【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、電気バッテリシステムの充電を改善すること、具体的には、爆発の危険性を低減し、及び/又は、信頼性を向上させることにある。
【0007】
本発明によれば、この課題を、電気バッテリシステムの充電時の妨害アークを検出する方法については請求項1の特徴により解決し、電気バッテリシステムの製造方法については請求項9の特徴により解決し、遮断装置については請求項11の特徴により解決する。有効な発展形態及び構成は、各従属請求項の対象である。
【0008】
本方法は、妨害アーク、つまり具体的には、電気的に充電された2つの部品の間のプラズマの形成を検出するように機能する。ここで、プラズマによって、電気的に充電された2つの部品の間に電流が発生する、又は、電流が維持される。このような妨害アーク(「ARC」)の形成には、最低電圧よりも高い電圧が必要とされる。この最低電圧は、例えば、接点の材料、電流強度、及び/又は、気温に応じて決定される。具体的には、最低電圧は、ほぼ15ボルトである。
【0009】
本方法を用いて、電気バッテリシステムの充電時の妨害アークを検出する。バッテリシステムは、電気的に直列接続されて、ストリングを形成する。このストリング自体は、直流電圧コンバータによって給電される。そのため、直流電圧コンバータからストリングまでエネルギーが流れる。したがって、ストリングは、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、負荷を形成し、直流電圧コンバータは、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、電源を形成する。換言すると、直流電圧コンバータによって、直流電圧がストリングに印加される。この直流電圧は、ほぼ一定であることが有利である。ここでは、例えば、特に同一の構造を有する複数のストリングは、それぞれに割り当てられた調整部を備え、互いに並列接続されている。このストリングは、少なくとも2つのバッテリシステム、好ましくは5〜50個のバッテリシステム、具体的には10〜30個のバッテリシステムを備え、例えば、15個のバッテリシステムを備えている。
【0010】
具体的には、各バッテリシステムは、電解液を備え、及び/又は、各バッテリシステムは、電気化学バッテリシステムである。各バッテリシステムの電解液は、具体的には水溶液であり、及び/又は、水溶液に入っている。各バッテリシステムが、水溶性電解液を備えるバッテリシステムであることが有利である。例えば、各バッテリシステムは、好適に接続された多数の電気化学セルを備えている。バッテリシステムは同じ構造を有していることが好ましい。バッテリシステムは、例えば蓄電池であり、したがって再充電可能である。具体的には、バッテリシステムは、開放型システムである。換言すると、例えば、バッテリシステムの充電時にある化学物質が漏れ出る、または、例えば、外気、具体的には空気から酸素又は水素が取り込まれる。特に好ましくは、バッテリシステムは、いわゆる自動車用の始動用バッテリといった鉛蓄電池である。例えば、バッテリシステム、具体的には鉛蓄電池は、充電状態において、12ボルト又は24ボルトの電圧(定格電圧値)を有する。電気バッテリシステムを充電するために、好適には、電流及び/又は電圧を段階的に調整する充電プロファイルが使用される。具体的には、バッテリシステムの任意のセル毎に2.4ボルト以下の電圧(充電電圧)、例えばバッテリシステムにつき13.8ボルト又は14.8ボルト以下の電圧(充電電圧)が印加される。直列接続されているため、つまり、直流電圧コンバータは、この充電電圧の倍数の電圧を提供する必要がある。この倍数は、ストリング毎のバッテリシステムの数に相当する。
【0011】
例えば、バッテリシステムの充電は、ストリングに印加される電圧を調整すること、又は、電気的ストリングを通って流れる電流を調整することによって行われる。例えば、まず、ストリングを通って流れる電流が調整される。バッテリシステムが所定の度合まで充電されると、具体的には、バッテリシステム、したがってストリングに印加されている電圧の調整に切り替わる。
