(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る第1の実施の形態を示す波長変換部材の斜視図及び断面図である。
図1Aは、第1の実施の形態を示す波長変換部材の斜視図である。
図1Bは、
図1Aに示す波長変換部材をA−A線に沿って平面方向に切断し矢印方向から見た断面図である。
【0024】
図1Aに示すように、第1の実施の形態における波長変換部材1は、容器2と、波長変換物質を含む成形体3とを有して構成される。
【0025】
容器2は、波長変換物質を含む成形体3を収納し保持することが可能な収納空間5を備える。容器2は透明な部材であることが好ましい。「透明」とは、一般的に透明と認識されるもの、又は、可視光線透過率が約50%以上のものを指す。
【0026】
容器2の縦横寸法の大きさは、数mm〜数十mm程度、収納空間5の縦横寸法は、数百μm〜数mm程度である。
【0027】
図1に示すように容器2は、光入射面2a、光出射面2b、及び、光入射面2aと光出射面2bとの間を繋ぐ側面2cとを備える。
図1に示すように、光入射面2aと光出射面2bとは互いに対向した位置関係にある。
【0028】
図1に示すように、容器2には、光入射面2a、光出射面2b及び側面2cよりも内側に収納空間5が形成されている。なお、収納空間5の一部が、光入射面2a、光出射面2bあるいは側面2cにまで達していてもよい。
【0029】
図1Bに示すように、光入射面2a及び光出射面2bの、少なくともいずれか一方に垂直な平面で切断した断面形状において、収納空間5の外形断面及び容器2の外形断面はいずれも矩形状で形成されている。このような切断面は、光入射面2a、光出射面2b及び側面2cが現れる方向に向けて切断した面である。ここで「矩形状」とは4つの頂点が略直角であり、正方形、長方形を含む。
【0030】
図1Bに示すように、収納空間5の外形断面及び容器2の外形断面は相似形であることが好ましい。
【0031】
図1に示す容器2は例えばガラス管の容器であり、ガラスキャピラリを例示できる。ただし、上記したように透明性に優れる容器を構成できれば樹脂等であってもよい。
【0032】
図1に示すように、収納空間5には、波長変換物質を含む成形体3が配置されている。
図1に示すように、収納空間5は開口しており、ここから波長変換物質を含む成形体3を挿入することができる。
【0033】
本実施の形態に係る波長変換物質は成型体からなることを特徴とする。波長変換物質を含む成形体3は、予め収納空間5の形状に合わせて成形加工されている。そして波長変換物質を含む成形体3を容器2の収納空間5内に挿入することで、波長変換物質を含む成形体3を適切に収納空間5内に配置することができる。したがって、波長変換物質を収納空間5に注入して収納空間5を充填する場合に比べ、波長変換物質の内部に気泡が入る、あるいは波長変換物質が不均一になる不具合を抑制することができる。つまり、波長変換物質を均一に配置することができる。例えば、気泡が入ると、その部分での光の拡散等により波長変換効率が低下しやすくなる。したがって、気泡が波長変換物質の内部に入るのを抑制できる本実施の形態は、効果的に波長変換効率を向上させることができる。また本実施の形態では、波長変換物質に気泡が入るのを抑制できるため、歩留まりを向上させることができ、品質管理を容易に行うことができる。
【0034】
波長変換物質を含む成形体3は、収納空間5内に圧入や接着等の手段により挿入される。圧入する場合には、波長変換物質を含む成形体3を収納空間5と完全に同一の大きさかあるいは、収納空間5よりもわずかに大きく成形し、圧力を加えながら波長変換物質を含む成形体3を収納空間5内に挿入することで、波長変換物質を含む成形体3の内部のみならず、波長変換物質を含む成形体3と容器2との間にも隙間が生じるのを抑制することができる。
【0035】
