【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない場合、%は質量%を示す。
【0041】
〔参考例1:ウエスタンブロッティング法による胃がん細胞株のHER2発現の検討〕
1.実験材料および方法
(1)使用細胞
ヒト胃がん細胞株として、MKN1(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB1003)、MKN7(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB0999)、MKN45(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB1001)、MKN74(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB1002)、GLM1(Nakanishi, H., K. Yasui, Y. Ikehara, H. Yokoyama, S. Munesue, Y. Kodera and M. Tatematsu. "Establishment and Characterization of Three Novel Human Gastric Cancer Cell Lines with Differentiated Intestinal Phenotype Derived from Liver Metastasis." Clin Exp Metastasis 22, no. 2 (2005): 137-47.)、GLM2(同上)、GLM4(Yokoyama, H., Y. Ikehara, Y. Kodera, S. Ikehara, Y. Yatabe, Y. Mochizuki, M. Koike, M. Fujiwara, A. Nakao, M. Tatematsu and H. Nakanishi. "Molecular Basis for Sensitivity and Acquired Resistance to Gefitinib in Her2-Overexpressing Human Gastric Cancer Cell Lines Derived from Liver Metastasis." Br J Cancer 95, no. 11 (2006): 1504-13.)、AGS(ATCC番号:CRL−1739)、KATOIII(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB2088)、HGC27(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB0500)を用いた。GLM1、GLM2およびGLM4は、愛知県がんセンター研究所から供与を受けた。
対照として、乳がん細胞株MCF7(理化学研究所バイオリソースセンター番号:RCB1904)を用いた。MCF7はHER2の発現レベルが低いことが知られている。
細胞は100mm細胞培養用ディッシュで培養した。培地には、各細胞に適した公知の培地を選択して使用した。
【0042】
(2)タンパク質抽出液の調製
細胞を培養しているディッシュの培地を廃棄し、PBSで2回洗浄した。プロテアーゼインヒビター(Roche社、Complete Mini)を加えたRIPAバッファー(10mM Tris-HCl、pH7.4 150mM NaCl、1% NP40、0.1% SDS、0.1% sodium deoxycholate (DOC)、1mM EDTA、1mM Na
3VO
4、2mM PMSF)をディッシュに加え細胞を溶解し、スクレイパーで細胞溶解液を掻き取り、回収した。得られた細胞溶解液を遠心分離し(14,000rpm, 4℃, 30min)、上清をタンパク質抽出液として−80℃で保存した。使用時に融解して試験に供した。
【0043】
(3)ウエスタンブロッティング
上記(2)で調製した各細胞のタンパク質抽出液のタンパク質濃度をPIERCE BCA Protein Assay Kit(ThermoFischer Scientific社)を用いて定量した。タンパク質濃度が15μg/レーンになるようにサンプルバッファー(ナカライテスク社、Sample Buffer Solution with Reducing Reagent(6x) for SDS-PAGE)で希釈し、SDS−PAGEに供した。トランスブロットTurbo転写システム(BIO-RAD社)を用いて、PVDF膜に転写した。抗HER2抗体(CST社 HER2/ErbB2 Antibody)、2次抗体(GE healthcare社 ECL Rabbit IgG, HRP-linked whole Ab from donkey)、抗β−Actin抗体(CST社 β-Actin (13E5) Rabbit mAb HRP Conjugate)の各抗体を用いて免疫ブロットを行った。発色剤にはImmobilon Western(Merck Millipore社)を使用した。撮影は、Chemidoc XRS+(BIO-RAD社)で行った。
