(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のイオン交換可能なアルカリ金属イオンを有する、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物を有する物品であって、さらに、複数の主面、複数の側部エッジ、及び厚さによって画成される、物品を提供する工程、
各々が、前記イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む、第1のイオン交換浴を提供する工程、及び
第1のイオン交換温度及び持続時間で前記第1のイオン交換浴内に前記物品を沈漬させて、前記主面の1つから前記物品内の第1の選択された深さまで延在する圧縮応力領域を形成する工程
を含む、強化された物品の製造方法において、
前記物品がさらに、(a)前記主面及び前記側部エッジから200μmの深さに位置する境界から前記物品の重心まで延在する中央領域、(b)前記物品の前記主面及び側部エッジ間に前記境界まで延在する外側領域、及び(c)前記側部エッジの各々から前記物品内の第2の選択された深さまで延在する、エッジ圧縮応力領域、
を含み、かつ
さらに、前記外側領域内の張力下での最大主応力が、前記中央領域内の張力下での最大主応力の2倍以下である、
方法。
前記第1のイオン交換温度が約460℃〜520℃の範囲にあり、前記第1のイオン交換持続時間が約30分〜約5時間であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
各々が、前記イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む、第2のイオン交換浴を提供する工程、
前記圧縮応力領域を有する前記物品の前記側部エッジの各々をイオン交換バリア材料でマスキングする工程、
第2のイオン交換温度及び持続時間で前記第2のイオン交換浴内に前記マスキングされた物品を沈漬させて、前記主面の1つから前記物品内の第2の選択された深さまで延在する主圧縮領域を形成する工程、及び
前記物品から前記バリア材料を除去する工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
前記第2のイオン交換温度が約460℃〜520℃の範囲にあり、前記第2のイオン交換持続時間が約30分〜約5時間であり、さらに、前記第2のイオン交換浴が、97〜99%の溶融KNO3及び1〜3%の溶融KSO4(質量による)を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
これより、その例が添付の図面に示される本発明の好ましい実施形態について、詳細に説明される。同一又は同様の部分についての言及には、図面全体を通して、できるかぎり同一の参照番号が用いられる。各々が本発明のある特定の利益を取り込む、本明細書に開示される実施形態は、単なる例示であることが理解されるべきである。
【0019】
本発明の範囲内の以下の実施例に対してさまざまな修正及び変形がなされ、また、さらなる実施例を達成するためのさまざまな態様で、さまざまな実施例の態様が混合されうる。したがって、本発明の真の範囲は、本明細書に記載の実施形態に限られはしないがそれらを考慮して、本開示全体から理解されるべきである。
【0020】
「水平」、「垂直」、「前」、「後/背」等の用語、及びデカルト座標系の使用は、図面における参照の目的のため及び説明の容易性のためであり、絶対方位及び/又は方向に関して本明細書又は特許請求の範囲のいずれかにおいて厳密に限定されることは意図されていない。
【0021】
概して、本開示は、これらの物品内の1つ以上の圧縮応力領域の発達に適合するような、及び、これらの物品のエッジ、側面及び隅部の強度特性を増進するような、最適化された方法及び物品構成を含む。例えば、本開示は、比較的低い圧縮応力(CS)レベル及び大きい圧縮応力層の深さ(DOL)で、物品内に圧縮応力領域を発達させる利益について詳述する。この低い応力レベル及び大きいDOLの組合せは、物品のエッジ及び隅部の近傍に、より少ない表面材料成長及びより低い最大主応力(張力下で)をもたらしうる。幾つかの態様では、物品の隅部及びエッジはさらに、面取り部、フィレット、ベゼル又は他の湾曲形状を含むように加工されており、これらの特徴は、物品のエッジ及び隅部の近傍における最大引張応力レベルも低下させる。
【0022】
本開示はまた、示差的なイオン交換処理条件を通じて、物品内に複数の応力領域を発達させる利益についても概説する。これらの態様では、イオン交換プロセスは、概して、1つ以上のイオン交換工程を含み、その幾つかは、物品の他の領域のマスキングを通して、物品のエッジ及び隅部を目標としうる。示差的なイオン交換プロセスから得られる圧縮応力領域は、物品のエッジ及び隅部の近傍に見られる張力下での最大主応力を低下させかつ最小限に抑える役割を果たし、したがって、それらの相対強度及び物品の全体的な信頼性を改善する。加えて、強度が増進されたエッジ及び隅部を有するこれらの物品は、それらの外側領域内(例えば、それらの外面から約200μmの深さ内)で測定又は推定された最大主応力レベル(張力下で)が、それらの中央領域(例えば、物品の中心と物品の外面から約200μmの深さとの間の領域)内で測定された最大主応力(張力下で)の2倍以下になるように特徴づけされうる。
【0023】
本明細書で用いられる場合、「圧縮応力」(CS)及び「圧縮応力層の深さ」(DOL)は、当技術分野で知られた手段を使用して測定される。例えば、CS及びDOLは、折原製作所(日本国所在)製造のFSM−6000などの市販の計器を使用して、表面応力計によって測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折性に関連した応力光学係数(SOC)の正確な測定に依拠している。SOCは、今度は、その内容の全体が参照によって本明細書に取り込まれる「ガラス応力光係数の測定のための標準的試験方法(Standars Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient)」という題名でASTM規格C770−98(2013)に記載される手順Cの修正版に従って測定される。修正には、5〜10mmの厚さ及び12.7mmの直径のガラスディスクを被検査物として使用することが含まれる。さらには、ガラスディスクは、等方性かつ均質であり、コア削孔されており、その両面は研磨され、平行である。修正には、印加される最大の力F
maxの計算も含まれる。該力は、少なくとも20MPaの圧縮応力を生成するのに十分であるべきである。印加される最大の力F
maxは、等式(1):
F
max=7.854*D*h (1)
に従って次のように計算され、式中、F
maxはニュートンで表された最大の力であり、Dはガラスディスクの直径であり、hは光路の厚さである。印加される各力について、その応力は、等式(2):
【0025】
に従って計算され、式中、F
maxは等式(1)から得られるニュートンで表された最大の力であり、Dはガラスディスクの直径であり、hは光路の厚さである。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「圧縮応力層の深さ(DOL)」とは、強化プロセスに由来して生成される圧縮応力が0に達する、強化された物品内の深さ位置を指す。
【0027】
図1を参照すると、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物、並びに複数の主面12及び14を有する物品90を含む、強化された物品100が提供される。本物品はまた、側面22及び24、エッジ42及び44、隅部32及び34、並びに厚さ54も含む。物品90は、主面12、14の1つから物品内の第1の選択された深さ52まで延在する圧縮応力領域50をさらに含む。
図1に示されるように、圧縮応力領域50は、主面12から第1の選択された深さ52まで延在する。ある特定の態様では、圧縮応力領域50は、主面14から第1の深さ52まで延在する。さらには、強化された物品100の幾つかの態様は、2つの主圧縮応力領域50を含み、各領域50は、それぞれの主面から第1の選択された深さまで延在し、これらの領域について選択される深さは、物品100の特定の構成に応じて、同一であっても同一でなくてもよい。
【0028】
ある特定の実施態様では、強化された物品100に用いられる物品90の領域50における最大圧縮応力は、約400MPa以下であり、第1の選択された深さ52は、物品の厚さの少なくとも8%である。本開示の分野内における通常の強化された物品(例えば、0.8mm厚の基板について、約900MPaの圧縮応力及び約45〜50μmのDOLを伴う圧縮応力領域を有する物品)と比べて、このような圧縮応力領域50を有する物品90は、比較的低レベルの圧縮応力(CS)及び比較的大きい圧縮深さレベルを示す。ある特定の態様では、圧縮応力層の深さ(DOL)は、物品の厚さの10%を超え(例えば、0.7〜0.8mm厚の基板については約70〜80μm)、幾つかの事例では、物品の厚さの20%を超えうる(例えば、0.7〜0.8mm厚の基板については約150〜160μm)。
【0029】
このような圧縮応力領域50の特性を含むこれらの強化された物品100は、物品のエッジ及び隅部の近傍における最大引張応力が低下し、したがって、物品の隅部及びエッジの強度が増強される。これらのエッジ及び隅部の強度の増強に伴い、物品を含むデバイスの全体的な信頼性が改善されうる。ある特定の態様では、物品のエッジ及び隅部の近傍における最大引張応力は、200MPaを超えない。本開示のある特定の態様によれば、強化された物品は、100MPaを超えない、ガラスのエッジ及び隅部の実質的に近傍における最大引張応力を示しうる。
【0030】
図1及び1Cにも示されるように、強化された物品100は、物品90内に、主面12、14及びエッジ42、44からの深さ72に位置する境界から、物品の重心(図示せず)まで延在する中央領域70を含みうる。強化された物品100のある特定の実施態様では、深さ72は、約200μmに定められる。加えて、中央領域70はまた、主面12、14からの深さ72a、側面24からの深さ72b、及び/又は隅部42、44からの深さ72cに位置するように画成されうる(
