特許第6883125号(P6883125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883125
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】野菜果実混合飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20210531BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20210531BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20210531BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   A23L2/52 101
   A23L2/02 A
   A23L2/02 E
   A23L2/00 C
   A23L2/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-9787(P2020-9787)
(22)【出願日】2020年1月24日
(62)【分割の表示】特願2016-7503(P2016-7503)の分割
【原出願日】2016年1月19日
(65)【公開番号】特開2020-58397(P2020-58397A)
(43)【公開日】2020年4月16日
【審査請求日】2020年1月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-208183(P2015-208183)
(32)【優先日】2015年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮下 達也
(72)【発明者】
【氏名】林 浩太
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−300866(JP,A)
【文献】 特許第6664835(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜果実混合飲料(但し、含有する果皮加工物が果皮の水抽出物のみであるものを除く。)の甘みを抑制する方法であって、
それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
調合:ここで調合されるのは、野菜汁及び果汁に加えて、果実の果皮加工物であり、当該果実の果皮加工物は、柑橘果実の果皮加工物であり、
これによって得られる野菜果実混合飲料の糖酸比は、14.0乃至17.0であり、かつ、その糖度は、9.0度以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、野菜果実混合飲料及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
従来から健康の維持のために人々が飲んでいるのは、野菜飲料であり、この野菜飲料を例示すると、トマトジュースや多種の野菜を組み合わせた飲料等である。しかし、これらの野菜飲料は、野菜が苦手な人々に忌避されている。その原因の一つは、野菜の香りや味が際立っているからである。
【0003】
そのような人々にとっても飲み易くした野菜飲料は、野菜果実混合飲料である。野菜果実混合飲料は、野菜汁に果実の果汁を混合した飲料である。野菜果実混合飲料は、広く普及し、求められる味が細分化した。その結果、野菜果実混合飲料に新たに生まれた課題は、果汁を含むことによる過度な甘味である。
【0004】
まず考えられる当該課題の解決方法は、糖酸比の調整である。なぜなら、野菜果実混合飲料の甘味に寄与するのは、主に糖酸比だからである。ここで、糖酸比とは、糖度に対する酸度の割合である。具体的には、糖酸比を下げる方法は、糖度を下げる、又は酸度を上げることである。
【0005】
次に考えられる解決方法は、他の成分の配合である(特許文献1乃至特許文献3)。しかし、これらの方法は、いずれも、甘味を増強する方法にすぎない。つまり、甘味を抑制する方法は、知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2011−254783号公報
