(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記挿入具は前記膨径部の先端側に前記膨径部よりも径の小さい先端部を有し、当該先端部により前記内袋を前記容器本体の内側に押し込むことによって、前記膨径部が前記外気導入孔に挿入される前に前記内袋を前記外殻から離間させる、請求項1に記載の方法。
外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って前記内袋が前記外殻から収縮する容器本体と、前記外殻のみを貫通する外気導入孔を開閉可能な弁部材とを備える積層剥離容器であって、
前記弁部材は、前記外気導入孔に挿通され且つ前記外気導入孔に対してスライド移動可能な軸部と、前記軸部の前記内袋側に設けられ且つ前記軸部よりも断面積が大きい蓋部とを備えており、
前記外気導入孔の前記内袋側の縁部に形成されるバリが、前記外気導入孔に対し外側に向かって傾斜している、積層剥離容器。
前記蓋部は、前記軸部側に向かって傾斜し且つ前記外気導入孔の前記内袋側の縁部と当接する傾斜面を有しており、前記バリの傾斜角が、前記傾斜面の傾斜角と略同一又は前記傾斜面の傾斜角よりも大きくなるよう形成される、請求項4に記載の積層剥離容器。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施形態の積層剥離容器1は、容器本体3と、弁部材5を備える。容器本体3は、内容物を収容する収容部7と、収容部7から内容物を吐出する口部9を備える。
【0020】
図2に示すように、容器本体3は、収容部7及び口部9において、外層11と内層13を備えており、外層11によって外殻12が構成され、内層13によって内袋14が構成される。内容物の減少に伴って内層13が外層11から剥離することによって、内袋14が外殻12から剥離して収縮する。
【0021】
口部9は、雄ネジ部9dが設けられている。雄ネジ部9dには、雌ねじを有するキャップやポンプなどが取り付けられる。
図2には、インナーリング25を有するキャップ23の一部を図示している。インナーリング25の外径は、口部9の内径と略同じであり、インナーリング25の外面が口部9の当接面9aに当接することによって内容物の漏れ出しが防がれる。
【0022】
また、収容部7には、外殻12と内袋14の間の中間空間21と、容器本体3の外部空間Sとの間の空気の出入りを調節する弁部材5が設けられている。外殻12には、収容部7において中間空間21と外部空間Sを連通する外気導入孔15が設けられている。外気導入孔15は、外殻12にのみ設けられた貫通孔であり、内袋14には到達していない。
図2及び
図3に示すように、弁部材5は、外気導入孔15内に配置される軸部5aと、外気導入孔15を閉塞可能な形状を有し且つ中間空間21に配置される蓋部5cと、軸部5aの外部空間S側に設けられ且つ弁部材5が外殻12の内側に入り込むことを防ぐ係止部5bを備える。軸部5aの直径は、外気導入孔15の直径よりも小さく外気導入孔15に対してスライド移動可能である。また、蓋部5cの直径は、外気導入孔15の直径よりも大きく、軸部5aよりも断面積が大きくなっている。
【0023】
蓋部5cは、外殻12を圧縮した際に外気導入孔15を閉塞させるように構成され、軸部5aに近づくにつれて断面積が小さくなるようにテーパー面5dを備える。
図3(b)に示すテーパー面5dの傾斜角θ1は、軸部5aが延びる方向Dに対して15〜45度であることが好ましく、20〜35度がさらに好ましい。傾斜角θ1が大きすぎるとエアー漏れが生じやすく、小さすぎると弁部材5が長くなってしまうからである。
【0024】
このような構成により、外殻12を圧縮すると、中間空間21内の圧力が外圧よりも高くなって、この圧力差によって蓋部5cが外気導入孔15に対してさらに強く押し付けられて、蓋部5cが外気導入孔15を閉塞する。蓋部5cにはテーパー面5dが設けられているので、蓋部5cが容易に外気導入孔15に嵌って外気導入孔15を閉塞する。
【0025】
この状態で外殻12をさらに圧縮すると、中間空間21内の圧力が高まり、その結果、内袋14が圧縮されて、内袋14内の内容物が吐出される。また、外殻12への圧縮力を解除すると、外殻12が自身の弾性によって復元しようとする。この際、蓋部5cが外気導入孔15から離れて、外気導入孔15の閉塞が解除されて、中間空間21内に外気が導入される。また、係止部5bが外気導入孔15を塞いでしまわないように、係止部5bには流通路5wが設けられており、係止部5bが外殻12に当接した状態でも、流通路5w及び外気導入孔15を通じて、外気が中間空間21内に導入可能になっている。
