(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体が供給される供給口および液体を噴出させる噴出口を有する本体と、前記本体の内部に配置されると共に前記供給口と前記噴出口との間で該供給口からの液体を複数の液流成分に分流させる分流部材とを含む噴霧器において、
前記本体は、前記供給口に連通した供給路を有し、
前記分流部材は、中心軸に沿って延びる貫通孔を有する円筒状部材であり、前記貫通孔の軸心と前記供給路の軸心とがずれた状態で前記本体の内部に配置され、
前記本体の内周面には、前記分流部材の外周面に沿って液体を流通させる複数の液体通路が形成されている噴霧器。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
図1は、本開示の衛生洗浄装置10が取り付けられた便器1を示す斜視図である。同図に示す便器1は、洋式腰掛便器であり、衛生洗浄装置10は、当該便器1の上面に固定されている。衛生洗浄装置10は、ケーシング11と、当該ケーシング11により回動自在に支持された便座12と、当該便座12と同様にケーシング11により回動自在に支持された便蓋13と、操作パネル14とを含む。
【0018】
衛生洗浄装置10のケーシング11は、便器1の上面に固定される樹脂製のベースプレート(ベース部材)110と、当該ベースプレート110に着脱自在に取り付けられる樹脂製のカバー119とを含む。ベースプレート110は、
図2に示すように、便器1の上面に固定される平坦部111と、当該平坦部111の一端から便器1の便鉢部2に向けて傾斜するように延出された傾斜部112を有する。ケーシング11(ベースプレート110)が便器1に固定された際、傾斜部112は、図示するように便鉢部2内に入り込む。
【0019】
ケーシング11(ベースプレート110およびカバー119)の内部には、
図3に示すように、それぞれ人体の局部に水(温水を含む)を噴出する人体洗浄ノズルとしてのおしり洗浄ノズル15およびビデノズル16が配置されている。おしり洗浄ノズル15は、
図4および
図5に示すように、ケーシング11に対して進退移動可能なノズル本体15nと、当該ノズル本体15nを進退移動自在に収納するシリンダ部15sとを含む。シリンダ部15sは、モータやラックアンドピニオン機構等を含む図示しないアクチュエータにより予め定められた範囲内でケーシング11に対して軸方向に進退移動させられる。また、ノズル本体15nは、おしり洗浄ノズル15に供給される水の圧力または図示しないスプリングの付勢力により収納位置と便鉢部2側の洗浄位置との間を軸方向に進退移動させられる。
【0020】
ビデノズル16は、ケーシング11に対して進退移動可能なノズル本体16nと、当該ノズル本体16nを進退移動自在に収納するシリンダ部16sとを含む。シリンダ部16sは、上記アクチュエータにより予め定められた範囲内でケーシング11に対して軸方向に進退移動させられる。また、ノズル本体16nは、ビデノズル16に供給される水の圧力または図示しないスプリングの付勢力により収納位置と便鉢部2側の洗浄位置との間を軸方向に進退移動させられる。
【0021】
更に、ケーシング11の内部には、分岐水栓や給水ホースを介して水道配管(水源)に接続されたバルブユニットや、当該バルブユニットに接続された水タンク、おしり洗浄ノズル15、ビデノズル16および水タンクに接続されたロータリーバルブ(水勢調整切替バルブ)等(何れも図示省略)が収容されている。バルブユニットは、ストレーナ、逆止弁、定流量弁、止水電磁弁、リリーフ弁等を含む。水タンクは、水道配管(水源)からの水を加熱するヒータや温度センサを有し、ヒータにより加熱された温水を貯留可能である。ロータリーバルブは、水タンクからの水の供給先をおしり洗浄ノズル15とビデノズル16とで選択的に切り替えると共に、ノズル15,16に対する水の供給量を調整することができる。なお、衛生洗浄装置10には、いわゆる瞬間給湯が可能となるように、水タンクの代わりに加熱ヒータを有する熱交換器が設けられてもよい。
【0022】
また、ケーシング11の内部には、衛生洗浄装置10を制御する図示しない制御装置が収容されている。制御装置は、操作パネル14や着座センサ19(
