【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、請求項1に記載の少なくとも一個の少なくともバイポーラ電極によって組織を治療するための装置を調整する方法によって達成される。この方法の有利な実施態様は請求項2から8に記載したとおりである。
【0011】
したがって、少なくとも一個の電極は、それゆえ、電極間隙Lにて配置された少なくとも二個の電極を有するバイポーラ電極として形成されている。
【0012】
少なくとも一個の少なくともバイポーラ電極によって組織を治療するための装置を調整する方法において、バイポーラ電極の電極間隙Lが設定されるが、その際、電極間隙Lは、−当該組織の真皮層の厚さd又はそれに対応するデータ及び/又は−当該組織の表面とは反対側の真皮層境界における組織の反射係数k又はそれに対応するデータに応じて定められる。
【0013】
本発明は本願出願人の以下の知見を基礎としている。すなわち、人体組織を治療するための数多くの相異した方法において、高周波電流及び特に無線周波数電流の使用が行われる。当該組織の所望の目標層のこの種の治療の重要な効果は通電された高周波電流による加熱に基づく、ということが出発点とされている。この場合、目標層とは、真皮層及び/又はそれより下に位置する脂肪層(sWAT、subcutaneous white adipose tissueとも称される)であってよい。
【0014】
当該組織の目標層(一般に、真皮層又はsWAT層)における十分な温度上昇を達成するには、目標エリアにおいて相応した高さの電流密度が達成されなければならない。従来、基本的に、相応したパラメータたとえば高周波電流の周波数及び振幅レベルの選択により、常に、所望の目標エリアにおける十分な高さの電流密度を達成することができる、ということが前提とされてきている。しかしながら、本願出願人の調査ならびに計算によれば、当該組織の層構造が高周波電流の電流流れ路に大きな影響をもたらすために、治療結果は当該組織における隣接層の電気的特性、特に、二つの層の境界面における電気反射係数及び/又は個々の層の厚さに著しく依存していることが判明した。計算によれば、特に、当該組織の真皮層の厚さ及び/又は当該組織の表面とは反対側の真皮層境界(特に、真皮層/sWATの境界)における組織の反射係数が重要であることが明らかとなった。
【0015】
本願出願人のこれらの計算から、一方で真皮層の電気的特性と他方で他の層、特にsWAT層の電気的特性との相違及びこれらの層間の反射係数が電流のフローパターンに大きな影響を及ぼし、相応して、温度上昇の部位及び高さに顕著な影響をもたらすことが明らかとなった。これから、個々の層たとえばsWAT層の選択的加熱に関する従来の仮説は、上述したこれらの効果を考慮していないために、従来仮定されてきたパラメータは、治療に際して、所望の加熱をもたらさないことが判明した。
【0016】
RF治療に際して適用される一般的な周波数について言えば、sWAT層は外部から印加される電流から遮蔽されている。これにより、電極たとえばバイポーラ電極により皮膚を経て印加される電流は、層構造からして、基本的に真皮層に集中されるため、sWAT層の加熱は従来の仮定に比較して著しく低い結果となる。それゆえ、結果として、バイポーラ電極の構成を真皮層の厚さ及び/又は上述した当該組織の表面とは反対側の真皮層境界における組織の反射係数に応じて設定することが重要である。これにより、当該組織の所望のエリア又は所望層の著しく正確な加熱、特に、sWAT層の著しく正確な加熱を行うことが可能である。
【0017】
本願出願人の計算によれば、一般的な適用シナリオにつき、sWAT層における設定された層エリアのmax.加熱を達成するための最適電極間隙は、電流フローパターンを正しく考慮する場合には、真皮層とsWAT層との電気的特性の相違によって影響される電流フローパターンを考慮することなく従来仮定されてきた最適電極間隙とは、およそ二倍に達するほど相違していることが明らかとなった。
【0018】
ここで、電極間隙Lを、真皮層の厚さ又はそれに対応するデータに応じて設定することも、当該組織の表面とは反対側の真皮層境界における反射係数又はそれに対応するデータに応じて設定することも、いずれも本発明の範囲に属している。これにより、最適な結果が達成される。
【0019】