【0026】
弁部材5は、蓋部5cが外気導入孔15を押し広げながら、蓋部5cを中間空間21内に挿入することによって容器本体3に装着することができる。そのため、蓋部5cの先端は、先細り形状になっていることが好ましい。このような弁部材5は、容器本体3の外側から蓋部5cを中間空間21内に押し込むだけで装着可能なので、生産性に優れている。また、弁部材5は、射出成形などによって成形される。
【0027】
収容部7は、弁部材5を取り付けた後にシュリンクフィルムで覆われる。この際に、弁部材5がシュリンクフィルムに干渉しないように、弁部材5は、収容部7に設けられた弁部材取付凹部7aに装着される。また、弁部材取付凹部7aがシュリンクフィルムで密閉されてしまわないように弁部材取付凹部7aから口部9の方向に延びる空気流通溝7bが設けられる(
図1参照)。
【0028】
次に、
図4を用いて、容器本体3の層構成について説明する。容器本体3は、外層11と内層13を備える。外層11は、復元性が高くなるように、内層13よりも肉厚に形成される。
【0029】
外層11は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などで構成される。外層11は、複数層構成であってもよい。例えば、
図4に示すように、リプロ層11cの両側をバージン材で形成した層11a、11bで挟んだ構成であってもよい。ここで、リプロ層とは、容器の成形時にでたバリをリサイクルして使用した層をいう。また、外層11は、復元性が高くなるように、内層13よりも肉厚に形成される。外層11は、プロピレンと別のモノマーとの間のランダム共重合体からなることが好ましい。プロピレンと共重合されるモノマーとしては、ポリプロピレンのホモポリマーに比べた場合のランダム共重合体の耐衝撃性を向上させるものであればよく、エチレンが特に好ましい。プロピレンとエチレンのランダム共重合体の場合、エチレンの含有量は、5〜30mol%が好ましい。ランダム共重合体の重量平均分子量は、10〜50万が好ましく、10〜30万がさらに好ましい。また、ランダム共重合体の引張弾性率は、400〜1600MPaが好ましく、1000〜1600MPaが好ましい。引張弾性率がこのような範囲の場合に、形状復元性が特に良好であるからである。容器が過度に硬いと、容器の使用感が悪くなるため、ランダム共重合体に、例えば、直鎖状低密度ポリエチレンなどの柔軟材料を混合して外層11を構成してもよい。
【0030】
内層13は、容器外面側に設けられたEVOH層13aと、EVOH層13aの容器内面側に設けられた内面層13bと、EVOH層13aと内面層13bの間に設けられた接着層13cを備える。EVOH層13aを設けることでガスバリア性、及び外層11からの剥離性を向上させることができる。
【0031】
EVOH層13aは、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層であり、エチレンと酢酸ビニル共重合物の加水分解により得られる。EVOH樹脂のエチレン含有量は、例えば25〜50mol%であり、酸素バリア性の観点から32mol%以下が好ましい。エチレン含有量の下限は、特に規定されないが、エチレン含有量が少ないほどEVOH層13aの柔軟性が低下しやすいので25mol%以上が好ましい。また、EVOH層13aは、酸素吸収剤を含有することが好ましい。酸素吸収剤をEVOH層13aに含有させることにより、EVOH層13aの酸素バリア性をさらに向上させることができる。
【0032】
内面層13bは、積層剥離容器1の内容物に接触する層であり、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などのポリオレフィンからなり、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンからなることが好ましい。内面層13bを構成する樹脂の引張弾性率は、50〜300MPaが好ましく、70〜200MPaが好ましい。引張弾性率がこのような範囲の場合に、内面層13bが特に柔軟であるからである。引張弾性率は、具体的には例えば、50、100、150、200、250、300Mpaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
