特許第6883179号(P6883179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6883179細胞増殖性異常検出用または疾患程度等級付け用の遺伝子組成物およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883179
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】細胞増殖性異常検出用または疾患程度等級付け用の遺伝子組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20210531BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20210531BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20210531BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20210531BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   C12N15/11 ZZNA
   C12Q1/6813 Z
   C12Q1/6886 Z
   G01N33/53 M
   G01N33/574 Z
【請求項の数】46
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2017-526739(P2017-526739)
(86)(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公表番号】特表2017-525977(P2017-525977A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】CN2015086367
(87)【国際公開番号】WO2016019899
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2018年8月6日
(31)【優先権主張番号】201410389895.2
(32)【優先日】2014年8月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517038534
【氏名又は名称】バイオチェーン インスティテュート インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOCHAIN INSTITUTE, INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】517038545
【氏名又は名称】バイオチェーン(ペキン) サイエンス&テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOCHAIN(BEIJING) SCIENCE & TECHINOLOGY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シアオリアン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,トン
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼開春
(72)【発明者】
【氏名】聶勇戰
(72)【発明者】
【氏名】樊代明
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジェームス ジエンミン
【審査官】 中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0151443(US,A1)
【文献】 Oncotarget, 2014 May 30, vol. 5, no. 10, pp. 3173-3183.
【文献】 Oncology letters, 2014 Oct (Epub 2014 Aug 4.), vol. 8, no. 4, pp. 1745-1750.
【文献】 Translational oncology, 2013 Jun 1, vol. 6, no. 3, pp. 290-296.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸と、セプチン9遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸と、を含み、
前記RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸が、
SEQ ID No:1とSEQ ID No:2とSEQ ID No:3の組み合わせ、
SEQ ID No:4とSEQ ID No:5とSEQ ID No:6の組み合わせ、
SEQ ID No:4とSEQ ID No:7とSEQ ID No:8の組み合わせ、
およびSEQ ID No:4とSEQ ID No:7とSEQ ID No:9の組み合わせからなる群から選択される1以上の組み合わせを含む組成物。
【請求項2】
前記RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸は、RNF180の少なくとも15個のオリゴヌクレオチド長セグメントを含み、前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換する試薬をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記試薬は、亜硫酸水素塩である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を含む、試薬キット。
【請求項6】
患者の生体試料を収容するための容器を含む、請求項5に記載の試薬キット。
【請求項7】
前記試薬キットの使用および結果の解釈の説明を含む、請求項5または6に記載の試薬キット。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物の、個体における細胞増殖性異常を検出するための試薬キットの製造における使用
【請求項9】
前記細胞増殖性異常は癌である、請求項8に記載の使用
【請求項10】
前記癌は、胃癌である、請求項9に記載の使用
【請求項11】
個体における細胞増殖性異常を検出する方法であって、前記個体から単離した生体試料におけるRNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度と、セプチン9遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を確定し、RNF180およびセプチン9のメチル化検出結果を総合することにより、個体における細胞増殖性異常を検出することを含み、
前記RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を確定するための核酸として、
SEQ ID No:1とSEQ ID No:2とSEQ ID No:3の組み合わせ、
SEQ ID No:4とSEQ ID No:5とSEQ ID No:6の組み合わせ、
SEQ ID No:4とSEQ ID No:7とSEQ ID No:8の組み合わせ、
およびSEQ ID No:4とSEQ ID No:7とSEQ ID No:9の組み合わせからなる群から選択される1以上の組み合わせを含む方法。
【請求項12】
試薬を使用して、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換すること、前記試薬で処理したセプチン9およびRNF180遺伝子またはそのセグメントを増幅酵素およびプライマーと接触させ、前記処理した遺伝子またはセグメントを増幅させ増幅生成物を生成するか、または増幅させないこと、プローブを用いて増幅生成物を検出すること、および前記増幅物が存在するか否かに基づき、セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化の程度を確定することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
人工メチル化テンプレートおよび非メチル化テンプレートを用いて前記プライマーおよびプローブをスクリーニングする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
癌および健常DNAをテンプレートとして用いて前記プライマーおよびプローブをスクリーニングする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記個体の生体試料は、細胞系、組織切片、組織生検/パラフィン包埋組織、体液、糞便、結腸流出物、尿、血漿、血清、全血、単離した血球、血液から単離した細胞、またはその組み合わせより選ばれる、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記個体の生体試料は、血漿である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態は、ポリメラーゼ連鎖反応のサイクル閾値Ct値により確定される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞増殖性異常は癌である、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記癌は、胃癌である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸を含み、
前記核酸が、
SEQ ID No:1とSEQ ID No:2とSEQ ID No3の組み合わせ、
SEQ ID No:4とSEQ ID No:5とSEQ ID No6の組み合わせ、
SEQ ID No:4とSEQ ID No:7とSEQ ID No8の組み合わせ、
および、SEQ ID No:4とSEQ ID No:7とSEQ ID No9の組み合わせからなる群から選択される1以上の組み合わせを含み、
RNF180のメチル化検出結果により疾患の程度を等級付けする組成物の、個体の疾患の程度を等級付けする試薬キットの製造における使用
【請求項21】
前記組成物は、セプチン9遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸をさらに含み、RNF180およびセプチン9のメチル化検出結果を総合することにより疾患の程度を等級付けする、請求項20に記載の使用
【請求項22】
前記核酸は、RNF180の少なくとも15個のオリゴヌクレオチド長セグメントを含み、前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む、請求項20に記載の使用
【請求項23】
前記組成物は、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換する試薬をさらに含む、請求項20に記載の使用
【請求項24】
前記試薬は、亜硫酸水素塩である、請求項23に記載の使用
【請求項25】
前記疾患の程度は、3つのレベルにわかれ、第1のレベルは健常、第2のレベルは炎症、第3のレベルは癌である、請求項20〜24のいずれか1項に記載の使用
【請求項26】
前記炎症は胃炎であり、かつ前記癌は胃癌である、請求項25に記載の使用
【請求項27】
前記胃炎は、発癌しにくい胃炎と発癌しやすい胃炎とにさらに等級付けできる、請求項26に記載の使用
【請求項28】
前記発癌しにくい胃炎は、表層性胃炎である、請求項27に記載の使用
【請求項29】
前記発癌しやすい胃炎は、萎縮性胃炎と腸上皮化生のある胃炎とにさらに等級付けできる、請求項27に記載の使用
【請求項30】
前記胃癌は、I、II、III、IV期胃癌にさらに等級付けできる、請求項26に記載の使用
【請求項31】
個体から単離した生体試料におけるRNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を確定し、RNF180のメチル化検出結果により疾患の程度を等級付けすることを含み、
前記メチル化の程度を確定するための核酸として、
SEQ ID No:1とSEQ ID No:2とSEQ ID No:3の組み合わせ、
SEQ ID No:4とSEQ ID No:5とSEQ ID No:6の組み合わせ、
SEQ ID No:4とSEQ ID No:7とSEQ ID No:8の組み合わせ、
およびSEQ ID No:4とSEQ ID No:7とSEQ ID No:9の組み合わせからなる群から選択される1以上の組み合わせを含む、個体の疾患の程度を等級付けするための方法。(ただし、医師による判断工程を含む場合を除く。)
【請求項32】
前記個体から単離した生体試料におけるセプチン9遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を確定し、RNF180およびセプチン9のメチル化検出結果を総合することにより疾患の程度を等級付けすることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
試薬を使用して、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換すること、前記試薬で処理したセプチン9およびRNF180遺伝子またはそのセグメントを増幅酵素およびプライマーと接触させ、前記処理した遺伝子またはセグメントを増幅させ増幅生成物を生成するか、または増幅させないこと、プローブを用いて増幅生成物を検出すること、および前記増幅物が存在するか否かに基づき、セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化の程度を確定することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
人工メチル化テンプレートおよび非メチル化テンプレートを用いて前記プライマーおよびプローブをスクリーニングする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
癌および健常DNAをテンプレートとして用いて前記プライマーおよびプローブをスクリーニングする、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記個体の生体試料は、細胞系、組織切片、組織生検/パラフィン包埋組織、体液、糞便、結腸流出物、尿、血漿、血清、全血、単離した血球、血液から単離した細胞、またはその組み合わせより選ばれる、請求項31〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記個体の生体試料は、血漿である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態は、ポリメラーゼ連鎖反応のサイクル閾値Ct値により確定される、請求項33〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患の程度は、3つのレベルにわかれ、第1のレベルは健常、第2のレベルは炎症、第3のレベルは癌である、請求項31〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
SEQ ID No:1とSEQ ID No:2とSEQ ID No3の組み合わせ、
SEQ ID No:4とSEQ ID No:5とSEQ ID No6の組み合わせ、
SEQ ID No:4とSEQ ID No:7とSEQ ID No8の組み合わせ、
および、SEQ ID No:4とSEQ ID No:7とSEQ ID No9の組み合わせからなる群から選択される1以上の組み合わせを含む核酸。
【請求項41】
RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するプライマーおよび/またはプローブとして用いられる、請求項40に記載の核酸。
【請求項42】
請求項40に記載の核酸を含み、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換する試薬をさらに含む、組成物。
【請求項43】
前記試薬は、亜硫酸水素塩である、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
請求項42または43に記載の組成物を含む、試薬キット。
【請求項45】
患者の生体試料を収容するための容器を含む、請求項44に記載の試薬キット。
【請求項46】
前記試薬キットの使用および結果の解釈の説明を含む、請求項44または45に記載の試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子検査に関し、具体的には、遺伝子組成物およびこの遺伝子組成物を個体における細胞増殖性異常の検出または疾患程度の等級付けに用いることに関する。
【0002】
本願は、2014年8月8日に提出された、名称を「細胞増殖性異常検出用または疾患程度等級付け用の遺伝子組成物およびその用途」とし、出願番号を2014103898952とする発明特許出願の優先権を要求する。
【背景技術】
【0003】
例えば癌などの細胞増殖性異常性疾患は、公衆衛生の主な難題であり、米国においては、癌で死亡する人の数は死亡者総数の約25%を占める。中でも、胃癌は世界で4番目に多く診断されている癌であり、あらゆる癌の中で死亡率が2番目に高く、世界有数の健康の敵とみなされている。特に、中国を含む多くのアジア諸国で、胃癌は各種悪性腫瘍の中でも首位となっており、罹患率および死亡率とも高い。
【0004】
胃炎は、胃粘膜炎症の総称であり、成人においてよく見られ、病因の多くは、胃の刺激であり、不適切な飲食、ウイルスおよび細菌感染、薬物刺激などにより誘発される可能性があるが、比較的容易に是正し治療することができる。
【0005】
しかしながら、胃炎の症状と胃癌の症状は、一般に混同しやすく、日常生活において多くの人が胃炎を胃癌であると誤認し、一日中心配で不安になり、重篤な疾患ではないにもかかわらず、心理的な作用によって悪化を続ける。胃癌を胃炎と誤り、同じものであり大したことがないと勘違いし、治療の最適なタイミングを逃してしまう人もいる。
【0006】
そのため、健常、胃炎および胃癌を区別するための、感度が高く特性が高い検出方法が緊急に求められており、特に感度および特異性が高く、かつ無痛の検出方法が緊急に求められている。
【0007】
生物工学の継続的な発展に伴い、遺伝子検査を利用して疾患を診断する方法が、広く注目されている。中でも、DNAメチル化は、エピジェネティクスの重要な構成部分であり、正常な細胞機能の維持においてだけでなく、癌および炎症の発生においても重要な働きをしており、すなわち、メチル化状態の改変は、癌および炎症を引き起こす重要な要素であり、こうした変化は、ゲノム全体のメチル化の度合いの低下およびCpGアイランド局所のメチル化の度合いの異常な上昇を含み、これによりゲノムの不安定および耐病性遺伝子の不発現をもたらす。耐病性遺伝子のうち活性を有する対立遺伝子が失活した場合、癌および炎症が発生する確率が高まる。そのため、メチル化の研究は、癌および炎症の早期予測、分類、等級付けおよび予後の評価に新しい依拠を提供し、現在注目を集めている研究テーマの1つとなっている。
【0008】
【発明の概要】
【0009】
そのため、本発明は、DNAメチル化の程度を検出することにより、個体における細胞増殖性異常を検出し、または疾患の程度(例えば胃および胃炎)を等級付けするための遺伝子組成物、試薬キットおよびその用途、ならびにこの試薬キットに基づき検査を行う方法を提案する。
【0010】
それに対応し、本発明の第1の側面により、RNF180およびセプチン9遺伝子ならびにそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸を含む組成物を提供する。
【0011】
典型的には、前記核酸は、RNF180の少なくとも15個のオリゴヌクレオチド長セグメントを含み、前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む。
【0012】
いくつかの好ましい実施態様により、前記RNF180のヌクレオチド長セグメントは、SEQ ID No:10からSEQ ID No:12までより選ばれるものに等しい、相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドおよびその相補配列を含む。
【0013】
さらに好ましくは、前記RNF180のヌクレオチド長セグメントは、SEQ ID No:1からSEQ ID No:9までより選ばれるものに等しい、相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした配列およびその相補配列を含む。
【0014】
典型的には、前記組成物は、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換する試薬をさらに含む。前記試薬は、亜硫酸水素塩であることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の側面により、上記組成物を含む試薬キットをさらに提供する。
【0016】
典型的には、前記試薬キットは、患者の生体試料を収容するための容器を含む。
