特許第6882802号(P6882802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6882802畜産情報管理システム、畜産情報管理サーバ、畜産情報管理方法、及び畜産情報管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6882802
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】畜産情報管理システム、畜産情報管理サーバ、畜産情報管理方法、及び畜産情報管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20210524BHJP
【FI】
   G06Q50/02
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-7263(P2020-7263)
(22)【出願日】2020年1月21日
【審査請求日】2020年1月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518329170
【氏名又は名称】株式会社Eco‐Pork
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100208395
【弁理士】
【氏名又は名称】北畠 健二
(72)【発明者】
【氏名】荒深 慎介
【審査官】 加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−328967(JP,A)
【文献】 特開2015−167529(JP,A)
【文献】 特開2013−247941(JP,A)
【文献】 特開2013−215099(JP,A)
【文献】 実開昭62−121618(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の情報を管理する畜産情報管理システムであって、
ユーザへ表示する表示部と、
家畜又は家畜群の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、前記イベントを実施すべきタイミングを規定するイベント予定マスタ情報と、前記家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、前記識別子によって識別される前記家畜又は家畜群が前記イベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、前記ステータスが遷移したタイミングに関する履歴情報と、を記憶する情報記憶部と、
前記イベント予定マスタ情報は、前記イベントと、前記イベントの次のイベントの順序、及び/又は実施するまでのタイミング、に関する情報を示すイベント間隔情報をさらに含み、
前記履歴情報と、前記イベント予定マスタ情報とを比較して、前記家畜又は家畜群に対して前記イベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された前記家畜又は家畜群を前記イベントが未実施である対象家畜として抽出する家畜抽出部を備え、
前記家畜抽出部が抽出した前記対象家畜及び前記対象家畜に実施すべきイベントを前記表示部により表示する、畜産情報管理システム。
【請求項2】
前記イベントは、受入、交配、妊娠鑑定、分娩、哺乳、離乳、投薬、移動、出荷のうち少なくとも一つの作業を含む請求項1に記載の畜産情報管理システム。
【請求項3】
前記家畜抽出部は、前記履歴情報を用いて、前記家畜又は家畜群のステータスが遷移したタイミングから抽出のタイミングまでの間隔を算出し、前記間隔を前記イベント間隔情報に規定されたイベント間隔と比較し、前記家畜又は家畜群に対して前記イベントを実施したか否かを判定する、請求項1又は2に記載の畜産情報管理システム。
【請求項4】
前記イベント情報は、前記イベント毎に前記イベントを実施するのに必要な単位家畜又は家畜群あたりの標準工数を示す標準工数情報をさらに含み、
前記家畜抽出部は、抽出した前記対象家畜に該当する家畜数又は家畜群数と前記標準工数情報を用いて工数情報を算出し、前記工数情報に応じたタイミングで前記イベントを未実施である前記対象家畜を抽出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
【請求項5】
ユーザが操作する入力部と、
前記対象家畜を前記表示部により表示し、前記対象家畜に対してイベントを実施した結果について、前記入力部により入力された情報を用いて、前記ステータス情報の更新、又は前記対象家畜の前記表示の取下げを行うステータス管理部と、をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
【請求項6】
前記家畜抽出部が抽出した前記対象家畜をリスト及び/又はアラートとして通知する通知部を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
【請求項7】
家畜の情報を管理する畜産情報管理システムであって、
ユーザへ表示する表示部と、
ユーザが操作する入力部と、
家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、前記識別子によって識別される前記家畜又は家畜群の飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、前記ステータス情報に含まれる異常ステータスに対応するためのイベントを示すイベント情報とを記憶する情報記憶部と、
前記家畜又は家畜群に異常が発生した際に、前記家畜又は家畜群の前記ステータスを異常ステータスに遷移する操作を前記入力部により行うことで、前記ステータス情報を更新するステータス管理部と、
前記ステータス情報を用いて、前記ステータスが異常ステータスに遷移した前記家畜又は家畜群を対象家畜として抽出する家畜抽出部と、を備え、
前記家畜抽出部が抽出した前記対象家畜及び前記対象家畜の異常ステータスに対応するために実施すべきイベントを前記表示部により表示し、
前記ステータス管理部は、前記表示部に表示された前記対象家畜に対して前記異常ステータスに対応するためのイベントの実施の情報が前記入力部より入力された際に、前記ステータス情報を更新する、畜産情報管理システム。
【請求項8】
前記異常ステータスは、再発情、不受胎、流産、疾病、分娩遅延、死亡のうち少なくとも1つの状態を含み、前記イベントは前記異常に対応する種付又は廃用である、請求項7に記載の畜産情報管理システム。
【請求項9】
家畜の情報を管理する畜産情報管理システムであって、
家畜又は家畜群の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、前記家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、前記識別子によって識別される前記家畜又は家畜群が前記イベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、を記憶する情報記憶部と、
前記イベントが実施された家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、前記イベントの実施後に前記ステータスの遷移が生じた家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、を用いて、所定の期間内に、前記イベントが実施された結果として発生した前記ステータスに関する成績を生成する成績生成部を備え、
前記成績生成部は、前記所定の期間外における前記ステータスの遷移の原因となるイベントを実施した前記家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数とを抽出して前記成績を生成する畜産情報管理システム。
【請求項10】
前記成績が所定条件を満たす場合に、前記成績に関する情報をユーザに通知する通知部を備える、請求項9に記載の畜産情報管理システム。
【請求項11】
前記家畜は豚である、請求項1から10のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
【請求項12】
家畜の情報を管理する畜産情報管理サーバであって、
ユーザへ表示する表示部と、
家畜又は家畜群の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、前記イベントを実施すべきタイミングを規定するイベント予定マスタ情報と、前記家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、前記識別子によって識別される前記家畜又は家畜群が前記イベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、前記ステータスが遷移したタイミングに関する履歴情報と、を記憶する情報記憶部と、
前記イベント予定マスタ情報は、前記イベントと、前記イベントの次のイベントの順序、及び/又は実施するまでのタイミング、に関する情報を示すイベント間隔情報をさらに含み、
前記履歴情報と、前記イベント予定マスタ情報とを比較して、前記家畜又は家畜群に対して前記イベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された前記家畜又は家畜群を前記イベントが未実施である対象家畜として抽出する家畜抽出部を備え、
前記家畜抽出部が抽出した前記対象家畜及び前記対象家畜に実施すべきイベントを前記表示部により表示する、畜産情報管理サーバ。
【請求項13】
家畜の情報を管理する畜産情報管理サーバであって、
ユーザへ表示する表示部と、
ユーザが操作する入力部と、
家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、前記識別子によって識別される前記家畜又は家畜群の飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、前記ステータス情報に含まれる異常ステータスに対応するためのイベントを示すイベント情報とを記憶する情報記憶部と、
