(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記金属が、銅、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、スズ、タングステン、ジルコニウム、タンタル、ゲルマニウム、モリブデン、ルテニウム、金、銀、白金、パラジウム又はニッケルである請求項1又は請求項2に記載の基材表面の選択的修飾方法。
上記第1官能基が、シアノ基、スルファニル基、エチレン性炭素−炭素二重結合含有基、オキサゾリン環含有基、リン酸基、エポキシ基又はジスルフィド基である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の基材表面の選択的修飾方法。
上記第1重合体が、置換又は非置換のスチレンに由来する構造単位、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、並びに置換又は非置換のエチレンに由来する構造単位から選ばれる少なくとも一種の構造単位を有する重合体である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の基材表面の選択的修飾方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、当該基材表面の選択的修飾方法(以下、単に、「選択的修飾方法」という)の実施の形態について詳説する。
【0013】
<選択的修飾方法>
当該選択的修飾方法は、金属(以下、「金属(A)」ともいう)を含む第一の領域(以下、「領域(I)」ともいう)を表層に有する基材を準備する工程(以下、「準備工程」ともいう)と、上記基材の表面に、上記金属(A)と結合する第1官能基(以下、「官能基(A)」ともいう)を含む基(以下、「基(I)」ともいう)を主鎖又は側鎖の末端に有する第1重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)及び溶媒(以下、「[B]溶媒」ともいう)を含有する組成物(以下、「組成物(I)」ともいう)を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、上記塗工工程により形成される塗膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)とを備える。当該選択的修飾方法は、上記基材が、実質的に非金属(以下、「非金属(B)」ともいう)のみからなる第二の領域(以下、「領域(II)」ともいう)をさらに有し、加熱工程の後に、上記塗膜のうち上記領域(II)上に形成された部分をリンス液により除去する工程(以下、「除去工程」ともいう)をさらに備えることが好ましい。
【0014】
また、当該選択的修飾方法は、例えば
上記除去工程後の基材の表面に、アルコール、希酸、オゾン又はプラズマを接触させる工程(以下、「接触工程」ともいう)、上記除去工程後の基材の表面に、CVD法又はALD法によりパターンを堆積させる工程(以下、「堆積工程」ともいう)、上記除去工程後の基材の表面上の上記[A]重合体をエッチングにより除去する工程(以下、「エッチング工程」ともいう)等をさらに備えてもよい。以下、各工程について説明する。
【0015】
[準備工程]
本工程では、金属(A)を含む領域(I)を表層に有する基材を準備する。
【0016】
金属(A)としては、金属元素であれば特に限定されない。なお、ケイ素は、非金属であり、金属に該当しない。金属(A)としては、例えば銅、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、スズ、タングステン、ジルコニウム、チタン、タンタル、ゲルマニウム、モリブデン、ルテニウム、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル等が挙げられる。これらの中で、銅、コバルト、タングステン及びタンタルが好ましい。
【0017】
領域(I)中における金属(A)の含有形態としては、例えば金属単体、合金、導電性窒化物、金属酸化物、シリサイド等が挙げられる。
【0018】
金属単体としては、例えば銅、鉄、コバルト、タングステン、タンタル等の金属の単体等が挙げられる。
合金としては、例えばニッケル−銅合金、コバルト−ニッケル合金、金−銀合金等が挙げられる。
導電性窒化物としては、例えば窒化タンタル、窒化チタン、窒化鉄、窒化アルミニウム等が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化銅等が挙げられる。
シリサイドとしては、例えば鉄シリサイド、モリブデンシリサイド等が挙げられる。これらの中で、金属単体、合金、導電性窒化物及びシリサイドが好ましく、金属単体及び導電性窒化物がより好ましく、銅単体、コバルト単体、タングステン単体、タンタル単体及び窒化タンタルがさらに好ましい。
【0019】
基材の表層には、領域(I)以外に、通常、実質的に非金属(B)のみからなる領域(II)を有する。
【0020】
領域(II)中における非金属(B)の含有形態としては、例えば非金属単体、非金属酸化物、非金属窒化物、非金属酸化物窒化物等が挙げられる。
【0021】
非金属単体としては、例えばケイ素、炭素等の単体などが挙げられる。
非金属酸化物としては、例えば酸化ケイ素等が挙げられる。
非金属窒化物としては、例えばSiNx、Si
3N
4等が挙げられる。
非金属酸化物窒化物としては、例えばSiON等が挙げられる。これらの中で、非金属酸化物が好ましく、酸化ケイ素がより好ましい。
【0022】
基材の表層における領域(I)及び/又は領域(II)の存在形状としては特に限定されず、例えば平面視で面状、点状、ストライプ状等が挙げられる。領域(I)及び領域(II)の大きさは特に限定されず、適宜所望の大きさの領域とすることができる。
【0023】
基材の形状としては、特に限定されず、板状(基板)、球状等、適宜所望の形状とすることができる。
【0024】
[塗工工程]
本工程では、上記基材の表面に、組成物(I)を塗工する。
【0025】
組成物(I)の塗工方法としては、例えばスピンコート法等が挙げられる。
【0026】
[組成物(I)]
組成物(I)は、[A]重合体及び[B]溶媒を含有する。組成物(I)は、[A]重合体及び[B]溶媒以外に他の成分を含有していてもよい。
【0027】
([A]重合体)
[A]重合体は、基(I)を主鎖又は側鎖の末端に有する重合体である。「主鎖」とは、重合体の原子鎖のうち最も長いものをいう。「側鎖」とは、重合体の原子鎖のうち主鎖以外のものをいう。表面修飾する[A]重合体の密度をより高める観点から、[A]重合体は、基(I)を主鎖の末端に有していることが好ましく、主鎖の一方の末端に有していることがより好ましい。
【0028】
基(I)は、金属(A)と結合する官能基(A)を含む基である。官能基(A)は、金属(A)と結合する官能基である。この結合としては、例えば化学結合であり、共有結合、イオン結合、配位結合等が挙げられる。これらの中で、金属−官能基間の結合力がより大きい観点から、配位結合が好ましい。
【0029】
官能基(A)としては、金属(A)と配位結合等する官能基などが挙げられ、例えばシアノ基、スルファニル基、エチレン性炭素−炭素二重結合含有基、オキサゾリン環含有基、リン酸基、エポキシ基、ジスルフィド基等が挙げられる。
【0030】
