特許第6883113号(P6883113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883113
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】鉄道車両の床構造
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/00 20060101AFI20210531BHJP
   B61D 17/10 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   B61D17/00 A
   B61D17/10
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-540746(P2019-540746)
(86)(22)【出願日】2017年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2017032725
(87)【国際公開番号】WO2019049386
(87)【国際公開日】20190314
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷河 利信
(72)【発明者】
【氏名】川島 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】鬼武 康夫
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−527368(JP,A)
【文献】 実開平04−055464(JP,U)
【文献】 実開平01−063090(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
B61D 17/10
B61D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の客室の車両長手方向全体に亘って並べられ、通電加熱ヒーターを有する複数の床パネルと、
車両長手方向に延在し、前記床パネルの車幅方向端部と側構体との間に配置される配線ダクトと、
前記配線ダクトに配線され、前記通電加熱ヒーターに電力を供給する給電ケーブルと、
前記配線ダクトのうち前記床パネル側の車両長手方向に沿った側壁部に形成され、前記給電ケーブルが通る配線挿通口と、
床下に設けられ、電力を供給する幹線ケーブルが通る貫通管と、
前記配線ダクトの下面より上方で且つ前記配線ダクトと前記側構体との間に設けられ、前記幹線ケーブルが接続される入力部と、前記給電ケーブルが接続される出力部とを有する端子台と、を備え、
前記給電ケーブルは、前記出力部に接続される複数の給電ケーブルを含み、
前記配線ダクトは、その上壁部又は前記側構体側の側壁部に設けられ、前記給電ケーブルが通る開口部を更に有する、鉄道車両の床構造。
【請求項2】
前記側構体は、前記客室においてドア開口部を有し、
前記配線ダクトは、前記床パネルの前記端部と前記ドア開口部との間を通り、前記客室の車両長手方向全体に亘って延在する、請求項1に記載の鉄道車両の床構造。
【請求項3】
前記給電ケーブルは、前記複数の床パネルのうち少なくとも1つの床パネルの前記配線ダクト側の側面から延出し、
前記配線挿通口は、前記給電ケーブルと前記床パネルの前記側面との接続部に対向している、請求項1又は2に記載の鉄道車両の床構造。
【請求項4】
前記給電ケーブルは、前記複数の床パネルのうち少なくとも1つの床パネルに設けられた電源リード線、及び、前記電源リード線に接続されて前記配線ダクトに載置される中継ケーブルのうち少なくとも一方を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鉄道車両の床構造。
【請求項5】
前記電源リード線と前記中継ケーブルとの接続部の直上において前記配線ダクトの上部又は前記床パネルの上部には、前記接続部にアクセスするための点検口が形成されている、請求項4に記載の鉄道車両の床構造。
【請求項6】
前記床パネルは、その前記配線ダクト側の車両長手方向に沿った側面から出る前記電源リード線を有する、請求項4又は5に記載の鉄道車両の床構造。
【請求項7】
前記複数の床パネルのうち一部の床パネルは、その隣の床パネルと直列接続する中継リード線を有し、
前記複数の床パネルのうち残りの床パネルは、前記電源リード線を有する、請求項4又は5に記載の鉄道車両の床構造。
【請求項8】
前記配線ダクトの上面と前記床パネルの上面とは、互いに略同一平面上に配置されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鉄道車両の床構造。
