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特許6882497レーザーによって加工物表面を機械加工する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882497
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】レーザーによって加工物表面を機械加工する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/36 20140101AFI20210524BHJP
【FI】
   B23K26/36
【請求項の数】29
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2019-543269(P2019-543269)
(86)(22)【出願日】2018年2月2日
(65)【公表番号】特表2020-508219(P2020-508219A)
(43)【公表日】2020年3月19日
(86)【国際出願番号】EP2018052660
(87)【国際公開番号】WO2018146018
(87)【国際公開日】20180816
【審査請求日】2019年11月28日
(31)【優先権主張番号】102017202269.8
(32)【優先日】2017年2月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505385985
【氏名又は名称】ザウアー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SAUER GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルデブラント, ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ライニッケ, ゴットフリート
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−142866(JP,A)
【文献】 特開平10−258373(JP,A)
【文献】 特開2012−006039(JP,A)
【文献】 特開2015−166178(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102014210611(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に数値制御工作機械上で、レーザーを用いて、少なくとも1つの加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付加するために、前記加工物表面を機械加工する方法であって、
前記加工物表面の少なくとも一セクションに付加されるテクスチャパターンの画像を指定する画像データと、前記加工物表面の前記少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリを指定するモデルデータとを提供するステップと、
前記画像データおよび前記モデルデータに基づいてトラックセグメントデータを生成するステップであって、前記トラックセグメントデータは、それぞれ、前記テクスチャパターンに応じて、前記加工物表面のセクション上を走る複数のトラックライン(SP)に対して、各トラックラインに沿って複数の連続するレーザートラックセグメント(12)を指定する、ステップと、
生成されたトラックセグメントデータに基づいて制御データを生成するステップであって、前記制御データは、各トラックラインに対して1つ以上のセグメントシーケンス(10)を指定し、各セグメントシーケンス(10)は、前記加工物表面の少なくとも一セクションに前記テクスチャパターンを付加するために、前記レーザーが案内されるトラックセグメント(11、12、13;11、12、14、12、13)を有し、セグメントシーケンス(10)の前記トラックセグメントは、レーザーがスイッチオン状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する1つ以上のレーザートラックセグメント(12)を含む、ステップと、
前記加工物表面の少なくとも一セクションに前記テクスチャパターンを付加するために、前記制御データに基づいて前記レーザーを制御するレーザー装置に、生成された制御データを出力するステップと、を有し、
各トラックラインについて、互いに実質的に共線となるように配置される隣接するレーザートラックセグメント(12)の数が増加され、特に最大に増やされるという条件に従って、前記トラックセグメントデータが、前記画像データおよびモデルデータに基づいて生成され、
前記制御データは、セグメントシーケンス(10)の各々が、少なくとも2つのレーザートラックセグメント(12)と、互いに実質的に同一線上に配列される2つの隣接するレーザートラックセグメント(12)の間に移動セグメント(14)とを有するように生成され、前記移動セグメント(14)の上では、レーザーがスイッチオフ状態で実質的に一定の加工設定速度で移動し、
トラックセグメントデータを生成するステップは、さらに、各トラックライン(SP)に対して、
レーザートラックセグメント(12)の、または各トラックライン(SP)の方向に対して実質的なラジアル方向に、前記レーザートラックセグメント(12)の3次元座標を修正することによって、対応するトラックライン(SP)の隣接するレーザートラックセグメント(12)の共線性を増加させるステップを有し、
前記実質的なラジアル方向は、レーザー入射方向に対して実質的に垂直方向に広がる面内にあり、及び/又は、
前記実質的なラジアル方向は、前記レーザー入射方向と実質的に平行であることを特徴とする方法。
【請求項2】
実質的にラジアル方向における前記レーザートラックセグメント(12)の3次元座標の修正は、前記レーザートラックセグメント(12)の1つまたは複数の点の座標を、前記レーザートラックセグメント(12)又は各トラックライン(SP)の方向に対して実質的にラジアル方向にシフトさせることによって実行されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザートラックセグメント(12)の3次元座標に対するトラックライン(SP)の隣接するレーザートラックセグメント(12)の共線性を増加させるステップにおいて、実質的にラジアル方向の座標シフトが、前記加工物の機械加工の間に前記加工物表面上の前記レーザーの幅に応じた最大座標シフト限界値まで実行されることを特徴とする請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
前記モデルデータの3次元座標系における第1座標軸(Z)は、機械加工中の前記レーザー入射方向と実質的に平行に整列され、前記モデルデータの3次元座標系における前記他の2つの座標軸(X、Y)の面は、前記機械加工中の前記レーザー入射方向に対して実質的に垂直に整列され、
前記第1座標軸(Z)の方向における座標シフトの座標シフト限界値は、前記他の2つの座標軸(X、Y)の面内に含まれる方向における座標シフトに対する座標シフト限界値よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
隣接するトラックライン(SP)間の距離は、加工中の前記加工物表面上のレーザーの幅よりも実質的に短いか等しく、特に、加工中の前記加工物表面上のレーザーの幅の半分以下であり、
特に、他の2つの座標軸(X、Y)の面内にて延びる方向における座標シフトに対する座標シフト限界値は、加工中の前記加工物表面上の前記レーザーの幅の5%以下であり、特に、加工中の前記加工物表面上の前記レーザーの幅の1%以下である、ことを特徴とする請求項またはに記載の方法。
【請求項6】
第1座標軸(Z)の方向における座標シフトに対する座標シフト限界値は、加工中の前記加工物表面上の前記レーザーの幅の10%以上、特に、35%以上であり、及び/又は、
前記第1座標軸(Z)の方向における座標シフトに対する前記座標シフト限界値は、前記レーザーの焦点位置の公差幅の50%以上、特に、前記レーザーの前記焦点位置の前記公差幅の75%以上である、ことを特徴とする請求項またはに記載の方法。
【請求項7】
前記モデルデータは、さらに、前記画像データの第1座標系の2次元座標を、前記モデルデータの前記表面形状の上の第2座標系の3次元座標へ、または、前記表面形成上を走る表面座標(U,V)の第3座標系の2次元座標への座標マッピングを指定し、
前記画像データおよび前記モデルデータに基づくトラックセグメントデータの生成は、
前記加工物表面の少なくとも一セクションに対応するセクションを、互いに平行に延びる複数のトラックラインでハッチングするステップと、
前記トラックラインまたは前記トラックラインのセグメントを、前記加工物表面の少なくとも一セクションに相当する表面形状の3次元ジオメトリ上に投影するステップと、及び/又は、
前記テクスチャパターンの画像の対応するセクションにおいて、前記トラックラインが前記テクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントを決定するステップと、を含み、
トラックラインセグメントを決定するステップは、隣接するレーザートラックセグメントの共線性を増加させるステップの前に行われることを特徴とする、請求項1からのいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
互いに平行に延びる前記複数のトラックラインは、前記画像データの第1座標系に配置され、
前記トラックラインが前記テクスチャパターンの画像の対応するセクションにおいて前記テクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントを決定するステップは、前記画像データの第1座標系において実行されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記トラックラインまたは前記トラックラインのセグメントを投影するステップにおいて、決定されたトラックラインセグメントは、前記モデルデータの座標マッピングに基づいて、前記画像データの前記第1座標系から、決定されたトラックラインセグメントの各々の2次元座標を、前記モデルデータの前記表面形状の上の3次元座標上へとマッピングすることによって、前記加工物表面の少なくとも一セクションに対応する前記表面形状の3次元ジオメトリ上へと投影され、
前記第1座標系におけるトラックラインセグメントの各々に対し、対応するレーザートラックセグメントの3次元座標は、前記第2座標系において決定されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記モデルデータの前記第2座標系内において互いに平行に走る複数のトラックラインは、特にレーザーの入射方向と実質的に垂直な方向に整列されるトラックライン面内に配置され、
前記トラックラインまたは前記トラックラインのセグメントを投影するステップにおいて、前記モデルデータの前記第2座標系内にある前記トラックラインは、前記トラックライン面から、前記加工物表面の少なくとも一セクションに対応する前記表面形状の3次元ジオメトリ上に、特に、前記トラックライン面に対し垂直な投影方向において投影されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
トラックラインが前記テクスチャパターンの前記画像の対応するセクションにおいて前記テクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントを決定するステップにおいて、投影されたトラックラインの座標に対する座標マッピングによって、画像データの座標空間における対応する座標において、前記テクスチャパターンを指定する画像データの画像値、特に画素値が決定され、
前記トラックラインセグメントは、前記モデルデータの座標空間内において決定された画像値に基づいて決定されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記画像データは、加工中の前記加工物表面上の前記レーザーの幅の10%以上、特に加工中の前記加工物表面上の前記レーザーの幅の25%以上である画素幅を有する前記テクスチャパターンの画素画像を指定することを特徴とする請求項から11のいずれか一に記載の方法。
【請求項13】
前記トラックラインが、前記テクスチャパターンの画素画像の対応するセクションにおけるテクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントの決定中に、または、画像値または画素値の決定中に、サブピクセル補間が実行されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対応するトラックラインの方向に対して横切る横方向における座標補間は、前記サブピクセル補間の中で実行されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記モデルデータにおいて指定された3次元ジオメトリは、複数の多角形面を有し、
特に、互いに傾斜している隣接する多角形面間の1つまたは複数の遷移に起因して、前記モデルデータにおいて指定された3次元ジオメトリ上への直線トラックラインの投影が、トラックセグメントデータの生成において実行され、前記投影が、コーナーを有するトラックライン上への直線トラックラインのマッピングにつながることを特徴とする請求項1から14のいずれか一に記載の方法。
【請求項16】
前記モデルデータにおいて指定された3次元ジオメトリ上へ直線トラックラインを投影することによって、トラックセグメントデータの生成において決定されたトラックラインに対して、数値平滑化が実行され、
対応するトラックライン上にあるレーザートラックセグメントの座標は、トラックライン(SP)またはトラックラインセグメント(12)またはレーザートラックセグメントにおけるコーナーを数値的に平滑化するために、数値的に平滑化されたトラックラインに基づいて決定されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記数値的な平滑化は、3次元空間において実行される第1平滑化プロシージャを有し、前記第1平滑化プロシージャにおいて、前記対応するトラックラインのコーナーが平滑化され、前記平滑化されたトラックラインが以前に存在した前記コーナーの位置において丸められたプロファイルを有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記数値平滑化は、前記レーザー入射方向において実行される第2平滑化プロシージャを有し、前記第2平滑化プロシージャにおいて、前記第1平滑化プロシージャによって平滑化されたトラックラインは、前記レーザー入射方向と平行に整列された方向の方向において平滑化され、