[A]重合体としては、例えば置換又は非置換のスチレンに由来する構造単位、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、置換又は非置換のエチレンに由来する構造単位等を有する重合体が挙げられる。また、[A]重合体は、架橋性基を含む構造象単位を有していてもよい。[A]重合体は、置換又は非置換のスチレンに由来する構造単位、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、置換又は非置換のエチレンに由来する構造単位、及び/又は架橋性基を含む構造単位等をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。なお、「架橋性基」とは、加熱条件下、活性エネルギー線照射条件下、酸性条件下等における反応により、架橋構造を形成する基をいう。
【0031】
上記置換又は非置換のスチレンに由来する構造単位を与える単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、o−、m−、p−ビニルスチレン、o−、m−、p−ヒドロキシスチレン、m−、p−クロロメチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、p−ヨードスチレン、p−ニトロスチレン、p−シアノスチレン等が挙げられる。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を与える単量体としては、例えば
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−メチルシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸2−(アダマンタン−1−イル)プロピル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、(メタ)アクリル酸3−グリシジルプロピル、(メタ)アクリル酸3−トリメチルシリルプロピル等の(メタ)アクリル酸置換アルキルエステルなどが挙げられる。
【0033】
上記置換又は非置換のエチレンに由来する構造単位を与える単量体としては、例えば
エチレン;
プロペン、ブテン、ペンテン等のアルケン;
ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等のビニルシクロアルカン;
シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン;
4−ヒドロキシ−1−ブテン、ビニルグリシジルエーテル、ビニルトリメチルシリルエーテル等が挙げられる。
【0034】
上記置換又は非置換のスチレンに由来する構造単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、又は置換又は非置換のエチレンに由来する構造単位を与える単量体の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全繰り返し単位に対して、20モル%が好ましく、40モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、100モル%であってもよく、90モル%が好ましい場合もあり、85モル%がより好ましい場合もある。
【0035】
上記架橋性基としては、例えば
ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の重合性炭素−炭素二重結合含有基;
エチニル基、プロパルギル基、プロパルギルオキシ基、プロパルギルアミノ基等の重合性炭素−炭素三重結合含有基;
オキシラニル基、オキシラニルオキシ基、オキセタニル基、オキセタニルオキシ基等の環状エーテル基;
シクロブタン環が縮環したフェニル基、シクロブタン環が縮環したナフチル基等のシクロブタン環が縮環したアリール基;
アセトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基等の酸基又は熱解離性基で保護されたフェノール性水酸基が結合したアリール基;
アセトキシメチルフェニル基、メトキシメチルフェニル基等の酸基又は熱解離性基で保護されたメチロール基(−CH
2OH)が結合したアリール基;
スルファニルメチルフェニル基、メチルスルファニルメチルフェニル基等の置換又は非置換のスルファニルメチル基(−CH
2SH)が結合したアリール基などが挙げられる。
【0036】
シクロブタン環が縮環したアリール基同士は、加熱条件下、共有結合を形成する。
【0037】
「酸基」とは、酸からOHを除いた基であって、フェノール性水酸基又はメチロール基の水素原子を置換して保護する基をいう。「熱解離性基」とは、フェノール性水酸基、メチロール基又はスルファニルメチル基の水素原子を置換する基であって、加熱により解離する基をいう。
【0038】
保護されたフェノール性水酸基、メチロール基又はスルファニルメチル基が結合したアリール基における酸基としては、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0039】
保護されたフェノール性水酸基が結合したアリール基における熱解離性基としては、例えばt−ブチル基、t−アミル基等の3級アルキル基などが挙げられる。保護されたメチロール基又はスルファニルメチル基が結合したアリール基における熱解離性基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基などが挙げられる。
【0040】
架橋性基としては、これらの中で、重合性炭素−炭素二重結合含有基及びシクロブタン環が縮環したアリール基が好ましく、アリル基及びシクロブタン環が縮環したフェニル基がより好ましい。
【0041】
上記架橋性基を含む構造単位としては、例えば架橋性基を有するビニル化合物に由来する構造単位、架橋性基を有する(メタ)アクリル化合物に由来する構造単位等が挙げられる。
【0042】
上記架橋性基を含む構造単位としては、重合性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル化合物に由来する構造単位、及びシクロブタン環が縮環したアリール基を有するビニル化合物に由来する構造単位が好ましく、アリルスチレンに由来する構造単位及び4−ビニルベンゾシクロブテンに由来する構造単位がより好ましい。
【0043】
[A]重合体が上記架橋性基を含む構造単位を含む場合、上記架橋性基を含む構造単位の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全繰り返し単位に対して、0.1モル%が好ましく、1モル%がより好ましく、3モル%がさらに好ましく、4モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、20モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましく、8モル%が特に好ましい。
【0044】
[A]重合体としては、置換又は非置換のスチレンに由来する構造単位、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、及び/又は架橋性基を含む構造単位を含む重合体が好ましく、置換又は非置換のスチレンに由来する構造単位を含む重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む重合体、並びに置換又は非置換のスチレンに由来する構造単位及び架橋性基を含む構造単位を含む重合体がより好ましく、置換又は非置換のスチレンに由来する構造単位を含む重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む重合体、並びに置換又は非置換のスチレンに由来する構造単位及びシクロブタン環が縮環したアリール基を有するビニル化合物に由来する繰り返し単位を含む重合体がさらにより好ましく、ポリスチレン、ポリt−ブチルスチレン、ポリメタクリル酸メチル、及びスチレン−4−ビニルベンゾシクロブテン共重合体がさらに好ましい。