前記家畜又は家畜群に異常が発生した際に、前記家畜又は家畜群の前記ステータスを異常ステータスに遷移する操作を前記入力部により行うことで、前記ステータス情報を更新するステータス管理部と、
前記ステータス情報を用いて、前記ステータスが異常ステータスに遷移した前記家畜又は家畜群を対象家畜として抽出する家畜抽出部と、を備え、
前記家畜抽出部が抽出した前記対象家畜及び前記対象家畜の異常ステータスに対応するために実施すべきイベントを前記表示部により表示し、
前記ステータス管理部は、前記表示部に表示された前記対象家畜に対して前記異常ステータスに対応するためのイベントの実施の情報が前記入力部より入力された際に、前記ステータス情報を更新する、畜産情報管理サーバ。
【請求項14】
家畜の情報を管理する畜産情報管理サーバであって、
家畜の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、前記家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、前記識別子によって識別される前記家畜又は家畜群が前記イベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、を記憶する情報記憶部と、
前記イベントが実施された家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、前記イベントの実施後に前記ステータスの遷移が生じた家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、を用いて、所定の期間内に、前記イベントが実施された結果として発生した前記ステータスに関する成績を生成する成績生成部を備え、
前記成績生成部は、前記所定の期間外における前記ステータスの遷移の原因となるイベントを実施した前記家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数を抽出して前記成績を生成する畜産情報管理サーバ。
【請求項15】
家畜の情報を管理する畜産情報管理方法であって、
家畜抽出部が、家畜又は家畜群の飼養状態を示すステータスが遷移したタイミングに関する履歴情報と、イベント予定マスタ情報に含まれる家畜の飼養のために実施するイベントを実施すべきタイミングと前記イベントの次のイベントの順序、及び/又は実施するまでのタイミングに関する情報を示すイベント間隔情報を比較して、前記家畜又は家畜群に対して前記イベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された前記家畜又は家畜群を前記イベントが未実施である対象家畜として抽出する家畜抽出ステップと、
前記家畜抽出部が抽出した前記対象家畜及び前記対象家畜に実施すべきイベントを表示部によりユーザに表示するステップと、
を備える畜産情報管理方法。
【請求項16】
家畜の情報を管理する畜産情報管理方法であって、
ステータス管理部が、ユーザが操作する入力部の指示により、家畜又は家畜群に異常が発生した際に、前記家畜又は家畜群の飼養状態を示すステータスを、異常ステータスに遷移するように更新するステータス入力ステップと、
家畜抽出部が、前記ステータスを用いて、前記異常ステータスに遷移した前記家畜又は家畜群を対象家畜として抽出する家畜抽出ステップと、
前記家畜抽出部が抽出した前記対家畜及び前記対象家畜の異常ステータスに対応するために実施すべきイベントを表示部によりユーザに表示するステップと、
前記ステータス管理部が、前記ユーザが操作する入力部の指示により、前記表示部に表示された前記対象家畜に対して前記異常ステータスに対応するためのイベントの実施の情報が前記入力部より入力された際に、前記ステータス更新するステータス管理ステップ、を備える畜産情報管理方法。
【請求項17】
家畜の情報を管理する畜産情報管理方法であって、
成績生成部が、家畜の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、前記家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、前記識別子によって識別される前記家畜又は家畜群が前記イベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、前記イベントが実施された家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、前記イベント実施後に、前記ステータスの遷移が生じた家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数を用いて、
所定の期間内に、前記イベントが実施された結果として発生した前記ステータスに関する成績を、前記所定の期間外における前記ステータスの遷移の原因となるイベントを実施した前記家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数を抽出して生成する成績生成ステップ、を備える畜産情報管理方法。
【請求項18】
家畜の情報を管理する畜産情報管理プログラムであって、
家畜抽出部が、家畜又は家畜群の飼養状態を示すステータスが遷移したタイミングに関する履歴情報と、イベント予定マスタ情報に含まれる家畜の飼養のために実施するイベントを実施すべきタイミングと前記イベントの次のイベントの順序、及び/又は実施するまでのタイミングに関する情報を示すイベント間隔情報を比較して、前記家畜又は家畜群に対して前記イベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された前記家畜又は家畜群を前記イベントが未実施である対象家畜として抽出する家畜抽出ステップと、
前記家畜抽出部が抽出した前記対象家畜及び前記対象家畜に実施すべきイベントを表示部によりユーザに表示するステップと、
をコンピュータに実施させる畜産情報管理プログラム。
【請求項19】
家畜の情報を管理する畜産情報管理プログラムであって、
ステータス管理部が、ユーザが操作する入力部の指示により、家畜又は家畜群に異常が発生した際に、前記家畜又は家畜群の飼養状態を示すステータスを、異常ステータスに遷移するように更新するステータス入力ステップと、
家畜抽出部が、前記ステータスを用いて、前記異常ステータスに遷移した前記家畜又は家畜群を対象家畜として抽出する家畜抽出ステップと、
前記家畜抽出部が抽出した前記対象家畜及び前記対象家畜の異常ステータスに対応するために実施すべきイベントを表示部により表示するステップと、
前記ステータス管理部が、前記ユーザが操作する入力部の指示により、前記表示部に表示された前記対象家畜に対して前記異常ステータスに対応するためのイベントの実施の情報が前記入力部より入力された際に、前記ステータス更新するステータス管理ステップ、をコンピュータに実施させる畜産情報管理プログラム。
【請求項20】
家畜の情報を管理する畜産情報管理プログラムであって、
成績生成部が、家畜の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、前記家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、前記識別子によって識別される前記家畜又は家畜群が前記イベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、前記イベントが実施された家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、前記イベント実施後に、前記ステータスの遷移が生じた家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数を用いて、
所定の期間内に、前記イベントが実施された結果として発生した前記ステータスに関する成績を、前記所定の期間外における前記ステータスの遷移の原因となるイベントを実施した前記家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数を抽出して生成する成績生成ステップ、
をコンピュータに実施させる畜産情報管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜産業における家畜に対して実施する交配(種付)、妊娠鑑定、分娩、離乳、給餌、又は投薬等の作業(イベント)の情報の記録を管理するための畜産情報管理システム、畜産情報管理サーバ、畜産情報管理方法、及び畜産情報管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
畜産業においては、食の安全性の担保や生産性を効率的に高めるため、家畜の飼養履歴情報の管理が求められている。従来からも飼養履歴情報の管理は行われてきたが、ユーザが家畜舎等で紙に記録を取り、それらをコンピュータに入力する等の作業が求められるものである。しかし、家畜の種類によっては、数千から数万の数の家畜を扱うため、膨大な数の履歴情報の管理を行うことは、管理の負荷増大や、情報の誤入力の可能性という問題があった。
【0003】