同じく、上記双方のパラメータのいずれか一方をコンスタントなものとみなし、他方のパラメータのみを、治療されるべき組織の具体的な所与条件に応じて選択する、ということも本発明の範囲に属する。
【0020】
本願出願人の調査によれば、特に人体の場合にあっては、バイポーラ電極間の最適電極間隙の設定に、真皮層の厚さが決定的な影響をもたらすことが判明した。したがって、有利な、簡易化された実施形態において、反射係数の値はコンスタントなものとして、つまり、実際に治療されるべき組織の具体的な値とは無関係なものと見なされて、バイポーラ電極の電極間隙は実際に治療されるべき組織の真皮層の厚さに応じて選択される。
【0021】
設定される電極間隙Lを選択した後に、装置は高周波電流による組織の治療を行うべく準備される。これは、医療目的のための治療及び/又は美容目的からする、特に、非治療的処置であってよい。特に、本方法は、非治療的処置用装置の調整に適している。
【0022】
組織を治療するための装置の特に容易な調整の実現は、複数のアプリケータが選択に供され、その際、それぞれのアプリケータは少なくとも一個のバイポーラ電極を有すると共に、それらのアプリケータのバイポーラ電極の電極間隙は互いに相異しているように構成した好ましい実施形態によって達成される。したがって、これにより、一個の特別なアプリケータの使用を選定することにより、同時に、バイポーラ電極の電極間隙Lの設定を行うことができる。
【0023】
とりわけ、該当する一定のアプリケータの選定が、識別符号、特に識別カラーの設定によって行われるようにするのが有利である。したがって、この好ましい実施形態において、それぞれのアプリケータは異なった識別符合たとえば番号、名称、図形記号及び/又はカラーを有しており、しかも、これらの識別符号たとえば識別カラーが真皮層の厚さ及び/又は上述した反射係数に応じて設定されているために、ユーザは容易に、バイポーラ電極の最適電極間隙Lを有したアプリケータを選択することができる。さらに、最適電極間隙Lを有したアプリケータの設定が視覚信号、特に当該アプリケータのランプ点灯によって行われ、こうして、当該点灯視覚信号を有するアプリケータをユーザが容易に選択することができるようにすることにより、操作のさらなる容易化を達成することが可能である。
【0024】
同じく、制御ユニットによって電極間の相異した電極間隙Lを設定すること、特に、調整することが可能な、一個のバイポーラ電極を有するアプリケータが供され、電極間隙Lは、該制御ユニットが電極間隙Lに合わせて構成されることによって、設定されるようにすることも本発明の範囲に属する。したがって、この場合、パラメータたとえば真皮層の厚さ及び/又は上述した反射係数の入力後、自動的に制御ユニットの構成が行われるため、アプリケータは最適電極間隙Lに合わせて設定されていることとなる。
【0025】
この場合、厚さdに応じて電極間隙Lが設定され、その際、厚さd(又はそれに対応するデータ)が好ましくはユーザによって入力される計算ユニットが設けられ、該計算ユニットが厚さdに応じて電極間隙Lを設定するようにプログラミングされていれば、特にシンプルかつフールプルーフな操作が行われる。
【0026】
したがって、この場合、バイポーラ電極の電極間隙が具体的に治療されるべき組織の真皮層の厚さdに応じて選択される点が重要である。
【0027】
この場合、有利には、適用部位における組織の厚さdが測定される。これは、それ自体公知の方法、特に超音波測定法(たとえば以下参照のこと。Krackowizer,P., Brenner,E. (2008) Dicke der Epdermis und Dermis, Phlebologie, 8, p.83−92)によって行うことができる。この場合、厚さ測定の測定データから厚さdを決定するために、厚さ測定・評価ユニットが供され、厚さ測定の結果が電極間隙Lの決定に自動的に使用されるようにして自動化をさらに促進するのが特に有利である。したがって、この有利な実施形態にあっては、ユーザは真皮層の厚さをマニュアル入力する必要はなく、その厚さは実施された厚さ測定に基づいて自動的に算出される。
【0028】
