(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、走行用モーターが存在しない手押し歩行式の床面洗浄機に、特許文献1に記載の技術(走行用モーターを操作するハンドル軸)を採用することは適切ではない。手押し歩行式の床面洗浄機はハンドル軸を正逆回転させる等の操作構成を必要としないため、スキージの上昇動作をどのように実施するかが問題になっていた。
【0009】
走行用モーターを用いない手押し歩行式の床面洗浄機では、ハンドル軸等の操作構成に代えて他の操作機構を採用したり、スキージの上昇駆動機構等を採用したりすると、製造コストの上昇を招くことになる。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術では、昇降用アクチュエーターを備えているため、スキージを引き上げる機構が複雑になり、製造コストが上昇するという問題があった。したがって、例えば、安価な手押し歩行式の床面洗浄機に特許文献2に記載の技術を採用することができなかった。
【0011】
本発明は、上記した課題を解決するため、車体の後進を安定させ、且つ車体後進時におけるスキージの姿勢を安定させ、更に製造コストを削減し得る床面洗浄機用スキージ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するため、本発明の第1の床面洗浄機用スキージ装置は、車体を走行させながら洗浄用の液体を供給した洗浄部材を回転または振動させて床面を洗浄し、洗浄後の液体を回収する床面洗浄機用スキージ装置であって、前記車体の後方に配置され、洗浄後の液体を掻き取るスキージと、前記スキージを前記車体に連結する連結アームを含む連結部と、を備え、前記連結アームは、前記車体を前進させた場合に床面に対する前記スキージの接触部に働く摩擦力によって引き下げられ、前記スキージを床面に接触させる第1の姿勢と、前記車体を後進させた場合に床面に対する前記スキージの接触部に働く摩擦力によって押し上げられ、前記スキージの一部を除く部分を床面から離間させる第2の姿勢と、の間で姿勢変更可能に構成されている。
【0013】
本発明の第1の床面洗浄機用スキージ装置によれば、連結アームは、車体前進時または車体後進時において、スキージと床面との間に働く摩擦力を利用することで自動的に姿勢変更される。車体後進時に、連結アームが第1の姿勢から第2の姿勢になると、スキージの一部を除く部分が床面から離間する。これにより、床面に対するスキージの吸着力(負荷)が軽減されるため、車体を円滑に後進させることができる。例えば、床面洗浄機が手押し歩行式である場合、車体の操作性を損なうことなく、車体を軽い力で、且つ安定した姿勢で後進させることができる。また、連結アームの姿勢変更は、特定の操作や他の駆動装置からの駆動力を必要とせず、車体を前進または後進させるだけで自動的に実行される。これにより、ハンドル軸等の操作構成や昇降用アクチュエーター等の駆動装置を省略することができるため、床面洗浄機(スキージ装置)の製造コストを低減することができる。
【0014】
本発明の第2の床面洗浄機用スキージ装置は、上記した本発明の第1の床面洗浄機用スキージ装置において、前記連結部は、前記車体の底部に回転可能に接続される旋回支持部と、前記旋回支持部に連結され、且つ前記連結アームの前部に摺動部を介して接続される摺動支持部と、を更に含み、前記摺動部は、前記連結アームに設けられ、前記摺動支持部に形成される傾斜溝に摺動可能に嵌合し、前記傾斜溝は、後方から前方に向かって上方に傾斜し、前記連結アームは、前記摺動部を前記傾斜溝の後方下端部まで移動させることで前記第1の姿勢に姿勢変更され、前記摺動部を前記傾斜溝の前方上端部まで移動させることで前記第2の姿勢に姿勢変更されることが好ましい。
【0015】
他にも、本発明の第3の床面洗浄機用スキージ装置は、上記した本発明の第1の床面洗浄機用スキージ装置において、前記連結部は、前記車体の底部に回転可能に接続される旋回支持部と、前記旋回支持部に連結され、且つ前記連結アームの前部に摺動部を介して接続される摺動支持部と、を更に含み、前記摺動部は、前記摺動支持部に設けられ、前記連結アームに形成される傾斜溝に摺動可能に嵌合し、前記傾斜溝は、後方から前方に向かって上方に傾斜し、前記連結アームは、前記摺動部を前記傾斜溝の前方上端部まで相対移動させることで前記第1の姿勢に姿勢変更され、前記摺動部を前記傾斜溝の後方下端部まで相対移動させることで前記第2の姿勢に姿勢変更されることが好ましい。
【0016】
本発明の第2および第3の床面洗浄機用スキージ装置によれば、操作構成や駆動装置を別途設ける必要がなく、車体後進時にスキージを上昇させる構造を、簡単且つ安価に構築することができる。また、車体後進時に、連結アームを第2の姿勢にしてスキージと床面との間の摩擦力を低減させることで、スキージが左右に傾いたり、左右に揺動したりすることを防止することができる。
【0017】
本発明の第4の床面洗浄機用スキージ装置は、上記した本発明の第2または第3の床面洗浄機用スキージ装置において、前記スキージは、前記車体の進行方向に直交する左右方向に長く形成され、前記連結アームを前記車体の進行方向に沿う姿勢とした中立位置と、前記連結アームを前記車体の進行方向に対して左方または右方に傾く姿勢とした回動位置との間において前記旋回支持部の旋回支点を中心として回動可能に設けられ、前記連結部は、前記連結アームを前記第1の姿勢から前記第2の姿勢に姿勢変更すると共に、前記旋回支持部の回動方向に沿って湾曲した状態で前記車体の底部に設けられる中立ガイド部に対し、前記連結アームの一部または前記連結アームに設けられる中立移動体を押し当て、前記スキージを前記回動位置から前記中立位置に移動させる中立移動機構を更に含み、前記中立移動機構は、前記連結アームを前記第2の姿勢に維持した状態で、前記連結アームの一部または前記中立移動体を前記中立ガイド部に係合させ、前記スキージを前記中立位置に保持することが好ましい。