特許文献1には、畜産場所における畜産履歴情報の入力作業負担を軽減させる技術として、ユーザが日付及びグループを指定して、給餌・投薬履歴の入力操作を行うと、指定グループに対応するプランを参照し、指定日付に近い給餌・投薬予定を認識し、予定の飼料名・薬名を入力候補として提示してユーザが確認入力を行うと、履歴データ格納部に対して、入力候補として提示された飼料名・薬名を用いた履歴登録が自動的になされる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−158280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術は、飼育プランに応じて入力候補となる履歴情報を提示する技術であり、膨大な数の家畜に対するイベント(作業)を実施したか否かはユーザが管理しなければならず、イベントの実施結果について第三者の確認もできない。また、イベントの実施によって家畜の飼養状態(ステータス)に変化があったことを認識できるように可視化するという考え方もなかった。そのため、逐次の現状把握ができず、畜産業の運営効率の向上が望めなかった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、膨大な数の家畜に対するイベント(作業)の実施を管理することができ、またイベントの実施結果についてもステータスとして確認することができることで、畜産の生産性を向上させることができる畜産情報管理システム、畜産情報管理サーバ、畜産情報管理方法、及び畜産情報管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理システムであって、ユーザへ表示する表示部と、家畜又は家畜群の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、イベントを実施すべきタイミングを規定するイベント予定マスタ情報と、家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、識別子によって識別される家畜又は家畜群がイベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、ステータスが遷移したタイミングに関する履歴情報と、を記憶する情報記憶部と、イベント予定マスタ情報は、イベントと、イベントの次のイベントの順序、及び/又は実施するまでのタイミング、に関する情報を示すイベント間隔情報をさらに含み、履歴情報と、イベント予定マスタ情報とを比較して、家畜又は家畜群に対してイベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された家畜又は家畜群をイベントが未実施である対象家畜として抽出する家畜抽出部を備え、家畜抽出部が抽出した対象家畜及び対象家畜に実施すべきイベントを表示部により表示する。
【0008】
また、上記した目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理システムであって、ユーザへ表示する表示部と、ユーザが操作する入力部と、家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、識別子によって識別される家畜又は家畜群の飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、ステータス情報に含まれる異常ステータスに対応するためのイベントを示すイベント情報とを記憶する情報記憶部と、家畜又は家畜群に異常が発生した際に、家畜又は家畜群のステータスを異常ステータスに遷移する操作を入力部により行うことで、ステータス情報を更新するステータス管理部と、ステータス情報を用いて、ステータスが異常ステータスに遷移した家畜又は家畜群を対象家畜として抽出する家畜抽出部と、を備え、家畜抽出部が抽出した対象家畜及び対象家畜の異常ステータスに対応するために実施すべきイベントを表示部により表示し、ステータス管理部は、表示部に表示された対象家畜に対して異常ステータスに対応するためのイベントの実施の情報が入力部より入力された際に、ステータス情報を更新する。
【0009】
また、上記した目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理システムであって、家畜又は家畜群の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、識別子によって識別される家畜又は家畜群がイベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、を記憶する情報記憶部と、イベントが実施された家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、イベントの実施後にステータスの遷移が生じた家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、を用いて、所定の期間内に、イベントが実施された結果として発生したステータスに関する成績を生成する成績生成部を備え、成績生成部は、所定の期間外におけるステータスの遷移の原因となるイベントを実施した家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数を抽出して成績を生成する。
【0010】
また、上記した目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理サーバであって、ユーザへ表示する表示部と、家畜又は家畜群の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、イベントを実施すべきタイミングを規定するイベント予定マスタ情報と、家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、識別子によって識別される家畜又は家畜群がイベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、ステータスが遷移したタイミングに関する履歴情報と、を記憶する情報記憶部と、イベント予定マスタ情報は、イベントと、イベントの次のイベントの順序、及び/又は実施するまでのタイミング、に関する情報を示すイベント間隔情報をさらに含み、履歴情報と、イベント予定マスタ情報とを比較して、家畜又は家畜群に対してイベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された家畜又は家畜群をイベントが未実施である対象家畜として抽出する家畜抽出部を備え、家畜抽出部が抽出した対象家畜及び対象家畜に実施すべきイベントを表示部により表示する。
【0011】
また、上記目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理サーバであって、ユーザへ表示する表示部と、ユーザが操作する入力部と、家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、識別子によって識別される家畜又は家畜群の飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、ステータス情報に含まれる異常ステータスに対応するためのイベントを示すイベント情報とを記憶する情報記憶部と、家畜又は家畜群に異常が発生した際に、家畜又は家畜群のステータスを異常ステータスに遷移する操作を入力部により行うことで、ステータス情報を更新するステータス管理部と、ステータス情報を用いて、ステータスが異常ステータスに遷移した家畜又は家畜群を対象家畜として抽出する家畜抽出部と、を備え、家畜抽出部が抽出した対象家畜及び対象家畜の異常ステータスに対応するために実施すべきイベントを表示部により表示し、ステータス管理部は、表示部に表示された対象家畜に対して異常ステータスに対応するためのイベントの実施の情報が入力部より入力された際に、ステータス情報を更新する。
【0012】
また、上記目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理サーバであって、また、上記した目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理システムであって、家畜又は家畜群の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、識別子によって識別される家畜又は家畜群がイベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、を記憶する情報記憶部と、イベントが実施された家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、イベントの実施後にステータスの遷移が生じた家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、を用いて、所定の期間内に、イベントが実施された結果として発生したステータスに関する成績を生成する成績生成部を備え、成績生成部は、所定の期間外におけるステータスの遷移の原因となるイベントを実施した家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数を抽出して成績を生成する。
【0013】
また、上記目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理方法であって、家畜の情報を管理する畜産情報管理方法であって、家畜抽出部が、家畜又は家畜群の飼養状態を示すステータスが遷移したタイミングに関する履歴情報と、イベント予定マスタ情報に含まれる家畜の飼養のために実施するイベントを実施すべきタイミングとイベントの次のイベントの順序、及び/又は実施するまでのタイミングに関する情報を示すイベント間隔情報を比較して、家畜又は家畜群に対してイベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された家畜又は家畜群をイベントが未実施である対象家畜として抽出する家畜抽出ステップと、家畜抽出部が抽出した対象家畜及び対象家畜に実施すべきイベントを表示部によりユーザに表示するステップ、を備える。
【0014】
また、上記目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理方法であって、ステータス管理部が、ユーザが操作する入力部の指示により、家畜又は家畜群に異常が発生した際に、家畜又は家畜群の飼養状態を示すステータスを、異常ステータスに遷移するように更新するステータス入力ステップと、家畜抽出部が、ステータスを用いて、異常ステータスに遷移した家畜又は家畜群を対象家畜として抽出する家畜抽出ステップと、家畜抽出部が抽出した対象家畜及び対象家畜の異常ステータスに対応するために実施すべきイベントを表示部によりユーザに表示するステップと、ステータス管理部が、ユーザが操作する入力部の指示により、表示部に表示された対象家畜に対して異常ステータスに対応するためのイベントの実施の情報が入力部より入力された際に、ステータス更新するステータス管理ステップ、を備える。
【0015】
