特許第6883014号(P6883014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883014
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】スプール式切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20210524BHJP
   H01F 7/06 20060101ALI20210524BHJP
   H01F 7/10 20060101ALI20210524BHJP
   H01F 7/122 20060101ALI20210524BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   F16K31/06 305D
   F16K31/06 385B
   F16K31/06 305J
   H01F7/06 C
   H01F7/10 Z
   H01F7/122 A
   G01B7/00 101E
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-228975(P2018-228975)
(22)【出願日】2018年12月6日
(65)【公開番号】特開2020-91003(P2020-91003A)
(43)【公開日】2020年6月11日
【審査請求日】2020年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 康典
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 実開平6−32865(JP,U)
【文献】 特開平7−274468(JP,A)
【文献】 特開2009−270695(JP,A)
【文献】 特表2012−529306(JP,A)
【文献】 特表2002−521620(JP,A)
【文献】 米国特許第5787915(US,A)
【文献】 特表2003−516106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
F16K 11/00−11/24
H01F 7/06− 7/17
G01B 7/00− 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石が取り付けられたスプールと、前記スプールが挿入されたコイルボビンと、を備え、前記コイルボビンに巻回されたコイルを磁化することで前記スプールの駆動を行うとともに、前記コイルボビンに取り付けられた位置検出センサと、前記永久磁石と、により、前記スプールの位置検出を行うスプール式切換弁において、
前記コイルボビンは、外周面に、
前記位置検出センサが実装され、基板側位置決め部が形成されたフレキシブル基板と、
前記基板側位置決め部に当接し、前記フレキシブル基板を、前記コイルボビンに対し、前記スプールの駆動方向に位置決めするコイルボビン側位置決め部と、
を備えること、
を特徴とするスプール式切換弁。
【請求項2】
請求項1に記載のスプール式切換弁において、
前記フレキシブル基板は、前記位置検出センサが実装される本体部を有し、前記本体部から前記スプールの駆動方向に直交する方向の両側に延伸する突出部を有すること、
前記突出部は、前記基板側位置決め部を備えること、
を特徴とするスプール式切換弁。
【請求項3】
請求項2に記載のスプール式切換弁において、
前記突出部には、前記コイルを構成するマグネットワイヤが接続される接続部が形成されていること、
を特徴とするスプール式切換弁。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載のスプール式切換え弁において、
前記スプール式切換え弁は、前記スプールの駆動を制御する制御部を備えること、
前記位置検出センサと、前記コイルと、は前記フレキシブル基板上の回路と、前記フレキシブル基板が嵌合されたフレキシブル基板用コネクタと、を介して、前記制御部と接続されること、
を特徴とするスプール式切換弁。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のスプール式切換弁において、
前記フレキシブル基板が前記コイルボビンの外周面に位置決めされた状態で、前記フレキシブル基板の上から前記コイルボビンにコイルが巻回されることで、前記コイルボビンと、前記フレキシブル基板と、が一体となっていること、
を特徴とするスプール式切換弁。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載のスプール式切換弁において、
前記位置検出センサは、前記フレキシブル基板に表面実装されていること、
を特徴とするスプール式切換弁。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のスプール式切換弁において、
前記フレキシブル基板には、温度センサが実装されていること、
を特徴とするスプール式切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石が取り付けられたスプールと、スプールが挿入されたコイルボビンと、を備え、コイルボビンに巻回されたコイルを磁化することでスプールの駆動を行うとともに、コイルボビンに取り付けられた位置検出センサと、永久磁石と、により、スプールの位置検出を行うスプール式切換弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アクチュエータ等の動作を制御する操作エアの圧力や流量を制御するため、スプール式切換弁が用いられている。
例えば、スプール式切換弁は、一端に永久磁石が取り付けられたスプールと、当該スプールの永久磁石が取り付けられた側の端部が挿入されたコイルボビンとを有しており、当該コイルボビンには、コイルボビンに挿入されたスプールの永久磁石を挟んで、一対のコイルが配置されている。そして、当該コイルは通電により磁化し、スプールに取り付けられた永久磁石を引き寄せるため、スプールの駆動が行われる。
このようなスプール式切換弁としては、例えば特許文献1に開示されるソレノイドバルブが知られている。
【0003】
ここで、スプール式切換弁のスプールの位置を検出するために、コイルボビンに対して位置検出センサを取り付ける場合がある。位置検出センサとしては、磁束密度を検知し、磁束密度に比例した電気信号を出力するホールICが用いられている。
ホールICは、例えば円筒状のコイルボビンの外周面上に固定される。コイルボビンの外周面には、信号回路が設けられており、ホールICと、スプール式切換弁の制御部とを接続している。
通電され磁化したコイルが、永久磁石を引き寄せると、ホールICと永久磁石との距離が変化する。ホールICと永久磁石との距離に応じて、ホールICが検知する永久磁石の磁束密度が変化し、ホールICは、磁束密度に比例した電気信号を出力する。スプール式切換弁の制御部は、出力された電気信号を、信号回路を介して受信し、受信した電気信号の電圧に応じて永久磁石の移動量を算出する。永久磁石はスプールに取り付けられているため、永久磁石の移動量を算出することは、スプールの移動量を算出するに等しい。よって、永久磁石の移動量が算出されることで、作業者はスプールの移動量を知ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−226004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
