
【0024】
これは、座標シフトを許容限界値の範囲においてのみ実行することができ、付与されるべきテクスチャパターンの必要な又は所望の画質が得られる、という利点を有する。
【0025】
モデルデータの3次元座標系における第1の座標軸は、好ましくは、機械加工中にレーザー入射方向に実質的に平行に配列され、モデルデータの3次元座標系における他の2つの座標軸の面は、好ましくは、機械加工中にレーザー入射方向と実質的に垂直に配列される。
【0026】
第1の座標軸の方向への座標シフトの座標シフト限界値は、好ましくは、他の2つの座標軸の面内にある方向への座標シフトの座標シフト限界値よりも大きい。
【0027】
これは、テクスチャパターンの画質に著しい影響を与えないレーザー方向における方向に対する座標変更は、レーザー入射方向に垂直な方向よりも高くなることが証明されて、レーザートラックセグメントの共線性を増加させるという利点を有する。
【0028】
隣接するトラックライン間の距離は、好ましくは、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの実質的に幅以下であり、特に、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の半分以上である。
【0029】
座標シフト限界値は、特に、他の2つの座標軸の面内にある方向(レーザー入射方向に実質的に垂直な方向)に対する座標シフトに対しては、好ましくは、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の5%以下、特に、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の1%以下である。
【0030】
第1の座標軸の方向における座標シフトの座標シフト限界値は、好ましくは、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の10%以上、特に35%以上である。さらに/または、第1の座標軸の方向における座標シフトの座標シフト限界値は、レーザーの焦点位置の公差幅の50%以上、特にレーザーの焦点位置の公差幅の75%以上である。
【0031】
レーザートラックセグメントの3次元座標の修正は、好ましくは、レーザー入射方向に実質的に垂直な平面内に含まれる実質的なラジアル方向において実行される。さらに/または、レーザートラックセグメントの3次元座標の修正は、好ましくは、レーザー入射方向に実質的に平行な実質的なラジアル方向において実行される。
【0032】
1つの特に好都合な構成によれば、モデルデータは、さらに、画像データの第1の座標系の2次元座標を、モデルデータの表面形状の上の第2の座標系の3次元座標へと座標マッピングすることを指定する。代替として、または追加として、モデルデータは、さらに、画像データの第1の座標系の2次元座標を、表面形状の上を走る表面座標(例えばUV座標)の第3の座標系の2次元座標へと座標マッピングすることを指定する。
【0033】
モデルデータは、2次元座標空間の3次元座標空間へのマッピングを記述する追加の2次元座標によって、表面の上で指定することができる。これらは、例えば、UV座標であってもよい。
【0034】
画像データおよびモデルデータに基づくトラックセグメントデータの生成は、好ましくは、加工物表面の少なくとも一セクションに対応するセクションに、複数の平行に走るトラックラインでハッチングするステップと、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形成の3次元ジオメトリ上にトラックラインまたはトラックセグメントを投影するステップと、および/または、トラックラインがテクスチャパターンの画像の対応するセクション内のテクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントを決定するステップとを含む。
【0035】
これは、線条に延びるトラックラインが、画像データの2次元空間から3次元座標を有するモデルデータの空間へと、モデルデータに従って加工物の表面形状の上に、容易かつ効率的に投影されることができ、不均一な点または自由形状表面上であっても、レーザートラックセグメントを3次元加工物上に正確かつ確実に決定することができるという利点を有する。
【0036】