【0012】
本方法は、一動作ステップにおいて、ストリングに印加される電圧に対応する第1の値を生成するように構成されている。例えば、ストリングに印加される電圧を、直接、第1の値として使用する。あるいは、この電圧を用いて第1の値を生成する。例えば、第1の値は、この電圧を用いて計算するか、又は、特徴図を用いて算出するが、少なくとも、この第1の値は、印加される電圧に依存するものである。例えば第1の動作ステップの時間的に前又は後に行われる他の動作ステップにおいて、ストリングを通って流れる電流に対応する第2の値を生成する。これらの第1の値及び第2の値の生成は、好適には、ほぼ同時に行われる。第1の値は、第2の値の生成に用いられる電流が流れた時に印加される電圧に基づいていることが好ましい。例えば、この電流を直接、第2の値として使用するか、又は、第2の値を、この電流を用いて計算するか、若しくは、特徴図を用いて算出する。具体的には、これらの第1の値及び第2の値を生成するために、電圧又は電流を、具体的には直接測定することが好ましい。
【0013】
他の動作ステップにおいて、第1の条件として、第1の値が、第1の時間ウィンドウ内で、第1の制限値を超える分だけ変化したかどうかを判定する。変化とは、例えば、増加又は減少であると理解される。具体的には、第1の値が第1の制限値を超える分だけ上昇したかどうかだけを判定する。好ましくは、第1の値の生成に使用される電圧が、第1の時間ウィンドウにおいて、又は、第1の時間ウィンドウに対応する期間において、第1の制限値に対応する所定の値だけ上昇したかどうかが判定される。第1の条件に関する判定は、直流電圧コンバータによるストリングへの給電が行われている限り、ほぼ連続的に行われることが好ましい。
【0014】
さらに、第2の条件として、第2の値が、第2の時間ウィンドウ内で、第2の制限値を超える分だけ変化したかどうかを判定する。変化とは、例えば、増加又は減少であると理解される。好適には、第2の値が第2の制限値を超える分だけ低減したかどうかだけを判定する。好ましくは、第2の時間ウィンドウに対応する期間において、第2の値の生成に使用される電流が、第2の制限値に対応する所定の値を超える分だけ低下したかどうかが判定される。つまり、ストリングに印加される電圧が所定の期間内に上昇したかどうか、かつ、電流が別の期間内に低下したかどうかが、具体的には間接的に判定される。例えば、少なくともストリングが直流電圧コンバータによって給電されている限り、第2の条件が存在するかどうかが、ほぼ連続的に判定される。あるいは、第1の条件が満たされた場合のみ、第2の条件が存在するかどうかが判定される。
【0015】
第1の値又は第2の値が、第1又は第2の制限値を超える分だけ変化したかどうかを判定するために、第1の値又は第2の値の時間依存性の微分を求めることが好ましく、これにより、これら両条件の判定が容易になる。第1の条件及び第2の条件が第3の時間ウィンドウ内に存在する場合に、アークが検出される。例えば、第1の条件が発生した時間的後に第2の条件が発生した場合にのみ、アークが検出される。ここでは、第1の条件が存在する場合にのみ、第2の条件も判定されることが好ましい。
【0016】
つまり、具体的には、ストリングに印加される電圧が上昇したかどうか、及び、ストリングを通って流れる電流が降下したかどうかが判定される。アークが発生する場合、このアークは、例えば、1つのバッテリシステムの電気接点と、当該バッテリシステムに接続されたケーブル又は同様のものとの間に形成され、そのため、アークはバッテリシステムに直列接続される。このアークにより、及び、個々のバッテリシステムや直流電圧コンバータの構成部品、具体的には直流電圧コンバータに給電する変圧器といった他の構成部品に供給する(等価)容量により、ストリング全体に発生する電圧が上昇し、電流が低下する。具体的には、第1、第2、及び、第3の時間ウィンドウよりも大きい所定の過渡振動及び再調整段階の後、ストリングに印加される電圧、及び、ストリングを通って流れる電流の正規化が行われる。
