(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883142
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】BMW系高周波誘電体セラミックス素材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/01 20060101AFI20210531BHJP
C01G 41/00 20060101ALI20210531BHJP
C04B 35/495 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
C04B35/01
C01G41/00 A
C04B35/495
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-503679(P2020-503679)
(86)(22)【出願日】2018年2月26日
(65)【公表番号】特表2020-512969(P2020-512969A)
(43)【公表日】2020年4月30日
(86)【国際出願番号】KR2018002315
(87)【国際公開番号】WO2018182180
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年11月12日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0041421
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0020807
(32)【優先日】2018年2月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520057852
【氏名又は名称】オー,チャン ヨン
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】ユン・サンオク
(72)【発明者】
【氏名】キム・シン
(72)【発明者】
【氏名】ホン・チャンベ
【審査官】
田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−231272(JP,A)
【文献】
特開平08−169760(JP,A)
【文献】
特開平06−187828(JP,A)
【文献】
特開平11−209179(JP,A)
【文献】
特開2002−087881(JP,A)
【文献】
特開平09−183654(JP,A)
【文献】
特開平09−157020(JP,A)
【文献】
特開平08−231271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/495
C04B 35/01
H01B 3/12
H01P 7/10
C01G 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ba1−a−bMaaMbb)(Mg0.5−cMccW0.5)O3の組成中、Maは、Naであり、MbはSrであり、McはYであり、a及びcが各々0.01ないし0.1であり、bは0.09ないし0.25であることを特徴とするBMW系高周波誘電体セラミックス素材。
【請求項2】
前記組成でWの一部は+5価の金属元素であるMeによってさらに置換されて、(Ba1−a−bMaaMbb)(Mg0.5−cMccW0.5−eMee)O3の組成をなし、MeはNbであり、eは0.01ないし0.05であることを特徴とする請求項1に記載のBMW系高周波誘電体セラミックス素材。
【請求項3】
前記Ma及びMbは高い品質係数を目的としてすべて添加されることを特徴とする請求項1に記載のBMW系高周波誘電体セラミックス素材。
【請求項4】
前記Mb及びMeは共振周波数の温度特性を目的として単独またはすべて添加されることを特徴とする請求項2に記載のBMW系高周波誘電体セラミックス素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムで使用される共振器、フィルタ、発振器用誘電体セラミックス素材に関し、高周波帯域で適切な比誘電率を有しつつ品質係数が高いBa(Mg
0.5W
0.5)O
3系高周波誘電体セラミックス素材及びその製造方法を提供する。このため、本発明は高周波誘電特性に優れた素材としてBa(Mg
0.5W
0.5)O
3を選定した。この際、バリウム(Ba)の位置にアルカリ金属またはアルカリ土類金属元素を一部置換し、これを補償するためにマグネシウム(Mg)の位置に+3価金属元素を定量的に添加する。これにより、高い品質係数を有し温度特性が安定した高周波誘電体セラミックス素材組成物を製造した。必要に応じて、タングステン(W)の位置には+5価金属元素を定量的にさらに添加することができる。
【背景技術】
【0002】
