特許第6882895号(P6882895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6882895結晶性マイクロポラス材料媒介のC1−3含酸素化合物のC4−含酸素化合物への転化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882895
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】結晶性マイクロポラス材料媒介のC1−3含酸素化合物のC4−含酸素化合物への転化
(51)【国際特許分類】
   C07H 3/02 20060101AFI20210524BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20210524BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20210524BHJP
   C01B 39/40 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C07H3/02
   B01J29/40 Z
   B01J29/70 Z
   C01B39/40
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-573901(P2016-573901)
(86)(22)【出願日】2015年6月18日
(65)【公表番号】特表2017-525662(P2017-525662A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2015063774
(87)【国際公開番号】WO2015193461
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2018年3月29日
【審判番号】不服2019-13831(P2019-13831/J1)
【審判請求日】2019年10月17日
(31)【優先権主張番号】14173148.9
(32)【優先日】2014年6月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】シュンムガヴェル・サラヴァナムルガン
(72)【発明者】
【氏名】サダバ・スビリ・イランツ
(72)【発明者】
【氏名】ターニング・エスペン
(72)【発明者】
【氏名】ホルム・マーティン・スパングスバーグ
【合議体】
【審判長】 村上 騎見高
【審判官】 冨永 保
【審判官】 関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2018−517678(JP,A)
【文献】 Green Chem.,(2012),14,pp.702−706
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコールアルデヒドを含む組成物から一種又は二種以上の、式CのC含酸素化合物を製造する方法であって、溶媒、および8員環の細孔構造及び10員環の細孔構造からなる群の一つ又は二つ以上から選択される環状の細孔構造を含む結晶性のマイクロポラス材料の存在下で、グリコールアルデヒドを反応させ、前記の式CのC含酸素化合物がトレオース、エリトロース及びエリトルロースからなる群の一種又は二種以上から選択される化合物であり、
前記の結晶性のマイクロポラス材料が、LTAおよびMFIの構造からなる群から選択される構造を有するゼオタイプの材料であり、そして、前記の結晶性のマイクロポラス材料が、スズ又はチタンからなる群から選択される金属を含む、
上記の方法。
【請求項2】
前記グリコールアルデヒドを含む組成物が、ホルムアルデヒド、グリオキサール、ピルビンアルデヒド及びアセトールからなる群から選択される一種又は二種以上の化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グリコールアルデヒドを含む組成物が、少なくとも5重量%の濃度でグリコールアルデヒドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が、水、アルコール及び水とアルコールの混合物からなる群の一種又は二種以上から選択される、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記アルコールが、メタノール及びエタノールからなる群の一種又は二種以上から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
8員環の細孔構造又は10員環の細孔構造を含む結晶性のマイクロポラス材料が、0.1重量%〜15重量%の金属を含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、25℃〜150℃の温度で行われる、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
グリコールアルデヒドを含む組成物を生成するために、バイオマス、又はフルクトース、グルコース、スクロース、キシロースまたはそれらの異性体からなる群から選択される一つ又は二つ以上の含酸素化合物を熱分解する、先行するステップが実行される、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
