特許第6883210号(P6883210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883210
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】超電導ロータ及び超電導モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 55/04 20060101AFI20210531BHJP
   H02K 17/16 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   H02K55/04
   H02K17/16 B
【請求項の数】7
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-147778(P2017-147778)
(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公開番号】特開2019-30128(P2019-30128A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月11日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究事業「低炭素社会を支える輸送機器用超伝導回転機システム」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】吉川 雅章
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−273498(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101540530(CN,A)
【文献】 特開平02−211051(JP,A)
【文献】 特開2014−197925(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/116219(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0084566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 55/04
H02K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフトと、
磁性体により円筒状に形成されるとともに前記ロータシャフトと一体的に回転するように前記ロータシャフトに同軸的に取り付けられ、且つ、一方の端面から他方の端面にかけて貫通する複数のスロットが周方向に沿って間隔を開けて設けられたロータコアと、
超電導材料により長尺状に形成され、前記複数のスロットのそれぞれに挿通されるとともに、前記スロット内に位置する超電導本体部と、前記スロット外に位置するとともに前記超電導本体部の一方端及び他方端からそれぞれ長手方向に延設された一対の超電導ステップ部と、を有する複数の超電導ロータバーと、
複数の前記超電導ロータバーの前記一対の超電導ステップ部にそれぞれ電気的に接続される一対の超電導エンドリングと、を備え、
前記超電導ステップ部は、前記ロータコアの径外方を向くとともに前記ロータコアの軸方向に沿って段階的に前記ロータコアの中心からの距離により表される径方向位置が変化するように配列された複数段の超電導ステージ面を有し、
複数の前記超電導ロータバーは、それぞれ、前記超電導ステップ部の同一段の超電導ステージ面が、前記ロータコアの周方向に沿って配置するように、前記ロータコアに対して配設され、
前記超電導エンドリングは、超電導材料によりテープ状に形成された超電導テープ線材が、前記ロータコアの周方向に沿って配置された同一段の超電導ステージ面及び前記同一段の超電導ステージ面に隣接する段の超電導ステージ面に巻回されることにより段付環状に形成された複数の超電導エンドリング巻線部を有し、複数の前記超電導エンドリング巻線部が前記ロータコアの軸方向に沿って配設されることにより構成されている、
超電導ロータ。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導ロータにおいて、
複数の前記超電導ステージ面は、前記ロータコアの軸方向に沿って前記超電導本体部から離れるほど段階的に前記径方向位置が小さくなるように配列される、
超電導ロータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の超電導ロータにおいて、
複数段の前記超電導ステージ面の少なくとも一つは、前記ロータコアの軸方向に隣接する複数の前記超電導エンドリング巻線部をそれぞれ構成する複数の超電導テープ線材が巻回される超電導共有ステージ面であり、
前記ロータコアの軸方向における前記超電導共有ステージ面の長さが、それに巻回される前記超電導テープ線材の巻軸方向における長さよりも長い、超電導ロータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超電導ロータにおいて、
常電導材料により長尺状に形成され、前記超電導ロータバーとともに前記複数のスロットのそれぞれに挿通されるとともに、前記スロット内に位置する常電導本体部と、前記スロット外に配設されるとともに前記常電導本体部の一方端及び他方端からそれぞれ延設される一対の常電導接続部を有する複数の常電導ロータバーと、
常電導材料により形成され、複数の前記常電導ロータバーの前記一対の常電導接続部にそれぞれ電気的に接続される一対の常電導エンドリングと、を備える、超電導ロータ。
【請求項5】
請求項4に記載の超電導ロータにおいて、
前記常電導エンドリングは、円環状をなし、前記ロータコアの一方端又は他方端にて前記ロータコアに同軸配置されるともに複数の前記常電導ロータバーの前記常電導接続部に電気的に接続された常電導円環部と、前記常電導円環部の周方向に沿って間隔を開けて前記常電導円環部に接続された複数の常電導ステップ部を有し、
複数の前記常電導ステップ部は、それぞれ、前記ロータコアの周方向に隣接する前記超電導ロータバーの前記超電導ステップ部間に配設されるとともに、前記ロータコアの径外方を向き且つ前記ロータコアの軸方向に沿って段階的に前記径方向位置が変化する複数段の常電導ステージ面を有し、
複数段の前記常電導ステージ面は、それぞれ、前記ロータコアの軸方向において、前記複数段の超電導ステージ面と同一位置に設けられ、且つ、前記ロータコアの軸方向における同一位置に設けられた前記常電導ステージ面と前記超電導ステージ面の径方向位置が一致するように形成される、
超電導ロータ。
【請求項6】
請求項5に記載の超電導ロータにおいて、
前記超電導エンドリングの各超電導エンドリング巻線部を構成する超電導テープ線材は、前記常電導ステージ面と熱的又は電気的に接続されている、超電導ロータ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の超電導ロータを含む、超電導モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ロータ及び超電導モータに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導材料を用いた籠型導体(超電導籠型導体)を有する超電導モータが開発されている。この種の超電導モータは、超電導籠型導体がステータにより発生される回転磁界の磁束を補足することにより、同期モータとして回転する。超電導籠型導体内の電気抵抗はゼロ又は極めて小さいので、この種の超電導モータは、
1.簡単な構造で、滑りの無い高効率な同期回転が実現される。
2.超電導籠型導体に大電流を流すことができ、そのため高トルクを発生させることができる。
等の作用効果を奏する。
【0003】
特許文献1は、超電導線材により構成された超電導籠型導体と、常電導材料により構成された常電導籠型導体とを備える超電導ロータを開示する。超電導籠型導体は、複数本の超電導ロータバーと一対の超電導エンドリングとからなる。超電導ロータバーは、超電導線材を複数本束ねて長尺状に形成される。一対の超電導エンドリングは、超電導線材を積層することにより円環状に構成される。複数の超電導ロータバーのそれぞれの一端が、一方の超電導エンドリングの周方向に沿って一方の超電導エンドリングに接続され、複数の超電導ロータバーのそれぞれの他端が、他方の超電導エンドリングの周方向に沿って他方の超電導エンドリングに接続される。
【0004】
特許文献1に記載の超電導ロータを用いた超電導モータは、上記1,2に記載の作用効果に加え、
3.超電導籠型導体が非超電導状態であるときには、常電導籠型導体に生じる誘導トルク主導で超電導モータ(超電導ロータ)を回転させることができ、超電導籠型導体が超電導状態であるときには、超電導籠型導体が回転磁界の磁束を捕捉することで生じる同期トルク主導で超電導モータを回転させることができる。
といった作用効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/116219号
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
超電導ロータを構成する超電導籠導体の超電導エンドリングが超電導線材を巻回することにより円環状に構成されている場合、超電導エンドリング内にて超電導線材の積層方向に流れる電流は、超電導線材どうしの接触界面を横切る。このとき比較的大きな電気抵抗が生じる。よって、超電導線材の積層方向に流れる電流が超電導線材どうしの接触界面を横切る回数が多い場合、電気抵抗が増大する。電気抵抗が増大すると、ジュール損失量が増大して超電導ロータの回転に滑りが生じ、これにより超電導モータの効率が低下する。その結果、超電導モータに上記した作用効果を十分に発揮させることができない。
【0007】
本発明は、電気抵抗ができるだけ小さくなる超電導ロータ及びそれを用いた超電導モータを提供することを目的とする。
【0008】
(課題を解決するための手段)
本発明に係る超電導ロータ(1)は、ロータシャフト(2)と、磁性体により円筒状に形成されるとともにロータシャフトと一体的に回転するようにロータシャフトに同軸的に取り付けられ、且つ、一方の端面から他方の端面にかけて貫通する複数のスロット(35)が周方向に沿って間隔を開けて設けられたロータコア(3)と、超電導材料により長尺状に形成され、複数のスロットのそれぞれに挿通されるとともに、スロット内に位置する超電導本体部(52a)と、スロット外に位置するとともに超電導本体部の一方端及び他方端からそれぞれ長手方向に延設された一対の超電導ステップ部(52b)と、を有する複数の超電導ロータバー(52)と、複数の超電導ロータバーの一対の超電導ステップ部にそれぞれ電気的に接続される一対の超電導エンドリング(62)と、を備える。
【0009】
超電導ステップ部は、ロータコアの径外方を向くとともにロータコアの軸方向に沿って段階的にロータコアの中心からの距離により表される径方向位置が変化するように配列された複数段の超電導ステージ面(521a,522a,523a,524a,525a)を有する。また、複数の超電導ロータバーは、それぞれ、超電導ステップ部の同一段の超電導ステージ面が、ロータコアの周方向に沿って配置するように、ロータコアに対して配設される。そして、超電導エンドリングは、超電導材料によりテープ状に形成された超電導テープ線材が、ロータコアの周方向に沿って配置された同一段の超電導ステージ面及びその同一段の超電導ステージ面に隣接する段の超電導ステージ面に巻回されることにより段付環状に形成された複数の超電導エンドリング巻線部(621,622,623,624)を有し、複数の超電導エンドリング巻線部がロータコアの軸方向に沿って配設されることにより構成されている。
【0010】
本発明によれば、超電導エンドリングは、超電導テープ線材が巻回されることにより段付環状に形成された複数の超電導エンドリング巻線部がロータコアの軸方向に沿って配設されることにより構成される。また、各超電導エンドリング巻線部を構成する超電導テープ線材は、隣接する複数段の超電導ステージ面に巻回されることにより、超電導ロータバーに電気的に接続される。このように複数段の超電導ステージ面で超電導エンドリングが超電導ロータバーに電気的に接続されるため、超電導エンドリングと超電導ロータバーとの接触面積が増加し、その結果、接触抵抗(電気抵抗)を小さくすることができる。
【0011】