最近、無線通信産業の急激な発達に伴い、携帯電話、無線LAN(Local Area Network)、GPS(Global Position Satellite)、軍用レーダ(radar)システム、高度道路交通システム(ITS,Intelligent Transport System)などにマイクロ波誘電体セラミックスを積極的に適用しており、前記システムで使用される共振器、フィルタ、発振器用誘電体セラミックスは適切な比誘電率(ε
r)、高い品質係数(Q×f)、0に近い温度係数(τ
f)が要求される。
【0003】
また、無線通信の発達により情報量が急増し、通信周波数帯域が飽和することによって使用周波数帯域がさらに高くなっており、これに応える高品位な高周波送受信用部品が切実に要求されている実情である。従って、高い周波数帯域でも比誘電率(ε
r)が低く、品質係数(Q×f)はさらに高い材料に対する必要性が増大している。
【0004】
一方、マイクロ波領域で使用される誘電体共振器として種々のセラミックス素材が開発されている。例えば、複合ペロブスカイト(perovskite)であるBa(Mg
0.33Ta
0.67)O
3(BMT;ε
r=24,Q×f=250,000GHz)とBa(Zn
0.33Ta
0.67)O
3(BZT;ε
r=29,Q×f=150,000GHz)が既に商用化された。
【0005】
最近は、本発明の基本組成であるBa(Mg
0.5W
0.5)O
3(BMW;ε
r=21,Q×f=170,000GHz)も多く研究されており、一部商用化されている。
【0006】
Ba(Mg
0.5W
0.5)O
3(BMW)は複合ペロブスカイト(perovskite)結晶構造を有し、ε
r=16.7,Q×f=42,000GHz,τ
f=−25ppm/℃の物性を保有するが、Ba(Mg
0.5W
0.5)O
3の高い品質係数(Q×f)はB−siteの1:1規則化に起因し、一般的に組成の変形を通じて高周波誘電特性を改善している。
【0007】
このようなBMWと関連する先行技術を考察すると、以下のとおりである。
【0008】
米国特許US6,835,685B2号(2004.12.28.)と日本特許特開2002−087881号(2002.03.27.)及び中国特許CN1264779C号(2006.07.19.)はバリウム(Ba)の位置にストロンチウム(Sr)を1〜15mol%置換し、希土類酸化物(RE
2O
3)を1〜10mol%添加して組み合わせることで誘電特性を向上させることを特徴とする。
【0009】
また、米国特許US5,432,135号(1995.07.11.)では基本元素であるバリウム(Ba)とマグネシウム(Mg)、そしてタングステン(W)の構成比を制御し、添加剤として酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)、酸化マンガン(MnO
2)などを使用して誘電特性を向上させた高周波誘電体セラミックス素材を開示している。
【0010】
また、日本特許特開2000−044338号(2000.02.15.)はBa(Mg
0.5W
0.5)O
3高周波誘電体セラミックス素材でバリウム(Ba)の位置にストロンチウム(Sr)を一部置換し、マグネシウム(Mg)の位置に亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)を一定量置換して誘電特性を変化させることを特徴とし、米国特許US5,268,341号(1993.12.07.)はタングステン(W)の位置にタンタル(Ta)元素を置換することで共振周波数の温度係数(τ
f)を改善することを特徴としている。
【0011】
併せて、中国特許CN102765938B号(2014.04.02.)ではBa(Mg
0.5W
0.5)O
3高周波誘電体セラミックス素材でマグネシウム(Mg)の位置に酸化イットリウム(Y
2O
3)または一部希土類酸化物(RE
2O
3)、そして酸化ジルコニウム(ZrO
2)を置換し、ここに酸化マンガン(MnO
2)を1mol%添加して組み合わせることで誘電特性を向上させた高周波誘電体セラミックス素材を開示している。
【0012】
一方、韓国特許出願第10−2017−0041421号(2017.03.31)によれば、Ba(Mg
0.5W
0.5)O
3高周波誘電体セラミックス素材でバリウム(Ba)の位置にナトリウム(Na)などのアルカリ類金属元素を一部置換し、これを補償するためにマグネシウム(Mg)の位置にイットリウム(Y)などの+3価金属元素を定量的に添加することで、高い品質係数を有する優れた高周波誘電体セラミックス素材組成物を開示している。
【0013】
しかし、このような先行技術で開示しているBa(Mg
0.5W
0.5)O
3系高周波誘電体セラミックス素材の誘電特性は各々の位置に置換させる元素や添加物に応じて変化することを示しているが、特に共振周波数の温度係数は他の元素の固溶による結晶構造(crystal structure)の微細な変化に大きく影響され、このような問題を明確に解決できないという問題点がある。