図1C参照)。したがって、深さ72は、物品90の容積全体を通じて一定でなくてもよい。物品90の重心は、物品90の内部によって画成される容積のほぼ幾何学的中心であることも理解されるべきである。
図1にも示されるように、物品90は、物品90の主面12、14及び側部エッジ42、44間に、深さ72によって定められる中央領域70の境界まで延在する、外側領域80を含みうる。これらの構成の下では、外側領域80内の張力下での最大主応力は、中央領域70内の張力下での最大主応力の2倍以下である。通常の強化された物品は、対照的に、しばしば、物品の中央領域における最大主応力の2倍を優に超える、それらの隅部及びエッジの近傍における最大主応力を示す。言い換えれば、強化された物品100の強度を増進する態様は、外側領域80内の最大主応力(張力下で)を、物品の中央領域70における最大主応力の2倍以下しかないように低下させる役割を果たす。例えば、中央領域70が80MPaの張力下における最大主応力を示す場合、外側領域80における最大主応力は160MPa以下である。物品のエッジ42、44(及び、隅部32、34)の近傍の主応力におけるこれらの著しい低下は、物品90の全体的な信頼性を高める。
【0031】
強化された物品100に用いられる物品90は、さまざまなガラス組成物、ガラスセラミック組成物及びセラミック組成物を含みうる。ガラスの選択は、特定のガラス組成物に限定されない。例えば、選択される組成物は、広範なケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、又はホウアルミノシリケートガラス組成物のいずれかとすることができ、必要に応じて、1つ以上のアルカリ及び/又はアルカリ土類改質剤を含んでもよい。
【0032】
例として、物品90に用いられうる組成物の1つのファミリには、酸化アルミニウム又は酸化ホウ素のうちの少なくとも1つと、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物のうちの少なくとも1つとを有するものが含まれ、ここで、−15モル%≦(R
2O+R'O−Al
2O
3−ZrO
2)−B
2O
3≦4モル%であり、式中、Rは、Li、Na、K、Rb、及び/又はCsとすることができ、R'は、Mg、Ca、Sr、及び/又はBaとすることができる。組成物のこのファミリの1つの部分集合は、約62モル%〜約70モル%のSiO
2;0モル%〜約18モル%のAl
2O
3;0モル%〜約10モル%のB
2O
3;0モル%〜約15モル%のLi
2O;0モル%〜約20モル%のNa
2O;0モル%〜約18モル%のK
2O;0モル%〜約17モル%のMgO;0モル%〜約18モル%のCaO;及び、0モル%〜約5モル%のZrO
2を含む。このようなガラスは、以下に十分に記載されるように、参照することによってその全体が本明細書に取り込まれる、米国特許第8,969,226号及び同第8,652,978号の各明細書に、より十分に説明されている。
【0033】
物品90に用いられうる組成物の別の例証的なファミリとしては、少なくとも50モル%のSiO
2と、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1つの改質剤とを有するものが挙げられ、ここで、[(Al
2O
3(モル%)+B
2O
3(モル%))/(Σアルカリ金属改質剤(モル%))]>1である。このファミリの1つの部分集合は、50モル%〜約72モル%のSiO
2;約9モル%〜約17モル%のAl
2O
3;約2モル%〜約12モル%のB
2O
3;約8モル%〜約16モル%のNa
2O;及び、0モル%〜約4モル%のK
2Oを含む。このようなガラスは、以下に十分に記載されるように、参照することによってその全体が本明細書に取り込まれる、米国特許第8,586,492号明細書に、より十分に記載されている。
【0034】
物品90に用いられうる組成物のさらに別の例証されるファミリには、SiO
2、Al
2O
3、P
2O
5、及び少なくとも1つのアルカリ金属酸化物(R
2O)を有するものが含まれ、ここで、0.75≦[(P
2O
5(モル%)+R
2O(モル%))/M
2O
3(モル%)]≦1.2であり、M
2O
3=Al
2O
3+B
2O
3である。組成物のこのファミリの1つの部分集合は、約40モル%〜約70モル%のSiO
2;0モル%〜約28モル%のB
2O
3;0モル%〜約28モル%のAl
2O
3;約1モル%〜約14モル%のP
2O
5;及び、約12モル%〜約16モル%のR
2Oを含む。組成物のこのファミリの別の部分集合は、約40〜約64モル%のSiO
2;0モル%〜約8モル%のB
2O
3;約16モル%〜約28モル%のAl
2O
3;約2モル%〜約12モル%のP
2O
5;及び、約12モル%〜約16モル%のR
2Oを含む。このようなガラスは、以下に十分に記載されるように、参照することによってその全体が本明細書に取り込まれる、米国特許出願第13/305,271号明細書に、より十分に説明されている。
【0035】
物品90に用いられうる組成物のさらに別の例証されるファミリには、少なくとも約4モル%のP
2O
5を有するものが含まれ、ここで、(M
2O
3(モル%)/R
xO(モル%))<1であり、式中、M
2O
3=Al
2O
3+B
2O
3であり、R
xOは、ガラス中に存在する一価及び二価のカチオン酸化物の合計である。一価及び二価のカチオン酸化物は、Li
2O、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2O、MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOからなる群より選択されうる。組成物のこのファミリの1つの部分集合は、0モル%のB
2O
3を有するガラスを含む。このようなガラスは、以下に十分に記載されるように、参照することによってその全体が本明細書に取り込まれる、米国特許出願第13/678,013号及び米国特許第8,765,262号の各明細書に、より十分に説明されている。
【0036】
物品90に用いられうる組成物のさらに別の例証されるファミリには、Al
2O
3、B
2O
3、アルカリ金属酸化物を有するものが含まれ、3配位を有するホウ素カチオンが含まれる。イオン交換される場合、これらのガラスは、少なくとも約294N(約30重量キログラム(kgf))のビッカース亀裂開始閾値を有しうる。組成物のこのファミリの1つの部分集合は、少なくとも約50モル%のSiO
2;少なくとも約10モル%のR
2O(ただし、R
2OはNa
2Oを含む);Al
2O
3(ただし、−0.5モル%≦Al
2O
3(モル%)−R
2O(モル%)≦2モル%);及び、B
2O
3(ただし、B
2O
3(モル%)−(R
2O(モル%)−Al
2O
3(モル%))≧4.5モル%)を含む。組成物のこのファミリの別の部分集合は、少なくとも約50モル%のSiO
2、約9モル%〜約22モル%のAl
2O
3;約4.5モル%〜約10モル%のB
2O
3;約10モル%〜約20モル%のNa
2O;0モル%〜約5モル%のK
2O;少なくとも約0.1モル%のMgO及び/又はZnO(ただし、0≦MgO+ZnO≦6モル%)を含み、かつ、必要に応じて、CaO、BaO、及びSrOのうちの少なくとも1つ(ただし、0モル%≦CaO+SrO+BaO≦2モル%)を含む。このようなガラスは、以下に十分に記載されるように、参照することによってその内容が全体的に本明細書に取り込まれる、米国特許出願第13/903,398号明細書に、より十分に説明されている。
【0037】
特に断りのない限り、本開示に概説される、エッジ及び隅部が強化された物品及びそれらを生成するための関連する方法は、68.96モル%のSiO
2、0モル%のB
2O
3、10.28モル%のAl
2O
3、15.21モル%のNa
2O、0.012モル%のK
2O、5.37モル%のMgO、0.0007モル%のFe
2O
3、0.006モル%のZrO
2、及び0.17モル%のSnO
2のアルミノケイ酸塩ガラス組成物を有する物品によって例証される。典型的なアルミノケイ酸塩ガラスは、米国特許出願第13/533,298号明細書に記載されており、参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0038】
同様に、セラミックに関して、強化された物品100に用いられる物品90のために選択される材料は、広範囲の無機結晶酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭窒化物、及び/又は同様のもののいずれかでありうる。例証されるセラミックとしては、アルミナ、チタン酸アルミニウム、ムライト、コージエライト、ジルコン、スピネル、ペロブスカイト、ジルコニア、セリア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素アルミニウム、又はゼオライト相を有する材料が挙げられる。
【0039】
同様に、ガラスセラミックに関しては、物品90のために選択される材料は、ガラス相及びセラミック相の両方を有する広範な材料のいずれかでありうる。例証されるガラスセラミックとしては、ガラス相が、ケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、又はホウアルミノシリケートから形成され、かつ、セラミック相が、β−スポジュメン、β−石英、ネフェリン、カルシライト、又はカーネギーアイトから形成される材料が挙げられる。
【0040】
強化された物品100内で用いられる物品90は、ガラス基板を含むさまざまな物理的形態を採用しうる。すなわち、断面斜視図から、物品90は、基板として構成される場合に、平坦又は平面的であってよく、あるいは、湾曲及び/又は急激に屈曲していてもよい。同様に、物品90は、単一の一体的な物体、多層構造、又は積層体とすることができる。物品90が基板又は板状の形態で用いられる場合、厚さ(例えば、厚さ54)は、好ましくは約0.2〜1.5mmの範囲、より好ましくは約0.8〜1mmの範囲にある。さらには、物品90は、可視スペクトルにおいて実質的に透明であり、その圧縮応力領域50の発達後に実質的に透明なまま維持される組成を有しうる。