【0017】
アークの検出により、例えば、直流電圧コンバータをオフすることや、ストリングを直流電圧コンバータから分離すること、又は、少なくとも電気的に遮断することが可能になり、これによってアークは消弧する。したがって、場合によっては起こり得る電気接続の解除が比較的迅速に検出され得るので、バッテリシステムの充電時に発生した何らかの爆発性ガスがアーク/解除された接続の領域に達してしまう前に、アークを消弧させることが可能である。したがって、バッテリシステムの充電時の爆発の危険性が低減され、これによって信頼性が向上する。また、充電時に生じたアーク及び上昇した温度による火災、又は、少なくとも各バッテリシステムの電極の変形も回避される。したがって、バッテリシステムの充電時の無駄が低減される。両条件について判定するので、本方法は比較的ロバストであり、発生するアークの数、及び、その実質的な各持続時間に無関係である。具体的には、この妨害アークの検出方法は、鉛蓄電池といった再充電可能なシステムであるバッテリシステムを最初に充電する場合にのみ実施される。あるいは、この妨害アークの検出方法は、すでに少なくとも一回充電を行ったバッテリシステムを再充電及び/又は追加充電する場合に実施される。
【0018】
好ましくは、第1の値は、第4の時間ウィンドウにわたってストリングに印加された電圧を平均化することによって生成される。換言すると、第4の時間ウィンドウの間にストリングに印加された電圧を取得する。第4の時間ウィンドウの間に、電圧は、複数回、具体的には2回以上、5回以上、又は、10回以上算出される。例えば、電圧は、連続的に算出される、又は、例えば好適にはデジタルで行われる加工処理に応じて算出される。具体的には、この算出は、任意のA/D変換器に合わせて、例えば、そのサンプリングレートに合わせて行われる。例えば、電圧は、1マイクロ秒毎、2マイクロ秒毎、5マイクロ秒毎、10マイクロ秒毎、20マイクロ秒毎、50マイクロ秒毎、又は、100マイクロ秒毎に新たに取得される。具体的には、平均化のために算術平均が用いられ、まず印加された電圧の値の合計を求めて、その値(測定値)の数で割る。好適には、電圧用の新たな値が算出されると、つまり具体的には10マイクロ秒毎に、第1の値が新たに生成される。第4の時間ウィンドウの間に算出された電圧値は平均化され、例えば、この平均値が第1の値として使用される。換言すると、平均値自体が第1の値として使用される。しかしながら、具体的には数値計算によって近似的に算出された平均値の時間依存性の微分を、第1の値として使用して、第1の制限値と比較することが特に好ましい。
【0019】
選択的又は特に好ましくはこれと組み合わせて、第2の値は、第5の時間ウィンドウにわたってストリングを通って流れる電流を平均化することによって生成される。ここで、第5の時間ウィンドウの間に、電流を複数回取得すること、例えば測定することが有利であり、例えば、これらの値(測定値)を平均化のために使用する。第5の時間ウィンドウの間に、電流は、複数回、具体的には2回以上、5回以上、または、10回以上算出される。例えば、電流は、連続的に算出される、又は、例えば好適にはデジタルで行われる加工処理に応じて算出(測定)される。具体的には、この算出は、任意のA/D変換器に合わせて、例えば、そのサンプリングレートに合わせて行われる。好適には算術平均が生成される。例えば、この平均値自体を第2の値として使用する。しかしながら、平均値の時間依存性の微分を、第2の値として使用して、第2の制限値と比較することが特に好ましい。
【0020】
