(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定領域は、前記搬送ベルト上で前記位置検出装置によって前記錠剤の位置が検出される位置より上流側から、前記搬送ベルト上で前記印刷ヘッドによって前記錠剤に対して印刷が行われる位置までの領域であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の錠剤印刷装置。
前記第2の吸引経路を設ける位置および数は、前記搬送ベルトが浮き上がることのない範囲で、かつ、前記搬送ベルトを駆動させる駆動部にかかる負荷が増大することに起因して前記搬送ベルトの搬送速度が変化しない範囲で決定されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の錠剤印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について
図1から
図5を参照して説明する。
【0013】
(基本構成)
図1及び
図2に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、搬送装置(錠剤搬送装置)20と、検出装置30と、撮像装置40と、印刷装置50と、回収装置60と、画像処理装置70と、制御装置80とを備えている。なお、検出装置30と撮像装置40は、位置検出装置として機能する。
【0014】
供給装置10は、ホッパ11及びシュータ12を具備する。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、その収容された錠剤Tをシュータ12に順次供給する。シュータ12は、供給された錠剤Tを複数列(
図2の例では、二列)に整列させ、搬送装置20に供給する。この供給装置10は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。
【0015】
搬送装置20は、搬送ベルト21、駆動プーリ22、従動プーリ23、駆動部24及び吸引部25を具備する。搬送ベルト21は、無端状に形成されており、駆動プーリ22及び従動プーリ23に架け渡されている。駆動プーリ22及び従動プーリ23は軸を中心として回転可能に設けられており、駆動プーリ22は駆動部24に連結されている。駆動部24は例えばモータなどであり、制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。この駆動部24は、ロータリーエンコーダなどの位置検出器24aを備えている。位置検出器24aは検出信号を制御装置80に送信する。制御装置80は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21の位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。
【0016】
この搬送装置20は、駆動部24による駆動プーリ22の回転によって従動プーリ23と共に搬送ベルト21を回転させ、その搬送ベルト21上の錠剤Tを
図1及び
図2中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。ここで、搬送ベルト21には、
図2に示すように、円形状の錠剤吸着口21aが複数形成されている。これらの錠剤吸着口21aは、二本の搬送経路を形成するように搬送方向A1に沿って二列に並べられており、それぞれ錠剤Tを吸着する開口部として機能する。なお、吸引部25は、搬送ベルト21上の錠剤Tを吸引して保持し、かつ、搬送ベルト21が上下動せず錠剤Tを搬送することが可能に搬送ベルト21を吸引する吸引機構として機能する(詳しくは、後述する)。
【0017】
検出装置30は、複数の検出部31(
図2の例では、二つ)を具備する。検出部31は、錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ搬送ベルト21の上方に設けられている。これらの検出部31は、供給装置10より搬送方向A1の下流側であって二列の搬送経路の上方に位置付けられ、水平面内で搬送方向A1に交差する方向(例えば直交する方向)に並べられている。各検出部31は、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21上の錠剤Tを検出する。これらの検出部31は制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80に検出信号を送信する。検出部31としては、例えば、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサ(レーザ変位計)を用いることが可能である。また、レーザ光のビーム形状としては、スポットやラインなど各種の形状を用いることが可能である。
【0018】
撮像装置40は、複数の撮像部41(
図2の例では、二つ)を具備する。撮像部41は、錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ搬送ベルト21の上方に設けられている。これらの撮像部41は、検出装置30より搬送方向A1の下流側であって二列の搬送経路の上方に位置付けられ、水平面内で搬送方向A1に交差する方向(例えば直交する方向)に並べられている。撮像部41の撮像視野は、搬送ベルト21により搬送される錠剤Tが1つだけ撮像視野に入り、搬送方向A1の上流又は下流側の錠剤Tや隣の列の錠剤Tが入ることがない大きさに設定されている。撮像部41は、錠剤Tが直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像を取得し、取得した画像を画像処理装置70に送信する。撮像部41としては、例えば、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部41は画像処理装置70を介して制御装置80に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置80により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