さらに平滑化されたトラックラインは、前記レーザー入射方向に対して垂直に整列された面上において未平滑のトラックラインに対してより平坦に走ることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記画像データは、前記テクスチャパターンの画素画像を指定し、前記画素画像の各画素に、前記テクスチャパターンの対応する位置においてツール表面に付加されるテクスチャパターンの所定深さを指定する画素値が割り当てられ、
個々のトラックセグメントデータは、前記画素画像の画素値に基づいて、前記テクスチャパターンの異なる深さレベルに対して生成され、前記テクスチャパターンは、それぞれのトラックセグメントデータに基づいて生成された制御データに基づいて、連続する加工プロシージャにおいて異なる深さレベルに切り出されることを特徴とする請求項1から18のいずれか一に記載の方法。
【請求項20】
前記方法の数値計算において、トラックセグメントデータの生成において、前記画像および/またはモデルデータの座標は、特に座標マッピングの基礎となる2次元および/または3次元座標を含み、空間解像度で読み取られ、前記空間解像度は、前記モデルデータの多角形サイズの、または前記画像データの画素幅の、隣接するトラックライン間の距離の、加工物表面上のレーザーの幅の少なくとも1/1000の解像度精度に相当し、特に好ましくは少なくとも1/10000の解像度精度に相当し、および/または、
前記方法の数値計算において、トラックセグメントデータの生成において、前記画像および/またはモデルデータの座標は、特に座標マッピングの基礎となる2次元および/または3次元座標を含み、少なくとも10nmの解像度精度、特に1nm以下の実質的な解像度精度を有する空間解像度で読み取られることを特徴とする請求項1から19のいずれか一に記載の方法。
【請求項21】
各セグメントシーケンスは、加工設定速度まで加速するためにスイッチオフ状態でレーザーが移動する開始移動セグメントと、前記加工設定速度からブレーキをかけるためにスイッチオフ状態でレーザーが移動する終了移動セグメントとを含むことを特徴とする請求項1から20のいずれか一に記載の方法。
【請求項22】
特に、請求項1から21のいずれか一に記載されるような、数値制御工作機械上で、レーザーによって少なくとも1つの加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付加するために、前記加工物表面を機械加工する方法に対する制御データの生成において使用されるトラックセグメントデータを生成する方法であって、
前記制御データは、各トラックラインに対して1つ以上のセグメントシーケンスを指定し、各セグメントシーケンスは、前記加工物表面の前記少なくとも一セクションに前記テクスチャパターンを付加するために前記レーザーが案内されるトラックセグメントを有し、セグメントシーケンスの前記トラックセグメントは、前記レーザーが前記スイッチオン状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する1つ以上のレーザートラックセグメントを有し、
前記方法は、
前記加工物表面の前記少なくとも一セクションに付加されるテクスチャパターンの画像を指定する画像データと、前記加工物表面の前記少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリを指定するモデルデータとを提供するステップと、
前記画像データおよび前記モデルデータに基づいてトラックセグメントデータを生成するステップと、を有し、
前記トラックセグメントデータは、それぞれ、前記テクスチャパターンに応じて、前記加工物表面のセクション上を走る複数のトラックラインに対して、各トラックラインに沿って複数の連続レーザートラックセグメントを指定し、
各トラックラインに対して、互いに実質的に同一線上にあるように配列される隣接レーザートラックセグメントの数が増やされ、特に最大数に増やされるならば、前記トラックセグメントデータは、前記画像データおよび前記モデルデータに基づいて生成され、
さらに、前記レーザートラックセグメント(12)、または各トラックライン(SP)の方向に対して実質的にラジアル方向における、前記レーザートラックセグメント(12)の3次元座標を修正することによって、対応するトラックライン(SP)の隣接するレーザートラックセグメント(12)の共線性を増やすステップをさらに有し、
前記実質的なラジアル方向は、レーザーの入射方向に対して実質的に略垂直に延在する面内にあり、および/または、実質的なラジアル方向は、前記レーザーの入射方向と略平行であり、
前記制御データの生成において、互いに実質的に同一線上に配列され且つ共通セグメントシーケンスへと統合され得るトラックラインの隣接レーザートラックセグメントの数は、増やされ、特に、最大数に増やされることを特徴とする方法。
【請求項23】
レーザーによって少なくとも1つの加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付加するために、前記加工物表面を機械加工するレーザー装置を備えた数値制御工作機械用の制御装置であって、
前記制御装置は、
1)前記工作機械上で請求項1から22のいずれか一に記載の方法実行、及び/又は、
2)請求項1から22のいずれか一に記載の方法において生成された制御データに基づい前記工作機械を制御
前記制御データは、各トラックラインに対して1つ以上のセグメントシーケンス(10)を指定し、各セグメントシーケンス(10)は、トラックセグメント(11、12、13;11、12、14、12、13)を有し、前記トラックセグメントに沿って、前記レーザーが案内されて、前記加工物表面の少なくとも一セクションに前記テクスチャパターンを付加し、
セグメントシーケンス(10)の前記トラックセグメントは、前記レーザーがスイッチオン状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する1つ以上のレーザートラックセグメント(12)を含
3)前記加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリを指定するために提供されたモデルデータと、前記加工物表面の少なくとも一セクションに付加されるテクスチャパターンの画像を指定するために提供された画像データとに基づいて、レーザートラックセグメントデータの生成であって、
前記トラックセグメントデータは、それぞれ、前記テクスチャパターンに応じて、前記加工物表面のセクションの上を走る複数のトラックライン(SP)に対し各トラックラインに沿って複数の連続レーザートラックセグメント(12)を指定し、
トラックラインに対し、互いに実質的に同一直線上になるように配置される隣接レーザートラックセグメント(12)の数が増やされ、特に最大数に増やされという条件に従って、前記トラックセグメントデータは、前記画像データおよびモデルデータに基づいて作成され
前記対応するトラックライン(SP)の隣接するレーザートラックセグメント(12)の共線性は、前記レーザートラックセグメント(12)または各トラックライン(SP)の方向に対して実質的なラジアル方向に、前記レーザートラックセグメント(12)の3次元座標を修正することによって増加され、
実質的なラジアル方向は、レーザーの入射方向に対して実質的に垂直な方向に延在する面内にあり、および/又は、
前記実質的なラジアル方向は、前記レーザーの入射方向に実質的に平行であり、
4)生成または提供されたレーザートラックセグメントデータに基づく制御データの生成を行うよう構成され、
前記制御データは、各セグメントシーケンス(10)が、少なくとも2つのレーザートラックセグメント(12)と、互いに実質的に同一直線上にあるように配列された2つの隣接するレーザートラックセグメント(12)の間に、前記レーザーが実質的に一定の加工設定速度でスイッチオフ状態で移動する移動セグメント(14)とを有するように生成されることを特徴とする制御装置。
【請求項24】
請求項23に記載の制御装置と、
前記制御装置によって3方向(X、Y、Z)に制御された方法で加工物表面上を案内されるレーザーを有するレーザー装置とを有し、前記レーザー装置のレーザーによって前記加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付加することを特徴とする工作機械。
【請求項25】
前記レーザー装置は、前記レーザービームのダイバージェンス角度が可変となるように設定することによって、前記レーザーのレーザービームの方向と実質的に同一直線状となる方向に前記レーザーを制御するダイバージェンス変化装置を有し、故に、前記レーザービームの焦点は、前記加工物表面に焦点を結ぶことができ、迅速に変更可能な焦点距離で機械加工される、ことを特徴とする請求項24に記載の工作機械。
【請求項26】
前記レーザーは、2m/s以上、特に4m/s以上、特に好ましくは10m/s以上の加工速度で、前記レーザーのレーザービームの方向に対して実質的に垂直な方向に移動可能であることを特徴とする請求項24または25に記載の工作機械。
【請求項27】
前記レーザーは、4m/s以上、特に好ましくは10m/s以上の加工速度で前記レーザーのレーザービームの方向に移動可能であることを特徴とする請求項26に記載の工作機械。
【請求項28】
前記レーザーは、前記レーザーのレーザービームの方向に対して実質的に垂直な方向に、前記レーザーの最大加工速度以上に実質的に大きな最大加工速度で、前記レーザーのレーザービームの方向に移動可能であることを特徴とする請求項27に記載の工作機械。
【請求項29】
前記レーザー装置のレーザーは、200kHz以上、特に400kHz以上、特に好ましくは800kHz以上のパルス周波数で動作するように構成されていることを特徴とする請求項24から28のいずれか一に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーによって工作物を機械加工する方法に関し、特に、レーザーによって少なくとも1つの加工物表面の少なくとも一セクションに、特に数値制御工作機械上でテクスチャパターンを付加するために、工作物表面を機械加工する方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、レーザーによって、特に数値制御された工作機械上で、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付加するために、少なくとも1つの加工物表面を機械加工するための方法のための制御データの生成に使用するトラックセグメントデータを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロメートル範囲の機械加工材料は、例えば、穿孔、エッチング、パターニング、または切削のような、最も広範囲の多種多様な作業を包含する。この場合、極めて高い精度および速度要件が、機械加工プロセスに、しばし課せられる。レーザー走査プロセス(例えば、レーザーテクスチャ加工などのレーザー加工を含む)は、この範囲の他の加工方法よりも普及している。それらは、フライス加工および研削のような従来の機械加工プロセスと比較して、かなり高い移動性能および精度を有する。複雑なパターンおよび構造(例えば、テクスチャ)も、このようなレーザー走査システムを使用して、かなり良好な品質で、かなり高速で、加工物内に生成することができる。機械加工可能な材料の範囲は、この場合、プラスチック及びあらゆる種類の金属からガラス及びセラミックまでの範囲である。
【0004】
レーザー装置又はレーザー走査システムによって加工物上に繊細な構造及びパターン(例えば、平坦なパターン又はテクスチャ)を生成することを可能にするために使用される1つの方法は、スカイライト法として知られている。この場合、レーザー加工は、制御データに基づいて制御される。制御データは、制御データの多数の個々のセグメントシーケンスに基づいて、加工物表面上のトラックに沿ってレーザーを案内する。
【0005】
ここで、制御データの各セグメントシーケンスは、セグメント又はトラックセグメント、スタートセグメント(スタート開始移動セグメント)、ブレーキセグメント(終了移動セグメント)を有する。セグメント又はトラックセグメントにおいて、レーザーはスイッチオンされ、このセグメント又はトラックセグメントの上を、レーザーは、スイッチオン状態において実質的に一定の加工速度で移動する(以下、加工セグメント又はレーザートラックセグメントと称す)。スタートセグメントでは、レーザーは、加工セグメント又はレーザートラックセグメントの前で加速されるが、ブレーキセグメントでは、レーザーは、加工セグメントの後、制動される。レーザーは、加速及び制動中にオフに切り換えられる。
【0006】
実際の機械加工中に、正確に、かつ一定の設定速度で、加工物上にレーザーを案内するため、様々なセグメントのシーケンスが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これは、不利益をもたらすことがある。非常に短い機械加工セグメントが互いに近接して位置する場合、ブレーキセグメントが別のスタートセグメントと重なることがある。よって、レーザーは、ブレーキセグメントを通過した後に、スタートセグメントでレーザーの加速が再び開始され得るようにするため、いったん戻される場合がある。その結果発生する、レーザーの「ピルグリムステップ」(この点に関しては、図1の上方の図を参照)は、機械加工時間の大幅な増加につながる。
【0008】
上記の説明およびスカイライティング法に基づいて、本発明の1つの目的は、レーザーによってパターンを付加するために加工物を加工する方法を提供することである。この方法によって、加工時間を大幅に短縮することができ、同時に生成されたパターンの品質を維持することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記の目的を達成するために、請求項1に記載の方法および請求項24に記載の別の方法が提案される。さらに、請求項25に記載の数値制御工作機械の上で使用される制御装置と、請求項26に記載の工作機械とが提案される。従属請求項は有利な実施例に関する。