(1)従来、位置検出センサとして用いられるホールICは、コイルボビンの外周面に上で、半田付けにより固定されていた。この半田付けは手作業で行われていたため、ホールICのコイルボビン上における固定位置が所定の位置からずれてしまう可能性がある。スプールの位置検出は、ホールICが、スプールに取り付けられた永久磁石との距離によって変化する磁束密度を検知することで行われるため、ホールICの固定位置がずれてしまうと、磁束密度の検知が正確に行われない。そうすると、スプール位置検出の精度の低下を招くおそれがあるものの、スプール式切換弁は、流路の切り換えが主目的の弁であり、スプールの位置精度に関してはそれほど高い精度が求められておらず、ホールICの固定位置のずれは大きな問題となっていなかった。
【0006】
しかし、手作業による半田付けは作業者によりホールICの固定位置のバラツキが生じるため、スプール式切換弁の生産数量が多くなると、例えば弁漏れが生じるほどのスプール位置検出の精度の低下を招くホールICの固定位置のずれが生じるおそれがあった。そこで、スプール式切換弁の品質安定のため、ホールICの固定位置の安定化が求められる。特に、スプールの駆動方向における固定位置の安定化が重要である。スプールの駆動方向においてホールICの固定位置がずれると、スプールの移動量に応じた永久磁石と位置検出センサとの距離に狂いが生じるため、位置検出の精度への影響が顕著に現れるためである。一方で、スプールの駆動方向に直交する方向に固定位置がずれる場合には、スプールの移動量に応じた永久磁石と位置検出センサとの距離に変化はないため、位置検出の精度への影響が小さい。
【0007】
(2)また、コイルボビン上に設けられた信号回路は、上述の通り、スプール式切換弁の制御部と、ホールICとを接続しており、信号回路は制御部が有する信号用端子と接続される。この信号回路と信号用端子の接続のためには、半田付け若しくはコネクタの嵌合作業が必要である。さらに、スプール式切換弁のスプールの駆動は、上述の通り、コイルボビンに取り付けられたコイルに通電することで行われる。コイルに通電するためには、例えばスプール式切換弁に備えられた通電用端子に、コイルを構成するマグネットワイヤを半田付けし、接続する必要がある。
以上のように、制御部の信号用端子を接続する作業および通電用端子を接続する作業を別個に行う必要があり、作業が煩雑であった。
さらに、通電用端子とマグネットワイヤの接続は、マグネットワイヤの半田付けの際の熱によって、ホールIC自体や、ホールICが接続される信号回路が損傷を受けるのを防ぐために、例えば、ホールICの固定部分に対して裏側で行われるなど、ホールICの固定部分や、信号用端子の接続部分とは離れた場所で行われることが多い。すると、ホールICの半田付けや、制御部の信号用端子の接続を行った後に、マグネットワイヤの半田付けを行うために、コイルボビンを裏返さなければならない場合があるなど、作業効率が悪いという問題が生じていた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、位置検出センサをコイルボビンに対して正確な位置に安定して固定でき、スプール位置検出の精度の低下を防止するとともに、位置検出センサやマグネットワイヤの取付作業効率の向上を図ることが可能なスプール式切換弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の流体制御弁は、次のような構成を有している。
(1)永久磁石が取り付けられたスプールと、スプールが挿入されたコイルボビンと、を備え、コイルボビンに巻回されたコイルを磁化することでスプールの駆動を行うとともに、コイルボビンに取り付けられた位置検出センサと、永久磁石と、により、スプールの位置検出を行うスプール式切換弁において、コイルボビンは、外周面に、位置検出センサが実装され、基板側位置決め部が形成されたフレキシブル基板と、基板側位置決め部に当接し、フレキシブル基板を、コイルボビンに対し、スプールの駆動方向に位置決めするコイルボビン側位置決め部と、を備えること、を特徴とする。
【0010】
(2)(1)に記載のスプール式切換弁において、フレキシブル基板は、位置検出センサが実装される本体部を有し、本体部からスプールの駆動方向に直交する方向の両側に延伸する突出部を有すること、突出部は、基板側位置決め部を備えること、を特徴とする。
【0011】
(3)(2)に記載のスプール式切換弁において、突出部には、コイルを構成するマグネットワイヤが接続される接続部が形成されていること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のスプール式切換え弁において、スプール式切換え弁は、スプールの駆動を制御する制御部を備えること、位置検出センサと、コイルと、はフレキシブル基板上の回路と、フレキシブル基板が嵌合されたフレキシブル基板用コネクタと、を介して、制御部と接続されること、を特徴とする。
【0012】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のスプール式切換弁において、フレキシブル基板がコイルボビンの外周面に位置決めされた状態で、フレキシブル基板の上からコイルボビンにコイルが巻回されることで、コイルボビンと、フレキシブル基板と、が一体となっていること、を特徴とする。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載のスプール式切換弁において、位置検出センサは、フレキシブル基板に表面実装されていること、を特徴とする。
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載のスプール式切換弁において、フレキシブル基板には、温度センサが実装されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の流体制御弁は、上記構成を有することにより次のような作用・効果を有する。
(1)永久磁石が取り付けられたスプールと、スプールが挿入されたコイルボビンと、を備え、コイルボビンに巻回されたコイルを磁化することでスプールの駆動を行うとともに、コイルボビンに取り付けられた位置検出センサと、永久磁石と、により、スプールの位置検出を行うスプール式切換弁において、コイルボビンは、外周面に、位置検出センサが実装され、基板側位置決め部が形成されたフレキシブル基板と、基板側位置決め部に当接し、フレキシブル基板を、コイルボビンに対し、スプールの駆動方向に位置決めするコイルボビン側位置決め部と、を備えること、を特徴とするので、位置検出センサをコイルボビンに対して正確な位置に安定して固定でき、スプール位置検出の精度の低下を防止することができる。
【0014】