【0044】
(4)デンシトメトリーによる定量
撮影した画像をImage Labソフトウェア(BIO-RAD社)で解析し、各バンドのシグナル強度を得た。リコンビナントHER2タンパク(SignalChem社, HER2, Active, E27-11G, 分子量131)を用いて検量線を作成し、この検量線に基づいて各タンパク質抽出液のHER2濃度を求めた。
【0045】
2.結果
結果を
図2に示した。上段がウエスタンブロッティングでHER2タンパク質を検出した結果、中段がウエスタンブロッティングでβ−アクチンを検出した結果、下段がHER2タンパク質のウエスタンブロッティング画像に基づいて、デンシトメトリーによりHER2タンパク質を定量した結果である。これらの結果から、MKN7、GLM1、GLM2およびGLM4のHER2発現レベルが高いことが明らかになった。
【0046】
〔実施例1:テストストリップの作製(1)〕
1−1 ストリップ材料
メンブレンには、ニトロセルロースメンブレンカード(Merck Millipore社、HF120MC100、60mm×301mm)を使用した。コンジュゲートパッドには、グラスファイバーパッド(Merck Millipore社、GFCP103000)を使用した。サンプルパッドおよび吸収パッドには、セルロースパッド(Merck Millipore社、CFSP173000)を使用した。
【0047】
1−2 使用抗体
第一の抗HER2タンパク質抗体(以下、「第一抗体」と記す)には、抗HER2マウスモノクローナル抗体(HER-2/ErbB2 Monoclonal Antibody (N24)、Thermo Scientific社、MA1-12691)を使用した。第二の抗HER2タンパク質抗体(以下、「第二抗体」と記す)には、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)注射用60、中外製薬製)を使用した。コントロール抗体には、抗マウスIgG抗体(Goat anti-Mouse IgG Secondary Antibody、Thermo Scientific社、PA1-28555)を使用した。抗体の希釈には、Antibody Stabilizer Based on PBS(CANDOR Bioscience社、131050、以下「抗体希釈液」と記す)を使用した。
【0048】
1−3 第二抗体の固相化
ハーセプチン(登録商標)注射用60を添付文書のとおりに溶解し、21mg/mLのトラスツズマブ溶液を調製した。これを抗体希釈液で希釈し、所望の濃度のトラスツズマブ溶液を調製した。抗マウスIgG抗体を抗体希釈液で希釈して0.5mg/mLのコントロール抗体溶液を調製した。各抗体溶液1μLをマイクロピペットを用いてメンブレンに添着させ、37℃で120分間乾燥させた。
【0049】
1−4 コンジュゲートパッドの作製
1−4−1 第一抗体の金コロイド標識
抗HER2マウスモノクローナル抗体の金コロイド標識には、金コロイド標識キット(BBI GoldLink Kits、BBInternational社、GLK 10.40)を用いた。キットのプロトコールに従って金コロイド標識を行い、溶液50μL中に抗体1μgを含む金コロイド標識第一抗体の溶液を得た。
1−4−2 コンジュゲートパッドの作製
得られた金コロイド標識第一抗体の溶液1容に対して、塗布バッファー(5%スクロース, 2mMホウ酸溶液)25容を添加して希釈し、これをコンジュゲートパッド(Glass Fiber Conjugate Pad)に均一に染み込ませた。テストストリップ1枚あたりのコンジュゲートパッド(5mm×10mm)に含まれる、上記手法により得られた金コロイド標識第一抗体の溶液量が1μLになるように、コンジュゲートパッドの面積と染み込ませる抗体溶液量を適宜調整した。その後、コンジュゲートパッドを水平に保った状態で、室温で一夜乾燥させた。
【0050】
1−5 サンプルパッドの作製
BSA(和光純薬、015-21274)をPBS(PBSタブレット(タカラバイオ)を超純水で溶解したもの)で溶解し、5%BSA/PBSを調製した。これをサンプルパッド(Cellulose Fiber Sample Pad)に均一に染み込ませた。テストストリップ1枚あたりのサンプルパッド(5mm×17mm)に、60μLの5%BSA/PBSが含まれるように、サンプルパッドの面積と染み込ませる液量を適宜調整した。その後、サンプルパッドを水平に保った状態で、室温で一夜以上かけて完全に乾燥させた。
【0051】
1−6 ハーフストリップの作製
ハーフストリップは、トラスツズマブとコントロール抗体(抗マウスIgG抗体)が固相化されたメンブレンおよび吸収パッドの2つで構成された予備検討用のストリップである。試料と金コロイド標識第一抗体を含む溶液にメンブレンの一端(吸収パッドが連結されていない方)を浸漬し、溶液を吸収パッドの方向に展開させて使用する。