【0019】
印刷装置50は、インクジェット方式の複数の印刷ヘッド51(
図2の例では、二つ)を具備する。印刷ヘッド51は、錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ搬送ベルト21の上方に設けられ、撮像装置40より搬送方向A1の下流側に位置付けられている。印刷ヘッド51は、複数のノズル51a(
図2参照)を具備し、それらのノズル51aから個別にインク(液体の一例)を吐出する。この印刷ヘッド51は、ノズル51aが並ぶノズル整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。印刷ヘッド51としては、例えば、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。各印刷ヘッド51は制御装置80に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置80により制御される。
【0020】
回収装置60は、印刷装置50より搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送装置20における搬送方向A1の下流側の端部に設けられている。この回収装置60は、搬送装置20による保持が解除されて落下する錠剤Tを順次受けて回収することが可能に構成されている。なお、搬送装置20は、搬送ベルト21上の個々の錠剤Tが所望の位置、例えば、搬送装置20における搬送方向A1の下流側の端部に到達した場合に錠剤Tの保持を解除する。
【0021】
画像処理装置70は、撮像装置40によって撮像された画像を取り込み、公知の画像処理技術を用いて画像を処理し、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向(
図2参照)の位置ずれを検出する。ここで、X方向及びY方向の位置ずれとは、撮像視野の中心に対する錠剤Tの位置ずれであり、その中心に対して錠剤Tがどの程度ずれているかを検出する。一例として、錠剤Tの搬送方向A1がX方向であり、それに直交する方向がY方向である。また、θ方向の位置ずれとは、錠剤Tの水平面内での回転ずれである。このθ方向の位置ずれは、錠剤Tに割り線が設けられている場合や錠剤Tが楕円形や長円形、四角形などに成型されている場合など、錠剤Tが方向性を有する形態の場合に検出される。
【0022】
この画像処理装置70は、検出した各錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置ずれ情報を制御装置80に送信する。なお、画像処理装置70が位置ずれ情報を送信する際には、この位置ずれ情報に各撮像部41の識別情報を付加して送信する。これにより、制御装置80は、送信された位置ずれ情報が、二列で搬送される錠剤Tのうち、どの列に位置する錠剤Tの位置ずれ情報であるかを認識することができる。
【0023】
制御装置80は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも図示せず)を備えている。この制御装置80は、各種情報や各種プログラムに基づいて供給装置10、搬送装置20、撮像装置40、印刷装置50及び画像処理装置70を制御する。また、制御装置80は、検出装置30や位置検出器24aから送信される検出信号などを受信する。また、制御装置80は、画像処理装置70から送信される各錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置ずれ情報に基づいて、X方向、Y方向及びθ方向の位置ずれが検出された錠剤Tに対する印刷条件を設定する。なお、記憶部には、錠剤Tに印刷する文字や記号などの印刷パターン及び文字や記号などの錠剤T上での印刷位置などを含む印刷データ、搬送ベルト21の移動速度情報などが記憶されている。
【0024】
(吸引部)
次に、前述の吸引部25について
図3から
図5を参照して詳しく説明する。
【0025】
図3から
図5に示すように、吸引部25は、複数のガイド部25a及び吸引チャンバ25bを具備する。
【0026】
各ガイド部25aは、
図3及び
図4に示すように、例えば、搬送方向A1に延伸するレール状に形成されている。これらのガイド部25aは、
図4に示すように、錠剤Tの搬送経路ごとに二つずつ搬送方向A1に平行に並べられており、搬送ベルト21の全周に亘って設けられている。なお、錠剤Tの搬送経路ごとに二列に並ぶガイド部25aが一組となり、一対のガイド部として機能する。これらのガイド部25aには、複数のベルト吸引口25a1が搬送方向A1に所定間隔で一列に並べられて形成されている。
【0027】
また、各ガイド部25aは、
図5に示すように、吸引チャンバ25bの外面に設けられており、搬送ベルト21を水平に支持する。これらのガイド部25aは、搬送ベルト21を支持しつつ、搬送方向A1に案内する案内部材として機能する。このため、各ガイド部25aは、搬送ベルト21と吸引チャンバ25bとの間に存在する。したがって、搬送ベルト21と吸引チャンバ25bが直接接触する場合の接触面積に比べ、搬送ベルト21と各ガイド部25aが接触する場合の接触面積は小さくなるので、他部材に対する搬送ベルト21の摩擦抵抗を低減することが可能となる。これにより、搬送ベルト21のスムーズな移動を実現することができる。