すなわち、位置検出センサは、フレキシブル基板に実装されているため、従来のように円筒形状のコイルボビン上に位置検出センサを半田付けする必要がない。実装に際しては、フロー工程やリフロー工程等により自動化が可能であり、位置検出センサを、フレキシブル基板上の正確な位置に安定して実装することができる。そして、位置検出センサが実装されたフレキシブル基板は、基板側位置決め部が形成されており、基板側位置決め部に、コイルボビンに形成されたコイルボビン側位置決め部が当接することで、フレキシブル基板がコイルボビン上で、スプールの駆動方向に位置決めされる。位置検出センサが実装されたフレキシブル基板が、スプールの駆動方向に位置決めされることで、位置検出センサの固定位置が、スプールの駆動方向にずれることがないため、作業者によって位置検出センサの固定位置がばらつくこともなく、位置検出センサをコイルボビンに対して正確な位置に安定して固定できる。よって、スプールの移動量に応じた永久磁石と位置検出センサとの距離に狂いが生じることがなく、スプール位置検出の精度の低下を防止することができる。
【0015】
(2)(1)に記載のスプール式切換弁において、フレキシブル基板は、位置検出センサが実装される本体部を有し、本体部からスプールの駆動方向に直交する方向の両側に延伸する突出部を有すること、突出部は、基板側位置決め部を備えること、を特徴とするので、基板側位置決め部を有する突出部によって、位置検出センサが実装されたフレキシブル基板の本体部がコイルボビン上でスプールの駆動方向に位置決めされる。よって、位置検出センサをコイルボビンに対して正確な位置に固定でき、スプール位置検出の精度の低下を防止することができる。
【0016】
つまり、突出部は、本体部からスプールの駆動方向に直交する方向の両側に延伸し、それぞれの突出部が基板側位置決め部を備えるため、本体部のスプールの駆動方向に直交する方向両側でフレキシブル基板の位置決めが行われ、本体部がスプールの駆動方向と平行にコイルボビン上で位置決めされる。
フレキシブル基板が、コイルボビン上に、スプールの駆動方向に角度を持って取り付けられてしまうと、フレキシブル基板に実装された位置検出センサもスプールの駆動方向に角度を持ってコイルボビン上に取り付けられることとなるため、スプールの位置検出の精度が低下するおそれがある。
そこで、位置検出センサが実装された本体部をスプールの駆動方向と平行にコイルボビン上で位置決めすることで、位置検出センサがコイルボビン上にスプールの駆動方向に角度を持って取り付けられてしまうことを防止し、スプールの位置検出の精度が低下を防止することができる。
【0017】
(3)(2)に記載のスプール式切換弁において、突出部には、コイルを構成するマグネットワイヤが接続される接続部が形成されていること、を特徴とするので、マグネットワイヤの取付作業効率の向上を図ることが可能である。
すなわち、マグネットワイヤと接続される接続部は、フレキシブル基板の突出部に設けられている。フレキシブル基板は柔軟性を有するため、マグネットワイヤと接続部を半田付けする際には、作業者が半田付けしやすい位置に突出部を曲げてくることが可能である。よって、位置検出センサの半田付けを行った後、マグネットワイヤの半田付けを行う際に、位置検出センサが半田付けの熱によって損傷を受けることを防ぐために、位置検出センサの取り付け位置に対して裏側でマグネットワイヤを接続しなければならないというような作業効率の悪化を防ぐことができる。本体部に位置検出センサが実装されているため、突出部においてマグネットワイヤの半田付けを行えば、半田付けを行う箇所と位置検出センサの距離が離れているため、半田付けの際の熱により位置検出センサが損傷を受けるおそれはない。
【0018】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のスプール式切換え弁において、スプール式切換え弁は、スプールの駆動を制御する制御部を備えること、位置検出センサと、コイルと、はフレキシブル基板上の回路と、フレキシブル基板が嵌合されたフレキシブル基板用コネクタと、を介して、制御部と接続されること、を特徴とするので、フレキシブル基板をフレキシブル基板用コネクタに嵌合させることで、位置検出センサと、コイルとを一括して制御部と接続することが可能である。従来のように制御部の信号用端子とコイルボビンの信号回路を接続する作業と、制御部の通電用端子とマグネットワイヤを接続する作業とを別個に行う必要がなく、作業が煩雑となることを防止することができる。
【0019】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のスプール式切換弁において、フレキシブル基板がコイルボビンの外周面に位置決めされた状態で、フレキシブル基板の上からコイルボビンにコイルが巻回されることで、コイルボビンと、フレキシブル基板と、が一体となっていること、を特徴とするので、フレキシブル基板を固定するための特別な構造等を用いる必要なく、製造コストの増大を防ぐことができる。
【0020】
すなわち、従来は位置検出センサをコイルボビン上に直接固定していたが、本願発明においては、位置検出センサはフレキシブル基板に実装されているため、フレキシブル基板をコイルボビン上に固定する必要がある。フレキシブル基板を固定するための構造をコイルボビンに設けるなどすると、コイルボビンの形状が複雑となり、製造コストが増大するおそれがある。
そこで、フレキシブル基板がコイルボビンの外周面に位置決めされた状態で、フレキシブル基板の上からコイルボビンにコイルを巻回することで、コイルの締め付け力により、フレキシブル基板をコイルボビン上に固定するものとした。本願発明のように永久磁石を用いてスプールの駆動を行うスプール式切換弁において、コイルは必須の部材であるため、フレキシブル基板を固定するための特別な構造等を用いる必要なく、製造コストの増大を防ぐことができる。
【0021】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載のスプール式切換弁において、位置検出センサは、フレキシブル基板に表面実装されていること、を特徴とするので、位置検出センサがフレキシブル基板上で位置ずれを起こしにくく、スプール位置検出の精度の低下を防止することができる。
すなわち、表面実装による場合、フレキシブル基板上の、位置検出センサの端子を接続するパッドに半田ペーストを塗布した上、パッド位置と位置検出センサの端子位置がおおよそ合うように位置検出センサを設置し、リフロー工程により位置検出センサをフレキシブル基板上に固定する。このリフロー工程において、半田ペーストが熱により溶融し、液状化した時、液状化した半田ペーストの表面張力により、位置検出センサの端子がパッド中央に引き寄せられるため、位置検出センサの位置が適正化される。リフロー工程において、位置検出センサの位置が適正化されるため、位置検出センサがフレキシブル基板上で位置ずれを起こしにくく、スプール位置検出の精度の低下を防止することができる。
【0022】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載のスプール式切換弁において、フレキシブル基板には、温度センサが実装されていること、を特徴とするので、コイルの温度を監視可能となり、スプール式切換弁の異常な動作によるエア供給精度の低下を防止することが可能である。
すなわち、コイルを磁化させるために通電を行うと、通電によりコイルが発熱する。過度に発熱してしまうと、コイルの表面被覆が溶融して、隣接するマグネットワイヤ同士が短絡したり、コイルボビンが溶融したりしてしまい、スプール式切換弁が正常に動作しなくなり、アクチュエータ等へのエア供給の精度が低下するおそれがある。そこで、フレキシブル基板に温度センサを実装しておき、コイルの発熱が正常な範囲であるか否かの監視を行うことで、スプール式切換弁の異常な動作によるエア供給精度の低下を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】スプール式切換弁の非通電時の側方断面図である。
