(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる電子部品の固定構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
[実施形態]
図1は、電子部品ユニットの概略構成を表す斜視図である。
図2は、電子部品ユニットの分解斜視図である。
図3は、
図1に示すA−Aの縦断面図である。
図4は、
図1に示すB−Bの縦断面図である。
図5は、
図1に示すB−Bの基台の縦断面図である。
図6は、電子部品ユニットの固定金具の斜視図である。
図7は、電子部品ユニットの固定金具の側面図である。
【0012】
以下の説明において、各図の矢印X方向は延在方向である。各図の矢印Y方向は、延在方向に直交する直交方向であり、奥行き方向である。Y1方向は手前方向とし、Y2方向を奥方向とする。各図の矢印Z方向は鉛直方向である。Z1方向は上方向であり、Z2方向は下方向であり、押圧方向である。
【0013】
本実施形態にかかる電子部品ユニット1は、
図1及び
図2に示すように、例えば、自動車等の車両に搭載されるスイッチング電源装置を構成する。このスイッチング電源装置は、例えば、DC/DCコンバータ等であり、入力された直流の電力を、所定の電圧を有する直流電力に変換する機能を有する。なお、スイッチング電源装置を構成する電子部品ユニット1以外の構成要素については、それらの説明を省略する。
【0014】
電子部品ユニット1は、基台10と、基板20と、電子部品30(図示例では4つ)と、固定金具40と、放熱シート50と、伝熱板60(図示例では4つ)と、締結部材70(図示例では2つ)とから構成される。
【0015】
基台10は、基板20及び固定金具40が固定される被固定部材である。基台10は、電子部品30が発した熱の放熱を促進する放熱部材(ヒートシンク)として機能する。基台10は、熱伝導性及び放熱性が高いアルミニウム(Al)等の金属材料から構成される。基台10は、延在方向を長手方向とした平板状に形成される。基台10は、上方向側に形成された上面10a(上方向の面)に、載置台11と、凸部12と、ねじ穴13とを備える。
【0016】
載置台11は、
図1、
図2及び
図5に示すように、延在方向を長手方向とする平板状に形成され、当接面11aを有する。当接面11aは、固定金具40の手前方向への移動を規制するものである。当接面11aは、載置台11の奥行き方向における両側面のうち、奥方向側の側面である。当接面11aは、載置台11の上方向側に形成される上面11bから基台10の上面10aに向かって、すなわち下方向に向かって奥方向に徐々に広がる傾斜面に形成される。言い換えると、当接面11aは、下方向に沿って、基板10側から固定金具40の後述する端部43の先端に近づく方向に傾斜する傾斜面として形成される。載置台11は、当接面11aが基台10の端部よりも手前方向に所定の間隔を設けて形成される。ここで、基台10の上面10aには、当接面11aおよび基台10の端部の間に規制面10bが形成される。規制面10bは、延在方向に沿って形成され、当接面11aと隣り合う面として形成される。規制面10bは、固定金具40の端部43を下方向に移動することを規制する。
【0017】
凸部12は、上面10aにおいて円柱状に上方向に突出して形成され、載置台11を挟んで延在方向に一対形成される。各凸部12は、ねじ穴13をそれぞれ有する。ねじ穴13は、基板20および固定金具40を締結部材70により固定するための穴である。
【0018】
基板20は、
図1に示すように、延在方向を長手方向とし、延在方向における長さが一対の凸部12の間の長さよりも長く、且つ、基台10の延在方向における長さよりも短い、平板状に形成される。基板20は、上方向側に形成される上面20aに回路パターンが実装される。基板20は、上面20aにおいて、複数の電子部品30がはんだ付けにより回路パターンに対して電気的に接続される。基板20は、下方向側に形成される下面20bのうち、少なくとも固定金具40の後述する固定部44と、上下方向において対向する部分には、絶縁処理が行われている。基板20は、切欠き部21と、一対の貫通孔22とを有する。
【0019】
切欠き部21は、基板20のうち、固定金具40の後述する基部41側に形成される。切欠き部21は、奥行き方向における両端部のうち、奥方向の端部を、長手方向に沿って手前方向に一部、切欠くことで形成される。切欠き部21は、固定金具40が基板20及び電子部品30を挟み込む状態で、固定金具40の後述する基部41の少なくとも一部が挿入されることで、基板20に対する固定金具40の位置決めとして機能する。
【0020】
