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プラント停止時に、燃料の供給量を減少することで前記ガスタービンの出力を一定に低下させる予め設定された冷却停止モードを用いて前記ガスタービンの出力を低下させ、排ガス温度の低下率が前記許容最大値を超えると、燃料の供給量の減少を抑制することを特徴とする請求項1に記載のコンバインドサイクルプラントの制御装置。
排ガス温度の低下率が予め設定された許容最小値を下回ると、前記燃料制御弁の閉動作の抑制を解除すると共に、前記蒸気制御弁の閉動作の抑制を解除することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバインドサイクルプラントの制御装置。
前記ガスタービンの出力が予め設定された運用最低出力に到達すると、排ガス温度の低下率が蒸気の前記冷却レートとなるように前記ガスタービンの出力を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンバインドサイクルプラントの制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンバインドサイクルプラントにて、蒸気タービンを冷却させるとき、軸出力(ガスタービン出力)を下げることで蒸気温度が下がり、結果としてメタル温度を低下させる。蒸気タービンのケーシング内には静翼保持環などの熱容量が小さい静止部品を含むため、動翼が取付けられたロータよりも早期に温度低下する。すると、蒸気タービンのメタル温度が低下する過程で、静止部品は、動翼が取付けられたロータよりも早期に熱収縮し、両者のクリアランスが狭くなり、接触してしまうおそれがある。そのため、従来、蒸気タービンの冷却停止過程で、振動センサによりロータの軸振動を検出し、接触の有無を確認して、ロータの曲がりが発生するような軸振動が発生すると、軸負荷降下レートを変更し、ガスタービンの出力低下率を小さくするような制御を実施している。即ち、ロータの軸振動が増加すると、軸出力の変化率(ガスタービンの出力変化率)の設定を下げることで、蒸気温度の変化率を下げ、ケーシング側の熱収縮速度を緩和している。軸出力の変化率調整は蒸気温度の変化率調整と同等の関係であり、軸出力変化率調整を行うことで、熱収縮速度の緩和となり機械的な損傷を防いでいるが、一方で過剰に温度変化率を低くしすぎると、定期点検などでコンバインドサイクルプラントの停止するために蒸気タービンを冷却する場合、蒸気タービンの冷却にかかる時間が長時間となって定期点検にかかる期間が長くなり、コンバインドサイクルプラントの稼働率が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、プラントを停止させる時間を短縮して稼働率の向上を図るコンバインドサイクルプラントの制御装置及びコンバインドサイクルプラントの停止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明のコンバインドサイクルプラントの制御装置は、圧縮機と燃焼器とタービンを有するガスタービンと、前記ガスタービンからの排ガスの排熱により蒸気を生成する排熱回収ボイラと、前記排熱回収ボイラにより生成された蒸気により駆動する蒸気タービンと、を備えるコンバインドサイクルプラントにおいて、排ガス温度の低下率が、前記蒸気タービンの静止部と回転部との隙間が予め設定された許容隙間以上に維持される蒸気による冷却レートとなるように、前記ガスタービンの出力を制御する、ことを特徴とするものである。
【0009】
従って、予め蒸気タービンの静止部と回転部との隙間が許容隙間以上に維持されるときの排ガス温度の低下率に対する蒸気による冷却レートを設定しておき、プラントの停止時に、この排ガス温度の低下率が設定した蒸気による冷却レートとなるようにガスタービンの出力を制御することで、蒸気タービンの静止部と回転部との隙間を最適値に維持し、両者の接触による回転軸の曲げを抑制することができると共に、排ガス温度の低下率に応じてガスタービンの出力を制御すればよく、プラントを停止させる時間を短縮して稼働率の向上を図ることができる。
【0010】
本発明のコンバインドサイクルプラントの制御装置では、排ガス温度の低下率が予め設定された許容最大値を超えると、前記ガスタービンの出力の低下を抑制することを特徴としている。
【0011】
従って、プラントの停止時に、ガスタービンの出力を大きく低下させていき、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えると、ガスタービンの出力の低下を抑制するため、蒸気タービンの静止部と回転部との隙間を最適値に維持しながら、簡単な制御でプラントの冷却停止時間を短縮することができる。