具体的には、第1又は第2の値を算出するために、それぞれ、100〜400個の測定値、例えば、300個の測定値が使用される。好ましくは、第4の時間ウィンドウの長さは、第5の時間ウィンドウの長さに等しく、このため処理が容易である。平均化することにより、短時間のピーク電流又はピーク電圧が平滑化され、これによって、アークの誤識別が回避される。また、これによって、場合によっては生じる直流電圧コンバータの供給電圧の変動が考慮される。あるいは、平均化する代わりに、例えば、第4の時間ウィンドウの間に印加された電圧、又は、第5の時間ウィンドウの間に流れる電流の最大値又は最小値が使用される。
【0021】
好適には、いずれの場合も、1つの平滑化された平均値が形成されるので、他の測定値が提供されると、以前に記憶された、平均値を形成するための測定値はもう使用されない。第4及び/又は第5の時間ウィンドウの長さは一定であることが有利である。具体的には、いずれの場合も、電圧又は電流の新たな測定値が提示されると、第1又は第2の値が新たに算出される。算出のために、例えば、いわゆるFIFO(「先入れ先出し」)記憶装置が利用される。これによって算出が簡略化される。ここで、特に、記憶装置には、平均化のために使用される値だけが記憶され、これを用いて、第1又は第2の値が生成される。例えば、平均値を形成するために、すでに形成された平均値から、記憶装置から削除する一部の値を取り出し、新たに記憶される一部の値を追加する。
【0022】
具体的には、第4の時間ウィンドウの長さは、直流電圧コンバータの相の数の倍数と、直流電圧コンバータの供給周波数との積の逆数に等しい。換言すると、まず、相の数の倍数を決定し、それを用いて、直流電圧コンバータを動作させる。例えば、直流電圧コンバータは、三相交流電流網に接続されている。この場合、相の数は3である。相の数の倍数は、具体的には、直流電圧コンバータのサブブリッジの数に相当する。直流電圧コンバータが、具体的には1つのブリッジ回路を有し、これが、例えば、B6回路として構成され、したがって6つの半導体を有する場合、相の数の倍数は、6である。直流電圧コンバータが、一相交流電流網に接続されている場合、この倍数は2である。
【0023】
供給周波数は、直流電圧コンバータの個々の相のそれぞれが有する周波数であり、つまり、例えば50Hz又は60Hzである。供給周波数が60Hzである三相直流電圧コンバータの場合、第4の時間ウィンドウの長さは、したがって、1/360s、つまり約2.8msである。供給周波数が50Hzである三相直流電圧コンバータでは、第4の時間ウィンドウの長さは、したがって、1/300s、つまり約3.3msである。あるいは、それぞれ、その整数倍が使用される。換言すると、第4の時間ウィンドウの長さは、逆数の二倍数、三倍数、四倍数に相当する。したがって、第4の時間ウィンドウの長さは、逆数の複数倍、つまり、逆数の一倍、二倍、三倍・・・に等しい。第4の時間ウィンドウの長さ、及び、第1の値を特定するための平均化により、直流電圧コンバータを動作させる交流電圧により生じる電圧の変動は、ほぼ完全に平滑化される。したがって、アークの誤識別が回避される。
【0024】
選択的又は特に好ましくはこれと組み合わせて、第5の時間ウィンドウの長さは、直流電圧コンバータの相の数の倍数と、直流電圧コンバータの供給周波数との積の逆数、又は、その整数倍に等しい。したがって、具体的には、直流電圧コンバータがB6回路を有し、60Hzの供給周波数で動作される場合、第5の時間ウィンドウの長さは、1/360s、2/360s、3/360s、4/360s、5/360s等である。したがって、アークにより生じるのではなく直流電圧コンバータの構造によって生じる電流の変動は平滑化され、これによって、アークの誤識別が回避される。好適には、第4の時間ウィンドウの長さは、第5の時間ウィンドウの長さに等しい。直流電圧コンバータが一相だけを有している場合、第4又は第5の時間ウィンドウの長さは、直流電圧コンバータに供給される周波数の倍数の逆数に等しい。
【0025】