真皮層の厚さdは、特に、人体の適用部位に応じて変化する。したがって、有利な実施形態において、厚さdは、人体の適用部位に応じ、特に、人の顔面の適用部位に応じて決定される。これによって、実際に治療されるべき患者に厚さ測定が実施される必要がないために、簡易化を達成することができる。厚さdについては、むしろ、実際の治療部位たとえば額、頬又はその他の人体エリアにおける真皮層の厚さの平均値に依拠することが可能である。こうした平均値は、たとえば表の形で供され、相応して、ユーザによって選択されることが可能である。特に有利な態様は、治療部位に応じてバイポーラ電極の最適電極間隙Lを算定するようにプログラミングされた計算ユニットに、直接、ユーザが治療部位を入力することである。したがって、この場合、人体の治療部位とは、真皮層の厚さに対応するデータを表している。
【0029】
少なくとも一個の少なくともバイポーラ電極により人体組織を治療するための方法、特に人体組織の非治療的処置を行うための方法は、複数の方法ステップを含み、その際、方法ステップaにおいて、少なくとも一個の少なくともバイポーラ電極によって組織を治療するための装置を調整する先述した方法、特にその好ましい実施形態によってバイポーラ電極の電極間の電極間隙Lの設定が行われる。次いで、方法ステップbにおいて、バイポーラ電極により高周波電流を通電することによって人体組織の治療、特に人体組織の非治療的処置が行われる。
【0030】
本発明が目的とする課題は、さらに、人体組織を治療するために電極間隙Lを有するバイポーラ電極を使用することによって達成されるが、その際、電極間隙Lは、−当該組織の真皮層の厚さd又はそれに対応するデータ及び/又は−当該組織の表面とは反対側の真皮層境界における組織の反射係数k又はそれに対応するデータに応じて設定される。これにより、上述した一連の利点、特に、組織の層、特にsWAT層の所期の加熱を著しく正確に達成することが可能になる。
【0031】
本発明が目的とする課題は、さらに、請求項10に記載の高周波電流によって人体組織を治療するための装置によって達成される。本発明によるこの装置の有利な実施態様は請求項11から15に記載したとおりである。
【0032】
本発明による上記装置は、高周波電流発生器及び少なくとも一個の第一の少なくともバイポーラ電極及び少なくとも一個の第二の少なくともバイポーラ電極を有する。これらのバイポーラ電極は高周波電流発生器と導電接続されており、これら双方のバイポーラ電極は互いに異なった電極間隙Lを有している。
【0033】
重要な点は、電極間隙Lを−当該組織の真皮層の厚さd又はそれに対応するデータ及び/又は−当該組織の表面とは反対側の真皮層境界における組織の反射係数k又はそれに対応するデータに応じて設定する設定手段が設けられていることである。
【0034】
したがって、本発明による装置により、所望の加熱部位を正確に設定するには上述したパラメータの一方又は双方に応じて電極間の電極間隙Lを選択することが重要であるという冒頭に述べた知見が初めてこの種の装置の構成に取り入れられたことにより、著しく正確な治療が可能になる。またこれにより、冒頭に述べた利点が達成される。
【0035】
有利な実施態様において、本装置は、高周波電流発生器と導電接続されたアプリケータを有する。本装置は、さらに、第一のバイポーラ電極を有する少なくとも一個の第一の交換キャップと第二のバイポーラ電極を有する少なくとも一個の第二の交換キャップを有し、これらの交換キャップはオプショナルにアプリケータに配置し得るように形成されており、端縁部に配置されたこれらの交換キャップのバイポーラ電極は高周波電流発生器と導電接続される。
【0036】
したがって、この好ましい実施形態において、最適電極間隙Lの選択は、相応した交換キャップの選択によって行うことができる。とりわけ、この場合、交換キャップに識別符号たとえば番号、シンボル図形及び/又はカラーマーキングを付するのが有利である。組織を治療するための装置を調整する方法において既に述べたように、この場合、装置が、設定された電極間隙Lに応じて該当する交換キャップの識別マークを出力するように形成された識別マーク表示ユニットを含んでいるのが有利である。
【0037】
互いに相異する電極間隙を有する複数の交換キャップ、特に5から20個の範囲の交換キャップを設けることは本発明の範囲に属する。
【0038】
さらに別の好ましい実施形態において、本装置は少なくとも一個の第一のアプリケータと少なくとも一個の第二のアプリケータを有し、第一の電極が第一のアプリケータに配置され、第二の電極が第二のアプリケータに配置され、それぞれのアプリケータは視覚表示、特にランプを有している。設定手段はアプリケータの視覚表示と導電接続され、設定された電極間隙Lに応じて該当するアプリケータの視覚表示が点灯されるように形成されている。これにより、特にシンプルかつフールプルーフな使用が可能となる。
