【実施例】
【0018】
図1〜
図6に実施例を示す。各図において、印刷機2はオフセット印刷機、凸版印刷機等で、インキ壺装置4を備えている。なお
図1の鎖線で、インキ壺装置4の範囲を示す。インキ壺6は固定のフレーム8の上部に可動のプレート10を備え、12はプレート10を進退させる進退機構である。14は、インキ壺6とインキ壺ローラ26との間のインキ溜で、プレート10の上面は例えばフィルム16で覆われ、ローラ17からフィルム16を繰り出し、ローラ18にフィルム16を巻き取る。
【0019】
20はブレードで、インキをインキ壺ローラ26から掻き取り、パン21に掻き取ったインキを受ける。進退機構22により、ブレード20はインキ壺ローラ26に接触する位置と非接触の位置との間で進退する。24はインキ壺装置4のコントローラで、進退機構12,22等を制御する。
【0020】
26はインキ壺ローラ、30はダクターローラである。複数の練りローラ32を介し、インキは、インキ壺ローラ26,ダクターローラ30から版胴ローラ34へ搬送され、紙、缶、プラスチックのディスク等の印刷媒体に印刷される。なおオフセット印刷機の場合、版胴ローラ34から図示しないブランケットローラを介して、印刷媒体へインキを印刷する。またインキ供給部28はインキ溜14へインキを供給する。ダクターローラ30は
図1の左右方向に進退し、前進してインキ壺ローラ26と接触した際にインキを受け取り、後退して練りローラ32と接触した際にインキを練りローラ32へ渡す。ダクターローラ30を軸方向に沿って複数の個別のダクターローラに分割し、個別のダクターローラ毎に進退させても良く、あるいは分割せずにダクターローラ30を一括して進退させても良い。さらに印刷機の種類は、インキ壺ローラ26とインキ壺6との間にインキ溜14を形成するものであればよい。
【0021】
好ましくは、インキ壺ローラ26の軸方向に沿って、インキ濃度を監視するセンサSを設ける。軸方向に沿ってのインキ濃度が不均一な場合、センサSはコントローラ24へインキ壺ローラ26とインキ壺6との隙間が紙粉等で詰まっている旨の信号を入力する。なお印刷媒体でのインキ濃度を監視するセンサを設け、インキ壺ローラ26の軸方向に沿って印刷濃度のムラが生じていることを、コントローラ24に入力しても良い。またインキ壺ローラ26とインキ壺6との隙間が紙粉等で詰まっていることを、作業者がマニュアルでコントローラ24へ入力しても良い。これらの入力に対して、コントローラ24は進退機構12,22を制御し、インキ壺6とインキ壺ローラ26との隙間を清掃する。またこれ以外に、印刷機を所定時間動作させる毎に、あるいは所定の枚数の紙に印刷する毎に、インキ壺6とインキ壺ローラ26との隙間を清掃しても良い。
【0022】
インキ壺ローラ26とインキ壺6との隙間を、
図2にgとして示す。この隙間に紙粉,水分,その他の汚れが溜まると、インキが固まり、隙間を通過できなくなる。この結果、インキ壺ローラ26の軸方向に沿って印刷濃度が変動する。そこで隙間gを一時的に拡げ、隙間に詰まった紙粉等をインキと共に排出し、ブレード21により掻き取る。
【0023】
隙間gが(
図2)が紙粉等で詰まっている場合、コントローラ24はインキ壺6を後退させ、インキ壺ローラ26とインキ壺6との隙間gを拡げ、隙間のインキを排出する。さらにインキ壺6の後退と同期して、ブレード20をインキ壺ローラ26に接触する位置へ前進させ、インキを掻き取る。その後、インキ壺6をインキ壺ローラ26側へ前進させ、これと同期して、ブレード20を後退させる。なお印刷濃度は隙間gの幅により変動するので、隙間gの幅を正確に制御する必要がある。
【0024】
隙間gの幅を一時的に拡げ、ブレード20で排出されたインキを掻き取ると、練りローラ32へのインキ供給量が一時的に低下する。そこで好ましくは、
・ 隙間gの清掃の例えば前後に、ダクターローラ30をインキ壺ローラ26と接触させるデューテイ比を増す、あるいは
・ 隙間gの例えば清掃前〜清掃中に、インキ溜14へインキ供給部28からインキを補充し、インキ溜14のインキ量を増す、等の処理を行う。これらの処理を、コントローラ24からの信号により実行する。
【0025】
図2〜
図4に、インキ壺6の構造を示す。この明細書では、
図2に示すように、インキ壺ローラ26側へインキ壺6が移動し、隙間gを狭めることを前進、インキ壺ローラ26から離れて隙間gを拡げることを後退という。またインキ壺ローラ26の軸方向に平行な方向を左右方向という。さらにプレート10は先端がインキ壺ローラ26と向き合うものとする。