この場合、好ましくは、画像データおよびモデルデータに基づいたトラックセグメントデータの生成は、例えば、テクスチャパターンの画像の、加工物表面の少なくとも一セクションに相当するセクションを、複数の平行に延びるトラックラインで、ハッチングするステップと、トラックラインがテクスチャパターンの画像の対応するセクション内のテクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントを決定するステップと、および/または、モデルデータの座標マッピングに基づいて、画像データの第1の座標系からの各トラックラインセグメントの2次元座標を、モデルデータの表面形態上の3次元座標へとマッピングすることによって、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形態の3次元ジオメトリ上に決定されたトラックラインセグメントを投影するステップとを含み、第1の座標系内の各トラックラインセグメントに対して、対応するレーザートラックセグメントの3次元座標が、第2の座標系内で決定されるようになっている。
【0037】
いくつかの例示的な実施形態では、平行に延びる直線トラックラインが、例えば、テクスチャパターンの画素画像の画像データの2D座標空間に配置され、画像データの2D座標空間からのテクスチャパターンとの重なりの決定と同じくらい早く、またはそれと同時に、3Dモデルデータの表面形状の上に投影され、または、テクスチャパターンに対応する画像データの2D空間で既に決定されたトラックセグメントが投影される、と仮定しても良い。
【0038】
この場合、例えば、複数の平行に走るトラックラインを、画像データの第1の座標系に配置しても良く、トラックラインがテクスチャパターンの画像の対応するセクションにおいてテクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントを決定するステップは、画像データの第1の座標系において実行してもよい。
【0039】
トラックラインまたはトラックラインのセグメントを投影するステップにおいて、決定されたトラックラインセグメントは、好ましくは、特に、例えば、画像データの第1の座標系からの各決定されたトラックラインセグメントの2次元座標を、モデルデータの座標マッピングに基づいて、モデルデータの表面形状の上の3次元座標へとマッピングすることによって、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリ上に投影されても良く、好ましくは、第1の座標系における各トラックラインセグメントに対して、対応するレーザートラックセグメントの3次元座標が、第2の座標系において決定される。
【0040】
他の好都合な例示的実施形態では、所定の平面内において、画像データの3D座標空間内において平行に延びる直線トラックラインを配置することも可能である。この所定の平面は、例えば、レーザー入射方向と実質的に垂直になるように位置合わせされた平面(例えば
図8のX−Y面)でも良い。次に、トラックラインの全てを、1つの方向(例えば、この面に垂直な方向)における3Dモデルデータの表面形状の上に投影しても良い。さらに、2次元表面座標(例えば、UV座標)は、3Dモデルデータの表面形状の上において投影されたトラックラインの各々に対して読み取られても良い。このために、表面座標画素値または補間された画素値が、画像データまたは画素画像から読み取られてもよい。読み取られた画素値または補間された画素値に基づいて、対応するレーザートラックセグメントまたはレーザートラックセグメント座標が、投影されたトラックライン上で読み取られても良い。
【0041】
この場合、モデルデータの第2の座標系において平行に延びる複数のトラックラインは、レーザー入射方向に対して特に実質的に垂直な方向に配置されたトラックライン面内に配置されてもよい。
【0042】
トラックラインまたはトラックラインのセグメントを投影するステップにおいて、モデルデータの第2の座標系におけるトラックラインは、次に、トラックライン面から、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリの上に、特にトラックライン面と実質的に垂直な投影方向に投影されてもよい。
【0043】
トラックラインがテクスチャパターンの画像の対応するセクション内のテクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントを決定するステップにおいて、投影されたトラックラインの座標に対する座標マッピングによって、画像データの座標空間内の対応する座標での、テクスチャパターンを指定する画像データの画像値、特に画素値を決定することが可能である。そして、トラックラインセグメントは、好ましくは、モデルデータの座標空間内において、決定された画像値(例えば、画素地、好ましくは、サブピクセル補間後の画素値)に基づいて決定されてもよい。