また、超電導エンドリング巻線部を構成する超電導テープ線材が単一段の超電導ステージ面に積層するように巻回された場合、超電導エンドリングを流れる電流が超電導エンドリングから超電導ロータバーに至るまでに、超電導テープ線材の巻数分(積層数分)の接触界面を横切ることになる。ここで、巻回された超電導テープ線材の積層方向に流れる電流に対する電気抵抗は、超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数(すなわち巻数)に比例して増加する。従って、電流が超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数が多い場合、電気抵抗が増大する。この点に関し、本発明においては、超電導エンドリング巻線部を構成する超電導テープ線材が、ロータの周方向に沿って配置された同一段の超電導ステージ面及びその同一段の超電導ステージ面に隣接する段の超電導ステージ面に巻回される。つまり、本発明によれば、超電導ロータバーの超電導ステップ部が有する複数段の超電導ステージ面のうち、隣接する2つ以上の異なる段の超電導ステージ面に、超電導テープ線材が巻回される。そのため、超電導テープ線材が巻回されて構成される超電導エンドリング巻線部を流れる電流は、より近い(超電導テープ線材の接触界面を横切る回数がより少ない)位置に位置する段の超電導ステージ面を通過する経路を通って超電導ロータバーに流れる。よって、超電導エンドリングを流れる電流が超電導エンドリングから超電導ロータバーに至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数を減じることができる。こうして電流が接触界面を横切る回数を低減することによって、超電導ロータの電気抵抗をさらに小さくすることができる。
【0012】
本発明において、「同一段の超電導ステージ面」とは、ロータコアの周方向に沿って配設されている複数の超電導ロータバーがそれぞれ備える超電導ステップ部に設けられている複数の超電導ステージ面のうち、ロータコアの周方向に沿って配置した同じ段の超電導ステージ面を言う。例えば、超電導ステップ部が5段構成である場合、複数の超電導ロータバーのそれぞれの超電導ステップ部に設けられている3段目の超電導ステージ面は、同一段の超電導ステージ面である。
【0013】
また、本発明において、超電導テープ線材は、長尺薄板形状を呈し、長手方向に直交する二方向のアスペクト比が1:1でないものを言う。この超電導テープ線材を巻回する場合、巻軸方向が長手方向に直交する方向であり、且つ、面積が最も大きい面(テープ面)が積層面(巻き面)となるように、巻回される。
【0014】
また、本発明において、超電導ロータバーは、その超電導ステップ部の複数段の超電導ステージ面がロータコアの軸方向に沿って段階的に径方向位置が変化するように配列するように構成されていれば良く、必ずしも超電導ロータバー自身がロータコアの軸方向に沿って配置される必要はない。例えば、ロータコアの軸方向に所定の角度(スキュー)を有して超電導ロータバーが配設されていてもよい。
【0015】
また、超電導ステージ部が備える複数の超電導ステージ面は、ロータコアの軸方向に沿って超電導本体部から離れるほど段階的に径方向位置が小さくなるように配列されるとよい。ここで、径方向位置が小さくなるとは、ロータコアの中心からの距離が短くなるということである。つまり、径方向位置を、高さ位置と言った場合、径方向位置が小さくなるとは、高さ位置が低くなるということである。
【0016】
また、複数段の超電導ステージ面の少なくとも一つは、ロータコアの軸方向に隣接する複数の超電導エンドリング巻線部をそれぞれ構成する複数の超電導テープ線材が巻回される超電導共有ステージ面(522a,523a,524a)であるのがよい。そして、ロータコアの軸方向における超電導共有ステージ面の長さ(軸方向長さ)が、それに巻回される前記超電導テープ線材の巻軸方向における長さ(すなわち幅)よりも長いとよい。これによれば、超電導共有ステージ面に、一つの超電導エンドリング巻線部を構成する超電導テープ線材及びその超電導エンドリング巻線部に隣接する超電導エンドリング巻線部を構成する超電導テープ線材を、ロータコアの軸方向に並べて配置することができる。また、超電導テープ線材(超電導エンドリング)と超電導ロータバーとの接触面積が増加し、これにより、超電導ロータの電気抵抗をさらに小さくすることができる。
【0017】
また、本発明に係る超電導ロータは、常電導材料により長尺状に形成され、超電導ロータバーとともに複数のスロットのそれぞれに挿通されるとともに、スロット内に位置する常電導本体部(51a)と、スロット外に配設されるとともに常電導本体部の一方端及び他方端からそれぞれ延設される一対の常電導接続部(51b)を有する複数の常電導ロータバー(51)と、常電導材料により形成され、複数の常電導ロータバーの一対の常電導接続部にそれぞれ電気的に接続される一対の常電導エンドリング(61)と、を備えるとよい。これによれば、超電導ロータが、上記した超電導ロータバー及び超電導エンドリングから構成される超電導籠型導体に加え、常電導ロータバー及び常電導エンドリングから構成される常電導籠型導体を備えることになる。よって、このような超電導ロータを用いた超電導モータにおいて、超電導籠型導体が非超電導状態であるときには、常電導籠型導体にて生じる誘導トルク主導で超電導モータを回転させることができ、超電導籠型導体が超電導状態であるときには超電導籠型導体にて生じる同期トルク主導で超電導モータを回転させることができる。
【0018】
この場合、常電導ロータバーが、超電導ロータバーに熱的又は電気的に接触しているとよい。常電導ロータバーが超電導ロータバーに熱的に接触している場合、超電導ロータバーにて生じた熱を、常電導ロータバーに伝達させることができる。すなわち、常電導ロータバーの熱容量を利用して、超電導ロータバーにて生じた熱を超電導ロータバーから常電導ロータバーに逃がすことができる。その結果、超電導ロータバーの温度上昇を抑制することができ、十分に超電導ロータバーを冷却することができる。また、常電導ロータバーが超電導ロータバーに電気的に接触している場合、超電導ロータバーに臨界電流Icを超える過剰な電流が流れようとするときに、常電導ロータバーに電流を分流することができる。つまり、常電導ロータバーが、超電導ロータバーに流れる電流のバイパス経路を構成する。これにより、超電導ロータバーに過剰な電流が流れることによる超電導ロータバーの発熱を抑制することができ、その結果、超電導ロータバーの焼損を防止できる。
【0019】
また、常電導エンドリングが、超電導エンドリングに熱的に又は電気的に接触しているとよい。常電導エンドリングが超電導エンドリングに熱的に接触している場合、超電導エンドリングにて生じた熱を、常電導エンドリングに伝達させることができる。すなわち、常電導エンドリングの熱容量を利用して、超電導エンドリングにて生じた熱を超電導エンドリングから常電導エンドリングに逃がすことができる。その結果、超電導エンドリングの温度上昇を抑制することができ、十分に超電導エンドリングを冷却することができる。また、常電導エンドリングが超電導エンドリングに電気的に接触している場合、超電導エンドリングに臨界電流Icを超える過剰な電流が流れようとするときに、常電導エンドリングに電流を分流することができる。つまり、常電導エンドリングが、超電導エンドリングに流れる電流のバイパス経路を構成する。これにより、超電導エンドリングに過剰な電流が流れることによる超電導エンドリングの発熱を抑制することができ、その結果、超電導エンドリングの焼損を防止できる。
【0020】
また、常電導エンドリングは、円環状をなし、ロータコアの一方端又は他方端にてロータコアに同軸配置されるともに複数の常電導ロータバーの常電導接続部に電気的に接続された常電導円環部(611)と、常電導円環部の周方向に沿って間隔を開けて常電導円環部に接続された複数の常電導ステップ部(612)を有するとよい。この場合、複数の常電導ステップ部は、それぞれ、ロータコアの周方向に隣接する超電導ロータバーの超電導ステップ部間に配設されるとともに、ロータコアの径外方を向き且つロータコアの軸方向に沿って段階的に径方向位置が変化する複数段の常電導ステージ面(612a1,612a2,612a3,612a4,612a5)を有し、複数の常電導ステージ面は、それぞれ、ロータコアの軸方向において、複数の超電導ステージ面と同一位置に設けられ、且つ、ロータコアの軸方向における同一位置に設けられた常電導ステージ面と超電導ステージ面の径方向位置が一致するように形成されるとよい。
【0021】
複数の超電導ロータバーはロータコアの周方向に間隔を開けて設けられる。そのため、ロータコアの周方向に沿って複数の超電導ステップ部の超電導ステージ面に超電導テープ線材を巻回する場合、隣接する超電導ステージ面間の超電導テープ線材が直線状になり、その結果、超電導テープ線材が多角形状に巻回される虞がある。超電導線材が多角形状に巻回された場合において、曲げ角度(曲げ量)が大きいと、超電導テープ線材の内部構造が変形して、超電導特性が悪化する(例えば超電導臨界電流Icが低下する)虞がある。この点に関し、本発明では、同一段の超電導ステージ面間に常電導ステージ面が位置することになり、且つ、同一段の超電導ステージ面及び常電導ステージ面の径方向位置(ロータコアの中心からの距離)が一致する。このため、超電導テープ線材が多角形状に巻回された場合であっても曲げ角度を小さくすることができる。その結果、超電導テープ線材の曲げ角度が大きいことに起因する超電導特性の悪化を防止することができる。
【0022】
なお、上記において、「常電導ステージ面と超電導ステージ面の径方向位置が一致する」とは、常電導ステージ面と超電導ステージ面の径方向位置が完全に一致する必要はない。常電導ステージ面が存在しない場合(常電導ステップ部が設けられていない場合)における超電導テープ線材の曲げ角度をθ1とし、常電導ステージ面が存在する場合における超電導テープ線材の曲げ角度をθ2とすると、θ2がθ1以下となるような径方向位置に常電導ステージ面が位置する場合、常電導ステージ面と超電導ステージ面の径方向位置が一致すると言うことができる。特に、ロータコアの軸方向から見て、隣接する超電導ステージ面間に配設される常電導ステージ面が、上記隣接する超電導ステージ面(厳密には上記隣接する超電導ステージ面の互いに対面する辺)を直線状に結ぶ線分と、上記隣接する超電導ステージ面のそれぞれの延長線とによって囲まれる三角形状の領域に位置する場合を、その常電導ステージ面の径方向位置が超電導ステージ面の径方向位置に一致すると定義することができる。上記三角形状の領域に常電導ステージ面が位置する場合、超電導テープ線材の曲げ角度が、常電導ステージ面が存在しない場合における超電導テープ線材の曲げ角度以下にされる。
【0023】
この場合、超電導エンドリングの各超電導エンドリング巻線部を構成する超電導線材は、常電導ステージ面と熱的又は電気的に接続されているとよい。これによれば、それぞれの超電導エンドリング巻線部を構成する超電導線材が常電導エンドリングの常電導ステージ面に熱的又は電気的に接続されるので、いずれの超電導エンドリング巻線部にて発生した熱も、常電導エンドリングに逃がすことができ、また、いずれの超電導エンドリング巻線部に流れる電流も、常電導エンドリングに分流させることができる。よって、超電導エンドリングの発熱に起因する不具合の発生を防止することができる。
【0024】
また、本発明は、上記構成を備える超電導ロータを含む、超電導モータを提供する。これによれば、上記した作用効果を奏する超電導モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る超電導モータの概略断面図である。
図2】超電導ロータの概略断面図である。
図3】ロータコアの斜視図である。
図4A】籠型導体の概略断面図である。
図4B】籠型導体の斜視図である。
図5】ロータバーの概略断面図である。
図6】ロータバーがロータコアのスロットに挿通された状態を示す概略断面図である。
図7】超電導ステップ部付近の拡大断面図である。
図8】常電導エンドリングの斜視図である。
図9】一対の常電導エンドリングとロータバーとの組み付け体を示す斜視図である。
図10】一対の常電導エンドリングとロータバーとの組み付け体の概略断面図である。
図11】常電導エンドリング付近の拡大断面図である。
図12】第一超電導エンドリング巻線部を超電導ステップ部に取り付ける手順を示す図である。
図13】第二超電導エンドリング巻線部を超電導ステップ部に取り付ける手順を示す図である。
図14】第三超電導エンドリング巻線部を超電導ステップ部に取り付ける手順を示す図である。
図15】第四超電導エンドリング巻線部を超電導ステップ部に取り付ける手順を示す図である。
図16】超電導モータが同期モータとして回転している場合に、超電導籠型導体内を流れる電流の経路を模式的に示す図である。
図17】巻き位置をずらすことなく、1つの超電導ステージ面上に1本の超電導テープ線材を巻回して構成された超電導エンドリングを示す図である。
図18】超電導共有ステージ面に3本の超電導テープ線材が巻回される例を示す図である。