【0026】
図2に示すように、インキ壺6の背面(インキ壺ローラ26とは反対側の面)の左右2箇所に、進退機構12を設ける。またインキ壺6の左右方向中央部にガイド37を設け、プレート10の進退をガイドする。そしてインキ壺6の背面の例えば2〜3箇所に付勢部36を設けて、プレート10をインキ壺ローラ26側へ付勢する。
【0027】
図3,
図4に、プレート10の進退機構12を示す。フレーム6の背面にリセス40を設け、進退機構12を収容する。41はサーボモータで、パルスモータ等の簡便なモータでも良い。サーボモータ41の出力軸42にカム43を取り付ける。カム43は、軸42と直交する断面において、軸42を中心とする真円から僅かにシフトした形状をしている。そして真円からのシフト量が、プレート10の進退量となる。カム43の周面がカム面である。カム面にロッド44の一端が接触し、ロッド44の他端に調整ネジ45が接触している。そして調整ネジ45を取り付けプレート47にネジ止めし、プレート47を例えば2個のノックピン48によりプレート10に固定する。なおカム43はケーシング46内に回転自在に収容され、プレート10へのプレート47の固定方法は任意である。
【0028】
図5に付勢部36の構造を示す。フレーム8にプレート51をボルト52等で固定し、圧縮バネ53をプレート51とプレート10の間に配置し、プレート10をインキ壺ローラ26側へ付勢する。付勢部36の役割はプレート10をインキ壺ローラ26側へ付勢することで、その構造自体は任意である。なお進退機構のプレート47をバネでカム43側へ付勢しても良いが、進退機構が大型化する。
【0029】
進退機構12の動作を説明する。カム43の位相とインキ壺プレートの進退量(カム面とカムの中心軸との距離)との関係を
図6に示す。プレート10は付勢部36により前進方向に付勢されているので、ロッド44の一端は常にカム43のカム面に接触し、他端は常に調整ネジ45に接触している。サーボモータ41によりカム43を回転させると、ロッド44が進退し、調整ネジ45を介して取り付けプレート47も進退する。そしてプレート10をノックピン48によりプレート47に固定しているので、カム43の回転により、プレート10が進退する。
【0030】
進退機構12は剛性が高い。このためプレート10をサーボモータ41の回転に正確に追随して進退させることができる。例えば、サーボモータ41とプレート10の間に長いロッド等が無いので、サーボモータ41の回転がそのままプレート10の進退として現れる。また歯車がないので、バックラッシも無い。そしてプレート10の位置は、調整ネジ45を取り付けプレート47に対し進退させることにより、微調整できる。
【0031】
カム43を用いてプレート10を、
・ 隙間gの幅がほぼ0で、インキ溜14からのインキ漏れを防止する休止、
・ 隙間gの幅を所定の値に保ち、インキ壺6とインキ壺ローラ26との隙間gからインキを供給する印刷、
・ 隙間gを拡げ、紙粉等をインキと共に排出することにより、隙間gを清掃する清掃、
の3状態の間で切り替えることができる。
【0032】
実施例では、隙間gの幅を正確に制御できるので、清掃後に隙間gの幅を例えば清掃前の幅に正確に戻すことができる。そして隙間gを拡げることにより、インキ壺6とインキ壺ローラ26との隙間gに詰まった紙粉等を排出し、正常な印刷を行うことができる。夜間等に印刷機2を休止する場合、プレート10は付勢部36からの付勢力でインキ壺ローラ26に接触するので、インキ漏れが生じない。従って、印刷機2の休止前にインキ溜14のインキを取り除く必要がない。
【0033】
実施例では左右2個の進退機構12に各々サーボモータ41を設けた。しかし、フレーム8の例えば背面中央部に1個のサーボモータを設けて、その軸を左右一対の進退機構まで延長しても良い。ただしこのようにすると、軸の捩れにより隙間gの幅の制御精度が低下する可能性がある。またフレーム8の例えば背面中央部の1箇所のみに進退機構12を設け、フレーム8の左右両側にガイド37を設けても良い。ただしこのようにすると、プレート10が進退中に傾く可能性が生じる。
【0034】
実施例の進退機構12により、隙間gの幅を正確に調整すると、
・ 隙間gを一時的に拡げることにより、紙粉等の汚れをインキ壺6とインキ壺ローラ26との隙間から除去できる。
・ またインキの種類、所望の印刷濃度等に応じ、インキ溜14からのインキ供給量を制御できる。