特許第6882767号(P6882767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヨツギ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6882767-クランプカバー装置 図000002
  • 特許6882767-クランプカバー装置 図000003
  • 特許6882767-クランプカバー装置 図000004
  • 特許6882767-クランプカバー装置 図000005
  • 特許6882767-クランプカバー装置 図000006
  • 特許6882767-クランプカバー装置 図000007
  • 特許6882767-クランプカバー装置 図000008
  • 特許6882767-クランプカバー装置 図000009
  • 特許6882767-クランプカバー装置 図000010
  • 特許6882767-クランプカバー装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882767
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】クランプカバー装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/05 20060101AFI20210524BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   H02G7/05
   H02G1/02
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-73988(P2017-73988)
(22)【出願日】2017年4月3日
(65)【公開番号】特開2018-182791(P2018-182791A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115382
【氏名又は名称】ヨツギ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】山川 卓司
(72)【発明者】
【氏名】川田 淳
(72)【発明者】
【氏名】池側 勝巳
(72)【発明者】
【氏名】小谷 栄治
【審査官】 鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−162595(JP,A)
【文献】 特開平06−351136(JP,A)
【文献】 特開2016−096687(JP,A)
【文献】 特開2000−152472(JP,A)
【文献】 実開平06−073827(JP,U)
【文献】 特開2009−089537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の電線の端部と他方の電線の端部とを保持する引留クランプに装着され、絶縁性を有する合成樹脂から成り、前記引留クランプを収容する収容空間を規定する2つのカバー体を有するクランプカバー装置であって、
一方カバー体の一側縁部と他方カバー体の一側縁部との間に設けられ、前記一方カバー体と前記他方カバー体とを共通な軸線まわりに角変位可能に連結するヒンジ部と、
前記一方カバー体と他方カバー体とが前記引留クランプ全体を覆っているときに、前記一方カバー体の他側縁部に重なるように、前記他方カバー体の他側縁部に設けられた突出片と、を備え
前記突出片は、前記一方カバー体の前記他側縁部の、前記一方カバー体と前記他方カバー体とを角変位させたときの移動経路から外側に立上がる案内面を有し、前記他方カバー体の他側縁部に沿って延びて設けられていることを特徴とするクランプカバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空配電線を引留めておく引留クランプに間接活線工法によって装着されるクランプカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電柱間に架設される架空配電線は、電柱に耐張碍子を介して取り付けられた引留クランプによって把持されている。引留クランプは、鳥獣害等による架空配電線の故障が生じるのを防止するために、充電部が露出しないようにクランプカバーによって覆われている。
【0003】
従来から、間接活線工法によって引留クランプに装着可能に構成されたクランプカバーが、多数提案されている。たとえば、特許文献1,2には、このようなクランプカバーとして、引留クランプを収容するための凹所がそれぞれ形成され、上縁部同士がヒンジによって開閉可能に連結された一対のカバー片と、一対のカバー片における下縁部同士および側縁部同士を着脱可能に係合する複数の係合部とを備え、各係合部が、一方のカバー片に設けられた、凸部を有する第1係合片と、他方のカバー片に設けられた、凸部を挿入可能な係合孔が形成された第2係合片とから成り、ヤットコとも称される間接工具によって、第1係合片と第2係合片とを挟着し、凸部を係合孔に挿入させて係合片同士を係合させるクランパーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2946329号公報