【0010】
本発明の一態様によれば、提案されているのは、レーザーによって、特に数値制御工作機械上で、少なくとも1つの加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するために、加工物表面を機械加工する方法である。
【0011】
この方法は、加工物表面の少なくとも一セクションに付与されるテクスチャパターンの画像を指定する画像データと、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリを指定するモデルデータとを提供するステップと、及び/又は、画像データおよびモデルデータに基づいてトラックセグメントデータを生成するステップとを含む。トラックセグメントデータは、それぞれ、テクスチャパターンに応じて、加工物表面の一セクションの上を走る複数のトラックラインに対して、それぞれのトラックラインに沿って複数の連続レーザートラックセグメントを指定する。
【0012】
この方法は、さらに、生成されたトラックセグメントデータに基づいて制御データを生成するステップを含む。制御データは、各トラックラインに対して1つまたは複数のセグメントシーケンスを指定し、各セグメントシーケンスは、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するためにレーザーが案内されるトラックセグメントを有する。セグメントシーケンスのトラックセグメントは、レーザーがスイッチオン状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する1つまたは複数のレーザートラックセグメントを含む。方法は、さらに、制御データに基づいて加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するために、レーザーを制御するレーザー装置に、生成された制御データを出力するステップを含んでも良い。
【0013】
好ましくは、各トラックラインに対し、互いに実質的に同一直線上となるように配置される隣接するレーザートラックセグメントの数が、好ましくは増やされ、特に好ましくは最大数に増やされるという条件に従って、トラックセグメントデータが、好ましくは、画像データおよびモデルデータに基づいて特に有利には生成することができる。
【0014】
次に、制御データは、各セグメントシーケンスが、少なくとも2つのレーザートラックセグメントと、好ましくは互いに実質的に同一直線上に配列された2つの隣接するレーザートラックセグメントの間に、レーザーがスイッチオフ状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する移動セグメントと、を有するように有利に生成される。
【0015】
本発明は、トラックセグメントデータが、非常に小さい角度偏差公差(好ましくは3°未満、特に好ましくは1.5°未満)の場合に、トラックライン上の連続するレーザートラックセグメントができるだけ同一直線上に配列され、トラックラインのできるだけ多くの(80%を超える)レーザートラックセグメントが1つのセグメントシーケンスに統合され、新しいセグメントシーケンスを開始するために、隣接するレーザートラックセグメント間に加速またはブレーキセグメントをできるだけ挿入する必要がないように提供されるという概念に基づく。これによって、レーザートラックセグメントの間にある領域が、加工設定速度を制動する必要なしに、同じセグメントシーケンス内において中断することなく、有利に移動することができる。
【0016】
これは、全体的な加工時間を大幅に短縮することができるという効果をもたらす。その理由は、より多くのレーザートラックエレメントをカバーするより効果的なセグメントシーケンスが、中断および再整列なしにレーザーによって処理することができるからである。また、より均一な加工速度で移動することが可能であるので、より高い表面品質を達成することができる。
【0017】
本発明の一態様は、より多くのレーザートラックセグメントが、一物品の中で移動される共通のセグメントシーケンスへと統合されるように、制御データを生成することを可能にする。また、本発明の一態様では、制御データを生成するための実際のセグメントシーケンスが作成または選択される前であっても、レーザートラックセグメントの生成が開始される。これは、画像及びモデルデータに基づいて、各トラックラインに対し、レーザートラックセグメントを計算するときに、可能な限り同一直線上に位置するレーザートラックセグメントが、どの程度まで、既に連続的に配置されているか、又は連続的に配置されかを、既にチェックすることが可能であるという点で有利である。
【0018】
さらに、本発明者らは、セグメントシーケンスを含む制御データの生成に先立ち、決定されたレーザートラックセグメントの座標のさらなる平滑化および修正をも介して、レーザートラックセグメントの決定において、できるだけ早期の、例えば、平滑化、近似、精度の普通でない増加により、データおよび座標を数値的に準備することは、予想外に大きな効果を有することを発見した。この効果は、最適化された制御データが、一緒に移動することができる複数のレーザートラックセグメントを含むセグメントシーケンスを含むように生成され、機械加工時間を大幅に短縮することができるということである。これは、特に、純粋に平坦な表面からの変位を有する表面形状、例えば、自由形状表面を有する加工物へのテクスチャパターンの付与に関係する。
【0019】
特に好都合な構成によれば、各トラックラインに対しトラックセグメントデータを生成するステップは、特に好ましくはレーザートラックセグメントの3次元座標を、例えばレーザートラックセグメントまたは各トラックラインの方向に対して実質的にラジアル方向に変更することによって、対応するトラックラインの隣接するレーザートラックセグメントの共線性を増大させるステップをさらに含む。「ラジアル方向」は、本発明において、各座標点において、トラックライン、対応するレーザートラックセグメント、またはレーザートラックセグメントを通って延びる補間直線に対して、実質的にラジアル方向に(すなわち、実質的に垂直方向に)延びる方向を意味すると理解される。最も単純な場合には、これは、実質的な直線上への投影(例えば、トラックラインのレーザートラックセグメントのいくつか又は全てを通る補間直線)に基づいて実行されてもよい。
【0020】
これは、画像及びモデルデータに基づいてレーザートラックセグメントが作成/決定された後であっても、レーザートラックセグメントの決定された座標は、追加的に、好ましくは横方向(即ち、レーザートラックセグメントの方向に対して横方向又は垂直方向)に変更させることができ、トラックラインのレーザートラックセグメントの共線性を更に増加させ、更に最適化されたセグメントシーケンスを可能にするという利点を有する。
【0021】
レーザートラックセグメントの3次元座標の実質的なラジアル方向における修正は、好ましくは、レーザートラックセグメントの1つ以上の点の座標を、レーザートラックセグメントまたはそれぞれのトラックラインの方向に対して実質的なラジアル方向へとシフトすることによって実行される。
【0022】
これは、画像及びモデルデータに基づいてレーザートラックセグメントが生成/決定された後であっても、レーザートラックセグメントの決定された座標が、特に横方向(即ち、レーザートラックセグメントの方向に対して横方向又は垂直方向)に効率的に修正されて、トラックラインのレーザートラックセグメントの共線性を更に増加させると共に、より最適化されたセグメントシーケンスを可能にするという利点を有する。
【0023】
レーザートラックセグメントの3次元座標に対するトラックラインの隣接するレーザートラックセグメントの共線性を増加させるステップにおいて、実質的にラジアルの座標シフトは、好ましくは、最大座標シフト限界値まで実行される。
【0024】
これは、座標シフトを許容限界値の範囲においてのみ実行することができ、付与されるべきテクスチャパターンの必要な又は所望の画質が得られる、という利点を有する。
【0025】
モデルデータの3次元座標系における第1の座標軸は、好ましくは、機械加工中にレーザー入射方向に実質的に平行に配列され、モデルデータの3次元座標系における他の2つの座標軸の面は、好ましくは、機械加工中にレーザー入射方向と実質的に垂直に配列される。
【0026】
第1の座標軸の方向への座標シフトの座標シフト限界値は、好ましくは、他の2つの座標軸の面内にある方向への座標シフトの座標シフト限界値よりも大きい。
【0027】
これは、テクスチャパターンの画質に著しい影響を与えないレーザー方向における方向に対する座標変更は、レーザー入射方向に垂直な方向よりも高くなることが証明されて、レーザートラックセグメントの共線性を増加させるという利点を有する。
【0028】
隣接するトラックライン間の距離は、好ましくは、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの実質的に幅以下であり、特に、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の半分以上である。
【0029】
座標シフト限界値は、特に、他の2つの座標軸の面内にある方向(レーザー入射方向に実質的に垂直な方向)に対する座標シフトに対しては、好ましくは、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の5%以下、特に、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の1%以下である。
【0030】
第1の座標軸の方向における座標シフトの座標シフト限界値は、好ましくは、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の10%以上、特に35%以上である。さらに/または、第1の座標軸の方向における座標シフトの座標シフト限界値は、レーザーの焦点位置の公差幅の50%以上、特にレーザーの焦点位置の公差幅の75%以上である。
【0031】
レーザートラックセグメントの3次元座標の修正は、好ましくは、レーザー入射方向に実質的に垂直な平面内に含まれる実質的なラジアル方向において実行される。さらに/または、レーザートラックセグメントの3次元座標の修正は、好ましくは、レーザー入射方向に実質的に平行な実質的なラジアル方向において実行される。
【0032】
1つの特に好都合な構成によれば、モデルデータは、さらに、画像データの第1の座標系の2次元座標を、モデルデータの表面形状の上の第2の座標系の3次元座標へと座標マッピングすることを指定する。代替として、または追加として、モデルデータは、さらに、画像データの第1の座標系の2次元座標を、表面形状の上を走る表面座標(例えばUV座標)の第3の座標系の2次元座標へと座標マッピングすることを指定する。
【0033】
モデルデータは、2次元座標空間の3次元座標空間へのマッピングを記述する追加の2次元座標によって、表面の上で指定することができる。これらは、例えば、UV座標であってもよい。
【0034】
画像データおよびモデルデータに基づくトラックセグメントデータの生成は、好ましくは、加工物表面の少なくとも一セクションに対応するセクションに、複数の平行に走るトラックラインでハッチングするステップと、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形成の3次元ジオメトリ上にトラックラインまたはトラックセグメントを投影するステップと、および/または、トラックラインがテクスチャパターンの画像の対応するセクション内のテクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントを決定するステップとを含む。
【0035】
これは、線条に延びるトラックラインが、画像データの2次元空間から3次元座標を有するモデルデータの空間へと、モデルデータに従って加工物の表面形状の上に、容易かつ効率的に投影されることができ、不均一な点または自由形状表面上であっても、レーザートラックセグメントを3次元加工物上に正確かつ確実に決定することができるという利点を有する。
【0036】
この場合、好ましくは、画像データおよびモデルデータに基づいたトラックセグメントデータの生成は、例えば、テクスチャパターンの画像の、加工物表面の少なくとも一セクションに相当するセクションを、複数の平行に延びるトラックラインで、ハッチングするステップと、トラックラインがテクスチャパターンの画像の対応するセクション内のテクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントを決定するステップと、および/または、モデルデータの座標マッピングに基づいて、画像データの第1の座標系からの各トラックラインセグメントの2次元座標を、モデルデータの表面形態上の3次元座標へとマッピングすることによって、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形態の3次元ジオメトリ上に決定されたトラックラインセグメントを投影するステップとを含み、第1の座標系内の各トラックラインセグメントに対して、対応するレーザートラックセグメントの3次元座標が、第2の座標系内で決定されるようになっている。
【0037】
いくつかの例示的な実施形態では、平行に延びる直線トラックラインが、例えば、テクスチャパターンの画素画像の画像データの2D座標空間に配置され、画像データの2D座標空間からのテクスチャパターンとの重なりの決定と同じくらい早く、またはそれと同時に、3Dモデルデータの表面形状の上に投影され、または、テクスチャパターンに対応する画像データの2D空間で既に決定されたトラックセグメントが投影される、と仮定しても良い。
【0038】
この場合、例えば、複数の平行に走るトラックラインを、画像データの第1の座標系に配置しても良く、トラックラインがテクスチャパターンの画像の対応するセクションにおいてテクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントを決定するステップは、画像データの第1の座標系において実行してもよい。
【0039】