【0014】
そのため、誘電体の共振周波数の温度係数を改善させるためには結晶構造と関連する置換元素の大きさや原子価を考慮して適切な添加剤を選定し、適正量を添加してこそ高い品質係数を有し、温度特性が安定した優れた高周波誘電体セラミックス素材を開発することができるところ、本発明に至った。
【0015】
また、今後5世代通信の本格的な導入に伴い数十GHz周波数帯域で高品位な高周波送受信が必要であり、従って、比誘電率(ε
r)は低く、品質係数(Q×f)はさらに高く、共振周波数の温度特性が安定した高周波誘電体セラミックス素材が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前述の問題点を解決するために案出されたものであって、本発明はより適切な比誘電率を有し、例えば雑音を無くして効率的な送受信のために100,000GHz以上好ましくは150,000GHz以上の高い品質係数が具現されるようにし、送受信周波数の温度安定性のために±10ppm/℃以内に改善された共振周波数の温度係数を保有することができる高周波誘電体セラミックス素材を提供することを目的とする。
【0017】
本発明では高周波誘電特性に優れたBa(Mg
0.5W
0.5)O
3に他の元素の固溶による格子欠陥(lattice defects)や第2相(2nd phases)の形成を防ぐためにバリウム(Ba)の位置にナトリウム(Na)などのアルカリ金属元素を一部置換し、これを補償するためにマグネシウム(Mg)の位置にイットリウム(Y)などの+3価金属元素を適正量添加することで高い品質係数を有するように組み合わせ、バリウム(Ba)の位置にストロンチウム(Sr)などのアルカリ土類金属元素(2a族元素)を添加することで共振周波数の温度特性に優れた高周波誘電体セラミックス素材組成物を開発することができた。
【0018】
そして、タングステン(W)の位置にはタンタル(Ta)などの+5価金属元素を定量的に単独または追加して添加することで、このような優れた特性をさらに向上することができた。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は前述の目的を達成するために、(Ba
1−a−bMa
aMb
b)(Mg
0.5−cMc
cW
0.5)O
3の組成中、Ma及びMbはアルカリ金属及びアルカリ土類金属であり、Mcは+3価金属であり、a及びcが各々0.01ないし0.1であり、bは0.09ないし0.25であることを特徴とするBMW系高周波誘電体セラミックス素材を提供する。
【0020】
前記組成でWの一部は+5価の金属元素であるMeによってさらに置換されて、(Ba
1−a−bMa
aMb
b)(Mg
0.5−cMc
cW
0.5−eMe
e)O
3の組成をなし、eは0.01ないし0.05であることが好ましい。
【0021】
前記MaはMa
2Oで表される+1価のアルカリ金属元素であって、Na、K及びLiの中から選択されるいずれか1つであることが好ましい。
【0022】
前記MbはMbOで表される+2価のアルカリ土類金属元素であって、Sr及びCaの中から選択されるいずれか1つであることが好ましい。
【0023】
前記McはMc
2O
3で表される+3価のランタン族金属元素であって、Sc、Y、Sm、Gd、Yb、Dyの中から選択されるいずれか1つまたはホウ素族金属元素であってInであることが好ましい。
【0024】
前記MeはMe
2O
5で表される+5価のバナジウム族金属元素であって、Nb及びTaの中から選択されるいずれか1つであることが好ましい。
【0025】
前記Ma及びMbは高い品質係数を目的としてすべて添加されることが好ましい。
【0026】
前記Mb及びMeは共振周波数の温度特性を目的として単独またはすべて添加されることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上のような本発明によれば、高周波誘電体セラミックス素材がより適切な比誘電率を有し、高い品質係数が具現される効果を期待することができる。
【0028】
また、本発明に係る高周波誘電体セラミックス素材は安定した範囲の温度係数(例えば±10ppm/℃以内)を有するので、良好な誘電特性の発現効果を期待することができる。
【0029】
そして、本発明に係る高周波誘電体セラミックス素材を使用して数十GHz周波数帯域で高品位な高周波送受信が可能な効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は本発明の実施例による(Ba
1−a−bMa
aMb
b)(Mg
0.5−cY
cW
0.5−eMe
e)O
3系高周波誘電体セラミックス素材のMb含量による共振周波数の温度係数の変化を示すグラフである。
【
図2】
図2は本発明の実施例による(Ba
1−a−bMa
aMb
b)(Mg
0.5−cY
cW
0.5−eMe
e)O