【0044】
画像データは、好ましくは、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の10%以上、特にその機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の25%以上となる画素幅を有するテクスチャパターンの画素画像(ラスターグラフィックス)を指定する。
【0045】
これは、画像データに対するデータ量(例えば、ファイルサイズ)を限界内に保つことができ、過剰に変化されたデータ量が大きな表面に対して生じないという利点を有する。
【0046】
サブピクセル補間は、好ましくは、トラックラインセグメントの決定中に、または画像値または画素値の決定中に実行される。このトラックラインセグメントでは、トラックラインが、テクスチャパターンの画素画像の対応するセクション内のテクスチャパターンと重なる。
【0047】
これは、画像データに対する効率的なデータ量(例えば、比較的小さいファイルサイズ)にもかかわらず、横方向の画素丸め誤差を、モデルデータの空間へのトラックラインの投影において回避することができるという利点を有する。
【0048】
ここで、画素画像内のトラックラインの座標を決定するためのこのようなサブピクセル補間が、極めて予想外にも効果を提供することが指摘される。画素サイズは、一般に、機械加工におけるレーザーの幅とほぼ同じであるか、又は幾分小さい。故に、付与されるテクスチャパターンの画質を保証するために、このようなサブ画素補間は、必要でもなく、有利でもない。
【0049】
しかしながら、本発明者らは、サブピクセル補間を伴わない可能性のある画素丸め誤差は、注目すべき空間解像度の問題を全く伴わないが、かろうじて見ることができ、また注目すべきサイズを全く有しない(そのようなセクションの長さは画素幅よりも短い)極端に短いレーザートラックセグメントセクションの発生につながる可能性があることを見出した。しかし、係る誤差は、レーザートラックセグメント上でのかなりの角度偏差につながる可能性があり、その結果、セクションがセグメントシーケンスで移動することができない場合には、問題が予期せず可能性があり、その結果、機械加工時間が、容易には明らかでない理由により、不必要に、且つ不都合に延長されることになる。
【0050】
これは、特に好ましくは、より大量のデータを有するさらに解像度の高い画像ファイルを提供する必要なしに、トラックラインに対して横方向へのサブピクセル補間によって改良することができる。したがって、加工時間は、トラックセグメントデータの生成をさらに最適化することによって、さらに短縮することができる。
【0051】
対応するトラックラインの方向に対して横方向または垂直方向に延びる横方向における座標補間は、好ましくは、サブピクセル補間において実行される。
【0052】
モデルデータにおいて指定された3次元ジオメトリは、好ましくは、複数の多角形表面を有する。特に、モデルデータにおいて指定された3次元ジオメトリ上への直線トラックラインの投影は、互いに傾斜した隣接する多角形表面の間の1つまたは複数の遷移に起因して、トラックセグメントデータの生成において実行され、コーナーを有するトラックライン上への直線トラックラインのマッピングにつながる。
【0053】
これは、例えば、三角形の多角形表面および/またはn辺の多角形表面(ここで、n>3)を有するジオメトリであっても良い。2次元座標空間の3次元座標空間へのマッピングを記載する追加の2次元座標も、この場合、表面上に既に提供されてもよい。これらは、例えば、UV座標であってもよい。
【0054】
数値平滑化は、好ましくは、トラックセグメントデータの生成においてモデルデータにおいて指定された3次元ジオメトリ上に直線トラックラインを投影することによって決定されたトラックラインに対して実行される。対応するトラックライン上にあるレーザートラックセグメントの座標は、好ましくは、数値的に平滑化されたトラックラインに基づいて決定される。
【0055】
これは、多角形表面遷移に起因して生じ得る、トラックライン、トラックラインセグメント、または、レーザートラックセグメントにおけるコーナーが、数値的に平滑化され得、その結果として、決定されたレーザートラックセグメントの共線性が、トラックセグメントデータの生成においてさらに増加されるという利点を有する。
【0056】
数値平滑化は、好ましくは、3次元空間で実行される第1の平滑化プロシージャを有し、この中で、対応するトラックラインのコーナーは、好ましくは平滑化され、故に、平滑化されたトラックラインが、以前に存在したコーナーの位置で丸められたプロファイルを有する。