【0041】
その組成又は物理的な形態にかかわらず、強化された物品100に用いられる物品90は、基板の表面(例えば、主面12、14)から内側にその内部の特定の深さ(すなわち、「第1の深さ」)まで延在する、圧縮応力下の領域50を含む。この圧縮応力領域は、強化プロセスによって(例えば、熱強化、化学イオン交換、又は同様のプロセスによって)形成されうる。圧縮応力領域50に関連する圧縮応力(CS)の量及び圧縮応力層の深さ(DOL)は、物品100の特定の用途に基づいて変動しうる。一般的制限の1つ、特にガラス組成物を有する物品90についての制限は、CS及びDOLが、圧縮応力領域50の結果として物品90のバルク内に生じる引張応力が物品を脆弱にするほど過剰にならないように制限されるべきであるということである。
【0042】
本開示のある特定の態様では、イオン交換プロセスを使用して強化されたガラス組成物を有する物品90の圧縮応力(CS)プロファイルは、イオン交換されたガラスに形成された光導波路のTM及びTE導波モードスペクトルに基づいて応力プロファイルを測定する方法(以後「WKB法」と称される)を使用して決定された。本方法は、TM及びTE導波モードスペクトルに由来する強度極値の位置をデジタル的に定めて、これらの位置からそれぞれのTM及びTE有効屈折率を計算することを含む。TM及びTE屈折率プロファイルn
TM(z)及びn
TE(z)は、逆WKB計算を使用して計算される。本方法はまた、応力プロファイルS(z)=[n
TM(z)−n
TE(z)]/SOCを計算することを含み、式中、SOCは、ガラス基板についての応力光係数である。この方法は、その内容の全体が参照によって本明細書に取り込まれる、2012年5月3日出願し、2011年5月25日出願の米国仮特許出願第61/489,800号の優先権を主張する、発明の名称を「イオン交換されたガラスの応力プロファイルを測定するためのシステム及び方法(Systems and Methods for Measuring the Stress Profile of Ion-Exchanged Glass)」とする、Douglas C.Allanらの米国特許出願第13/463,322号明細書に記載されている。深さの関数としてのこれらの物品における応力レベルを測定するための他の技法は、参照することにより本明細書に取り込まれる、米国仮特許出願第61/835,823号及び同第61/860,560号の各明細書に概説されている。
【0043】
再び
図1を参照すると、強化された物品100内に圧縮応力領域50を発達させる方法は、強化用浴中に物品90を沈漬する工程を包含する。幾つかの態様では、浴は、複数のイオン交換用金属イオンを含み、物品90は、複数のイオン交換可能な金属イオンを有するガラス組成物を有する。例えば、浴は、ナトリウムなどの物品90内のイオン交換可能なイオンのサイズよりも大きい、複数のカリウムイオンを含みうる。浴内のイオン交換用イオンは、物品90内のイオン交換可能なイオンと優先的に交換する。
【0044】
ある特定の態様では、圧縮応力領域50の生成に用いられる強化用浴は、当業者に理解されるように、添加剤とともに100質量%に近い濃度、あるいは、100質量%の濃度の溶融KNO
3浴を含む。このような浴は、物品90の処理の間に、KNO
3が溶融状態のまま維持されることが確実になるような温度まで十分に加熱される。強化用浴はまた、KNO
3と、LiNO
3及びNaNO
3のうちの一方又は両方との組合せも含みうる。
【0045】
本開示の幾つかの態様によれば、約400MPa以下の最大圧縮応力と、アルミノケイ酸塩ガラス組成物を有する物品90における物品の厚さの少なくとも8%の第1の選択された深さ52とを有する、圧縮応力領域50を発達させる方法は、約400℃〜500℃の範囲の温度で、約3〜60時間の沈漬持続時間、保持される強化用浴中に物品90を沈漬する工程を包含する。より好ましくは、圧縮応力領域50は、約420℃〜500℃の範囲の温度で、約0.25〜約50時間の持続時間、強化用浴中に物品90を沈漬する工程によって発達されうる。ある特定の態様では、強化用浴の温度範囲の上限は、ガラスのアニール点より約30℃低く設定される(例えば、物品90がガラス組成物を有する場合)。沈漬工程にとって特に好ましい持続時間は、0.5〜25時間の範囲である。ある特定の実施形態では、強化用浴は約400℃〜450℃で保持され、第1のイオン交換持続時間は約3〜15時間である。
【0046】
1つの例となる態様において、物品90は、450℃で約10時間の持続時間の間、約41質量%のNaNO
3及び59質量%のKNO
3を含む強化用浴中に沈漬され、DOL>80μm及び300MPa以下の最大圧縮応力を有する圧縮応力領域50を得る(例えば、約0.8〜1mmの厚さを有する物品90について)。別の例では、強化用浴は、約65質量%のNaNO
3及び35質量%のKNO
3を含み、460℃で保持され、かつ、沈漬工程は、約150μm以上のDOLとともに約160MPa以下の最大圧縮応力を有する圧縮応力領域50を発達させるように、約40〜50時間の間行われる(例えば、約0.8mmの厚さを有する物品90について)。
【0047】
さらなる態様によれば、そのエッジ及び隅部の近傍の引張応力を最小限に抑える、アルミノケイ酸塩ガラス組成物及び約0.8〜1mmの厚さを有する、圧縮応力領域50を物品90内に発達させるためのイオン交換浴及び沈漬工程の好ましい条件の範囲は、約440℃〜470℃の温度で保持された、それぞれ、約40〜55%のNaNO
3及び60〜45%のKNO
3を有する浴を含む。好ましくは、浴温は、450℃〜460℃に設定され、沈漬持続時間は約8〜10時間である。より高いDOLレベルを含む強化された物品100の用途では、浴内のより高いNaNO
3レベルは、好ましくは、より長い浸漬持続時間で用いられるはずである。例えば、以下の被毒レベル及び浸漬持続時間が120±25μm、170±25μm、及び220±25μmのDOLの生成に用いられうる:それぞれ、45〜55%のNaNO
3、52〜62%のNaNO
3、及び58〜68%のNaNO
3、並びに、12〜50時間、40〜100時間、及び80〜200時間の浸漬持続時間。約180μmを上回るDOL値は、好ましくは、過剰のイオン交換持続時間を回避するために、例えば、約0.9mm〜1.3mmなど、0.9mmを上回る厚さを有するガラス物品90を用いて、得られるであろう。同様に、200μmを上回るDOL値は、好ましくは、過剰に長いイオン交換持続時間を回避するために、例えば、約1mm〜1.3mmなど、1mmを上回る厚さを有するガラス物品90について得られるべきである。より高いDOLを目標とする場合には、より高濃度のNaNO
3が好ましい。例えば、ガラス物品におけるより高いDOLは、破砕の条件、すなわち、破砕を誘起する条件におけるガラス物品の多数の小片への破壊に関連した安全性の懸念を回避するために、幾つかの態様において有用である。
【0048】
約0.3〜0.8mmの厚さを有するアルミノケイ酸塩ガラス物品90については、DOL>60μmは、450℃の温度で約5.5〜15時間の沈漬持続時間、保持される、40〜60質量%の範囲のNaNO
3の強化用浴組成物(残余部分をKNO
3とする)を用いて達成されうる。好ましくは、沈漬持続時間は約6〜10時間であり、強化用浴は、44〜54質量%の範囲のNaNO
3の組成(残余部分をKNO
3とする)で保持される。
【0049】
かなりの量のP
2O
5を有するアルミノケイ酸塩ガラスを含む物品90の実施形態については、強化用浴は、同様の圧縮応力領域50を発達させるために、幾分低い温度で保持されうる。例えば、強化用浴は、先に概説した範囲の上限が保持されたまま、380℃程度の低温で保持されつつ、同様の結果を有しうる。さらなる態様では、物品90はリチウムを含むガラス組成物を有してよく、同様の圧縮応力領域50を生成するために、かなり低い温度プロファイルが用いられうる。これらの態様では、強化用浴は、約350℃〜約500℃、好ましくは約380℃〜約480℃の範囲の温度で保持される。これらの態様についての沈漬時間は、約0.25時間〜約50時間、より好ましくは、約0.5〜約25時間の範囲である。
【0050】
図2を参照すると、2つの強化された物品の厚さを通じた応力の概略的な模擬プロファイルが提供されている。「A1」で指定されたプロファイルは、460℃で約40〜50時間の持続時間、約65%のNaNO
3及び約35%のKNO
3(質量による)を有する強化用浴内でのイオン交換沈漬によって発達させた圧縮応力領域50を有するガラス組成物を有する物品90を含む、本開示のある態様に従った強化されたガラス物品に相当する。A1プロファイルは、約160MPaの最大圧縮応力及び約160μmのDOLを実証している。対照的に、「C1」で指定されたプロファイルは、約50μmのDOLとともに900MPaの圧縮応力レベルまでイオン交換処理された、高いCSレベル及び低いDOLを有する、通常の強化されたガラス物品に相当する。
【0051】
図2に示されるA1プロファイルを示す強化された物品は、C1プロファイルを有する物品と比較して、その隅部及びエッジの実質的に近傍における最大引張応力レベルが著しく低下している。この効果は、
図3A及び4によって実証されている。
図3Aを参照すると、A1の応力プロファイル(
図2参照)を有する強化された物品100aの断面図が示されている。図示されるように、強化された物品100aは、主面12、14、ファセット面12a、14a及び側面24を含む。エッジ42及び44は、それぞれ、側面24とファセット面12a、14aとの間に画成される。このように、側面24、主面12、14、及び/又はファセット面12a、14aは、物品100aの隅部(図示せず)の1つ以上において、面取り部を効果的に画成しうる。これらの面取りされた隅部は、幾何学に関連した応力集中レベルを低下させることによって、隅部、エッジ42、44及び側面24の近傍の最大主応力(張力下で)のある程度の低下をもたらす役割を果たすことができる。