【0039】
好ましくは、設定手段は、−当該組織の真皮層の厚さd又はそれに対応するデータ及び/又は−当該組織の表面とは反対側の真皮層境界における組織の反射係数k又はそれに対応するデータを入力するための入力ユニットを有する。この設定手段は、さらに、設定されるべき電極間隙Lを決定するための評価ユニットを有する。これら入力ユニット及び評価ユニットは、特に、相応した入力及び評価装置たとえばディスプレイ、キーボード及び/又はタッチスクリーンを有する通例のPCとして形成されていてよい。
【0040】
上記入力ユニットは、好ましくは、人体適用部位がユーザによって、特に、入力ユニットにより設定された適用種別リストのうちから選択可能であるようにして、厚さdに対応するデータを入力するように形成されている。したがって、この好ましい実施形態にあっては、ユーザが適用部位を入力するだけで、該入力に応じ、所望の適用部位における真皮層の厚さdの推定が可能とされて、バイポーラ電極の電極間隙Lが設定されるように構成されているため、操作は著しく簡易化されている。この場合、人体がタッチスクリーン上に表示され、ユーザが該当する箇所をタッチすることにより所望の治療部位が選択され、相応して、当該治療部位における真皮層の代表的な厚さに応じた最適電極間隙Lが設定されることによって、入力を特に容易にすることが実現される。
【0041】
さらに、本装置が真皮層の厚さdの厚さ測定を行うための厚さ測定ユニットたとえば超音波厚さ測定ユニットを含み、該厚さ測定ユニットが設定手段と連携するように形成されて、測定された厚さdが設定手段に転送、特に、自動的に転送されるように構成することにより、精度のいっそうの向上が達成される。したがって、使用にあたり、治療されるべき組織の具体的な治療部位につき、好ましくは超音波測定法によって厚さが決定され、続いて、測定された真皮層厚さに応じてバイポーラ電極の最適電極間隙Lが設定される。
【0042】
本発明による装置は、好ましくは、本発明による方法、特にその好ましい実施形態を実施するように形成されている。本発明による方法は、好ましくは、本発明による装置、特にその好ましい実施形態によって実施されるように形成されている。
【0043】
適用種別に応じ、目標層の加熱に関して異なった最適化モデルが有用なことがある。たとえば、第一の点的最適化モデルは、設定された深度における加熱を達成するための最適電極間隙Lを求めるのに有用である。その他の適用については、深層の加熱つまり深度h
1から開始して深度h
2までに及ぶ深度範囲の加熱を達成するための最適電極間隙Lを求めるには、エリア最適化モデルが有用である。
【0044】
以下に、好ましい実施形態として、皮下脂肪層sWATの深度zにおける加熱を達成するための最適電極間隙Lを求めるための式及び数値例を示す。したがって、深度zは、皮膚表面(外部に対する皮膚境界面)から出発して、皮膚表面に対して垂直に測定された距離を表す。本願出願人の分析及び計算によれば、この場合、最適な間隙Lは、たとえば、以下の式の数値解によって得ることができる:
【0045】
【数1】
【0046】
式中、kは、真皮層/sWAT境界層における反射係数を表している。この反射係数は以下の式2によって定義される。
【0047】
【数2】
【0048】
式中、σ
dは真皮層の導電率を意味し、σ
sはsWAT層のそれを意味している。これから、すでに、最適な間隙は、これらの層の導電率の絶対値に依存しているのではなく、反射係数kの定義に基づくそれらの比に依存しているにすぎないことが見て取れる。
μは、式3に基づき、真皮層の厚さdに対する所望の深度zの比を表している。
【0049】
【数3】
【0050】
νは、式4に基づき、真皮層の厚さdに対する電極の最適間隙Lの比を表している。
【0051】
【数4】
【0052】
ここで基本となるモデルを具体的に示すために、LはL
1layとも表される。
【0053】
今や、たとえば、ユーザにより、真皮層の厚さdならびに真皮層/sWAT層間の反射係数kが設定されると、上記の式1によるそれ自体公知の数値解法により、ユーザによって設定されたsWAT層における深度zにつき、適用のための最適電極間隙Lが算定され、相応して、適用に際して考慮されることができる。