【0045】
[A]重合体の数平均分子量(Mn)の下限としては、500が好ましく、2,000がより好ましく、4,000がさらに好ましく、5,000が特に好ましい。上記Mnの上限としては、50,000が好ましく、30,000がより好ましく、15,000がさらに好ましく、8,000が特に好ましい。
【0046】
[A]重合体の重量平均分子量(Mw)のMnに対する比(Mw/Mn、分散度)の上限としては、5が好ましく、2がより好ましく、1.5がより好ましく、1.3が特に好ましい。上記比の下限としては、通常1であり、1.05が好ましい。
【0047】
[A]重合体の含有量の下限としては、組成物(I)における全固形分に対して、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、例えば100質量%である。「全固形分」とは、[B]溶媒以外の成分の総和をいう。
【0048】
([B]溶媒)
[B]溶媒としては、少なくとも[A]重合体及び他の成分を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0049】
[B]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0050】
アルコール系溶媒としては、例えば
4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘキサノール等の炭素数1〜18の脂肪族モノアルコール系溶媒;
シクロヘキサノール等の炭素数3〜18の脂環式モノアルコール系溶媒;
1,2−プロピレングリコール等の炭素数2〜18の多価アルコール系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数3〜19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0051】
エーテル系溶媒としては、例えば
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0052】
ケトン系溶媒としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、2−ヘプタノン(メチル−n−ペンチルケトン)、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒;
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒;
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0053】
アミド系溶媒としては、例えば
N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒などが挙げられる。
【0054】
エステル系溶媒としては、例えば
酢酸n−ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
プロピレングリコールアセテート等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒;
γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;
シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
【0055】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン等の炭素数5〜12の脂肪族炭化水素系溶媒;
トルエン、キシレン等の炭素数6〜16の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0056】
これらの中で、エステル系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがさらに好ましい。組成物(I)は、[B]溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0057】
(他の成分)
組成物(I)は、[A]重合体及び[B]溶媒以外に他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば界面活性剤等が挙げられる。組成物(I)は、界面活性剤を含有することで、基材表面への塗工性を向上させることができる。
【0058】
[組成物(I)の調製方法]
組成物(I)は、例えば[A]重合体、[B]溶媒及び必要に応じて他の成分を所定の割合で混合し、好ましくは0.45μm程度の細孔を有する高密度ポリエチレンフィルター等で濾過することにより調製することができる。組成物(I)の固形分濃度の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、0.7質量%がさらに好ましい。上記固形分濃度の上限としては、30質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。
【0059】
[加熱工程]
本工程では、上記塗工工程により形成される塗膜を加熱する。これにより、基材表層の金属(A)と、組成物(I)の[A]重合体の官能基(A)との結合形成が促進され、基材表面の領域(I)に、[A]重合体を含む塗膜(以下、「塗膜(I)」ともいう)が積層される。
【0060】
加熱の手段としては、例えばオーブン、ホットプレート等が挙げられる。加熱の温度の下限としては、80℃が好ましく、100℃がより好ましく、130℃がさらに好ましい。加熱の温度の上限としては、400℃が好ましく、300℃がより好ましく、200℃がさらに好ましい。加熱の時間の下限としては、10秒が好ましく、1分がより好ましく、2分がさらに好ましい。加熱の時間の上限としては、120分が好ましく、10分がより好ましく、5分がさらに好ましい。
【0061】
形成される塗膜(I)の平均厚みは、組成物(I)における[A]重合体の種類及び濃度、並びに加熱工程における加熱温度、加熱時間等の条件を適宜選択することで、所望の値にすることができる。塗膜(I)の平均厚みの下限としては、0.1nmが好ましく、1nmがより好ましく、3nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、例えば20nmである。
【0062】
[除去工程]
本工程では、塗膜(I)のうち領域(II)上に形成された部分を除去する。これにより、加熱工程後の金属(A)と結合していない[A]重合体を含む部分が除去され、領域(I)の部分が選択的に修飾された基材が得られる。
【0063】
除去工程における除去は、通常、加熱工程後の基材を、リンス液でリンスすることにより行う。リンス液としては、通常、有機溶媒が用いられ、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、イソプロパノール等のモノアルコール系溶媒などが用いられる。
【0064】
