(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複製材料を前記コーティング材料上に塗布する処理は、前記複数のピンホールを含む前記コーティング材料上に前記複製材料をスピンコートし、続いて前記複製材料を乾燥させる処理を含む、
請求項1記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)、(c)および(e)はそれぞれ、クロロベンゼン、ジクロロメタン、およびトルエンを一次溶媒として用いて調製し、Si基板上にスピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ5x5μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示し、
図1(b)、(d)および(f)はそれぞれ、クロロベンゼン、ジクロロメタンおよびトルエンを用いて調製し、Si基板上にスピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ2x2μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示す。溶媒はサプライヤAから購入した。
【
図2】
図2(a)、(c)、(e)および(g)はそれぞれ、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエンおよびクロロホルムを用いて調製し、Si基板上にスピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ5x5μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示し、
図2(b)、(d)、(f)および(h)はそれぞれ、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエンおよびクロロホルムを用いて調製し、Si基板上にスピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ2x2μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像である。溶媒はサプライヤBから購入した。
【
図3】
図3(a)および(b)はそれぞれ、1vol%および5vol%の脱イオン水を添加したサプライヤAのクロロベンゼンを用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜のタッピングモードAFMトポグラフィ画像であり、
図3(c)および(d)はそれぞれ、1vol%および5vol%の脱イオン水を添加したサプライヤBのジクロロメタンを用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示し、
図3(e)および(f)はそれぞれ、1vol%および5vol%の脱イオン水を添加したサプライヤBのクロロホルムを用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示す。
【
図4】
図4は、クロロベンゼン、ジクロロメタンまたはクロロホルムの一次溶媒に、H
2Oまたはアミレンの二次溶媒を意図的に添加した場合の試料中のピンホール直径の分布傾向を示すヒストグラムを示す。
図4(a)〜(h)のヒストグラムは、それぞれ
図3(a)〜(h)のAFM画像に対応する。
【
図5】
図5(a)、(c)、(e)および(g)はそれぞれ、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエンおよびクロロホルムを用いて調製し、スピンコートしたポリスチレン膜の各画像サイズ5x5μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示し、
図5(b)、(d)、(f)および(h)はそれぞれ、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエンおよびクロロホルムを用いて調製し、スピンコートしたポリスチレン膜の各画像サイズ2x2μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示す。溶媒は、サプライヤBから購入した。
【
図6】
図6は、サプライヤAのクロロベンゼンを用いて調製し、スピンコートしたポリスチレン膜の画像サイズ5x5μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示す。
【
図7】
図7は、溶媒として(a)では、既製のクロロベンゼン製品(サプライヤAから購入)を使用して調製し、(b)では、クロロベンゼンと1vol%脱イオン水とを使用して調製し、(c)では、クロロベンゼンと2vol%脱イオン水とを使用して調製し、(d)では、クロロベンゼンと5vol%脱イオン水とを加えて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ5x5μm
2のAFM画像を示す。
【
図8】
図8は、溶媒として、(a)では既製のクロロホルム製品(サプライヤBから購入)を用いて調製し、(b)では、クロロホルムと1vol%脱イオン水とを用いて調製し、(c)では、クロロホルムと2vol%脱イオン水とを用いて調製し、(d)では、クロロホルムと5vol%脱イオン水とを用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ5x5μm