図2】スプール式切換弁のマイナス電流通電時の側方断面図である。
図3】スプール式切換弁のプラス電流通電時の側方断面図である。
図4】スプール式切換弁の永久磁石の挙動を表した図面である。(a)は非通電時であり、(b)はマイナス電流通電時であり、(c)はプラス電流通電時を表している。
図5】コイルボビンと、フレキシブル基板と、ホールICを分解した斜視図である。
図6】コイルボビンに、ホールICを実装したフレキシブル基板を取り付けた状態を表す斜視図である。
図7】コイルボビンに、フレキシブル基板の上からコイルを巻回した状態を表す斜視図である。
図8】コイルボビンに固定されたフレキシブル基板の突出部を持ち上げた状態を表す斜視図である。
図9】ホールICの特性を表すグラフである。
図10】第2の実施形態に係るフレキシブル基板と、コイルボビンと、の組み立て状態を表す斜視図である。
図11】コイルの巻き方向を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
本発明のスプール式切換弁1の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明のスプール式切換弁1は、アクチュエータ等の動作を制御する操作エアの圧力や流量を制御するためのものである。スプール式切換弁1は、図示しない制御部を有しており、当該制御部にはフレキシブル基板33のコイルボビン21上にない側の一端が接続されている。制御部とは、フレキシブル基板33上の通電回路33bを介したコイル29,31への通電の制御や、フレキシブル基板33上の信号回路33aを介してホールIC35が出力する電気信号を受信し、スプール25の位置の算出を行うものである(フレキシブル基板33についての詳細は後述する)。
スプール式切換弁1は、図1に示すように、筒状のケース11の両端の開口部が閉塞されることにより形成される外部ケース内に、コイルボビン21,バルブハウジング23,スプール25を有している。
【0025】
コイルボビン21は、一端が閉塞された円筒形状であり、非磁性体からなる。外周面には、位置検出センサとしてのホールIC35が実装されたフレキシブル基板33が取り付けられており、ホールIC35を挟むようにして、一対のコイル29,31が、フレキシブル基板33の上から巻回されている。コイル29とコイル31とは、1本のマグネットワイヤ38からなっており、接続されている。そして、コイル29は右巻きとなっており、コイル31は左巻きとなっている(図11参照)。なお、コイル29を左巻きとし、コイル31を右巻きとしても良い。
また、コイルボビン21の開口されている側の端部には、バルブハウジング23が接続されている。
【0026】
バルブハウジング23は、両端が開口された円筒形状であり、コイルボビン21の中空部21aと、バルブハウジング23の中空部23aは連通し、1つの空間をなしている。そして、中空部21aと中空部23aがなす空間に、スプール25が摺動可能に挿入されている。
【0027】
スプール25は、円柱状に形成されており、バルブハウジング23の中空部23aの内径とほぼ同一の外径を有する弁部251,252を備える。弁部251,252は、バルブハウジング23のスリット231a,231c,231d,231fを塞いだり、開けたりすることで流体の流量や圧力を調整する弁部251,252を備えている。
また、弁部251と弁部252との間に設けられたくびれ部254が、バルブハウジング23の中空部23aと、スプール25との間に隙間を生じさせており、当該隙間は、流体が流れる流路の一部となっている。
【0028】
バルブハウジング23の外周面には、バルブハウジング23の円周方向に沿って流路溝232a,232b,232cが設けられており、それぞれバルブハウジング23の軸心方向に等間隔に並んでいる。流路溝232bは入出力ポート11aに連通し、流路溝232aは入力ポート11bに連通し、流路溝232cは出力ポート11cに連通している。
スリット231a,231b,231cは、流路溝232a,232b,232cの底面と、バルブハウジング23の中空部23aとを貫通している。そして、スリット231a,231b,231cと対向する位置にスリット231d,231e,231fが設けられており、スリット231d,231e,231fも、流路溝232a,232b,232cの底面と、バルブハウジング23の中空部23aとを貫通している。よって、流路溝232aとバルブハウジング23の中空部23aとの間をスリット231a,231dを介して流体が流れることができ、流路溝232bとバルブハウジング23の中空部23aとの間をスリット231b,231eを介して流体が流れることができ、流路溝232cとバルブハウジング23の中空部23aとの間をスリット231c,231fを介して流体が流れることができる。
【0029】
スプール25の、コイルボビン21の中空部21aに挿入されている側の一端には、円柱状の磁石電機子27が、スプール25と軸心を同じくして取り付けられている。
磁石電機子27は、永久磁石271と、永久磁石271の両端に配置された極部273,275からなり、それぞれ軸方向の同心上に整列している。
永久磁石271は、コイル29側がS極、コイル31側がN極に分極されている(図4参照)。また、極部273,275は、強磁性体であり、永久磁石271の磁束を偏向させることができる。
磁石電機子27は軸心方向の中央部に貫通孔27aを有しており、貫通孔27aに、スプール25の一端に設けられた取付部253を挿通させ、取付部253の先端部に設けられた雄ネジ部にナット34を螺合させることで、スプール25と磁石電機子27とが一体となっている。
【0030】
コイル29,31に通電されていない状態では、永久磁石271は、永久磁石271の磁界力により、コイル29,31の中間位置(以下、中立位置という)に自動的に位置する。そして、ホールIC35は、永久磁石271の軸心と直交する方向の中心軸と、ホールIC35の中心とが同一の位置になるように配置されている。
【0031】
永久磁石271が中立位置にある状態では、弁部251がスリット231a,231dを塞ぎ、かつ、弁部252がスリット231c,231fを塞いでいるため、流体は流れない。
コイル29,31に通電すると、コイル29,31が磁化する。すると、図2,3,4に示すように、磁化したコイル29,31が永久磁石271を引き寄せるため、永久磁石271が取り付けられているスプール25が駆動する(詳細は後述)。スプール25を駆動させることで、スプール25が有する251,252によって、スリット231の開度を調節し、圧力や流量の制御を行う。
【0032】
また、磁化したコイル29,31が、永久磁石271を引き寄せると、ホールIC35と永久磁石271との距離が変化する。ホールIC35と永久磁石271との距離に応じて、ホールIC35が検知する永久磁石271の磁束密度が変化し、ホールIC35は、磁束密度に比例した電気信号を出力する。出力された電気信号を、信号回路33aを介して制御部が受信し、制御部は、受信した電気信号の電圧に応じて永久磁石271の移動量を算出する。永久磁石271はスプール25に取り付けられているため、永久磁石271の移動量を算出することは、スプール25の移動量を算出するに等しい。よって、永久磁石271の移動量が算出されることで、作業者はスプール25の移動量を知ることが可能となる。