接着層13cは、EVOH層13aと内面層13bとを接着する機能を有する層であり、例えば上述したポリオレフィンにカルボキシル基を導入した酸変性ポリオレフィン(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン)を添加したものや、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)である。接着層13cの一例は、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンと、酸変性ポリエチレンの混合物である。
【0034】
次に、本実施形態の積層剥離容器1の製造方法の一例を説明する。
【0035】
まず、
図5(a)に示すように、製造すべき容器本体3に対応する積層構造(一例は、容器内面側から順に、PE層/接着層/EVOH層/PP層/リプロ層/PP層の積層構造)を備えた溶融状態の積層パリソンを押出し、この溶融状態の積層パリソンをブロー成形用の分割金型にセットし、分割金型を閉じる。次に、
図5(b)に示すように、容器本体3の口部9側の開口部にブローノズルを挿入し、型締めを行った状態で分割金型のキャビティー内にエアーを吹き込む。
【0036】
次に、
図5(c)に示すように、分割金型を開いて、ブロー成形品を取り出す。分割金型は、弁部材取付凹部7a、空気流通溝7b、底シール突出部27などの容器本体3の各種形状がブロー成形品に形成されるようなキャビティー形状を有する。また、分割金型には、底シール突出部27の下側にピンチオフ部が設けられており、底シール突出部27の下側の部分に下バリが形成されるので、これを除去する。以上の工程によって、外殻12と内袋14とを有する容器本体3が形成される(容器本体形成工程)。
【0037】
次に、
図5(d)に示すように、取り出した容器本体3を整列させる。
【0038】
次に、
図6(a)〜(c)に示すように、穿孔装置2を用いて、容器本体3の外殻12に外気導入孔15を形成する(外気導入孔形成工程)。以下、この工程について詳細に説明する。
【0039】
まず、
図6(a)に示すように、容器本体3を穿孔装置2に近接した位置にセットする。穿孔装置2は、本体部31と先端部32を有する穴あけドリル30と、伝達ベルト2bを通じて穴あけドリル30を回転駆動するモーター2cを備える。穿孔装置2は、サーボモータの回転によって穿孔装置2を単軸移動させるサーボシリンダ(図示せず)によって支持されており、
図6(a)の矢印X1方向及び
図6(c)の矢印X2方向に移動可能に構成されている。このような構成によって、穴あけドリル30を回転させながら、その先端部32を容器本体3の外殻12に押し付けることが可能になっている。また、穿孔装置2の位置と移動速度をサーボモータによって制御することによって、タクトタイムを短縮することが可能になっている。
【0040】
穴あけドリル30には、本体部31から先端部32に渡って延びる空洞33が設けられており(
図7、
図8を参照)、空洞33に連通する通気パイプ2eが連結されている。通気パイプ2eは、図示しない吸排気装置に連結されている。これによって、穴あけドリル30内部からのエアー吸引及び穴あけドリル30内部へのエアーの吹込が可能になっている。
【0041】
穴あけドリル30の先端部32は、
図7に示すように、断面C字状の筒状である。先端部32には、平坦面34と切欠部37が設けられており、切欠部37の側面が刃部38となっている。先端部32の側面32aは、
図7に示すように、平坦面34に対して垂直になっていてもよく、
図8に示すように、平坦面34に近づくにつれて中心に向かって傾斜するテーパー面になっていてもよい。後者の場合、形成される外気導入孔15の縁が外側に向かって拡がるテーパー面となるので、弁部材5を挿入しやすいという利点がある。
【0042】
平坦面34の半径方向の幅Wは、0.1〜0.2mmが好ましく、0.12〜0.18mmがさらに好ましい。幅Wが小さすぎると穿孔時に内袋14が傷つきやすく、幅Wが大きすぎると刃部38が外殻12に接触しにくくなるので、穿孔をスムーズに行いにくい。切欠部37を設ける範囲は、60〜120度が好ましく、75〜105度がさらに好ましい。この範囲が大きすぎると穿孔時に内袋14が傷つきやすく、この範囲が小さすぎると穿孔をスムーズに行いにくい。刃部38における外接面P1に対する傾斜面P2の角度αは、30〜65度が好ましく、40〜55度がさらに好ましい。角度αが小さすぎると穿孔時に内袋14が傷つきやすく、角度αが大きすぎると穿孔をスムーズに行いにくい。