図19】常電導ステップ部を備えない常電導エンドリングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る超電導モータ100の概略断面図である。この断面図は、超電導モータ100が備える後述するロータシャフト2及びロータコア3の回転中心軸を通る平面で切断した超電導モータ100の断面を示す。なお、以下において、「断面図」と言ったとき、特に明記しない限り、その断面図は、上記した平面で切断した断面図を表す。図1に示すように、超電導モータ100は、超電導ロータ1と、ステータ80と、モータケース90とを備える。
【0027】
図2は、超電導ロータ1の概略断面図である。図2に示すように、超電導ロータ1は、ロータシャフト2と、ロータコア3と、籠型導体4とを有する。ロータシャフト2は棒状に形成される。ロータシャフト2は超電導モータ100の出力軸として機能する。ロータコア3は磁性体により形成される。
【0028】
図3は、ロータコア3の斜視図である。図3に示すように、ロータコア3は、内周面31と、外周面32と、内周面31の一方端と外周面32の一方端との間に形成される一方端面33と、内周面31の他方端と外周面32の他方端との間に形成される他方端面34(図2参照)とを有し、円筒状に形成される。ロータコア3は、鉄やケイ素鋼等の高透磁率材料からなる薄板を軸方向に積層して成形するのが良い。
【0029】
円筒状のロータコア3の内周面31に囲まれる空間が、ロータコア3の軸方向に沿ってロータコア3を貫通したシャフト挿通孔を構成する。このシャフト挿通孔にロータシャフト2が図1に示されるように挿通されるとともに、シャフト挿通孔に挿通されたロータシャフト2がロータコア3の内周面31に固定される。このようにしてロータコア3とロータシャフト2が固定されることにより、ロータコア3がロータシャフト2と一体回転するようにロータシャフト2に同軸的に取り付けられる。
【0030】
また、図3に良く示すように、ロータコア3には、複数のスロット35が設けられる。複数のスロット35は、ロータコア3の一方端面33から他方端面34にかけて貫通する貫通孔であり、スロット35の長手方向における一方端がロータコア3の一方端面33に開口し他方端がロータコア3の他方端面34に開口する。また、複数のスロット35は、ロータコア3の周方向に沿って等間隔に設けられる。本実施形態では、複数のスロット35の開口形状及び長手方向に直交する断面の形状は、ロータコア3の径内方から径外方に向かって長く且つ周方向に短い長方形状である。
【0031】
図2に示すように、籠型導体4は、複数のロータバー5と、一対のエンドリング6とを備える。各ロータバー5は、図3に示すロータコア3の各スロット35に挿通される。従って、複数のロータバー5は、ロータコア3の周方向に沿って配設される。また、ロータバー5の個数は、スロット35の個数に等しい。
【0032】
図4Aは、籠型導体4の概略断面図である。また、図4Bは、籠型導体4の斜視図である。なお、図4Aには、ロータコア3の断面外径が破線により表され、ロータコア3の中心軸線が一点鎖線により表される。図4Aに示すように、籠型導体4が備える複数のロータバー5は、それぞれ、常電導ロータバー51及び超電導ロータバー52を有する。常電導ロータバー51は、常電導材料により長尺角棒状に形成される。常電導ロータバー51は、熱伝導率の良好な導電性材料、例えば銅により構成される。
【0033】
超電導ロータバー52は、超電導材料により長尺状に形成される。超電導ロータバー52は、例えば、超電導線材、超電導バルク材、超電導薄膜、などにより構成することができる。例えば、超電導ロータバー52は、高温超電導材料からなる複数の超電導線材を束ねてはんだなどを介して電気的に並列接続することにより長尺状に形成することができる。
【0034】
図5は、図4Aに示す断面のうちロータバー5のみを示す概略断面図である。図5に示すように、ロータバー5が備える常電導ロータバー51の表面のうち長手方向に沿った一表面上に、超電導ロータバー52が載置される。また、超電導ロータバー52は、長さの異なる複数本(本実施形態では五本)のバー(第一バー521、第二バー522、第三バー523、第四バー524、第五バー525)により構成される。第五バー525が、常電導ロータバー51の上記一表面上に積層状態(長手方向を一致させた状態)で載置される。
【0035】
第五バー525の長さは常電導ロータバー51の長さに等しく、第四バー524の長さは第五バー525の長さよりも短く、第三バー523の長さは第四バー524の長さよりも短く、第二バー522の長さは第三バー523の長さよりも短く、第一バー521の長さは第二バー522の長さよりも短い。そして、常電導ロータバー51の上記一表面上に第五バー525が積層され、第五バー525上に第四バー524が積層され、第四バー524上に第三バー523が積層され、第三バー523上に第二バー522が積層され、第二バー522上に第一バー521が積層される。つまり、長いバーの上に、それよりも短いバーが積層される。積層方向に隣接するバーは、はんだなどの導電性接続部材により接合される。これにより超電導ロータバー52が構成される。このとき、長手方向における中心位置が積層方向に沿って一致するように、これらのバーが積層される。従って、図5に示すように、超電導ロータバー52の長手方向における両端部分には、階段状をなす部分が形成される。また、超電導ロータバー52の第五バー525が、常電導ロータバー51に積層された状態で、はんだなどの導電性接続部材により常電導ロータバー51に接合される。これにより、超電導ロータバー52が常電導ロータバー51に熱的及び電気的に接続される。
【0036】
上記構成を有する複数のロータバー5が、ロータコア3に設けられている複数のスロット35のそれぞれに挿通される。図6は、一つのロータバー5がロータコア3のスロット35に挿通された状態を示す概略断面図である。図6において、ロータコア3の断面外形が破線で示される。また、図6の左右方向が、ロータコア3の軸方向であり、図6の上下方向がロータコア3の径方向であり、上方が径外方、下方が径内方である。ここで、径外方とは、ロータコア3の径方向のうちロータコア3の中心から外方に向かう方向であり、径内方とは、ロータコア3の径方向のうちロータコア3の中心に向かう方向である。以下において、ロータコア3の軸方向を単に軸方向と言う場合があり、ロータコア3の径方向を単に径方向と言う場合がある。
【0037】
図6に示すように、常電導ロータバー51は、超電導ロータバー52とともにスロット35に挿通される。このとき、常電導ロータバー51が超電導ロータバー52よりも径内方に位置するように、ロータバー5がスロット35に挿通される。常電導ロータバー51は、ロータコア3のスロット35内に位置する常電導本体部51aと、スロット35外に位置するとともに常電導本体部51aの一方端及び他方端からそれぞれ長手方向に延設される一対の常電導接続部51bを有する。また、超電導ロータバー52は、ロータコア3のスロット35内に位置する超電導本体部52aと、スロット35外に位置するとともに超電導本体部52aの一方端及び他方端からそれぞれ長手方向に延設される一対の超電導ステップ部52bを有する。上記した、超電導ロータバー52の長手方向における両端部分に形成された階段状をなす部分が、超電導ステップ部52bである。
【0038】
図7は、超電導ステップ部52b付近の拡大断面図である。図7において左右方向が軸方向であり、上下方向が径方向であり上方が径外方、下方が径内方である。図7に示すように、超電導ステップ部52bは、複数段の超電導ステージ面(一段目超電導ステージ面521a、二段目超電導ステージ面522a、三段目超電導ステージ面523a、四段目超電導ステージ面524a、五段目超電導ステージ面525a)と、複数の超電導段差面(第一超電導段差面521b、第二超電導段差面522b、第三超電導段差面523b、第四超電導段差面524b、第五超電導段差面525b)とを有する。
【0039】
五段目超電導ステージ面525aは、第五バー525のうち超電導ステップ部52bを構成する部分の表面であって、ロータコア3の径外方(図7においては上方)を向き且つ第四バー524が積層されていない面により構成される。四段目超電導ステージ面524aは、第四バー524のうち超電導ステップ部52bを構成する部分の表面であって、ロータコア3の径外方を向き且つ第三バー523が積層されていない面により構成される。三段目超電導ステージ面523aは、第三バー523のうち超電導ステップ部52bを構成する部分の表面であって、ロータコア3の径外方を向き且つ第二バー522が積層されていない面により構成される。二段目超電導ステージ面522aは、第二バー522のうち超電導ステップ部52bを構成する部分であって、ロータコア3の径外方を向き且つ第一バー521が積層されていない面により構成される。一段目超電導ステージ面521aは、第一バー521のうち超電導ステップ部52bを構成する部分の表面であって、ロータコア3の径外方を向く面により構成される。
【0040】
また、図7からわかるように、一段目超電導ステージ面521aの径方向位置、二段目超電導ステージ面522aの径方向位置、三段目超電導ステージ面523aの径方向位置、四段目超電導ステージ面524aの径方向位置、五段目超電導ステージ面525aの径方向位置は、それぞれ異なる。そして、これらの径方向位置が異なる複数段の超電導ステージ面が、ロータコア3の軸方向に沿って配列される。従って、複数段の超電導ステージ面は、ロータコア3の軸方向に沿って段階的に径方向位置(ロータコア3の中心からの距離)が変化するように配列されることになる。
【0041】
具体的には、一段目超電導ステージ面521aの径方向位置は、二段目超電導ステージ面522aの径方向位置よりも大きく、二段目超電導ステージ面522aの径方向位置は、三段目超電導ステージ面523aの径方向位置よりも大きく、三段目超電導ステージ面523aの径方向位置は、四段目超電導ステージ面524aの径方向位置よりも大きく、四段目超電導ステージ面524aの径方向位置は、五段目超電導ステージ面525aの径方向位置よりも大きい。そして、ロータコア3の軸方向に沿って、超電導本体部52aに近い方から順に、一段目超電導ステージ面521a、二段目超電導ステージ面522a、三段目超電導ステージ面523a、四段目超電導ステージ面524a、五段目超電導ステージ面525aが、この順で配列されている。ここで、「径方向位置が大きい」とは、ロータコア3の中心軸からの径方向距離が長いことを表す。なお、「径方向位置が小さい」とは、ロータコア3の中心軸からの径方向距離が短いことを表す。従って、複数段の超電導ステージ面は、ロータコア3の軸方向に沿って超電導本体部52aから離れるほど、段階的に径方向位置が小さくなる(すなわちロータコア3の中心軸からの径方向距離が段階的に短くなる)ように配列される。
【0042】
第一超電導段差面521bは第一バー521の長手方向端面により構成され、第二超電導段差面522bは第二バー522の長手方向端面により構成され、第三超電導段差面523bは第三バー523の長手方向端面により構成され、第四超電導段差面524bは第四バー524の長手方向端面により構成され、第五超電導段差面525bは第五バー525の長手方向端面により構成される。
【0043】
図7からわかるように、第一超電導段差面521bは、一段目超電導ステージ面521aと二段目超電導ステージ面522aとを接続し、第二超電導段差面522bは、二段目超電導ステージ面522aと三段目超電導ステージ面523aとを接続し、第三超電導段差面523bは、三段目超電導ステージ面523aと四段目超電導ステージ面524aとを接続し、第四超電導段差面524bは、四段目超電導ステージ面524aと五段目超電導ステージ面525aとを接続する。従って、これらの段差面は、隣接する超電導ステージ面を接続する。また、各超電導段差面は、ロータコア3の径方向に平行な面であって且つロータコア3の軸方向に垂直な面である。各段差面をこのように形成することにより、超電導ステップ部52bの軸方向長さの短縮化を図ることができる。
【0044】
超電導ステップ部52bは、上記した複数段の超電導ステージ面及び複数の超電導段差面を有し、複数段の超電導ステージ面及び複数の超電導段差面がそれぞれ上記したように配置していることによって、図7に示すような階段状に形成される。
【0045】
また、図5からわかるように、常電導ロータバー51には、その一対の常電導接続部51bの端部から延設された一対の突起部511が設けられている。この一対の突起部511を介して、ロータバー5の両端が、それぞれ、一対のエンドリング6に接続される。一対のエンドリング6は、図2に示すように、常電導エンドリング61と超電導エンドリング62を有する。
【0046】
図8は、常電導エンドリング61の斜視図である。図8に示すように、常電導エンドリング61は、常電導円環部611と、複数の常電導ステップ部612とを有する。
【0047】
常電導円環部611は、例えば銅のような熱伝導率が良好な常電導材料により円環状に構成される。常電導円環部611には、その軸方向に貫通する複数の貫通孔611aが形成される。複数の貫通孔611aは、常電導円環部611の周方向に沿って等間隔に設けられる。