【0057】
これは、多角形表面遷移に起因して生じ得る、トラックライン、トラックラインセグメント、または、レーザートラックセグメントのコーナーが数値的に平滑化され得、その結果として、決定されたレーザートラックセグメントの共線性が、トラックセグメントデータの生成において、さらに増加されるという利点を有する。
【0058】
数値平滑化は、好ましくは、レーザー入射方向で実行される第2の平滑化プロシージャを有し、このプロシージャにおいて、第1の平滑化プロシージャによって平滑化されたトラックラインは、レーザー入射方向と平行に整列された方向において平滑化される。その結果、好ましくは、さらなる平滑化されたトラックラインが、レーザー入射方向に対して垂直に配置された平面上において平滑化されていないトラックラインに対してより平坦に延びる。
【0059】
これは、多角形表面遷移に起因して生じ得る、トラックライン、トラックラインセグメント又はレーザートラックセグメントのコーナーが、更に数値的に平滑化さる。その結果、決定されたレーザートラックセグメントの共線性は、トラックセグメントデータの生成において、更に増加されるという利点を有する。ここでは、レーザー入射方向における位置精度は、著しく低減され(かなり減らされた加工時間に有利に)、位置偏差は実際の表面位置から逸脱することが考慮される。しかしながら、これは、位置がレーザー入射方向に対して正確に垂直に位置決めされたままであり、レーザー入射方向におけるいかなるシフトも達成可能な画像品質にほとんど影響しないので、比較的大きな不利な影響なしに、許容される。
【0060】
しかしながら、距離方向(レーザー入射方向)では、レーザープロセスは、ビーム焦面及びレイリー長のために、横方向よりもかなり高い偏差(焦点距離及びビーム品質に応じて、10分の数mmまで)を許容する。その結果、この方向における座標を滑らかにすること、または、横方向に可能であるよりもかなり大きな範囲で、滑らかにすることによって座標を歪ませることが可能である。過剰な平滑化は、表面に対する焦点位置の小さな偏差につながる。これは、許容範囲内では見えなくなるが、シーケンスから大量の粗さを除去する。したがって、3次元で見ると、曲線は実質的に同一直線上に現れ、出力は、数に関して、より長いセグメントシーケンスをより長い時間節約と共に生成することができる。
【0061】
画像データは、好ましくは、テクスチャパターンの画素画像を指定し、画素画像の各画素には、好ましくは、テクスチャパターンの対応する位置で、工具表面に付与されるテクスチャパターンの所定の深さを指定する画素値が割り当てられる。
【0062】
これは、各深さ層に対し個別の画像データを供給する必要なしに、異なる深さに刻むために、画素画像を複数の機械加工ステップに対し、容易かつ効率的に使用することができるという利点を有する。
【0063】
個々のトラックセグメントデータは、好ましくは、画素画像の画素値に基づいて、テクスチャパターンの異なる深さレベルに対して生成され、好ましくは、テクスチャパターンは、それぞれのトラックセグメントデータに基づいて生成された制御データに基づいて、連続する機械加工プロシージャにおいて異なる深さレベルに切り出される。
【0064】
1つの特に好都合な構成によれば、本方法の数値計算では、トラックセグメントデータの生成において、特に座標マッピングの基礎となる2次元および/または3次元座標を含む、画像および/またはモデルデータの座標は、好ましくは、モデルデータの多角形サイズの、または画像データの画素幅の、隣接するトラックライン間の距離の、加工物表面上のレーザーの幅の少なくとも1/1000の解像度精度、特に好ましくは、上記変数の1つの少なくとも1/10000の精度を有する空間解像度で読み取られる。1つの特に好都合な構成によれば、本方法の数値計算では、トラックセグメントデータの生成において、特に座標マッピングの基礎となる2次元および/または3次元座標を含む画像および/またはモデルデータの座標は、好ましくは、少なくとも10nmの解像度精度、特に実質的に1nmの解像度精度を有する空間解像度で読み取られる。
【0065】
これは、機械加工におけるレーザーの幅及び所望の画像解像度に関する精度が、予期せず且つ普通でないような正確になるように選択されるが、数値計算における丸め誤差を回避することができという利点を有する。この計算は、画像空間解像度において役割を果たさないが、小さなレーザートラックセグメントの方向偏差に関して、驚くほど大きな角度偏差または共線偏差を引き起こす。したがって、レーザートラックセグメントの共線性は、特に驚くべき方法で増大させることができ、機械加工時間を大幅に短縮することができる。その理由は、より多くのレーザートラックセグメントを、共通のセグメントシーケンスに統合することができるためである。