【0054】
たとえば、上述したように、互いに異なった電極間隙を有する複数の交換キャップを設け、あるいは、異なった電極間隙を有する複数のアプリケータを設けることにより、複数の別々の電極間隙が設けられていることは、基本的に、本発明の範囲に属する。これらの場合にあって、最適化は、好ましくは、計算された最適な間隙に最も近い電極間隙が適用に使用されるか、又は、たとえば、相応した交換キャップの設定によりあるいは該当するアプリケータの識別表示によって、その旨がユーザに対して適切に信号化されて示されることによって行われる。
【0055】
電極間隙の最良の最適化を達成するには、反射係数kならびに真皮層の厚さdのいずれもがそれぞれの適用部位に応じて設定され、かつ、これら双方のパラメータに応じて、上述したようにして、最適電極間隙が算定されるようにするのが有利である。ただし、本発明者の調査によれば、真皮層の厚さに依拠する場合には、代表的な人体適用部位に関する反射係数に依拠する場合に比較して、最適電極間隙により大きな変化を結果することが判明した。したがって、有利な実施態様において、反射係数はコンスタントなものとして、つまり、適用部位とは無関係なものとして見なされ、真皮層の厚さのみが当該適用部位に応じて選択される。この場合、反射係数kは、好ましくは0.905と仮定することができる。
【0056】
以下の表1は、式1の数値評価から生ずる結果を例示したものである。
【0057】
【表1】
【0058】
第一欄には、所望の深度zと真皮層の厚さdの比μが挙げられている。したがって、μ=1とは、真皮層/sWAT層境界に等しいsWAT層深度に関する最適化が所望されていることを意味している。第二欄には、最適電極間隙Lと真皮層の厚さの比νが挙げられている。したがって、μ=1に対応する値1.487とは、この場合、最適ケースにおける電極は真皮層の厚さの1.487倍に等しい間隙を有することを意味している。第三欄には、本発明の有意性を具体的に示すために、真皮層とsWAT層の導電率の不均一性を無視し、したがって、組織全体が導電率の点で均一であると仮定された場合に結果する最適値が挙げられている。ここに挙示されているのは、本発明に基づいて算定された最適間隙Lと組織全体を電気的に均質であると仮定した場合に結果する間隙L
1homの比である。
【0059】
表1は、たとえば、真皮層の厚さの四倍に等しい深度に関する最適化(表中の最下行)が所望される場合には、本発明に基づく最適電極間隙は従来仮定されたきた値に比較して28%以上も相違していることを示している。
【0060】
数値例として、真皮層の代表的な厚さは0.5mmと仮定することができる。今や、深度1mmにてsWAT層における治療が所望される場合、すなわち、sWAT層中において真皮層/sWAT層境界層まで0.5mmの距離にてmax.エネルギー供給が行われるように電極間隙の最適化が所望される場合には、当該最適電極間隙は表1の第二欄に基づいて得られる。この場合、μは2であり、したがって、表1に従えば、真皮層の厚さdとLの比は3.272である。したがって、これから、真皮層の厚さ0.5mmにて、この所望の適用にとって、最適電極間隙L=1.636mmが得られる。先に述べたように、表1は、コンスタントなものとして仮定された、すなわち、部位とは無関係に仮定された反射係数k=0.905に関する計算例を表している。
【0061】
以下の表2には、反射係数との相関性が具体的に示されている。
【0062】
【表2】
【0063】
表2は、種々相異した反射係数kにつき、真皮層の厚さの二倍に等しい深度における所望の治療のための最適電極間隙を表している。第一欄には、相応して、反射係数kが挙げられている。第二欄は、表1と同様に、最適電極間隙Lと真皮層の厚さdの比を示している。第三欄も、同じく表1と同様に、本発明に基づき式1に従って算定された最適電極間隙Lと組織全体が均一な導電率を有すると仮定した場合に算出された電極間隙L
homの比を示している。
【0064】
したがって、k=0.905の場合の表2の第二欄は、μ=2の場合の表1の計算の設定と同じである。
【0065】
さらに別の実施例として、以下に、sWAT層中の一定の深度範囲につき電極間隙の最適化が意図され、その際、第一の深度h
1から開始して第二の深度h