含酸素化合物、例えば、エリトロース、トレオース及びエリトルロースのようなC糖の、選択的かつ高収率の製造は、化学産業における、例えば:Cポリオール;メチルビニルグリコレートの製造、又はそれらから得られる生成物;2−ヒドロキシ−4−メトキシブタン酸、又はそれの塩又はエステルに重要な価値をもたらすことができた。選択的かつ高収量のC−含酸素化合物、例えば、エリトロース、トレオース及びエリトルロースのようなC糖の製造は、例えば、Cポリオール、メチルビニルグリコ−レート又はそれらから得られる生成物;2−ヒドロキシ−4−メトキシブタン酸又はメチル2−ヒドロキシ−4−メトキシブタノエートのようなそれらの塩もしくはエステルを製造するための、化学産業界における使用に役立つことが証明できた。
【0002】
−含酸素化合物を製造するための公知の方法は、グリコールアルデヒドのアルドール自己縮合を含む。アルドール縮合は、C−含酸素化合物の製造には選択的でないことが観察されており、生成物の混合物は、C生成物が反応し続けて、より大きな炭素原子数の酸素含有化合物を形成することが観察される。C−含酸素化合への反応の選択性を制御するためには、C−含酸素物及びシリケート錯体もしくはホウ酸塩錯体の形成、又はC−含酸素物選択触媒の使用が必要である。
【0003】
−含酸素化合物の選択的な形成にシリケート錯体を使用する例は、水性ナトリウムシリケートの存在下でのグリコールアルデヒドのアルドール縮合を含む(Science (2010) 327, pp 984−986(非特許文献1)。反応の間、シリケート−C−糖錯体が形成され、その結果、反応の選択性が制御される。さらなる例は、ホウ酸塩緩衝液の存在下でのグリコールアルデヒドの縮合を含む。C−含酸素化合物(C糖)の高い収率が得られる(86%)(J. Am. Chem. Soc. (2011) 133, pp 9457−9468(非特許文献2))。
【0004】
−含酸素物の選択的触媒の例は、ホモキラルジペプチド触媒の存在下でのグリコールアルデヒドのアルドール縮合によってC−含酸素化合物を製造することを含む。C−含酸素化合物生成物の収率は、63%までであった(PNAS (2006) 103, pp 12712−12717(非特許文献3)。あるいはまた、亜鉛−プロリン触媒が使用できる。C−糖生成物の全収率は、約51%であった。約30%の収率でC−糖が形成された(Org. Biomol. Chem. (2005) 3, pp 1850−1855(非特許文献4)。
【0005】
−含酸素化合物をグリコールアルデヒドから製造する代替的な方法は、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ブタノエート(C)及びビニルグリコール酸メチル(C)の製造における提案された四炭糖の過渡的中間体を含む。反応は、ゼオタイプ触媒の存在下で進行する。ゼオタイプ材料は、Sn−BEA、12員環の細孔構造であった(Green Chemistry (2012) 14, pp 702−706(非特許文献5)。
【0006】
代替的なゼオタイプ材料、例えば、10員環の細孔構造化ゼオタイプ(例えば、Sn−MFI又はTi−MFI)は、C含酸素化合物を異性化するのに使用できる。そのようなゼオタイプは、グリオキサールをグリコール酸に異性化するのに使用されてきた。グリコール酸の収率は約90%であった(Green Chemistry (2014) 16, pp 1176−1186(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許2184270 B1号明細書
【特許文献2】米国特許第7,094,932 B2号明細書
【特許文献3】PCT/EP2014/053587号明細書
【特許文献4】米国特許第6,300,494 B1号明細書
【特許文献5】米国特許第4,487,980 B1号明細書
【特許文献6】国際公開第98/32735号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Science (2010) 327, pp 984−986
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc. (2011) 133, pp 9457−9468
【非特許文献3】PNAS (2006) 103, pp 12712−12717
【非特許文献4】Org. Biomol. Chem. (2005) 3, pp 1850−1855
【非特許文献5】Green Chemistry (2012) 14, pp 702−706
【非特許文献6】Green Chemistry (2014) 16, pp 1176−1186
【非特許文献7】Mal, N.K.; Ramaswamy, V.; Rajamohanan, P.R.; Ramaswamy, A.V. Sn−MFI molecular sieves: Synthesis methods, 29Si liquid and solid MAS−NMR, 119Sn static and MAS NMR studies. Microporous Mater., 1997, 12, 331−340
【非特許文献8】Corma et al., Chem. Rev. 1995, 95 pp 559−614