ハーフストリップは以下の手順で作製した。
(1)メンブレンカードのサンプルパッドおよびコンジュゲートパッド貼付部を切り離す
(2)吸収パッドをメンブレンカードに貼付
(3)5mm幅に切断
(4)メンブレンにトラスツズマブを固相化(上記1−3参照)
(5)メンブレンに抗マウスIgG抗体を固相化(上記1−3参照)
【0052】
1−7 ラテラルフローストリップの作製
ラテラルフローストリップは以下方法の手順で作製した。
(1)吸収パッドをメンブレンカードに貼付
(2)金コロイド標識第一抗体を保持させたコンジュゲートパッドを、メンブレンカードに貼付
(3)BSAを保持させたサンプルパッドをコンジュゲートパッドに貼付
(4)5mm幅に切断
(5)メンブレンにトラスツズマブを固相化(上記1−3参照)
(6)メンブレンに抗マウスIgG抗体を固相化(上記1−3参照)
以下の実施例において、第二抗体を固相化した領域を「テストライン」と称し、コントロール抗体を固相化した領域を「コントロールライン」と称する。
【0053】
〔実施例2:ハーフストリップによるHER2タンパク質の検出〕
1.実験材料および方法
(1)試料
参考例1で調製したタンパク質抽出液を使用した。使用した細胞は、MKN1、MKN7、MKN45、MKN74、AGS、KATOIII、HGC27、MCF7(ネガティブコントロール)である。
(2)ストリップ
実施例1で作製したハーフストリップを使用した。テストラインの抗体(トラスツズマブ)量は5μgとした。
(3)検出方法
96ウェルプレートを使用した。タンパク質抽出液からのタンパク質量が60μg/ウェル、BSA濃度が3%/ウェル、実施例1の1−4−1で調製した金コロイド標識第一抗体の溶液量が1μL/ウェル、ウェルあたりの液量が100μLになるように試料を調製した。ハーフストリップのメンブレンの一端を試料溶液中に浸漬して展開させ、テストラインおよびコントロールラインの着色を観察した。テストラインの着色が目視で確認できるものを陽性と判断した。
【0054】
2.結果
結果を
図3に示した。
図3の上段の数値は、上記参考例1においてデンシトメトリーで定量した各細胞株のタンパク質抽出液におけるHER2タンパク質濃度を示している。
図3から明らかなように、HER2発現レベルが高いMKN7で明瞭なシグナルを検出した。また、MKN74、KATOIIIおよびHGC27でも弱いシグナルを検出した。この結果から、ラテラルフローアッセイにより、HER2陽性胃がんの検出が可能であることが示された。
【0055】
〔実施例3:テストライン抗体量の検討〕
1.実験材料および方法
(1)試料
参考例1で調製したMKN7のタンパク質抽出液を使用した。
(2)ストリップ
実施例1で作製したハーフストリップを使用した。テストラインの抗体(トラスツズマブ)量が1、3、5、10または20μgである5種類を使用した。
(3)検出方法
実施例2と同じ方法で行った。
【0056】
2.結果
結果を
図4に示した。
図4から明らかなように、シグナル強度はテストラインの抗体量に依存して増強された。この結果は、テストラインの抗体量を増減させることにより検出感度を調節できることを示すものである。
【0057】
〔実施例4:ラテラルフローストリップによるHER2タンパク質の検出〕
1.実験材料および方法
(1)試料
参考例1で調製したMKN7およびMCF7(コントロール)のタンパク質抽出液を使用した。
(2)ストリップ
実施例1で作製したラテラルフローストリップを使用した。テストラインの抗体(トラスツズマブ)量は5μgとした。
(3)検出方法
タンパク質抽出液からのタンパク質量が200μg、液量が100μLとなるように試料を調製し、試料の全量をサンプルパッド部分に添加して展開させた。コントロールラインおよびテストラインの着色を目視で観察した。
【0058】
2.結果
結果を
図5に示した。
図5から明らかなように、MKN7ではコントロールラインおよびテストラインのシグナルが認められたが、MCF7ではテストラインのシグナルが認められなかった。
【0059】
〔参考例2:ウエスタンブロッティング法による胃がん細胞株のHER2発現の検討〕
1.実験材料および方法
(1)使用細胞(参考例1参照)
ヒト胃がん細胞株として、MKN1、MKN7、MKN45、MKN74、GLM1、GLM2、GLM4、AGS、HGC27を用いた。対照として、乳がん細胞株MCF7を用いた。
(2)タンパク質抽出液の調製
参考例1と同じ方法で、各細胞からそれぞれタンパク質抽出液を調製した。
(3)ウエスタンブロッティング
参考例1と同じ方法で、ウエスタンブロッティングを行った。
(4)ELISAによる定量
ErbB2/Her2 ELISA Kit(Novus Biologicals社、NBP1-84823)を用いて、各細胞から調製したタンパク質抽出液中のHER2タンパク質濃度を定量した。定量値は、溶液中のHER2タンパク質濃度ではなく、溶液中の単位タンパク質量あたりのHER2タンパク質量で表した。
【0060】
2.結果
結果を