【0018】
ところで、スキージは、左右方向に長いため、回動位置に変位すると車体の左右外側に大きくはみ出す。例えば、スキージを回動位置に変位させたまま車体を後進させると、車体からはみ出したスキージが、床面上に配置された配置物(障害物)や部屋の壁面等に接触するリスクが高まる。そこで、本発明の第4の床面洗浄機用スキージ装置によれば、中立移動機構が、連結アームを第1の姿勢から第2の姿勢にした場合にスキージを回動位置から中立位置に自動的に変位させ、その状態を保つように構成されている。これにより、スキージを床面から上昇させ、且つ中立位置に変位させた状態で車体を後進させることができるため、スキージが床面上の配置物等に接触するリスクを低減することができる。この結果、スキージまたは配置物等の破損を抑制することができる。
【0019】
本発明の第5の床面洗浄機用スキージ装置は、上記した本発明の第4の床面洗浄機用スキージ装置において、前記車体の上部から下方に延びる懸架部材の下端部に前記連結アームを接続し、前記懸架部材を介して前記連結アームを昇降させる昇降部を更に備え、前記懸架部材の下端部は、前記懸架部材の上端部よりも後方において前記連結アームに接続されていることが好ましい。
【0020】
本発明の第5の床面洗浄機用スキージ装置によれば、懸架部材の下端部がその上端部よりも後方に位置するため、昇降部によって連結アームを上昇させて床面から離すと、連結アームは、重力によって自然と前方に向けて回動する。これにより、連結アームを上昇させるだけで、連結アームの姿勢維持およびスキージを中立位置に配置させる動作を自動的に行うことができる。
【0021】
本発明の第6の床面洗浄機用スキージ装置は、上記した本発明の第1ないし第5のいずれかの床面洗浄機用スキージ装置において、前記スキージは、後方に凸となるように湾曲または屈曲して形成されるスキージ本体と、前記スキージ本体の前側に取り付けられる前側ブレードと、前記スキージ本体の後側に取り付けられる後側ブレードと、前記スキージ本体の左右両側から後方に延びる一対のブラケットに回転可能に支持され、床面に接触する一対のガイドローラーと、を含み、前記連結アームが前記第2の姿勢に姿勢変更すると、前記一対のガイドローラーが床面に接触した状態で、前記後側ブレードの一部が弾性変形した状態で床面に接触し、前記前側ブレードの全部または一部を除く部分が床面から上方に離間することが好ましい。
【0022】
本発明の第6の床面洗浄機用スキージ装置によれば、後側ブレードの弾性に基づく反発力が床面に対して安定した負荷を作用させるため、連結アームを第2の姿勢にした状態を維持することができる。また、例えば、吸引ブロアがスキージ本体と前後一対のブレードとで囲まれるスキージ室内に吸引力を作用させた状態でも、車体後進時に前側ブレードのほとんど全部を床面から上昇させることで、負圧になったスキージ室を開放することができる。これにより、床面に対するスキージ(各ブレード)の吸着が解除されるため、車体の姿勢が安定し、車体後進時の操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車体の後進を安定させることができる。また、車体後進時におけるスキージの姿勢を安定させることができる。さらに、床面洗浄機用スキージ装置の製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る床面洗浄機用スキージ装置の実施の形態について添付した図面を参照しながら説明する。なお、各図に矢印で示す方向は、床面洗浄機1を操作する作業者を基準に設定され、図中に示す「Fr」は「前」を示し、「Rr」は「後」を示し、「L」は「左」を示し、「R」は「右」を示し、「U」は「上」を示し、「D」は「下」を示している。
【0026】
<第1実施形態:床面洗浄機の全体構成>
図1および
図2を参照して、第1実施形態に係る床面洗浄機1の構成について説明する。
図1は床面洗浄機1を示す斜視図である。
図2は床面洗浄機1を示す平面図である。
【0027】
床面洗浄機1は、車体2と、洗浄パッド3と、スキージ装置4と、を備えている。床面洗浄機1は、車体2を走行させながら洗浄液等を供給した洗浄パッド3を回転させて床面を洗浄する装置である。
【0028】
車体2は、略直方体状の外観を構成している。車体2の底部には、車体2を走行させるための左右一対の車輪10と左右一対のキャスター11とが設けられている。左右一対の車輪10は、車体2の前後方向略中央で左右方向に延びる車軸10aに支持されている(
図2参照)。左右一対のキャスター11は、各車輪10よりも後方に配置され、車体2の底面に回転可能に支持されている。
【0029】
車体2の上部後面には、左右一対のハンドルブラケット12aを介してハンドル12が固定されている。ハンドル12は、床面Fの洗浄作業を行う作業者に把持される部品である。
【0030】
車体2の内部には、清水または洗浄液を貯留する洗浄タンク13と、洗浄後の汚水を貯留する回収タンク14とが搭載されている。また、車体2の内部には、回収タンク14内(または後述する吸引ホース27内)を負圧にする吸引ブロア15が設けられている。なお、清水または洗浄液が請求項で言う「洗浄用の液体」の具体例である。
【0031】
