特許第6882783号(P6882783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882783
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】加湿器、呼吸補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/16 20060101AFI20210524BHJP
   A61M 16/08 20060101ALI20210524BHJP
   A61M 11/02 20060101ALI20210524BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20210524BHJP
   A61M 11/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   A61M16/16 A
   A61M16/08 330
   A61M16/16 Z
   A61M11/02 K
   A61M16/06 C
   A61M11/00 300A
【請求項の数】21
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-512019(P2018-512019)
(86)(22)【出願日】2017年4月11日
(86)【国際出願番号】JP2017014810
(87)【国際公開番号】WO2017179569
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2020年1月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-80251(P2016-80251)
(32)【優先日】2016年4月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-124251(P2016-124251)
(32)【優先日】2016年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000138060
【氏名又は名称】株式会社メトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】新田 一福
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−122671(JP,A)
【文献】 国際公開第03/061746(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/16
A61M 11/00
A61M 11/02
A61M 16/06
A61M 16/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の換気を調節又は補助する呼吸補助装置に接続して、ガス源から送気される気体に微粒子又は水蒸気の形で水分を加える加湿器であって、
少なくとも水を含む液体を収容する液体容器と、
前記液体の微粒子である霧滴を発生する霧滴発生手段と、
前記霧滴の少なくとも一部を保持する保水部材と、
を有してなり、
前記保水部材は、通気性を有すると共に、前記使用者側の一端が閉じられ且つ前記ガス源側の他端が開口される筒構造となっており、
前記気体が前記開口を介して前記保水部材の内部に進入し、該保水部材を通過して外部に放出されることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記保水部材は、前記呼吸補助装置が備える呼吸回路の吸気管内側の長手方向に沿って設けられ、前記保水部材の長さが50cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記霧滴、又は、前記保水部材に保持された水分、の少なくとも一方を加熱して、前記水蒸気へと気化させる液滴加熱手段を備えることを特徴とする請求項又は請求項2のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項4】
前記液滴加熱手段は、前記呼吸補助装置が備える呼吸回路の吸気管に内接又は外接して設けられることを特徴とする請求項〜請求項3のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項5】
前記液滴加熱手段は、前記保水部材に内接又は外接して設けられることを特徴とする請求項〜請求項4のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項6】
前記保水部材に保持された水分によって、前記気体の水蒸気圧を増大させることを特徴とする請求項〜請求項5のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項7】
前記保水部材は、交換可能であることを特徴とする請求項〜請求項6のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項8】
前記保水部材は、吸水性を持つことを特徴とする請求項〜請求項7のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項9】
前記保水部材は、不織布であることを特徴とする請求項1から〜請求項8のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項10】
前記気体の一部が、前記保水部材の内部を通過し、前記気体の残余が、前記保水部材の内部を通過しないことを特徴とする請求項〜請求項9のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項11】
前記保水部材の、前記ガス源側に開口された一端は、前記加湿器の内周面に接合され、該保水部材によって前記気体の流れる流路が閉鎖されていることを特徴とする請求項10に記載の加湿器。
【請求項12】
前記加湿器は、前記気体の流れる流路を有し、
該流路は、前記保水部材によって閉鎖され、
前記ガス源側であって前記液体容器及び前記霧滴発生手段が配設される上流側と、
前記使用者側となる下流側に、
前記保水部材によって隔離されていることを特徴とする請求項〜請求項11のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項13】
前記霧滴発生手段は、前記液体を加熱して前記液体に含まれる前記水を蒸発させる液体加熱手段を有することを特徴とする請求項〜請求項2のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項14】