【0066】
1つの特に好都合な構成によれば、各セグメントシーケンスは、レーザーが機械加工設定速度まで加速するようにスイッチオフ状態で移動する開始移動セグメント(スタートセグメント)と、レーザーが機械加工設定速度から制動するようにスイッチオフ状態で移動する終了移動セグメント(ブレーキセグメント)とを含む。共線性が存在する場合、セグメントシーケンスは、複数の連続したレーザートラックセグメントを含み、各レーザートラックセグメントは、レーザーのスイッチが切られたときに実質的に一定の速度で「中断なしに」移動することができる移動セグメントによって分離される。これにより、加工時間を大幅に短縮することができる。
【0067】
本発明のさらなる態様によれば、提案されるものは、上記態様のうちの1つにより、特に数値制御された工作機械の上で、レーザーによって加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するために、少なくとも1つの加工物表面を機械加工するための方法のための制御データの生成において使用するためのトラックセグメントデータを生成する方法である。
【0068】
制御データは、好ましくは、各トラックラインについて1つ以上のセグメントシーケンスを指定する。各セグメントシーケンスは、トラックセグメントを有する。トラックセグメントに沿って、レーザーが、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するために案内される。また、セグメントシーケンスのトラックセグメントは、レーザーがスイッチオン状態で実質的に一定の加工設定点速度で移動する1つ以上のレーザートラックセグメントを含む。
【0069】
本方法は、好ましくは、加工物表面の少なくとも一セクションに付与されるテクスチャパターンの画像を指定する画像データと、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリを指定するモデルデータとを提供するステップと、画像データおよびモデルデータに基づいてトラックセグメントデータを生成するステップとを含む。トラックセグメントデータは、それぞれ、テクスチャパターンに応じて、加工物表面のセクション上を走る複数のトラックラインに対して、それぞれのトラックラインに沿って複数の連続したレーザートラックセグメントを指定する。
【0070】
各トラックラインに対して、互いに実質的に同一直線上に配置される隣接するレーザートラックセグメントの数が増やされ、さらに、特に最大に増やされるという条件に従うならば、トラックセグメントデータは、画像データおよびモデルデータに基づいて生成される。好ましくは、制御データの生成において、互いに実質的に同一直線上に配置されて、共通セグメントシーケンスに統合されるトラックラインの隣接するレーザートラックセグメントの数は増加され、特に最大に増やされる。
【0071】
要約すると、レーザーによってパターンを付与するために加工物を機械加工する方法を提供するために、態様および好ましい構成が提案される。この方法によって、加工物の機械加工、特にパターンの付与中の機械加工時間を大幅に低減することができ、同時に、生成されたパターンの品質を維持することができる。
【0072】
これらの提案された方法を可能な限り最良に利用できるようにするために、工作機械上で使用するためのレーザー装置、またはそのようなレーザー装置を有する工作機械が、上述の方法態様に従って加工物を機械加工するために使用されるならば、レーザーが非常に高いパルス周波数を有するため、特に有利である。これは、平均してより長い機械加工セグメント(特に「ピルグリムステップなし」)の上を移動するときに、より高い達成可能な機械加工速度が、過度に遅い最大達成可能パルス周波数のために、スイッチオンのレーザーによって移動されるレーザートラックセグメントのライン品質に悪影響を及ぼすことなく、使用できるという利点を有する。
【0073】
この目的のために、100kHzから1MHzまでの範囲のパルス周波数が適用されることが好ましく、その結果、共線性となるように配置された加工セグメント(レーザートラックセグメント)と、それによって最適化された(各が平均してより長い)セグメントシーケンスとによって、より速い加工設定速度の速度利点を、実際に加工物表面により広範囲に亘って伝達することができる。セグメントシーケンスの各々は、「ピルグリムステップなしに」多くのレーザートラックセグメントにわたってより速い加工設定速度で移動することができる。これにより、機械加工時間がさらに短縮され、またはより大幅に短縮される。