洗浄部材の一例としての洗浄パッド3は、車体2の前部下面(車輪10よりも前側)に回転可能に支持されている。洗浄パッド3は、円板状に形成され、円板の底面部分を床面Fに接触させる姿勢で車体2に設けられている。洗浄パッド3の回転軸3aは、車体2の内部に設けられた洗浄用モーター16に回転伝達機構17を介して接続されている。洗浄パッド3は、洗浄用モーター16の駆動によって回転軸3aを中心に回転する。洗浄パッド3の上面および側面の大部分は、車体2の前部下面に固定されるパッドカバー18に覆われている。図示は省略するが、車体2の内部には、洗浄用モーター16や吸引ブロア15等を駆動させるためのバッテリーが搭載されている。なお、洗浄パッド3に代えて回転するブラシを洗浄部材として用いてもよい。
【0032】
スキージ装置4(床面洗浄機用スキージ装置)は、車体2の後部下側に配置されている。スキージ装置4は、車体2の後方に牽引され、洗浄後の洗浄液(汚水)等を回収する装置である。なお、スキージ装置4の詳細は後述する。
【0033】
<床面洗浄機の作用>
以上説明した床面洗浄機1は手押し歩行式を採用しており、作業者はハンドル12を掴んで車体2を前方に押し進めながら床面Fの洗浄作業を行う。床面Fの洗浄作業は、散水ポンプ(図示せず)を駆動させ、洗浄タンク13内の洗浄液等を洗浄パッド3に供給しつつ、洗浄パッド3を床面F上で回転させることで行われる。洗浄後の汚水は、車体2の後方に牽引されるスキージ装置4に集められ、吸引ブロア15の駆動によってスキージ装置4から回収タンク14内に吸引回収される。
【0034】
<スキージ装置の構成>
図2ないし
図4を参照して、第1実施形態に係るスキージ装置4について説明する。
図3はスキージ装置4を示す斜視図である。
図4はスキージ装置4を示す側面図である。
【0035】
スキージ装置4は、スキージ20と、摺動連結部30と、昇降部40と、を備えている。スキージ20は、車体2の後方に配置され、汚水を掻き取る。摺動連結部30は、車体2とスキージ20との間に設けられている。昇降部40は、スキージ20を床面Fから離間させる。
【0036】
図2および
図3に示すように、スキージ20は、車体2の移動に伴って床面F上を引き摺られる部材である。スキージ20は、左右方向に長く、且つ後方に凸となる弓形状に形成されている。スキージ20は、スキージ本体21と、前側ブレード22と、後側ブレード23と、左右一対のガイドローラー24と、を含んでいる。
【0037】
スキージ本体21は、例えば、金属材料や硬質の合成樹脂材料等で、後方に凸となるように湾曲して形成されている。換言すれば、スキージ本体21は、平面から見て左右方向中央部から左右両端に向かって前方に湾曲している(
図2参照)。スキージ本体21は、平面から見て左右方向中央から左右両端に向かって徐々に細く形成された板状の部材である。
【0038】
前側ブレード22はスキージ本体21の前側に取り付けられ、後側ブレード23はスキージ本体21の後側に取り付けられている。各ブレード22,23は、平面から見て左右方向中央部から左右両端に向かって前方に湾曲している(
図2参照)。スキージ本体21には、各ブレード22,23の上端部が固定されている。各ブレード22,23は、スキージ本体21よりも下方に延びている(
図5A参照)。各ブレード22,23は、例えば、シリコンゴム等の弾性変形可能な材料で矩形板状に形成されている。後側ブレード23は、前側ブレード22よりも厚く、且つ前側ブレード22よりも上下方向に高く形成されている(
図5A参照)。スキージ本体21と前後一対のブレード22,23とで囲まれる範囲には、スキージ室Sが形成されている(
図5A参照)。なお、図示は省略するが、前側ブレード22の下端部には、外部とスキージ室Sとを連通させる複数の凹部が左右方向に間隔をおいて形成されている。
【0039】
スキージ本体21の左右方向略中央には、スキージ室Sに通じる吸引ホース27の下端部が接続されている。吸引ホース27は、例えば、柔軟性を有する軽量な材料から成る所謂ダクトホースである。吸引ホース27は、スキージ本体21から車体2の後面に沿って上方に延び、車体2の上部後面から内部に進入している。吸引ホース27の上端部は、車体2内の回収タンク14に接続されている(
図1参照)。吸引ホース27は、スキージ室Sと回収タンク14(吸引ブロア15)とを連通させている。
【0040】
図2ないし
図4に示すように、左右一対のガイドローラー24は、スキージ本体21の左右両側から後方に延びる一対のローラーブラケット25に回転可能に支持されている。各ローラーブラケット25の前端部は、スキージ本体21の上面にボルト・ナットで固定されている。各ローラーブラケット25の後端部は、左右方向に延びるローラー軸24aを介してガイドローラー24を支持している。各ガイドローラー24は、床面Fに接触し、ローラー軸24aを中心に回転する。
【0041】
後側ブレード23の左右両端には、一対の水平ローラー26が取り付けられている。各水平ローラー26は、上下方向に延びるローラー軸26aを中心に回転可能に設けられている。
【0042】
図2ないし
図4に示すように、摺動連結部30は、連結アーム31と、旋回支持部32と、左右一対の支持壁部33と、を含んでいる。摺動連結部30は、例えば、剛性の高い金属材料で構成されている。連結アーム31は、スキージ20を車体2に連結するための部材である。旋回支持部32は、車体2の底部に回転可能に接続されている。摺動支持部の一例としての左右一対の支持壁部33は、旋回支持部32に連結されている。
【0043】
連結アーム31は、前後方向に長く形成され、正面(背面)から見て略逆U字状の断面を有している。連結アーム31の後端部は、左右2つに分岐した板状に形成され、吸引ホース27を避けたスキージ本体21の上面にノブボルトBを介して取り付けられている。連結アーム31の左右方向中央を通る中心軸は、スキージ20(スキージ本体21)の左右方向中央に略一致している。つまり、連結アーム31とスキージ20とは、真っ直ぐ(平面から見て略逆Tの字状)に連結されている。
