(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882731
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】車両のサブフレーム
(51)【国際特許分類】
B62D 21/00 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
B62D21/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-226537(P2016-226537)
(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公開番号】特開2018-83476(P2018-83476A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000112082
【氏名又は名称】ヒルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】初岡 晋
(72)【発明者】
【氏名】仲本 忍
(72)【発明者】
【氏名】吉川 修司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正志
【審査官】
久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−096352(JP,A)
【文献】
実開昭57−139475(JP,U)
【文献】
特開2004−322925(JP,A)
【文献】
特開平09−221062(JP,A)
【文献】
特開2007−268594(JP,A)
【文献】
特開2016−124363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方又は双方が最中合わせ構造のサイドメンバ又はクロスメンバから構成される車両のサブフレームにおいて、
最中合わせ構造であるサイドメンバ又はクロスメンバの構成部材の一方は、支持する治具に設けられた位置決めピンを差し込む位置決め孔を、前記構成部材の一方のフランジ部分に設けてなり、
位置決め孔は、直線部分をフランジ部分の縁部と平行に揃えた長孔であることを特徴とする車両のサブフレーム。
【請求項2】
一方又は双方が最中合わせ構造のサイドメンバ又はクロスメンバから構成される車両のサブフレームの製造に際し、
最中合わせ構造であるサイドメンバ又はクロスメンバの構成部材の一方のフランジ部分に位置決め孔を設け、治具に設けた位置決めピンを前記位置決め孔に差し込むことにより前記治具に対して前記構成部材の一方を位置固定し、
位置決め孔に差し込んだ位置決めピンにフランジ部分の縁部を当接させるように構成部材の他方を構成部材の一方に嵌合させて、構成部材双方のフランジ部分を溶接することを特徴とする車両のサブフレームの製造方法。
【請求項3】
位置決め孔は、直線部分をフランジ部分の縁部と平行に揃えた長孔である請求項2記載のサブフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方又は双方が最中合わせ構造のサイドメンバ又はクロスメンバから構成される車両のサブフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
一方又は双方が最中合わせ構造のサイドメンバ又はクロスメンバから構成される車両のサブフレーム(フロントサブフレーム又はリアサブフレーム)は、最中合わせ構造のサイドメンバ又はクロスメンバを断面角形の中空構造として、剛性を高めながら軽量化を図っている(特許文献1)。このとき、断面角形の中空構造であるサイドメンバ又はクロスメンバは、断面コ字状に加工された一対の構成部材を対向させ、互いのフランジ部分を一部重ね合わせて溶接する最中合わせ構造にしていた(特許文献1・[0041])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-096352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最中合わせ構造であるサイドメンバ又はクロスメンバの構成部材は、予め設定された幅で互いのフランジ部分を重ね合わせて溶接する。ここで、サイドメンバ又はクロスメンバは、複雑な形状であるため、構成部材もフランジ部分の縁部が曲線を描いており、構成部材のフランジ部分を設定された幅で重ねることが容易でない。この点、特許文献1は、フランジ部分の重ねる幅をどのように特定するかが明らかにされていない。そこで、フランジ部分の重ねる幅を容易かつ正確に特定できる構成部材について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
検討の結果開発したものが、一方又は双方が最中合わせ構造のサイドメンバ又はクロスメンバから構成される車両のサブフレームにおいて、最中合わせ構造であるサイドメンバ又はクロスメンバの構成部材の一方は、支持する治具に設けられた位置決めピンを差し込む位置決め孔を、前記構成部材の一方のフランジ部分に設け