【非特許文献9】Chem. Rev. 1995, 95 pp 559−614
【非特許文献10】Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry: Hydrogenation and Dehydrogenation
【非特許文献11】Science (2010) 328, pp 602 - 605 and Green Chemistry (2012) 14, pp 702−706
【非特許文献12】ACS Catal., 2013, 3 (8), pp 1786−1800
【非特許文献13】ChemSusChem (2012) 5, pp 1991−1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、C1−3含酸素化合物を含む組成物からC−含酸素化合物を製造するための方法を提供することであって、該方法は、C−含酸素化合物の製造に対して選択的であり、かつ、その生成物は、高収率で得られる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
今や、微小又は中程度の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料の存在下でグリコールアルデヒドをC−含酸素化合物へ選択的に変換できることが見出された。その反応は高収率で進行する。さらに、所望のC−含酸素化合物が選択的にさせるための追加的な化合物の存在下で該反応を進行させることが可能である。
【0011】
本発明は、さらにC1−3含酸素化合物を含む組成物からC−含酸素化合物を製造するための方法によって定義され、その際、該方法は、微小又は中程度の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料の存在下で行われる。
【0012】
−含酸素化合物は、C糖又は4つの炭素原子の炭素鎖長を有する含酸素化合物として知られている。C−含酸素化合物の分子式は、Cである。C−含酸素化合物はまた、四炭糖としても説明できる。C−含酸素化合物は、トレオース、エリトロース及びエリトルロースからなる群の一種又は二種以上から選択される。
【0013】
本発明の一実施形態において、C1−3含酸素化合物を含む組成物は、C含酸素化合物、C含酸素化合物及びC含酸素化合物からなる群から選択される一種又は二種以上の含酸素化合物を含む。C、C及びC含酸素化合物とは、それぞれ一つ、二つ又は三つの炭素原子の炭素鎖長を有する化合物を意味する。C1−3含酸素化合物の分子式は、CHO;C;C;C及びCからなる群の一種又は二種以上から選択される式である。好ましくは、C1−3含酸素化合物を含む組成物は、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グリコールアルデヒド、ピルビンアルデヒド及びアセトールからなる群から選択される一種又は二種以上の化合物を含む組成物である。第二の実施形態において、好ましくは、C1−3含酸素化合物を含む組成物は、グリコールアルデヒド(2−ヒドロキシアセトアルデヒド)及びグリオキサールからなる群から選択される一種又は二種以上のC含酸素化合物を含む組成物である。グリコールアルデヒドは、二つの炭素原子の炭素鎖を有する化合物であり、C含酸素化合物又はC糖としても知られている。
【0014】
1−3含酸素化合物を含む組成物は、溶液の形態であることができ、その場合、その溶媒は、水、メタノール及び水とメタノールとの混合物からなる群から選択される。例えば、C1−3含酸素化合物を含む組成物は、グリコールアルデヒドの水溶液又はメタノール溶液であるか、又は、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グリコールアルデヒド、ピルビンアルデヒド及びアセトールからなる群から選択される一種又は二種以上の化合物を含む組成物の水溶液又はメタノール溶液であることができる。
【0015】
1−3含酸素化合物を含む組成物は、バイオマスの熱分解又はC含酸素化合物、C含酸素化合物及びスクロースからなる群から選択される一種又は二種以上の含酸素化合物の熱分解によって得られる。C含酸素化合物及びC含酸素化合物とは、グルコース、フルクトース、キシロース及びそれらの異性体からなる群から選択される一種又は二種以上の化合物を意味する。熱分解反応の例は、米国特許第7,094,932 B2号明細書(特許文献2)及びPCT/EP2014/053587号明細書(特許文献3)に示されている。
【0016】
結晶性マイクロポラス材料は、ゼオライト材料及びゼオタイプ材料を含む。ゼオライト材料は、細孔結晶構造を有する結晶性アルミノシリケートである(Corma et al., Chem. Rev. 1995, 95 pp 559−614(非特許文献8)。そのゼオライト材料のアルミニウム原子は、一部又は全部が、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)及びスズ(Sn)のような金属(金属原子)で置換することができ、これらの材料はゼオタイプ材料としても知られている。
【0017】