一対の貫通孔22は、基板20を鉛直方向において貫通する孔であり、締結部材70が貫通するものである。各貫通孔22は、各ねじ穴13にそれぞれ対応するものであり、鉛直方向において各ねじ穴13にそれぞれ対向して形成される。
【0021】
複数の電子部品30は、例えば、スイッチング電源装置等に用いられるスイッチング素子として機能する。各電子部品30は、
図1に示すように、基板20の上面20aに対して、延在方向に沿って直線状に一定の間隔を置いて配置される。電子部品30は、本体部31と、端子部32とを有する。各電子部品30は、本体部31に対して端子部32が手前方向となるように、基板20に配置される。本体部31は、外周が絶縁材料により形成される。端子部32は、はんだ付けにより、基板20と電気的に接続される。
【0022】
固定金具40は、電子部品30を基板20及び基台10に押圧固定するための金具である。固定金具40は、熱伝導性及び放熱性を有した金属材料から構成され、例えばステンレスなどの板材から打ち抜き、折り曲げ加工をされることにより製造される。固定金具40は、
図6に示すように、基部41と、複数の押圧部42と、端部43と、一対の固定部44と、一対の貫通孔45とを有する。
【0023】
基部41は、一対の固定部44の間に位置するものであり、延在方向に沿って形成され、押圧部42と端部43と固定部44とが連結される。基部41は、延在方向の両端部に一対の凹部41aが形成される。基部41は、凹部41aが形成されている部分において、固定部44および端部43と連結する部分よりも断面積が小さく形成される。凹部41aは、端部43の弾性力に対して、当接面11aより受けた反力を押圧部42の押圧力として積極的に利用するためのものである。凹部41aは、少なくとも一部が押圧部42及び固定部44の間にそれぞれ形成される。
【0024】
押圧部42は、
図7に示すように、延在方向に沿って形成され、基部41の上方向の一端から直交方向、実施形態では電子部品30に向けて手前方向に形成される。押圧部42は、平板であり、各電子部品30にそれぞれ対応して形成される。押圧部42は、弾性を有する板部42aと、先端を上方向に屈曲させた当接部42bとを有する。板部42aは、基部41及び当接部42bを連結するものである。当接部42bは、固定金具40により基板20及び電子部品30を挟み込んだ状態で、本体部31の上方向側の面に当接し、基板20に対して電子部品30を押圧方向(下方向)に押圧するものである。押圧部42は、固定金具40を基台10に固定した状態において、当接部42bが本体部31に当接することにより、基台10及び基板20に対して電子部品30を押圧固定する。
【0025】
端部43は、固定金具40が手前方向に移動することを規制することで、奥方向の反力を得るものである。端部43は、一対の固定部44の間に位置するものであり、押圧部42が連結される基部41の一端と鉛直方向において対向する他端から下方向に沿って形成される。端部43は、平板であり、基板20及び固定金具40を基台10に固定する状態で、当接面11aに対して、奥行き方向における両端面のうち、手前方向における端面が面接触する。
【0026】
固定部44は、
図3に示すように、基板20及び固定金具40が基台10に固定される状態で、基台10の凸部12と基板20の下面20bとの間に挟まれて、基台10に対して固定されるものである。固定部44は、基部41の延在方向における両端部において、下方向の端部から手前方向に向かって一対形成されている。各固定部44は、鉛直方向において各凸部12とそれぞれ対向して形成される。基板20の下面20bに向かって略直角に折り曲げて形成される。固定部44は、延在方向に沿って基部41の始端と終端の両端に、端部43を挟んで形成される。各固定部44は、貫通孔45がそれぞれ形成される。各貫通孔45は、固定部44を鉛直方向において貫通する孔であり、締結部材70が貫通するものである。各貫通孔45は、各ねじ穴13にそれぞれ対応するものであり、鉛直方向において各ねじ穴13にそれぞれ対向して形成される。
【0027】
押圧部42及び固定部44は、電子部品30の本体部31および基板20の下面20bにそれぞれ当接し、基板20及び電子部品30を挟み込む。押圧部42及び固定部44は、外力が作用していない状態で、奥行き方向に沿って互いに近づいて傾斜して形成される。ここで、押圧部42及び固定部44は、鉛直方向における当接部42bと固定部44の先端との間の間隔(鉛直方向における距離)が、基板20および電子部品30を合わせた厚さ(鉛直方向における距離)よりも小さくなるように形成されている。
【0028】