【0044】
旋回支持部32は略板状に形成され、旋回支持部32の上面には旋回支軸32aが上方に突出している。旋回支軸32aは、車体2の後部底面に形成される軸受部(図示せず)に回転可能に嵌合している。
【0045】
左右一対の支持壁部33は、旋回支持部32の左右両端部から下方に延びている。旋回支持部32と一対の支持壁部33とは、正面(背面)から見て略逆U字状に形成されている。なお、各支持壁部33は、旋回支持部32と別々に形成されて連結されてもよいし、旋回支持部32と一体に形成されてもよい。
【0046】
各支持壁部33には、傾斜溝34が連通状に形成されている。各傾斜溝34は、支持壁部33に開いた長穴であって、後方から前方に向かって上方に傾斜している。左右一対の支持壁部33は、連結アーム31の前部を左右両側から挟み込むように配置されている。連結アーム31の前部側面には、連結アーム31を左右方向に貫通する摺動軸35が設けられている。摺動部の一例としての摺動軸35は、円柱状または円筒状に形成されている。摺動軸35の左右両端部は、連結アーム31の側面から左右方向外側に向けて延び、左右一対の支持壁部33の傾斜溝34に摺動可能に嵌合している。つまり、左右一対の支持壁部33は、連結アーム31の前部に摺動軸35を介して接続されている。連結アーム31は、各傾斜溝34に案内される摺動軸35の移動範囲内で移動可能に設けられている。
【0047】
スキージ20は、連結アーム31を介して旋回支持部32の旋回支軸32a(旋回支点)を中心に左右方向に回動可能(揺動可能)に設けられている。詳細には、スキージ20は、連結アーム31を車体2の進行方向に沿う姿勢とした中立位置N(
図2参照)と、連結アーム31を車体2の進行方向に対して左方または右方に傾く姿勢とした回動位置T(
図9A参照)との間で回動可能に設けられている。
【0048】
図3および
図4に示すように、昇降部40は、車体2の後面上部に設けられる操作ノブ41(シャフト41a)から下方に延びるワイヤー42を含んでいる。懸架部材の一例としてのワイヤー42は、例えば、可撓性を有する金属材料等で形成されている。ワイヤー42の下端部は、連結アーム31の後端部にフック43を介して接続されている。ワイヤー42の上端部は操作ノブ41のシャフト41aに取り付けられている。操作ノブ41のシャフト41aは、車体2の後面に穿設された操作溝44に沿って移動可能に設けられている。操作溝44は、縦溝44aの上端から右方に延びる横溝44bを有している。
【0049】
昇降部40は、ワイヤー42を介して連結アーム31を昇降させる。具体的には、シャフト41aを縦溝44aの下端まで移動させると、連結アーム31等が最も下降し、スキージ20(各ブレード22,23)が床面Fに接触した下降位置Dに変位する。なお、
図3および
図4には正確に示されていないが、この状態でワイヤー42は弛んでいる。また、ワイヤー42の一部を巻き取り可能なリール等(図示せず)を設け、ワイヤー42を弛ませない構成としてもよい。一方、シャフト41aを横溝44bの左端まで移動させると、連結アーム31等が最も上昇し、各ブレード22,23が床面Fから離れた上昇位置Uに変位する(
図7参照)。この状態で、ワイヤー42は、略垂直に張られた状態になる。
【0050】
<車体前進時のスキージ装置の作用>
次に、
図5Aおよび
図5Bを参照して、車体2を前進させて床面Fの洗浄作業を行う場合におけるスキージ装置4の作用について説明する。
図5Aは車体2前進時におけるスキージ装置4の作用を説明する断面図である。
図5Bは車体2前進時におけるスキージ装置4の作用を説明する側面図である。なお、
図5Aはスキージ装置4の左右方向中央における側断面を示している。また、この車体2前進時の作用の説明では、スキージ20は下降位置Dに配置され、洗浄用モーター16および吸引ブロア15は駆動した状態であることとする。
【0051】
図5Aに示すように、車体2が前進した場合、スキージ装置4も車体2に牽引されて前進する。前側ブレード22および後側ブレード23は、スキージ本体21や連結アーム31の重量によって下方に付勢された状態で床面F上を引き摺られる。このため、各ブレード22,23の下端部は、後方に撓んだ状態(後方に湾曲した状態)で床面F上を摺動する。なお、後側ブレード23は、前側ブレード22よりも上下方向に幅広いため、後側ブレード23の撓み量は、前側ブレード22の撓み量よりも大きくなる。また、後側ブレード23は、前側ブレード22よりも高い汚水の掻き取り能力を有している。
【0052】
スキージ本体21は、床面Fに接触したガイドローラー24にローラーブラケット25を介して支持されるため、必要以上に下降することがない(
図5Bも参照)。すなわち、各ガイドローラー24は、スキージ本体21の垂れ下りを防止し、床面Fに対する各ブレード22,23の接触圧を略均一に維持する。
【0053】
図5Bに太い破線矢印で示すように、車体2を前進させた場合、床面Fに対する各ブレード22,23の接触部(接触部は各ブレード22,23の全体に亘って形成される。)には、後方に向かう摩擦力が作用する。この後方への摩擦力によって、連結アーム31は相対的に後方に引っ張られ、摺動軸35は傾斜溝34に案内されながら後下方に移動する。連結アーム31は、床面Fに対する各ブレード22,23(スキージ20)の接触部に働く摩擦力によって引き下げられ、各ブレード22,23を床面Fに接触させる第1の姿勢P1になる。具体的には、連結アーム31は、摺動軸35を傾斜溝34の後方下端部34aまで移動させることで第1の姿勢P1に姿勢変更される。
【0054】
