【実施例】
【0038】
以下において本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0039】
(サンプルNo.1〜20の作製)
まず、平均粒径50μmのアルミナ粒子100質量部に対して無機結合材20質量部を添加し、さらに、水、分散剤及び増粘剤を加えて混練することによって坏土を作製した。
【0040】
次に、坏土を押出成形することによって、55本の貫通孔を有する基体の成形体を形成した。続いて、基体の成形体を焼成(1250℃、1時間)した。
【0041】
次に、アルミナとチタニアにPVAを添加して調製した中間層用スラリーをろ過法によって貫通孔の内表面に堆積させて中間層の成形体を形成した。続いて、中間層の成形体を焼成(1250℃、2時間)して中間層を形成した。
【0042】
次に、アルミナにPVAを添加して調製した表層用スラリーをろ過法によって中間層の表面に堆積させて表層の成形体を形成した。続いて、表層の成形体を焼成(1250℃、1時間)して表層を形成した。この際、サンプルNo.1〜18では昇温速度を25℃/hとし、サンプルNo.19,20では昇温速度を50℃/hとした。
【0043】
以上により、モノリス状の多孔質支持体(直径30mm×長さ160mm)が完成した。
【0044】
続いて、以下のようにしてDDR型ゼオライト種結晶を準備した。
【0045】
まず、フッ素樹脂製の密閉容器にエチレンジアミン(和光純薬工業社製)を入れた後、1−アダマンタンアミン(シグマアルドリッチ社製)を加えて、超音波によって1−アダマンタンアミンを完全に溶解した。
【0046】
次に、別の容器に核としてのDDR型ゼオライト結晶を含む水溶液を入れ、シリカを含むシリカゾル(スノーテックスS、日産化学工業社製)を加えて攪拌することによって核を含むシリカゾルを得た。核としてのDDR型ゼオライト結晶は、国際公開第2010/090049A1に記載の方法に基づいて、平均粒子径2.9μのDDR型ゼオライト粉末をアシザワ・ファインテック社製ビーズミル(商品名:スターミル)によって粉砕した後に遠心分離で粗粒子を取り除いた。
【0047】
次に、1−アダマンタンアミンを溶解したエチレンジアミンの入った密閉容器に核を含むシリカゾルを素早く加え、密閉容器内の混合液が透明になるまで攪拌することによって原料溶液(原料ゾル)を得た。
【0048】
次に、フッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器に原料溶液を入れて150℃で15時間加熱(水熱合成)した。この際、サンプルNo.1〜18では昇温速度を50℃/hとし、サンプルNo.19,20では昇温速度を25℃/hとした。
【0049】
次に、pH10程度となるまで水洗することによって、ゼオライト種結晶が分散した分散液を得た。
【0050】
次に、種結晶分散液を超音波にさらした後、種結晶分散液をエタノール中に滴下して攪拌することによって種結晶の濃度が0.075質量%の種付け用スラリーを作製した。
【0051】
次に、縦置きした多孔質支持体の上方から種付け用スラリーを注いで、種付け用スラリーを多孔質支持体に形成された55本のセルに流し込んだ。
【0052】
次に、セルに風速2〜7m/秒で空気を室温にて10分間流すことによって、セルの壁面に塗布された種付け用スラリーを乾燥させた。
【0053】
次に、フッ素樹脂製容器にエチレンジアミン(和光純薬工業社製)を入れた後に1−アダマンタンアミン(シグマアルドリッチ社製)を加えて完全に溶解させた。
【0054】
次に、別の容器にシリカを含むシリカゾル(スノーテックスS、日産化学工業社製)とイオン交換水を入れて軽く攪拌することによってシリカ分散液を調製した。
【0055】
次に、1−アダマンタンアミンを溶解させたエチレンジアミン溶液をシリカ分散液に加えて攪拌することによって膜形成用原料溶液を調製した。
【0056】
次に、フッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器内に種結晶が付着した多孔質支持体を配置した。
【0057】
次に、膜形成用原料溶液を容器に入れて125℃で20時間加熱(水熱合成)することによって、1−アダマンタンアミンを含有するゼオライト膜を多孔質支持体のセル壁面に形成した。
【0058】
次に、容器から多孔質支持体を取り出して水で洗浄した。