【0048】
図8に示すように、複数の常電導ステップ部612は、常電導円環部611の周方向に沿って間隔を開けて、常電導円環部611の一方の端面に接続される。それぞれの常電導ステップ部612は、常電導円環部611に設けられている隣接する貫通孔611a間にそれぞれ取り付けられる。従って、常電導ステップ部612の個数は、貫通孔611aの個数に等しい。また、複数の貫通孔611aは、常電導円環部611の周方向に沿って等間隔に設けられているので、複数の常電導ステップ部612も常電導円環部611の周方向に沿って等間隔に設けられることになる。
【0049】
一対の常電導エンドリング61は、それらがそれぞれ備える常電導ステップ部612を対向させた状態で、軸方向に沿って離間して同軸状に配置される。このとき、一方の常電導エンドリング61の常電導円環部611に設けられているそれぞれの貫通孔611aと他方の常電導エンドリング61の常電導円環部611に設けられているそれぞれの貫通孔611aが同軸配置するように、一対の常電導エンドリング61の回転位置が調整される。こうして離間配置された一対の常電導エンドリング61間に、複数のロータバー5が配設される。そして、一対の常電導エンドリング61の貫通孔611aに、ロータバー5が備える常電導ロータバー51の両端(一対の常電導接続部51bの端)に設けられた突起部511が挿通される。これにより、常電導円環部611(常電導エンドリング61)とロータバー5(常電導ロータバー51)が、電気的及び熱的に接続される。常電導エンドリング61及び常電導ロータバー51によって、常電導籠型導体4Aが形成される。
【0050】
図9は、一対の常電導エンドリング61とロータバー5との組み付け体を示す斜視図である。この組み付け体は、常電導籠型導体4Aに、超電導ロータバー52を組み付けたものである。図9に示すように、超電導ロータバー52の超電導ステップ部52bと、常電導エンドリング61の常電導ステップ部612は、周方向に沿って、交互に等間隔で配置している。
【0051】
図10は、一対の常電導エンドリング61とロータバー5との組み付け体の概略断面図である。この断面図は、上記組み付け体に組み付けられるロータコア3の中心軸線及び常電導エンドリング61を通る平面で、上記組み付け体を切断した場合における断面図である。図10において、ロータコア3の断面外形が破線で示され、ロータコア3の中心軸線が一点鎖線で示される。図10に示すように、常電導エンドリング61の常電導円環部611は、ロータコア3の一方端又は他方端に位置し、ロータコア3に同軸配置される。また、常電導エンドリング61の常電導ステップ部612は、常電導円環部611の一方の面から、ロータコア3に近づく方向に延設される。
【0052】
図11は、図10に示す断面のうち常電導エンドリング61付近の拡大断面図である。図11において左右方向が軸方向であり、上下方向が径方向、上方が径外方、下方が径内方である。図11に示すように、常電導エンドリング61の常電導ステップ部612は、複数段の常電導ステージ面(一段目常電導ステージ面612a1、二段目常電導ステージ面612a2、三段目常電導ステージ面612a3、四段目常電導ステージ面612a4、五段目常電導ステージ面612a5)と、複数の常電導段差面(第一常電導段差面612b1、第二常電導段差面612b2、第三常電導段差面612b3、第四常電導段差面612b4)とを有する。
【0053】
各常電導ステージ面は、いずれも、ロータコア3の径外方(図11においては上方)を向く。また、一段目常電導ステージ面612a1の径方向位置、二段目常電導ステージ面612a2の径方向位置、三段目常電導ステージ面612a3の径方向位置、四段目常電導ステージ面612a4の径方向位置、五段目常電導ステージ面612a5の径方向位置は、それぞれ異なる。そして、これらの径方向位置が異なる複数段の常電導ステージ面が、ロータコア3の軸方向に沿って配列される。従って、複数段の超電導ステージ面は、ロータコア3の軸方向に沿って段階的に径方向位置(ロータコア3の中心からの距離)が変化するように配列されることになる。
【0054】
具体的には、一段目常電導ステージ面612a1の径方向位置は、二段目常電導ステージ面612a2の径方向位置よりも大きく、二段目常電導ステージ面612a2の径方向位置は、三段目常電導ステージ面612a3の径方向位置よりも大きく、三段目常電導ステージ面612a3の径方向位置は、四段目常電導ステージ面612a4の径方向位置よりも大きく、四段目常電導ステージ面612a4の径方向位置は、五段目常電導ステージ面612a5の径方向位置よりも大きい。そして、ロータコア3の軸方向に沿って、超電導本体部52aに近い方から順に、一段目常電導ステージ面612a1、二段目常電導ステージ面612a2、三段目常電導ステージ面612a3、四段目常電導ステージ面612a4、五段目常電導ステージ面612a5が、この順で配列されている。従って、複数段の常電導ステージ面は、ロータコア3の軸方向に沿って超電導本体部52aから離れるほど、段階的に径方向位置が小さくなる(すなわちロータコア3の中心軸からの径方向距離が段階的に短くなる)ように配列される。
【0055】
また、第一常電導段差面612b1は、一段目常電導ステージ面612a1と二段目常電導ステージ面612a2とを接続し、第二常電導段差面612b2は、二段目常電導ステージ面612a2と三段目常電導ステージ面612a3とを接続し、第三常電導段差面612b3は、三段目常電導ステージ面612a3と四段目常電導ステージ面612a4とを接続し、第四常電導段差面612b4は、四段目常電導ステージ面612a4と五段目常電導ステージ面612a5とを接続する。従って、これらの段差面は、隣接する常電導ステージ面を接続する。
【0056】
常電導ステップ部612は、上記した複数段の常電導ステージ面及び複数の常電導段差面を有し、複数段の常電導ステージ面及び複数の常電導段差面がそれぞれ上記したように配置していることによって、階段状に形成される。
【0057】
また、ロータコア3の軸方向に沿った一段目常電導ステージ面612a1の長さ(一段目常電導ステージ面612a1の軸方向長さ)は、一段目超電導ステージ面521aの軸方向長さに等しく、二段目常電導ステージ面612a2の軸方向長さは二段目超電導ステージ面522aの軸方向長さに等しく、三段目常電導ステージ面612a3の軸方向長さは三段目超電導ステージ面523aの軸方向長さに等しく、四段目常電導ステージ面612a4の軸方向長さは四段目超電導ステージ面524aの軸方向長さに等しく、五段目常電導ステージ面612a5の軸方向長さは五段目超電導ステージ面525aの軸方向長さに等しい。
【0058】
また、ロータコア3の軸方向における一段目常電導ステージ面612a1の形成位置(一段目常電導ステージ面612a1の軸方向位置)は、一段目超電導ステージ面521aの軸方向位置に一致し、二段目常電導ステージ面612a2の軸方向位置は二段目超電導ステージ面522aの軸方向位置に一致し、三段目常電導ステージ面612a3の軸方向位置は三段目超電導ステージ面523aの軸方向位置に一致し、四段目常電導ステージ面612a4の軸方向位置は四段目超電導ステージ面524aの軸方向位置に一致し、五段目常電導ステージ面612a5の軸方向位置は五段目超電導ステージ面525aの軸方向位置に一致する。つまり、同一段の超電導ステージ面と常電導ステージ面の軸方向位置は、一致する。別言すれば、同一段の超電導ステージ面と常電導ステージ面は、ロータコア3の周方向に沿って配置する。
【0059】
さらに、一段目常電導ステージ面612a1の径方向位置は一段目超電導ステージ面521aの径方向位置に一致し、二段目常電導ステージ面612a2の径方向位置は二段目超電導ステージ面522aの径方向位置に一致し、三段目常電導ステージ面612a3の径方向位置は三段目超電導ステージ面523aの径方向位置に一致し、四段目常電導ステージ面612a4の径方向位置は四段目超電導ステージ面524aの径方向位置に一致し、五段目常電導ステージ面612a5の径方向位置は五段目超電導ステージ面525aの径方向位置に一致する。つまり、同一段の超電導ステージ面と常電導ステージ面の径方向位置は、一致する。
【0060】
また、第一超電導段差面521bと第一常電導段差面612b1の軸方向位置は一致し、第二超電導段差面522bと第二常電導段差面612b2の軸方向位置は一致し、第三超電導段差面523bと第三常電導段差面612b3の軸方向位置は一致し、第四超電導段差面524bと第四常電導段差面612b4の軸方向位置は一致する。
【0061】
また、二段目常電導ステージ面612a2の軸方向長さ、三段目常電導ステージ面612a3の軸方向長さ、四段目常電導ステージ面612a4の軸方向長さは、いずれも、同一の長さであり、且つ、後述する超電導エンドリング62に用いられる超電導テープ線材の幅よりも長い。同様に、二段目超電導ステージ面522aの軸方向長さ、三段目超電導ステージ面523aの軸方向長さ、四段目超電導ステージ面524aの軸方向長さは、いずれも、同一の長さであり、且つ、超電導エンドリング62に用いられる超電導テープ線材の幅よりも長い。また、五段目常電導ステージ面612a5の軸方向長さ及び五段目超電導ステージ面525aの軸方向長さは、いずれも、超電導エンドリング62に用いられる超電導テープ線材の幅と等しいかそれよりも長い。また、一段目常電導ステージ面612a1の軸方向長さ及び一段目超電導ステージ面521aの軸方向長さは、超電導エンドリング62に用いられる超電導テープ線材の幅よりも短くても良い。好ましくは、一段目常電導ステージ面612a1の軸方向長さ及び一段目超電導ステージ面521aの軸方向長さは、二段目、三段目、四段目常電導ステージ面(二段目、三段目、四段目超電導ステージ面)の軸方向長さと、超電導エンドリング62に用いられる超電導テープ線材の幅との差分程度の長さであるのがよい。
【0062】
超電導エンドリング62は、図4Aに示すように、常電導エンドリング61に取り付けられた複数のロータバー5の径外方側、具体的には、超電導ロータバー52の超電導ステップ部52bの径外方側に取り付けられる。本実施形態において、超電導エンドリング62は、第一超電導エンドリング巻線部621と、第二超電導エンドリング巻線部622と、第三超電導エンドリング巻線部623と、第四超電導エンドリング巻線部624とを有する。各エンドリング巻線部は、それぞれ、超電導材料によりテープ状に形成された超電導テープ線材が超電導ステップ部52bに巻回されることにより、段付円環状に形成される。各超電導エンドリング巻線部を構成する超電導テープ線材の幅は、同一である。
【0063】
以下に、超電導エンドリング62を超電導ロータバー52の超電導ステップ部52bに取り付ける手順について説明する。図12は、第一超電導エンドリング巻線部621を超電導ステップ部52bに取り付ける手順を示す図、図13は、第二超電導エンドリング巻線部622を超電導ステップ部52bに取り付ける手順を示す図、図14は、第三超電導エンドリング巻線部623を超電導ステップ部52bに取り付ける手順を示す図、図15は、第四超電導エンドリング巻線部624を超電導ステップ部52bに取り付ける手順を示す図である。
【0064】
まず、第一超電導エンドリング巻線部621が、超電導ステップ部52bに取り付けられる。この場合、まず、第一超電導エンドリング巻線部621を構成する第一超電導テープ線材621aの一方端を、二段目超電導ステージ面522a(又は二段目常電導ステージ面612a2)に載置し、その位置にて、第一超電導テープ線材621aの一方端をはんだなどの導電性接合材により固定する。そして、固定した一方端を始点として、ロータコア3の周方向に沿って、複数の超電導ステップ部52bの二段目超電導ステージ面522aに第一超電導テープ線材621aを巻回する(図12(a))。このとき、第一超電導テープ線材621aの一方側面(第一超電導段差面521bに対面する側面)が、第一超電導段差面521bに接するように、第一超電導テープ線材621aが巻回される。なお、以下の説明において、超電導テープ線材が巻回される場合、超電導テープ線材は、巻回する対象(超電導ステージ面、常電導ステージ面、超電導テープ線材)及び巻回時に隣接する部材との間にはんだ付けしながら巻回される。例えば上記のように第一超電導テープ線材621aが巻回される場合、最初の一周目の巻回では第一超電導テープ線材621aが二段目超電導ステージ面522aにはんだ付けしながら巻回され、二周目以降の巻回では既に二段目超電導ステージ面522aに巻回されている直下の第一超電導テープ線材621aにはんだ付けしながら巻回される。また、第一超電導テープ線材621aの側面と、それに接する第一超電導段差面521bとの間にも、はんだ付けされる。つまり、超電導テープ線材が巻回された場合、同一の又は異なる超電導テープ線材どうしの隙間、並びに超電導テープ線材とその他の部材との隙間が、はんだにより埋められる。これにより電気抵抗が最小化される。
