(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882671
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】シートレール装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20210524BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20210524BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20210524BHJP
【FI】
B60N2/07
B60N2/42
B60N2/90
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-103339(P2017-103339)
(22)【出願日】2017年5月25日
(65)【公開番号】特開2018-197086(P2018-197086A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝宣
(72)【発明者】
【氏名】今村 友亮
【審査官】
細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−006074(JP,U)
【文献】
特開2002−248973(JP,A)
【文献】
特開昭64−29033(JP,A)
【文献】
特開2017−013639(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0230712(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
B60N 2/42
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを車両前後方向に移動可能にする一対の前後スライドレールと、前記シートを横方向に移動可能にする一対の横スライドレールと、前記前後スライドレール上に前記横スライドレールを支持する一対のライザとを備えるシートレール装置であって、
前記横スライドレールは、前記シートを横方向の所定位置でロックするロック爪を有し、前記ライザは金属壁を備え、
前記金属壁にコ字状の切り欠きが設けられ、
前記横スライドレールは前記コ字状の切り欠き内に収容され、前記ロック爪は前記金属壁に対応する位置に保持される。
【請求項2】
請求項1のシートレール装置であって、
上面に横スライド方向へ沿ったスリットの形成された断面箱状の補強金具が前記コ字状の切り欠き内に設けられ、
前記横スライドレールは、前記補強金具内に配置されている。
【請求項3】
請求項2のシートレール装置であって、
前記ライザは、前記金属壁を一対構成する両側部と、前記両側部の間に存在する中央部とを備える1枚の金属板からなり、前記中央部上であって、前記金属壁を一対構成する両側部間に前記補強金具が配置される。
【請求項4】
請求項3のシートレール装置であって、
前記ライザの前記中央部に対向する中央部分と、前記ライザの両側部に金属壁の外側に接する一対の側壁とを有し、前記側壁に前記コ字状の切り欠きの下部分を囲むU字の切り欠きが設けられた補強部材が、前記ライザに設けられる。
【請求項5】
請求項1のシートレール装置であって、
前記前後スライドレールは、ロアレールとアッパーレールとから成り、
前記ライザは、前記アッパーレールに固定される。
【請求項6】
請求項1のシートレール装置であって、
前記ロック爪は、前記一対の横スライドレールにそれぞれ設けられ、
前記一対のライザの内の一方に、前記一対の横スライドレールのロック爪が対応する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを車両前後方向に移動可能にする前後スライドレールと、シートを横方向に移動可能にする横スライドレールとを備えるシートレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シートを車両前後方向に移動可能にする前後スライドレールと、シートを横方向に移動可能にする横スライドレールとを備えるシートレール装置を開示している。特許文献1では、横スライドレールは、前後スライドレール上に設けられたベースフレーム上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−285098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ベースフレーム上に横スライドレールが露出して取り付けられているため、横スライドレールの剥離強度が低いと考えられる。
【0005】
本発明の目的は、支持機構に剥離防止の機能を付加したシートレール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシートレール装置は、シートを車両前後方向に移動可能にする一対の前後スライドレール(110)と、前記シートを横方向に移動可能にする一対の横スライドレール(10)と、前記前後スライドレール上に前記横スライドレールを支持する一対のライザ(80)とを備える。そして、前記横スライドレールは、前記シートを横方向の所定位置でロックするロック爪(52a)を有し、前記ライザは金属壁(82、84)を備え、前記金属壁(82、84)にコ字状の切り欠き(82a、84a)が設けられ、前記横スライドレール10は前記コ字状の切り欠き(82a、84a)内に収容され、前記ロック爪は前記金属壁(82a、84a)に対応する位置に保持される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシートレール装置では、支持機構を構成するライザの金属壁に設けられたコ字状の切り欠き内に横スライドレールが収容されるので、車両衝突時の衝撃で、横スライドレールが開くことを切り欠きの壁面で抑え、横スライドレールの剥離強度を高めることができる。