図5Aに示すように、連結アーム31が第1の姿勢P1にした状態(スキージ20が床面Fに接触した状態)で、吸引ブロア15の駆動によって発生する吸引力は、吸引ホース27を介してスキージ室Sに作用する(
図5Aの太線矢印参照)。床面Fの洗浄後の汚水は、前側ブレード22の下端部に開口した複数の凹部を通って負圧になったスキージ室Sに進入する。そして、スキージ室S内の汚水は、吸引ホース27を通って回収タンク14に回収される。
【0055】
なお、前進する車体2が左方または右方に旋回する場合、スキージ装置4は旋回支持部32の旋回支軸32aを中心に回動する(
図9A参照)。つまり、スキージ20は、車体2の旋回に追従して、中立位置Nから回動位置Tに向かって回動する。また、スキージ20に設けられた各水平ローラー26は、床面F上に配置された配置物(障害物)や部屋の壁面等に接触したときに回転することで、スキージ20または配置物等の破損を抑制する。
【0056】
<車体後進時のスキージ装置の作用>
次に、
図6Aおよび
図6Bを参照して、車体2の進行方向を前進から後進に転換した場合におけるスキージ装置4の作用について説明する。
図6Aは車体2後進時におけるスキージ装置4の作用を説明する断面図である。
図6Bは車体2後進時におけるスキージ装置4の作用を説明する側面図である。
図6Aはスキージ装置4の左右方向中央における側断面を示している。また、この車体2後進時の作用の説明では、スキージ20は中立位置Nに配置され、車体2の進行方向に関わらず、吸引ブロア15は駆動した状態であることとする。
【0057】
図6Aに二点鎖線で示すように、車体2の進行方向が前進から後進に転換する過程において、前後一対のブレード22,23は、後方に撓んだ状態から複雑な略S字状に撓んだ状態に変化する。この状態で、各ブレード22,23は撓みによる反発力(弾性力)と自身の重量によって床面Fに押し付けられている。なお、後側ブレード23の接触圧は前側ブレード22の接触圧よりも大きくなる。このように、床面Fに対する各ブレード22,23の接触圧が非常に大きくなるため、床面Fと各ブレード22,23との接触部に生じる摩擦力も増大する。すると、車体2を後進させるために非常に大きな力が必要になるため、作業者に大きな負担がかかり、車体2の操作性が損なわれることがあった。なお、車体2の後進が継続すると、
図6Aに実線で示すように、各ブレード22,23は前方に撓むことになる。
【0058】
一方、例えば、車体2の進行方向を前進から後進に転換する前に、スキージ20を床面Fから引き離すことができれば、上記のような不具合を解消することができる。しかしながら、吸引ブロア15がスキージ室Sを負圧にした状態で、作業者が昇降部40を用いてスキージ20を上昇させるには、非常に大きな力を必要とし、やはり作業者に大きな負担をかけることになる。そこで、スキージ装置4は、車体2の進行方向の転換時にスキージ20と床面Fとの間に働く摩擦力を利用して連結アーム31の姿勢を自動的に変更し、車体2の後進を安定させるように構成されている。
【0059】
図6Bに太い破線矢印で示すように、車体2の進行方向を前進から後進に転換した場合、床面Fに対する各ブレード22,23の接触部には、車体2の後進を妨げるように前方に向かう摩擦力が作用する。この前方への摩擦力によって、連結アーム31は相対的に前方に押され、摺動軸35は傾斜溝34に案内されながら前上方に移動する。連結アーム31は、床面Fに対するスキージ20の接触部に働く摩擦力によって押し上げられ、スキージ20の一部を除く部分を床面Fから離間させる第2の姿勢P2になる。具体的には、連結アーム31は、摺動軸35を傾斜溝34の前方上端部34bまで移動させることで第2の姿勢P2に姿勢変更される。連結アーム31が第2の姿勢P2に姿勢変更すると、左右一対のガイドローラー24が床面Fに接触した状態で、後側ブレード23の一部が弾性変形した状態で床面Fに接触し、前側ブレード22の全部が床面Fから上方に離間する。詳細には、後側ブレード23の左右方向中央付近は床面Fに接触しているが、後側ブレード23の左右両側は床面Fから上方に離れている。前側ブレード22は、長手方向(左右方向)全体に亘って床面Fから上方に離れている。なお、前側ブレード22の左右方向中央付近は床面Fから僅かに離間しているが、僅かに接触していても差し支えない。
【0060】
連結アーム31を第2の姿勢P2にした状態において、各ブレード22,23のほとんどが床面Fから上方に離れるため、スキージ室Sが大気開放される。このため、吸引ブロア15の駆動によって発生する吸引力がスキージ室S内を負圧にすることがなく、床面Fに対する各ブレード22,23の吸着が解除される。これにより、作業者は軽い力で車体2を後進させることができる。
【0061】
<昇降部の作用>
次に、
図3および
図7を参照して、昇降部40の作用について説明する。
図7はスキージ装置4を上昇させた状態を示す側面図である。なお、昇降部40の作用の説明では、スキージ20は中立位置Nに配置され、吸引ブロア15や洗浄用モーター16は駆動停止しているものとする。
【0062】
洗浄作業終了後に床面洗浄機1を保管場所に移動する場合や床面洗浄機1を保管する(床面洗浄機1を使用しない時)場合、作業者は、昇降部40の操作ノブ41を操作して、スキージ20を下降位置Dから上昇位置Uに引き上げる操作を行う。具体的には、作業者は、操作ノブ41のシャフト41aを縦溝44aの上端まで移動させ、その後、シャフト41aを横溝44bの右端まで移動させる(
図3参照)。すると、スキージ20が上昇位置Uに配置され、連結アーム31がワイヤー42を介してシャフト41aに吊り下げられた状態になる(
図7参照)。この状態で、シャフト41aは横溝44b(