【請求項9】
前記配線ダクトのケーブル収納空間は、上方に向けて車両長手方向に沿って連続して開口し、
前記配線ダクトは、前記ケーブル収納空間を上方から閉鎖する蓋を有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鉄道車両の床構造。
【請求項10】
前記側構体は、車幅方向一方側の第1側構体と車幅方向他方側の第2側構体とを含み、
前記配線ダクトは、前記床パネルの車幅方向一方側の端部と前記第1側構体との間に配置された第1配線ダクトと、前記床パネルの車幅方向他方側の端部と前記第2側構体との間に配置された第2配線ダクトとを含み、
前記給電ケーブルは、前記第1配線ダクトを通る第1給電ケーブルと、前記第2配線ダクトを通る第2給電ケーブルとを含み、
前記複数の床パネルは、前記第1給電ケーブルから電力が供給される第1床パネルと、前記第2給電ケーブルから電力が供給される第2床パネルとを含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鉄道車両の床構造。
【請求項11】
鉄道車両の客室の車両長手方向全体に車両長手方向に亘って並べられ、通電加熱ヒーターを有する複数の床パネルと、
車両長手方向に延在し、前記床パネルの車幅方向端部と側構体との間に配置される配線ダクトと、
前記配線ダクトに配線され、前記通電加熱ヒーターに電力を供給する給電ケーブルと、
前記配線ダクトのうち前記床パネル側の車両長手方向に沿った側壁部に形成され、前記給電ケーブルが通る配線挿通口と、
前記配線ダクトの下面より上方で且つ前記配線ダクトと前記側構体との間に設けられ、前記給電ケーブルが接続される端子台と、を備える、鉄道車両の床構造。
【請求項12】
床下に設けられ、電力を供給する幹線ケーブルが通る貫通管を更に備え、
前記端子台は、前記幹線ケーブルが接続される入力部と、前記給電ケーブルが接続される出力部とを有し、
前記給電ケーブルは、前記出力部に接続される複数の給電ケーブルを含み、
前記配線ダクトは、その上壁部又は前記側構体側の側壁部に設けられ、前記給電ケーブルが通る開口部を更に有する、請求項11に記載の鉄道車両の床構造。
【請求項13】
前記端子台は、中継端子台であり、
前記床構造は、電力を供給する幹線ケーブルと、前記幹線ケーブルが接続されるメイン端子台と、前記メイン端子台を前記中継端子台に接続する支線ケーブルと、を更に備え、
前記メイン端子台は、前記幹線ケーブルが接続される入力部と、前記支線ケーブルが接続される出力部とを有し、
前記中継端子台は、前記支線ケーブルが接続される入力部と、前記給電ケーブルが接続される出力部を有し、
前記配線ダクトは、その上壁部又は前記側構体側の側壁部に設けられ、前記給電ケーブルが通る開口部を更に有する、請求項11に記載の鉄道車両の床構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーター付き床パネルが搭載された鉄道車両の床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の床構造には、客室の暖房のために、ヒーターを内蔵した複数の床パネルが車体長手方向全体に亘って敷き詰められたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013−511021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたヒーター付き床パネルでは、床パネルの下面から電線が出るため、配線接続作業と床パネル敷設作業とを同時に行う必要がある。そのため、配線接続作業が煩雑になると共に、配線に不具合が生じた場合には、配線にアクセスするために床パネルを一旦取り外す必要がある。更に、各床パネルから出る複数の電線を纏めて配線するスペースを床下に設ける必要もある。また、床パネルの側面や上面から給電用の電線を出す場合も、各電線を床下に導くための場所に制約があるため、各電線を天井に経由させる等して配線が煩雑になる問題がある。
【0005】
そこで本発明は、ヒーター付き床パネルの配線及びメンテナンスの作業が容易で、車両床下に特別な配線用空間を設けずに済む鉄道車両の床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る鉄道車両の床構造は、鉄道車両の客室の車両長手方向全体に亘って並べられ、通電加熱ヒーターを有する複数の床パネルと、車両長手方向に延在し、前記床パネルの車幅方向端部と側構体との間に配置される配線ダクトと、前記配線ダクトに配線され、前記通電加熱ヒーターに電力を供給する給電ケーブルと、前記配線ダクトのうち前記床パネル側の車両長手方向に沿った側壁部に形成され、前記給電ケーブルが通る配線挿通口と、を備える。