図1参照)、水タンクの温度センサ等からの信号等に基づいて、バルブユニット、水タンクのヒータ、おしり洗浄ノズル15およびビデノズル16のアクチュエータ、ロータリーバルブ等を制御する。
【0023】
図2および
図3に示すように、衛生洗浄装置10のケーシング11には、可動式のシャッター(飛散抑制部材)17が設けられている。シャッター17は、
図3に示すように、便座12の開口部の幅と同程度の幅を有する略台形状の板状体であり、シャッター17の
図3における上端部は、ヒンジ17hを介してケーシング11のカバー119により回動自在に支持されている。なお、本実施形態のシャッター17は、平板状に形成されるが、円弧状の断面形状を有するものであってもよい。また、シャッター17とケーシング11のカバー119との間には、図示しないバネが介設されており、シャッター17は、当該バネにより
図4に示す閉位置側に付勢される。閉位置において、シャッター17は、おしり洗浄ノズル15の先端部とビデノズル16の先端部とを覆う。これにより、おしり洗浄ノズル15やビデノズル16、更にはその周辺部の汚れを抑制したり、両者を隠して美観を維持したりすることが可能となる。
【0024】
更に、シャッター17には、シリンダ部15sまたは16sの軸方向に沿った直線運動を当該シャッター17の回動運動に変換する運動変換機構としてのリンク機構18が連結されている。リンク機構18は、ケーシング11(ベースプレート110またはカバー119)に形成されたガイド部11gによりガイドされるスライダ180と、ヒンジ17hから遊端側に離間した位置でシャッター17にピン結合される第1リンク181と、スライダ180にピン結合されると共に第1リンク181にピン結合される第2リンク182とを含む。また、おしり洗浄ノズル15のシリンダ部15sおよびビデノズル16のシリンダ部16sの外周面には、リンク機構18のスライダ180と当接可能となるように押圧部15pまたは16pが設けられている。
【0025】
シリンダ部15s,16sの押圧部15p,16pは、
図4に示すように、シャッター17が閉位置にある際に、リンク機構18のスライダ180から離間しており、当該スライダ180と当接することはない。これに対して、おしり洗浄ノズル15およびビデノズル16のシリンダ部15s,16sの何れか一方が便鉢部2に向けて移動すると、
図5に示すように、押圧部15pまたは16pが対応するリンク機構18のスライダ180に当接して当該スライダ180を押圧する。スライダ180は、押圧部15pまたは16pにより押圧されることでシャッター17に向けて移動し、当該スライダ180の移動に伴って第1および第2リンク181,182がシャッター17を押圧するように移動する。これにより、シャッター17は、バネの付勢力に抗してヒンジ17hを支点として上方に跳ね上がるように回動する。
【0026】
シリンダ部15sまたは16sは、リンク機構18のスライダ180がガイド部11gの一端(
図5における左端)に当接するタイミングで停止させられ、シャッター17は、その一部が停止したシリンダ部15sまたは16sにより支持されることで開位置に維持される。これにより、おしり洗浄ノズル15のノズル本体15nやビデノズル16のノズル本体16nを便鉢部2側の洗浄位置まで移動させることが可能となる。また、シリンダ部15sまたは16sが平坦部111側に向けて移動すると、シャッター17は、シリンダ部15sまたは16sよって支持されなくなり、図示しないバネにより付勢されて閉位置へと戻される。
【0027】
更に、衛生洗浄装置10は、便器1の便鉢部2の表面に水を噴出する噴霧器20を含む。噴霧器20は、水の噴霧により便鉢部2の表面を平滑にして汚物が付着しにくくすると共に、汚物と便鉢部2表面との間に水膜を介在させて便器洗浄に際して汚物を便鉢部2の表面から離脱させやすくするために用いられるものである。噴霧器20は、
図2等に示すように、ケーシング11のベースプレート110に形成された上述の傾斜部112に固定される。
【0028】
図6および
図7は、噴霧器20を示す分解斜視図であり、
図8は、噴霧器20を示す側面図であり、
図9および