【0017】
かつ、前記試薬キットは、試薬キットの使用および結果の解釈の説明を含んでもよい。
【0018】
本発明の第3の側面により、個体における細胞増殖性異常を検出するための試薬キットの製造における前記組成物の用途をさらに提供する。
【0019】
典型的には、前記細胞増殖性異常は癌である。前記癌は、胃癌であることが好ましい。
【0020】
本発明の第4の側面により、個体における細胞増殖性異常を検出する方法をさらに提供する。前記方法は、前記個体から単離した生体試料におけるRNF180およびセプチン9遺伝子ならびにそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を確定し、RNF180およびセプチン9のメチル化検出結果を総合することにより、個体における細胞増殖性異常を検出することを含む。
【0021】
典型的には、前記方法は、試薬を使用して、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換すること、前記試薬で処理したセプチン9およびRNF180遺伝子またはそのセグメントを増幅酵素およびプライマーと接触させ、前記処理した遺伝子またはセグメントを増幅させ増幅生成物を生成するか、または増幅させないこと、プローブを用いて増幅生成物を検出すること、および前記増幅物が存在するか否かに基づき、セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化の程度を確定することをさらに含む。
【0022】
典型的には、前記プライマーは、RNF180のヌクレオチド長セグメントを含み、前記RNF180のヌクレオチド長セグメントは、SEQ ID No:10からSEQ ID No:12までより選ばれるものに等しい、相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドおよびその相補配列を含む。
【0023】
好ましくは、前記RNF180のヌクレオチド長セグメントは、SEQ ID No:1からSEQ ID No:9までより選ばれるものに等しい、相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした配列およびその相補配列を含む。
【0024】
中でも、人工メチル化テンプレートおよび非メチル化テンプレートを用いて前記プライマーおよびプローブをスクリーニングするか、または、癌および健常DNAをテンプレートとして用いて前記プライマーおよびプローブをスクリーニングすることが好ましい。
【0025】
典型的には、前記個体の生体試料は、細胞系、組織切片、組織生検/パラフィン包埋組織、体液、糞便、結腸流出物、尿、血漿、血清、全血、単離した血球、血液から単離した細胞、またはその組み合わせより選ばれる。
【0026】
前記個体の生体試料は、血漿であることが好ましい。
【0027】
いくつかの好ましい実施態様により、前記セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態は、ポリメラーゼ連鎖反応のサイクル閾値Ct値により確定される。
【0028】
典型的には、前記細胞増殖性異常は癌である。前記癌は、胃癌であることが好ましい。
【0029】
それに対応し、本発明のもう1つの側面により、RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸を含み、RNF180のメチル化検出結果により疾患の程度を等級付けする組成物の、個体の疾患の程度を等級付けする試薬キットの製造における用途を提供する。
【0030】
本発明のいくつかの好ましい実施態様により、前記組成物は、セプチン9遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸をさらに含み、RNF180およびセプチン9のメチル化検出結果を総合することにより疾患の程度を等級付けする。
【0031】
典型的には、前記核酸は、RNF180の少なくとも15個のオリゴヌクレオチド長セグメントを含み、前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む。
【0032】
好ましくは、前記RNF180のヌクレオチド長セグメントは、SEQ ID No:10からSEQ ID No:12までより選ばれるものに等しい、相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドおよびその相補配列を含む。
【0033】
さらに好ましくは、前記RNF180のヌクレオチド長セグメントは、SEQ ID No:1からSEQ ID No:9までより選ばれるものに等しい、相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした配列およびその相補配列を含む。
【0034】
典型的には、前記組成物は、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換する試薬をさらに含む。前記試薬は、亜硫酸水素塩であることが好ましい。
【0035】
典型的には、前記疾患の程度は、3つのレベルにわかれ、第1のレベルは健常、第2のレベルは炎症、第3のレベルは癌である。いくつかの好ましい実施態様において、前記炎症は胃炎であり、かつ前記癌は胃癌である。前記胃炎は、発癌しにくい胃炎と発癌しやすい胃炎とにさらに等級付けできることが好ましい。前記発癌しにくい胃炎は、表層性胃炎である。前記発癌しやすい胃炎は、萎縮性胃炎と腸上皮化生のある胃炎とにさらに等級付けできることがさらに好ましい。前記胃癌は、I、II、III、IV期胃癌にさらに等級付けできることがさらに好ましい。
【0036】
本発明のもう1つの側面により、個体から単離した生体試料におけるRNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を確定し、RNF180のメチル化検出結果により疾患の程度を等級付けすることを含む、個体の疾患の程度を等級付けする方法を提供する。
【0037】
典型的には、前記方法は、前記個体から単離した生体試料におけるセプチン9遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を確定し、RNF180およびセプチン9のメチル化検出結果を総合することにより疾患の程度を等級付けすることをさらに含む。
【0038】
いくつかの実施態様において、前記方法は、試薬を使用して、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換すること、前記試薬で処理したセプチン9およびRNF180遺伝子またはそのセグメントを増幅酵素およびプライマーと接触させ、前記処理した遺伝子またはセグメントを増幅させ増幅生成物を生成するか、または増幅させないこと、プローブを用いて増幅生成物を検出すること、および前記増幅物が存在するか否かに基づき、セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化の程度を確定することをさらに含む。
【0039】
典型的には、前記プライマーは、RNF180のヌクレオチド長セグメントを含み、前記RNF180のヌクレオチド長セグメントは、SEQ ID No:10からSEQ ID No:12までより選ばれるものに等しい、相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドおよびその相補配列を含む。
【0040】
好ましくは、前記RNF180のヌクレオチド長セグメントは、SEQ ID No:1からSEQ ID No:9までより選ばれるものに等しい、相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした配列およびその相補配列を含む。
【0041】
中でも、人工メチル化テンプレートおよび非メチル化テンプレートを用いて前記プライマーおよびプローブをスクリーニングするか、または、癌および健常DNAをテンプレートとして用いて前記プライマーおよびプローブをスクリーニングすることが好ましい。
【0042】
典型的には、前記個体の生体試料は、細胞系、組織切片、組織生検/パラフィン包埋組織、体液、糞便、結腸流出物、尿、血漿、血清、全血、単離した血球、血液から単離した細胞、またはその組み合わせより選ばれる。
【0043】
前記個体の生体試料は、血漿であることが好ましい。
【0044】
いくつかの好ましい実施態様により、前記セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態は、ポリメラーゼ連鎖反応のサイクル閾値Ct値により確定される。
【0045】
典型的には、前記疾患の程度は、3つのレベルにわかれ、第1のレベルは健常、第2のレベルは炎症、第3のレベルは癌である。
【0046】
本発明のもう1つの側面により、SEQ ID No:10からSEQ ID No:12までより選ばれるものに等しい、相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドおよびその相補配列を含む核酸をさらに提供する。
【0047】
前記核酸は、SEQ ID No:1からSEQ ID No:9までより選ばれるものに等しい、相補する、または中程度にストリンジェントな条件またはストリンジェントな条件でハイブリダイズした配列およびその相補配列を含むことが好ましい。
【0048】
いくつかの好ましい実施態様において、前記核酸は、RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するプライマーおよび/またはプローブとして用いられる。
【0049】
本発明のもう1つの側面において、前記核酸を含み、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換する試薬をさらに含む組成物をさらに提供する。前記試薬は、亜硫酸水素塩であることが好ましい。
【0050】
本発明のもう1つの側面により、上記組成物を含む試薬キットをさらに提供する。典型的には、前記試薬キットは、患者の生体試料を収容するための容器を含む。かつ、前記試薬キットは、試薬キットの使用および結果の解釈の説明を含んでもよい。
【0051】
本願において、実験を介して、胃炎および胃癌におけるRNF180遺伝子のメチル化の程度に比較的大きな差異が存在し、RNF180は、健常者群、慢性表層性胃炎群、慢性萎縮性胃炎(慢性胃炎に腸上皮化生を併発)群、胃癌群IからIV期における含有量が徐々に増加し、Ct値が徐々に低下することがわかった。陽性率も、同様の順序で健常者群から胃癌群まで徐々に上昇するため、本願は、試料中のRNF180遺伝子のメチル化の程度を測定することにより胃癌および胃炎を等級付けする方法を提供し、これにより、非侵襲的で、迅速な胃癌および胃炎のスクリーニング方法を提供する。
【0052】
セプチン9およびRNF180をともに結合して胃癌を検出し、胃癌のステージ(I−IV)に関連する。RNF180は、さらに胃炎を検出することができ、健常群、胃炎群および胃癌群にわけ、3群の間には、いずれも統計学的な有意差が認められる。かつ、RNF180は、さらに胃炎のうち腸上皮化生がある胃炎と腸上皮化生がない普通の胃炎を区別して検出することができ、腸上皮化生があるRNF180は100%陽性であり、普通の胃炎は約27%陽性である。
【0053】
出願人は、年齢の増加に伴い、末梢血中でメチル化したRNF180遺伝子含有量が高くなる傾向を示すが、高齢者は、いずれも多少ともある程度の胃炎があり、末梢血中でメチル化したRNF180遺伝子含有量の上昇が年齢の要素によるものなのか、胃炎の要素によるものなのかを区別するのが難しく、胃炎と胃癌の検査の特異性および信頼性に大きな影響をもたらしていることをさらに発見している。そのため、この要素を考慮し、検査中にセプチン9を同時に加えるため、セプチン9遺伝子で年齢および胃炎の影響の要素を無視することができ、セプチン9を用いて胃癌の検出を確認することができる。具体的には、約40%の胃癌は、セプチン9およびRNF180で同時に陽性であり、両者で同時に陽性であることを判断基準とし、90%の特異性を達成することができる。セプチン9のメチル化検出は、RNF180を単独で使用してメチル化検出したときに特異性に欠けるという課題を克服し、補填することができ、細胞増殖性異常の存在をさらに如実に表すことができる。かつ、いくつかの具体的な実施態様により、一部の胃癌はRNF180が陰性であるが、セプチン9が陽性であり、セプチン9は、この一部の胃癌を検出することができ、感度を約3%増加させることができる。セプチン9のメチル化検出は、RNF180を単独で使用してメチル化検出したときに感度に欠けるという課題を克服し、補填することができ、細胞増殖性異常の存在をさらに如実に表すことができる。そのため、セプチン9とRNF180の2つのバイオマーカーを併用して胃炎および胃癌を等級付けすることにより、感度および特異性をいずれも高めることができる。
【0054】
最後に、リアルタイムPCRを用いて血漿試料中のDNAを解析する方法は、セプチン9およびRNF180の2つのバイオマーカーの同じ時間での2チャンネル検出を実現するのに便利であり、かつリアルタイムPCRのサイクル閾値(Ct)値に基づき、試料が陽性を呈するか否かを迅速かつ敏捷に判断することができ、非侵襲性の迅速な癌および炎症の等級付け方法を提供する。
【0055】
別段の定義がある場合を除き、本明細書における関連する技術的、科学的用語は、本分野内の技術要員が通常理解する意味と同じである。実験または実際の応用において、これと相似したまたは同じ方法および材料を用いることができるが、本文では、以下の文において材料および方法について記述する。矛盾がある場合には、本明細書に含まれる定義を基準とし、また、材料、方法および例は、説明のためのものにすぎず、制限性を有するものではない。
【0056】
本発明のその他の特徴および長所については、次の具体的な説明および請求の範囲により詳細に記述する。
【0057】
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明の上記およびその他の特徴は、図面およびその詳細な記述を以下に結合することによりさらに説明する。理解すべきことは、これらの図面は、本発明に基づくいくつかの例示的な実施態様を示しているにすぎないため、本発明の保護範囲に対する制限であるとみなすべきではない。特に説明がある場合を除き、図面は、必ずしも比例したものではなく、類似する記号は類似する部材を表す。
【0059】
図1】セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元検出において、RNF180の4セットのプライマーおよびプローブがいずれもセプチン9の測定に影響を及ぼさないことを示す。
【0060】
図2】セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元検出で胃癌の陽性結果が相補することを示す。
【0061】
図3】セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元検出の胃癌、胃炎および健常者のCt平均値の棒グラフを示す。
【0062】
図4】セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元検出の胃癌、胃炎および健常者のCt値の散布図を示す。
【0063】
図5】健常者、表層、萎縮/腸上皮化生、胃癌I期、II期、III期、IV期においてβ−アクチンのCt値が安定していることを示す。
【0064】
図6】健常者、表層、萎縮/腸上皮化生、胃癌I期、II期、III期、IV期におけるRNF180のdCt値を示す。
【0065】
図7A】健常者、表層、萎縮/腸上皮化生、胃癌のRS19陽性率の比較を示す。
図7B】胃癌I期、II期、III期、IV期のRS19陽性率の比較を示す。
図7C】健常者、胃炎、胃癌のRS19のdCt平均値の棒グラフを示す。
【0066】
図8A】RNF180メチル化含有量と年齢の関係図を示す。
図8B】セプチン9およびRNF180の結合が胃癌検出の特異性および感度を改善する概略図を示す。
【0067】
図9】セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元(RS19)検出の健常、胃癌の感度および特異性を示す。
【0068】
図10】セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元(RS19)検出の健常、胃炎(慢性、表層性、潰瘍性)の感度および特異性を示す。
【0069】
図11】セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元(RS19)検出の健常、胃炎(すべて)の感度および特異性を示す。
【0070】
【発明を実施するための形態】
【0071】
別段の説明がある場合を除き、本願の実施は、通常の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および遺伝学技術を用い、いずれも本分野の通常の技術手段の範囲内にある。Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(Sambrookら,1989);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,1984版);Animal Cell Culture(R.I.Freshney,1987版);Methods in Enzymology叢書(米国学術出版社);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら,1987版,定期的に更新);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら,1994版)などの文献において、こうした技術について詳細に説明している。本願において使用するプライマー、プローブおよび試薬キットは、本分野で公知の標準技術を用いて製造することができる。
【0072】
別段の定義がある場合を除き、本願で使用する技術・科学用語は、本発明が属する分野の普通の技術要員の通常の理解と同じ意味を有する。Singletonら,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,第2版,J.Wiley&Sons(New York,N.Y.1994),およびMarch,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure,第4版,John Wiley&Sons(New York,N.Y.1992)は、本願において使用している複数の用語について、当業者のために一般的なガイドラインを提供している。
【0073】
定義
【0074】
本願の「疾患の程度を等級付けする」とは、検出結果に基づき疾患の程度を確定し、これにより等級付けすることを示す。本願により、DNAメチル化の程度に基づき、健常と癌の2つの等級に区分することができ、すなわち、個体における癌を検出することができる。本願により、DNAメチル化の程度に基づき、健常、炎症および癌の3つの等級に区分することができることが好ましい。例えば、患者の試料で測定されたDNAメチル化の程度に基づき、健常、胃炎および胃癌の3つの等級に区分することができ、胃炎は、さらに表層性胃炎および萎縮性胃炎に区分することができる。
【0075】
本願の「癌」とは、あらゆる悪性腫瘍(malignancy)、または悪性細胞分裂もしくは悪性腫瘍(malignant tumour)、または制御されない、もしくは不適切な細胞増殖を有するあらゆる疾患状態を示し、それらを含み、かつ制御されない、または不適切な細胞増殖を特徴とするあらゆる疾患を含むが、それらに限定されない。
【0076】
本願の「胃癌(gastric cancer)」および「胃癌(stomach cancer)」は、同じ意味を有し、かつ胃または胃細胞の癌を示す。これらの癌は、胃の内層(粘膜)に発生するものであってもよく、胃の幽門部、胃体部または噴門部(下部、中部および上部)に発生する腺癌であってもよい。
【0077】
本願の「胃癌ステージ」とは、胃癌の臨床病理ステージ基準に基づき、胃癌を4期にわけることができることをいう。胃癌ステージは、原発腫瘍(T)、リンパ節転移の状況(N)および遠隔転移の状況(M、左鎖骨上リンパ節転移、血行性転移および腹膜播種を含む)の3つの指標に関する。「I期」とは、リンパ節転移がない表層型胃癌、または腫瘍がすでに筋層に浸潤しているが1つの領域の1/2を超えていないものをいう。「II期」とは、第1群リンパ節転移がある表層癌、T2癌(腫瘍が胃壁筋層に浸潤しているが、大きさが1つの領域の1/2を超えていない)およびT3癌(腫瘍が胃壁漿膜層に浸潤している、または漿膜層に浸潤していないが、病変がすでに1つの領域の1/2を超えており、1つの領域を超えていない)をいい、リンパ節転移がないT3癌もこのステージに属す。「III期」とは、第2群リンパ節転移がある各種の大きさの腫瘍、または第1群リンパ節転移のみがあるか、もしくはリンパ節転移がなく、腫瘍の大きさがすでに1つの領域を超えているものをいう。「IV期」とは、第3群リンパ節転移または遠隔転移を伴うものすべてをいい、腫瘍の大きさを問わず、いずれもこのステージに属す。
【0078】
本願の「胃癌細胞」とは、胃癌の特徴を有する細胞を示し、かつ前癌細胞を含む。