前記霧滴発生手段は、前記液体を加熱して前記液体に含まれる前記水を蒸発させる液体加熱手段を有し、且つ、前記液体加熱手段が、前記液滴加熱手段と一体であることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項15】
前記霧滴発生手段が、前記液体を加振することで前記霧滴を発生させる超音波発生手段を有することを特徴とする請求項〜請求項14のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項16】
前記霧滴発生手段が、
振動発生手段と、
多数の微細孔を持つメッシュと
を備えることを特徴とする請求項〜請求項15のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項17】
前記霧滴発生手段が、圧縮空気を利用したジェット式霧滴発生手段を有することを特徴とする請求項〜請求項16のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項18】
前記保水部材は、さらに使用者の鼻腔に前記気体を送る鼻プロング近傍に配設されることを特徴とする請求項〜請求項17のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項19】
前記鼻プロングを支持するハウジングは、結露排水用の排水孔を少なくとも一つ備えることを特徴とする請求項18に記載の加湿器。
【請求項20】
前記保水部材は、少なくとも2つに分離して配設されることを特徴とする請求項〜請求項19のいずれか1項に記載の加湿器。
【請求項21】
請求項〜請求項20に記載する特徴を備える加湿器を有することを特徴とする、使用者の換気を調節又は補助する呼吸補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工呼吸器やCPAP(持続陽圧呼吸療法)装置、酸素吸入器などの呼吸補助装置から送気される気体を加湿する加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する呼吸活動は、人間の生命維持にとってなくてはならない。呼吸筋の麻痺や肺胞の虚脱などにより呼吸障害が生じた場合には、自発呼吸を補助するために、いわゆる人工呼吸器が使用される。人工呼吸器で使用者に送気される気体(医用ガス)は、圧縮空気や酸素ガスで構成されているが、これらはガスボンベや医用ガス配管設備から供給されるため、体温より低い温度であり、且つ、非常に乾燥している。そのため、そのままの温度と湿度で医用ガスを使用者の呼吸器系に供給すると、不快であるばかりでなく、気道粘膜の乾燥および損傷、痰の固化等を引き起こし、場合によっては肺炎を引き起こす原因にもなってしまう。このような障害を回避するため、人工呼吸器においては、吸気を加温加湿することが必要不可欠である。人工呼吸器の吸気の温度、湿度について共通した基準はないが、一般に、吸気については、温度は摂氏32度以上、相対湿度は75%から100%程度が適切とされており、特に気管挿管を行っている場合には、温度は摂氏37度、相対湿度100%が望ましいとされている。
【0003】
このため、人工呼吸器やCPAP(持続陽圧呼吸療法)装置、酸素吸入器などの、従来の呼吸補助装置には加湿器が備えられている(図10(A)参照)。呼吸補助装置1は、ガス源(ベンチレーター)280と、加湿器10と、呼吸回路105と、マスク260から主に構成される。ガス源(ベンチレーター)280から供給された医用ガスは、加湿器10で水分を含み、呼吸回路105を通じて使用者Pに供給される。
【0004】
現在使用されている加湿器の多くは、液体の水を加熱気化させることにより生じる水蒸気を、医用ガスに取り込ませて使用者に供給する方式である(例えば、特開2005−177521号公報参照)。図10(B)に、従来の加湿器の構造の一例を示す。加湿器10は加湿チャンバー220とヒーター290とコントローラ130から主に構成される。コントローラ130は、温度計100や使用者に近い温度計240(図10(A)参照)をモニタリングしながら、ヒーター290等をフィードバック制御している。加湿器10に貯留された水40は、ヒーター290によって加熱され、水蒸気を発生する。ベンチレータ側配管90から送られる乾燥した医用ガスは、水蒸気で満たされた加湿チャンバー220を通過する際に、加湿されて水蒸気圧を上げ、呼吸回路側配管110を通じて呼吸回路105へと送られる(図10(A)参照)。呼吸回路105には、回路内の結露を防ぐために結露防止用加熱手段270を備えることが多い。
【0005】
なおCPAP(持続陽圧呼吸療法)装置等でも、取り込む外界の空気が乾燥している場合には、加湿が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような、いわゆるスチーム式の加湿器は温度と湿度を独立に制御することが困難である。図11に1気圧下における水の飽和蒸気圧曲線を示す。縦軸が飽和蒸気圧を表し、横軸が温度を表す。例えば供給したい医用ガスの流量が多い場合には、水蒸気を多量に発生させることが必要である。しかし図11のように、空気が含みうる水蒸気の量、すなわち水蒸気の分圧(水蒸気圧)は温度によって上限が決まっているので、例えば摂氏40度のBの状態で、水蒸気圧を摂氏100度のD点のような高い値にすることは物理的にできない。従って容量の大きな加湿チャンバー220(図10(B)参照)を用意して多量の水を沸騰気化させる必要が出てくる。この場合、送気される気体の温度を過度に上昇させてしまうことが懸念される。逆に供給したい医用ガスの流量が少ない場合には、加湿のために必要な水蒸気の発生自体は、加湿チャンバー220内の温度が、例えば図11のC点のように水の沸点である摂氏100度より低くても容易である。しかし加湿チャンバー220の直近の呼吸回路内で、温度が図11のC点に相当する摂氏80度、相対湿度100%の状態であっても、呼吸回路105の途中の温度が図11のA点(摂氏20度)のように低い場合には、結露によりHの分だけ水蒸気が液化して、送気される気体から水蒸気が失われてしまう。結果として、使用者Pに供給する際に、温度を図11のB点(摂氏40度)のように上げると、A点(摂氏20度)での水蒸気圧が低かったため、気体に含まれる水蒸気は、結露により減ってしまっており、相対湿度が急激に低下した状態になってしまう。また呼吸回路中の結露は、細菌繁殖の原因にもなり好ましくない。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、供給したい医用ガスの流量によらず、温度と湿度を独立に制御し易い加湿器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、使用者の換気を調節又は補助する呼吸補助装置に接続して、ガス源から送気される気体に微粒子又は水蒸気の形で水分を加える加湿器であって、少なくとも水を含む液体を収容する液体容器と、前記液体の微粒子である霧滴を発生する霧滴発生手段と、前記霧滴の少なくとも一部を保持する保水部材と、を有する加湿器を提供する。