図10は、噴霧器20を示す断面図である。これらの図面に示すように、噴霧器20は、本体21と、当該本体21の内部に配置される分流部材22とを含む。本体21は、何れも樹脂により形成された第1筒状体211および第2筒状体212を互いに接合することにより構成される。
【0029】
第1筒状体211は、
図6および
図7に示すように、一端が解放された有底円筒状の第1大径部213と、第1大径部213の端面から第1筒状体211の軸方向に延出された当該第1大径部213よりも小径の第1小径部215とを有する。第1大径部213の内部には、第2筒状体212を位置決めするための位置決め突部213aが当該第1大径部213の軸方向に延在するように形成されている。また、第1大径部213の外周面には、ベースプレート110の傾斜部112に当接して当該傾斜部112に対する噴霧器20のガタつきを抑制するためのガタ抑制突部213bが当該第1大径部213の軸方向に延在するように形成されている。
【0030】
第1小径部215は、いわゆるタケノコ継手状に形成されており、
図9に示すように、当該第1小径部215の軸方向に延在すると共に、その遊端部に形成された噴霧器20の供給口20iおよび第1大径部213の内部に連通する供給路215pを有する。第1小径部215すなわち供給口20iは、上述のロータリーバルブの下流側に設置された図示しない分岐弁を介して当該ロータリーバルブに接続される。これにより、噴霧器20(供給口20i)には、ロータリーバルブを介して水タンク(あるいは、加熱ヒータを有する熱交換器)からの水が供給されることになる。ただし、第1小径部215(供給口20i)は、開閉弁等を介して水道配管に接続されてもよい。
【0031】
更に、第1筒状体211は、
図6および
図7に示すように、第1大径部213と一体に成形された一対のアーム部217を含む。各アーム部217は、第1大径部213の軸方向に延在するように当該第1大径部213の外周面から延出されている。各アーム部217の基端部217aは、第1大径部213の外周面から径方向外側に向けて延在し、各アーム部217の遊端部217bと第1大径部213の外周面との間には間隔が形成される。これにより、各アーム部217は、遊端部217bが第1大径部213の外周面に近接するように弾性変形可能となる。
【0032】
本実施形態において、一対のアーム部217は、遊端部217bが噴霧器20の噴出口20o側に位置するように当該噴霧器20の幅方向における中心面すなわち第1大径部213および第1小径部215(供給路215p)の軸心とガタ抑制突部213bの幅方向における中心線とを含む平面に関して対称に形成されている。また、各アーム部217の遊端部217bには、第1大径部213の外周面から離間する方向に突出するフック部217fが形成されている。フック部217fは、
図8に示すように、アーム部217の基端部217a側で遊端部217b側から基端部217a側に向かうにつれてガタ抑制突部213bすなわち傾斜部112(ベースプレート110)から離間するように傾斜した平坦な傾斜面217sを有する。また、フック部217fの先端部は、
図6等に示すように先細に形成されている。
【0033】
第2筒状体212は、
図6および
図7に示すように、噴出口20oが形成された第2大径部214と、第2大径部214の噴出口20o側とは反対側の端面から第2筒状体212の軸方向に延出された当該第2大径部214よりも小径の第2小径部216とを有する。第2大径部214は、第1大径部213と概ね同一の外径を有する短尺の円筒状に形成されている。
図8に示すように、第2大径部214の噴出口20oを包囲する端面から第2小径部216側の端面までの長さL1は、上記第1大径部213の第2筒状体212(開放端)側の端面から供給口20i側の端面までの長さL2よりも短く定められている。更に、第2大径部214の第2小径部216側の端面には、略三角形状の断面形状を有する環状の突部である溶着リブ214Lが形成されている。
【0034】
第2小径部216は、第1筒状体211の第1大径部213の内径よりも僅かに小さい外径を有し、当該第1大径部213の内部に挿入される。このように、第2小径部216を第1大径部213よりも僅かに小径に形成することで、第1筒状体211に対する第2筒状体212の組付性を向上させることができる。ただし、第2小径部216を第1大径部213よりも僅かに大径に形成して当該第1大径部213の内部に圧入してもよい。また、第2小径部216は、
