(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882521
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】回転部品の角度を決定する装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20210524BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20210524BHJP
G01B 7/30 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
G01D5/244 G
G01D5/12 G
G01B7/30 M
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-559804(P2019-559804)
(86)(22)【出願日】2018年5月3日
(65)【公表番号】特表2020-518810(P2020-518810A)
(43)【公表日】2020年6月25日
(86)【国際出願番号】DE2018100422
(87)【国際公開番号】WO2018215017
(87)【国際公開日】20181129
【審査請求日】2019年10月31日
(31)【優先権主張番号】102017111342.8
(32)【優先日】2017年5月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス ディートリヒ
【審査官】
吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−185549(JP,A)
【文献】
特開平2−163615(JP,A)
【文献】
特開平4−335102(JP,A)
【文献】
特表2015−524933(JP,A)
【文献】
特開2001−153639(JP,A)
【文献】
特開平7−306030(JP,A)
【文献】
特開平6−58748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部品の角度を決定する装置であって、
磁歪センサ構造体(4)を備え、該磁歪センサ構造体(4)は、送信素子(17)および受信素子(18,19)に結合されており、当該磁歪センサ構造体(4)に沿って、可動部品に取り付けられた磁石(5,10,11)が移動し、
前記送信素子(17)および前記受信素子(18,19)は、前記送信素子(17)と飽和ゾーン(6)との間の伝播時間および前記飽和ゾーン(6)から前記受信素子(18,19)に戻る伝播時間から前記可動部品の位置を決定する電子評価回路(14)に接続されており、
送信された信号は、前記磁歪センサ構造体(4)内の前記磁石(5)によって引き起こされる前記飽和ゾーン(6,8)において反射される、装置において、
前記磁歪センサ構造体(4)が、相互に離間されて存在する2つのセンサループ(15,16;20,21)を含み、前記各センサループ(15,16;20,21)は、前記回転部品の移動方向の形状に適合化されており、
前記2つのセンサループ(15,16;20,21)にそれぞれ1つのパルスを同時に入力結合させる共通の送信素子(17)が設けられており、該送信素子(17)の周辺には、前記センサループ(15,16;20,21)毎にそれぞれ1つの受信素子(18,19)が、前記各センサループ(15,16;20,21)の前記飽和ゾーン(6,8)から反射されたパルスを受信するように配置されており、
前記受信素子(18,19)は、前記2つのセンサループ(15,16;20,21)内の2つの伝播時間の比から角度位置を決定するために電子評価回路(14)に接続されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記磁石(5;10,11)から前記磁歪センサ構造体(4)までの距離が、前記飽和ゾーン(6,8)の幅を決定する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記磁石(5;10,11)は、前記磁歪センサ構造体(4)に対して傾斜して配置されている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記回転部品に固定される前記磁石(5)は、磁気リングとして、または2つの対向するブロック磁石(10,11)から形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記磁歪センサ構造体(4)は、パルスを生成しかつ前記電子評価回路(14)を含む電子構成素子(13)に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記磁歪センサ構造体(4)は、パルスを生成しかつ前記電子評価回路(14)を含む前記電子構成素子(13)が配置されているプリント基板(9)内に形成されている、請求項5記載の装置。
【請求項7】