以上により、金属を含む表面領域を簡便に、高選択的かつ高密度に修飾することができる。得られた基材は、例えば以下の工程を行うことにより、種々処理することができる。
【0065】
[接触工程]
本工程では、上記除去工程後の基材の表面に、アルコール、希酸、過酸化水素水、オゾン又はプラズマを接触させる。これにより、領域(II)に形成された空気酸化膜層を除去することができる。この希酸としては、特に限定されるわけではないが、例えば希塩酸、希硫酸、希硝酸、希クエン酸、希シュウ酸、希マレイン酸、希酢酸、希イソ酪酸、希2−エチルヘキサン酸等が挙げられる。
【0066】
[堆積工程]
本工程では、上記除去工程後の基材の表面に、CVD(化学的気相蒸着)法又はALD(原子層堆積)法によりパターンを堆積させる。これにより、[A]重合体で被覆されていない領域(II)に、選択的にパターンを形成することができる。
【0067】
[エッチング工程]
本工程では、上記除去工程後の基材の表面上の上記[A]重合体をエッチングにより除去する。
【0068】
エッチングの方法としては、例えばCF
4、O
2ガス等を用い、各層のエッチングレートの差等を利用するケミカルドライエッチング、有機溶媒、フッ酸等の液体のエッチング液を用いたケミカルウェットエッチング(湿式現像)等の反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、イオンビームエッチング等の物理的エッチングなどの公知の方法が挙げられる。これらの中で、反応性イオンエッチングが好ましく、ケミカルドライエッチング及びケミカルウェットエッチングがより好ましい。
【0069】
ケミカルドライエッチングの前に、必要に応じて放射線を照射してもよい。放射線としては、エッチングにより除去する部分がポリメタクリル酸メチルブロックを含む重合体である場合には、UV照射等を用いることができる。また、酸素プラズマ処理を用いることもできる。上記UV照射又は酸素プラズマ処理により、ポリメタクリル酸メチルブロックが分解されるため、よりエッチングされ易くなる。
【0070】
ケミカルウェットエッチングに用いられる有機溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等のアルカン;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ペンチルケトン等のケトン;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコールなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を下記に示す。
【0072】
[Mw及びMn]
重合体のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により東ソー社のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本)を使用し、以下の条件により測定した。
溶離液:テトラヒドロフラン(和光純薬工業社)
流量:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0073】
[
13C−NMR分析]
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(日本電子社の「JNM−EX400」)を使用し、測定溶媒としてCDCl
3を用いて行った。重合体における各構造単位の含有割合は、
13C−NMRで得られたスペクトルにおける各構造単位に対応するピークの面積比から算出した。
【0074】
<[A]重合体の合成>
[合成例1]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液2.38mL(2.31mmol)を注入し、さらに、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。次に、末端停止剤としてのメタノール1mLを注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返してシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してからメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−1)11.7gを得た。この重合体(A−1)は、Mwが5,600、Mnが5,300、Mw/Mnが1.06であった。
【0075】
[合成例2]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.38mL(2.30mmol)注入し、さらに、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。次に、末端停止剤としての4−クロロメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン0.32mL(2.30mmol)を注入し重合末端の停止反応を行った。次に、1Nの塩酸水溶液を10g加え、60℃で2時間加熱撹拌を行って加水分解反応を行い、末端基としてジオール構造を有する重合体を得た。この反応溶液を室温まで冷却し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をMIBKで置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返してシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してからメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−2)11.3gを得た。この重合体(A−2)は、Mwが5,300、Mnが4,900、Mw/Mnが1.08であった。
【0076】
[合成例3]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.38mL(2.30mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。その後、3−ブロモプロピオニトリルを0.19mL(2.30mmol)注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、金属Liを除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−3)11.9gを得た。このブロック共重合体(A−3)は、Mwが5,600、Mnが5,200、Mw/Mnが1.08であった。
【0077】
[合成例4]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.38mL(2.30mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためのシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。その後、アリルブロミドを0.20mL(2.30mmol)注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮してメチル溶媒をイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、金属Liを除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−4)11.4gを得た。この重合体(A−4)は、Mwが5,700、Mnが5,200、Mw/Mnが1.10であった。
