【課題を解決するための手段】
【0010】
今や、微小又は中程度の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料の存在下でグリコールアルデヒドをC
4−含酸素化合物へ選択的に変換できることが見出された。その反応は高収率で進行する。さらに、所望のC
4−含酸素化合物が選択的にさせるための追加的な化合物の存在下で該反応を進行させることが可能である。
【0011】
本発明は、さらにC
1−3含酸素化合物を含む組成物からC
4−含酸素化合物を製造するための方法によって定義され、その際、該方法は、微小又は中程度の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料の存在下で行われる。
【0012】
C
4−含酸素化合物は、C
4糖又は4つの炭素原子の炭素鎖長を有する含酸素化合物として知られている。C
4−含酸素化合物の分子式は、C
4H
8O
4である。C
4−含酸素化合物はまた、四炭糖としても説明できる。C
4−含酸素化合物は、トレオース、エリトロース及びエリトルロースからなる群の一種又は二種以上から選択される。
【0013】
本発明の一実施形態において、C
1−3含酸素化合物を含む組成物は、C
1含酸素化合物、C
2含酸素化合物及びC
3含酸素化合物からなる群から選択される一種又は二種以上の含酸素化合物を含む。C
1、C
2及びC
3含酸素化合物とは、それぞれ一つ、二つ又は三つの炭素原子の炭素鎖長を有する化合物を意味する。C
1−3含酸素化合物の分子式は、CH
2O;C
2H
4O
2;C
2H
2O
2;C
3H
6O
2及びC
3H
4O
2からなる群の一種又は二種以上から選択される式である。好ましくは、C
1−3含酸素化合物を含む組成物は、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グリコールアルデヒド、ピルビンアルデヒド及びアセトールからなる群から選択される一種又は二種以上の化合物を含む組成物である。第二の実施形態において、好ましくは、C
1−3含酸素化合物を含む組成物は、グリコールアルデヒド(2−ヒドロキシアセトアルデヒド)及びグリオキサールからなる群から選択される一種又は二種以上のC
2含酸素化合物を含む組成物である。グリコールアルデヒドは、二つの炭素原子の炭素鎖を有する化合物であり、C
2含酸素化合物又はC
2糖としても知られている。
【0014】
C
1−3含酸素化合物を含む組成物は、溶液の形態であることができ、その場合、その溶媒は、水、メタノール及び水とメタノールとの混合物からなる群から選択される。例えば、C
1−3含酸素化合物を含む組成物は、グリコールアルデヒドの水溶液又はメタノール溶液であるか、又は、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グリコールアルデヒド、ピルビンアルデヒド及びアセトールからなる群から選択される一種又は二種以上の化合物を含む組成物の水溶液又はメタノール溶液であることができる。
【0015】
C
1−3含酸素化合物を含む組成物は、バイオマスの熱分解又はC
5含酸素化合物、C
6含酸素化合物及びスクロースからなる群から選択される一種又は二種以上の含酸素化合物の熱分解によって得られる。C
5含酸素化合物及びC
6含酸素化合物とは、グルコース、フルクトース、キシロース及びそれらの異性体からなる群から選択される一種又は二種以上の化合物を意味する。熱分解反応の例は、米国特許第7,094,932 B2号明細書(特許文献2)及びPCT/EP2014/053587号明細書(特許文献3)に示されている。
【0016】
結晶性マイクロポラス材料は、ゼオライト材料及びゼオタイプ材料を含む。ゼオライト材料は、細孔結晶構造を有する結晶性アルミノシリケートである(Corma et al., Chem. Rev. 1995, 95 pp 559−614(非特許文献8)。そのゼオライト材料のアルミニウム原子は、一部又は全部が、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)及びスズ(Sn)のような金属(金属原子)で置換することができ、これらの材料はゼオタイプ材料としても知られている。
【0017】
小さい細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料とは、8員環の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料を意味し;中程度の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料とは、10員環の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料を意味する。小さい細孔構造又は中程度の細孔構造を有する結晶性マイクロポラス材料の例は、Chem. Rev. 1995, 95 pp 559−614(非特許文献9)中に提供されており、LTA、CHA、MFI(ZSM−5)、MEL、MTT、MWW、TON、HEU、AEL、AFO、MWW及びFERのような構造が含まれる。
【0018】
BEAの構造を有する結晶性マイクロポラス材料は、大きい、12員環の細孔構造を含み(Chem. Rev. 1995, 95 pp 559−614(非特許文献9)、そして、本発明の要件として考慮されない。
【0019】
中程度の細孔径を有するゼオタイプ材料には、Sn−MFI,Ti−MFI及びZr−MFIのような構造が含まれる。小さい細孔径を有するゼオタイプ材料の例はSn−LTAである。
【0020】
小さい細孔構造又は中程度の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料は、触媒として挙動すると考えられ得る。
【0021】
本発明の方法によって製造されたC
4−含酸素化合物の収率は、20%以上、24%以上、27%以上、30%以上、35%以上である。
【0022】
小さい細孔構造又は中程度の細孔構造を含む結晶性マイクロポラス材料中の金属(金属原子)の含有量は、0.1〜15重量%、0.5〜5.0重量%、0.5〜1.5重量%である。
【0023】