【0009】
霧滴、すなわち直径が数ミクロンから数十ミクロンの微粒子になった液体は、単位体積あたりの表面積が大きくなり、気化しやすくなる。上記(1)に記載する発明によれば、液体に含まれる水の微粒子(微小液滴)である霧滴を発生させて水蒸気への気化を促すとともに、保水部材に保持された水が蒸発することで、ガス源から送気される気体の加湿を効率よくおこなう加湿器を実現できる。
【0010】
(2)本発明は、前記保水部材が、前記呼吸補助装置が備える呼吸回路の吸気管内側の長手方向に沿って設けられ、前記保水部材の長さが50cm以上であることを特徴とする上記(1)に記載の加湿器を提供する。
【0011】
上記(2)に記載する発明によれば、保水部材が極めて広い表面積を持つことになるため、保水部材に保持された水分が気化し易いという極めて顕著な効果を奏する。また水分を含んだ保水部材が吸気管内壁に沿って存在すると、呼吸回路の吸気管に結露防止用のヒーターを取り付けて温めた場合、その熱の大部分が保水部材からの水分の蒸発に使われるため、吸気管の温度が上がりにくいという優れた効果も奏する。
【0012】
(3)本発明は、前記保水部材が、通気性を有すると共に、前記使用者側の一端が閉じられ且つ前記ガス源側の他端が開口される筒構造となっており、前記気体が前記開口を介して前記保水部材の内部に進入し、該保水部材を通過して外部に放出されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の加湿器を提供する。
【0013】
上記(3)に記載する発明によれば、保水部材の使用者側端部を閉じた構造になっているので、保水部材は水蒸気を含む医用ガスを通過させて、液体の水を通過させない。したがって加湿をおこなう保水部材自体が気体を濾過できる。すなわち保水部材が、いわゆるバクテリアフィルタとしての優れた効果を奏する。
【0014】
(4)本発明は、前記霧滴、又は、前記保水部材に保持された水分、の少なくとも一方を加熱して、前記水蒸気へと気化させる液滴加熱手段を備えることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0015】
上記(4)に記載する発明によれば、通常の沸騰による気化よりも小さなエネルギー量で水蒸気を発生させて、送気される気体を加湿できる。また貯留された水全体を沸騰させずに、多量の水蒸気を発生させることができるので、気体の温度を過度に上昇させることなく、加温湿度のコントロールができるという優れた効果を奏する。
【0016】
(5)本発明は、前記液滴加熱手段が、前記呼吸補助装置が備える呼吸回路の吸気管に内接又は外接して設けられることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0017】
上記(5)に記載する発明によれば、霧滴を加熱して水蒸気にするためのヒーターなどの液滴加熱手段を、呼吸回路の吸気管に設けることで、吸気管内に生じ易い結露を防ぐと同時に、霧滴蒸発による加湿も可能になるという優れた効果を奏する。
【0018】
(6)本発明は、前記液滴加熱手段が、前記保水部材に内接又は外接して設けられることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0019】
上記(6)に記載する発明によれば、霧滴を加熱して水蒸気にするためのヒーターなどの液滴加熱手段を、呼吸回路の吸気管内に配設された保水部材に内接又は外接して設けることで、保水部材に保持された水分の蒸発による加湿を可能にするという優れた効果を奏する。また、保水部材の内側に、該加熱手段を設けた場合には、柔らかい保水部材の形態維持にも役立ち、蒸発のための表面積確保という効果も奏する。
【0020】
(7)本発明は、前記保水部材に保持された水分によって、前記気体の水蒸気圧を増大させることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0021】
上記(7)に記載する発明によれば、水の微小液滴である霧滴が気化することで得られる水蒸気だけで無く、保水部材に付着した水分が気体中に蒸発して水蒸気になることで、さらなる加湿が可能になるという優れた効果を奏する。
【0022】
(8)本発明は、前記保水部材が、交換可能であることを特徴とする上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0023】
水分があるところには細菌が繁殖しやすい。上記(8)に記載する発明によれば、保水部材が交換可能なので、呼吸補助装置において極めて大切な清潔を保つという課題を容易に解決できるという優れた効果を奏する。
【0024】
(9)本発明は、前記保水部材が、吸水性を持つことを特徴とする上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0025】
保水部材が吸水性を持たないとすると、保水部材の表面を結露した水が覆ってしまうことで、保水部材の水蒸気透過性が著しく落ちてしまう。上記(9)に記載する発明によれば、保水部材が吸水性を持つので、結露した水は保水部材に吸収され、水蒸気が透過する微細な孔は開口のまま保たれ、水蒸気の透過性が落ちにくいという優れた効果を奏する。
【0026】
(10)本発明は、前記保水部材が、不織布であることを特徴とする上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0027】
上記(10)に記載する発明によれば、不織布は強度や伸びに方向性を持たず、安価であり、厚みや空隙の大きさを調整しやすいので、霧滴は通過さず、水蒸気を通過させる吸水性のある保水部材を提供することができる。
【0028】
(11)本発明は、前記気体の一部が、前記保水部材の内部を通過し、前記気体の残余が、前記保水部材の内部を通過しないことを特徴とする上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0029】