【0052】
図3Aにおいて、点「X1」及び「X2」は、物品の側面24から物品のバルク内への経路を定める。
図4を参照すると、A1及びC1のプロファイル(
図2参照)を有する物品についての点X1と点X2との間の最大引張応力(MPa)の概略的なプロットが見られる。
図4に示されるように、X1〜X2の経路における最大引張応力は、C1プロファイルを有する物品と比較して、A1プロファイルを有する物品において著しく低下する(すなわち、約150MPaに対し約30MPa)。
【0053】
強化された物品100及び100aの幾つかの態様では(
図1及び3A参照)、エッジ及び隅部(例えば、エッジ42、44及び隅部32、34)は、フィレット(例えば、特定の半径に丸められている)、又は、2つ以上の曲率半径を有する別の湾曲形状によって画成されうる。幾つかの実施態様において、強化された物品100bに用いられる一又は複数のフィレットは、物品の厚さの約5%〜約50%の半径を有する(例えば、
図1に示される物品90の厚さ54を参照)。他の実施態様では、強化された物品100bに用いられる一又は複数の湾曲形状は、各半径が物品の厚さの約5%〜約100%である、複数の曲率半径を有する。
【0054】
図3Bを参照すると、丸い外形(例えば、フィレット)を有するエッジ42a、44aを伴った強化された物品100bが示されている。加えて、
図3Bに示される強化された物品100bは、主面12とエッジ42aとの間に画成されたファセット面12aを含む。したがって、
図3Bに示される強化された物品100bは、このような幾何学的特徴を欠いた強化された物品(例えば、鋭い隅部及びエッジを有する強化された物品)と比較して、これらのエッジの近傍に、より低い最大引張応力を示すように構成される。
【0055】
再び
図3Bを参照すると、点「X1」及び「X2」は、強化された物品100bの側面24から物品のバルク内への経路を定める。最大応力レベルは、このような幾何学的特徴を欠いた強化された物品と比較して、面取りされた表面に加えてフィレットを有する、
図3Bに示される物品100bの点X1とX2との間にあると推定されうる。
図5において、最大引張応力(MPa)は、図において「A3」と指定された、
図3Bに示されるフィレットを有する物品100bの点X1と点X2の間にあると推定される。同図において、図において「A2」と指定された、より鋭いエッジ及び隅部(例えば、
図3Aに示される物品100と比較して)を有するファセット面を伴った物品について、最大引張応力(MPa)が推定される。
図5に示される模擬的応力プロファイルの発達に用いられる物品A2及びA3は、約900MPaの圧縮応力レベル及び約75μmのDOLを有する、イオン交換プロセスに従って発達させた、同一の圧縮応力領域50を有すると仮定したことに留意されたい。
【0056】
図5に示されるように、A3試料についてのX1〜X2の経路における最大引張応力プロファイルは、フィレットを伴わない隅部及びエッジの組合せを有する強化された物品A2と比較して、フィレットを伴ったエッジ及び隅部を有する強化された物品の最大主応力(張力下で)の全体的な低下を実証している。このような効果は、
図5に示される推定データの展開に用いられる圧縮応力領域とは異なる圧縮応力領域を有する物品について予期されることも理解されるべきである。したがって、面取り部、フィレット又は別の湾曲形状を示すエッジ及び隅部を本開示の強化された物品に用いて、圧縮応力領域50の利益をさらに増加させることができる。ある特定の態様では、より高い表面圧縮応力レベル(例えば、エッジ及び隅部の近傍に材料成長をもたらしうる、圧縮応力及びDOLレベル)を有する圧縮応力領域50を採用する強化された物品100は、そうでなければ表面材料成長に関連して発達したであろうこれらのエッジ及び隅部の近傍における引張応力レベルをオフセットするために、面取り部、フィレット又は別の湾曲形状を伴って調製されうる。
【0057】
図3C〜3Eに示されるように、1つ以上のフィレットを伴ったエッジ及び/又は隅部を有する強化された物品100bのさまざまな実施態様が示されている。
図3Cでは、エッジ42a及び44aは、中間の曲率半径(例えば、物品90の厚さ54の5%〜50%)を有するフィレットを示している。
図3D及び3Eでは、エッジ42a及び44aは、それぞれ、物品90の厚さ54の約5%及び約50%の曲率半径を伴ったフィレットを有する。フィレットを有するエッジ42a及び44aを伴った強化された物品100bのこれらの描写は、典型例である。複数の側面、エッジ及び隅部を含む物品90の形状に応じて、1つ以上のフィレットを使用して、これらの特徴の近傍において、張力下における最大主応力を低下させることができる。2以上のフィレットを含む強化された物品100bは、この場合も、物品90の形状及びフィレットの近傍における所望される引張応力の低下に応じて、これらのフィレットの各々が同一又は異なる半径を有するように構成されうることもまた理解されるべきである。
【0058】
図3Fを参照すると、2つ以上の曲率半径を伴った湾曲形状を有するエッジ42b、44bを伴った、強化された物品が示されている。このような強化された物品100bのある特定の実施態様では、エッジ42b、44bの形状は、数学的スプライン関数に当てはめられうる;その結果として、エッジ42b、44bはスプライン様の形状を有しうる。より概略的には、エッジ42b、44bは、各々が物品90の厚さの約5%〜約100%である、2つ以上の曲率半径値を有しうる。
図3Fに示されるように、例えば、主面12、14のごく近傍の移行領域は、物品の厚さに近づく大きい曲率半径を有することは明白である。複数の側面、エッジ及び隅部を含む物品90の形状は、これらの特徴の近傍において、張力下における最大主応力を低下させるように、2つ以上の曲率半径値を伴った湾曲形状及び外形を有するエッジ及び/又は隅部を伴った、強化された物品100bを構成する要因でありうることもまた理解されるべきである。このような湾曲形状を2つ以上含む強化された物品100bが、この場合も、物品90の全体的な形状及びこれらの特徴の近傍における所望される引張応力の低下に応じて、これらの湾曲形状の各々が略同一又は異なる形状を有するように構成されうることもまた理解されるべきである。
【0059】
本開示の別の態様によれば、複数の圧縮応力領域を伴った、強化された物品が提供される。複数の応力領域は、実施形態に従って、示差的なイオン交換処理条件を通じて調製されうる。イオン交換プロセスは、概して、1つ以上のイオン交換工程を含み、その幾つかは、1つ以上の強化用浴への沈漬の間の物品の他の領域のマスキングを通じて、エッジ及び隅部を含む、高い引張応力の発達の影響を名目上(nominally)受けやすい物品の顕著な幾何学的特徴を、目標とすることができる。複数の強化用浴を使用する示差的なイオン交換プロセスについては、浴は、最終的な強化された物品に所望される、望ましい示差的な応力プロファイルに応じて、同じ組成を有してよく、あるいは、異なる組成を用いてもよい。示差的なイオン交換プロセスによって生じた圧縮応力領域は、物品のエッジ及び隅部(及び、他の顕著な幾何学的特徴)の近傍に見られる最大引張応力を低下させ、最小限に抑える役割を果たし、したがって、それらの相対強度及び物品の全体的な信頼性を改善する。
【0060】
再び
図1、1A及び1Bを参照すると、複数の圧縮応力領域を伴った強化された物品100cが提供される。強化された物品100c及び物品100に用いられる同様に番号付けされた要素は、この開示において特に断りのない限り、同一又は同様の構成を有する。一態様において、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物、複数の主面12、14、エッジ42、44、隅部32、及び厚さ54を有する物品90を含む、強化された物品100cが提供される。強化された物品100cは、主面12、14のうちの一方から物品内の第1の選択された深さ52まで延在する主圧縮応力領域50を含む。ある特定の実施態様では、主圧縮応力領域50の第1の選択された深さ52は、主面12、14の真下の物品90の容積内で実質的に一定である。このように、主圧縮応力領域50は、主面12、14の真下に、側面22及び24へと実質的に延在しうる。他の態様では、主圧縮応力領域50は、概して、主面12、14の真下に、側面22、24の方に向かって延在しうるが、それらと同一平面にはない。
【0061】
再び
図1、1A及び1Bを参照すると、物品100cはさらに、エッジ42、44及び/又は隅部32、34の各々から物品内の第2の選択された深さ62まで延在する、1つ以上のエッジ圧縮応力領域60を物品内に含む(
図1A及び1B参照)。
図1A及び1Bに示されるように、エッジ圧縮応力領域60は、該エッジ圧縮応力領域60が物品90の重心の方に向かって延在するように、側面22、24からの実質的に一定の第2の選択された深さ62を有しうる。他の実施態様では、第2の選択された深さ62は、エッジ圧縮応力領域60の生成に用いられうるさまざまなプロセスを反映して(例えば、主面12、14のすべて又は一部分をマスキングし、1つ以上の側面22、24を露出して、物品90を沈漬する、イオン交換プロセスによって)、物品90内で変動しうる。物品90内の領域は、それぞれ、主及びエッジ圧縮応力領域50及び60の両方の影響を受ける圧縮応力を有する、重なり合う容積領域を有しうることもまた理解されるべきである。
【0062】