小さい細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料とは、8員環の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料を意味し;中程度の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料とは、10員環の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料を意味する。小さい細孔構造又は中程度の細孔構造を有する結晶性マイクロポラス材料の例は、Chem. Rev. 1995, 95 pp 559−614(非特許文献9)中に提供されており、LTA、CHA、MFI(ZSM−5)、MEL、MTT、MWW、TON、HEU、AEL、AFO、MWW及びFERのような構造が含まれる。
【0018】
BEAの構造を有する結晶性マイクロポラス材料は、大きい、12員環の細孔構造を含み(Chem. Rev. 1995, 95 pp 559−614(非特許文献9)、そして、本発明の要件として考慮されない。
【0019】
中程度の細孔径を有するゼオタイプ材料には、Sn−MFI,Ti−MFI及びZr−MFIのような構造が含まれる。小さい細孔径を有するゼオタイプ材料の例はSn−LTAである。
【0020】
小さい細孔構造又は中程度の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料は、触媒として挙動すると考えられ得る。
【0021】
本発明の方法によって製造されたC−含酸素化合物の収率は、20%以上、24%以上、27%以上、30%以上、35%以上である。
【0022】
小さい細孔構造又は中程度の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料中の金属(金属原子)の含有量は、0.1〜15重量%、0.5〜5.0重量%、0.5〜1.5重量%である。
【0023】
該方法は溶媒中で行うことができ、その際、溶媒は、水、アルコール及び水とアルコールの混合物(水及びアルコール)からなる群の一種又は二種以上から選択することができる。アルコールは、メタノール及びエタノールからなる群の一種又は二種以上から選択することができる。
【0024】
該方法は、25〜150℃、50〜120℃、そして70〜100℃の温度で行うことができる。
【0025】
本発明の方法によって製造されたC−含酸素化合物は、水素化によりC−ポリオールに転化することができる。そのような水素化反応は、担持金属触媒の存在下で行うことができ、その際、その金属は、例えば、銅、ニッケル、モリブデン、コバルト、鉄、クロム、亜鉛及び白金族の金属である。好ましい実施形態において、その金属触媒は、炭素又はラネーニッケル上に担持されたパラジウム又はルテニウムからなる群から選択される。例示的な水素化反応の条件は、米国特許第6,300,494 B1号明細書(特許文献4)及び米国特許第4,487,980 B1号明細書(特許文献5)に記載されている。水素化反応において使用される、さらに適切な金属触媒及び反応条件の例は、Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry: Hydrogenation and Dehydrogenation(非特許文献10)中に開示されている。
【0026】
本発明の方法によって製造されたC−含酸素化合物は、ビニルグリコール酸メチル及び2−ヒドロキシ−4−メトキシブタン酸又はそれらの塩又はエステルに転化することができる。Science (2010) 328, pp 602 - 605 and Green Chemistry (2012) 14, pp 702−706(非特許文献11)は、適切な合成方法を開示している。さらに、α−ヒドロキシ−γ−ブチルラクトンを、同じ条件下又はACS Catal., 2013, 3 (8), pp 1786−1800(非特許文献12)に記載されている条件下でC−含酸素化合物から製造することができる。
【0027】
ビニルグリコール酸メチル化合物は、さらに反応して、α−ヒドロキシメチノニン(methinonine)類似物を形成することができ、この転換の例は、国際公開第98/32735号パンフレット(特許文献6)中に記載されている。α−ヒドロキシメチノニン類似物は、2−ヒドロキシ−4−(C1−5アルキルチオ)ブタン酸、それらの塩及びエステルからなる群から選択される化合物を含む。
【0028】
(C1−5アルキルチオ)とは、メタンチール、エタンチール、直鎖又は分岐鎖のプロパンチオール、直鎖又は分岐鎖のブタンチオール、及び直鎖又は分岐鎖のペンタンチオールからなる群から選択されるアルキルチオールを意味する。
【0029】
1−8アルキルエステルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル及び2−エチルヘキシルからなる群から選択されるアルキル基を含むエステルを意味する。
【0030】
本発明の一実施形態において、メチオニンα−ヒドロキシ類似物は、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸である。
【0031】