てなり、位置決め孔は、直線部分をフランジ部分の縁部と平行に揃えた長孔であることを特徴とする車両のサブフレームである。本発明は、車両のフロントサブレーム又はリアサブフレームに適用される。本発明のサブフレームは、構成部材の一方が治具に対して位置固定され、構成部材の他方がフランジ部分の縁部を位置決めピンに当接させることにより、フランジ部分の重なる幅が特定される。
【0006】
本発明は、一方又は双方が最中合わせ構造のサイドメンバ又はクロスメンバから構成される車両のサブフレームの製造に際し、最中合わせ構造であるサイドメンバ又はクロスメンバの構成部材の一方のフランジ部分に位置決め孔を設け、治具に設けた位置決めピンを前記位置決め孔に差し込むことにより前記治具に対して前記構成部材の一方を位置固定し、位置決め孔に差し込んだ位置決めピンにフランジ部分の縁部を当接させるように構成部材の他方を構成部材の一方に嵌合させて、構成部材双方のフランジ部分を溶接することにより、サブフレームを製造する。
【0007】
本発明のサブフレームは、位置決め孔は、長孔であると、治具の位置決めピンに対して複数の位置決め孔のいずれかが位置ずれしても、位置決め孔の延在方向及び範囲内で一方の構成部材をずらして位置決めピンを位置決め孔に差し込める。位置決め孔の延在方向の長さに限定はないが、位置決めピンの位置調整量を確保しつつ、位置決め孔を設けるフランジ部分の強度低下を回避するには、位置決めピンの外径の2倍〜3倍が好適である。
【0008】
位置決め孔に差し込まれた位置決めピンは、他方の構成部材のフランジ部分の縁部を当接させることで、前記フランジ部分の重なる幅を特定する働きを有する。これから、位置決め孔は、直線部分をフランジ部分の縁部と平行に揃え、位置決めピンをフランジ部分の縁部に沿って位置調整できるのみとし、フランジ部分の重なる幅を特定する前記縁部の直交方向に位置決めピンを位置調整できないようにするとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、一方又は双方が最中合わせ構造のサイドメンバ又はクロスメンバから構成される車両のサブフレームにおいて、最中合わせ構造のサイドメンバ又はクロスメンバのフランジ部分の重なる幅を容易かつ正確に特定する。これは、最中合わせ構造のサイドメンバ又はクロスメンバの品質を向上させるほか、作業コストを低減する効果となる。作業コストの低減は、位置決め孔を長孔とする、更に直線部分をフランジ部分の縁部と平行に揃えた長孔にすることで、より発揮される。位置決め孔を長孔にすることは、特別な加工を要することもなく、また端材もそれほど多くすることもないため、コスト上昇もない。このように、本発明は、費用対効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を適用したリアサブフレームの一例を表す平面図である。
【
図2】リア側クロスメンバを構成する前側構成部材及び後側構成部材を表す平面図である。
【
図3】
図2中A-A端面図(図中奥側の下方位置決め孔を図示)である。
【
図4】位置決め孔に位置決めピンを差し込んだ状態を表す
図3相当端面図(図中治具は側面図として図示)である。
【
図5】
図2中B矢視部拡大平面図(図中治具の本体部分を図示略)である。
【
図6】フランジ部分の重ねる範囲を特定した状態を表す
図4相当端面図である。
【
図7】フランジ部分の重ねる範囲を特定した状態を表す
図5相当平面図である。
【
図8】上方位置決めピン及び上方位置決め孔と下方位置決めピン及び下方位置決め孔が共に位置ずれした状態を表す
図5相当平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明は、例えば
図1に見られように、左右のサイドメンバ2と前後のクロスメンバ3とから構成される車両のリアサブフレーム1に適用される。本例のリアサブフレーム1は、サイドメンバ2及びクロスメンバ3がいずれも最中合わせ構造である。このため、本発明はサイドメンバ2及びクロスメンバ3いずれにも適用可能である。しかし、便宜上、前側のクロスメンバ3(
図1中左側)を例に説明する。
【0012】
前側のクロスメンバ3は、
図2及び
図3に見られるように、前後方向に半割された前側構成部材32及び後側構成部材31からなる最中合わせ構造である。クロスメンバ3は、左右方向に一様な断面構造を有しているわけではなく、本例のように、左右端部が複雑な形状である。しかし、本例の前側構成部材32及び後側構成部材31は、左右方向のほぼ全部において、前側上フランジ部分321及び後側上フランジ部分311と、前側下フランジ部分323及び後側下フランジ部分313とをそれぞれ接合する。
【0013】
本例の前側構成部材32は、前側上フランジ部分321及び前側下フランジ部分323を有し、左右中心付近で略断面コ字状の板金部材である。また、後側構成部材31は、後側上フランジ部分311及び後側下フランジ部分313を有し、左右中心付近で略断面コ字状の板金部材である。両者は開放された側を対向させ、後側上フランジ部分311及び後側下フランジ部分313を前側上フランジ部分321及び前側下フランジ部分323に外面から接面させ、接合する。
【0014】