【0078】
[合成例5]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.38mL(2.31mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。その後、末端停止剤としてエチレンスルフィド0.14mL(2.31mmol)、メタノール1mL及びp−メトキシフェノール0.3gを加え、重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−5)11.0gを得た。この重合体(A−5)は、Mwが5,300、Mnが5,100、Mw/Mnが1.04であった。
【0079】
[合成例6]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.38mL(2.30mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。その後、末端停止剤としてプロピレンスルフィド0.18mL(2.38mmol)、メタノール1mL及びp−メトキシフェノール0.3gを注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この重合体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−6)11.3gを得た。この重合体(A−6)は、Mwが5,200、Mnが5,000、Mw/Mnが1.04であった。
【0080】
[合成例7]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を1.76mL(1.71mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。その後、末端停止剤としてエチレンスルフィド0.11mL(1.76mmol)、5質量%塩酸水溶液1mL及びp−メトキシフェノール0.3gを注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−7)11.7gを得た。この重合体(A−7)は、Mwが7,000、Mnが6,800、Mw/Mnが1.03であった。
【0081】
[合成例8]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を4.76mL(4.79mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。その後、末端停止剤としてエチレンスルフィド0.29mL(4.79mmol)、酢酸1mL及びp−メトキシフェノール0.3gを注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−8)11.6gを得た。この重合体(A−8)は、Mwが2,500、Mnが2,400、Mw/Mnが1.04であった。
【0082】
[合成例9]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.57mL(2.50mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったtert−ブチルスチレン13.7mL(0.0748mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。この後、末端停止剤としてエチレンスルフィド0.16mL(2.50mmol)、メタノール1mL及びp−メトキシフェノール0.3gを注入し重合末端の停止反応を行い、さらにp−メトキシフェノール0.3gを加えた。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この重合体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−9)11.3gを得た。この重合体(A−9)は、Mwが5,000、Mnが4,800、Mw/Mnが1.04であった。
【0083】
[合成例10]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.57mL(2.50mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったtert−ブチルスチレン13.7mL(0.0748mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。この後、末端停止剤としてプロピレンスルフィド0.19mL(2.50mmol)、メタノール1mLを注入し重合末端の停止反応を行い、さらにp−メトキシフェノール0.3gを加えた。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−10)11.8gを得た。この重合体(A−10)は、Mwが4,800、Mnが4,500、Mw/Mnが1.07であった。
【0084】
[合成例11]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.38mL(2.30mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためのシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。その後、クロロベンゾオキサゾールを0.26mL(2.30mmol)注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−11)11.5gを得た。この重合体(A−11)は、Mwが5,700、Mnが5,200、Mw/Mnが1.10であった。
【0085】
[合成例12]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.38mL(2.30mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためのシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。この後、エピクロロヒドリンを0.17mL(2.30mmol)注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−12)11.2gを得た。この重合体(A−12)は、Mwが5,700、Mnが5,200、Mw/Mnが1.10であった。
【0086】
[合成例13]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.38mL(2.31mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。その後、末端停止剤としてエチレンスルフィド0.14mL(2.31mmol)、メタノール1mLを注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。次に、この重合体をテトラヒドロフラン50gに溶解させ、アゾイソブチロニトリル1.0g(6.1mmol)を加え、窒素雰囲気下、80℃、8時間加熱撹拌し、カップリング反応させジスルフィド体を生成させた。この重合体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−13)11.4gを得た。この重合体(A−13)は、Mwが5,300、Mnが5,100、Mw/Mnが1.04であった。