図9および
図10に示すように、第1大径部213の内部空間の軸長よりも短い軸長を有する円筒状に形成されている。更に、第2小径部216の外周面には、第1大径部213の位置決め突部213aが嵌まり込む位置決め凹部216a(
図9および
図11参照)が形成されている。
【0035】
図9および
図10に示すように、第2筒状体212(第2大径部214および第2小径部216)の内部には、分流部材22が配置される収容部218aと、当該収容部218aと噴出口20oとを連通する連通路218bとが形成されている。収容部218aは、円形の断面形状を有しており、主として第2小径部216により画成されて噴出口20oと同軸に延在する。連通路218bは、収容部218aから噴出口20oに向かうにつれて内径が漸減するように形成されて噴出口20oおよび収容部218aと同軸に延在する。また、噴出口20oは、連通路218bから離間するにつれて内径が漸増するように形成されている。
【0036】
本実施形態において、収容部218a、連通路218bおよび噴出口20oは、
図9および
図10に示すように、第2筒状体212の第2小径部216が第1筒状体211の第1大径部213内に挿入された際に、それぞれの軸心が第1筒状体211(第1小径部215)の供給路215pの軸心から上記中心面上で離間する(ずれる)ように第2筒状体212に形成されている。更に、収容部218aを画成する第2大径部214および第2小径部216の内周面には、
図7および
図10に示すように、当該内周面から径方向外側に窪む複数の液体通路218pが形成されている。本実施形態では、第2筒状体212に対して、円弧状の断面形状を有する2つの液体通路218pが噴霧器20の幅方向における上記中心面に関して対称に形成されており、各液体通路218pは、凹円柱面と互いに平行に延在する平面とにより画成される。
【0037】
分流部材22は、中心軸に沿って延びる円形の断面形状を有する貫通孔(液体通路)22pを有する樹脂製の円筒状部材であり、第2筒状体212の収容部218aの内径よりも僅かに小さい外径を有する。また、分流部材22の外周面には、
図6に示すように、位置決め突部220と、複数(少なくとも3個、本実施形態では、例えば4個)の圧入リブが形成されている。分流部材22は、位置決め突部220が第2筒状体212の第2小径部216に形成された位置決め凹部216bに嵌まり込み、かつ複数の圧入リブが収容部218aの内周面に圧入されるように第2筒状体212内に配置される。これにより、分流部材22は、貫通孔22pの軸心と供給路215pの軸心とが上記中心面上でずれた(離間した)状態で本体21(第1および第2筒状体211,212)の内部に配置されることになる。
【0038】
更に、分流部材22は、噴出口20o側とは反対側の端面から軸方向に突出すると共に径方向において互いに対向する2つの突出部221を有する。本実施形態において、各突出部221の外周面は、分流部材22の外周面と同一の曲率半径を有する円柱面であり、各突出部221の内面および端面は、平坦面である。分流部材22が本体21(第2筒状体212)の収容部218aに配置された際、2つの突出部221のうちの図中上側に位置する突出部221は、
図9に示すように、第1筒状体211の供給路215pと軸方向に間隔をおいて対向し、各突出部221の内面は、
図11に示すように、2つの液体通路218pを画成する平面と軸方向からみて平行に延在する。
【0039】
また、分流部材22は、貫通孔22pに連通する短尺円筒状の旋回流形成部222を有する。旋回流形成部222は、
図6に示すように、分流部材22の外周面よりも小径の円筒状に形成されており、当該分流部材22の噴出口20o側の端面から軸方向に突出する。分流部材22が本体21(第2筒状体212)の収容部218aに配置された際、旋回流形成部222の外周面と収容部218aの内周面との間には、第2筒状体212の各液体通路218pに連通する環状の空間が画成され、旋回流形成部222の内部は、連通路218bを介して噴出口20oに連通する。