本発明を適用した本例の後側構成部材31は、後側上フランジ部分311の左右中心の1箇所に、直線部分が前記後側上フランジ部分311の縁部と平行な長孔である上位置決め孔312を設けている。また、本例の後側構成部材31は、前記後側下フランジ部分313の左右中心を挟む左右2箇所に、直線部分が前記後側上フランジ部分311の縁部と平行な長孔である下位置決め孔314を設けている。
【0015】
上位置決め孔312及び下位置決め孔314は、直線部分が同一方向に延び、前記直線部分と後側上フランジ部分311及び後側下フランジ部分313の縁部との距離の等しいことが望ましい。仮に前記距離が異なる場合、後側上フランジ部分311及び後側下フランジ部分313の縁部に近い上位置決め孔312又は下位置決め孔314に差し込んだ上位置決めピン41又は下位置決めピン42のみが、前側構成部材32の前側上フランジ部分321又は前側下フランジ部分323の縁部に当接し、重なる幅を特定する。
【0016】
上位置決め孔312及び下位置決め孔314の直線部分と後側上フランジ部分311及び後側下フランジ部分313の縁部との距離は、上位置決め孔312及び下位置決め孔314に差し込んだ上位置決めピン41及び下位置決めピン42に縁部を当接する前側構成部材32の前側上フランジ部分321又は前側下フランジ部分323と、前記後側上フランジ部分311及び後側下フランジ部分313とが重なる幅に等しい。
【0017】
後側上フランジ部分311及び後側下フランジ部分313と、前側上フランジ部分321又は前側下フランジ部分323とが重なる幅は、後側上フランジ部分311及び後側下フランジ部分313の縁部と上位置決め孔312及び下位置決め孔314とに挟まれた部分の強度及び剛性を確保しながら、前側上フランジ部分321又は前側下フランジ部分323の不要部分を低減する観点から、5mm前後の距離が好適である。
【0018】
また、上位置決め孔312及び下位置決め孔314は、長孔の長手方向長さが異なっていてもよい。上位置決め孔312及び下位置決め孔314の長手方向長さは、治具4の上位置決めピン41及び下位置決めピン42に対する上位置決め孔312及び下位置決め孔314の位置ずれを調整する範囲となる。これから、位置ずれの発生のしやすさや発生した際の大きさに応じて、上位置決め孔312及び下位置決め孔314の長手方向長さを決定する。
【0019】
前側構成部材32及び後側構成部材31の接合手順を説明する。まず、後側構成部材31は、
図4及び
図5に見られるように、治具4の上位置決めピン41及び下位置決めピン42を上位置決め孔312及び下位置決め孔314に差し込ませて位置固定する。上位置決めピン41及び下位置決めピン42は、本例のように合計3本以上あることにより、治具4に対する後側構成部材31の姿勢を特定する働きも有する。
【0020】
治具4は、上位置決め孔312及び下位置決め孔314に差し込める上位置決めピン41及び下位置決めピン42があればよく、構成及び構造を問わない。本例の治具4は、上位置決め孔312に上方から上位置決めピン41を差し込めるように、上位置決めピン41を昇降自在に構成している。後側構成部材31は、上位置決めピン41を上昇させた状態(
図4中仮想線参照)で、下位置決め孔314に下位置決めピン42を差し込ませるように治具4に置き、次いで上位置決めピン41を下降させ、上位置決め孔312に差し込ませる。
【0021】
こうして治具4に対して位置固定された後側構成部材31に、上位置決めピン41に対して前側上フランジ部分321の縁部を当接させ、また下側位置決めピン42に前側下フランジ部分323の縁部を当接させて前側構成部材32を内側から嵌合させ、
図6及び
図7に見られるように、後側上フランジ部分311及び後側下フランジ部分313の縁部を隅肉溶接すると、クロスメンバ3が完成する。溶接後、上述と逆の手順で治具4からクロスメンバ3を取り外す。
【0022】
本例の後側構成部材31は、上位置決め孔312及び下位置決め孔314をいずれも長孔にしている。このため、例えば
図8に見られるように、上位置決め孔312が右方向(
図8中下方向)、左側の下位置決め孔314が左方向(
図8中上方向)にそれぞれずれて形成されても、長手方向の長さの範囲内に位置ずれが収まっていれば、上位置決めピン41を上位置決め孔312に、下位置決めピン42を下位置決め孔314にそれぞれ差し込める。
【0023】
上位置決めピン41及び下位置決めピン42は、上位置決め孔312及び下位置決め孔314のどの部分に差し込まれても、直線部分に当接している。このため、上位置決めピン41及び下位置決めピン42に縁部を当接させる前側上フランジ部分321及び前側下フランジ部分323と後側上フランジ部分311及び後側下フランジ部分313との重なる幅は、上述例示(
図7参照)に等しく特定される。
【符号の説明】
【0024】
1 リアサブフレーム
2 サイドメンバ
3 クロスメンバ
31 後側構成部材
311 後側上フランジ部分
312 上位置決め孔
313 後側下フランジ部分
314 下位置決め孔
32 前側構成部材
321 前側上フランジ部分
323 前側下フランジ部分
4 治具
41 上位置決めピン
42 下位置決めピン