【特許文献2】特開2012−100562号公報
【特許文献3】特表2013−525278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、野菜果実混合飲料における過度な甘味を改善することである。糖酸比の調整では、糖度を下げすぎると、濃厚感が失われ、味が薄い飲料となってしまう。他方で、酸度を上げすぎると、酸味を強く感じるようになり、飲みづらい飲料となってしまう。つまり、糖酸比を調整するだけでは、野菜果実混合飲料の過度な甘みを抑制することは非常に手間がかかり、困難である。また、前述のとおり、甘味を抑制する資材は、知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明者らが鋭意検討して見出したのは、野菜果実混合飲料において、果実の果皮加工物を配合することで、過度な甘みを抑制できることである。このような飲料は、適度な甘味と酸味を感じるため、甘さが気にならず、さらにはすっきりとした味を呈する。この知見の下で本願発明者が完成させた発明は、次のとおりである。
【0009】
本発明に係る野菜果実混合飲料の糖酸比は、14.0乃至17.0である。当該飲料が含有するのは、果実の果皮加工物である。当該果実の果皮加工物は、柑橘果実の果皮化合物である。当該果実の果皮加工物の配合量は、0.02乃至3.0w/v%である。
【0010】
本発明に係る野菜果実混合飲料の製造方法を構成するのは、調合工程である。当該工程において、野菜汁及び果汁に加えられるのは、果実の果皮加工物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明が提供するは、野菜果実混合飲料であって、その過度な甘味が改善され、甘すぎず、すっきりとしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本実施の形態に係る野菜果実混合飲料の概要>
本実施の形態に係る野菜果実混合飲料(以下、「本飲料」という。)とは、野菜果実混合飲料であって、そこに果実の果皮加工物が配合されたものである。野菜果実混合飲料とは、飲料であって、その主原料が野菜汁と果汁であるものをいう。野菜汁とは、野菜の搾汁(ストレート搾汁)、その濃縮汁(ピューレ、ペースト)及び濃縮汁の還元汁、並びにそれらの加工汁である。果汁とは、果実の搾汁(ストレート搾汁)、その濃縮汁(ピューレ、ペースト)及び濃縮汁の還元汁、並びにそれらの加工汁である。野菜汁の原料となる野菜を例示すると、トマト、ナス、パプリカ、ピーマン、ジャガイモ等のナス科の野菜、ニンジン、セロリ、アシタバ、パセリ等のセリ科の野菜、キャベツ、紫キャベツ、メキャベツ(プチヴェール)、ハクサイ、チンゲンサイ、ダイコン、ケール、クレソン、小松菜、ブロッコリー、カリフラワー、カブ、ワサビ、マスタード等のアブラナ科の野菜、ホウレンソウ、ビート等のアカザ科の野菜、レタス、シュンギク、サラダナ、ゴボウ、ヨモギ等のキク科の野菜、タマネギ、ニンニク、ネギ等のユリ科の野菜、カボチャ、キュウリ、ニガウリ等のウリ科の野菜、インゲンマメ、エンドウマメ、ソラマメ、エダマメ等の豆科の野菜、モロヘイヤ、アスパラガス、ショウガ、サツマイモ、ムラサキイモ、シソ、アカジソ、トウモロコシ等である。果汁の原料となる果実を例示すると、レモン、オレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフルーツ、ミカン、ライム、スダチ、柚子、シイクワシャー、タンカン等の柑橘類、リンゴ、ウメ、モモ、サクランボ、アンズ、プラム、プルーン、カムカム、ナシ、洋ナシ、ビワ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、カシス、クランベリー、ブルーベリー、メロン、スイカ、キウイフルーツ、ザクロ、ブドウ、バナナ、グァバ、アセロラ、パインアップル、マンゴー、パッションフルーツ、レイシ等である。また、搾汁及び濃縮の詳細な説明のため、本明細書に取り込まれるのは、最新果汁・果実飲料辞典(社団法人日本果汁協会監修)の内容である。
【0013】