【0043】
また、先端部32の内面35には、先端に向かって広がるテーパー面36が設けられている。これによって、穿孔時に発生する切除片15a(
図6(c)を参照)が容器本体3側に残らず、内面35側に移行しやすくなっている。平坦面34に対するテーパー面36の角度は、95〜110度が好ましく、95〜105度がさらに好ましい。言い換えると、
図7(e)に示すように、穴あけドリル30の回転軸に平行な方向Xに対するテーパー面36の角度βは、5〜20度が好ましく、5〜15度がさらに好ましい。さらに、内面35には深さ0.05〜0.1mmで幅0.1〜0.2mmの凹形又はV形の略環状の溝39を、平坦面34に垂直な方向(穴あけドリル30の回転軸に平行な方向X)に0.2〜1mmピッチで施すことが好ましく、この場合、切除片15aがさらに内面35に移行しやすくなる。溝39のピッチは、さらに好ましくは、0.3〜0.7mmである。また、内面35にはブラスト処理が施すことが好ましく、切除片15aがさらに内面35に移行しやすくなる。
【0044】
次に、
図6(b)に示すように、穴あけドリル30を回転させながら平坦面34を外殻12に押し付ける。この際に、平坦面34が外殻12に少しめり込む。その結果、外殻12が部分的に切欠部37に入り込んで、刃部38が外殻12に接触して、外殻12が切り込まれる。平坦面34が外殻12と内袋14の境界に到達すると、外殻12が円形にくり抜かれて丸穴状の外気導入孔15が形成される。この際、穴あけドリル30の内部のエアーを吸引することによって、外殻12がくり抜かれて形成される切除片15aが、穴あけドリル30の空洞33内に吸引される。
【0045】
平坦面34が外殻12と内袋14の境界に到達した後に、平坦面34を内袋14に対して押し付けると、内袋14は外殻12から剥離されて容器本体3の内側に向かって容易に変形するので、平坦面34が内袋14にめり込むことがなく、内袋14には刃部38が接触せず、内袋14が傷つけられることが抑制される。
【0046】
本実施形態では、穴あけドリル30は加熱せずに用いており、これによって外気導入孔15の縁が溶融されず、縁がシャープに形成されるという利点がある。また、穴あけドリル30と外殻12との摩擦によって発生する熱による影響を抑制するために、穴あけドリル30は、熱伝導率が高い(例:20℃で35W/(m・℃)以上)材質で形成することが好ましい。なお、穿孔をより容易にするために、穴あけドリル30を加熱してもよい。この場合、穴あけドリル30の熱によって内袋14が溶融しないように、内袋14の最外層を構成する樹脂の融点は、外殻12の最内層を構成する樹脂の融点よりも高いことが好ましい。
【0047】
なお、穴あけドリル30によって外部空間S側から外殻12に孔15をあけると、内袋14側、すなわち中間空間21側にバリBrが発生する。このバリBrは、
図10(a)、(b)及び
図11(a)に示すように、穴あけドリル30の挿入される方向、すなわち外殻12に対して略垂直に延びるよう形成される。なお、
図11等において、バリBrは直線状に記載しているが、これはバリBrの形成される向きを示すために便宜的に描いたものであり、実際の形状を表すものではない。実際には、バリBrは製品ごとに不規則に発生する。このような状態で外気導入孔15に弁部材5を取り付けると、バリBrが弁部材5と干渉して、正常に弁部材5が動作しないおそれがあるため、本実施形態では、後述する押圧工程(バリ処理工程)によってバリBrが弁部材5と干渉しないようにしている。
【0048】
次に、
図6(c)に示すように、穿孔装置2を矢印X2方向に後退させ、穴あけドリル30の空洞33内にエアーを吹き込むことによって、切除片15aを穴あけドリル30の先端から放出させる。
以上の工程で、外殻12への外気導入孔15の形成が完了する。
【0049】
次に、
図6(d)に示すように、ブロアー48を用いて、外気導入孔15を通じて外殻12と内袋14の間にエアーを吹き込むことによって内袋14を外殻12から予備剥離させる(予備剥離工程)。また、外気導入孔15を通じたエアー漏れが無いようにしつつ、規定量のエアーを吹き込むことによって、内袋14の予備剥離の制御が容易になる。予備剥離は、収容部7の全体に対して行ってもよく、収容部7の一部に対して行ってもよいが、予備剥離されていない部位では内袋14のピンホールの有無のチェックができないので、収容部7の略全体において、内袋14を外殻12から予備剥離させることが好ましい。なお、エアーは、別の方法で外殻12と内袋14の間に吹き込んでもよい。例えば、