図3参照)に保持されるため、スキージ20が上昇位置Uに保持される。なお、図示は省略するが、洗浄パッド3およびパッドカバー18に関しても、別途上昇用ペダル等を操作することで、床面Fから引き上げる操作を行っている。
【0063】
<スキージの形状および寸法>
次に、
図8を参照して、スキージ20の形状および寸法について説明する。
図8はスキージ20を示す平面図である。
【0064】
スキージ20(スキージ本体21および各ブレード22,23)は湾曲した弓形状であるため、後側ブレード23の左右方向中央部が最も後方に位置している。また、左右一対のガイドローラー24のローラー軸24a(左右一対のローラー軸24aを結ぶ軸心線C)は、スキージ20(後側ブレード23)の最後端よりも僅かに前側に位置している。また、車体2が後進すると、後側ブレード23の左右方向中央部は前方に撓む。ここで、スキージ20の左右方向の全長を「全長L1」と呼び、軸心線Cよりも後方に位置する後側ブレード23の左右方向長さを「基準長さL2」と呼び、車体2の後進時に後側ブレード23の撓む部分の左右方向長さを「撓み長さL2´」と呼ぶこととする。
【0065】
撓み長さL2´は、基準長さL2よりも僅かに長く(幅広く)なる。スキージ装置4のスキージ20では、全長L1と、基準長さL2または撓み長さL2´との比が(L1:L2(またはL2´))=(10:2)程度に設定されることが望ましい。すなわち、スキージ20の全長L1に対し、後側ブレード23の長さの約20%に相当する部分が床面Fに接触して撓むように、スキージ20の形状や寸法、各ガイドローラー24の配置等が設計されることが望ましい。なお、この比は、各ローラー軸24a(軸心線C)の位置と、後側ブレード23の湾曲形状(曲率)によって多少異なることもある。
【0066】
車体2の後進時に、上記した比で撓んだ後側ブレード23が床面Fに押し付けられると、連結アーム31の姿勢変更に最適な摩擦力が発生する。つまり、この摩擦力が適度な負荷になるため、摺動軸35を傾斜溝34の後方下端部34aから前方上端部34bに押し上げることが可能になる。
【0067】
仮に、各ガイドローラー24が
図8に示した位置よりも後方に配置された場合、摺動軸35が傾斜溝34の後方下端部34aから前方上端部34bに移動する過程で、床面Fと後側ブレード23との間の摩擦力が無くなり、連結アーム31を第2の姿勢P2にすることができない虞がある。一方、各ガイドローラー24が
図8に示した位置よりも前方に配置された場合、床面Fと後側ブレード23との間の摩擦力が過大になり、車体2の後進を妨げる等、操作性を損なうことになる。したがって、上記した比を満たすようにスキージ20を設計することが好ましい。
【0068】
<第1実施形態:スキージ装置の効果>
以上説明した第1実施形態に係るスキージ装置4では、連結アーム31は、車体2を前進させた場合にスキージ20を床面Fに接触させる第1の姿勢P1と、車体2を後進させた場合にスキージ20の略全部を床面Fから離間させる第2の姿勢P2と、の間で姿勢変更可能に構成した。この構成によれば、車体2の前進時または後進時において、スキージ20と床面Fとの間に働く摩擦力を利用し、連結アーム31を自動的に姿勢変更することができる。車体2の後進時に、連結アーム31が第1の姿勢P1から第2の姿勢P2になると、スキージ20のほとんど全てが床面Fから離間する。これにより、床面Fに対するスキージ20の吸着力(負荷)が軽減されるため、車体2を円滑に後進させることができる。また、手押し歩行式の床面洗浄機1において、車体2の操作性を損なうことなく、車体2を軽い力で、且つ安定した姿勢で後進させることができる。
【0069】
また、連結アーム31の姿勢変更は、特定の操作や他の駆動装置からの駆動力を必要とせず、車体2を前進または後進させるだけで自動的に実行される。これにより、特定の操作構成や他の駆動装置を省略することができるため、車体2の後進時にスキージ20を上昇させる構造を、簡単且つ安価な構築することができ、床面洗浄機1(スキージ装置4)の製造コストを低減することができる。
【0070】
また、第1実施形態に係るスキージ装置4では、車体2の後進時に、連結アーム31を第2の姿勢P2にしてスキージ20と床面Fとの間の摩擦力を低減させる構成にした。この構成によれば、スキージ20が左右に回動したり、左右に揺動したりすることを防止することができる。
【0071】
また、第1実施形態に係るスキージ装置4では、車体2の後進時に、連結アーム31を第2の姿勢P2にした状態で、後側ブレード23の左右方向中央部(全長L1の約20%)が床面Fに弾性力をもって接触する構成とした。この構成によれば、後側ブレード23の弾性に基づく反発力が床面Fに対して安定した負荷を作用させるため、連結アーム31を第2の姿勢P2にした状態を維持することができる。また、吸引ブロア15がスキージ室S内に吸引力を作用させた状態でも、車体2の後進時に前側ブレード22全体を床面Fから上昇させることで、負圧になったスキージ室Sを開放することができる。これにより、床面Fに対するスキージ20(各ブレード22,23)の吸着が解除されるため、車体2の後進時にスキージ20の姿勢が左右にブレたりせずに安定し、車体2の操作性を向上させることができる。
【0072】
<第2実施形態>
次に、
図9A、
図9B,
図10Aおよび
図10Bを参照して、第2実施形態に係るスキージ装置5について説明する。
図9Aは床面洗浄機1(旋回時)を示す平面図である。
図9Bは床面洗浄機1(後進時)を示す平面図である。
図10Aは車体2後進時におけるスキージ装置5の作用を説明する側面図である。
図10Bはスキージ装置5を上昇させた状態を示す側面図である。なお、以下の説明では、第1実施形態に係る床面洗浄機1およびスキージ装置4と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