【0040】
旋回流形成部222には、
図6、
図9および
図11に示すように、それぞれ当該旋回流形成部222の内周面の接線方向に延在する2つの液体流入口223が形成されている。本実施形態において、2つの液体流入口223は、旋回流形成部222の中心(噴出口20o等の軸心)に対して点対称の位置に形成されている。また、本実施形態において、各液体流入口223は、長方形状の断面形状を有し、各液体流入口223を画成する平面には、
図11からわかるように旋回流形成部222の内周面に接する平面が含まれる。分流部材22が本体21(第2筒状体212)の収容部218aに配置された際、各液体流入口223は、
図11に示すように、第2筒状体212の対応する液体通路218pを画成する平面よりも軸方向からみて僅かに噴出口20o側に位置する。これにより、各液体流入口223すなわち旋回流形成部222の内部が周囲の環状の空間を介して対応する(近接した)液体通路218pに連通する。
【0041】
上述の第1および第2筒状体211,212並びに分流部材22を含む噴霧器20の組立に際して、分流部材22は、位置決め突部220が第2小径部216の位置決め凹部216bに嵌まり込み、かつ複数の圧入リブが収容部218aの内周面に圧入されるように第2筒状体212の収容部218a内に配置される。これにより、2つの液体通路218pが2つの突出部221間の空間の両側に位置すると共に、旋回流形成部222の液体流入口223が対応する液体通路218pに連通するように分流部材22を第2筒状体212(本体21)に位置決めすることができる。また、分流部材22が組み付けられた第2小径部216は、第2大径部214の溶着リブ214Lが第1筒状体211の第1大径部213の端面に当接すると共に位置決め凹部216aに位置決め突部213aが嵌まり込むように第1大径部213の内部に挿入される。そして、第2大径部214の噴出口20oを包囲する端面には、第2筒状体212を第1筒状体211に対して押圧した状態で、図示しない超音波発生装置からの超音波が印加される。
【0042】
これにより、環状の溶着リブ214Lの先端部が溶融することで第2大径部214すなわち第2筒状体212が第1大径部213すなわち第1筒状体211に液密に接合されることになる。従って、噴霧器20では、ボルト等の締結部材やシール部材を用いることなく第1および第2筒状体211,212を液密に接合すると共に噴霧器20全体の小型化を図ることが可能となる。また、噴霧器20では、第2大径部214の両端面間の長さL1が第1大径部213の端面間の長さL2よりも短く定められている。これにより、第2大径部214の噴出口20o側の端面から超音波を印加することで、溶着リブ214Lを第1筒状体211の第1大径部213の端面に良好に溶着させることが可能となる。
【0043】
図12および
図13は、噴霧器20がベースプレート110の傾斜部112に取り付けられた状態を示す部分断面図である。これらの図面に示すように、ベースプレート110の傾斜部112には、噴霧器20が搭載される搭載部113と、噴霧器20の噴出口20oを露出させる開口を有する端壁部114と、噴霧器20の対応するアーム部217と係合可能な一対の係合部115とが設けられている。搭載部113は、噴霧器20の第1および第2大径部213,214の外周面に沿った円弧状の断面形状を有するように形成されており、その表面は、噴霧器20の第1筒状体211(第1大径部213)に形成されたガタ抑制突部213bと当接する。
【0044】
また、各係合部115は、噴霧器20のアーム部217を挿通可能な凹部115aと、フック部217fの傾斜面217sと当接するように傾斜した平坦な支持面115sとを有する。本実施形態において、各係合部115は、略直角三角形状の側面形状を有し、支持面115sが端壁部114側すなわち便鉢部2側に位置すると共に凹部115a同士が搭載部113を介して互いに対向するように当該搭載部113の対応する側縁部付近から平坦部111(図中上側)側に延出されている。また、各係合部115の支持面115sと傾斜部112の延在方向とのなす角度αは、ベースプレート110の平坦部111の延在方向と直交する平面P1(