上記(11)に記載する発明によれば、乾燥した気体の一部が水蒸気の発生する空間(保水部材の加湿器側空間)を通過するときに水蒸気圧を増大し易いので、加湿が容易であるという優れた効果を奏する。また送気される気体の一部が、保水部材の内側を通過しないことで、呼吸の際の抵抗を下げる効果を奏する。
【0030】
(12)本発明は、前記保水部材の、前記ガス源側に開口された一端は、前記加湿器の内周面に接合され、該保水部材によって前記気体の流れる流路が閉鎖されていることを特徴とする上記(11)に記載の加湿器を提供する。
【0031】
上記(12)に記載する発明によれば、保水部材の両端が吸気管に対して閉じるため、加湿器内部が呼吸回路から隔離された構造になる。したがって保水部材は水蒸気を含む医用ガスを通過させて、液体の水を通過させない。すなわち加湿をおこなう保水部材自体が気体を濾過することができる。したがって保水部材が、いわゆるバクテリアフィルタとしての優れた効果を奏する。
【0032】
(13)本発明は、前記加湿器が、前記気体の流れる流路を有し、該流路は、前記保水部材によって閉鎖され、前記ガス源側であって前記液体容器及び前記霧滴発生手段が配設される上流側と、前記使用者側となる下流側に、前記保水部材によって隔離されていることを特徴とする上記(1)乃至(12)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0033】
液体微粒子である霧滴は、直径が数ミクロンから数十ミクロンあり、大きさがオングストローム単位の水蒸気(水分子)よりもはるかに大きいため、細菌やウイルスを含み易い。上記(13)に記載する発明によれば、霧滴が発生する部分を、霧滴を通過させない保水部材で隔離することで、霧滴に乗った細菌やウイルスなどが、液体容器や霧滴発生手段から使用者に運ばれることを防ぐことができる。すなわち保水部材自体が気体を濾過することで、いわゆるバクテリアフィルタとしての優れた効果を奏する。
【0034】
(14)本発明は、前記霧滴発生手段が、前記液体を加熱して前記液体に含まれる前記水を蒸発させる液体加熱手段を有することを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0035】
上記(14)に記載する発明によれば、液体容器に貯留された水を加熱殺菌しつつ加湿することが可能なので、衛生面で加湿器を良い状態を保つことが容易であるという優れた効果を奏する。
【0036】
(15)本発明は、前記霧滴発生手段が、前記液体を加熱して前記液体に含まれる前記水を蒸発させる液体加熱手段を有し、且つ、前記液体加熱手段が、前記液滴加熱手段と一体であることを特徴とする上記(4)乃至(13)のいずれかに記載の加湿器。
【0037】
上記(15)に記載する発明によれば、液体を加熱する液体加熱手段と、霧滴を加熱する液滴加熱手段が一体化されるため、温度制御が簡単になるという優れた効果を奏する。
【0038】
(16)本発明は、前記霧滴発生手段が、前記液体を加振することで前記霧滴を発生させる超音波発生手段を有することを特徴とする上記(1)乃至(15)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0039】
上記(16)に記載する発明によれば、液体容器に貯留する液体表面において、水の微小液滴である霧滴を容易に発生させることができるので、少ないエネルギー量で加湿が可能になるというという効果を奏する。また超音波振動子の振動の振幅を変えることで霧滴の生成量を容易に変えられ、湿度を制御しやすいという優れた効果を奏する。
【0040】
(17)本発明は、前記霧滴発生手段が、振動発生手段と、多数の微細孔を持つメッシュとを備えることを特徴とする上記(1)乃至(16)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0041】
上記(17)に記載する発明によれば、霧滴発生手段の小型化が容易なので可搬性に優れた加湿器を提供できるという優れた効果を奏する。
【0042】
(18)本発明は、前記霧滴発生手段が、圧縮空気を利用したジェット式霧滴発生手段を有することを特徴とする上記(1)乃至(17)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0043】
上記(18)に記載する発明によれば、構造が簡単でメンテナンスがし易いため清潔を保ちやすいという優れた効果を有する。
【0044】
(19)本発明は、前記保水部材が、さらに使用者の鼻腔に前記気体を送る鼻プロング近傍に配設されることを特徴とする上記(1)乃至(18)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0045】
鼻プロング近傍で結露した場合、液滴が送気される医用ガスによって気道内に侵入することがありうる。液体の水は細菌が発生しやすく、液滴が気道に入り込むと肺炎などの原因になる可能性がある。保水部材を鼻プロング近傍に配設することで、結露した液滴を吸水し、液滴が気道内に入り込むことを防ぐ顕著な効果を奏する。
【0046】
(20)本発明は、前記鼻プロングを支持するハウジングが、結露排水用の排水孔を少なくとも一つ備えることを特徴とする上記(19)に記載の加湿器を提供する。
【0047】
鼻プロングを支持するハウジングは、鼻腔から近接しており、一般に体温より低い温度
であるため、呼気中の水蒸気が結露して液滴が滞留し易い。液滴をそのまま放置すると、細菌繁殖の温床になりやすい。上記(20)に記載する発明によれば、鼻プロングを支持するハウジングが、結露排水用の排水孔を備えるので、適宜、排水孔から液滴を排水でき、清潔を保つことができるという効果を奏する。
【0048】
(21)本発明は、前記保水部材が、少なくとも2つに分離して配設されることを特徴とする上記(1)乃至(20)のいずれかに記載の加湿器を提供する。
【0049】
加湿器側の保水部材には、常時、加湿器から霧滴が供給されて原則として湿った状態になっている。これに対して鼻プロング近傍に配置する保水部材は、吸水することが目的なので乾いていることが望ましい。したがって上記(21)に記載する発明のように、保水部材を少なくとも2つに分離することで、一方を加湿用とし、他方を吸水用とするように、役割分担をさせることができる。
【0050】
(22)本発明は、使用者の換気を調節又は補助する呼吸補助装置に接続する加湿器であって、少なくとも水を含む液体を霧滴とし、該霧滴を保水部材に一旦保持させ、送気される気体を該保水部材に接触させることで該気体を加湿し、加湿された該気体を使用者に供給することを特徴とする加湿器を提供する。
【0051】