【0012】
本発明のコンバインドサイクルプラントの制御装置では、プラント停止時に、燃料の供給量を減少することで前記ガスタービンの出力を一定に低下させる予め設定された冷却停止モードを用いて前記ガスタービンの出力を低下させ、排ガス温度の低下率が前記許容最大値を超えると、燃料の供給量の減少を抑制することを特徴としている。
【0013】
従って、プラント停止時に、まず、冷却停止モードを用いてガスタービンの出力を一定に低下させ、次に、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えると、燃料の供給量の減少を抑制するため、制御の簡素化を図ることができる。
【0014】
本発明のコンバインドサイクルプラントの制御装置では、排ガス温度の低下率が前記許容最大値を超えると、燃料供給ラインに設けられた燃料制御弁の閉動作を抑制すると共に、蒸気供給ラインに設けられた蒸気制御弁の閉動作を抑制することを特徴としている。
【0015】
従って、排ガス温度の低下率に応じて燃料制御弁と蒸気制御弁の開閉制御を実施すればよく、制御する対象機器が減少して制御の簡素化を図ることができる。
【0016】
本発明のコンバインドサイクルプラントの制御装置では、排ガス温度の低下率が予め設定された許容最小値を下回ると、前記燃料制御弁の閉動作の抑制を解除すると共に、前記蒸気制御弁の閉動作の抑制を解除することを特徴としている。
【0017】
従って、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えてガスタービンの出力の低下を抑制した後、排ガス温度の低下率が許容最小値を下回ると、再び、ガスタービンの出力を低下させることで、蒸気タービンの静止部と回転部との接触を抑制しながら、蒸気タービンを早期に冷却することができる。
【0018】
本発明のコンバインドサイクルプラントの制御装置では、前記ガスタービンの出力が予め設定された運用最低出力に到達すると、排ガス温度の低下率が蒸気の前記冷却レートとなるように前記ガスタービンの出力を制御することを特徴としている。
【0019】
従って、ガスタービンの出力が運用最低出力まで低下してから、排ガス温度の低下率が蒸気の冷却レートとなるようにガスタービンの出力を制御するため、蒸気タービンが冷却停止する過程で、必要な領域だけ排ガス温度の低下率に基づく制御を実行すればよく、制御の簡素化を図ることができる。
【0020】
また、本発明のコンバインドサイクルプラントの停止方法は、圧縮機と燃焼器とタービンを有するガスタービンと、前記ガスタービンからの排ガスの排熱により蒸気を生成する排熱回収ボイラと、前記排熱回収ボイラにより生成された蒸気により駆動する蒸気タービンと、を備えるコンバインドサイクルプラントにおいて、燃料の供給量を減少することで前記ガスタービンの出力を一定に低下させる予め設定された冷却停止モードを用いて前記ガスタービンの出力を低下させる工程と、排ガス温度の低下率が予め設定された許容最大値を超えると燃料の供給量の減少を抑制すると共に蒸気の供給量の減少を抑制する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0021】
従って、蒸気タービンの静止部と回転部との隙間を最適値に維持し、両者の接触による回転軸の曲げを抑制することができると共に、排ガス温度の低下率に応じてガスタービンの出力を制御すればよく、プラントを停止させる時間を短縮して稼働率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のコンバインドサイクルプラントの制御装置及びコンバインドサイクルプラントの停止方法によれば、プラントを停止させる時間を短縮して稼働率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るコンバインドサイクルプラントの制御装置及びコンバインドサイクルプラントの停止方法の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0025】
図1は、本実施形態のコンバインドサイクルプラントを表す概略構成図である。
【0026】
本実施形態において、
図1に示すように、コンバインドサイクルプラント10は、ガスタービン11と、排熱回収ボイラ(HRSG)12と、蒸気タービン13と、制御装置14とを備えている。
【0027】