【0065】
ロータコア3の周方向に沿って二段目超電導ステージ面522aに巻回された第一超電導テープ線材621aの最外周の径方向位置が、図12(b)に示すように一段目超電導ステージ面521aの径方向位置に達した場合、第一超電導テープ線材621aの巻き位置を、一段目超電導ステージ面521aに近づくように軸方向にわずかにずらす。そして、巻き位置をずらした状態で、さらに、ロータコア3の周方向に沿って、第一超電導テープ線材621aの巻回を継続する。この場合、第一超電導テープ線材621aの巻き位置を一段目超電導ステージ面521aに近づく方向にずらしたことにより、第一超電導テープ線材621aは、その幅方向における一方側の部分にて一段目超電導ステージ面521aに巻回され、その幅方向における他方側の部分にて二段目超電導ステージ面522aに巻回されることになる(図12(c))。このように、第一超電導テープ線材621aは、ロータコア3の周方向に沿って、一段目超電導ステージ面521a及び二段目超電導ステージ面522aに巻回される。なお、一段目超電導ステージ面521aにはんだ付けしながら巻回される第一超電導テープ線材621aは、同時に、一段目超電導ステージ面521aと同じ軸方向位置に位置する一段目常電導ステージ面612a1にもはんだ付けしながら巻回される。同様に、二段目超電導ステージ面522aにはんだ付けしながら巻回される第一超電導テープ線材621aは、同時に、二段目超電導ステージ面522aと同じ軸方向位置に位置する二段目常電導ステージ面612a2にもはんだ付けしながら巻回される。
【0066】
一段目超電導ステージ面521aに近づくように巻き位置をずらした後に所定の巻数だけ第一超電導テープ線材621aを巻回し、その後、第一超電導テープ線材621aの他端部をその直下に位置する部分にはんだなどの導電性接合材により接合する。これにより、第一超電導テープ線材621aの巻回が完了して、第一超電導エンドリング巻線部621が超電導ステップ部52bに取り付けられる(図12(c))。図12(c)に示すように、第一超電導エンドリング巻線部621は、二段目超電導ステージ面522aに巻回される円環状の部分と、一段目超電導ステージ面521aに巻回される円環状の部分とを有する段付円環状に形成される。
【0067】
次に、第二超電導エンドリング巻線部622が、超電導ステップ部52bに取り付けられる。この場合、まず、第二超電導エンドリング巻線部622を構成する第二超電導テープ線材622aの一方端を、三段目超電導ステージ面523a(又は三段目常電導ステージ面612a3)に載置し、その位置にて、第二超電導テープ線材622aの一方端をはんだなどの導電性接合材により固定する。そして、固定した一方端を始点として、ロータコア3の周方向に沿って、複数の超電導ステップ部52bの三段目超電導ステージ面523aに第二超電導テープ線材622aを巻回する(図13(a))。このとき、第二超電導テープ線材622aの一方側面(第二超電導段差面522bに対面する側面)が、第二超電導段差面522bに接するように、第二超電導テープ線材622aが巻回される。
【0068】
ロータコア3の周方向に沿って三段目超電導ステージ面523aに巻回された第二超電導テープ線材622aの最外周の径方向位置が、図13(b)に示すように二段目超電導ステージ面522aの径方向位置に達した場合、第二超電導テープ線材622aの巻き位置を、二段目超電導ステージ面522aに近づくように軸方向にわずかにずらす。そして、巻き位置をずらした状態で、さらに、ロータコア3の周方向に沿って、第二超電導テープ線材622aの巻回を継続する。この場合、第二超電導テープ線材622aの巻き位置を二段目超電導ステージ面522aに近づく方向にずらしたことにより、第二超電導テープ線材622aは、その幅方向における一方側の部分にて二段目超電導ステージ面522aに巻回され、その幅方向における他方側の部分にて三段目超電導ステージ面523aに巻回されることになる(図13(c))。ここで、上記したように、二段目超電導ステージ面522aには、既に第一超電導エンドリング巻線部621を構成する第一超電導テープ線材621aが巻回されている。しかし、二段目超電導ステージ面522aの軸方向長さは、第一超電導テープ線材621aの幅(巻き軸方向の長さ)よりも長く、且つ、二段目超電導ステージ面522aに巻回されている第一超電導テープ線材621aは、その一方側面にて第一超電導段差面521bに接している。従って、図13(b)からわかるように、二段目超電導ステージ面522aのうち、第二超電導段差面522bに近い領域には第一超電導テープ線材621aが巻回されていない。第二超電導テープ線材622aは、二段目超電導ステージ面522aのうち、第一超電導テープ線材621aが巻回されていない領域に巻回される(図13(c))。
【0069】
このように、第二超電導テープ線材622aは、ロータコア3の周方向に沿って、二段目超電導ステージ面522a及び三段目超電導ステージ面523aに巻回される。なお、二段目超電導ステージ面522aにはんだ付けしながら巻回される第二超電導テープ線材622aは、同時に、二段目超電導ステージ面522aと同じ軸方向位置に位置する二段目常電導ステージ面612a2にもはんだ付けしながら巻回される。同様に、三段目超電導ステージ面523aにはんだ付けしながら巻回される第二超電導テープ線材622aは、同時に、三段目超電導ステージ面523aと同じ軸方向位置に位置する三段目常電導ステージ面612a3にもはんだ付けしながら巻回される。
【0070】
また、二段目超電導ステージ面522aは、第一超電導エンドリング巻線部621を構成する第一超電導テープ線材621aに巻回される部分と、第二超電導エンドリング巻線部622を構成する第二超電導テープ線材622aに巻回される部分とを有することになる。つまり、二段目超電導ステージ面522aは、複数の超電導テープ線材に巻回される超電導共有ステージ面である。また、この二段目超電導ステージ面522aでは、第一超電導テープ線材621aに巻回される部分と、第二超電導テープ線材622aに巻回される部分が、軸方向に隣接して配置する。なお、隣接配置した第一超電導テープ線材621aと第二超電導テープ線材622aの対面する側面どうしははんだ付けされる。
【0071】
二段目超電導ステージ面522a側に巻き位置をずらした後に二段目超電導ステージ面522aに巻回された第二超電導テープ線材622aの最外周の径方向位置が、一段目超電導ステージ面521aの径方向位置に達した場合(図13(d))、第二超電導テープ線材622aの巻き位置を、一段目超電導ステージ面521aに近づくように軸方向にわずかにずらす。そして、巻き位置をずらした状態で、ロータコア3の周方向に沿ってさらに第二超電導テープ線材622aの巻回を継続する。ここで、第二超電導テープ線材622aの巻き位置を一段目超電導ステージ面521a側にずらしたことにより、第二超電導テープ線材622aは、二段目超電導ステージ面522aに既に巻回されている第一超電導テープ線材621a、すなわち第一超電導エンドリング巻線部621に巻回されることになる。
【0072】
一段目超電導ステージ面521a側に巻き位置をずらした後に所定の巻数だけ第二超電導テープ線材622aを巻回した後に、第二超電導テープ線材622aの他端部をその直下に位置する部分にはんだなどの導電性接合材により接合する。これにより、第二超電導テープ線材622aの巻回が完了して、第二超電導エンドリング巻線部622が超電導ステップ部52bに取り付けられる(図13(e))。図13(e)に示すように、第二超電導エンドリング巻線部622は、三段目超電導ステージ面523aに巻回される円環状の部分と、二段目超電導ステージ面522aに巻回される円環状の部分と、第一超電導エンドリング巻線部621に巻回される円環状の部分とを有する段付円環状に形成される。
【0073】
次に、第三超電導エンドリング巻線部623が、超電導ステップ部52bに取り付けられる。この場合、まず、第三超電導エンドリング巻線部623を構成する第三超電導テープ線材623aの一方端を、四段目超電導ステージ面524a(又は四段目常電導ステージ面612a4)に載置し、その位置にて、第三超電導テープ線材623aの一方端をはんだなどの導電性接合材により固定する。そして、固定した一方端を始点として、ロータコア3の周方向に沿って、複数の超電導ステップ部52bの四段目超電導ステージ面524aに第三超電導テープ線材623aを巻回する(図14(a))。このとき、第三超電導テープ線材623aの一方側面(第三超電導段差面523bに対面する側面)が、第三超電導段差面523bに接するように、第三超電導テープ線材623aが巻回される。
【0074】
ロータコア3の周方向に沿って四段目超電導ステージ面524aに巻回された第三超電導テープ線材623aの最外周の径方向位置が、図14(b)に示すように三段目超電導ステージ面523aの径方向位置に達した場合、第三超電導テープ線材623aの巻き位置を、三段目超電導ステージ面523aに近づくように軸方向にわずかにずらす。そして、巻き位置をずらした状態で、さらに、ロータコア3の周方向に沿って、第三超電導テープ線材623aの巻回を継続する。この場合、第三超電導テープ線材623aの巻き位置を三段目超電導ステージ面523aに近づく方向にずらしたことにより、第三超電導テープ線材623aは、その幅方向における一方側の部分にて三段目超電導ステージ面523aに巻回され、その幅方向における他方側の部分にて四段目超電導ステージ面524aに巻回されることになる(図14(c))。ここで、上記したように、三段目超電導ステージ面523aには、既に第二超電導エンドリング巻線部622を構成する第二超電導テープ線材622aが巻回されている。しかし、三段目超電導ステージ面523aの軸方向長さは、第二超電導テープ線材622aの幅よりも長く、且つ、三段目超電導ステージ面523aに巻回されている第二超電導テープ線材622aは、その一方側面にて第二超電導段差面522bに接している。従って、図14(b)からわかるように、三段目超電導ステージ面523aのうち、第三超電導段差面523bに近い領域には第二超電導テープ線材622aが巻回されていない。第三超電導テープ線材623aは、三段目超電導ステージ面523aのうち、第二超電導テープ線材622aが巻回されていない領域に巻回される(図14(c))。
【0075】
このように、第三超電導テープ線材623aは、三段目超電導ステージ面523a及び四段目超電導ステージ面524aに巻回される。なお、三段目超電導ステージ面523aにはんだ付けしながら巻回される第三超電導テープ線材623aは、同時に、三段目超電導ステージ面523aと同じ軸方向位置に位置する三段目常電導ステージ面612a3にもはんだ付けしながら巻回される。同様に、四段目超電導ステージ面524aにはんだ付けしながら巻回される第三超電導テープ線材623aは、同時に、四段目超電導ステージ面524aと同じ軸方向位置に位置する四段目常電導ステージ面612a4にもはんだ付けしながら巻回される。
【0076】
また、三段目超電導ステージ面523aは、第二超電導エンドリング巻線部622を構成する第二超電導テープ線材622aに巻回される部分と、第三超電導エンドリング巻線部623を構成する第三超電導テープ線材623aに巻回される部分とを有することになる。つまり、三段目超電導ステージ面523aは、複数の超電導テープ線材に巻回される超電導共有ステージ面である。また、この三段目超電導ステージ面523aでは、第二超電導テープ線材622aに巻回される部分と、第三超電導テープ線材623aに巻回される部分が、軸方向に隣接して配置する。なお、隣接配置した第二超電導テープ線材622aと第三超電導テープ線材623aの対面する側面どうしははんだ付けされる。
【0077】
三段目超電導ステージ面523a側に巻き位置をずらした後に三段目超電導ステージ面523aに巻回された第三超電導テープ線材623aの最外周の径方向位置が、二段目超電導ステージ面522aの径方向位置に達した場合(図14(d))、第三超電導テープ線材623aの巻き位置を、二段目超電導ステージ面522aに近づくように軸方向にわずかにずらす。そして、巻き位置をずらした状態で、ロータコア3の周方向に沿ってさらに第三超電導テープ線材623aの巻回を継続する。ここで、第三超電導テープ線材623aの巻き位置を二段目超電導ステージ面522a側にずらしたことにより、第三超電導テープ線材623aは、二段目超電導ステージ面522a及び三段目超電導ステージ面523aに既に巻回されている第二超電導テープ線材622a、すなわち第二超電導エンドリング巻線部622に巻回されることになる(図14(e))。
【0078】