3系高周波誘電体セラミックス素材のMb含量による品質係数の変化を示すグラフである。
【
図3】
図3は本発明の実施例による(Ba
1−a−bMa
aSr
b)(Mg
0.5−cY
cW
0.5−eMe
e)O
3系高周波誘電体セラミックス素材のMe含量による共振周波数の温度係数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施例を添付の図面を参考にして詳細に説明することにする。また、本発明を説明するにあたり、関連する公知構成または機能に対する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧する可能性があると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0032】
本発明を説明するにあたり、定義される用語は本発明での機能を考慮して定義付けられたもので、これは当分野に従事する技術者の意図または慣例などによって変わり得るので、その定義は本明細書全般に亘る内容を土台に下されるべきである。
【0033】
本発明に関して詳細に説明するにあたり、優れたセラミックス誘電体は次のような特性が必要であることを周知しなければならない。即ち、優れたセラミックス誘電体共振器は適切な比誘電率と高い品質係数及び±10ppm/℃以内の共振周波数の温度係数特性が必要である。即ち、温度係数の場合、値が0に収束するほどよい。
【0034】
本発明のセラミックス素材は次のような製造方法によって製造した。
【0035】
出発物質として、日本堺化学工業(SAKAI Chem.Ind.Co.,Ltd)のBaCO
3(純度99.5%)、サムジョン純薬工業(株)のNa
2CO
3(純度:99.5%)、日本高純度化学研究所(Kojundo Chem.Lab.Co.,Ltd)のMgO(純度:99%)、Y
2O
3(純度:99.9%)、SrCO
3(純度99.9%)、CaCO
3(純度99.5%)、Ta
2O
5(純度:99.9%)、Nb
2O
5(純度:99.9%)及びWO
3(純度:99.9%)を使用した。
【0036】
これを後述する[表1]及び[表2]のような多様な実施例に従うように出発原料を秤量した後、ジルコニアボール及びエチルアルコールをポリエチレン容器に入れて24時間混合した。
【0037】
混合された原料を乾燥した後、混合粉末を直径25mmの金属材質モールドに入れて1軸加圧成形し、その後900〜1100℃で10時間か焼した。か焼された成形体を前記混合方法で再びボールミーリング(ball milling)した後、オーブン(oven)に入れて110〜120℃で24〜48時間乾燥した。
【0038】
その後、乾燥した粉末を直径15mmの金属材質モールドに入れて50MPaの圧力で1軸加圧成形し、その後焼結を遂行した。この際、焼結温度及び時間は1600〜1700℃及び1時間であり、昇温速度及び1200℃までの冷却速度は5℃/minとした。
【0039】
このような方法によって製造された焼結体の線収縮率を測定し、焼結体を粉砕して得た粉末に対してX線回折分析(D/MAX−2500V/PC,Rigaku,Japan)をした。また、高周波誘電特性のうち品質係数(Q×f)及び温度係数(τ
f)はcavity法により、比誘電率はHakki−Coleman法により各々Network Analyserを使用して測定した。併せて、温度係数はモデル名R3767CG(Advantest,Japan)を使用し、品質係数及び比誘電率はモデル名E5071C(Keysight,U.S.A.)を使用した。
【0040】
本発明でバリウム(Ba)の位置にストロンチウム(Sr)などのアルカリ土類金属元素(2a族)を、そしてタングステン(W)の位置にはタンタル(Ta)など+5価金属元素を定量的に単独またはすべて添加することで共振周波数の温度特性の変化を調べた。[表1]ではバリウム(Ba)の位置にストロンチウム(Sr)などのアルカリ土類金属元素(2a族)を添加したものを実験的に整理し、[表2]ではタングステン(W)の位置にはタンタル(Ta)を定量的に添加したものを実験的に整理した。
【0041】
[表1]で示したように、韓国特許出願第10−2017−0041421号(2017.03.31.)に開示された結果を比較例として本発明の実施例と比較評価した。比較評価対象物性は焼結性及び誘電特性とした。比較例では特に−10ppm/℃よりもさらに低い温度係数が観察され、これは好ましくない結果である。仮に−10ppm/℃の範囲内で温度係数が記録されたとしても、比較例では品質係数が非常に低い値を示す場合が多かった。
【0043】
上の表1からわかるように、収縮率の面では実施例と比較例がともに20%以上の充分な焼結収縮がなされて焼結特性には問題がなかった。一方、高周波誘電特性で比誘電率(ε
r)は約18ないし20程度と大きな差はないが、共振周波数の温度係数は