【0074】
一例として、高い機械加工品質を保証するために、50%以上、好ましくは75%以上のレーザーパルスのオーバーラップが達成されることが好ましい。この目的のために、例えば、加工物表面上での機械加工中のレーザーの所定の直径(幅)の場合、パルス周波数および最大加工速度(すなわち、レーザーがレーザートラックセグメントまたは離散した移動セグメント上を移動する最大速度)は、好ましくは、最大加工速度のレーザーパルス周波数に対する比が、例えば、少なくとも50%以上のレーザーパルスのオーバーラップを達成するためには、レーザーの直径(幅)の半分以下となり、例えば、少なくとも75%以上のレーザーパルスのオーバーラップを達成するためには、レーザーの直径(幅)の3/4以下となるように選択される。この場合、比は決定的であるので、パルス周波数が増えると、最大加工速度も同時に増える。
【0075】
好ましくは、レーザーが既に非常に高いパルス周波数を有する工作機械の、さらに、特に有利な構成は、追加のダイバージェンス変更装置を有するこの工作機械の、レーザーを含むレーザー装置の拡張を備える。このようなダイバージェンス変更装置は、例えばDE 10 2012 111 098 B4で知られている。
【0076】
レーザースキャナシステムは、通常、X,Y平面(すなわち、レーザー入射方向またはレーザービーム方向に実質的に垂直な平面)において非常に迅速に(5m/s〜10m/sまたはそれ以上の範囲で)設定される必要がある軸を有し、その結果、平坦な表面は、高速レーザー設定速度によってレーザー入射方向に実質的に垂直なレーザー走査システムによって非常に迅速に機械加工することができる。
【0077】
しかしながら、平坦な面の代わりに、3D空間における自由形状表面が機械加工されるべきであるが、このとき、システムはより遅い速度で制御されることになってしまう。なぜなら、Z方向(即ち、実質的にレーザー入射方向)における設定のための機械的に駆動可能な軸は通常1つしか利用できず、その結果、高い機械加工速度が、3D空間において最適な方法で達成されることができないからである。この点において、Z方向において著しく高速の設定速度を可能にするダイバージェンス変更装置の有利な特性に頼ることが可能である。その結果、3つの直線並進自由度X、Y、及びZの全てを含む3D空間において、特に自由形状表面上の3D空間にあるトラックラインに沿って、著しく高速の加工速度を達成することが可能である。
【0078】
ダイバージェンス変更装置は、例えば、レーザービームの焦点が、高速で変更可能な焦点距離で加工される加工物上に集束されるように、レーザービームのダイバージェンス角度を可変に設定することができる。加工物表面の構造に起因して、レーザー源と加工物との間の距離が異なる場合があるので、レーザービームから加工物への効率的かつ正確なエネルギー伝達を達成するために、非常に短時間でレーザービームを集束させることが必要である。
【0079】
ダイバージェンス変更装置は、その光学活性素子がテレセントリックに配置されていることが好ましく、この場合、反射システム(例えば、パラボリック反射器)またはテレセントリック回折システム(例えば、レンズ系)を有しても良い。ビーム偏向装置(例えば、回転ミラー)は、ダイバージェンス変更装置内のレーザービームを、対応する光学活性素子上に偏向し、したがって、レーザービームの進路およびそのバンドリング/フォーカシングに影響を及ぼすことができる。
【0080】
非常に高いパルス周波数を有するレーザーおよびダイバージェンス変更装置による工作機械の有利な発展によって、できるだけ同一直線上になるように配置されている加工セグメントに起因する速度の効果を、3次元空間内の加工物表面(例えば3D自由形状表面)に同様に伝達することが可能である。その結果、加工物表面の機械加工をさらに最適化することができ、それによって、さらに相当量の機械加工時間の短縮を達成することができる。これは、比較的高いパルス周波数、特に好ましくは100kHz以上、特に好ましくは400kHz以上、またはより最適には800kHz以上1MHz以下を可能にするレーザーと組み合わせる場合に特に好都合である。
【0081】
さらに、提案されるものは、少なくとも1つの加工物表面を機械加工するためのレーザー装置を備える数値制御工作機械において使用される制御装置である。これによって、レーザー装置のレーザーによって、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンが付与される。