図6に示した。上段がウエスタンブロッティングでHER2タンパク質を検出した結果、中段がウエスタンブロッティングでβ−アクチンを検出した結果、下段がELISAによりHER2タンパク質を定量した結果である。これらの結果から、GLM1およびGLM4のHER2発現レベルが非常に高く、次いでMKN7およびGLM2のHER2発現レベルが高いことが明らかになった。
【0061】
〔実施例5:テストストリップの作製(2)〕
5−1 ストリップ材料
メンブレンには、ニトロセルロース膜(Merck Millipore社、HF13504)を使用した。サンプルパッドおよびコンジュゲートパッドには、グラスファイバーパッド(Merck Millipore社、GFDX203000)を使用した。吸収パッドには、セルロースパッド(Merck Millipore社、CFSP223000)を使用した。
【0062】
5−2 使用抗体
実施例1で作製したテストストリップの第一抗体と第二抗体を逆にして、テストストリップを作製した。すなわち、第一抗体には、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)注射用60、中外製薬製)を使用した。第二抗体には、抗HER2マウスモノクローナル抗体(HER-2/ErbB2 Monoclonal Antibody (N24)、Thermo Scientific社、MA1-12691)を使用した。コントロール抗体には、抗マウスIgG抗体(Goat anti-Mouse IgG’s、日本製粉)を使用した。抗体の希釈には、実施例1と同じ抗体希釈液を使用した。
【0063】
5−3 第二抗体の固相化
抗HER2マウスモノクローナル抗体および抗マウスIgGをそれぞれ抗体希釈液で希釈して、0.1μg/μLの抗体溶液を調製し、スポット当たり1μLの抗体溶液をマイクロピペットを用いてメンブレンに添着させた(抗体0.1μg/スポット)。抗HER2マウスモノクローナル抗体は1箇所、抗マウスIgGは2箇所にスポットした。メンブレンを50℃で30分乾燥させた。続いて、メンブレンを、ブロッキングバッファー(0.5%カゼイン、50mMホウ酸、pH 8.5)に浸漬し、室温で30分間静置した。メンブレンを洗浄・安定化バッファー(0.5% スクロース、0.05% コール酸ナトリウム、50mM Tris-HCl、pH 7.5)に移して浸漬し、室温で30分以上静置した。メンブレンを引き上げ、ペーパータオル上に置き、室温で一晩乾燥させた。このようにして得られたメンブレンは、乾燥剤と共にアルミパウチに入れて保存することができる。
【0064】
5−4 コンジュゲートパッドの作製
5−4−1 第一抗体の金コロイド標識
トラスツズマブの金コロイド標識は、以下の手順で行った。
(1)ハーセプチン(登録商標)注射用60を添付文書のとおりに溶解し、蒸留水で希釈して70μg/mLのトラスツズマブ溶液を調製した。
(2)2mLの50mM KH
2PO
4(pH8.0)に金コロイド液(Gold Colloid 40nm、BBI solution社)18mLを加え、攪拌しながら2mLの上記トラスツズマブ溶液を添加した。
(3)さらに、1% PEG20000を1.1mL加え、攪拌した。
(4)8,000×gで15分間遠心分離し、上清が1mL程度残るように余分な上清を除去した。
(5)超音波洗浄機を用いて、残した上清に沈殿を分散させた。
(6)金コロイド保存バッファー(20mM Tris-HCl (pH8.2), 0.05% PEG 20,000, 150mM NaCl, 1%BSA, 0.1% NaN
3)20mLを加え、攪拌した。
(7)(4)および(5)を再度行った。
(8)2回目の(5)で得られた分散液50μLを分取し、金コロイド保存バッファー950μLを加えてOD520を測定した。
(9)金コロイド保存バッファーでOD520=6.0になるように調製し、金コロイド標識第一抗体の溶液を得た。
【0065】
5−4−2 コンジュゲートパッドの作製
上記調製した金コロイド標識第一抗体の溶液500μLに、蒸留水500μLと金コロイド塗布バッファー(20mM Tris-HCl (pH8.0), 0.05% PEG 20,000, 5% スクロース)1mLとを混合し、軽く攪拌した。グラスファイバーパッド(300mm)1枚あたり、上記混合液1.6mLを均等に塗布した。パッドをデシケーターに入れ室温で一夜以上かけて減圧乾燥を行った。乾燥後のコンジュゲートパッドは、シリカゲルを同封したビニール袋内で遮光保存することができる。
【0066】
5−5 ラテラルフローストリップの作製