トラックラインまたはトラックラインのセグメントを投影するステップにおいて、決定されたトラックラインセグメントは、好ましくは、特に、例えば、画像データの第1の座標系からの各決定されたトラックラインセグメントの2次元座標を、モデルデータの座標マッピングに基づいて、モデルデータの表面形状の上の3次元座標へとマッピングすることによって、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリ上に投影されても良く、好ましくは、第1の座標系における各トラックラインセグメントに対して、対応するレーザートラックセグメントの3次元座標が、第2の座標系において決定される。
【0040】
他の好都合な例示的実施形態では、所定の平面内において、画像データの3D座標空間内において平行に延びる直線トラックラインを配置することも可能である。この所定の平面は、例えば、レーザー入射方向と実質的に垂直になるように位置合わせされた平面(例えば図8のX−Y面)でも良い。次に、トラックラインの全てを、1つの方向(例えば、この面に垂直な方向)における3Dモデルデータの表面形状の上に投影しても良い。さらに、2次元表面座標(例えば、UV座標)は、3Dモデルデータの表面形状の上において投影されたトラックラインの各々に対して読み取られても良い。このために、表面座標画素値または補間された画素値が、画像データまたは画素画像から読み取られてもよい。読み取られた画素値または補間された画素値に基づいて、対応するレーザートラックセグメントまたはレーザートラックセグメント座標が、投影されたトラックライン上で読み取られても良い。
【0041】
この場合、モデルデータの第2の座標系において平行に延びる複数のトラックラインは、レーザー入射方向に対して特に実質的に垂直な方向に配置されたトラックライン面内に配置されてもよい。
【0042】
トラックラインまたはトラックラインのセグメントを投影するステップにおいて、モデルデータの第2の座標系におけるトラックラインは、次に、トラックライン面から、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリの上に、特にトラックライン面と実質的に垂直な投影方向に投影されてもよい。
【0043】
トラックラインがテクスチャパターンの画像の対応するセクション内のテクスチャパターンと重なるトラックラインセグメントを決定するステップにおいて、投影されたトラックラインの座標に対する座標マッピングによって、画像データの座標空間内の対応する座標での、テクスチャパターンを指定する画像データの画像値、特に画素値を決定することが可能である。そして、トラックラインセグメントは、好ましくは、モデルデータの座標空間内において、決定された画像値(例えば、画素地、好ましくは、サブピクセル補間後の画素値)に基づいて決定されてもよい。
【0044】
画像データは、好ましくは、その機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の10%以上、特にその機械加工中の加工物表面上のレーザーの幅の25%以上となる画素幅を有するテクスチャパターンの画素画像(ラスターグラフィックス)を指定する。
【0045】
これは、画像データに対するデータ量(例えば、ファイルサイズ)を限界内に保つことができ、過剰に変化されたデータ量が大きな表面に対して生じないという利点を有する。
【0046】
サブピクセル補間は、好ましくは、トラックラインセグメントの決定中に、または画像値または画素値の決定中に実行される。このトラックラインセグメントでは、トラックラインが、テクスチャパターンの画素画像の対応するセクション内のテクスチャパターンと重なる。
【0047】
これは、画像データに対する効率的なデータ量(例えば、比較的小さいファイルサイズ)にもかかわらず、横方向の画素丸め誤差を、モデルデータの空間へのトラックラインの投影において回避することができるという利点を有する。
【0048】
ここで、画素画像内のトラックラインの座標を決定するためのこのようなサブピクセル補間が、極めて予想外にも効果を提供することが指摘される。画素サイズは、一般に、機械加工におけるレーザーの幅とほぼ同じであるか、又は幾分小さい。故に、付与されるテクスチャパターンの画質を保証するために、このようなサブ画素補間は、必要でもなく、有利でもない。
【0049】
しかしながら、本発明者らは、サブピクセル補間を伴わない可能性のある画素丸め誤差は、注目すべき空間解像度の問題を全く伴わないが、かろうじて見ることができ、また注目すべきサイズを全く有しない(そのようなセクションの長さは画素幅よりも短い)極端に短いレーザートラックセグメントセクションの発生につながる可能性があることを見出した。しかし、係る誤差は、レーザートラックセグメント上でのかなりの角度偏差につながる可能性があり、その結果、セクションがセグメントシーケンスで移動することができない場合には、問題が予期せず可能性があり、その結果、機械加工時間が、容易には明らかでない理由により、不必要に、且つ不都合に延長されることになる。
【0050】
これは、特に好ましくは、より大量のデータを有するさらに解像度の高い画像ファイルを提供する必要なしに、トラックラインに対して横方向へのサブピクセル補間によって改良することができる。したがって、加工時間は、トラックセグメントデータの生成をさらに最適化することによって、さらに短縮することができる。
【0051】
対応するトラックラインの方向に対して横方向または垂直方向に延びる横方向における座標補間は、好ましくは、サブピクセル補間において実行される。
【0052】
モデルデータにおいて指定された3次元ジオメトリは、好ましくは、複数の多角形表面を有する。特に、モデルデータにおいて指定された3次元ジオメトリ上への直線トラックラインの投影は、互いに傾斜した隣接する多角形表面の間の1つまたは複数の遷移に起因して、トラックセグメントデータの生成において実行され、コーナーを有するトラックライン上への直線トラックラインのマッピングにつながる。
【0053】
これは、例えば、三角形の多角形表面および/またはn辺の多角形表面(ここで、n>3)を有するジオメトリであっても良い。2次元座標空間の3次元座標空間へのマッピングを記載する追加の2次元座標も、この場合、表面上に既に提供されてもよい。これらは、例えば、UV座標であってもよい。
【0054】
数値平滑化は、好ましくは、トラックセグメントデータの生成においてモデルデータにおいて指定された3次元ジオメトリ上に直線トラックラインを投影することによって決定されたトラックラインに対して実行される。対応するトラックライン上にあるレーザートラックセグメントの座標は、好ましくは、数値的に平滑化されたトラックラインに基づいて決定される。
【0055】
これは、多角形表面遷移に起因して生じ得る、トラックライン、トラックラインセグメント、または、レーザートラックセグメントにおけるコーナーが、数値的に平滑化され得、その結果として、決定されたレーザートラックセグメントの共線性が、トラックセグメントデータの生成においてさらに増加されるという利点を有する。
【0056】
数値平滑化は、好ましくは、3次元空間で実行される第1の平滑化プロシージャを有し、この中で、対応するトラックラインのコーナーは、好ましくは平滑化され、故に、平滑化されたトラックラインが、以前に存在したコーナーの位置で丸められたプロファイルを有する。
【0057】
これは、多角形表面遷移に起因して生じ得る、トラックライン、トラックラインセグメント、または、レーザートラックセグメントのコーナーが数値的に平滑化され得、その結果として、決定されたレーザートラックセグメントの共線性が、トラックセグメントデータの生成において、さらに増加されるという利点を有する。
【0058】
数値平滑化は、好ましくは、レーザー入射方向で実行される第2の平滑化プロシージャを有し、このプロシージャにおいて、第1の平滑化プロシージャによって平滑化されたトラックラインは、レーザー入射方向と平行に整列された方向において平滑化される。その結果、好ましくは、さらなる平滑化されたトラックラインが、レーザー入射方向に対して垂直に配置された平面上において平滑化されていないトラックラインに対してより平坦に延びる。
【0059】
これは、多角形表面遷移に起因して生じ得る、トラックライン、トラックラインセグメント又はレーザートラックセグメントのコーナーが、更に数値的に平滑化さる。その結果、決定されたレーザートラックセグメントの共線性は、トラックセグメントデータの生成において、更に増加されるという利点を有する。ここでは、レーザー入射方向における位置精度は、著しく低減され(かなり減らされた加工時間に有利に)、位置偏差は実際の表面位置から逸脱することが考慮される。しかしながら、これは、位置がレーザー入射方向に対して正確に垂直に位置決めされたままであり、レーザー入射方向におけるいかなるシフトも達成可能な画像品質にほとんど影響しないので、比較的大きな不利な影響なしに、許容される。
【0060】
しかしながら、距離方向(レーザー入射方向)では、レーザープロセスは、ビーム焦面及びレイリー長のために、横方向よりもかなり高い偏差(焦点距離及びビーム品質に応じて、10分の数mmまで)を許容する。その結果、この方向における座標を滑らかにすること、または、横方向に可能であるよりもかなり大きな範囲で、滑らかにすることによって座標を歪ませることが可能である。過剰な平滑化は、表面に対する焦点位置の小さな偏差につながる。これは、許容範囲内では見えなくなるが、シーケンスから大量の粗さを除去する。したがって、3次元で見ると、曲線は実質的に同一直線上に現れ、出力は、数に関して、より長いセグメントシーケンスをより長い時間節約と共に生成することができる。
【0061】
画像データは、好ましくは、テクスチャパターンの画素画像を指定し、画素画像の各画素には、好ましくは、テクスチャパターンの対応する位置で、工具表面に付与されるテクスチャパターンの所定の深さを指定する画素値が割り当てられる。
【0062】
これは、各深さ層に対し個別の画像データを供給する必要なしに、異なる深さに刻むために、画素画像を複数の機械加工ステップに対し、容易かつ効率的に使用することができるという利点を有する。
【0063】
個々のトラックセグメントデータは、好ましくは、画素画像の画素値に基づいて、テクスチャパターンの異なる深さレベルに対して生成され、好ましくは、テクスチャパターンは、それぞれのトラックセグメントデータに基づいて生成された制御データに基づいて、連続する機械加工プロシージャにおいて異なる深さレベルに切り出される。
【0064】
1つの特に好都合な構成によれば、本方法の数値計算では、トラックセグメントデータの生成において、特に座標マッピングの基礎となる2次元および/または3次元座標を含む、画像および/またはモデルデータの座標は、好ましくは、モデルデータの多角形サイズの、または画像データの画素幅の、隣接するトラックライン間の距離の、加工物表面上のレーザーの幅の少なくとも1/1000の解像度精度、特に好ましくは、上記変数の1つの少なくとも1/10000の精度を有する空間解像度で読み取られる。1つの特に好都合な構成によれば、本方法の数値計算では、トラックセグメントデータの生成において、特に座標マッピングの基礎となる2次元および/または3次元座標を含む画像および/またはモデルデータの座標は、好ましくは、少なくとも10nmの解像度精度、特に実質的に1nmの解像度精度を有する空間解像度で読み取られる。
【0065】
これは、機械加工におけるレーザーの幅及び所望の画像解像度に関する精度が、予期せず且つ普通でないような正確になるように選択されるが、数値計算における丸め誤差を回避することができという利点を有する。この計算は、画像空間解像度において役割を果たさないが、小さなレーザートラックセグメントの方向偏差に関して、驚くほど大きな角度偏差または共線偏差を引き起こす。したがって、レーザートラックセグメントの共線性は、特に驚くべき方法で増大させることができ、機械加工時間を大幅に短縮することができる。その理由は、より多くのレーザートラックセグメントを、共通のセグメントシーケンスに統合することができるためである。
【0066】
1つの特に好都合な構成によれば、各セグメントシーケンスは、レーザーが機械加工設定速度まで加速するようにスイッチオフ状態で移動する開始移動セグメント(スタートセグメント)と、レーザーが機械加工設定速度から制動するようにスイッチオフ状態で移動する終了移動セグメント(ブレーキセグメント)とを含む。共線性が存在する場合、セグメントシーケンスは、複数の連続したレーザートラックセグメントを含み、各レーザートラックセグメントは、レーザーのスイッチが切られたときに実質的に一定の速度で「中断なしに」移動することができる移動セグメントによって分離される。これにより、加工時間を大幅に短縮することができる。
【0067】
本発明のさらなる態様によれば、提案されるものは、上記態様のうちの1つにより、特に数値制御された工作機械の上で、レーザーによって加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するために、少なくとも1つの加工物表面を機械加工するための方法のための制御データの生成において使用するためのトラックセグメントデータを生成する方法である。
【0068】
制御データは、好ましくは、各トラックラインについて1つ以上のセグメントシーケンスを指定する。各セグメントシーケンスは、トラックセグメントを有する。トラックセグメントに沿って、レーザーが、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するために案内される。また、セグメントシーケンスのトラックセグメントは、レーザーがスイッチオン状態で実質的に一定の加工設定点速度で移動する1つ以上のレーザートラックセグメントを含む。
【0069】
本方法は、好ましくは、加工物表面の少なくとも一セクションに付与されるテクスチャパターンの画像を指定する画像データと、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリを指定するモデルデータとを提供するステップと、画像データおよびモデルデータに基づいてトラックセグメントデータを生成するステップとを含む。トラックセグメントデータは、それぞれ、テクスチャパターンに応じて、加工物表面のセクション上を走る複数のトラックラインに対して、それぞれのトラックラインに沿って複数の連続したレーザートラックセグメントを指定する。
【0070】