2の一連のAFM画像を示す。
【
図9】
図9は、溶媒として、(a)では、既製のクロロホルム製品(サプライヤBから購入、超脱水)を用いて調製し、(b)では、クロロホルムと5vol%アミレンとを用いて調製し、(c)では、クロロホルムと10vol%アミレンとを用いて調製し、(d)では、クロロホルムと20vol%アミレンとを用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ5x5μm
2の一連のAFM画像を示す。
【
図10】
図10は、ピンホールの形成のメカニズムを概略的に示す、処理手順、ステップ1〜ステップ3を示す。
【
図11】
図11は、ピンホールを有するspiro−MeOTAD層上に複製材料としてのCYTOPをスピンコーコートする処理を示す。
【
図12】
図12(a)は、
図10に示す処理によって形成されたピンホールを含むspiro−MeOTAD膜のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示し、
図12(b)は、
図11に示す処理によって形成されたCYTOP膜に転写されたピンホール構造の複製を示す。
【
図13】
図13(a)は、ピンホールを含むspiro−MeOTAD膜における穴深さのAFM解析の結果例を示し、
図13(b)は、CYTOP膜において作成された複製におけるロッド高さのAFM解析の結果例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
有機金属ハライドペロブスカイト膜を作製するためのソース材料は、PbCl
2、PbBr
2、PbI
2、SnCl
2、SnBr
2、SnI
2等のハライド金属、並びにCH
3NH
3Cl、CH
3NH
3Br、CH
3NH
3I等のメチルアンモニウム(MA=CH
3NH
3+)化合物を含む。MA化合物に代えて、又は、MA化合物と組み合わせて、ホルムアミジニウム(FA=HC(NH
2)
2+)化合物を使用することもできる。有機金属ハライドペロブスカイトは、一般的に、ABX
3で表され、有機元素、MA、FA又は他の適切な有機元素が各Aサイトを占め、金属元素、Pb
2+又はSn
2+が各Bサイトを占め、ハロゲン元素、Cl
−、I
−又はBr
−が各Xサイトを占める。ソース材料は、AX及びBX
2によって表され、AXは、X−アニオンとしてのハロゲン元素Cl、I又はBrと結合されたA−カチオンとしての有機元素MA、FA又は他の適切な有機元素を有する有機ハライド化合物を表し、BX
2は、X−アニオンとしてのハロゲン元素Cl、I又はBrと結合されたB−カチオンとしての金属元素Pb又はSnを有する金属ハライド化合物を表す。ここで、AXにおける実際の元素X及びBX
2における実際の元素Xは、ハロゲン基から選択されるものであれば同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、AXにおけるXはClにすることができ、BX
2におけるXは、Cl、I又はBrにすることができる。したがって、混合ペロブスカイト、例えば、MAPbI
3−xCl
xの形成が可能である。「ペロブスカイト」及び「有機金属ハライドペロブスカイト」の用語は、本文書では同義語及び同意語として用いられる。
【0011】
有機金属ハライドペロブスカイトは、太陽電池、LED、レーザ等のオプトエレクトロニクスデバイスの活性層に用いることができる。ここで、「活性層」とは、光起電力デバイスでは、電荷キャリア(電子と正孔)への光子の変換が発生する吸収層を指し、フォトルミネッセンス(つまり、発光)デバイスの場合、電荷キャリアが結合して光子を生成する層を指す。
【0012】
正孔輸送層(HTL)は、光起電力デバイスでは、活性層から電極に正孔キャリアを輸送する媒体として使用することができ、フォトルミネッセンスデバイスの場合、HTLは、電極から活性層に正孔キャリアを輸送する媒体を指す。ペロブスカイトベースのデバイスにHTLを形成するために用いる正孔輸送材料(hole transport material:HTM)の例としては、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N’−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン(spiro−MeOTAD、spiro−OMeTADとも呼ばれる)、ポリスチレン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(P3HT)、ポリ(トリアリールアミン)(PTAA)、酸化グラフェン、酸化ニッケル、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)スチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、チオシアン酸銅(CuSCN)、CuI、Cs
2SnI6、アルファ−NPD、Cu
2O、CuO、サブフタロシアニン、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS−ペンタセン)、PCPDTBT、PCDTBT、OMeTPA−FA、OMeTPA−TPA、キノリジノアクリジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