強化された物品100cの特定の態様では、主圧縮応力領域50の最大圧縮応力は約700MPa以上であり、第1の選択された深さ52は、物品の厚さの約1%〜10%である。強化された物品100c(すなわち、主及びエッジ圧縮応力領域の両方を含む強化された物品)の他の実施態様では、主圧縮応力領域50の最大圧縮応力は、約500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、800MPa以上、850MPa以上、900MPa以上、950MPa以上、及びさらには最大で1000MPa又はそれ以上である。このような強化された物品100cはまた、約400MPa以下の最大圧縮応力を有するエッジ圧縮応力領域60も有しうる。ある特定の態様では、エッジ圧縮応力領域60は、約500MPa以下、450MPa以下、400MPa以下、350MPa以下、300MPa以下、250MPa以下、200MPa以下、150MPa以下、及び100MPa以下の最大圧縮応力を有する。強化された物品100cの他の実施態様は、主圧縮応力領域50における圧縮応力レベルに匹敵するレベル、例えば、約500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、800MPa以上、850MPa以上、900MPa以上、950MPa以上、及びさらには最大で1000MPa又はそれ以上の最大圧縮応力を有する1つ以上のエッジ圧縮応力領域60を示す。
【0063】
本開示のある態様に従った強化された物品100c内に複数の圧縮応力領域を発達させる典型的なプロセスは、次の工程を含む:(a)物品90(例えば、第1の金属イオンを含むアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物を有する基板)を、第2の金属の少なくとも1つの塩を含む溶融塩浴に浸漬又は沈漬する工程であって、第2の金属のカチオンが第1の金属カチオンより大きい、工程;及び、(b)溶融塩浴に由来する第2の金属のカチオンを、約420℃超かつガラスのアニール点より少なくとも約30℃低い温度でアルカリアルミノケイ酸塩ガラス内の第1の金属カチオンとイオン交換する工程。該イオン交換は、ガラス内に圧縮応力(CS)の領域を発達させるのに十分な持続時間、行われる。これらの工程は、最初に、マスキングされた基板の特定の領域を伴った物品90に行われうる、及び/又は繰り返されうる。マスク又は他のバリア材料を除去又は添加する工程は、イオン交換浴の外部で行われることもまた理解されるべきである。さらには、これらのシーケンス(すなわち、マスキングされていない、あるいは、1つ以上のマスキングされた領域を有する物品を用いて)の各々における塩浴組成物、温度及びイオン交換持続時間を、一定に保持して、あるいは、変動させて、強化された物品内に複数の圧縮応力領域を達成してもよい。全体として、これらの圧縮応力領域は、強化された物品100cのエッジ及び隅部の近傍に見られる最大主応力(張力下で)を最小限に抑え、低下させる役割を果たしうる。
【0064】
強化された物品のエッジ及び隅部の近傍における最大引張応力の低下をもたらすように、さまざまな示差的なイオン交換処理スキームが本開示において予定されている。強化された物品についての用途環境(例えば、高頻度の落下衝撃、屈曲、点接触、摩耗等)に応じて、さまざまな最大圧縮応力レベル及びDOLレベルは、基板のエッジ及び隅部の実質的に近傍において、比較的低い最大引張応力レベルを維持するとともに、物品の特定の領域において有利でありうる。さまざまな用途環境を構成する、例となる示差的なイオン交換処理スキームが
図6A〜6Cに示されている。
【0065】
図6Aを参照すると、ガラス物品を示差的に(すなわち部分的にかつ連続して)化学強化して、物品の曲げ強度と、その主面、エッジ及び隅部の耐衝撃性との良好なバランスを実現する、物品の厚さ、エッジ及び隅部を通じた好ましい応力プロファイルを作り出す方法が示されている。最初に、ガラス物品は切断され、入念に清掃され、次に、物品の一部がバリアで被覆される。バリアは、選択された塩浴に対して不活性な材料(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)コーティング)でできており、ガラス物品の1つ以上の部分に薄いフィルムとして被覆、プリント、及び/又は他の方法で取り付けられうる。被覆されたガラス物品は、次に、第1の温度で所定の持続時間の間、第1の塩浴に浸漬される。ガラス及びガラス物品の被覆されていない部分は、特定の圧縮応力プロファイルへと化学的に強化される。次に、部分的に強化されたガラス物品からバリアが除去される。
【0066】
再び
図6Aを参照すると、この段階で、部分的に強化されたガラス物品は、必要に応じて第2の塩浴内に置かれ、第2の浴温で所定の持続時間の間、浸漬に供される。幾つかの態様では、第2の塩浴組成物、温度及び持続時間は、第1の塩浴組成物、温度及び持続時間と同一でありうる。他の態様では、第2の塩浴組成物、温度及び持続時間のうち1つ以上は、第1の塩浴に関連したパラメータに対して変動しうる。第2の塩浴への随意的な浸漬が完了した後、少なくとも一部にはガラス物品の組成に基づいて選択された加熱処理プロファイルに従って、ガラス物品に随意的なアニール工程が行われうる。例えば、Corning(登録商標)Gorilla Glass(登録商標)組成物を有する、
図6Aに記載される条件に従って強化されたガラス物品は、約510℃〜550℃で約1分〜約5時間、加熱処理されうる。加熱処理を用いて、強化されたガラス物品の最終的に保持される強度と強度の変動性とを制御することができる。
【0067】
図6Bを参照すると、ガラス物品を示差的に化学強化して、物品の曲げ強度と、その主面、エッジ及び隅部の耐衝撃性との良好なバランスを実現する、物品の厚さ、エッジ及び隅部を通じた好ましい応力プロファイルを作り出す方法が示されている。最初に、ガラス物品は切断され、入念に清掃され、次に、物品は、第1の温度で所定の持続時間の間、第1の塩浴内に浸漬される。よって、ガラス物品全体が、設計された圧縮応力プロファイルで、化学的に強化される。
【0068】
再び
図6Bを参照すると、ガラス物品の一部は、次に、バリアで被覆される。バリアは、選択された塩浴組成物に対して不活性な材料でできており、ガラス物品の一部に薄いフィルムとして被覆、プリント、及び/又は他の方法で取り付けられうる。マスキングされたガラス物品は、最終的な設計された圧縮応力プロファイルが物品全体に生じるまで、第2の温度で所定の持続時間、第2の塩浴内に置かれ、ガラス物品のマスキングされていない部分を化学的に強化する。幾つかの態様では、最終的な設計された圧縮応力プロファイルは、物品の主面に関連した圧縮応力プロファイル及びガラス物品の1つ以上のエッジ及び/又は隅部に関連したエッジ圧縮応力プロファイルを含む。幾つかの態様では、第2の塩浴組成物、温度及び持続時間は、第1の塩浴組成物、温度及び持続時間と同一でありうる。他の態様では、第2の塩浴組成物、温度及び持続時間のうち1つ以上は、第1の塩浴に関連したパラメータに対して変動しうる。
【0069】
第2の塩浴への浸漬が
図6Bに示される方法に従って完了した後、バリアは強化されたガラス物品から除去される。次に、随意的なアニール工程が、少なくとも一部にはガラス物品の組成に基づいて選択された加熱処理プロファイルに従って、ガラス物品に行われうる。
図6Bに示されるプロセス条件に関して行われるアニール工程は、
図6Aに示される方法に関した随意的なアニール工程と一致する。例えば、Corning(登録商標)Gorilla Glass(登録商標)組成物を有する、
図6Bに記載される条件に従って強化されたガラス物品は、約510℃〜550℃で約1分〜約5時間、加熱処理されうる。
【0070】
図6Cに示されるように、ガラス物品を示差的に化学強化して、物品の曲げ強度と、その主面、エッジ及び隅部の耐衝撃性との良好なバランスを実現する、物品の厚さ、エッジ及び隅部を通じた好ましい応力プロファイルを作り出す、別の方法が示されている。最初に、ガラス物品は切断され、入念に清掃され、次に、物品の一部がバリアで被覆される。バリアは、選択された塩浴に対して不活性な材料(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)コーティング)でできており、ガラス物品の1つ以上の部分に薄いフィルムとして被覆、プリント、及び/又は他の方法で取り付けられうる。被覆されたガラス物品は、次に、第1の温度で所定の持続時間の間、第1の塩浴に浸漬される。ガラス及びガラス物品の被覆されていない部分は、特定の圧縮応力プロファイルへと化学的に強化される。次に、バリアが部分的に強化されたガラス物品から除去される。
【0071】
再び
図6Cを参照すると、ガラス物品の一部は、次に、バリアで被覆される。バリアは、選択された塩浴組成物に対して不活性な材料でできており、ガラス物品の一部に薄いフィルムとして被覆、プリント、及び/又は他の方法で取り付けられうる。マスキングされたガラス物品は、最終的な設計された圧縮応力プロファイルが物品全体にわたって生じるまで、第2の温度で所定の持続時間、第2の塩浴内に置かれ、ガラス物品のマスキングされていない部分を化学的に強化する。幾つかの態様では、最終的な設計された圧縮応力プロファイルは、物品の主面に関連した圧縮応力プロファイル及びガラス物品の1つ以上のエッジ及び/又は隅部に関連したエッジ圧縮応力プロファイルを含む。幾つかの態様では、第2の塩浴組成物、温度及び持続時間は、第1の塩浴組成物、温度及び持続時間と同一でありうる。他の態様では、第2の塩浴組成物、温度及び持続時間のうち1つ以上は、第1の塩浴に関連したパラメータに対して変動しうる。
【0072】
第2の塩浴への浸漬が
図6Cに示される方法に従って完了した後、バリアは強化されたガラス物品から除去される。次に、少なくとも一部にはガラス物品の組成に基づいて選択された加熱処理プロファイルに従って、ガラス物品に随意的なアニール工程が行われうる。
図6Cに示されるプロセス条件に関連して行われるアニール工程は、
図6A及び6Bに示される方法に関連した、随意的なアニール工程と一致する。
【0073】
本開示のさらなる態様によれば、示差的なイオン交換プロセスを包含する強化された物品(例えば、強化された物品100c)の製造方法が提供される(以後「実施例1」)。この方法はまた、先に述べた