例えば、
図9Aに示すように、車体2が右方向に旋回した場合、スキージ装置5も右側に傾く。つまり、スキージ20は、回動位置Tに回動する。ここで、車体2を旋回走行させた後に、車体2を真っ直ぐ後進させる場合を考える。この場合、スキージ20が回動位置Tに変位したまま、車体2を後進させることになる。スキージ20は、左右方向に長いため、右側の回動位置Tに変位すると車体2の右方向に大きくはみ出す。この状態で、車体2を後進させると、はみ出したスキージ20が、床面F上に配置された配置物(障害物)や部屋の壁面等に接触するリスクが高まる。また、スキージ20が中立位置Nと回動位置Tとの中間に位置する場合、スキージ20(連結アーム31)が不安定に揺動することがあった。そこで、第2実施形態に係るスキージ装置5は、車体2の後進時にスキージ20を中立位置Nに変位させる中立移動機構51を含む摺動連結部50を備えている。
【0074】
図9Aおよび
図9Bに示すように、摺動連結部50は、連結アーム31と、旋回支持部32と、左右一対の支持壁部33と、中立移動機構51と、を含んでいる。
【0075】
図10Aに示すように、各支持壁部33は、第1実施形態に係るものと略同一であるが、僅かに前後方向に長く形成されている。各支持壁部33に形成された傾斜溝34は、前方上端部34bから前方に略水平に延長されている。傾斜溝34は、前方上端部34bから前方に延びた位置に前方終端部34cを有している。
【0076】
図9Aおよび
図9Bに示すように、中立移動機構51は、中立ローラー52と、中立ガイド部53と、を含んでいる。
【0077】
中立移動体の一例としての中立ローラー52は、連結アーム31の前端から前方に延びる中立ブラケット52aに設けられている。中立ローラー52は、中立ブラケット52aの前端部から下方に延びる支軸(図示せず)に回転可能に支持されている。中立ローラー52は、旋回支持部32の旋回支軸32aよりも前方に設けられている。
【0078】
中立ガイド部53は、車体2の底面にて旋回支軸32aよりも前方に設けられている。中立ガイド部53は、旋回支持部32の回動方向に沿って湾曲した状態で車体2の底部に設けられている。中立ガイド部53は、車体2の底面から下方に延びる左右一対の湾曲壁53aで構成されている。左右一対の湾曲壁53aは、旋回支軸32aの前側を覆うように左右対称を成す略半円弧状に形成されている。左右一対の湾曲壁53aは、旋回支軸32aを中心とした中立ローラー52の回動(揺動)範囲に形成されている。左右一対の湾曲壁53aは、スキージ20を回動位置Tに変位させたときに中立ローラー52が当接するように形成されている(
図9A参照)。左右一対の湾曲壁53aの前端部は、互いに離間しており、中立ローラー52を係合させるための係合溝53bを構成している。
【0079】
<車体旋回走行後の後進時のスキージ装置の作用>
次に、
図9A、
図9Bおよび
図10Aを参照して、車体2を旋回走行させた後に後進させた場合におけるスキージ装置5の作用について説明する。なお、スキージ20は回動位置T(
図9A参照)に変位しているものとする。
【0080】
車体2が後進し始めると、連結アーム31は、第1の姿勢P1から第2の姿勢P2に姿勢変更される(
図6B参照)。この連結アーム31を姿勢変更する過程において、連結アーム31に設けた中立ローラー52は中立ガイド部53の湾曲壁53aに押し当てられる(
図9A参照)。車体2の後進によって連結アーム31が前方に相対移動することを利用し、中立ローラー52は、湾曲壁53aにガイドされて係合溝53bに向かって転がる。すると、連結アーム31は、自動的に旋回支軸32aを中心として回動し、スキージ20を回動位置Tから中立位置Nに向けて移動させる(
図9B参照)。連結アーム31が第2の姿勢P2を維持したまま、スキージ20は中立位置Nに変位した状態になる。
【0081】
図10Aに太い破線矢印で示すように、車体2の後進が進むと、連結アーム31は、第2の姿勢P2に姿勢変更した状態で、床面Fに対するスキージ20の接触部に働く摩擦力によって前方に押され、スキージ20の一部を除く部分を床面Fから離間させた状態を維持される。具体的には、連結アーム31は、摺動軸35を傾斜溝34の前方終端部34cまで移動させることで第2の姿勢P2を維持される。連結アーム31は、第2の姿勢P2を維持しつつ前方に自動的に平行移動する。このとき、床面Fに対する各ブレード22,23の接触状態は、第2の姿勢P2時における接触状態を維持する。すなわち、後側ブレード23の左右方向中央部が床面Fに接触し、後側ブレード23の左右方向外側と前側ブレード22の全部とが床面Fから離間する。連結アーム31が第2の姿勢P2を維持した状態で、中立ローラー52は、中立ガイド部53の係合溝53bに軽く嵌合(係合)する(
図9B参照)。中立ローラー52を係合溝53bに係合させることで、スキージ20が中立位置Nに保持される。
【0082】
<昇降部の構成>
次に、
図10Aを参照して、第2実施形態に係るスキージ装置5の昇降部55について説明する。この昇降部55は、第1実施形態に係るスキージ装置4の昇降部40(
図3参照)と略同一であるが、ワイヤー42の下端部と連結アーム31との接続位置が異なっている。具体的には、昇降部55のワイヤー42の下端部は、ワイヤー42の上端部よりも後方において連結アーム31(フック43)に接続されている。つまり、連結アーム31に設けたフック43が、第1実施形態に係るものよりも後方に位置している。
【0083】
<昇降部の作用>
続いて、
図10Bを参照して、この昇降部55の作用について説明する。なお、吸引ブロア15や洗浄用モーター16は駆動停止しており、連結アーム31は第1の姿勢P1をとり、スキージ20は回動位置T且つ下降位置Dに配置されているものとする。