【0033】
次に、コイルボビン21の外周面に取り付けられたフレキシブル基板33について詳しく説明する。
フレキシブル基板33は、図5に示すように、ホールIC35が実装される本体部331からスプール25の駆動方向(すなわちコイルボビン21の軸心方向)に直交する方向の両側に突出部332が延伸しており、略十字形状をなしている。
【0034】
突出部332の短手方向の端部であって、図5中奥側の端部は、基板側位置決め部332aとなっている。
コイルボビン21の外周面には、フレキシブル基板33の本体部331が設置される基板設置部21bが、コイルボビン21の軸方向に沿って形成されている。そして、コイルボビン21の円周方向に沿って壁部211,212が立設されており、壁部211と壁部212とで突出部差込溝21cを形成している。突出部差込溝21cの内面のうち、壁部211を構成する面が、基板側位置決め部332aに当接するコイルボビン側位置決め部211aとなっている。
フレキシブル基板33の本体部331を基板設置部21bに設置し、突出部332の基板側位置決め部332aに対し、スプール25の駆動方向に平行な方向からコイルボビン側位置決め部211aが当接するように、フレキシブル基板33を配置することで、フレキシブル基板33が、コイルボビン21に対し、スプール25の駆動方向に位置決めされる。
【0035】
フレキシブル基板33の表面上には、3本の信号回路33aが、本体部331長手方向に沿って、平行にプリントされており、信号回路33aは、突出部332の根本付近が端部となっている。そして、当該端部は、ホールIC35を実装するパッドを備えており、当該パッド上に、ホールIC35が表面実装される。
【0036】
ホールIC35は表面実装されることで、従来行われていたように手作業によって円筒形状のコイルボビン21上にホールIC35を半田付けする必要がないため、フレキシブル基板33上で位置ずれを起こしにくく、スプール25の位置検出の精度の低下を防止することができる。
すなわち、表面実装による場合、フレキシブル基板33上の、上記のパッドに半田ペーストを塗布した上、パッド位置とホールIC35の端子位置がおおよそ合うようにホールIC35を設置し、リフロー工程によりホールIC35をフレキシブル基板33上に固定する。このリフロー工程において、半田ペーストが熱により溶融し、液状化した時、液状化した半田ペーストの表面張力により、ホールIC35の端子がパッド中央に引き寄せられるため、ホールIC35の位置が適正化される。リフロー工程において、ホールIC35の位置が適正化されるため、ホールIC35がフレキシブル基板33上で位置ずれを起こしにくく、スプール25の位置検出の精度の低下を防止することができる。
【0037】
また、一対の通電回路33bが、フレキシブル基板33の本体部331上で、3本の信号回路33aを挟むように平行にプリントされ、かつ、ホールIC35が実装されている付近で90度方向を変えて突出部332に沿ってプリントされている。通電回路33bは、突出部332の先端付近にコイル29,31を構成するマグネットワイヤ38を接続するための接続部33cを有しており、半田付けによりマグネットワイヤ38を接続可能となっている。
【0038】
フレキシブル基板33の本体部331の、コイルボビン21上にない方の端部は、コネクタ嵌合部333となっており、コネクタ嵌合部333が、制御部に備わるフレキシブル基板用コネクタ(図示せず)に嵌合される。フレキシブル基板33は、信号回路33aと通電回路33bがプリントされているため、コネクタ嵌合部333をフレキシブル基板用コネクタに嵌合することで、信号回路33aと通電回路33bとを一括して制御部に接続することが可能である。従来のように制御部の信号用端子とコイルボビン21上に設けられた信号回路を接続する作業と、制御部の通電用端子とマグネットワイヤ38を接続する作業とを別個に行う必要がなく、作業が煩雑となることを防止することができる。
制御部は、通電回路33bを介したコイル29,31への通電量の制御や、信号回路33aを介して受信されるホールIC35が出力する電気信号に基づいてスプール25の位置の算出を行う。
【0039】
次にコイルボビン21とフレキシブル基板33の組付け方法について説明する。
図6に示すように、ホールIC35が実装されたフレキシブル基板33を、コイルボビン21に対し、フレキシブル基板33の本体部331がコイルボビン21の基板設置部21bに入るように、かつ、フレキシブル基板33の突出部332がコイルボビン21の突出部差込溝21cに入るように取り付ける。
基板側位置決め部332aに対し、スプール25の駆動方向に平行な方向からコイルボビン側位置決め部211aが当接するように、フレキシブル基板33を配置することで、フレキシブル基板33が、コイルボビン21に対し、スプール25の駆動方向に位置決めされる。
【0040】
ホールIC35は、表面実装によってフレキシブル基板33上の適正な位置に固定されているため、フレキシブル基板33がコイルボビン21上で、スプール25の駆動方向に位置決めされることで、ホールIC35のコイルボビン21上での固定位置が、スプール25の駆動方向にずれることがない。作業者によってホールIC35の固定位置がばらつくこともなく、ホールIC35をコイルボビン21に対して正確な位置に安定して固定でき、スプール25の移動量に応じた永久磁石271とホールIC35との距離に狂いが生じることがないため、スプール25の位置検出の精度の低下を防止することができる。
【0041】
また、突出部332の基板側位置決め部332aが、本体部331の円周方向両側で、コイルボビン側位置決め部211aと当接し、フレキシブル基板33を位置決めされることで、本体部331がスプール25の駆動方向と平行にコイルボビン21上で位置決めされる。
フレキシブル基板33が、コイルボビン21上に、スプール25の駆動方向に角度を持って取り付けられてしまうと、フレキシブル基板33に実装されたホールIC35もスプール25の駆動方向に角度を持ってコイルボビン21上に取り付けられることとなるため、スプール25の位置検出の精度が低下するおそれがある。
そこで、ホールIC35が実装された本体部331をスプール25の駆動方向と平行にコイルボビン21上で位置決めすることで、ホールIC35がコイルボビン21上にスプール25の駆動方向に角度を持って取り付けられてしまうことを防止し、スプール25の位置検出の精度が低下を防止することができる。
【0042】
ここで、フレキシブル基板33が位置ずれを起こさないよう、フレキシブル基板33の上から、コイル巻回部21d,21eに耐熱テープ等を巻回し、フレキシブル基板33を仮止めするのが望ましい。
次に、図7に示すように、仮止めされたフレキシブル基板33の上から、コイル巻回部21dにコイル31を、コイル巻回部21eにコイル29を巻回し、コイルボビン21と、フレキシブル基板33とを一体にする。
フレキシブル基板33の上からコイルボビン21にコイル29,31が巻回されることで、コイルボビン21と、フレキシブル基板33とが一体となるので、フレキシブル基板33を固定するための特別な構造等を用いる必要なく、製造コストの増大を防ぐことができる。
【0043】