図6Aに示される方法とも一致する。特に、本方法は、複数のイオン交換可能なアルカリ金属イオンを有する、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物を有する物品(例えば、物品90)を提供する工程を含み、該物品はさらに、複数の主面、エッジ及び隅部、並びに厚さによって画成される。本方法はまた、次の工程も含む:各々が、イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数の第1のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む、第1のイオン交換浴を提供する工程、物品のエッジ及び隅部の各々をイオン交換バリア材料でマスキングする工程、第1のイオン交換温度及び持続時間で第1のイオン交換浴内にマスキングされた物品を沈漬させて、主面の1つから物品内の第1の選択された深さまで延在する主圧縮応力領域を形成する工程、及び、物品からバリア材料を除去する工程。加えて、領域における最大圧縮応力は約800MPa以上であり、第1の選択された深さは、物品の厚さの約1%〜10%である。
【0074】
マスキング工程を行わずに前述の方法に従って生成された通常の物品は、物品の厚さが約0.8mmの場合に、約45μmのDOLとともに、その主面において約900MPaの最大圧縮応力を示しうる(以後「比較例」と称される)。このような物品は、約99.4質量%超のKNO
3及び0.6質量%のNaNO
3を有する浴内での420℃の温度で2.1時間のイオン交換を使用して、前述の方法に従って処理されるであろう。この例では、他の前述の実施例と同様に、イオン交換されたガラスは、迅速なイオン交換を促進するために組成物内にある程度のP
2O
5を有する、アルミノケイ酸塩ガラスである。とりわけ、比較例は、
図7Aに示される応力プロファイルに例証されるように、その隅部の近傍において、約240MPaの比較的高い最大引張応力を示すであろう。
【0075】
対照的に、比較例と同じ浴組成物、温度及び持続時間(前段落参照)に従って、特に前述の実施例1の方法に従って生成された(すなわち、側面に特定のマスキングを有する)強化された物品100cは、
図7Bに示される応力プロファイルに例証されるように、その隅部の1つの近傍において、約165MPaの最大引張応力を示す。これは、物品の隅部に見られる最大引張応力のおよそ30%の低下を表している。加えて、このような物品100cは、約45μmのDOLとともに、その主面において約900MPaの最大圧縮応力を示すであろう。物品100cの側面は塩浴に曝露されないことから、物品の側面に沿った圧縮応力は、エッジにおける約316MPaの最大値から側面の中心線に沿った約77MPaの最小値まで変動する。
【0076】
より概略的には、実施例1の方法に従って生成された強化された物品100c(
図1参照)は、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物、複数の主面12、14、エッジ42、44、隅部32、34、及び厚さ54を有する、物品90を含みうる。物品90はまた、主面12、14のうちの一方から物品内の第1の選択された深さ52まで延在する、主圧縮応力領域50、及び、エッジ及び隅部の各々から物品内の第2の選択された深さ62まで延在する、エッジ圧縮応力領域60を含む(
図1A及び1B参照)。主圧縮応力領域50の最大圧縮応力は約800MPa以下であり、第1の選択された深さ52は、物品の厚さの約1%〜10%である。加えて、エッジ圧縮応力領域60の最大圧縮応力は約400MPa以下である。このような強化された物品100cは、その隅部及びエッジの近傍において、約120MPa以下の最大主応力(張力下で)を示しうる。
【0077】
本開示のさらなる態様によれば、示差的なイオン交換プロセスを包含する強化された物品(例えば、強化された物品100c)の製造方法が提供される(以後「実施例2」)。この方法は、先に述べた
図6Bに示される方法とも一致する。本方法は、複数のイオン交換可能なアルカリ金属イオンを有する、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物を有する物品(例えば、物品90)を提供する工程を含み、該物品は、複数の主面、エッジ及び隅部、並びに厚さによってさらに画成される。本方法はまた、各々が、イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む、第1のイオン交換浴、及び、各々が、イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む、第2のイオン交換浴を提供する工程も含む。
【0078】
実施例2の方法は、マスキングされていない物品を第1のイオン交換温度及び持続時間で第1のイオン交換浴に沈漬させて、主面の1つから物品内の第1の選択された深さまで延在する初期圧縮応力領域を形成する工程をさらに含む。次に、物品を第1のイオン交換浴から取り出す。次に、本方法は、次の工程を含む:初期圧縮応力領域を有する物品のエッジ及び隅部の各々をイオン交換バリア材料でマスキングする工程、第2のイオン交換温度及び持続時間で第2のイオン交換浴内にマスキングされた物品を沈漬させて、主面の1つから物品内の第2の選択された深さまで延在する主圧縮応力領域を形成する工程、及び、第2のイオン交換浴への沈漬後に、物品からバリア材料を除去する工程。加えて、主圧縮応力領域の最大圧縮応力は約700MPa以上であり、第2の選択された深さは、物品の厚さの約1%〜10%である。
【0079】
比較例と同じ浴組成、温度及び持続時間に従い、前述の実施例2の方法に従って生成された強化された物品100cは、
図7Cに示される応力プロファイルに例証されるように、119MPaの最大引張応力を示す。これは、比較例の方法に従って調製された物品と比較して、物品の隅部に見られる最大引張応力の著しい低下を表している(すなわち、約240MPa(
図7A参照)に対し119MPa)。加えて、実施例2の方法に従って生成された強化された物品100cは、約812MPaの主面における最大圧縮応力、及び、その主面のすべてから約170μmの圧縮応力層の深さ(DOL)を示している。要するに、実施例2の方法に従って調製された物品100cは、側面に沿って深いDOLとともに、上部及び底部主面上に、有利には高度の表面圧縮を示すと同時に、物品の隅部における最大引張応力を著しく低下させる。
【0080】
より概略的には、実施例2の方法に従って生成された強化された物品100cは、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物、複数の主面12、14、エッジ42、44、隅部32、34、及び厚さ54を有する、物品90を含みうる。物品90はまた、主面12、14のうちの1つから物品内の第1の選択された深さ52まで延在する、主圧縮応力領域50;及び、エッジ及び隅部の各々から物品内の第2の選択された深さ62まで延在する、エッジ圧縮応力領域60(
図1A及び1B参照)を含む。主圧縮応力領域50の最大圧縮応力は約700MPa以下であり、第1の選択された深さは、物品の厚さの約1%〜10%である。加えて、エッジ圧縮応力領域60の最大圧縮応力は約500MPa以下である。
【0081】
別の実施形態では、示差的なイオン交換プロセスを包含する強化された物品(例えば、強化された物品100c)の製造方法が提供される(以後「実施例3」)。本方法は、次の工程を含む:複数のイオン交換可能なアルカリ金属イオンを有する、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物を有する物品(例えば、物品90)を提供する工程であって、該物品が、複数の主面、エッジ及び隅部、並びに厚さによってさらに画成される、工程。本方法はまた、次の工程も含む:各々が、イオン交換可能なアルカリ金属イオン(例えば、Na
+イオン)のサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオン(例えば、K
+イオン)を含む第1のイオン交換浴と、各々が、イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む第2のイオン交換浴とを提供する工程。本方法はさらに次の工程も含む:物品のエッジ及び隅部の各々をイオン交換バリア材料(例えば、ITO層)でマスキングする工程;第1のイオン交換温度及び持続時間で第1のイオン交換浴内にマスキングされた物品を沈漬させて、主面の1つから物品内の第1の選択された深さまで延在する主圧縮応力領域を形成する工程、及び、第1のイオン交換浴から物品を取り出した後に、主圧縮応力領域を有する物品からバリア材料を除去する工程。
【0082】
実施例3の方法は、次の工程をさらに含む:主圧縮応力領域を有する物品(例えば、物品90)の主面をイオン交換バリア材料でマスキングする工程;マスキングされた主面を有する物品全体を、第2のイオン交換温度及び持続時間で第2のイオン交換浴内に沈漬させて、物品の隅部及びエッジの各々から物品内の第2の選択された深さまで延在するエッジ圧縮応力領域を形成する工程;及び、第2のイオン交換浴への沈漬後に、物品からバリア材料を除去する工程。加えて、主圧縮応力領域の最大圧縮応力は約700MPa以上であり、第1の選択された深さは、物品の厚さの少なくとも10%である。
【0083】
比較例と同じ浴組成、温度及び持続時間に従い、前述の実施例3の方法に従って生成された強化された物品100cは、
図7Dに示される応力プロファイルに例証されるように、161MPaの最大引張応力を示す。これは、比較例の方法に従って調製された物品と比較して、物品の隅部に見られる最大引張応力の著しい低下を表している(すなわち、約240MPa(
図7A参照)に対し161MPa)。加えて、実施例3の方法に従って生成された強化された物品100cは、約800MPaの物品の主面における最大圧縮応力、及び約45μmの圧縮応力層の深さ(DOL)を示す。さらには、実施例3の方法に従って調製された物品100cは、約1000MPaの物品の側面における最大圧縮応力を示す。要するに、実施例3の方法に従って生成された物品100cは、その側面に沿って、上部及び底部主面上に、有利には高度の表面圧縮を示すと同時に、物品の隅部における最大引張応力を著しく低下させる。