図6(d)に示す上部筒状部41において外殻12に設けた開口部を通じて外殻12と内袋14の間にエアーを吹き込むことができる。
【0050】
次に、
図6(e)に示すように、底シール突出部27に熱風を当てて薄肉部27aを軟化させて、底シール突出部27を折り曲げる。
【0051】
次に、
図9(a)、(b)に示すように、挿入具42を矢印X1方向で示すように移動させて挿入具42を外気導入孔15から挿入する。そして、挿入具42で内袋14を容器本体3の内側に押し込むことによって内袋14を外殻12から離間させる(内袋離間工程)。この方法によれば、内袋14を局所的に外殻12から大きく離間させることができる。また、これに続いて、挿入具42を矢印X2方向で示すように移動させ、挿入具42に形成された膨径部45(
図9(a)、
図10参照)により、外気導入孔15の内袋14側の縁部を外気導入孔15の径方向外側に向かって押圧する(押圧工程、ただし、以下ではバリ処理工程とも呼ぶ)。この工程により、外気導入孔形成工程によって外気導入孔15の縁部に形成されたバリBrを弁部材5と干渉しないよう処理することができる。以下、挿入具42を用いた内袋離間工程及び押圧工程(バリ処理工程)について詳細に説明する。
【0052】
挿入具42は、
図10に示すように、治具に保持される基端部43と、基端部43と連続し、基端部43よりも直径の小さい接続部44と、接続部44と連続し、直径が最も大きい膨径部45と、膨径部45と連続し、先端が丸まった先端部46とを有する棒状の部材である。ここで、先端部46(と接続部44)は、外気導入孔15を押し広げることなく外気導入孔15に挿入可能な直径を有しており、その直径は外気導入孔15の直径と略同一であるか、又は外気導入孔15の直径よりも小さい。外気導入孔15の直径に対する先端部46の直径の比は、0.5〜1.0とするのが好ましく、0.6〜0.8とするのがより好ましく、0.70〜0.75とするのがさらに好ましい。この直径の比は、具体的には例えば、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、膨径部45の最も径の大きい場所から先端部46の先端までの長さは、外殻12の厚みよりも十分長く、例えば10倍以上取ることが好ましい。
【0053】
次に、膨径部45は、
図11にも示すように、その先端側の面(挿入面45aとする)及び基端側の面(押圧面45bとする)がともに緩やかなテーパー形状となっており、それぞれ接続部44及び先端部46と滑らかに接続される。なお、ここでいうテーパー状の挿入面45a及び押圧面45bは、外殻12と当接する部分近傍を微視的に見たときの平面であり、巨視的に見た場合には、外側に凸となる円弧状になっていても良い。また、挿入面45aの傾斜は、押圧面45bの傾斜よりもなだらかに形成される。これは、挿入面45aの傾斜を急にすると、挿入具42の挿入時に外殻12と係合して外殻12に弾性エネルギーが蓄積し、膨径部45が外気導入孔15を通過した際に挿入具42にX1方向の力が加わってX1方向に急激に移動することを抑制するためである。
【0054】
また、膨径部45の最も太い部分の直径は、外気導入孔15の直径よりも大きくなっており、外気導入孔15の直径に対する膨径部45の直径(最も太い部分)の比は、1.01〜1.06とするのが好ましく、1.02〜1.05とするのがより好ましく、1.03〜1.04とするのがさらに好ましい。また、この直径の比は、具体的には例えば、1.01、1.015、1.02、1.025、1.03、1.035、1.04、1.045、1.05、1.055、1.06であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。膨径部45の直径は、小さすぎると、バリBrが弁部材5と干渉する位置に残ってしまい、大きすぎると、外気導入孔15が変形してしまうことになるが、上記の値とすることで、これらのことを防止することができる。
【0055】
内袋離間工程では、上記のような構成の挿入具42を、
図10(a)〜