図1からわかるように、ストロンチウム(Sr)含量によって線形的に変化することがわかり、ナトリウム(Na)とイットリウム(Y)の含量によっても連係して変化することがわかる。即ち、ストロンチウム(Sr)のみで単独置換するよりも、ここにナトリウム(Na)とイットリウム(Y)をともに置換した方が共振周波数の温度係数を効率的に制御できることがわかった。一方、品質係数は
図2からわかるように、ストロンチウム(Sr)含量によって徐々に減少して0.25mol以上で急激に低くなることがわかり、ナトリウム(Na)とイットリウム(Y)の含量によっても添加していない場合と比べて0.01molで品質係数が大きく増加し、これ以上で再び徐々に減少することがわかる。従って、ナトリウム(Na)とイットリウム(Y)は少なくとも0.01モルは添加されなければならず、表には示さなかったが、最大0.1モルまで添加されることが好ましい。これはナトリウムとイットリウムでない他のアルカリ金属(K、Liなど)と+3価金属元素(Al、Ga、Gd、Smなど)でも同様である。従って、品質係数(Q×f)が高く、共振周波数の温度特性が安定した高周波誘電体セラミックス素材を開発するためには、ストロンチウム(Sr)のみで単独置換するよりは、ここにナトリウム(Na)とイットリウム(Y)をともに置換した方が効率的な方案であることがわかる。ここで、0.01モル未満の場合、共振周波数の温度係数(τ
f)の変化が微々であり、0.1モル超過時は品質係数の低下が大きいので好ましくない。従って、上の範囲でその臨界的意義がある。Srの代わりにCaを使用しても結果は類似する一方で、ストロンチウム(Sr)は0.09ないし0.25モル含まれることが好ましいが、上の範囲を逸脱すると品質係数と温度係数のうちいずれか1つは低い値を示して好ましくない。このような特性の変化は置換成分とともに置換量によって相互連係して表われることがわかり、これは置換元素のイオン半径と置換量による結晶構造の変化と連係した現象であると考えられる。
【0045】
表2は表1からわかるように、バリウム(Ba)の位置をアルカリ土類金属元素のみで置換したものでなく、タングステン(W)の位置に+5価のバナジウム族金属元素をともに置換して電荷を補償するためにイットリウム(Y)などの+3価金属元素(Sc、Sm、Gd、Yb、Dyなど)を定量的に追加して添加したものだが、比較例はアルカリ金属のみで置換したものとして提示するもので、
図3からわかるように、共振周波数の温度係数を効果的に制御できることがわかった。ここで、表示はされなかったが、イットリウム(Y)の代わりに3価のランタン族金属元素であるSc、Sm、Gd、Yb、Dyなどまたはホウ素族金属元素であるInを適用しても結果は類似する。
【0046】
即ち、共振周波数の温度係数がストロンチウム(Sr)とタンタル(Ta)の増加量に符合して線形的に増加する傾向を示し、さらにストロンチウム(Sr)とタンタル(Ta)をともに添加する場合は徐々に増加する。また、表2からわかるように、ストロンチウム(Sr)と+5価のバナジウム族金属元素(例えば、Nb、Ta)をともに添加する場合、品質係数の減少を最小化することができる長所がある。ここで、+5価のバナジウム族金属元素は0.01ないし0.05モルの比率(1ないし5モル%)を維持することが好ましい。ここで0.01モル未満の場合、共振周波数の温度係数(τ
f)の変化が非常に少なく0.05モル超過時は品質係数の低下が大きいので好ましくない。
【0047】
従って、共振周波数の温度係数は品質係数とともに部品設計において重要な因子であり、バリウム(Ba)の位置にアルカリ金属またはアルカリ土類金属元素を一部置換し、これを補償するためにマグネシウム(Mg)の位置に+3価金属元素を、そしてタングステン(W)の位置には+5価金属元素をすべて連係して定量的に添加することが高い品質係数を有し、温度特性が安定した高周波誘電体セラミックス素材組成物を製造するにあたり非常に効率的な方案であることがわかる。このような特性の変化は置換元素のイオン半径と置換量に密接に関連して表われる結晶構造の変化と連係した現象であると考えられる。
【0048】
以上、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明したが、本発明は必ずしもこのような実施例に局限されるものでなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で多様に変形実施することができる。従って、本発明に開示された実施例は本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためものであり、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が安定されるものではない。本発明の保護範囲は下の請求の範囲によって解釈されなければならず、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものとして解釈されなければならない。