特許第6882775号(P6882775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882775
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】モータユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/06 20060101AFI20210524BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   F16H1/06
   H02K7/10 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-526210(P2017-526210)
(86)(22)【出願日】2016年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2016064394
(87)【国際公開番号】WO2017002465
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年5月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-131244(P2015-131244)
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】アダマンド並木精密宝石株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 徳和
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 琴也
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−084924(JP,A)
【文献】 特開2010−098795(JP,A)
【文献】 実開平04−076937(JP,U)
【文献】 特開2010−136590(JP,A)
【文献】 特開2005−048806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/06
H02K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に、ロータ軸の前側に駆動歯車を設けたモータと、前記ロータ軸と略平行に設けられ前記前側に対する後側に略円筒状の従動歯車を有する出力軸と、前記駆動歯車から前記従動歯車へ回転力を伝達する複数の平歯車とを具備し、
前記複数の平歯車の各々を、前側の大歯車と後側の小歯車からなる一体状に構成し、これら複数の平歯車を、隣接する大歯車と小歯車とを噛み合わせるようにして前記ロータ軸の前側から前記出力軸の後側へ向かう階段状に配置するとともに、前記駆動歯車、前記複数の平歯車および前記従動歯車を、軸方向の一方側から視てS字状に並ぶように配置し
前記出力軸における前記従動歯車よりも後側に、永久磁石を有する磁性回転体を設け、前記磁性回転体の近傍に、前記磁性回転体の磁極を検知する磁気検出部を設け、
前記出力軸を回転自在に支持する軸受部材を、前記従動歯車よりも前側と、同従動歯車よりも後側とにそれぞれ設け、前記出力軸の後端側を、後側の前記軸受部材よりも後方へ突出させるとともに、この突出部分に前記磁性回転体を設け、
前記磁性回転体よりも後側における前記ケースの内面に、前記モータの駆動電力を制御する制御基板を設け、前記制御基板に前記磁気検出部を設け、
前記出力軸に過剰な回転負荷が作用した際に、前記従動歯車と前記出力軸との回転力の伝達経路を切断するクラッチ装置を構成する入力ディスク及び出力ディスクを、前記従動歯車の内側に配置していることを特徴とするモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、人型ロボットや、その他の産業用ロボット、遠隔操作式の模型、産業機器、医療機器等に搭載されるモータユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるもののように、ケース(11a,11b)内に、ロータ軸(回転軸13a)の前側に駆動歯車(モータピニオン14)を有するモータ(13)と、ロータ軸と略平行に設けられた出力軸(25)と、ロータ軸の回転力を出力軸へ伝達する遊星歯車装置(20)とを具備し、駆動歯車の突出方向と逆方向に出力軸を突出させるようにしたサーボモータがある。なお、括弧内の数値は、特許文献1中の符号を示す。
【0003】
この従来技術によれば、ケース内に、遊星歯車装置を組み込むようにしているため、多数の遊星ギヤ(23)等の構成が複雑であり、組立性等の改善が求められる。また、駆動歯車の突出方向と同方向に出力軸を突出させようとした場合には、駆動歯車の回転力を遊星歯車装置の後端側へ伝達させる他の歯車等を要するため、ケースが大型化してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−292200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、小型で生産性に優れたモータユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための一手段は、ケース内に、ロータ軸の前側に駆動歯車を設けたモータと、ロータ軸と略平行に設けられ、前側に対する後側に従動歯車を有する出力軸と、駆動歯車から従動歯車へ回転力を伝達する複数の平歯車とを具備する。そして、複数の平歯車の各々を、前側の大歯車と後側の小歯車からなる一体状に構成し、これら複数の平歯車を、隣接する大歯車と小歯車とを噛み合わせるようにしてロータ軸の前側から出力軸の後側へ向かう階段状に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成されているので、小型で生産性に優れたモータユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るモータユニットの一例を示す斜視図である。
