(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1粘着剤層および/または前記第2粘着剤層は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物である、請求項1から5のいずれか一つに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一の実施形態に係る光学用粘着シートたる粘着シートXの部分断面図である。粘着シートXは、基材10と、第1粘着剤層たる粘着剤層11と、第2粘着剤層たる粘着剤層12とを含む積層構造を有する。粘着シートXは、例えば、透明カバーと液晶パネルとが近接して対向する設計の液晶表示装置において、透明カバーと液晶パネルとの間を充填するための透明な光学用粘着シートとして使用され得るものである。具体的には、粘着シートXは、前記のような設計の液晶表示装置において、粘着剤層11側で透明カバーに貼着し且つ粘着剤層12側で液晶パネルの透明カバー側最表層に貼着する態様で、これら透明カバーと液晶パネルとの間を充填するための透明な光学用粘着シートとして、使用され得るものである。液晶パネルには、タッチパネル機能が液晶パネルに組み込まれたオンセル型タッチセンサー付き液晶パネルやインセル型タッチセンサー付き液晶パネルが含まれる。このようなタッチパネル内蔵タイプの液晶パネルでは、いわゆる液晶シャッター機能を実現するための液晶パネルの一要素たる偏光フィルムが、当該パネルの積層構成上、最表層に位置することが多い。
【0025】
粘着シートXの基材10は、粘着シートXにおいて支持体として機能する部位であり、且つ、光透過性を有する。基材10の厚さは、25μmを超えており、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上、より好ましくは70μm以上、より好ましくは80μm以上である。一方、基材10の厚さは、好ましくは150μm以下である。そして、基材10の厚さT
B、粘着剤層11の厚さT
A1、および粘着剤層12の厚さT
A2は、T
Bが100μm未満の場合、T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、好ましくは1.2T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、より好ましくは1.5T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、より好ましくは2T
B≦T
A1≦T
A2を充たす。また、基材10の厚さT
B、粘着剤層11の厚さT
A1、および粘着剤層12の厚さT
A2は、T
Bが100μm以上の場合、2.5T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、好ましくは2.7T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、より好ましくは3T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、より好ましくは3.5T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、より好ましくは4T
B≦T
A1≦T
A2を充たす。
【0026】
基材10について、90〜100℃における平均線膨張率の絶対値は、2×10
-4℃
-1以下であり、好ましくは1.5×10
-4℃
-1以下、より好ましくは1×10
-4℃
-1以下である。当該平均線膨張率の絶対値について、基材10が樹脂製である場合、基材10のいわゆる機械方向(MD)における値と当該機械方向に直交するいわゆる幅方向(TD)における値とは異なることが多いところ、当該両絶対値が異なる場合には、より大きい値を、90〜100℃における平均線膨張率の絶対値とする。90〜100℃における平均線膨張率については、例えば、熱機械的分析装置(商品名「TMA/SS6000」,エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用して行う線膨張測定に基づき求めることができる。本測定においては、例えば、装置の具備する一対のチャックに挟持される測定試料の初期チャック間距離(測定に係る初期長さ)を10mmとし、測定雰囲気を空気雰囲気(流量200ml/分)とし、測定モードを引張モード(荷重19.6mN)とし、測定温度範囲を20℃から350℃までとし、昇温速度を例えば5℃/分とする。
【0027】
基材10の面内位相差は、好ましくは1500nm以上、より好ましくは3000nm以上、より好ましくは6000nm以上である。本実施形態において、基材10の面内位相差とは、波長590nmの光を23℃にて基材10に透過させるときの複屈折に係る、基材10の主面に平行な面内で直行する二つの光学主軸(遅相軸と進相軸)のうち遅相軸の方向に振動する偏光成分(異常光線)と進相軸の方向に振動する偏光成分(常光線)との間に生ずる位相差をいう。当該面内位相差は、異常光線の屈折率(相対的に大きい)をnxとし、常光線の屈折率(相対的に小さい)をnyとし、基材10の厚さをd(nm)とする場合に、(nx−ny)×dで表される値とする。
【0028】
以上のような基材10をなすための材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル、ポリスチレン、アセテート、ポリエーテルスルホン、およびトリアセチルセルロースが挙げられる。基材10は、一種類の材料からなってもよし、二種類以上の材料からなってもよい。基材10は、多層構造を有してもよい。また、基材10における粘着剤層11側の表面および粘着剤層12側の表面は、それぞれ、粘着剤層との密着性の向上のための表面処理が施されていてもよい。そのような表面処理としては、コロナ処理やプラズマ処理等の物理的処理、および、下塗り処理等の化学的処理が、挙げられる。上述のような面内位相差を伴う基材10は、例えば、所定の程度に一軸延伸処理または二軸延伸処理の施された樹脂フィルムよりなる。
【0029】
粘着シートXの粘着剤層11,12は、それぞれ、主剤として粘着剤を含有し、且つ、光透過性を有する。主剤とは、含有成分中で最も大きな重量割合を占める成分とする。粘着剤層11に含まれる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマー、ウレタン系粘着剤たるポリウレタン、およびシリコーン系粘着剤が挙げられる。光学用の粘着シートXの粘着剤層11,12に求められる程度の粘着力を実現するうえでは、粘着剤としてアクリル系ポリマーを採用するのが好ましい。また、粘着剤層11は、被着体に貼着し得る粘着面11aを有し、粘着剤層12は、被着体に貼着し得る粘着面12aを有する。
【0030】
粘着剤層11および/または粘着剤層12がアクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマーを含有する場合、好ましくは、当該アクリル系ポリマーは、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、および/または、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、に由来するモノマーユニットを重量割合で最も多い主たるモノマーユニットとして含む。以下では、「(メタ)アクリル」をもって、「アクリル」および/または「メタクリル」を表す。
【0031】
上記アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、即ち、上記アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分に含まれる直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、および(メタ)アクリル酸エイコシルなど、炭素数が1〜20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。アクリル系ポリマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、一種類の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸イソステアリルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0032】
上記アクリル系ポリマーにおける、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来のモノマーユニットの割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。すなわち、当該アクリル系ポリマーを形成するための原料のモノマー成分組成における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステル割合を伴うモノマー成分組成に由来するモノマーユニット構成を、上記アクリル系ポリマーは有することとなる。直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合に関する当該構成は、アクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマーの粘着性等の基本特性を、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層にて適切に発現させるうえで好適である。
【0033】
粘着剤層11や粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、脂環式モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための脂環式モノマー、即ち、当該アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分に含まれる脂環式モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、および(メタ)アクリル酸シクロオクチルが挙げられる。二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ボルニルおよび(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、および(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチルが挙げられる。アクリル系ポリマーのための脂環式モノマーとしては、一種類の脂環式モノマーを用いてもよいし、二種類以上の脂環式モノマーを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための脂環式モノマーとして、好ましくは、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、およびメタクリル酸イソボルニルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0034】
上記アクリル系ポリマーにおける、脂環式モノマー由来のモノマーユニットの割合は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において適度な柔軟性を実現するという観点から、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。
【0035】