また波長変換物質を含む成形体3を収納空間5内に接着して固定する場合、波長変換物質を含む成形体3を収納空間5よりも小さく成形し、波長変換物質を含む成形体3の側面に接着層を塗布した状態で、波長変換物質を含む成形体3を収納空間5内に挿入する。このとき、成型体3の断面積が、収容空間5の断面積よりもわずかに小さくてもよい。これにより、波長変換物質を含む成形体3と容器2とは接着層を介して密接し、波長変換物質を含む成形体3と容器2との間に隙間が形成されるのを抑制することができる。接着層には、成型体3と同じ樹脂、あるいは、基本構造が共通する樹脂を用いることができる。または、接着層として、透明な接着材を用いてもよい。
【0036】
図1に示す波長変換物質を含む成形体3は、青色の光を吸収して赤色の光を発する物質、及び、青色の光を吸収して緑色の光を発する物質を含むことが好ましい。具体的には、波長変換物質を含む成形体3に量子ドットを含むことが好ましい。波長変換物質を含む成形体3として、量子ドット以外の蛍光顔料、蛍光染料等を用いてもよいが、量子ドットを含むことが、波長変換特性に優れる。
【0037】
波長変換物質を含む成形体3は、量子ドットが分散された樹脂組成物が成形されてなることが好ましい。樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリメチルペンテン、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、シリコーン樹脂、又は、これらのいくつかの混合物等を使用することができる。このうち、シリコーン樹脂あるいはエポキシ樹脂を用いて量子ドットを分散した樹脂組成物を形成することが好適である。より好ましくは、シリコーン樹脂を用いて量子ドットを分散した樹脂組成物を形成する。
【0038】
また、波長変換物質層3の屈折率は、容器2の屈折率に比べて小さいことが好ましい。例えば、シリコーン樹脂組成物の屈折率は、ナトリウムD線、23℃において、信越化学工業(株)製のSCR1016で1.52、(株)ダイセル製のA2045で1.55、信越化学工業(株)製のKER−2500で1.41、(株)ダイセル製のA1080で1.41である。また、エポキシ樹脂組成物の屈折率は、ナトリウムD線、23℃において、(株)ダイセル製のセルビーナスWO917で1.51、セルビーナスWO925で1.50である。これに対して、ガラスによる容器2の屈折率は、一般的なガラスの場合で1.45前後であり、高屈折率の光学ガラスの場合で1.50〜1.90程度である。したがって、波長変換物質を含む成形体3及び容器2の材質を適切に選択することにより、波長変換物質を含む成形体3の屈折率を、容器2の屈折率に比べて小さくできる。例えば、波長変換物質を含む成形体3として屈折率が1.41のシリコーン樹脂であるA1080又はKER−2500を用い、容器2を屈折率1.45のガラスで構成することができる。また別の例として、波長変換物質を含む成形体3として屈折率が1.41〜1.55のシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂を用い、容器2を屈折率1.56以上の高屈折率のガラスで構成することができる。これにより、波長変換物質を含む成形体3内に進入した光の一部が、収納空間5に面する容器2の側壁部分で全反射する。屈折率の小さい媒体側における入射角は、屈折率の大きい媒体側における入射角より大きくなるためである。これにより光が容器2の側方から外部へ漏れる量を減らすことができるので、色変換効率及び発光強度を高めることができる。なお、ここでいう波長変換物質を含む成形体3を構成する樹脂組成物とは、量子ドットを分散するための樹脂に限定されるものではない。
【0039】