【特許文献2】特許第3714738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、クランプカバーを間接活線工法によって引留クランプに装着する作業は、次のような方法で行われている。まず、一方のカバー片に設けられた把持片(特許文献1に開示されるクランプカバーにおいては、一方のカバー片の正面壁から突出した摘み片)を、間接工具の挟着部で挟持することによって、クランプカバーを間接工具で把持し、その状態で間接工具を移動させることによって、クランプカバーを引留クランプの上方から被せ、さらに、引留クランプがカバー片の凹所内の適所に納まるように、クランプカバーを配置する。
【0006】
次に、間接工具を操作して挟着部による把持片の挟持を解除した後、半開き状態で引留クランプを跨いでいるクランプカバーの第1係合片と第2係合片とを、間接工具の挟着部で順次挟着して係合させることによって、一対のカバー片における下縁部同士および側縁部同士を閉塞して、装着作業が完了する。
【0007】
このように、間接活線工法によりクランプカバーを装着する際には、クランプカバーを引留クランプの上方から被せた後、係合片同士を係合させるために、クランプカバーの第1係合片と第2係合片とを間接工具の挟着部によって挟着したとき、各カバー片の下縁部同士がずれてしまい、下縁部同士を対向した位置に正確に位置決めできない場合がある。
【0008】
この場合、間接工具による各係合片の挟持を一端解除した後、再度、各係合片を挟着部で挟持することによって、各下縁部同士が正確に対向した位置で噛み合うように挟持する作業が必要となり、装着作業に手間がかかってしまい、装着作業の作業効率を著しく低下させるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、間接活線工法によって引留クランプへ装着する際の作業を安全に行うことができ、さらに装着作業を効率よく短時間で行うことができるクランプカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一方の電線の端部と他方の電線の端部とを保持する引留クランプに装着され、絶縁性を有する合成樹脂から成り、前記引留クランプを収容する収容空間を規定する2つのカバー体を有するクランプカバー装置であって、
一方カバー体の一側縁部と他方カバー体の一側縁部との間に設けられ、前記一方カバー体と前記他方カバー体とを共通な軸線まわりに角変位可能に連結するヒンジ部と、
前記一方カバー体と他方カバー体とが前記引留クランプ全体を覆っているときに、前記一方カバー体の他側縁部に重なるように、前記他方カバー体の他側縁部に設けられた突出片と、を備え
前記突出片は、前記一方カバー体の前記他側縁部の、前記一方カバー体と前記他方カバー体とを角変位させたときの移動経路から外側に立上がる案内面を有し、前記他方カバー体の他側縁部に沿って延びて設けられていることを特徴とするクランプカバー装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絶縁性を有する合成樹脂から成る2つのカバー体によって規定される収容空間に、一方の電線の端部と他方の電線の端部とを保持する引留クランプが収容される。一方カバー体の一側縁部と他方カバー体の一側縁部とは、ヒンジ部によって共通な軸線まわりに角変位可能に連結される。他方カバー体の他側縁部には、一方カバー体と他方カバー体とが引留クランプ全体を覆っているときに、一方カバー体の他側縁部に重なる突出片が設けられる。
【0012】
突出片が一方カバー体に設けられることによって、間接工具によって一方カバー体と他方カバー体とを引留クランプ全体を覆うように挟着したとき、一方カバー体の他側縁部に対して他方カバー体の他側縁部が重なる位置からずれても、突出片に他方カバー体の他側縁部が一方カバー体の他側縁部に重なる位置へ案内され、確実に各カバー体を引留クランプに装着することができる。これによって、間接活線工法によって引留クランプへ装着する際の作業を安全に行うことができ、さらに、装着作業を効率よく短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るクランプカバー装置1の断面図である。
図2】クランプカバー装置1の先端部2付近の拡大断面図である。
図3図2の切断面線III−IIIから見た断面図である。
図4】クランプカバー装置1の開状態の右側面図である。
図5】クランプカバー装置1が耐張碍子3および引留クランプ4に装着された状態を示す断面図である。
図6】他方カバー体12を示す図であり、図6(1)は他方カバー体12の平面図であり、図6(2)は他方カバー体12の正面図であり、図6(3)は他方カバー体12の底面図であり、図6(4)は図6(2)に示される他方カバー体12を下方から見た断面図である。