2に至るまでの深度範囲がユーザによって設定される場合の計算式を挙げておくこととする。深度h
1,2は、深度zと同様に、皮膚表面に対して垂直をなす、sWAT層中における皮膚表面からの距離を表している。
【0066】
この場合、最適電極間隙Lは以下の式5によって得られる。
【0067】
【数5】
【0068】
ここで、kは、式1の場合と同様に、式2に基づく反射係数を意味している。μ
1は、式3と同様に、h
1と真皮層の厚さの比を意味し、相応して、μ
2はh
2と真皮層の厚さの比を意味している。
【0069】
【数6】
【0070】
ここで基本となるモデルを具体的に示すために、LはL
2layとも表される。L
2layは、たとえば、式5の数値解から得られ、この場合にも、νは電極の最適な間隙Lと真皮層の厚さdの比を表している。
【0071】
【数7】
【0072】
表3には、種々相異した反射係数k及び種々相異した設定層[h
1,h
2](“Strip”)に関して、またも第三欄には、結果する最適電極間隙L
2layと真皮層の厚さdの比が挙げられ、第四欄には、最適電極間隙と組織全体が均一な導電率を有すると仮定した場合に算出された電極間隙L
2homの比が挙げられている。
【0073】
【表3】
【0074】
したがって、たとえば、真皮層の厚さdに等しい深度から開始して、真皮層の二倍の厚さ2dに等しい深度に至るまでの、sWAT層の部分深度に関する最適化が所望される場合には、表3の第二行に基づく代表的な反射係数k=0.905につき、最適電極間隙と真皮層の比5.203が生じる。したがって、たとえば、真皮層の厚さが0.5mmの場合に、0.5mmから1mmまでに及ぶsWAT層の深度における最適加熱が所望される場合には、第二行に基づき、最適電極間隙Lと真皮層の厚さの比は5.203であることから、この場合にあって、最適電極間隙は2.601mmとなる。表3の第四欄、第二行によれば、この結果は、組織全体の導電率が均一であると仮定した場合の結果に比較して、125%以上も相異している。
【0075】
相応して、上記のパラメータにおいて、ただし、1mmから1.5mmまでのsWAT層における最適加熱が所望される場合には、表3の第五行に基づき、最適電極間隙は真皮層の厚さの9.781倍であり、つまり、およそ4.890mmである。
【0076】
バイポーラ電極の電極(つまり個別電極)間の代表的な最適間隙Lは0.5mmから10mmの範囲、特に1mmから5mmの範囲にある。したがって、好ましくは、本発明による装置、特にその好ましい実施形態の装置のバイポーラ電極の間隙Lはこの範囲にある。
【0077】
したがって、少なくともバイポーラ電極は、上述したように、電極間隙Lにて配置された少なくとも二個の電極(個別電極とも称される)を有する。
【0078】
この場合、当該組織に電流を印加する各々の電極の接触面は異なった形状を有していてよい。たとえば、技術的に低コストで製造可能な円形の接触面が特に有利である。同じく、接触面は、線状に、縦長に延ばして形成されていてもよく、この場合、双方の電極は好ましくは互いに平行に延びて並列配置されていてよい。円形の接触面は、好ましくは、0.5mmから10mmの範囲の直径、特に、1mmから3mmの範囲の直径を有する。
【0079】
さらに、電極は複数の接触面を含んでいてよい。特に、好ましくは線状に、点線のように配置された、複数の、好ましくは、円形の接触面を有する電極を形成するのが有利である。この場合にも、点線のように形成された双方の電極は平行に配置されているのが好ましい。この場合、電極の個々の接触面は、0.5mmから10mm、好ましくは1mmから5mmの(面中心点間の)間隙を有していてよいであろう。
【0080】
電極間隙Lは、好ましくは、特に先に述べた計算に際し、双方の電極の面中心点間の間隙を意味している。
【0081】
アプリケータ上には、複数のバイポーラ電極が並行配置されていてよいことから、より大きな面積範囲に、同時に、複数の電流を通電することが可能である。
【0082】
電極によって当該組織に通電される電流のパラメータは、それ自体公知のパラメータ、特にRF治療に際して知られているパラメータと同じであってよい。好ましくは、RF電流の周波数は0.5MHzから10MHzの範囲、特に、1MHzから5MHzの範囲にある。
【0083】
以下に、実施例及び図面を参照して、その他の好ましい特徴及び実施形態を説明する。各図は以下を示している。