また波長変換物質を含む成形体3に含まれる量子ドットの構成及び材質を限定するものではないが、例えば、本実施の形態における量子ドットは、半導体粒子のコアと、コアの周囲を被覆するシェル部とを有することができる。コアには、例えば、CdSeが使用されるが、特に材質を限定するものでない。例えば、少なくともZnとCdとを含有するコア材、Zn、Cd、Se及びSを含有するコア材、ZnCuInS、CdS、CdSe、ZnS、ZnSe、InP、CdTe、これらのいくつかの複合物等が使用できる。本実施の形態における量子ドットは、シェル部が形成されず、半導体粒子のコア部のみで構成されてもよい。すなわち、量子ドットは、少なくともコア部を備えていれば、シェル部による被覆構造を備えていなくてもよい。例えば、コア部に対して、シェル部の被覆を行った場合、被覆構造となる領域が小さいか被覆部分が薄すぎて被覆構造を分析・確認できないことがある。したがって、分析によるシェル部の有無にかかわらず、量子ドットと判断することができる。
【0040】
量子ドットとして、例えば、吸収波長が460nm(青色)であって、蛍光波長が約520nm(緑色)の量子ドット及び約660nm(赤色)の量子ドットの2種類が含まれている。このため、光入射面2aから青色の光が入射されると、それぞれの量子ドットによって、青色の一部が、緑色又は赤色に変換される。これによって、光出射面2bから白色の光を得ることができる。
【0041】
図2は、着色層を設けた波長変換部材の断面図である。本実施の形態では、
図2Aに示すように側面2c、2cに着色層4、4を設けてもよい。「着色層」とは透明でない層であり、白色を含む色が着色された層を指す。着色層4は、塗料、インク、あるいはテープにより構成されることが好ましい。また着色層4の色を限定するものでないが、白色であることが好適である。したがって白い塗料や白色インクを側面2cに塗布したり、白色テープを側面2cに貼るだけで簡単に着色層4を形成することができる。
【0042】
このように着色層4を設けることで、側方領域7を通過する光抜けを抑制することができ、従来に比べて色変換を適切かつ高効率に行うことができ、所望の色の光を光出射面2bより得ることができる。また本実施の形態によれば、白色光の発光強度を従来と同等あるいはそれ以上にすることができる。また、Ni、Ag、Al、Cr等の金属を蒸着して着色層4とすることもできる。
【0043】
図2Aでは着色層4を、容器2の側面2cに形成しているが、
図2Bに示すように、着色層4を、容器2の側面2cから光出射面2bの端部2eにかけて形成することができる。あるいは
図2Cに示すように、着色層4を、光出射面2bの端部2eにのみ形成することもできる。着色層4は、
図2Aに示すように、容器2の側面2cか、
図2Bに示すように、容器2の側面2cから光出射面2bの端部2eにかけて形成されることが好ましい。
【0044】
光出射面2bの端部2eは、収納空間5と側面2cとの間の側方領域7に対向している。よって端部2eは、波長変換物質を含む成形体3が配置された収納空間5と対向していない。したがって光出射面2bの端部2eに設けられた着色層4は、波長変換物質を含む成形体3が配置された収納空間5の両側に位置し、収納空間5と対向しないことが好ましいが、光出射面2b上で着色層4が多少長く形成され、収納空間5と一部対向していてもよい。例えば着色層4は、収納空間5の幅の約1/3以下と対向する程度であれば許容範囲に含まれる。
【0045】
なお着色層4は、側面2cあるいは端部2eの全面に形成されることが好ましいが、必ずしも全面でなくてもよく、側面2cあるいは端部2eの一部であってもよい。ただし、側面2cあるいは端部2eの50%以上の面積を着色層4で覆うことが好ましい。また、着色層4は、側方領域7の上に形成される代わりに、側方領域7の全部又は一部を着色された材料とすることで形成してもよい。例えば、側方領域7の全部又は一部を、白色のガラス又は白色の樹脂とすることで形成することもできる。
【0046】
また上記では、着色層4を容器2の外面に形成していたが、
図3Aに示すように、着色層4を収納空間5の壁面5aに形成することもできる。着色層4を形成する壁面5aは、容器2の側面2cと対向した位置にある。
【0047】
あるいは、