第二超電導エンドリング巻線部622に巻回された第三超電導テープ線材623aの最外周の径方向位置が一段目超電導ステージ面521aの径方向位置に達した場合、第三超電導テープ線材623aの巻き位置を、一段目超電導ステージ面521aに近づくように軸方向にわずかにずらす。そして、巻き位置をずらした状態で、ロータコア3の周方向に沿って所定の巻数だけ第三超電導テープ線材623aを巻回した後に、第三超電導テープ線材623aの他端部をその直下に位置する部分にはんだなどの導電性接合材により接合する。これにより、第三超電導テープ線材623aの巻回が完了して、第三超電導エンドリング巻線部623が超電導ステップ部52bに取り付けられる(図14(f))。図14(f)に示すように、第三超電導エンドリング巻線部623は、四段目超電導ステージ面524aに巻回される円環状の部分と、三段目超電導ステージ面523aに巻回される円環状の部分と、第二超電導エンドリング巻線部622に巻回される段付円環状の部分と、を有する段付円環状に形成される。
【0079】
次に、第四超電導エンドリング巻線部624が、超電導ステップ部52bに取り付けられる。この場合、まず、第四超電導エンドリング巻線部624を構成する第四超電導テープ線材624aの一方端を、五段目超電導ステージ面525a(又は五段目常電導ステージ面612a5)に載置し、その位置にて、第四超電導テープ線材624aの一方端をはんだなどの導電性接合材により固定する。そして、固定した一方端を始点として、ロータコア3の周方向に沿って、複数の超電導ステップ部52bの五段目超電導ステージ面525aに第四超電導テープ線材624aを巻回する(図15(a))。このとき、第四超電導テープ線材624aの一方側面(第四超電導段差面524bに対面する側面)が、第四超電導段差面524bに接するように、第四超電導テープ線材624aが巻回される。
【0080】
ロータコア3の周方向に沿って五段目超電導ステージ面525aに巻回された第四超電導テープ線材624aの最外周の径方向位置が、図15(b)に示すように四段目超電導ステージ面524aの径方向位置に達した場合、第四超電導テープ線材624aの巻き位置を、四段目超電導ステージ面524aに近づくように軸方向にわずかにずらす。そして、巻き位置をずらした状態で、さらに、ロータコア3の周方向に沿って、第四超電導テープ線材624aの巻回を継続する。この場合、第四超電導テープ線材624aの巻き位置を四段目超電導ステージ面524aに近づく方向にずらしたことにより、第四超電導テープ線材624aは、その幅方向における一方側の部分にて四段目超電導ステージ面524aに巻回され、その幅方向における他方側の部分にて五段目超電導ステージ面525aに巻回されることになる(図15(c))。ここで、上記したように、四段目超電導ステージ面524aには、既に第三超電導エンドリング巻線部623を構成する第三超電導テープ線材623aが巻回されている。しかし、四段目超電導ステージ面524aの軸方向長さは、第三超電導テープ線材623aの幅よりも長く、且つ、四段目超電導ステージ面524aに巻回されている第三超電導テープ線材623aは、その一方側面にて第三超電導段差面523bに接している。従って、図15(b)からわかるように、四段目超電導ステージ面524aのうち、第四超電導段差面524bに近い領域には第三超電導テープ線材623aが巻回されていない。第四超電導テープ線材624aは、四段目超電導ステージ面524aのうち、第三超電導テープ線材623aが巻回されていない領域に巻回される(図15(c))。
【0081】
このように、第四超電導テープ線材624aは、四段目超電導ステージ面524a及び五段目超電導ステージ面525aに巻回される。なお、四段目超電導ステージ面524aにはんだ付けしながら巻回される第四超電導テープ線材624aは、同時に、四段目超電導ステージ面524aと同じ軸方向位置に位置する四段目常電導ステージ面612a4にもはんだ付けしながら巻回される。同様に、五段目超電導ステージ面525aにはんだ付けしながら巻回される第四超電導テープ線材624aは、同時に、五段目超電導ステージ面525aと同じ軸方向位置に位置する五段目常電導ステージ面612a5にもはんだ付けしながら巻回される。
【0082】
また、四段目超電導ステージ面524aは、第三超電導エンドリング巻線部623を構成する第三超電導テープ線材623aに巻回される部分と、第四超電導エンドリング巻線部624を構成する第四超電導テープ線材624aに巻回される部分とを有することになる。つまり、四段目超電導ステージ面524aは、複数の超電導テープ線材に巻回される超電導共有ステージ面である。また、この四段目超電導ステージ面524aでは、第三超電導テープ線材623aに巻回される部分と、第四超電導テープ線材624aに巻回される部分が、軸方向に隣接して配置する。なお、隣接配置した第三超電導テープ線材623aと第四超電導テープ線材624aの対面する側面どうしははんだ付けされる。
【0083】
四段目超電導ステージ面524a側に巻き位置をずらした後に四段目超電導ステージ面524aに巻回された第四超電導テープ線材624aの最外周の径方向位置が、三段目超電導ステージ面523aの径方向位置に達した場合(図16(d))、第四超電導テープ線材624aの巻き位置を、三段目超電導ステージ面523aに近づくように軸方向にわずかにずらす。そして、巻き位置をずらした状態で、ロータコア3の周方向に沿ってさらに第四超電導テープ線材624aの巻回を継続する。ここで、第四超電導テープ線材624aの巻き位置を三段目超電導ステージ面523a側にずらしたことにより、第四超電導テープ線材624aは、三段目超電導ステージ面523a及び四段目超電導ステージ面524aに既に巻回されている第三超電導テープ線材623a、すなわち第三超電導エンドリング巻線部623に巻回されることになる(図15(e))。
【0084】
第三超電導エンドリング巻線部623に巻回された第四超電導テープ線材624aの最外周の径方向位置が、二段目超電導ステージ面522aの径方向位置に達した場合、第四超電導テープ線材624aの巻き位置を、二段目超電導ステージ面522aに近づくように軸方向にわずかにずらす。そして、巻き位置をずらした状態で、ロータコア3の周方向に沿って第四超電導テープ線材624aの巻回を継続していき、継続して巻回された第四超電導テープ線材624aの最外周の径方向位置が一段目超電導ステージ面521aの径方向位置に達した場合、第四超電導テープ線材624aの巻き位置を、一段目超電導ステージ面521aに近づくように軸方向にわずかにずらす。そして、巻き位置をずらした状態で、ロータコア3の周方向に沿って第四超電導テープ線材624aの巻回をさらに継続する。所定の巻数だけ第四超電導テープ線材624aの巻回を継続した後に、第四超電導テープ線材624aの他端部をその直下に位置する部分にはんだなどの導電性接合材により接合する。これにより、第四超電導テープ線材624aの巻回が完了して、第四超電導エンドリング巻線部624が超電導ステップ部52bに取り付けられる(図16(f))。図16(f)に示すように、第四超電導エンドリング巻線部624は、五段目超電導ステージ面525aに巻回される円環状の部分と、四段目超電導ステージ面524aに巻回される円環状の部分と、第三超電導エンドリング巻線部623に巻回される段付円環状の部分と、を有する段付円環状に形成される。
【0085】
以上のようにして、4本の超電導テープ線材が順に巻回されることにより、超電導エンドリング62がロータバー5(具体的には超電導ロータバー52の超電導ステップ部52b)に取り付けられる。また、こうして超電導エンドリング62の各超電導エンドリング巻線部を構成するそれぞれの超電導テープ線材が超電導ステップ部52bに巻回されることにより、それぞれの超電導エンドリング巻線部(621,622,623,624)を構成するそれぞれの超電導テープ線材(621a,622a,623a,624a)が、ロータコア3の周方向に沿って配置された複数の超電導ステップ部52bの同一段の超電導ステージ面及びそれに隣接する超電導ステージ面に巻回される。具体的には、第一超電導エンドリング巻線部621を構成する第一超電導テープ線材621aが、ロータコア3の周方向に沿って配置した複数の超電導ステップ部52bのそれぞれの二段目超電導ステージ面522a及びそれに隣接するそれぞれの一段目超電導ステージ面521aに巻回され、第二超電導エンドリング巻線部622を構成する第二超電導テープ線材622aが、ロータコア3の周方向に沿って配置した複数の超電導ステップ部52bのそれぞれの三段目超電導ステージ面523a及びそれに隣接するそれぞれの二段目超電導ステージ面522aに巻回され、第三超電導エンドリング巻線部623を構成する第三超電導テープ線材623aが、ロータコア3の周方向に沿って配置した複数の超電導ステップ部52bのそれぞれの四段目超電導ステージ面524a及びそれに隣接するそれぞれの三段目超電導ステージ面523aに巻回され、第四超電導エンドリング巻線部624を構成する第四超電導テープ線材624aが、ロータコア3の周方向に沿って配置した複数の超電導ステップ部52bのそれぞれの五段目超電導ステージ面525a及びそれに隣接するそれぞれの四段目超電導ステージ面524aに巻回される。
【0086】
また、超電導ステップ部52bの二段目超電導ステージ面522a、三段目超電導ステージ面523a、四段目超電導ステージ面524aには、複数の超電導テープ線材が巻回されることになる。具体的には、二段目超電導ステージ面522aには、第一超電導テープ線材621a及び第二超電導テープ線材622aが巻回され、三段目超電導ステージ面523aには、第二超電導テープ線材622a及び第三超電導テープ線材623aが巻回され、四段目超電導ステージ面524aには、第三超電導テープ線材623a及び第四超電導テープ線材624aが巻回される。
【0087】
また、超電導エンドリング62が備える複数の超電導エンドリング巻線部(第一超電導エンドリング巻線部621、第二超電導エンドリング巻線部622、第三超電導エンドリング巻線部623、第四超電導エンドリング巻線部624)は、図2及び図3に良く示すように、ロータコア3の軸方向に沿って配設される。超電導エンドリング62及び超電導ロータバー52により、超電導籠型導体4Bが構成される。
【0088】
再び図1を参照する。超電導モータ100が備えるステータ80は、周知のように、ステータコア及びコイルを備え、所定のパターンでコイルに通電することにより、回転磁界を発生する。また、モータケース90は、両端が開口した略円筒状に形成される胴体部91と、胴体部91の一方の開口を塞ぐ前蓋部92と、胴体部91の他方の開口を塞ぐ後蓋部93とを備える。胴体部91、前蓋部92、後蓋部93に囲まれた空間によりモータケース90の内部空間が形成され、この内部空間内に、超電導ロータ1及びステータ80が配設される。ステータ80は、モータケース90の胴体部91の内周壁面に固定される。また、超電導ロータ1は、ステータ80の内側空間に配設される。
【0089】
また、前蓋部92及び後蓋部93に、それぞれ、同軸配置したベアリング94が取り付けられる。このベアリング94にロータシャフト2が回転可能に支持される。ロータシャフト2の一方端は、前蓋部92の中央に形成された孔部92aから外部に突出する。
【0090】
上記構成の超電導モータ100の動作について、次に説明する。まず、超電導モータ100を、それに使用されている超電導材料の超電導遷移温度以下の温度に冷却する。次いで、ステータ80のコイルに交流電圧を印加させる。これにより、ステータ80が回転磁界を発生する。ステータ80が回転磁界を発生すると、ステータ80の内側に配設された超電導ロータ1の籠型導体4に回転磁界が印加される。
【0091】
このとき、籠型導体4の超電導ロータバー52及び超電導エンドリング62は超電導状態にされており、これらの内部には、上記回転磁界に対する遮蔽電流が流れる。斯かる遮蔽電流により回転磁界が超電導ロータバー52及び超電導エンドリング62に進入することが妨げられる(磁束遮蔽状態)。よって、超電導ロータバー52及び超電導エンドリング62により構成される超電導籠型導体4Bに鎖交する磁束はゼロであり、それ故に、超電導モータ100は回転しない。
【0092】
ステータ80のコイルへの印加電圧及び/又は印加電圧の周波数を増加させると、超電導籠型導体4Bに作用する磁束の状態が、上記した磁束遮蔽状態から、超電導籠型導体4Bに磁束が通過する磁束フロー状態に移行する。超電導籠型導体4Bに作用する磁束の状態が磁束フロー状態である場合、超電導籠型導体4B内に有限の電気抵抗が発生し、超電導籠型導体4Bに磁束が鎖交する。これにより、超電導モータ100が誘導モータとして回転し始める。
【0093】