粘着剤層11や粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、水酸基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。水酸基含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つの水酸基を有することとなるモノマーである。粘着剤層11,12内のアクリル系ポリマーが水酸基含有モノマーユニットを含む場合、粘着剤層11,12において接着性や適度な凝集力が得られやすい。
【0036】
上記アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための水酸基含有モノマー、即ち、当該アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分に含まれる水酸基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、ビニルアルコール、およびアリルアルコールが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)が挙げられる。アクリル系ポリマーのための水酸基含有モノマーとしては、一種類の水酸基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上の水酸基含有モノマーを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための水酸基含有モノマーとして、好ましくは、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、およびメタクリル酸4-ヒドロキシブチルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0037】
上記アクリル系ポリマーにおける、水酸基含有モノマー由来のモノマーユニットの割合は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。上記アクリル系ポリマーにおける、水酸基含有モノマー由来のモノマーユニットの割合は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは18重量%以下である。水酸基含有モノマーの割合に関するこれら構成は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において接着性や適度な凝集力を実現するうえで好適である。
【0038】
粘着剤層11や粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、窒素原子含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。窒素原子含有モノマーは、モノマーユニット内に少なくとも一つの窒素原子を有することとなるモノマーである。粘着剤層11,12内のアクリル系ポリマーが窒素原子含有モノマーユニットを含む場合、粘着剤層11,12において硬さや良好な接着信頼性が得られやすい。
【0039】
上記アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための窒素原子含有モノマー、即ち、当該アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分に含まれる窒素原子含有モノマーとしては、例えば、N-ビニル環状アミドおよび(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。窒素原子含有モノマーたるN-ビニル環状アミドとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、およびN-ビニル-3,5-モルホリンジオンが挙げられる。窒素原子含有モノマーたる(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、およびN,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。アクリル系ポリマーのための窒素原子含有モノマーとしては、一種類の窒素原子含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上の窒素原子含有モノマーを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための窒素原子含有モノマーとして、好ましくはN-ビニル-2-ピロリドンが用いられる。
【0040】
上記アクリル系ポリマーにおける、窒素原子含有モノマー由来のモノマーユニットの割合は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において、適度な硬さや、接着性、透明性を実現するという観点から、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。また、上記アクリル系ポリマーにおける、窒素原子含有モノマー由来のモノマーユニットの割合は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において、充分な透明性を実現するという観点や、硬くなり過ぎることを抑制して良好な接着信頼性を実現するという観点から、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。
【0041】
粘着剤層11や粘着剤層12に含有されるアクリル系ポリマーは、共重合性架橋剤たる多官能(メタ)アクリレートに由来する架橋構造を有してもよい。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、およびビニル(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリル系ポリマーのための多官能(メタ)アクリレートとしては、一種類の多官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、二種類以上の多官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。本実施形態では、アクリル系ポリマーのための多官能(メタ)アクリレートとして、好ましくは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびトリメチロールプロパントリアクリレートからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0042】
上記アクリル系ポリマーにおける、多官能(メタ)アクリレート由来のモノマーユニットの割合は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.03重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上である。上記アクリル系ポリマーにおける、多官能(メタ)アクリレート由来のモノマーユニットの割合は、同含有率は、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下である。多官能(メタ)アクリレートの割合に関するこれら構成は、当該アクリル系ポリマーを含んで形成される粘着剤層において適度な硬さや接着性を実現するうえで好適である。
【0043】
粘着剤層11および/または粘着剤層12が以上のようなアクリル系ポリマーを粘着剤として含有する場合、粘着剤層における当該アクリル系ポリマーの含有率は、例えば85〜100重量%である。
【0044】
粘着剤層11,12は、それぞれ、室温での高い粘着性を実現するという観点から例えば、原料モノマー組成が上述のアクリル系ポリマーとは異なるアクリル系オリゴマーを含有してもよい。粘着剤層11および/または粘着剤層12がそのようなアクリル系オリゴマーを含有する場合、粘着剤層中のアクリル系オリゴマーの含有量は、粘着剤層中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して例えば0.1〜20重量部である。
【0045】
上記オリゴマーは、好ましくは、環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル(環含有(メタ)アクリル酸エステル)に由来するモノマーユニットと、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットとを含む重合体である。
【0046】
上記オリゴマーのモノマーユニットをなすための環含有(メタ)アクリル酸エステル、即ち、当該オリゴマーを形成するためのモノマー成分に含まれる環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、および(メタ)アクリル酸シクロオクチルが挙げられる。二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ボルニルおよび(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、および(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチルが挙げられる。芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、および(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。オリゴマーのための環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、一種類の環含有(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよいし、二種類以上の環含有(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。本実施形態では、オリゴマーのための環含有(メタ)アクリル酸エステルとして、好ましくは、アクリル酸ジシクロペンタニルおよびメタクリル酸ジシクロペンタニルからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
【0047】
上記オリゴマーにおける、環含有(メタ)アクリル酸エステル由来のモノマーユニットの割合は、当該オリゴマーを含んで形成される粘着剤層において適度な柔軟性を実現するという観点から、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%、より好ましくは35〜80重量%である。
【0048】
上記オリゴマーのモノマーユニットをなすための、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、即ち、当該オリゴマーを形成するためのモノマー成分に含まれる、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、および(メタ)アクリル酸エイコシルなど、炭素数が1〜20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記オリゴマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、一種類の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよい。本実施形態では、上記オリゴマーのための当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくはメタクリル酸メチルが用いられる。