また、上記した目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理方法であって、成績生成部が、家畜の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、識別子によって識別される家畜又は家畜群がイベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、イベントが実施された家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、イベント実施後に、ステータスの遷移が生じた家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数を用いて、所定の期間内に、イベントが実施された結果として発生したステータスに関する成績を、所定の期間外におけるステータスの遷移の原因となるイベントを実施した家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数を抽出して生成する成績生成ステップ、を備える。
【0016】
また、上記目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理プログラムであって、家畜の情報を管理する畜産情報管理方法であって、家畜抽出部が、家畜又は家畜群の飼養状態を示すステータスが遷移したタイミングに関する履歴情報と、イベント予定マスタ情報に含まれる家畜の飼養のために実施するイベントを実施すべきタイミングとイベントの次のイベントの順序、及び/又は実施するまでのタイミングに関する情報を示すイベント間隔情報を比較して、家畜又は家畜群に対してイベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された家畜又は家畜群をイベントが未実施である対象家畜として抽出する家畜抽出ステップと、家畜抽出部が抽出した対象家畜及び対象家畜に実施すべきイベントを表示部によりユーザに表示するステップ、をコンピュータに実施させる。
【0017】
また、上記目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理プログラムであって、ステータス管理部が、ユーザが操作する入力部の指示により、家畜又は家畜群に異常が発生した際に、家畜又は家畜群の飼養状態を示すステータスを、異常ステータスに遷移するように更新するステータス入力ステップと、家畜抽出部が、ステータスを用いて、異常ステータスに遷移した家畜又は家畜群を対象家畜として抽出する家畜抽出ステップと、家畜抽出部が抽出した対象家畜及び対象家畜の異常ステータスに対応するために実施すべきイベントを表示部によりユーザに表示するステップと、ステータス管理部が、ユーザが操作する入力部の指示により、表示部に表示された対象家畜に対して異常ステータスに対応するためのイベントの実施の情報が入力部より入力された際に、ステータス更新するステータス管理ステップ、をコンピュータに実施させる。
【0018】
また、上記目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理プログラムであって、上記した目的を達成するために、家畜の情報を管理する畜産情報管理方法であって、成績生成部が、家畜の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、識別子によって識別される家畜又は家畜群がイベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、イベントが実施された家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、イベント実施後に、ステータスの遷移が生じた家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数を用いて、所定の期間内に、イベントが実施された結果として発生したステータスに関する成績を、所定の期間外におけるステータスの遷移の原因となるイベントを実施した前記家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数を抽出して生成する成績生成ステップ、をコンピュータに実施させる。
【発明の効果】
【0019】
上記手段を用いる本発明によれば、履歴情報と、イベントを実施すべきタイミングとを比較して、家畜又は家畜群に対してイベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された家畜又は家畜群を対象家畜として抽出することにより、膨大な数の家畜に対するイベント(作業)を実施したか否か、イベントの実施結果をユーザによらずシステムによって管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る畜産情報管理システムを示すシステム構成図である。
図2】イベント間隔情報の一例を示す図である。
図3】イベント予定マスタ情報に含まれる家畜ステータス遷移フローの一例を示す図である。
図4】第1の実施形態の処理の流れを説明するフローチャートである。
図5】アラートとして表示される端末画面の一例である。
図6】リストとして表示される端末画面の一例である。
図7】第2の実施形態の処理の流れを説明するフローチャートである。
図8】第3の実施形態の処理の流れを説明するフローチャートである。
図9】コンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態のうち第1ないし第3の実施形態において共通して用いることができる構成及び情報について説明した後に、各実施形態について説明する。
【0022】
はじめに、一般的に家畜というとき、家きん(家禽)などの鳥は含まれず、牛、馬、めん羊、山羊、及び豚等の動物のみを示す場合がある。しかし、本実施形態で開示する畜産情報管理システムを用いて管理する対象としては、これらの動物に限られず、同じく畜産物である家きんであってもよい。家きんとは、例えば、鶏、うずら、あひる及びかも等の鳥類をいう。以下では、特に説明の無い限り、本実施形態で開示する畜産情報管理システムで管理されうる畜産物の対象は、家畜には家きんも含まれるものとして説明する。
【0023】
なお、以下で説明する本発明の実施形態は、家畜として主に豚を例として説明を行う。豚は畜産において、1つの農場で飼育する数が数千から数万頭単位となる場合があり、膨大な数の家畜の管理負荷が大きく、また、豚に実施するイベント等が誤って実施される可能性があるものである。
【0024】
実施形態において、豚ではない家畜を対象とする場合の用語等については、例えば牛、馬について以下のように読み替えることができる。畜産物が飼養される施設である畜舎は、豚の場合は豚舎、牛の場合は牛舎、馬の場合は厩舎である。畜舎内の仕切られた区画の単位である畜房は、豚の場合は豚房、牛の場合は牛房、馬の場合は馬房である。繁殖用家畜の子取り用めすは、豚の場合は母豚(又は繁殖母豚)、牛の場合は母牛(又は繁殖母牛)、馬の場合は牝馬(繁殖牝馬)である。繁殖用家畜の種おすは、豚の場合は雄豚(種雄豚)、牛の場合は種雄牛、馬の場合は種牡馬である。
【0025】
<構成>
図1は、本発明の実施形態に係る畜産情報管理サーバ101を含む畜産情報管理システム1を示すシステム構成図である。図1で示すように、本発明の実施形態に係る畜産情報管理システム1は、畜産情報管理サーバ101と、ユーザが使用する端末装置201とが、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。説明の簡略化のため、図1では1つのユーザを想定して端末装置201のみを示しているが、畜産情報管理サーバ101はネットワークNWを介して複数のユーザの端末と接続可能である。
【0026】
畜産情報管理システム1は、主に畜産業者が、家畜情報の管理を支援するためのシステムである。畜産情報管理システムの運営業者は、当該システムを用いて畜産業者に家畜情報の管理を支援するサービスを提供する。運営者は、複数の畜産業者に対してサービスを提供することができる。畜産情報管理サーバ101は、畜産情報管理システム1の運営者が管理を行い、畜産業者が端末装置201を使用するものである。なお、畜産情報管理サーバ101は、畜産業者自身が管理を行っても構わない。
【0027】
端末装置201は、例えばPCや、スマートフォン、タブレットPC、及び携帯電話のような装置である。端末装置201は、端末にインストールされた専用のアプリケーションソフトウェアによって畜産情報管理サーバ101にアクセスしてもよい。また、畜産情報管理サーバ101が提供する動作環境(API(アプリケーションプログラミングインタフェース)、プラットフォーム等)を利用して畜産情報管理サーバ101にアクセスしてもよい。
【0028】
入力部211は、例えば、キーボードや、マウス、トラックボール、タッチパッド等のユーザが操作することにより情報の入力や選択が可能な装置である。また、スマートフォンやタブレット、PCにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示部212と一体であるタッチパネルでもよい。入力部211は、音声入力装置であっても構わない。
【0029】
表示部212は、情報等をユーザに表示するディスプレイ装置等である。端末装置201と独立したディスプレイ装置であっても構わないし、スマートフォンやタブレットにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置であっても構わない。
【0030】
なお端末装置201は、畜産情報管理サーバ101とネットワークNWを介さず、サーバと一体として構成されていても構わない。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る畜産情報管理システム1は、インターネット、VPN(Virtual Private Network)等のネットワークNWを介して、ユーザが使用する端末装置である端末装置201と、畜産情報管理サーバ101とが接続されて構成されている。なお、説明の簡略化のため図1では1人のユーザを想定して端末装置201のみを示しているが、畜産情報管理サーバ101はネットワークNWを介して2以上の端末装置、2人以上のユーザと接続可能である。また、一台の端末装置を複数のユーザが使用しても構わない。