該方法は溶媒中で行うことができ、その際、溶媒は、水、アルコール及び水とアルコールの混合物(水及びアルコール)からなる群の一種又は二種以上から選択することができる。アルコールは、メタノール及びエタノールからなる群の一種又は二種以上から選択することができる。
【0024】
該方法は、25〜150℃、50〜120℃、そして70〜100℃の温度で行うことができる。
【0025】
本発明の方法によって製造されたC
4−含酸素化合物は、水素化によりC
4−ポリオールに転化することができる。そのような水素化反応は、担持金属触媒の存在下で行うことができ、その際、その金属は、例えば、銅、ニッケル、モリブデン、コバルト、鉄、クロム、亜鉛及び白金族の金属である。好ましい実施形態において、その金属触媒は、炭素又はラネーニッケル上に担持されたパラジウム又はルテニウムからなる群から選択される。例示的な水素化反応の条件は、米国特許第6,300,494 B1号明細書(特許文献4)及び米国特許第4,487,980 B1号明細書(特許文献5)に記載されている。水素化反応において使用される、さらに適切な金属触媒及び反応条件の例は、Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry: Hydrogenation and Dehydrogenation(非特許文献10)中に開示されている。
【0026】
本発明の方法によって製造されたC
4−含酸素化合物は、ビニルグリコール酸メチル及び2−ヒドロキシ−4−メトキシブタン酸又はそれらの塩又はエステルに転化することができる。Science (2010) 328, pp 602 - 605 and Green Chemistry (2012) 14, pp 702−706(非特許文献11)は、適切な合成方法を開示している。さらに、α−ヒドロキシ−γ−ブチルラクトンを、同じ条件下又はACS Catal., 2013, 3 (8), pp 1786−1800(非特許文献12)に記載されている条件下でC
4−含酸素化合物から製造することができる。
【0027】
ビニルグリコール酸メチル化合物は、さらに反応して、α−ヒドロキシメチノニン(methinonine)類似物を形成することができ、この転換の例は、国際公開第98/32735号パンフレット(特許文献6)中に記載されている。α−ヒドロキシメチノニン類似物は、2−ヒドロキシ−4−(C
1−5アルキルチオ)ブタン酸、それらの塩及びエステルからなる群から選択される化合物を含む。
【0028】
(C
1−5アルキルチオ)とは、メタンチール、エタンチール、直鎖又は分岐鎖のプロパンチオール、直鎖又は分岐鎖のブタンチオール、及び直鎖又は分岐鎖のペンタンチオールからなる群から選択されるアルキルチオールを意味する。
【0029】
C
1−8アルキルエステルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル及び2−エチルヘキシルからなる群から選択されるアルキル基を含むエステルを意味する。
【0030】
本発明の一実施形態において、メチオニンα−ヒドロキシ類似物は、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸である。
【0031】
本発明の第二の実施形態において、メチオニンα−ヒドロキシ類似物は、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸メチルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸エチルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸プロピルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸ブチルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸イソプロピルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸ペンチルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸ヘキシルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸ヘプチルエステル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸オクチルエステル及び2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)ブタン酸2−エチルヘキシルエステルからなる群から選択される。
【0032】
本発明の方法によって製造されたC4−含酸素化合物は、ChemSusChem (2012) 5, pp 1991−1999(非特許文献13)に記載されているようなブタンジオールに転化することができる。
【0033】
C1−3含酸素化合物からC4含酸素化合物を製造する方法は、C4ポリオールを形成するためのC4含酸素化合物の水素化反応と同時に行うこともできる。したがって、その反応は、一段階(ワンステップ)、すなわち”ワンポット”反応で行うことができる。”ワンステップ”又は”ワンポット”反応とは、グリコールアルデヒドをC4含酸素化合物に転化するための結晶性マイクロポラス材料と、C4含酸素化合物を水素化するための金属触媒とが、反応容器中に同時に存在することを意味する。その反応は、水素化生成物(C4ポリオール)が存在すると急冷される。
【0034】
C4ポリオールは、4個の炭素原子の鎖長を有し、かつ、それぞれの炭素原子がアルコール官能基(OH)に結合している化合物を含む、C4含酸素化合物を意味する。C4ポリオールはまた、四炭糖アルコールとしても知られており、C4H10O4の分子式を有する。C4ポリオールは、エリトリトール及びトレイトールからなる群の一種又は二種以上から選択される化合物である。エリトリトール及びトレイトールは、D−及びL−トレイトールのような全立体異性体を含む。エリトリトールは、食品、甘味料として使用することができ、また、ブタンジオールの製造に使用することができる。ChemSusChem (2012) 5, pp 1991−1999(非特許文献13)は、エリトリトールからのブタンジオールの製造を示している。