【0007】
前記構成によれば、床パネルの車幅方向端部と側構体との間に配線ダクトが配置され、給電ケーブルが配線ダクトに配線されて配線ダクトの側壁部の配線挿通口を通って床パネルに導かれる。そのため、床パネルの側方で車両長手方向に延びる配線ダクトにおいて配線作業を行うことができ、ヒーター付き床パネルの配線及びメンテナンスの作業を容易に行うことができる。また、給電ケーブルは、床パネルの側方に配置された配線ダクトにおいて配線されるため、車両床下に特別な配線用空間を設けずに済む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒーター付き床パネルの配線及びメンテナンスが容易で、車両床下に特別な配線用空間を設けずに済む鉄道車両の床構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る鉄道車両の床構造等を模式的に示した平面図である。
図2図1に示す床構造の要部断面図である。
図3図2に示す床構造の要部斜視図である。
図4図1に示す床構造の沓摺及びその近傍の平面図である。
図5図1に示す床構造の配線図である。
図6】第2実施形態に係る床構造の点検口及びその近傍を示す平面図である。
図7】第3実施形態に係る床構造の配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両1の床構造3等を模式的に示した平面図である。図1に示すように、鉄道車両1は、内部に客室Cが形成された車体2を備える。ここで、客室Cとは、乗客の座席が配置される空間であって、当該空間とは区分けされた他の空間(例えば、車体長手方向端部の出入口空間等)は含まれない。車体2は、台枠14と、台枠14の車幅方向両側の端部からそれぞれ上方に延びる第1側構体4及び第2側構体5と、台枠14の車両長手方向両側の端部からそれぞれ上方に延びる第1妻構体6及び第2妻構体7と、側構体4,5及び妻構体6,7の上端部に接続される屋根構体(図示せず)とを備える。側構体4,5は、客室Cと車両長手方向位置が重なる位置においてドア開口部8を有する。なお、側構体4・5、台枠14、妻構体6・7及び屋根構体が結合された後、床構造3は台枠14に取り付けられる。
【0012】
床構造3は、客室Cの車両長手方向全長に亘って連続して並べられた複数の床パネル10を備える。床パネル10は、その内部に通電加熱ヒーター11を有する。床パネル10の各々は、平面視において床構造3の車幅方向一方側から他方側に延びた矩形状を有する。各床パネル10の車幅方向一方側の端部と第1側構体4との間には、床構造3内に第1配線ダクト12が配置されている。各床パネル10の車幅方向他方側の端部と第2側構体5との間には、第2配線ダクト13が配置されている。各配線ダクト12,13は、客室Cの車両長手方向全体に亘って延在している。なお、各配線ダクト12,13の各々は、種々の都合から複数のダクトを車両長手方向に互いに連結して構成されるが、一体で車両長手方向全体に延びたダクトであってもよい。
【0013】
図2は、図1に示す床構造3の要部断面図である。図3は、図2に示す床構造3の要部斜視図である。図4は、図1に示す床構造3の沓摺9及びその近傍の平面図である。なお、第1及び第2配線ダクト12,13の構成は、鏡面対称であるが互いに同じであるので、以下の説明では代表して第1配線ダクト12について主に説明する。図2に示すように、床パネル10及び配線ダクト12は、床構体14に下方から支持されている。具体的には、床構体14は、互いに車幅方向に離間して車両長手方向に延びる一対の側梁15(図2では片側の側梁15のみ図示)と、車幅方向に延びて一対の側梁15を連結する横梁16とを有する。床パネル10及び配線ダクト12は、例えば横梁16に固定される。床パネル10と配線ダクト12との間には、スペーサ17が介設されているがスペーサ17は無くてもよい。
【0014】
図3に示すように、配線ダクト12は、車両長手方向に延び、車幅方向寸法よりも鉛直方向寸法が短い扁平な略直方体形状を有する。配線ダクト12は、車両長手方向に延びるケーブル収納空間S1,S2を有するダクト本体21と、ダクト本体21のケーブル収納空間S1,S2を上方から閉鎖する蓋22とを有する。ダクト本体21は、ケーブル収納空間S1,S2の車幅方向両側において車両長手方向に沿って延びる側壁部21a,21bを有する。ダクト本体21は、その下側の部材(例えば、横梁16)にネジやボルト等の固定具29で固定される。但し、固定具はこれらに限定されない。