【0084】
床面洗浄機1の保管時等において、作業者が操作ノブ41を操作してスキージ20を下降位置Dから上昇位置Uに引き上げると、スキージ20全体が床面Fから引き離され、スキージ20や連結アーム31はワイヤー42の上端部(シャフト41aとの接続部分)を中心として振り子のように下方に回動する(
図10Bの破線矢印参照)。すると、摺動軸35は、傾斜溝34の後方下端部34aから前方上端部34bに向けてせり上がり、更に前方上端部34bから前方終端部34cに向けて水平に移動する。また、上記した車体2の後進時の作用と同様に、スキージ20は、連結アーム31の姿勢変更に伴って、回動位置Tから中立位置Nに回動し、中立位置Nに保持される。
【0085】
<第2実施形態:スキージ装置の効果>
以上説明した第2実施形態に係るスキージ装置5では、中立移動機構51が、連結アーム31を第1の姿勢P1から第2の姿勢P2にした場合にスキージ20を回動位置Tから中立位置Nに自動的に変位させ、その状態を保つように構成されていた。これにより、スキージ20を床面Fから上昇させ、且つ中立位置Nに変位させた状態で車体2を後進させることができるため、スキージ20が床面F上の配置物等に接触するリスクを低減することができる。この結果、スキージ20または配置物等の破損を抑制することができる。なお、第2実施形態に係るスキージ装置5のスキージ20も、全長L1と基準長さL2(撓み長さL2´)との比を(10:2)程度に設定することが望ましい。
【0086】
また、第2実施形態に係るスキージ装置5では、ワイヤー42の下端部がその上端部よりも後方に位置するため、昇降部55によって連結アーム31を上昇位置Uに移動させると、連結アーム31は、重力によって自然と前方に向けて回動する。これにより、連結アーム31を上昇位置Uに変位させるだけで、連結アーム31の姿勢維持およびスキージ20を中立位置Nに配置する動作を自動的に行うことができる。その結果、例えば、床面洗浄機1を保管場所に移動するとき等、車体2が前進、後進または停止していても、スキージ20を中立位置Nに戻して保持することができるため、車体2の旋回時における遠心力によって、スキージ20が外側に振られたり、左右に揺動したりすることを防止することができる。
【0087】
なお、第1および第2実施形態に係るスキージ装置4,5は、手押し歩行式の床面洗浄機1に採用されていたが、本発明はこれに限定されない。スキージ装置4,5は、例えば、自走式の床面洗浄機や搭乗式の床面洗浄機に採用することもできる。本発明のスキージ装置4,5を採用することで、スキージ20の姿勢を安定させる等、上記した作用効果を得ることができる。
【0088】
なお、第1および第2実施形態に係るスキージ装置4,5では、連結アーム31を第2の姿勢P2にした状態で、前側ブレード22の全部が床面Fから離間していたが、本発明はこれに限定されない。前側ブレード22の一部を除く部分が床面Fから上方に離間してもよい。例えば、前側ブレード22の左右方向中央部が床面Fに接触し、前側ブレード22のその他の部分が床面Fから離間してもよい。
【0089】
なお、第1および第2実施形態に係るスキージ装置4,5では、スキージ本体21(スキージ20)が、弓形状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、スキージ本体21は、略U字状(山型)に形成されてもよい。また、例えば、スキージ本体21は、後方に凸となるように屈曲して略V字型に形成されてもよい。
【0090】
なお、第1および第2実施形態に係るスキージ装置4,5では、摺動軸35が連結アーム31に設けられ、各傾斜溝34が支持壁部33に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。図示は省略するが、例えば、摺動部の一例としての左右一対の摺動軸を左右一対の支持壁部33に固定し、左右一対の摺動軸を嵌合させる左右一対の傾斜溝を連結アーム31の左右両側面に形成してもよい。この場合、連結アーム31は、各摺動軸を各傾斜溝の前方上端部まで相対移動させることで第1の姿勢P1に姿勢変更され、各摺動軸を傾斜溝の後方下端部まで相対移動させることで第2の姿勢P2に姿勢変更される。
【0091】
なお、第1および第2実施形態に係るスキージ装置4,5では、可撓性を有するワイヤー42を介して車体2と連結アーム31を接続していたが、これに限らず、例えば、懸架部材としてロッド等を用いてもよい。
【0092】
なお、第2実施形態に係るスキージ装置5では、各傾斜溝34の前方上端部34bから前方に延びた部分が略水平であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、各傾斜溝34が、後方下端部34aから前方終端部34cまで、なだらかな傾斜を有していてもよい。
【0093】
なお、第2実施形態に係るスキージ装置5の中立ローラー52(中立ブラケット52a)は省略されてもよい。この場合、例えば、連結アーム31の先端部(一部)を、中立ガイド部53(湾曲壁53a)に押し当て、且つ係合溝53bに係合させてもよい。
【0094】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る床面洗浄機用スキージ装置の一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は特許請求の範囲および明細書から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う床面洗浄機用スキージ装置も本発明の技術思想に含まれる。