【0032】
畜産情報管理サーバ101は、家畜抽出部111、ステータス管理部112、成績生成部113、通知部114、情報記憶部121を備える。これらの詳細については各実施形態の説明において詳述する。
【0033】
情報記憶部121は、畜産情報管理システム1による管理を実行するのに用いる情報を記憶する記憶装置である。情報は、家畜又は家畜群に関する情報、農場や畜舎など施設に関する情報、餌や薬品など資材に関する情報、後述するイベントやステータスなど畜産業の運営に関する情報を記憶している。図1では畜産情報管理サーバ101と一体に記載しているが、畜産情報管理サーバと物理的に独立した記憶装置であっても構わない。以下、情報記憶部121に記憶される情報について説明する。
【0034】
家畜情報は、繁殖家畜情報、非繁殖家畜情報、など家畜に関する情報である。家畜は、主に繁殖用家畜と、非繁殖用家畜に分けられる。豚においては、繁殖用豚と非繁殖用豚である。繁殖用豚は、子豚を産むために飼育される豚である。非繁殖用豚は、成長後、出荷するために飼育される豚(肥育豚)である。繁殖豚に関する情報は、繁殖豚情報として、非繁殖豚に関する情報は、非繁殖豚情報として記憶される。繁殖用豚は、母豚(子取り用めす豚)と雄豚(種おす豚)があり、個々の豚にそれぞれ個体識別子(個体ID)が付与され管理される。識別子は家畜の名称、番号などユニークに割り当てられ、家畜を識別できるものであればよい。また、繁殖豚は、複数の繁殖豚の個体をグループとしてまとめたグループ識別子(グループID)を付与しても管理されうる。グループに関する情報はグループ情報として記憶されうる。非繁殖用豚は、グループ、又は複数のグループをロットとしてまとめたロット識別子(ロットID)が付与されて管理されうる。非繁殖豚情報は主に肉豚として出荷されることを予定されている複数の産子家畜群からなるグループ、又はロットに関する情報を含んでいる。また、繁殖豚情報、非繁殖豚情報には、これらの家畜又は家畜群を識別するための識別子と紐づけられた、これらの家畜又は家畜群の飼養状態を示すステータス情報、ステータスが遷移した時間、日付であるタイミングについて示す履歴情報を含んでいる。また、家畜の頭数に関する頭数情報を含んでいる。
【0035】
繁殖豚情報には、子取り用めす豚である母豚に関する情報である母豚情報と、種おす豚である雄豚、若しくは精液に関する情報である雄豚・精液情報を含んでいる。
【0036】
母豚情報は、母豚として登録された豚の一覧表であり、各母豚の識別子に基本的な個別情報とステータス情報及び履歴情報が紐づけられている。個別情報は、例えば月齢、産次、産暦、産子数、農場名、豚舎名、部屋名、豚房名、品種、導入日、購買先、親豚情報(母豚番号、雄豚番号)、生年月日、導入時日齢、導入時体重、等の情報が含まれる。
【0037】
母豚のステータス情報には、正常ステータスとして例えば、種付済、受胎中、哺乳中、離乳中、発情中等が含まれている。異常ステータスとして、例えば、再発情、妊娠鑑定遅延、不受胎、流産、分娩遅延、離乳遅延、未発情・体調不良、種付遅延、死亡等が含まれている。またこれらのステータスに遷移した日付、時刻であるタイミングが紐づけられた履歴情報として含まれている。
【0038】
雄豚・精液情報は、農場内で飼養している雄豚及び精液の一覧表であり、雄豚及び精液の識別子に個別情報が紐づけられている。個別情報は、例えば種別、品種、導入日、購買先、生年月日、導入時日齢、導入時体重、血統書番号、等の情報が含まれる。また、ステータス、及びこれらのステータスに遷移した日付、時刻であるタイミングが履歴情報として含まれている。
【0039】
グループ情報は、複数の家畜の集合をグループという単位にしたグループの一覧表であり、グループ識別子にグループの個別情報が紐づけられている。グループ情報には、そのグループに所属する家畜に共通する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、そのステータスが遷移した日付、時刻等のタイミング情報が含まれている。
【0040】
非繁殖豚情報は、複数の子豚にまとめて付与されるロット名(群識別子)に、群情報が紐づけられている。群情報は、例えば農場名、豚舎名、部屋名、豚房名、ロット編成日(群編成日)、現在の飼養頭数、外部導入、離乳グループ名(グループ識別子)等の情報が含まれている。非繁殖豚情報のステータス情報には、離乳、肥育、給餌、投薬、出荷等に関するステータスが含まれる。またこれらのステータスに遷移した日付、時刻であるタイミングが履歴情報として含まれている。
【0041】
頭数情報は、繁殖家畜、非繁殖家畜の頭数、及びグループに所属する家畜の頭数に関する情報を含んでいる。頭数は、例えば家畜ごとに付与された識別子を計数することで算出することができる。また、履歴情報を参照することにより、所定のタイミングにおける家畜の頭数、又は家畜群に属する家畜の頭数を算出することもできる。
【0042】
農場基本情報は、畜産業者の事業全体に係る情報であり、農場、豚舎、部屋、豚房等の情報や、農場で取り扱う豚の品種情報、廃用理由、飼料の種類(餌情報)、薬品情報、ホルモン情報、ワクチン情報、出荷先の情報が含まれる。また、リソース情報、従業員情報を含んでいる。
【0043】
リソース情報は、従業員などの人的リソース、及び資材などの物的リソースについて設定された情報であり、後述するイベント単位/イベント間単位に対し、必要とするリソース(人/資材)を設定している情報である。人については、そのイベントを実施するに際して必要なスキルなどの詳細情報を設定してもよい。資材については、それぞれのイベント単位/イベント間単位において必要とする資材、及び利用可能な個数/時間帯などの制約条件を設定してもよい。
【0044】
従業員情報は、農場に所属している従業員数、従業員のスキル、及び出勤日などを含んでいる。
【0045】
本実施形態においてイベントとは、繁殖用家畜、非繁殖用家畜の各カテゴリに属する家畜又は家畜群に対して飼養のために実施する作業である。一般的には、飼養とは動物に食料を与えて養い育てることをいい、出荷など直接的に飼養ではない作業はこの語の意味に含まれない。しかし、畜産業者が家畜を飼養する目的は、一般家庭で愛玩動物を飼養するのと異なり、経済的利益を得るというものである。そのため、飼養の目的として実施される出荷などの作業は、本実施形態におけるイベントとしては、家畜に対して飼養のために実施する作業(イベント)に含むものである。
【0046】
イベントは、例えば、カテゴリが繁殖用家畜のめすである家畜に対して実施されるものであれば、交配(本交配、人工授精(AI:Artificial Insemination)、受精卵移植(ET:Embryo Transfer)を含み、種付ともいう)、分娩、離乳、妊娠鑑定、里子(哺乳頭数調整)、発情・体調確認等の作業を示すものである。
【0047】
以下、各イベントについて説明する。本交配は、母豚に対して雄豚で交配を実施するイベントである。人工授精は、母豚に対して精液で交配を実施するイベントである。分娩は、母豚が正常に出産する場合のイベントである。受入は、繁殖候補豚などの豚を受け入れるイベントである。馴致は、新規に導入された豚や、豚舎を移動するなど環境が変わった豚を環境に慣らすイベントである。給餌は、個体豚又は群(グループ又はグループの集合であるロット)に対して、給餌を実施するイベントである。投薬は、対象の個体豚又は群(グループ又はロット)に対して、薬品を投与するイベントである。移動は、対象の個体豚又は群(グループ又はロット)に対して、畜舎・部屋・畜房(豚舎・部屋・豚房)の移動を行うイベントである。ホルモン・体調措置は、母豚に対して発情を促すためホルモンを投与するイベントである。妊娠鑑定は、母豚に対して交配を行った後、診断装置等を用いて妊娠しているかどうかを獣医が鑑定するイベントである。ワクチン投与は、対象の個体豚又は群(グループ又はグループの集合であるロット)に対して、ワクチンを投与するイベントである。哺乳開始は、分娩後に母豚が産子に対して、哺乳を開始するイベントである。里子(哺乳頭数調整)は、分娩後の母豚から授乳を受ける子豚の数を調整するイベントであり、子豚を里子として受け入れたり他の母豚で哺乳させたりするための移動を行うイベントである。離乳は、母豚が哺乳期間を終えて、子豚を離乳舎へ移動するイベントである。精液採取は、雄豚から精液を採取するイベントである。死亡判定は、対象の家畜又は家畜群(グループ又はグループの集合であるロット)に対して、死亡したことを判定するイベントである。出荷は、対象の個体豚又は群(グループ又はグループの集合であるロット)に対して、出荷を行うイベントである。廃用は、対象の個体豚又は群(グループ又はグループの集合であるロット)に対して、飼養する価値がなくなった豚を廃棄するイベントである。オールアウトは、出荷の後に空となった豚舎等の施設の洗浄・消毒をするイベントである。候補豚選別は、母豚候補となる育成豚を子豚の中から選別するイベントである。
【0048】
なお、イベントは上記した作業に限られるものではなく、他の項目を含んでいても構わない。
【0049】
本実施形態においてステータスとは、イベントの実施の結果によって遷移する、家畜の飼養状態を示すものである。ステータスはイベントの実施の結果であり、複数通りの異なる結果となりうる。どのステータスに遷移するか、イベントの結果自体を畜産情報管理システム1が判断するものではなく、ユーザの選択、入力した情報の結果に応じて、イベント予定マスタ情報に規定された、イベントを実施すべき順序に従い、ステータス遷移は決定される。イベントの実施については、図1に示される端末装置201の入力部211を用いてユーザが選択、入力を行う事で情報記憶部121に記憶される。イベントの実施の登録がされると、選択、入力された情報に応じて、その結果としてステータスが遷移する。ステータス遷移とそのタイミングについては、ステータス情報、及びその履歴情報として情報記憶部121に記憶される。
【0050】