【0087】
[合成例14]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったテトラヒドロフラン120gを注入し、−78℃まで冷却した。その後、このテトラヒドロフランにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.38mL(2.30mmol)注入し、その後、重合禁止剤除去のためのシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。その後、2−クロロメチルピリジンを0.29g(2.30mmol)加え重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)で置換した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を5回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−14)11.1gを得た。この重合体(A−14)は、Mwが5,700、Mnが5,200、Mw/Mnが1.10であった。
【0088】
[合成例15]
冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた200mL3口フラスコに、アニソール40g、スチレン20.8g(0.200mol)、臭化銅(II)0.29g(2.00mmol)及びトリス[(2−ジメチルアミノ)エチル]アミン0.46g(2mmol)を加え、100℃に加熱し、2−ブロモイソ酪酸エチル0.53mL(3.6mmol)を加え、窒素フロー下、8時間加熱撹拌した。得られた重合溶液は、酢酸エチル100gで薄めセライト濾過し銅錯体を除去し、超純水500gにて洗浄を5回繰り返した。有機層を回収したのち、濃縮した樹脂溶液にテトラヒドロフラン50gを加えたものをメタノール、1,000gへ沈殿精製させポリマーを析出させた。この固体をブフナーロートにて回収し、メタノール50gにてすすいだ。得られた固体を減圧乾燥することで白色の重合体(A−15)11.2gを得た。この重合体(A−15)は、Mwが5,600、Mnが4,600、Mw/Mnが1.22であった。
【0089】
[合成例16]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFに1,1−ジフェニルエチレン1.02mL(7.19mmol)、塩化リチウムの1Mテトラヒドロフラン溶液9.59mL(4.79mmol)及びsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.47mL(2.40mmol)注入し、さらに、重合禁止剤除去のためのシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったメタクリル酸メチル12.7mL(0.120mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に120分間熟成した。次に1Nエチレンオキサイドトルエン溶液2.40mL(2.40mmol)を加え、さらにメタノール1mLを注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をMIBKで置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−16)11.2gを得た。この重合体(A−16)は、Mwが5,200、Mnが5,000、Mw/Mnが1.04であった。
【0090】
[合成例17]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFに1,1−ジフェニルエチレン1.02mL(7.19mmol)、塩化リチウムの1Mテトラヒドロフラン溶液9.59mL(4.79mmol)及びsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.47mL(2.40mmol)注入し、さらに、重合禁止剤除去のためのシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったメタクリル酸メチル12.7mL(0.120mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に120分間熟成した。次にエチレンスルフィド0.14mL(2.40mmol)を加え、さらにメタノール1mL及びp−メトキシフェノール1gを注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をMIBKで置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−17)11.0gを得た。この重合体(A−17)は、Mwが5,200、Mnが5,000、Mw/Mnが1.04であった。
【0091】
[合成例18]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFに1,1−ジフェニルエチレン1.02mL(7.19mmol)、塩化リチウムの1Mテトラヒドロフラン溶液9.59mL(4.79mmol)及びsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.47mL(2.40mmol)注入し、さらに、重合禁止剤除去のためのシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったメタクリル酸メチル12.7mL(0.120mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に120分間熟成した。次に、3−ブロモプロピロニトリル0.19mL(2.40mmol)を加え、さらにメタノール1mL及びp−メトキシフェノール1gを注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をMIBKで置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この重合体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−18)11.3gを得た。この重合体(A−18)は、Mwが5,200、Mnが5,000、Mw/Mnが1.04であった。
【0092】
[合成例19]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFに1,1−ジフェニルエチレン1.02mL(7.19mmol)、塩化リチウムの1Mテトラヒドロフラン溶液9.59mL(4.79mmol)及びsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.47mL(2.40mmol)注入し、さらに、重合禁止剤除去のためのシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったメタクリル酸メチル12.7mL(0.120mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に120分間熟成した。次に、アリルブロミド0.21mL(2.40mmol)を加え、重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をMIBKで置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返しシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この重合体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−19)11.1gを得た。この重合体(A−19)は、Mwが5,200、Mnが5,000、Mw/Mnが1.04であった。