縦60mm×横300mmのイムノクロマト用バッキングシートの上端から15mmのところに、縦25mm×横300mmのメンブレンの上端が来るように貼り付けた。メンブレンの下端はバッキングシートの下端から20mmとなる。次に、縦20mm×横300mmの吸収パッドの上端をバッキングシートの上端に合わせて貼り付けた。この際、吸収パッドはメンブレンと5mmほど重なる。次いで、縦8mm×横300mmのコンジュゲートパッドを、その下端がバックシートの下端から14mmの位置となるように貼り付けた。この際、コンジュゲートパッドの上端側2mmほどが、メンブレンシートの上に重なる。さらに、縦18mm×横300mmのサンプルパッドの下端をバックシートの下端に合わせて貼り付けた。この際、サンプルパッドの上端側は4mmが、コンジュゲートパッドの上に重なる。貼り合わせたシートを5mm幅に切断してラテラルフローストリップを作製した。作製したラテラルフローストリップは、シリカゲルと共にアルミパウチに入れ、室温で保存することができる。
【0067】
〔実施例6:胃がん細胞株由来タンパク質抽出液中のHER2タンパク質の検出〕
1.実験材料および方法
(1)試料
参考例2で調製した9種類のヒト胃がん細胞株由来のタンパク質抽出液を使用した。コントロールとして、参考例2で調製した乳がん細胞株MCF7由来のタンパク質抽出液を使用した。
(2)ストリップ
実施例5で作製したラテラルフローストリップを使用した。
(3)検出方法
タンパク質抽出液からのタンパク質量が2μg、液量が100μL(タンパク質濃度0.02mg/mL)となるように試料を調製し、試料の全量をサンプルパッド部分に添加して展開させた。コントロールラインおよびテストラインの着色を目視で観察した。
【0068】
2.結果
結果を
図7に示した。
図7の上段の数値は、上記参考例2においてELISAで定量した単位タンパク質量あたりのHER2タンパク質量を示し、
図7の中段の数値は、上段の数値に基づいて算出したストリップ当たりのHER2タンパク質量を示している。ストリップ当たりのHER2タンパク質量が10ngを超えると実施例5で作製したラテラルフローストリップで検出できる可能性が
図7より考えられた。
【0069】
〔実施例7:試料中のHER2タンパク質濃度の検討〕
1.実験材料および方法
(1)試料
参考例1で調製したGLM1のタンパク質抽出液を使用した。試料中の総タンパク質濃度(μg/mL)が0.2、0.02、0.002、0.0002および0.00002の5種類の試料を調製した。
(2)ストリップ
実施例5で作製したラテラルフローストリップを使用した。
(3)検出方法
各試料を100μLずつサンプルパッド部分に添加して展開させ、コントロールラインおよびテストラインの着色を目視で観察した。
【0070】
2.結果
結果を
図8に示した。
図8の上段の数値は試料中の総タンパク質濃度を示し、
図8の中段の数値はストリップ当たりのHER2タンパク質量を示している。ストリップ当たりのHER2タンパク質量が10ngを超えると実施例5で作製したラテラルフローストリップで検出できる可能性が
図8からも考えられた。
【0071】
〔実施例8:異種移植片(Xenograft)由来試料およびヒト生検試料中のHER2タンパク質濃度の検討〕
1.実験材料および方法
(1)異種移植片(Xenograft)由来試料の調製
GLM1およびMKN45をそれぞれヌードマウスの皮下に接種し、腫瘍を形成させた。上部消化管内視鏡検査時に使用する生検鉗子を用いて腫瘍組織からサンプルを採取し、重量を測定した後、液体窒素中で保存した。採取した組織にT−PER Tissue Protein Extraction Reagent(Thermo Scientific社)を加え、ホモジナイザー(ニッピ社, BioMasher II)でホモジナイズした。得られた組織溶解液を遠心分離し(10,000×g、4℃、5分間)、その上清をタンパク質抽出液として−80℃で保存した。使用時に融解して試験に供した。
(2)ヒト検体由来試料の調製
胃がん患者から採取した生検検体を使用した。HER2の免疫染色でHER2陽性であることを確認した症例の検体を使用した。対照として、同一患者の健常部の胃生検検体を使用した。上記(1)と同じ方法で、T−PER Tissue Protein Extraction Reagentを加えてホモジナイズ、遠心分離してタンパク質抽出液を調製し、−80℃で保存した。使用時に融解して試験に供した。
(3)ストリップ
実施例5で作製したラテラルフローストリップを使用した。
(4)検出方法
上記(1)、(2)で調製した各タンパク質抽出液のHER2濃度をErbB2/Her2 ELISA Kit(Novus Biologicals社、NBP1-84823)を用いて算出した。上記4サンプルを、超純水を用いてすべて200倍に希釈し、その100μLをサンプルパッド部分に添加して展開させた。コントロールラインおよびテストラインの着色を目視で観察した。
【0072】
結果を
図9に示した。
図9の上段の数値はストリップ当たりのHER2タンパク質量を示している。
図9から明らかなように、GLM1由来の異種移植片(Xenograft)およびヒト腫瘍部の生検検体において、HER2を検出することができた。この結果から、作製したストリップを用いて、腫瘍組織からのタンパク抽出液でもHER2タンパク質を検出できることが示された。
【0073】
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。