各トラックラインに対して、互いに実質的に同一直線上に配置される隣接するレーザートラックセグメントの数が増やされ、さらに、特に最大に増やされるという条件に従うならば、トラックセグメントデータは、画像データおよびモデルデータに基づいて生成される。好ましくは、制御データの生成において、互いに実質的に同一直線上に配置されて、共通セグメントシーケンスに統合されるトラックラインの隣接するレーザートラックセグメントの数は増加され、特に最大に増やされる。
【0071】
要約すると、レーザーによってパターンを付与するために加工物を機械加工する方法を提供するために、態様および好ましい構成が提案される。この方法によって、加工物の機械加工、特にパターンの付与中の機械加工時間を大幅に低減することができ、同時に、生成されたパターンの品質を維持することができる。
【0072】
これらの提案された方法を可能な限り最良に利用できるようにするために、工作機械上で使用するためのレーザー装置、またはそのようなレーザー装置を有する工作機械が、上述の方法態様に従って加工物を機械加工するために使用されるならば、レーザーが非常に高いパルス周波数を有するため、特に有利である。これは、平均してより長い機械加工セグメント(特に「ピルグリムステップなし」)の上を移動するときに、より高い達成可能な機械加工速度が、過度に遅い最大達成可能パルス周波数のために、スイッチオンのレーザーによって移動されるレーザートラックセグメントのライン品質に悪影響を及ぼすことなく、使用できるという利点を有する。
【0073】
この目的のために、100kHzから1MHzまでの範囲のパルス周波数が適用されることが好ましく、その結果、共線性となるように配置された加工セグメント(レーザートラックセグメント)と、それによって最適化された(各が平均してより長い)セグメントシーケンスとによって、より速い加工設定速度の速度利点を、実際に加工物表面により広範囲に亘って伝達することができる。セグメントシーケンスの各々は、「ピルグリムステップなしに」多くのレーザートラックセグメントにわたってより速い加工設定速度で移動することができる。これにより、機械加工時間がさらに短縮され、またはより大幅に短縮される。
【0074】
一例として、高い機械加工品質を保証するために、50%以上、好ましくは75%以上のレーザーパルスのオーバーラップが達成されることが好ましい。この目的のために、例えば、加工物表面上での機械加工中のレーザーの所定の直径(幅)の場合、パルス周波数および最大加工速度(すなわち、レーザーがレーザートラックセグメントまたは離散した移動セグメント上を移動する最大速度)は、好ましくは、最大加工速度のレーザーパルス周波数に対する比が、例えば、少なくとも50%以上のレーザーパルスのオーバーラップを達成するためには、レーザーの直径(幅)の半分以下となり、例えば、少なくとも75%以上のレーザーパルスのオーバーラップを達成するためには、レーザーの直径(幅)の3/4以下となるように選択される。この場合、比は決定的であるので、パルス周波数が増えると、最大加工速度も同時に増える。
【0075】
好ましくは、レーザーが既に非常に高いパルス周波数を有する工作機械の、さらに、特に有利な構成は、追加のダイバージェンス変更装置を有するこの工作機械の、レーザーを含むレーザー装置の拡張を備える。このようなダイバージェンス変更装置は、例えばDE 10 2012 111 098 B4で知られている。
【0076】
レーザースキャナシステムは、通常、X,Y平面(すなわち、レーザー入射方向またはレーザービーム方向に実質的に垂直な平面)において非常に迅速に(5m/s〜10m/sまたはそれ以上の範囲で)設定される必要がある軸を有し、その結果、平坦な表面は、高速レーザー設定速度によってレーザー入射方向に実質的に垂直なレーザー走査システムによって非常に迅速に機械加工することができる。
【0077】
しかしながら、平坦な面の代わりに、3D空間における自由形状表面が機械加工されるべきであるが、このとき、システムはより遅い速度で制御されることになってしまう。なぜなら、Z方向(即ち、実質的にレーザー入射方向)における設定のための機械的に駆動可能な軸は通常1つしか利用できず、その結果、高い機械加工速度が、3D空間において最適な方法で達成されることができないからである。この点において、Z方向において著しく高速の設定速度を可能にするダイバージェンス変更装置の有利な特性に頼ることが可能である。その結果、3つの直線並進自由度X、Y、及びZの全てを含む3D空間において、特に自由形状表面上の3D空間にあるトラックラインに沿って、著しく高速の加工速度を達成することが可能である。
【0078】
ダイバージェンス変更装置は、例えば、レーザービームの焦点が、高速で変更可能な焦点距離で加工される加工物上に集束されるように、レーザービームのダイバージェンス角度を可変に設定することができる。加工物表面の構造に起因して、レーザー源と加工物との間の距離が異なる場合があるので、レーザービームから加工物への効率的かつ正確なエネルギー伝達を達成するために、非常に短時間でレーザービームを集束させることが必要である。
【0079】
ダイバージェンス変更装置は、その光学活性素子がテレセントリックに配置されていることが好ましく、この場合、反射システム(例えば、パラボリック反射器)またはテレセントリック回折システム(例えば、レンズ系)を有しても良い。ビーム偏向装置(例えば、回転ミラー)は、ダイバージェンス変更装置内のレーザービームを、対応する光学活性素子上に偏向し、したがって、レーザービームの進路およびそのバンドリング/フォーカシングに影響を及ぼすことができる。
【0080】
非常に高いパルス周波数を有するレーザーおよびダイバージェンス変更装置による工作機械の有利な発展によって、できるだけ同一直線上になるように配置されている加工セグメントに起因する速度の効果を、3次元空間内の加工物表面(例えば3D自由形状表面)に同様に伝達することが可能である。その結果、加工物表面の機械加工をさらに最適化することができ、それによって、さらに相当量の機械加工時間の短縮を達成することができる。これは、比較的高いパルス周波数、特に好ましくは100kHz以上、特に好ましくは400kHz以上、またはより最適には800kHz以上1MHz以下を可能にするレーザーと組み合わせる場合に特に好都合である。
【0081】
さらに、提案されるものは、少なくとも1つの加工物表面を機械加工するためのレーザー装置を備える数値制御工作機械において使用される制御装置である。これによって、レーザー装置のレーザーによって、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンが付与される。
【0082】
制御装置は、好ましくは、工作機械の先行する請求項の1つに記載の方法を実行するように構成される。
【0083】
制御装置は、好ましくは、先行する請求項の1つに記載の方法で生成された制御データに基づいて工作機械を制御するように構成されている。制御データは、各トラックラインについて1つ以上のセグメントシーケンスを指定する。各セグメントシーケンスは、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付与するためにレーザーが案内されるトラックセグメントを有する。セグメントシーケンスのトラックセグメントは、レーザーがスイッチオン状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する1つ以上のレーザートラックセグメントを含む。
【0084】
制御装置は、好ましくは、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリを指定する提供されたモデルデータと、加工物表面の少なくとも一セクションに付与されるテクスチャパターンの画像を指定する提供された画像データとに基づいて、レーザートラックセグメントデータを生成するように構成されている。トラックセグメントデータは、それぞれ、テクスチャパターンに応じて、加工物表面のセクション上を走る複数のトラックラインに対して、それぞれのトラックラインに沿った複数の連続するレーザートラックセグメントを指定する。各トラックラインに対して、互いに実質的に同一直線上にあるように配置される隣接するレーザートラックセグメントの数が増加され、特に最大にまで増やされるという条件に従って、トラックセグメントデータは、画像データおよびモデルデータに基づいて作成される。
【0085】
制御装置は、好ましくは、生成または提供されたレーザートラックセグメントデータに基づいて制御データを生成するように構成されている。
【0086】
制御データは、好ましくは、各セグメントシーケンスが、少なくとも2つのレーザートラックセグメントを有し、互いに実質的に同一直線上にあるように位置合わせされた2つの隣接するレーザートラックセグメント間に、各々がレーザーがスイッチオフ状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する移動セグメントを有するように生成される。
【0087】
さらに提案されることは、上述の制御装置を有する工作機械、および/または、特に、工作機械の制御装置によって(例えば、上述の制御装置によって)レーザーが3つの方向に制御された態様で加工物表面上を案内されるレーザー装置が提案される。これにより、特に、レーザー装置のレーザーによって加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンが付与される。
【0088】
レーザーは、好ましくは、2m/s以上、特に4m/s以上、特に好ましくは10m/s以上の加工速度で、レーザーのレーザービームの方向に対して実質的に垂直な方向に移動することができる。
【0089】
レーザー装置は、好ましくは、レーザーのレーザービームの方向に実質的に整列された方向にレーザーを制御するために、ダイバージェンス変更装置を有する。
【0090】
レーザーは、好ましくは、4m/s以上、特に好ましくは10m/s以上の加工速度でレーザーのレーザービームの方向に移動される。
【0091】
レーザーは、好ましくは、レーザーのレーザービームの方向に対して実質的に垂直な方向に、レーザーの最大加工速度と実質的に等しいかまたはそれより大きい最大加工速度で、レーザーのレーザービームの方向に移動される。
【0092】
レーザー装置のレーザーは、好ましくは、200kHz以上、特に400kHz以上、特に好ましくは800kHz以上のパルス周波数で動作するように構成される。
【0093】
さらに提案されることは、コンピュータ上で実行されたときに、上記態様のステップ、特にトラックセグメントデータを生成するステップおよび/または制御データを生成するステップを含む方法を実行するようにコンピュータを構成するインストラクションを有するコンピュータプログラムを含むコンピュータデバイスまたはコンピュータプログラムプロダクトである。
【0094】
そのさらなる態様および利点、ならびに上記の態様および特徴の利点および特別な構成の可能性は、添付の図面に関して、以下の記載および説明において説明されるが、決して限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1A】一例として、「ピルグリムステップ」の問題を説明するために、各レーザートラックセグメントを有する複数の機械加工シーケンスのセグメントを概略的に示す。
図1B】一例として、2つの隣接する同一直線上のレーザートラックセグメントを有する機械加工シーケンスを示す。
図2A】一例として、本発明による方法の1つの例示的な実施形態のフローチャートを示す。
図2B】一例として、1つの例示的な構成によるトラックセグメントデータの生成を示す。
図3】一例として、画素画像の画像データに基づく個々の画素間の接続線のプロファイルを示す。
図4】一例として、画素画像の画像データに基づいてレーザートラックセグメントの位置決めを決定するためのサブピクセル補間を示す。
図5A】一例として、3次元加工物の3Dポリゴンモデルデータに従って、画像データの2D空間から表面上にマッピングされたトラックラインを示す。
図5B】一例として、ポリゴンモデルデータに従って表面上への投影によって生じる、投影されたトラックラインの表面に対する断面におけるプロファイルを示す。
図6A】一例として、低空間解像度を有し、且つ補間がないレーザートラックセグメントの方向ベクトルの角度方向を示す。
図6B】一例として、高空間解像度および補間を有するレーザートラックセグメントの方向ベクトルの角度方向を示す。
図7】一例として、トラックセグメントデータのレーザートラックセグメントの共線性を増やすための、レーザートラックセグメントの座標の座標修正を示す。
図8】投影後、コーナーの平滑化後、および、レーザー入射方向Zの方向におけるトラックラインの曲線の平滑化後の投影されたトラックラインのプロファイルを示す。
図9】一例として、画像データのテクスチャパターンに従って決定された各レーザートラックセグメントを有し、互いに平行に伸びる複数のトラックラインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、決して以下に記載される例示的な実施形態およびその実施形態の特徴に限定されるものではないことを強調する。むしろ、例示的な実施形態の変更例、特に、独立請求項の保護範囲の内容内で記載される実施形態の特徴を変更することによって構成される変更例も含む。さらに、それぞれの図の説明において引用されたすべての参照符号は、すべての図に存在するわけではないことを指摘する。そのような場合には、図の以前の説明を参照されたい。
【0097】
図1Aは、一例として、複数の機械加工セグメント12を有する機械加工シーケンス10を示す。これに基づいて、レーザーが、加工物表面を機械加工することが意図される。レーザーは、例えば、100kHz以上の達成可能なパルス周波数を有する、特に500kHz以上または1MHz以上の達成可能なパルス周波数を有するパルスレーザーである。
【0098】
スカイライト法を適用する場合、さらに、機械加工セグメント12(レーザートラックセグメント)が過度に近接して位置する場合、スタートおよびブレーキセグメント11(始動走行セグメント)および13(終端走行セグメント)は重なり合う。スカイライト法により、レーザーは、ブレーキセグメント13を最後まで進み、リセットし、次に、図1Aの下方に示すように、スタートセグメント11で再び開始する。
【0099】
結果として生じるレーザーの「ピルグリムステップ」は、対応し且つ互いに非常に近接して位置する短い機械加工セグメント12による非常に繊細なテクスチャの場合に、機械加工時間の極端な増加につながる可能性がある。