ペロブスカイトベースのデバイス用のHTLを形成するのに溶液法が一般的に採用されている。例えば、4−tert−ブチルピリジン(tBP)及びリチウムビス−(トリフルオロメチルスルホニル)イミド塩(Li塩)を含むspiro−MeOTADの溶液をスピンコートして、ペロブスカイト膜上にHTLが形成される場合がある。しかしながら、Hawash et al.(非特許文献1)に記載された最近の研究により、spiro−MeOTADからなるこれらの溶液加工膜は、通常、高密度のピンホールを含むことが明らかになった。ここで、ピンホールは、膜を貫通する直径の小さい穴の形を有する欠陥として定義される。これらのピンホールは、膜の全層を貫通していることもあれば、膜表面から始まり、膜の奥深くまで貫入していることもある。HTLにおけるこのようなピンホールは、層間の短縮又は混合によって、ペロブスカイトベースのデバイスを不安定にする。これは、HTLを形成するのに溶液加工spiro−MeOTAD膜を用いている典型的なペロブスカイト太陽電池が大気にさらされると急速な効率の低下を示す理由である可能性が高い。このようなピンホールは、HTLに溶液加工spiro−MeOTADを用いている典型的なペロブスカイト太陽電池の寿命が非常に短い理由である可能性も高い。ピンホール形成から生じる影響は2つあると考えられる。(i)HTLを介した水分移動がペロブスカイトに到達しペロブスカイトを劣化させることをピンホールが促進する。(ii)構成元素(例えば、ヨウ素)がペロブスカイトから表面に移動し、ペロブスカイトを劣化させる又は分解することをピンホールが促進する。
【0014】
ピンホールの形成に関連する上記の問題に鑑み、本文書は、ピンホールの形成を一次溶媒中の二次溶媒(例えば、水、安定添加剤)の存在によって制御できることを示す実験及び解析について説明する。例えば、意図的に二次溶媒を添加するなど、制御された方法でピンホールを形成する可能性は、いくつかの興味深い用途のための場を開く可能性がある。このような用途には、表面のパターニングおよび機能化、あるサイズの粒子を通過させる薄膜の形成、および他のナノスケールパターニング用途が含まれ得る。以下では、spiro−MeOTADを特定のHTMの例として使用する。しかし、本方法論は、先に列挙したHTMのような他のタイプのHTMにも適用可能である。添付の図面を参照して、以下に詳細を説明する。本明細書では、様々なステップ、実験および結果を例として説明するために特定の値が引用されているが、これらは近似値および/または機器の公差または分解能内であることを理解されたい。
【0015】
本実験では、原子間力顕微鏡(AFM)によるピンホールの可視化と特性化に有用な平坦性(表面粗さの二乗平均平方根、RMS約0.1nm)の理由から、自然酸化物を有するSiウェハを基板として使用した。ピンホール形成は基板の種類に大きく影響されないため、他の種類の基板を使用しても本実験の結果は定性的に適用可能であることに留意すべきである。クロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタンおよびトルエンの4つの異なる溶媒を商業サプライヤから購入して、本実験において一次溶媒として使用した。
【0016】
HTM溶液は、以下のように具体的に調製した。72.5mgのspiro−MeOTADを、4つの一次溶媒 (クロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、及びトルエン)のそれぞれ1mLに溶解した。これは、59.2mM(ミリモル=10
−3mol/L)の濃度及び60μLの溶液に対応する。溶液を、表面積が約1x1cm
2のSi基板上に2000rpmで60秒間スピンコートした。AFMを用いて、得られた膜のモルフォロジーを特性化した。0.013Ω・cmを有する自然酸化物で覆われたSi(100)ウェハを基板として用いた。溶媒は、異なる商業サプライヤから購入した。しかし、溶液の調製方法はすべての場合において同じであった。サプライヤAからは、クロロベンゼン無水99.8%、ジクロロメタン無水>99.8%、安定剤としての40〜150ppmのアミレン、及びトルエン無水99.8%を購入した。サプライヤBからは、クロロベンゼンモノ、ジクロロメタン超脱水物、超脱水トルエンおよび超脱水クロロホルムを購入した。膜厚は、手術ナイフで作られた薄い傷でspiro−MeOTAD膜の領域での高さの違いをマッピングすることによって、AFM測定に基づいて決定された。同様の手順の実験もMw約350,000およびMn約170,000を有するHTMとしてポリスチレンを用いることによって行った。ここで、Mwは、「重量平均分子量」を表し、Mnは、「数平均分子量」を表す。32.4mgのポリスチレンを、4つの異なる一次溶媒のそれぞれ2mLに溶解した。
【0017】
少量の二次溶媒を一次溶媒中に系統的に添加した。本実験で使用される二次溶媒は、再蒸留によって精製された、18MΩ・cmの脱イオン水および99%を超えるアミレン濃度を有する2−メチル−2−ブテンである。
【0018】
図1は、spiro−MeOTAD膜の3つの試料のAFMトポグラフィ画像を示し、spiro−MeOTAD溶液は、全てサプライヤAから購入したクロロベンゼン溶媒、ジクロロメタン溶媒およびトルエン溶媒に溶解することによって調製し、Si基板上にスピンコートした。具体的には、
図1(a)、(c)および(e)は、一次溶媒としてクロロベンゼン、ジクロロメタンおよびトルエンを用いて調製し、Si基板上にスピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ5×5μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像をそれぞれ示し、