ガスタービン11は、圧縮機21と、燃焼器22と、タービン23と、発電機24とを有しており、圧縮機21とタービン23と発電機24は、回転軸(ロータ)25により一体回転可能に連結されている。圧縮機21は、空気取り込みラインL1から取り込んだ空気を圧縮する。燃焼器22は、圧縮機21から圧縮空気供給ラインL2を通して供給された圧縮空気と、燃料ガス供給ラインL3から供給された燃料ガスとを混合して燃焼する。燃料ガス供給ラインL3は、燃焼器22に供給する燃料ガスの供給量を調整する燃料調整弁(燃料制御弁)26が設けられている。タービン23は、燃焼器22から燃焼ガス供給ラインL4を通して供給された燃焼ガスにより回転駆動する。発電機24は、タービン23が回転することで伝達される回転力により発電する。
【0028】
排熱回収ボイラ12は、ガスタービン11(タービン23)から排ガス排出ラインL5を介して排出された排ガスの排熱によって蒸気を発生させるものである。排熱回収ボイラ12は、図示しないが、熱交換器として、高圧、中圧、低圧の過熱器と蒸発器と節炭器とを有している。排熱回収ボイラ12は、ガスタービン11からの排ガスが内部を通過することで、過熱器、蒸発器、節炭器の順に熱回収を行うことで蒸気を生成する。そして、排熱回収ボイラ12は、蒸気を生成した使用済の排ガスを排出する排ガス排出ラインL6を介して煙突(図示略)が連結されている。
【0029】
蒸気タービン13は、排熱回収ボイラ12により生成された過熱蒸気により駆動するものであり、タービン31と発電機32とを有している。蒸気タービン13は、高圧タービン33と中圧タービン34と低圧タービン35とが一軸に連結されて構成され、発電機32も同軸上に連結されている。そして、排熱回収ボイラ12の高圧過熱器の高圧蒸気を高圧タービン33に供給する高圧蒸気供給ラインL11が設けられると共に、高圧タービン33を駆動した中圧蒸気を排熱回収ボイラ12の再熱器に戻す中圧蒸気回収ラインL12が設けられている。そして、高圧蒸気供給ラインL11は、高圧蒸気加減弁(蒸気制御弁)36が設けられている。また、再熱器で過熱された中圧蒸気を中圧タービン34に供給する中圧蒸気供給ラインL13が設けられると共に、中圧タービン34を駆動した中圧蒸気を低圧タービン35に供給する低圧蒸気搬送ラインL14が設けられている。そして、中圧蒸気供給ラインL13は、インターセプト弁(蒸気制御弁)37が設けられている。発電機32は、タービン31が回転することで伝達される回転力により発電する。
【0030】
蒸気タービン13は、低圧タービン35を駆動した蒸気を冷却する復水器38が設けられている。復水器38は、低圧タービン35から排出された蒸気を冷却水(例えば、海水)により冷却して復水とするものである。この復水器38は、生成した復水を復水供給ラインL15を介して排熱回収ボイラ12(節炭器)に送る。復水供給ラインL15は、腹水ポンプ39が設けられている。
【0031】
そのため、コンバインドサイクルプラント10の稼働時、ガスタービン11にて、圧縮機21は空気を圧縮し、燃焼器22は供給された圧縮空気と燃料ガスとを混合して燃焼する。タービン23は燃焼器22から供給された燃焼ガスにより回転駆動し、発電機24が発電を行う。また、ガスタービン11(タービン23)から排出された排ガスは、排熱回収ボイラ12に送られ、排熱回収ボイラ12は蒸気を生成し、過熱蒸気が蒸気タービン13に送られる。高圧タービン33と中圧タービン34と低圧タービン35は、この過熱蒸気により回転駆動し、発電機32が発電を行う。低圧タービン35で使用された蒸気は、復水器38で冷却されて復水となり、排熱回収ボイラ12に戻される。
【0032】
制御装置14は、燃料調整弁26と高圧蒸気加減弁36とインターセプト弁37の開度を調整することができる。制御装置14は、燃料調整弁26の開度を調整することで、燃料ガス供給ラインL3から燃焼器22に供給される燃料ガスの供給量を調整する。また、制御装置14は、高圧蒸気加減弁36の開度を調整することで、排熱回収ボイラ12から高圧蒸気供給ラインL11により高圧タービン33に供給される高圧蒸気の供給量を調整する。更に、制御装置14は、インターセプト弁37の開度を調整することで、排熱回収ボイラ12から中圧蒸気供給ラインL13により中圧タービン34に供給される中圧蒸気の供給量を調整する。
【0033】
また、制御装置14は、コンバインドサイクルプラント10を構成するガスタービン11、排熱回収ボイラ12、蒸気タービン13を制御可能となっている。制御装置14は、操作装置41が接続されており、操作装置41から入力された各種の指令信号によりガスタービン11、排熱回収ボイラ12、蒸気タービン13を制御する。
【0034】