【0100】
これを回避するために、トラックセグメントデータは、連続するレーザートラックセグメント12が実質的に同一直線上にあるように特定され、これらが共通の機械加工シーケンス10(セグメントシーケンス)に統合されるように生成される。
【0101】
図1Bは、一例として、共通トラックラインの2つの隣接する共線レーザートラックセグメント12を有する機械加工シーケンス10を示す。レーザートラックセグメントは、それぞれ、点BおよびDの開始座標と、点CおよびEの終了座標とを有する。これらは、一の直線の上に実質的に同一直線上にあるように配置する。この場合、角度偏差は、好ましくは3°未満、特に好ましくは1.5°未満であるべきである。
【0102】
開始移動セグメント11(スタートセグメント)は、加工設定速度が遅くとも点Bで到達するように、点Aと点Bとの間に配置される。開始移動セグメント11の上を、レーザーは、加速された速度でスイッチオフ状態で移動する。レーザーは、レーザーが点Bと点Cとの間で実質的に一定の加工速度で第1レーザートラックセグメント12の上を移動するように、点Bでスイッチオンに切り換えられる。そして、レーザーは、点Cでオフに切り換えられる。
【0103】
移動セグメント14は、点Cと点Dとの間に配置される。移動セグメント14の上を、レーザーがスイッチオフされたときに、レーザーは、実質的に一定の加工速度で「中断なしに」(すなわち、実質的に制動または加速なしに)移動する。レーザーは、点Dと点Eとの間で実質的に一定の加工速度で第2レーザートラックセグメント12上を移動するように、レーザーは、点Dでスイッチオンされ、点Eでスイッチオフされる。
【0104】
次に、レーザーは、オフに切り替えられると、点Eと点Fとの間の終端走行セグメント13(ブレーキセグメント)において、再びブレーキをかける。このように、各ケースにおいてセグメントシーケンス内の1つのレーザートラックセグメントのみが加工されるスカイライト法とは異なり、2つ以上のレーザートラックセグメント12を、共通のセグメントシーケンスに一体化することができる。また、2つ以上のレーザートラックセグメント12は、点在するブレーキおよび新たな加速の無い状態で走行され、その結果、機械加工時間の大幅な短縮が可能になる。
【0105】
この場合の目標は、これらの座標を指定するトラックセグメントデータの生成中に、できるだけ同一線上になるように、レーザートラックセグメントの座標を配置すること、または、セグメントシーケンスの全てを指定する制御データがトラックセグメントデータに基づいて生成される前に、複数のレーザートラックセグメントを有するセグメントシーケンスができるだけ多数提供され、又は、1つのセグメントシーケンスにできるだけ多数のレーザートラックセグメントが統合されて提供されるように、実質的に同一線上のレーザートラックセグメントの数を増加させることである。
【0106】
まず、一例として、ラスターグラフィックスまたは画素画像に基づく2D画像データ、および、一方では加工される加工物の表面形状、他方ではレーザーによって付加されるテクスチャについての仕様を含む3Dモデルデータが提供される。画像データ、特に付加されるテクスチャに関するデータは、好ましくは、ビットマップファイルまたは別のタイプのラスターグラフィックスによって提供される。モデルデータの対応する加工物の幾何学的情報は、例えば、後のステップで使用されるOBJファイルまたは他の3Dモデルデータフォーマットによって提供されてもよい。
【0107】
画像およびモデルデータの提供後、画像およびモデルデータは、数値的に準備され、トラックセグメントまたはレーザートラックセグメントは、画像データのテクスチャおよびモデルデータの表面形態に基づいて決定される。そのセグメントにわたって、レーザーは、加工物表面にテクスチャを付加するために、スイッチオン状態で移動する必要がある。その目的は、ラスターグラフィックスの中にキャプチャされた画素を準備することであり、それに沿って、レーザーは、加工物の表面を加工し、トラックラインの可能な限り多くのレーザートラックセグメントが実質的に同一直線上になるように配置されるようにする。
【0108】
この目的のために、極めて多種多様な数値的方法を使用することができる。一例は、湾曲経路の数学的平滑化である。この場合、曲線は、低い曲率を有する曲線に変換されることが意図される。同時に、元のものからの偏差をできるだけ小さくすべきである。具体的には、低次の近似多項式は、このために極めて有利であることが判明されている。
【0109】
別の可能性は、ラスターグラフィックス(例えばサブ画素補間を介して)を補間することである。この場合、個々の画素、特に、互いに近接して配置された周囲の画素から比較的大きな偏差を有する画素を、ラスターグラフィックスから「除去」してもよい。これにより、実質的に同一直線上にある画素間の接続線の生成において後に発生する可能性のある方向の変化を、低減することができる。これに続いて、平滑化方法などを再び適用して、ラスターグラフィックスをさらに最適化することができる。
【0110】
次のステップでは、画素画像または加工物表面は、レーザーによって順番に機械加工されることが意図される機械加工表面セクションに分割される。それぞれの表面セクションの機械加工は、この場合、対応する目標幾何学的形状に依存する。目標幾何学的形状は、加工物および付加されるテクスチャに関する幾何学的情報から形成される。
【0111】
加工物の幾何学的性質に応じて、結果として得られる表面セクションは、数ミリメートルのエッジ長を有して比較的大きく、又は、低ミクロン範囲のエッジ長を有して比較的非常に小さくてもよい。
【0112】
次のステップでは、加工面セクションの各々が、レーザーがスキャナシステムによって案内される際に沿うべき多数の線形加工シーケンス10を画定することによって、ハッチングされる。ここで、ハッチングは、互いに平行に走る多数のトラックラインが、セクション上に置かれ、モデルデータに従って3D表面上に投影されることを意味する。そして、レーザートラックライン上に位置するレーザートラックセグメントを決定するために、画像データのテクスチャパターンとの重なり合いが算出させる。
【0113】
各線形機械加工シーケンスは、後に、ラスターグラフィックス/画素画像の画素のグループを含み、スタートセグメント11(スタート移動セグメント)及び終了セグメント13(終了移動セグメント)と、1つ以上の加工セグメント12(レーザートラックセグメント)とに実質的に分割される。スタートセグメント11及び終了セグメント13では、レーザーがスイッチオフ状態で加速され(スタートセグメント11)又はブレーキがかけられる(終了セグメント13)。加工セグメント12では、レーザーは、スイッチオン状態で、例えば一定速度で移動される。各移動セグメント14は、機械加工シーケンス(セグメントシーケンス)の機械加工セグメント/レーザートラックセグメント12の間に配置される。
【0114】
先行する画像データ処理又はその後のデータ修正から求められた、実質的に同一直線形状に存在する画素またはレーザートラックセグメントに基づいて、これらを線形加工シーケンス上にマッピングすることができ、その結果、複数の加工セグメント(レーザートラックセグメント)を有する、多数の比較的長い機械加工シーケンス(セグメントシーケンス)を形成することができる。
【0115】
決定されたレーザートラックセグメント、またはトラックセグメントデータにおいて出力されるこれらの決定されたレーザートラックセグメントの座標に基づいて、機械加工シーケンス(セグメントシーケンス)の全てを指定する制御データが生成される。
【0116】
次のステップでは、機械加工シーケンスを指定する制御データが、スキャナシステムへ出力され、この制御データに基づいて、レーザーが、加工物表面上を案内される。
【0117】
各機械加工シーケンスは、開始時のスタートセグメントと、終了時の終了セグメントとを有するが、これらの間は、複数のレーザートラックセグメント及びこれらの間に位置する移動セグメントでは中断することなく移動するので、レーザーの加速及び制動プロシージャの数を、各機械加工表面セクションに対して全体的にかなり減少させることができる。これは、次に、機械加工時間のかなりの短縮につながる。これは、特に、例えば、自動車産業用のダッシュボードなどの大表面用途にかなりの影響を及ぼす。
【0118】
図2Aは、本発明による方法の1つの例示的な実施形態のフローチャートを示す。図2Bは、一例として、1つの例示的な構成によるトラックセグメントデータの生成を示す。
【0119】
図2Aは、一例として、レーザーによって、特に数値制御工作機械上で、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付加するために、少なくとも1つの加工物表面を機械加工するための方法を示す。
【0120】
この場合、加工物は、3Dモデルデータで提供された目標ジオメトリが仕上がるまでは、例えばフライス削りによって、この目標ジオメトリに従って機械加工されていてもよい。次に、レーザー装置またはレーザースキャナシステムが、工作機械上で使用され、レーザーによって、例えばレーザーテクスチャリングによって、加工物サービス上に所定のテクスチャパターンを仕上げることができる。
【0121】
この方法は、加工物表面の少なくとも一セクションに付加されるテクスチャパターンの画像を指定する画像データを提供するステップS1と、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリを指定するモデルデータを提供するステップS2とを含む。
【0122】
ステップS3では、トラックセグメントデータが、画像データおよびモデルデータに基づいて生成される。この場合、トラックセグメントデータは、それぞれ、テクスチャパターンに応じて、加工物表面のセクション上を走行する複数のトラックラインSPに対して、それぞれのトラックラインSPに沿って複数の連続するレーザートラックセグメント12を指定する。
【0123】
ステップS4において、生成されたトラックセグメントデータに基づいて、制御データが生成される。この場合、制御データは、各トラックラインについて、1つ以上のセグメントシーケンス10を指定し、各セグメントシーケンス10は、レーザーが、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付加するために案内されるトラックセグメントを備える。セグメントシーケンス10のトラックセグメントは、レーザーがその上をスイッチオン状態で実質的に一定の加工設定速度で移動するものである1つ以上のレーザートラックセグメント12を含む。
【0124】
ステップS5において、生成された制御データは、レーザー装置又はその制御装置に出力される。これらの装置は、加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付加するために、制御データに基づいてレーザーを制御するものである(S6)。
【0125】
各トラックラインに対し、互いに実質的に同一直線上にあるように配置される隣接するレーザートラックセグメントの数が増やされ、特に最大まで増やされるという条件に従って、トラックセグメントデータは、ステップS3において、画像データ及びモデルデータに基づいて生成される。
【0126】
さらに、制御データは、特に、各セグメントシーケンス10が、少なくとも2つのレーザートラックセグメント12と、互いに実質的に同一直線上となるように位置合わせされた2つの隣接するレーザートラックセグメント12の間に、移動セグメント14とを有するように生成される。移動セグメント14の上を、レーザーが、スイッチオフ状態で実質的に一定の加工設定速度で移動する。
【0127】
さらに、制御データは、各セグメントシーケンス10が、移動開始セグメント11と、移動終了セグメント13とを含むように生成される。移動開始セグメント11の上を、レーザーは、機械加工設定速度まで加速するためにスイッチオフ状態で移動する。移動終了セグメント13の上を、レーザーは、加工設定速度から制動するためにスイッチオフ状態で移動する。
【0128】
図2Bは、一例として、レーザーによって、特に数値制御工作機械上で、少なくとも1つの加工物表面の少なくとも一セクションにテクスチャパターンを付加するために、加工物表面を機械加工する方法の制御データを生成するときに使用するためのトラックセグメントデータを生成するための方法の例示的な一実施形態のフローチャートを示す。
【0129】
画像及びモデルデータ(S1,S2)を準備した後、図2Bによる方法は、図2A中のステップS3の例示的な実施例に対応する。
【0130】
一例として、モデルデータは、さらに、画像データの第1座標系の2次元座標の、モデルデータの表面形状上の第2座標系の3次元座標上への座標マッピングをしたものとしてもよい。この場合、モデルデータの3次元座標系における第1の座標軸Zは、機械加工中にレーザーの入射方向と実質的に平行に配向され、モデルデータの3次元座標系における他の2つの座標軸XおよびYの平面は、機械加工中にレーザーの入射方向に対し実質的に垂直となるように位置合わせされる。
【0131】
一例として、画像データは、テクスチャパターンの画素画像を指定したものをしたものとしてもよい。画素画像の各画素には、画素値が割り当てられる。この画素値は、テクスチャパターンの対応する位置で加工物表面に付加されるテクスチャパターンの所定の深さを指定する。個々のトラックセグメントデータは、画素画像の画素値に基づいてテクスチャパターンの異なる深さレベルについて生成され、故に、相前後する機械加工プロシージャで異なる深さレベルに対応するテクスチャパターンが、それぞれのトラックセグメントデータに基づいて生成される制御データに基づいて作成される。
【0132】
したがって、一例として、以下のような複数のトラックセグメントデータセットが、加工物表面のセクションについて決定されることが好ましい。すなわち、各トラックセグメントデータセットは、テクスチャパターンの一定の深さについて決定され、それぞれの対応するトラックセグメントデータセットに基づいて、そのあと、レーザーは、異なる深さレベルの層ごとに順番に移動する。
【0133】