図2】同モータユニットの内部構造を示す斜視図である。
図3】同内部構造を示す側面図である。
図4】同内部構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態の一つは、ケース内に、ロータ軸の前側に駆動歯車を設けたモータと、ロータ軸と略平行に設けられ前側に対する後側に従動歯車を有する出力軸と、駆動歯車から従動歯車へ回転力を伝達する複数の平歯車とを具備している。そして、複数の平歯車の各々を、前側の大歯車と後側の小歯車からなる一体状に構成し、これら複数の平歯車を、隣接する大歯車と小歯車とを噛み合わせるようにしてロータ軸の前側から出力軸の後側へ向かう階段状に配置したことを特徴としている。
この構成によれば、ケース内の限られたスペースを有効に利用して回転力を伝達することができる上、構造が簡素なので組立性も良好である。
【0010】
他の特徴としては、ケース内のスペースをより有効に利用するために、駆動歯車、複数の平歯車および従動歯車を、軸方向の一方側から視てS字状に並ぶように配置した。
【0011】
他の特徴としては、回転抵抗の少ない簡素な構造により出力軸の回転位置を検出できるように、出力軸における従動歯車よりも後側に、永久磁石を有する磁性回転体を設け、この磁性回転体の近傍に、磁性回転体の磁極を検知する磁気検出部を設けた。
【0012】
他の特徴としては、出力軸を安定的に支持するために、出力軸を回転自在に支持する軸受部材を、従動歯車よりも前側と、同従動歯車よりも後側とにそれぞれ設け、出力軸の後端側を、後側の軸受部材よりも後方へ突出させるとともに、この突出部分に磁性回転体を設けた。
【0013】
他の特徴としては、ケース内のスペースをより有効に利用するために、磁性回転体よりも後側におけるケースの内面に、モータの駆動電力を制御する制御基板を設け、この制御基板に磁気検出部を設けた。
【実施例】
【0014】
次に、上記特徴を有する好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
このモータユニットAは、ケース10内に、ロータ軸21の前側に駆動歯車22を設けたモータ20と、ロータ軸21と略平行に設けられ前側に対する後側に従動歯車33を有する出力軸30と、駆動歯車22から従動歯車33へ回転力を伝達する複数の平歯車41,42,43,44とを具備している。
なお、本明細書中、「前側」とは、ロータ軸21の軸方向において駆動歯車22を有する側を意味するものとする。
【0016】
ケース10は、前端面を開口した中空矩形箱状のケース本体11と、このケース本体11の開口部を閉鎖するようにして着脱可能に装着される蓋部材12とから構成される。ケース本体11及び蓋部材12は、それぞれ合成樹脂材料によって一体成形されている。
【0017】
モータ20は、円筒状のケーシング22と、このケーシング22の内周面に固定されたステータ及びコイル(図示せず)と、ステータ内で回転するように支持されたロータ(図示せず)と、このロータの中心部に固定されるとともに前端側を前方へ突出させたロータ軸21とを具備し、ブラシレスDCモータを構成している。
そして、このモータ20のロータ軸21の前端側には、同軸状に駆動歯車22が固定される。この駆動歯車22は平歯車であり、後述する平歯車41の大歯車Lに噛み合っている。
【0018】
出力軸30は、ケース10内において、モータ20のロータ軸21に対し、直交方向へ間隔を置いて略平行に配置され、ケース10の内壁面によって回転自在に支持されている。
この出力軸30の外周部には、前側から順に、出力歯車31、前側軸受部材32、従動歯車33、後側軸受部材34、磁性回転体35が、環状に固定されている。
【0019】
出力歯車31は、図示例によれば平歯車であり、ケース10の前端面から前方へ突出し露出している。この出力歯車31は、図示例によれば、出力軸30と一体の部材として構成される。なお、他例としては、それぞれ別体の出力軸30と出力歯車31を連結するようにしてもよい。
また、この出力歯車31は、モータユニットAによる駆動対象物(図示せず)の態様に応じて、例えば、ウォームギヤやはすば歯車等、他の種類の歯車に置換することが可能である。
【0020】
前側軸受部材32及び後側軸受部材34は、ボールベアリングやすべり軸受け等の周知の軸受部材である。前側軸受部材32は、軸受ブラケット等を介してケース10内面に固定され、その内周部により、出力軸30における従動歯車33よりも前側の部分を回転自在に支持している。略同様に、後側軸受部材34は、軸受ブラケット等を介してケース10内面に固定され、その内周部により出力軸30における従動歯車33よりも後側の部分を回転自在に支持している。
【0021】