例えば、第3の時間ウィンドウの長さは、第4の時間ウィンドウの長さに等しくなるように選択される。あるいは、第3の時間ウィンドウの長さは、第5の時間ウィンドウの長さに等しくなるように選択される。特に好ましくは、第3の時間ウィンドウの長さは、第4の時間ウィンドウの長さに等しく、かつ、第5の時間ウィンドウの長さに等しくなるように選択される。換言すると、第4の時間ウィンドウの長さは、第5の時間ウィンドウの長さに等しい。このように選択することにより、アーチファクトを回避し、場合によっては生じるアークを比較的迅速かつ確実に検出する。例えば、第3の時間ウィンドウの長さに、1ミリ秒〜65ミリ秒、例えば3ミリ秒を用いる。あるいは、第3の時間ウィンドウの長さとして、2ミリ秒が選択される。
【0026】
第1の制限値は、例えば、15ボルト以上になるように選択される。アークが維持されるためには、少なくとも15ボルトの電圧が必要であるので、アークが生じてバッテリシステムに直列接続されると、少なくとも15ボルトの電圧の上昇が生じる。そのため、ストリングに印加される電圧が15ボルトを超える分だけ上昇すると、アークは確実に検出される。しかしながら、第1の制限値は、12ボルトよりも小さくなるように選択されることが特に好ましい。選択的又は特に好ましくはこれと組み合わせて、第1の制限値は6ボルトよりも大きい。例えば、第1の制限値は、10ボルトと8ボルトの間である。したがって、第1の値が、第1の時間ウィンドウ内で、6ボルト、8ボルト、10ボルト、又は、12ボルトを超える分だけ上昇すると、第1の条件が満たされる。第1の制限値をこのように選択した場合、下限値により、実質的にアークの誤検出は排除される。上限値は、アークに必要とされる電圧よりも低くなるように選択されている。具体的には、第1の値を生成するために電圧の平均化を行う限り、このように、アークは、それが生じた直後に比較的迅速に検出される。また、アークがほぼ連続的に存在している必要はない。このようにして、例えばバッテリシステムの電気接続の解除により、例えば周期的又は不規則的に生じるアークも、又は、その期間が第1及び/又は第2の時間ウィンドウよりも短いアークも検出される。
【0027】
例えば、第2の制限値として、第1の制限値とシステムインダクタンスの倍数との商が選択される。ここで、システムインダクタンスは、例えば、測定により特定、算出、又は、推定される。システムインダクタンスとは、バッテリシステムを充電するために用いられるシステムのインダクタンスであり、具体的には、直流電圧コンバータに給電する任意の変圧器により決定されることが適切である。また、このシステムインダクタンスは、具体的にはわずかに、ストリング、つまり配線及びバッテリシステムに依存している。システムインダクタンスは、具体的には、直流電圧コンバータ、及び/又は、用いられるバッテリシステム、並びに、その数に合わせられている。例えば、第2の制限値は、この商よりも大きい又は小さい。したがって、第2の値が具体的に、この商を超える分だけ減少すると、第2の条件が満たされる。
【0028】
具体的には、第1の時間ウィンドウの長さは、直流電圧コンバータの相の数の倍数と、直流電圧コンバータの供給周波数との積の逆数に等しい。換言すると、まず、直流電圧コンバータを動作させる相の数の倍数を決定する。例えば、直流電圧コンバータは、三相交流電流網に接続されている。この場合、相の数は3である。相の数の倍数は、具体的には、直流電圧コンバータのサブブリッジの数に相当する。直流電圧コンバータが、具体的には1つのブリッジ回路を有し、これが、例えば、B6回路として構成され、したがって6つの半導体を有する場合、相の数の倍数は6である。直流電圧コンバータが一相交流電流網に接続されている場合、この倍数は2である。
【0029】
供給周波数は、直流電圧コンバータの個々の相のそれぞれが有する周波数であり、つまり、例えば50Hz又は60Hzである。供給周波数が60Hzである三相直流電圧コンバータの場合、第1の時間ウィンドウの長さは、したがって、1/360s、つまり約2.8msである。供給周波数が50Hzである三相直流電圧コンバータでは、第1の時間ウィンドウの長さは、したがって、1/300s、つまり約3.3msである。換言すると、第1の値が、2.8ms〜3.3ms内で、第1の制限値を超える分だけ変化したかどうか、具体的には第1の制限値を超える分だけ上昇したかどうかが判定される。あるいは、それぞれその整数倍が使用される。換言すると、第1の時間ウィンドウの長さは、逆数の二倍数、三倍数、四倍数に相当する。したがって、第1の時間ウィンドウの長さは、逆数の複数倍、つまり、逆数の一倍、二倍、三倍・・・に等しい。
