【氏名又は名称】トロン− トランスラショナル オンコロジー アン デア ウニヴェリジテーツメディツィン デア ヨハネス グーテンベルク−ウニヴェルシテート マインツ ゲマインニューツィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRON− Translationale Onkologie an der Universitaetsmedizin der Johannes Gutenberg−Universitaet Mainz gemeinnuetzige GmbH
【文献】
J. Immunol.,2005年,Vol.175, No.3,pp.1715-1723
【文献】
J. Mol. Biol.,2002年,Vol.324, No.3,pp.547-569
【文献】
Curr. Pharm. Des.,2009年,Vol.15, No.28,pp.3209-3220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程c)が、前記スコアがアミノ酸の間の前記化学的および物理的類似性に関する所定の閾値を満たすかどうかを確認することを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
前記同じ修飾を含む2つ以上の異なる修飾ペプチドが、修飾タンパク質の異なるフラグメントを含み、前記異なるフラグメントが、前記タンパク質中に存在する同じ修飾を含む、請求項18に記載の方法。
前記同じ修飾を含む2つ以上の異なる修飾ペプチドが、修飾タンパク質のすべての潜在的なMHC結合フラグメントを含み、前記フラグメントが、前記タンパク質中に存在する同じ修飾を含む、請求項18または19に記載の方法。
前記同じ修飾を含む2つ以上の異なる修飾ペプチドから、1つ以上のMHC分子に結合する確率を有するまたは最も高い確率を有する修飾ペプチドを選択することをさらに含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
免疫原性と予測された前記修飾もしくは修飾ペプチドを含むペプチドもしくはポリペプチド、または前記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸を含有するワクチンを提供する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を以下で詳細に説明するが、本発明は、本明細書で述べる特定の方法、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することだけを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および学術用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0043】
以下において、本発明の要素を説明する。これらの要素を特定の実施形態と共に列挙するが、それらを任意の方法および任意の数で組み合わせて付加的な実施形態を創製し得ることが理解されるべきである。様々に説明される実施例および好ましい実施形態は、本発明を明確に記述される実施形態だけに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明確に記述される実施形態を多くの開示されるおよび/または好ましい要素と組み合わせた実施形態を裏付け、包含することが理解されるべきである。さらに、本出願中で述べるすべての要素の任意の順序および組合せが、文脈によって特に指示されない限り、本出願の記述によって開示されるとみなされるべきである。
【0044】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)",H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH−4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように定義される。
【0045】
本発明の実施は、特に指示されない限り、当該分野の文献中で説明される生化学、細胞生物学、免疫学および組換えDNA技術の従来の方法を用いる(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2
nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989参照)。
【0046】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通じて、文脈上特に必要とされない限り、「含む」という語および「含むこと」などの変形は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含を意味し、いかなる他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の排除も意味しないが、一部の実施形態では、そのような他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群が排除され得る、すなわち主題が記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含に存することが理解される。本発明を説明することに関連して(特に特許請求の範囲に関連して)使用される「1つの」および「その」という用語および同様の言及は、本明細書で特に指示されない限りまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むと解釈されるべきである。本明細書中の数値の範囲の列挙は、単に範囲内に属する各々別々の数値を個別に言及することの簡略化した方法としての役割を果たすことが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各々個別の数値は、本明細書で個別に列挙されているがごとくに本明細書に組み込まれる。
【0047】
本明細書で述べるすべての方法は、本明細書で特に指示されない限りまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的な言語(例えば「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図し、特許請求される本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に必須の特許請求されない要素を指示すると解釈されるべきではない。
【0048】
いくつかの資料が本明細書の本文全体にわたって引用される。上記または下記で、本明細書において引用される資料の各々は(すべての特許、特許出願、学術出版物、製造者の仕様書、指示書等を包含する)、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明を理由にそのような開示に先行する権利を有さないことの承認と解釈されるべきではない。
【0049】
本発明によれば、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって共有結合で連結された2個以上、好ましくは3個以上、好ましくは4個以上、好ましくは6個以上、好ましくは8個以上、好ましくは10個以上、好ましくは13個以上、好ましくは16個以上、好ましくは21個以上、および好ましくは8、10、20、30、40または50個まで、特に100個までのアミノ酸を含む物質を指す。「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは100個を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は同義語であり、本明細書では互換的に使用される。
【0050】
本発明によれば、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に関する「修飾」という用語は、野生型ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列などの親配列と比較したペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質中の配列変化に関する。この用語は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体およびアミノ酸置換変異体、好ましくはアミノ酸置換変異体を包含する。本発明によるこれらの配列変化はすべて、潜在的に新しいエピトープを生成し得る。
【0051】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列における1個または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。
【0052】
アミノ酸付加変異体は、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、4または5個以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合物を含む。
【0053】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、4または5個以上のアミノ酸の除去を特徴とする。
【0054】
アミノ酸置換変異体は、配列中の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。
【0055】
本発明によれば、本発明の方法において試験するために使用される修飾または修飾ペプチドは、修飾を含むタンパク質に由来し得る。
【0056】
「由来する」という用語は、本発明によれば、特定の実体、特に特定のペプチド配列が、それが由来する対象物中に存在することを意味する。アミノ酸配列、特に特定の配列領域の場合、「由来する」は特に、関連アミノ酸配列が、その配列がその中に存在するアミノ酸配列から誘導されることを意味する。
【0057】
本発明の方法において試験するために使用される修飾または修飾ペプチドが由来し得る、修飾を含むタンパク質は、ネオ抗原であり得る。
【0058】
本発明によれば、「ネオ抗原」という用語は、親ペプチドまたはタンパク質と比較して1つ以上のアミノ酸修飾を含むペプチドまたはタンパク質に関する。例えば、ネオ抗原は腫瘍関連ネオ抗原であり得、ここで「腫瘍関連ネオ抗原」という用語は、腫瘍特異的変異に起因するアミノ酸修飾を含むペプチドまたはタンパク質を包含する。
【0059】
本発明によれば、「腫瘍特異的変異」または「癌特異的変異」という用語は、腫瘍または癌細胞の核酸中に存在するが、対応する正常細胞、すなわち非腫瘍性または非癌性細胞の核酸中には存在しない体細胞変異に関する。「腫瘍特異的変異」および「腫瘍変異」ならびに「癌特異的変異」および「癌変異」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0060】
「免疫応答」という用語は、抗原などの標的に対する統合された身体応答を指し、好ましくは細胞性免疫応答または細胞性ならびに体液性免疫応答を指す。免疫応答は、保護的/防止的/予防的および/または治療的であり得る。
【0061】
「免疫応答を誘導する」とは、誘導前は免疫応答が存在しなかったことを意味し得るが、誘導前に一定レベルの免疫応答が存在し、誘導後に前記免疫応答が増強されることも意味し得る。したがって、「免疫応答を誘導する」はまた、「免疫応答を増強する」ことも包含する。好ましくは、被験体において免疫応答を誘導した後、前記被験体が癌疾患などの疾患を発症することから保護されるか、または免疫応答を誘導することによって疾患状態が改善される。例えば、腫瘍発現抗原に対する免疫応答を、癌疾患を有する患者または癌疾患を発症する危険性がある被験体において誘導し得る。この場合免疫応答を誘導することは、被験体の疾患状態が改善されること、被験体が転移を発症しないこと、または癌疾患を発症する危険性がある被験体が癌疾患を発症しないことを意味し得る。
【0062】
「細胞性免疫応答」および「細胞性応答」という用語または同様の用語は、「ヘルパー」または「キラー」のいずれかとして働くT細胞またはTリンパ球を含む、クラスIまたはクラスII MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞に対する免疫応答を指す。ヘルパーT細胞(CD4
+T細胞とも称される)は、免疫応答を調節することによって中心的な役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8
+T細胞またはCTLとも称される)は、癌細胞などの異常細胞を死滅させ、さらなる異常細胞の産生を防止する。好ましい実施形態では、本発明は、1つ以上の腫瘍発現抗原を発現し、好ましくはそのような腫瘍発現抗原をクラスI MHCと共に提示する腫瘍細胞に対する抗腫瘍CTL応答の刺激を含む。
【0063】
本発明による「抗原」は、抗体またはTリンパ球(T細胞)との特異的反応などの免疫応答の標的であるおよび/または免疫応答を誘導する任意の物質、好ましくはペプチドまたはタンパク質を包含する。好ましくは、抗原は、T細胞エピトープなどの少なくとも1つのエピトープを含む。好ましくは、本発明に関連して抗原は、場合によりプロセシング後に、好ましくは抗原(抗原を発現する細胞を含む)に特異的な、免疫反応を誘導する分子である。抗原またはそのT細胞エピトープは、MHC分子に関連して、好ましくは細胞によって、好ましくは異常細胞、特に癌細胞を含む抗原提示細胞によって提示され、これは抗原(抗原を発現する細胞を含む)に対する免疫応答をもたらす。
【0064】
1つの実施形態では、抗原は、腫瘍抗原(本明細書では腫瘍発現抗原とも称される)、すなわち細胞質、細胞表面または細胞核に由来し得る腫瘍細胞中で発現されるタンパク質またはペプチドなどの腫瘍細胞のパート、特に主として腫瘍細胞の細胞内にまたは表面抗原として存在するものである。例えば、腫瘍抗原には、癌胎児性抗原、α1−フェトプロテイン、イソフェリチンおよび胎児性スルホグリコプロテイン、α2−H−鉄タンパク質およびγ−フェトプロテインが含まれる。本発明によれば、腫瘍抗原は、好ましくは、腫瘍または癌においてならびに腫瘍細胞または癌細胞において発現され、場合により型および/または発現レベルに関して腫瘍または癌に特有のならびに腫瘍細胞または癌細胞に特有の任意の抗原、すなわち腫瘍関連抗原を含む。1つの実施形態では、「腫瘍関連抗原」という用語は、正常条件下では限られた数の組織および/もしくは器官中でまたは特定の発生段階で特異的に発現されるタンパク質に関し、例えば腫瘍関連抗原は、正常条件下では胃組織中、好ましくは胃粘膜中、生殖器官中、例えば精巣中、栄養膜組織中、例えば胎盤中、または生殖系列細胞中で特異的に発現され得、1つ以上の腫瘍または癌組織中で発現されるかまたは異常発現される。これに関連して、「限られた数」は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下を意味する。本発明に関連して腫瘍抗原には、例えば分化抗原、好ましくは細胞型特異的分化抗原、すなわち正常条件下では特定の発生段階で特定の細胞型中で特異的に発現されるタンパク質、癌/精巣抗原、すなわち正常条件下では精巣中および時として胎盤中で特異的に発現されるタンパク質、ならびに生殖系列特異的抗原が含まれる。好ましくは、腫瘍抗原または腫瘍抗原の異常発現は癌細胞を同定する。本発明に関連して、被験体、例えば癌疾患に罹患している患者において癌細胞によって発現される腫瘍抗原は、好ましくは前記被験体における自己タンパク質である。好ましい実施形態では、本発明に関連して腫瘍抗原は、正常条件下では、必須ではない組織もしくは器官、すなわち免疫系によって損傷された場合に被験体の死をもたらさない組織もしくは器官中で、または免疫系によってアクセスされないもしくはほとんどアクセスされない身体の器官もしくは構造体中で特異的に発現される。
【0065】
本発明によれば、「腫瘍抗原」、「腫瘍発現抗原」、「癌抗原」および「癌発現抗原」という用語は等価であり、本明細書では互換的に使用される。
【0066】
「免疫原性」という用語は、好ましくは癌に対する処置などの治療処置に関連する免疫応答を誘導する相対的有効性に関する。本明細書で使用される場合、「免疫原性の」という用語は、免疫原性を有するという特性に関する。例えば、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に関連して使用される場合の「免疫原性修飾」という用語は、前記修飾によって引き起こされるおよび/または前記修飾に対する免疫応答を誘導するための前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の有効性に関する。好ましくは、非修飾ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、免疫応答を誘導しないか、異なる免疫応答を誘導するか、または異なるレベル、好ましくはより低レベルの免疫応答を誘導する。
【0067】
「主要組織適合遺伝子複合体」という用語および「MHC」という略語は、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子を含み、すべての脊椎動物中に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質または分子は、免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞または異常細胞との間のシグナル伝達のために重要であり、ここでMHCタンパク質または分子は、ペプチドと結合し、T細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は、細胞の表面上に発現され、自己抗原(細胞自体からのペプチドフラグメント)および非自己抗原(例えば侵入微生物のフラグメント)の両方をT細胞に表示する。
【0068】
MHC領域は、3つのサブグループ、クラスI、クラスIIおよびクラスIIIに分けられる。MHCクラスIタンパク質はα鎖およびβ2ミクログロブリン(15番染色体によってコードされるMHCのパートではない)を含む。それらは抗原フラグメントを細胞傷害性T細胞に提示する。大部分の免疫系細胞、特に抗原提示細胞上で、MHCクラスIIタンパク質はα鎖およびβ鎖を含み、抗原フラグメントをTヘルパー細胞に提示する。MHCクラスIII領域は、他の免疫成分、例えば補体成分およびサイトカインをコードする一部の成分をコードする。
【0069】
MHCは、多遺伝子性(いくつかのMHCクラスIおよびMHクラスII遺伝子が存在する)および多型性(各遺伝子の複数の対立遺伝子が存在する)である。
【0070】
本明細書で使用される場合、「ハプロタイプ」という用語は、1本の染色体上に認められるHLA対立遺伝子およびそれによってコードされるタンパク質を指す。ハプロタイプはまた、MHC内のいずれか1つの遺伝子座に存在する対立遺伝子も表し得る。各々のクラスのMHCはいくつかの遺伝子座によって表される:例えば、クラスIについてはHLA−A(ヒト白血球抗原A)、HLA−B、HLA−C、HLA−E、HLA−F、HLA−G、HLA−H、HLA−J、HLA−K、HLA−L、HLA−PおよびHLA−VならびにクラスIIについてはHLA−DRA、HLA−DRB1−9、HLA−、HLA−DQA1、HLA−DQB1、HLA−DPA1、HLA−DPB1、HLA−DMA、HLA−DMB、HLA−DOAおよびHLA−DOB。「HLA対立遺伝子」および「MHC対立遺伝子」という用語は本明細書では互換的に使用される。
【0071】
MHCは極度の多型性を示す:ヒト集団内で、各々の遺伝子座において、異なる対立遺伝子を含む非常に多くのハプロタイプが存在する。クラスIおよびクラスIIの両方の、異なる多型MHC対立遺伝子は異なるペプチド特異性を有する:各対立遺伝子は、特定の配列パターンを示すペプチドに結合するタンパク質をコードする。
【0072】
本発明のすべての態様の1つの好ましい実施形態では、MHC分子はHLA分子である。
【0073】
本発明に関連して、「MHC結合ペプチド」という用語は、MHCクラスIおよび/もしくはクラスII結合ペプチドまたはプロセシングされてMHCクラスIおよび/もしくはクラスII結合ペプチドを生成することができるペプチドを含む。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には8〜12、好ましくは8〜10アミノ酸長であるが、より長いまたはより短いペプチドが有効であり得る。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には9〜30、好ましくは10〜25アミノ酸長であり、特に13〜18アミノ酸長であるが、より長いおよびより短いペプチドが有効であり得る。
【0074】
ペプチドが直接、すなわちプロセシングされずに、特に切断されずに提示される場合、そのペプチドは、MHC分子、特にクラスI MHC分子に結合するのに適した長さを有し、好ましくは7〜30アミノ酸長、例えば7〜20アミノ酸長、より好ましくは7〜12アミノ酸長、より好ましくは8〜11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長である。
【0075】
ペプチドが、付加的な配列を含むより大きな実体、例えばワクチン配列またはポリペプチドのパートであり、プロセシング後に、特に切断後に提示される場合、プロセシングによって生成されるペプチドは、MHC分子、特にクラスI MHC分子に結合するのに適した長さを有し、好ましくは7〜30アミノ酸長、例えば7〜20アミノ酸長、より好ましくは7〜12アミノ酸長、より好ましくは8〜11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長である。好ましくは、プロセシング後に提示されるペプチドの配列は、ワクチン接種のために使用される抗原またはポリペプチドのアミノ酸配列に由来し、すなわちその配列は抗原またはポリペプチドのフラグメントに実質的に対応し、好ましくは完全に同一である。
【0076】
したがって、1つの実施形態でのMHC結合ペプチドは、抗原のフラグメントに実質的に対応し、好ましくは完全に同一である配列を含む。
【0077】
「エピトープ」という用語は、抗原などの分子中の抗原決定基、すなわち、特にMHC分子に関連して提示された場合、免疫系によって認識される、例えばT細胞によって認識される分子中のパートまたは分子のフラグメントを指す。腫瘍抗原などのタンパク質のエピトープは、好ましくは前記タンパク質の連続するまたは不連続な部分を含み、好ましくは5〜100、好ましくは5〜50、より好ましくは8〜30、最も好ましくは10〜25アミノ酸長であり、例えばエピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸長であり得る。本発明に関連してエピトープはT細胞エピトープであることが特に好ましい。