【0049】
上記オリゴマーにおける、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来のモノマーユニットの割合は、当該オリゴマーを含んで形成される粘着剤層において適度な弾性率を実現するという観点から、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは15〜80重量%、より好ましくは20〜60重量%である。
【0050】
また、上記オリゴマーは、カルボキシ基含有モノマーや、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、イミド基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。
【0051】
上記オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば1000〜30000であり、好ましくは1000〜20000、より好ましくは1500〜10000である。上記オリゴマーを含んで形成される粘着剤層において良好な粘着力を確保するという観点からは、当該オリゴマーの重量平均分子量は1000以上であるのが好ましい。一方、上記オリゴマーを含んで形成される粘着剤層において特に室温での粘着力を確保するという観点からは、当該オリゴマーの重量平均分子量は30000以下であるのが好ましい。
【0052】
上記オリゴマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。例えば、GPC測定装置(商品名「HLC−8120GPC」,東ソー株式会社製)を使用して、下記の測定条件の下、標準ポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)を求めることができる。
・カラム:TSKgel SuperAWM-H(上流側,東ソー株式会社製)とTSKgel SuperAW4000(東ソー株式会社製)とTSKgel SuperAW2500(下流側,東ソー株式会社製)とを直列に接続
・カラムサイズ:各カラムとも6.0mmφ×150mm
・カラム温度(測定温度):40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流量:0.4mL/分
・サンプル注入量:20μL
・サンプル濃度:約2.0g/L(テトラヒドロフラン溶液)
・標準試料:ポリスチレン
・検出器:示差屈折計(RI)
【0053】
粘着剤層11,12は、それぞれ、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN-フェニル-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。シランカップリング剤としては、商品名「KBM-403」(信越化学工業株式会社製)等の市販品も挙げられる。シランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0054】
粘着剤層11および/または粘着剤層12がシランカップリング剤を含有する場合、粘着剤層中のシランカップリング剤の含有量は、粘着剤層中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上である。また、粘着剤層中のシランカップリング剤の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。シランカップリング剤の含有量に関する当該構成は、当該シランカップリング剤を含んで形成される粘着剤層において、加湿条件下での高い接着性、特にガラスに対する高い接着性を実現するうえで、好適である。
【0055】
粘着剤層11,12は、それぞれ、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤は、紫外線を効率よく吸収可能であり且つ吸収したエネルギーを熱や赤外線などに変えて放出可能な化学種である。そのような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。粘着剤層11および/または粘着剤層12は、一種類の紫外線吸収剤を含有してもよいし、二種類以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0056】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(商品名「TINUVIN PS」,BASF社製)、ベンゼンプロパン酸3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシの炭素数7〜9のアルキルエステル(商品名「TINUVIN 384-2」,BASF社製)、オクチル3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートおよび2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2イル)フェニル]プロピオネートの混合物(商品名「TINUVIN 109」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN 900」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 928」,BASF製)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(商品名「TINUVIN 1130」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(商品名「TINUVIN P」,BASF社製)、2(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名「TINUVIN 234」,BASF社製)、2-[5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 326」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(商品名「TINUVIN 328」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(商品名「TINUVIN 329」,BASF社製)、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール](商品名「TINUVIN 360」,BASF社製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(商品名「TINUVIN 571」,BASF社製)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(商品名「Sumisorb 250」,住友化学株式会社製)、および2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール](商品名「アデカスタブ LA-31」,株式会社ADEKA製)が挙げられる。
【0057】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(炭素数10〜16のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(商品名「TINUVIN 400」,BASF社製)、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[3-(ドデシルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシ]フェノール)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルとの反応生成物(商品名「TINUVIN 405」,BASF社製)、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN 460」,BASF社製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(商品名「TINUVIN 1577」,BASF社製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(商品名「アデカスタブ LA-46」,株式会社ADEKA製)、および2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名「TINUVIN 479」,BASF社製)が挙げられる。
【0058】
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニル2-アクリロイルオキシベンゾエート、フェニル2-アクロリイルオキシ-3-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-4-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-5-メチルベンゾエート、フェニル2-アクリロイルオキシ-3-メトキシベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-3-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-4-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-5-メチルベンゾエート、フェニル2-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエート、および2,4-ジ-tert-ブチルフェニル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(商品名「TINUVIN 120」,BASF社製)が挙げられる。
【0059】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤やオキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(商品名「KEMISORB 111」,ケミプロ化成株式会社製)、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン(商品名「SEESORB 106」,シプロ化成株式会社製)、および2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0060】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、アルキル2-シアノアクリレート、シクロアルキル2-シアノアクリレート、アルコキシアルキル2-シアノアクリレート、アルケニル2-シアノアクリレート、およびアルキニル2-シアノアクリレートが挙げられる。
【0061】
粘着剤層11および/または粘着剤層12に含有される紫外線吸収剤は、高い紫外線吸収性を有するとともに高い光安定性を有するという観点や、透明性の高い粘着剤層を得やすいという観点から、好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、およびベンゾフェノン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である。粘着剤層11および/または粘着剤層12に含有される紫外線吸収剤は、より好ましくは、炭素数6以上の炭化水素基および水酸基を置換基として有するフェニル基がベンゾトリアゾール環を構成する窒素原子に結合しているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