【0093】
[合成例20]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液を2.38mL(2.30mmol)注入し、さらに、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成したのち、二酸化炭素を吹き込み、さらにメタノール1.0gを加え重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで冷却し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をMIBKで置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、シュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−20)11.6gを得た。この重合体(A−20)は、Mwが5,300、Mnが4,900、Mw/Mnが1.08であった。
【0094】
[合成例21]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液2.38mL(2.31mmol)を注入し、さらに、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。次に、1,1―ジフェニルエチレン0.98mL(6.91mmol)を加え、暗褐色に呈することを確認したのち、末端停止剤としての二硫化炭素0.14mL(2.30mmol)、メタノール1mLを注入し重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をMIBKで置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返してシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してからメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−21)11.8gを得た。この重合体(A−21)は、Mwが5,500、Mnが5,300、Mw/Mnが1.04であった。
【0095】
[合成例22]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液2.38mL(2.31mmol)を注入し、さらに、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン13.3mL(0.115mol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。滴下終了後に30分間熟成した。次に、末端停止剤としてのジフェニルリン酸クロライド0.41mL(2.30mmol)を注入し、重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をMIBKで置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返してシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してからメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。次に白色固体をテトラヒドロフラン100gに溶解させ、トリエチルミアン10g、メタノール5gを加え、還流下、5時間加水分解反応を行い、再度、1000gのメタノールへ沈殿精製することで白色固体を得た。つぎに、この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−22)11.8gを得た。この重合体(A−22)は、Mwが4,900、Mnが4,700、Mw/Mnが1.04であった。
【0096】
[合成例23]
200mLの3口フラスコ反応容器へアゾイソブチロニトリル0.098g(0.6mmol)、スチレン12.5g(120mmol)、2−シアノー2−プロピルドデシルトリチオカーボナート0.83g(2.4mmol)、アニソール20gを加え、ドライアイスバス減圧下、脱気を3回行い、窒素雰囲気下とした。常温に戻ったことを確認したのち、80℃、5時間加熱撹拌した。さらにビニルリン酸0.48mLとエチレングリコールモノメチルエーテル1mLの混合液をシリンジで投入し、さらに80℃、3時間加熱撹拌した。
【0097】
この重合溶液をn−ヘキサン300gへ沈殿精製し、得られた黄色固体を回収した。つぎに黄色固体をテトラヒドロフラン100gに溶解させ、アゾイソブチロニトリル1.97g(12mmol)、tert−ブチルドデシルメルカプタン2.02g(10mmol)を加え、80℃、2時間還流させトリチオカーボナート末端の切り離し反応を行った。得られた重合溶液は、メタノール1,000gへ沈殿精製させ、薄黄色の固体を得た。つぎに、この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−23)10.2gを得た。この重合体(A−23)は、Mwが4,800、Mnが4,300、Mw/Mnが1.12であった。
【0098】
[合成例24]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液2.13mL(2.07mmol)を注入し、さらに、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン11.4mL(0.062mol)、4−ビニルベンゾシクロブテン0.5mL(3.84mmol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。末端停止剤としてのプロピレンスルフィド0.16mL(2.07mmol)、メタノール1mL、p−メトキシフェノール0.01gを加え、重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をMIBKで置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返してシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してからメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−24)9.8gを得た。この重合体(A−24)は、Mwが5,000、Mnが4,700、Mw/Mnが1.06であった。
【0099】