【0015】
ケーブル収納空間S1,S2には、一対の側壁部21a,21bの間に配置され、後述する給電ケーブル25等が車両長手方向に挿通される。ケーブル収納空間S1及び側壁部21bは車体外側の側構体側に位置し、ケーブル収納空間S2及び側壁部21aは車体中央寄りに位置する。ダクト本体21に形成されたケーブル収納空間S1,S2は、その車両長手方向全体に亘って連続して上方に向けて開口している。蓋22は、平板状であり、ダクト本体21の側壁部21a,21bの水平部に対して固定具23(例えば、ネジやボルト)で着脱自在に固定され、ケーブル収納空間S1,S2を上方から覆う。なお、蓋22は、平板状に限られず、例えば、逆凹形断面を有する形状でもよい。図3では、ネジ座が側壁部21a、21bのH形の水平部の下面に設けられており、蓋22は固定具23とネジ座を用いて固定されている。但し、ダクト本体の材質や板厚によっては、ネジ座を用いなくてもよい。
【0016】
これにより、給電ケーブル25をケーブル収納空間S1,S2に車両長手方向に順次挿入していかなくても、給電ケーブル25を上方から下方に平行移動させてケーブル収納空間S1,S2に収納できる。よって、配線ダクト12や給電ケーブル25を下から順に積み上げるように組立可能となり、車両組立作業が容易となる。また、給電ケーブル25の交換等の際にも、蓋22をあけて給電ケーブル25を上方に引き上げるだけで取外し可能となり、メンテナンス作業も容易になる。
【0017】
ダクト本体21は、ケーブル収納空間S1とケーブル収納空間S2とを仕切る仕切壁部21cが底壁部21dから上方に突出している。仕切壁部21cの上端高さは、側壁部21a,21bの上端高さと同じである。よって、蓋22は、側壁部21a,21bだけでなく仕切壁部21cによっても下方から支持されうる。なお、仕切壁部21cの数は任意であり、仕切壁部21cは無くてもよい。また、本実施形態の配線ダクト12は、略四角断面形状を有するが、これに限られず、H形断面やU形断面を有する形状でもよい。本実施形態ではケーブル収納空間がS1とS2に2つのスペースに分かれ、S1がヒーター付床パネルへアクセスする給電ケーブル25用とし、S2は出入り口の沓摺りの通電ヒーター用の配線スペースとしているが、必ずしも2つのスペースに分ける必要はなく1個のスペースでも良いし、3個以上のスペースに分けてもよい。
【0018】
給電ケーブル25は、車両床下の電源装置(図示せず)からの電力を中継端子台36を介して床パネル10の通電加熱ヒーター11(図1参照)に供給するものである。給電ケーブル25は、床パネル10に設けられた電源リード線31と、電源リード線31に接続された状態で配線ダクト12に載置されて中継端子台36まで延びる中継ケーブル32とを有する。電源リード線31は、床パネル10に一体化されたものであり、床パネル10の配線ダクト12側の車両長手方向に沿った側面から突出している。
【0019】
ダクト本体21のうち床パネル10側の側壁部21aには、電源リード線31が通る配線挿通口26が形成されている。配線挿通口26は、給電ケーブル15(具体的には、電源リード線31)と床パネル10の側面10aとの接続部A(図4参照)に車幅方向に対向している。これにより、配線ダクト12と床パネル10との間で給電ケーブル25を最短経路で配線できると共に、給電ケーブル25の湾曲が最低限で済むため損傷リスクも低減できる。
【0020】
配線挿通口26は、蓋22がダクト本体21に固定されていない状態で上方に開放されている。そのため、給電ケーブル25の組付時には、蓋22を取り外した状態において中継ケーブル32を上方から下方に平行移動させて配線挿通口26に挿通させることができ、組立作業性が良い。図4に示すように、配線挿通口26に挿通された電源リード線31のコネクタ31aは、配線ダクト12内のケーブル収納空間S1において中継ケーブル32のコネクタ32aと嵌合接続される。
【0021】
配線ダクト26の上部には、互いに嵌合接続されたコネクタ31a,32a(即ち、電源リード線31と中継ケーブル32との接続部)の直上において、コネクタ31a,32aにアクセスするための点検口12aが形成されている。即ち、蓋22はダクト本体21の長手方向に並ぶように互いに分割されており、分割された蓋22の一部を取り外すことで点検口12aが形成される。点検口12aの車両長手方向寸法は、床パネル10の車両長手方向寸法より小さい。これにより、点検口12aから容易にコネクタ31a,32aを点検できると共に、コネクタ31a,32a同士の接続を解除することで中継ケーブル32側を取り外さなくても、ヒーター付きの床パネル10を容易に交換できる。