図3Bに示すように、容器2の側面2cと収納空間5との間の容器2の側部2dそのものを着色層4とすることができる。係る場合、容器2の成形を二色成形し、このとき、容器2の側部2dとなる部分には着色した樹脂を用いる。あるいは、容器2の側部2dと、それ以外の部分とを接着等で接合し
図3Bに示す容器2を形成することもできる。なお、
図3A、
図3Bにおいて、
図2A、
図2Bと同じ符号は、
図2A、
図2Bと同じ部分を示している。
【0048】
図3Cは、
図1Aに示す波長変換部材1をC−C線に沿って切断し矢印方向から見た断面図である。
図3Cに示すように、波長変換部材1の両端では、成形体3が容器2よりも凹んだ段差部80が形成されている。そして段差部80を覆う着色層としてのチップ82が接着層81を介して接続されている。チップ82は、段差部80とは略逆形状で形成されており、成形体3と対向する部分が突出した形状である。チップ82は例えばAlで形成されるが特に材質を問うものではない。また、接着層81は耐水バリア性を備えることが好ましい。また、段差部80を形成せずに、波長変換部材1の両端に着色層を形成してもよい。これにより、波長変換部材1の両端からの光抜けを抑制することができ、従来に比べて色変換を適切かつ高効率に行うことができる。
【0049】
図4は、収納空間(波長変換物質を含む成形体)から見て光入射面側を肉厚で形成した波長変換部材の断面図である。
【0050】
図4に示すように、光入射面2aと波長変換物質を含む成形体3との間の距離はL1であり、光出射面2bと波長変換層3との間の距離L2である。距離L1、L2は直線距離である。例えば、光入射面2aと光出射面2bの各中心を直線で引き、その直線上に沿う長さで距離L1、L2を測ることができる。
【0051】
図4に示すように本実施の形態では、距離L1は距離L2よりも大きい。すなわち容器2は、波長変換物質を含む成形体3から見て光入射面2a側のほうが光出射面2b側よりも肉厚とされている。
【0052】
限定されるものでないが、例えば、距離L1は、1mm〜8mm程度、距離L2は、0.2mm〜1mm程度である。一例を挙げると、距離L1は、5mm程度、距離L2は、0.5mm程度である。
【0053】
本実施の形態では、
図4に示すように波長変換部材1の光入射面2aにLED等の発光素子(光源)10を取り付けることができる。発光素子10は、波長変換部材1の光入射面2aに当接している。
【0054】
図4では、波長変換部材1に形成された波長変換物質を含む成形体3は、光入射面2aよりも光出射面2bに偏って配置されている。このため、
図1Bのように、波長変換物質を含む成形体3を光入射面2aと光出射面2bとの中央に配置し、
図4と同様に光入射面2aに発光素子10を当接させた場合に比べて、
図4の構成のほうが、
図1Bの構成に比べて、波長変換層3を発光素子10から遠ざけることができる。
図4では、波長変換部材1を発光素子10に接して配置したことで、波長変換層3を発光素子10から遠ざけつつ、波長変換部材1と発光素子10とを一体型で構成することができる。
【0055】
波長変換物質を含む成形体3が発光素子10に近接していると、発光素子10に対向する波長変換物質を含む成形体3の部分に黒変が発生することがわかった。黒変が生じるのは、発光素子10からの光あるいは熱、又はその両方の影響が量子ドットに影響を及ぼすことが原因であると思われる。
【0056】
そこで
図4の構成では、黒変発生を抑制すべく、波長変換物質を含む成形体3を発光素子10から遠ざけるために、波長変換物質を含む成形体3と光入射面2aとの間の距離L1を、波長変換物質を含む成形体3と光出射面2bとの間の距離L2よりも大きくしたのである。これにより、
図4に示すように、波長変換部材1と発光素子10とを接して配置させても、適切に波長変換物質を含む成形体3を発光素子10から遠ざけることができる。これにより、従来に比べて黒変発生を抑制することができる。
【0057】