超電導モータ100の回転速度(超電導ロータ1の回転速度)が上昇し、回転磁界と超電導ロータ1との相対回転速度が減少すると、超電導籠型導体4Bに流れる電流が減少する。そして、超電導籠型導体4Bに流れる電流が臨界電流Icを下回った場合に、超電導籠型導体4Bに鎖交磁束が補足される(磁束捕捉状態)。超電導籠型導体4Bに作用する磁束の状態が磁束捕捉状態である場合、捕捉した磁束を維持するようなループ状の超電導電流(永久電流)が、超電導籠型導体4Bに流れる。これにより超電導籠型導体4Bが着磁されて、超電導籠型導体4BにN極とS極が形成される。つまり、籠型導体4が磁石として機能する。このため、超電導籠型導体4Bに作用する磁束の状態が磁束捕捉状態である場合、超電導モータ100は、同期モータとして回転する。このとき、超電導籠型導体4Bには直流電流が流れる。また、超電導籠型導体4Bの電気抵抗がゼロである(或いは極めて小さい)ので、熱損失が極めて小さく、それ故に、高い効率で超電導モータ100を回転させることができる。また、大電流を流すことができるため、高いトルクを発生させることができる。
【0094】
また、超電導籠型導体4Bが超電導状態ではない場合にステータ80が回転磁界を発生した場合、常電導ロータバー51及び常電導エンドリング61により構成される常電導籠型導体4Aに誘導電流が流れる。このため、常電導籠型導体4Aが生じる誘導トルク主導で、超電導モータ100が回転する。
【0095】
図16は、超電導モータ100が同期モータとして回転している場合(超電導籠型導体4Bに作用する磁束の状態が磁束補足状態である場合)に、超電導籠型導体4B内を流れる電流、具体的には、超電導エンドリング62から、超電導ロータバー52の各バー(521,522,523,524,525)に流れる電流の経路を模式的に示す図である。図16に示すように、超電導エンドリング62の各超電導エンドリング巻線部(621,622,623,624)を構成する4本の超電導テープ線材(621a,622a,623a,624a)のうち、第一超電導テープ線材621aを流れる電流は、第一超電導テープ線材621aから、第一超電導テープ線材621aに接触している(巻回されている)一段目超電導ステージ面521a及び二段目超電導ステージ面522aを経由して、第一バー521及び第二バー522に流れる。また、第二超電導テープ線材622aを流れる電流は、第二超電導テープ線材622aから、第二超電導テープ線材622aに接触している(巻回されている)二段目超電導ステージ面522a及び三段目超電導ステージ面523aを経由して、第二バー522及び第三バー523に流れる。また、第三超電導テープ線材623aを流れる電流は、第三超電導テープ線材623aから、第三超電導テープ線材623aに接触している(巻回されている)三段目超電導ステージ面523a及び四段目超電導ステージ面524aを経由して、第三バー523及び第四バー524に流れる。また、第四超電導テープ線材624aを流れる電流は、第四超電導テープ線材624aから、第四超電導テープ線材624aに接触している(巻回されている)四段目超電導ステージ面524a及び五段目超電導ステージ面525aを経由して、第四バー524及び第五バー525に流れる。
【0096】
このように、各超電導テープ線材を流れる電流は、複数段の超電導ステージ面を経由して、超電導ロータバー52に流れる。超電導エンドリング62の各超電導テープ線材が超電導ロータバー52の複数段の超電導ステージ面に接触することにより、両者間の接触面積を増大させることができる。このため、超電導エンドリング62から超電導ロータバー52に流れる電流の接触抵抗(電気抵抗)が低減される。
【0097】
また、本実施形態の構成によれば、超電導エンドリング62を構成する各超電導テープ線材を流れる電流が、超電導ロータバー52に至るまでに、積層された超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数を低減することもできる。このことについて説明を簡素化するために、各超電導テープ線材が一つの超電導ステージ面を巻回する巻き数を1と仮定する。また、各超電導テープ線材は、1巻きごとに巻き位置を軸方向にずらして巻回を継続すると仮定する。この場合、第一超電導テープ線材621aは、1巻き目で二段目超電導ステージ面522aを巻回し、1巻き目から巻き位置をずらした2巻き目で一段目超電導ステージ面521aを巻回する。第二超電導テープ線材622aは、1巻き目で三段目超電導ステージ面523aを巻回し、1巻き目から巻き位置をずらした2巻き目で二段目超電導ステージ面522aを巻回し、2巻き目から巻き位置をずらした3巻き目で第一超電導テープ線材621aの1巻き目の部分を巻回する。第三超電導テープ線材623aは、1巻き目で四段目超電導ステージ面524aを巻回し、1巻き目から巻き位置をずらした2巻き目で三段目超電導ステージ面523aを巻回し、2巻き目から巻き位置をずらした3巻き目で第二超電導テープ線材622aの1巻き目の部分を巻回し、3巻き目から巻き位置をずらした4巻き目で第二超電導テープ線材622aの2巻き目の部分を巻回する。第四超電導テープ線材624aは、1巻き目で五段目超電導ステージ面525aを巻回し、1巻き目から巻き位置をずらした2巻き目で四段目超電導ステージ面524aを巻回し、2巻き目から巻き位置をずらした3巻き目で第三超電導テープ線材623aの1巻き目の部分を巻回し、3巻き目から巻き位置をずらした4巻き目で第三超電導テープ線材623aの2巻き目の部分を巻回し、4巻き目から巻き位置をずらした5巻き目で第三超電導テープ線材623aの3巻き目の部分を巻回する。
【0098】
この場合、第一超電導テープ線材621aの1巻き目の部分は二段目超電導ステージ面522aに直接接触し、2巻き目の部分は一段目超電導ステージ面521aに直接接触する。また、第二超電導テープ線材622aの1巻き目の部分は三段目超電導ステージ面523aに直接接触し、2巻き目の部分は二段目超電導ステージ面522aに直接接触する。また、第三超電導テープ線材623aの1巻き目の部分は四段目超電導ステージ面524aに直接接触し、2巻き目の部分は三段目超電導ステージ面523aに直接接触する。また、第四超電導テープ線材624aの1巻き目の部分は五段目超電導ステージ面525aに直接接触し、2巻き目の部分は四段目超電導ステージ面524aに直接接触する。超電導ステージ面に直接接触している部分を流れる電流は、超電導テープ線材どうしの接触界面を横切ることなく、超電導ロータバー52に流れる。よって、上記した部分について、超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数は、0回である。
【0099】
また、第二超電導テープ線材622aの3巻き目の部分は、第一超電導テープ線材621aの1巻き目の部分に巻回される。第一超電導テープ線材621aの1巻き目の部分は二段目超電導ステージ面522aに直接接触している。よって、第二超電導テープ線材622aの3巻き目の部分を流れる電流は、第一超電導テープ線材621aとの接触界面を横切って、第一超電導テープ線材621aの1巻き目の部分に流れ、さらに、そこから二段目超電導ステージ面522aを経由して第二バー522(超電導ロータバー52)に流れる。よって、第二超電導テープ線材622aの3巻き目の部分を流れる電流が超電導ロータバー52に至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数は1回である。
【0100】
また、第三超電導テープ線材623aの3巻き目の部分は、第二超電導テープ線材622aの1巻き目の部分に巻回される。第二超電導テープ線材622aの1巻き目の部分は三段目超電導ステージ面523aに直接接触している。よって、第三超電導テープ線材623aの3巻き目の部分を流れる電流は、第二超電導テープ線材622aとの接触界面を横切って、第二超電導テープ線材622aの1巻き目の部分に流れ、さらに、そこから三段目超電導ステージ面523aを経由して第三バー523(超電導ロータバー52)に流れる。よって、第三超電導テープ線材623aの3巻き目の部分を流れる電流が超電導ロータバー52に至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数は1回である。
【0101】
上記のように、超電導ステージ面に直接接触している部分を巻回する部分を流れる電流が、超電導ロータバー52に至るまでに超電導線材どうしの接触界面を横切る回数は1回である。よって、二段目超電導ステージ面522aに直接接触している第二超電導テープ線材622aの2巻き目の部分を巻回する第三超電導テープ線材623aの4巻き目の部分を流れる電流が超電導ロータバー52に至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数は1回である。同様に、四段目超電導ステージ面524aに直接接触している第三超電導テープ線材623aの1巻き目の部分を巻回する第四超電導テープ線材624aの3巻き目の部分を流れる電流、及び、三段目超電導ステージ面523aに直接接触している第三超電導テープ線材623aの2巻き目の部分を巻回する第四超電導テープ線材624aの4巻き目の部分を流れる電流が、超電導ロータバー52に至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数は、共に、1回である。
【0102】
また、第四超電導テープ線材624aの5巻き目の部分は、第三超電導テープ線材623aの3巻き目の部分を巻回する。よって、第四超電導テープ線材624aの5巻き目の部分を流れる電流は、第三超電導テープ線材623aとの接触界面を横切って、第三超電導テープ線材623aの3巻き目の部分に流れる。また、第三超電導テープ線材623aの3巻き目の部分を流れる電流が超電導ロータバーに至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数は1回である。よって、第四超電導テープ線材624aの5巻き目の部分を流れる電流が超電導ロータバー52に至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数は2回である。
【0103】
図16に示す各超電導テープ線材の各部分には、そこを流れる電流が超電導ロータバー52に至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数が、表示されている。これらの回数の合計が、超電導エンドリング62を流れる電流が超電導ロータバー52に至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る総数である。図16に示す例では、総数は、7である。つまり、超電導エンドリング62を流れる電流が超電導ロータバー52に至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る総数は、7回である。
【0104】
図17は、比較のために、巻き位置をずらすことなく、1つの超電導ステージ面上に1本の超電導テープ線材を巻回して構成された超電導エンドリングEを示す図である。この例では、各超電導テープ線材は、それぞれ、単一の超電導ステージ面のみに巻回されている。具体的には、超電導テープ線材Aが、二段目超電導ステージ面522aに巻回され、超電導テープ線材Bが、三段目超電導ステージ面523aに巻回され、超電導テープ線材Cが、四段目超電導ステージ面524aに巻回され、超電導テープ線材Dが、五段目超電導ステージ面525aに巻回される。従って、それぞれの超電導テープ線材を流れる電流は、その超電導テープ線材が巻回する単一の超電導ステージ面を経由して超電導ロータバー52に至ることになる。図17には、各超電導テープ線材の各部分を流れる電流が超電導ロータバー52に至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数が表示されている。図17に示す例によれば、超電導エンドリングEを流れる電流が超電導ロータバー52に至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る総数は、20回である。このことから、本実施形態によれば、超電導エンドリング62を流れる電流が超電導ロータバー52に至るまでに超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数を減じることができる。よって、本実施形態によれば、より電気抵抗の小さい超電導ロータ1及び超電導モータ100を提供することができる。
【0105】
以上のように、本実施形態に係る超電導ロータ1は、超電導ロータバー52及び超電導エンドリング62を備える。超電導ロータバー52がその両端に備える超電導ステップ部52bは、径外方を向き且つ径方向位置が異なる複数段の超電導ステージ面(521a,522a,523a,524a,525a)を有する。これらの複数段の超電導ステージ面は、ロータコア3の軸方向に沿って、段階的に径方向位置が変化するように配列されている。具体的には、複数段の超電導ステージ面は、ロータコア3の軸方向に沿って、超電導本体部52aから離れるにつれて、段階的に径方向位置が小さくなるように、配列されている。このような複数段の超電導ステージ面を有する超電導ステップ部52bが、ロータコア3の周方向に沿って、配置されている。また、超電導エンドリング62は、超電導材料によりテープ状に形成された超電導テープ線材(621a、622a、623a、624a)が、ロータコア3の周方向に沿って配置された複数の超電導ステップ部52bの同一段の超電導ステージ面及びその同一段の超電導ステージ面に隣接する段の超電導ステージ面に巻回されることにより段付環状に形成された複数の超電導エンドリング巻線部(621,622,623,624)を有する。そして、複数の超電導エンドリング巻線部がロータコア3の軸方向に沿って配設されることにより、超電導エンドリング62が構成される。