【0028】
ここで、ガイド部25aには、
図5に示すように、鉛直方向に延びる貫通孔25a2が形成されている。この貫通孔25a2の上端側の開口がベルト吸引口25a1となる。また、搬送ベルト21には、鉛直方向に延びる貫通孔21a1が形成されている。この貫通孔21a1の上端側の開口が錠剤吸着口21aとなる。なお、
図4に示すように、各錠剤吸着口21aは、錠剤Tの搬送方向A1に一列に並んでおり、各ベルト吸引口25a1は、錠剤吸着口21aの列を挟むように錠剤Tの搬送方向A1に沿って二列に並べられている。特に、ベルト吸引口25a1は、錠剤吸着口21aを錠剤Tの搬送方向A1に交差する方向(
図4では、直交する方向)から挟むように複数形成されている。
【0029】
吸引チャンバ25bは、
図3に示すように、搬送ベルト21の全周に亘ってその内側に配置され、搬送ベルト21の各錠剤吸着口21aに吸引力を付与するように構成されている。この吸引チャンバ25bは、例えば吸引ポンプなどの吸引源(図示せず)に接続されており、吸引源の駆動により吸引力を発生させる。吸引源(吸引装置)は制御装置80に電気的に接続されており、その駆動が制御装置80により制御される。
【0030】
吸引チャンバ25bには、
図5に示すように、複数の貫通孔25b1、25b2が形成されている。これらの貫通孔25b1、25b2は、吸引チャンバ25bにおける搬送ベルト21側の外面に垂直に形成されている。
【0031】
貫通孔25b1は、
図4に示すように、一対のガイド部25aの間に搬送方向A1に所定間隔で複数並べられている。これらの貫通孔25b1は、
図5に示すように、吸引チャンバ25bの内部と一対のガイド部25aの間の空間とを接続している。また、各錠剤吸着口21aは一対のガイド部25aの間の上方に位置しており、それぞれ搬送ベルト21の貫通孔21a1を介して一対のガイド部25aの間の空間とつながっている。したがって、吸引チャンバ25bの各貫通孔25b1と、一対のガイド部25aと、搬送ベルト21の各貫通孔21a1は、吸引チャンバ25bの内部から各錠剤吸着口21aまで延びる第1の吸引経路C1を形成している。これにより、錠剤吸着口21a上に供給された錠剤Tは、その錠剤吸着口21aにより吸引されて搬送ベルト21上に保持されることになる。なお、このとき、第1の吸引経路C1による吸引力は、錠剤Tだけでなく搬送ベルト21にも作用するため、搬送ベルト21も吸引される。第1の吸引経路C1によって搬送ベルト21および搬送ベルト21上の錠剤Tに与えられる吸引力を第1の吸引力という。
【0032】
貫通孔25b2は、
図5に示すように、ガイド部25aの各貫通孔25a2にそれぞれつなげられており、搬送方向A1に所定間隔で複数並べられている。このため、各貫通孔25b2とガイド部25aの各貫通孔25a2は、吸引チャンバ25bの内部から各ベルト吸引口25a1まで延びる第2の吸引経路C2を形成している。これにより、搬送ベルト21は、各ベルト吸引口25a1により吸引されて吸引部25、すなわち各ガイド部25a上に維持されることになる。なお、第2の吸引経路C2は第1の吸引経路C1と異なる経路(別の経路)であり、第1の吸引経路C1とつながっておらず、搬送ベルト21だけに吸引力を作用させる経路である。第2の吸引経路C2によって搬送ベルト21に与えられる吸引力を第2の吸引力という。
【0033】
ここで、
図4に示すように、搬送ベルト21において、撮像部41の上流側端部B2から印刷ヘッド51の下流側端部B3までの領域(B2〜B3)には、錠剤Tの搬送経路ごとに吸引力低下部材25cが設けられている。この吸引力低下部材25cは、搬送方向A1に並ぶ各貫通孔25b1の開口面積を搬送方向A1に沿って徐々に小さくするように例えば三角形状に形成されており、一対のガイド部25aの間に設けられている。これにより、前述の領域(B2〜B3)での錠剤Tに対する吸引力は搬送方向A1に沿って徐々に減少することになる。また、吸引力低下部材25cは、
図5に示すように、吸引チャンバ25bの外面上に着脱可能に設けられている。このため、利用者は必要に応じて搬送方向A1に吸引力低下部材25cをずらしたり交換したりして、所望の領域において所望のパターンで吸引力を低下(減少)させることが可能である。この吸引力低下部材25cは吸引力調整部として機能する。
【0034】
なお、搬送ベルト21において、
図4に示す実線グラフC1aのように、第1の吸引経路C1による吸引力(C1による吸引力)は、少なくとも錠剤供給位置B1から錠剤落下位置B4までの領域(B1〜B4)に亘って吸引チャンバ25bから錠剤Tに作用しているが、前述の領域(B2〜B3)以外の領域(B1〜B2、B3〜B4)については、特に錠剤Tに対する吸引力を低下させる必要はない。また、
図4に示す実線グラフC2aのように、第2の吸引経路C2による吸引力(C2による吸引力)は、前述の領域(B1〜B4)に亘って、所望の吸引力に一定に設定されている。これにより、領域(B2〜B3)において、第1の吸引経路C1による吸引力が徐々に低下しても、少なくとも第2の吸引経路C2による吸引力によって搬送ベルト21が吸引されることになる。
【0035】
前述の領域(B1〜B2)では、錠剤供給位置B1での錠剤Tが搬送ベルト21上に供給された直後、錠剤Tの姿勢を素早く安定させて搬送ベルト21上に保持すために吸引力を高めておく必要がある。また、前述の領域(B3〜B4)では、錠剤Tが印刷ヘッド51の下流側端部B3を通過してから錠剤落下位置B4に到達するまでの搬送途中で発生する遠心力や自重以上、すなわち、錠剤Tが搬送ベルト21から離れることを防ぐための吸引力が必要となる。この吸引力は錠剤Tのずれだけを防ぐための吸引力に比べて非常に強い吸引力である。