内側の前記センサループ(16)と外側の前記センサループ(15)とが、それぞれ2つの湾曲したセンサ素子(16.1,16.2;15.1,15.2)を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記2つのセンサループ(15,16)の前記湾曲したセンサ素子(16.1,16.2;15.1,15.2)は、半円形に形成されており、前記センサループ(15,16)の前記半円形のセンサ素子(16.1,16.2;15.1,15.2)は、相互にほぼ円形に配置されている、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記内側のセンサループ(16)と前記外側のセンサループ(15)の前記半円形のセンサ素子(16.1,16.2;15.1,15.2)の端部対は、相互に90°オフセットされて配置されている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記センサループは、蛇行形状に形成された湾曲した素子(22,23)をさらに備えている、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁歪センサ構造体を備え、磁歪センサ構造体は、送信素子および受信素子に結合されており、磁歪センサ構造体に沿って、可動部品に取り付けられた磁石が移動し、送信素子および受信素子は、送信素子と飽和ゾーンとの間の伝播時間および飽和ゾーンから受信素子に戻る伝播時間から可動部品の位置を決定する電子評価回路に接続されており、送信された信号は、磁歪センサ構造体内の磁石によって引き起こされる飽和ゾーンにおいて反射される、回転部品の角度を決定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
角度ロータの位置測定が、多くの場合、磁気測定法を使用して実施されることが公知である。独国特許出願公開第102013213948号明細書には、電気モータのロータの位置信号が、電気モータの回転軸の外側で当該電気モータのステータに配置されたセンサによってピックアップされ、位置信号は、評価ユニットにより、電気モータの位置に関して評価される、電気モータの位置を決定する方法が開示されている。
【0003】
独国特許出願公開第102013222366号明細書には、ロータ位置検出が高い安全レベルで行われる、電気モータの位置を決定する方法が示されている。ここでは、位置信号は、センサシステムと評価ユニットとの間の伝送距離に依存して、伝送距離が短い場合にはSPIプロトコル信号を用いて評価ユニットに伝送され、かつ/または伝送距離が長い場合にはPWM信号を用いて評価ユニットに伝送される。これらの磁気測定法は、磁気コストの関係と、許容誤差の影響を受け易い関係とから、回転部品の角度を測定すべき特定のシステムに統合することは容易ではない。この場合、角度位置測定の精度は、磁石からセンサへの動きに関する動的許容誤差に非常に強く依存する。
【0004】
伝播時間を用いて線形変位測定が可能である、Littelfuse社またはMTS社のセンサが公知である。ここでは、パルスの伝播時間が、直線的に延在する磁歪センサ素子で測定され、この磁歪センサ素子にパルス発生器と受信器とが配置されている。磁石が使用されており、この磁石は磁歪センサ素子内で1つの飽和ゾーンのみを形成している。製造許容誤差および温度係数に起因する磁化誤差、不均一性、フロー分散はほぼ無視できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が基礎とする課題は、磁歪センサ素子を用いた線形的伝播時間測定の利点を利用する、回転部品の角度を決定する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明により、磁歪センサ構造体が、相互に離間されて存在する2つのセンサループを含み、各センサループは、部品の移動方向の形状に適合化されており、2つのセンサループにそれぞれ1つのパルスを同時に入力結合させる共通の送信素子が設けられており、送信素子の周辺には、センサループ毎にそれぞれ1つの受信素子が、各センサループの飽和ゾーンから反射されたパルスを受信するように配置されており、受信素子は、2つのセンサループ内の2つの伝播時間の比から角度位置を決定するために電子評価回路に接続されていることによって解決される。これは、2つのセンサループにおける2つのセンサループの湾曲状の配置構成により、それぞれ1つのパルス測定と、ひいては伝播時間測定とが実施できるという利点を有しており、この場合、パルスは、それぞれ対応する磁歪センサループの飽和ゾーンによって反射される。磁束の測定または磁気ベクトルの方向の測定は、完全に省かれる。なぜなら、飽和箇所のみが検出されるからである。これにより、伝播時間測定を、回転法においても使用できる。そのような装置は、磁気干渉場に対する耐性があり、許容誤差と環境の影響とを許容する角度測定を可能にする。
【0007】
好適には、磁石と磁歪センサ構造体との距離が飽和ゾーンの幅を決定する。この距離が長い場合には、磁歪センサループ内の磁束密度は減少し、これによって飽和ゾーンは狭幅に構成される。一方、磁石とセンサ構造体との距離が短い場合には、飽和ゾーンは広幅になる。この幅により、パルスの伝播時間を設定することができる。なぜなら、飽和領域が広いほど伝播時間は短くなるからである。