本飲料は、各種添加剤が適宜添加されていてもよい。当該添加物は、通常、飲食品に添加されるものであり、例示すると、食塩、甘味料、酸味料、着色料、pH調整剤、酸化防止剤、香料等である。甘味料を例示すると、果糖、ブドウ糖、ショ糖、液糖や異性化液糖等の糖類である。本飲料は、好ましくは高感度甘味料を含有しない。高感度甘味料は、糖度に影響を与えず、甘味を付与するからである。高感度甘味料を例示すると、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等である。酸味料を例示すると、クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸等である。酸化防止剤を例示すると、L−アルコルビン酸、カテキン等である。
【0014】
本飲料の流通形態は、好ましくは、容器詰である。容器を例示すると、PET容器、紙容器、缶等である。
【0015】
<本飲料の糖酸比>
本飲料の糖酸比は、14.0以上且つ17.0以下(14.0乃至17.0)であり、より好ましくは、15.5以上且つ17.0以下(15.5乃至17.0)である。糖酸比とは、糖度を酸度で除した値である。糖酸比が高ければ、甘味が強い。他方、糖酸比が低ければ、酸味が強い。本飲料の糖酸比の調整方法は、後述する。
【0016】
<本飲料の糖度>
本飲料の糖度は、9.0度以上であり、好ましくは、9.0度以上且つ12.0度以下(9.0乃至12.0度)であり、より好ましくは、9.4度以上且つ11.4度以下(9.4乃至11.4度)であり、さらに好ましくは、10.4度以上且つ11.4度以下(10.4乃至11.4度)である。本飲料の糖度が9.0度より低いと、濃厚感が失われ、味が薄くなってしまう。本飲料の糖度が高すぎると、糖酸比が所定の範囲であっても、果実の果皮加工物を配合することによる過度な甘味の抑制効果が得られなくなってしまう。
【0017】
本飲料に含まれる成分の一つは、糖であり、例示すると、グルコース、フルクトース等である。糖度の測定手段は、糖度計である。糖度計を例示すると、屈折計である。この屈折計が利用するのは、糖含量と屈折率との関係である。この屈折計の測定値は、いわゆるBrix値(%)である。Brix値が示すのは、単位重量あたりの可溶性固形分の量である。可溶性固形分に含まれるのは、厳密には、糖及び糖以外の可溶性固形分であるが、本明細書において糖度の指標をBrix値(%)とする。
【0018】
<本飲料の酸度>
本飲料の酸度は、0.86%以下であり、より好ましくは、0.53%以上且つ0.81%以下(0.53乃至0.81%)である。本飲料に含まれる成分の一つは、酸であり、具体的には、有機酸であり、例示すると、クエン酸、リンゴ酸、乳酸や酢酸等である。酸度の測定方法は、0.1N水酸化ナトリウム標準液を用いた滴定法である。すなわち、酸度は、クエン酸当量に換算した値である。
【0019】
<糖酸比の調節方法>
本飲料の糖酸比は、14.0乃至17.0であり、より好ましくは、15.5乃至17.0である。本飲料の糖酸比が14.0乃至17.0である場合、本飲料が呈するのは、適度な甘味と酸味を感じるため、甘さが気にならず、さらにはすっきりとした味である。本飲料の糖酸比が17.0より高いと、甘味を強く感じたり、甘味の後残りを感じてしまう。一方で、本飲料の糖酸比が14.0より低いと、酸味を強く感じてしまう。
【0020】
糖酸比を決める要素は、糖度及び酸度である。つまり、これらの要素を調整することで、糖酸比が調整される。すなわち、糖酸比を下げる方法は、糖度を下げる、又は酸度を上げることである。糖酸比を上げる方法は、糖度を上げる、又は酸度を下げることである。
【0021】
糖度を上げる方法は、原料として用いる野菜汁及び果汁の種類や濃縮度から糖度の高いものを選択する方法、糖を配合する方法等があげられる。配合される糖を例示すると、果糖、ブドウ糖、ショ糖、液糖や異性化液糖等である。糖度を下げる方法は、原料として用いる野菜汁及び果汁の種類や濃縮度から糖度の低いものを選択する方法等が挙げられる。
【0022】
酸度を上げる方法は、原料として用いる野菜汁及び果汁の種類や濃縮度から酸度の高いものを選択する方法、酸味料を配合する方法等があげられる。配合される酸味料を例示すると、クエン酸、酢酸、乳酸やリンゴ酸等である。酸度を下げる方法は、原料として用いる野菜汁及び果汁の種類や濃縮度から酸度の低いものを選択する方法、原料として用いる野菜汁及び果汁の有機酸を除去する方法等が挙げられる。有機酸の除去方法は、公知であり、例示すると、陰イオン交換やカルシウムの添加等である。陰イオン交換の具体的手法は、陰イオン交換樹脂、イオン交換膜等である。