【0078】
本発明によれば、エピトープは、細胞の表面上のMHC分子などのMHC分子に結合することができ、したがって「MHC結合ペプチド」であり得る。
【0079】
本明細書で使用される場合、「ネオエピトープ」という用語は、正常な非癌性細胞または生殖系列細胞などの参照物中には存在せず、癌細胞中で認められるエピトープを指す。これには、特に、正常な非癌性細胞または生殖系列細胞中で対応するエピトープが認められるが、癌細胞中の1つ以上の変異に起因してエピトープの配列がネオエピトープを生じるように変化している状況が含まれる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「T細胞エピトープ」という用語は、T細胞受容体によって認識される立体配置でMHC分子に結合するペプチドを指す。典型的には、T細胞エピトープは抗原提示細胞の表面上に提示される。
【0081】
本明細書で使用される場合、「T細胞エピトープを予測する」という用語は、ペプチドがMHC分子に結合して、T細胞受容体によって認識されるかどうかの予測を指す。「T細胞エピトープを予測する」という用語は、「ペプチドが免疫原性であるかどうかを予測する」という表現と基本的に同義である。
【0082】
本発明によれば、T細胞エピトープは、1個より多いT細胞エピトープを含むワクチン配列および/またはポリペプチドなどのより大きな実体のパートとしてワクチン中に存在し得る。提示されるペプチドまたはT細胞エピトープは、適切なプロセシング後に生成される。
【0083】
T細胞エピトープは、TCR認識のためまたはMHCへの結合のために必須ではない1つ以上の残基において修飾され得る。そのような修飾されたT細胞エピトープは免疫学的に等価とみなされ得る。
【0084】
好ましくは、T細胞エピトープは、MHCによって提示され、T細胞受容体によって認識された場合、適切な共刺激シグナルの存在下で、ペプチド/MHC複合体を特異的に認識するT細胞受容体を担持するT細胞のクローン増殖を誘導することができる。
【0085】
好ましくは、T細胞エピトープは、抗原のフラグメントのアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含む。好ましくは、抗原の前記フラグメントはMHCクラスIおよび/またはクラスII提示ペプチドである。
【0086】
本発明によるT細胞エピトープは、好ましくは、抗原に対するまたは抗原の発現および好ましくは抗原の提示を特徴とする細胞、例えば異常細胞、特に癌細胞に対する免疫応答、好ましくは細胞性応答を刺激することができる抗原の部分またはフラグメントに関する。好ましくは、T細胞エピトープは、クラスI MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞に対する細胞性応答を刺激することができ、および好ましくは抗原応答性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を刺激することができる。
【0087】
「抗原プロセシング」または「プロセシング」は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の、前記ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のフラグメントであるプロセシング産物への分解(例えばポリペプチドのペプチドへの分解)、および細胞、好ましくは抗原提示細胞による特異的T細胞への提示のためのMHC分子とこれらのフラグメントの1つ以上との会合(例えば結合による)を指す。
【0088】
「抗原提示細胞」(APC)は、その細胞表面にMHC分子と会合したタンパク質抗原のペプチドフラグメントを提示する細胞である。一部のAPCは抗原特異的T細胞を活性化し得る。
【0089】
プロフェッショナル抗原提示細胞は、食作用または受容体媒介性エンドサイトーシスのいずれかによって抗原をインターナライズし、その後クラスII MHC分子に結合した抗原のフラグメントをその膜上に提示することにおいて非常に効率的である。T細胞は、抗原提示細胞の膜上の抗原−クラスII MHC分子複合体を認識し、これと相互作用する。次に、さらなる共刺激シグナルが抗原提示細胞によって生成され、T細胞の活性化をもたらす。共刺激分子の発現は、プロフェッショナル抗原提示細胞の決定的な特徴である。
【0090】
プロフェッショナル抗原提示細胞の主な種類は、最も広範囲の抗原提示を有し、おそらく最も重要な抗原提示細胞である樹状細胞、マクロファージ、B細胞および特定の活性化上皮細胞である。樹状細胞(DC)は、末梢組織中で捕獲された抗原を、MHCクラスIIおよびクラスIの両方の抗原提示経路によってT細胞に提示する白血球集団である。樹状細胞が免疫応答の強力な誘導物質であり、これらの細胞の活性化が抗腫瘍免疫の誘導のために必須の工程であることは周知である。樹状細胞は、「未成熟」細胞および「成熟」細胞として好都合に分類され、2つの十分に特性付けられた表現型を区別する簡単な方法として使用することができる。しかし、この命名法は分化のすべての可能な中間段階を除外すると解釈されるべきではない。未成熟樹状細胞は、抗原の取込みおよびプロセシングのための高い能力を有する抗原提示細胞として特性付けられ、前記能力はFcγ受容体およびマンノース受容体の高発現と相関する。成熟表現型は、典型的にはこれらのマーカーのより低い発現を特徴とするが、クラスIおよびクラスII MHC、接着分子(例えばCD54およびCD11)ならびに共刺激分子(例えばCD40、CD80、CD86および4−1BB)などのT細胞活性化の責任を担う細胞表面分子の高発現も特徴とする。樹状細胞の成熟は、そのような抗原提示樹状細胞がT細胞のプライミングをもたらす樹状細胞活性化の状態と称されるが、未成熟樹状細胞による提示は寛容を生じさせる。樹状細胞の成熟は、主として、先天性受容体によって検出される微生物特徴を有する生体分子(細菌DNA、ウイルスRNA、内毒素等)、炎症誘発性サイトカイン(TNF、IL−1、IFN)、CD40Lによる樹状細胞表面上のCD40の連結、およびストレス性細胞死を受けた細胞から放出される物質によって引き起こされる。樹状細胞は、骨髄細胞をサイトカイン、例えば顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および腫瘍壊死因子αなどと共にインビトロで培養することによって誘導することができる。
【0091】
非プロフェッショナル抗原提示細胞は、ナイーブT細胞との相互作用に必要なMHCクラスIIタンパク質を構成的に発現しない;これらは、IFNγなどの特定のサイトカインによる非プロフェッショナル抗原提示細胞の刺激後にのみ発現される。
【0092】
抗原提示細胞は、ペプチドまたは提示されるべきペプチドを含むポリペプチドをコードする核酸、好ましくはRNA、例えばワクチン接種に使用される抗原またはポリペプチドをコードする核酸を細胞に形質導入することによってMHCクラスI提示ペプチドを搭載することができる。
【0093】
一部の実施形態では、樹状細胞または他の抗原提示細胞を標的とする核酸送達ビヒクルを含有する医薬組成物またはワクチンを患者に投与し、インビボで起こるトランスフェクションを生じさせ得る。樹状細胞のインビボトランスフェクションは、例えば、国際公開第97/24447号に記載されている方法またはMahvi et al.,Immunology and cell Biology 75:456−460,1997によって記述されている遺伝子銃アプローチなどの当分野で公知の任意の方法を用いて一般的に実施し得る。
【0094】
本発明によれば、「抗原提示細胞」という用語は標的細胞も包含する。
【0095】
「標的細胞」は、細胞性免疫応答などの免疫応答の標的である細胞を意味するものとする。標的細胞は、抗原、すなわち抗原に由来するペプチドフラグメントを提示する細胞を含み、癌細胞などの任意の望ましくない細胞を含む。好ましい実施形態では、標的細胞は、本明細書で述べる抗原を発現し、および好ましくは前記抗原をクラスI MHCと共に提示する細胞である。
【0096】
「部分」という用語は画分を指す。アミノ酸配列またはタンパク質などの特定の構造体に関して、その「部分」という用語は、前記構造体の連続または不連続画分を表し得る。好ましくは、アミノ酸配列の部分は、前記アミノ酸配列のアミノ酸の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに一層好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%を含む。好ましくは、部分が不連続画分である場合、前記不連続画分は構造体の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個またはそれ以上のパートから構成され、各々のパートは構造体の連続する要素である。例えば、アミノ酸配列の不連続画分は、前記アミノ酸配列の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個またはそれ以上、好ましくは4個以下のパートから構成され得、ここで各々のパートは、好ましくはアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸、少なくとも10個の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも20個の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも30個の連続するアミノ酸を含む。
【0097】
「パート」および「フラグメント」という用語は、本明細書では互換的に使用され、連続する要素を指す。例えばアミノ酸配列またはタンパク質などの構造体のパートとは、前記構造体の連続する要素を指す。構造体の部分、パートまたはフラグメントは、好ましくは前記構造体の1つ以上の機能的特性を含む。例えばエピトープ、ペプチドまたはタンパク質の部分、パートまたはフラグメントは、好ましくはそれが由来するエピトープ、ペプチドまたはタンパク質と免疫学的に等価である。本発明に関連して、アミノ酸配列などの構造体の「パート」は、構造体全体またはアミノ酸配列全体の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%を好ましくは含み、好ましくはこれらから成る。
【0098】
本発明に関連して「免疫反応性細胞」という用語は、免疫反応の間にエフェクター機能を及ぼす細胞に関する。「免疫反応性細胞」は、好ましくは、抗原または抗原もしくはそのペプチドフラグメント(例えばT細胞エピトープ)の提示を特徴とする細胞に結合することができ、免疫応答を媒介することができる。例えば、そのような細胞は、サイトカインおよび/またはケモカインを分泌し、抗体を分泌し、癌性細胞を認識し、および場合によりそのような細胞を排除する。例えば、免疫反応性細胞には、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤性T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージおよび樹状細胞が含まれる。好ましくは、本発明に関連して、「免疫反応性細胞」はT細胞、好ましくはCD4
+および/またはCD8
+T細胞である。
【0099】
好ましくは、「免疫反応性細胞」は、抗原またはそのペプチドフラグメントを、特にMHC分子に関連して、例えば抗原提示細胞または癌細胞などの異常細胞の表面上に提示された場合、ある程度の特異性で認識する。好ましくは、前記認識は、抗原またはそのペプチドフラグメントを認識する細胞が応答性または反応性であることを可能にする。細胞が、MHCクラスII分子に関連して抗原またはそのペプチドフラグメントを認識する受容体を担持するヘルパーT細胞(CD4
+T細胞)である場合、そのような応答性または反応性は、サイトカインの放出ならびに/またはCD8
+リンパ球(CTL)および/もしくはB細胞の活性化を含み得る。細胞がCTLである場合、そのような応答性または反応性は、MHCクラスI分子に関連して提示される細胞、すなわちクラスI MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞の、例えばアポトーシスまたはパーフォリン媒介性細胞溶解による排除を含み得る。本発明によれば、CTL応答性には、持続的なカルシウム流入、細胞分裂、IFN−γおよびTNF−αなどのサイトカインの産生、CD44およびCD69などの活性化マーカーの上方調節、ならびに抗原を発現する標的細胞の特異的細胞溶解性死滅が含まれ得る。CTL応答性はまた、CTL応答性を正確に示す人工レポーターを使用しても決定し得る。抗原または抗原フラグメントを認識し、応答性または反応性であるCTLは、本明細書では「抗原応答性CTL」とも称される。細胞がB細胞である場合、そのような応答性は免疫グロブリンの放出を含み得る。
【0100】
「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、本明細書では互換的に使用され、Tヘルパー細胞(CD4
+T細胞)および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8
+T細胞)を含む。
【0101】
T細胞は、リンパ球として公知の白血球の群に属し、細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たす。それらは、T細胞受容体(TCR)と呼ばれるその細胞表面上の特殊な受容体の存在によって、B細胞およびナチュラルキラー細胞などの他のリンパ球型から区別することができる。胸腺はT細胞の成熟の責任を担う主要な器官である。各々が異なる機能を有する、T細胞のいくつかの異なるサブセットが発見されている。
【0102】
Tヘルパー細胞は、数ある機能の中でも特に、B細胞の形質細胞への成熟ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む免疫学的過程において他の白血球を助ける。これらの細胞は、その表面にCD4タンパク質を発現するため、CD4
+T細胞としても公知である。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面に発現されるMHCクラスII分子によってペプチド抗原と共に提示された場合に活性化する。ひとたび活性化すると、それらは速やかに分裂し、能動免疫応答を調節するかまたは助けるサイトカインと呼ばれる小さなタンパク質を分泌する。
【0103】
細胞傷害性T細胞は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊し、移植片拒絶反応にも関与する。これらの細胞は、その表面にCD8糖タンパク質を発現するので、CD8
+T細胞としても公知である。これらの細胞は、身体のほぼあらゆる細胞の表面上に存在する、MHCクラスIと会合した抗原に結合することによってその標的を認識する。
【0104】
T細胞の大部分は、いくつかのタンパク質の複合体として存在するT細胞受容体(TCR)を有する。実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体アルファおよびベータ(TCRαおよびTCRβ)遺伝子から産生される、α−TCR鎖およびβ−TCR鎖と呼ばれる2つの別々のペプチド鎖から成る。γδT細胞(ガンマデルタT細胞)は、その表面に異なるT細胞受容体(TCR)を有するT細胞の小さなサブセットである。しかし、γδT細胞では、TCRは1本のγ鎖と1本のδ鎖で構成される。このT細胞の群はαβT細胞よりもはるかにまれである(全T細胞の2%)。
【0105】
T細胞の活性化における最初のシグナルは、T細胞受容体が別の細胞上のMHCによって提示された短いペプチドに結合することによって与えられる。これは、そのペプチドに特異的なTCRを有するT細胞だけが活性化されることを確実にする。パートナー細胞は、通常はプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞であり、ナイーブ応答の場合は通常樹状細胞であるが、B細胞およびマクロファージは重要なAPCであり得る。
【0106】
本発明によれば、分子は、標準的なアッセイにおいてあらかじめ定められた標的に有意の親和性を有し、前記あらかじめ定められた標的に結合する場合、前記あらかじめ定められた標的に結合することができる。「親和性」または「結合親和性」は、しばしば平衡解離定数(K
D)によって測定される。分子は、標準的なアッセイにおいて標的に有意の親和性を有さず、前記標的に有意に結合しない場合、前記標的に(実質的に)結合することができない。
【0107】
細胞傷害性Tリンパ球は、抗原またはそのペプチドフラグメントをインビボで抗原提示細胞に組み込むことによってインビボで生成し得る。抗原またはそのペプチドフラグメントは、タンパク質として、DNAとして(例えばベクター内で)またはRNAとして存在し得る。抗原は、MHC分子のペプチドパートナーを生成するようにプロセシングされ得るが、そのフラグメントはさらなるプロセシングを必要とせずに提示され得る。特にこれらがMHC分子に結合することができる場合、後者が当てはまる。一般に、皮内注射による患者への投与が可能である。しかし、注射は、リンパ節内への結節内注射によっても実施し得る(Maloy et al.(2001),Proc Natl Acad Sci USA 98:3299−303)。生じる細胞は関心対象の複合体を提示し、自己細胞傷害性Tリンパ球によって認識され、前記自己細胞傷害性Tリンパ球はその後増殖する。
【0108】
CD4
+またはCD8
+T細胞の特異的活性化は様々な方法で検出し得る。特異的T細胞活性化を検出する方法には、T細胞の増殖、サイトカイン(例えばリンホカイン)の産生または細胞溶解活性の発生を検出することが含まれる。CD4
+T細胞に関しては、特異的T細胞活性化を検出するための好ましい方法は、T細胞の増殖の検出である。CD8
+T細胞に関しては、特異的T細胞活性化を検出するための好ましい方法は、細胞溶解活性の発生の検出である。
【0109】
「抗原の提示を特徴とする細胞」または「抗原を提示する細胞」または同様の表現により、MHC分子、特にMHCクラスI分子に関連して、その細胞が発現する抗原または前記抗原に由来するフラグメントを、例えば抗原のプロセシングによって提示する異常細胞、例えば癌細胞、または抗原提示細胞などの細胞が意味される。同様に、「抗原の提示を特徴とする疾患」という用語は、特にクラスI MHCによる、抗原の提示を特徴とする細胞を含む疾患を表す。細胞による抗原の提示は、抗原をコードするRNAなどの核酸で細胞をトランスフェクトすることによって実施され得る。
【0110】
「提示される抗原のフラグメント」または同様の表現により、フラグメントが、例えば抗原提示細胞に直接加えられた場合、MHCクラスIまたはクラスII、好ましくはMHCクラスIによって提示され得ることが意味される。1つの実施形態では、フラグメントは、抗原を発現する細胞によって天然に提示されるフラグメントである。
【0111】
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価の分子、例えば免疫学的に等価のアミノ酸配列が、例えば体液性および/もしくは細胞性免疫応答の誘導などの免疫学的作用の種類、誘導される免疫反応の強さおよび/もしくは持続期間、または誘導される免疫反応の特異性に関して、同じかもしくは基本的に同じ免疫学的特性を示すおよび/または同じかもしくは基本的に同じ免疫学的作用を及ぼすことを意味する。本発明に関連して、「免疫学的に等価」という用語は、好ましくは免疫化のために用いられるペプチドの免疫学的作用または特性に関して使用される。例えば、アミノ酸配列が被験体の免疫系に暴露されたとき参照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応を誘導する場合、前記アミノ酸配列は参照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。
【0112】
本発明に関連して「免疫エフェクター機能」という用語は、例えば腫瘍細胞の死滅、または腫瘍の播種および転移の阻害を含む腫瘍増殖の阻害および/もしくは腫瘍発生の阻害をもたらす、免疫系の成分によって媒介される任意の機能を包含する。好ましくは、本発明に関連して免疫エフェクター機能は、T細胞媒介性エフェクター機能である。そのような機能には、ヘルパーT細胞(CD4
+T細胞)の場合は、T細胞受容体によるMHCクラスII分子に関連した抗原または抗原フラグメントの認識、サイトカインの放出ならびに/またはCD8
+リンパ球(CTL)および/もしくはB細胞の活性化が含まれ、CTLの場合は、T細胞受容体によるMHCクラスI分子に関連した抗原または抗原フラグメントの認識、MHCクラスI分子に関連して提示される細胞、すなわちクラスI MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞の、例えばアポトーシスまたはパーフォリン媒介性細胞溶解による排除、IFN−γおよびTNF−αなどのサイトカインの産生ならびに抗原を発現する標的細胞の特異的細胞溶解性死滅が含まれる。
【0113】
本発明によれば、「スコア」という用語は、試験または検査の、通常は数字として表される結果に関する。「より良好なスコアである」または「最良のスコアである」などの用語は、試験または検査のより良好な結果または最良の結果に関する。
【0114】
「予測する」、「予測すること」または「予測」などの用語は、可能性の決定に関する。
【0115】
本発明によれば、1つ以上のMHC分子へのペプチドの結合に関するスコアを確認することは、1つ以上のMHC分子へのペプチドの結合の可能性を決定することを含む。
【0116】
1つ以上のMHC分子へのペプチドの結合に関するスコアは、任意のペプチド:MHC結合予測ツールを使用することによって確認され得る。例えば、免疫エピトープデータベース分析リソース(IEDB−AR:http://tools.iedb.org)を使用し得る。
【0117】
予測は通常、MHC分子のセット、例えばすべての可能なMHC対立遺伝子などの異なるMHC対立遺伝子のセットまたは、好ましくは本発明に従ってその免疫原性が決定されるべき修飾を有する患者において見出されるMHC対立遺伝子のセットもしくはサブセットに対して行われる。
【0118】