本発明の第二の実施形態において、メチオニンα−ヒドロキシ類似物は、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸メチルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸エチルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸プロピルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸ブチルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸イソプロピルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸ペンチルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸ヘキシルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸ヘプチルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸オクチルエステル及び2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸2−エチルヘキシルエステルからなる群から選択される。
【0032】
本発明の方法によって製造されたC−含酸素化合物は、ChemSusChem (2012) 5, pp 1991−1999(非特許文献13)に記載されているようなブタンジオールに転化することができる。
【0033】
1−3含酸素化合物からC含酸素化合物を製造する方法は、Cポリオールを形成するためのC含酸素化合物の水素化反応と同時に行うこともできる。したがって、その反応は、一段階(ワンステップ)、すなわち”ワンポット”反応で行うことができる。”ワンステップ”又は”ワンポット”反応とは、グリコールアルデヒドをC含酸素化合物に転化するための結晶性マイクロポラス材料と、C含酸素化合物を水素化するための金属触媒とが、反応容器中に同時に存在することを意味する。その反応は、水素化生成物(Cポリオール)が存在すると急冷される。
【0034】
ポリオールは、4個の炭素原子の鎖長を有し、かつ、それぞれの炭素原子がアルコール官能基(OH)に結合している化合物を含む、C含酸素化合物を意味する。Cポリオールはまた、四炭糖アルコールとしても知られており、C10の分子式を有する。Cポリオールは、エリトリトール及びトレイトールからなる群の一種又は二種以上から選択される化合物である。エリトリトール及びトレイトールは、D−及びL−トレイトールのような全立体異性体を含む。エリトリトールは、食品、甘味料として使用することができ、また、ブタンジオールの製造に使用することができる。ChemSusChem (2012) 5, pp 1991−1999(非特許文献13)は、エリトリトールからのブタンジオールの製造を示している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、実施例2に従って製造したC酸素含有化合物の時間に対する収率を百分率で示している。様々な結晶性マイクロポラス材料を示す。結晶性マイクロポラス材料は:四角:200Sn−MFI;丸:Ti−MFI;三角:Sn−BEA
図2図2は、実施例3に従って製造したC酸素含有化合物の時間に対する収率を百分率で示している。様々な結晶性マイクロポラス材料を示す。結晶性マイクロポラス材料は:四角:200Sn−MFI;丸:Ti−MFI;三角:Sn−BEA
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0036】
実施例1:
結晶性マイクロポラス材料(Sn−MFI、Ti−MFI、Sn−BEA及びSn−LTA)の製造
Sn−MFI:
Mal等(Mal, N.K.; Ramaswamy, V.; Rajamohanan, P.R.; Ramaswamy, A.V. Sn−MFI molecular sieves: Synthesis methods, 29Si liquid and solid MAS−NMR, 119Sn static and MAS NMR studies. Microporous Mater., 1997, 12, 331−340(非特許文献7))によって開示された方法に従って、200Sn−MFI(Si/Sn=200)を製造する。この手順に従い、NHF(5.35g)を脱塩水(25.0g)中に溶解する。SnCl・5HO(0.25g)のHO(10.0g)中溶液を、急速撹拌下で加える。この後、HO(56.0g)中のテトラプロピルアンモニウムブロミド[TPABr(9.8g)]をゆっくり加える。ヒュームド・シリカ(8.6g)をその混合物に溶解する。その混合物を3時間撹拌し、そしてその後、テフロンでライニングしたオートクレーブにゲルを移し、200℃で6日間かけて結晶化させる。その後、生成物を十分な水と共に吸引ろ過し、そして、一晩かけて80℃で乾燥させる。回収した粉末を、550℃(2℃/分)で6時間か焼する。同じ手順に従って400Sn−MFI(Si/Sn=400)を製造するが、SnCl・5HOの量を調節する。
【0037】
Sn−MFI(代替的な製造法):
200Sn−MFI(Si/Sn=200)は、ZSM−5(Zeochem、ZEOcat(登録商標)PZ−2 100H)から製造できる。ZSM−5を、水蒸気下の450℃で6時間処理し、100℃で16時間、1MのHClで酸洗し、そして、十分な水で洗浄する。固形物を120℃で16時間乾燥させ、SnClの水溶液を含浸させ、そして、550℃(2℃/分)で6時間か焼する。