【0036】
搬送ベルト21において、錠剤Tが搬送される領域のうち、低下した吸引力によって錠剤Tが搬送ベルト21上に保持される領域を便宜上「第1の領域」とし、第1の領域以外の領域を便宜上「第2の領域」とする。したがって、前述の例では、撮像部41の上流側端部B2から印刷ヘッド51の下流側端部B3までの領域(B2〜B3)が第1の領域となり、その領域(B2〜B3)以外の領域(B1〜B2、B3〜B4)が第2の領域となる。これらの領域は搬送方向A1に並ぶ領域である。なお、第1の領域で低下した吸引力としては、吸引力をゼロ、すなわち吸引力を与えないことも含む。搬送ベルト21上の錠剤Tが搬送中に摩擦力などでずれない、あるいは、ずれてもそのずれ量が許容できる範囲内であれば、吸引力をゼロとしても良い。
【0037】
前述のように、撮像部41の上流側端部B2から印刷ヘッド51の下流側端部B3までの領域(B2〜B3)に吸引力低下部材25cを設けることによって、その領域において錠剤吸着口21aの吸引力が弱められ、錠剤吸着口21aから吸引される空気の量や流速が減るため、気流やミストによる印刷不良が発生することを抑えることができる。すなわち、少なくとも印刷ヘッド51の直下(印刷ヘッド51の上流側端部から下流側端部B3までの領域)を通過する錠剤Tを吸引する吸引力を、搬送ベルト21上のその他の位置にある錠剤Tを吸引する吸引力よりも低下させることができる。
【0038】
また、撮像部41の上流側端部B2から印刷ヘッド51の下流側端部B3までの領域(B2〜B3)で吸引力を徐々に低下させることによって、急激な吸引力の低下による錠剤Tの位置ずれなどを抑制することができる。例えば、吸引力が急激に変化すると、錠剤Tがずれたり、又は、揺れたり、あるいは、搬送ベルト21上から脱落したりすることがあるが、吸引力の変化を穏やかにすることで、そのような不具合の発生を抑えることができる。
【0039】
また、既述した通り、撮像部41によって撮像された画像に基づいて錠剤Tの位置ずれ情報が生成され、これに基づいて印刷ヘッド51による印刷が実行される。このため、搬送ベルト21上において、撮像部41によって錠剤Tが撮像されるときの錠剤Tの保持状態と、印刷ヘッド51によって印刷されるときの錠剤Tの保持状態が変化してしまうと、印刷ずれが生じてしまう。したがって、第1の領域であるB2〜B3における吸引力は、一定であることが最も好ましく、変化させる場合においても、上述した通り穏やかに変化させることが好ましい。
【0040】
なお、前述の領域(B2〜B3)において、錠剤Tを吸引する錠剤吸着口21aの吸引力は、吸引力低下部材25cによって他の領域(B1〜B2、B3〜B4)に比べて低下する。これにともなって、第1の吸引経路C1による吸引によって搬送ベルト21に作用する吸引力も低下する。ところが、搬送ベルト21には第1の吸引経路C1とは別に第2の吸引経路C2によって吸引力が作用している。つまり、搬送ベルト21は各ベルト吸引口25a1により吸引されているため、搬送ベルト21を吸引するベルト吸引力は、錠剤Tを吸引する錠剤吸引力が低下しても所望の吸引力に維持されている。これにより、搬送ベルト21に作用する吸引力の低下によって発生する搬送ベルト21のガイド部25aからの浮き上がりや搬送ベルト21の上下動の発生を抑制することができる。なお、搬送ベルト21を吸引する吸引力は、搬送ベルト21が駆動プーリ22の回転により移動することが可能であり、浮き上がったり上下動したりしないような吸引力に設定されている。
【0041】
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷工程(印刷処理)について説明する。
【0042】
まず、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置80の記憶部に記憶される。また、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入される。そして、錠剤印刷装置1が駆動されると、搬送装置20の搬送ベルト21は、駆動部24による駆動プーリ22及び従動プーリ23の回転に伴い、搬送方向A1に回転する。搬送ベルト21が回転している状態で、供給装置10から錠剤Tが搬送ベルト21上に一定間隔ではなくランダムに順次供給される。錠剤Tは搬送ベルト21上に二列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。
【0043】
搬送ベルト21上の個々の錠剤Tは、錠剤Tの搬送経路ごとに検出部31によって検出され、各検出部31から各々の検出信号がトリガ信号として制御装置80に入力される。その後、搬送ベルト21上の個々の錠剤Tは、錠剤Tの搬送経路ごとに撮像部41によって撮像される。前述のトリガ信号に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが撮像部41の下方に到達したタイミングで錠剤Tの上面が撮像部41により撮像され、その撮像された画像が画像処理装置70に送信される。各撮像部41から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tの位置ずれ情報(例えば、X方向、Y方向及びθ方向での錠剤Tの位置ずれ)が画像処理装置70により生成され、制御装置80に送信される。その錠剤Tの位置ずれ情報に基づき、錠剤Tに対する印刷条件(インクの吐出位置や吐出速度など)が制御装置80により設定される。
【0044】