【0084】
より概略的には、実施例3の方法に従って生成された強化された物品100cは、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物、複数の主面12、14、エッジ42、44、隅部32、34、及び厚さ54を有する、物品90を含みうる。物品90はまた、主面12、14のうちの1つから物品90内の第1の選択された深さ52まで延在する、主圧縮応力領域50;及び、エッジ及び隅部の各々から物品内の第2の選択された深さ62まで延在する、エッジ圧縮応力領域60も含む。主圧縮応力領域の最大圧縮応力は約700MPa以下であり、第1の選択された深さは、物品の厚さの約1%〜10%である。加えて、エッジ圧縮応力領域の最大圧縮応力は約700MPa以上である。
【0085】
実施例1〜3によって例示される前述の方法に従って生成された強化された物品100cは、約0.4mm〜約1mmの範囲の厚さ54を有する、ガラス組成物を有する実質的に透明な基板を有する物品90を含みうる。先に概説したように(
図3B参照)、強化された物品100cのエッジ及び隅部は、例えば、0.1mm以上の平均半径において、フィレット様又はスプライン様の外形によっても画成されうる。
【0086】
幾つかの態様では、実施例1〜3で詳しく述べた方法に従って生成された強化された物品100cは、その隅部(例えば、隅部32、34)及びエッジ(例えば、エッジ42、44)のうちの1つ以上の実質的に近傍における、200MPa以下の最大引張応力によって定められる。幾つかの実施形態では、物品100cのエッジ及び隅部の実質的に近傍における最大引張応力は、100MPaを超えない。
【0087】
強化された物品100cの製造のための実施例1〜3で詳しく述べた前述の方法に関して、適切なイオン交換温度、持続時間及び強化された浴組成物は、強化された物品100の開発に用いられる方法に関連して先に概説した本開示から導かれうる。例えば、前述の方法は、約3〜15時間に設定されたイオン交換持続時間、及び100%の溶融KNO
3(質量による)を含む浴組成とともに、約400℃〜450℃の範囲のイオン交換温度を採用しうる。別の例では、前述の方法は、約30分〜約5時間に設定されたイオン交換持続時間、並びに、97〜99%の溶融KNO
3及び1〜3%の溶融KSO
4(質量による)を含む浴組成とともに、約460℃〜520℃の範囲の第2のイオン交換温度を採用しうる。
【0088】
本明細書に開示される強化された物品は、ディスプレイを備えた物品(又は、ディスプレイ物品)(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む家庭用電化製品)、建築用物品、輸送用物品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶等)、電気器具物品、又は、ある程度の透明性、耐擦傷性、耐摩耗性又はそれらの組合せを必要とする物品など、別の物品に導入されてもよい。本明細書に開示される強化された物品のいずれかを導入する、例となる物品が、
図8A及び8Bに示されている。特に、
図8A及び8Bは、前面804、背面816、及び側面808を有する筐体802を含む消費者向け電子デバイス800;少なくとも部分的に又は全体的に筐体内に存在し、かつ、該筐体の前面又はそれに隣接して、少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイ810を含む、電気部品(図示せず);並びに、ディスプレイ全体を覆うように筐体の前面又はその上に存在するカバー基板812を示している。幾つかの実施形態では、カバー基板812は、本明細書に開示される強化された物品のいずれかを含みうる。
【0089】
強度が増強された隅部及びエッジを有する強化された物品を生成するための前述の方法は、典型例であることが理解されるべきである。例えば、前述の原理を用いて、物品の予期される用途環境に応じて決まる、物品の特定の隅部、側面、エッジ及び主面をマスキングする工程を含む、示差的なイオン交換処理を通じて、物品のさまざまな位置における圧縮応力の量及びDOLレベルを最適化することができる。同時に、これらの特徴の実質的に近傍における最大引張応力の低下によって、その隅部、エッジ及び側面を含む、物品の顕著な幾何学的特徴についての増強された強度を維持しつつ、これらの圧縮応力及びDOL特性がこれらの物品に得られうる。
【0090】
特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示の物品及び方法に対してさまざまな修正及び変形がなされうることは、当業者にとって明白であろう。
【0091】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0092】
実施形態1
複数の主面、複数の側部エッジ、及び厚さを有する、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック、
前記主面の1つから物品内の第1の選択された深さまで延在する、圧縮応力領域、
前記主面及び前記エッジから200μmの深さに位置する境界から前記物品の重心まで延在する中央領域、及び
前記主面及び側部エッジ間に前記境界まで延在する外側領域
を備えた、強化された物品であって、
前記外側領域内の張力下での最大主応力が、前記中央領域内の張力下での最大主応力の2倍以下である、物品。
【0093】
実施形態2
前記圧縮応力領域の最大圧縮応力が約400MPa以下であり、前記第1の選択された深さが、前記物品の前記厚さの少なくとも8%であることを特徴とする、実施形態1に記載の物品。
【0094】
実施形態3
前記圧縮応力領域が、イオン交換プロセスから形成され、かつ、複数の交換されたアルカリ金属イオンを含むことを特徴とする、実施形態1又は2に記載の物品。
【0095】
実施形態4
前記物品が、ガラス組成物を有する実質的に透明な基板を含み、前記厚さが約0.4mm〜1mmの範囲にあることを特徴とする、実施形態1〜3のいずれかに記載の物品。
【0096】
実施形態5
前記主面及び側部エッジが複数の隅部を画成し、さらに、前記圧縮応力領域を形成するプロセスから生じる前記側部エッジ及び隅部の実質的に近傍における最大引張応力が、200MPaを超えないことを特徴とする、実施形態1〜4のいずれかに記載の物品。
【0097】
実施形態6
前記主面及び側部エッジが複数の隅部を画成し、さらに、前記圧縮応力領域を形成するプロセスから生じる前記側部エッジ及び隅部の実質的に近傍における最大引張応力が、100MPaを超えないことを特徴とする、実施形態1〜4のいずれかに記載の物品。
【0098】
実施形態7
前記主面及び側部エッジが複数の隅部を画成し、さらに、前記隅部が、面取り部、前記厚さの約5%〜50%の平均半径を有するフィレット、又は前記厚さの約5%〜100%の少なくとも1つの曲率半径を有する湾曲形状によって画成されることを特徴とする、実施形態1に記載の物品。
【0099】
実施形態8
複数の主面、複数の側部エッジ、及び厚さを有する、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック、
前記主面の1つから物品内の第1の選択された深さまで延在する主圧縮応力領域、
前記主面及び前記エッジから200μmの深さに位置する境界から前記物品の重心まで延在する中央領域、
前記物品の前記主面及び側部エッジ間に前記境界まで延在する外側領域、及び
前記側部エッジの各々から前記物品内の第2の選択された深さまで延在する、エッジ圧縮応力領域
を備えた、強化された物品であって、
前記主圧縮応力領域の最大圧縮応力が約700MPa以上であり、前記第1の選択された深さが、前記物品の前記厚さの約1%〜10%であり、
さらに、前記外側領域内の張力下での最大主応力が、前記中央領域内の張力下での最大主応力の2倍以下である、
物品。
【0100】
実施形態9
前記エッジ圧縮応力領域の前記最大圧縮応力が約400MPa以下であることを特徴とする、実施形態8に記載の物品。
【0101】
実施形態10
前記エッジ圧縮応力領域の前記最大圧縮応力が約500MPa以下であることを特徴とする、実施形態8に記載の物品。
【0102】
実施形態11
前記エッジ圧縮応力領域の前記最大圧縮応力が約700MPa以上であることを特徴とする、実施形態8に記載の物品。
【0103】
実施形態12
前記圧縮応力領域が、1つ以上のイオン交換プロセスから形成され、かつ、複数の交換されたアルカリ金属イオンを含むことを特徴とする、実施形態8〜11のいずれかに記載の物品。
【0104】
実施形態13
前記物品が、ガラス組成物を有する実質的に透明な基板を含み、前記厚さが、約0.4mm〜1mmの範囲にあることを特徴とする、実施形態8〜12のいずれかに記載の物品。
【0105】
実施形態14
前記主面及び側部エッジが複数の隅部を画成し、さらに、前記圧縮応力領域を形成するプロセスから生じる前記側部エッジ及び隅部の実質的に近傍における最大引張応力が、200MPaを超えないことを特徴とする、実施形態8〜13のいずれかに記載の物品。
【0106】
実施形態15
前記主面及び側部エッジが複数の隅部を画成し、さらに、前記圧縮応力領域を形成するプロセスから生じる前記側部エッジ及び隅部の実質的に近傍における最大引張応力が、100MPaを超えないことを特徴とする、実施形態8〜13のいずれかに記載の物品。
【0107】
実施形態16
前記主面及び側部エッジが複数の隅部を画成し、さらに、前記隅部が、面取り部、前記厚さの約5%〜50%の平均半径を有するフィレット、又は前記厚さの約5%〜100%の少なくとも1つの曲率半径を有する湾曲形状によって画成されることを特徴とする、実施形態8〜15のいずれかに記載の物品。
【0108】
実施形態17
複数のイオン交換可能なアルカリ金属イオンを有する、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物を有する物品であって、さらに、複数の主面、複数の側部エッジ、及び厚さによって画成される、物品を提供する工程、