【0023】
<野菜果実混合飲料における過度な甘味>
野菜果実混合飲料が呈するのは、過度な甘味である。過度な甘味とは、甘味を強く感じ、且つ甘味の後残りを強く感じることを指す。当該甘味は、糖酸比の上昇によって付与される。糖酸比の上昇は、果汁や甘味料を含有することでなされる。当該甘味が感じられるのは、糖酸比が14.0より高いものである。
【0024】
<本飲料の果実の果皮加工物>
本飲料が含有する果実の果皮加工物は、飲料への利用に適した形に果実の果皮が加工されたものである。当該加工法は、果実を剥皮し、得られた果皮を磨り潰す、又は抽出することである。磨り潰すとは、コミトロール、ピンミル、コロイドミル、マスコロイダー等を用いた破砕処理、摩砕処理、微細化処理等の工程を指す。その磨り潰す程度は、特に限定されない。抽出とは、水、水蒸気、二酸化炭素、エタノール、その他の有機溶剤等の公知の抽出溶媒を用いて果実の果皮からエキスを抽出する工程を指す。抽出に供される果実の果皮は、磨り潰されたものであってもよい。磨り潰される、又は抽出されるのは、果実の果皮のうち、少なくともフラベド(外果皮)を含んだものであり、アルベド(中果皮)は含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。市場にて一般的に入手可能な果実の果皮加工物を例示すると、ピールペースト、コミュニーテッド果汁、ピールエキス等である。コミュニーテッド果汁とは、果実の果肉だけではなく、果皮までまるごと磨り潰した果汁原料である。本飲料において配合される果実の果皮加工物は、果皮そのものを含有するものであることが好ましい。例示すると、ピールペースト及びコミュニーテッド果汁等である。果実の果皮加工物を配合する目的は、野菜果実混合飲料の過度な甘味の抑制である。過度な甘味が抑制された結果、適度な甘味と酸味を感じるため、甘さが気にならず、さらにはすっきりとした味を呈する。
【0025】
当該果実の果皮加工物の原料となる果皮は、果実のものであれば特に限定されないが、柑橘果実の果皮であることが好ましい。柑橘果実を例示すると、レモン、オレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフルーツ、ライム、柚子、温州みかん、夏みかん、はっさく、伊予かん、ぽんかん、タンカン、カボス、スダチ、シイクワシャー等であり、本発明では特にレモンを用いることが好ましいが、柑橘果実の果皮は一様に苦味を呈するため、特に限定されるものではない。
【0026】
当該果実の果皮加工物の配合量は、特に限定されないが、具体的には、本飲料100L当たり0.02kg以上であり且つ3.0kg以下(0.02乃至3.0kg/100L又は0.02乃至3.0w/v%)であり、好ましくは、本飲料100L当たり0.1kg以上であり且つ1.0kg以下(0.1乃至1.0kg/100L又は0.1乃至1.0w/v%)である。
【0027】
当該甘味抑制効果を特に奏したのは、レモンである。柑橘果実の果皮加工物が呈するのは、苦味である。野菜果実混合飲料に柑橘果実の果皮加工物を配合すれば、当該飲料の味に苦味が付与される。野菜果実混合飲料であって、糖酸比14.0乃至17.0のものにおいて、当該果皮を配合すると、過度な甘味が抑制され、適度な甘味と酸味を感じるため、甘さが気にならず、さらにはすっきりとした味となった。その予想される作用は、当該果皮を配合することによって付与された苦味が、野菜果実混合飲料の過度な甘味をマスキングしたためと考えられる。
【0028】
当該果実の果皮加工物の配合量が0.02w/v%より少ないと、本飲料の過度な甘味の抑制効果が得られず、甘味を強く感じたり、甘味の後残りを感じてしまう。一方、3.0w/v%より多いと、当該果実の果皮加工物の苦味が際立ってしまうため好ましくない。
【0029】
<本飲料の製造方法>
本飲料の製造方法(以下、「本製法」という。)を主に構成するのは、搾汁工程、調合工程、殺菌工程、充填工程、密封工程及び冷却工程である。これらの工程の一般的な説明のために本願明細書が取り込むのは、最新果汁・果実飲料辞典(社団法人日本果汁協会監修)の内容である。各工程は、適宜省略可能である。
【0030】