本発明によれば、1つ以上のT細胞受容体への、MHC−ペプチド複合体中に存在する場合の修飾ペプチドの結合に関するスコアを確認することは、T細胞受容体への、MHC分子との複合体中に存在する場合のペプチドの結合の可能性を決定することを含む。
【0119】
予測は、患者において見出されるT細胞受容体などの1つのT細胞受容体に対して、または好ましくはT細胞受容体のセット、例えば異なるT細胞受容体の未知のセットもしくは好ましくは本発明に従ってその免疫原性が決定されるべき修飾を有する患者において見出されるT細胞受容体のセットもしくはサブセットに対して行われ得る。
【0120】
さらに、予測は通常、MHC分子のセット、例えばすべての可能なMHC対立遺伝子などの異なるMHC対立遺伝子のセットまたは、好ましくは本発明に従ってその免疫原性が決定されるべき修飾を有する患者において見出されるMHC対立遺伝子のセットもしくはサブセットに対して行われる。
【0121】
1つ以上のT細胞受容体への、MHC−ペプチド複合体中に存在する場合の修飾ペプチドの結合に関するスコアは、(未知の)T細胞受容体レパートリーを考慮してT細胞受容体−ペプチド−MHC複合体の結合への修飾の影響を評価することによって確認され得る。1つ以上のT細胞受容体への、MHC−ペプチド複合体中に存在する場合の修飾ペプチドの結合に関するスコアは、一般にマッチするT細胞受容体に対する所与のペプチド−MHC分子の認識の一種の代用物と定義され得る。
【0122】
1つ以上のT細胞受容体への、MHC−ペプチド複合体中に存在する場合の修飾ペプチドの結合に関するスコアは、修飾アミノ酸と非修飾アミノ酸との間の物理化学的相違を確認することによって確認され得る。例えば、置換行列を使用し得る。そのような行列は、配列中の1個のアミノ酸が経時的に他のアミノ酸状態に変化する割合を表す。
【0123】
例えば進化に基づく対数オッズ行列などの対数オッズ行列を使用し得る:低い対数オッズスコアを有する置換は、高い対数オッズスコアを有する置換よりも、(未知の)T細胞受容体分子のプールからマッチするT細胞受容体を見出すより良好な可能性を有する(非修飾ペプチドにマッチするT細胞受容体の陰性選択に起因する)。しかし、このスコアを確認する他の方法がある。例えば、ペプチド中の変異の位置を検討すること(一部の位置は他の位置よりも結合に対してより少ない影響を有し得る)、置換アミノ酸に最も近い隣接アミノ酸(置換アミノ酸の二次構造に影響を及ぼし得る)を考慮に入れること、ペプチド配列全体を考慮に入れること、MHC分子内のペプチドの完全な構造情報を考慮に入れること等。スコアを確認することはまた、例えばNGSおよびT細胞受容体−ペプチド−MHC複合体のドッキングシミュレーションを実施することによって、T細胞受容体レパートリー(例えば患者のT細胞受容体レパートリーまたはそのサブセット)を決定することも含み得る。
【0124】
本発明はまた、同じ修飾および/または異なる修飾を含む異なるペプチドに関して本発明の方法を実施することも含み得る。
【0125】
1つの実施形態における「同じ修飾を含む異なるペプチド」という用語は、修飾タンパク質の異なるフラグメントを含むまたはこれらから成るペプチドに関し、前記異なるフラグメントは、タンパク質中に存在する同じ修飾を含むが、長さおよび/または修飾の位置が異なる。タンパク質が位置xに修飾を有する場合、各々が前記位置xをカバーする前記タンパク質の異なる配列ウィンドウを含む、前記タンパク質の2つ以上のフラグメントは、同じ修飾を含む異なるペプチドとみなされる。
【0126】
1つの実施形態における「異なる修飾を含む異なるペプチド」という用語は、同じおよび/または異なるタンパク質の異なる修飾を含む同じおよび/または異なる長さのペプチドに関する。タンパク質が位置xおよびyに修飾を有する場合、各々が位置xまたは位置yのいずれかをカバーする前記タンパク質の配列ウィンドウを含む、前記タンパク質の2つのフラグメントは、異なる修飾を含む異なるペプチドとみなされる。
【0127】
本発明はまた、本発明に従ってその免疫原性が決定されるべき修飾を有するタンパク質配列を、MHC結合のための適切なペプチド長に分割することならびに同じおよび/または異なるタンパク質の同じおよび/または異なる修飾を含む異なる修飾ペプチドの1つ以上のMHC分子への結合に関するスコアを確認することも含み得る。出力を順位付けることができ、前記出力は、ペプチドおよびそれらの結合の可能性を指示する予測スコアのリストを構成し得る。
【0128】
1つ以上のMHC分子への非修飾ペプチドの結合に関するスコアを確認する工程および/または1つ以上のT細胞受容体への、MHC−ペプチド複合体中に存在する場合の修飾ペプチドの結合に関するスコアを確認する工程を、その後、同じおよび/もしくは異なる修飾を含むすべての異なる修飾ペプチド、そのサブセット、例えば1つ以上のMHC分子への結合に関して最良のスコアである同じおよび/もしくは異なる修飾を含む修飾ペプチドに関して、または1つ以上のMHC分子への結合に関して最良のスコアである1個の修飾ペプチドだけに関して実施し得る。
【0129】
前記さらなる工程後、結果を順位付けることができ、前記結果は、ペプチドおよびそれらの免疫原性である可能性を指示する予測スコアのリストを構成し得る。
【0130】
好ましくは、そのような順位付けにおいて、1つ以上のMHC分子への修飾ペプチドの結合に関するスコアは、1つ以上のT細胞受容体への、MHC−ペプチド複合体中に存在する場合の修飾ペプチドの結合に関するスコア、好ましくは非修飾アミノ酸と修飾アミノ酸との間の化学的および物理的類似性に関するスコアよりも高く重み付けられ、ならびに1つ以上のT細胞受容体への、MHC−ペプチド複合体中に存在する場合の修飾ペプチドの結合に関するスコア、好ましくは非修飾アミノ酸と修飾アミノ酸との間の化学的および物理的類似性に関するスコアは、1つ以上のMHC分子への非修飾ペプチドの結合に関するスコアよりも高く重み付けられる。
【0131】
本発明に従ってその免疫原性が決定されるべきアミノ酸修飾は、細胞の核酸における変異から生じ得る。そのような変異は公知の配列決定技術によって同定され得る。
【0132】
1つの実施形態では、変異は、腫瘍標本のゲノム、エクソームおよび/またはトランスクリプトームと非腫瘍形成性標本のゲノム、エクソームおよび/またはトランスクリプトームとの間の配列相違を同定することによって決定され得る、癌患者の腫瘍標本中の癌特異的体細胞変異である。
【0133】
本発明によれば、腫瘍標本は、腫瘍または癌細胞を含むまたは含むと予想される患者に由来する身体試料などの任意の試料に関する。身体試料は、血液、原発性腫瘍からもしくは腫瘍転移から得られた組織試料、または腫瘍もしくは癌細胞を含む任意の他の試料などの任意の組織試料であり得る。好ましくは、身体試料は血液であり、癌特異的体細胞変異または配列相違は、血液中に含まれる1つ以上の循環腫瘍細胞(CTC)において決定される。別の実施形態では、腫瘍標本は、循環腫瘍細胞(CTC)などの1つ以上の単離された腫瘍もしくは癌細胞、または循環腫瘍細胞(CTC)などの1つ以上の単離された腫瘍もしくは癌細胞を含む試料に関する。
【0134】
非腫瘍形成性標本は、患者または、好ましくは患者と同じ種の別の個体、好ましくは腫瘍もしくは癌細胞を含まないもしくは含まないと予想される健常個体に由来する身体試料などの任意の試料に関する。身体試料は、血液または非腫瘍形成性組織からの試料などの任意の組織試料であり得る。
【0135】
本発明は、患者の癌変異シグネチャーの決定を含み得る。「癌変異シグネチャー」という用語は、患者の1つ以上の癌細胞中に存在するすべての癌変異を表し得るか、または患者の1つ以上の癌細胞中に存在する癌変異の一部分だけを表し得る。したがって、本発明は、患者の1つ以上の癌細胞中に存在するすべての癌特異的変異の同定を含み得るか、または患者の1つ以上の癌細胞中に存在する癌特異的変異の一部分だけの同定を含み得る。一般に、本発明の方法は、本発明の方法に含めるのに十分な数の修飾または修飾ペプチドを提供する多数の変異の同定を提供する。
【0136】
好ましくは、本発明に従って同定される変異は非同義変異、好ましくは腫瘍または癌細胞中で発現されるタンパク質の非同義変異である。
【0137】
1つの実施形態では、癌特異的体細胞変異または配列相違を、腫瘍標本のゲノム、好ましくはゲノム全体において決定する。したがって、本発明は、1つ以上の癌細胞のゲノム、好ましくはゲノム全体の癌変異シグネチャーを同定することを含み得る。1つの実施形態では、癌患者の腫瘍標本中の癌特異的体細胞変異を同定する工程は、全ゲノム癌変異プロフィールを同定することを含む。
【0138】
1つの実施形態では、癌特異的体細胞変異または配列相違を、腫瘍標本のエクソーム、好ましくはエクソーム全体において決定する。したがって、本発明は、1つ以上の癌細胞のエクソーム、好ましくはエクソーム全体の癌変異シグネチャーを同定することを含み得る。1つの実施形態では、癌患者の腫瘍標本中の癌特異的体細胞変異を同定する工程は、全エクソーム癌変異プロフィールを同定することを含む。
【0139】
1つの実施形態では、癌特異的体細胞変異または配列相違を、腫瘍標本のトランスクリプトーム、好ましくはトランスクリプトーム全体において決定する。したがって、本発明は、1つ以上の癌細胞のトランスクリプトーム、好ましくはトランスクリプトーム全体の癌変異シグネチャーを同定することを含み得る。1つの実施形態では、癌患者の腫瘍標本中の癌特異的体細胞変異を同定する工程は、全トランスクリプトーム癌変異プロフィールを同定することを含む。
【0140】
1つの実施形態では、癌特異的体細胞変異を同定するまたは配列相違を同定する工程は、1個以上、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはさらにそれ以上の癌細胞の単一細胞シークエンシングを含む。したがって、本発明は、前記1つ以上の癌細胞の癌変異シグネチャーを同定することを含み得る。1つの実施形態では、癌細胞は循環腫瘍細胞である。循環腫瘍細胞などの癌細胞は、単一細胞シークエンシングの前に単離し得る。
【0141】
1つの実施形態では、癌特異的体細胞変異を同定するまたは配列相違を同定する工程は、次世代シークエンシング(NGS)を用いることを含む。
【0142】
1つの実施形態では、癌特異的体細胞変異を同定するまたは配列相違を同定する工程は、腫瘍標本のゲノムDNAおよび/またはRNAを配列決定することを含む。
【0143】
癌特異的体細胞変異または配列相違を明らかにするため、腫瘍標本から得られた配列情報を、好ましくは、患者または異なる個体のいずれかから入手し得る生殖系列細胞などの正常な非癌性細胞のDNAまたはRNAなどの核酸を配列決定することから得られた配列情報などの参照と比較する。1つの実施形態では、正常なゲノム生殖系列DNAは、末梢血単核細胞(PBMC)から得られる。
【0144】
「ゲノム」という用語は、生物または細胞の染色体中の遺伝情報の総量に関する。
【0145】
「エクソーム」という用語は、発現される遺伝子のコード部分であるエクソンによって形成される生物のゲノムのパートを指す。エクソームは、タンパク質および他の機能的遺伝子産物の合成において使用される遺伝的青写真を提供する。これは、ゲノムの機能的に最も重要なパートであり、それゆえ、生物の表現型に寄与する可能性が最も高い。ヒトゲノムのエクソームは全ゲノムの1.5%を構成すると推定されている(Ng,PC et al.,PLoS Gen.,4(8):1−15,2008)。
【0146】
「トランスクリプトーム」という用語は、1個の細胞または細胞の集団において産生されるmRNA、rRNA、tRNAおよび他の非コードRNAを含む、すべてのRNA分子のセットに関する。本発明に関連してトランスクリプトームは、特定の時点で所与の個体の1個の細胞、細胞の集団、好ましくは癌細胞の集団、またはすべての細胞において産生されるすべてのRNA分子のセットを意味する。
【0147】
「核酸」は、本発明によれば、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、より好ましくはRNA、最も好ましくはインビトロ転写RNA(IVT RNA)または合成RNAである。核酸には、本発明によれば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子および化学合成された分子が含まれる。本発明によれば、核酸は一本鎖または二本鎖としておよび直鎖状または共有結合閉環分子として存在し得る。核酸は、本発明によれば、単離することができる。「単離された核酸」という用語は、本発明によれば、核酸が、(i)インビトロで、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅された、(ii)クローニングによって組換え生産された、(iii)例えば切断およびゲル電気泳動による分離によって精製された、または(iv)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。核酸は、細胞への導入、すなわち細胞のトランスフェクションのために、特にDNA鋳型からのインビトロ転写によって調製することができるRNAの形態で使用することができる。前記RNAは、適用の前に配列の安定化、キャッピングおよびポリアデニル化によってさらに修飾することができる。
【0148】
「遺伝物質」という用語は、DNAもしくはRNAのいずれかの単離された核酸、二重らせんの一部分、染色体の一部分、または生物もしくは細胞のゲノム全体、特にそのエクソームもしくはトランスクリプトームを指す。
【0149】
「変異」という用語は、参照と比較した核酸配列の変化または相違(ヌクレオチドの置換、付加または欠失)を指す。「体細胞変異」は、生殖細胞(精子および卵子)を除く身体のいずれの細胞においても起こり得、それゆえ子には伝わらない。これらの変化は癌または他の疾患を引き起こし得る(が、常にというわけではない)。好ましくは、変異は非同義変異である。「非同義変異」という用語は、翻訳産物中にアミノ酸置換などのアミノ酸変化を生じさせる変異、好ましくはヌクレオチド置換を指す。
【0150】
本発明によれば、「変異」という用語は、点突然変異、インデル、融合、クロモスリプシスおよびRNA編集を包含する。
【0151】
本発明によれば、「インデル」という用語は、共局在する挿入と欠失およびヌクレオチドの正味の増加または減少をもたらす変異と定義される、特殊な変異クラスを表す。ゲノムのコード領域では、インデルの長さが3の倍数でない限り、これはフレームシフト変異を生じさせる。インデルは点突然変異と対比させることができる;インデルが配列からヌクレオチドを挿入および欠失させる場合、点突然変異はヌクレオチドの1個を置き換える置換の1つの形態である。
【0152】
融合は、2個のそれまでは別々の遺伝子から形成されたハイブリッド遺伝子を生成することができる。これは、転座、中間部欠失または染色体逆位の結果として起こり得る。しばしば、融合遺伝子は癌遺伝子である。発癌性融合遺伝子は、2つの融合パートナーから新しいまたは異なる機能を有する遺伝子産物をもたらし得る。あるいは、癌原遺伝子が強力なプロモーターに融合し、それにより、強力なプロモーターによって引き起こされる上流の融合パートナーの上方調節によって発癌機能が作動し始める。発癌性融合転写物は、トランススプライシングまたはリードスルー事象によってももたらされ得る。
【0153】
本発明によれば、「クロモスリプシス」という用語は、単一の破壊事象によってゲノムの特定領域が崩壊し、その後一緒に縫合される遺伝的現象を指す。
【0154】
本発明によれば、「RNA編集」または「RNAエディティング」という用語は、RNA分子中の情報内容が塩基組成の化学的変化を介して改変される分子過程を指す。RNAエディティングには、シチジン(C)からウリジン(U)へおよびアデノシン(A)からイノシン(I)への脱アミノ化、ならびに非鋳型ヌクレオチド付加および挿入などのヌクレオシド修飾が含まれる。mRNAにおけるRNAエディティングは、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を、ゲノムDNA配列によって予測されるものと異なるように有効に改変する。
【0155】
「癌変異シグネチャー」という用語は、非癌性参照細胞と比較した場合に癌細胞中に存在する変異のセットを指す。
【0156】
本発明によれば、「参照」は、腫瘍標本から本発明の方法で得られた結果を関連付け、比較するために使用し得る。典型的には、「参照」は、患者または1つ以上の異なる個体、好ましくは健常個体、特に同じ種の個体から得られた、1つ以上の正常標本、特に癌疾患に罹患していない標本に基づいて入手し得る。「参照」は、十分に多い数の正常標本を試験することによって経験的に決定することができる。
【0157】
変異を決定するために任意の適切なシークエンシング法を本発明に従って使用することができ、次世代シークエンシング(NGS)技術が好ましい。第三世代シークエンシング法は、方法のシークエンシング工程を迅速化するために将来はNGS技術に取って代わる可能性がある。明確化のために、本発明に関連して「次世代シークエンシング」または「NGS」という用語は、サンガー化学として公知の「従来の」シークエンシング法に対して、ゲノム全体を小片に分割することによって核酸鋳型をゲノム全体に沿って並行してランダムに読み取る、すべての新規ハイスループットシークエンシング技術を意味する。そのようなNGS技術(超並列シークエンシング技術としても公知である)は、全ゲノム、エクソーム、トランスクリプトーム(ゲノムのすべての転写配列)またはメチローム(ゲノムのすべてのメチル化配列)の核酸配列情報を非常に短期間、例えば1〜2週間以内、好ましくは1〜7日間以内、または最も好ましくは24時間未満内に送達することができ、原理上は、単一細胞シークエンシングアプローチを可能にする。市販されているかまたは文献中で言及されている複数のNGSプラットフォーム、例えばZhang et al.2011:The impact of next−generation sequencing on genomics.J.Genet Genomics 38(3),95−109;またはVoelkerding et al.2009:Next generation sequencing:From basic research to diagnostics.Clinical chemistry 55,641−658に詳述されているものを本発明に関連して使用することができる。そのようなNGS技術/プラットフォームの非限定的な例は以下のものである:
1)例えば、Ronaghi et al.1998:A sequencing method based on real−time pyrophosphate.Science 281(5375),363−365に最初に記載された、Roche関連会社である454 Life Sciences(Branford,Connecticut)のGS−FLX 454 Genome Sequencer(商標)において実行されるパイロシークエンス法として公知の「合成によるシークエンシング」技術。この技術は、一本鎖DNA結合ビーズが、激しくボルテックスすることにより、エマルジョンPCR増幅のために油に取り囲まれたPCR反応物を含有する水性ミセル中に被包される、エマルジョンPCRを用いる。パイロシークエンシング工程中、ポリメラーゼがDNA鎖を合成すると共に、ヌクレオチド組込みの間にリン酸分子から放出される光が記録される。
2)可逆的色素−ターミネータに基づいてSolexa(現在はIllumina Inc.,San Diego,Californiaの一部)によって開発された、例えばIllumina/Solexa Genome Analyzer(商標)およびIllumina HiSeq 2000 Genome Analyzer(商標)において実行される「合成によるシークエンシング」アプローチ。この技術では、4つすべてのヌクレオチドを、DNAポリメラーゼと共にフローセルチャネル中のオリゴプライミングしたクラスターフラグメントに同時に添加する。架橋増幅は、シークエンシングのために4つすべての蛍光標識ヌクレオチドを有するクラスター鎖を伸長させる。
3)例えばApplied Biosystems(現在はLife Technologies Corporation,Carlsbad.California)のSOLid(商標)プラットフォームにおいて実行される、「ライゲーションによるシークエンシング」アプローチ。この技術では、固定された長さのすべての可能なオリゴヌクレオチドのプールを配列決定された位置に従って標識する。オリゴヌクレオチドをアニーリングし、連結する;配列をマッチさせるためのDNAリガーゼによる選択的なライゲーションは、その位置のヌクレオチドの情報を与えるシグナルをもたらす。シークエンシングの前に、DNAをエマルジョンPCRによって増幅する。各々が同じDNA分子のコピーだけを含有する、生じたビーズをスライドガラス上に載せる。2番目の例として、Dover Systems(Salem,New Hampshire)のPolonator(商標)G.007プラットフォームも、ランダムに配置したビーズに基づくエマルジョンPCRを使用して並列シークエンシングのためにDNAフラグメントを増幅することによる、「ライゲーションによるシークエンシング」アプローチを用いる。
4)例えばPacific Biosciences(Menlo Park,California)のPacBio RSシステムまたはHelicos Biosciences(Cambridge,Massachusetts)のHeliScope(商標)プラットフォームにおいて実行される、単一分子シークエンシング技術。この技術の明らかな特徴は、単一分子リアルタイム(SMRT)DNAシークエンシングと定義される、単一DNAまたはRNA分子を増幅せずに配列決定するその能力である。例えばHeliScopeは、各々のヌクレオチドが合成されると共にそれを直接検出する高感度蛍光検出システムを用いる。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づく同様のアプローチがVisigen Biotechnology(Houston,Texas)から開発されている。他の蛍光に基づく単一分子技術には、U.S.Genomics(GeneEngine(商標))およびGenovoxx(AnyGene(商標))からのものがある。
5)例えば複製中の一本鎖上のポリメラーゼ分子の動きを観測するためにチップ上に配置された様々なナノ構造体を用いる単一分子シークエンシングのためのナノ技術。ナノ技術に基づくアプローチの非限定的な例は、Oxford Nanopore Technologies(Oxford,UK)のGridON(商標)プラットフォーム、Nabsys(Providence,Rhode Island)によって開発されたハイブリダイゼーション支援ナノポアシークエンシング(HANS(商標))プラットフォーム、およびコンビナトリアルプローブアンカーライゲーション(cPAL(商標))と呼ばれるDNAナノボール(DNB)技術を用いた、特許保護されているリガーゼに基づくDNAシークエンシングプラットフォームである。