【0008】
一実施形態では、磁石は、磁歪センサ構造体に対して傾斜して配置されている。これにより、パルスが発生した場合に非対称の飽和ゾーンを生じさせることができる。
【0009】
一発展形態では、回転部品に固定される磁石は、磁気リングとして、または2つの対向するブロック磁石から形成されている。2つの相対向する飽和ゾーンを生成することが必要になるだけなので、簡素なブロック磁石の使用は特に低コストである。それに対して、磁気リングの使用は、連続的な磁場経過が生成される。
【0010】
好適には、センサ構造体が、パルスを生成しかつ電子評価回路を含む電子構成素子に形成されている。これにより、特に簡素で小型の装置を生成できる。
【0011】
代替的に、センサ構造体は、パルスを生成しかつ電子評価回路を含む電子構成素子が配置されているプリント基板内に形成されている。それにより、電子部品と電子部品の支持体要素とが別個の部品ではあるが、支持体要素は装置内に常に存在するものであるため、センサ構造体を支持するための付加的手段が省かれ、これは装置を小型化する。
【0012】
一変形形態では、内側のセンサループと外側のセンサループとが、それぞれ2つの湾曲したセンサ素子を含む。これらの2つの湾曲したセンサ素子を用いることにより、冗長的な測定が可能になる。なぜなら、内側のセンサループにおいても外側のセンサループにおいても、伝播時間の監視を行うことができるからである。このような2つのほぼ円形の飽和ループの使用により、磁歪センサ構造体内の不感帯が阻止される。
【0013】
一実施形態では、2つのセンサループの湾曲したセンサ素子は半円形に形成されており、センサループの半円形のセンサ素子はほぼ円形に配置されている。そのような装置を用いることにより、回転部品の完全な一回転を検出できるようにするための360°センサを簡単に実現することができる。
【0014】
一変形形態では、内側のセンサループと外側のセンサループの端部対は、相互に90°オフセットされて配置されている。そのような配置構成を用いることにより、飽和ゾーンの構成に応じて冗長的な信号を、2つのセンサループの使用によって生成することができる。これは、特に、外側のセンサループの端部対と内側のセンサループの端部対との間に飽和領域が形成されるように磁石が配置されている場合に行われる。
【0015】
代替的に、飽和領域は、内側のセンサループまたは外側のセンサループの端部対の2つの受信素子の間に形成される。これは、2つのセンサループのうちのただ1つのセンサループのみを伝播時間測定に使用できるケースに該当する。機能していない他の部分は引き続き機能の検査のために使用できるが、正確な位置決めのためには使用できない。
【0016】
一実施形態では、各センサループは、180°を超えて延在するただ1つの湾曲した素子のみを有しており、この場合、内側のセンサループの端部対が、外側のセンサループによって覆われる。この配置構成では、内側のセンサループと外側のセンサループとの重畳が常に飽和ゾーンよりも大きいという前提条件のもとで、内側のセンサループと外側のセンサループとを2つの方向の測定のために使用することができる。
【0017】
パルスの伝播時間を相応に延長することができるようにさせ、ひいては回転部品の位置決定の精度を高めるために、センサループの湾曲した素子は蛇行形状に形成されている。
【0018】
本発明は、多数の実施形態を可能にする。以下では、それらのうちのいくつかを、図面に示されている形態に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】磁歪センサ構造体において飽和ゾーンを生成する一実施例を示した図
【
図4】磁歪センサ構造体において飽和ゾーンを生成するさらなる実施例を示した図
【
図5】磁歪センサ構造体において飽和ゾーンを生成するさらなる実施例を示した図
【
図7】磁歪構造体の配置構成のための一実施例を示した図
【
図8】磁歪構造体の配置構成のためのさらなる実施例を示した図
【
図9】360°センサ用の磁歪センサ構造体の一実施例を示した図
【
図10】360°センサ用の磁歪センサ構造体のさらなる実施例を示した図
【
図11】360°センサ用の磁歪センサ構造体のさらなる実施例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、回転部品の角度を測定する磁歪変位変換器の場合の伝播時間測定の機能原理の第1の実施例が示されている。この磁歪変位変換器1は、2つの点2,3の間の距離を測定するために用いられ、これらの点2,3の間には、磁歪センサ構造体4として形成された導波路が配置され、この導波路に沿って永久磁石5が移動する。これらの点2,3では、それぞれ1つの電流パルスが磁歪センサ構造体4に入力結合される。電流は円形の磁場を生成し、この磁場は、磁歪センサ構造体4の軟磁気特性に基づいてこの磁歪センサ構造体4に束ねられる。上記の経路の測定すべき箇所には、可動永久磁石5が位置発信器として使用されており、その磁力線は、パルス磁場に対して直角に延び、同様に磁歪センサ構造体4に束ねられる。2つの磁場が重畳される、磁歪センサ構造体4の領域には、磁歪による弾性変形が生じ、この弾性変形は飽和ゾーン6に相応する。この飽和ゾーン6では、点2,3にそれぞれ入力結合されたパルスが反射する。これらの点2および3には、反射パルスが再び受信され、それらの伝播時間が決定される。2つの伝播時間の比からは、回転部品に固定されている永久磁石5の位置が推定される。