【0079】
本願の「前癌」とは、癌細胞に変換する早期段階にある、または癌細胞に変換する傾向がある細胞を示す。このような細胞は、癌細胞の特徴を有する1種類または複数種の表現型性状を表すことがある。
【0080】
本願の「胃炎」とは、なんらかの病因によって引き起こされる胃粘膜炎症を示し、常に上皮損傷および細胞再生を伴う。胃炎は、最もよく見られる消化系疾患の1つであり、一般に、臨床症状発症の急激さによって急性胃炎および慢性胃炎にわかれる。慢性胃炎は、一般に、次の数種のタイプにわかれる。炎症病変が比較的浅く、胃粘膜表面の層に限られる(3分のを超えない)場合、「表層性胃炎」というが、胃の潰瘍まで発展すると、「潰瘍性胃炎」となる。炎症病変が胃粘膜の全層に及び、胃腺体萎縮を伴う場合、「萎縮性胃炎」である。萎縮性胃炎患者のうち、病理生検で胃粘膜に「結腸型不完全型腸上皮化生」および「異型増殖症」の両方の病変がみつかった場合、胃癌に発展する可能性がある。腸上皮化生とは、正常時にはあるべきではない小腸または結腸の腺体が胃粘膜腺体に現れることをいい、すなわち腸腺が胃内に遷移する。腸上皮化生の数が多いほど、萎縮の程度も重くなる。表層性胃炎および潰瘍性胃炎は、「軽度の胃炎」と総称することができ、「萎縮性胃炎」および「腸上皮化生性胃炎」は重度の胃炎と総称することができる。
【0081】
本願における「バイオマーカー」とは、疾患の指標因子または予測因子とすることができる遺伝子などの物質、疾患に関連する変量の測定をいう。疾患の存在またはリスクは、バイオマーカーというパラメータから推断でき、疾患自体を測定する必要がない。
【0082】
本願における「核酸」、「核酸配列」などは、ポリヌクレオチドをいい、gDNA、cDNAまたはRNAであってもよく、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。用語は、ペプチド核酸(PNA)、または化学的なあらゆるDNA類またはRNA類の物質も含む。「cDNA」とは、自然に生成されたmRNAから複製されるDNAをいう。「gDNA」とは、ゲノムDNAをいう。これらの物質を組み合わせてもよい(すなわち、一部がgDNA、一部がcDNAの組換え核酸)。
【0083】
本願における「操作可能に結合」、「操作可能に連結」とは、核酸配列を機能上結合することをいう。
【0084】
本願における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「高度にストリンジェント」とは、プローブがその標的配列とハイブリダイズする条件をいい、典型的には、核酸の複雑な混合物中をいう。ストリンジェントな条件は、配列に依存し、環境によって異なる。比較的長い配列は、比較的高い温度において特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する詳細なガイドラインは、Tijssen,生化学と分子生物学技術−核酸プローブハイブリダイゼーションの「ハイブリダイゼーション原理と核酸試験戦略の回顧」を参照することができる。通常、ストリンジェントな条件は、限定されたイオン強度pH下で、特定の核酸の融点(Tm)よりも約5〜10℃低い。Tmの温度(限定されたイオン強度、pHおよび核酸濃度において)の下で、50%の標的と相補するプローブは、均衡に標的配列とハイブリダイズする。不安定化剤を増加することによりストリンジェントな条件を実現することもできる。選択的または特定なハイブリダイゼーションに対し、正のシグナルは、バックグラウンドハイブリダイゼーションの2倍とし、10倍が好ましい。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、次のとおりである。50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%のSDSの溶液において、摂氏42度でハイブリダイズするか、または5×SSCおよび1%のSDSの溶液において、摂氏65度でハイブリダイズした後、0.2×SSCおよび0.1%SDSの溶液において摂氏65度で洗浄する。
【0085】
かつ、核酸がコードするポリペプチドが実質的に相似する場合、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができない核酸であっても、実質的に相似する。こうした状況の下で、典型的には、核酸は中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件でハイブリダイズする。例として、「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1Mの塩化ナトリウムおよび1%のSDSの溶液において、摂氏37度でハイブリダイズし、かつ1×SSCの溶液において摂氏45度で洗浄することを含む。当業者は、明らかに、先行技術において、同じストリンジェント度を得る条件を取得するガイドラインを得ることができる。PCRについて、摂氏36度前後の温度は、典型的に低度にストリンジェントな増幅に適しているが、プライマーの長さに基づき、アニーリング温度の範囲は、摂氏32度から摂氏48度の間にある。高度にストリンジェントなPCR増幅は、一般に、摂氏62度におけるものであるが、プライマーの長さおよび特異性に基づき、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションのアニーリング温度の範囲は、摂氏50度から摂氏65度の間にある。高度にストリンジェントおよび低度にストリンジェントな増幅のサイクル条件について、典型的には、摂氏90〜95度での持続変性段階30秒から2分間、持続アニーリング段階30秒から2分間、摂氏約72度での持続伸長段階1から2分間を含む。低度および高度にストリンジェントな増幅反応に関するツールおよびガイドラインは、先行技術において得ることができる。
【0086】
本願における「オリゴヌクレオチド」とは、2個または2個以上のヌクレオチドからなる分子、好ましくは3個以上のヌクレオチドからなる分子をいい、その正確な大きさは多くの要素により、これらの要素は、逆にオリゴヌクレオチドの最終的な機能および用途によって決まる。いくつかの具体的な実施態様において、オリゴヌクレオチドは、10個のヌクレオチドから100個のヌクレオチドの長さを含んでもよい。いくつかの具体的な実施態様において、オリゴヌクレオチドは、10個のヌクレオチドから30個のヌクレオチドの長さを含んでもよく、または20および25個のヌクレオチドの長さを有してもよい。いくつかの特定の具体的な実施態様において、これらの長さよりも短いオリゴヌクレオチドも適している。
【0087】
本願の「プライマー」とは、核酸鎖と相補するプライマー伸長生成物の合成を誘発可能な条件の下で、すなわちヌクレオチドとDNAまたはRNAポリメラーゼなどの誘発剤の存在下かつ適した温度およびpH下で、合成開始点とすることができるオリゴヌクレオチドを示し、精製された制限消化物において自然に存在するものであるか、合成して生成されたものであるかは問わない。プライマーは、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、誘発剤の存在下で必要な伸長生成物の合成をもたらすのに十分な長さを有する必要がある。プライマーの適切な長さは、温度、プライマーの由来、用いる方法などを含む複数の要素によって決まる。例えば、診断および予後の応用のために、標的配列の複雑さに基づき、オリゴヌクレオチドプライマーは、通常、少なくとも約10、または15、または20、または25以上のヌクレオチドを含有するが、さらに少ないヌクレオチドまたはさらに多くのヌクレオチドを含有してもよい。プライマーの適切な長さの確定に関与する要素は、当業者が熟知しているものである。
【0088】
本願の「プライマー対」とは、標的DNA分子の逆鎖とハイブリダイズする、またはフランキングと連結する、増幅するヌクレオチド配列の標的DNA領域とハイブリダイズするプライマー対を示す。
【0089】
本願の「プライマーサイト」とは、プライマーがハイブリダイズする標的DNAまたはその他の核酸の領域を示す。
【0090】
本願の「プローブ」は、核酸配列に関する場合、その通常の意味で使用し、所定の条件下で、標的配列とハイブリダイズでき、かつこの標的配列の存在の検出に用いることができる選択的核酸配列を示す。当業者は、いくつかの状況の下で、プローブをプライマーとすることも、プライマーをプローブとすることもできることを理解すべきである。
【0091】
本願の「DNAメチル化」とは、メチル基をシトシン(C)の5位に添加することをいい、これは、通常(ただし必須ではない)、CpG(シトシンの後がグアニンである)ジヌクレオチドの場合における。本文で用いる「増加したメチル化の程度」または「著しいメチル化の程度」とは、DNA配列中に少なくとも1つのメチル化したCヌクレオチドが存在し、正常な対照試料(例えば、非癌細胞または組織試料から抽出されたDNA試料またはDNA残基のメチル化に対して処理を行ったDNA試料)中の対応Cが非メチル化されていることをいい、いくつかの実施形態において、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のCをメチル化することができ、対照DNA試料中のこれらの位置のCは非メチル化されている。
【0092】
実施形態において、複数の異なる方法を、DNAメチル化の改変の検出に用いることができる。DNAメチル化を検出する方法は、例えば、サザンまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析を用いたメチル化感受性の制限エンドヌクレアーゼ(MSRE)測定、メチル化特異性またはメチル化感受性のPCR(MS−PCR)、メチル化感受性のモノヌクレオチドプライマー伸長(Ms−SnuPE)、高解像度融解(HRM)解析、バイサルファイトシーケンシング、パイロシーケンシング、メチル化特異性一本鎖配座解析(MS−SSCA)、Combined Bisulfite Restriction Analysis(COBRA)、メチル化特異性変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(MS−DGGE)、メチル化特異性融解曲線解析(MS−MCA)、メチル化特異性変性高速液体クロマトグラフィー(MS−DHPLC)、メチル化特異性マイクロアレイ(MSO)がある。これらの測定は、PCR解析、蛍光を用いた定量解析またはサザンブロッティング解析としてもよい。
【0093】
本願の「メチル化測定」とは、DNA配列内の1個または複数個のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態を確定するあらゆる測定をいう。
【0094】
本願の「生体試料」または「試料」は、生検および剖検試料などの組織切片、ならびに組織学的目的のために得られる冷凍切片、またはこれらの試料の処理後のあらゆる形式を含む。生体試料は、血液および血液成分または生成物(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球など)、痰または唾液、リンパおよび舌組織、初代培養物、外植体および変換された細胞などの培養された細胞、糞便、尿液、胃生検組織などを含む。生体試料は、通常、真核生物から得られ、前記真核生物は、哺乳動物であっても、霊長類であっても、ヒトの個体であってもよい。
【0095】
本願の「生検」とは、診断または予後の評価のために組織試料を取り出すプロセスをいい、組織試料自体のこともいう。本分野ですでに知られているあらゆる生検技術は、本発明の診断および予後の方法に用いることができる。用いる生検技術は、評価する組織タイプ(例えば、舌、結腸、前立腺、腎臓、膀胱、リンパ節、肝臓、骨髄、血球、胃組織など)などの要素によって決まる。代表的な生検技術は、摘除生検、摘出生検、針生検、切開生検および骨髄生検を含むが、これらに限定されず、結腸内視鏡検査を含んでもよい。複数の生検技術は、当業者が公知のものであり、少ない実験を行うことによりこれらの技術の中から選択して使用することができる。
【0096】
本願の「単離した」核酸分子とは、通常、この単離した核酸分子に関連するその他の核酸分子から単離された核酸分子を示す。そのため、「単離した」核酸分子は、単離した核酸が由来する生物体を有さないゲノムにおいて自然にフランキングがこの核酸の1個または2個の末端に連結した配列(例えば、PCRまたは制限的核酸エンドヌクレアーゼによって消化され生成されるcDNAまたはゲノムDNAセグメント)のような核酸分子を含むが、これらに限定されない。通常、このような単離した核酸分子をベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター)に導入し、融合核酸分子の操作または生成を便利にする。また、単離した核酸分子は、例えば組換えまたは合成した核酸分子などの人工的な核酸分子を含んでもよい。例えば、核酸ライブラリー(例えば、cDNAまたはゲノムライブラリー)または制限消化されたゲノムDNAを含有するゲル(例えば、アガロースまたはポリアクリルアミド)の一部における数百から数百万のその他の核酸分子に存在する核酸分子は、単離した核酸として認められていない。
【0097】
本願の「細胞」は、単離されていてもよく、細胞群体中、または培養物中に含まれていてもよく、生きた個体中に含まれていてもよく、哺乳動物細胞であってもよく、ヒトの細胞であってもよい。同様に、「組織」は、いかなる数の細胞を含んでもよく、生きた個体中に含まれていてもよく、その中から単離されていてもよい。
【0098】
本願の「精製された」または「基本的に精製された」は、核酸またはポリペプチドについて用いる場合、これらの自然環境において単離された核酸またはポリペプチドを示し、これらが所定の試料中の全核酸またはポリペプチドまたは有機化学物の少なくとも約75%、80%、85%、90%または95%を占めるようにする。本文において、SDS−PAGEおよび銀染色によりタンパク質の純度を評価することができる。アガロースゲルおよびEtBr染色により核酸の純度を評価することができる。
【0099】
本願の「検出」とは、生体試料中のマーカーまたはマーカーの改変(例えば、マーカーのメチル化状態の改変または核酸またはタンパク質配列の発現レベル)を観察するあらゆるプロセスを示し、実際上にマーカーまたはマーカーの改変が検出されたかは問わない。言い換えれば、マーカーが存在しない、または感度レベルよりも低いと測定された場合でも、試料のマーカーまたはマーカーの改変を探測する行為が「検出」である。検出は、定量、半定量または非定量観察であってもよく、1個または複数個の対照試料の比較に基づいてもよい。本文で公開する結腸癌の検出は、前癌細胞の検出を含み、前記前癌細胞は、胃癌細胞への発展を開始し、または胃癌細胞に発展している、または胃癌細胞に発展する傾向が増加していると理解すべきである。胃癌の検出は、可能性のある死亡率または疾患条件の可能性のある予後の検出をさらに含んでもよい。
【0100】
本願の「相同性」、「同一性」および「相似性」とは、2個の核酸分子の間の配列相似性を示す。各配列中の位置を比較して「相同性」、「同一性」または「相似性」を測定することができ、比較の目的のために、前記配列を照合することができる。比較する配列における同じ位置が同じ塩基で占められている場合、前記分子は、この位置において同じである。同じサイトが同じまたは相似するアミノ酸(例えば、空間的性質または帯電性において相似している)残基で占められている場合、前記分子は、この位置において相同である(相似している)といえる。相同性/相似性または同一性の百分比の発現とは、比較する配列が共有する位置における相同である、または相似するアミノ酸の数の関数をいう。「無関係である」または「非相同である」配列は、本発明の配列と40%未満の同一性、好ましくは25%未満の同一性を共有する。2個の配列を比較するとき、残基(アミノ酸または核酸)の欠失または余剰な残基の存在も、同一性および相同性/相似性を低下させる。具体的な実施形態において、2個またはさらに多くの配列またはサブ配列について、以下に記載するデフォルトパラメータを有するBLASTまたはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを用いて測定するか、または例えば国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information(NCBI))がオンラインで提供する手動比対および肉眼検査により測定し、比較ウィンドウまたは指定領域上で最大の対応性を比較し照合するときに、これらの配列の所定の領域での同一性が約60%、または約65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上である場合、基本的に、または著しく相同である、相似する、または同一であることが認められる。この定義は、配列の相補物の測定に関するものでもあり、またはそれに用いることができる。そのため、本文の背景で許容される程度で、例えば、ヌクレオチド配列は、DNA二本鎖体中に自然に存在する、または相補鎖における1本または2本の形式で自然存在することができると予測できる場合、所定の標的配列またはその多様体と相補するヌクレオチド配列自体が、標的配列と「相似する」とみなされ、かつ「相似する」核酸配列に関する場合、一本鎖配列、その相補配列、二本鎖の鎖複合体、同じ、または相似するポリペプチド生成物をコード可能な配列、および上記いずれかの許容されるあらゆる多様体を含む。相似性は、単一核酸鎖配列の解析の場合に限定する必要があり、例えば、細胞中の特定のRNA配列またはコード配列の発現の検出および定量を含むことができる。この定義は、欠失および/または添加を有する配列、ならびに置換を有する配列をさらに含む。実施形態において、同一性または相似性は、長さが少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、10、21、22、23、24、25以上であるヌクレオチドの領域上、または長さが約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95を超える、もしくは約100個を超えるヌクレオチドの領域上とすることができる。
【0101】
本願の「増幅」とは、核酸の1個の具体的な遺伝子座から複数個のコピーを得るプロセスを示し、前記核酸は、例えばゲノムDNAまたはcDNAである。複数の既知の手段におけるいずれか1種を用いて増幅を実現することができ、前記手段は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、転写に基づく増幅および鎖置換増幅(SDA)を含むが、これらに限定されない。
【0102】
本願の「標準増幅条件」とは、増幅反応混合物の基本成分および循環条件をいい、前記循環条件は、テンプレート核酸の変性、オリゴヌクレオチドプライマーとテンプレート核酸のアニーリング、およびポリメラーゼのプライマーの伸長により増幅生成物を生成する複数個の循環を含む。
【0103】
本願の「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」とは、変性、プライマーとのアニーリング、およびDNAポリメラーゼとの伸長の循環が、標的DNA配列のコピー数を約10倍以上に増幅するために用いられる技術を示す。核酸を増幅するために用いられるポリメラーゼ連鎖反応のプロセスは、米国特許第4,683,195号および第4,683,202号を参照することができる。
【0104】
本願の「蛍光に基づくリアルタイムPCR」とは、PCR反応系中に蛍光基を加え、蛍光シグナルの蓄積を用いてPCRプロセス全体をリアルタイムにモニタし、最後に、標準曲線によって未知のテンプレートを定量解析する方法を示す。このPCR技術において、サイクル閾値という重要な概念があり、Ct値ともいう。CはCycleを表し、tはthreshold(閾値、臨界値)を表し、Ct値の意味は、各反応管内の蛍光シグナルが設定閾値に達するときに経た循環数である。例えば、蛍光閾値(threshold)の設定方法は次のとおりである。PCR反応前の15個サイクルの蛍光シグナルを蛍光バックグラウンドシグナルとし、蛍光閾値の既定値(デフォルト)を3〜15サイクルの蛍光シグナルの標準偏差の10倍と設定する。
【0105】
本願の「リアルタイムPCRのcut off値」とは、ある1つのバイオマーカーに対する試料陰陽性を判断する臨界Ct値を示す。本願のいくつかの具体的なリアルタイム方式により、「臨界Ct値(Cut Off値)は、一定数量の試料データにより、統計学的処理に基づき得られたもの」であり、この臨界Ct値は、必要な感度または特異性の要求により異なる。概述において、この臨界Ct値についてさらに例を挙げて説明する。
【0106】
本願の「感度」とは、一定の癌症試料において癌が検出される割合を示し、その計算式は、感度=(検出された癌/すべての癌)であり、「特異性」とは、一定の健常者試料において健常が検出される割合を示し、その計算式は、特異性=(検出されなかった陰性/全陰性)である。
【0107】
本願の「標識」または「検出可能な部分」は、ビームスプリッター、光化学、生化学、免疫化学、化学またはその他の物理的手段により検出できる成分である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光染料、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて常用される酵素)、ビオチン、ジゴキシンまたはハプテンおよび検出可能なものとして製造可能なタンパク質があり、例えば、放射性標識をペプチドに入れるか、またはペプチドと特異性反応する抗体の検出に用いる。