6)単一分子シークエンシングのための電子顕微鏡検査に基づく技術、例えばLightSpeed Genomics(Sunnyvale,California)およびHalcyon Molecular(Redwood City,California)によって開発されたもの。
7)DNAの重合の間に放出される水素イオンの検出に基づくイオン半導体シークエンシング。例えばIon Torrent Systems(San Francisco,California)は、この生化学的工程を超並列的に実施するために微細加工ウェルの高密度アレイを使用する。各々のウェルは異なるDNA鋳型を保持する。ウェルの下にはイオン感受性層があり、その下には特許保護されているイオンセンサーがある。
【0158】
好ましくは、DNAおよびRNA調製物はNGSのための出発物質としての役割を果たす。そのような核酸は、生物学的物質などの試料から、例えば新鮮、急速冷凍もしくはホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織(FFPE)から、または新たに単離された細胞から、または患者の末梢血中に存在するCTCから容易に得ることができる。正常な非変異ゲノムDNAまたはRNAは正常な体組織から抽出することができるが、生殖系列細胞が本発明に関連して好ましい。生殖系列DNAまたはRNAは、非血液学的悪性腫瘍を有する患者における末梢血単核細胞(PBMC)から抽出し得る。FFPE組織または新鮮単離された単一細胞から抽出された核酸は高度に断片化されているが、これらはNGS適用に適する。
【0159】
エクソームシークエンシングのためのいくつかの標的NGS方法が文献に記載されており(総説については、例えばTeer and Mullikin 2010:Human Mol Genet 19(2),R145−51参照)、それらのすべてが本発明と共に使用できる。これらの方法の多くは(例えばゲノム捕捉、ゲノム分配、ゲノム濃縮等として記述されている)、ハイブリダイゼーション技術を使用し、アレイに基づく(例えばHodges et al.2007:Nat.Genet.39,1522−1527)および液体に基づく(例えばChoi et al.2009:Proc.Natl.Acad.Sci USA 106,19096−19101)ハイブリダイゼーションアプローチを含む。DNA試料の調製およびその後のエクソーム捕獲のための市販のキットも入手可能である;例えばIllumina Inc.(San Diego,California)は、TruSeq(商標)DNA Sample Preparation Kitおよびエクソーム濃縮キット、TruSeq(商標)Exome Enrichment Kitを提供している。
【0160】
例えば腫瘍試料の配列を生殖系列試料の配列などの参照試料の配列と比較する場合、癌特異的体細胞変異または配列相違を検出する際に偽陽性所見の数を低減するために、これらの試料タイプの一方または両方のレプリケート中の配列を決定することが好ましい。したがって、生殖系列試料の配列などの参照試料の配列を2回または3回以上決定することが好ましい。あるいはまたは加えて、腫瘍試料の配列を2回または3回以上決定する。また、生殖系列試料の配列などの参照試料の配列および/または腫瘍試料の配列を、ゲノムDNA中の配列を少なくとも1回決定し、前記参照試料および/または前記腫瘍試料のRNA中の配列を少なくとも1回決定することにより、2回以上決定することも可能であり得る。例えば、生殖系列試料などの参照試料のレプリケート間の変動を決定することにより、統計的量としての体細胞変異の予想される偽陽性率(FDR)を推定することができる。1つの試料の技術的反復は同一の結果を生じるはずであり、この「対同一物比較」において検出されるいずれの変異も偽陽性である。特に、参照試料と比較して腫瘍試料における体細胞変異検出についての偽発見率を決定するため、参照試料の技術的反復を、偽陽性の数を推定するための参照として用いることができる。さらに、様々な品質関連測定基準(例えばカバレッジまたはSNP品質)を、機械学習アプローチを用いて単一品質スコアに組み合わせ得る。所与の体性変化に関して、上回る品質スコアを有するすべての他の変化を計数することができ、これはデータセット中のすべての変化の順位付けを可能にする。
【0161】
本発明に関連して、「RNA」という用語は、少なくとも1個のリボヌクレオチド残基を含み、好ましくは全面的にまたは実質的にリボヌクレオチド残基から成る分子に関する。「リボヌクレオチド」は、β−D−リボフラノシル基の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。「RNA」という用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的または完全に精製されたRNAなどの単離されたRNA、基本的に純粋なRNA、合成RNAならびに組換え生成されたRNA、例えば1個以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または変化によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAを包含する。そのような変化には、例えばRNAの末端へのまたは内部での、例えばRNAの1個以上のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド物質の付加が含まれ得る。RNA分子中のヌクレオチドには、非標準ヌクレオチド、例えば天然には存在しないヌクレオチドまたは化学合成されたヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドも含まれ得る。これらの変化したRNAは、類似体または天然に存在するRNAの類似体と称され得る。
【0162】
本発明によれば、「RNA」という用語は、「mRNA」を包含し、好ましくは「mRNA」に関する。「mRNA」という用語は「メッセンジャーRNA」を意味し、DNA鋳型を使用することによって生成され、およびペプチドまたはポリペプチドをコードする、「転写産物」に関する。典型的には、mRNAは、5'−UTR、タンパク質コード領域および3'−UTRを含む。mRNAは、細胞中およびインビトロで限られた半減期しか有さない。本発明に関連して、mRNAはDNA鋳型からインビトロ転写によって生成され得る。インビトロ転写の方法は当業者に公知である。例えば、様々なインビトロ転写キットが市販されている。
【0163】
本発明によれば、RNAの安定性および翻訳効率は必要に応じて改変し得る。例えば、RNAの安定化作用を有するおよび/または翻訳効率を高める1つ以上の修飾によってRNAを安定化し、その翻訳を増大させ得る。そのような修飾は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるPCT/EP2006/009448号に記載されている。本発明に従って使用されるRNAの発現を増大させるために、コード領域内、すなわち発現されるペプチドまたはタンパク質をコードする配列内で、好ましくは発現されるペプチドまたはタンパク質の配列を変化させずに、GC含量を増大させてmRNAの安定性を高め、コドン最適化を実施し、したがって細胞中での翻訳を増強するようにRNAを修飾し得る。
【0164】
本発明で使用されるRNAに関連して「修飾」という用語は、天然では前記RNA中に存在しないRNAの任意の修飾を包含する。
【0165】
本発明の1つの実施形態では、本発明に従って使用されるRNAは、キャップされていない5'−三リン酸を有さない。そのようなキャップされていない5'−三リン酸の除去は、RNAをホスファターゼで処理することによって達成できる。
【0166】
本発明によるRNAは、その安定性を高めるおよび/または細胞傷害性を低下させるために修飾されたリボヌクレオチドを有し得る。例えば、1つの実施形態では、本発明に従って使用されるRNA中で、シチジンを5−メチルシチジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。あるいはまたは加えて、1つの実施形態では、本発明に従って使用されるRNA中で、ウリジンをプソイドウリジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。
【0167】
1つの実施形態では、「修飾」という用語は、RNAに5'キャップまたは5'キャップ類似体を提供することに関する。「5'キャップ」という用語は、mRNA分子の5'末端に認められるキャップ構造を指し、一般に独特の5'−5'三リン酸結合によってmRNAに連結されたグアノシンヌクレオチドから成る。1つの実施形態では、このグアノシンは7位でメチル化されている。「従来の5'キャップ」という用語は、天然に存在するRNAの5'キャップ、好ましくは7−メチルグアノシンキャップ(m
7G)を指す。本発明に関連して、「5'キャップ」という用語には、RNAキャップ構造に類似し、好ましくはインビボおよび/または細胞中で、RNAに結合した場合RNAを安定化するおよび/またはRNAの翻訳を増強する能力を有するように修飾されている5'キャップ類似体が含まれる。
【0168】
RNAに5'キャップまたは5'キャップ類似体を提供することは、前記5'キャップまたは5'キャップ類似体の存在下でのDNA鋳型のインビトロ転写によって達成でき、前記5'キャップを生成されたRNA鎖に同時転写によって組み込むか、または、例えばインビトロ転写によってRNAを生成し、キャッピング酵素、例えばワクシニアウイルスのキャッピング酵素を用いて転写後に5'キャップをRNAに結合し得る。
【0169】
RNAはさらなる修飾を含み得る。例えば、本発明で使用されるRNAのさらなる修飾は、天然に存在するポリ(A)尾部の伸長もしくは末端切断、または前記RNAのコード領域に関連しない非翻訳領域(UTR)の導入などの5'UTRもしくは3'UTRの変化、例えばグロビン遺伝子、例えばα2グロビン、α1グロビン、βグロビン、好ましくはβグロビン、より好ましくはヒトβグロビンに由来する3'UTRの1コピー以上、好ましくは2コピーと既存の3'UTRの交換もしくは前記グロビン遺伝子由来の3'UTRの1コピー以上、好ましくは2コピーの挿入であり得る。
【0170】
マスクされていないポリA配列を有するRNAは、マスクされたポリA配列を有するRNAよりも効率的に翻訳される。「ポリ(A)尾部」または「ポリA配列」という用語は、典型的にはRNA分子の3'末端に位置するアデニル(A)残基の配列に関し、「マスクされていないポリA配列」は、RNA分子の3'末端のポリA配列がポリA配列のAで終了し、ポリA配列の3'末端側、すなわち下流に位置するA以外のヌクレオチドが後続していないことを意味する。さらに、約120塩基対の長いポリA配列は、RNAの最適な転写産物安定性および翻訳効率をもたらす。
【0171】
それゆえ、本発明に従って使用されるRNAの安定性および/または発現を増大させるために、好ましくは10〜500、より好ましくは30〜300、さらに一層好ましくは65〜200、特に100〜150個のアデノシン残基の長さを有するポリA配列と共に存在するようにRNAを修飾し得る。特に好ましい実施形態では、ポリA配列は約120個のアデノシン残基の長さを有する。本発明に従って使用されるRNAの安定性および/または発現をさらに増大させるために、ポリA配列を脱マスク化することができる。
【0172】
加えて、RNA分子の3'非翻訳領域(UTR)内への3'非翻訳領域の組込みは、翻訳効率の上昇をもたらすことができる。2つ以上のそのような3'非翻訳領域を組み込むことによって相乗効果を達成し得る。3'非翻訳領域は、それらが導入されるRNAに対して自己または異種であり得る。1つの特定の実施形態では、3'非翻訳領域はヒトβグロビン遺伝子に由来する。
【0173】
上述した修飾、すなわちポリA配列の組込み、ポリA配列の脱マスク化および1つ以上の3'非翻訳領域の組込みの組合せは、RNAの安定性および翻訳効率の上昇に相乗的影響を及ぼす。
【0174】
RNAの「安定性」という用語は、RNAの「半減期」に関する。「半減期」は、分子の活性、量または数の半分を除去するのに必要な期間に関する。本発明に関連して、RNAの半減期は前記RNAの安定性の指標である。RNAの半減期は、RNAの「発現の持続期間」に影響を及ぼし得る。長い半減期を有するRNAは長期間にわたって発現されると予想することができる。
【0175】
言うまでもなく、本発明によれば、RNAの安定性および/または翻訳効率を低下させることが望ましい場合、RNAの安定性および/または翻訳効率を上昇させる上述した要素の機能を妨げるようにRNAを修飾することが可能である。
【0176】
「発現」という用語は、本発明によればその最も一般的な意味で使用され、例えば転写および/または翻訳による、RNAおよび/またはペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の産生を含む。RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、特にペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の産生に関する。また、核酸の部分的発現も含む。さらに、発現は一過性または安定であり得る。
【0177】
本発明によれば、発現という用語には、「異所発現」または「異常発現」も含まれる。「異所発現」または「異常発現」は、本発明によれば、参照、例えば特定のタンパク質、例えば腫瘍抗原の異所または異常発現に関連する疾患を有していない被験体の状態と比較して、発現が変化している、好ましくは増大していることを意味する。発現の増大は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%以上の増大を指す。1つの実施形態では、発現は罹患組織においてのみ認められ、健常組織中での発現は抑制されている。
【0178】
「特異的に発現される」という用語は、タンパク質が基本的に特定の組織または器官中でのみ発現されることを意味する。例えば、胃粘膜中で特異的に発現される腫瘍抗原は、前記タンパク質が主として胃粘膜中で発現され、他の組織では発現されないかまたは他の組織または器官型では有意の程度に発現されないことを意味する。したがって、胃粘膜の細胞中で排他的に発現され、精巣などの他の組織では有意に低い程度に発現されるタンパク質は、胃粘膜の細胞中で特異的に発現される。一部の実施形態では、腫瘍抗原はまた、正常条件下では2以上の組織型または器官、例えば2または3の組織型または器官で、しかし好ましくは3以下の異なる組織または器官型において特異的に発現され得る。この場合、腫瘍抗原はこれらの器官中で特異的に発現される。例えば、腫瘍抗原が、正常条件下で好ましくは肺と胃においてほぼ同程度に発現される場合、前記腫瘍抗原は肺および胃において特異的に発現される。
【0179】
本発明に関連して、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される過程に関する。その後、RNAはタンパク質へと翻訳され得る。本発明によれば、「転写」という用語は「インビトロ転写」を含み、ここで「インビトロ転写」という用語は、RNA、特にmRNAが、好ましくは適切な細胞抽出物を使用して、無細胞系においてインビトロ合成される過程に関する。好ましくは、クローニングベクターを転写産物の生成に適用する。これらのクローニングベクターは一般に転写ベクターと称され、本発明によれば「ベクター」という用語に包含される。本発明によれば、本発明で使用されるRNAは、好ましくはインビトロ転写RNA(IVT−RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって入手し得る。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼについての任意のプロモーターであり得る。RNAポリメラーゼの特定の例は、T7、T3およびSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは、本発明によるインビトロ転写は、T7またはSP6プロモーターによって制御される。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することによって入手し得る。cDNAはRNAの逆転写によって入手し得る。
【0180】
本発明による「翻訳」という用語は、メッセンジャーRNAの鎖が、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を作製するようにアミノ酸の配列のアセンブリを指令する、細胞のリボソームにおける過程に関する。
【0181】
本発明によれば、核酸と機能的に連結し得る発現制御配列または調節配列は、核酸に関して同種または異種であり得る。コード配列および調節配列は、コード配列の転写または翻訳が調節配列の制御下または影響下にあるように一緒に共有結合されている場合、「機能的に」一緒に連結されている。コード配列と調節配列の機能的連結により、コード配列が機能性タンパク質に翻訳される場合、調節配列の誘導は、コード配列の読み枠シフトを引き起こすことなくまたはコード配列が所望のタンパク質もしくはペプチドに翻訳されるのを不可能にすることなく、コード配列の転写をもたらす。
【0182】
「発現制御配列」または「調節配列」という用語は、本発明によれば、核酸の転写または誘導されたRNAの翻訳を制御する、プロモーター、リボソーム結合配列および他の制御要素を含む。本発明の特定の実施形態では、調節配列を制御することができる。調節配列の正確な構造は、種または細胞型に依存して異なり得るが、一般に転写または翻訳の開始に関与する5'非転写配列ならびに5'および3'非翻訳配列、例えばTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等を含む。特に、5'非転写調節配列は、機能的に結合した遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含有する。調節配列はまた、エンハンサー配列または上流活性化配列も含み得る。
【0183】
好ましくは、本発明によれば、細胞中で発現されるべきRNAを前記細胞に導入する。本発明による方法の1つの実施形態では、細胞に導入されるべきRNAは、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られる。
【0184】
本発明によれば、「を発現することができるRNA」および「をコードするRNA」などの用語は、本明細書では互換的に使用され、特定のペプチドまたはポリペプチドに関して、RNAが、適切な環境中に、好ましくは細胞内に存在する場合、発現されて前記ペプチドまたはポリペプチドを産生できることを意味する。好ましくは、本発明によるRNAは、細胞の翻訳機構と相互作用して、RNAが発現することができるペプチドまたはポリペプチドを提供することができる。
【0185】
「移入する」、「導入する」または「トランスフェクトする」などの用語は、本明細書では互換的に使用され、核酸、特に外因性または異種核酸、特にRNAの、細胞への導入に関する。本発明によれば、細胞は、器官、組織および/または生物のパートを形成することができる。本発明によれば、核酸の投与は、裸の核酸としてまたは投与試薬と組み合わせて達成される。好ましくは、核酸の投与は裸の核酸の形態で行われる。好ましくは、RNAは、RNアーゼ阻害剤などの安定化物質と組み合わせて投与される。本発明はまた、長期間の持続的発現を可能にするために細胞への核酸の反復導入も想定する。
【0186】
RNAが、例えばRNAと複合体を形成するかまたはRNAが封入もしくは被包された小胞を形成することによって会合し、裸のRNAと比較してRNAの安定性の増大をもたらすことができる任意の担体を用いて細胞をトランスフェクトすることができる。本発明による有用な担体には、例えば脂質含有担体、例えばカチオン性脂質、リポソーム、特にカチオン性リポソーム、ミセル、およびナノ粒子が含まれる。カチオン性脂質は、負に荷電した核酸と複合体を形成し得る。任意のカチオン性脂質を本発明に従って使用し得る。
【0187】
好ましくは、ペプチドまたはポリペプチドをコードするRNAの細胞への、特にインビボで存在する細胞への導入は、細胞中での前記ペプチドまたはポリペプチドの発現をもたらす。特定の実施形態では、特定の細胞への核酸の標的化が好ましい。そのような実施形態では、細胞への核酸の投与に適用される担体(例えばレトロウイルスまたはリポソーム)は標的化分子を示す。例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体または標的細胞上の受容体のリガンドなどの分子を、核酸担体中に組み込み得るかまたは核酸担体に結合し得る。核酸をリポソームによって投与する場合は、標的化および/または取り込みを可能にするために、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質をリポソーム製剤に組み込み得る。そのようなタンパク質は、特定の細胞型に特異的なキャプシドタンパク質またはそのフラグメント、インターナライズされるタンパク質に対する抗体、細胞内の位置を標的とするタンパク質等を包含する。
【0188】
「細胞」または「宿主細胞」という用語は、好ましくは無傷の細胞、すなわち酵素、細胞小器官または遺伝物質などのその正常な細胞内成分が放出されていない無傷の膜を有する細胞である。無傷の細胞は、好ましくは生存可能な細胞、すなわちその正常な代謝機能を果たすことができる生細胞である。好ましくは、前記用語は、本発明によれば外因性核酸で形質転換またはトランスフェクトすることができる任意の細胞に関する。「細胞」という用語は、本発明によれば原核細胞(例えば大腸菌(E.coli))または真核細胞(例えば樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、HEK293細胞、HELA細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を包含する。外因性核酸は、細胞の内部で(i)それ自体で自由に分散して、(ii)組換えベクターに組み込まれて、または(iii)宿主細胞ゲノムまたはミトコンドリアDNAに組み入れられて見出され得る。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギおよび霊長動物由来の細胞などの哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は多くの組織型に由来してよく、初代細胞および細胞株を包含する。具体的な例には、ケラチノサイト、末梢血白血球、骨髄幹細胞および胚性幹細胞が含まれる。さらなる実施形態では、細胞は抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0189】