放熱シート50は、基板20及び基台10の絶縁を行うものである。放熱シート50は、熱伝導性が高い絶縁材料から構成される。放熱シート50は、鉛直方向において基板20を挟んで複数の電子部品30と対向するものであり、鉛直方向から見た場合に、基板20に配置された複数の電子部品30を合わせた広さよりも広く形成されている。本実施形態における放熱シート50は、載置台11の上面11bと同等、あるいは若干小さい大きさの弾力性のあるシート状に形成される。放熱シート50は、図示しない貼付剤により、載置台11の上面11bに貼付される。
【0029】
伝熱板60は、電子部品30が発した熱を放熱シート50に伝達するものである。伝熱板60は、熱伝導性が高い材料で、鉛直方向から見た場合に、電子部品30の本体部31よりも大きく形成される。伝熱板60は、平板状であり、各電子部品30にそれぞれ対応して複数設けられ、放熱シート50上にそれぞれ載置される。
【0030】
締結部材70は、基板20及び固定金具40を基台10に固定するものである。締結部材70は、例えば、ねじであり、各ねじ穴13にそれぞれ対応して複数設けられる。締結部材70は、基板20の貫通孔22及び固定部44の貫通孔45を貫通して、ねじ穴13に螺合することで、基板20及び固定金具40を基台10に固定する。
【0031】
電子部品ユニット1の組み付け手順について説明する。まず、電子部品30は、基板20の上面20aに対してはんだ付けにより電気的に接続される。ここで、電子部品30は、基板20と電気的に接続されることで、基板20に対して機械的に保持される。
【0032】
次に、固定金具40は、電子部品30が基板20に対して機械的に保持された状態で、押圧部42および固定部44の間に、基板20及び電子部品30を挿入する。ここで、押圧部42及び固定部44は、電子部品30の本体部31の上面及び基板20の下面20bにそれぞれ当接する。このとき、押圧部42及び固定部44が鉛直方向において互いに離れる方向に弾性変形した状態で、電子部品30及び基板20が押圧部42及び固定部44の間に挿入される。
【0033】
次に、固定金具40は、基板20及び電子部品30が押圧部42及び固定部44の間に挿入されると、基板20に設けられた切欠き部21に挿入され、基板20に対して位置決めされる。そして、基部41が切欠き部21に入り込み、基部41が切欠き部21の端面に当接した状態で、基板20および電子部品30が固定金具40に挟み込まれる。ここで、固定部44は、基板20と絶縁された状態で当接する。固定金具40は、押圧部42および固定部44により、基板20に対して電子部品30を押圧方向に押圧する。
【0034】
次に、放熱シート50は基台10の載置台11に貼付され、各伝熱板60は放熱シート50を介して基台10の載置台11に載置される。次に、基板20及び電子部品30が挟み込まれた固定金具40は、放熱シート50および伝熱板60が一体化された基台10に載置される。
【0035】
次に、締結部材70は、貫通孔22,45を貫通し、基台10のねじ穴13に螺合される。ここで、固定金具40の端部43は、当接面11aに面接触するとともに、
図4に示すように、当接面11aから端部43の弾性力に対する奥方向に向かう反力を受けた状態で、奥方向に向かって弾性変形する。基部41のうち、凹部41aが形成されている部分は、固定部44によりも当接面11aからの反力によって弾性変形しやすい。したがって、反力を押圧部42が押圧方向に向かう弾性力として利用でき、押圧部42の電子部品30に対する押圧力を向上させる。また、端部43の先端は、基台10の規制面10bに当接する。そして、固定金具40の押圧部42は、各電子部品30の基台10及び基板20に対する押圧固定が完了する。
【0036】
上記実施形態における電子部品ユニット1によれば、固定金具40の押圧部42及び固定部44により、電子部品30及び基板20を挟み込んだ状態で、基板20及び固定金具40を基台10に固定するので、基台10に対して基板20及び固定金具40を別々に固定する作業が不要となる。つまり、基台10に対して基板20及び定金具40を固定する作業を一度に行うことができ、作業性が良くなる。また、従来、基板20及び固定金具40を基台10に別々に固定していたため、基板20及び固定金具40を基台10に固定するためのねじ穴13をそれぞれ基台10に設ける必要があった。しかしながら、基板20及び固定金具40を共通のねじ穴13を用いて基台10に対して、一度に固定することができるため、基台10にそれぞれ設けていたねじ穴13が不要となり、基台10を小型化することができる。
【0037】
また、当接面11aを傾斜面に形成することで、当接面11aに対して端部43が当接すると、端部43が奥方向により大きく弾性変形することとなる。つまり、端部43の弾性力に対する当接面11aからの反力が大きくなり、押圧部42の押圧力が増加し、電子部品30をより確実に基台10及び基板20に対して押圧固定することができる。