【0022】
側構体4には、ブラケット35を介して中継端子台36が支持されている。中継端子台36は、メイン端子台37(図2及び5参照)からの支線ケーブル41のプラス線が接続される正入力端子36a(入力部)と、支線ケーブル41のマイナス線が接続される負入力端子36b(入力部)と、複数の中継ケーブル32のプラス線が接続される正出力端子36c(出力部)と、複数の中継ケーブル32のマイナス線が接続される負出力端子36d(出力部)とを有する。正入力端子36aは正出力端子36cと導通し、負入力端子36bは負出力端子36dと導通している。即ち、正出力端子36c及び負出力端子36dに複数の電線を夫々接続することで、分岐回路が形成される。なお、正出力端子36c及び負出力端子36dの各々は、複数設けてもよい。
【0023】
中継端子台36は、配線ダクト12より上方で且つ配線ダクト12と側構体4との間に配置されている。配線ダクト12の上壁部(即ち、蓋22)には、中継ケーブル32が通る開口部27が形成されている。本実施形態では、中継ケーブル32が配線ダクト12から中継端子台36に向けて引き出される箇所に蓋22を設けない又は蓋22に開口を設けることで、開口部27が形成される。なお、スペースに余裕がある場合には、開口部27は、配線ダクト12の側構体4側の側壁部21bに設けられてもよい。
【0024】
図2に示すように、配線ダクト12の上面(即ち、蓋22の上面)と床パネル10の上面とは、互いに略同一平面上に配置されている。床パネル10及び配線ダクト12には、上方から床敷物30が載せられている。即ち、床パネル10及び配線ダクト12の各上面が面一であることで、床敷物30を床パネル10及び配線ダクト12の上面に直接敷いても段差が発生しない。
【0025】
側構体4には、ブラケット38を介してメイン端子台37が支持されている。メイン端子台37の構造は、中継端子台36の構造と同じである。即ち、メイン端子台37は、車両床下の電源装置(図示せず)からの幹線ケーブル42が接続される一対の入力端子37a(入力部)と、複数の支線ケーブル41が接続される一対の出力端子37c(出力部)とを有する。メイン端子台37も、中継端子台36と同様に、配線ダクト12より上方で且つ配線ダクト12と側構体4との間に設けられている。なお、中継端子台36からメイン端子台37へ配線される支線ケーブル41は車体側壁内を通ってもよいし、配線ダクト12内を通ることも可能である。また、メイン端子台37または中継端子台36は、車体側壁内だけでなく、腰掛下や機器箱内にあってもよい。
【0026】
台枠14には、車両床下から車両床上に向けて貫通する貫通管43が設けられている。即ち、貫通管43の上端部は、メイン端子台37と共通の空間に配置されている。具体的には、貫通管43は、側梁15に形成された貫通孔15aに挿通された状態で台枠14に固定されている。幹線ケーブル42は、貫通管43を通過することにより、車両床下の電源装置(図示せず)を車両床上のメイン端子台37に接続している。前記構成により、側構体4近傍で配線をまとめることができるので、車両床下に床パネル10のための配線をまとめるスペースを別途作る必要がない。
【0027】
図4に示すように、車体2のドア開口部8には、ドア開口部8の下縁となる沓摺9(敷居)が設けられている。沓摺9は、その内部に通電加熱ヒーターが内蔵されている。沓摺9からは車幅方向内方に給電ケーブル45が延出している。配線ダクト12は、床パネル10の端部とドア開口部8との間を通っている。配線ダクト12の車幅方向外側(沓摺9側)の側壁部21bには、側壁部21aの配線挿通口26と同様に、配線挿通口46が形成されている。配線挿通口46は、沓摺9と給電ケーブル45との接続部Bに車幅方向に対向している。沓摺9の給電ケーブル45は、配線挿通口46を通過して配線ダクト12内に車両長手方向に挿通されている。なお、配線ダクト12には、給電ケーブル25,45以外にも他のケーブル等を挿通させてもよい。また、沓摺9は通電加熱ヒーターが内蔵されていないものでもよく、その場合には給電ケーブル45は存在しない。
【0028】
図5は、図1に示す床構造3の配線図である。図5に示すように、第1配線ダクト12(図1参照)を通る給電ケーブル25を第1給電ケーブル25Aとし、第2配線ダクト13(図1参照)を通る給電ケーブル25を第2給電ケーブル25Bとする。全ての床パネル10のうち一部の床パネルを第1床パネル10Aとし、全ての床パネル10のうち残りの床パネルを第2床パネル10Bとする。図5の例では、各床パネル10を車両長手方向一端側から順番にカウントして、奇数番の床パネルを第1床パネル10Aとし、偶数番の床パネルを第2床パネル10Bとする。