【0030】
選択的又は特に好ましくはこれと組み合わせて、第2の時間ウィンドウの長さは、直流電圧コンバータの相の数の倍数と、直流電圧コンバータの供給周波数との積の逆数、又は、その整数倍に等しい。したがって、具体的には、直流電圧コンバータがB6回路を有し、60Hzの供給周波数で動作される場合、第2の時間ウィンドウの長さは、1/360s、2/360s、3/360s、4/360s、5/360s等である。
【0031】
直流電圧コンバータが一相だけを有しているならば、第1又は第2の時間ウィンドウの長さは、直流電圧コンバータに供給される周波数の倍数の逆数に等しい。好ましくは、第1の時間ウィンドウの長さは、第2の時間ウィンドウの長さに等しい。第1又は第2の時間ウィンドウの長さをこのように選択することによって、比較的確実に妨害アークを検出可能である。なぜなら、妨害アークが発生した際の電圧及び電流の変化は、比較的短時間で連続して生じるからである。しかしながらここでは、例えば直流電圧コンバータの製造公差による比較的短時間の変動は、アークとして誤識別されない。好適には、第1及び/又は第2の時間ウィンドウは、サンプリング周波数、具体的には、任意のA/D変換器を動作させる周波数を用いて決定される。例えば、第1の時間ウィンドウの長さは、サンプリング周波数に対応する期間の整数倍である。
【0032】
好適には、第1及び第2の条件が発生する第3の時間ウィンドウの前にストリングに印加される電圧が、第3の制限値よりも大きい場合にのみ、アークが検出される。換言すると、第3の時間ウィンドウ内で第1の条件及び第2の条件が存在する場合に、第3の時間ウィンドウの直前で電圧は第3の制限値よりも大きかったかどうかが判定される。第3の制限値は、例えば、100ボルトよりも大きく、120ボルトよりも大きく、かつ、特に200ボルトよりも小さい。例えば、第3の制限値は、ほぼ150ボルトである。例えば、第3の制限値は、ストリングの任意のセルの数と2Vとの積の50%〜75%である。選択的又はこれと組み合わせて、第1及び第2の条件が満たされる第3の時間ウィンドウの前にストリングを通って流れる電流が、第4の制限値よりも大きい場合にのみ、アークが検出される。つまり、第1及び第2の条件が存在する第3の時間ウィンドウの直前にストリングを通って流れる電流が第4の制限値よりも大きいかどうかが判定される。第4の制限値は、例えば、バッテリシステムに依存しており、及び/又は、1アンペア(A)、2アンペア、又は、3アンペアよりも大きく、かつ、例えば10アンペアよりも小さい。例えば、第4の制限値として、5アンペアが使用される。上述のこれらの条件に対して選択的又は特に好ましくはこれと組み合わせて、第1及び第2の条件が満たされる第3の時間ウィンドウの間にストリングを通って流れる電流が、第5の制限値よりも大きい場合にのみ、アークが検出される。第5の制限値は、例えば、0.5アンペア、1アンペアよりも大きく、かつ、例えば3アンペア又は2アンペアよりも小さい。
【0033】
これらのさらなる条件により、バッテリシステムを実際に充電すること、及び、当該システムがすでに定常状態及び/又は安定状態にあることが確保される。換言すると、第1及び第2の条件は、例えば、直流電圧コンバータや他の部品をオンする作用により生じるものではない。また、スイッチオン工程の間に発生するアークは識別されない。バッテリシステムをオンした時、及び、オンして充電を開始したほぼ直後には、爆発性ガスはまだ形成されていないので、爆発の危険性はない。これらのさらなる条件について判定する代わりに、例えば、バッテリシステムの充電が、所定の期間にわたってすでに行われているかどうかを判定する。この情報は、例えば、ケーブル、配線、デジタル信号、又は、バスシステムによって伝送される。これによって、バッテリシステムの充電が所定の期間、具体的には10秒間又は1分間にわたってすでに行われている場合にのみ、アークが検出される。