上記(22)に記載する発明によれば、液体容器に貯留した水を霧滴、すなわち微小液滴にして気化し易くした上で加熱して水蒸気にするため、加湿が容易である。また貯留された水全体を加熱せずに、多量の水蒸気を発生させることができるので、温度と独立に湿度をコントロールしやすい。また加湿された気体は、不織布で濾過されるので、不織布にバクテリアフィルタの役割も担わすことができるという優れた効果も奏しうる。
【0052】
(23)本発明は、上記(1)乃至(22)に記載する特徴を備える加湿器を有することを特徴とする、使用者の換気を調節又は補助する呼吸補助装置を提供する。
【0053】
上記(23)に記載する発明によれば、大きな流量時にも、小さな流量時にも、温度と湿度を独立に調整し易い加湿器を備えた呼吸補助装置を提供することができるという優れた効果を奏する。
【発明の効果】
【0054】
使用者の換気を調節又は補助する呼吸補助装置に接続する加湿器であって、少なくとも水を含む液体を霧滴とし、該霧滴を保水部材に一旦保持させ、送気される気体を該保水部材に接触させることで該気体を加湿し、加湿された該気体を使用者に供給することを特徴とする加湿器、および、上述の加湿器を備えた呼吸補助装置を提供する。
【0055】
本発明によれば、液体に含まれる水の微小液滴である霧滴を発生させて水蒸気への気化を促すことで、使用者に送気される気体の加湿をおこなう加湿器を実現できる。また加湿器は、霧滴の少なくとも一部を液体の形で保持する保水部材を有するので、保水部材に付着した水分が、気体をさらに加湿できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の第一実施形態に係る加湿器の断面図である。
図2】(A)本発明の第二実施形態に係る加湿器の断面図である。(B)加湿器のの変形例の断面図である。
図3】本発明の第三実施形態に係る加湿器の断面図である。
図4】本発明の第四実施形態に係る加湿器の断面図である。
図5】(A)本発明の第五実施形態に係る加湿器の断面図である。(B)(A)のAA矢視断面図である。(C)本発明の第六実施形態に係る加湿器の断面図である。
図6】呼吸回路の吸気管内に保水部材が配設される、本発明の第七実施形態にかかる呼吸補助装置の説明図である。
図7】(A)本発明の第七実施形態に係る呼吸補助装置の加湿をおこなう加湿部材の説明図である。(B)加湿部材の断面図である。(C)加湿部材をコイル状にして呼吸回路の配管内に置く構成の説明図である。
図8】使用者に気体を送気する鼻プロングを支持するハウジング内に保水部材を配設し、併せて排水孔を設けた本発明の第八実施形態にかかる呼吸補助装置を一部拡大した説明図である。
図9】加湿器への分岐を持つ、本発明の変形実施例にかかる呼吸補助装置の説明図である。
図10】(A)従来の呼吸補助装置の構成を説明する説明図である。(B)従来のスチーム式加湿器の構成を示す説明図である。
図11】1気圧下における水の飽和蒸気圧曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0058】
図1図9は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成は図に示す従来のものと同様である。なお各図において一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、部材の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する。
【0059】
図1は、本発明の第一実施形態に係る加湿器10の断面図である。加湿器10は、従来の呼吸補助装置1(図10(A)参照)における、従来の加湿器10と同様に、使用者の呼吸器における換気を調節又は補助する呼吸補助装置に接続して、ガス源から送気される気体に微粒子又は水蒸気の形で水分を加える。具体的には、加湿器は、医用ガスのガス源(ベンチレーター)280と、使用者に医用ガスを供給するマスク260(図10(A)参照)の間に接続される。加湿器10は、ベンチレータ側配管90と、呼吸回路側配管110の間に配置され、少なくとも水を含む液体を収容する液体容器80と、当該液体の微小液滴である霧滴を発生する霧滴発生手段70と、前記霧滴の少なくとも一部を保持する保水部材20とを有する。霧滴発生手段70は本実施形態においては、後述するように超音波振動により霧滴を発生させる。
【0060】
霧滴発生手段70は、液体を加振することで霧滴を発生させる超音波発生手段を有する。すなわち本第一実施形態に係る加湿器において、霧滴発生手段70は、超音波振動子からの振動エネルギーにより液体表面に気泡を生じさせる、いわゆるキャビテーション効果を利用した超音波式霧滴発生手段であり、筐体55と、超音波振動子60と、超音波伝達物質50を備えている。超音波伝達物質50は例えば水である。筐体55が保持する超音波伝達物質50である水は、比熱が大きいため、筐体55と筐体25を通じて接触する水40も含めて温度が上がりにくく、加湿器10全体として長時間の使用に好適である。霧滴発生手段70と液体容器80は、境界85に不揮発性のオイルなど超音波を伝達しやすい物質を挟んで密着している。
【0061】
超音波振動子60は、コントローラ130(図示省略)によって制御されている。コントローラ130は、加湿器10全体の制御を行うためのCPU、RAM、ROMなどを備える。CPUはいわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて様々な機能を実現する。RAMはCPUの作業領域、記憶領域として使用され、ROMはCPUで実行されるオペレーティングシステムやプログラムを記憶する。コントローラ130は、温度計100や、使用者の装着するマスク260(図10(A)参照)近傍の温度計(図示省略)、送気された気体の流量計(図示省略)等をモニターして、液滴加熱手段30のヒーター等のフィードバック制御(PID制御など)をおこない、所定の温度、湿度に調節する機能を持っていることが望ましい。また液体容器80内の水40が所定の水量以下になった場合には、警告を出すことが望ましい。
【0062】
霧滴発生手段70による霧滴発生量は、コントローラ130によって制御される。例えば超音波振動子60に加える交流電圧の振幅を大きくすると、超音波振動子60の振動の振幅が大きくなり、霧滴発生量は増大する。液体容器80は、筐体25から取り外せることが望ましい。また霧滴発生手段70も液体容器80から取り外し可能であることが望ましい。
【0063】
加湿器10は、送気される気体が流れる流路を有し、該流路は保水部材20によって閉鎖され、ガス源(ベンチレーター)280側であって液体容器80及び霧滴発生手段70が配設される上流側と、使用者側となる下流側に、保水部材20によって隔離されている。