また本実施の形態では、容器2は、波長変換物質を含む成形体3から見て光出射面2b側のほうを薄くしている。これにより容器2全体の厚み(光入射面2aと光出射面2b間の幅寸法)の増大を抑制しつつ、黒変発生を抑制することができる。
【0058】
図1B、及び
図2に示すように、断面形状は、容器2及び収納空間5の外形形状が矩形状であることが好適である。ただし、
図5Aのように、容器2の側面2c及び収納空間5の側壁面が曲面である構成や、楕円状の構成とすることもできる。
図5は、
図2とは異なる断面形状を示す波長変換部材の断面図である。
【0059】
また、
図1B、
図2では、容器2及び収納空間5の外形形状が正方形であったが、
図5Bに示すように、容器2及び収納空間5の外形形状を長方形とすることできる。
【0060】
なお曲面を含む断面形状よりも、
図1B、
図2、
図4、
図5Bに示すように、矩形状であることで、着色層4を設けた効果(適切かつ高効率に色変換でき、従来に比べて所望の色の光を得ることができる)を適切に発揮させることができ、
図4に示すように、光入射面2aと波長変換物質を含む成形体3との間の距離L1を、光出射面2bと波長変換物質を含む成形体3との間の距離L2よりも適切かつ簡単に大きくすることができる。
【0061】
また
図1B、
図2、
図4及び
図5A、
図5Bでは、容器2及び収納空間5の断面の外形形状を互いに相似形状としているが、
図5Cに示すように、容器2の断面の外形形状と収納空間5の断面の外形形状とを異ならせることもできる。例えば
図5Cでは、容器2の断面の外形形状が矩形状であり、収納空間5の断面の外形形状が六角形である。また
図5Dに示すように、容器2及び収納空間5の断面の外形形状を、それぞれ互いに相似の台形状にすることができる。例えば
図5Dでは、台形の短辺側を光入射面2aとし、長辺側を光出射面2bとしている。これにより、光源から放出された光を、所定の大きさに拡大することができる。また、他の例として、
図5Dとは逆に、台形の長辺側を光入射面2aとし、短辺側を光出射面2bとしてもよい。これにより、光源から放出された光を、所定の大きさに集光することができる。また、容器2及び収納空間5の断面の外形形状は、
図5Dとは異なり、台形の上底と下底との中心を通る中心線に対して、側面が互いに線対称の位置に形成されていてもよい。
【0062】
図5の各図では、着色層4を設けているが、着色層4は形成されていなくてもよい。また、
図4に示すように波長変換物質を含む成形体3から見て光入射面2a側を肉厚で形成してもよい。
【0063】
また
図1B、
図2、
図4、及び
図5の各図において、光入射面及び光出射面は平面で形成されているが、光入射面及び光出射面のいずれか一方、又は、双方が曲面で形成されてもよい。また、
図1B、
図2、
図4、
図5B〜
図5Dの各図において、容器2の側面は平面で形成されているが、側面が曲面で形成されてもよい。また各辺の間の角をR形状にしてもよい。すなわち、矩形状、六角形、台形状などの表現は、幾何学的に正確な四角形、六角形、台形などに限られるものではなく、これらを構成する線及び角度が、歪を有し、又は、誤差を含むものも含まれる。これらにより、放出される光の方向を調節することができる。
【0064】
次に、本実施の形態に係る波長変換部材1の製造方法について説明する。
図6は、本実施の形態に係る波長変換物質を含む成形体を成形する工程図である。
図7は、
図6に示す波長変換物質を含む成形体を容器の収納空間に挿入する工程図である。
【0065】
図6に示すように、金型45と射出成型機41を用意する。ここで金型45の成形空間45aの形状は、容器2の収納空間5の形状と、略同一の形状とされる。「略同一」とは、完全に同じである場合のみならず、大きさがわずかに異なっていてもよい。具体的には、±5%程度の寸法差なら許容範囲とされる。
【0066】
図6では、
図1Aに示す波長変換物質を含む成形体3を成形するので、金型45の成形空間45aは細長いバー形状である。
【0067】