【0059】
次に、DDR型ゼオライト膜を450℃で100時間加熱することによって、1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。その後、DDR型ゼオライト膜の洗浄と乾燥(80℃)を行った。
【0060】
(種結晶の粒子径測定)
各サンプルの種結晶分散液を約20mlの水に滴下して測定可能な濃度にした後、超音波で5分以上分散させることによって種結晶の懸濁液を得た。
【0061】
次に、動的光散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製、商品名:Nanotrac)を用いて、レーザ回折散乱法により種結晶の体積累積粒子径分布を得た。
【0062】
そして、表1に示すように、体積累積粒子径分布から種結晶の10%径(D10)を算出した。
【0063】
(多孔質支持体の細孔径測定)
各サンプルを弱アルカリ溶液(NaOH溶液)に浸してDDR型ゼオライト膜を溶解することによって、多孔質支持体の表層を露出させた。
次に、細孔径分布測定装置(Automated Perm Porometer、多孔質材料自動細孔径分布測定システム、Porous Materials, Inc.社製、試薬フロリナート(表面張力16dynes/cm、3M社製))を用いて、ASTM F316−86に基づいて多孔質支持体の体積累積細孔径分布を得た。
【0064】
そして、表1に示すように、体積累積細孔径分布から多孔質支持体の50%径(D50)と90%径(D90)を算出した。
【0065】
なお、上述の細孔径分布測定装置を用いると、多孔質支持体のうち最も細孔径の小さい層の体積累積細孔径分布が得られる。そのため、表1に示されるD50及びD90は表層の最表層に係る値である。
【0066】
(DDR型ゼオライト膜の厚み測定)
各サンプルの断面をSEMで観察することによって、DDR型ゼオライト膜のうち表層の内部に入り込んだ層(第1ゼオライト層)の平均厚みと、DDR型ゼオライト膜のうち表層の外部に出ている層(第2ゼオライト層)の平均厚みを測定した。SEM画像上で均等に離れた3箇所で測定した厚みの算術平均値を平均厚みとした。
【0067】
(水フラックスの測定)
まず、エタノールを50体積%含む水溶液(以下、「供給液」という。)を50度に加熱した。
【0068】
次に、真空ポンプによって基材本体の外周面の外側を減圧しながら、各サンプルのDDR型ゼオライト膜の内側(すなわち、セル)内に供給液を循環させた。
【0069】
次に、各サンプルから回収された透過液の質量を電子天秤にて秤量した。また、各サンプルの外周面から回収された透過液の組成をガスクロマトグラフィにて解析した。
【0070】
そして、表1に示すように、透過液の解析結果から水フラックス(kg/m
2h)を算出した。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、第1ゼオライト層の平均厚みが5.4μm以下とし、かつ、多孔質支持体のD50を0.050μm以上0.150μm以下としたサンプルNo.1〜18では、水フラックスを0.21kg/m
2h以上にすることができた。これは、多孔質支持体の最表層のD90に対する種結晶のD10の比を0.5以上とし、かつ、最表層のD90を0.050μm以上0.180μm以下とすることによって、多孔質支持体の内部への種結晶の拡散を抑制することができたためである。なお、サンプルNo.1〜18において、第1ゼオライト層の平均厚みの第2ゼオライト層の平均厚みに対する比は、2.0以下であった。
【0073】
また、第1ゼオライト層の平均厚みを2.5μm以下としたサンプルNo.1〜3,6〜12では、水フラックスを1.04kg/m
2h以上にすることができた。これは、最表層のD90に対する種結晶のD10の比を1.3以上とし、かつ、最表層のD90を0.080以下とすることによって、多孔質支持体の内部への種結晶の拡散をより抑制することができたためである。
【0074】
さらに、第1ゼオライト層の平均厚みを0.8μm以下としたサンプルNo.1,2,6では、水フラックスを1.60kg/m
2h以上にすることができた。これは、最表層のD90に対する種結晶のD10の比を1.9以上とし、かつ、最表層のD90を0.074以下とすることによって、多孔質支持体の内部への種結晶の拡散をさらに抑制することができたためである。