図7】他方カバー体12を図1の切断面線VII−VIIから見た拡大断面図である。
図8】他方カバー体12を図1の切断面線VIII−VIIIから見た拡大断面図である。
図9】他方カバー体12を図1の切断面線IX−IXから見た拡大断面図である。
図10】クランプカバー装置1を図1の切断面線X−Xから見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係るクランプカバー装置1の断面図であり、図2はクランプカバー装置1の先端部2付近の拡大断面図であり、図3図2の切断面線III−IIIから見た断面図である。図4はクランプカバー装置1の開状態の右側面図であり、図5はクランプカバー装置1が耐張碍子3および引留クランプ4に装着された状態を示す断面図である。本実施形態のクランプカバー装置1は、アルミ電線などの架空配電線5を引留めるために、電柱などの構造物に耐張碍子3を介して取り付けられた引留クランプ4に対して、ヤットコとも呼ばれる間接工具を用いた間接活線工法によって装着可能に構成されている。
【0015】
まず、本実施形態のクランプカバー装置1の装着対象である引留クランプ4および耐張碍子3について説明する。引留クランプ4は、所定の張力で張設された架空配電線5を、電柱などの構造物の近傍において挟持(クランプ)し、耐張碍子3に引き留めるために用いられる部材であり、鋳鉄またはアルミニウムなどの金属材料によって構成されている。このような引留クランプ4によって、一方の電線の端部と他方の電線の端部とを保持する。
【0016】
耐張碍子3は、大略的に円柱状に形成された磁器本体31と、棒状の軸部32aおよび軸部32aの一端に一体的に設けられた円環状の環状部32bとを有する連結金具32とを備える。連結金具32は、軸部32aが、磁器本体31における中央部を通って、磁器本体31の中心軸線に平行に延び、かつ、環状部32bが磁器本体31における軸線方向の一方側の端部よりも外方に配置されて、磁器本体31に固設されている。
【0017】
このような耐張碍子3は、電柱などの構造物に対して、磁器本体31の中心軸線が略水平に延び、かつ、一端部とは反対側の他端部が、その構造物側に配置されるような姿勢で設置される。
【0018】
引留クランプ4は、その長手方向の一方側に、耐張碍子3における環状部32bに形成された透孔35の軸線まわりに回動自在に、その環状部32bに対して連結された、たとえばコッタピンおよびコッタボルトを備える連結部21が設けられる。引留クランプ4の長手方向の他方側には、架空配電線5を挟持するための挟持部22、およびシメラーあるいは張線器などとも称される緊線工具を取り付けるための係止孔23aが形成された係止部23が設けられて構成される。
【0019】
係止部23は、挟持部22の下側に設けられており、係止孔23aは、引留クランプ4と耐張碍子3とを連結した状態において、耐張碍子3における磁器本体31の軸線方向および鉛直方向のいずれにも垂直な方向に貫通するように形成されている。この係止部23は、架空配電線5の張設作業を行うために設けられているものであり、張設作業後には利用されないものである。
【0020】
クランプカバー装置1は、引留クランプ4に設けられた係止部23を有効利用することにより、間接活線工法によって引留クランプ4へ装着する際の作業を安全に行うことができ、さらに装着作業を効率よく短時間で行うことができるように構成される。以下にその具体的な構造について説明する。
【0021】
クランプカバー装置1は、閉状態としたものを図1の正面側から見たときに、左側に配置される一方カバー体11と、右側に配置される他方カバー体12と、一方カバー体11の一側縁部である上側縁部11aと他方カバー体12の一側縁部である上側縁部12aとに連なり、一方カバー体11と他方カバー体12とを所定の軸線まわりに回動可能に連結する長尺状のヒンジ部13と、一方カバー体11の他側縁部である下側縁部11bと他方カバー体12の他側縁部である下側縁部12bとを着脱可能に係合する2つの下係合部14と、一方カバー体11の下側縁部11bにおいて2つの下係合部14間に設けられ、ヤットコとも称される間接工具によって挟持可能な挟持片16とを有する。
【0022】
このようなクランプカバー装置1は、絶縁性を有する樹脂の一体成形によって形成することができる。絶縁性を有する合成樹脂としては、たとえばポリエチレンまたは難燃性エラストマなどを用いることができる。
【0023】
図6は他方カバー体12を示す図であり、図6(1)は他方カバー体12の平面図であり、図6(2)は他方カバー体12の正面図であり、図6(3)は他方カバー体12の底面図であり、図6(4)は図6(2)に示される他方カバー体12を下方から見た断面図である。前述のクランプカバー装置1において、一方カバー体11と他方カバー体12とが引留クランプ4に装着されて全体を覆っている状態で、一方カバー体11の下側縁部11bに重なるように、他方カバー体12の下側縁部12bに突出片19が設けられる。このような突出片19によって、各カバー体11,12の下係合部14を間接工具によって挟着したと、各下側縁部11b,12b間にすれが生じても、突出片19によって他方カバー体12の下側縁部12bに一方カバー体11の下側縁部11bが重なるように案内されて、嵌着される。