[合成例25]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液2.09mL(2.03mmol)を注入し、さらに、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン11.1mL(0.062mol)、4−ビニルベンゾシクロブテン0.7mL(5.38mmol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。末端停止剤としてのブロモプロピオニトリル0.34mL(2.03mmol)、塩化リチウム0.5Nテトラヒドロフラン溶液4.1mL(2.03mmol)を加え、重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をMIBKで置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返してシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してからメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−25)10.3gを得た。この重合体(A−25)は、Mwが5,200、Mnが4,900、Mw/Mnが1.06であった。
【0100】
(4―アリルスチレンの合成)
冷却機と滴下ロートを備えた500mL3口フラスコに、ドライテトラヒドロフラン100mL、マグネシウム3.01g(111mmol)を加え、氷冷下、滴下ロートより4―クロロスチレン12.7mL(106mmol)を加え撹拌し、グリニャール試薬を精製させた。つぎに滴下ロートよりアリルブロミド7.85mL(92mmol)を加え、窒素雰囲気下、50℃で加熱撹拌した。反応終了後、濾過からろ液を回収し、メチルエチルケトンを加え、水洗を行った後、減圧濃縮した。次に、減圧蒸留から沸点が78℃/10Paである留分を本流として、目的物12.1g(収率92%)得た。
GC−Mass m/z;144.09
1H NMR(CDCl
3);7.59(2H,m−Ph),7.18(2H,o−Ph),6.63(1H,−CH=),5.61,5.18(2H,CH
2),5.25(3H,allyl),2.34(2H,−CH
2−)
【0101】
[合成例26]
500mLの3口フラスコ反応容器を減圧乾燥した後、窒素雰囲気下、蒸留脱水処理を行ったTHF120gを注入し、−78℃まで冷却した。このTHFにsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の1Nシクロヘキサン溶液2.09mL(2.03mmol)を注入し、さらに、重合禁止剤除去のためシリカゲルによる吸着濾別と蒸留脱水処理とを行ったスチレン11.1mL(0.062mol)、4−アリルスチレン0.78mL(5.38mmol)を30分かけて滴下注入し、重合系が橙色であることを確認した。この滴下注入のとき、反応溶液の内温が−60℃以上にならないように注意した。末端停止剤としてのブロモプロピオニトリル0.34mL(2.03mmol)、塩化リチウム0.5Nテトラヒドロフラン溶液4.1mL(2.03mmol)を加え、重合末端の停止反応を行った。この反応溶液を室温まで昇温し、得られた反応溶液を濃縮して溶媒をMIBKで置換した。その後、シュウ酸2質量%水溶液1,000gを注入撹拌し、静置後、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返し、Li塩を除去した。その後、超純水1,000gを注入撹拌し、下層の水層を取り除いた。この操作を3回繰り返してシュウ酸を除去した後、溶液を濃縮してからメタノール500g中に滴下することで重合体を析出させ、ブフナーロートにて固体を回収した。この固体を60℃で減圧乾燥させることで白色の重合体(A−26)10.5gを得た。この重合体(A−26)は、Mwが5,300、Mnが5,100、Mw/Mnが1.04であった。
【0102】
<組成物の調製>
[調製例1]
[A]重合体としての(A−1)1.2gに、[B]溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)98.8gを加え、撹拌したのち、0.45μmの細孔を有する高密度ポリエチレンフィルターにて濾過することにより、組成物(S−1)を調製した。
【0103】
[調製例2〜26]
下記表1に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は、調製例1と同様にして、組成物(S−2)〜(S−26)を調製した。
【0104】
【表1】
【0105】
<評価>
上記調製した組成物を、下記方法に従い、評価した。
【0106】
<金属基板上での選択的表面修飾の評価>
[実施例1〜25、29〜31、34〜36、比較例1及び2並びに参考例1〜7]
8インチの基板(銅基板、コバルト基板、タングステン基板、タンタル基板、タンタル窒化膜基板)を5質量%シュウ酸水溶液に浸漬させたのち、窒素フローにて乾燥させ、表面の酸化被膜を除去した。酸化ケイ素基板については、イソプロパノールにて表面処理を行った。
次に、トラック(東京エレクトロン社の「TELDSA ACT8」)を用いて、上記調製した組成物を1,500rpmにてスピンコートし、150℃で180秒間焼成した。この基板をPGMEAにて剥離し、未反応の重合体を除去した。基板上に形成された選択的表面修飾材は、エリプソメータの膜厚測定結果より、0nm〜5nm程度であった。次に、表面の接触角値を、接触角計(協和界面科学社のDrop master DM−501)を用いて測定した。さらに、膜厚を元に[A]重合体(ブラシ)の存在密度σ(chains/nm
2)を下記式(1)により算出した。
σ=d×L×NA×10
−21/Mn・・・(1)
d:[A]重合体の密度(g/cm
3)、L:膜の平均厚み(nm)、NA:アボガドロ数、Mn:[A]重合体の数平均分子量
金属基板及び酸化ケイ素基板のそれぞれについて、基板表面に形成された重合体膜の平均厚み(nm)、接触角値(°)及び重合体(ブラシ)密度(chains/nm
2)について表2にそれぞれ示す。表2中の「−」は基材表面の選択性が示されておらず、重合体の存在密度を算出しなかったことを示す。
【0107】
【表2】
【0108】
<銅−シリコンオキサイドからなるストライプ基板上での選択的表面修飾の評価>
[実施例26〜28、32〜33、37〜39、比較例3及び参考例8]
図1に示す8インチ基板(Cu−EPC:10,000Å/Cu−Seed:1,000Å/TaN Barrier Layer:250Å/シリコンオキサイド(酸化ケイ素):5,000Å/シリコンウエハ、0.18μmトレンチ)をCMPスラリーにて研磨し、下記
図2のように銅とシリコンオキサイドがストライプ状に並ぶ基板を作成した。次にこの基板を5質量%シュウ酸水溶液に浸漬させたのち、窒素フローにて乾燥させ、表面の酸化被膜を除去した。
この基板にトラック(東京エレクトロン社の「TELDSA ACT8」)を用いて、上記調製した組成物を1,500rpmにてスピンコートし、150℃で180秒間焼成した。この基板をPGMEAにて剥離し、未反応の重合体を除去した。次に、走査型プローブ顕微鏡(日立ハイテクサイエンス社、S−image(顕微鏡ユニット)及びNanoNaviReal(コントロールステーション))にて表面を観察し、凹凸より被覆部の膜厚を算出した。
銅−シリコンオキサイドストライプ基板上の銅、シリコンオキサイドのそれぞれの領域上に形成された重合体の塗膜の平均厚み(nm)を表3にそれぞれ示した。表3中の「ND」は、厚みが小さく、検出できなかったことを示す。
【0109】
【表3】
【0110】
表2及び表3の結果から、実施例の基材表面の選択的修飾方法によれば、金属を含む表面領域を簡便に、高選択的かつ高密度に修飾できることが示された。