図1(b)、(d)および(f)は、クロロベンゼン、ジクロロメタン、およびトルエンを用いて調製し、Si基板上にスピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ2x2μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像をそれぞれ示す。
【0019】
spiro−MeOTADを溶解するために使用する溶媒に依存して、ピンホールの密度およびサイズの大きな変動を
図1において明瞭に確認することができる。詳細な分析により、
図1に例示されるピンホール形成が、異なる溶媒の固有の物理化学的性質と無相関であることが示された。クロロベンゼン、トルエン、クロロホルムおよびジクロロメタンの非極性溶媒の基本特性のいくつかを以下の表1に示す。この表において、比重は、H
2O=1に対して定義されている点に留意されたい。
【表1】
【0020】
溶媒の典型的な物理化学的特性と観察されたピンホール形成との間に顕著な相関がないことに基づいて、ピンホール形成の定性的側面は異なる溶媒種類の固有の性質に関連しないが、サプライヤの定めた等級、貯蔵期間(すなわち、保存可能期間)に伴う劣化、溶質から導入される不純物、および/または他の外因性因子によって変動すると結論付けられる可能性がある。
【0021】
spiro−MeOTADを、サプライヤBから購入した同じ3種類の溶媒(クロロベンゼン、ジクロロメタンおよびトルエン)に溶解することによってもう1組の試料を調製した。さらに、有機エレクトロニクスで広く使用されている別の溶媒であるクロロホルム(サプライヤBから購入)も研究に含めた。
図2(a)、(c)、(e)および(g)は、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエンおよびクロロホルムを用いて調製され、Si基板上にスピンコートしたspiro−MeOTAD膜の、各画像サイズ5x5μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示し、
図2(b)、(d)、(f)および(h)は、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエンおよびクロロホルムを用いて調製し、Si基板上にスピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ2x2μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示す。
【0022】
図2のピンホール形成の程度は、
図1と比較して大幅に低減されている。(a)0.22nm、(b)0.20nm、(c)0.21nm、(d)0.23nm、(e)0.22nm、(f)0.21nm、(g)0.19nm、及び(h)0.18nmの表面粗さ二乗平均平方根(RMS)値が抽出され、ピンホールが存在しないspiro−MeOTAD膜の場合、平均RMS値0.21±0.02nmが抽出された。RMS値0.12±0.02nmは、真空蒸着によって堆積したspiro−MeOTAD膜について既に報告されており、同様の膜モルフォロジーがこれらの2つの異なる方法を使用することによって得られることを示している。上記4つの溶媒を用いて調製し、Si基板上のspiro−MeOTAD膜の写真がそれぞれ
図2(a)、(c)、(e)および(g)の挿入図に示されている。4つの試料の間に識別可能な色の差異が観察され、これは誘電体膜の厚さの違いに起因する可能性がある。spiro−MeOTADをクロロベンゼン、トルエン、クロロホルム、およびジクロロメタンで調製した場合、平均厚さはそれぞれ190±5nm、265±5nm、367±13nmおよび402±14nmが抽出された。詳細な分析により、得られた厚さが溶媒の沸点(T
B)と直接相関することが観察されたことが示された(表1参照)。最も低い39.6℃のT
Bを有するジクロロメタン溶媒は、厚さ約400nmの最も厚いspiro−MeOTAD膜を生成し、最も高い132℃のT
Bを有するクロロベンゼン溶媒は、厚さ約190nmの最も薄い膜を生成する。
【0023】
以上のように、本研究は、ピンホール形成と溶媒固有の性質との間に相関がないことを示している。しかし、2組の溶媒生成物の間(
図1と
図2との間)の差異は、水および/または一時溶媒中の添加剤(すなわち二次溶媒)が存在するか否かであることに留意されたい。一次溶媒中の二次溶媒の存在がピンホール形成の原因であるかどうかを試験するために、一次溶媒中に少量の水を意図的に添加することによって対照実験を行った。
【0024】
図3は、1vol%および5vol%の脱イオン水(DI−H
2O、18MΩ・cm)をクロロベンゼン、ジクロロメタンおよびクロロホルムに添加した、spiro−MeOTAD膜の表面モルフォロジーを示す。具体的には、
図3(a)および(b)は、1vol%および5vol%の脱イオン水を添加したサプライヤAのクロロベンゼンを用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜のタッピングモードAFMトポグラフィ画像をそれぞれ示し、
図3(c)および(d)はそれぞれ、1vol%および5vol%の脱イオン水を添加したサプライヤBのジクロロメタンを用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示し、