【0062】
粘着剤層11および/または粘着剤層12が紫外線吸収剤を含有する場合、粘着剤層中の紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤層における波長350nmの光の透過率を制御して高い紫外線吸収性を実現するという観点から、粘着剤層中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上である。また、粘着剤層中の紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤層において紫外線吸収剤の添加に伴う粘着剤の黄色化現象の発生を抑制して優れた光学特性や高い透明性を実現するという観点から、粘着剤層中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは10重量部以下、より好ましくは9重量部以下、より好ましくは8重量部以下である。
【0063】
粘着剤層11,12は、それぞれ、光安定剤を含有してもよい。粘着剤層11,12は、それぞれ、光安定剤を含有する場合、好ましくは紫外線吸収剤を共に含有する。光安定剤は、紫外線等の光の照射に因って生成し得るラジカルを捕捉可能な化学種である。光安定剤としては、例えば、フェノール系光安定剤、リン系光安定剤、チオエーテル系光安定剤、および、ヒンダードアミン系安定剤等のアミン系光安定剤が、挙げられる。粘着剤層11および/または粘着剤層12は、一種類の光安定剤を含有してもよいし、二種類以上の光安定剤を含有してもよい。
【0064】
フェノール系光安定剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、4-ヒドロキシメチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、n-オクタデシル3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、ジステアリル(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-tert-ブチル)ベンジルマロネート、トコフェロール、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、スチレン化フェノール、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルエステル)カルシウム、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2'-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、2,2'-オキサミドビス[エチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-2,4-ジオクチルチオ-1,3,5-トリアジン、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、および3,9-ビス{2-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0065】
リン系光安定剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス[2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル]ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4'-n-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、およびトリス(2-[(2,4,8,10-テトラキス-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ]エチル)アミンが挙げられる。
【0066】
チオエーテル系光安定剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、およびチオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート化合物、並びに、テトラキス[メチレン(3-ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル化合物が挙げられる。
【0067】
アミン系光安定剤としては、例えば、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物(商品名「TINUVIN 622」,BASF社製)、当該重合物とN,N',N'',N'''-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンとの1対1反応生成物(商品名「TINUVIN 119」,BASF社製)、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2-4-ジイル}{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル}イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ})(商品名「TINUVIN 944」,BASF社製)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名「TINUVIN 770」,BASF社製)、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステルと1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物(商品名「TINUVIN 123」,BASF社製)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(商品名「TINUVIN 144」,BASF社製)、シクロヘキサンおよび過酸化N-ブチル2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミン-2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンの反応生成物と2-アミノエタノールとの反応生成物(商品名「TINUVIN 152」,BASF社製)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートおよびメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物(商品名「TINUVIN 292」,BASF社製)、並びに、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよび3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物(商品名「アデカスタブ LA-63P」,株式会社ADEKA製)が挙げられる。アミン系安定剤としては、特にヒンダードアミン系安定剤が好ましい。
【0068】
粘着剤層11および/または粘着剤層12が光安定剤を含有する場合、粘着剤層中の光安定剤の含有量は、粘着剤層において充分な耐光性を実現するという観点から、粘着剤層中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上である。また、粘着剤層中の光安定剤の含有量は、粘着剤層において光安定剤に因る着色を抑制して高い透明性を実現するという観点から、粘着剤層中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。
【0069】
粘着剤層11および/または粘着剤層12に含有される粘着剤ないしアクリル系ポリマーは、上述の共重合性架橋剤ではない架橋剤で架橋されていてもよい。当該架橋剤による粘着剤ないしアクリル系ポリマーの架橋を利用して、粘着剤層11および/または粘着剤層12のゲル分率を調整することが可能である。そのような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、およびアミン系架橋剤が挙げられる。粘着剤層11および/または粘着剤層12は、一種類の当該架橋剤を含有してもよいし、二種類以上の当該架橋剤を含有してもよい。本実施形態では、好ましくはイソシアネート系架橋剤および/またはエポキシ系架橋剤が用いられる。
【0070】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、低級脂肪族ポリイソシアネート類、脂環式ポリイソシアネート類、および芳香族ポリイソシアネート類が挙げられる。低級脂肪族ポリイソシアネート類としては、例えば、1,2-エチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、および1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネート類としては、例えば、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、および水素添加キシレンジイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネート類としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびキシリレンジイソシアネートが挙げられる。また、イソシアネート系架橋剤としては、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートL」,日本ポリウレタン工業株式会社製)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートHL」,日本ポリウレタン工業株式会社製)、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(商品名「タケネートD-110N」,三井化学株式会社製)等の市販品も挙げられる。
【0071】
エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、およびビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルが挙げられる。また、エポキシ系架橋剤としては、エポキシ基を二つ以上有するエポキシ系樹脂も挙げられる。加えて、エポキシ系架橋剤としては、商品名「テトラッドC」(三菱ガス化学株式会社製)等の市販品も挙げられる。
【0072】
アクリル系ポリマー間を架橋するための以上のような架橋剤を粘着剤層11および/または粘着剤層12が含有する場合、粘着剤層中の当該架橋剤の含有量は、粘着剤層において被着体に対する充分な接着信頼性を実現するという観点から、粘着剤層中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上である。また、粘着剤層中の当該架橋剤の含有量は、粘着剤層において適度な柔軟性を発現させて良好な粘着力を実現するという観点から、粘着剤層中の粘着剤ないしアクリル系ポリマー100重量部に対して好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0073】