【0108】
複数の異なる方法を用いて核酸分子を検出することができる。核酸検出方法は、例えば、PCRおよび核酸ハイブリダイゼーション(例えば、サザンブロッティング、ノーザンブロッティングまたはin situハイブリダイゼーション)を含む。具体的には、標的核酸を増幅可能なオリゴヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチドプライマー)をPCR反応に用いることができる。PCR方法は、通常、次のステップを含む。試料を得て、前記試料から核酸(例えば、DNA、RNAまたは両者)を単離し、前記核酸を、1種または複数のオリゴヌクレオチドプライマーと接触させ、前記プライマーは、テンプレート核酸を増幅発生させることができる条件の下で、特異的にテンプレート核酸とハイブリダイズする。テンプレート核酸の存在下で、増幅生成物を生成する。核酸増幅および増幅生成物検出の条件は、当業者が既知のものである。基礎PCR技術に対する複数の改良がすでに開発されており、アンカードPCR、RACE PCR、RT−PCRおよびリガーゼ連鎖反応(LCR)を含むが、これらに限定されない。増幅反応におけるプライマー対は、テンプレート核酸の対応する鎖とアニーリングする必要があり、かつ互いに適切な距離を保つべきであり、ポリメラーゼが有効に領域を超えて重合できるようにし、例えば電気泳動を用いて増幅生成物を容易に検出できるようにする。例えば、OLIGO(Molecular Biology Insights Inc.,Cascade,Colo.)などのコンピュータプログラムを用いてオリゴヌクレオチドプライマーを設計することができ、相似する融解温度を有するプライマーの設計に役立つ。通常、オリゴヌクレオチドプライマーの長さは、10〜30または40または50個のヌクレオチド(例えば、長さは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、 22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個のヌクレオチドである)であるが、オリゴヌクレオチドプライマーは、さらに長くてもさらに短くてもよく、適切な増幅条件を用いさえすればよい。
【0109】
通常、検出可能な標識を用いて増幅生成物またはハイブリダイゼーション複合体の検出を実現する。用語「標識」は、核酸に関する場合、検出可能な物質を核酸にカップリング(すなわち、物理的に結合)することによる核酸直接標識、および検出可能な物質を直接標識した別の試薬と反応させることによる核酸間接標識を含むことを意図する。検出可能な物質は、各種酵素、補欠分子族、蛍光材料、化学発光材料、生物発光材料および放射性材料を含む。適切な酵素の実例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含む。適切な補欠分子族複合体の実例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含む。適切な蛍光材料の実例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリスリンを含む。化学発光材料の実例は、ルミノールを含む。生物発光材料の実例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびイクオリンを含む。間接標識の実例は、ビオチンを用いて核酸を末端標識し、蛍光標識したストレプトアビジンを用いてこの核酸を検出することを含む。
【0110】
概述
【0111】
本願は、セプチン9およびRNF180遺伝子を併用することにより癌を検出する方法、ならびに対応する組成物、試薬キットおよび核酸配列を提供し、非侵襲地の方式で、高速かつ敏捷に癌を診断し検出する。具体的な実施態様により、癌において、特に胃癌において、セプチン9およびRNF180の併用は、検出の感度または特異性を大幅に向上させることがわかる。
【0112】
本願は、RNF180遺伝子を用い、好ましくはセプチン9およびRNF180遺伝子を併用することにより、疾患の程度を等級付けする方法、ならびに対応する組成物、試薬キットおよび核酸配列をさらに提供し、非侵襲性の方式で、高速かつ敏捷に癌および炎症を等級付けし、特に胃癌および胃炎を等級付けする。
【0113】
下記のものは、本願の組成物、試薬キット、核酸配列および検出方法の実施例である。上文で提供した一般的な記述を考慮し、複数のその他の実施態様を実施可能であることを理解することができる。
【0114】
第1の実施形態において、生体試料中の細胞増殖性異常を診断または検出する組成物を公開し、前記組成物は、セプチン9およびRNF180遺伝子ならびにそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸を含む。具体的には、前記組成物は、セプチン9遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸配列を含むだけでなく、RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸配列をさらに含む。
【0115】
本願は、RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸を含み、RNF180のメチル化検出結果により疾患の程度を等級付けする、個体の疾患の程度を等級付けする組成物をさらに公開する。好ましくは、前記組成物は、RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内にメチル化が存在するか否かを検出するための核酸配列を含むだけでなく、セプチン9遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内にメチル化が存在するか否かを検出するための核酸配列をさらに含む。
【0116】
以下、先ずセプチン9遺伝子について紹介する。ヒトセプチン9遺伝子(MLLセプチン様融合タンパク質、MLLセプチン様融合タンパク質MSF−A、Slpa、Eセプチン、Msf、セプチン様タンパク質卵巣/乳腺セプチン(Ov/Brセプチン)およびセプチンD1ともいう)は、コンティグAC068594.15.1.168501内の染色体17q25に位置し、セプチン遺伝子ファミリーのメンバーである。例えば、SEQ ID No:13は、セプチン9のCpGを豊富に含むプロモーター領域の配列を提供する。
【0117】
SEQ ID No:13配列は次のとおり示される。
【0118】
CGTTACCCGAGTTGTAAAGGGCGGCTCCCTGTGTCTGCCCCGCTGCACCGATACACCGAGCTGCGCACGGTGCCCAGCGCAGGGAGAACAAATGATCATCTGTCCAACGCGCCCATTTACAGGTGAGGAAACTAAGGCTCCAACTCAATCGACGCACTCTGCCCTTTTGATTACCAGAAAAGTAGCAGGACAGGTGTCCTGTCCCGCCCTACCCCGGCCCACTAAGCCGGCACCCCGGCTCCGACCCCCGGCTGTGCCCGGCGCCGCCGCGGTGCCCGGCGCCGCCGCCTCGCCCGGCGGGGCCGCCCGGAGCGCCCGCACCTCCGCCCGCTTCCACCTGGCCGGGCCCGCCCCGCCCGGACTCGGGACTGGGAAGTGCGGCGACTCCCGGAACCAGCCATTGGCGCCAGCGCGGGGAGCTGGGGGTGCAGAGCTGCGGGCGCGGCGGGCCACGCAGGCGGCCCCCACCCCCGGCCTGGCCTGGTCTGGTCTGGTCTGCGCTGCCGCGCGGGGGCGCCCCCTCCCAGGCCCGGCGCCCGCCAGCCCCGCTCCGCCAGGTGCAGCGCAGCGCAGGGGTGGGCGGGGGTGGGGCTCGGCGCGCACGTTCACGGGGCGGGGAGGGGGCGGGTCAGGGGCGGGACCACAGCCGGCTGGGCCGGGGTTCTATGCGCATCTCCGGGGAGGGGCGGGGCGGGGGCGGGGCCGGGGCGGGGCCCGGTCGGTGCACTCCAGACGGCGGGCCGCCCCCTCTTCCCGCCTTCCTACTACCGGCCCAGGATTAGCGCCCTGGGAGCGCGCGCCCCGCTGCCTCGCCGCCACACTTTCCTGGGAGCGGCGGCCACGGAGGCACCATGAAGAAGTCTTACTCAGGTGGGCTTCGCGCCCGGGGTGGGGAGGGGTCGGTGTCCCGGGACCAGCGCTGCTCACCTGAGTGCCTGCGGCCGGGAGTGGCGAGGCGCCCCCGGAGCTGAGCGAGTCCCCGCGGCGGGCACACTGCAGGTCGAGTTCCTCCCAGGACAGGGCCGCTGTCGGGCCGCTTTCGACCTGAGCCGACCGTCCCCTGCGCTGTCTCCAGCCCTTGCTCGAGTGTCGGAGGGGCTGCCCTGGGGGACGCTCCCTCTTCCTCGCCCCTTGCACCCTCGCAGGAATCGCTGACTTTCCAGGTCGGCCGGGTGCTTTGGGTCCCTGTGCGTCTGTGTGGGTGAATGGGGTCGGGGCTAGGTGGAGGGGTGTCCTTGGGTTCAGCCTCTAGGGCTGGTGGTCCAGGCCGCAGCATCCTTTCTTCGGATTCTCTTCGGTTTCTCCTCTACTTAGTGGGGCACGGGACGGCCTCCAGATGGGACCGTCCAGCAGCGCCCAAACTTGGCGACTCGGGTTCACGTTTTGCGCTCAGGACGCCGCCCGC
【0119】
セプチン遺伝子ファミリーのメンバーは、小胞輸送から胞質分裂にわたる複数の細胞機能に関連する。セプチン9を破壊する作用は、不完全な細胞分裂をもたらし、セプチン9およびその他のタンパク質はすでに癌原遺伝子MLLの融合パートナー(fusion partner)として示されており、このことは、腫瘍発生における作用を表す。
【0120】
セプチン9遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内にメチル化が存在するか否かを検出するための核酸配列は、SEQ ID NO:13の連続配列より選ばれるものに等しい、または相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした少なくとも9個塩基長セグメントを含む。
【0121】
1つの具体的な実施態様により、RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内にメチル化が存在するか否かを検出するための核酸配列は、以下に示すRNF180のプロモーター領域SEQ ID No:10に等しい、または相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドおよびその相補配列を含んでもよく、SEQ ID No:10は、Genbank登録番号:NMi001113561chr5163497153−63497758に対応する。下線は「転写開始点」を示す。
【0122】
いくつかの好ましい実施態様により、SEQ ID No:10の配列に基づき、プライマーおよびプローブを設計することができる。PCR増幅のプライマーおよびプローブとして適した配列は、あらゆる適切な長さを含んでもよく、例えば、少なくとも15個のヌクレオチドを含んでもよく、または少なくとも20、25、30、35、40、45個または50個を超えるヌクレオチドを含んでもよい。これらの具体的な実施態様において、核酸配列は、SEQ ID NO:10の配列またはその相補配列と約95%、96%、97%、98%または99%の相似性を有してもよい。
【0123】
SEQ ID No:10(転写開始点の−234bpから+372bp)
【0124】
GATAATTTCTGTGGCTCTGGTAAGGGGATGACAAGGGAGAAAAACTTTCCCACGGTTCCGTCTGGCCCGCGGCGCTTGTCTGCCTGCGCGGGGTCAAAGCCCGGCGCCGCCCACGCGCGGCTCGGGTGGGAACCCGCAGACGTGGGGCGAGCAGGGCCGCTGGCTGTGGCGGGCGAGCGCCGGGGCGCCACGTCCGAGGCCGCGGGGTCGGGGCTGCAGGCACAGCTCGAGCGCTTTCCGCGGGGTTTGGCTCCTGTCGCTTCCCGTCTCGCCGAACCGGCATCGCCGCCGCCGGAGCCGCAGCGAGTCCTCAGAGCCTGGCTGCTGGCGGCCGGGAGCGCCGGGACGGGGCGCGAAGCCGGAGGCTCCGGGACGTGGATACAGGTAAAGGCCGGCGGGTCGGAGTCGGGCGGGGCGCGGCGGCGGCGCCTCTCGGAGGGACCTGGCCTCGGCCGGGCCCTACCCAGCCGCGGTGGCCCGGGCCCCCACGTTGGCCCAGGCGGGGACGTGCCAAGGGGCTGGGCTAGGGTTGCCGCTGGCCTGGCCGCCTCTCGCCCGGCGGGCCTCAGGTGACGCGGCCGCGGCTTAACTTTCGCACCTGAGGCT
【0125】
好ましくは、RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内にメチル化が存在するか否かを検出するための核酸配列は、以下に示すSEQ ID No:11に等しい、または相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドおよびその相補配列を含む。
【0126】
SEQ ID No:11(転写開始点の−167bpから+135bp)
【0127】
CGCGGCGCTTGTCTGCCTGCGCGGGGTCAAAGCCCGGCGCCGCCCACGCGCGGCTCGGGTGGGAACCCGCAGACGTGGGGCGAGCAGGGCCGCTGGCTGTGGCGGGCGAGCGCCGGGGCGCCACGTCCGAGGCCGCGGGGTCGGGGCTGCAGGCACAGCTCGAGCGCTTTCCGCGGGGTTTGGCTCCTGTCGCTTCCCGTCTCGCCGAACCGGCATCGCCGCCGCCGGAGCCGCAGCGAGTCCTCAGAGCCTGGCTGCTGGCGGCCGGGAGCGCCGGGACGGGGCGCGAAGCCGGAGGCTCC
【0128】
さらに好ましくは、RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内にメチル化が存在するか否かを検出するための核酸配列は、以下に示すSEQ ID No:12に等しい、または相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドおよびその相補配列を含んでもよい。
【0129】
SEQ ID No:12(転写開始点の−43bpから+135bp)
【0130】
GTCCGAGGCCGCGGGGTCGGGGCTGCAGGCACAGCTCGAGCGCTTTCCGCGGGGTTTGGCTCCTGTCGCTTCCCGTCTCGCCGAACCGGCATCGCCGCCGCCGGAGCCGCAGCGAGTCCTCAGAGCCTGGCTGCTGGCGGCCGGGAGCGCCGGGACGGGGCGCGAAGCCGGAGGCTCC
【0131】
そのため、TaqManプローブおよびプライマーを設計し、RNF180遺伝子プロモーター領域(転写開始点の−234bpから+372bp)のDNAメチル化の検出に用いることができ、検出するプロモーター領域は転写開始点の−167bpから+135bpであることが好ましく、検出するプロモーター領域は転写開始点の−43bpから+135bpであることがさらに好ましく、検出に用いるアンプリコンの大きさの小範囲は、66bpから130bpである。
【0132】
例えば、いくつかの具体的な実施態様において、SEQ ID No:12(転写開始点の−43bpから+135bp)を標的領域として、RNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内にメチル化が存在するか否かを検出するためのプライマーおよびプローブを設計する。そのため、出願により、複数セットのプローブおよびプライマーの組み合わせを設計し、各セットのプローブおよびプライマーの組み合わせの性能には、違いが存在する可能性がある。そのため、高速なプライマーおよびプローブをスクリーニングするため、本願は、次のステップにより、人工メチル化テンプレートおよび非メチル化テンプレートを用いて、癌(例えば胃癌)および健常なDNAをテンプレートとして、設計した複数セットのプローブおよびプライマーの組み合わせをスクリーニングする。
【0133】
1.RNF180遺伝子プロモーター領域のプライマーおよびプローブを設計する。
【0134】
2.人工メチル化DNAおよび非メチル化DNAを設計する。
【0135】
3.人工メチル化DNAおよび非メチル化DNAを用いてプライマーおよびプローブをスクリーニングし、人工メチル化DNAには増幅があり、人工非メチル化は増幅を示さない。
【0136】
4.健常な白血球DNAから抽出したDNAを用いてプライマーおよびプローブをスクリーニングする。
【0137】
5.健常者の白血球DNAにおいて増幅がない、または増幅が少ない場合、ヒト胃癌組織から抽出したDNAを用いてプライマーおよびプローブをスクリーニングする。
【0138】
6.臨床研究段階の健常な血漿から抽出したDNAでプライマーおよびプローブをスクリーニングする。
【0139】
7.臨床研究段階で健常な血漿において増幅がない、または増幅が少ない場合、胃癌患者から抽出したDNAを用いてプライマーおよびプローブをスクリーニングする。
【0140】
上記スクリーニングにより、次の配列SEQ ID NO:1〜9をプライマーおよびプローブとして構築した。
【0141】
プライマー:SEQ ID No 1 (180F7) 5’−GTTCGAGGTCGCGGGGTC−3’
【0142】
プローブ:SEQ ID No 2 (180P7) 5’−CAL Fluor
【0143】
Red−AACGCTCGAACTATACCTACAACCCC−BHQ2−3’
【0144】
プライマー:SEQ ID No 3 (180R7) 5’−ACAAAAACCAAACCCCGCG−3’
【0145】
プライマー:SEQ ID No 4 (180F24) 5’−GCGGGGTTTGGTTTTTGT−3’
【0146】
プローブ:SEQ ID No 5 (180P2) 5’−CAL Fluor
【0147】
Red−CCGACGACGACGATACCG−BHQ2−3’
【0148】
プライマー:SEQ ID No 6 (180R2) 5’−ACAACCAAACTCTAAAAACTCG−3’
【0149】
プローブ:SEQ ID No 7 (180P14) 5’−CAL Fluor
【0150】
Red−CGTCGGAGTCGTAGCGAGTTT−BHQ2−3’
【0151】
プライマー:SEQ ID No 8 (180R135) 5’−AAAACCTCCAACTTCACACCC−3’
【0152】
プライマー:SEQ ID No 9 (180R14) 5’−CGCCAACAACCAAACTCTAA−3’
【0153】
さらに、出願人は、スクリーニングした上記プライマーおよびプローブにより、少なくとも1つのプライマーおよびプローブの組み合わせを設計し、中でも次の4つの組み合わせが好ましい。
【0154】
A、プライマーおよびプローブの組み合わせ1(アンプリコン66bp、転写開始点の−43bpから+23b)
【0155】
SEQ ID No 1 (180F7) 5’−GTTCGAGGTCGCGGGGTC−3’
【0156】
SEQ ID No 2 (180P7) 5’−CAL Fluor
【0157】
Red−AACGCTCGAACTATACCTACAACCCC−BHQ2−3’
【0158】
SEQ ID No 3 (180R7) 5’−ACAAAAACCAAACCCCGCG−3’
【0159】
B、プライマーおよびプローブの組み合わせ2(アンプリコン86bp、転写開始点の+5bpから+91bp)
【0160】
SEQ ID No 4 (180F24) 5’−GCGGGGTTTGGTTTTTGT−3’
【0161】
SEQ ID No 5 (180P2) 5’−CAL Fluor
【0162】
Red−CCGACGACGACGATACCG−BHQ2−3’
【0163】
SEQ ID No 6 (180R2) 5’−ACAACCAAACTCTAAAAACTCG−3’
【0164】
C、プライマーおよびプローブの組み合わせ3(アンプリコン130bp、転写開始点の+5bpから+135bp)
【0165】
SEQ ID No 4 (180F24) 5’−GCGGGGTTTGGTTTTTGT−3’
【0166】
SEQ ID No 7 (180P14) 5’−CAL Fluor
【0167】
Red−CGTCGGAGTCGTAGCGAGTTT−BHQ2−3’