その後、搬送ベルト21上の個々の錠剤Tは、前述のトリガ信号に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが印刷ヘッド51の下方に到達したタイミングで、前述の印刷条件に基づいて印刷装置50により印刷が実行される。印刷装置50の各印刷ヘッド51において、各ノズル51aからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字やマークなどの識別情報が印刷される。この錠剤Tに塗布されたインクは、その錠剤Tが回収装置60により回収される前に乾燥する。インクが乾燥した錠剤Tは、搬送ベルト21の下流側の端部に位置すると、搬送ベルト21に保持された状態から解放され、搬送ベルト21から落下して回収装置60により回収される。なお、必要に応じて搬送ベルト21の上方に乾燥装置を設け、錠剤Tに塗布されたインクをその乾燥装置によって乾燥するようにしても良い。
【0045】
この印刷工程では、第1の吸引経路C1により与えられる吸引力によって搬送ベルト21上の錠剤Tを吸引して保持し、第1の吸引経路C1と異なる第2の吸引経路C2により与えられる吸引力によって搬送ベルト21を吸引する。このように、錠剤Tを吸引する経路と搬送ベルト21を吸引する経路が異なるため、錠剤Tを吸引する錠剤吸引力を低下させても、搬送ベルト21を吸引するベルト吸引力を所望の吸引力に維持することが可能となる。その結果、搬送ベルト21のガイド部25aからの浮き上がりや搬送ベルト21の上下動の発生を抑制することが可能となるので、錠剤Tの位置ずれを抑制し、印刷品質の低下を抑えることができる。なお、少なくとも印刷ヘッド51の直下の領域において、搬送ベルト21の上下動を抑制する必要がある。
【0046】
また、搬送ベルト21において、印刷ヘッド51の直下を含む所定領域(例えば、第1の領域)では、錠剤吸着口21aの吸引力が搬送方向A1に沿って徐々に弱められる。これにより、前述の所定領域において、錠剤吸着口21aから吸引される空気の量や流速が徐々に減り、搬送ベルト21上の錠剤Tと印刷ヘッド51との間の空間に発生する気流を抑制することが可能になるので、気流やミストによる印刷品質の低下を抑えることができるとともに、急激な吸引力の変動による搬送ベルト21のガイド部25aからの浮き上がりや上下動の発生を抑制することができる。すなわち、搬送ベルト21上の錠剤Tと印刷ヘッド51との間の空間に、印刷品質を低下させるような気流が発生することを抑制することが可能となるばかりでなく、そのための吸引力を低下させた時に錠剤Tがずれ動いたり揺れたりすることも抑制することが可能になる。したがって、錠剤Tの保持のために用いられる吸引力を適切に制御することによって、印刷ヘッド51のインク安定吐出を達成し、印刷品質を維持することができる。
【0047】
なお、ベルト吸引力を強くすると、搬送ベルト21の回転抵抗(摩擦力)は増大し、駆動部24としてより強力な回転力を有するモータが必要となる。したがって、搬送ベルト21を吸引するベルト吸引力を最低限とするためには、錠剤Tを吸引する錠剤吸引力を低下させたい部分にだけベルト吸引口25a1を設けることが望ましい。この場合、例えば
図4のように第1の吸引経路C1による錠剤吸引力を、領域(B2〜B3)において低下させる場合、搬送ベルト21に第2の吸引経路C2により与えられる吸引力は、この領域(B2〜B3)以外では発生しないようにする。すなわち、領域(B2〜B3)においてのみ、ベルト吸引口25a1を設けるようにする。つまり、ベルト吸引口25a1を設ける範囲は、吸引力低下部材25cが設けられる範囲より狭い範囲であることが望ましい。これは、吸引力低下部材25cによって搬送ベルト21にかかる吸引力が低下している範囲よりも広い範囲において、ベルト吸引口25a1が設けられていると、搬送ベルト21にかかる摩擦力が増大するからである。また、摩擦力の増大を抑えるためには、ベルト吸引口25a1の開口面積は、錠剤吸着口21aの開口面積よりも小さいことが望ましい。
【0048】
搬送ベルト21の摩擦力が増大すると搬送ベルト21を回転させる駆動部24にかかる負荷も増大し、これによって搬送ベルト21が回転する速度が変化してしまうことがある。これによって搬送ベルト21が振動してしまい、搬送ベルト21上の錠剤Tも振動することになる。つまり、ベルト吸引口25a1(すなわち第2の吸引経路C2)を設ける位置および数は、搬送ベルト21がガイド部25aから浮き上がることのない範囲で、かつ、駆動部24にかかる負荷が増大することに起因して搬送ベルト21の搬送速度が変化しない範囲において決定されている。
【0049】
また、第1の吸引経路C1による吸引力の調整において、
図4に示す実線グラフC1aのように、第1の吸引経路C1による吸引力を必ずしも直線的に変化させるだけではなく、例えば、
図4に示す点線グラフC1b、C1cのように、第1の吸引経路C1による吸引力の変化率を変えることも可能である。
【0050】
また、第1の吸引経路C1による吸引力の変化に応じて、
図4に示す点線グラフC2bのように、第2の吸引経路C2による吸引力を徐々に変えることも可能である。この場合には、搬送方向A1に並ぶ各ベルト吸引口25a1の開口面積を搬送方向A1に沿って徐々に大きくする。これにより、領域(B2〜B3)において、搬送ベルト21に作用する第1の吸引経路C1による吸引力が減少するが、逆に、搬送ベルト21に作用する第2の吸引経路C2による吸引力が増加するため、トータルのベルト吸引力を一定に維持することができる。つまり、錠剤吸引力を変えるとその部分でのベルト吸引力も変わるため、ベルト吸引力を一定とするためには、前述のように、第2の吸引経路C2による吸引力も変える必要があり、錠剤吸引力を徐々に変化させる場合には、第2の吸引経路C2による吸引力も徐々に変化させる必要がある。なお、吸引力を搬送方向A1に沿って低下させる吸引力低下部材25cが第1の吸引力調整部として機能し、開口面積が搬送方向A1に沿って徐々に大きくなる各ベルト吸引口25aが第2の吸引力調整部として機能する。