粘着剤層11,12は、それぞれ、必要に応じて、架橋促進剤、粘着付与樹脂、老化防止剤、充填剤、顔料や染料などの着色剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、および帯電防止剤などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で更に含有してもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、および油溶性フェノールが挙げられる。
【0074】
粘着剤層11の厚さは、粘着剤層11において例えば95℃の高温での充分な貯蔵弾性率(せん断貯蔵弾性率)を確保しつつ被着体に対する高いせん断粘着力を実現するという観点からは、好ましくは450μm以下、より好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下である。
【0075】
粘着剤層12の厚さは、粘着剤層12において例えば95℃の高温での充分な損失正接(= 損失弾性率/貯蔵弾性率)を確保しつつ被着体に対する高いせん断粘着力を実現するという観点からは、好ましくは1000μm以下、より好ましくは950μm以下、より好ましくは900μm以下である。また、粘着剤層12の厚さは、粘着シートXの厚手化の観点からは、粘着剤層11の厚さより大きい方が好ましい。
【0076】
以上のような構成の光学用の粘着シートXについて、可視光波長領域における全光線透過率は、例えば85%以上である。全光線透過率は、JIS K 7361-1に準じて測定される値とする。また、光学用の粘着シートXのヘーズは、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、より好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下である。ヘーズは、JIS K 7136に準じて測定される値とする。
【0077】
粘着シートXは、粘着剤層11の粘着面11aを被覆するようにセパレーター(剥離ライナー)が設けられていてもよい。粘着シートXは、粘着剤層12の粘着面12aを被覆するようにセパレーター(剥離ライナー)が設けられていてもよい。セパレーターは、粘着シートXの粘着剤層11,12が露出しないように保護するための要素であり、粘着シートXを被着体に貼り合せる際に粘着シートXから剥がされる。セパレーターとしては、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材、および、無極性ポリマーからなる低接着性基材が挙げられる。セパレーターの表面は、離型処理、防汚処理、または帯電防止処理が施されていてもよい。セパレーターの厚さは、例えば5〜200μmである。
【0078】
以上のような構成の粘着シートXは、例えば、粘着剤層11,12をそれぞれ形成した後、粘着剤層11,12をそれぞれ基材10に対して貼り合せることによって、製造することができる。粘着剤層11は、例えば、所定の剥離ライナー上に粘着剤層11形成用の粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成し、当該粘着剤組成物層上に更なる剥離ライナーを積層し、当該剥離ライナー間で粘着剤組成物を硬化させることによって、形成することができる。一方、粘着剤層12は、例えば、所定の剥離ライナー上に粘着剤層12形成用の粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成し、当該粘着剤組成物層上に更なる剥離ライナーを積層し、当該剥離ライナー間で粘着剤組成物を硬化させることによって、形成することができる。
【0079】
粘着剤層11形成用の粘着剤組成物および/または粘着剤層12形成用の粘着剤組成物としては、好ましくは、活性エネルギー線の照射によって重合反応が進行して硬化可能な粘着剤組成物が用いられる。すなわち、粘着剤層11および/または粘着剤層12は、好ましくは、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物である。アクリル系粘着剤層形成用の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー、オリゴマー、および光重合開始剤を少なくとも含有する。当該組成物中のモノマーおよびオリゴマーは、アクリル系ポリマーを形成するための所定組成のモノマー混合物のいわゆる部分重合物として供することができる。また、当該粘着剤組成物は、形成される粘着剤層の成分として必要に応じて採用されるその他の成分を含有してもよい。粘着剤層の硬化のために活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物に照射される活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、α線、β線、γ線、中性子線、および電子線が挙げられ、好ましくは紫外線が採用される。活性エネルギー線の照射を受けた、アクリル系粘着剤層形成用の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物においては、光重合開始剤の活性化を経て開始反応が生じ、アクリル系ポリマーの形成に向けて重合反応が進行する。粘着剤層形成用の硬化性粘着剤組成物の硬化手法として紫外線照射等の活性エネルギー線照射を採用すると、当該粘着剤組成物の塗膜が比較的に厚い場合であっても、適切に硬化した粘着剤層を得やすい。したがって、粘着剤層11が活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物であるという構成は、比較的に厚くても充分に硬化した粘着剤層11を実現するうえで好適である。粘着剤層12が活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物であるという構成は、比較的に厚くても充分に硬化した粘着剤層12を実現するうえで好適である。
【0080】
上記の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、およびチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、および4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンが挙げられる。α-ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えばベンゾインが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としては、例えばベンジルが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、およびポリビニルベンゾフェノンが挙げられる。ケタール系光重合開始剤としては、例えばベンジルジメチルケタールが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、およびドデシルチオキサントンが挙げられる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物における光重合開始剤の含有量は、例えば0.01〜3重量%である。
【0081】
粘着剤層11形成用の粘着剤組成物および/または粘着剤層12形成用の粘着剤組成物としては、粘着剤たるアクリル系ポリマーを既に含有して例えば加熱乾燥によって硬化可能な溶剤型粘着剤組成物やエマルション型粘着剤組成物を用いてもよい。当該組成物は、形成される粘着剤層の成分として必要に応じて採用されるその他の成分を含有してもよい。当該粘着剤組成物中のアクリル系ポリマーは、アクリル系ポリマー形成用の原料モノマー成分を重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、および塊状重合が挙げられる。溶液重合を行うに際しては、溶剤として、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、エステル類、およびケトン類を用いることができる。芳香族炭化水素類の溶剤としては、例えば、トルエンおよびベンゼンが挙げられる。脂肪族炭化水素類の溶剤としては、例えば、n-ヘキサンおよびn-ヘプタンが挙げられる。脂環式炭化水素類の溶剤としては、例えば、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンが挙げられる。エステル類の溶剤としては、例えば、酢酸エチルおよび酢酸n-ブチルが挙げられる。ケトン類の溶剤としては、例えば、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンが挙げられる。溶液重合においては、一種類の溶剤を用いてもよいし、二種類以上の溶剤を用いてもよい。
【0082】
アクリル系ポリマーを得るために原料モノマー成分を重合する際には、重合開始剤を用いることができる。重合反応の種類に応じて、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤を用いることができる。重合の際には、一種類の重合開始剤を用いてもよいし、二種類以上の重合開始剤を用いてもよい。
【0083】
光重合開始剤としては、例えば、上記のベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、およびチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤の使用量は、例えば、モノマー成分全量(100重量部)に対して0.01〜3重量部である。
【0084】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、およびレドックス系重合開始剤が挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、および4,4'-アゾビス-4-シアノバレリアン酸が挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシドおよびtert-ブチルペルマレエートが挙げられる。熱重合開始剤の使用量は、例えば、モノマー成分全量(100重量部)に対して0.05〜0.3重量部である。
【0085】
上記アクリル系ポリマーを得るための重合に際しては、アクリル系ポリマーの分子量を調整するために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、α-チオグリセロール、2-メルカプトエタノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、オクチルメルカプタン、t-ノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン(ラウリルメルカプタン)、t-ドデシルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t-ブチル、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸デシル、およびチオグリコール酸ドデシルが挙げられる。連鎖移動剤としては、一種類の連鎖移動剤を用いてもよいし、二種類以上の連鎖移動剤を用いてもよい。本実施形態では、連鎖移動剤として、好ましくはα-チオグリセロールが用いられる。連鎖移動剤の使用量は、例えば、アクリル系ポリマーを得るためのモノマー成分全量(100重量部)に対して0.01〜0.5重量部である。