図3(e)および(f)はそれぞれ、1vol%および5vol%の脱イオン水を添加したサプライヤBのクロロホルムを用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示す。クロロベンゼン溶媒は、より大きいピンホールの形成によって示されるように、ジクロロメタン溶媒またはクロロホルム溶媒より多くの水分子を吸収することが観察された。クロロホルムまたはジクロロメタンの製品貯蔵寿命を延ばすために少量で使用される周知の添加剤/安定剤である少量の2−メチル−2−ブテン(アミレン)を意図的に添加することによって、さらなる実験を行った。従って、さらに、
図3は、5vol%および20vol%のアミレンがそれぞれ添加された(サプライヤBの)クロロホルムを用いて調製されたspiro−MeOTAD膜のAFMトポグラフィ画像を示す。全ての試料についてSi基板を使用し、10x10μm
2の(c)および(d)を除き、画像サイズは、それぞれ5x5μm
2である。
【0025】
ピンホールのサイズ分布を、
図3(a)〜
図3(h)に示すAFM画像に基づいて分析した。
図4は、クロロベンゼン、ジクロロメタン、又はクロロホルムの一次溶媒中に二次溶媒のH
2O又はアミレンを意図的に添加した場合の試料中のピンホール直径の分布傾向を示すヒストグラムを示す。
図4(a)〜(h)のヒストグラムはそれぞれ、
図3(a)〜(h)のAFM画像に対応する。(a)および(b)のヒストグラムに基づく分析は、1vol%および5vol%のDI−H
2O二次溶媒を有するクロロベンゼン一次溶媒を用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜は、それぞれ、平均直径93.2±78.5nmおよび118.2±102.9nmのピンホールを生成することを示している。(c)および(d)のヒストグラムに基づく分析は、1vol%および5vol%のDI−H
2O二次溶媒を有するジクロロメタン一次溶媒を用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜は、それぞれ、より大きな平均直径273±124nmおよび345±89nmを生成することを示している。一方、(e)および(f)のヒストグラムに基づく分析は、同量の1vol%および5vol%のDI−H
2O二次溶媒を有するクロロホルム一次溶媒を用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜は、平均直径45.2±16.5nmおよび43.8±17.8nmのはるかに小さいサイズのピンホールを生成することを示している。(g)および(h)のヒストグラムに基づく分析は、5vol%および20vol%のアミレン二次溶媒を有するクロロホルム一次溶媒を用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜は、平均直径41.8±8.8nmおよび68.3±21.0nmのピンホールを生成することを示している。これらのヒストグラムに示されるように、生成されたピンホールの特徴的な寸法は1〜100nmのオーダーであり、1μm未満である。
【0026】
ピンホール形成に関連する特性がspiro−MeOTADのような小さな有機分子に特異的であるかどうかを調べるために、長鎖炭化水素単位からなるポリマーであるポリスチレンを用いて上記と同じ実験を行った。様々なポリスチレン溶液をSi基板上にスピンコートした。
図5(a)、(c)、(e)および(g)はそれぞれ、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエンおよびクロロホルムを用いて調製し、スピンコートしたポリスチレン膜の各画像サイズ5x5μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示し、
図5(b)、(d)、(f)および(h)はそれぞれ、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエンおよびクロロホルムを用いて調製し、スピンコートしたポリスチレン膜の各画像サイズ2x2μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示す。全ての溶媒は、サプライヤBからのものである。試料の写真が挿入図に示されている。spiro−MeOTADを使用する場合と同様に、識別可能な色差が観察される。ポリスチレンをクロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエンおよびクロロホルムにそれぞれ溶解させた場合、抽出分析に基づく結果はそれぞれ、厚さ76±2nm、205±10nm、110±10nmおよび143±6nmである。spiro−MeOTADを使用した場合と同様に、厚さの傾向はT
Bと相関し、最も低いT
Bを有する溶媒(ジクロロメタン)が最も厚いポリスチレン膜を生成し、最も高いT
Bを有する溶媒(クロロベンゼン)が最も薄い膜を生成する。比較実験は、ポリスチレンをサプライヤAのクロロベンゼンに溶解した場合、ピンホールがAFMで確認できることを示した。
図6は、サプライヤAのクロロベンゼンを用いて調製し、スピンコートしたポリスチレン膜の画像サイズ5x5μm
2のタッピングモードAFMトポグラフィ画像である。Siを基板に使用した。
【0027】
さらなるAFM研究が行われ、一次溶媒および二次溶媒の種類および量から生じるピンホール形成への影響を比較するためのデータおよび写真が以下に提供される。
【0028】
図7は、溶媒として、(a)では(サプライヤAの)既製のクロロベンゼン製品を用いて調製し、(b)では、クロロベンゼンと1vol%脱イオン水とを用いて調製し、(c)では、クロロベンゼンと2vol%脱イオン水とを用いて調製し、(d)では、クロロベンゼンと5vol%脱イオン水とを用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜の画像サイズ5x5μm