この場合、異なる深さレベルが、同じ加工物表面セクションに対して処理されてもよく、または、それぞれの場合において、異なる深さレベルに対して異なるセクションが区切られるように、特定の対応する制御データに従って処理されるセクションの配置をシフトしてもよい。最終的に、加工物表面は、セクション毎に、および/または深さレベル毎に、連続的に移動されてもよい。しかしながら、全体として、一例として、関連するトラックセグメントデータのセットの各々は、好ましくは、それぞれのセクションおよびそれぞれの深さレベルに対して生成される。
【0134】
この方法は、一セクション(好ましくは深さレベル毎)に対し、テクスチャパターンの画像のセクションを、複数の平行に走るトラックラインSPでハッチングするステップS11を含む。このセクションは、加工物表面の少なくとも1つのセクションに対応する。
【0135】
この場合、トラックラインSPは、好ましくは、テクスチャパターンの画像の対応するセクション上で互いに平行に走り、且つ、画素画像(ラスターグラフィックス)において一例として指定されたテクスチャパターン上に置かれる直線である。
【0136】
この方法は、さらに、一例として、トラックラインセグメントを決定するステップS12を含む。トラックラインセグメントにて、トラックラインは、テクスチャパターンの画像の対応するセクション内のテクスチャパターンと重なる(または、トラックラインセグメントにて、トラックラインが、テクスチャパターンの画像の対応するセクション内の瞬間的な深さレベルに対応する画素値範囲を有するテクスチャパターン領域と重なる)。
【0137】
これにより、テクスチャパターンの上方の画像データの平面内で、加工物の表面上において3D座標空間へと投影することができるレーザートラックセグメント12を決定することが可能になる。
【0138】
この目的のために、一例として、画像データの座標系におけるそれぞれの2次元座標は、テクスチャパターンの画素画像とトラックラインの領域とに基づいて読み出される。トラックラインの領域において、トラックラインは、テクスチャパターンの画像の対応するセクションにおけるテクスチャパターンと重なる(又はトラックラインの領域において、トラックラインは、テクスチャパターンの画像の対応するセクションにおける瞬間的な深さレベルに対応する画素値範囲を有するテクスチャパターン領域と重なる)。
【0139】
サブピクセル補間(任意)が、ステップS12において、トラックラインの点に対する座標値および/または画素値の決定において、実行されることが好ましい(例えば、図4を参照)。好ましくは、トラックラインがテクスチャパターンの画素画像の対応するセクション内のテクスチャパターンと重なる(または、トラックラインがテクスチャパターンの画像の対応するセクション内の瞬間的な深さレベルに対応する画素値範囲を有するテクスチャパターン領域と重なる)トラックラインセグメントの決定において、サブピクセル補間が実行される。この補間において、画素値および/または座標補間が、対応するトラックラインの方向に対して垂直または横方向に延びる横方向に実行される。
【0140】
一例として、画像データは、加工中の加工物表面上においてレーザーの幅の10%以上、特に加工中の加工物表面上においてレーザーの幅の25%以上である画素幅を有するテクスチャパターンの画素画像を指定すると仮定する。一例として、画素幅の値は、10μm〜50μm、特に好ましくは約15μm〜30μmの範囲にある。
【0141】
このようなサブピクセル補間は、望ましくない大量のデータを伴うより正確な画像解像度を提供せずに、図3に関連して記載された欠点を回避することを可能にし、要求される画像品質は、最初に達成される。しかし、後に決定されるトラックラインのレーザートラックセグメント12の共線性は、さらに、広い領域にわたって増加され、または保証されることが可能である。
【0142】
本方法は、一例として、さらに、加工物表面の少なくとも一セクションに対応する表面形状の3次元ジオメトリの上に、決定されたトラックラインセグメントを投影するステップS13を含む。このステップでは、画像データの第1の2D座標系からの決定されたトラックラインセグメントの各々の2次元座標を、モデルデータの座標マッピングに基づいてモデルデータの表面形状の3次元座標へとマッピングされる。故に、第1座標系における各トラックラインセグメントに対して、対応するレーザートラックセグメント12の3次元座標が第2の座標系において決定される。
【0143】
そのような座標マッピングは、マッピング規則を指定するさらなる座標マッピングデータに基づいて、またはモデルデータに含まれる2次元表面座標に基づいて、表面形状上で行われても良い(例えば、対応する2次元表面座標を有する表面上にある点を、3D空間内の3次元座標にマッピングする3D空間内の表面上のUV座標)。
【0144】
トラックラインSPのこのような投影を、一例として、図5Aおよび5Bに示す。一例として、モデルデータにおいて指定された3次元ジオメトリは、多数の多角形面(三角形および/またはn辺多角形(n>3))を有し、特に、互いに傾斜した隣接する多角形面間の1つまたは複数の遷移に起因して、モデルデータにおいて指定された3次元ジオメトリ上への直線トラックラインの投影は、トラックセグメントデータの生成において実行され、コーナーを有するトラックライン上への直線トラックラインのマッピングにつながる(例えば、図5Bを参照)。
【0145】
ステップS14において、モデルデータの3D座標空間へと、投影されたトラックライン、またはトラックラインセグメントまたはトラックラインセグメントを有する複数のトラックラインセクションのプロファイルの数値平滑化(オプション)が、好ましくは実行される(例えば、図5および/または図8による例示的な構成を参照)。
【0146】
この場合、好ましくは、数値平滑化は、モデルデータに指定された3次元ジオメトリ上に直線トラックラインを投影することによって、トラックセグメントデータの生成において決定されたトラックライン(またはトラックラインのセグメント又はセクション)に対して実行される。次に、対応するトラックライン上にあるレーザートラックセグメント12の座標は、好ましくは、数値平滑化されたトラックラインに基づいて決定される。
【0147】
この場合、平滑化プロシージャは、好ましくは3次元空間において実行される。この3次元空間において、対応するトラックラインのコーナーが、以前に存在したコーナーの位置で丸められたプロファイルを有するように平滑化される(例えば、図5Bの破線の曲線または図8の中央の曲線を参照)。
【0148】
この場合、追加的または代替的に、レーザー入射方向における平滑化プロシージャは、好ましくは、3次元空間において実行される。この平滑化プロシージャにおいて、(上記第1の)平滑化プロシージャによって平滑化された投影トラックラインまたはトラックラインは、レーザー入射方向と平行に整列された方向の方向に平滑化され、その結果、さらなるまたはより大幅に平滑化されたトラックラインは、レーザー入射方向に垂直に整列された平面において平滑化されていないトラックラインに対してより平坦に走る(例えば、図8下方の曲線を参照)。
【0149】
この方法は、さらに一例として、投影されて平滑化されたトラックラインセグメントに基づいてレーザートラックセグメントの座標を決定するステップS15を含む。これは、ステップS12で決定され、テクスチャパターンと重なり合う、3D空間への投影後(およびオプションでサブピクセル補間および/または平滑化後)のトラックラインの領域からの投影座標に実質的に対応する。この場合、レーザーがスイッチオン状態で移動しなければならないレーザートラックセグメント12の座標が決定されても良い。
【0150】
例示的な方法は、オプションで、決定されたレーザートラックセグメントの決定された座標を修正する別のステップS16をさらに含む。一方では、例えば、サブピクセル補間及び/又は平滑化方法等の数値的方法が、すでに使用されて、レーザートラックセグメントの共線性の増加、又は実質的に共線のレーザートラックセグメントの数の増加を達成する。しかし、レーザートラックセグメントの共線性又は、実質的に共線のレーザートラックセグメントの数は、レーザートラックセグメントの共線性または実質的に共線のレーザートラックセグメントの数を増加させるような方法で、3D座標空間におけるレーザートラックセグメントの決定された座標を修正することによって、さらに増加されたり又は最大化されてもよい(例えば、図7を参照)。
【0151】
この場合、対応するトラックラインの隣接するレーザートラックセグメントの共線性は、好ましくは、レーザートラックセグメントまたはそれぞれのトラックラインの方向に対して実質的にラジアル方向にレーザートラックセグメントの3次元座標を修正することによって増加される。「ラジアル方向」は、この場合、それぞれの座標点において、トラックライン、対応するレーザートラックセグメント、またはレーザートラックセグメントを通って延びる補間直線に対して実質的にラジアル方向(すなわち、実質的に垂直に)に延びる方向を意味する。最も簡単な場合には、これは、実質的に直線(例えば、トラックラインのレーザートラックセグメントのいくつか又は全てを通る補間直線)上への投影に基づいて実行されてもよい。
【0152】
レーザートラックセグメントの3次元座標の実質的にラジアル方向への修正は、好ましくは、レーザートラックセグメントの1つ以上の点の座標を、レーザートラックセグメントまたはそれぞれのトラックラインの方向に対して実質的にラジアル方向にシフトすることによって実行される。この場合、座標を修正して、レーザートラックセグメントの3次元座標に対するトラックラインの隣接するレーザートラックセグメントの共線性を増やすステップにおいて、実質的にラジアル方向の座標シフトは、最大座標シフト限界値まで実行される。
【0153】
特に、この場合、レーザーの焦点位置の許容範囲を利用することができるので、第1座標軸Zの方向における座標シフトの座標シフト限界値は、好ましくは、他の2つの座標軸XおよびYの面に含まれる方向における座標シフトの座標シフト限界値よりも大きい(図8に関する説明も参照)。
【0154】
隣接するトラックライン間の距離は、好ましくは、実質的に加工中の加工物表面上のレーザーの幅(直径)以下であり、特に、加工中の加工物表面上のレーザーの幅の半分以下(レーザー直径の30%以下、例えば、レーザー直径の実質的に20%、好ましくはレーザー直径の10%以上)である。この場合、座標シフト限界値は、特に、他の2つの座標軸(X、Y)の平面内にある方向の座標シフトに対するものについては、加工中の加工物表面上のレーザーの幅の5%以下であり、特に、加工中の加工物表面上のレーザーの幅の1%以下である。
【0155】
第1座標軸(Z)の方向における座標シフトの座標シフト限界値は、好ましくは、加工中の加工物表面上のレーザーの幅の10%以上、特に35%以上である。さらに/または、第1座標軸(Z)の方向における座標シフトの座標シフト限界値は、レーザーの焦点位置の公差幅の50%以上、特にレーザーの焦点位置の公差幅の75%以上である。この場合、レーザーの焦点位置の公差幅は、1mm以下、特に500μm以下、又は100μm以下である。
【0156】
この場合、レーザートラックセグメントの3次元座標の修正は、レーザー入射方向に実質的に垂直に延びる平面内で実質的にラジアル方向において実行され、さらに/またはレーザー入射方向と実質的に平行な方向において実行することができる。
【0157】
ステップS17において、対応するセクションに対して決定されたレーザートラックセグメントの決定された(および場合によっては修正された)座標は、トラックセグメントデータの生成において、対応するトラックセグメントデータセットに記憶され、次に、これは、(レーザートラックセグメントに基づくセグメントシーケンスの生成と共に)制御データを生成するための基礎として使用される(例えば、上記のステップS4を参照)。
【0158】
さらに、上記の例では、方法の数値計算において、トラックセグメントデータの生成において、画像および/またはモデルデータの座標は、特に座標マッピングが基礎にしている2次元および/または3次元座標を含み、モデルデータの多角形サイズの、または画像データの画素幅の、隣接するトラックライン間の距離の、加工物表面上のレーザーの幅の少なくとも1/1000の解像度精度、特に好ましくは少なくとも1/10000の精度に相当する空間解像度で読み取られる。さらに/または、方法の数値計算において、トラックセグメントデータの生成において、画像及びモデルデータの座標は、座標マッピングが基礎にしている2次元及び/又は3次元座標を含み、少なくとも10nmの解像度精度、特に、実質的に、1nmの解像度精度、又は1nmの未満の解像度精度に相当する空間解像度で読み取られる。
【0159】
上記の例示的な実施形態において、例えば、平行に延びる直線トラックラインは、テクスチャパターンの画素画像の画像データの2D座標空間内に配置されて、画像データの2D座標空間からテクスチャパターンとの重なりの決定と同じくらい早く、またはそれと同時に、3Dモデルデータの表面形状の上に投影され、または、テクスチャパターンに対応すると共に画像データの2D空間において既に決定されたトラックラインセグメントが、投影されていると仮定されている。
【0160】
また、画像データの3D座標空間において平行に走る直線トラックラインを所定面内に配置することも可能である。この面は、例えば、レーザー入射方向に対して実質的に垂直に配列させることができる平面(例えば、図8のX−Y面)である。次に、トラックラインの全てを、1つの方向(例えば、平面に垂直な方向)において3Dモデルデータの表面形態の上に投影しても良い。さらに、2次元表面座標(例えば、UV座標)は、3Dモデルデータの表面形態上に投影されたトラックラインの各々について読み取られる。これに対し、表面座標画素値または補間された画素値は、画像データまたは画素画像から読み取られてもよい。次に、読み取られた画素値または補間された画素値に基づいて、対応するレーザートラックセグメントまたはレーザートラックセグメント座標が、投影されたトラックラインの上で読み取られ得る。
【0161】
図3は、一例として、サブピクセル補間を行わず、さらに平滑化を行わない、画素画像の画像データに基づいた個々の画素間の接続線のプロファイルを示す。一例として、これは、画素間で互いに実質的に平行に延びる3つの接続線を示す。これらの接続線に沿ってレーザーがスイッチオン状態で移動することが予定されている。しかしながら、右側の接続ラインでは、端部のラインプロファイルに変化があることが分かる。
【0162】
このようなラインプロファイルの理由は、以前に同一直線上の画素からの対応する接続線に対して、画素のわずかな横方向のずれに起因する接続線の比較的非常に短いセクションであり得る。