【0168】
SEQ ID No 8 (180R135) 5’−AAAACCTCCAACTTCACACCC−3’
【0169】
D、プライマーおよびプローブの組み合わせ4(アンプリコン91bp、転写開始点の+5bpから+96bp)
【0170】
SEQ ID No 4 (180F24) 5’−GCGGGGTTTGGTTTTTGT−3’
【0171】
SEQ ID No 7 (180P14) 5’−CAL Fluor
【0172】
Red−CGTCGGAGTCGTAGCGAGTTT−BHQ2−3’
【0173】
SEQ ID No 9 (180R14) 5’−CGCCAACAACCAAACTCTAA−3’
【0174】
次に、上述したこれらのプライマーおよびプローブの組み合わせと上記遺伝子配列の結合点(そのうち同じ形状の下線は対応部分を示す)についてさらに説明する。
【0175】
A、プライマーおよびプローブの組み合わせ1(アンプリコン66bp、転写開始点の−43bpから+23bp)
【0176】
GATAATTTCTGTGGCTCTGGTAAGGGGATGACAAGGGAGAAAAACTTTCCCACGGTTCCGTCTGGCCCGCGGCGCTTGTCTGCCTGCGCGGGGTCAAAGCCCGGCGCCGCCCACGCGCGGCTCGGGTGGGAACCCGCAGACGTGGGGCG
【0177】
結合点の概要:
【0178】
SEQ ID No 1(180F7)5’−GTTCGAGGTCGCGGGGTC−3’
【0179】
AGCAGGGCCGCTGGCTGTGGCGGGCGAGCGCCGGGGCGCCACGTCCGAGGCCGCGGGGTC
GGGGCTGCAGGC
【0180】
SEQ ID No 2(180P7)5’−CAL Fluor Red−
AACGCTCGAACT
ATACCTACAACCCC−BHQ2−3’
【0181】
ACAGCTCGAGCGCTTTCCGCGGGGTTTGGCTCCTGTCGCTTCCCGTCTCGCCGAACCGGCATCGCCGCCGCCGGAG
【0182】
5’−ACAAAAACCAAACCCCGCG−3’SEQ ID No 3(180R7)
【0183】
CCGCAGCGAGTCCTCAGAGCCTGGCTGCTGGCGGCCGGGAGCGCCGGGACGGGGCGCGAAGCCGGAGGCTCCGGGACGTGGATACAGGTAAAGGCCGGCGGGTCGGAGTCGGGCGGGGCGCGGCGGCGGCGCCTCTCGGAGGGACCTGGCCTCGGCCGGGCCCTACCCAGCCGCGGTGGCCCGGGCCCCCACGTTGGCCCAGGCGGGGACGTGCCAAGGGGCTGGGCTAGGGTTGCCGCTGGCCTGGCCGCCTCTCGCCCGGCGGGCCTCAGGTGACGCGGCCGCGGCTTAACTTTCGCACCTGAGGCT
【0184】
B、プライマーおよびプローブの組み合わせ2(アンプリコン86bp、転写開始点の+5bpから+91bp)
【0185】
GATAATTTCTGTGGCTCTGGTAAGGGGATGACAAGGGAGAAAAACTTTCCCACGGTTCCGTCTGGCCCGCGGCGCTTGTCTGCCTGCGCGGGGTCAAAGCCCGGCGCCGCCCACGCGCGGCTCGGGTGGGAACCCGCAGACGTGGGGCG
【0186】
AGCAGGGCCGCTGGCTGTGGCGGGCGAGCGCCGGGGCGCCACGTCCGAGGCCGCGGGGTCGGGGCTGCAGGC
結合点の概要:
【0187】
BHQ2−3’SEQ ID No 5(180P2)
【0188】
SEQ ID No 4(180F24)5’−GCGGGGTTTGGTTTTTGT−3’ 5’−CAL Fluor Red−CCGACGACGACGATACCG−ACAGCTCGAGCGCTTTCCGCGGGGTTTGGCTCCTGTCGCTTCCCGTCTCGCCGAACCGGCATCGCCGCCGCCGGAG
【0189】
CCGCAGCGAGTCCTCAGAGCCTGGCTGCTGGCGGCCGGGAGCGCCGGGACGGGGCGCGAAGCCGGAGGCTCCG
【0190】
5’−ACAACCAAACTCTAAAAACTCG−3’SEQ ID No 6(180R2)
【0191】
GGACGTGGATACAGGTAAAGGCCGGCGGGTCGGAGTCGGGCGGGGCGCGGCGGCGGCGCCTCTCGGAGGGACCTGGCCTCGGCCGGGCCCTACCCAGCCGCGGTGGCCCGGGCCCCCACGTTGGCCCAGGCGGGGACGTGCCAAGGGGCTGGGCTAGGGTTGCCGCTGGCCTGGCCGCCTCTCGCCCGGCGGGCCTCAGGTGACGCGGCCGCGGCTTAACTTTCGCACCTGAGGCT
【0192】
C、プライマーおよびプローブの組み合わせ3(アンプリコン130bp、転写開始点の+5bpから+135bp)
【0193】
GATAATTTCTGTGGCTCTGGTAAGGGGATGACAAGGGAGAAAAACTTTCCCACGGTTCCGTCTGGCCCGCGGCGCTTGTCTGCCTGCGCGGGGTCAAAGCCCGGCGCCGCCCACGCGCGGCTCGGGTGGGAACCCGCAGACGTGGGGCG
【0194】
AGCAGGGCCGCTGGCTGTGGCGGGCGAGCGCCGGGGCGCCACGTCCGAGGCCGCGGGGTCGGGGCTGCAGGC
結合点の概要:
【0195】
SEQ ID No 4(180F24)5’−GCGGGGTTTGGTTTTTGT−3’ SEQ ID No 7(180P14)5’−CGTCGGAG
【0196】
ACAGCTCGAGCGCTTTCCGCGGGGTTTGGCTCCTGTCGCTTCCCGTCTCGCCGAACCGGCATCGCCGCCGCCGGAG
【0197】
TCGTAGCGAGTTT−BHQ2−3’
【0198】
CCGCAGCGAGTCCTCAGAGCCTGGCTGCTGGCGGCCGGGAGCGCCGGGACG
GGGCGCGAAGCCGGAGGCTCC
【0199】
SEQ ID No 8(180R135)
【0200】
5’−AAAACCTCCAACTTCACACCC−3’
【0201】
GGACGTGGATACAGGTAAAGGCCGGCGGGTCGGAGTCGGGCGGGGCGCGGCGGCGGCGCCTCTCGGAGGGACCTGGCCTCGGCCGGGCCCTACCCAGCCGCGGTGGCCCGGGCCCCCACGTTGGCCCAGGCGGGGACGTGCCAAGGGGCTGGGCTAGGGTTGCCGCTGGCCTGGCCGCCTCTCGCCCGGCGGGCCTCAGGTGACGCGGCCGCGGCTTAACTTTCGCACCTGAGGCT
【0202】
D、プライマーおよびプローブの組み合わせ4(アンプリコン91、転写開始点の+5bpから+96bp)
【0203】
GATAATTTCTGTGGCTCTGGTAAGGGGATGACAAGGGAGAAAAACTTTCCCACGGTTCCGTCTGGCCCGCGGCGCTTGTCTGCCTGCGCGGGGTCAAAGCCCGGCGCCGCCCACGCGCGGCTCGGGTGGGAACCCGCAGACGTGGGGCG
【0204】
AGCAGGGCCGCTGGCTGTGGCGGGCGAGCGCCGGGGCGCCACGTCCGAGGCCGCGGGGTCGGGGCTGCAGGC
結合点の概要:
【0205】
SEQ ID No 4(180F24)5’−GCGGGGTTTGGTTTTTGT−3’SEQ ID No 7(180P14)5’−CGTCGGAG
【0206】
ACAGCTCGAGCGCTTTCCGCGGGGTTTGGCTCCTGTCGCTTCCCGTCTCGCCGAACCGGCATCGCCGCCGCCGGAG
【0207】
TCGTAGCGAGTTT−BHQ2−3’
【0208】
CCGCAGCGAGTCCTCAGAGCCTGGCTGCTGGCGGCCGGGAGCGCCGGGACGGGGCGCGAAGCCGGAGGCTCCG
【0209】
5’−CGCCAACAACCAAACTCTAA−3’SEQ ID No 9(180R14)
【0210】
GGACGTGGATACAGGTAAAGGCCGGCGGGTCGGAGTCGGGCGGGGCGCGGCGGCGGCGCCTCTCGGAGGGACCTGGCCTCGGCCGGGCCCTACCCAGCCGCGGTGGCCCGGGCCCCCACGTTGGCCCAGGCGGGGACGTGCCAAGGGGCTGGGCTAGGGTTGCCGCTGGCCTGGCCGCCTCTCGCCCGGCGGGCCTCAGGTGACGCGGCCGCGGCTTAACTTTCGCACCTGAGGCT
【0211】
いくつかの具体的な実施態様において、前記組成物は、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換する試薬をさらに含む。例えば、この試薬は亜硫酸水素塩であってもよい。
【0212】
いくつかの具体的な実施態様において、前記細胞増殖性異常は癌である。例えば、前記細胞増殖性異常は胃癌である。
【0213】
いくつかの具体的な実施態様において、前記疾患の程度は、3つのレベルにわかれ、第1のレベルは健常、第2のレベルは炎症、第3のレベルは癌である。好ましくは、前記炎症は胃炎であり、かつ前記癌は胃癌である。
【0214】
さらに、本願の上文において記述または提案した用途について、第2の実施形態において、第1の実施形態において公開した生体試料を診断または検出する組成物を含む試薬キットを公開する。この組成物に対する記述は、第1の実施形態と類似しており、ここでは再び繰り返さない。
【0215】
こうした試薬キットは、バイアル、チューブなどの1つまたは複数個の容器に密封収容されたベクターを含んでもよく、各容器に、前記方法において使用する1つの独立素子をいずれも含む。例えば、容器は、標識を検出可能である、またはその可能性があるプローブを含んでもよい。
【0216】
典型的には、本願の試薬キットは、患者の生体試料を収容するための容器および/または試薬キットの使用および結果の解釈の説明を含み、具体的には、本願の試薬キットは、企業およびユーザの角度から見て必要な材料を含み、患者の生体試料を収容するための容器、緩衝剤、希釈剤、フィルタ、注射針、注射器および包装中に挿入する取扱説明書を含む。前記成分を特定の治療または非治療用途に用いることを説明するため、容器上にラベルを使用してもよく、さらに上文に記載したように、体内または体外で使用することを説明してもよい。
【0217】
本願の試薬キットは、複数の実施態様を有する。典型的な実施態様は、容器、前記容器上のラベル、および前記容器内の成分を含む試薬キットである。前記成分は、セプチン9およびRNF180遺伝子ならびにそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を検出するための核酸を含み、前記容器上のラベルは、前記成分を用いて試料のDNAのメチル化の程度を評価するために用いることができることを明記し、本試薬キットをいかにして使用するかについて説明する。この試薬キットは、説明、および組織試料を製造し、本願の組成物を試料に用いる材料をさらに含んでもよい。この試薬キットは、例えば、亜硫酸水素塩など、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換するための試薬を含んでもよい。
【0218】
第3の実施形態において、個体から単離した生体試料におけるRNF180およびセプチン9遺伝子ならびにそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を確定し、RNF180およびセプチン9のメチル化検出結果を総合することにより、個体における細胞増殖性異常を検出することを含む、個体における細胞増殖性異常を検出するための方法を公開する。
【0219】
本願は、個体から単離した生体試料におけるRNF180遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を確定し、RNF180のメチル化検出結果により疾患の程度を等級付けすることを含む、個体の疾患の程度を等級付けするための方法をさらに公開する。好ましくは、前記方法は、前記個体から単離した生体試料におけるセプチン9遺伝子およびそのセグメントのうち少なくとも1つの標的領域内のメチル化の程度を確定し、RNF180およびセプチン9のメチル化検出結果を総合することにより疾患の程度を等級付けすることをさらに含む。
【0220】
典型的には、本願の方法は、試薬を用いて、遺伝子の5位がメチル化していないシトシン塩基をウラシル、またはハイブリダイズ性能の面において検出可能にシトシンとは異なる他の塩基に変換するステップをさらに含む。
【0221】
DNAの亜硫酸水素塩は、既知のCpGメチル化状態の評価に用いるツールに修飾する。真核細胞のDNAにおいて、5−メチルシトシンは、最もよく見られる共有結合塩基修飾である。例えば、転写の調整、遺伝ブロッティングおよび腫瘍の発生において作用する。そのため、5−メチルシトシンを遺伝情報成分として確認することは、相当大きな意義を有する。しかしながら、5−メチルシトシンとシトシンは同じ塩基対形成挙動を有するため、5−メチルシトシンは、測定によって同定することができない。また、例えば、PCR増幅プロセスにおいて、5−メチルシトシンがもつエピジェネティクス情報が完全に失われる。
【0222】
DNAにおける5−メチルシトシンの存在の解析に最もよく用いられる方法は、亜硫酸水素塩とシトシンの特異反応に基づくものであり、これによりその後のアルカリ加水分解の後、シトシンが対形成挙動上チミンに対応するウラシルに変換される。しかしながら、重要なことは、これらの条件の下、5−メチルシトシンは修飾されないことを保つことである。その結果、当初のDNAは、この方式で変換され、本来そのハイブリダイゼーション挙動上シトシンと区別できなかったメチルシトシンが、唯一残ったシトシンとして、通常の既知の分子生物学技術、例えば、増幅およびハイブリダイゼーションで検出することができるようになる。これらすべての技術は、いずれも異なる塩基対形成特性に基づき、現在、充分に利用することができる。
【0223】
そのため、典型的には、本願は、亜硫酸水素塩技術と1種または複数のメチル化測定の併用を提供し、セプチン9およびRNF180遺伝子配列内のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態を確定するために用いる。ゲノムのCpGジヌクレオチドは、メチル化されていても、メチル化されていなくてもよい(または、それぞれ上・下メチル化(up−and down−methylated)という)。しかしながら、本発明の方法は、例えば、血液または糞便中の低濃度腫瘍細胞など、異質な生体試料の解析に適している。そのため、こうした試料中のCpG位置のメチル化状態を解析するとき、当業者は、定量測定法を用いて、メチル化状態ではなく、特定のCpG位置におけるメチル化レベル(例えば、百分比、部数、割合、比例または程度)を確定することができる。それに対応して、メチル化状况またはメチル化状態という用語は、CpG位置におけるメチル化の程度を反映した値をいうと考えるべきである。明確な説明がある場合を除き、用語「超メチル化」または「上メチル化」は、メチル化レベルが特定の臨界値を超えることをいうと考えるべきであり、前記臨界値は、所定の母集団の平均値または中央値のメチル化レベルの値を表すものであってもよく、または最適化された臨界レベルであることが好ましい。本文における「臨界」とは、「閾値」をいってもよい。本発明の上文、下文において、次の配列より選ばれる遺伝子またはゲノム配列内の、またはそれと関係する(例えば、プロモーターまたは調節領域内)のすべてのCpG位置にとって、用語「メチル化した」、「超メチル化した」または「上メチル化した」は、メチル化レベルが臨界値ゼロ(0)%(またはその同等値)よりも高いメチル化を含むと考えるべきであり、前記配列は、上記セプチン9およびRNF180遺伝子配列である。
【0224】
いくつかの実施態様において、本願の方法は、具体的には、前記試薬で処理したセプチン9およびRNF180遺伝子またはそのセグメントを増幅酵素およびプライマーと接触させ、前記処理した遺伝子またはセグメントを増幅させ増幅生成物を生成するか、または増幅させないこと、プローブを用いて増幅生成物を検出すること、および前記増幅物が存在するか否かに基づき、セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化の程度を確定することを含む。
【0225】
かつ、典型的には、前記接触または増幅は、少なくとも1種の次から選ばれる方法を適用することを含む。耐熱DNAポリメラーゼを前記増幅酵素として使用する。5’−3’エキソヌクレアーゼ活性が欠乏したポリメラーゼを使用する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する。標識を検出可能な増幅生成物を有する核酸分子を生成する。
【0226】
すなわち、好ましくは、PCR方式を用いてメチル化の程度を測定し、「蛍光に基づくリアルタイムPCR技術」(Eadsら,Cancer Res.59:2302−2306,1999)、Ms−SNuPE TM(メチル化感受性のモノヌクレオチドプライマー伸長)反応(Gonzalgo&Jones,Nucleic Acids Res.25:2529−2531,1997)、メチル化特異性PCR(「MSP」;Hermanら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:9821−9826,1996;米国特許5,786,146)およびメチル化したCpGアイランド増幅(「MCA」;Toyotaら,Cancer Res.59:2307−12,1999)などの測定方法が、セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化の程度の測定に用いられる。
【0227】
中でも、「蛍光に基づくリアルタイムPCR」測定は、蛍光に基づくリアルタイムPCR(TaqMan_)技術を使用した高スループット定量メチル化測定であり、PCRステップの後、さらなる操作を必要としない(Eadsら,Cancer Res.59:2302−2306,1999)。簡単に言えば、「蛍光に基づくリアルタイムPCR」方法は、ゲノムDNAの混合試料で開始し、この混合試料は、標準操作(亜硫酸水素塩プロセスでメチル化していないシトシン残基をウラシルに変換する)に基づき、亜硫酸水素ナトリウム反応においてメチル化依存の配列差異のプールに変換される。その後、「バイアスのある(biased)」反応(既知のCpGジヌクレオチドを重ねるPCRプライマーを用いる)において蛍光に基づくPCRを行う。増幅プロセスレベルおよび蛍光検出プロセスレベルにおいて、配列の差をもたらすことができる。
【0228】
「蛍光に基づくリアルタイムPCR」測定は、ゲノムDNA試料中のメチル化モデルの定量試験として用いることができ、配列区分は、プローブハイブリダイゼーションレベルで発生する。この定量方式において、特定の推定メチル化サイトが重なる蛍光プローブの存在下で、PCR反応は、メチル化特異の増幅を提供する。DNA量の入力に用いる無バイアス対照は、次の反応により提供する。プライマーおよびプローブは、いずれもいかなるCpGジヌクレオチドを覆わない。「蛍光に基づくリアルタイムPCR」方法は、「TaqMan_」、「Lightcycler_」など、適したあらゆるプローブとともに用いることができる。
【0229】
TaqMan_プローブは、蛍光「リポーター」および「クエンチャー」分子二重標識であり、相対的に高いGC含有量領域に特異に設計されており、PCRサイクルにおいて、順方向または逆方向のプライマーよりも約10℃高い温度で融解する。これにより、TaqMan_プローブは、PCRアニーリング/延伸ステップにおいて、充分なハイブリダイゼーションを保つ。Taqポリメラーゼは、PCRにおいて酵素が新しい鎖を合成するときに、最終的にアニーリングしたTaqMan_プローブに接する。Taqポリメラーゼ5’〜3’エンドヌクレアーゼ活性は、その後、TaqMan_プローブを消化してそれに替わり、蛍光リポーター分子を釈放してリアルタイム蛍光検出システムを用いてその現在クエンチされていないシグナルを定量検出するために用いられる。
【0230】
「蛍光に基づくリアルタイムPCR」解析に用いられる典型的な試薬(例えば、「蛍光に基づくリアルタイムPCR」に基づく試薬キットにおいて探し出すことができる)は、特定の遺伝子(または亜硫酸水素塩処理したDNA配列またはCpGアイランド)に用いるPCRプライマー、TaqMan_またはLightcycler_プローブ、最適化されたPCR緩衝液およびデオキシヌクレオチド、およびTaqポリメラーゼを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0231】
かつ、具体的には、好ましい実施形態において、前記方法は、次のステップを含む。
【0232】