【0034】
電気バッテリシステムの製造方法は、まず、未充電の多数のバッテリシステムを用意するように構成されている。バッテリシステムとして、例えば、電気化学の原理に基づく蓄電池が使用される。具体的には、電解液を含む再充電可能なバッテリシステムが用意される。これらを用意するために、例えば、まず、電極及び電解液をハウジング内に機械的に配置する。バッテリシステムとして、特に好ましくは、鉛蓄電池が使用される。未充電の鉛蓄電池では、鉛から成る実質的には多数の電極が互いに適切に接続されて、硫酸溶液内に配置される。
【0035】
未充電のバッテリシステムが電気的に直列接続されて、ストリングを形成する。例えば、各バッテリシステムの電極に、ケーブル又は同様のものが設置又は固定されて、それぞれ、未充電のさらなるバッテリシステムのさらなる電極と電気接点を形成する。ストリングは、例えば、直接又は特に好ましくは遮断装置を介して、直流電圧コンバータと電気接点を形成する。換言すると、ストリングは、遮断装置と接点を形成し、遮断装置は、直流電圧コンバータと電気接点を形成する。遮断装置を用いて、具体的には、ストリングを直流電圧コンバータから電気的に分離すること、又は、少なくとも電気的に遮断することが可能である。未充電のバッテリシステムをストリングに接続すること、及び、直流電圧コンバータにコンタクトさせることは、例えば、1つの方法ステップにおいて行われる。
【0036】
さらなる方法ステップにおいて、直流電圧コンバータを用いて、電圧をストリングに印加し、ストリングを流れる電流を発生させる。このために、遮断装置が好適に制御されることが好ましい。ストリングに印加された電圧は、バッテリシステムの数と、1つのバッテリシステムに必要な充電電圧との積に等しく、例えば、ほぼ400ボルトである。電流は、具体的には、5アンペア〜100アンペア、10アンペア〜90アンペア、及び、例えば、30アンペア〜80アンペアの間である。
【0037】
また、電気バッテリシステムの充電時の妨害アークの検出方法を実施する。ここで、ストリングに印加される電圧に対応する第1の値を生成する。さらに、ストリングを通って流れる電流に対応する第2の値を生成する。第1の条件として、第1の値が、第1の時間ウィンドウ内で、第1の制限値を超える分だけ変化したかどうかを判定する。ここでは、具体的には、第1の値が、第1の時間ウィンドウ内で、第1の制限値を超える分だけ増加したかどうかを判定する。第2の条件として、第2の値が、第2の時間ウィンドウ内で第2の制限値を超える分だけ変化したかどうかを判定する。ここでは、具体的には、第2の値が、第2の制限値を超える分だけ減少したかどうかを判定する。これらの条件を判定するために、具体的には、第1及び/又は第2の値の時間依存性の微分を求める。
【0038】
第1の条件及び第2の条件が第3の時間ウィンドウ内に存在する場合に、アークが検出される。第3の時間ウィンドウの長さは、具体的には、ほぼ3ミリ秒に等しい、又は、例えばこれよりも小さく、具体的には2ミリ秒又は1ミリ秒に等しい。したがって、電気バッテリシステムの製造時に、アークの発生が比較的確実に認識できる。
【0039】
例えば、電圧が印加されて電流が発生した後に所定の時間が経過した場合、及び/又は、所定の電流強度及び/又は所定の電圧がストリングに印加された場合、バッテリシステムは、完全に充電されて製造が完了する。この場合には、給電が遮断されること、及び/又は、電圧の印加が遮断されることが好ましい。加えて、具体的には、バッテリシステムの相互接続が停止される。換言すると、ストリングが新たに切り離されて、個々のバッテリシステムが分離される。これらは、例えば、山積みにされる、及び/又は、梱包される。
【0040】