本製法を主に構成するのは、調合工程である。この調合工程において、本飲料の糖酸比を調整して14.0乃至17.0とし、より好ましくは、15.5乃至17.0とする。調合される原材料は、野菜汁及び果汁に加えて、果実の果皮加工物である。これらの詳細は、前述のとおりである。
【実施例】
【0031】
本発明に係る野菜果実混合飲料の詳細は、以下の実施例によって説明されるが、これらの実施例によって、本発明に係る特許請求の範囲は限定されない。
【0032】
<レモンピールペーストの製造方法>
実施例で配合される果実の果皮加工物は、レモン由来である。当該レモンの果皮は、レモンピールペーストとして配合された。レモンピールペーストは、以下の工程にて製造した。まず、生のレモンを剥皮し、フラベド(外果皮)とアルベド(中果皮)を含む部位を回収した。当該部位270gに対して水340gを加え、ミキサーにて破砕し、レモンピールペーストを得た。
【0033】
<実施例1乃至5>
実施例1乃至5において配合する原料は、市販の人参濃縮汁(Brix=39.6、糖酸比=22.4)、市販の透明人参濃縮汁(Brix=58.1、糖酸比=19.2)、市販のりんご透明濃縮果汁(Brix=70.0、糖酸比=51.4)、市販のりんごピューレ(Brix=31.3、糖酸比=30.6)、市販のレモン濃縮果汁(Brix=51.5、糖酸比=1.29)、前述のレモンピールペースト(Brix=3.4、糖酸比=25.4)、クエン酸(和光純薬工業株式会社製)、異性化液糖(王子コーンスターチ株式会社製)である。異性化液糖を除くこれらの原料を表1の通りそれぞれ配合し、加水して混合し、実施例1乃至5のベースとなる調合液を得た。得られた調合液の糖酸比と糖度を測定し(測定結果:Brix=8.0、糖酸比=12.0)、同等の酸度となるようにクエン酸を加えて調整した異性化液糖を、表2に示す各実施例の糖度及び糖酸比となるように添加した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。得られたサンプルは、それぞれ糖度及び酸度の測定並びに官能評価に供した。糖度及び酸度の測定値は、表2に示す。
【0034】
<比較例1乃至5>
比較例1乃至5において配合する原料は、レモンピールペーストを配合しないこと以外は、実施例1乃至5と同様である。異性化液糖を除くこれらの原料を表1の通りそれぞれ配合し、加水して混合し、比較例1乃至5のベースとなる調合液を得た。得られた調合液の糖酸比と糖度を測定し(測定結果:Brix=8.0、糖酸比=12.0)、同等の酸度となるようにクエン酸を加えて調整した異性化液糖を、表2に示す各比較例の糖度及び糖酸比となるように添加した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。得られたサンプルは、それぞれ糖度及び酸度の測定並びに官能評価に供した。糖度及び酸度の測定値は、表2に示す。
【0035】
<実施例6>
実施例6において配合する原料は、クエン酸及び異性化液糖を配合しないこと以外は、実施例1乃至5と同様である。これらの原料を表1の通りそれぞれ配合し、加水して混合した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。実施例6は、野菜及び果実の原料のみで実現したものある。得られたサンプルは、糖度及び酸度の測定並びに官能評価に供した。糖度及び酸度の測定値は、表2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
<Brixの測定方法>
本測定で採用したRIの測定器は、屈折計(NAR−3T ATAGO社製)である。測定時の品温は、20℃であった。
【0038】
<酸度の測定方法>
本測定で採用した酸度の算出方法は、0.1N水酸化ナトリウム標準液を用いた滴定法であり、滴定値よりクエン酸当量に換算して算出した。
【0039】
<官能評価>
実施例1乃至6及び比較例1乃至5の官能評価において評価した項目は、「適度な甘味」、「甘さのキレ」、「濃厚感」である。評価において採用したのは、評点法である。本発明に係る野菜果実混合飲料において、「適度な甘味」と「甘さのキレ」は、過度な甘味が抑制されたかどうかの主たる指標である。「適度な甘味」は、甘味と酸味のバランスに関する指標であって、バランスが崩れるとどちらかが強く感じてしまう。「甘さのキレ」は、甘味の後残りに関する指標であって、キレが悪いと甘味の後残りが発生し、すっきりとした味わいを妨げる。「濃厚感」は、飲料の飲み応えに関する指標であって、薄く感じるものは飲料として不適である。