【0086】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物や、溶剤型粘着剤組成物、エマルション型粘着剤組成物などの、粘着剤層形成用の粘着剤組成物が、上述のアクリル系オリゴマーを含む場合、当該オリゴマーは、所定組成の原料モノマー成分を重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、および塊状重合が挙げられる。溶液重合のための溶剤としては、アクリル系ポリマーを得るための溶液重合に用いることのできる溶剤として上記したものが挙げられる。当該溶液重合においては、一種類の溶剤を用いてもよいし、二種類以上の溶剤を用いてもよい。また、上記オリゴマーを得るために原料モノマー成分を重合する際には、重合開始剤を用いることができる。当該重合開始剤としては、アクリル系ポリマーを得るための重合に用いることのできる重合開始剤として上記した光重合開始剤や熱重合開始剤が挙げられる。重合の際には、一種類の重合開始剤を用いてもよいし、二種類以上の重合開始剤を用いてもよい。
【0087】
例えば以上のようにして製造される上述の粘着シートXは、被着体に対する接着信頼性を確保しつつ厚手化を図るのに適する。その理由は、次のとおりである。
【0088】
光学用途の両面粘着シートを介して接合状態が実現される被着体は、異なる材料構成を有する場合がある。例えば、車載用の液晶ディスプレイないし液晶表示装置においては、表示画面の最前面をなす透明カバーと、装置内に組み付けられる液晶パネルの積層構成上の最表層とは、異なる材料構成を有する場合が多い。透明カバーは、例えばガラス製カバーまたは樹脂製カバーである。当該透明カバーは、室温から昇温する過程で膨張し且つ室温へ降温する過程で収縮するという特性を示す傾向がある。一方、液晶パネルの最表層には、例えば偏光フィルムが位置する。液晶パネル用途の偏光フィルムには、室温から昇温する過程で収縮し且つ室温へ降温する過程で膨張するという特性を示す傾向があり、この変形特性は透明カバーのそれと逆である。加えて、このような偏光フィルムにおける温度変化に基づく面広がり方向の寸法変化は、比較的に大きい。異なる材料構成を有するために温度変化に基づく変形特性その他の特性の異なる二つの部材の間の充填を単一の粘着剤層に担わせる場合、両部材の特性の相違に対応させつつ当該単一粘着剤層について当該両部材に対する接着信頼性を共に確保することは、当該粘着剤層の厚さが増大するほど困難となる傾向にある。材料構成の異なる両部材の間に介在する単一粘着剤層の厚さが増大するほど、当該粘着剤層について、当該両部材のそれぞれの特性に適切に対応させつつ各部材に対する充分なせん断粘着力を確保することが、困難となる傾向にあるからである。これに対し、粘着シートXは、粘着剤層11と、粘着剤層12と、これらの間の基材10とを含む積層構造を有するため、各粘着剤層について、その被着体の温度変化に基づく変形特性その他の特性に対応させつつ厚膜化を図りやすい。液晶表示装置の透明カバーと液晶パネルとの間を充填するための透明粘着シートに粘着シートXを適用する場合には例えば、粘着剤層11について液晶表示装置の透明カバーの特性に対応させつつ厚膜化を図り、且つ、粘着剤層12について液晶パネル最表層の特性に対応させつつ厚膜化を図ることが、可能である。このように、粘着剤層11と、粘着剤層12と、これらの間の基材10とを含む積層構造を粘着シートXが有することは、粘着剤層11および粘着剤層12についてそれぞれの被着体の特性に個別に柔軟に対応させつつ粘着シートXの全体の厚手化を図るのに、適する。
【0089】
また、粘着シートXの有する基材10の厚さは、上述のように、25μmを超えており、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上、より好ましくは70μm以上、より好ましくは80μm以上である。このような構成は、基材10について粘着シートXにおける支持体としての機能を確保して、粘着シートXの作製過程や対被着体貼合せ作業時などに粘着シートXにシワが生ずるのを抑制するのに適する。そのようなシワの抑制は、粘着シートXについて、被着体に対する接着信頼性を確保するのに資する。
【0090】
加えて、粘着シートXの有する基材10について、90〜100℃における平均線膨張率の絶対値は、上述のように、2×10
-4℃
-1以下であり、好ましくは1.5×10
-4℃
-1以下、より好ましくは1×10
-4℃
-1以下である。上述の技術的効果をもたらす基材10についての当該低熱膨張率に係る構成は、当該基材10と粘着剤層11との界面や、当該基材10と粘着剤層12との界面において、剥がれが生じるのを抑制するのに適する。基材10と各粘着剤層との間の界面剥がれの抑制は、粘着シートXの接着信頼性を確保するのに資する。
【0091】
更に加えて、粘着シートXにおいては、基材10の厚さT
B、粘着剤層11の厚さT
A1、および粘着剤層12の厚さT
A2は、上述のように、T
Bが100μm未満の場合にT
B≦T
A1≦T
A2を充たし、好ましくは1.2T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、より好ましくは1.5T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、より好ましくは2T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、T
Bが100μm以上の場合に2.5T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、好ましくは2.7T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、より好ましくは3T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、より好ましくは3.5T
B≦T
A1≦T
A2を充たし、より好ましくは4T
B≦T
A1≦T
A2を充たす。このような構成は、上述のように熱膨張率の比較的に小さな基材10においても発生し得る収縮応力等の熱応力を粘着剤層にて緩和してその被着体に作用するのを抑制し、各粘着剤層とその被着体との界面において剥がれが生ずるのを抑制するのに適する。粘着剤層11とその被着体との間の界面剥がれの抑制、および、粘着剤層12とその被着体との間の界面剥がれの抑制は、粘着シートXの接着信頼性を確保するのに資する。
【0092】
以上のように、粘着シートXは、接着信頼性を確保しつつ厚手化を図るのに適するのである。
【0093】
このような粘着シートXにおいて、基材10の厚さは、上述のように、150μm以下であるのが好ましい。このような構成は、粘着シートXにおいてその剛性が過大となるのを抑制することによっていわゆる段差追従性を確保して、被着体表面に段差が存在する場合に当該段差起因の欠陥が生ずるのを抑制するのに適する。例えば、液晶表示装置用途の透明カバーにおける液晶パネル側表面には、カバー周縁に沿って印刷が施されることが多い。この印刷は、所定の厚さを有し、透明カバーの液晶パネル側表面に段差を生じさせる。この印刷段差は、透明カバーの液晶パネル側表面に粘着シートが貼着されている場合において、当該粘着シートの部分的な浮き等の欠陥を生じさせる原因となり得る。粘着シートXにおいて基材10の厚さが150μm以下であるという構成は、粘着シートXの剛性が過大となるのを抑制することによって、例えば液晶表示装置用途の透明カバーに粘着シートXが貼着している状態において、粘着シートXの段差追従性を確保して、透明カバー表面の印刷段差に起因して粘着シートXの部分的な浮き等の欠陥が生ずるのを抑制するのに適するのである。
【0094】
粘着シートXにおいて、基材10の面内位相差は、好ましくは1500nm以上、より好ましくは3000nm以上、より好ましくは6000nm以上である。このような構成は、液晶表示装置における透明カバーと液晶パネルとの間に粘着シートXが充填されている場合に例えば、偏光サングラス等の偏光機能付レンズを介しての当該装置の表示画面の視認時にいわゆるブラックアウト現象が発生するのを抑制するのに好適である。また、基材10の面内位相差が大きいほど、液晶表示装置における透明カバーと液晶パネルとの間に粘着シートXが充填されている場合に例えば、偏光サングラス等の偏光機能付レンズを介しての当該装置の表示画面の視認時のいわゆる虹ムラ現象が抑制される傾向にある。
【0095】
粘着剤層11の厚さは、上述のように、好ましくは450μm以下、より好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下である。このような構成は、粘着剤層11において例えば95℃の高温での充分な貯蔵弾性率(せん断貯蔵弾性率)を確保しつつ被着体に対する高いせん断粘着力を実現するうえで好適である。粘着剤層11について、95℃での貯蔵弾性率は、例えば1.0×10
4Pa以上であり、好ましくは5.0×10
4Pa以上、より好ましくは1.0×10
5Pa以上である。液晶表示装置用途のポリカーボネート製カバー等の透明樹脂製カバーは高温環境下でいわゆるアウトガスを発生する場合があるところ、粘着剤層11の95℃での高温の貯蔵弾性率が例えば1.0×10
4Pa以上であって高いほど、樹脂製カバーに粘着シートXが粘着剤層11側で貼着している状態において、樹脂製カバーからのアウトガスに起因して粘着剤層11ないし粘着シートXの部分的な浮きや剥がれ等の欠陥が生ずるのを抑制しやすい。粘着剤層11の当該貯蔵弾性率の調整は、粘着剤層中のアクリル系ポリマーを形成するための各種モノマーの割合の調整や、粘着剤層形成用の粘着剤組成物における共重合性の多官能(メタ)アクリレートの含有量の調整、形成されたアクリル系ポリマー間を架橋するための架橋剤の前記組成物中の含有量の調整、重合時の粘着剤組成物層ないし粘着剤層の厚さ設定などによって、行うことができる。貯蔵弾性率については、例えば、動的粘弾性測定装置(商品名「ARES」,レオメトリック社製)を使用した動的粘弾性測定に基づき求めることができる。本測定においては、測定モードをせん断モードとし、測定温度範囲を例えば−70℃〜150℃とし、昇温速度を例えば5℃/分とし、周波数を例えば1Hzとする。
【0096】
粘着剤層12の厚さは、上述のように、好ましくは1000μm以下、より好ましくは950μm以下、より好ましくは900μm以下である。このような構成は、粘着剤層12において例えば95℃の高温での充分な損失正接(= 損失弾性率/貯蔵弾性率)を確保しつつ被着体に対する高いせん断粘着力を実現するうえで好適である。粘着剤層12について、95℃での損失正接は、例えば0.08以上であり、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.12以上、より好ましくは0.15以上である。液晶パネル用途の偏光フィルムには、室温から昇温する過程で収縮し且つ室温へ降温する過程で膨張するという特性を示す傾向があって当該寸法変化は比較的に大きいところ、粘着剤層12の損失正接が例えば0.08以上でって高いほど、液晶パネルの偏光フィルムに粘着シートXが粘着剤層12側で貼着している状態において、温度変化に基づく偏光フィルムの面広がり方向の寸法変化に粘着剤層12ないし粘着シートXが追従して偏光フィルムと粘着剤層12との接着界面での応力を緩和するのに適する。偏光フィルムと粘着剤層12との接着界面でのこのような応力緩和は、偏光フィルムに対する粘着剤層12ないし粘着シートXの接着信頼性を確保するのに資する。粘着剤層12の当該損失正接の調整は、粘着剤層中のアクリル系ポリマーを形成するための各種モノマーの割合の調整や、粘着剤層形成用の粘着剤組成物における共重合性の多官能(メタ)アクリレートの含有量の調整、形成されたアクリル系ポリマー間を架橋するための架橋剤の前記組成物中の含有量の調整、重合時の粘着剤組成物層ないし粘着剤層の厚さ設定などによって、行うことができる。損失正接については、例えば、動的粘弾性測定装置(商品名「ARES」,レオメトリック社製)を使用した動的粘弾性測定から求めることができる。本測定においては、測定モードをせん断モードとし、測定温度範囲を例えば−70℃〜150℃とし、昇温速度を例えば5℃/分とし、周波数を例えば1Hzとする。