ステータスのうち、特に家畜を飼養する上で予定されている状態を正常ステータスという。一方で、家畜を飼養する上で、想定されてはいるが畜産業者として好ましくない状態を異常ステータスという。
【0051】
正常ステータスは、カテゴリが繁殖用家畜のめすである家畜の状態を示すものであれば、例えば、種付済、哺乳中、離乳中、受胎中、発情中の状態を示すものである。
【0052】
異常ステータスは、カテゴリが繁殖用家畜のめすである家畜の状態を示すものであれば、例えば、分娩遅延、離乳遅延、種付遅延、再発情、流産、疾病、死亡、妊娠鑑定遅延、不受胎、未発情・体調不良の状態を示すものである。
【0053】
以下、各ステータスについて説明する。種付済は、母豚に対して種付すなわち交配が済んだ状態である。受胎中は、受精卵が着床し、妊娠鑑定によってそれを確認した状態である。哺乳中は、分娩後に母豚が産子に対して、哺乳を行っている状態である。離乳中は、母豚が哺乳期間を終えた状態から、発情回帰を確認するまでの状態である。発情中は、離乳期間が終了し、発情・体調確認により、正常に発情回帰したのを確認した状態である。再発情は、母豚が交配に失敗し、再発情行動が行われている状態である。妊娠鑑定遅延は、妊娠鑑定が遅延している状態である。不受胎は、妊娠鑑定によって母豚が受胎していないことが確認された状態である。流産は、母豚が妊娠していたが出産できずに流産した状態である。疾病は、飼養している豚が疾病に罹患している状態である。分娩遅延は、受胎している母豚の分娩が遅れている状態である。離乳遅延は、離乳が遅れている状態である。種付遅延は、種付が遅延している状態である。死亡は、その家畜が死亡した状態である。
【0054】
なお、ステータスは上記した状態に限られるものではなく、他の項目を含んでいても構わない。
【0055】
イベント情報は、上記したイベントの情報を含んでいる。
【0056】
イベント予定マスタ情報は、あるイベントを実施した後、どのステータスにある家畜が、次にどのイベントに進むべきかの順序、経路を示す家畜ステータス遷移フローを含んでいる。特に家畜を飼養する上で予定されている正常ステータスに遷移していく経路を示す正常ステータス遷移フローと、家畜を飼養する上で想定されてはいるが好ましくない状態である、異常ステータスに遷移していく経路、及び、異常ステータスから正常ステータスに戻る経路を示す異常ステータス遷移フローを含んでいる。
【0057】
さらに、イベント予定マスタ情報は、あるイベントを実施した後に、次のイベントを実施すべきタイミングについて規定した情報を含んでいる。より具体的にはイベント間の間隔を示すイベント間隔情報を含んでいる。
【0058】
図2にイベント間隔情報の一例を示す。イベント間隔情報は、農場ごとに設定できる予定日マスタ情報として記憶される。設定されるイベント間隔は、例えば、発情再帰予定日数、再発情予定日数、予定妊娠期間(日数)、予定哺乳期間(日数)、初回種付予定日齢である。期間(日数)の計算の起点は前回のイベントから次のイベントまでの相対的な期間である。日齢に関しては、生誕から起算した日齢、又は離乳日から起算した日齢である離乳日齢である。
【0059】
図3は、イベント予定マスタ情報に含まれる家畜ステータス遷移フローの一例を示す図である。この図において、正常ステータス遷移フローと、異常ステータス遷移フローを含み、各イベントとステータスの関係を示している。この図は家畜のうち母豚について示したものであり、これ以外にも各家畜カテゴリに応じたフローが記憶される。この図において、左半分に正常ステータス遷移フローを、右半分に異常ステータス遷移フローを示す。またイベントの間隔であるイベント間隔を矢印で示す。なお、この図において、丸印で囲まれた数字は、次のイベントに進むための経路を示しているが、これについては本文中では括弧に囲まれた数字(例えば(1)(2)…)として示す。なお、上記したように、都度イベントの結果を受けて、どのようなステータスに遷移させるかは、ユーザから入力した情報の結果に応じて決定される。
【0060】
まず、(1)種付を終えた母豚は、種付済という正常ステータスにある。この種付済の母豚は所定のイベント間隔で、妊娠鑑定イベントを実施することができる。このイベント間隔は農場ごとに適宜設定可能である。例えば種付〜妊娠鑑定の間隔は、その家畜の生物学的な発情周期以上の日数を設定することが考えられる。妊娠鑑定を実施する前に再発情の異常ステータスへ遷移した場合は(2)へ進み、再度種付を実施する経路となっている。また、何らかの理由により母豚が死亡の異常ステータスへ遷移した場合は廃用となり、管理は終了する(End)。なお、死亡ステータスによる廃用イベントは不定期に発生するので以下では説明を省略する。
【0061】
妊娠鑑定イベントを実施することで、母豚が受胎しているか、不受胎であるかが判明する。妊娠鑑定の結果を受けて、不受胎の異常ステータスに遷移した場合は(3)に進み、発情・体調確認を実施する経路となっている。
【0062】
母豚のステータスが、受胎中の正常ステータスに遷移した場合は、種付日から所定のイベント間隔で分娩が実施される経路となっている。種付日から分娩までのイベント間隔は、家畜の生物学的な妊娠期間に応じて、農場ごとに適宜設定することができる。ステータスが受胎中の母豚は、分娩イベントに至るまでに、死亡のほか、再発情、流産の異常ステータスに遷移する経路をとりうる。再発情の異常ステータスに遷移した場合は、(2)に進み、種付を実施する経路をとる。流産の異常ステータスに遷移した場合は、(3)に進み、発情・体調確認を実施する経路となっている。
【0063】
受胎中のステータスにある母豚が妊娠期間を無事過ごし、分娩イベントを実施すると子豚が出産される。分娩により子豚を出産した母豚は、子豚に対する哺乳開始イベントを実施し、哺乳中の正常ステータスに遷移する。
【0064】
哺乳開始からの哺乳期間が終了した母豚は離乳イベントを実施する。離乳した母豚は、離乳中の正常ステータスへ遷移する。
【0065】
離乳中のステータスにある母豚に対してはイベントとして発情・体調確認を実施することができる。発情・体調確認イベントが実施され、発情と体調に問題が無い事が確認された母豚は、発情中の正常ステータスに遷移する。
【0066】
発情中のステータスにある母豚に対しては種付イベントが実施される経路となっている。離乳から種付までのイベント間隔は、適宜設定する事ができる。種付が実施された母豚は(1)に進む経路となっている。以上説明した通り、イベント予定マスタ情報には、母豚の繁殖サイクルについて、家畜ステータス遷移フローによって、イベントとステータスによる作業経路が規定されている。
【0067】
上記した繁殖ステータス遷移フローは、イベント予定マスタ情報の一例として、特に繁殖家畜である母豚の一部に関するものである。雄豚や、非繁殖家畜である肥育豚についてもイベント予定マスタ情報として、情報記憶部121に記憶される。
【0068】
さらにイベント情報は、標準工数情報を含んでいる。標準工数情報は、ネットワーク作業工程情報、工数・単位情報、を含んでいる。
【0069】
ネットワーク作業工程情報は、例えば種付、妊娠鑑定などの各作業であるイベント単位、またイベント単位間の繋がりの情報を含み、畜産の作業工程における作業の合流・分岐による一連の作業完遂までの繋がりを、イベント単位をノードとするネットワークとして、イベント単位とイベント間単位による組合わせを定義する情報である。
【0070】
工数・単位情報は、各イベント単位に対し、必要な作業時間となる工数と、作業対象となる単位が設定された情報である。例えば単位家畜、又は家畜群あたりの単位作業工数である。これにより、頭数情報と掛け合わせて必要な作業時間の見積もりをすることができる。さらに各イベント間単位に対し、前のイベントから次のイベントまでのリードタイムである時間的な間隔、次のイベントに進む際の条件を設定している。
【0071】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、家畜の飼養状態を示すステータスのうち、所定の条件に合致した家畜又は家畜群のステータス情報及びステータス遷移情報に基づき、アラート対象家畜を抽出して提示し、それに対する対処を受け付ける。これにより、家畜の飼養に関して予定されている膨大なイベントの対処漏れへのアラートになるだけでなく、即座に対処を促すことで確実に漏れを防止することができる。
【0072】
図1に示した家畜抽出部111は、情報記憶部121に記憶される情報を用いて、履歴情報と、イベント予定マスタ情報に規定されたイベントを実施すべきタイミングと順序を比較して、家畜又は家畜群に対して正しくイベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された家畜又は家畜群をイベントが未実施である対象家畜として抽出する機能を有する。
【0073】
また、家畜抽出部111は、履歴情報を用いて、家畜又は家畜群のステータスが遷移したタイミングから抽出のタイミングまでの間隔を算出し、その間隔をイベント間隔情報に規定されたイベント間隔と比較し、家畜又は家畜群に対してイベントを実施したか否かを判定する機能を有する。
【0074】
また、家畜抽出部111は、情報記憶部121に記憶された標準工数情報を用いて、抽出した対象家畜に該当する家畜数又は家畜群数と標準工数情報を用いて工数情報を算出し、工数情報に応じたタイミングでイベントを未実施である対象家畜を抽出する機能を有する。
【0075】
ステータス管理部112は、家畜抽出部111により抽出された対象家畜の情報を用いて、対象家畜を表示部212により表示し、対象家畜に対してイベントを実施した結果について、入力部211により入力された情報を用いて、ステータス情報の更新、又は対象家畜の表示の取下げを行う機能を有する。
【0076】
通知部114は、家畜抽出部111が抽出した対象家畜をリスト及び/又はアラートとしてユーザに通知する機能を有する。
【0077】
第1の実施形態の処理の流れについて説明する。図4は、第1の実施形態の処理の流れを説明するフローチャートである。
【0078】