第1のステップにおいて、解析する組織試料を得る。この由来は、例えば、細胞系、組織切片、生検組織、パラフィン包埋組織、体液、糞便、結腸流出物、尿、血漿、血清、全血、単離した血球、血液から単離した細胞、および可能性のあるそのすべての組み合わせのあらゆる適した由来である。好ましくは、DNAの前記由来は、糞便または体液であり、結腸流出物、尿、血漿、血清、全血、単離した血球、血液から単離した細胞より選ばれる。
【0233】
その後、前記試料からゲノムDNAを単離する。先行技術におけるいかなる標準手段によって単離してもよく、市販されている試薬キットを使用することを含む。簡単に言えば、目的DNAが細胞膜の中に包まれているとき、この生体試料は、必ず破砕され、酵素、化学または機械手段で分解されていなければならない。その後、例えば、プロテインキナーゼKの消化により、タンパク質およびその他の汚染物を取り除く。次いで、溶液からゲノムDNAを回収する。これは、塩析、有機抽出またはDNAを固相支持物に結合するなど、各種方法により実現することができる。方法の選択については、時間、費用および必要なDNAの量を含む複数の要素の影響を受ける。
【0234】
前記試料DNAが細胞膜の中に包まれていない場合(例えば、血液試料由来の循環DNA)、先行技術におけるDNAを単離および/または精製する標準的な方法を用いてもよい。これらの方法は、例えば塩化グアニジニウムまたは尿素などのカオトロピック塩などのタンパク質分解試薬、またはドデカンスルホン酸ナトリウム(SDS)、臭化シアンなどの洗浄剤を用いることを含む。その他の方法は、エタノール沈殿またはプロパノール沈殿、遠心による真空濃縮などを含むが、これらに限定されない。当業者は、例えば限外濾過などのフィルタなどの装置、ケイ素表面または膜、磁性粒子、ポリスチレン粒子、ポリスチレン表面、正電荷を帯びた表面、および陽性電荷を帯びた膜、帯電膜、帯電表面、帯電転換膜、帯電転換表面を用いてもよい。
【0235】
核酸が抽出されたら、ゲノム二本鎖DNAを解析に用いる。
【0236】
前記方法の第2のステップにおいて、前記ゲノムDNA試料を処理し、5’位のメチル化していないシトシン塩基がウラシル、チミンに変換されるようにするか、またはハイブリダイゼーション挙動上、シトシンの別の塩基に用いない。これは、本文でいう「前処理」または「処理」として理解されるべきである。
【0237】
これは、好ましくは亜硫酸水素塩試薬処理により実現する。用語「亜硫酸水素塩試薬」とは、ここで公開するメチル化および未メチル化の区分に用いることができるCpGジヌクレオチド配列など、亜硫酸水素塩、亜硫酸水素塩(disulfite)、重亜硫酸塩またはその組み合わせを含む試薬をいう。前記処理は、本分野において既知のものである(例えば、PCT/EP2004/011715、参照することによりその全体を本文に併合する)。好ましくは、この亜硫酸水素塩処理は、変性溶剤の存在下で行い、前記変性溶剤は、nーアルキルグリコール、特にジエチレングリコールジメチルエーテル(DME)、またはジオキサンもしくはジオキサン誘導体の存在下で行うが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、前記変性溶剤は、1%から35%(v/v)の濃度で使用する。この亜硫酸水素塩反応は、例えば、6−ヒドロキシ−2,5,7,8,−テトラメチルクロマン2−カルボン酸などのクロマン誘導体、または例えば没食子酸などのトリヒドロキシ安息香酸およびその誘導体などの除去剤の存在下で行う(PCT/EP2004/011715を参照、参照することによりその全体を本文に併合する)。この亜硫酸水素塩変換は、好ましくは30℃から70℃の反応温度下で行い、反応中の温度は短時間で85℃超まで増加させる(PCT/EP2004/011715を参照、参照することによりその全体を本文に併合する)。亜硫酸水素塩処理したDNAは、好ましくは定量前に精製を行う。これは、例えば限外濾過など、先行技術のうちいかなる既知の方法で行ってもよいが、これに限定されず、Microcon^(TM)カラム(Millipore^(TM)製)により行うことが好ましい。
【0238】
前記方法の第3のステップにおいて、本発明のプライマーオリゴヌクレオチドおよび増幅酵素を用いて、処理済のDNAのセグメントを増幅する。同じ反応容器において同時に数種のDNAセグメントの増幅を行ってもよい。通常、この増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて行う。好ましくは、前記増幅生成物の長さは、100〜2,000塩基対である。
【0239】
セプチン9遺伝子およびそのセグメントのメチル化の検出については、例えば次のようなセプチン9に対するプライマーおよびプローブを用いる。
【0240】
プライマー:SEQ ID No 14 GTAGTAGTTAGTTTAGTATTTATTTT
【0241】
プライマー:SEQ ID No 15 CCCACCAACCATCATAT
【0242】
プローブ:SEQ ID No 16 GAACCCCGCGATCAACGCG
【0243】
RNF180遺伝子およびそのセグメントのメチル化の検出については、RNF180に対する前記スクリーニング方法でスクリーニングするプライマーおよびプローブを用いる。例えば、1つの好ましい実施態様において、上記プライマーおよびプローブの組み合わせ1、2、3、4のうちのいかなる組み合わせを用いてもよい。
【0244】
得られたセグメントを増幅することにより、直接または間接的に検出可能なラベルをもつことができる。好ましくは、ラベルは蛍光ラベル、放射性核種または付着可能な分子セグメントの形式である。
【0245】
前記方法の第4のステップにおいて、処理前のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を確定するため、前記方法の第3のステップで得た増幅生成物を解析する。
【0246】
第4のステップにおいて、増幅生成物の検出は、リアルタイム検出プローブにより行う。本発明において、各種商業用リアルタイムPCR装置を用いて、先行技術の標準操作に基づき、リアルタイムPCRの検出を行うことができる。いくつかの具体的な実施態様により、Life Technologies装置(7500Fast)において、リアルタイムPCRの検出を行う。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩により変換されたDNAテンプレート25〜40ngおよび300〜600nMプライマー、150〜300nMプローブ、1UTaqポリメラーゼ、50〜400uMの各dNTP、1〜10mMのMgCl2および2XPCRにより最終的な2ul〜100ulの体積まで緩衝する。85〜99℃で3〜60分間持続し、プレサイクルで試料を増幅し、直後に50〜72℃で1〜30秒間の35〜55サイクルのアニーリングを行い、45〜80℃で5〜90秒間アニーリングし、85〜99℃で5〜90秒間変性する。
【0247】
メチル化したRNF180遺伝子およびセプチン9遺伝子のみがセグメント上で増幅が観測されることにより、5−メチルシトシンを含むRNF180およびセプチン9プロモーター領域との特異性のプローブを用いて前記遺伝子セグメントを検出する。かつ、いくつかの具体的な実施態様において、βアクチンをPCRの内部基準として、βアクチン配列と相補するプライマーを用いてβアクチンアンプリコンを生成し、かつ特定のプローブを用いてβアクチンアンプリコンを検出する。各試料は、少なくとも1回のリアルタイムPCRを行い、いくつかの具体的な実施態様において、2回のリアルタイムPCR検出を行う。
【0248】
前記方法の第5のステップにおいて、それぞれ前記セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態を現し、ポリメラーゼ連鎖反応のサイクル閾値Ct値により確定されており、また次のステップをさらに含む。A)測定する試料のセプチン9に対応するPCR Ct値とセプチン9の予め設定したcut値(すなわち、臨界Ct値)とを比較し、これによりセプチン9遺伝子に基づく解析結果が陽性であるか否かを確定する。B)測定する試料のRNF180に対応するPCR Ct値とRNF180の予め設定したcut値とを比較し、これによりRNF180遺伝子に基づく解析結果が健常であるか、胃炎であるか、胃癌(陽性)であるかを確定する。c)前記A)およびB)ステップの結果を総合し、前記試料の最終解析結果が健常であるか、胃炎であるか、胃癌(陽性)であるかを確定する。
【0249】
本願の具体的な実施態様により、一定数の胃癌試料および健常試料のセプチン9およびRNF180の平均Ct値に基づき、セプチン9およびRNF180に対する胃癌、胃炎および健常の臨界Ct値を確定する。いくつかの好ましい実施態様において、セプチン9の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態の測定に用いる試薬キットは、Epigenomics社(ドイツ)より購入されたため、Epigenomicsの説明書により、セプチン9臨界Ct値は45Ctであると確定することができる。RNF180の臨界Ct値は、一定数の胃癌試料、胃炎および健常試料のRNF180の平均Ct値に基づき確定される。かつ、RNF180の臨界Ct値は、さらに実際に必要な感度に関係し、感度の要求が高いほど、選んだ臨界Ct値が大きくなる。
【0250】
かつ、本願は、異なる方法を用いてCt値を解析することができる。例えば、ΔCtまたはdCTを用いて、アクチンCtをPCR内部対照とし、セプチン9CtからアクチンCtを減算してセプチン9のdCT値を得る。同様に、RNF180CtからアクチンCtを減算してRNF180のdCT値を得る。それに対応して、ΔCtまたはdCTを検出基準として用いる場合、前記方法の第5のステップにおいて、それぞれ前記セプチン9およびRNF180の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態を現し、ポリメラーゼ連鎖反応のサイクル閾値Ct値により確定されており、また次のステップをさらに含む。A)測定する試料のセプチン9に対応するPCRΔCt値とセプチン9の予め設定したΔcut値(すなわち、臨界Ct値)とを比較し、これによりセプチン9遺伝子に基づく解析結果が陽性であるか否かを確定する。B)測定する試料のRNF180に対応するPCRΔCt値とRNF180の予め設定したΔcut値とを比較し、これによりRNF180遺伝子に基づく解析結果が健常であるか、胃炎であるか、胃癌(陽性)であるかを確定する。c)前記A)およびB)ステップの結果を総合し、前記試料の最終解析結果が健常であるか、胃炎であるか、胃癌(陽性)であるかを確定する。
【0251】
上記内容を総合すると、本願は、以上記載した組成物、核酸配列、試薬キットおよびその用途、ならびに上記検出方法により、それぞれを併用してセプチン9およびRNF180遺伝子ならびにそのセグメントのメチル化した核酸配列の検出に用いることにより、癌検出の感度および特異性、特に胃癌検出の感度および特異性が向上するようにし、これにより検出結果の正確さおよび信頼性を保証する。かつ、セプチン9およびRNF180の2つのバイオマーカーを併用して胃炎および胃癌を等級付けすることを実現し、これにより疾患の等級付けの感度および特異性がいずれも向上するようにする。
【0252】
次に具体的な実施例について詳細に説明する。
【実施例】
【0253】
実施例1:プライマーおよびプローブのスクリーニング
【0254】
いくつかの具体的な実施態様により、セプチン9の遺伝子DNA配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態の測定に用いる試薬キットは、Epigenomics社(ドイツ)より購入されたため、直接、試薬キットの説明書により、セプチン9の遺伝子試験に対するプライマーおよびプローブを得ることができる。RNF180遺伝子については、複数セットのプローブおよびプライマーの組み合わせを設計し、各セットのプローブおよびプライマーの組み合わせの性能には、違いが存在する可能性がある。そのため、次の実施例において、プローブおよびプライマーについてスクリーニングを行った。
【0255】
本実施例において、先ず人工メチル化テンプレートおよび非メチル化テンプレートを用いてRNF180のプライマーおよびプローブについてスクリーニングを行った。本実施例は、次のステップを含む。
【0256】
先ず、RNF180の各種プライマーおよびプローブを設計し、SEQ ID No:10からSEQ ID No:12までより選ばれるものに等しい、相補する、または中程度にストリンジェントな条件もしくはストリンジェントな条件でハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドおよびその相補配列であればよい。
【0257】
次いで、人工メチル化したオリゴヌクレオチド配列および人工非メチル化のオリゴヌクレオチド配列をテンプレートとし、異なるプローブおよびプライマーの組み合わせを用いてPCR増幅を行った。本実験例において採用したPCR増幅条件は、次のとおりである。Life Technologies装置(7500Fast)でリアルタイムPCRを行った。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩により変換されたDNAテンプレート35ngおよび450nMプライマー、225nMプローブ、1UTaqポリメラーゼ、200umの各dNTP、4.5mMのMgCl2および2XPCR緩衝液により最終的な30ulの体積をなす。94℃を20分間保ち、プレサイクルで試料を増幅し、直後に62℃で5秒間の45サイクルのアニーリングを行い、55.5℃で35秒間アニーリングし、93℃で30秒間変性した。
【0258】
最後に、PCR試験結果により、次の4セットの適切なプライマーおよびプローブをスクリーニングした。
【0259】
プライマーおよびプローブの組み合わせ1 (アンプリコン66bp、転写開始点の−43bpから+23bp)
【0260】
SEQ ID No 1 (180F7) 5’−GTTCGAGGTCGCGGGGTC−3’
【0261】
SEQ ID No 2 (180P7) 5’−CAL Fluor
【0262】
Red−AACGCTCGAACTATACCTACAACCCC−BHQ2−3’
【0263】
SEQ ID No 3 (180R7) 5’−ACAAAAACCAAACCCCGCG−3’
【0264】
プライマーおよびプローブの組み合わせ2 (アンプリコン86bp、転写開始点の+5bpから+91bp)
【0265】
SEQ ID No 4 (180F24) 5’−GCGGGGTTTGGTTTTTGT−3’
【0266】
SEQ ID No 5 (180P2) 5’−CAL Fluor
【0267】
Red−CCGACGACGACGATACCG−BHQ2−3’
【0268】
SEQ ID No 6 (180R2) 5’−ACAACCAAACTCTAAAAACTCG−3’
【0269】
プライマーおよびプローブの組み合わせ3 (アンプリコン130bp、転写開始点の+5bpから+135bp)
【0270】
SEQ ID No 4 (180F24) 5’−GCGGGGTTTGGTTTTTGT−3’
【0271】
SEQ ID No 7 (180P14) 5’−CAL Fluor
【0272】
Red−CGTCGGAGTCGTAGCGAGTTT−BHQ2−3’
【0273】
SEQ ID No 8 (180R135) 5’−AAAACCTCCAACTTCACACCC−3’
【0274】
プライマーおよびプローブの組み合わせ4 (アンプリコン91、転写開始点の+5bpから+96bp)
【0275】
SEQ ID No 4 (180F24) 5’−GCGGGGTTTGGTTTTTGT−3’
【0276】
SEQ ID No 7 (180P14) 5’−CAL Fluor
【0277】
Red−CGTCGGAGTCGTAGCGAGTTT−BHQ2−3’
【0278】
SEQ ID No 9 (180R14) 5’−CGCCAACAACCAAACTCTAA−3’
【0279】
結論:人工メチル化オリゴヌクレオチドテンプレートは増幅があり、人工非メチル化オリゴヌクレオチドテンプレートは増幅がなく、プライマーおよびプローブの設計が正確であることが示された。4セットのプライマーおよびプローブは、いずれもメチル化テンプレートおよび非メチル化テンプレートを区別し、RNF180試験におけるプライマーおよびプローブとして用いることができる。異なるプローブおよびプライマーの組み合わせでは、効果は異なるが、以上の4セットのプローブは、いずれもRNF180試験におけるプライマーおよびプローブとして適している。
【0280】
次いで、癌および健常DNAをテンプレートとして用い、RNF180のプライマーおよびプローブをさらにスクリーニングした。
【0281】
4例の胃癌(S1〜S4)、2例の腸癌(C1〜C2)、2例の肺癌(L1〜L2)、1例の血液の癌(Jurkat)および1例の健常者(WBC)の試料を得た。4例の胃癌、2例の腸癌、2例の肺癌、1例の血液の癌および1例の健常者のゲノムDNAを抽出した。Jurkat細胞ゲノムDNAは陽性対照として、健常DNAは陰性対照として用いられた。すべての癌試料は、BioChain社から入手した。ヒト健常試料は、BioReclamationIVT社から入手した。前記DNAの抽出は、先行技術におけるあらゆる標準手段を用いて行ってもよく、具体的には、本実施例において、すべてのヒト試料DNAは、Epigenomics社のEPi proColon Plasma Quick Kitを用いて抽出した。
【0282】
次いで、前記ゲノムDNA試料を前処理し、5’位のメチル化していないシトシン塩基がウラシル、チミンに変換されるようにするか、またはハイブリダイゼーション挙動上、シトシンの別の塩基に用いない。本実施例においては、亜硫酸水素塩試薬処理によりこの前処理を実現した。亜硫酸水素塩DNAの修飾は、EPi proColon Plasma Quick Kitを用いて行った。
【0283】
次いで、上記前処理済の4例の胃癌、2例の腸癌、2例の肺癌、1例の血液の癌および1例の健常者のゲノムDNA試料中に、上記4セットのRNF180のプライマーおよびプローブセットを加え、4セットのRNF 180PCR試験を行い、セプチン9のプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験およびセプチン9PCR試験を多元的に検出した。セプチン9PCR試薬は、Epigenomics社より購入した。亜硫酸水素塩により変換したDNAにおいてリアルタイムPCRを行った。
【0284】
本実験例において採用したPCR増幅条件は、次のとおりである。Life Technologies装置(7500Fast)でリアルタイムPCRを行った。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩により変換されたDNAテンプレート35ngおよび450nMプライマー、225nMプローブ、1UTaqポリメラーゼ、200umの各dNTP、4.5mMのMgCl2および2XPCR緩衝液により最終的な30ulの体積をなす。94℃を20分間保ち、プレサイクルで試料を増幅し、直後に62℃で5秒間の45サイクルのアニーリングを行い、55.5℃で35秒間アニーリングし、93℃で30秒間変性した。
【0285】
最後に、それぞれ4例の胃癌、2例の腸癌、2例の肺癌、1例の血液の癌および1例の健常者のゲノムDNA試料の、RNF180遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値、ならびに4例の胃癌、2例の腸癌、2例の肺癌、1例の血液の癌および1例の健常者のゲノムDNA試料の、Setptin9遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した(図1に示すとおり)。図1は、セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元検出において、RNF180の4セットのプライマーおよびプローブがいずれもセプチン9の測定に影響を及ぼさないことを示し、横座標SC_set1〜4は、プライマーおよびプローブセット1〜4を示し、各セットの棒は、左から右に、順番にS1、S2、S3、S4、C1、C2、L1、L2、JurkatおよびWBCを示し、縦座標は、セプチン9のCt値であり、S1〜S4は4例の胃癌を、C1〜C2は2例の結腸癌を、L1〜L2は2例の肺癌を、Jurkatは1例の血液の癌(陽性対照)を、WBCは1例の健常者(陰性対照)を示す。
【0286】
RNF180遺伝子のリアルタイムPCRのCt値から、RNF180は癌DNAにおいて高度の増幅があり、健常DNAは低度の増幅があることがわかる。RNF180プライマーおよびプローブの特異性は、癌DNAと健常DNAを区別することができる。RNF180の異なるプライマーおよびプローブの組み合わせは、効果が異なる。血液の癌Jurkat細胞のDNAは、RNF180の極めて高度な増幅がある。
【0287】
Setptin9遺伝子のリアルタイムPCRのCt値から、図1に示すように、RNF180プライマーおよびプローブは、多元検出において、セプチン9の検出に対して影響がないことがわかる。セプチン9のプライマーおよびプローブは、癌DNAと健常DNAを区別することができ、RNF180の影響を受けない。RNF180の異なるプライマーおよびプローブの組み合わせは、いずれもセプチン9の測定に影響しない。血液の癌Jurkat細胞のDNAは、RNF180の極めて高度な増幅があるが、セプチン9の増幅はない。RNF180およびセプチン9は、異なる癌においてメチル化が共通性を有するが、特殊性も有する。