核酸分子を含む細胞は、好ましくは前記核酸によってコードされるペプチドまたはポリペプチドを発現する。
【0190】
「クローン増殖」という用語は、特定の実体が増加する過程を指す。本発明に関連して、この用語は、好ましくは、リンパ球が抗原によって刺激され、増殖して、前記抗原を認識する特定のリンパ球が増幅される免疫応答に関連して使用される。好ましくは、クローン増殖はリンパ球の分化をもたらす。
【0191】
「低減する」または「阻害する」などの用語は、レベルの全体的な低下、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上のレベルの全体的な低下を生じさせる能力に関する。「阻害する」または同様の表現は、完全なまたは基本的に完全な阻害、すなわちゼロへのまたは基本的にゼロへの低減を包含する。
【0192】
「増大させる」、「増強する」、「促進する」または「延長する」などの用語は、好ましくは、およそ少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも100%、好ましくは少なくとも200%、特に少なくとも300%の増大、増強、促進または延長に関する。これらの用語はまた、ゼロからまたは測定不能もしくは検出不能のレベルからゼロを上回るレベルまたは測定可能もしくは検出可能なレベルへの増大、増強、促進または延長にも関し得る。
【0193】
本発明は、本発明の方法によって免疫原性であると予測されたアミノ酸修飾または修飾ペプチドに基づいて設計された癌ワクチンなどのワクチンを提供する。
【0194】
本発明によれば、「ワクチン」という用語は、投与時に、病原体または癌細胞などの異常細胞を認識し、攻撃する免疫応答、特に細胞性免疫応答を誘導する医薬調製物(医薬組成物)または生成物に関する。ワクチンは、疾患の予防または治療のために使用し得る。「個別化癌ワクチン」または「個体に合わせた癌ワクチン」という用語は、特定の癌患者に関し、癌ワクチンが個々の癌患者の必要性または特有の状況に適合されていることを意味する。
【0195】
1つの実施形態では、本発明に従って提供されるワクチンは、本発明の方法によって免疫原性であると予測された1つ以上のアミノ酸修飾もしくは1つ以上の修飾ペプチドを含むペプチドもしくはポリペプチド、または前記ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸、好ましくはRNAを含有し得る。
【0196】
本発明に従って提供される癌ワクチンは、患者に投与された場合、患者の腫瘍に特異的なT細胞を刺激する、プライミングするおよび/または増殖させるのに適した1つ以上のT細胞エピトープを提供する。T細胞は、好ましくはT細胞エピトープが由来する抗原を発現する細胞に対するものである。したがって、本明細書で述べるワクチンは、好ましくは、クラスI MHCによる1つ以上の腫瘍関連ネオ抗原の提示を特徴とする癌疾患に対する細胞性応答、好ましくは細胞傷害性T細胞活性を誘導するまたは促進することができる。本発明に従って提供されるワクチンは癌特異的変異を標的とするので、患者の腫瘍に特異的である。
【0197】
本発明に従って提供されるワクチンは、患者に投与された場合、好ましくは、本発明の方法によって免疫原性であると予測されたアミノ酸修飾または修飾ペプチドを組み込んだ、1個以上のT細胞エピトープ、例えば2個以上、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、30個以上および好ましくは60個まで、55個まで、50個まで、45個まで、40個まで、35個までまたは30個までのT細胞エピトープを提供するワクチンに関する。そのようなT細胞エピトープは、本明細書では「ネオエピトープ」とも称される。患者の細胞、特に抗原提示細胞によるこれらのエピトープの提示は、好ましくは、MHCに結合した場合エピトープを標的とする、したがって、T細胞エピトープが由来する抗原を発現し、腫瘍細胞の表面に同じエピトープを提示する患者の腫瘍、好ましくは原発性腫瘍ならびに腫瘍転移を標的とするT細胞を生じさせる。
【0198】
本発明の方法は、癌ワクチン接種のための同定されたアミノ酸修飾または修飾ペプチドの有用性を決定するさらなる工程を含み得る。したがってさらなる工程は、以下の1つ以上を含み得る:(i)修飾が公知のまたは予測されるMHC提示エピトープ中に位置するかどうかを評価すること、(ii)修飾がMHC提示エピトープ中に位置するかどうかをインビトロおよび/またはインシリコで試験すること、例えば修飾がMHC提示エピトープへとプロセシングされるおよび/またはMHC提示エピトープとして提示されるペプチド配列のパートであるかどうかを試験すること、ならびに(iii)想定される修飾エピトープが、特にそれらの天然配列状況で存在する場合、例えば天然に存在するタンパク質中でも前記エピトープに隣接するアミノ酸配列に隣接している場合、および抗原提示細胞中で発現された場合、T細胞、例えば所望の特異性を有する患者のT細胞を刺激することができるかどうかをインビトロで試験すること。そのような隣接配列は各々、3個以上、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上および好ましくは50個まで、45個まで、40個まで、35個までまたは30個までのアミノ酸を含んでよく、N末端および/またはC末端でエピトープ配列に隣接し得る。
【0199】
本発明に従って決定された修飾ペプチドを、癌ワクチン接種のためのエピトープとしてのそれらの有用性に関して順位付けし得る。したがって、1つの態様では、本発明の方法は、同定された修飾ペプチドを、提供されるべきそれぞれのワクチン中でのそれらの有用性に関して分析し、選択する手動またはコンピュータに基づく分析処理を含む。好ましい実施形態では、前記分析処理はコンピュータアルゴリズムに基づく処理である。好ましくは、前記分析処理は、エピトープを、免疫原性であるそれらの能力の予測に従って決定するおよび/または順位付けることを含む。
【0200】
本発明に従って同定され、本発明のワクチンによって提供されるネオエピトープは、好ましくは、ポリエピトープポリペプチドなどの前記ネオエピトープを含むポリペプチド、または前記ポリペプチドをコードする核酸、特にRNAの形態で存在する。さらに、ネオエピトープは、ワクチン配列の形態でポリペプチド中に存在し得る、すなわちそれらの天然配列状況で、例えば天然に存在するタンパク質中でも前記エピトープに隣接するアミノ酸配列に隣接して存在し得る。そのような隣接配列は各々、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上および好ましくは50個まで、45個まで、40個まで、35個までまたは30個までのアミノ酸を含んでよく、N末端および/またはC末端でエピトープ配列に隣接し得る。したがって、ワクチン配列は、20個以上、25個以上、30個以上、35個以上、40個以上および好ましくは50個まで、45個まで、40個まで、35個までまたは30個までのアミノ酸を含み得る。1つの実施形態では、ネオエピトープおよび/またはワクチン配列は、ポリペプチド中で頭部から尾部の方向に並んでいる。
【0201】
1つの実施形態では、ネオエピトープおよび/またはワクチン配列は、リンカー、特に中性リンカーによって分けられている。本発明による「リンカー」という用語は、エピトープまたはワクチン配列などの2つのペプチドドメインの間に、前記ペプチドドメインを連結するために付加されたペプチドに関する。リンカー配列に関して特に制限はない。しかし、リンカー配列は、2つのペプチドドメイン間の立体障害を低減し、良好に翻訳され、エピトープのプロセシングを支持するまたは許容することが好ましい。さらに、リンカーは免疫原性配列要素を全く有していないかまたはわずかしか有するべきではない。リンカーは、好ましくは、望ましくない免疫反応を生じさせ得る、隣接ネオエピトープ間の接合部縫合から生じるもののような非内因性ネオエピトープを生成するべきではない。それゆえ、ポリエピトープワクチンは、好ましくは、望ましくないMHC結合性接合エピトープの数を低減することができるリンカー配列を含むべきである。Hoyt et al.(EMBO J.25(8),1720−9,2006)およびZhang et al.(J.Biol.Chem.,279(10),8635−41,2004)は、グリシンリッチ配列がプロテアソームプロセシングを妨げ、したがってグリシンリッチリンカー配列の使用は、プロテアソームによってプロセシングされ得るリンカーに含まれるペプチドの数を最小限に抑えるように働くことを示した。さらに、グリシンは、MHC結合溝位置における強力な結合を阻害することが観察された(Abastado et al.,J.Immunol.151(7),3569−75,1993)。Schlessinger et al.(Proteins,61(1),115−26,2005)は、アミノ酸配列中に含まれるアミノ酸グリシンおよびセリンが、より効率的に翻訳され、プロテアソームによってプロセシングされて、コードされるネオエピトープへのより良好なアクセスを可能にする、より柔軟性のあるタンパク質をもたらすことを見出した。リンカーは各々、3個以上、6個以上、9個以上、10個以上、15個以上、20個以上および好ましくは50個まで、45個まで、40個まで、35個までまたは30個までのアミノ酸を含み得る。好ましくは、リンカーはグリシンおよび/またはセリンアミノ酸が富化されている。好ましくは、リンカーのアミノ酸の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%はグリシンおよび/またはセリンである。1つの好ましい実施形態では、リンカーは実質的にアミノ酸グリシンおよびセリンから成る。1つの実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列(GGS)
a(GSS)
b(GGG)
c(SSG)
d(GSG)
eを含み、ここでa、b、c、dおよびeは、独立して0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20から選択される数であり、a+b+c+d+eは0ではなく、好ましくは2以上、3以上、4以上または5以上である。1つの実施形態では、リンカーは、配列GGSGGGGSGなどの実施例に記載するリンカー配列を含む、本明細書で述べる配列を含む。
【0202】
1つの特に好ましい実施形態では、本発明によるポリエピトープポリペプチドなどの、1つ以上のネオエピトープを組み込んだポリペプチドを、抗原提示細胞などの患者の細胞中で発現されてポリペプチドを生成し得る核酸、好ましくはRNA、例えばインビトロ転写RNAまたは合成RNAの形態で患者に投与する。本発明はまた、本発明の目的上「ポリエピトープポリペプチド」という用語に含まれる1つ以上のマルチエピトープポリペプチドを、抗原提示細胞などの患者の細胞中で発現されて1つ以上のポリペプチドを生成し得る核酸、好ましくはRNA、例えばインビトロ転写RNAまたは合成RNAの形態で投与することも想定する。1つより多いマルチエピトープポリペプチドの投与の場合、異なるマルチエピトープポリペプチドによって提供されるネオエピトープは、異なっていてもよくまたは部分的に重複していてもよい。ひとたび抗原提示細胞などの患者の細胞中に存在すると、本発明によるポリペプチドはプロセシングされて、本発明に従って同定されるネオエピトープを生成する。本発明に従って提供されるワクチンの投与は、MHC提示エピトープが由来する抗原を発現する細胞に対してCD4
+ヘルパーT細胞応答を誘発することができる、MHCクラスII提示エピトープを提供し得る。あるいはまたは加えて、本発明に従って提供されるワクチンの投与は、MHC提示エピトープが由来する抗原を発現する細胞に対してCD8
+T細胞応答を誘発することができる、MHCクラスI提示エピトープを提供し得る。さらに、本発明に従って提供されるワクチンの投与は、1つ以上のネオエピトープ(公知のネオエピトープおよび本発明に従って同定されるネオエピトープを含む)、ならびに癌特異的体細胞変異を含まないが、癌細胞によって発現され、好ましくは癌細胞に対する免疫応答、好ましくは癌特異的免疫応答を誘導する1つ以上のエピトープを提供し得る。1つの実施形態では、本発明に従って提供されるワクチンの投与は、MHCクラスII提示エピトープであるおよび/またはMHC提示エピトープが由来する抗原を発現する細胞に対してCD4
+ヘルパーT細胞応答を誘発することができるネオエピトープ、ならびにMHCクラスI提示エピトープであるおよび/またはMHC提示エピトープが由来する抗原を発現する細胞に対してCD8
+T細胞応答を誘発することができる、癌特異的体細胞変異を含まないエピトープを提供する。1つの実施形態では、癌特異的体細胞変異を含まないエピトープは腫瘍抗原に由来する。1つの実施形態では、ネオエピトープおよび癌特異的体細胞変異を含まないエピトープは、癌の治療において相乗効果を及ぼす。好ましくは、本発明に従って提供されるワクチンは、細胞傷害性応答および/またはヘルパーT細胞応答のポリエピトープ刺激のために有用である。
【0203】
本明細書に従って提供されるワクチンは組換えワクチンであり得る。
【0204】
本発明に関連して「組換え」という用語は、「遺伝子操作を通して作製された」ことを意味する。好ましくは、本発明に関連して組換えポリペプチドなどの「組換え実体」は、天然には存在せず、および好ましくは自然界では組み合わされないアミノ酸配列または核酸配列などの実体の組合せの結果である。例えば、本発明に関連して組換えポリペプチドは、ネオエピトープまたは、例えばペプチド結合もしくは適切なリンカーによって一緒に融合された異なるタンパク質もしくは同じタンパク質の異なる部分に由来するワクチン配列などの、いくつかのアミノ酸配列を含み得る。
【0205】
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、ある物体が自然界で見出すことができるという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、天然源から単離することができ、実験室内で人の手によって意図的に改変されていないペプチドまたは核酸は、天然に存在する。
【0206】
本明細書で述べる作用物質、組成物および方法は、疾患、例えば抗原を発現し、そのフラグメントを提示する異常細胞の存在を特徴とする疾患を有する被験体を治療するために使用することができる。特に好ましい疾患は癌疾患である。本明細書で述べる作用物質、組成物および方法はまた、本明細書で述べる疾患を防止する免疫化またはワクチン接種のためにも使用し得る。
【0207】
本発明によれば、「疾患」という用語は、癌疾患、特に本明細書で述べる癌疾患の形態を含む、任意の病的状態を指す。
【0208】
「正常な」という用語は、健常な状態または健常な被験体または組織における状況、すなわち非病的状況を指し、ここで「健常な」は、好ましくは非癌性を意味する。
【0209】
「抗原を発現する細胞を含む疾患」は、本発明によれば、罹患組織または器官の細胞における抗原の発現が検出されることを意味する。罹患組織または器官の細胞における発現は、健常組織または器官における状態と比較して増大し得る。増大とは、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%またはさらにそれ以上の増大を指す。1つの実施形態では、発現は罹患組織においてのみ認められ、健常組織中での発現は抑制されている。本発明によれば、抗原を発現する細胞を含むまたは抗原を発現する細胞に関連する疾患には、癌疾患が含まれる。
【0210】
本発明によれば、「腫瘍」または「腫瘍疾患」という用語は、好ましくは腫脹または病変を形成する細胞(新生細胞、腫瘍形成性細胞または腫瘍細胞と呼ばれる)の異常増殖を指す。「腫瘍細胞」とは、急速で制御されない細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常細胞を意味する。腫瘍は、構造機構および正常組織との機能的協調の部分的または完全な欠如を示し、通常、良性、前悪性または悪性のいずれかであり得る、明確な組織塊を形成する。
【0211】
癌(医学用語:悪性新生物)は、一群の細胞が制御されない成長(正常限界を超えた分裂)、浸潤(隣接する組織への侵入およびその破壊)ならびに時として転移(リンパまたは血液を介した身体の他の場所への拡大)を示す疾患のクラスである。癌のこれら3つの悪性特性により、自己限定性で、浸潤しないまたは転移しない良性腫瘍とは区別される。大部分の癌は腫瘍を形成するが、白血病のような一部の癌は腫瘍を形成しない。悪性疾患、悪性新生物および悪性腫瘍は基本的に癌と同義である。
【0212】
新生物は、新形成の結果としての異常な組織塊である。新形成(ギリシャ語で新たな成長の意)は細胞の異常増殖である。細胞の成長は、その周囲の正常組織の成長を上回り、それらの組織と協調しない。成長は、刺激の停止後も同じ過剰な方法で持続する。これは通常、しこりまたは腫瘍を引き起こす。新生物は良性、前悪性または悪性であり得る。
【0213】
本発明による「腫瘍の成長」または「腫瘍成長」は、腫瘍がその大きさを増大する傾向および/または腫瘍細胞が増殖する傾向に関する。
【0214】
本発明の目的上、「癌」および「癌疾患」という用語は、「腫瘍」および「腫瘍疾患」という用語と互換的に使用される。
【0215】
癌は、腫瘍に類似する細胞の種類によって、それゆえその腫瘍の起源であると推定される組織によって分類される。これらは、それぞれ組織学および場所である。
【0216】
本発明による「癌」という用語は、癌腫、腺癌、芽細胞腫、白血病、セミノーマ、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎癌、副腎癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸癌、肝癌、結腸癌、胃癌、腸癌、頭頸部癌、胃腸の癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌ならびにそれらの転移を含む。その例は、肺癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、腎細胞癌腫、子宮頸癌腫または上記で述べた癌型または腫瘍の転移である。本発明による癌という用語は、癌転移および癌の再発も含む。
【0217】
「転移」とは、そのもとの部位から身体の別の部分への癌細胞の拡大を意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発性腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、体腔および脈管に侵入するための内皮基底膜の貫入、ならびに次に、血液によって運ばれた後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位における新たな腫瘍、すなわち二次性腫瘍または転移性腫瘍の成長は、血管新生に依存する。腫瘍転移はしばしば原発性腫瘍の除去後でも起こり、これは、腫瘍細胞または腫瘍成分が残存し、転移能を発現し得るからである。1つの実施形態では、本発明による「転移」という用語は「遠隔転移」に関し、これは原発性腫瘍および所属リンパ節系から遠く離れた転移に関する。
【0218】
二次性または転移性腫瘍の細胞はもとの腫瘍における細胞に類似する。これは、例えば、卵巣癌が肝臓に転移した場合、二次性腫瘍は異常な肝細胞ではなく異常な卵巣細胞で構成されることを意味する。肝臓における腫瘍は、その場合、肝癌ではなく転移性卵巣癌と呼ばれる。
【0219】
「循環腫瘍細胞」または「CTC」という用語は、原発性腫瘍または腫瘍転移から離れて、血流中を循環している細胞に関する。CTCは、異なる組織におけるさらなる腫瘍(転移)のその後の成長のための種を構成し得る。循環腫瘍細胞は、転移性疾患を有する患者において全血1mL当たりほぼ1〜10個程度のCTCという頻度で認められる。CTCを単離するための検査方法が開発されている。CTCを単離するためのいくつかの検査方法が当分野で記述されており、例えば上皮細胞が、正常な血球中には存在しない細胞接着タンパク質EpCAMを一般的に発現するという事実を利用する技術がある。免疫磁気ビーズに基づく捕獲法は、磁性粒子と結合したEpCAMに対する抗体で血液標本を処理し、続いて磁場で標識細胞を分離することを含む。次に単離された細胞を、まれなCTCを混入白血球から識別するために、もう1つの上皮マーカーであるサイトケラチンならびに共通の白血球マーカーCD45に対する抗体で染色する。この堅固で半自動化されたアプローチは、約1個のCTC/mLの平均収率および0.1%の純度でCTCを同定する(Allard et al.,2004:Clin Cancer Res 10,6897−6904)。CTCを単離するための2番目の方法は、マイクロフルイディクスに基づくCTC捕獲装置を使用し、これは、EpCAMに対する抗体で被覆することによって機能性にした80,000個のマイクロスポットを包埋したチャンバーを通して全血を流すことを含む。次にCTCをサイトケラチンまたは組織特異的マーカー、例えば前立腺癌におけるPSAまたは乳癌におけるHER2に対する二次抗体で染色し、三次元座標に沿った複数の平面でのマイクロスポットの自動走査によって視覚化する。CTCチップは、患者において50細胞/mlの平均収率および1〜80%の範囲の純度でサイトケラチン陽性循環腫瘍細胞を同定することができる(Nagrath et al.,2007:Nature 450,1235−1239)。CTCを単離するための別の可能性は、Veridex,LLC(Raritan,NJ)からのCellSearch(商標)Circulating Tumor Cell(CTC)Testを使用することであり、これは血液チューブ中でCTCを捕獲し、同定し、計数する。CellSearch(商標)システムは、全血中のCTCの計数のための米国食品医薬品局(FDA)によって承認された方法であり、免疫磁気標識と自動デジタル顕微鏡検査の組合せに基づく。その他にも文献中で記述されているCTCを単離するための方法があり、そのすべてが本発明と共に使用できる。
【0220】