図6に示すように、例えば、量子ドット46が分散された樹脂組成物44を射出成形機41から金型45に射出する。樹脂組成物44は溶融樹脂である。量子ドット46が分散された樹脂組成物44は、金型内に射出された後、冷されて固体状となり、成形体とされる。金型45から取り出された成形体40表面のバリ等を研削加工して、所望の大きさ及び形状を有する成形体40を得る。
【0068】
本実施の形態に係る波長変換部材1の製造方法によれば、量子ドット等が分散された樹脂組成物を用いて様々な形状の成形体40を自由に作製することが可能である。
【0069】
樹脂成形体を射出成形で成形する例を説明するが、本実施の形態に係る成形体40は、押出成形、中空成形、熱成形、圧縮成形、カレンダー成形、インフレーション法、キャスティング法等の方法を用いて作製してもよい。
【0070】
次に、
図7に示すように、作製された成形体40を、波長変換部材1における容器2の収納空間5内に挿入する(
図7では挿入を矢印で示した)。容器2としては、上述したとおり、例えばガラスキャピラリが挙げられる。このとき、
図7に示す成形体40の横断面(符号42の面と平行な断面)が、収納空間5の横断面の大きさと同一かわずかに大きい場合、圧力を加えながら成形体40を収納空間5に挿入する(圧入)。容器2は成形体40の挿入方向には強度が高いため圧入の際に、容器2が割れる等の損傷を受けにくい。圧入により、成形体40と容器2とを密接させて固定することができる。一方、
図7に示す成形体40の横断面が、収納空間5の横断面の大きさよりもわずかに小さい場合、成形体40の側面に接着層を塗布した状態で、成形体40を収納空間5に挿入する。接着固定により、成形体40と容器2との間に接着層を介して密接させて固定することができる。
【0071】
波長変換物質を収納空間5に注入する場合、気泡が入りやすい問題がある。これに対して本実施の形態に係る波長変換部材1よれば、波長変換物質を成形体で形成するために、波長変換物質の内部に気泡が入ることを防止することができる。加えて波長変換物質を含む成形体3を容器2に密接させることができ、したがって波長変換物質を含む成形体3と容器2との間に空隙が入ることも防止することができる。以上により、高品質の波長変換部材1を高い歩留りで製造することができる。また波長変換物質を成形体で形成することで、作業性が高くなり、かつ、品質管理を容易にできる。すなわち、波長変換物質を含む成形体3を成形した時点で波長変換物質を含む成形体3内部に気泡が入っていないか否かを確認することができる。波長変換物質を含む成形体3内部に気泡が入っていれば、その時点で不良品として排除し、容器2の収納空間5への挿入工程には回さないようにできる。波長変換物質を含む成形体3内部に気泡が入っていなければ、容器2の収納空間5への挿入工程に回す。容器2の収納空間5内に波長変換物質を樹脂注入する場合、注入した後に品質管理を必要とするため、波長変換物質内に気泡が入っているか否かを確認することが難しくまた見落としも発生しやすい。本実施の形態では、波長変換物質を含む成形体3を成形した時点で品質管理を容易に行うことができる。
【0072】
図8は、
図1に示す波長変換部材を用いた発光装置及び光源装置の平面図である。
図1に示す波長変換部材1を、
図8に示すように、LED等の発光素子10と導光板12との間に介在させることができる。波長変換部材1は、発光素子10の発光側に配置される。ここで発光側とは、発光素子10から光が放出される側である。発光素子10がプリント配線基板上にLEDチップを搭載した構成を有するときは、LEDチップに対してプリント配線基板の反対側である。ここで波長変換部材1と発光素子10とを組み合わせたものが、発光装置であり、さらに発光装置に導光板12を加えて光源装置が構成される。あるいは、波長変換部材1と導光板12とを組み合わせて導光部材を構成することもできる。
図8に示す発光装置は、例えば、液晶ディスプレイの白色面光源として用いることができる。
【0073】
図8に示す構成により、発光素子10から発せられた光は、波長変換部材1の光入射面2aから入射され、波長変換物質を含む成形体3(