図10(c)に示すように、矢印X1方向に移動させながら外気導入孔15に挿入することによって、
図10(b)に示すように、外気導入孔15の近傍において内袋14を外殻12から離間させる。ここで、膨径部45は、外気導入孔15の直径よりも大きな直径を有しているが、膨径部45の先端部46側の挿入面45aが緩やかなテーパ形状をなしていることで、スムーズに外殻12の内側に挿入されるようになっている。また、外殻12は、
図10(c)の想像線12aで示すように、外気導入孔15の縁部が内袋14の方向に弾性変形することで、膨径部45が外気導入孔15を通過できるようになっている。
【0056】
なお、内袋14は、復元力が小さいので、一旦、
図10(b)に示すような状態になると、挿入具42を抜いても、
図10(a)の状態には戻らない。また、
図10(a)に示すように、外殻12と内袋14の間には、予備剥離工程によって隙間Gが形成されているので、挿入具42を内袋14に押し当てると、挿入具42からの負荷は広い範囲に分散されて内袋14に伝わることに加えて、内袋14は、容器本体3の内側に向かって容易に変形されるので、内袋14に傷が入ることがない。ただし、外殻12と内袋14の材質によっては、内袋14を外殻12から簡単に剥離させることができる。このような場合等には、予備剥離工程を省略し、内袋離間工程を行っても良い。
【0057】
次に、内袋離間工程において挿入具42を外気導入孔15に挿入した後、バリ処理工程では、
図10(c)〜
図10(e)に示すように、挿入具42を、矢印X2方向に移動させながら外気導入孔15から引き抜くことによって、
図11(a)に示す外気導入孔15の内袋14側の縁部に形成されるバリBrを、
図11(b)に示すように外気導入孔15に対し外側に向かって傾斜させる。
【0058】
具体的には、挿入具42を矢印X2の方向に移動させ、膨径部45の押圧面45bをバリBrと当接させ、この状態でさらに挿入具42を矢印X2の方向に移動させることで、バリBrを外気導入孔15の径方向外側に向かって押圧する。これにより、バリBrは、膨径部45の押圧面45bの傾斜と略同一の方向に傾斜することになる。ここで、膨径部45の押圧面45bと移動方向X2とのなす角をθ2(
図11(a)参照)、バリBrの元々形成されていた方向と押圧による傾斜後の方向とのなす角をθ3(
図11(b)参照)とすると、θ2とθ3は略同一となる。したがって、膨径部45の押圧面45bの移動方向X2とのなす角θ2、つまり膨径部45の押圧面45bの傾斜角θ2を、弁部材5の蓋部5cに形成されるテーパー面5d(
図3(b)及び
図12(b)参照)の傾斜角θ1と同一か又はθ1よりも大きく設定することで、バリBrの傾斜角θ3がテーパー面5dの傾斜角θ1と同一か又はθ1よりも大きくなる。このような形状のバリBrを有していることで、後述する弁部材装着工程において外気導入孔15も弁部材5を装着した際に、バリBrが弁部材5と干渉することを防止することができる。
【0059】
なお、バリ処理工程において、膨径部45の押圧面45bがバリBrと当接してから、膨径部45が外気導入孔15を通過する際の挿入具42の引き抜く速度は、内袋離間工程における外気導入孔15に膨径部45を挿入する際を含む、他の場面における移動速度よりも遅くすることが好ましい。
【0060】
次に、
図13(a)〜(b)に示すように、ロボットアーム47で弁部材5を吸着した状態でロボットアーム47を矢印X1方向に移動させて弁部材5を外気導入孔15内に押し込むことによって、弁部材5を外殻12に装着する(弁部材装着工程)。具体的には、外殻12の外側から、弁部材5の蓋部5cを外気導入孔15に押し込んで挿通させることによって、
図12(a)及ぶ13(b)に示すように、弁部材5を外殻12に装着する。蓋部5cは、外気導入孔15よりも直径が大きいので、蓋部5cが外気導入孔15を押し広げながら外気導入孔15を通過する。そして、蓋部5cが外気導入孔15を通過した直後に蓋部5cが容器本体3の内側に向かって勢いよく移動する。この際に蓋部5cが内袋14に衝突すると内袋14に傷がつく恐れがあるが、本実施形態では、内袋離間工程において内袋14が予め外殻12から離間されているので、蓋部5cは、ほとんど又は全く内袋14に接触せず、内袋14が傷つくことがない。一方、内袋離間工程を行わずに内袋14が外殻12に隣接している場合には、蓋部5cが外気導入孔15を通過した直後に勢いよく容器本体3の内部に向かって移動して内袋14に衝突して内袋14を損傷させる。