【0051】
また、ベルト吸引力としては、搬送ベルト21が浮かない最低限の吸引力を維持すれば良く、
図4に示す実線グラフC2aのように、搬送ベルト21に対する第2の吸引経路C2による吸引力を所定の吸引力で一定に作用させることも可能である。あるいは、
図4に示す一点鎖線グラフC2cのように、領域(B2〜B3)において、各ベルト吸引口25a1の開口面積の調整により、第2の吸引経路C2よる吸引力を他の領域(B1〜B2、B3〜B4)に比べて強く一定に作用させることも可能である。これらの場合には、錠剤吸引力の変化によりその部分でのベルト吸引力が変わり、例えゼロになっても、最低限のベルト吸引力が第2の吸引経路C2による吸引によって維持されている。このとき、トータルのベルト吸引力は一定ではない。
【0052】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、吸引部25は、搬送ベルト21上の錠剤Tを吸引するための第1の吸引経路C1と、搬送ベルト21を吸引するための第2の吸引経路C2とを有する。このため、錠剤Tを吸引する経路と搬送ベルト21を吸引する経路が異なるので、錠剤Tを吸引する錠剤吸引力を低下させても、搬送ベルト21を吸引するベルト吸引力を所望の吸引力に維持することが可能となる。これにより、搬送ベルト21のガイド部25aからの浮き上がりや搬送ベルト21の上下動の発生を抑制することができ、その結果、錠剤Tの位置ずれを抑制し、印刷品質の低下を抑えることができる。
【0053】
実際に、ベルト吸引口25a1を備えることによって、印刷後の検査において錠剤Tが良品と判断された確率が向上した。ベルト吸引口25a1を有さない場合には良品率が97.8%だったが、ベルト吸引口25a1を設けることによって良品率が99.7%まで向上した。
【0054】
なお、第1の実施形態においては、錠剤Tを搬送ベルト21上に吸引保持して搬送し、インクジェット方式の印刷ヘッド51により印刷する。特に、回収装置60に向かう駆動プーリ22部分では遠心力も働くので錠剤Tが飛んでいかないように吸引力が設定されている。この場合には、印刷部分において駆動プーリ22部分と同じ吸引力による吸引に伴う気流によって印刷不良が発生してしまう。このため、印刷部分での吸引力、すなわち第1の吸引経路C1の吸引力が下げられる。この吸引力は錠剤Tだけに作用せず、搬送ベルト21にも作用しているため、その吸引力を下げると搬送ベルト21がガイド部25aから浮き上がったり、搬送ベルト21の上下動が発生したりするようなことがある。
【0055】
そこで、錠剤Tを吸引するものとは別に、第2の吸引経路C2の吸引力により搬送ベルト21を吸引しておくことによって、印刷部分での気流の発生を抑えて印刷不良を抑制するために錠剤Tへの吸引力を低下させた場合でも、そのベルト吸引力の低下に起因して搬送ベルト21がガイド部25aから浮き上がったり、搬送ベルト21の上下動が発生したりして、錠剤Tの位置がずれて印刷不良が発生することを抑制することができる。なお、吸引力を急激に低下させるとその部分で搬送ベルト21のガイド部25aからの浮き上がり、上下動の発生も強く出てくるため、吸引力の変化は徐々に行う方が望ましい。
【0056】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について
図6を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(吸引部の構造)について説明し、その他の説明を省略する。
【0057】
図6に示すように、第2の実施形態に係る吸引部25は、各ガイド部25aを備えておらず、吸引チャンバ25bの外面により直接、搬送ベルト21を支持する。吸引チャンバ25bの貫通孔25b1は、搬送ベルト21の長手方向の領域に亘ってその長手方向に延びるスリット状の一つの貫通孔として形成されている。この貫通孔25b1と、搬送ベルト21の各貫通孔21a1が第1の吸引経路C1となる。また、吸引チャンバ25bの各貫通孔25b2の上端側の開口がそれぞれベルト吸引口25a1となる。このため、各貫通孔25b2が第2の吸引経路C2となる。
【0058】
搬送ベルト21は、各ベルト吸引口25a1の吸引力により吸引チャンバ25bの外面に直接引き寄せられている。この搬送ベルト21を吸引する吸引力は、搬送ベルト21が駆動プーリ22の回転により移動することが可能であり、ガイド部25aから浮き上がったり上下動したりしないような吸引力に設定されている。なお、搬送ベルト21と吸引チャンバ25bが直接接触することから、それらの摩擦抵抗を低減するため、搬送ベルト21と吸引チャンバ25bとの接触面の滑り性を良くする加工を行うことが望ましい。
【0059】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。例えば、各ガイド部25aを無くした場合でも、錠剤Tを吸引する経路と搬送ベルト21を吸引する経路が異なるので、錠剤Tを吸引する錠剤吸引力を低下させても、搬送ベルト21を吸引するベルト吸引力を所望の吸引力に維持することが可能となる。これにより、搬送ベルト21のガイド部25aからの浮き上がりや搬送ベルト21の上下動の発生を抑制することができる。その結果、錠剤Tの位置ずれを抑制し、印刷品質の低下を抑えることができる。
【0060】
(他の実施形態)
前述の各実施形態においては、錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は一列や三列又は四列以上であっても良く、特に限定されるものではない。
【0061】