【0008】
請求項2の構成では、横スライドレールは、ライザを構成する金属壁に設けられたコ字状の切り欠き内であって、且つ、断面箱状の補強金具内に配置されているため、車両衝突時の衝撃で、横スライドレールが開くことを抑え、横スライドレールの剥離強度を高めることができる。
【0009】
請求項3の構成では、ライザを構成する一対の金属壁間に補強金具が配置され切り欠きの側壁への負荷が低減されているため、車両衝突時の衝撃で、横スライドレールが開くことを抑え、横スライドレールの剥離強度を高めることができる。
【0010】
請求項4の構成では、ライザの両側部に金属壁の外側に接し、コ字状の切り欠きの下部分を囲むU字の切り欠きが設けられた側壁を有する補強部材がライザに設けられる。コ字状の切り欠きが補強され、横スライドレールが開くことを切り欠きの側面で抑え、横スライドレールの剥離強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る横スライドレールの断面図。
【
図2】実施形態の横スライドレールのロック部材の斜視図。
【
図3】実施形態の横スライドレールのロック部材の構成部品の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図7は、実施形態に係るシートレール装置の平面図である。
シートレール装置100は、車両フロアーに固定され、図示しない車両用シートを車両前後方向に移動可能にする一対の前後スライドレール110、110と、シートを左右方向に移動可能にする一対の横スライドレール10、10と、前後スライドレール110上に横スライドレール10を支持する一対のライザ80、80とを備える。前後スライドレール110のロアレール130は車両フロアーに固定され、ロアレール130に対して車両前後方向に摺動可能に支持されるアッパーレール120にライザ80が固定されている。
【0013】
図6は横スライドレール10とライザ80との平面図である。
図5は横スライドレール10とライザ80との側面図であり、
図6中のX矢視図に相当する。
図4は横スライドレール10とライザ80との正面図であり、
図6中のY矢視図に相当する。
【0014】
図1は、
図6中の横スライドレール10のy1−y1断面図である。
図1(A)はロック状態を、
図1(B)はアンロック状態を示している。
ロアレール30は、車体に略水平な底壁32と、この底壁32の両端からそれぞれ上方に起立する立壁33と、両立壁33の上端からそれぞれ中央に向かい底壁32と略平行に設けられる鍔部34と、両鍔部34の端末から底壁32に向かい立壁33と略平行にそれぞれ垂下する垂下壁35とを備えている。鍔部34と垂下壁35とは第1L字部(34、35)を構成する。ロアレール30の一方の垂下壁35には、ロック状態におけるロック部材50のロック爪52aに接触しないように第1開口35aが設けられている。横スライドレール10は、車両用シートが、前後スライドレール110、110の直上にある右端位置と、車両用シートが左側に最大限移動した左端位置との2箇所でロック可能に形成され、第1開口35aは、右端位置と左端位置とでロック可能な様に配置されている。
【0015】
アッパーレール20は、車両用シートがボルト96を介して取り付けられ、ロアレール30の底壁32に対向する上壁21と、この上壁21の両端からそれぞれ垂下する垂下壁22と、両垂下壁22の下端からそれぞれ外側上方に屈曲して折れ曲がって延在している延在部23と、延在部から上側を指向し起立する起立壁25と、を備える。延在部23と起立壁25とは第2L字部(23、25)を構成する。第2L字部(23、25)は、ロアレール30の第1L字部(34、35)によって囲まれる。起立壁25の上端には、リテーナ40の第1スチールボール41をロアレール30との間の空間に保持する傾斜部24が設けられている。また、一方の垂下壁22には、第1開口35aと同様にロック爪52aに接触しないように第2開口22aが設けられている。
【0016】
アッパーレール20およびロアレール30は、アッパーレール20の上壁21がロアレール30の底壁32と対向し、ロアレール30の立壁33と垂下壁35の間の空間にアッパーレール20の傾斜部24が入り込むように配置されている。そして、ロアレール30の立壁33から鍔部34との間のコーナー部分とアッパーレール20の傾斜部24の間にはリテーナ40の第1スチールボール41が配置され、ロアレール30の底壁32と立壁33との間のコーナー部分とアッパーレールの延在部23の間にはリテーナ40の第2スチールボール42が配置されている。リテーナ40に保持される第1スチールボール41および第2スチールボール42により、アッパーレール20およびロアレール30は、車両横方向に相対的に摺動できるようになっている。
【0017】
ロック部材50は、アッパーレール20とロアレール30とを相対移動不能に固定(ロック)するためのロック機構である。このロック部材50は、ロアレール30の底壁32にリベット等により固定される支持ブラケット58に対して軸56を中心に回動(変位)可能に支持しており、この回動に応じてロアレール30の第1開口35aに対して係脱するロック爪52aが形成されている。また、ロック部材50は、軸56に設けられたロックスプリング54により、ロック爪52aがアッパーレール20の第2開口22aに挿入する方向に常時付勢されている。
【0018】
図2はロック部材50の斜視図であり、
図3はロック部材50の構成部品の斜視図である。