各々が、前記イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む、第1のイオン交換浴を提供する工程、及び
第1のイオン交換温度及び持続時間で前記第1のイオン交換浴内に前記物品を沈漬させて、前記主面の1つから前記物品内の第1の選択された深さまで延在する圧縮応力領域を形成する工程
を含む、強化された物品の製造方法において、
前記物品がさらに、(a)前記主面及び前記エッジから200μmの深さに位置する境界から前記物品の重心まで延在する中央領域、及び(b)前記物品の前記主面及び側部エッジ間に前記境界まで延在する外側領域を含み、かつ
さらに、前記外側領域内の張力下での最大主応力が、前記中央領域内の張力下での最大主応力の2倍以下である、
方法。
【0109】
実施形態18
前記圧縮応力領域の最大圧縮応力が約400MPa以下であり、前記第1の選択された深さが、前記物品の前記厚さの少なくとも8%であることを特徴とする、実施形態17に記載の方法。
【0110】
実施形態19
前記圧縮領域の最大圧縮応力が約200MPa以下であることを特徴とする、実施形態17に記載の方法。
【0111】
実施形態20
前記物品が、ガラス組成物を有する実質的に透明な基板を含み、前記厚さが約0.4mm〜1mmの範囲にあることを特徴とする、実施形態17〜19のいずれかに記載の方法。
【0112】
実施形態21
前記第1のイオン交換温度が約400℃〜450℃の範囲にあり、前記第1のイオン交換持続時間が約3〜15時間であることを特徴とする、実施形態17〜20のいずれかに記載の方法。
【0113】
実施形態22
複数のイオン交換可能なアルカリ金属イオンを有する、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物を有する物品であって、さらに、複数の主面、複数の側部エッジ、及び厚さによって画成される、物品を提供する工程、
各々が、前記イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む、第1のイオン交換浴を提供する工程、
前記物品の前記側部エッジの各々をイオン交換バリア材料でマスキングする工程、
第1のイオン交換温度及び持続時間で前記第1のイオン交換浴内に前記マスキングされた物品を沈漬させて、前記主面の1つから前記物品内の第1の選択された深さまで延在する主圧縮応力領域を形成する工程、及び
前記物品から前記バリア材料を除去する工程
を含む、強化された物品の形成方法において、
前記物品がさらに、(a)前記主面及び前記エッジから200μmの深さに位置する境界から前記物品の重心まで延在する中央領域、及び(b)前記物品の前記主面及び側部エッジ間に前記境界まで延在する外側領域を含み、かつ
さらに、前記外側領域内の張力下での最大主応力が、前記中央領域内の張力下での最大主応力の2倍以下である、
方法。
【0114】
実施形態23
前記主圧縮応力領域の最大圧縮応力が約800MPa以上であり、前記第1の選択された深さが、前記物品の前記厚さの約1%〜10%であることを特徴とする、実施形態22に記載の方法。
【0115】
実施形態24
前記物品が、ガラス組成物を有する実質的に透明な基板を含み、前記厚さが約0.4mm〜1mmの範囲にあることを特徴とする、実施形態22又は23に記載の方法。
【0116】
実施形態25
前記第1のイオン交換温度が約460℃〜520℃の範囲にあり、前記第1のイオン交換持続時間が約30分〜約5時間であることを特徴とする、実施形態22〜24のいずれかに記載の方法。
【0117】
実施形態26
複数のイオン交換可能なアルカリ金属イオンを有する、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物を有する物品であって、さらに、複数の主面、複数の側部エッジ、及び厚さによって画成される、物品を提供する工程、
各々が、前記イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む、第1のイオン交換浴を提供する工程、
各々が、前記イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む、第2のイオン交換浴を提供する工程、
第1のイオン交換温度及び持続時間で前記第1のイオン交換浴内に前記物品を沈漬させて、前記主面の1つから前記物品内の第1の選択された深さまで延在する初期圧縮応力領域を形成する工程、
前記初期圧縮応力領域を有する前記物品の前記側部エッジの各々をイオン交換バリア材料でマスキングする工程、
第2のイオン交換温度及び持続時間で前記第2のイオン交換浴内に前記マスキングされた物品を沈漬させて、前記主面の1つから前記物品内の第2の選択された深さまで延在する主圧縮領域を形成する工程、及び
前記物品から前記バリア材料を除去する工程
を含む、強化された物品の形成方法において、
前記物品がさらに、(a)前記主面及び前記エッジから200μmの深さに位置する境界から前記物品の重心まで延在する中央領域、及び(b)前記物品の前記主面及び側部エッジ間に前記境界まで延在する外側領域を含み、かつ
さらに、前記外側領域内の張力下での最大主応力が、前記中央領域内の張力下での最大主応力の2倍以下である、
方法。
【0118】
実施形態27
前記主圧縮応力領域の最大圧縮応力が約700MPa以上であり、前記第2の選択された深さが、前記物品の前記厚さの約1%〜10%であることを特徴とする、実施形態26に記載の方法。
【0119】
実施形態28
前記物品が、ガラス組成物を有する実質的に透明な基板を含み、前記厚さが、約0.4mm〜1mmの範囲にあることを特徴とする、実施形態26又は27に記載の方法。
【0120】
実施形態29
前記第1のイオン交換温度が約400℃〜450℃の範囲にあり、前記第1のイオン交換持続時間が約3〜15時間であり、さらに、前記第1のイオン交換浴が、100%の溶融KNO
3(質量による)を含むことを特徴とする、実施形態26〜28のいずれかに記載の方法。
【0121】
実施形態30
前記第2のイオン交換温度が約460℃〜520℃の範囲にあり、前記第2のイオン交換持続時間が、約30分〜約5時間であり、さらに、前記第2のイオン交換浴が、97〜99%の溶融KNO
3及び1〜3%の溶融KSO
4(質量による)を含むことを特徴とする、実施形態26〜29のいずれかに記載の方法。
【0122】
実施形態31
複数のイオン交換可能なアルカリ金属イオンを有する、ガラス、ガラスセラミック、又はセラミック組成物を有する物品であって、さらに、複数の主面、複数の側部エッジ、及び厚さによって画成される、物品を提供する工程、
各々が、前記イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む、第1のイオン交換浴を提供する工程、
各々が、前記イオン交換可能なアルカリ金属イオンのサイズよりも大きいサイズを有する、複数のイオン交換用アルカリ金属イオンを含む、第2のイオン交換浴を提供する工程、
前記物品の前記側部エッジの各々をイオン交換バリア材料でマスキングする工程、
第1のイオン交換温度及び持続時間で前記第1のイオン交換浴内に前記マスキングされた物品を沈漬させて、前記主面の1つから前記物品内の第1の選択された深さまで延在する主圧縮応力領域を形成する工程、
前記主圧縮応力領域を有する前記物品から前記バリア材料を除去する工程、
前記主圧縮応力領域を有する前記物品の前記主面をイオン交換バリア材料でマスキングする工程、
第2のイオン交換温度及び持続時間で前記第2のイオン交換浴内に前記マスキングされた主面を有する前記物品を沈漬させて、前記エッジ及び隅部の各々から前記物品内の第2の選択された深さまで延在するエッジ圧縮応力領域を形成する工程、及び
前記エッジ圧縮応力領域を有する前記物品から前記バリア材料を除去する工程
を含む、強化された物品の形成方法において、
前記物品がさらに、(a)前記主面及び前記エッジから200μmの深さに位置する境界から前記物品の重心まで延在する中央領域、及び(b)前記物品の前記主面及び側部エッジ間に前記境界まで延在する外側領域を含み、かつ
さらに、前記外側領域内の張力下での最大主応力が、前記中央領域内の張力下での最大主応力の2倍以下である、
方法。
【0123】
実施形態32
前記主圧縮応力領域の最大圧縮応力が約700MPa以上であり、前記第1の選択された深さが、前記物品の前記厚さの少なくとも10%であることを特徴とする、実施形態31に記載の方法。
【0124】
実施形態33
前記物品が、ガラス組成物を有する実質的に透明な基板を含み、前記厚さが、約0.4mm〜1mmの範囲にあることを特徴とする、実施形態31又は32に記載の方法。
【0125】
実施形態34
前記第1のイオン交換温度が約460℃〜520℃の範囲にあり、前記第1のイオン交換持続時間が約30分〜約5時間であり、さらに、前記第1のイオン交換浴が、97〜99%の溶融KNO
3及び1〜3%の溶融KSO
4(質量による)を含むことを特徴とする、実施形態31〜33のいずれかに記載の方法。
【0126】
実施形態35
前記第2のイオン交換温度が約460℃〜520℃の範囲にあり、前記第2のイオン交換持続時間が約30分〜約5時間であり、さらに、前記第2のイオン交換浴が、97〜99%の溶融KNO
3及び1〜3%の溶融KSO
4(質量による)を含むことを特徴とする、実施形態31〜34のいずれかに記載の方法。
【0127】
実施形態36
前面、背面、及び側面を有する筐体、
少なくとも部分的に前記筐体の内部にある電気部品、
前記筐体の前記前面にあるか又は前記前面に隣接したディスプレイ、及び
前記ディスプレイ上に配置されたカバー基板であって、実施形態1に記載の物品を含む、カバー基板
を備えた、デバイス。
【0128】
実施形態37
前面、背面、及び側面を有する筐体、
少なくとも部分的に前記筐体の内部にある電気部品、
前記筐体の前記前面にあるか又は前記前面に隣接したディスプレイ、及び
前記ディスプレイ上に配置されたカバー基板であって、実施形態8に記載の物品を含む、カバー基板
を備えた、デバイス。