例えば、まず、電圧を印加して電流を発生させた後、電流を所定の値に調節する。所定の期間が経過すると、所定の電圧への調整を行うことが好ましい。好適には、充電中、すなわち、電圧がストリングに印加されている間、及び/又は、電流が発生している間、バッテリシステムを冷却させる。このために、バッテリシステムに、例えば冷却用空気があてられる。これに対して選択的又はこれと組み合わせて、バッテリシステムを、例えば液体、具体的には水で少なくとも部分的に冷却された冷却用槽内に配置する。
【0041】
アークが検出されると、ストリングが直流電圧コンバータから電気的に分離されること、又は、少なくとも電気的に遮断されることが有利である。換言すると、ストリングへの給電、したがってバッテリシステムの充電が終了される。また、電圧をストリングに印加することが終了される。そのため、アークが消弧し、アークを維持するように機能するプラズマは冷却される。したがって、ストリングの周囲に火の粉は存在せず、例えば充電により場合によっては発生する爆発性ガス雲が、特に水の解離によって、発火することはあり得ない。
【0042】
遮断装置は、電気的遮断(電源オフ)を行うように、例えば、ストリングを直流電源、具体的には直流電圧コンバータから分離するように機能する。具体的は、遮断装置は、ストリングの直流電圧コンバータからのガルバニック分離を行うように機能する。ストリング自体は、電気的に直列接続された多数のバッテリシステム、具体的には鉛蓄電池を備えている。遮断装置は、電流を測定可能な電流センサを含む。また、遮断装置は、動作時に電圧を測定する電圧センサを含む。好ましくは、遮断装置は、例えば中継器といったスイッチ、又は、パワートランジスタ、具体的にはMOSFET、IGBT、又は、サイリスタといった半導体スイッチを含む。例えば、遮断装置は、バスシステムへのインターフェース又は同様のものを含む。また、遮断装置は、具体的には信号技術的に電流センサ及び/又は電圧センサに結合された制御ユニットを含む。例えば、制御ユニットは、動作時に、電流センサ又は電圧センサの入力信号をデジタルワードに変換するA/D変換器を含む。スイッチ及び/又はインターフェースも、制御ユニットを用いて動作可能なように制御ユニットに結合されていることが有利である。ここで、電流センサ、電圧センサ、及び、スイッチは、遮断装置が直流電圧コンバータとストリングとの間に電気的に接続されている限り、電流センサにより、動作中にストリングを通って流れる電流が測定されるように配置されていることが有利である。電圧センサにより、動作中にストリングに印加される電圧が測定される。スイッチにより、直流電圧コンバータからストリングまでの電流を生成又は遮断することが可能である。インターフェースにより、制御信号又はメッセージを、具体的にはバスシステム(データバス)に出力することが可能である。
【0043】
制御ユニットは、ストリングに印加される電圧に対応する第1の値を生成する方法に従って動作される。また、ストリングを通って流れる電流に対応する第2の値が生成される。第1の条件として、第1の値が、第1の時間ウィンドウ内で、第1の制限値を超える分だけ変化したかどうかが判定され、第2の条件として、第2の値が、第2の時間ウィンドウ内で、第2の制限値を超える分だけ変化したかどうかが判定される。第1の条件及び第2の条件が第3の時間ウィンドウ内に存在する場合に、アークが検出される。アークが検出されると、スイッチは、具体的にはストリングが直流電圧コンバータにより給電されなくなるように制御される。換言すると、スイッチは、具体的には開放される。選択的又はこれと組み合わせて、制御命令又はメッセージが、インターフェースを介して出力される。この制御命令又はメッセージによって、直流電圧コンバータがオフされることが好ましい。制御ユニットは、この方法を実行することに適しており、具体的には、そのように提供及び構成されている。
【0044】
電気バッテリシステムの充電時の妨害アークの検出方法と一緒に実施される発展形態及び利点に関しては、同様に、電気バッテリシステムの製造方法、及び/又は、遮断装置にも適用可能であり、そのまた逆も可能である。