図1参照)にて波長変換され、波長変換された所望の光が光出射面2bから導光板12に出射される。例えば所望の色の発光光とは白色光である。
【0074】
図2、
図5等に示すように着色層4を設けることで、発光素子10からの光源光が波長変換部材1の側方領域を波長変換されずに通り抜ける割合を減らすことができ、より効果的に所望の色の光を光出射面2bから得ることができる。
【0075】
また
図4に示すように、波長変換物質を含む成形体3から見て光入射面2a側を肉厚とした構成とすることで黒変発生を抑制できる。
図8では、波長変換部材1と発光素子10とを離した形態としているが、例えば、
図4に示すように、波長変換部材1の光入射面2aに発光素子10を当接させても、波長変換物質を含む成形体3と発光素子10との間の距離を離すことができ、黒変発生を効果的に抑制することができる。
【0076】
図9は、本実施の形態に係る第2の実施の形態を示す波長変換部材を備えた発光素子の分解斜視図である。
図10は、
図9に示す波長変換部材を組み合せた状態で、B−B線に沿って高さ方向に切断し矢印方向から見た拡大縦断面図である。
図11は、
図9に示す発光素子の各部材を組み合わせた状態で、
図9に示すB−B線に沿って高さ方向に切断し矢印方向から見た発光素子の縦断面図である。
【0077】
図9、
図11に示す発光素子20は、波長変換部材21と、LEDチップ(発光チップ)22とを有して構成される。波長変換部材21は、容器本体23と蓋体24との複数ピースで構成された容器25を備える。波長変換部材1は、LEDチップ(発光チップ)22の光出射側に配置される。ここで光出射側とは、LEDチップ(発光チップ)22に対して、発光素子20のプリント配線基板29の反対側、つまり、発光素子20から光が放射される方向である。また
図9、
図10、
図11に示すように、容器本体23の中央部には有底の収納空間26が形成されている。そして成形体からなる波長変換物質を含む成形体27が収納空間26に配置されている。蓋体24が容器本体23上に図示しない接着層を介して接合される。また、容器25の側面25cに着色層が形成される。
【0078】
図9、
図10、
図11に示す波長変換部材21の容器25の下面が光入射面25aである。光入射面25aに対向する上面が光出射面25bである。
【0079】
図9、
図10、
図11に示す波長変換部材21の容器25に設けられた側面25cに対して内側の位置に収納空間26が形成されている。そして収納空間26内に、成形体からなる波長変換物質を含む成形体27が圧入や接着等の固定手段により配置されている。すなわち波長変換物質を含む成形体27を収納空間26よりもわずかに大きく成形して、波長変換物質を含む成形体27を収納空間26内に圧入することで、波長変換物質を含む成形体27と容器25とを密接させることができる。また、波長変換物質を含む成形体27を収納空間26よりもわずかに小さく成形してもよい。このとき、波長変換物質を含む成形体27の側面に接着層を塗布した状態で、波長変換物質を含む成形体27を収納空間26内に挿入することで、波長変換物質を含む成形体27と容器25とを接着層を介して密接させることができる。接着層には、成型体27と同じ樹脂、あるいは、基本構造が共通する樹脂を用いることができる。または、接着層として、透明な接着材を用いてもよい。
【0080】
図11に示すように、LEDチップ22は、プリント配線基板29に接続され、
図9、
図11に示すようにLEDチップ22の周囲が枠体30に囲まれている。そして、枠体30内は樹脂層31で封止されている。
【0081】
図11に示すように、波長変換部材21が枠体30の上面に図示しない接着層を介して接合されてLED等の発光素子20が構成される。
【0082】
図9、
図10、
図11に示す波長変換部材21において、
図2等で説明した着色層を設けてもよいし、