【0064】
具体的には、保水部材20は、通気性を有すると共に、使用者側の一端が閉じられ、且つ、ガス源(ベンチレーター)280側の他端が開口される筒構造となっており、気体が開口19を介して保水部材20の内部に進入し、保水部材20を通過して呼吸回路側配管110に放出される。保水部材20の筒の開口19は、筐体25の内周面に端部が接合され、流路を閉鎖している。
【0065】
気体が保水部材20を通過する際の抵抗を下げるために、通気面積を大きくすることが望ましい。そのため筒状の保水部材20と筐体25の内周面との間には、スペーサーを設けて隙間を確保することが好ましい。スペーサーを設ける代わりに、保水部材20の筒の径を筐体25の内周径よりも十分小さくして隙間を確実に確保しても良い。保水部材20は吸水性を持つ不織布であり、交換可能であることが望ましい。保水部材20を構成する不織布の材質は、例えばポリプロピレンであり、親水化するために界面活性剤処理、フッ素ガス処理、スルホン化処理、アクリル酸グラフト処理、プラズマ放電処理などを施すことが望ましい。
【0066】
保水部材20は、筐体25の中に設置され、保水部材20の内側、すなわち液体容器80側には、液滴、すなわち、前記霧滴、又は、前記保水部材に保持された水分、の少なくとも一方を加熱して水蒸気へと気化させる液滴加熱手段30が設置される。液滴加熱手段30は例えばニクロム線などで構成される抵抗加熱ヒーターであり、電源(図示省略)が接続され、温度計100の温度等に基づいて、コントローラ130によって電力を制御し温度や湿度のコントロールを行う。保水部材20は霧滴を遮断するが、水蒸気を含む気体は保水部材20を通過できる。
【0067】
次に、上記した実施の形態の動作を同じく図1を用いて説明する。
【0068】
ベンチレータ側配管90から、乾燥した医用ガスが、加湿器10に供給される。この医用ガスに対して、水分を付加するのが、加湿器10の役割であるが、加湿は次のような2つの方法でおこなわれる。
【0069】
(1)液体容器80の表面で生じる霧滴が、液滴加熱手段30で気化されて水蒸気となる。超音波振動子60で発生した超音波の振動エネルギーが、液体容器80の水面に伝わり、水面の一部の表面張力が弱まることで微細な霧滴を生じる。霧滴は、微小液滴なので体積に比べて表面積が大きく、気化もし易い。また液滴加熱手段30付近に霧滴が到達すると、温度が高く、飽和蒸気圧が大きくなるため、さらに気化し易くなる。気化して生じた水蒸気は、結果として乾燥した医用ガスを加湿する。
【0070】
(2)液体容器80の表面で生じる霧滴は保水部材20まで到達すると、保水部材20に付着する。保水部材20は吸水性を有するので、保水部材に付着した水分は液体の水として保持される。ベンチレータ側配管90から送気された気体の水蒸気圧は、保水部材20の近傍を通過する際、保水部材20に保持された水分によって、さらに増大させられ、加湿される。
【0071】
以上、説明した第一実施形態に係る加湿器10は、通常の沸騰による気化よりも小さなエネルギー量で水蒸気を発生させて加湿できる。また貯留された水40を沸騰させずに、多量の水蒸気を発生させることができるので、医用ガスの温度を過度に上昇させることなく温度と独立して湿度コントロールができるという優れた効果を奏する。また送気される気体が保水部材20によって濾過されるので、保水部材20が加湿と同時にバクテリアフィルタの役割も果たすという効果を奏する。
【0072】
図2(A)は、本発明の第二実施形態に係る加湿器10の構成を示す断面図である。加湿器10は、筐体25の中に水40が貯留され、液滴加熱手段30と水40は、保水部材20によって呼吸回路側配管110と隔離されている。保水部材20は不織布である。保水部材20は面状であり、筐体25の内側面に端部が接合されている。保水部材20は、液体40を完全に覆い、ベンチレータ側配管90から送気される気体は、必ず保水部材20を通過する。ベンチレータ側配管90は、保水部材20の内側、すなわち液体40側に気体を送り込むように配置される。加湿器10の霧滴発生手段70は、液体を加熱して液体に含まれる水40を蒸発させる液体加熱手段を有するスチーム式霧滴発生手段である。前述した第一実施形態と同様、前記霧滴、又は、前記保水部材に保持された水分、の少なくとも一方を加熱して水蒸気へと気化させる液滴加熱手段30は、保水部材20の内側、すなわち水40側に設置される。液滴加熱手段30は例えばニクロム線などで構成される抵抗加熱ヒーターであり、コントローラ130によって所定の温度に制御される。本第二実施形態は、従来の加湿器10と同様に、水40を加熱気化させて水蒸気圧を増大させる方式である。液体容器に貯留された水を加熱殺菌しつつ加湿することが可能なので、衛生面で加湿器を良い状態を保つことが容易であり、且つ、送気される気体が保水部材20によって濾過される。すなわち保水部材20は、加湿と同時にバクテリアフィルタの役割も果たすという効果を奏する。
【0073】
なお液滴加熱手段30は、保水部材20と一体に形成されてもよく、また保水部材20の外側、すなわち、吸気管側または筐体側に近接して設けられても良い。保水部材20と液滴加熱手段30の位置関係については、他の実施形態、変形実施例についても同様であり、液滴加熱手段30が保水部材20の内側であっても外側であっても良く、また保水部材20と液滴加熱手段30が、一体のものであっても良い。
【0074】
図2(B)は、本発明の第二実施形態に係る加湿器10の変形実施例を示す。本変形実施例においては、霧滴発生手段70を構成する液体加熱手段は、前記霧滴、又は、前記保水部材に保持された水分、の少なくとも一方を加熱気化させる液滴加熱手段30と一体の加熱手段120である。すなわち、加熱手段120の一部は、液体表面から上部に露出して、前記霧滴、又は、前記保水部材に保持された水分、の少なくとも一方を加熱気化する。加熱手段120は、例えば抵抗加熱ヒーターであり、コントローラ130によって所定の温度に制御される。霧滴発生手段70と液滴加熱手段30が一体の構造であることで、温度制御が簡単になるという優れた効果を奏する。ベンチレータ側配管90から送気される気体は、加熱手段120によって気化された水蒸気により蒸気圧を増大させ、保水部材20により濾過されて呼吸回路側配管110へと送られる。
【0075】