【0082】
制御装置は、好ましくは、工作機械の先行する請求項の1つに記載の方法を実行するように構成される。
【0083】
制御装置は、好ましくは、先行する請求項の1つに記載の方法で生成された制御データに基づいて工作機械を制御するように構成されている。制御データは、各トラックラインについて1つ以上のセグメントシーケンスを指定する。各セグメントシーケンスは、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するためにレーザーが案内されるトラックセグメントを有する。セグメントシーケンスのトラックセグメントは、レーザーがスイッチオン状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する1つ以上のレーザートラックセグメントを含む。
【0084】
制御装置は、好ましくは、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリを指定する提供されたモデルデータと、加工物表面の少なくとも一セクションに付与されるテクスチャパターンの画像を指定する提供された画像データとに基づいて、レーザートラックセグメントデータを生成するように構成されている。トラックセグメントデータは、それぞれ、テクスチャパターンに応じて、加工物表面のセクション上を走る複数のトラックラインに対して、それぞれのトラックラインに沿った複数の連続するレーザートラックセグメントを指定する。各トラックラインに対して、互いに実質的に同一直線上にあるように配置される隣接するレーザートラックセグメントの数が増加され、特に最大にまで増やされるという条件に従って、トラックセグメントデータは、画像データおよびモデルデータに基づいて作成される。
【0085】
制御装置は、好ましくは、生成または提供されたレーザートラックセグメントデータに基づいて制御データを生成するように構成されている。
【0086】
制御データは、好ましくは、各セグメントシーケンスが、少なくとも2つのレーザートラックセグメントを有し、互いに実質的に同一直線上にあるように位置合わせされた2つの隣接するレーザートラックセグメント間に、各々がレーザーがスイッチオフ状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する移動セグメントを有するように生成される。
【0087】
さらに提案されることは、上述の制御装置を有する工作機械、および/または、特に、工作機械の制御装置によって(例えば、上述の制御装置によって)レーザーが3つの方向に制御された態様で加工物表面上を案内されるレーザー装置が提案される。これにより、特に、レーザー装置のレーザーによって加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンが付与される。
【0088】
レーザーは、好ましくは、2m/s以上、特に4m/s以上、特に好ましくは10m/s以上の加工速度で、レーザーのレーザービームの方向に対して実質的に垂直な方向に移動することができる。
【0089】
レーザー装置は、好ましくは、レーザーのレーザービームの方向に実質的に整列された方向にレーザーを制御するために、ダイバージェンス変更装置を有する。
【0090】
レーザーは、好ましくは、4m/s以上、特に好ましくは10m/s以上の加工速度でレーザーのレーザービームの方向に移動される。
【0091】
レーザーは、好ましくは、レーザーのレーザービームの方向に対して実質的に垂直な方向に、レーザーの最大加工速度と実質的に等しいかまたはそれより大きい最大加工速度で、レーザーのレーザービームの方向に移動される。
【0092】
レーザー装置のレーザーは、好ましくは、200kHz以上、特に400kHz以上、特に好ましくは800kHz以上のパルス周波数で動作するように構成される。
【0093】
さらに提案されることは、コンピュータ上で実行されたときに、上記態様のステップ、特にトラックセグメントデータを生成するステップおよび/または制御データを生成するステップを含む方法を実行するようにコンピュータを構成するインストラクションを有するコンピュータプログラムを含むコンピュータデバイスまたはコンピュータプログラムプロダクトである。
【0094】
そのさらなる態様および利点、ならびに上記の態様および特徴の利点および特別な構成の可能性は、添付の図面に関して、以下の記載および説明において説明されるが、決して限定するものではないことを理解されたい。