また、前述の各実施形態においては、搬送ベルト21を一本だけ設けることを例示したが、これに限るものではなく、二本以上設けるようにしても良く、その数は特に限定されるものではない。
【0062】
また、前述の各実施形態においては、錠剤Tの搬送経路ごとに印刷ヘッド51を設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、一つの印刷ヘッド51によって二列以上の錠剤Tに印刷を行うようにしても良い。
【0063】
また、前述の各実施形態においては、検出装置30に基づいて印刷のタイミングを取ることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、撮像装置40に基づいて印刷のタイミングを取るようにしても良い。
【0064】
また、前述の各実施形態においては、インクジェット方式の印刷ヘッド51として、ノズル51aが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル51aが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしても良い。また、錠剤Tの搬送方向A1に沿って複数並ぶ印刷ヘッド51を用いるようにしても良い。
【0065】
また、前述の各実施形態においては、搬送ベルト21の全周に亘って吸引部25を形成することを例示したが、これに限るものではなく、吸引部25は搬送ベルト21の全周に亘って形成されている必要はなく、前述のように錠剤Tが供給されてから回収されるまでの間だけ、吸引部25を形成するようにしても良い。
【0066】
また、前述の各実施形態においては、錠剤Tの片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送装置20を上下に重ねて配置して、上側の搬送装置20で印刷した錠剤Tを反転して下側の搬送装置20に受け渡すようにして、錠剤Tの両面を印刷するようにしても良い。
【0067】
また、前述の各実施形態においては、錠剤Tを吸引する吸引機構として、搬送方向A1に並ぶ複数の円形の錠剤吸着口21aにより錠剤Tを保持することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、長方形や楕円形、スリット状など錠剤吸着口21aの形状は特に限定されるものではない。
【0068】
また、前述の各実施形態においては、複数のベルト吸引口25a1を搬送方向A1に沿って搬送ベルト21の全周に亘って形成することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、少なくとも印刷ヘッド51の直下の領域において搬送ベルト21の上下動を抑制することが可能な位置や領域に、一つのベルト吸引口25a1、あるいは、二つ以上のベルト吸引口25a1を形成すれば良い。すなわち、錠剤Tへの吸引力を低下させることに伴う搬送ベルト21の吸引力の低下によって、搬送ベルト21のガイド部25aからの浮き上がりや上下動が発生する位置や領域にベルト吸引口25a1を形成すれば良い。また、ベルト吸引口25a1は、必ずしも錠剤吸着口21aの近傍や両側に位置している必要はなく、搬送ベルト21を吸引することが可能であればどこでも良い。
【0069】
また、前述の各実施形態においては、吸引力低下部材25cとして、三角形状の板部材を例示したが、これに限るものではなく、例えば、楕円形状の板状部材とすることも可能であり、貫通孔25b1の開口面積を徐々に変化させる形状であれば良い。また、パンチングボードや多孔質部材、網状部材などを用いることも可能である。この場合には、貫通孔25b1の開口面積が搬送方向A1に沿って徐々に減少するように孔の密度を低くする。
【0070】
また、前述の各実施形態においては、吸引力低下部材25cにより吸引力を低下させることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、貫通孔25b1のサイズを小さくして吸引力を低下させるようにしても良く、あるいは、吸引チャンバ25bの内部を複数の区画(2以上の区画)に分け、区画ごとに異なる吸引力を付与し、所定区画の吸引力を低下させるようにしても良く、各種の吸引力調整手段(吸引力調整部)を用いることが可能である。一例として、吸引チャンバ25bの内部を3つの区画に分け、第1の区画の吸引力を中、第2の区画の吸引力を弱、第3の区画の吸引力を強と設定することが可能である。
【0071】
ここで、例えば、吸引チャンバ25bの内部を所定領域(B2〜B3)に対向する区画とその他の区画に分け、区画ごとに吸引源を設け、それらの吸引源を制御する制御部を設けることがある。この場合には、一例として、搬送ベルト21上の所定領域(B2〜B3)において吸引力低下部材25cにより第1の吸引力を減少させ、その第1の吸引力の減少に応じて制御部により吸引源を制御し、所定領域(B2〜B3)に対向する区画の第2の吸引力を増加させる。このとき、吸引力低下部材25cが第1の吸引力調整部として機能し、制御部が第2の吸引力調整部として機能する。
【0072】
また、前述の各実施形態においては、撮像部41の上流側端部B2から印刷ヘッド51の下流側端部B3までの領域(B2〜B3)で吸引力を低下させることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、錠剤Tが印刷ヘッド51の直下を通過する際にのみ吸引力を低下させるようにしても良い。この場合には、印刷ヘッド51の上流側端部から下流側端部B3までの領域が第1の領域となる。また、例えば、錠剤Tが搬送ベルト21に供給されてから印刷ヘッド51の直下を通過するまで吸引力を低下させるようにしても良い。この場合には、錠剤供給位置B1から印刷ヘッド51の下流側端部B3までの領域が第1の領域となる。