図3は、本発明の第三実施形態に係る加湿器10の構成を示す断面図である。加湿器10の霧滴発生手段70は、ネブライザ(エアロゾル吸入療法または噴霧療法を行うために、薬剤を含んだ細かい霧を発生させる装置)の実現手段であるメッシュ型での噴霧発生手段と同様の構造である。振動発生手段160及び多数の微細孔を持つメッシュ180を備え、振動発生手段160の振動子150とメッシュ180の隙間に水170を満たし、振動発生手段160を振動させることで、霧滴を発生させる。この構造の長所は小型で制御性が良いことであり、加湿器10は全体として極めてコンパクトに構成でき、可搬性に優れた呼吸補助装置1を作ることができる。また少量の水でも霧滴を発生できる利点がある。メッシュ型の霧滴発生手段70で発生した霧滴は、液滴加熱手段30で加熱されて気化して水蒸気となり、ベンチレータ側配管90から送気された気体を加湿する。
【0076】
図4は、本発明の第四実施形態に係る加湿器10の構成を示す断面図である。加湿器10の霧滴発生手段70は、コンプレッサー式、又は、ジェット式と呼ばれるネブライザの噴霧発生手段と同様の構造である。コンプレッサー側配管195から送られた圧縮空気がノズル部210から高速で吹き出す際に、ベンチュリー効果を生じて周辺の圧力を低下させ、吸水管200から水40を吸い上げる。吸い上げられた水40は勢いよくバッフル190に衝突して霧滴を発生する。圧縮空気を利用したジェット式の霧滴発生手段70を有する加湿器は、簡単な構造でありメンテナンスがし易いため、清潔を保ちやすいという優れた効果を有する。霧滴発生手段70で発生した霧滴は、液滴加熱手段30で加熱されて気化して水蒸気となり、ベンチレータ側配管90から送気される気体を加湿する。
【0077】
図5(A)は、本発明の第五実施形態に係る加湿器10の構成を示す断面図である。本実施形態においては、液滴加熱手段30は存在せず、加湿器10は、筐体25と霧滴発生手段70と液体容器80と保水部材20を備える。図5(A)において霧滴発生手段70は、液体に加振することで前記霧滴を発生させる超音波発生手段を有している例を示したが、液体を加熱して液体40に含まれる水を蒸発させ、霧滴を生成する液体加熱手段を有してもよく、メッシュ式霧滴発生手段を有しても、ジェット式霧滴発生手段を有しても良い。
【0078】
加湿器10は、送気される気体が流れる流路を有し、該流路は保水部材20によって閉鎖され、ガス源(ベンチレーター)280側であって液体容器80および霧滴発生手段70を備えた上流側と、使用者側であって下流側に、保水部材20によって隔離されている。具体的には保水部材20は、筐体25に端部が接合され、流路を閉鎖している。保水部材20は霧滴を遮断するが、水蒸気を含む気体は、保水部材20を通過できる。
【0079】
図5(B)は、図5(A)の保水部材20の変形実施例を示す。図5(B)は、図5(A)において一点鎖線で示された仮想面におけるAA矢視断面図である。本変形例では保水部材20には、霧滴を含む気体が通過できる孔が複数開いている。低温で相対湿度100%、且つ、絶対湿度が低い値の気体を使用者が吸入すると、気体は気道内で加温されながら、気道内の水分を奪うため、末梢気道までの広い範囲で分泌物の固化等を引き起こすことがある。しかし霧滴は液体の微粒子であり、水蒸気圧とは無関係なため、霧滴を含む気体は結果として水分を多量に含むことになり、気道内を乾燥させる可能性がないという利点を持つ。本変形実施例では、霧滴を含む気体が通過できる孔が複数開いているので、上記のような優れた効果を奏する。
【0080】
図5(C)は、本発明の第六実施形態に係る加湿器の断面図である。本実施形態において、保水部材20は複数設けられ、それぞれが流路を部分的に塞ぐ。具体的には、霧滴を含む気体が障害物無く流れることがないように、例えば互い違いに筐体25から流路に対して垂直に突出する形状を構成する。このような形状にすることで、霧滴は保水部材20に衝突して保水部材20に保持され、水蒸気を含む気体は、抵抗少なく使用者に送られる。
【0081】
図6は、本発明の第七実施形態に係る加湿器10の説明図である。加湿器10の構成要素は、前述の第一実施形態と同様であり、ベンチレータ側配管90と、呼吸回路側配管110の間に配置され、少なくとも水を含む液体を収容する液体容器80と、当該液体の微小液滴である霧滴を発生する霧滴発生手段70と、霧滴の少なくとも一部を保持する保水部材20とを有する。
【0082】
吸気管250はコネクタ23を介して、配管26に接続され、配管26はハウジング28に繋がれる。そしてハウジング28により支持された鼻プロング29を通じて、気体が使用者Pの鼻腔に送気される。
【0083】
ハウジング28の内部には、保水部材24が液滴の吸水手段として設けられている。鼻プロング29近傍で結露した場合、送気される医用ガスに混じって、液滴が気道内に侵入することがありうる。液体の水は細菌が発生しやすく、液滴が気道に入り込むと肺炎などの原因になる可能性がある。保水部材20を鼻プロング29近傍に配設することで、結露した液滴を吸水し、液滴が気道内に入り込むことを防ぐ顕著な効果を奏する。
【0084】
なお、保水部材20は、少なくとも2つに分離して配設されることが望ましい。加湿器10側の保水部材20には、常時、加湿器10から霧滴が供給されて原則として湿った状態になっている。これに対して鼻プロング29近傍に配置すべき保水部材24は、吸水することが目的なので、乾いている状態が望ましい。したがって保水部材20を、図6の保水部材20と保水部材24のように、少なくとも2つに分離することで、加湿用の保水部材と、吸水用の保水部材とに、役割分担をさせることができる。
【0085】
本実施形態の一番の特徴は、保水部材20が、吸気管250の内部にまで延設されていることである。すなわち保水部材20は、呼吸補助装置1が備える呼吸回路の吸気管の内部の長手方向に沿って設けられ、保水部材20の長さが50cm以上である。気体流量によらず、十分な加湿をおこなうためには、保水部材20の長さは50cm以上が好ましく、1m以上であることがより望ましい。このような構成にすることで、保水部材20が極めて広い表面積を持つことになるため、保水部材20に保持された水分が気化し易いという極めて顕著な効果を奏する。また水分を含んだ保水部材20が吸気管250の内壁に沿って存在すると、呼吸回路の吸気管250に結露防止用のヒーターを取り付けて温めた場合、その熱の大部分が保水部材20からの水分の蒸発に使われるため、吸気管250の温度が上がりにくいという優れた効果も奏する。
【0086】