ステップS101において、家畜抽出部111はアラート対象家畜の候補となりうる家畜の選出を行う。まず所定の項目に関して、所定のイベントを実施して所定のステータスにあり、次のイベントを実施すべき候補となる家畜を選出する。具体的には、例えば、種付のイベントを行い、種付済のステータスにある母豚を選出する。そのような母豚を抽出するには情報記憶部121に記憶される繁殖豚情報を参照し、ステータスが種付済となっている母豚を選出する。そして、選出した母豚の前回ステータス遷移タイミングから抽出のタイミングまでの時間的な経過である時間・日数を、前回イベント実施からの間隔として算出する。具体的には、例えば、種付日から抽出処理を行っている処理日までの日数を算出する。
【0079】
ステップS102において、家畜抽出部111は、候補の家畜の中からアラート対象家畜の抽出を行う。母豚の前回ステータス遷移タイミングから現在処理時点までの経過時間・日数と、イベント予定マスタ情報に含まれているイベントを実施すべきタイミングとを比較する。イベントを実施すべきタイミングとしては、具体的には、イベント間隔情報として規定された種付から妊娠鑑定までの間の予定日数を用いる。
【0080】
家畜抽出部111は、比較によって、家畜又は家畜群に対してイベントを実施したか否かを判定する。具体的には母豚の前回ステータス遷移タイミングから現在処理時点までの経過時間・日数が、イベント間隔情報として規定された種付から妊娠鑑定までの間の予定日数を超過している場合は、妊娠鑑定の実施が否である家畜と判定する。
【0081】
この他に、イベントを実施すべきタイミングは、標準工数情報を用いて算出することもできる。標準工数情報に含まれる工数・単位情報には、イベント単位の工数、具体的には1頭あたりの妊娠鑑定に必要な時間などが含まれている。また、イベント間単位の工数、具体的には、ある家畜の妊娠鑑定作業と次の家畜の妊娠鑑定作業のリードタイムなどが含まれている。さらに、ネットワーク作業工程情報には、一連のイベント単位の繋がりの情報が含まれている。そして、リソース情報には、従業員などの人的リソース、及び資材などの物的リソースについて設定された情報が含まれている。これらの情報を用いて、妊娠鑑定に必要な超音波診断器などの資材、獣医のスケジュール等を考慮して、対象家畜の全ての妊娠鑑定が完了可能となる工数を算出することができる。その工数に応じて、その工数を十分に確保できるタイミングや、余裕をもったタイミングでユーザに通知できるように対象家畜を抽出することができる。
【0082】
ステップS103において、家畜抽出部111は、イベントの実施が否であると判断した家畜については、ユーザに提示すべき対象家畜として抽出する。
【0083】
ステップS104において、家畜抽出部111により抽出された対象家畜は、ステータス管理部112によって、端末装置201の表示部212にアラート発報・画面表示される。
【0084】
図5は、アラートとして表示される端末画面の一例である。「ダッシュボード」として示された各畜産業の経営状況を表す指標の中に、注意母豚数という項目が表示されている。また、注意母豚に該当する頭数が29と表示されている。この注意母豚数の項目に注意母豚一覧として表示された領域を操作すると、注意母豚一覧が表示される。
【0085】
図6は、端末装置201の表示部212に表示された画面の一例である、注意母豚一覧を示す。この画面において、注意母豚は、農場、豚舎、部屋、状況ごとにソートして検索可能となっている。また、注意イベントとして、本交配と分娩が表示されており、分娩に関する注意母豚がリストとして表示されている。表示された母豚のうち、経過日数が所定の条件を超えているものについて色塗りによる強調がなされている。このようにして、対象家畜はアラート、リストの形式でユーザに提示される。
【0086】
なお、端末装置201の表示部212によらずとも、アラート発報が発生していることを通知してもよい。例えば通知部114によって、テキストの電子メールを端末装置201にアラートを行うことができる。電子メールに限らず、種々のメッセージアプリケーションを用いてテキストでの通知、URLなどリンクの通知を行うことができる。
【0087】
ステップS105において、ユーザは提示された対象家畜に対するイベントの実施について登録を行う。具体的には、リストで提示された注意母豚に対して実施したイベントの結果の情報を、端末装置201の入力部211により入力する。ステータス管理部112は入力された情報を用いて、ステータス情報の更新を行う。又は、アラートの解除の操作を行う。
【0088】
ステップS106において、ステータス管理部112は、アラートが発報され対象となっている家畜のステータス情報を参照して、アラートの対象から解除すべきかどうかを判断する。具体的には、イベントの実施の結果の情報が登録されることにより、ステータスが更新され、イベント実施済みの家畜が、対象家畜として家畜抽出部111に抽出されなくなることにより、自動的にアラートが解除される。又は、アラートの解除のみを行いたい場合は、前述のアラート解除の操作をもって、積極的にアラートを解除するようにしてもよい。
【0089】
ステップS107において、アラートの対象から解除すべきと判断された対象家畜のアラート解除を行う。
【0090】
以上説明したように本発明の第1の実施形態に係る畜産情報管理システムでは、家畜抽出部111において、情報記憶部121に記憶された履歴情報と、イベント予定マスタ情報に規定されたイベントを実施すべき順序とタイミングとを比較して、家畜又は家畜群に対して正しいイベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された家畜又は家畜群をイベントが未実施である対象家畜として抽出することで、例えばユーザは端末装置201の表示部212を介して、イベントを実施すべき家畜を確認することができ、イベントの実施漏れをなくすことができる。
【0091】
特に、履歴情報を用いて算出した家畜又は家畜群のステータスが遷移したタイミングから抽出のタイミングまでの間隔を算出して、イベント間隔情報に規定されたイベント間隔を比較し、家畜又は家畜群に対してイベントを実施したか否かを判定することで、イベント間隔情報に規定された最適なタイミングで家畜に対してイベントを実行することができる。
【0092】
また、抽出した対象家畜に該当する家畜数又は家畜群数と標準工数情報を用いて工数情報を算出し、工数情報に応じたタイミングでイベントを未実施である対象家畜を抽出することにより、農場の限られたリソースに応じたイベントの実施計画を立てることができる。
【0093】
具体的には、例えば1頭あたりの妊娠鑑定に必要な時間と、その鑑定間のリードタイム、妊娠鑑定に必要な超音波診断器などの資材、獣医のスケジュール等を考慮して、対象家畜の全ての妊娠鑑定が期限内に完了可能となるように工数を算出し、その工数に応じたタイミングでユーザに通知できるように抽出することができる。
【0094】
さらに、対象家畜をリスト及び/又はアラートとして表示部212により表示することで、作業漏れがあることをユーザに対し注意喚起することができる。
【0095】
さらに、表示した対象家畜にイベントを実施した結果について、入力部211により入力された情報を用いて、ステータス情報の更新、又は対象家畜の表示の取下げを行うステータス管理部112を備えることにより、ユーザにイベントの実施を促し、作業漏れの防止をすることができる。
【0096】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、家畜の飼養状態を示すステータスのうち、想定はされているものの、発生時期が予期されておらず突発的に発生する異常ステータスに遷移した家畜についての情報入力を受け付け、アラート対象家畜として抽出してユーザに提示し、それに対するイベント実施の登録を受け付けるものである。
【0097】
図1に示したステータス管理部112は、家畜又は家畜群に異常が発生した際に、家畜又は家畜群のステータスを異常ステータスに遷移する操作を入力部211により行うことで、ステータス情報を用いて、ステータスが異常ステータスに遷移した家畜又は家畜群を対象家畜として抽出し、対象家畜に対して異常に対応するための作業であるイベントの実施を行ったことの情報が入力部211より入力された際に、ステータス情報を更新する機能を有する。
【0098】
第2の実施形態の処理の流れについて説明する。図7は第2の実施形態の処理の流れを説明するフローチャートである。
【0099】
ステップS201において、ユーザが入力部211を用いて異常ステータス遷移の入力を行う。具体的には、例えば種付中のステータスにある母豚が再発情するという異常が発生した際に、ユーザが入力部211を用いて、母豚のステータスが、再発情の異常ステータスへの遷移したことを入力する。
【0100】
ステップS202において、家畜抽出部111が異常ステータスに遷移した対象家畜の抽出を行う。所定の項目に関して、既に異常が発生して、ユーザにより異常ステータスへの遷移が入力されており、ステータス情報を用いて次のイベントを実施すべき候補となる家畜を抽出する。具体的には、例えば発情中の異常ステータスに遷移した母豚を抽出する。
【0101】
ステップS203において、抽出された対象家畜を表示部212又はそれ以外の手段を用いてアラート発報・画面表示を行う。具体的には、例えば図5図6と同様に、ステータス管理部112によって、端末装置201の表示部212にアラート発報・画面表示される。
【0102】
ステップS204において、ユーザは、アラートされた対象家畜に対して実施したイベントの結果の情報の入力による登録処理、若しくはアラート対象解除の指示を行う。具体的には、再発情の異常ステータスに遷移した母豚に対し、種付イベントを実施した場合は、ステータスを種付中に遷移させることによって、対象家畜として抽出されなくなる。あるいは、ユーザが積極的にアラートのみを解除したい場合は、アラート解除の操作を行う。
【0103】
ステップS205において、ステータス管理部112は、アラートが発報されている対象となっている家畜を、アラートの対象から解除すべきかどうかを判断する。
【0104】
ステップS206において、アラートの対象から解除すべきと判断された対象家畜のアラート解除を行う。具体的には、イベントの実施の結果の情報が入力されて登録されることにより、ステータスが更新され、イベント実施済みの家畜が、対象家畜として家畜抽出部111に抽出されなくなり、自動的にアラートが解除される。又は、アラートの解除のみを行いたい場合は、前述のアラート解除の操作をもって、積極的にアラートを解除する。