ところで、上述したコンバインドサイクルプラント10の定期点検を行うために、その稼働を停止するとき、ガスタービン11の出力を低下させると共に、蒸気タービン13の出力を低下させ、ガスタービン11と蒸気タービン13のメタル温度を低下させている。このとき、動翼が取付けられたロータよりも静翼が取付けられたケーシングが早期に温度低下することから、両者の熱膨張差によりケーシングと動翼または静翼とロータとのクリアランスが狭くなり、接触してしまうおそれがある。この場合、蒸気タービン13の冷却停止過程で、ロータの軸振動を検出し、検出した軸振動に応じて軸負荷降下レートを変更することが考えられるが、コンバインドサイクルプラント10の停止時間が長くなってしまうという問題がある。
【0035】
本実施形態では、ガスタービン11の排ガス温度の低下率が、蒸気タービン13の静止部(ケーシングや静翼など)と回転部(ロータや動翼など)との隙間が予め設定された許容隙間以上に維持される蒸気の冷却レートとなるように、ガスタービン11の出力を制御するようにしている。そのため、ガスタービン11は、タービン23から排出された排ガスの温度を計測する温度センサ42が設けられており、温度センサ42は、計測結果を制御装置14に出力する。
【0036】
具体的に説明すると、排熱回収ボイラ12は、ガスタービン11の排ガスの排熱により水を加熱して蒸気を生成し、過熱蒸気を蒸気タービン13に供給する。そのため、蒸気タービン13に供給される蒸気温度は、ガスタービン11から排出される排ガス温度に依存し、ほぼ比例状態である。また、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間の大きさ(変化)は、蒸気タービン13へ供給される蒸気の変化率(上昇率または低下率)に依存し、この蒸気温度の変化率(上昇率または低下率)は、ガスタービン11から排出される排ガス温度の変化率(上昇率または低下率)に依存する。
【0037】
そのため、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間の大きさと蒸気タービン13へ供給される蒸気の変化率(低下率)との関係を事前に実験などにより求め、蒸気タービン13へ供給される蒸気の変化率(低下率)とガスタービン11から排出される排ガス温度の変化率(低下率)との関係を事前に実験などにより求めておく。すると、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間の大きさとガスタービン11から排出される排ガス温度の変化率(低下率)との関係が明確となる。そして、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間の最適値に対する排ガス温度の低下率の許容最大値を設定しておく。
【0038】
そして、コンバインドサイクルプラント10を冷却停止するとき、制御装置14は、燃料の供給量を減少することでガスタービン11の出力を一定に低下させると共に、蒸気の供給量を減少することで蒸気タービン13の出力を一定に低下させる冷却停止モードを用いてコンバインドサイクルプラント10を停止させる。コンバインドサイクルプラント10の出力を低下させるとき、現在の出力と目標出力とを比較して燃料の供給量(弁開度)の減少率と蒸気の供給量(弁開度)の減少率を設定する。本実施形態の冷却停止モードは、現在の出力と目標出力とに基づいて設定された燃料の供給量の減少率と蒸気の供給量の減少率に予め設定された補正値を加算して設定される。即ち、本実施形態の冷却停止モードは、従来の冷却停止モードより燃料の供給量の減少率と蒸気の供給量の減少率が大きいものである。
【0039】
そして、この冷却停止モードの実行時に、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えると、ガスタービン11の出力の低下を抑制する。排ガス温度の低下率が許容最大値を超えることは、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間が最適値より小さくなることであり、このとき、ガスタービン11の出力の低下を抑制することで、排ガス温度の低下率、つまり、蒸気温度の低下率が小さくなり、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間の減少が抑制される。
【0040】
また、ガスタービン11の出力の低下を抑制すると、排ガス温度の低下率が小さくなり、蒸気タービン13のメタル温度の低下が抑制され、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間が増加する。そのため、排ガス温度の低下率が予め設定された許容最小値を下回ると、再び、ガスタービン11の出力の低下の抑制を解除し、冷却停止モードによりガスタービン11の出力を低下させる。この処理の繰り返しによりコンバインドサイクルプラント10を停止させる。