すなわち、従来はホールIC35をコイルボビン21上に直接固定していたが、本願発明においては、ホールIC35はフレキシブル基板33に表面実装されているため、フレキシブル基板33をコイルボビン21上に固定する必要がある。フレキシブル基板33を固定するための構造をコイルボビン21に設けるなどすると、コイルボビン21の形状が複雑となり、製造コストが増大するおそれがある。
そこで、フレキシブル基板33がコイルボビン21の外周面に位置決めされた状態で、フレキシブル基板33の上からコイルボビン21にコイル29,31を巻回することで、コイル29,31の締め付け力により、フレキシブル基板33をコイルボビン21上に固定することとした。本願発明のように永久磁石271を用いてスプール25の駆動を行うスプール式切換弁1において、コイル29,31は必須の部材であるため、フレキシブル基板33を固定するための特別な構造等を用いる必要なく、製造コストの増大を防ぐことができるのである。
【0044】
コイル巻回部21d,21eにコイル31,29を巻回した後、マグネットワイヤ38を接続部33cに、半田付けにより接続する。
従来、マグネットワイヤ38の接続は、マグネットワイヤ38の半田付けの際の熱によって、ホールIC35や、ホールIC35が接続される信号回路33aが損傷を受けるのを防ぐために、例えば、ホールIC35の固定部分に対して裏側で行われるなど、ホールIC35の固定部分とは離れた場所で行われることが多かった。すると、ホールIC35の半田付けを行った後に、マグネットワイヤ38の半田付けを行うために、コイルボビン21を裏返さなければならない場合があるなど、作業効率が悪いという問題が生じていた。
【0045】
しかし、本発明においては、マグネットワイヤ38と通電回路33bの接続部33cが、フレキシブル基板33の突出部332に設けられている。フレキシブル基板33は柔軟性を有するため、マグネットワイヤ38と接続部33cを半田付けする際には、図8に示すように、作業者が半田付けしやすい位置に突出部332を曲げてくることが可能である。よって、従来のようにホールIC35の半田付けを行った後に、マグネットワイヤ38の半田付けを行うために、コイルボビン21を裏返さなければならないというような作業効率の悪化を防ぐことができる。
なお、フレキシブル基板33の本体部331にホールIC35が実装されているため、突出部332においてマグネットワイヤ38の半田付けを行えば、半田付けを行う箇所とホールIC35の距離が離れているため、半田付けの際の熱によりホールIC35や信号回路33aが損傷を受けるおそれはない。
【0046】
最後に、突出部差込溝21cに、フレキシブル基板33およびホールIC35の上から耐熱テープ等を巻回し、突出部332を固定することで、コイルボビン21とフレキシブル基板33の組付けが完了する。
【0047】
次にスプール式切換弁1の動作について説明する。
図1および図4(a)は、コイル29,31に通電されていない状態のスプール式切換弁1を示している。
コイル29,31に通電していない状態では、コイル29,31が磁化されておらず、永久磁石271は、図4(a)に示すように、コイル29と、コイル31との間の中立位置に位置している。このとき、図1に示すように、スプール25の弁部251が、バルブハウジング23のスリット231c,231fを塞ぎ、かつ、スプール25の弁部252が、バルブハウジング23のスリット231a,231dを塞いでいるため、流体は流れない。
【0048】
コイル29,31に通電すると、コイル29,31が磁化し、永久磁石271を引き寄せるため、永久磁石271が接続されているスプール25が駆動される。
詳しく説明すると、図11に示すように、コイル29は右巻きであり、コイル31は左巻きであるため、コイル29側から通電させると、図4(b)に示すように、コイル29は、ホールIC35側がS極、他方がN極に分極化され、かつ、コイル31は、ホールIC35側がS極、他方がN極に分極化される。すると、コイル29のS極と、永久磁石271のS極とが反発すると同時に、コイル31のS極が、永久磁石271のN極を引き寄せられるため、永久磁石271が図中矢印Bの方向に移動する。永久磁石271が図中矢印Bの方向に移動することで、永久磁石271と接続されているスプール25が図中矢印Bの方向に駆動される。
なお、コイル29を左巻きにし、コイル31を右巻きである場合には、コイル31側から通電させれば、図4(b)に示すように、コイル29は、ホールIC35側がS極、他方がN極に分極化され、かつ、コイル31は、ホールIC35側がS極、他方がN極に分極化され、スプール25が図中矢印Bの方向に駆動される。
【0049】
スプール25が図中右方向に駆動されると、図2に示すように、弁部252が、スリット231a,231dを開けるため、入力ポート11bから入力される流体が、図中矢印Fのように、流路溝232a、スリット231d、くびれ部254と中空部23aとの隙間、スリット231b、流路溝232bを通り、入出力ポート11aから出力される。
【0050】
通電極性を切り替え、コイル29,31に逆方向に通電されると、図4(c)に示すように、コイル29は、ホールIC35側がN極、他方がS極に分極化され、コイル31は、ホールIC35側がN極、他方がS極に分極化される。すると、コイル31のN極と、永久磁石271のN極とが反発すると同時に、コイル29のN極が、永久磁石271のS極を引き寄せられるため、永久磁石271が図中矢印Aの方向に移動する。永久磁石271が図中矢印Aの方向に移動することで、永久磁石271と接続されているスプール25が図中矢印Aの方向に駆動される。
【0051】
スプール25が図中左方向に駆動されると、図3に示すように、弁部251が、スリット231c,231fを開けるため、入出力ポート11aから入力される流体が、図中矢印Fのように、流路溝232b、スリット231b、くびれ部254と中空部23aとの隙間、スリット231f、流路溝232cを通り、出力ポート11cから出力される。
コイル29,31への通電を止めると、永久磁石271が図4(a)に示す中立位置に戻り、図1に示すように、スプール25の弁部251が、バルブハウジング23のスリット231c,231fを塞ぎ、かつ、スプール25の弁部252が、バルブハウジング23のスリット231a,231dを塞ぐため、流体は流れなくなる。
【0052】
次に、ホールIC35が、永久磁石271との距離に応じて出力する電気信号について説明する。
永久磁石271が移動すると、ホールIC35と永久磁石271との距離が変化する。ホールIC35と永久磁石271の距離に応じてホールIC35が検知する磁束密度が変化し、ホールIC35は、変化する磁束密度に比例した電気信号を出力する。
図9は、永久磁石271の移動量と、ホールIC35から出力される電気信号の関係を表したグラフである。横軸中央の移動量0mmが、図4(a)に示す永久磁石271の中立位置を表している。
そして、横軸中央から右側の正の値が、コイル29側からコイル29とコイル31に通電させ、図4(b)のように、永久磁石271が図4中矢印Bの方向へ移動したときの移動量であり、横軸中央から左側の負の値が、コイル31側からコイル31とコイル29に通電させ、図4(c)のように、永久磁石271が図4中矢印Aの方向への移動したときの移動量を表している。
なお、コイル29が左巻きであり、かつコイル31が右巻きである場合には、コイル31側からコイル31とコイル29に通電させたときの永久磁石271の移動量が、横軸中央から右側の正の値であり、コイル29側からコイル29とコイル31に通電させたときの永久磁石271の移動量が、横軸中央から左側の負の値である。