図12参照)と傾斜部112の延在方向とのなす角度β、およびアーム部217の傾斜面217sの傾斜角度γ(傾斜面217sと第1大径部213の軸心とのなす角度、
図8参照)と同一に定められている。更に、互いに対向する凹部115aの内側面115i同士の間隔は、一対のアーム部217のフック部217fよりも基端部217a側の部分同士の幅よりも若干短く定められている。
【0045】
上述のような一対の係合部115を含む傾斜部112に対する噴霧器20の取り付けに際しては、噴霧器20の第1小径部215(供給口20i)に図示しないホース等を接続した上で、ガタ抑制突部213bを搭載部113の表面に当接させながら、
図14に示すように、平坦部111側から端壁部114側に向けて噴霧器20を一対の係合部115間に押し込む。噴霧器20を一対の係合部115間に押し込んでいくと、各アーム部217は、遊端部217b(フック部217f)側が第1大径部213等の外周面に近接するように弾性変形しながら対応する係合部115の凹部115aを通過する。そして、各アーム部217のフック部217fが凹部115aよりも端壁部114側に達すると、各アーム部217のフック部217fよりも基端部217a側の部分が当該アーム部217の弾性により対応する凹部115aの内側面115iに押し付けられる。更に、各フック部217fの傾斜面217sは、対応する係合部115の支持面115sに当接する。
【0046】
このように、各アーム部217を遊端部217b(フック部217f)が外周面に近接するように弾性変形させて対応する係合部115の凹部115aに差し込み、各アーム部217を凹部115aに対して弾性的に嵌め込むことで、締結部材を用いることなく噴霧器20をスナップフィットによりベースプレート110の傾斜部112に固定することができる。また、各アーム部217のフック部217fに形成された傾斜面217sを対応する係合部115の支持面115sに当接させることで、アーム部217の延在方向と直交する方向において凹部115aとアーム部217との間に多少のガタが存在していても噴霧器20の回転を良好に規制することが可能となる。この結果、設置スペースの増加を抑制しつつ噴霧器20をベースプレート110の傾斜部112に適正に固定することができる。
【0047】
続いて、上述のように構成された噴霧器20を含む衛生洗浄装置10の噴霧器20に関連した動作について説明する。
【0048】
衛生洗浄装置10の図示しない制御装置は、着座センサ19からの信号と、便座12の回動ヒンジ部に連動してオンする着座スイッチ(図示省略)からの信号とに基づいて使用者が便器1(便座12)に着座したと判定すると、シリンダ部15sおよび16sの何れか一方を便鉢部2側に移動させるように上述のアクチュエータを制御する。シリンダ部15sおよび16sの何れか一方が便鉢部2に向けて移動すると、押圧部15pまたは16pがリンク機構18のスライダ180を押圧し、当該スライダ180は、シャッター17に向けて移動する。これにより、スライダ180の移動に伴って第1および第2リンク181,182がシャッター17を押圧するように移動し、シャッター17は、ヒンジ17hを支点として上方に跳ね上がるように回動する。更に、制御装置は、リンク機構18のスライダ180がガイド部11gの一端に当接するタイミングでシリンダ部15sまたは16sを停止させる。これにより、シャッター17は、その一部がシリンダ部15sまたは16sにより支持されて開位置に維持される。
【0049】
次いで、衛生洗浄装置10の制御装置は、噴霧器20の供給口20iに水タンク(あるいは、加熱ヒータを有する熱交換器)から水が供給されるようにロータリーバルブを制御する。噴霧器20の供給口20iに水が供給されると、供給された水は、噴霧器20の供給路215p内を進行し、第1大径部213の内部に流入する。第1大径部213の内部に流入した水の一部は、分流部材22の貫通孔22p内に流入して噴出口20oに向けて直進する。また、第1大径部213の内部に流入した水の一部は、第2筒状体212に形成された2つの液体通路218p内に流入し、分流部材22の外周面に沿って旋回流形成部222の外周面と収容部218aの内周面との間の環状の空間に向けて直進する。