【0040】
「適度な甘味」は、適度な甘味と酸味を感じることで、甘さが気にならないものが高い評点となる。一方、酸味又は甘味のどちらかが強く感じるようになるにつれて低い評点となる。評価基準は以下の通りである
1点:甘味しか感じない
2点:甘味を非常に強く感じる
3点:甘味を強く感じる
4点:甘味を少し強く感じる
5点:適度な甘味と酸味を感じる
4点:酸味を少し強く感じる
3点:酸味を強く感じる
2点:酸味を非常に強く感じる
1点:酸味しか感じない
なお、本発明に係る野菜果実混合飲料においては、4点乃至5点を甘すぎない好ましいものとする。
【0041】
「甘さのキレ」は、飲用後の後味への甘味の後残りを指す。甘味の後残りが少ないほど高い評点となる。一方、後味に尾を引く感じで後残りがあるほど低い評点である。なお、「どちらでもない」は、キレが良いとも悪いとも判断がつかない状態を指すものである。評価基準は、以下のとおりである。
1点:キレがとても悪い
2点:キレが悪い
3点:どちらでもない
4点:キレが良い
5点:キレがとても良い
なお、本発明に係る野菜果実混合飲料においては、4点乃至5点をすっきりとした好ましいものとする。
【0042】
「濃厚感」は、味に厚みがあり、濃厚に感じるものほど高い評点である。一方、味に厚みがなく、薄く感じるものほど、低い評点である。なお、「どちらでもない」は、濃厚とも薄いとも判断がつかない状態を指すものである。評価基準は、以下のとおりである。
1点:とても薄く感じる
2点:薄く感じる
3点:どちらでもない
4点:濃厚に感じる
5点:とても濃厚に感じる
なお、本発明に係る野菜果実混合飲料においては、1点乃至2点は、味が薄く、飲料として不適であるものとする。
【0043】
評価は、訓練された専門パネル10名で行った。評価結果は、表2のとおりである。なお、表2に示す評点は、平均点を求め、四捨五入した値である。
【0044】
【表2】
【0045】
表2によれば、実施例2乃至4及び実施例6は、主たる指標である「適度な甘味」と「甘さのキレ」の2つの評点が共に良好であり、過度な甘味が抑えられた野菜果実混合飲料であった。果実の果皮加工物を配合していない比較例2乃至5は、「適度な甘味」と「甘さのキレ」のどちらかの評点が低かった。つまり、糖酸比が12.0以上の野菜果実混合飲料は、過度な甘味を抑制することができないことがわかる。比較例2乃至5のように糖酸比が12.0乃至19.0、且つ糖度が9.4度乃至12.7度を有する野菜果実混合飲料は、従来から市場に存在するものである。一方、実施例2乃至4は、果実の果皮加工物を配合することで、過度な甘味が抑えられ、適度な甘味と酸味を感じるため、甘さが気にならず、さらにはすっきりとした味であった。つまり、糖酸比の範囲が14.0乃至17.0の野菜果実混合飲料は、果実の果皮加工物を配合することで、過度な甘味が抑制できた。また、同等の糖酸比及び糖度を有し、その違いが果実の果皮加工物の配合の有無である実施例と比較例(実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4)を比較しても、果実の果皮加工物を配合した実施例2乃至4は、「適度な甘味」と「甘さのキレ」の両方の評点が優れており、過度な甘味の抑制効果が得られていることがわかる。「濃厚感」は、果実の果皮加工物の配合に関わらず、実施例1及び比較例1で評点が低かった。本飲料において、糖度が9.4度以上であることが好ましい。したがって、実施例2乃至4のような糖酸比が14.0乃至17.0の野菜果実混合飲料であって、糖度が9.4度以上のものは、過度な甘味が抑えられ、且つ薄くない味を呈する。実施例6は、実施例3と同等の糖酸比、糖度を野菜及び果実の原料のみで実現したものであるが、実施例3と同様に果実の果皮加工物による効果が得られた。
【0046】
<実施例7乃至12>