保水部材20は、通気性を有すると共に、前記使用者P側の一端、すなわち保水部材端部22が閉じられ、且つ、ガス源(ベンチレーター)280側の他端が開口される筒構造となっており、気体が開口19を介して保水部材20の内部に進入し、該保水部材を通過して吸気管250内部に放出される。本実施形態においては、保水部材20の内側に、霧滴、および保水部材20に保持された水分を、加熱して、水蒸気へと気化させる液滴加熱手段30を備える。液滴加熱手段30は、コントローラ130(図示省略)により、所定の温度に制御される。液滴加熱手段30は、例えばニクロム線などで構成される抵抗加熱ヒーターである。液滴加熱手段30は、吸気管250に設けられた温度計(図示省略)の温度等に基づいて、コントローラ130によって温度や湿度の制御をする。なお、図8に示すように、保水部材20に内接して液滴加熱手段30を設けた場合には、保水部材20として柔らかな素材を用いた場合、その形態の維持にも役立つ。すなわち、保水部材20の内部に空間を維持できるので、蒸散のための表面積確保に効果を奏する。
【0087】
なお、保水部材20がいわゆるメッシュのような網目構造を持つ場合、メッシュの孔径は霧滴の径よりも小さいことが望ましい。
【0088】
また変形実施例として、液滴加熱手段30を、保水部材20に外接して設ける態様であってもよく、保水部材20を構成する繊維に液滴加熱手段30が埋め込まれていても良い。また、保水部材20に近接して液滴加熱手段30を設けるだけでなく、液滴加熱手段30を、呼吸補助装置が備える呼吸回路の吸気管250自体に内接又は外接して設けても良い。特に送気する気体の流量が少ない場合には、保水部材20に近接して液滴加熱手段30を設けず、吸気管250の結露防止用加熱手段270に液滴加熱手段30を兼用させても、十分な加湿効果が得られる。
【0089】
図7(A)は、本第七実施形態に係る呼吸補助装置において、吸気管250の内部まで延設されている加湿部材45の説明図である。図6では液滴加熱手段30をコイル状のヒーターとして表現したが、図7(A)では、液滴加熱手段30が線状の抵抗加熱ヒーターである場合を示す。加湿部材45は、液滴加熱手段30と保水部材20を備える。保水部材20は、繊維35を編むことで構成され、芯材37で形状を安定させる。芯材37の材質は繊維35と同じであって良く、保水部材20を構成する繊維35よりも太い繊維であっても良い。繊維は親水性を有することが望ましいが、疎水性であっても良い。液滴は繊維35の内部または繊維間に捉えられる。また繊維は柔らかく、編んだ状態でも手指で容易に変形可能であることが望ましい。捉えられた水分は液滴加熱手段30によって加熱されて水蒸気となり、医用ガスを通じて使用者Pに供給される。
【0090】
図7(B)は、加湿部材45の、液滴加熱手段30に垂直な仮想平面Sにおける断面図である(図7(A)参照)。繊維35を編むことで構成された保水部材20は、板状部分38と、液滴加熱手段30を覆う筒状部分39を備える。加湿部材45の幅Wは5mm以上であることが望ましい。板状部分38があることで、液滴を含みやすい部材の面積が大きくなる効果を奏する。もちろん保水部材20が、事実上、液滴加熱手段30を覆う筒状部分39だけで構成されていても良い。
【0091】
図7(C)は、加湿部材をコイル状にして呼吸回路の蛇管250に置く構成の説明図である。図7(C)では蛇管250の一部のみ示す。加湿部材45は、コイル状に巻いた態様で蛇管250の内部に置かれる。加湿部材45は蛇管250に内接することが望ましい。このような態様にすることで、蛇管250の内壁に付着した水滴を保水部材20が吸着して、液滴加熱手段30が水滴を加熱することで水蒸気とすることができる。
【0092】
なお保水部材20が図7(A)のような形態の場合には、送気される医用ガスに乗った液滴が直接使用者Pの肺に届くことが無いように、図5(A)の保水部材20のような、ガスは通して液滴は捉えるような遮蔽体を、加湿器10内、または、近傍に流路を妨げる態様で設けることが望ましい。また保水部材20は不織布であっても良い。その場合、保水部材20は液滴加熱手段30を筒状に覆うような態様であることが望ましい。
【0093】
図8は、本発明の第八実施形態に係る呼吸補助装置を一部拡大した説明図である。使用者Pは、鼻プロング29を鼻腔内に挿入し、配管26から鼻プロング29を支持するハウジング28を通して、医用ガスを使用者Pに送気する。このとき鼻プロング29を支持するハウジング28は、排水孔31を備える。排水孔31は、使用者Pが横たわったときに溜まった液滴を排水しやすいように、ハウジング28の使用者Pに近い側の位置に設けられることが望ましい。
【0094】
ハウジング28の内部には、保水部材24(図示省略)が配設されるが、吸水しきれない液滴は、排水孔31を通じてハウジング28の外部に排泄される。なお、配管26を接続する配管取り付け孔32をハウジング28の両脇に設け、栓で塞ぐ場合には、その栓自体に、排水孔31を設けることも考えられる。また配管取り付け孔32と排水孔31を兼用しても良い。
【0095】
尚、本発明の形態は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。変形例としてそれぞれの実施形態について、次に挙げる実施例の適用も考えられる。
【0096】
上記の実施形態の中で、液体容器80から生じた水蒸気で加湿された気体のすべてが、保水部材20で濾過された上で呼吸回路側配管110へ送られる態様を説明した。しかし送気される気体の一部が、保水部材20の内部を通過し、気体の残余が、保水部材20の内部を通過しなくても良い。例えば図9に示す本発明の変形実施例のように、ベンチレータ側配管90から送気される気体の一部は、加湿器10の上流側で分岐して、加湿器10の下流側、使用者寄りの呼吸回路で、加湿された気体と合流してもよい。この変形実施例は、呼吸の抵抗負荷を小さくする効果を有する。
【符号の説明】
【0097】
1 呼吸補助装置
10 加湿器
20 保水部材
22 保水部材端部
23 コネクタ
24 保水部材
25 筐体
26 配管
28 ハウジング
29 鼻プロング
30 液滴加熱手段
31 排水孔
32 配管取り付け孔
35 繊維
37 芯線
38 板状部分
39 筒状部分
40 水
45 加湿部材
50 超音波伝達物質
55 筐体
60 超音波振動子
70 霧滴発生手段
80 液体容器
85 境界
90 ベンチレータ側配管
100 温度計
110 呼吸回路側配管
120 加熱手段
130 コントローラ
140 送水管
150 振動子
160 振動発生装置
170 水
180 メッシュ
190 バッフル
195 コンプレッサー側配管
200 吸水管
210 ノズル部
220 加湿チャンバー
230 呼気用配管
240 温度計
250 吸気管
260 マスク
270 結露防止用加熱手段
280 ガス源(ベンチレーター)
290 ヒーター
S 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11