【0041】
ここで、コンバインドサイクルプラント10の停止方法について詳細に説明する。
図2は、コンバインドサイクルプラントの停止方法を表すフローチャートである。
【0042】
本実施形態のコンバインドサイクルプラント10の停止方法は、ガスタービン11への燃料ガスの供給量を減少することでガスタービン11の出力を一定に低下させる予め設定された冷却停止モードを用いてガスタービン11の出力を低下させる工程と、排ガス温度の低下率が予め設定された許容最大値を超えると燃料ガスの供給量の減少を抑制すると共に蒸気の供給量の減少を抑制する工程とを有する。
【0043】
具体的に説明すると、
図1及び
図2に示すように、ステップS11にて、制御装置14は、コンバインドサイクルプラント10の冷却停止指令が入力されたかどうかを判定する。ここで、冷却停止指令が入力されていないと判定(No)されると、ステップS11の処理を継続して行う。一方、冷却停止指令が入力されたと判定(Yes)されると、ステップS12にて、ガスタービン11の負荷(出力)が予め設定された運用最低軸負荷に到達(運用最低軸負荷まで低下)したかどうかを判定する。
【0044】
ここで、ガスタービン11の負荷が運用最低軸負荷に到達していないと判定(No)されると、ステップS11に戻る。一方、ガスタービン11の負荷が運用最低軸負荷に到達したと判定(Yes)されると、ステップS13にて、コンバインドサイクルプラント10の冷却停止モードを開始する。このコンバインドサイクルプラント10の冷却停止モードとは、ガスタービン11の出力(軸出力)を予め設定された低下率で低下させると共に、蒸気タービン13の出力を所定の低下率で低下させるモードである。
【0045】
即ち、ガスタービン11の出力(軸出力)の調整は、燃料ガスの供給量を調整することにより行うものであり、制御装置14が燃料調整弁26の開度を調整する。また、蒸気タービン13の出力の調整は、過熱蒸気の供給量を調整することにより行うものであり、制御装置14は、高圧蒸気加減弁36及びインターセプト弁37の開度を調整する。そのため、コンバインドサイクルプラント10の冷却停止モードでは、制御装置14が燃料調整弁26の開度を所定の変化率で減少することで、ガスタービン11の出力(軸出力)を一定に低下させると共に、高圧蒸気加減弁36及びインターセプト弁37の開度を所定の変化率で減少することで、蒸気タービン13の出力を一定に低下させる。
【0046】
ステップS14にて、制御装置14は、排ガス温度の低下率が許容最大値以下であるかどうかを判定する。ここで、排ガス温度の低下率が許容最大値以下であると判定(Yes)されると、コンバインドサイクルプラント10を冷却停止モードで冷却させる処理を継続する。一方、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えたと判定(No)されると、ステップS15に移行する。ステップS15では、制御装置14が燃料調整弁26の開度の減少を停止し、その開度を維持させる。また、制御装置14が高圧蒸気加減弁36及びインターセプト弁37の開度の減少を停止し、その開度を維持させる。
【0047】
なお、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えたとき、燃料調整弁26の開度を維持してもよいし、開度の減少率を小さくしてもよい。また、高圧蒸気加減弁36及びインターセプト弁37の開度を維持してもよいし、開度の減少率を小さくしてもよい。すると、ガスタービン11の出力(軸出力)の低下が抑制されると共に、蒸気タービン13の出力の低下が抑制される。
【0048】
即ち、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えると、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間が最適値より小さくなってしまい、ガスタービン11の出力の低下を継続すると共に、蒸気タービン13の出力の低下を継続すると、蒸気タービン13の静止部と回転部とが接触して軸振動が大きくなってしまう。そのため、このとき、燃料調整弁26と高圧蒸気加減弁36及びインターセプト弁37の開度の減少を抑制し、ガスタービン11及び蒸気タービン13の出力の低下を抑制する。すると、排ガス温度の低下率、つまり、蒸気温度の低下率が小さくなり、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間の減少が抑制される。
【0049】