【0163】
この横方向のずれは、それ自体で、例えば機械加工の品質に関して、無視できるほど小さな問題を構成する。しかしながら、機械加工シーケンス10の次の生成におけるオフセットは、制御データを生成するときに、出力ソフトウェアが接続線の方向の変化を非常に余りにも大きく分類し、故に、このポイントで複数の機械加工セグメント12を含む機械加工シーケンス10を生成するプロセスを中断し、その後、さらなる機械加工シーケンス10の生成を開始する。
【0164】
この結果、多数の追加の機械加工シーケンス10が不必要に生成され、これは、同様に、加工物表面の機械加工時間の不必要な増加につながる。
【0165】
したがって、付加されるべきテクスチャのラスターグラフィックス又は画像データが、例えば補間方法(例えばサブピクセル補間)によって既に準備されている場合は、図4に示すように、これは有効である。
【0166】
図4は、一例として、画素画像の画像データに基づいてレーザートラックセグメントの位置決めを決定するためのサブピクセル補間を示す。
【0167】
第1のステップでは、トラックラインSPまたはハッチラインが、ラスターグラフィックスまたは画素画像上に配置され、このプロファイルに基づいて、レーザーは、ラスターグラフィックスから情報を取得するように意図されている。その結果、それぞれのトラックライン上に配置される予定のレーザートラックセグメントは、深さ情報も考慮に入れることが意図されている場合には、特に、各トラックラインと、画像データのテクスチャ、又は画像データのテクスチャの特定画素値範囲とのオーバーラップ領域を決めることによって、決定することができる。
【0168】
トラックラインSP(この例のように)は、例えば、ラスターグラフィックスの複数の画素に亘って横方向に延びており、このラスターグラフィックスは、そのグレースケールに応じて(又は画素値に応じて)次のレーザーリング(ハッチング画素を参照)のための深さ情報を更に含む場合がある。
【0169】
ラスターグラフィックス(画素画像)の解像度(画素幅)により、画像データの中で指定されたテクスチャとトラックラインとの重なり領域の座標を決める時に、画素幅の大きさのオーダーの誤差が生じる画素誤差が生じることがある。これは、画質にほとんど影響を及ぼさないが、このオーダーの大きさのこのような誤差はここでは無視できるので、非常に短いレーザートラックセグメントの決定につながる可能性がある。これらは、画素幅のサイズの長さを超えないが、比較的大きな角度誤差を引き起こすことがある。この誤差は、後のセグメントシーケンスがこの時点で終了されなければならず、新しいセグメントシーケンスが開始されなければならない状況につながることがある。
【0170】
画像データの解像度は、原理的には、いくらでも正確に指定されうるが、これは、画質上の理由から必要とされることなく、大きな表面の場合には数ギガバイトに達することがある望ましくない大量のデータにつながる。これよりもむしろ、特に、それぞれのトラックラインを横切るか、またはそれに垂直な横方向におけるサブピクセル補間が、好ましくは実行される。
【0171】
画素の色塗りつぶし(図4Bにハッチングで示される)は、画素が定義された深さ値を特定することを示す。次に、補間を使用して、補間された画素値をトラックラインSP上またはハッチングされたライン上の中心に可能な限り配置することが試みられる。ここで、画素の深さ値は、補間方法によって変化する場合がある(小さい点線の画素を参照)。この場合、トラックラインSPまたはハッチングされたラインは、粗い画素の非常に小さい部分のみをカバーする。その結果、隣接する部分的に白い画素(塗りつぶされていない)により、グレースケールは、より明るい色調に変化し、これによって、深さ値は多少異なる。
【0172】
深さ値に加えて、画素値の2次元位置も変化しているという事実は、その後の加工物表面へのレーザー照射に対しては問題とはならない。これらの場合、粗い画素は、一般に、レーザービームよりもかなり小さい表面積しかないからである。さらに、そのビーム焦面およびレイリー長の存在のために、レーザービームは、深さ方向におけるその焦点の広がりを有し、その結果、画素の奥行き値のわずかな変化および画素値の位置のシフトは、レーザーによるテクスチャリングの結果に与える影響は小さく無視できるほどである。
【0173】
例えば、トラックラインSP又はハッチングラインの横方向における補間方法は、画像データのこのような準備に適しているが、トラックラインの特定のセクションに局所的に限定された動作を伴う補間方法も適している。補間方法内では、検討中の画素(およびそのより高い解像度)は、例えば、トラックラインにより近い位置にある画素が、検討中の他の画素のうちの1つよりも高い重み付けを受け取るように、重み付けを与えられてもよい。任意の補間方法は、連続的に複数回、または他の補間方法と交互に適用されてもよい。
【0174】
次に、ラスターグラフィックスの画像データがサブピクセル補間によって準備される場合、ハッチングのライン(ここではラインの例である)は、図5の上方に示されるように、3Dモデルの表面上に置かれてもよい。
【0175】
図5Aは、一例として、3次元加工物の3Dポリゴンモデルデータに従って、画像データの2D空間から表面にマッピングされたトラックラインSPを示している。
【0176】
特に自由表面を有する点においての表面を記載することによって、n辺の多角形によって、トラックラインが置かれる三角形または四辺形が生成される。その結果、2D描写における直線は、3D空間における適用の中で「角度」プロファイルを受け取る。
【0177】
このシナリオを幾分良好に想像することができるように、トラックライン上への視線方向を有する「目」が、図5Aに追加的に示されている。この視野角から、例として図5Bの下方に一例として示すように、「角度」プロファイルを把握することが可能である。
【0178】
ここで多角形から多角形へと生じる方向の変化は、特に非常に大きな多角形の場合には、相応に低い解像度のために、機械加工シーケンス10を生成するプロセスが中断してしまう可能性が高くなる。
【0179】
これを回避できるようにするために、多角形の空間解像度を第1ステップで増大させても良い。このために、多角形の位置は、整数(x,y,z)値よりも浮動小数点数を使用することよってかなり正確に指定することができる。この場合、小数点の桁数が多いほど、各多角形に対する位置指定が正確になる。これは、丸め誤差が回避され、その結果、誤差を丸めることによって生成される角度偏差が回避される。これは、加工物表面のより正確なプロファイルをもたらし、多角形遷移コーナーが生じる。
【0180】
モデルデータの幾何学的形状に従って加工物表面上に投影されたトラックラインのプロファイルを丸めて、トラックラインの「角度」プロファイルが、一般的に、より丸い遷移に関して多角形から多角形へと低減されるように、好ましくは、トラックラインのプロファイルのさらなる平滑化が実行される。このように、精度は、丸め誤差を回避するために最初に増やされるが、次に、トラックラインが多くの角度エッジを有さないという条件に従って、存在する角度プロファイルを平滑化することによって再び低減される。その結果、レーザートラックセグメントにおける角度偏差およびレーザートラックセグメント間の角度偏差を平滑化されたトラックライン上で回避することができ、レーザートラックセグメントの共線性を増やすことができる。
【0181】
補間方法および/または数値平滑化方法を、存在するトラックラインの任意の「角度」プロファイルを平滑化するために再び適用する。これは、図5Bの下方において、丸められた破線を参照して明らかにされることを意図している。
【0182】
サブピクセル補間によって2D平面内に画像データを準備し、数値平滑化によって加工物の表面上のトラックラインプロファイルを最適化することによって、この時点で、機械加工シーケンスの後の生成用のデータに対するかなりの改善を達成することが可能である。これを、図6Aおよび6Bに、トラックラインに沿って後のステップで生成される機械加工セグメントの方向ベクトルを参照しながら示す。
【0183】
図6Aは、一例として、座標の空間解像度が低く、且つ補間がないレーザートラックセグメントの方向ベクトルの角度方向を示す。図6Bは、一例として、座標の空間解像度が高く、且つ補間のあるレーザートラックセグメントの方向ベクトルの角度方向を示す。
【0184】
図6Aの図は、座標の比較的粗い空間解像度(1μm)で、補間が無い場合の、個々の加工セグメントの方向ベクトルがどのように散乱するかを示す。方向ベクトルの集中は、この例に示すように、176.5°および177.2°の範囲で見ることができるが、非常に多数の方向ベクトルが175°から約178°の範囲内で散乱している。
【0185】
これは、連続的な機械加工セグメント12を検出して、これらを加工シーケンス10に組み込もうとするソフトウェアが、新しい機械加工シーケンス10を再び生成するために、非常に早く、非常に頻繁に中断するという状況につながる。その結果、対応して頻繁なスタートセグメント11及び終了セグメント13を含む非常に多数の小さな加工シーケンス10が得られる。これは、加工物表面の効果的な機械加工には不十分である。
【0186】
対照的に、図6Bに、方向ベクトルが176.5°から177°の範囲でのみ変化する様子を示す。したがって、方向ベクトルの散乱を大幅に低減することができた。これは、(この例において適用されるように)1nmの空間解像度および補間法によって達成された。
【0187】
連続的な(実質的に同一線上の)機械加工セグメント12(レーザートラックセグメント)を検出し、これらを機械加工シーケンス10(セグメントシーケンス)に組み込もうとするソフトウェアは、その後、中断し、故に、平均してより多数の機械加工セグメント12を含むより少ない機械加工シーケンス10を生成する。その結果、スタート及び終了セグメント11、13(開始及び終了移動セグメント)の数も減少し、加工物表面の機械加工時間が全体的にかなり減少する。
【0188】
モデルデータによって指定された加工物のセクションの表面形状上へ、画像データのテクスチャパターンと重なるトラックラインの領域を投影し、おそらく、画素画像の画素値のサブピクセル補間の実行をおそらく含み、および/または投影されたトラックラインプロファイルの平滑化によって、レーザートラックセグメントが決定された後、レーザートラックセグメントの座標は、トラックセグメントデータとして出力されてもよい。
【0189】
さらに、この時点でも、トラックセグメントの共線性または共線トラックセグメントの件数を、既に決定された座標を分析し修正することによって増加させても良い。画像品質に悪影響を及ぼすことなく、特定の限界値に準拠しながらも、レーザートラックセグメントの画素(特に開始点および終了点)を横方向にシフトさせることが可能である。
【0190】
図7は、一例として、トラックセグメントデータのレーザートラックセグメントの共線性を増やすために、レーザートラックセグメントの座標の座標修正を示す。
【0191】
図7におけるレーザートラックセグメント12の例示的なシーケンスa)は、一例として、過剰の角度偏差を有する。レーザートラックセグメント12の座標(特に開始点および終了点)は、ラジアル方向(すなわち、各レーザートラックセグメント、又はレーザートラックセグメント或いはトラックラインを介して補間された曲線に対して、横方向又は垂直方向)に修正することができる。その結果、図7のレーザートラックセグメント12のシーケンスb)において一例として示すように、レーザートラックセグメントの共線性が増加する。
【0192】
可能な限り長い加工シーケンス10を生成するために使用され得るさらなる効果は、その焦点位置の公差に関して、上述したレーザービームの特性である。
【0193】
図8は、投影後、コーナーの平滑化後、及びレーザー入射方向(Z方向)の方向におけるトラックラインの曲線の平滑後の、投影されたトラックラインのプロフィールを示す。図8は、レーザー入射方向(Z方向)に対するトラックラインのプロファイルを示す。
【0194】
最初に、トラックラインSPのプロファイルは、依然として幾分「角がある」(上の図を参照)。しかし、これは、既に上述したような補間又は平滑化法によって平滑にすることができる(この点については中央の図を参照)。
【0195】
レーザーの焦点位置の許容範囲が、レーザー入射に垂直な平面(ここでは、x,y面)に対して考慮される場合、トラックラインSPのプロファイルのために利用可能な「操作のための空間」が依然として十分に存在し、操作のための空間内で、トラックラインSPのシフトが可能であることが分かる。
【0196】
この場合の大きな利点は、レーザーのビーム焦面及びレイリー長に起因して、テクスチャリングプロセスが、レーザービームの横方向において可能であるよりも、レーザービームの長手方向において著しく高い偏差を許容することができることである。その結果、トラックラインSPのプロファイルは、意図的に大幅に歪められる。その結果、プロセス中にレーザープロセスの品質に過度に悪影響を及ぼすことなく、できるだけ長い機械加工シーケンス10が得られる。
【0197】
これは、既に述べた補間方法又は数学的平滑化方法を用いてもたらされる。
【0198】
図9は、画像データのテクスチャパターンに従って決定されたレーザートラックセグメント12を有する、複数の平行に走るトラックラインSPを一例として示す。一例として、各トラックラインのこれらのレーザートラックセグメント12は、互いに同一直線上になるように配置され、トラックラインのそれぞれのレーザートラックセグメントは、単一のセグメントシーケンスの中で移動することができることが示されている。したがって、加工時間は、テクスチャパターンの描写の質を損なうことなく、かなり短縮することができる。平行に走るトラックライン間の距離は、表面上のレーザーの幅の約75〜95%、例えば約25〜50μmである。
【0199】
以上、添付図面を参照して、本発明の実施形態及び利点を詳細に説明した。
【0200】
しかし、本発明は、決して上記の例示的な実施形態およびその実施形態の特徴に限定または限定されるものではなく、むしろ、例示的な実施形態の修正、特に、記載された実施例の特徴を修正することによって、または独立請求項の保護範囲の内容の中で記載された実施例の個々の特徴または複数の特徴を組み合わせることによって構成されるものも含むことを再度強調しておく。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9