【0288】
上記実施例により、本願で設計するRNF180の4セットのプローブおよびプライマーは、いずれも癌DNAおよび健常DNAを区別することができる。また、次の実施例において、上記プローブおよびプライマーを用いて、さらに健常者、胃炎患者および胃癌患者の生物試料におけるDNAメチル化の程度を比較し解析する。具体的には、リアルタイムPCRの結果を用いて疾患の程度を等級付けできるようにするため、先ず、一定量の試料を解析して異なる感度および特異性により必要な疾患の程度を等級付けするリアルタイムPCRとしてのCtの臨界値、すなわちCut値を確定する。次の実施例において、胃癌患者、胃炎患者および健常な個体の生物試料に反応するセプチン9およびRNF180のメチル化DNA程度に対応するCt値を検出し、これにより疾患の程度の等級付け(胃癌、胃炎および健常)のために判断臨界値、すなわち臨界Cut値を提供する。
【0289】
実施例2:RNF180およびセプチン9のメチル化DNA多元検出の胃癌患者血漿の初歩的な臨床結果
【0290】
10例の胃癌患者および11例の健常者の試料を得た。かつ、10例の胃癌患者および11例の健常者のゲノムDNAを抽出した。すべての癌試料は、BioChain社から入手した。ヒト健常試料は、BioReclamationIVT社から入手した。前記DNAの抽出は、先行技術におけるあらゆる標準手段を用いて行ってもよく、具体的には、本実施例において、すべての試料DNAは、Epigenomics社のEPi proColon Plasma Quick Kitを用いて抽出した。
【0291】
次いで、前記ゲノムDNA試料を前処理し、5’位のメチル化していないシトシン塩基がウラシル、チミンに変換されるようにするか、またはハイブリダイゼーション挙動上、シトシンの別の塩基に用いない。本実施例においては、亜硫酸水素塩試薬処理によりこの前処理を実現した。亜硫酸水素塩DNAの修飾は、EPi proColon Plasma Quick Kitを用いて行った。
【0292】
次いで、上記前処理済の10例の胃癌患者および11例の健常者のゲノムDNA試料中に、上記第2セットのRNF180のプライマーおよびプローブを加え、RNF 180PCR試験を行い、セプチン9のプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験およびセプチン9PCR試験を多元的に検出した。セプチン9PCR試薬は、Epigenomics社より購入した。亜硫酸水素塩により変換したDNAにおいてリアルタイムPCRを行った。
【0293】
本実験例において採用したPCR増幅条件は、次のとおりである。Life Technologies装置(7500Fast)でリアルタイムPCRを行った。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩により変換されたDNAテンプレート35ngおよび450nMプライマー、225nMプローブ、1UTaqポリメラーゼ、200umの各dNTP、4.5mMのMgCl2および2XPCR緩衝液により最終的な30ulの体積をなす。94℃を20分間保ち、プレサイクルで試料を増幅し、直後に62℃で5秒間の45サイクルのアニーリングを行い、55.5℃で35秒間アニーリングし、93℃で30秒間変性した。
【0294】
最後に、それぞれ10例の胃癌患者および11例の健常者のゲノムDNA試料の、RNF180遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値、ならびに10例の胃癌患者および11例の健常者のゲノムDNA試料の、Setptin9遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定し、下表1〜3に示すとおりであった。
【0295】
表1:セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元検出の10例の胃癌患者
【0296】
【表1】
【0297】
表2:セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元検出の6例の健常者
【0298】
【表2】
【0299】
表3:セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元検出の5例の健常者
【0300】
【表3】
【0301】
RC1およびRC2はいずれも参照。RNF180およびセプチン9のPCRのCt値は、いずれも45を臨界値とし、45超は健常、45未満は癌陽性である。「/」はCt値が45を超えることを示す。
【0302】
セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元検出において、Ct値は、45未満のものは胃癌陽性であり、セプチン9およびRNF180のメチル化DNA検出の陽性結果を総合し、陽性結果に相補させる。10例の胃癌患者の診断結果は、いずれも陽性であった。胃癌の感度は100%に達した。11例の健常者陰性において、10例の陰性が検出され、特異性は91%に達した。
【0303】
表1における10例の胃癌患者のRNF180およびセプチン9のPCRのCt値を棒グラフの形式で表し、図2に示すとおりである。図2の横座標は10例の胃癌であり、縦座標はセプチン9およびRNF180のCt値である。
【0304】
セプチン9およびRNF180のメチル化DNA検出の陽性結果を総合し、すなわちセプチン9およびRNF180のメチル化DNA検出の陽性結果を相補し、胃癌の感度は100%に達した。セプチン9およびRNF180の陽性結果は、胃癌診断の上で相補するものである。
【0305】
実施例3:RNF180およびセプチン9のメチル化DNA多元検出で、胃癌、胃炎、健常者を等級付けする
【0306】
本実施例は、次のステップを含む。
【0307】
先ず、42例の胃癌患者、14例の胃炎患者および11例の健常者の血漿を得た。かつ、癌、胃炎患者および健常者のゲノムDNAを抽出した。すべての癌試料は、BioChain社から入手した。ヒト健常試料は、BioReclamationIVT社から入手した。前記DNAの抽出は、先行技術におけるあらゆる標準手段を用いて行ってもよく、具体的には、本実施例において、すべての試料DNAは、Epigenomics社のEPi proColon Plasma Quick Kitを用いて抽出した。
【0308】
次いで、前記ゲノムDNA試料を前処理し、5’位のメチル化していないシトシン塩基がウラシル、チミンに変換されるようにするか、またはハイブリダイゼーション挙動上、シトシンの別の塩基に用いない。本実施例においては、亜硫酸水素塩試薬処理によりこの前処理を実現した。亜硫酸水素塩DNAの修飾は、EPi proColon Plasma Quick Kitを用いて行った。
【0309】
次いで、上記前処理済の42例の胃癌患者、14例の胃炎患者および11例の健常者のゲノムDNA試料中に、上記第2セットのRNF180のプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験を行い、セプチン9のプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験およびセプチン9PCR試験を多元的に検出した。セプチン9PCR試薬は、Epigenomics社より購入した。亜硫酸水素塩により変換したDNAにおいてリアルタイムPCRを行った。
【0310】
本実験例において採用したPCR増幅条件は、次のとおりである。Life Technologies装置(7500Fast)でリアルタイムPCRを行った。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩により変換されたDNAテンプレート35ngおよび450nMプライマー、225nMプローブ、1UTaqポリメラーゼ、200umの各dNTP、4.5mMのMgCl2および2XPCR緩衝液により最終的な30ulの体積をなす。94℃を20分間保ち、プレサイクルで試料を増幅し、直後に62℃で5秒間の45サイクルのアニーリングを行い、55.5℃で35秒間アニーリングし、93℃で30秒間変性した。
【0311】
最後に、それぞれ42例の胃癌患者、14例の胃炎患者および11例の健常者のゲノムDNA試料の、RNF180遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値、ならびに42例の胃癌患者、14例の胃炎患者および11例の健常者のゲノムDNA試料の、Setptin9遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。次いで、測られたCt値により統計学的解析を行った。図3および図4は、それぞれセプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元検出の胃癌、胃炎および健常者のCt平均値の棒グラフおよび散布図を示す。横座標は、左から右に、それぞれ11例の健常者におけるRNF180遺伝子メチル化の程度のCt平均値、14例の胃炎患者におけるRNF180遺伝子メチル化の程度のCt平均値、42例の胃癌患者におけるRNF180遺伝子メチル化の程度のCt平均値、11例の健常者におけるSetptin9遺伝子メチル化の程度のCt平均値、14例の胃炎患者におけるSetptin9遺伝子メチル化の程度のCt平均値、42例の胃癌患者におけるSetptin9遺伝子メチル化の程度のCt平均値を表す。*は、有意な差を、**は非常に有意な差を、***は極めて非常に有意な差を示す。
【0312】
以上の図から、RNF180検出において、胃癌と胃炎のCt値の間に非常に有意な差があり、健常者と胃炎のCtの間に有意な差があり、健常者と胃癌のCtの間に極めて非常に有意な差があることがわかり、疾患の程度の等級付け(胃癌、胃炎および健常)のために判断臨界値、すなわちCut値を提供する。これによっても、RNF180のメチル化検出結果によって疾患の程度を等級付けすることがで、例えば、胃癌、胃炎、健常者を等級付けできることが示される。セプチン9検出において、胃癌と胃炎のCt値の間に有意な差があり、健常者と胃癌のCtの間に有意な差があった。
【0313】
この実施例において、セプチン9がCt値45を臨界値とし、RNF180がCt値45を臨界値とする場合、胃癌検出の感度は83.3%、胃炎検出の感度は64.3%、完全に健常の特異性は90.9%である。セプチン9がCt値45を臨界値とし、RNF180がCt値39以下を胃癌とし、Ct値39〜45を胃炎とする場合、胃癌の感度は78.6%、胃炎の感度は28.3%、完全に健常の特異性は90.9%である。
【0314】
上記実験結果は、本発明のRNF180およびセプチン9のメチル化DNA多元検出により、疾患の程度を等級付けすることができ、例えば胃癌、胃炎、健常者を等級付けできることを示す。
【0315】
実施例4:セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元(RS19)検出で、健常者、表層、萎縮/腸上皮化生、胃癌I期、II期、III期、IV期を等級付けする
【0316】
15例の健常者、31例の表層、6例の萎縮/腸上皮化生、19例の胃癌I期、20例のII期、22例のIII期、10例のIV期の試料を得た。各試料におけるゲノムDNAを抽出した。前記DNAの抽出は、先行技術におけるあらゆる標準手段を用いて行ってもよく、具体的には、本実施例において、すべての試料DNAは、Epigenomics社のEPi proColon Plasma Quick Kitを用いて抽出した。
【0317】
次いで、前記ゲノムDNA試料を前処理し、5’位のメチル化していないシトシン塩基がウラシル、チミンに変換されるようにするか、またはハイブリダイゼーション挙動上、シトシンの別の塩基に用いない。本実施例においては、亜硫酸水素塩試薬処理によりこの前処理を実現した。亜硫酸水素塩DNAの修飾は、EPi proColon Plasma Quick Kitを用いて行った。
【0318】
次いで、上記前処理済の15例の健常者、31例の表層、6例の萎縮/腸上皮化生、19例の胃癌I期、20例のII期、22例のIII期、10例のIV期のゲノムDNA試料中に、上記第2セットのRNF180のプライマーおよびプローブを加え、RNF 180PCR試験を行い、セプチン9、β−アクチンのプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験、セプチン9PCR試験およびβ−アクチンPCR試験を多元的に検出した。セプチン9PCR試薬およびβ−アクチンPCR試薬は、Epigenomics社より購入した。亜硫酸水素塩により変換したDNAにおいてリアルタイムPCRを行った。
【0319】
本実験例において採用したPCR増幅条件は、次のとおりである。Life Technologies装置(7500Fast)でリアルタイムPCRを行った。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩により変換されたDNAテンプレート35ngおよび450nMプライマー、225nMプローブ、1UTaqポリメラーゼ、200umの各dNTP、4.5mMのMgCl2および2XPCR緩衝液により最終的な30ulの体積をなす。94℃を20分間保ち、プレサイクルで試料を増幅し、直後に62℃で5秒間の45サイクルのアニーリングを行い、55.5℃で35秒間アニーリングし、93℃で30秒間変性した。
【0320】
最後に、15例の健常者、31例の表層、6例の萎縮/腸上皮化生、19例の胃癌I期、20例のII期、22例のIII期、10例のIV期のゲノムDNA試料の、Setptin9遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。かつ、15例の健常者、31例の表層、6例の萎縮/腸上皮化生、19例の胃癌I期、20例のII期、22例のIII期、10例のIV期のゲノムDNA試料の、β−アクチンに対するリアルタイムPCRのCt値を測定し、図5に示すとおりであった。図5から、健常者、表層、萎縮/腸上皮化生、胃癌I期、II期、III期、IV期の病状が重くなるのに伴い、β−アクチン(ACTB)のCt値の平均値が近くなるため、β−アクチンのCt値が安定していることがわかる。β−アクチンCtは、PCRの内部基準、すなわち内部対照とすることができる。
【0321】
かつ、15例の健常者、31例の表層、6例の萎縮/腸上皮化生、19例の胃癌I期、20例のII期、22例のIII期、10例のIV期のゲノムDNA試料の、RNF180遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定し、図6に示すとおりであった。かつ、RNF180Ctからβ−アクチンCtを減算してRNF180のdCT値を得た。図6において、縦座標はRNF180のdCt値またはΔCt値である。
【0322】
同様に、セプチン9CtからアクチンCtを減算してセプチン9のdCT値を得た。dCt値が低いほど、メチル化の程度が高くなる。
【0323】
図6から、健常者、表層、萎縮/腸上皮化生、胃癌I期、II期、III期、IV期の病状が重くなるのに伴い、RNF180のdCt値が低くなり、メチル化の程度が高くなることがわかる。
【0324】
上記実験結果は、Ct値またはdCt値を用いて健常者、胃炎および胃癌を等級付けできるだけでなく、Ct値またはdCt値を用いて胃炎をさらに等級付けでき、例えば、胃炎を軽度の胃炎(表層性を含む)および重度の胃炎(腸上皮化生および萎縮を含む)に等級付けし、かつCt値またはdCt値を用いて胃癌をさらに等級付けでき、例えば、胃癌を胃癌I期、II期、III期、IV期に等級付けできることをさらに証明する。
【0325】
実施例5:セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元(RS19)検出の、健常、表層、萎縮/腸上皮化生、胃癌および胃癌I期、II期、III期、IV期の陽性率。
【0326】
15例の健常者、31例の表層、6例の萎縮/腸上皮化生(3例の萎縮および3例の腸上皮化生を含む)、74例の胃癌(19例の胃癌I期、20例II期、22例III期、10例IV期を含む)の試料を得た。各試料におけるゲノムDNAを抽出した。前記DNAの抽出は、先行技術におけるあらゆる標準手段を用いて行ってもよく、具体的には、本実施例において、すべての試料DNAは、Epigenomics社のEPi proColon Plasma Quick Kitを用いて抽出した。
【0327】
次いで、前記ゲノムDNA試料を前処理し、5’位のメチル化していないシトシン塩基がウラシル、チミンに変換されるようにするか、またはハイブリダイゼーション挙動上、シトシンの別の塩基に用いない。本実施例においては、亜硫酸水素塩試薬処理によりこの前処理を実現した。亜硫酸水素塩DNAの修飾は、EPi proColon Plasma Quick Kitを用いて行った。
【0328】
次いで、上記前処理済の15例の健常者、31例の表層、6例の萎縮/腸上皮化生、74例の胃癌(19例の胃癌I期、20例のII期、22例のIII期、10例のIV期を含む)のゲノムDNA試料中に、上記第2セットのRNF180のプライマーおよびプローブを加え、RNF 180PCR試験を行い、セプチン9、β−アクチンのプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験、セプチン9PCR試験およびβ−アクチンPCR試験を多元的に検出した。セプチン9PCR試薬およびβ−アクチンPCR試薬は、Epigenomics社より購入した。亜硫酸水素塩により変換したDNAにおいてリアルタイムPCRを行った。
【0329】
本実験例において採用したPCR増幅条件は、次のとおりである。Life Technologies装置(7500Fast)でリアルタイムPCRを行った。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩により変換されたDNAテンプレート35ngおよび450nMプライマー、225nMプローブ、1UTaqポリメラーゼ、200umの各dNTP、4.5mMのMgCl2および2XPCR緩衝液により最終的な30ulの体積をなす。94℃を20分間保ち、プレサイクルで試料を増幅し、直後に62℃で5秒間の45サイクルのアニーリングを行い、55.5℃で35秒間アニーリングし、93℃で30秒間変性した。
【0330】
最後に、15例の健常者、31例の表層、6例の萎縮/腸上皮化生、74例の胃癌(19例の胃癌I期、20例のII期、22例のIII期、10例のIV期を含む)のゲノムDNA試料の、Setptin9遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。かつ、15例の健常者、31例の表層、6例の萎縮/腸上皮化生、74例の胃癌(19例の胃癌I期、20例のII期、22例のIII期、10例のIV期を含む)のゲノムDNA試料の、β−アクチンに対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。かつ、15例の健常者、31例の表層、6例の萎縮/腸上皮化生、74例の胃癌(19例の胃癌I期、20例のII期、22例のIII期、10例のIV期を含む)のゲノムDNA試料の、RNF180遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。β−アクチンCtを内部対照とした。RNF180Ctからβ−アクチンCtを減算してRNF180のdCT値を得た。dCt<10の場合、疾患陽性と認定した。
【0331】
図7Aは、健常者、表層、萎縮/腸上皮化生、胃癌のRS19陽性率比較を示す。縦座標は陽性率であり、横座標は、左から右へ、それぞれ健常者、表層、萎縮/腸上皮化生、胃癌である。図7Aから、健常者、表層、萎縮/腸上皮化生、胃癌の病状が重くなるのに伴い、陽性率が高くなることがわかる。
【0332】
図7Bは、胃癌I期、II期、III期、IV期のRS19陽性率比較を示す。縦座標は陽性率であり、横座標は、左から右へ、それぞれ胃癌I期、II期、III期、IV期であり、図7Bから、胃癌I期、II期、III期、IV期の病状が重くなるのに伴い、陽性率が高くなることがわかる。
【0333】
図7Cは、健常者、胃炎、胃癌のRS19のdCt平均値棒グラフを示す。図7Cは、実施例2の結果をさらに検証し、RNF180検出において、胃癌と胃炎のdCt値の間に非常に有意な差があり、健常者と胃炎のdCtの間に有意な差があり、健常者と胃癌のdCtの間に極めて非常に有意な差がある。この実験結果によって、RNF180のメチル化検出結果によって疾患の程度を等級付けすることができ、例えば、胃癌、胃炎、健常者を等級付けできることが再度検証された。
【0334】
かつ、RNF180メチル化は、腸上皮化生を併発した慢性胃炎において、重要な意義を有する。一般に、慢性萎縮性胃炎および腸上皮化生を併発した慢性胃炎は、より発癌しやすいと考えられており、病理生検で腸上皮化生を併発した慢性胃炎と確定診断された3例の試料において、血中のRNF180含有量がいずれも上昇し、Ct値が著しく下降し、平均はCt7.9であり、陽性率は100%(3/3)であったが、慢性萎縮性胃炎の陽性率は33%(1/3)であり、普通の慢性表層性胃炎の陽性率27%に近かった(表4を参照)。RNF180陽性の普通の慢性表層性胃炎患者において(27%)、生検を行った場合、腸上皮化生の割合が上昇する可能性があることが予想される。