ガスタービン11の出力の低下を抑制すると、排ガス温度の低下率が小さくなると共に、蒸気温度の低下率が小さくなることから、蒸気タービン13のメタル温度の低下が抑制される。すると、蒸気タービン13の静止部と回転部との熱膨張差が減少し、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間が増加する。ステップS16にて、制御装置14は、排ガス温度の低下率が予め設定された許容最小値以下になるかどうかを判定する。ここで、排ガス温度の低下率が許容最小値より大きいと判定(No)されると、ステップS15に戻って処理を継続する。一方、排ガス温度の低下率が許容最小値以下であると判定(Yes)されると、ステップS14に戻り、制御装置14は、燃料調整弁26の開度を所定の変化率で減少することで、ガスタービン11の出力(軸出力)を一定に低下させると共に、高圧蒸気加減弁36及びインターセプト弁37の開度を所定の変化率で減少することで、蒸気タービン13の出力を一定に低下させる。そして、制御装置14は、排ガス温度の低下率が許容最大値以下であるかどうかを判定する。
【0050】
上述したステップS13からステップS16の繰り返し処理によりガスタービン11の出力が低下すると共に、蒸気タービン13の出力が低下し、ステップS17にて、コンバインドサイクルプラント10が停止する。
【0051】
上述した本実施形態のコンバインドサイクルプラント10の停止時における各状態量の変動について説明する。
図3は、コンバインドサイクルプラントの停止時におけるタイムチャートである。
【0052】
図3に示すように、時間t1にて、ガスタービン11の負荷が運用最低軸負荷に到達すると、ここで、コンバインドサイクルプラント10の冷却停止モードを開始する。即ち、制御装置14は、燃料調整弁26の開度を所定の変化率で減少すると共に、高圧蒸気加減弁36(インターセプト弁37)の開度を所定の変化率で減少する。また、このとき、IGV(入口案内翼)の開度を所定の変化率で減少する。
【0053】
すると、ガスタービン11の出力(軸出力)が一定に低下し、ガスタービン11の出力低下により排ガス温度が低下し、排ガス温度の低下率が大きくなる。そのため、排熱回収ボイラ12が生成する蒸気量が減少し、蒸気タービン13の出力が一定に低下する。
【0054】
このとき、制御装置14は、排ガス温度の低下率を監視しており、時間t2にて、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えると、制御装置14は、燃料調整弁26及びIGVの開度の減少を停止して一定開度に維持すると共に、高圧蒸気加減弁36(インターセプト弁37)の開度の減少を停止して一定開度を維持する。すると、ガスタービン11の出力低下が停止して一定出力に維持され、排ガス温度の低下率が小さくなり、蒸気温度の低下率も小さくなることから、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間の減少が抑制される。
【0055】
その後、時間t3にて、排ガス温度の低下率が許容最小値以下になると、再び、コンバインドサイクルプラント10の冷却停止モードを開始する。即ち、制御装置14は、燃料調整弁26及びIGVの開度を所定の変化率で減少することで、ガスタービン11の出力(軸出力)を一定に低下させると共に、高圧蒸気加減弁36及びインターセプト弁37の開度を所定の変化率で減少することで、蒸気タービン13の出力を一定に低下させる。すると、ガスタービン11の出力が一定に低下し、ガスタービン11の出力低下により排ガス温度が低下し、排ガス温度の低下率が大きくなる。そのため、排熱回収ボイラ12が生成する蒸気量が減少し、蒸気タービン13の出力が一定に低下する。
【0056】
このように本実施形態のコンバインドサイクルプラントの制御装置にあっては、圧縮機21と燃焼器22とタービン23を有するガスタービン11と、ガスタービン11からの排ガスの排熱により蒸気を生成する排熱回収ボイラ12と、排熱回収ボイラ12により生成された蒸気により駆動する蒸気タービン13とを備え、排ガス温度の低下率が、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間が予め設定された許容隙間以上に維持される蒸気による冷却レートとなるように、ガスタービン11の出力を制御している。
【0057】
従って、予め、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間が適正隙間以上に維持されるときの排ガス温度の低下率に対する蒸気による冷却レートを設定しておき、プラントの停止時に、この排ガス温度の低下率が設定した蒸気による冷却レートとなるようにガスタービン11の出力を制御する。そのため、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間を最適値に維持し、両者の接触による回転軸の曲げを抑制することができると共に、排ガス温度の低下率に応じてガスタービン11の出力を制御すればよく、プラントを停止させる時間を短縮して稼働率の向上を図ることができる。