【0021】
図2は、複数の点2,3,7がパルスの入力結合および測定のために使用される伝播時間測定のさらなる機能原理図を示す。ここでは、各点2,3,7は、所定の角度に対応しており、そのため、例えば点7は、0°の角度に対応し、点2は、180°の角度に対応し、点3は、360°の角度に対応する。各点2,3,7には、磁歪センサ構造体4の反対方向にパルスが入力結合され、これらのパルスは、それぞれセンサ構造体4における2つの点2,3の間または2,7の間に生じる飽和ゾーン6,8によって反射される。入力結合点と同時に受信点の2,3,7には、それぞれ固定の角度位置が割り当てられているため、異なる伝播時間測定からは、永久磁石5の位置が冗長的に推定できる。
【0022】
図3には、磁歪センサ構造体4の飽和ゾーンを生成する一実施例が示されている。この磁歪センサ構造体4は、ここではプリント基板9に固定されている。この磁歪センサ構造体4に対向するように永久磁石5が回転軸12を中心に配置されており、ここでは、左方側がS極Sを表し、右方側はN極Nを表す。既に説明したように飽和ゾーン6,8が形成される。この場合、これらの飽和ゾーン6,8とは、その値が外部磁場強度の増加によって超えられない磁化を意味するものと理解されたい。
【0023】
永久磁石5が磁歪センサ構造体4に対して中心配置される場合、同じ幅の飽和ゾーン6,8が、反射されたパルスの信号中に生じる。飽和ゾーン6,8のこの幅は、
図4に示されているように、永久磁石5と磁歪センサ構造体4との距離変化に起因して変化し得る。
図4aは、永久磁石5と磁歪センサ構造体4との間のより長い距離を示しており、これにより、2つのパルスはより短い飽和距離を有する。
図4bに示すように、永久磁石5を磁歪センサ構造体4に近づけると、磁歪センサ構造体4の磁束密度の増加に起因して飽和ゾーン6,8が拡幅される。
【0024】
また、
図5から明らかなように、永久磁石5を磁歪センサ構造体4に対して傾斜させることにより、飽和ゾーン6,8の様々な幅を設定調整することができる。永久磁石5の傾斜により、非対称な幅の飽和ゾーン6,8が生じる。
【0025】
前述の例では、永久磁石5は、自身の位置が検出されるべき回転部品に固定されている磁気リングであることを想定していた。しかしながら、磁気リングによって生成されるような連続的な磁場経過は、角度測定の使用に対して必ずしも必要ではない。そのため、磁気リングの代わりに、2つのブロック磁石10,11を磁歪センサ構造体4に対向的に配置することも可能である。これらのブロック磁石10,11は、自身の配置の中で反対に分極され、回転軸12に対して同じ距離を有している。これらの2つのブロック磁石10,11を用いることにより、2つのブロック磁石10,11の対抗的な配置構成のもとで生じるパルス測定のために、2つの飽和ゾーン6,8のみが生成される。
【0026】
図7には、磁歪センサ構造体4の配置構成に対する一実施例が示されている。ここでは、センサ構造体4は、リングとして簡略化されて示されており、反対方向に走行する2つのパルスの入力結合と反射パルスの受信のための複数の点2,3,7を所定の間隔で有している。そのようなセンサ構造体4は、チップ13に形成されており、このチップ13の中心は、パルス生成と評価のための電子構成ユニット14によって形成される。センサ構造体4は、ここでは電子構成ユニット14を取り囲んでいる。そのようなチップ13は、プリント基板9に固定されている。既に説明したように、所定のこれらの点2、3、7には固定の角度レベルが割り当てられているので、例えばパルス入力結合と反射パルスの受信とが、0°と360°において行われる。この場合、永久磁石5によって引き起こされる飽和ゾーン6,8は、センサ構造体4の0°と180°との間、または180°と360°との間に存在する。チップ13内のセンサ構造体4の配置構成により、汎用的に形成されたチップが実現され、このチップは、様々な用途に適合化させることができる。
【0027】
図8に示されているような代替的実施例では、パルス生成およびパルス評価のための電子構成ユニット14を支持するチップ13がプリント基板9上に配置されており、それに対して、センサ構造体4はプリント基板9の内部に形成され、チップ13に接続されている。
【0028】