【0335】
表4:3例の腸上皮化生および3例の慢性萎縮のRNF180のdCT値
【0336】
【表4】
【0337】
そのため、RNF180は、さらに胃炎のうち腸上皮化生がある胃炎と腸上皮化生がない普通の胃炎を区別して検出することができ、腸上皮化生があるRNF180は100%陽性であり、普通の胃炎は約27%陽性である。
【0338】
実施例6:セプチン9およびRNF180の結合による胃癌検出の特異性および感度の改善
【0339】
15例の健常者、37例の胃炎および74例の胃癌患者の試料を得た。各試料におけるゲノムDNAを抽出した。前記DNAの抽出は、先行技術におけるあらゆる標準手段を用いて行ってもよく、具体的には、本実施例において、すべての試料DNAは、Epigenomics社のEPi proColon Plasma Quick Kitを用いて抽出した。
【0340】
次いで、前記ゲノムDNA試料を前処理し、5’位のメチル化していないシトシン塩基がウラシル、チミンに変換されるようにするか、またはハイブリダイゼーション挙動上、シトシンの別の塩基に用いない。本実施例においては、亜硫酸水素塩試薬処理によりこの前処理を実現した。亜硫酸水素塩DNAの修飾は、EPi proColon Plasma Quick Kitを用いて行った。
【0341】
次いで、上記前処理済のゲノムDNA試料中に、上記第2セットのRNF180のプライマーおよびプローブを加え、RNF 180PCR試験を行い、セプチン9、β−アクチンのプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験、セプチン9PCR試験およびβ−アクチンPCR試験を多元的に検出した。セプチン9PCR試薬およびβ−アクチンPCR試薬は、Epigenomics社より購入した。亜硫酸水素塩により変換したDNAにおいてリアルタイムPCRを行った。
【0342】
本実験例において採用したPCR増幅条件は、次のとおりである。Life Technologies装置(7500Fast)でリアルタイムPCRを行った。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩により変換されたDNAテンプレート35ngおよび450nMプライマー、225nMプローブ、1UTaqポリメラーゼ、200umの各dNTP、4.5mMのMgCl2および2XPCR緩衝液により最終的な30ulの体積をなす。94℃を20分間保ち、プレサイクルで試料を増幅し、直後に62℃で5秒間の45サイクルのアニーリングを行い、55.5℃で35秒間アニーリングし、93℃で30秒間変性した。
【0343】
最後に、15例の健常者、37例の胃炎および74例の胃癌患者のゲノムDNA試料の、Setptin9遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。かつ、上記DNA試料の、β−アクチンに対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。かつ、上記DNA試料の、RNF180遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。アクチンCtを内部対照とした。RNF180Ct値からβ−アクチンCtを減算してRNF180のdCT値を得て、Setptin9Ct値からβ−アクチンCt値を減算してRNF180のdCT値を得た。
【0344】
年齢の増加に伴い、末梢血中でメチル化したRNF180遺伝子含有量が高くなる傾向を示し、年齢は横座標であり、RNF180のdCT値を縦座標として図8Aを得た。高齢者は、いずれも多少ともある程度の胃炎があり、末梢血中でメチル化したRNF180遺伝子含有量の上昇が年齢の要素によるものなのか、胃炎の要素によるものなのかを区別するのが難しい。これは、胃癌の検査の特異性および信頼性に大きな影響をもたらす。図8Aに示すように、高齢段階で、慢性胃炎(菱形)および胃癌(正方形)は一部が交わり、胃癌の検出に影響を及ぼす。
【0345】
Setptin9のdCT値を横座標とし、RNF180のdCT値を縦座標として図8Bを得た。図8Bに示すように、セプチン9のdCTの臨界値を14、RNF180のdCTの臨界値を10と選択する場合、左側のブロック内の点は、セプチン9の検出結果が陽性を呈し、かつRNF180の検出結果も陽性を呈することを表す。右側のブロックは、セプチン9の検出結果が陰性を呈し、かつRNF180の検出結果が陽性を呈することを表す。本実施例について、選択したセプチン9およびRNF180が同時に陽性であり、一部の胃癌の特異性を高めており、約39%(29/74)の胃癌が90%符合率(29/32)に達しており、RNF180に対する胃炎および年齢のマイナスの影響を有効排除している。そのため、セプチン9およびRNF180の2つのバイオマーカーを併用することにより、RNF180の特異性が高くないこと(年齢、胃炎)の胃癌診断に対するマイナスの影響を少なくし、胃癌検出の特異性を高め、胃癌検出の感度を増加させることができる。
【0346】
かつ、感度の面において、2例の胃癌は、RNF180が陰性であったが、セプチン9が陽性であり、セプチン9は感度を2.7%(2/74)増加させることができた。そのため、セプチン9およびRNF180の2つのバイオマーカーを1つに結合して検出を行う場合、胃癌検出の特異性および感度を改善することができる。
【0347】
上記内容を総合すると、年齢の増加に伴い、末梢血中でメチル化したRNF180遺伝子含有量が高くなる傾向を示すが、高齢者は、いずれも多少ともある程度の胃炎があり、末梢血中でメチル化したRNF180遺伝子含有量の上昇が年齢の要素によるものなのか、胃炎の要素によるものなのかを区別するのが難しい。これは、胃癌の検査の特異性および信頼性に大きな影響をもたらす。セプチン9遺伝子が年齢および慢性胃炎の影響を受ける要素は無視することができるため、セプチン9を用いてRNF180の胃癌に対する検出を確認することができる。
【0348】
実施例7:セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元(RS19)検出の健常、胃癌の感度および特異性。
【0349】
15例の健常者および74例の胃癌患者の試料を得た。各試料におけるゲノムDNAを抽出した。前記DNAの抽出は、先行技術におけるあらゆる標準手段を用いて行ってもよく、具体的には、本実施例において、すべての試料DNAは、Epigenomics社のEPi proColon Plasma Quick Kitを用いて抽出した。
【0350】
次いで、前記ゲノムDNA試料を前処理し、5’位のメチル化していないシトシン塩基がウラシル、チミンに変換されるようにするか、またはハイブリダイゼーション挙動上、シトシンの別の塩基に用いない。本実施例においては、亜硫酸水素塩試薬処理によりこの前処理を実現した。亜硫酸水素塩DNAの修飾は、EPi proColon Plasma Quick Kitを用いて行った。
【0351】
次いで、上記前処理済の15例の健常者および74例の胃癌患者のゲノムDNA試料中に、上記第2セットのRNF180のプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験を行い、セプチン9、β−アクチンのプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験、セプチン9PCR試験およびβ−アクチンPCR試験を多元的に検出した。セプチン9PCR試薬およびβ−アクチンPCR試薬は、Epigenomics社より購入した。亜硫酸水素塩により変換したDNAにおいてリアルタイムPCRを行った。
【0352】
本実験例において採用したPCR増幅条件は、次のとおりである。Life Technologies装置(7500Fast)でリアルタイムPCRを行った。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩により変換されたDNAテンプレート35ngおよび450nMプライマー、225nMプローブ、1UTaqポリメラーゼ、200umの各dNTP、4.5mMのMgCl2および2XPCR緩衝液により最終的な30ulの体積をなす。94℃を20分間保ち、プレサイクルで試料を増幅し、直後に62℃で5秒間の45サイクルのアニーリングを行い、55.5℃で35秒間アニーリングし、93℃で30秒間変性した。
【0353】
最後に、15例の健常者および74例の胃癌患者のゲノムDNA試料の、Setptin9遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。かつ、15例の健常者および74例の胃癌患者のゲノムDNA試料の、β−アクチンに対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。かつ、15例の健常者および74例の胃癌患者のゲノムDNA試料の、RNF180遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。アクチンCtを内部対照とした。RNF180Ctからβ−アクチンCtを減算してRNF180のdCT値を得た(図9に示すとおり)。図9は、臨界値がそれぞれ10および15であるときの胃癌検出の感度および特異性、ならびにROC曲線をさらに示す。
【0354】
そのため、図9の表が示すように、dCut値を10と選ぶ場合、感度は74%であり、特異性は87%であるが、dCut値を15と選ぶ場合、感度は84%であり、特異性は73%である。そのため、dCut値、またはCut値は、選択した感度および特異性により変化することができる。感度および特異性の実際の要求を総合的に考慮し、dCut値を10とすることが好ましい。
【0355】
実施例8:セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元(RS19)検出の健常、胃炎(慢性、表層性、潰瘍性)の感度および特異性。
【0356】
15例の健常者および33例の胃炎(慢性、表層性、潰瘍性)の試料を得た。各試料におけるゲノムDNAを抽出した。前記DNAの抽出は、先行技術におけるあらゆる標準手段を用いて行ってもよく、具体的には、本実施例において、すべての試料DNAは、Epigenomics社のEPi proColon Plasma Quick Kitを用いて抽出した。
【0357】
次いで、前記ゲノムDNA試料を前処理し、5’位のメチル化していないシトシン塩基がウラシル、チミンに変換されるようにするか、またはハイブリダイゼーション挙動上、シトシンの別の塩基に用いない。本実施例においては、亜硫酸水素塩試薬処理によりこの前処理を実現した。亜硫酸水素塩DNAの修飾は、EPi proColon Plasma Quick Kitを用いて行った。
【0358】
次いで、上記前処理済の15例の健常者および33例の胃炎(慢性、表層性、潰瘍性)者のゲノムDNA試料中に、上記第2セットのRNF180のプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験を行い、セプチン9、β−アクチンのプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験、セプチン9PCR試験およびβ−アクチンPCR試験を多元的に検出した。セプチン9PCR試薬およびβ−アクチンPCR試薬は、Epigenomics社より購入した。亜硫酸水素塩により変換したDNAにおいてリアルタイムPCRを行った。
【0359】
本実験例において採用したPCR増幅条件は、次のとおりである。Life Technologies装置(7500Fast)でリアルタイムPCRを行った。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩により変換されたDNAテンプレート35ngおよび450nMプライマー、225nMプローブ、1UTaqポリメラーゼ、200umの各dNTP、4.5mMのMgCl2および2XPCR緩衝液により最終的な30ulの体積をなす。94℃を20分間保ち、プレサイクルで試料を増幅し、直後に62℃で5秒間の45サイクルのアニーリングを行い、55.5℃で35秒間アニーリングし、93℃で30秒間変性した。
【0360】
最後に、15例の健常者および33例の胃炎(慢性、表層性、潰瘍性)のゲノムDNA試料の、Setptin9遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。かつ、15例の健常者および33例の胃炎(慢性、表層性、潰瘍性)のゲノムDNA試料の、β−アクチンに対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。かつ、15例の健常者および33例の胃炎(慢性、表層性、潰瘍性)のゲノムDNA試料の、RNF180遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。β−アクチンCtを内部対照とした。RNF180Ctからβ−アクチンCtを減算してRNF180のdCT値を得た(図10に示すとおり)。図10は、臨界値がそれぞれ10、15、20であるときの胃炎(慢性、表層性、潰瘍性)検出の感度および特異性、ならびにROC曲線をさらに示す。
【0361】
そのため、図10の表が示すように、dCut値を10と選ぶ場合、感度は30%であり、特異性は87%であるが、dCut値を15と選ぶ場合、感度は64%であり、特異性は80%であり、dCut値を20と選ぶ場合、感度は73%であり、特異性は73%である。そのため、dCut値、またはCut値は、選択した感度および特異性により変化することができる。感度および特異性の実際の要求を総合的に考慮し、dCut値を15とすることが好ましい。
【0362】
実施例9:セプチン9およびRNF180のメチル化DNA多元(RS19)検出の健常、胃炎(すべて)の感度および特異性。
【0363】
15例の健常者および37例の胃炎(すべて)の試料を得た。各試料におけるゲノムDNAを抽出した。前記DNAの抽出は、先行技術におけるあらゆる標準手段を用いて行ってもよく、具体的には、本実施例において、すべての試料DNAは、Epigenomics社のEPi proColon Plasma Quick Kitを用いて抽出した。
【0364】
次いで、前記ゲノムDNA試料を前処理し、5’位のメチル化していないシトシン塩基がウラシル、チミンに変換されるようにするか、またはハイブリダイゼーション挙動上、シトシンの別の塩基に用いない。本実施例においては、亜硫酸水素塩試薬処理によりこの前処理を実現した。亜硫酸水素塩DNAの修飾は、EPi proColon Plasma Quick Kitを用いて行った。
【0365】
次いで、上記前処理済の15例の健常者および37例の胃炎(すべて)のゲノムDNA試料中に、上記第2セットのRNF180のプライマーおよびプローブを加え、RNF 180PCR試験を行い、セプチン9、β−アクチンのプライマーおよびプローブを加え、RNF180PCR試験、セプチン9PCR試験およびβ−アクチンPCR試験を多元的に検出した。セプチン9PCR試薬およびβ−アクチンPCR試薬は、Epigenomics社より購入した。亜硫酸水素塩により変換したDNAにおいてリアルタイムPCRを行った。
【0366】
本実験例において採用したPCR増幅条件は、次のとおりである。Life Technologies装置(7500Fast)でリアルタイムPCRを行った。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩により変換されたDNAテンプレート35ngおよび450nMプライマー、225nMプローブ、1UTaqポリメラーゼ、200umの各dNTP、4.5mMのMgCl2および2XPCR緩衝液により最終的な30ulの体積をなす。94℃を20分間保ち、プレサイクルで試料を増幅し、直後に62℃で5秒間の45サイクルのアニーリングを行い、55.5℃で35秒間アニーリングし、93℃で30秒間変性した。
【0367】
最後に、15例の健常者および37例の胃炎(すべて)のゲノムDNA試料の、Setptin9遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。かつ、15例の健常者および37例の胃炎(すべて)のゲノムDNA試料の、β−アクチンに対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。かつ、15例の健常者および37例の胃炎(すべて)のゲノムDNA試料の、RNF180遺伝子に対するリアルタイムPCRのCt値を測定した。β−アクチンCtを内部対照とした。RNF180Ctからβ−アクチンCtを減算してRNF180のdCT値を得た(図11に示すとおり)。図11は、臨界値がそれぞれ10、15、20であるときの胃炎(すべて)検出の感度および特異性、ならびにROC曲線をさらに示す。
【0368】
そのため、図11の表が示すように、dCut値を10と選ぶ場合、感度は32%であり、特異性は87%であるが、dCut値を15と選ぶ場合、感度は62%であり、特異性は80%であり、dCut値を20と選ぶ場合、感度は70%であり、特異性は73%である。そのため、dCut値、またはCut値は、選択した感度および特異性により変化することができる。感度および特異性の実際の要求を総合的に考慮し、dCut値を15とすることが好ましい。
【0369】
上記内容を総合すると、実験を介して、胃炎および胃癌におけるRNF180遺伝子のメチル化の程度に比較的大きな差異が存在し、RNF180は、健常者群、慢性表層性胃炎(一般慢性胃炎および潰瘍性胃炎を含む)群、慢性萎縮性胃炎(慢性胃炎に腸上皮化生を併発)群、胃癌群IからIV期における含有量が徐々に増加し、Ct値が徐々に低下することがわかった。陽性率も、同様の順序で健常者群から胃癌群まで徐々に上昇するため、本願は、試料中のRNF180遺伝子のメチル化の程度を測定することにより胃癌および胃炎を等級付けする方法を提供し、これにより、非侵襲的で、迅速な胃癌および胃炎のスクリーニング方法を提供する。
【0370】
かつ、年齢の増加に伴い、末梢血中でメチル化したRNF180遺伝子含有量が高くなる傾向を示すが、高齢者は、いずれも多少ともある程度の胃炎があるため、末梢血中でメチル化したRNF180遺伝子含有量の上昇が年齢の要素によるものなのか、胃炎の要素によるものなのかを区別するのが難しく、胃炎と胃癌の検査の特異性および信頼性に大きな影響をもたらしている。そのため、この要素を考慮し、検査中にセプチン9を同時に加えるため、セプチン9遺伝子で年齢および胃炎の影響の要素を無視することができ、セプチン9を用いて胃癌の検出を確認することができる。具体的には、約40%の胃癌は、セプチン9およびRNF180で同時に陽性であり、両者で同時に陽性であることを判断基準とし、90%の特異性を達成することができる。かつ、いくつかの具体的な実施態様により、一部の胃癌はRNF180が陰性であるが、セプチン9が陽性であり、セプチン9は、この一部の胃癌を検出することができ、感度を約3%増加させることができる。そのため、セプチン9とRNF180の2つのバイオマーカーを併用して胃炎および胃癌を等級付けすることにより、感度および特異性をいずれも高めることができる。そのため、セプチン9およびRNF180の2つのバイオマーカーを1つに結合して検出を行う場合、胃癌検出の特異性および感度を改善することができる。
【0371】
最後に、リアルタイムPCRを用いて血漿試料中のDNAを解析する方法は、セプチン9およびRNF180の2つのバイオマーカーの同じ時間での2チャンネル検出を実現するのに便利であり、かつリアルタイムPCRのサイクル閾値(Ct)値に基づき、試料が陽性を呈するか否かを迅速かつ敏捷に判断することができ、非侵襲性の迅速な癌および炎症の等級付け方法を提供する。
【0372】
明細書において記載されているすべての発表文献および特許出願は、本発明の関連分野内の技術要員のレベルであることを表明する。すべての発表文献および特許出願は、引用の方式により本文において結合され、各発表文献および特許出願は、具体的に、単独に明記されているように、引用の方式により本文において同様に結合される。これらの発表文献および特許出願を記載していることのみによって、これらが本願に対する先行技術文献であると理解することはできない。
【0373】
ここで本発明の各側面および実施例を公開しているが、その他の側面および実施例も、当業者にとって自明なものである。ここで公開している各側面および実施例は、説明の目的のために用いられるにすぎず、制限の目的のためのものではない。本発明の保護範囲および主旨は、特許請求の範囲によってのみ確定される。
【0374】
別段の明確な指摘がある場合を除き、本文において用いる用語および略称、ならびにその変形は、オープン形式のものであり、制限的なものではないと解釈すべきである。一部の実例において、「1つまたは複数」、「少なくとも」、「が、これらに限定されない」のような拡張的な語彙および略称またはその他の類似の用語の出現は、こうした拡張的な用語の例における意図または狭める必要がない可能性があると理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]