従って、弁部材装着工程の前に内袋離間工程を行うことが重要である。なお、本実施形態では、外気導入孔15の縁と弁部材5の間の隙間を弁部材5の移動によって開閉することによって、弁部材5が外気導入孔15を開閉するように構成されているが、弁部材5自体に貫通孔と開閉可能な弁を設けて、この弁の働きによって貫通孔を開閉することによって、外気導入孔15を開閉するように構成してもよい。このような構成の弁部材5を用いる場合でも、弁部材5を外殻12の外側から外気導入孔15に押し込む際に内袋14を傷つけてしまう場合があるという問題が存在しているので、本実施形態と同様に、弁部材装着工程の前に予備剥離工程と内袋離間工程を行うことによって内袋14が傷つくことを防ぐことができる。
【0061】
次に、
図13(c)に示すように、上部筒状部41をカットする。
次に、
図13(d)に示すように、内袋14内にエアーを吹き込むことによって、内袋14を膨らませる。
次に、
図13(e)に示すように、内袋14内に内容物を充填する。
次に、
図13(f)に示すように、口部9にキャップ23を装着する。
次に、
図13(g)に示すように、収容部7をシュリンクフィルムで覆い、製品が完成する。
【0062】
ここで示した各種工程の順序は、適宜入れ替え可能である。例えば、熱風曲げ工程は、外気導入孔開通工程の前や、内層予備剥離工程の前に行ってもよい。また、上部筒状部41をカットする工程は、外気導入孔15に弁部材5を挿入する前に行ってもよい。
【0063】
次に、製造した製品の使用時の動作原理を説明する。
図14(a)〜(c)に示すように、内容物が充填された製品を傾けた状態で外殻12の側面を握って圧縮して内容物を吐出させる。使用開始時は、内袋14と外殻12の間に実質的に隙間がない状態であるので、外殻12に加えた圧縮力は、そのまま内袋14の圧縮力となり、内袋14が圧縮されて内容物が吐出される。
【0064】
キャップ23は、図示しない逆止弁を内蔵しており、内袋14内の内容物を吐出させることはできるが、内袋14内に外気を取り込むことはできない。そのため、内容物の吐出後に外殻12へ加えていた圧縮力を除くと、外殻12が自身の復元力によって元の形状に戻ろうとするが、内袋14はしぼんだままで外殻12だけが膨張することになる。そして、
図14(d)に示すように、内袋14と外殻12の間の中間空間21内が減圧状態となり、外殻12に形成された外気導入孔15を通じて中間空間21内に外気が導入される。中間空間21が減圧状態になっている場合、蓋部5cは、外気導入孔15に押し付けられないので、外気の導入を妨げない。
【0065】
次に、
図14(e)に示すように、再度、外殻12の側面を握って圧縮した場合、蓋部5cが外気導入孔15を閉塞することによって、中間空間21内の圧力が高まり、外殻12に加えた圧縮力は中間空間21を介して内袋14に伝達され、この力によって内袋14が圧縮されて内容物が吐出される。
【0066】
次に、
図14(f)に示すように、内容物の吐出後に外殻12へ加えていた圧縮力を除くと、外殻12は、外気導入孔15から中間空間21に外気を導入しながら、自身の復元力によって元の形状に復元される。
【0067】
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
・上述した実施形態では、外気導入孔15よりも直径の大きい膨径部45を有する挿入具42により、外気導入孔15の内袋14側の縁部を外側に向かって押圧し、バリBrを拡開するよう構成されていたが、
図15に示すように、膨径部45を有さない挿入具42を用いてバリBrを処理することも可能である。具体的には、挿入具42に回転体を取り付けておき、
図15(a)〜(b)の予備剥離工程の後、
図15(c)に示すように、挿入具42を外気導入孔15を支点として挿入具42の先端が外気導入孔15の直径よりも大きな直径の円を描くように回転させることで、挿入具42の側面が外気導入孔15の内袋14側の縁部を外側に向かって押圧することができ、バリBrを拡開することができる。
・上述した実施形態では、内袋離間工程とバリ処理工程とを同一の挿入具42を用いて一連の動作により行っていたが、内袋離間工程とバリ処理工程とを別のタイミングで行うことや、別の器具を用いて行うことも可能である。また、弁部材5の挿入時に内袋14が損傷するおそれがない場合は、内袋離間工程を省略してバリ処理工程のみを行うことも可能である。