再発または回帰は、人が過去に罹患した状態に再び罹患する場合に起こる。例えば、患者が腫瘍疾患に罹患したことがあり、前記疾患の治療を受けて成功したが、前記疾患を再び発症した場合、前記新たに発症した疾患は再発または回帰とみなされ得る。しかし、本発明によれば、腫瘍疾患の再発または回帰は、もとの腫瘍疾患の部位でも起こり得るが、必ずしもそうとは限らない。したがって、例えば、患者が卵巣腫瘍に罹患し、治療を受けて成功したことがある場合、再発または回帰は、卵巣腫瘍の発生または卵巣とは異なる部位における腫瘍の発生であり得る。腫瘍の再発または回帰は、腫瘍がもとの腫瘍の部位とは異なる部位で起こる状況ならびにもとの腫瘍の部位で起こる状況も含む。好ましくは、患者が治療を受けたことがあるもとの腫瘍は原発性腫瘍であり、もとの腫瘍の部位とは異なる部位における腫瘍は二次性または転移性腫瘍である。
【0221】
「治療する」とは、被験体において腫瘍の大きさもしくは腫瘍の数を低減することを含む、疾患を予防するもしくは排除するため;被験体において疾患を停止させるもしくは疾患の進行を遅らせるため;被験体において新たな疾患の発症を阻害するもしくは遅らせるため;現在疾患を有しているもしくは以前に疾患を有していたことがある被験体において症状および/もしくは再発の頻度もしくは重症度を低下させるため;ならびに/または被験体の生存期間を延長させる、すなわち増大させるために、本明細書で述べる化合物または組成物を被験体に投与することを意味する。特に、「疾患の治療」という用語は、疾患またはその症状を治癒する、期間を短縮する、改善する、予防する、進行もしくは悪化を減速させるもしくは阻害する、または疾患もしくはその症状の発症を予防するもしくは遅延させることを含む。
【0222】
「危険性がある」とは、一般集団と比較して、疾患、特に癌を発症する可能性が通常より高いと同定される被験体、すなわち患者を意味する。加えて、疾患、特に癌を有していたことがあるまたは現在有している被験体は、そのような被験体は引き続き疾患を発症する可能性があるので、疾患を発症する危険性が高い被験体である。現在癌を有しているまたは癌を有していたことがある被験体は、癌転移の危険性も高い。
【0223】
「免疫療法」という用語は、特異的免疫反応の活性化を含む治療に関する。本発明に関連して、「防御する」、「予防する」、「予防的」、「防止的」または「保護的」などの用語は、被験体における疾患の発症および/または伝播の予防または治療またはその両方、特に被験体が疾患を発症する可能性を最小限に抑えることまたは疾患の発症を遅延させることに関する。例えば、上述したように、腫瘍の危険性がある人は、腫瘍を予防する療法の候補である。
【0224】
免疫療法の予防的投与、例えば本発明のワクチンの予防的投与は、好ましくは受容者を疾患の発症から保護する。免疫療法の治療的投与、例えば本発明のワクチンの治療的投与は、疾患の進行/成長の阻害をもたらし得る。これは、好ましくは疾患の排除をもたらす、疾患の進行/成長の減速、特に疾患の進行の停止を含む。
【0225】
免疫療法は、本明細書で提供される作用物質が患者から異常細胞を除去するように機能する、様々な技術のいずれかを用いて実施し得る。そのような除去は、抗原または抗原を発現する細胞に特異的な、患者における免疫応答を増強するまたは誘導することの結果として起こり得る。
【0226】
特定の実施形態の中で、免疫療法は能動免疫療法であり得、この場合の治療は、免疫応答調節物質(本明細書で提供されるポリペプチドおよび核酸など)の投与による、異常細胞に対して反応する内因性宿主免疫系のインビボ刺激に基づく。
【0227】
本明細書で提供される作用物質および組成物は、単独でまたは従来の治療レジメン、例えば手術、放射線、化学療法および/もしくは骨髄移植(自家、同系、同種異系もしくは無関係)と組み合わせて使用し得る。
【0228】
「免疫」または「ワクチン接種」という用語は、治療的または予防的理由から免疫応答を誘導することを目的として被験体を治療する過程を表す。
【0229】
「インビボ」という用語は、被験体における状況に関する。
【0230】
「被験体」、「個体」、「生物」または「患者」という用語は互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物に関する。例えば、本発明に関連して哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長動物、家畜、例えばイヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ等、実験動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット等、ならびに動物園の動物などの捕らわれている動物である。本明細書で使用される「動物」という用語はヒトも含む。「被験体」という用語は、患者、すなわち動物、好ましくは疾患を有するヒト、好ましくは本明細書で述べる疾患を有するヒトも含み得る。
【0231】
「自家」という用語は、同じ被験体に由来するものを表すために使用される。例えば「自家移植」は、同じ被験体に由来する組織または器官の移植を指す。そのような手順は、さもなければ拒絶反応をもたらす免疫学的障壁を乗り越えるので、好都合である。
【0232】
「異種」という用語は、複数の異なる要素から成るものを表すために使用される。一例として、ある個体の骨髄の異なる個体への移入は異種移植を構成する。異種遺伝子は、その被験体以外の供給源に由来する遺伝子である。
【0233】
免疫またはワクチン接種のための組成物のパートとして、好ましくは本明細書で述べる1つ以上の作用物質を、免疫応答を誘導するためまたは免疫応答を増大させるために1つ以上のアジュバントと共に投与する。「アジュバント」という用語は、免疫応答を延長するまたは増強するまたは促進する化合物に関する。本発明の組成物は、好ましくはアジュバントの添加なしでその作用を及ぼす。それでもやはり、本出願の組成物は任意の公知のアジュバントを含有し得る。アジュバントには、油性エマルジョン(例えばフロイントアジュバント)、無機化合物(ミョウバンなど)、細菌生成物(百日咳菌毒素など)、リポソームおよび免疫刺激性複合体などの不均一な群の化合物が含まれる。アジュバントの例は、モノホスホリル脂質A(MPL SmithKline Beecham)、サポニン、例えばQS21(SmithKline Beecham)、DQS21(SmithKline Beecham;国際公開第96/33739号)、QS7、QS17、QS18およびQS−L1(So et al.,1997,Mol.Cells 7:178−186)、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、ビタミンE、モンタニド、ミョウバン、CpGオリゴヌクレオチド(Krieg et al.,1995,Nature 374:546−549)、ならびにスクアレンおよび/またはトコフェロールなどの生分解性油から調製される様々な油中水型エマルジョンである。
【0234】
患者の免疫応答を刺激する他の物質も投与し得る。例えばサイトカインを、それらのリンパ球への調節特性により、ワクチン接種において使用することが可能である。そのようなサイトカインには、例えば、ワクチンの防御作用を増大することが示された(Science 268:1432−1434,1995参照)インターロイキン12(IL−12)、GM−CSFおよびIL−18が含まれる。
【0235】
免疫応答を増強し、それゆえワクチン接種において使用し得る多くの化合物がある。前記化合物には、B7−1およびB7−2(それぞれCD80およびCD86)などのタンパク質または核酸の形態で提供される共刺激分子が含まれる。
【0236】
本発明によれば、身体試料は、体液を含む組織試料および/または細胞試料であり得る。そのような身体試料は従来の方法で、例えばパンチ生検を含む組織生検によって、および血液、気管支吸引物、痰、尿、糞便または他の体液を採取することによって入手し得る。本発明によれば、「試料」という用語は、生物学的試料の分画または単離物、例えば核酸または細胞単離物などの加工された試料も包含する。
【0237】
本明細書で述べるワクチンおよび組成物などの作用物質は、注射または注入を含む、任意の従来の経路によって投与し得る。投与は、例えば経口的、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下的または経皮的に実施し得る。1つの実施形態では、投与は、リンパ節への注射などによって節内に実施する。他の形態の投与は、本明細書で述べる核酸による樹状細胞などの抗原提示細胞のインビトロトランスフェクション、それに続く抗原提示細胞の投与を想定する。
【0238】
本明細書で述べる作用物質は有効量で投与される。「有効量」は、単独でまたはさらなる投与物と共に、所望の反応または所望の作用を達成する量を指す。特定の疾患または特定の状態の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の進行の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅らせる、特に疾患の進行を妨げるまたは逆転させることを含む。疾患または状態の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の防止であり得る。
【0239】
本明細書で述べる作用物質の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、患者の年齢、生理的状態、大きさおよび体重を含む患者の個別パラメータ、治療の期間、併用療法の種類(存在する場合)、特定の投与経路ならびに同様の因子に依存する。したがって、本明細書で述べる作用物質の投与される用量はそのような様々なパラメータに依存し得る。患者における反応が初期用量では不十分である場合、より高用量(または異なる、より限局された投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用し得る。
【0240】
本明細書で述べる医薬組成物は、好ましくは滅菌であり、所望の反応または所望の作用を生じさせる有効量の治療活性物質を含有する。
【0241】
本明細書で述べる医薬組成物は、一般に医薬的に適合性の量でおよび医薬的に適合性の調製物中で投与される。「医薬的に適合性」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない非毒性物質を指す。この種の調製物は通常、塩、緩衝物質、防腐剤、担体、アジュバントなどの補足的な免疫増強物質、例えばCpGオリゴヌクレオチド、サイトカイン、ケモカイン、サポニン、GM−CSFおよび/またはRNA、ならびに、適切な場合は、他の治療活性化合物を含有し得る。薬剤中で使用される場合、塩は医薬的に適合性であるべきである。しかし、医薬的に適合性でない塩は、医薬的に適合性の塩を調製するために使用されることがあり、本発明に含まれる。この種の薬理学的および医薬的に適合性の塩には、非限定的に、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等から調製されるものが含まれる。医薬的に適合性の塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩としても調製され得る。
【0242】
本明細書で述べる医薬組成物は、医薬的に適合性の担体を含有し得る。「担体」という用語は、適用を容易にするために活性成分が組み合わされる、天然または合成の有機または無機成分を指す。本発明によれば、「医薬的に適合性の担体」という用語は、患者への投与に適する、1つ以上の適合性の固体もしくは液体充填剤、希釈剤または被包物質を含む。本発明の医薬組成物の成分は、通常、所望の医薬的効果を実質的に損なう相互作用が起こらないものである。
【0243】
本明細書で述べる医薬組成物は、適切な緩衝物質、例えば塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸および塩中のリン酸を含有し得る。
【0244】
医薬組成物は、適切な場合は、適切な防腐剤、例えば塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールも含有し得る。
【0245】
医薬組成物は、通常、単位投与形態で提供され、それ自体公知の方法で調製され得る。本発明の医薬組成物は、例えばカプセル、錠剤、ロゼンジ、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシルまたは乳剤の形態であり得る。
【0246】
非経口投与に適する組成物は、通常、好ましくは受容者の血液と等張である、活性化合物の滅菌水性または非水性調製物を含む。適合性担体および溶媒の例は、リンガー液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、通常は滅菌の固定油を溶液または懸濁液媒質として使用する。
【0247】
本発明を以下の図面および実施例によって詳細に説明するが、これらは説明のためにのみ使用されるものであり、限定を意図しない。説明および実施例により、同様に本発明に包含されるさらなる実施形態が当業者にアクセス可能である。
【実施例】
【0248】
本明細書で使用される技術および方法は、本明細書において説明されるかまたはそれ自体公知の方法でおよび、例えばSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2
nd Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に記載されているように実施される。キットおよび試薬の使用を含むすべての方法は、特に指示されない限り製造者の情報に従って実施される。
【0249】
(実施例1)
T細胞エピトープの免疫原性を予測するためのモデルの確立
以前に本発明者らは、B16F10マウス黒色腫細胞株において同定された50の体細胞変異の免疫原性を検討した(J.C.Castle et al.,Exploiting the mutanome for tumor vaccination.Cancer Research 72,1081(2012))。これら50の変異は、主としてMHCクラスI発現を最大化するように563の発現された非同義体細胞変異のプールから選択した(J.C.Castle et al.,Exploiting the mutanome for tumor vaccination.Cancer Research 72,1081(2012))(実施例2も参照のこと)。すべての可能なMHCクラスI対立遺伝子の空間、潜在的なエピトープの長さおよび配列ウィンドウ(変異を位置付ける)を探索する場合(J.C.Castle et al.,Exploiting the mutanome for tumor vaccination.Cancer Research 72,1081(2012))、各々の変異に関して本発明者らは最小エピトープ、すなわち最も低いMHCクラスIコンセンサススコアを有するエピトープを予測した(Y.Kim et al.,Nucleic Acids Research 40,W525(2012))(本明細書ではM
mutと定義される)。RNAワクチン接種、続いてペプチド読み出しを用いてこれらの変異の免疫原性を測定すると(実施例2参照)、ペプチドワクチン接種を用いた先の所見を確認し(J.C.Castle et al.,Exploiting the mutanome for tumor vaccination.Cancer Research 72,1081(2012))、50の変異のうち12だけが(24%)免疫原性であり(表1)、MUT+/WT−配列は試験したすべての変異に関して10%だけを構成することを示した。
【0250】
表1.B16F10およびCT26.WTマウス株のRNAワクチン接種後の免疫原性変異の数。
【表1】
*2つのCT26 MUT+変異は、それらのWT反応性がまだ測定されていなかったためこの表から除外した。合計で、これまでに測定された82のCT26変異の中で18のMUT+変異が存在し、22%の成功率をもたらした。
【0251】
B16F10マウス試験の場合の結果は、低いM
mutスコア(≦3.9)を有する発現非同義変異を単純に選択することは免疫原性を予測するためにかなり低い成功率しかもたらさないことを明らかにする。したがって腫瘍特異的ネオ抗原を標的とする個別化ワクチンを有効な療法にしようとするならば、免疫原性を駆動する機構のよりよい理解が必要である。免疫原性に寄与する付加的な変数を見出すことを目指して、本発明者らは結腸直腸マウス細胞株CT26.WTにおいて同定された発現非同義体細胞変異の免疫原性を検討した。合計で、96の変異をそれらのM
mutスコア(低対高)、平均RPKM(低対高)および細胞局在(細胞内対細胞外)に基づいて選択し、RNAワクチン接種およびペプチドとRNAの両方の読み出しを用いて免疫原性を試験した(さらなる詳細については実施例2参照)。B16F10細胞株と合わせると、本発明者らのデータセットは132のエピトープから成り、その免疫原性をマウス脾細胞に関してエクスビボで測定した。
【0252】
MHCコンセンサススコア。M
mutへの免疫原性の依存性を検討するため、M
mutの関数としての免疫原性変異の累積パーセント、すなわち免疫原性であった所与の閾値(βで表される)よりも小さなM
mutスコアを有する変異のパーセントをプロットした。合計132の変異にわたる合わせたB16およびCT26データセットの分析は、M
mutへの免疫原性成功率の高度に非線形の依存性を明らかにする(
図2A)。
図2Aは、免疫原性変異が極めて低いM
mutスコア(≦〜0.2)に関して濃縮されていることを示す。M
mut≦0.1に関しては、免疫原性変異のパーセントは約60%でピークに達し、M
mutが上昇すると共に急速に減衰して、M
mut≧2では約25%より下に低下する。M
mut>0.3に対してM
mut≦0.3を有する免疫原性変異のパーセントは、17.1%と比較して44.4%であり、これは統計的に有意の差であった(P値=0.004、フィッシャーの正確確率検定、片側)。3つのM
mutビン:≦0.3、(0.3,1]および>1に関する免疫原性変異のパーセントのヒストグラムは、M
mutが上昇すると共に免疫原性変異のパーセントが低下することを示す(
図2B)。
図2Bにおける最小ビン(M
mut≦0.3)、44.4%と、中央ビン、20.7%および最大ビン(M
mut>1)、15.8%の両方との成功率の差は統計的に有意であり(P値=それぞれ0.05および0.004、フィッシャーの正確確率検定、片側)、M
mut>〜0.3に関しては成功率が統計的に有意に低下することを指示した。成功率の同様の傾向は、B16およびCT26ミュータノームを別々に分析した場合にも認められる(
図3)。
【0253】
これまでのところ変異を選択するための本発明者らの基準は提示に焦点を合わせており、変異エピトープのMHC結合スコアを限定することにより、最大60%までの精度で免疫原性エピトープの予測が可能になることを認めた。提示は、しかしながら、免疫原性を誘導するための必要条件であるが十分条件ではない。TCR認識のためのさらなる基準を同定することにより、本発明者らの予測の正確さをさらに改善できる可能性がある。本発明者らは、免疫原性を駆動するための2つの相互に排他的な機構を仮定し、これをクラスIおよびクラスII免疫原性モデルと称する。
【0254】
クラスI免疫原性。TCRレパートリーが変異エピトープを認識し、免疫応答を生じさせるために、本発明者らは3つの条件を満たさなければならないと仮定した(H
A、
図4):(i) 野生型エピトープが、生物の発生のいずれかの時点で、免疫系に提示され、強力なTCR/pMHC結合を介してマッチするTCRの欠失をもたらした、(ii)変異エピトープが提示される、および(iii)変異アミノ酸の物理化学的特性が野生型アミノ酸と十分に「異なる」(本発明者らが以下で定義する何らかの基準によって)ため、TCRレパートリーがこの置換を「検出」または「登録」することができる。条件(i)および(ii)は、免疫系が実際に変化、すなわち変異に暴露されることを確実にする。条件(iii)は、変異が野生型アミノ酸の物理化学的特性を有意に変化させ、そのために変異エピトープの現存(非欠失)TCRへの結合親和性が潜在的に上昇して、それにより免疫応答をもたらすシグナル伝達カスケードを作動させることを必要とする(
図5)。
【0255】
TCR認識スコア。クラスI免疫原性モデルは、2つのアミノ酸間の物理化学的相違を評価するための基準を必要とする。頻繁に入れ替わるアミノ酸は化学的および物理的類似性を有する可能性が高いが、まれにしか入れ替わらないアミノ酸は異なる物理化学的特性を有する可能性が高いことは分子進化において周知である。所与の置換が自然発生する可能性は、この置換が偶然に起こる可能性と比較して対数オッズ行列によって測定される。自然選択によって課せられる対数オッズ行列において認められるパターンは、「タンパク質の三次元立体配座での相互の弱い相互作用におけるアミノ酸残基の機能の類似性を反映する」(M.O.Dayhoff,R.M.Schwartz,B.C.Orcutt,A model for evolutionary change.MO Dayhoff,ed.Atlas of protein sequence and structure Vol.5,345(1978))。本発明者らはそれゆえ、進化に基づく対数オッズ行列を使用し、これを本明細書では、癌関連アミノ酸置換に関する有効なスコアリング行列として、TCR認識を反映する「Tスコア」と称する。正のTスコア(すなわち対数オッズ)を有する置換は自然発生する可能性が高く、したがって類似の物理化学的特性を有する2つのアミノ酸に対応する。クラスIモデルは、正のTスコアを有する置換は免疫原性である可能性がより低いと予測する。反対に、負のTスコアを有する置換は、自然発生する可能性が低く、したがって有意に異なる物理化学的特性を有する2つのアミノ酸に対応する置換を反映する。本発明者らのモデルによれば、そのような置換は免疫原性である可能性がより高い。本発明者らは、対数オッズ行列を評価する種々の方法を比較し、選択した正確法に対して概して堅固であるという結果を認めた。250のPAM(受け入れられた点突然変異)距離を用いる、WAG(S.Whelan,N.Goldman,Molecular biology and evolution 18,691(2001))として公知の最大尤度(ML)に基づく評価アプローチは、予測された免疫原性変異を非免疫原性変異から最も良く分離すると思われ、それゆえ本発明者らはこの行列による結果を提示する(さらなる詳細については実施例2参照)。
【0256】