実施例7乃至12において配合する原料は、市販の人参濃縮汁(Brix=43.0、糖酸比=19.7)、市販の透明人参濃縮汁(Brix=62.2、糖酸比=15.0)、市販のりんご透明濃縮果汁(Brix=70.2、糖酸比=42.2)、市販のりんごピューレ(Brix=32.2、糖酸比=33.5)、市販のレモン濃縮果汁(Brix=58.4、糖酸比=1.40)、前述のレモンピールペースト(Brix=3.4、糖酸比=25.4)、クエン酸(和光純薬工業株式会社製)、異性化液糖(王子コーンスターチ株式会社製)である。異性化液糖を除くこれらの原料を表3の通りそれぞれ配合し、加水して混合し、実施例7乃至12のベースとなる調合液を得た。得られた調合液の糖酸比と糖度を測定し(測定結果:Brix=8.0、糖酸比=15.4)、クエン酸及び異性化液糖を、表4に示す各実施例の糖度及び酸度となるように添加した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。得られたサンプルは、それぞれ糖度及び酸度の測定並びに官能評価に供した。糖度及び酸度の測定値は、表4に示す。糖度及び酸度の測定は、前述の通り行った。また、官能評価も、専門パネルの人数以外は、前述の通り行った。なお、官能評価は、訓練された専門パネル12名で行った。官能評価結果は、表4の通りであり、表4に示す評点は、平均点を求め、四捨五入した値である。
【0047】
<比較例6乃至10>
比較例6乃至10において配合する原料は、レモンピールペーストを配合しないこと以外は、実施例7乃至12と同様である。異性化液糖を除くこれらの原料を表3の通りそれぞれ配合し、加水して混合し、比較例6乃至10のベースとなる調合液を得た。得られた調合液の糖酸比と糖度を測定し(測定結果:Brix=8.0、糖酸比=15.4)、クエン酸及び異性化液糖を、表4に示す各比較例の糖度及び酸度となるように添加した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。得られたサンプルは、それぞれ糖度及び酸度の測定並びに官能評価に供した。糖度及び酸度の測定値は、表4に示す。糖度及び酸度の測定は、前述の通り行った。また、官能評価も、専門パネルの人数以外は、前述の通り行った。なお、官能評価は、訓練された専門パネル12名で行った。官能評価結果は、表4の通りであり、表4に示す評点は、平均点を求め、四捨五入した値である。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
<実施例13>
実施例13において配合する原料は、市販の人参濃縮汁(Brix=43.0、糖酸比=19.7)、市販の透明人参濃縮汁(Brix=62.2、糖酸比=15.0)、市販のりんご透明濃縮果汁(Brix=70.2、糖酸比=42.2)、市販のりんごピューレ(Brix=32.2、糖酸比=33.5)、市販の濃縮レモンコミュニーテッド果汁(Brix=24.0、糖酸比=3.0)、クエン酸(和光純薬工業株式会社製)である。前述の濃縮レモンコミュニーテッド果汁は、約20%のレモン果皮を含むものである。これらの原料を表5の通りそれぞれ配合し、加水して混合した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。得られたサンプルは、糖度及び酸度の測定並びに官能評価に供した。糖度及び酸度の測定値は、表6に示す。糖度及び酸度の測定は、前述の通り行った。また、官能評価も、専門パネルの人数以外は、前述の通り行った。なお、官能評価は、訓練された専門パネル12名で行った。官能評価結果は、表6の通りであり、表6に示す評点は、平均点を求め、四捨五入した値である。
【0051】
<比較例11>
比較例11において配合する原料は、濃縮レモンコミュニーテッド果汁の代わりに市販のレモン濃縮果汁(Brix=58.4、糖酸比=1.40)を配合すること以外は、実施例13と同様である。これらの原料を表5の通りそれぞれ配合し、加水した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。得られたサンプルは、糖度及び酸度の測定並びに官能評価に供した。糖度及び酸度の測定値は、表6に示す。糖度及び酸度の測定は、前述の通り行った。また、官能評価も、専門パネルの人数以外は、前述の通り行った。なお、官能評価は、訓練された専門パネル12名で行った。官能評価結果は、表6の通りであり、表6に示す評点は、平均点を求め、四捨五入した値である。
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明が産業上利用可能な分野は、野菜果実混合飲料及びその製造方法である。