【0058】
本実施形態のコンバインドサイクルプラントの制御装置では、排ガス温度の低下率が予め設定された許容最大値を超えると、ガスタービン11の出力の低下を抑制する。従って、プラントの停止時に、ガスタービン11の出力を大きく低下させていき、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えると、ガスタービン11の出力の低下を抑制するため、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間を最適値に維持しながら、簡単な制御でプラントの冷却停止時間を短縮することができる。
【0059】
本実施形態のコンバインドサイクルプラントの制御装置では、プラント停止時に、燃料の供給量を減少することでガスタービン11の出力を一定に低下させる予め設定された冷却停止モードを用いてガスタービン11の出力を低下させ、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えると、燃料の供給量の減少を抑制する。従って、プラント停止時に、まず、冷却停止モードを用いてガスタービン11の出力を低下させ、次に、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えると、燃料の供給量の減少を抑制するため、制御の簡素化を図ることができる。
【0060】
本実施形態のコンバインドサイクルプラントの制御装置では、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えると、燃料ガス供給ラインL3に設けられた燃料調整弁26の閉動作を抑制すると共に、高圧蒸気供給ラインL11に設けられた高圧蒸気加減弁36の閉動作を抑制する。従って、排ガス温度の低下率に応じて燃料調整弁26と高圧蒸気加減弁36の開閉制御を実施すればよく、制御する対象機器が減少して制御の簡素化を図ることができる。
【0061】
本実施形態のコンバインドサイクルプラントの制御装置では、排ガス温度の低下率が予め設定された許容最小値を下回ると、燃料調整弁26の閉動作を大きくすると共に、高圧蒸気加減弁36の閉動作を大きくする。従って、排ガス温度の低下率が許容最大値を超えてガスタービン11の出力の低下を抑制した後、排ガス温度の低下率が許容最小値を下回ると、再び、ガスタービン11の出力を低下させることで、蒸気タービン13の静止部と回転部との接触を抑制しながら、蒸気タービン13を早期に冷却することができる。
【0062】
本実施形態のコンバインドサイクルプラントの制御装置では、ガスタービン11の出力が予め設定された運用最低出力に到達すると、排ガス温度の低下率が蒸気の冷却レートとなるようにガスタービン11の出力を制御する。従って、ガスタービン11の出力が運用最低出力まで低下してから、排ガス温度の低下率が蒸気の冷却レートとなるようにガスタービン11の出力を制御するため、蒸気タービン13が冷却停止する過程で、必要な領域だけ排ガス温度の低下率に基づく制御を実行すればよく、制御の簡素化を図ることができる。
【0063】
また、本実施形態のコンバインドサイクルプラントの停止方法にあっては、燃料の供給量を減少することでガスタービン11の出力を一定に低下させる予め設定された冷却停止モードを用いてガスタービン11の出力を低下させる工程と、排ガス温度の低下率が予め設定された許容最大値を超えると燃料の供給量の減少を抑制すると共に蒸気の供給量の減少を抑制する工程とを有する。従って、蒸気タービン13の静止部と回転部との隙間を最適値に維持し、両者の接触による回転軸の曲げを抑制することができると共に、排ガス温度の低下率に応じてガスタービン11の出力を制御すればよく、プラントを停止させる時間を短縮して稼働率の向上を図ることができる。
【0064】
なお、上述した実施形態では、排ガス温度をガスタービン11におけるタービン23から排出された排ガスの温度を温度センサ42により計測したが、排ガス温度は、温度センサ42が計測したものに限定されるものではない。例えば、排ガス温度をガスタービン11における燃焼器22から排出された排ガスの温度としたり、タービン23内を流れる排ガスの温度としたり、また、圧縮機21内に取り込まれる空気量と燃焼器22に供給される燃料量に基づいて排ガス温度を推定したりしてもよい。