【0029】
第1給電ケーブル25Aは、第1床パネル10Aの車幅方向一方側の端部に接続され、第1給電ケーブル25Aを介して第1床パネル10Aに電力が供給される。第2給電ケーブル25Bは、第2床パネル10Bの車幅方向他方側の端部に接続され、第2給電ケーブル25Bを介して第2床パネル10Bに電力が供給される。このように、配線ダクト12,13が二系統あることで、床パネル10の配線位置(左右どちらか)に適した経路で各給電ケーブル25を配線できると共に、第1床パネル10Aと第2床パネル10Bとで異なる温度指示を出すことや、第1床パネル10A及び第2床パネル10Bのオン/オフを異ならせること等を容易に行える。なお、前記した構成では、床パネル10の車幅方向両側に配線ダクト12,13及び給電ケーブル25を配置したが、床パネル10の車幅方向一方側のみに配線ダクト及び給電ケーブルを配置した構成としてもよい。
【0030】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る床構造103の点検口110a及びその近傍を示す平面図である。図6に示すように、床パネル110には、配線ダクト112に向けて開放された切欠空間S3が形成されており、切欠空間S3を形成する面のうち配線ダクト112に向いた車両長手方向に沿った側面110aから電源リード線131が突出している。電源リード線131の先端には、コネクタ131aが設けられている。配線ダクト112のうち床パネル110側の側壁部に形成された配線挿通口126は、床パネル110の切欠空間S3に車幅方向に対向している。即ち、配線挿通口126は、給電ケーブル125の電源リード線131と床パネル110の側面110aとの接続部Aに車幅方向に対向している。配線ダクト112に収納された中継ケーブル132は、配線挿通口126を通り、その先端に設けたコネクタ132aが切欠空間S3においてコネクタ131aと嵌合接続される。切欠空間S3は、中継ケーブル132が挿入可能であり、中継ケーブル132に部分的にゴム板を巻きつけてスポンジで埋めたうえで、シールが充填されることにより防水されてもよい。
【0031】
床パネル110の上部には、コネクタ131a,132aの直上において、コネクタ131a,132aにアクセスするための点検口110bが形成されている。点検口110bは、着脱自在なキャップ150により閉鎖される。これにより、キャップ150を取り外して点検口110bから容易にコネクタ131a,132aを点検できると共に、ヒーター付きの床パネル110の交換も容易に行える。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0032】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る床構造203の配線図である。図7に示すように、各ヒーター付き床パネルのうち第1床パネル210Aは、その車幅方向一方側の側面から延出して、配線ダクト21に挿通され隣の床パネルと直列接続する中継リード線231Aを有する。各ヒーター付き床パネルのうち第2床パネル210Bは、その車幅方向一方側の側面から延出して配線ダクト12(図2参照)を通る電源リード線231Bを有する。電源リード線231Bは、第1実施形態と同様に、配線ダクト12を通過する中継ケーブルを介して端子台236に接続される。この構成によれば、配線ダクト12を通過する給電ケーブルの本数を低減することができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。本実施形態では、中継リード線231Aは車幅方向一方側の側面から延出して、配線ダクト21を通過し隣の床パネルと直列接続しているが、車両長手方向一方側の側面から延出してもよいし、配線ダクト21内を介さず、直接隣の床パネルと直列接続してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 鉄道車両
3,103,203 床構造
4,5 側構体
8 ドア開口部
10,110,210 床パネル
10b 点検口
11 通電加熱ヒーター
12,13,112 配線ダクト
21 ダクト本体
21a,21b 側壁部
22 蓋
25,125 給電ケーブル
26 配線挿通口
27 開口部
31,131,231B 電源リード線
32,132,231A 中継ケーブル
36 中継端子台
37 メイン端子台
42 幹線ケーブル
43 貫通管
112a 点検口
C 客室
S1,S2 ケーブル収納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7