【0038】
Ti−MFI:
200Ti−MFI(Si/Ti=200)を、Mal等(Mal, N.K.; Ramaswamy, V.; Rajamohanan, P.R.; Ramaswamy, A.V. Sn−MFI molecular sieves: Synthesis methods, 29Si liquid and solid MAS−NMR, 119Sn static and MAS NMR studies. Microporous Mater., 1997, 12, 331−340(非特許文献7))によって開示された方法を修正した方法に従って製造する。この手順に従って、NHF(5.35g)を脱塩水(25.0g)中に溶解する。Ti(IV)エトキシド(0.17g)のHO(3.5g)中溶液及びH(6.5g)を、急速撹拌下で加える。この後、HO(56.0g)中のテトラプロピルアンモニウムブロミド[TPABr(9.8g)]をゆっくり加える。ヒュームド・シリカ(8.6g)をその混合物に溶解する。その混合物を20時間撹拌し、そしてその後、テフロンでライニングしたオートクレーブにゲルを移し、200℃で6日間かけて結晶化させる。その後、生成物を十分な水と共に吸引ろ過し、そして、一晩かけて80℃で乾燥させる。回収した粉末を、550℃(2℃/分)で6時間か焼する。
【0039】
Sn−BEA:
欧州特許2184270 B1号明細書(特許文献1)に記載されている方法に従ってSn−BEAを製造した。
【0040】
Sn−LTA:
125Sn−LTA(Si/Sn=125)は、LTAゼオライト(Sigma−Aldrich、分子篩、4Å)から製造できる。LTAを、水蒸気下の450℃で6時間処理し、100℃で16時間、1MのHClで酸洗し、そして、十分な水で洗浄する。固形物を120℃で16時間乾燥させ、SnCl水溶液を含浸させ、そして、550℃(2℃/分)で6時間か焼する。
【0041】
グリコールアルデヒドからのC酸素含有化合物の製造:
実施例2:
実施例1に従って製造した結晶性マイクロポラス材料(0.15g)、グリコールアルデヒド二量体[SAFC, 0.25g]及び脱塩水(5g)を、20mL容器(エース高耐圧チューブ)に添加し、激しく撹拌しながら(600rpm)80℃で加熱する。反応物の試料を、選択した時間(0.5〜24時)に取り出す。BIORAD Amminex HPX−87Hカラムを備えたHPLC Agilent 1200を用いて、65℃及び0.6ml/分で0.004MのHSO水溶液で、ろ過後のその液体試料の分析を行う。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例3:
1−3含酸素化合物を含む組成物は、バイオマス又はグルコース、スクロース、フルクトース又はキシロースのようなC5−6糖(C5−6含酸素化合物)の熱分解によって製造することができる。例示的な熱分解反応は、米国特許第7,094,932 B2号明細書(特許文献2)及びPCT/EP2014/053587号明細書(特許文献3)中に与えられている。C1−3含酸素化合物組成物は、5重量%以上、例えば、5重量%〜65重量%のグリコールアルデヒドを含む。
【0044】
米国特許第7,094,932 B2号明細書(特許文献 )に従ってグルコースの熱分解から得られる、C1−3含酸素化合物を含む組成物を水に希釈して、8重量%のグリコールアルデヒドを含む溶液5gを得る。20mLの容器(エース高耐圧チューブ)中でその混合物に実施例1に従って製造した結晶性マイクロポラス材料(0.15g)を加え、その反応物を、激しく撹拌(600rpm)しながら80℃で加熱する。反応物の試料を、選択した時間(0.5〜24時)に取り出す。ろ過後のその液体試料の分析を上述したように行う。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例4:
の圧力30〜90バールのオートクレーブ反応器中でC含酸素化合物の水素化を行う。実施例2又は3に従って製造したC含酸素化合物を含む組成物を、Parrオートクレーブ(50mL)中へRu/C触媒(0.2g;活性炭上5%、Aldrichから)と一緒に加えることによってその反応は行われる。該反応器は、80℃で加熱され、そして500rpmで3時間撹拌される。
【0047】
実施例5:
グリコールアルデヒドのC含酸素化合物及びそれに続く水素化の同時転化。(”ワンポット”又は”ワンステップ(一段階)”の転化と水素化)。
グリコールアルデヒド二量体(SAFC、0.25g)、実施例1に従って製造したSnMFI(0.1g)、Ru/C触媒(0.075g;活性炭上5%、Aldrichから)及び水(15g)を、50mLのParrオートクレーブに加える。最初の縮合反応は、大気中80℃で行う。3時間の反応後、オートクレーブを水素で90バールに加圧し、そして、3時間反応させる。縮合ステップ及び水素化後に生成物の試料を得、そして、ろ過後、上述したようにHPLCで分析する。
【0048】
あるいはまた、実施例2又は3に従って製造されたC含酸素化合物を含む組成物を、Sn−BEA触媒と共に、水又はメタノール中でそれぞれ反応させることによってビニルグリコール酸又はビニルグリコール酸メチル(MVG)が得られる(Green Chemistry (2012) 14, pp 702−706(非特許文献5)。
図1
図2