【0097】
図2は、本発明の一の実施形態に係る粘着剤層付偏光フィルムYの部分断面図である。粘着剤層付偏光フィルムYは、偏光フィルム21および粘着シートXを含む積層構造を有する。偏光フィルム21は、液晶パネル用途の偏光フィルムであって、例えば、偏光子の片面または両面に透明保護フィルムが設けられたものである。偏光フィルム21の厚さは、例えば30〜300μmである。粘着シートXは、
図1に示すように基材10および粘着剤層11,12を含む積層構造を有するところ、粘着剤層12(第2粘着剤層)の側にて偏光フィルム21に張り合わされている。粘着シートXにおける偏光フィルム21とは反対の側には、粘着剤層11の粘着面11aを被覆するようにセパレーター(剥離ライナー)が設けられていてもよい。粘着剤層付偏光フィルムYは、上述の技術的効果を享受するこのできる光学用の粘着シートXが既に貼り合わされた液晶パネル用偏光フィルムを提供するものである。
【0098】
図3は、本発明の一の実施形態に係る液晶表示装置Zにおける部分的な積層構成図である。液晶表示装置Zは、液晶パネル30と、透明カバー41と、これらの間の粘着シートXとを含む積層構造部を有する。
【0099】
液晶パネル30は、透明電極付のガラス基板31と、透明電極付のガラス基板32と、これらの間に位置する液晶層33と、偏光フィルム34,35とを含む積層構造を有して、いわゆる液晶シャッターとして機能するように構成されている。ガラス基板31は、液晶層33の側に、透明電極として画素電極を伴うものである。ガラス基板32は、液晶層33の側に、透明電極として対向電極を伴うものである。偏光フィルム34は、ガラス基板31の側に設けられ、液晶パネル30に係る積層方向において一方の端に位置する。偏光フィルム35は、ガラス基板32の側に設けられ、液晶パネル30に係る積層方向において、最も透明カバー41側の端に位置する。偏光フィルム34,35は、それぞれ、液晶パネル用途の偏光フィルムであって、例えば、偏光子の片面または両面に透明保護フィルムが設けられたものである。偏光フィルム34,35の厚さは、それぞれ、例えば30〜300μmである。
【0100】
液晶パネル30は、好ましくは、オンセル型タッチセンサーまたはインセル型タッチセンサーを備える。液晶パネル30におけるオンセル型タッチセンサー(図示略)とは、タッチパネル機能を実現するためのタッチセンサーが、例えばガラス基板32における液晶層33とは反対の側に設けられたものである。液晶パネル30におけるインセル型タッチセンサー(図示略)とは、タッチパネル機能を実現するためのタッチセンサーが、例えばガラス基板31における液晶層33の側に設けられたものである。タッチパネル機能が液晶パネル30に組み込まれたオンセル型タッチセンサー付き液晶パネルやインセル型タッチセンサー付き液晶パネルは、タッチパネル機能と液晶シャッター機能とを共に備えるユニット全体について、厚さや、重量、製造コストを低減するうえで、好適である。
【0101】
透明カバー41は、液晶表示装置用途の透明カバーであり、液晶表示装置Zの表示画面の最前面をなす。透明カバー41としては、例えば、透明な樹脂製カバーおよび透明なガラス製カバーが挙げられる。当該樹脂製カバーとしては、ポリカーボネート製カバーやポリメタクリル酸メチル製カバーが挙げられる。樹脂製の透明カバーは、安全性や軽量性の観点から、ガラス製の透明カバーよりも好ましい。特に車載用の液晶表示装置においては、そのような安全性および軽量性に対する要求が強い。
【0102】
粘着シートXは、
図1に示すように基材10および粘着剤層11,12を含む積層構造を有するところ、液晶表示装置Zにおいて、粘着剤層11(第1粘着剤層)の側にて透明カバー41に貼着し、且つ、粘着剤層12(第2粘着剤層)の側にて液晶パネル30の偏光フィルム35に貼着している。液晶表示装置Zにおける偏光フィルム35と粘着シートXの積層構造部分については、上述の粘着剤層付偏光フィルムYによって提供されるものであってもよい。
【0103】
以上のような構成の液晶表示装置Zにおいては、液晶パネル30の偏光フィルム35と透明カバー41との間を充填する光学用の粘着シートXにおいて、当該粘着シートXに関して上述した技術的効果を享受することができる。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0105】
〔アクリル系オリゴマーの製造例〕
反応容器内で、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)60重量部と、メタクリル酸メチル(MMA)40重量部と、連鎖移動剤としてのα-チオグリセロール3.5重量部と、重合溶媒としてのトルエン100重量部とを含む混合物を、70℃で1時間、窒素雰囲気下で撹拌した。次に、重合開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を反応容器内の混合物に加えて反応溶液を調製し、70℃で2時間、反応を行った。続いて、80℃で2時間、反応を行った。その後、反応容器内の反応溶液を、130℃の温度雰囲気下に置き、当該反応溶液からトルエン、連鎖移動剤、および未反応モノマーを乾燥除去した。これにより、固形状のアクリル系オリゴマーを得た。当該アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、5.1×10
3であった。
【0106】
〔アクリル系粘着剤組成物の調製例〕
アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)78重量部と、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)4重量部とを含有するモノマー混合物に、第1の光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」,BASF社製)0.035重量部および第2の光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」,BASF社製)0.035重量部を加えた後、当該混合物に対し、粘度測定装置を使用して粘度を測定しつつ当該混合物の粘度が約20Pa・sになるまで紫外線照射装置を使用して紫外線を照射した。粘度測定において、装置のローター回転速度は10rpmとし、測定温度は30℃とした。これにより、混合物中のモノマー成分の一部が重合した部分重合物たるプレポリマー組成物(重合反応を経ていないモノマー成分を含有する)を得た。そして、このプレポリマー組成物100重量部と、上述のアクリル系オリゴマー11.8重量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)17.6重量部と、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.294重量部と、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」,信越化学工業株式会社製)0.353重量部とを混合し、アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0107】
〔実施例1〕
〈第1粘着剤層の形成〉
ポリエチレンテレフタレート(PET)系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)上に、上記のアクリル系粘着剤組成物を塗布し、粘着剤組成物層を形成した。次に、この粘着剤組成物層上に更にPET系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)を積層し、当該粘着剤組成物層を被覆して酸素を遮断した。このようにして、[剥離ライナー/粘着剤組成物層/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体(積層体L1’)を得た。次に、この積層体L1’に対し、その一方の剥離ライナーの側から、ブラックライト(株式会社東芝製)を使用して照度3mW/cm
2の紫外線を300秒間照射した。これによって積層体L1’の粘着剤組成物層を硬化させて粘着剤層(第1粘着剤層)とし、[剥離ライナー/粘着剤層(第1粘着剤層)/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体(積層体L1)を得た。積層体L1における第1粘着剤層の厚さは50μmである。
【0108】
〈第2粘着剤層の形成〉
PET系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)上に、上記のアクリル系粘着剤組成物を塗布し、粘着剤組成物層を形成した。次に、この粘着剤組成物層上に更にPET系剥離ライナー(厚さ125μm,日東電工株式会社製)を積層し、当該粘着剤組成物層を被覆して酸素を遮断した。このようにして、[剥離ライナー/粘着剤組成物層/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体(積層体L2’)を得た。次に、この積層体L2’に対し、その一方の剥離ライナーの側から、ブラックライト(株式会社東芝製)を使用して照度3mW/cm
2の紫外線を300秒間照射した。これによって積層体L2’の粘着剤組成物層を硬化させて粘着剤層(第2粘着剤層)とし、[剥離ライナー/粘着剤層(第2粘着剤層)/剥離ライナー]の積層構成を有する積層体(積層体L2)を得た。積層体L2における第2粘着剤層の厚さは500μmである。
【0109】
〈光学用粘着シートの作製〉
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ダイアホイルT100C38」,面内位相差1500,三菱樹脂株式会社製)の両面にコロナ処理を施したもの(フィルムF
1)を用意し、上記の積層体L1(剥離ライナー/第1粘着剤層/剥離ライナー)から一方の剥離ライナーを剥離した後、この剥離によって露出した第1粘着剤層表面を介して、片側剥離ライナー付き第1粘着剤層をフィルムF
1の一方の面に対して貼り合せた。これにより、[剥離ライナー/第1粘着剤層/フィルムF
1]の積層構成を有する積層体を得た。次に、上記の積層体L2(剥離ライナー/第2粘着剤層/剥離ライナー)から一方の剥離ライナーを剥離した後、この剥離によって露出した第2粘着剤層表面を介して、片側剥離ライナー付き第2粘着剤層を前記フィルムF
1の他方の面に対して貼り合せた。以上のようにして、[剥離ライナー/第1粘着剤層(厚さ50μm)/フィルムF
1(厚さ38μm)/第2粘着剤層(厚さ500μm)/剥離ライナー]の積層構成を有する光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例1の光学用粘着シートの厚さは、588μmである。また、実施例1の光学用粘着シートにおいて、基材の厚さ(T
B)38μm(<100μm)に対し、第1粘着剤層の厚さ(T
A1)は1.3倍であり、第2粘着剤層の厚さ(T
A2)は13.2倍である。
【0110】
〔実施例2〕
第1粘着剤層の厚さを50μmに代えて100μmとしたこと、および、光学用粘着シートの基材として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ダイアホイルT100E50」,面内位相差2000,三菱樹脂株式会社製)の両面にコロナ処理を施したもの(フィルムF