【0050】
ここで、本実施形態の噴霧器20では、分流部材22の外周面に液体通路を形成する代わりに、本体21を構成する第2筒状体212の内周面に、2つの液体通路218pが形成されている。これにより、貫通孔22pおよび2つの液体通路218pの断面積を適正に設定して供給口20iと噴出口20oとの間で分流部材22により供給口20iからの水を複数の水流成分に適正に分流させると共に、分流部材22の外周面に複数の液体通路を形成する場合に比べて分流部材22を容易に小径化することが可能となる。
【0051】
更に、噴霧器20において、分流部材22は、貫通孔22pの軸心と供給路215pの軸心とがずれた状態で本体21の内部に配置され、分流部材22には、供給路215pと間隔をおいて対向するように当該供給路215p側に突出する突出部221が形成されている。これにより、噴霧器20では、供給路215pから流出した水を当該供給路215pに対向する突出部221に衝突させて分流部材22の貫通孔22pと2つの液体通路218pとにより適正に分配すると共に、2つの液体通路218pに流入する水の流量を適正化することができる。
【0052】
また、各液体通路218pを流通した水は、上記環状の空間から液体流入口223を介して旋回流形成部222の内部に流入する。各液体流入口223は、上述のように、旋回流形成部222の内周面の接線方向に延在しており、分流部材22は、液体流入口223が対応する液体通路218pに連通するように第2筒状体212(本体21)に位置決めされている。従って、噴霧器20では、旋回流形成部222内で旋回流を効率よく形成すると共に、旋回する水を貫通孔22pからの水により押し出して噴出口20oから噴出させることができる。従って、シャッター17が開位置に維持された状態で、噴霧器20の噴出口20oから水を旋回させながら螺旋状に噴出させて便鉢部2の表面のより広い範囲に行き渡らせることが可能となる。
【0053】
上述のように、衛生洗浄装置10では、可動式の飛散抑制部材としてのシャッター17を閉位置から開位置まで回動させた状態で噴霧器20から便器1の便鉢部2の表面に水を噴出させることができる。これにより、使用者が便器1に着座している状態で噴霧器20から便鉢部2に水が噴出されても、噴出された水(水滴)が便器1の上面側に飛散するのを比較的幅の広いシャッター17によって抑制することが可能となり(
図2参照)、水滴が飛散して使用者の臀部や脚部に付着するのを良好に抑制することができる。そして、噴霧器20から便鉢部2に水を噴出させることで、便鉢部2の表面を平滑にして汚物が付着しにくくすると共に、汚物と便鉢部2の表面との間に水膜を介在させて便器洗浄に際して汚物を便鉢部2の表面から離脱させやすくすることが可能となる。
【0054】
この結果、使用者に不快感を与えないようにしつつ、便器1の便鉢部2の表面に汚物が付着するのを抑制することができる。加えて、シャッター17を可動式にすることで、噴霧器20から水を噴出させないときに当該シャッター17を閉位置に戻しておくことが可能となる。従って、シャッター17が衛生洗浄装置10の他の機能等の妨げになるのを抑制すると共に、便器1の清掃等に際して当該シャッター17が邪魔にならないようにすることができる。加えて、複数の液体通路218pを第2筒状体212に形成して噴霧器20の小型化を図ることで、当該噴霧器20の設置に伴う衛生洗浄装置10の大型化を抑制することが可能となる。
【0055】
以上説明したように、本開示の噴霧器20の分流部材22は、供給口20iおよび噴出口20oを有する本体21の内部に配置される円筒状部材であって、中心軸に沿って延びる貫通孔22pを有する。また、本体21を構成する第2筒状体212の内周面には、分流部材22の外周面に沿って水を流通させる複数の液体通路218pが形成されている。これにより、貫通孔22pおよび複数の液体通路218pの断面積を適正に設定して供給口20iと噴出口20oとの間で分流部材22により供給口20iからの液体を複数の水流成分に適正に分流させると共に、分流部材22の外周面に複数の液体通路218pを形成する場合に比べて分流部材22を容易に小径化することができる。この結果、噴霧器20では、噴霧性能を確保しつつ小型化を図ることが可能となる。