2の一連のAFM画像を示す。これらのAFM画像は、溶媒中の脱イオン水の量が増加するにつれて個々のピンホールのサイズが一般に増加することを示している。RMS表面粗さは、(a)において0.56nm、(b)において1.27nm、(c)において1.78nm、(d)において2.37nmと測定された。
【0029】
図8は、溶媒として、(a)では、(サプライヤBの)既製のクロロホルム製品を用いて調製し、(b)では、クロロホルムと1vol%脱イオン水とを用いて調製し、(c)では、クロロホルムと2vol%脱イオン水とを用いて調製し、(d)では、クロロホルムと5vol%脱イオン水とを用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ5x5μm
2の一例のAFM画像を示す。RMS表面粗さは、(a)では0.20nm、(b)では0.21nm、(c)では0.17nm、および(d)では0.18nmと測定された。(a)のAMF画像にはピンホールは見えない。統計的分析の結果、(b)では、ピンホールの平均直径は106±36nmであり、密度は2ピンホール/μm
2であり、(c)では、ピンホールの平均直径は89±20nmであり、密度は3ピンホール/μm
2であり、(d)では、ピンホールの平均直径は97±41nmであり、密度は2ピンホール/μm
2である。
【0030】
図9は、溶媒として、(a)では、(サプライヤBの、超脱水の)既製のクロロホルム製品されている)を用いて調製し、(b)では、クロロホルムと5vol%アミレンとを用いて調製し、(c)では、クロロホルムと10vol%アミレンとを用いて調製し、(d)では、クロロホルムと20vol%アミレンとを用いて調製し、スピンコートしたspiro−MeOTAD膜の各画像サイズ5x5μm
2の一連のAFM画像を示す。これらの図から分かるように、アミレンの取り込みはピンホールの形成をもたらす。意図的に添加されるアミレンの量が増加すると、ピンホールの平均直径が大きくなる傾向がある。
【0031】
本実験および本分析は、正孔輸送層中のピンホールの生成と、HTMを溶解するために使用される溶媒の固有の物理化学的特性との間に直接の相関がないことを示している。しかし、異なるサプライヤからの既製の溶媒製品は、異なる量および種類の水および/または添加剤を含む可能性がある。意図的に少量の水またはアミレン(溶媒の寿命を延ばすために一般的に使用される添加剤)を添加することによる対照実験は、ピンホール形成、サイズおよび分布が水および/または添加剤の量と密接に関係していることを示した。HTMがC原子およびH原子の長い鎖からなるポリマーであるポリスチレンである場合にも、ピンホールが観察されたので、上記の知見は小さな有機分子だけに固有のものではない可能性がある。本実験結果と解析結果から、HTM膜にピンホールが形成される原因は次のようなメカニズムであると考えられる。
【0032】
図10は、ピンホールの形成のメカニズムを概略的に示すプロセスシーケンス、ステップ1〜ステップ3を示す。溶媒は、通常、クロロホルム、クロロベンゼン、またはジクロロメタンなどの一次溶媒だけでなく、少量の二次溶媒も含む。二次溶媒は、意図的に取り込まれた添加剤または溶媒の安定性および/または貯蔵寿命を改善するための安定剤のような添加剤であってもよい。二次溶媒は、湿った空気に曝されたとき、または貯蔵中の一次溶媒を含む容器にそのような湿った空気が入るとき、一次溶媒に入る水のような意図せずに組み込まれた物質であってもよい。二次溶媒が一次溶媒と不混和性であり、溶質物質が二次溶媒への溶解性が低い場合、二次溶媒は溶液中に小さな懸濁液滴の形で残る。これらの小さな懸濁液滴は主に一次溶媒に溶解された溶質材料から分離された二次溶媒を含む。ステップ1は、一次溶媒に溶解されたspiro−MeOTADのようなHTMと主に二次溶媒からなる懸濁液滴とを含む溶液が基板上に置かれることを示している。次いで、溶液を基材上に広げる。ステップ2に示すように、基板上に溶液を塗布するためにスピンコーティングを行うことができる。回転により、溶液は遠心力によって基板表面上に広がり、基板に付着し得る量の溶液を基板に残して、最終的に余分な溶液は飛散する。スピンコートされた材料中の二次溶媒を主に含む懸濁液滴は、ステップ3に示すように、コーティングされた膜にピンホールをもたらす。試料の回転中、一次溶媒に組み込まれた二次溶媒の複雑な物理化学的動的プロセスは、コーティングされた膜の上面の近傍に形成される単純なピンホールだけでなく、膜内でより複雑な揺動チャネルも生成すると予測される。
【0033】
したがって、HTM中のピンホールは、以下の要因に基づいて形成され得る:(i)一次溶媒および二次溶媒が互いに不混和性である、(ii)溶質物質(すなわち、本例ではspiro−MeOTADのようなHTM)は、二次溶媒よりも一次溶媒に溶解性が高い。前述したように、HTMの例としては、spiro−MeOTAD、ポリスチレン、P3H、PTAAなどが挙げられる。ある物質の別の物質への溶解度は、主として溶媒と溶質との間の分子間力のバランスによって決定され、溶媒と溶質物質の多種多様な組み合わせについて知られている。あるいは、選択された特定の材料を使用する前に、多種多様な組み合わせについて溶解度を測定することができる。したがって、特定のHTMが選択されると、一次溶媒および二次溶媒の種類および量を主に調整することによって、制御された方法でピンホールを形成することが可能である。