従動歯車33は、出力軸30の外周部に支持された略円筒状の平歯車である。この従動歯車33は、後述する平歯車44の小歯車Sに噛み合っており、この小歯車Sから回転力を受ける。
なお、図中符号60は、出力軸30に過剰な回転負荷が作用した際に、従動歯車33と出力軸30との回転力の伝達経路を切断するクラッチ装置である。このクラッチ装置60は、回転負荷により切断される入力ディスク及び出力ディスク等を従動歯車33内に配置している。
【0022】
磁性回転体35は、径方向の片半部側をN極とし、他半部側をS極とした略円盤状の2極(換言すれば極対数が1)の永久磁石である。この磁性回転体35の他例としては、極対数が複数の態様とすることも可能である。
【0023】
そして、上記構成の磁性回転体35よりも後側には、ケース本体11の底部に、制御基板50が固定されている。この制御基板50は、モータ20の駆動電力を制御する駆動回路や、磁性回転体35を検知するための複数の磁気検出部36等を一体的に具備している。
磁気検出部36は、検出される磁束に応じた電圧信号を出力するホール素子である。この磁気検出部36は、磁性回転体35の後端面に対向するように、制御基板50上に2つ設けられる。これら2つの磁気検出部36は、周方向に角度90°間隔を置いて配置され、磁性回転体35の磁極位置に応じた正弦波信号を出力する。
【0024】
また、平歯車41,42,43,44の各々は、前側の大歯車Lと、後側の小歯車Sとを同軸一体状に連結してなる。各平歯車における大歯車Lと小歯車Sの外径は、ロータ軸21と出力軸30の間の減速比に応じて適宜に設定される。
これら平歯車41,42,43,44は、水平方向に隣接する大歯車Lと小歯車Sとを噛み合わせるようにして、ロータ軸21の前側から出力軸30の後側へ向かう階段状に配置される。
【0025】
さらに、これら平歯車41,42,43,44は、図4に示すように、ロータ軸21の軸方向の一方側から平面視した際に、駆動歯車22と従動歯車33の間における回転力の伝達経路がS字状にカーブするように配置される。そして、これら平歯車41,42,43,44は、それぞれ、ケース10の内面又はモータ20のケーシング等に対し、回転軸等を介して回転自在に支持される。
【0026】
これら平歯車41,42,43,44の配置について詳細に説明すれば、最もロータ軸21側の平歯車41は、ロータ軸21と出力歯車31とを結ぶ仮想平面に対し、交差方向の一方側(図4における上側)に位置し、その前部側の大歯車Lを駆動歯車22に噛み合わせている。
次の平歯車42は、平歯車41よりも更に一方側に位置し(図4参照)、その前側の大歯車Lを平歯車41の小歯車Sに噛み合わせている(図3参照)。
次の平歯車43は、平歯車42よりも一方側に対する他方側(図4における下側)に位置し、その前側の大歯車Lを平歯車42の小歯車Sに噛み合わせている(図3参照)
最も出力歯車31側の平歯車41は、上記仮想平面に対し、一方側に対する他方側(図4における下側)に位置し、その前部側の大歯車Lを平歯車43の小歯車Sに噛み合わせるとともに、その後部側の小歯車Sを従動歯車33に噛み合わせている(図3参照)。
【0027】
上記構成のモータユニットAによれば、上述したように複数の平歯車41,42,43,44を階段状且つ略S字状に配置して、これら複数の平歯車を密集させるとともに、これら平歯車群の後方側に、磁性回転体35や、磁気検出部36を有する制御基板50等を配置するようにしたため、ロータ軸21と出力軸30との間のスペースや、ケース10内における平歯車群の後方側のスペース等を有効活用することができる。
しかも、大歯車Lと小歯車Sを同方向へ向けて複数の平歯車41,42,43,44を噛み合わせるようにしたため、製造時には、後側から順番に、平歯車44、平歯車43、平歯車42、平歯車41を組付ければよく、生産性が良好である。
また、出力軸30と一体の磁性回転体35を、磁気検出部36によって非接触で感知するようにしているため、例えばポテンショメータを用いた従来技術等に比較し、軸方向の突出寸法を減らせる上、回転抵抗も小さくすることができる。
さらに、上述した従動歯車33及び磁性回転体35等の配置により、出力軸30を安定的に支持することができる。
【0028】
なお、上記実施例によれば、モータ20としてブラシレスDCモータを構成したが、他例としては、モータ20をブラシモータ等の他の種類のモータとすることも可能である。
【0029】
また、上記実施例によれば、4つの平歯車41,42,43,44を設けたが、他例としては平歯車の数を、6以上や5以下に設定することも可能である。
【0030】
また、上記実施例によれば、磁気検出部36としてホール素子を用いたが、磁気検出部36の他例としては、磁気式エンコーダや、その他のセンサーを用いることも可能である。
【0031】
また、上記実施例によれば、磁気検出部36の数を二つとしたが、磁性回転体35の回転位置検知方法等に応じて、磁気検出部36の数を、単数や三以上とすることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
10:ケース
20:モータ
21:ロータ軸
22:駆動歯車
30:出力軸
32:前側軸受部材
33:従動歯車
34:後側軸受部材
35:磁性回転体
36:磁気検出部
41,42,43,44:平歯車
50:制御基板
60:クラッチ装置
A:モータユニット
L:大歯車
S:小歯車
図1
図2
図3
図4