【0053】
永久磁石271が、中立位置から図中右側へ進むにつれ、ホールIC35と永久磁石271の距離が離れていき、その距離に比例して、ホールIC35から出力される電気信号の電圧は、一定の傾きをもって上昇していく。
一方で、永久磁石271が、中立位置から図中左側に進み、ホールIC35と永久磁石271の距離が離れていく場合には、図中右側に進む場合にホールIC35から出力される電圧が上昇するのと同じ傾きをもって、ホールIC35から出力される電圧が下降していく。
【0054】
出力された電気信号を、フレキシブル基板33にプリントされた信号回路33aを介して制御部が受信し、制御部は、受信した電気信号の電圧に応じて永久磁石271の移動量を算出する。永久磁石271はスプール25に取り付けられているため、永久磁石271の移動量を算出することは、スプール25の移動量を算出するに等しい。よって、永久磁石271の移動量が算出されることで、作業者はスプール25の移動量を知ることが可能となる。
【0055】
以上説明したように、第1の実施形態のスプール式切換弁1によれば、
(1)永久磁石271が取り付けられたスプール25と、スプール25が挿入されたコイルボビン21と、を備え、コイルボビン21に巻回されたコイル29,31を磁化することでスプール25の駆動を行うとともに、コイルボビン21に取り付けられたホールIC35と、永久磁石2171と、により、スプール25の位置検出を行うスプール式切換弁1において、コイルボビン21は、外周面に、ホールIC35が実装され、基板側位置決め部332aが形成されたフレキシブル基板33と、基板側位置決め部332aに当接し、フレキシブル基板33を、コイルボビン21に対し、スプール25の駆動方向に位置決めするコイルボビン側位置決め部211aと、を備えること、を特徴とするので、ホールIC35をコイルボビン21に対して正確な位置に安定して固定でき、スプール25位置検出の精度の低下を防止することができる。
【0056】
すなわち、ホールIC35は、フレキシブル基板33に実装されているため、従来のように円筒形状のコイルボビン21上にホールIC35を半田付けする必要がない。実装に際しては、フロー工程やリフロー工程等により自動化が可能であり、ホールIC35を、フレキシブル基板33上の正確な位置に安定して実装することができる。そして、ホールIC35が実装されたフレキシブル基板33は、基板側位置決め部332aが形成されており、基板側位置決め部332aに、コイルボビン21に形成されたコイルボビン側位置決め部211aが当接することで、フレキシブル基板33がコイルボビン21上で、スプール25の駆動方向に位置決めされる。ホールIC35が実装されたフレキシブル基板33が、スプール25の駆動方向に位置決めされることで、ホールIC35の固定位置が、スプール25の駆動方向にずれることがないため、作業者によってホールIC35の固定位置がばらつくこともなく、ホールIC35をコイルボビン21に対して正確な位置に安定して固定できる。よって、スプール25の移動量に応じた永久磁石271とホールIC35との距離に狂いが生じることがなく、スプール25の位置検出の精度の低下を防止することができる。
【0057】
(2)(1)に記載のスプール式切換弁1において、フレキシブル基板33は、ホールIC35が実装される本体部331を有し、本体部331からスプール25の駆動方向に直交する方向の両側に延伸する突出部332を有すること、突出部332は、基板側位置決め部332aを備えること、を特徴とするので、基板側位置決め部332aを有する突出部332によって、ホールIC35が実装されたフレキシブル基板33の本体部331がコイルボビン21上でスプール25の駆動方向に位置決めされる。よって、ホールIC35をコイルボビン21に対して正確な位置に安定して固定でき、スプール25の位置検出の精度の低下を防止することができる。
【0058】
つまり、突出部332は、本体部331からスプール25の駆動方向に直交する方向の両側に延伸し、それぞれの突出部332が基板側位置決め部332aを備えるため、本体部331のスプール25の駆動方向に直交する方向両側でフレキシブル基板33の位置決めが行われ、本体部331がスプール25の駆動方向と平行にコイルボビン21上で位置決めされる。
フレキシブル基板33が、コイルボビン21上に、スプール25の駆動方向に角度を持って取り付けられてしまうと、フレキシブル基板33に実装されたホールIC35もスプール25の駆動方向に角度を持ってコイルボビン21上に取り付けられることとなるため、スプール25の位置検出の精度が低下するおそれがある。
そこで、ホールIC35が実装された本体部331をスプール25の駆動方向と平行にコイルボビン21上で位置決めすることで、ホールIC35がコイルボビン21上にスプール25の駆動方向に角度を持って取り付けられてしまうことを防止し、スプール25の位置検出の精度が低下を防止することができる。
【0059】
(3)(2)に記載のスプール式切換弁1において、突出部332には、コイル29,31を構成するマグネットワイヤ38が接続される接続部33cが形成されていること、を特徴とするので、マグネットワイヤ38の取付作業効率の向上を図ることが可能である。
すなわち、マグネットワイヤ38が接続される接続部33cは、フレキシブル基板33の突出部332に設けられている。フレキシブル基板33は柔軟性を有するため、マグネットワイヤ38と接続部33cを半田付けする際には、作業者が半田付けしやすい位置に突出部332を曲げてくることが可能である。よって、ホールIC35の半田付けを行った後、マグネットワイヤ38の半田付けを行う際に、ホールIC35が半田付けの熱によって損傷を受けることを防ぐために、ホールIC35の取り付け位置に対して裏側でマグネットワイヤ38を接続しなければならないというような作業効率の悪化を防ぐことができる。本体部331にホールIC35が実装されているため、突出部332においてマグネットワイヤ38の半田付けを行えば、半田付けを行う箇所とホールIC35の距離が離れているため、半田付けの際の熱によりホールIC35が損傷を受けるおそれはない。
【0060】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のスプール式切換弁1において、スプール式切換弁1は、スプール25の駆動を制御する制御部を備えること、ホールIC35と、コイル29,31と、はフレキシブル基板33上の回路と、フレキシブル基板33が嵌合されたフレキシブル基板用コネクタと、を介して、制御部と接続されること、を特徴とするので、フレキシブル基板33をフレキシブル基板用コネクタに嵌合させることで、ホールIC35と、コイル29,31とを一括して制御部と接続することが可能である。従来のように制御部の信号用端子とコイルボビン21の信号回路を接続する作業と、制御部の通電用端子とマグネットワイヤ38を接続する作業とを別個に行う必要がなく、作業が煩雑となることを防止することができる。
【0061】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のスプール式切換弁1において、フレキシブル基板33がコイルボビン21の外周面に位置決めされた状態で、フレキシブル基板33の上からコイルボビン21にコイル29,31が巻回されることで、コイルボビン21と、フレキシブル基板33と、が一体となっていること、を特徴とするので、フレキシブル基板33を固定するための特別な構造等を用いる必要なく、製造コストの増大を防ぐことができる。