【0034】
HTMにおけるピンホール形成を利用して表面のパターニングおよび機能化を行うために、本研究で追加の実験を行った。
図11は、HTMのピンホールの制御された形成によって生成された表面パターンを複製する例示的なプロセスを示す。具体的には、ピンホールを含むHTM膜を型として使用してスタンプを製造する。(a)では、spiro−MeOTAD膜が基板上に形成され、この膜は、
図10を参照して説明したプロセスによって制御されるように所定のおおよそのサイズおよび密度を有するピンホールを含む。基板は、例えば、典型的なSi(001)であってもよい。ピンホールのサイズ及び密度は、近似値で与えられてもよいし、実験によって得られるデータ、製造業者の仕様並びに/または溶質材料(すなわち、HTM)、一次溶媒及び二次溶媒の物理化学的性質に基づいて、特定のエラーバー内で統計的に予め決定されていてもよいことを理解されたい。実験によって得られるデータは、ピンホール形成プロセスにおいて、異なる種類及び量の一次溶媒および二次溶媒並びに溶質材料を使用し、スピン速度および時間を変更し、異なる種類及びサイズの基板を使用し、他の物理的、化学的および機械的パラメータを使用することによって、実験及びAFMトポグラフィに基づく解析等の分析によって得てもよい。一旦、溶質材料および基板が選択されると、例えば、HTMとしてspiro−MeOTAD及び基板としてSiが選択されると、残りの重要なパラメータは、一次溶媒および二次溶媒の種類および量であることに留意されたい。
【0035】
ピンホールを含むspiro−MeOTAD膜の表面パターンの複製は、CYTOP(商標)を用いて行った。CYTOPは、特定のフッ素化溶媒に良好な溶解性を有するが、その特定のアモルファス構造に起因して最も典型的な溶媒に不溶であるアモルファスフッ素重合体である。これにより、熱可塑性の特性と相まって、さまざまな電子材料に対して1μm未満の厚さの誘電体コーティングとして使用するのに適している。本実験では、いずれも商業的サプライヤから購入した2つのCYTOPを混合することによって、CYTOPの溶液を調製した。スピン、ディップ、スプレー、ダイコートなど、さまざまな塗布方法を利用できる。表面パターンを複製するために使用され得る他の材料としては、アモルファスフッ素重合体の別例であるテフロン、透明な熱可塑性ポリマーであるポリメタクリル酸メチル(PMMA)、およびシリコンエラストマーであるSylgard(登録商標)184が挙げられる。表面パターンを複製するためのこれらの候補材料は、一般に熱可塑性ポリマーである。
【0036】
図11に示すように、CYTOPは、ピンホールを有するspiro−MeOTAD層上にスピンコートされる本実験における複製材料として使用された。具体的には、CYTOPの溶液をspiro−MeOTAD膜上に1000rpmで60秒間スピンコートし、続いて約100℃で30分間加熱して乾燥させ、spiro−MeOTAD膜上にCYTOPの薄膜コーティングを得た。ピンホールを含むspiro−MeOTAD膜上にコーティング材料を塗布するために、スピンコーティング以外の方法を実施することができる。可能な塗布方法には、スピン、ディップ、スプレーおよびダイコートが含まれる。CYTOPはspiro−MeOTADと直交する特定のフッ素化溶媒に溶解することができる。すなわち、CYTOP溶液はspiro−MeOTADを溶解しない。spiro−MeOTADの代わりに、先に挙げたもののようなHTMのいずれかを用いて型を形成してもよい。CYTOP溶液の代わりに、選択されたモールド材料に直交する任意の材料を使用してもよい。ピンホールを含むspiro−MeOTAD膜上にCYTOPをスピンコーティングした後、試料を乾燥させ、乾燥したCYTOP層を(c)および(d)に示すように剥離する。剥離したCYTOPの背面を、スタンプとしての使用を容易にするために、Si基板または任意の適切な支持プレートに取り付けることができる。
【0037】
図12(a)は、
図10に示す工程で形成された、ピンホールを含むspiro−MeOTAD膜のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示し、
図12(b)は、
図11に示す工程で形成された、CYTOP膜に転写されたピンホール構造の複製のタッピングモードAFMトポグラフィ画像を示す。各画像サイズは、10x10μm
2である。
【0038】
図13(a)は、ピンホールを含むspiro−MeOTAD膜におけるピンホール深さのAFM解析結果の例を示し、
図13(b)は、CYTOP膜に作製した複製のロッド高さのAFM解析結果の例を示す。(a)において、上図は、spiro−MeOTAD膜における平均深さが37±5nmの4つのピンホールの測定された水平および垂直寸法を示すプロットである。左下の図は、4つのピンホールを含む5.0×5.0μm
2の画像サイズを有するspiro−MeOTAD膜のAFM画像の斜視図である。右下の図は、それぞれ長さ1.5μmの水平方向の測定方向で示される、4つのピンホールを含む、5.0×5.0μm
2の画像サイズのAFM画像である。(b)において、上図は、CYTOP膜において平均高さが16.5±3.2nmの4つのロッドの測定された水平および垂直寸法を示すプロットである。右下の図は、4つのロッドを含む5.0×5.0μm
2の画像サイズを有するCYTOP膜のAFM画像の斜視図である。左下の図は、それぞれ長さ1.5μmの水平方向の測定方向で示された4つのロッドを含む、5.0×5.0μm
2の画像サイズのAFM画像である。
【0039】