【0024】
各カバー体11,12において、上側縁部11a,12aは、直線状に延設され、クランプカバー装置1を引留クランプ4へ装着した状態において、クランプカバー装置1の上部に配置される。また、下側縁部11b,12bは、クランプカバー装置1の先端部2から図1の左方である背後側に向かって、上側縁部11a,12aから離反するように延設され、クランプカバー装置1を引留クランプ4へ装着した状態において、クランプカバー装置1の下部に配置され、ほぼ水平に延びる。したがって、上側縁部11a,12aは、クランプカバー装置1を引留クランプ4へ装着した状態において、先端部2から背後に向かって上方へ傾斜して延びる。
【0025】
ここで、クランプカバー装置1において、「閉状態」とは、一方カバー体11の下側縁部11bと他方カバー体12の下側縁部12bとが対向し、内部空間が閉鎖された状態をいう。また「開状態」とは、一方カバー体11の下側縁部11bと他方カバー体12の下側縁部12bとが離反し、内部空間が閉鎖された状態をいう。なお、図4では、一方カバー体11と他方カバー体12とがヒンジ部13の軸線まわりに180°度回動させた開状態を示している。
【0026】
一方カバー体11は、閉状態で図1の右側から見たときに、左方に向かって開放した凹状体を成し、他方カバー体12は、閉状態で図1右側から見たときに、右方に向かって開放した凹状体を成す。各カバー体11,12は、閉状態において、上側縁部11a,12a同士が対向し、下側縁部11b,12b同士が隣接して重なるように構成されている。各カバー体11,12は、閉状態において、内部空間内に引留クランプ4が嵌まり込んだ状態で収容され、各カバー体11,12内での変位が阻止されている。
【0027】
クランプカバー装置1は、閉状態において、引留クランプ4の挟持部22によって挟持された架空配電線5の導入側の端部5aを挿通可能な導入側開口27と、引留クランプ4の挟持部22によって挟持された架空配電線5の導出側の端部5bを挿通可能な導出側開口28とを有する。
【0028】
図7は他方カバー体12を図1の切断面線VII−VIIから見た拡大断面図であり、図8は他方カバー体12を図1の切断面線VIII−VIIIから見た拡大断面図であり、図9は他方カバー体12を図1の切断面線IX−IXから見た拡大断面図であり、図10はクランプカバー装置1を図1の切断面線X−Xから見た断面図である。突出片19は、他方カバー体12の下側縁部12bから一方カバー体11の下側縁部11bの、一方カバー体11と他方カバー体12との角変位時の移動経路mから外側に立上がる案内面19aを有し、かつ他方カバー体12の下側縁部12bに沿って延びる。このような構成によって、間接工具によって挟着される下係合部14近傍のより大きな変形を許容し、一方カバー体11の下側縁部11bを他方カバー体12の下側縁部12bに重なるように案内することができる。
【0029】
本実施形態のクランプカバー装置1によれば、絶縁性を有する合成樹脂から成る2つのカバー体11,12によって規定される収容空間に、一方の架空配電線5の端部5aと他方の架空配電線5bの端部とを保持する引留クランプ4が収容される。一方カバー体11の上側縁部11aと他方カバー体12の上側縁部12aとは、ヒンジ部13によって共通な軸線まわりに角変位可能に連結される。他方カバー体12の下側縁部12bには、一方カバー体11と他方カバー体12とが引留クランプ4全体を覆っているときに、一方カバー体11の下側縁部11bに重なる突出片19が設けられる。
【0030】
突出片19が他方カバー体12に設けられることによって、間接工具によって一方カバー体11と他方カバー体12とを引留クランプ4全体を覆うように挟着したとき、一方カバー体11の下側縁部11bが他方カバー体12の下側縁部12bに重なる位置からずれても、突出片19によって他方カバー体12の下側縁部12bに一方カバー体11の下側縁部11bが重なる位置へ案内され、確実に各カバー体11,12を引留クランプ4に装着することができる。これによって、間接活線工法によって引留クランプ4へ装着する際の作業を安全に行うことができ、さらに、装着作業を効率よく短時間で行うことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 クランプカバー装置
2 先端部
3 引留クランプ
4 耐張碍子
5 架空配電線
11 一方カバー体
11a,12a 上側縁部
11b,12b 下側縁部
12 他方カバー体
13 ヒンジ部
16 挟持片
19 突出片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10