図4で説明したように、波長変換物質を含む成形体27から見て光入射面25a側を光出射面25b側よりも肉厚で形成してもよい。
【0083】
図12は、
図9に示す発光素子を用いた表示装置の縦断面図である。
図12に示すように表示装置50は、複数の発光素子20(LED)と、各発光素子20に対向する液晶ディスプレイ等の表示部54とを有して構成される。各発光素子20は、表示部54の裏面側に配置される。
【0084】
複数の発光素子20は支持体52に支持されている。各発光素子20は、所定の間隔を空けて配列されている。各発光素子20と支持体52とで表示部54に対するバックライト55を構成している。支持体52はシート状や板状、あるいはケース状である等、特に形状や材質を限定するものでない。
【0085】
図12に示すように、バックライト55と表示部54との間には、光拡散板53等が介在している。
【0086】
図9、
図11に示す発光素子20と
図8に示す導光板12とを組み合わせて光源装置を構成することができる。あるいは、
図8に示す発光装置及び光源装置(発光素子と、キャピラリ状の波長変換部材1と導光板12等を備える)を
図12に示す表示部54の裏面側に配置し(光拡散板53等の介在は任意である)、表示装置50を構成してもよい。
【0087】
また、
図8に示す波長変換部材1と、導光板12とが一体となっている導光部材60を構成することができる。
図13は、本実施の形態に係る導光部材を示す斜視図である。
図13に示すように導光板12の光入射面側における両端部間に収納空間5を形成し、この収納空間5内に、波長変換物質を含む成形体3を挿入する。波長変換物質を含む成形体3の構成は
図1等と同じであってよい。
図13に示す実施の形態では、波長変換部材1と、導光板12とを一体としたことで、波長変換部材1と導光板12との組み合わせ工程が必要でなく、組み合わせ工程に伴う位置ずれ等の不具合が生じない。また導光部材60を作製する際の部品点数を減らすことができ、組み立て工程を容易化でき、生産コストの低減にも繋がる。なお、導光板12と波長変換部材1との間に光拡散板53等が入っていてもよい。また
図2等で説明した着色層4を波長変換部材1の部分に設けてもよい。換言すれば導光板12として機能する表面には着色層4を設けない。これにより波長変換効率と導光効率とを向上させることができる。
【0088】
図13には図示していないが、発光素子が導光板12(波長変換部材1)の光入射面12aに対向して配置されている。
【0089】
また
図13で示した、導光部材60と、発光素子10とが一体となっている光源装置70を構成することができる。
図14は、本実施の形態に係る導光部材を用いた光源装置を示す斜視図である。
図14に示すように、導光部材60の光入射面60aに発光素子10が取り付けられている。発光素子10は枠体内に複数のLEDチップが横方向に並設され樹脂で埋設された構成である。なお複数の発光素子10が導光部材60の光入射面60aに取り付けられた構成とすることもできる。
図14では、
図13よりも、波長変換物質を含む成形体3と光入射面60aとの間の距離dを延ばして、発光素子10を光入射面60aに直接取り付けることができるようにした。これにより発光素子10を簡単に導光部材60に対して配置することができるとともに、波長変換物質を含む成形体3の黒変発生を防ぐことができる。距離dは、
図4で示す距離L1と同に1mm〜8mm程度であることが好ましい。また
図14の構成においても
図13と同様に、着色層4を設けた。ただし
図13、
図14の構成において着色層4は形成されていなくてもよい。
【0090】
図13に示す導光部材60及び発光素子(不図示)、並びに、
図14に示す光源装置70を
図12に示す表示部54の裏面側に配置し(光拡散板53等の介在は任意である)、表示装置50を構成してもよい。また本実施の形態の波長変換部材や発光素子を、上記に示した光源装置や表示装置以外に、その他の形態の光源装置、照明装置、光拡散装置、光反射装置等にも適用することができる。