2)をフィルムF
1の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例2の光学用粘着シートの厚さは、650μmである。また、実施例2の光学用粘着シートにおいて、基材の厚さ(T
B)50μm(<100μm)に対し、第1粘着剤層の厚さ(T
A1)は2倍であり、第2粘着剤層の厚さ(T
A2)は10倍である。
【0111】
〔実施例3〕
第1粘着剤層の厚さを50μmに代えて250μmとしたこと、および、光学用粘着シートの基材としてフィルムF
1に代えて上記フィルムF
2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例2の光学用粘着シートの厚さは、800μmである。また、実施例3の光学用粘着シートにおいて、基材の厚さ(T
B)50μm(<100μm)に対し、第1粘着剤層の厚さ(T
A1)は5倍であり、第2粘着剤層の厚さ(T
A2)は10倍である。
【0112】
〔実施例4〕
第1粘着剤層の厚さを50μmに代えて500μmとしたこと、および、光学用粘着シートの基材としてフィルムF
1に代えて上記フィルムF
2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例2の光学用粘着シートの厚さは、1050μmである。また、実施例4の光学用粘着シートにおいて、基材の厚さ(T
B)50μm(<100μm)に対し、第1粘着剤層の厚さ(T
A1)は10倍であり、第2粘着剤層の厚さ(T
A2)は10倍である。
【0113】
〔実施例5〕
第1粘着剤層の厚さを50μmに代えて500μmとしたこと、および、光学用粘着シートの基材として、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ダイアホイルT104E125」,面内位相差5000,三菱樹脂株式会社製)の両面にコロナ処理を施したもの(フィルムF
3)をフィルムF
1の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例2の光学用粘着シートの厚さは、1125μmである。また、実施例5の光学用粘着シートにおいて、基材の厚さ(T
B)125μm(≧100μm)に対し、第1粘着剤層の厚さ(T
A1)は4倍であり、第2粘着剤層の厚さ(T
A2)は4倍である。
【0114】
〔実施例6〕
第1粘着剤層の厚さを50μmに代えて100μmとしたこと、および、光学用粘着シートの基材として、厚さ80μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「SRF」,面内位相差8400,東洋紡株式会社製)の両面にコロナ処理を施したもの(フィルムF
4)をフィルムF
1の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く実施例2の光学用粘着シートの厚さは、680μmである。また、実施例6の光学用粘着シートにおいて、基材の厚さ(T
B)80μm(<100μm)に対し、第1粘着剤層の厚さ(T
A1)は1.25倍であり、第2粘着剤層の厚さ(T
A2)は6.25倍である。
【0115】
〔比較例1〕
第1粘着剤層の厚さを50μmに代えて100μmとしたこと、および、光学用粘着シートの基材としてフィルムF
1に代えてフィルムF
3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く比較例1の光学用粘着シートの厚さは、725μmである。また、比較例1の光学用粘着シートにおいて、基材の厚さ(T
B)125μm(≧100μm)に対し、第1粘着剤層の厚さ(T
A1)は0.8倍(2.5倍未満)であり、第2粘着剤層の厚さ(T
A2)は4倍である。
【0116】
〔比較例2〕
第1粘着剤層の厚さを50μmに代えて250μmとしたこと、および、光学用粘着シートの基材としてフィルムF
1に代えてフィルムF
3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く比較例2の光学用粘着シートの厚さは、875μmである。また、比較例2の光学用粘着シートにおいて、基材の厚さ(T
B)125μm(≧100μm)に対し、第1粘着剤層の厚さ(T
A1)は2倍(2.5倍未満)であり、第2粘着剤層の厚さ(T
A2)は4倍である。
【0117】
〔比較例3〕
第1粘着剤層の厚さを50μmに代えて100μmとしたこと、および、光学用粘着シートの基材として、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ダイアホイルT100-25」,面内位相差1000,三菱樹脂株式会社製)の両面にコロナ処理を施したもの(フィルムF
5)をフィルムF
1の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く比較例3の光学用粘着シートの厚さは、625μmである。また、比較例3の光学用粘着シートにおいて、基材の厚さ(T
B)25μmに対し、第1粘着剤層の厚さ(T
A1)は4倍であり、第2粘着剤層の厚さ(T
A2)は20倍である。
【0118】
〔比較例4〕
第1粘着剤層の厚さを50μmに代えて100μmとしたこと、および、光学用粘着シートの基材として、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(商品名「サントックス-CP MK12」,面内位相差55,サン・トックス株式会社製)の両面にコロナ処理を施したもの(フィルムF
6)をフィルムF
1の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の光学用粘着シートを作製した。剥離ライナーの厚さを除く比較例4の光学用粘着シートの厚さは、640μmである。また、比較例4の光学用粘着シートにおいて、基材の厚さ(T
B)40μmに対し、第1粘着剤層の厚さ(T
A1)は2.5倍であり、第2粘着剤層の厚さ(T
A2)は12.5倍である。
【0119】
〈基材の平均線膨張率〉
実施例および比較例の光学用粘着シートの基材として使用されている上述のフィルムF
1〜F
6のそれぞれについて、機械方向(MD)の90〜100℃における平均線膨張率と、幅方向(MD)の90〜100℃における平均線膨張率とを、それぞれ調べた。90〜100℃における平均線膨張率を求めるにあたり、具体的には、フィルムからサンプル片(3mm×20mm)を切り出し、当該サンプル片について、熱機械的分析装置(商品名「TMA/SS6000」,エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用して線膨張測定を行った。本測定においては、装置の具備する一対のチャックに挟持される測定試料の初期チャック間距離(測定に係る初期長さ)を10mmとし、測定雰囲気を空気雰囲気(流量200ml/分)とし、測定モードを引張モード(荷重19.6mN)とし、測定温度範囲を20℃から350℃までとし、昇温速度を例えば5℃/分とした。その結果を表1に掲げる。
【0120】
〈95℃接着信頼性〉
実施例および比較例の各光学用粘着シートについて、次のようにして、偏光フィルムに対する接着信頼性を調べた。接着信頼性試験に供されるサンプル構造体の作製においては、まず、ガラス板(120mm×180mm)に対してハンドローラーを使用して偏光フィルム(商品名「SEG1425DU」,日東電工株式会社製)を貼り合わせた偏光フィルム付ガラスを用意した。次に、光学用粘着シートから第1粘着剤層側の剥離ライナーを剥離した後、ポリカーボネート層とポリメタクリル酸メチル層との二層構造を有する複合シート(商品名「ユーピロン・シート HMRS51T」,90mm×160mm,三菱ガス化学株式会社製)のポリカーボネート面に対し、当該光学用粘着シートをその第1粘着剤層側にて貼り合わせた。次に、このようにしてポリカーボネート面に貼り合わされた光学用粘着シートから第2粘着剤層側の剥離ライナーを剥離した後、当該複合シート付光学用粘着シートをその第2粘着剤層側にて前記の偏光フィルム付ガラスの偏光フィルム面に対して貼り合わせた。その際、光学用粘着シートの基材の機械方向(MD)と偏光フィルムの透過容易軸の方向とが45度をなす配向で、複合シート付光学用粘着シートと偏光フィルム付ガラスとを貼り合わせた。その後、真空プレスにより、複合シート付光学用粘着シートと偏光フィルム付ガラスとの間の圧着を行った。この真空プレスにおいては、圧力を0.3MPaとし、真空度を100Paとし、プレス時間を5秒間とした。以上のようにして、95℃接着信頼性試験に供されるサンプル構造体を光学用粘着シートごとに作製した。そして、サンプル構造体をオートクレーブに投入し、温度50℃および圧力0.5MPaの条件で、15分間のオートクレーブ処理を行った。オートクレーブ処理後のサンプル構造体について、95℃の環境下に24時間放置した後、目視による観察を行った。各サンプル構造体については、その厚さ方向に透過観察が可能であるところ、観察において、発泡がなく且つ剥がれもない場合を、95℃接着信頼性は良好(○)と評価し、発泡または剥がれがある場合を、95℃接着信頼性は不良(×)と評価した。その結果を表1に掲げる。
【0121】
〈ヘーズ〉
実施例および比較例の各光学用粘着シートについて、ヘーズメーター HM-150型(株式会社村上色彩技術研究所製)を使用して、JIS K 7136に規定の方法に準拠してヘーズ(%)を測定した。本測定は、両剥離ライナーが剥離され且つスライドガラス(商品名「スライドグラス S1112」,厚さ1.0〜1.2mm,松波硝子工業株式会社製)に貼り付けられた状態にある光学用粘着シートについて行った。その結果を表1に掲げる。
【0122】
[評価]
本発明の構成を具備する実施例1〜6の光学用粘着シートにおいては、いずれも、良好な95℃接着信頼性が実現された。これに対し、比較例1〜4の光学用粘着シートにおいては、いずれも、良好な95℃接着信頼性が実現されなかった。比較例1の光学用粘着シートでは、基材の厚さT
Bが125μmであるのに対して第1粘着剤層の厚さT
A1が100μmと小さすぎるため、上記接着信頼性試験において、基材に発生した熱応力を粘着剤層にて充分に緩和することができずに第1粘着剤層とその被着体たる複合シートのポリカーボネート面との界面に局所的剥離現象が生じたものと、考えられる。比較例2の光学用粘着シートでは、基材の厚さT
Bが125μmであるのに対して第1粘着剤層の厚さT
A1が250μmと小さすぎるため、上記接着信頼性試験において、基材に発生した熱応力を粘着剤層にて充分に緩和することができずに第1粘着剤層とその被着体たる複合シートのポリカーボネート面との界面に局所的剥離現象が生じたものと、考えられる。比較例3の光学用粘着シートは、基材の厚さT
Bが25μmと小さすぎて基材の剛性が過小であるため、作製過程での基材と粘着剤層との貼合せ作業時や光学用粘着シートの対被着体貼合せ作業時において、貼合わせ界面に微小であってもシワが生じやすい。そのような比較例3の光学用粘着シートでは、当該シワの存在に起因して、基材と粘着剤層との界面や粘着剤層と被着体との界面にて特に高温条件下で気泡を生じやすく、従って、良好な95℃接着信頼性が得られなかったものと考えられる。比較例4の光学用粘着シートでは、基材の90〜100℃における平均線膨張率の絶対値が2×10
-4℃
-1を超えて過大であるため、上記接着信頼性試験において、温度変化に基づく基材の変形に各粘着剤層が追従しにくく、基材と第1粘着剤層との界面や基材と第2粘着剤層との界面に局所的剥離現象が生じたものと、考えられる。
【0123】
【表1】