図9には、360°センサの磁歪センサ構造体4の一実施例が示されている。そのようなセンサに対して、センサ構造体は2つのセンサループ15,16からなり、この場合、各センサループ15,16は、2つの半円のセンサ素子15.1,15.2または16.1,16.2を含む。内側のセンサループ16の2つのセンサ素子16.1,16.2は、ほぼ円形に配置されている。同じことが、この内側のセンサループ16を取り囲む外側のセンサループ15の2つのセンサ素子15.1,15.2に対しても当てはまる。この構造体では、それ以上示されていない永久磁石5により、2つのセンサループ15,16を含む2つの飽和ゾーン6,8が生成される。したがって、センサループ15,16の2つのセンサ素子15.1,15.2;16.1,16.2の対向する端部15.3,15.4;16.3,16.4は、送信素子17が割り当てられている端部対を常に形成する。この場合、センサ素子15.1,15.2;16.1,16.2の各端部15.3,15.4;16.3,16.4には、反射パルスを受信するための別個の受信器18,19が割り当てられている。本ケースでは、送信素子により、端部対15.3,15.4;16.3,16.4にそれぞれ2つのパルスが反対方向に入力結合されており、これらのパルスは、対応するセンサ素子15.1,15.2;16.1,16.2に生じる飽和ゾーン6,8によって反射される。位置測定のために2つのセンサループ15,16が使用される場合、冗長的なシステムが与えられる。
【0029】
図10には、360°センサのさらなる実施例が示されている。この場合、
図10aは、既に
図9に関連して説明した冗長的なシステムを再度示しており、ここでは飽和ゾーン6,8がセンサ素子15.1,15.2;16.1,16.2の端部15.3,15.4;16.3,16.4の外側に存在している。いずれにせよ、
図10bに示されているように、飽和ゾーン6,8が、内側のセンサループ16に対して特徴付けられているように送信素子17のレベルに存在するならば、送信素子17のパルスは反射されない。なぜなら、各パルスは、受信器18,19によって瞬時に知覚されるからである。したがって、内側のセンサループ16は、測定のために使用することができない。外側のセンサループ15を用いてのみ、回転部品の位置を決定することができる。
【0030】
図11には、不感帯を回避するための、センサ構造体4のさらなる実施例が示されている。この場合、外側のセンサループ20も内側のセンサループ21モータだ1つの湾曲したセンサ素子しか有していないが、ここでは、各センサ素子は、180°を超えて重畳する。内側および外側のセンサ素子20,21の反対方向に向いた端部20.1;21.1は、ここではそれぞれ、ただ1つの送信ユニット17によって給電される。
図11aに示されているように、対向する飽和ゾーン6,8は、一度だけ内側のセンサループ21を含み(飽和ゾーン8)、一度だけ外側のセンサループ20を含む(飽和ゾーン6)。この配置構成の場合、外側のセンサループ20も内側のセンサループ21も両方向で測定でき、その結果、信頼性の高い位置決定が生じる。
図11bに示されている構造体の場合、各飽和ゾーン6,8は、内側のセンサループ21の受信器18のすぐ後ろで一度形成され、さらに外側のセンサループ20の受信器19のすぐ後ろで一度形成されており、この場合、これらの飽和ゾーン6,8は、内側のセンサループ21も外側のセンサループ20も重畳する。これは、内側のセンサループ21も外側のセンサループ20も一方向のみで測定できるという効果を奏する。なぜなら、各飽和ゾーン6,8によって送信ユニット17が阻止されるからである。この場合、送信ユニット17による入力結合は、外側のセンサループ20の一方の端部と、内側のセンサループ21の反対側の端部とでのみ行われる。そのようなセンサ構造体を用いた測定に対する前提条件は、2つのセンサループ20,21が常に飽和ゾーン6,8よりも大きく形成されることである。
【0031】
図12には、パルス走行経路を延長するための磁歪センサ構造体22,23に対する2つの実施例が示されている。一般に、伝播時間はナノ秒範囲で経過するため、多くの場合、それに応じて短い時間を評価することは困難である。この評価は、走行経路を延長した場合に改善される。これは、センサループ22の連続的な延長を可能にする蛇行構造でセンサループ22を形成することによって行われる。
図12bには、蛇行形状のセンサループ23が示されており、このセンサループ23を用いることによって離散パルスを生成することが可能になる。この伝播時間延長により、時間測定の許容誤差は、信号エラーにあまり影響を及ぼさなくなる。
【0032】
提案された解決手段を用いることにより、2つの飽和ゾーン幅の変形形態によって、磁場強度の許容誤差、磁石とセンサ構造体との間の距離の許容誤差、磁気リングの振動、および温度変化に依存することなく維持できる、回転部品の角度測定が可能になる。
【符号の説明】
【0033】
1 磁歪変位変換器
2 入力結合点および測定点
3 入力結合点および測定点
4 磁歪センサ構造体
5 永久磁石
6 飽和ゾーン
7 入力結合点および測定点
8 飽和ゾーン
9 プリント基板
10 ブロック磁石
11 ブロック磁石
12 回転軸
13 チップ
14 電子構成ユニット
15 センサループ
15.1 センサ素子
15.2 センサ素子
15.3 センサ素子の端部
15.4 センサ素子の端部
16 センサループ
16.1 センサ素子
16.2 センサ素子
16.3 センサ素子の端部
16.4 センサ素子の端部
17 送信ユニット
18 受信器
19 受信器
20 センサループ
21 センサループ
22 磁歪センサ構造体
23 磁歪センサ構造体