【0106】
本実施形態に係る超電導ロータ1によれば、超電導エンドリング62の各超電導エンドリング巻線部を構成する各超電導テープ線材が、複数段の超電導ステージ面に巻回されるので、超電導エンドリング62と超電導ロータバー52との接触面積が増大する。これにより、電気抵抗(接触抵抗)が低減される。また、本実施形態の構成によれば、超電導エンドリング62を流れる電流が超電導ロータバー52に至るまでに、超電導テープ線材どうしの接触界面を横切る回数を減じることができる。従って、電気抵抗をさらに小さくすることができる。
【0107】
また、複数段の超電導ステージ面のうち、二段目超電導ステージ面522a、三段目超電導ステージ面523a、四段目超電導ステージ面524aは、ロータコア3の軸方向に隣接する複数の超電導エンドリング巻線部を構成する超電導テープ線材が巻回される超電導共有ステージ面である。この超電導共有ステージ面の軸方向長さは、それに巻回される超電導テープ線材の巻軸方向における長さ(幅)よりも長い。よって、超電導共有ステージ面に、一つの超電導エンドリング巻線部を構成する超電導テープ線材及びその超電導エンドリング巻線部に隣接する超電導エンドリング巻線部を構成する超電導テープ線材を、ロータコア3の軸方向に並べて配置することができる。また、超電導テープ線材(超電導エンドリング62)と超電導ロータバー52との接触面積が増加するので、超電導ロータ1の電気抵抗をさらに小さくすることができる。
【0108】
また、本実施形態に係る超電導ロータ1は、超電導エンドリング62及び超電導ロータバー52により構成される超電導籠型導体4Bに加え、常電導エンドリング61及び常電導ロータバー51により構成される常電導籠型導体4Aを有する。よって、超電導籠型導体4Bが非超電導状態であるときには、常電導籠型導体4Aにて生じる誘導トルク主導で超電導モータ100を回転させることができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、常電導ロータバー51が、超電導ロータバー52に熱的に接触している。このため、超電導ロータバー52にて生じた熱を、常電導ロータバー51に逃がすことができる。よって、十分に超電導ロータバー52を冷却することができる。また、本実施形態によれば、常電導ロータバー51が超電導ロータバー52に電気的に接触している。このため、超電導ロータバー52に臨界電流Icを超える過剰な電流が流れようとするときに、常電導ロータバー51に電流を分流することができる。つまり、常電導ロータバー51が、超電導ロータバー52に流れる電流のバイパス経路を構成する。これにより、超電導ロータバー52に臨界電流Icを超える過剰な電流が流れることによる超電導ロータバー52の発熱を抑制することができ、その結果、超電導ロータバー52の焼損を防止できる。
【0110】
また、本実施形態によれば、常電導エンドリング61の常電導ステップ部612に、超電導エンドリング62を構成する超電導テープ線材がはんだ付けしながら巻回されることにより、常電導エンドリング61が超電導エンドリング62に熱的に及び電気的に接触している。このため、超電導エンドリング62にて生じた熱を、常電導エンドリング61に逃がすことができる。よって、十分に超電導エンドリング62を冷却することができる。また、超電導エンドリング62に臨界電流Icを超える過剰な電流が流れようとするときに、常電導エンドリング61に電流を分流することができる。これにより、超電導エンドリング62に過剰な電流が流れることによる超電導エンドリング62の発熱を抑制することができ、その結果、超電導エンドリングの焼損を防止できる。
【0111】
また、常電導エンドリング61は、常電導円環部611及び複数の常電導ステップ部612を有する。常電導円環部611は円環状をなし、ロータコア3の一方端又は他方端にてロータコア3に同軸配置されるともに複数の常電導ロータバー51の常電導接続部51bに電気的に接続される。複数の常電導ステップ部612は、常電導円環部611の周方向に沿って間隔を開けて常電導円環部611に接続される。また、複数の常電導ステップ部612は、それぞれ、ロータコア3の周方向に隣接する超電導ロータバー52の超電導ステップ部52b間に配設されるとともに、ロータコア3の径外方を向き且つロータコア3の軸方向に沿って段階的に径方向位置が変化する(本実施形態では段階的に径方向位置が小さくなる)複数段の常電導ステージ面(612a1,612a2,612a3,612a4,612a5)を有する。そして、複数段の常電導ステージ面は、それぞれ、ロータコア3の軸方向において、複数段の超電導ステージ面と同一位置に設けられ、且つ、ロータコアの軸方向における同一位置に設けられた常電導ステージ面と超電導ステージ面の径方向位置が一致するように形成される。
【0112】
これによれば、同一段の超電導ステージ面間に常電導ステージ面が位置することになり、且つ、同一段の超電導ステージ面及び常電導ステージ面の径方向位置(ロータコアの中心からの距離)が一致する。このため、超電導エンドリングを構成する超電導テープ線材が超電導ステージ面に巻回されたとき、同時に、その超電導ステージ面と同一段の常電導ステージ面にも巻回される。これにより超電導ステージ面に巻回される超電導テープ線材の支持点(接触点)が周方向(巻回方向)に増加する。よって、超電導テープ線材が巻回される際において超電導テープ線材の曲げ角度を小さくすることができる。その結果、超電導テープ線材の曲げ角度が大きいことに起因する超電導特性の悪化を防止することができる。
【0113】
また、本実施形態に係る超電導モータ100によれば、超電導ロータ1の電気抵抗が低減されているので、効率を向上させることができる。また、大電流を流すことができるため、モータの高トルク化を図ることができる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、超電導エンドリングを構成する複数の超電導テープ線材のそれぞれが、2つの隣接する段の超電導ステージ面に巻回される例について説明したが、複数の超電導テープ線材のそれぞれは、3つ以上の隣接する段の超電導ステージ面に巻回されるように構成されていてもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、二段目超電導ステージ面522a、三段目超電導ステージ面523a、四段目超電導ステージ面524a、すなわち超電導共有ステージ面に、2本の超電導テープ線材が巻回される例について説明したが、超電導共有ステージ面に巻回される超電導テープ線材の本数は、3本以上であってもよい。図18は、超電導共有ステージ面に3本の超電導テープ線材が巻回される例を示す図である。図18に示すように、この例では、超電導エンドリング62が7本の超電導テープ線材(第一超電導テープ線材621b、第二超電導テープ線材622b、第三超電導テープ線材623b、第四超電導テープ線材624b、第五超電導テープ線材625b、第六超電導テープ線材626b、第七超電導テープ線材627b)により構成される。
【0116】
また、第一超電導テープ線材621b及び第二超電導テープ線材622bは、二段目超電導ステージ面522a及び一段目超電導ステージ面521aに巻回される。第三超電導テープ線材623bは、三段目超電導ステージ面523a及び二段目超電導ステージ面522aに巻回される。第四超電導テープ線材624bは、三段目超電導ステージ面523aに巻回される。第五超電導テープ線材625bは、四段目超電導ステージ面及び三段目超電導ステージ面523aに巻回される。第六超電導テープ線材626bは、四段目超電導ステージ面524aに巻回される第七超電導テープ線材627bは、五段目超電導ステージ面525aに巻回される。
【0117】
従って、二段目超電導ステージ面522aには、第一超電導テープ線材621b、第二超電導テープ線材622b、第三超電導テープ線材623bが巻回され、三段目超電導ステージ面523aには、第三超電導テープ線材623b、第四超電導テープ線材624b、第五超電導テープ線材625bが巻回され、四段目超電導ステージ面524aには、第五超電導テープ線材625b、第六超電導テープ線材626b、第七超電導テープ線材627bが巻回される。つまり、二段目超電導ステージ面522a、三段目超電導ステージ面523a、四段目超電導ステージ面524aが、超電導共有ステージ面であり、これらの超電導共有ステージ面には、3本の超電導テープ線材が巻回される。
【0118】
このように、超電導共有ステージ面に3本の超電導テープ線材を巻回した場合でも、上記した作用効果を奏する。加えて、超電導テープ線材(超電導エンドリング62)と超電導ロータバー52との接触面積がより大きくされるので、接続抵抗(電気抵抗)を更に小さくすることができる。なお、この例において、超電導エンドリング62内を流れる電流の経路が、図18中の矢印で示される。
【0119】
また、上記実施形態では、常電導エンドリング61が常電導ステップ部612を備えた構成を示したが、常電導エンドリング61がこのような常電導ステップ部612を備えなくても良い。図19は、常電導ステップ部612を備えない常電導エンドリング61Aの斜視図である。このような常電導エンドリング61Aを用いた場合においても、従来の超電導モータ及び超電導ロータと比較して、電気抵抗を十分に小さくすることができる。
【0120】
また、上記実施形態では、5段の超電導ステージ面が形成されている例を示したが、超電導ステージ面の段数は、二段以上の任意の段数に設定することができる。また、上記実施形態では、超電導ロータバー52を複数本のバーを積層させることにより形成する例を示したが、例えばバルク状の超電導体によって一体的に超電導ロータバー52を成形してもよい。また、上記実施形態では、複数段の超電導ステージ面が、ロータコア3の軸方向に沿って超電導本体部52aから離れるほど段階的に径方向位置が小さくなる(径方向距離が短くなる)ように配列される例を示したが、複数段の超電導ステージ面は、ロータコア3の軸方向に沿って超電導本体部52aから離れるほど段階的に径方向位置が大きくなる(径方向距離が長くなる)ように配列していてもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0121】
1…超電導ロータ、2…ロータシャフト、3…ロータコア、33…一方端面、34…他方端面、35…スロット、4…籠型導体、4A…常電導籠型導体、4B…超電導籠型導体、5…ロータバー、51…常電導ロータバー、51a…常電導本体部、51b…常電導接続部、52…超電導ロータバー、52a…超電導本体部、52b…超電導ステップ部、521…第一バー、521a…一段目超電導ステージ面、521b…第一超電導段差面、522…第二バー、522a…二段目超電導ステージ面、522b…第二超電導段差面、523…第三バー、523a…三段目超電導ステージ面、523b…第三超電導段差面、524…第四バー、524a…四段目超電導ステージ面、524b…第四超電導段差面、525…第五バー、525a…五段目超電導ステージ面、525b…第五超電導段差面、6…エンドリング、61,61A…常電導エンドリング、611…常電導円環部、612…常電導ステップ部、612a1…一段目常電導ステージ面、612a2…二段目常電導ステージ面、612a3…三段目常電導ステージ面、612a4…四段目常電導ステージ面、612a5…五段目常電導ステージ面、612b1…第一常電導段差面、612b2…第二常電導段差面、612b3…第三常電導段差面、612b4…第四常電導段差面、62…超電導エンドリング、621…第一超電導エンドリング巻線部、621a,621b…第一超電導テープ線材、622…第二超電導エンドリング巻線部、622a,622b…第二超電導テープ線材、623…第三超電導エンドリング巻線部、623a,623b…第三超電導テープ線材、624…第四超電導エンドリング巻線部、624a,624b…第四超電導テープ線材、625b…第五超電導テープ線材、626b…第六超電導テープ線材、627b…第七超電導テープ線材、80…ステータ、90…モータケース、100…超電導モータ、
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図4A
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