【0038】
また、固定金具40を押圧方向に規制可能な規制面10bを有することで、固定金具40の端部43の先端が規制面10bに当接し、押圧部42の弾性変形による固定金具40の端部43の下方向に対する移動を規制することができる。したがって、規制面10bに端部43の先端が当接することで、上方向に向かう反力を固定金具40が受けることができるので、反力を押圧部42の押圧力に利用することができ、電子部品30を基台10に対して確実に押圧固定することが可能となる。
【0039】
また、固定金具40の押圧部42及び固定部44が手前方向に沿って互いに近づいて傾斜していることで、電子部品30及び基板20に対する固定金具40の挟持力が向上する。従来、基板20及び固定金具40を基台10に対して別々に載置する必要があったが、挟持力が向上することで、固定金具40が基板20及び電子部品30を挟み込んだ状態で、容易に基台10に載置することが可能となるため、作業性を向上することができる。
【0040】
また、切欠き部21により、固定金具40の基板20に対する位置決めが行われ、基板20に対する取付け位置が決められるため、作業員が固定金具40の押圧部42及び固定部44の間に、電子部品30を保持した基板20を挟み込む際に、位置決めが容易となり作業性が向上する。また、固定金具40に他の部品等が接触すると、基板20に対して固定金具40の相対位置のずれが発生する可能性があり、位置ずれを直す作業が必要となる。しかしながら、固定金具40の基部41が切欠き部21に入り込むため、固定金具40が他の部品等に接触しても、基板20に対する位置ずれが発生しないため、位置ずれを直す作業が不要となり、作業性が向上する。
【0041】
[実施形態の変形例]
上記実施形態にかかる電子部品ユニット1は、図示例に限定されるものではない。上記実施形態では、基台10の上面10aに載置台11及び凸部12を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではない。電子部品ユニット1は、基台10に載置台11及び凸部12を形成せず、基板20及び電子部品30を挟み込んだ固定金具40を基台10の上面10aに直接載置し、固定してもよい。この場合、当接面11aは、基台10の奥行き方向における両側面のうち、奥行き方向側の側面となる。また、放熱シート50は、基台10の上面10aに載置されることとなり、基板20及び基台10の間を絶縁する。ねじ穴13は、基台10の上面10aに直接形成される。
【0042】
また、上記実施形態では、基台10の上面10aに載置台11を形成することで当接面11a及び規制面10bを形成する場合について説明したが、基台10の上面10aに対して固定金具40の延在方向に沿って溝を形成することにより、当接面11aと規制面10bを形成してもよい。溝は、固定金具40の端部43を挿入可能な大きさに形成される。溝は、奥行き方向の両側面と、両側面に挟まれ、且つ、両側面に垂直な底面を有する。両側面のうち、奥行き方向側の側面は当接面11aに相当し、底面は規制面10bに相当する。
【0043】
また、上記実施形態では、当接面11aを傾斜面とする場合について説明したが、傾斜面ではなく、基台10の上面10bまたは載置台11の上面11bに対し垂直な面としてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、基板20及び電子部品30を挟み込んだ固定金具40を基台10に固定した状態で、固定金具40の端部43の先端が規制面10bに当接することを説明したが、これに限定されるものではない。電子部品ユニット1は、固定金具40の端部43の先端及び基台10の規制面10bの間に隙間が形成されていてもよい。この場合、押圧部42が電子部品30を押圧固定することで、隙間を埋めるように、端部43が下方向に移動し、端部43の先端が規制面10bに突き当たり、下方向への移動が規制されることとなる。
【0045】
また、上記実施形態では、切欠き部21を固定金具40の基部41の延在方向における長さよりも長くなるように形成しているが、基部41に設けられた凹部41aの箇所は切欠きを形成しなくともよい。
【0046】
また、上記実施形態では、基板20上に4つの電子部品30を保持することを説明したが、電子部品30の数は、4つでなくともよく、少なくとも1つ以上であればよい。
【0047】
また、上記実施形態では、伝熱板60を基板20及び放熱シート50の間に設けることを説明したが、伝熱板60を設けず、基板20及び基台10の間に放熱シート50のみを設けるようにしてもよい。