【0105】
以上説明したように本発明の第2の実施形態に係る畜産情報管理システムでは、家畜抽出部111において、情報記憶部121に記憶された履歴情報を用いて、異常ステータスに遷移した家畜又は家畜群を、イベントを実施すべき対象家畜として抽出し、ユーザに対して例えば端末装置201の表示部212を介してイベントの実施を促し、イベントの実施漏れを低減することができる。
【0106】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、家畜の飼養状態を示すステータス、及びステータス遷移のタイミングである履歴情報に基づき、家畜の繁殖成績についてより正確な結果による成績を生成できるものである。
【0107】
例えば、集計期間内で発生したイベント実施の結果について、単純な数の除算により生成可能な成績項目がある。例えば、月/週別の生存産子数、月/週別死産率、月/週別事故率、月/週別母豚回転率である。これらは結果とその原因となるイベント、ステータス遷移が同時に発生するものなので、所定の期間内で結果のみを集計すれば足りる。一方で、原因となるイベント、ステータス遷移が集計期間外にあるときは、これらを考慮しないで成績を生成してしまうと、原因を正しく追及できない結果となってしまう。特に、例えば受胎中にある繁殖家畜の帰趨などは、妊娠期間が豚なら114日前後、牛なら285日前後と長期間にわたり、月や週といった期間を超えて原因と結果が発生するものである。
【0108】
成績生成部113は、情報記憶部121に記憶された情報を用いて、イベントが実施された家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、イベントの実施後にステータスの遷移が生じた家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数とを用いてステータスに関する成績を生成する機能を有する。
【0109】
通知部114は、成績生成部113で生成した成績が通知条件に合致している場合に、ユーザに成績を通知する機能を有する。
【0110】
第3の実施形態の処理の流れについて説明する。図8は第3の実施形態の処理の流れを説明するフローチャートである。
【0111】
ステップS301において、評価項目と、その評価項目に関連する対象家畜の選定を行う。具体的に評価項目と集計期間を例えば2019年10月に種付を行った繁殖家畜の流産率とする。評価項目に従い、成績生成部113は、対象家畜として、2019年10月に種付中のステータスに遷移した繁殖家畜を抽出する。
【0112】
ステップS302において、ステータス情報とその履歴情報を用いて評価項目についての成績を生成する。具体的には、まずステップS301において抽出した対象家畜の数を母数として算出する。そして、ステータスの履歴を参照して、対象家畜の中から、種付から成績を生成するタイミングまでの期間でステータスが流産に遷移した繁殖家畜を抽出し、その数を子数として算出する。そして、子数を母数で除算することにより、「2019年10月流産率」の成績として生成する。
【0113】
ステップS303において、通知部114は、生成された成績が、ユーザに通知する条件に合致しているか否かの判定を行う。具体的には、情報記憶部121において、月流産率が所定値以上となることを通知の条件として記憶しておき、成績生成部113が生成した成績に含まれる月流産率が通知条件として規定している所定値を上回ったときに、通知部114が、ユーザに通知する条件に合致していると判断する。
【0114】
ステップS304において、通知部114は、通知条件に合致している場合はユーザに通知する。具体的には、図5のようにダッシュボード画面でアラートを発報してもよいし、ユーザに対して電子メールを送信するなど、その他の手段により通知してもよい。
【0115】
本実施形態で生成される成績の例を挙げる。月受胎率(イベント実施後に受胎中にステータス遷移した母豚数/月の種付母豚数)、月再発率(イベント実施後に再発情にステータス遷移した母豚数/月の種付母豚数)、月分娩率(イベント実施後に分娩した(哺乳中など分娩の結果のステータスに遷移した)母豚数/月の種付母豚数)、月流産率(イベント実施後に流産にステータス遷移した母豚数/月の種付母豚数)、月繁殖期間中 死・廃用率(イベント実施後に死亡・廃用となった母豚数/月の種付母豚数)など、特定の月内に実施されたイベントについて、その特定の月外に生じたステータス遷移を考慮した繁殖成績である。
【0116】
なお、成績については、率など除算して割合によって示すものに限られず、月受胎数、月流産数など、ステータス遷移の結果を反映させた家畜の数を計上したものであってもよい。また、母豚に限らず、雄豚など他の繁殖家畜、肥育豚など他の非繁殖家畜についても生成するものであってもよい。期間の単位も月に限らず、年、週、日又はこれらの単位の複数である2年、3か月、2週間、40日などの任意の単位で成績を生成するものであってもよい。
【0117】
以上説明したように本発明の第3の実施形態に係る畜産情報管理システムでは、情報記憶部121に記憶された履歴情報と、イベント情報に含まれる、イベントが実施された家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、イベントの実施後にステータスの遷移が生じた家畜の数、又は家畜群に属する家畜の数と、を用いて、ステータスに関する成績を生成することで、原因から結果までが一貫した成績を得て、ステータスの遷移を正確に確認することができる。
【0118】
特に成績が所定条件を満たす場合に、成績に関する情報をユーザに通知する通知部114を備えることで、成績のフィードバックを受けて、ユーザが畜産の経営を早期に改善することを検討することができる。
【0119】
(プログラム)
図9は、コンピュータ801の構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ801は、CPU802、主記憶装置803、補助記憶装置804、インタフェース805を備える。
【0120】
ここで、各実施形態に係る畜産情報管理サーバ101を構成する各機能を実現するためのプログラムの詳細について説明する。
【0121】
畜産情報管理サーバ101は、コンピュータ801に実装される。そして、畜産情報管理サーバ101の各構成要素の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置804に記憶される。CPU802は、プログラムを補助記憶装置804から読みだして主記憶装置803に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU802は、プログラムに従って、上記した記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置803に確保する。
【0122】
当該プログラムは、具体的には、コンピュータ801において、家畜の情報を管理する畜産情報管理プログラムであって、家畜抽出部が、家畜又は家畜群の飼養状態を示すステータスが遷移したタイミングに関する履歴情報と、家畜の飼養のために実施する作業であるイベントを実施すべきタイミングを規定するイベント予定マスタ情報を用いて、家畜又は家畜群に対してイベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された家畜又は家畜群をイベントが未実施である対象家畜として抽出する家畜抽出ステップ、を実現するプログラムである。
【0123】
なお、補助記憶装置804は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース805を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムがネットワークNWを介してコンピュータ801に配信される場合、配信を受けたコンピュータ801が当該プログラムを主記憶装置803に展開し、上記処理を実行してもよい。
【0124】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置804に既に記憶される他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)
であってもよい。
【0125】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。また、実施形態の説明では家畜として豚を例として説明したが、牛や鳥のような他の家畜、家きんに畜産情報管理システムを適用しても構わない。
【符号の説明】
【0126】
1…畜産情報管理システム
101…畜産情報管理サーバ
111…家畜抽出部
112…ステータス管理部
113…成績生成部
114…通知部
121…情報記憶部
201…端末部
211…入力部
212…表示部
213…表示画面
801…コンピュータ
802…CPU
803…主記憶装置
804…補助記憶装置
805…インタフェース

【要約】
【課題】 膨大な数の家畜に対するイベント(作業)の実施について管理し、イベントの実施結果について漏れなく確認できること。
【解決手段】家畜の情報を管理する畜産情報管理システム1であって、家畜の飼養のために実施するイベントを示すイベント情報と、イベントを実施すべきタイミングを規定するイベント予定マスタ情報と、家畜又は家畜群の個体又は群を識別する識別子と、識別子によって識別される家畜又は家畜群がイベントの実施によって遷移する飼養状態であるステータスを示すステータス情報と、ステータスが遷移したタイミングに関する履歴情報と、を記憶する情報記憶部121と、履歴情報と、イベント予定マスタ情報とを比較して、家畜又は家畜群に対してイベントを実施したか否かを判定し、否であると判定された家畜又は家畜群をイベントが未実施である対象家畜として抽出する家畜抽出部111を備える、畜産情報管理システム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9