ロック部材50は、ロック爪52aを備えるロックレバー52と、ロックレバー52を回動させるための軸56と、軸56を支持する支持ブラケット58と、ロックレバーをロック方向へ付勢するためのロックスプリング54とから成る。支持ブラケット58は、軸56を支持する通孔58aaの設けられた第1立壁58aと、通孔58baの設けられた第2立壁58bと、第1立壁58aと第2立壁58bの上部間に設けられた連結部58cと、第1立壁58aの底部から摺動方向に設けられ、ロアレール30の底壁32と当接して固定されるための第1底壁58dと、第2立壁58bの底部から第1底壁59dの反対方向に設けられ、ロアレール30の底壁32と当接して固定されるための第2底壁58eと、第2底壁58eの第2立壁58bの反対側の端から起立し、
図4中に示されるようにアッパーレール20の垂下壁22の間に僅かなクリアランスを設けるように形成された第3立壁58fとを備える。
【0019】
ロックレバー52は、レバー部52dとレバー部52dの反対端に設けられたロック爪52aと、レバー部52dの摺動方向の両端に設けられた支持片52b、52cと、支持片52bに軸56を挿通するため設けられた開口52baと、支持片52cに軸56を挿通するため設けられた開口52caとから成る。
図1(A)中に示されるようにレバー部52dは中央で鈍角にヘ字状に曲げられる。ロック爪52aは鋭角に曲げられ、ロック状態で車両後方、斜め下方を指向するように形成されている。ロック爪52aは、ロックスプリング54によって、
図1(A)に示されるロック方向に付勢され、
図1(B)に示されるように、ロックレバー52の操作により、軸56を中心に図中反時計方向に回動され、ロック状態が解除される。
図2中に示されるようにロック爪52aは2枚の爪から成る。
図1を参照して上述したロック爪52aを挿通させる第1開口35a、第2開口22aは、2枚の爪の入る一対の開口から成る。横スライドレール10は、
図4及び
図7中に示すように上面92Uに摺動方向へ沿ったスリット92aの形成された断面箱状の補強金具92、上面94Uに摺動方向へ沿ったスリット94aの形成された断面箱状の補強金具94内に設けられている。
【0020】
図4、
図5及び
図7に示されるように、ライザ80は、一対の金属壁82、84を構成する両側部と、両側部の間に存在する中央部86とを備える1枚の金属板からなる。金属壁82にはコ字状の切り欠き82aが、金属壁84には切り欠き82aと同形状の
図7中に配置位置のみ示すコ字状の切り欠き84aが設けられている。横スライドレール10を収容する断面箱状の補強金具92、94は、金属壁82の切り欠き82a、及び、金属壁84のコ字状の切り欠き84a内に収容され、補強金具92の底壁92b、補強金具94の底壁94bが、ライザ80の中央部86に固定されている。
図4に示されるように、コ字状の切り欠き82aの下方にはライザ補強用の補強部材70が設けられている。
図5中に示されるように、補強部材70は、ライザの中央部86に対向する中央部分76と、ライザの両側部に金属壁82,84の外側に接する一対の側壁72、74とを有する。そして、
図4に示されるライザ80のコ字状の切り欠き82aの下部分を囲むU字の切り欠き72aが側壁72に、U字の切り欠き72aと同形状の
図7中に配置位置のみ示すU字の切り欠き74aが側壁74に設けられている。
【0021】
図4を参照して上述したように実施形態のシートレール装置100では、横スライドレール10のアッパーレール20の対向する垂下壁22、22内に、僅かなクリアランスを介在させロック機構の構成部品である支持ブラケット58の第3立壁58fが設けられている。このため、車両衝突時の衝撃で、アッパーレールの対向する垂下壁22、22が接近するように変形してアッパーレールからロアレールが抜けることを抑止し、ロック機能を用いてシートレール装置の剥離強度を高めることができる。
【0022】
図5、
図6中に示されるように上述した支持ブラケット58の第3立壁58fは、ロアレール30の左側の端部30Lに対応して設けられる。実施形態のシートレール装置では、第3立壁58fが、応力に一番弱く変形し易いロアレール30の端部30Lに対応する位置に設けられるので、シートレール装置の剥離強度を高めることができる。
【0023】
図1を参照して上述したように実施形態のシートレール装置では、ロック機構の構成部品であるロック爪52aは車両後方斜め下を指向するように設けられているので、車両衝突時にシートに固定されたアッパーレールには車両前方斜め上側に負荷が加わるが、この負荷でロック爪が抜け難い。このため、ロック機能を用いてシートレール装置の剥離強度を高めることができる。
【0024】
図6中に示されているように、横スライドレール10は、ライザ80の金属壁82、84のコ字状の切り欠き82a、84a内に収容される。ロック爪52aは金属壁84に対応する位置に保持される。
【0025】
実施形態のシートレール装置では、ライザ80を構成する金属壁82、84に設けられたコ字状の切り欠き82a、84a内に横スライドレール10が収容されるので、車両衝突時の衝撃で横スライドレール10が開くことを切り欠き82a、84aの側面82aa、84aaで抑え、支持機構を構成するライザ80を用いて横スライドレールの剥離強度を高めることができる。
【0026】
更に、横スライドレール10は、ライザ80を構成する金属壁82、84に設けられたコ字状の切り欠き82a、84a内であって、且つ、断面箱状の補強金具92、94内に配置されているため、車両衝突時の衝撃で、シートレール装置が開くことを抑止し、横スライドレールの剥離強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 横スライドレール
20 アッパーレール
21 上壁
22 垂下壁
22a 第2開口
30 ロアレール
32 底壁
33 立壁
35a 第1開口
50 ロック部材
52a ロック爪
56 軸
58 支持ブラケット
58f 第3立壁
70 補強部材
80 ライザ
82、84 金属壁
82a、84a 切り欠き
92 補強金具