本AFM測定により、spiro−MeOTAD膜内のピンホール構造が、CYTOP膜の表面上に形成された突出したロッドに変換されることによって複製されることが確認された。したがって、本プロセスでは、ピンホールを有するspiro−MeOTAD膜が型として機能し、剥離されたCYTOP膜は、ナノスケールパターニングまたは他の用途においてパターン化された表面を作製するために使用されるスタンプとして機能する。ここで、ナノスケールは1〜100nm、すなわち1μm未満のオーダーであると定義される。
図13の分析結果と共に
図4のピンホール直径のヒストグラムに示すように、ピンホール及び複製のロッドは、本方法によれば、1〜100nm、1μm未満のオーダーの特性寸法で形成することができる。
【0040】
既存のパターニング方法の例としては、型として硬いシリコンのマスタを最初にパターン形成するフォトリソグラフィ技術を含む表面パターニング方法であるマイクロコンタクト・プリンティングが挙げられる。フォトリソグラフィでは、シリコンウェハの表面をUV光に敏感なフォトレジスト膜で被覆し、その後、金属フォトマスクを介して露光する。光は非金属化領域を介してマスクを通過し、マスク上の所定のパターンに従ってフォトレジスト膜の領域感受性重合(または分解)を生成する。この印刷方法では、フォトリソグラフィにおけるフォトレジストと同様に、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて、金にチオールを自己組織化単分子層形成することに基づいて、パターンを型から別の基板に複製することができ、例えば、エッチングレジスト層を提供する。別の例は、ブロック共重合体を使用しミクロ相分離を利用して周期的なナノスケール構造を生成する方法である。ブロック共重合体は、互いに結合して重合した2つ以上の異なるモノマーに由来する化学的に異なる繰り返し単位の配列または複数のブロックからなる共重合体である。トリブロックターポリマーの合成および薄膜組立は、インプリンティングによって別のポリマー層に転写される、ナノスケール環状パターンを生成することが報告されている。さらに別の例は、2つの非混和性ポリマー間の側方相分離を利用してナノスケールパターンを生成する方法である。この方法の一例のプロセスでは、メチルエチルケトン(MEK)に溶解したポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)との混合物を基板上にスピンコートすると、PMMAマトリックス内にPS液滴を得る。PSまたはPMMA成分のいずれかのその後の選択的溶解は、金属の熱蒸発による金属パターンを作製するためのリソグラフィマスクとして使用することができるナノ構造の膜を残し、続いてリフトオフプロセスを行う。一般に、パターニングのこれらおよび他の既存の方法は、プロセスに含まれる複数のステップに起因して複雑である。
【0041】
活性層用のペロブスカイトを含むオプトエレクトロニクス用途では、正孔輸送層に生成されるピンホールは、デバイス性能を劣化させる欠陥である。しかし、本研究によれば、正孔輸送材料中のピンホールの形成を積極的に利用して、ナノスケールの表面パターンおよびその複製を生成することができる。先に説明したように、ピンホール形成は、主に一次(第1の)溶媒および二次(第2の)溶媒の種類および量を調整することによって制御することができる。スピンコーティング法は、一般に、薄膜合成のための容易で迅速な手順を提供する。ナノスケールパターニングの本方法は、互いに混和しない所定量の第1の溶媒および第2の溶媒を混合して溶媒を生成し、第2の溶媒よりも第1の溶媒への溶解性が高い溶質材料を溶媒に溶解させてコーティング材料を生成し、基材上にコーティング材料を塗布して、コーティング材料中に複数のピンホールを形成することを含む。複数のピンホールの形成は、コーティング材料中の、第1の溶媒に溶解した溶質材料から分離した第2の溶媒を主成分とする懸濁液滴に関連する。ナノスケールパターンを有するスタンプを作製する方法は、上記方法に基づいており、複数のピンホールを含むコーティング材料の表面のパターンを複製材料の表面に複製するために、複数のピンホールを含むコーティング材料上に複製材料を塗布し、コーティング材料から複製材料を剥離することを含む。剥離した複製材料は、スタンプ用途のために構成される。したがって、通常、複数のステップおよび高価な機器(例えば、フォトリソグラフィ機器)を必要とする既存の方法と比較して、本方法は簡単であり、安価である。本方法は、スケールアップおよび大面積生産との互換性によってさらに特徴付けられる。このために、スピンコーティングの代わりにスロットダイコーティングを使用してもよい。本方法は、高価な真空システムを必要とすることなく、低温および大気圧で行うことができる。
【0042】
本文書は多くの特定を含むが、これらは発明または特許請求されたものの範囲を限定すると解釈されるべきではなく、発明の特定の実施形態の特徴を明示するものと解釈されるべきである。本文書において別々に実施形態の文脈において述べられたある特徴は1つの実施形態の中で組み合わせることもできる。反対に、1つの実施形態の文脈の中で述べられた様々な特徴は、別々の複数の実施形態または適当なサブコンビネーションに実装することもできる。さらに、特徴が特定の組み合わせで作用するもの、および初めに特許請求された特徴として説明されていても、ある場合には特許請求された組み合わせのうち1つ以上の特徴が、その組み合わせから用いられてもよいし、また特許請求されたものの組み合わせは、サブコンビネーションまたは種々のサブコンビネーションの変形を対象にしてもよい。