【0056】
また、本体21を構成する第1筒状体211は、供給口20iに連通した供給路215pを有し、分流部材22は、貫通孔22pの軸心と供給路215pの軸心とがずれた状態で本体21の内部に配置される。加えて、分流部材22は、供給路215pと間隔をおいて対向するように当該供給路215p側に突出する突出部221を有する。これにより、供給路215pからの水を貫通孔22pと複数の液体通路218pとにより適正に分配すると共に、複数の液体通路218pに流入する水の流量を適正化して噴霧性能を良好に確保することが可能となる。
【0057】
更に、分流部材22は、噴出口20o側で貫通孔22pに連通するように設けられると共に、第2筒状体212(本体21)の複数の液体通路218pから水を流入させて旋回流を形成する円筒状の旋回流形成部222を有する。また、旋回流形成部222は、それぞれ対応する液体通路218pに連通すると共に当該旋回流形成部222の内周面の接線方向に延在する複数の液体流入口223を有する。これにより、旋回流形成部222内で旋回流を効率よく形成すると共に、旋回する水をされた貫通孔22pからの水により押し出して噴出口20oから水を噴出させることができる。従って、噴霧器20の噴出口20oから水を旋回させながら螺旋状に噴出させて便鉢部2の表面のより広い範囲に行き渡らせることが可能となる。なお、上記実施形態において、液体通路218pと液体流入口223とは、噴霧器20にそれぞれ2つずつ設けられるが、液体通路218pおよび液体流入口223の少なくとも何れか一方は、噴霧器20に3つ以上設けられてもよい。
【0058】
また、本体21を構成する第2小径部216には、位置決め凹部216bが形成され、分流部材22は、当該位置決め凹部216bに嵌め込まれる位置決め突部220を有している。位置決め凹部216bに位置決め突部220を嵌め込むことで、分流部材22は、旋回流形成部222の液体流入口223が対応する液体通路218pに連通するように本体21に位置決めされる。これにより、旋回流形成部222の複数の液体流入口223にスムースに水を流入させて当該旋回流形成部222内で旋回流をより効率よく形成することが可能となる。ただし、本体21(第2小径部216)に位置決め突部が形成されると共に、分流部材22に位置決め凹部が形成されてもよい。
【0059】
更に、噴霧器20の本体21は、供給口20iを有する樹脂製の第1筒状体211と、噴出口20oを有する樹脂製の第2筒状体212とを含み、第2筒状体212の第2大径部214の第1筒状体211側の端面には、略三角形状の断面形状を有する環状の溶着リブ214Lが形成されている。これにより、溶着リブ214Lを第1筒状体211の第2筒状体212側の端面に溶着ささせることで、締結部材やシール部材を用いることなく第1および第2筒状体211,212を液密に接合すると共に噴霧器20全体の小型化を図ることが可能となる。
【0060】
また、噴霧器20では、第2大径部214の噴出口20oを包囲する端面から第2小径部216側の端面までの長さL1が、第1大径部213の第2筒状体212(開放端)側の端面から供給口20i側の端面までの長さL2よりも短く定められている。これにより、第2大径部214の噴出口20o側の端面から超音波を印加することで、溶着リブ214Lを第1筒状体211の第1大径部213の端面に良好に溶着させることが可能となる。ただし、環状の溶着リブは、第1大径部213の第2筒状体212(開放端)側の端面に形成されてもよい。
【0061】
そして、上述のような噴霧器20を含む衛生洗浄装置10では、当該噴霧器20から便鉢部2に水を噴出させることで、便鉢部2の表面を平滑にして汚物が付着しにくくすると共に、汚物と便鉢部2の表面との間に水膜を介在させて便器洗浄に際して汚物を便鉢部2の表面から離脱させやすくすることができる。これにより、便器1の便鉢部2の表面に汚物が付着するのを抑制することが可能となる。また、噴霧器20の小型化を図ることで、噴霧器20の設置に伴う衛生洗浄装置10の大型化を抑制することができる。
【0062】
なお、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。