【0073】
また、前述の各実施形態においては、撮像部41の上流側端部B2から印刷ヘッド51の下流側端部B3までの領域(B2〜B3)で吸引力を徐々に低下させることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、撮像部41の上流側端部B2や検出部31に到達するまでで吸引力を所定値まで低下させ、その所定値で一定に維持するようにしても良い。この場合には、前述の領域(B2〜B3)で一定の吸引力により錠剤Tが吸引されているため、検出時と印刷処理時とで錠剤Tの位置や姿勢などが吸引力の相違によって異なることが抑制される。したがって、吸引力の相違により錠剤Tの位置や姿勢などが異なることに起因し、印刷品質が低下することを抑えることができる。
【0074】
また、検出装置30により錠剤Tを検出した位置から錠剤Tがずれると、印刷品質が低下する。このため、錠剤Tを検出した位置から吸引力を変化させないようにしても良い。したがって、
図7に示す実線グラフC1dのように、錠剤供給位置B1からセンサ上流側端部B5までの間で吸引力を徐々に低下させた後、その吸引力をヘッド下流側端部B3まで維持して、印刷ヘッド51による印刷後に元に戻す。
【0075】
なお、搬送ベルト21の上方であって、印刷ヘッド51より搬送方向A1の下流側に検査装置を設けた場合には、前述で低下させた吸引力を検査装置による検査後に元に戻す。印刷ヘッド51より搬送方向A1の下流側に検査装置を設けた場合においては、前述した通り撮像部41において撮像された錠剤Tの状態に基づいて印刷ヘッド51によって印刷が行われ、この印刷がうまく行われたかどうかを検査装置によって確認する。つまり、撮像部41から検査装置までの間に錠剤Tの状態が変わってしまうと、検査装置において印刷状態が不良であると判断されてしまうことになる。したがって、吸引力を変化させる範囲は、撮像部41による錠剤Tの撮像が行われる位置から印刷ヘッド51下流側の検査装置による印刷状態の検査が行われる位置までを含み、この間においては吸引力を一定にすることが最も好ましい。
【0076】
また、ベルト吸引口25a1を設ける位置としては、貫通孔25b1に近接している位置が好ましい。錠剤Tが吸引される貫通孔25b1に近い位置で搬送ベルト21を吸引することで、錠剤Tの近接する位置において搬送ベルト21がガイド部25aから浮き上がったり、搬送ベルト21の上下動が発生したりすることを抑制することができるので、錠剤Tの印刷品質の低下を抑えることができる。
【0077】
また、前述の各実施形態においては、ベルト吸引口25a1は一対のガイド部25aに設けられており、つまり錠剤吸着口21aを挟むように設けられている。しかし、これに限るものではなく、一対のガイド部25aの片側にのみベルト吸引口25a1が設けられていても良い。あるいは、二列形成されている錠剤吸着口21aの間に一列のベルト吸引口25a1が設けられていても良い。
【0078】
また、前述の各実施形態においては、各ガイド部25aと吸引チャンバ25bとを別体として例示したが、これに限るものではなく、例えば、吸引チャンバ25bの天井を開口として、その吸引チャンバ25bの天井を、各ガイド部25aを備える板状の蓋体によって塞ぐようにすることも可能である。この場合、ガイド部25aの貫通孔25a2が直接吸引チャンバ25bの内部につながっている。
【0079】
また、前述の各実施形態においては、共通の吸引チャンバ25bを用いることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第1の吸引経路C1と第2の吸引経路C2それぞれに用いるチャンバを独立して用意しても良いし、さらに吸引源(例えば、吸引ポンプ)も独立してそれぞれ設けても良い。この場合には、吸引部25は、複数の吸引チャンバ及び複数の吸引源を有することになり、それらの吸引源を個別に制御する制御部も設けることが可能である。
【0080】
また、前述の各実施形態においては、搬送ベルト21を吸引して搬送ベルト21のガイド部25aからの浮き上がりや搬送ベルト21の上下動を抑制したが、これに限るものではなく、例えば搬送ベルト21の錠剤Tの搬送面側(上面側)から、搬送ベルト21をローラ等で押さえたり、インクジェットの吐出に影響を与えない範囲で搬送ベルト21にエアー等を吹き付けたりしても良い。あるいは、磁性体を含むベルトを搬送ベルト21とし、磁力で吸引しても良い。
【0081】
また、前述の各実施形態においては、印刷の終了した錠剤Tを回収装置60にて回収するとしたが、これに限るものではなく、例えば、印刷終了後の錠剤Tが次工程の搬送コンベアに乗り移るように構成しても良い。
【0082】
ここで、前述の錠剤としては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、例えば、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがある。さらに、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。また、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。
【0083】
また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合、使用するインクとしては、可食性インクが好適である。なお、可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
【0084】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。