クラスII免疫原性。免疫原性のクラスIIモデルでは、本発明者らは、免疫系がこれまで一度も野生型エピトープに接したことがなく、それゆえ変異エピトープによって攻撃誘発される場合、変異は免疫原性である可能性が高いと仮定する。したがってこのモデルにおいて変異が免疫原性であるためには、2つの条件を満たさなければならないと仮定した:(i)野生型エピトープが一度も免疫系に提示されなかった、(ii)変異ペプチドが提示される。例えば変異がアンカー位置にヒットし、それにより「非結合型」エピトープを「結合型」に変化させる場合、これらの条件を同時に満たすことができる。正式には、クラスII免疫原性は2つのサブ仮説に分けることができる:高いTスコア(
図4におけるH
B)および低いTスコア(
図4におけるH
C)。しかし、野生型エピトープは提示されないという前提であるので、アミノ酸置換の性質はTCR認識に影響を及ぼさないと予想され、本発明者らはそれゆえクラスII免疫原性を統合仮説:H
BUH
Cと同等とみなす。
【0257】
クラスI免疫原性の試験。クラスI免疫原性の仮説(
図4におけるH
A)は、以下のように数学的に言い換えることができる:本発明者らは、野生型エピトープが提示されること(M
wt≦α)、変異エピトープが提示されること(M
mut≦β)、およびアミノ酸置換が些細ではないこと(T≦τ)を必要とし、ここでM
wtは、変異アミノ酸を野生型アミノ酸で置き換える変異エピトープ(同じHLA対立遺伝子およびウィンドウ長)のMHCコンセンサススコアと定義され、およびTはTスコアを表す。3つの条件すべてが必要であるので、本発明者らは、H
A分類器の精度がM
mut単独に基づく分類器(
図4におけるH
BC1)と比較してまたは部分仮説:H
BC1∩{M
wt≦α}およびH
BC1∩{T≦τ}と比較してより高いと予想する。本発明者らはそれゆえ、H
BC1に関して、部分仮説H
A':H
BC1∩{T≦τ}に関しておよび部分仮説H
BC2:H
BC1∩{M
wt≦α}に関して、βの関数としての免疫原性変異のパーセント(真陽性を真陽性と偽陽性の合計で除した数)を計算した。本発明者らは、≒0.5から1の範囲内でτに関する保守的閾値が最良の成績であることを認めた(WAG250行列の範囲は−5.1(FとGとの間の置換)から+5.4(FとYとの間の置換)である)。本発明者らはまた、α≒1と設定して、αがβと比較して保守的に限定され得ることを見出した。
図6Aは、実際に、B16およびCT26のプールされたミュータノームを検討した場合、H
BC2およびH
A'に基づく分類器が基線対照仮説H
BC1より高い精度を達成したことを示す。さらに、完全仮説H
Aに基づく分類器は、部分仮説H
BC1およびH
BC2よりも高い精度を達成し、それにより相加効果を明らかにした。B16およびCT26データセットを別々に分析した場合も同じ結論が当てはまる(
図7)。
【0258】
条件M
wt≦αおよびT≦τは免疫原性のための必要条件であると仮定されるので、条件H
BC1∩{T>τ}または条件H
BC1∩{M
wt>α}のいずれか(すなわち二次条件をなくす)に基づく分類器はH
BC1より良好に機能しないと予想される。実際に本発明者らは、B16およびCT26を一緒に(
図6B)または別々に(
図7)分析した場合にこれが当てはまることを認めた。それゆえ本発明者らは、B16およびCT26データセットが両方一緒におよび別々にH
A仮説を支持すると結論する。WT RNAも反応性を示した変異を除外しても、これらの結論には影響を及ぼさなかった(
図8)。
【0259】
H
A仮説に関する検査。高いTスコアを有する変異はなおも免疫原性であり得るが、そのような変異を濃縮する仮説は統計的に非免疫原性変異も濃縮するはずである。それゆえ本発明者らがH
A仮説(H
BC2∩{T≦τ})をその逆であるH
BC2∩{T>τ}(
図4におけるH
n)と比較した場合、免疫原性変異の統計的に有意の減少を観察するはずである。表2は、実際に、M
mut≦β=0.5、M
wt≦α=1およびT≦τ=1に関して、H
AがH
nを上回り、21.4%(n=14;P=0.068、片側フィッシャーの正確確率検定)と比較して52.5%(n=21)の成功率であることを示す。
【0260】
表2.133の変異を含むB16およびCT26のプールされたデータセットに基づく様々な仮説の下での免疫原性変異のパーセント。
【表2】
【0261】
H
Aはまた、41.2%(n=35)を達成する基線対照H
BC2よりも良好な成績である。βに関する条件が厳しいほど、より多くの偽陽性がH
A群から除去されるので、βを低下させると共にH
AとH
nの成功率の差がより大きくなる。例えば、β=0.25に関してH
A群の成功率は67%(n=14)であり、これと比較してH
n群については17%(n=6)の成功率であった(P=0.066、片側フィッシャーの正確確率検定)−表3参照。
【0262】
表3.互いに共通元のない3つの仮説クラス:免疫原性変異についてのH
A仮説(M
wt≦0.8、T≦0.5)、H
n/非免疫原性変異が濃縮されている逆H
A仮説(M
wt≦0.8、T>0.5)および免疫原性変異についてのH
BUH
C仮説(M
wt>0.8)に分解した基本対照仮説H
BC1(M
mut≦0.25)を満たす133の測定されたB16F10/CT26.WT変異の順位付けたリスト。H
AおよびH
BUH
C候補物は、変数を区別する相対的重要性に基づいて順位付けることが提案される。H
Aに関して提案される順序は次のとおりである:M
mut(降順)→Tスコア(降順)→M
WT降順。H
BUH
Cに関して提案される順序は次のとおりである:M
mut(降順)→M
WT(昇順)。誤差は標準誤差である。
【表3】
【0263】
免疫原性順位付けをさらに改善し得るさらなる比較検討因子の一例を実施例3に示す。
【0264】
より一般的には、H
BC1(M
mut≦β)を満たす変異のリストを3つのカテゴリー:H
A、H
nおよびH
BUH
Cに分類することができ(表3)、ここでH
Aは免疫原性変異が濃縮され、H
nは非免疫原性変異が濃縮されている。B16およびCT26の場合は、H
BUH
C群における3つの候補物すべてが、本発明者らの予想に反して、非免疫原性であった。しかし、M
wtに関してα
*>>αとなるようにより現実的な閾値α
*を選択した場合、H
BUH
Cに関して試験することができる予測は存在しない。
【0265】
免疫原性分類器の最大精度。表1によれば、合わせたB16およびCT26データセットにおける予測免疫原性の平均成功率は22.7%(=30/132)であった。M
mutスコアに最も厳しい閾値(β=0.1)を適用することにより、免疫原性分類器の精度は60%に上昇する(=6/10;表2におけるH
BC1)。H
BC1をM
wt≦α条件またはT≦τ条件(α=1、τ=1)のいずれかと組み合わせることにより、精度は66.7%(=6/9)まで上昇する。両方の基準を組み合わせた、H
Aに基づく分類器は付加的な応答をもたらし、これは精度を75%(=6/8)に上昇させる(表2)。
【0266】
B16エピトープMUT33。プールされたB16/CT26データセットの中で、すべての進化モデル(PAM行列を除く)によって最も高く順位付けられたH
Aクラスエピトープは、B16のMUT33であった(表3参照)。さらなる分析は、MUT33が実際にMHCクラスI拘束性CD8+応答を誘発し、最小予測エピトープに対してエクスビボ免疫原性を示すことを明らかにした(データは示していない)。
【0267】
遺伝子発現の役割。免疫原性変異の割合(免疫原性変異の総数に対する所与の閾値より下のRPKM値を有する免疫原性変異の数)をB16およびCT26に関するRPKM値の関数としてプロットすると、この比率が非常に低いRPKM値でいくぶん停滞することを示す(
図9A)。この作用は、H
A基準を適用するか否かに関わらず認められる。種々のRPKMビンについての免疫原性変異パーセントをプロットすると(
図9BおよびC)、RPKM値≦〜1はいくぶんより低い成功率を有する(H
Aフィルタリング仮説を適用した場合または適用しない場合の両方で)ことを示唆し、示唆的ではあるが、これらの結果は誤差の範囲内であることに留意すべきである。
【0268】
公表されているCD8+エピトープの調査。本発明者らは次に、CD8+拘束性応答を誘発する単一アミノ酸置換を有する、公表されているT細胞規定腫瘍抗原が免疫原性に関する本発明者らのモデルを満たすかどうかを検討することに関心を抱いた。公表された17のエピトープ(P.Van der Bruggen,V.Stroobant,N.Vigneron,B.Van den Eynde.(Cancer Immun,http://www.cancerimmunity.org/peptide/,2013))(表4)のうちで、5つがH
Aに関する基準を満たし(α=0.7、β=0.2、τ=0.5)、4つがH
CUH
Bの基準を満たし(α=2.2、β=0.4)、2つがH
n基準を満たした(α=0.6、β=0.3、τ=1.7)。
【0269】
表4.CD8+応答を生じさせる単一アミノ酸置換を有する公表エピトープ。参考文献のリストについては実施例2参照。H
BUH
C群におけるアンカー位置変異を赤色でハイライトする。
【表4】
【0270】
したがって、H
AおよびH
CUH
B仮説を合わせると公表エピトープのおよそ50%を占めた。興味深いことに、H
CUH
B条件を満たした4つの公表エピトープのうち3つ(表4の赤色の箱)は、アンカー位置変異に起因して10より大きいM
wtスコアを有していた(
図10)。H
CUH
B仮説についての必要条件は、生物の発生の間に何らかの細胞が野生型エピトープを提示する確率が無視できるほど小さいままであることなので、M
wtについての閾値は高く保持される、すなわちα
*≫αに保持されるはずであると予測される。実際に、αを0.8から>3の上昇させた場合、表3におけるB16/CT26についての偽陽性は消失する。それゆえ、H
CUH
B仮説の下でのM
wtに関するより現実的な閾値はおよそ3から10の間付近であり得る。
【0271】
MZ7−MEL細胞株。ヒト腫瘍モデル設定で免疫原性エピトープを予測する本発明者らの免疫原性モデルの能力を試験するため、本発明者らは、悪性黒色腫を有する患者の脾転移から1988年に樹立されたMZ7−MEL細胞株を検討した(V.Lennerz et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 102,16013(2005))。自己腫瘍反応性T細胞によるMZ7−MEL細胞からのcDNAライブラリのスクリーニングは、CD8+応答を生じさせることができる少なくとも5つのネオ抗原を明らかにした(V.Lennerz et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 102,16013(2005))。これは、現在までの患者に由来するCD8+ネオ抗原の最大セットを構成する。本発明者らの免疫原性モデルをこれらのエピトープに適用して、本発明者らは、3つのネオ抗原がH
Aエピトープとして分類され、アンカー位置変異である1つのネオ抗原がH
BUH
Cエピトープとして分類されることを見出した(表4における矢印および
図10)。したがって、5つのエピトープのうち4つは本発明者らの免疫原性モデルによって説明され得る。
【0272】
MZ7−MEL細胞株において新たにこれらのエピトープを予測する本発明者らの能力を試験するため、MZ7−MEL細胞株のエクソームを配列決定した(実験方法参照)。合計で743の発現非同義変異が同定された。Lennerz et al.(V.Lennerz et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 102,16013(2005))によって以前に同定された5つの変異すべてが認められた。本発明者らは次に、各々の変異についてTスコア、M
mutおよびM
wtを計算し、また所与の変異に関して最小MHCコンセンサススコアをもたらすHLA対立遺伝子およびエピトープも報告した。変異を、閾値α=0.8、β=0.2、τ=0.5(加えて条件RPKM>0.2)を用いて3つの群:H
A、H
BUH
CおよびH
nの1つに分類し、その後、表3で説明したように、それらの免疫原性である潜在的可能性に基づいて順位付けた。743変異のうちで、32の変異がH
A基準を満たし(表5)、12がH
BUH
C基準を満たし(表6)、15がH
n基準を満たすことを認めた。
【0273】
表5.H
Aに分類されたMZ7−MEL細胞の変異。MZ7−MELにおける743の発現非同義変異のうち32は、閾値:α=0.8、β=0.2およびτ=0.5を使用してH
A免疫原性と分類された。順位はM
mut(降順)→Tスコア(降順)選別スキームに基づく。Lennerz et al.によって同定された免疫原性ネオ抗原を黄色でハイライトする。加えてRPKMが0.2を超えることが必要であった。
【表5】
【0274】
表6.H
BUH
Cに分類されたMZ7−MEL細胞の変異。MZ7−MELにおける743の発現非同義変異のうち12は、閾値:α
*=0.8、β=0.2およびRPKM>2を使用してH
BUH
C免疫原性と分類された。順位はM
mut(降順)→M
wt(昇順)選別スキームに基づく。Lennerz et al.によって同定された免疫原性ネオ抗原を黄色でハイライトする。
【表6】
【0275】
H
Aとして分類された32変異のうちで、Lennerz et al.によって同定された3つのH
Aクラス変異(SIRT2、SNRPD1およびRBAF600)は、M
mut→Tスコア順位付けスキーム(表3参照)を使用して18の順位クラスの中で2位、4位および13位に順位付けられた。H
BUH
Cとして分類された12変異のうちで、4番目のLennerz et al.の変異(SNRP116)は3位に順位付けられた。さらに、M
wtに関してより高い(より現実的な)閾値を用いた場合(例えばα
*〜5)、4番目のLennerz et al.の変異は1位に順位付けられる(1つだけの付加的なアンカー位置変異と共に−表7)。最後に、4つのLennerz et al.の変異は、著者によって報告されたように正しいHLA対立遺伝子、エピトープ長および変異位置を有すると予測された。
【0276】
表7.H
BUH
Cに分類されたMZ7−MEL細胞の変異。MZ7−MELにおける743の発現非同義変異のうち2は、閾値:α
*=5、β=0.2およびRPKM>2を使用してH
BUH
C免疫原性と分類された。順位はM
mut(降順)→M
wt(昇順)選別スキームに基づく。Lennerz et al.によって同定された免疫原性ネオ抗原を黄色でハイライトする。
【表7】
【0277】
結論
B16およびCT26データセットの分析は、3つの条件:野生型ペプチドが提示される、変異ペプチドが提示される、およびアミノ酸置換が十分に低い対数オッズスコアを有する、を満たす場合に免疫原性が付与されるモデルを支持する(
図11A)。本発明者らがクラスI免疫原性と称する、免疫原性に関するこのモデルは、ヒト黒色腫細胞株モデル、MZ7−MELによってさらに裏付けられる。MZ7−MELモデルおよび公表されているCD8+拘束性ネオ抗原は、本発明者らがクラスII免疫原性と称する、2番目のモデルを支持し、この場合は野生型エピトープが提示されないが、置換(例えばアンカー位置における)がMHCコンセンサススコアの有意の上昇(>5から10)をもたらし、新規のこれまで見たことがないエピトープを生じさせる(
図11B)。免疫原性を定義するためのこの枠組みは、3変数分類スキーム(M
mut、M
wt、Tスコア)で獲得される。この分類スキームを使用して、本発明者らはMZ7−MELの743変異を34変異のリストに低減することができ、5つのLennerz et al.のエピトープは上位5クラスに順位付けられた。
【0278】
表7は、クラスII免疫原性変異がまれであることを明らかにする。743変異のうちで、およそ30のクラスI免疫原性変異と比較して2つだけがクラスII免疫原性として分類された(M
wtに関する現実的な閾値を用いて)。H
BUH
Cクラス変異の少なさはマウス黒色腫モデルにおいても観察された(表8)。この所見は個別化ワクチンのためのクラスI免疫原性変異の重要性を強調するものであり、これがワクチン接種のために使用することができる患者試料中で見出される主要なタイプの変異であると予想される。同時に、Lennerz et al.によって見出された5つのエピトープの1つがクラスII免疫原性であったという事実は、クラスII免疫原性変異がより強力であるかまたは何らかの方法で免疫系によって選択されることを指示し得る。
【0279】
表8.種々の腫瘍モデルにおける候補H
AおよびH
BUH
C変異の数。
(α=0.8、α
*=5、β=0.2、τ=0.5)
【表8】
【0280】
(実施例2)
実験材料および方法
実施例1で使用した実験材料および方法を以下で述べる:
【0281】
実験動物
C57BL/6JおよびBalb/cJマウス(CRL)を、University of Mainzにおいて動物実験に関する連邦および州の方針に従って飼育した。
【0282】
黒色腫および結腸直腸マウス腫瘍モデルのための細胞
B16F10黒色腫細胞株(生成物:ATCC CRL−6475、ロット番号:58078645)およびCT26.WT結腸癌細胞株(生成物:ATCC CRL−2638、ロット番号:58494154)を2010年にAmerican Type Culture Collectionから購入した。初期(第3、第4)継代の細胞を配列決定実験に使用した。細胞をマイコプラスマに関して定期的に試験した。受領以後に細胞の再確認は実施しなかった。MZ7−MEL細胞株(1988年1月に樹立)および自己エプスタイン−バーウイルス形質転換B細胞株をDr.Thomas Wolfel(Department of Medicine,Hematology Oncology,Johannes Gutenberg University)から入手した。
【0283】
合成ペプチド
ペプチドをJerini Peptide Technologies(Berlin,Germany)から購入するかまたはTRONペプチド施設から合成した。合成ペプチドは、14位に変異(MUT)または野生型(WT)アミノ酸を有する27アミノ酸長であった。
【0284】
マウスの免疫
年齢をマッチさせた雌性C57BL/6またはBalb/cマウスに、PBS中でLipofectamine(商標)RNAiMAX(Invitrogen)20μlと共に製剤化したインビトロ転写mRNA 20μgを200μlの総注射容量で静脈内注射した(各群につき3匹のマウス)。マウスを0、3、7、14および18日目に免疫した。初回注射の23日後にマウスを犠死させ、免疫学的試験のために脾細胞を単離した(ELISPOTアッセイ参照)。1つの変異(モノエピトープ)または2つの変異(バイエピトープ)を示すDNA配列を、14位に変異を有する27アミノ酸(aa)の配列を使用して構築し、pST1−2BgUTR−A120骨格にクローニングした(S.Holtkamp et al.,Blood 108,4009(2006))。この鋳型からのインビトロ転写および精製は以前に記述されている(S.Kreiter et al.,Cancer Immunology,Immunotherapy 56,1577(2007))。
【0285】
酵素結合免疫スポットアッセイ
酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイ(S.Kreiter et al.,Cancer Research 70,9031(2010))および刺激因子としての同系骨髄由来樹状細胞(BMDC)の生成は以前に記述されている(L.MB et al.,J.Immunol.Methods 223,77(1999))。B16F10モデルに関して、BMDCを、指示されている変異、対応する野生型または対照ペプチド(VSV−NP)を用いてペプチドパルスした(6μg/ml)。CT26モデルに関しては、ペプチドでの再刺激に加えて、対応するインビトロ転写mRNAでBMDCをトランスフェクトし、同様に再刺激のために使用した。アッセイのために、5×10
4BMDCを、抗IFN−γ抗体(10μg/mL、クローンAN18;Mabtech)で被覆したマイクロタイタープレート中で5×10
5の新鮮単離した脾細胞と共に同時インキュベートした。37℃で18時間後、サイトカイン分泌を抗IFN−γ抗体(クローンR4−6A2;Mabtech)で検出した。スポット数をカウントし、ImmunoSpot(登録商標)S5 Versa ELISPOT Analyzer、ImmunoCapture(商標)Image AcquisitionソフトウェアおよびImmunoSpot(登録商標)Analysisソフトウェアバージョン5で分析した。統計分析はスチューデントt検定およびマン−ホイットニー検定(ノンパラメトリック検定)によって行った。p値<0.05で応答を有意とみなした。
【0286】
細胞内サイトカインアッセイ
ELISPOTアッセイ用に調製した脾細胞のアリコートを、細胞内フローサイトメトリによるサイトカイン産生の分析に供した。このために各試料につき2×10
6脾細胞を、96ウェルプレートにおいてゴルジ阻害剤ブレフェルジンA(10μg/mL)を添加した培地(RPMI+10%FCS)に塗布した。各動物からの細胞を、2×10
5のペプチドパルスしたまたはRNAでトランスフェクトしたBMDCで37℃にて5時間再刺激した。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、PBS 50μl中に再懸濁して、以下の抗マウス抗体:抗CD4 FITC、抗CD8 APC−Cy7(BD Pharmingen)で4℃にて20分間細胞外染色した。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、その後外膜の透過処理のためにCytofix/Cytoperm(BD Bioscience)溶液100μL中に4℃にて20分間再懸濁した。透過処理後、細胞をPerm/Wash−Buffer(BD Bioscience)で洗浄し、Perm/Wash−Buffer中に50μL/試料で再懸濁し、以下の抗マウス抗体:抗IFN−γ PE、抗TNF−α PE−Cy7、抗IL2 APC(BD Pharmingen)で4℃にて30分間細胞内染色した。Perm/Wash−Bufferで洗浄した後、フローサイトメトリ分析のために1%パラホルムアルデヒドを含有するPBS中に細胞を再懸濁した。BD FACSCanto(商標)II血球計算器およびFlowJo(バージョン7.6.3)を用いて試料を分析した。
【0287】
次世代シークエンシング
核酸抽出:バルク細胞からのDNAおよびRNAならびにマウス組織からのDNAを、Qiagen DNeasy Blood and Tissueキット(DNA用)およびQiagen RNeasy Microキット(RNA用)を用いて抽出した。