すなわち、従来はホールIC35をコイルボビン21上に直接固定していたが、本願発明においては、ホールIC35はフレキシブル基板33に実装されているため、フレキシブル基板33をコイルボビン21上に固定する必要がある。フレキシブル基板33を固定するための構造をコイルボビン21に設けるなどすると、コイルボビン21の形状が複雑となり、製造コストが増大するおそれがある。
そこで、フレキシブル基板33がコイルボビン21の外周面に位置決めされた状態で、フレキシブル基板33の上からコイルボビン21にコイル29,31を巻回することで、コイル29,31の締め付け力により、フレキシブル基板33をコイルボビン21上に固定するものとした。本願発明のように永久磁石271を用いてスプール25の駆動を行うスプール式切換弁1において、コイル29,31は必須の部材であるため、フレキシブル基板33を固定するための特別な構造等を用いる必要なく、製造コストの増大を防ぐことができる。
【0062】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載のスプール式切換弁1において、ホールIC35は、フレキシブル基板33に表面実装されていること、を特徴とするので、ホールIC35がフレキシブル基板33上で位置ずれを起こしにくく、スプール25の位置検出の精度の低下を防止することができる。
すなわち、表面実装による場合、フレキシブル基板33上の、ホールIC35の端子を接続するパッドに半田ペーストを塗布した上、パッド位置とホールIC35の端子位置がおおよそ合うようにホールIC35を設置し、リフロー工程によりホールIC35をフレキシブル基板33上に固定する。このリフロー工程において、半田ペーストが熱により溶融し、液状化した時、液状化した半田ペーストの表面張力により、ホールIC35の端子がパッド中央に引き寄せられるため、ホールIC35の位置が適正化される。リフロー工程において、ホールIC35の位置が適正化されるため、ホールIC35がフレキシブル基板33上で位置ずれを起こしにくく、スプール25の位置検出の精度の低下を防止することができる。
【0063】
<第2の実施形態>
次に本発明のスプール式切換弁1の第2の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、第1の実施形態と異なる点のみ説明する。
本実施形態においては、図10に示すように、フレキシブル基板36の突出部362の先端に、温度センサ37を実装されている。
フレキシブル基板36は、両面基板となっており、ホールIC35や温度センサ37を実装する側の面(以下表面)に、ホールIC35が接続される信号回路36aと、コイル29,31が接続される通電回路36bとを有する。温度センサ37が接続される温度センサ用信号回路36cは、フレキシブル基板36の表面と裏面とにプリントされており、ビア36dにより、表面と裏面の温度センサ用信号回路36cが接続されている。裏面側の温度センサ用信号回路は図示されていないが、ビア36dからコネクタ嵌合部363まで形成されている。
なお、フレキシブル基板36は、必ずしも両面基板である必要はなく、信号回路36a,通電回路36b,温度センサ用信号回路36cが全てフレキシブル基板36の表面にプリントされていることとしても良い。さらに、温度センサ37の実装位置についても、突出部362の先端に限るものではない。
【0064】
フレキシブル基板36は、第1の実施形態と同様に、コネクタ嵌合部363を備えており、コネクタ嵌合部363が、制御部に備わるフレキシブル基板用コネクタ(図示せず)に嵌合される。フレキシブル基板36は、信号回路36aと通電回路36bと温度センサ用信号回路36cとがプリントされているため、コネクタ嵌合部363をフレキシブル基板用コネクタに嵌合することで、信号回路33aと通電回路33bと温度センサ用信号回路36cとを一括して制御部に接続することが可能である。これにより、制御部は、ホールIC35によるスプール25の位置検出と、コイル29,31への通電と、温度センサ37による温度の監視とを行うことが可能となる。
【0065】
温度センサ37は、コイル29,31の近傍に配置されているため、コイル29,31の温度を監視可能であり、スプール式切換弁1の異常な動作によるエア供給精度の低下を防止することが可能である。
すなわち、コイル29,31を磁化させるために通電を行うと、通電によりコイル29,31が発熱する。過度に発熱してしまうと、コイル29,31の表面被覆が溶融して、隣接するマグネットワイヤ38同士が短絡したり、コイルボビン21が溶融したりしてしまい、スプール式切換弁1が正常に動作しなくなり、アクチュエータ等へのエア供給の精度が低下するおそれがある。そこで、フレキシブル基板36に温度センサ37を実装しておき、コイル29,31の発熱が正常な範囲であるか否かの監視を行うことで、スプール式切換弁1の異常な動作によるエア供給精度の低下を防止することが可能である。
【0066】
以上説明したように、第2の実施形態のスプール式切換弁1によれば、
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載のスプール式切換弁1において、フレキシブル基板36には、温度センサ37が実装されていること、を特徴とするので、コイル29,31の温度を監視可能となり、スプール式切換弁1の異常な動作によるエア供給精度の低下を防止することが可能である。
すなわち、コイル29,31を磁化させるために通電を行うと、通電によりコイル29,31が発熱する。過度に発熱してしまうと、コイル29,31の表面被覆が溶融して、隣接するマグネットワイヤ38同士が短絡したり、コイルボビン21が溶融したりしてしまい、スプール式切換弁1が正常に動作しなくなり、アクチュエータ等へのエア供給の精度が低下するおそれがある。そこで、フレキシブル基板36に温度センサ37を実装しておき、コイル29,31の発熱が正常な範囲であるか否かの監視を行うことで、スプール式切換弁1の異常な動作によるエア供給精度の低下を防止することが可能である。
【0067】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、上記実施例においては、突出部332の短手方向の端部であり、図5中奥側の端部を基板側位置決め部332aとし、突出部差込溝21cの内面のうち、壁部211を構成する面を、コイルボビン側位置決め部211aとして、フレキシブル基板33の位置決めを行っているが、突出部332の短手方向の端部であり、図5中手前側の端部を基板側位置決め部とし、突出部差込溝21cの内面のうち、壁部212を構成する面を、基板側位置決め部として、フレキシブル基板33の位置決めを行うことも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 スプール式切換弁
21 コイルボビン
25 スプール
33 フレキシブル基板
35 ホールIC(位置検出センサの一例)
271 永久磁石
211a コイルボビン側位置決め部
332a 基板側位置決め部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11