【0288】
DNAエクソームシークエンシング:B16F10、C57BL/6JおよびCT26.WTに関するエクソーム捕獲ならびにBalb/cJに関するDNAリシークエンシングを以前に記述されているように三つ組で実施した(J.C.Castle et al.,Exploiting the mutanome for tumor vaccination.Cancer Research 72,1081(2012))。MZ7−MEL/EBV−B DNAリシークエンシングのためのエクソーム捕獲を、すべてのタンパク質コード領域を捕獲するように設計されたAgilent XT Human all Exon 50 Mb溶液に基づく捕獲アッセイを用いて二つ組で実施した。精製ゲノムDNA(gDNA)3μgを、Covaris S2超音波装置を用いて150〜200bpに断片化した。フラグメントを、製造者の指示に従って末端修復し、5'リン酸化して、3'アデニル化した。Agilentインデキシング特異的ペアエンドアダプタを、アダプタ対gDNAの10:1モル比を用いてgDNAフラグメントに連結した。AgilentのInPE 1.0およびSureSelectインデキシング捕獲前PCRプライマーならびにHerculaseIIポリメラーゼを使用して4サイクルの捕獲前増幅を行った。アダプタ連結し、PCR濃縮したgDNAフラグメント500ngをAgilentのエクソーム捕獲ベイトに65℃で24時間ハイブリダイズした。ハイブリダイズしたgDNA/RNAベイト複合体を、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズを用いて取り出し、洗浄して、SureSelect溶出緩衝液中での溶出の間にRNAベイトを切断した。溶出したgDNAフラグメントを、SureSelectインデキシング捕獲後PCRおよびインデックスPCRプライマーならびにHerculaseIIポリメラーゼを使用して捕獲後に10サイクルPCR増幅した。すべての清浄化を1.8倍容のAgencourt AMPure XP磁気ビーズで実施した。すべての品質管理はInvitrogenのQubit HSアッセイを用いて実施し、フラグメントサイズはAgilentの2100 Bioanalyzer HS DNAアッセイを用いて決定した。エクソーム濃縮したgDNAライブラリを、7pMライブラリを使用するTruseq SRクラスターキットv2.5を用いてcBotでクラスター化し、1×100bpを、Truseq SBSキットを使用してIllumina HiSeq2000で配列決定した。
【0289】
RNA遺伝子発現プロファイリング(RNA−Seq):バーコード化されたmRNA−seq cDNAライブラリを全RNA 5μgから二つ組で調製した(NEB試薬を使用する修正Illumina mRNA−seqプロトコル)。Seramag Oligo(dT)磁気ビーズ(Thermo Scientific)を使用してmRNAを単離し、二価カチオンと熱を用いて断片化した。生じたフラグメント(160〜220bp)を、ランダムプライマーおよびSuperScriptII(Invitrogen)を使用してcDNAに変換し、続いてDNAポリメラーゼIおよびRNaseHを使用して第二鎖を合成した。cDNAをNEB RNAライブラリキットの指示に従って末端修復し、5'リン酸化して、3'アデニル化した。単一の3'TオーバーハングIlluminaマルチプレックス特異的アダプタを、アダプタ対cDNAインサートの10:1モル比を用いてT4 DNAリガーゼで連結した。cDNAライブラリを精製し、300bpでサイズ選択した(E−Gel 2% SizeSelectゲル、Invitrogen)。Phusion DNAポリメラーゼおよびIllumina特異的PCRプライマーを使用したPCRによって濃縮し、Illumina6塩基インデックス配列およびフローセル特異的配列の付加を実施した。この工程までのすべての清浄化は1.8倍容のAgencourt AMPure XP磁気ビーズで行った。すべての品質管理はInvitrogenのQubit HSアッセイを用いて実施し、フラグメントサイズはAgilentの2100 Bioanalyzer HS DNAアッセイを用いて決定した。バーコード化されたRNA−Seqライブラリを上述したようにクラスター化し、50bpを配列決定した。
【0290】
NGSデータ解析、遺伝子発現:RNA試料からの出力された配列リードをIllumina標準プロトコルに従って前処理し、これは低品質リードのフィルタリングを含んだ。配列リードを、bowtie(バージョン0.12.5)(B.Langmead,C.Trapnell,M.Pop,S.L.Salzberg,Genome Biol 10,R25(2009)))を用いてmm9(A.T.Chinwalla et al.,Nature 420,520(2002))またはhg18(F.Collins,E.Lander,J.Rogers,R.Waterston,I.Conso,Nature 431,931(2004))参照ゲノム配列に整列させた。ゲノムアラインメントに関しては2つのミスマッチを許容し、最適アラインメント(「−v2−best」)だけを報告し、転写産物アラインメントについてはデフォルトパラメータを使用した。ゲノム配列に整列可能でないリードは、UCSC既知遺伝子のすべての可能なエクソン−エクソン接合部配列のデータベースに整列させた(F.Hsu et al.,Bioinformatics 22,1036(2006))。リード座標をRefSeq転写産物のものとインターセクトさせることによって発現値を決定し、オーバーラップするエクソンと接合部リードをカウントして、RPKM発現単位(100万本のマッピングされたリード当たりのエクソンモデルのキロベースごとにマッピングされるリード(Reads which map per Kilobase of exon model per million mapped reads))(A.Mortazavi,B.A.Williams,K.McCue,L.Schaeffer,B.Wold,Nature methods 5,621(2008))に正規化した。
【0291】
NGSデータ解析、体細胞変異の発見:体細胞変異を以前に記述されているように同定した(J.C.Castle et al.,Exploiting the mutanome for tumor vaccination.Cancer Research 72,1081(2012))。配列リードを、bwa(デフォルトオプション、バージョン0.5.8c)(H.Li,R.Durbin,Bioinformatics 25,1754(2009))を用いてmm9またはhg18参照ゲノムに整列させた。ゲノムの複数箇所にマッピングされる曖昧なリードを除去した。2つのソフトウェアプログラム:samtools(バージョン0.1.8)(H.Li,Bioinformatics 27,1157(2011))およびSomaticSniper(A.McKenna et al.,Genome Research 20,1297(2010))のコンセンサスを用いて変異を同定した。B16F10およびC57BL/6Jに関しては、GATKも含めた(A.McKenna et al.,Genome Research 20,1297(2010))。それぞれのすべてのレプリケートにおいて同定された潜在的体細胞変異に「偽発見率」(FDR)の信頼値を割り当てた(M.Lower et al.,PLoS computational biology 8,e1002714(2012))(CT26およびMZ7−MELのみ)。
【0292】
変異選択および検証
免疫原性試験のための50のB16F10変異を選択する基準は以前に記述されている(J.C.Castle et al.,Exploiting the mutanome for tumor vaccination.Cancer Research 72,1081(2012))。変異に関するこれらの基準には以下が含まれた:(i)3つすべてのB16F10レプリケートに存在し、およびすべてのC57BL/6三つ組に存在しない、(ii)RefSeq転写産物中に存在する、(iii)非同義変化を生じさせる、(iv)B16F10発現遺伝子中に存在する(レプリケート全体にわたる平均RPKM>10、エクソン発現>0)ならびに(v)各変異についてM
mutスコア(以下参照)が<5である必要があった。59の残りの変異について、MHCクラスIスコア、MHCクラスIIスコアおよび転写産物発現の四分位ランクの成果を形成し、最初の50の変異(0.1≦M
mut≦3.9)をPCRによる確認のために選択した(さらなる詳細については(J.C.Castle et al.,Exploiting the mutanome for tumor vaccination.Cancer Research 72,1081(2012)参照)。免疫原性試験のために選択された96のCT26.WT変異についての基準をさらに精緻化し、これには以下が含まれた:(i)3つすべてのCT26.WTレプリケートに存在し、3つすべてのBalb/cJレプリケートに存在しない、(ii)FDR≦0.05、(iii)UCSC既知遺伝子転写産物中に存在する、(iv)非同義変化を生じさせる、(v)dbSNPデータベース中に存在しない、(vi)ゲノム反復領域中に存在しない。残りの493の変異から、8つの12員の群を3つの特徴:M
mutスコア(最小−[0.1,1.9]対最大−[3.9−20.3])、タンパク質の区画(細胞外、細胞内)、および遺伝子発現(7.1RPKMの平均値より下対上)に従って定義し、貪欲法に従って変異を選択して、それに応じて閾値を調整した。生じた96変異のうち94は、PCR、続いてサンガー配列決定法によって確認された。
【0293】
分析のためにMZ7−ML変異を選択する基準には以下が含まれた:(i)2つのMZ7−MELレプリケートに存在し、2つの自己EBV−Bレプリケートには存在しない、続いて(ii)〜(vi)の工程はCT26.WTに関して上述されている。工程(i)〜(vi)を適用することにより、約8000変異の初期リストが743に低減された。
【0294】
MHC結合予測およびM
mutスコアの計算
MHC結合予測を、IEDB分析リソースConsensusツール(http://tools.immuneepitope.org/analyze/html/mhc_binding.html)(Y.Kim et al.,Nucleic Acids Research 40,W525(2012))を用いて実施し、これは、ANN(C.Lundegaard et al.,Nucleic Acids Research 36,W509(2008);M.Nielsen et al.,Protein Science 12,1007(2009))、SMM(B.Peters,A.Sette,BMC bioinformatics 6,132(2005))および一部の対立遺伝子モデルについては合わせてcomblib(J.Sidney et al.,Immunome Research 4,2(2008))からのベンチマーク試験に基づき最良の成績の予測方法を組み合わせるものである(H.H.Lin,S.Ray,S.Tongchusak,E.L.Reinherz,V.Brusic,BMC immunology 9,8(2008);B.Peters et al.,PLoS computational biology 2,e65(2006))。コンセンサスアプローチは、SWISSPROTからの500万個のランダムなペプチドのペプチドスコアに対する所与のペプチドの結合予測スコアを反映する、パーセンタイル順位を作成することによってすべてのツールの予測スコアを組み合わせる。
【0295】
各変異について、本発明者らは、すべての可能な(i)配列ウィンドウ(変異を位置付ける)、(ii)エピトープ長および(iii)可能なマウスMHCクラスI対立遺伝子、に関する予測MHCコンセンサススコアを計算した。すべてのMHCコンセンサススコアの最小値がM
mutスコアであると定義した。
【0296】
対数オッズ行列およびTスコアの計算
対数オッズ行列は、大きなタンパク質データベースの配列アラインメント比較から推定することができる。初期対数オッズ行列は配列のペアワイズ比較(BLOSUM62(S.Kreiter et al.,Cancer Immunology,Immunotherapy 56,1577(2007)))および最大節約(MP)推定方法(例えばPAM250(M.O.Dayhoff,R.M.Schwartz,B.C.Orcutt,A model for evolutionary change.MO Dayhoff,ed.Atlas of protein sequence and structure Vol.5,345(1978))、JTT250(S.Q.Le,O.Gascuel,Molecular biology and evolution 25,1307(2008))およびGonnet行列(C.C.Dang,V.Lefort,V.S.Le,Q.S.Le,O.Gascuel,Bioinformatics 27,2758(2011)))に基づいた。最近になって、最大尤度(ML)に基づく方法が開発された(例えばVT160(P.G.Higgs,T.K.Attwood,Bioinformatics and molecular evolution.(Wiley−Blackwell,2009))、WAG(S.Whelan,N.Goldman,Molecular biology and evolution 18,691(2001))およびLG(V.Lennerz et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 102,16013(2005)))。MLは、MPに基づくアプローチの場合のように、密接に関連する配列だけの比較に限定されないので、この推定アプローチは最も正確であると予想される。
【0297】
対数オッズ行列の計算は他のところで詳細に説明されている(C.C.Dang,V.Lefort,V.S.Le,Q.S.Le,O.Gascuel,Bioinformatics 27,2758(2011))。簡単に述べると、アミノ酸置換の標準モデルは、20×20速度行列Q
ijによって表されるマルコフの時間連続、時間逆転モデルを想定し、ここでq
ij(i≠j)は時間単位当たりのアミノ酸iからjへの置換の数であり、対角要素は
【数1】
を満たすように選択される。Qは、i≠jに関して、Q
ij=S
ij・π
jと分解することができ、ここでS
ijは対称交換可能性行列であり、およびπ
jはアミノ酸iが認められる確率である(C.C.Dang,V.Lefort,V.S.Le,Q.S.Le,O.Gascuel,Bioinformatics 27,2758(2011))。最後に、時間単位t=1.0が、100のPAM距離によって表される、部位当たり1.0の予想置換または部位当たり1つの「受け入れられた点突然変異」に対応するように、
【数2】
となるようにQを正規化する(M.O.Dayhoff,R.M.Schwartz,B.C.Orcutt,A model for evolutionary change.MO Dayhoff,ed.Atlas of protein sequence and structure Vol.5,345(1978);S.Q.Le,O.Gascuel,Molecular biology and evolution 25,1307(2008);C.C.Dang,V.Lefort,V.S.Le,Q.S.Le,O.Gascuel,Bioinformatics 27,2758(2011))。時間t後にアミノ酸iがアミノ酸jに置き換えられる確率、Pr(i→j│t)=P
ij(t)は、20×20確率行列P(t)=e
tQ(行列指数化を表す表記法による)によって与えられる。時間tに関して計算された対数オッズ行列は、対数オッズ20×20行列
【数3】
によって与えられる(M.O.Dayhoff,R.M.Schwartz,B.C.Orcutt,A model for evolutionary change.MO Dayhoff,ed.Atlas of protein sequence and structure Vol.5,345(1978,1978))。時間逆転とはπ
iP
ij(t)=π
jP
ji(t)を意味し、およびそれゆえT
ijは対称である(P.G.Higgs,T.K.Attwood,Bioinformatics and molecular evolution.(Wiley−Blackwell,2009))。
【0298】
iとjとの間の置換についてのTスコアは、本明細書ではT
ijと定義され、進化モデルおよび時間tに依存する。本発明者らは、PAM、BLOSUM62、JTT、VT160、Gonnet、WAG、WAG
*およびLG(上記参考文献参照)を含む、Tスコアについての様々なモデルおよびPAM距離を検討した。この報告における図面は、WAGモデルおよび250のPAM距離に基づくTスコアを使用して作成した。そのような大きなPAM距離は、アミノ酸が変化する実質的な可能性が存在することを意味し(P.G.Higgs,T.K.Attwood,Bioinformatics and molecular evolution.(Wiley−Blackwell,2009))、残基が同一ではないことがあり得るが、アミノ酸の物理化学的特性は保存されている配列の間の遠い関係を検出するのに有用である(M.O.Dayhoff,R.M.Schwartz,B.C.Orcutt,A model for evolutionary change.MO Dayhoff,ed.Atlas of protein sequence and structure Vol.5,345(1978);P.G.Higgs,T.K.Attwood,Bioinformatics and molecular evolution.(Wiley−Blackwell,2009))。
【0299】
t分布検定統計量を使用して、様々なPAMスコア(1、10、25、50、100、150、200および250)を使用してWAG行列に関する表3からの免疫原性エピトープと非免疫原性エピトープの平均Tスコアを比較した。検定統計量の分析は、P値がPAM距離と共に単調に減少することを示し、予想されたように、250のPAM距離が最適解であることを示唆した(データは示していない)。H
AおよびH
nへの分類は、PAM行列を除くすべての行列について同じであり、PAM行列はすべての進化モデルの最小精度である。すべての進化モデルのうちで、WAG250モデルは、検定統計量:[最大Tスコア(H
A)−最小Tスコア(H
n)]/σ(Tスコア(H
A)、Tスコア(H
n))で分離を測定する、表3におけるH
AエピトープとH
nエピトープとの間の最大分離をもたらした(データは示していない)。同じ検定統計量は、より小さな距離と比較してPAM距離250に関しても最大であった。
【0300】
公表されているCD8+エピトープ
単一変異アミノ酸を有するCD8+エピトープを、Cancer Immunity Journal(P.Van der Bruggen,V.Stroobant,N.Vigneron,B.Van den Eynde.(Cancer Immun,http://www.cancerimmunity.org/peptide/,2013)(http://cancerimmunity.org/peptide/mutations/)によって公表された変異から生じる腫瘍抗原のリストより収集した。HLA対立遺伝子を、公表された表からまたはもとの論文がより正確である場合はもとの論文から取り出した。表4に列挙されている参考文献は以下のものである:(1)Lennerz et al.PNAS 102(44),pp.16013-16018(2005);(2)Karanikas et al.Cancer Res 61(9),pp.3718−3724(2001);(3)Sensi et al.Cancer Res 65(2),pp.632−640(2005);(4)Linard et al.J.Immunol 168(9),pp.4802−4808(2002);(5)Zorn et al.Eur.J.Immunol 29(2),pp.592−601(1999);(6)Graf et al.Blood 109(7),pp.2985−2988(2007);(7)Robbins et al.J.Exp.Med 183(3),pp.1185−1192(1996);(8)Vigneron et al.Cancer Immun 2,pp.9(2002);(9)Echchakir et al.Cancer Res 61(10),pp.4078−4083(2001);(10)Hogan et al.Cancer Res 58(22),pp.5144−5150(1998);(11)Ito et al.Int.J.Cancer 120(12),pp.2618−2624(2007);(12)Wolfel et al.Science 269(5228),pp.1281−1284(1995);(13)Gjertsen et al.Int.J.Cancer 72(5),pp.784−790(1997)。
【0301】
(実施例3)
免疫原性変異の優先順位付けを改善するために変異スコアを比較検討するためのスキームの例
細胞に注入されたRNAは、ひとたび翻訳され、短いペプチドに切断されると、細胞内で種々のHLA型上に提示され得る。それゆえ、所与の変異は潜在的に1つより多いHLA型上に並行して提示され得るので、低いMHCコンセンサス(または類似)スコアを有すると予測されるHLA型が多いほど、所与の変異が免疫原性である可能性がより高くなるのは当然である。したがって、変異がH
Aおよび/もしくはH
BUH
Cと分類されるHLA型の数によって変異を比較検討すること、またさらには各々の変異を単純に低いM
mutスコアを有するHLA型の数によって比較検討することは、免疫原性の順位付けを改善し得る。最も一般的な解では、27量体のRNAまたはペプチドを細胞に注入した場合、HLA型だけでなく、ペプチドの長さおよびこのペプチド内の変異の位置も自由に選択することができる。それゆえ、すべての可能なHLA型、すべての可能なウィンドウ長およびウィンドウ内の変異に関するすべての可能な位置を精査して、H
Aおよび/またはH
BUH
Cと分類される解の数(所与の変異当たりの)を計算することができる(
図12)。これは、ワクチン接種のために最も有効なエピトープを選択する変異の優先順位付けのための重要な比較検討因子であり得る。M
mutおよびΔM=M
mut−M
wtの関数としてのこれらすべての解の散布図の一例を
図13に示す。